JP2023173011A - アルミニウム構造体 - Google Patents
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Abstract
【課題】軽量で、効率的な熱交換が可能なアルミニウム構造体を提供する。【解決手段】一体成型されたアルミニウム構造体であって、本体と、多数の3次元網目状格子によって区画され、3次元状に連通する連通気孔を備え、前記3次元網目状格子は、骨格の直径が0.3mm~0.7mmであって、略切頂八面体を空間充填するように内部全体に設けられていることを特徴とする。従来技術と比較して、比表面積は大きく、圧力損失は小さい。【選択図】図1
Description
本発明は、軽量で、効率の良い熱交換が可能なアルミニウム構造体に関するものである。
近年、ゲーム機器やパソコン等の電気・電子機器の高性能化が著しい。これらに用いられるCPUやMPUなどは、高度な演算処理を行うため、電力の消費が大きく、多量の熱が発生する。発生した熱による機器の故障を防ぐため、放出熱の冷却をする必要があり、例えば、ヒートシンクのような熱交換器の重要性が高まっている。
一般的に、ヒートシンクに備えられているフィンの形状はピン型やプレート型である。このような形状となっているのは、流体の圧力損失をできるだけ減少させつつ、流体との接触面積を大きくすることで熱抵抗を小さくするためである。
しかし、ピン型フィンのヒートシンクは、流体との接触面積を大きくすることが可能であるものの、フィンの間隔を著しく狭めると流体の圧力損失が大きくなってしまう。したがって、単位面積当たりに設置できるピンの本数には、限界があり、比表面積をさらに拡大することは難しいという課題がある。
また、受熱面からの距離が長いほど、放熱効率が悪化することや強度の面から、フィンの高さに限界があることも課題である。
一方、プレート型フィンのヒートシンクは、配置されたフィンによって区画された空間が流体経路となり、流体の圧力損失を最小限に抑えることができる。しかし、比表面積はピン型フィンのヒートシンクほど大きくできず、流体経路も限定されるため、設置場所が限られ、自由な構造設計ができないという課題がある。
また、ピン型フィンと比較すれば、フィン高を高くできるものの、効率的な放熱を行うためには、フィンに厚みを持たせる必要があり、ヒートシンクの小型化が難しいことも課題である。
このようにピン型フィン、プレート型フィンには、それぞれ長所と短所があり、使用の態様によって使い分けがなされている。また、フィンに使用する部材やフィンの形状を変更し、短所を補う工夫もされている。
例えば、特許文献1では、多孔質構造体で形成されたフィンを使用して、比表面積を大きくする技術が開示されている。
例えば、特許文献2では、ピン型フィンと基盤を組み合わせた形状を備えた技術が開示されている。
特許文献1によれば、3次元網目状構造を有する多孔質部材をヒートシンク等の熱交換部材に適用すると、緻密な成形体で形成されるヒートシンクに比べて比表面積が大きいことから効率良く熱交換することができる一方で、発泡金属型ヒートシンクはプレート型フィンのヒートシンクに比べて通風抵抗が大きく、自然空冷する際に発泡金属内部に気体が滞留し、伝熱性が低下する問題があり、その解決方法としてフィン間の距離を、特定の値に限定することで、通風抵抗を小さくしている。
しかし、フィン間の距離を特定の値に限定して配置したため、配置できるフィンの個数に限度があり、比表面積の増加幅も小さい。また、複数のパーツを組み合わせて構成されたものとなっており、一体成型された製品と比べて、熱伝導率が低くなるという問題点もある。
特許文献2によれば、ピン型フィンのヒートシンクにおいては、冷却風がピンを横切る際に生じる、流れの剥離等の現象により、通風抵抗が大きくなり、特にピンの密度が大きい場合、一層その傾向は大きくなるという課題があり、その解決方法として、ピン型フィンのヒートシンクに、さらにそれらのピンに基板と平行な1枚以上の放熱金属平板を接合して、基板からの熱をピン型フィンに、さらにピン型フィンから放熱金属平板に伝熱することで通風抵抗を小さくする工夫をしている。
しかし、放熱金属平板により、流体の経路に制限が生じ、さらに、重量も大きくなるという短所がある。
また、複数のパーツを組み合わせて構成されたものとなっており、一体成型された製品と比べて、熱伝導率が低下するという問題点もある。
上記の点に鑑みて、本発明によって解決しようとする問題点は、軽量で、効率的な熱交換が可能なアルミニウム構造体を提供することである。
本発明は、一体成型されたアルミニウム構造体であって、多数の3次元網目状格子によって区画され、3次元状に連通する連通気孔を備え、前記3次元網目状格子は、骨格の直径が0.3mm~4mmであって、略切頂八面体を空間充填するように内部全体に設けられていることを特徴とする。
本発明のアルミニウム構造体は、本体の内部全体が多数の3次元網目状格子によって形成されているため、従来技術と比較して、比表面積が大きい。一体成型されていることと相俟って、従来技術より熱交換能力が高くなっている。
また、前記3次元網目状格子によって区画された気孔が連通しており、その骨格の直径が0.3mm~4mmであって、略切頂八面体を空間充填するように設けられているため、多数の流体経路が確保され、従来技術と比べて流体の圧力損失が減少している。
以下、本発明の一実施形態について説明するが、以下の例示によって本発明は限定されない。なお、本明細書において、数値範囲について「~ 」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「1 0 ~ 2 0 」という記載では、下限値である「1 0 」、上限値である「2 0 」のいずれも含むものとする。すなわち、「1 0 ~ 2 0 」は、「1 0 以上2 0 以下」と同じ意味である。
図1に示すアルミニウム構造体は、本体1と多数の3次元網目状格子2及びベースプレート4が一体成型されており、図2及び図3に示すように前記3次元網目状格子2によって区画され、3次元状に連通する連通気孔3を備える。前記3次元網目状格子2は、略切頂八面体形状であり、空間充填するように内部全体に設けられている。格子骨格21は、骨格の直径が0.3mm~4mmとなっている。骨格の直径が0.3mm未満の場合、構造体全体の強度が不足するため、成型できない。また、4mmを超えると流体の圧力損失が大きくなり、十分な熱交換を行うことができず、好ましくない。なお、骨格の直径は均一であることが好ましい。
前記3次元網目状格子2の切頂面22の形状は略正方形であり、側面23の形状は、略六角形となっている。格子の容積としては、球相当径で2mm~30mmの範囲が好ましく、2mm~2.5mmがより好ましい。強度が不足すること及び通風抵抗が大きくなることから、格子の容積を球相当径で2mm未満とすることは好ましくない。また、格子の容積が30mmを超えると従来技術と比して比表面積が小さくなり、熱交換効率が悪化するため、好ましくない。
骨格の直径が小さくなれば、比表面積が増大し、圧力損失が減少するため、得られる効果は大きくなるが、その効果を最適化するために、前記3次元網目状格子2の容積における球相当径は、格子における骨格の直径の3.75倍~5倍の大きさとすることが好ましい。前記球相当径がこれよりも大きい場合、比表面積が小さくなり過ぎてしまい、十分な効果が得られない。また、前記球相当径がこれよりも小さい場合、流体の圧力損失が大きくなり、十分な効果が得られない。格子の容積としては、球相当径で2mm~2.5mmが最適であるから、格子の骨格の直径は、0.4mm~0.7mmが最適となる。
本実施例では、格子の形状が略切頂八面体であって、空間充填することで得られる構造となっているが、形状を菱形十二面体形状とすることや、本体内部をラティス構造とすることも可能である。また、図4に示すように断面に生じる孔が最大となるような実施例も可能である。
前記3次元網目状格子2について、異なる大きさの格子を組み合わせても良いが、均一の格子で空間充填するのが好ましい。なお、異なる形状の格子を組み合わせても良い。
次に製造方法について説明する。
(材料について)
本発明に使用する金属は、軽量化を図るため、純アルミニウムまたはアルミニウム合金を使用する。熱交換の効率性を重視する場合、アルミニウムの代わりに、純銅や銅合金、純銀や銀合金を使用しても良い。
本発明に使用する金属は、軽量化を図るため、純アルミニウムまたはアルミニウム合金を使用する。熱交換の効率性を重視する場合、アルミニウムの代わりに、純銅や銅合金、純銀や銀合金を使用しても良い。
(製造方法について)
本発明は、精巧な形状で一体成型されていることに特徴があるため、製造方法としては、鋳造法または金属積層造形装置による製造方法のいずれかが好ましい。鋳造法では、より好ましい方法として、ロストワックス法(精密鋳造法)がある。以下、(1)ロストワックス法(精密鋳造法)と(2)金属積層造形装置による製造方法を説明する。
本発明は、精巧な形状で一体成型されていることに特徴があるため、製造方法としては、鋳造法または金属積層造形装置による製造方法のいずれかが好ましい。鋳造法では、より好ましい方法として、ロストワックス法(精密鋳造法)がある。以下、(1)ロストワックス法(精密鋳造法)と(2)金属積層造形装置による製造方法を説明する。
(1)ロストワックス法(精密鋳造法)
以下の工程で製造される。まず、使用する場所や大きさを検討した上で、骨子の金型を作成し、ろうを注入することによりワックス模型を作成する。ワックス模型を組み立て、耐火材をコーテイングする。耐火材としては、例えばセラミックス、石膏、鋳物砂などがある。その後、ろうを熱処理し、消失させてできた鋳型に、700度~800度で融解したアルミニウムを注湯する。
以下の工程で製造される。まず、使用する場所や大きさを検討した上で、骨子の金型を作成し、ろうを注入することによりワックス模型を作成する。ワックス模型を組み立て、耐火材をコーテイングする。耐火材としては、例えばセラミックス、石膏、鋳物砂などがある。その後、ろうを熱処理し、消失させてできた鋳型に、700度~800度で融解したアルミニウムを注湯する。
(鋳造に使用するアルミニウム合金について)
アルミニウムは、Al-Si系合金、Al-Mg系合金、Al-Si-Mg系合金、Al-Si-Cu系合金、Al-Si-Mg-Ni系合金のような鋳造用アルミニウム合金が好ましく、特に、AC2AやADC12などのAl-Si-Cu系合金が好ましい。注湯口が狭いため、注湯量の調節に注意する。
アルミニウムは、Al-Si系合金、Al-Mg系合金、Al-Si-Mg系合金、Al-Si-Cu系合金、Al-Si-Mg-Ni系合金のような鋳造用アルミニウム合金が好ましく、特に、AC2AやADC12などのAl-Si-Cu系合金が好ましい。注湯口が狭いため、注湯量の調節に注意する。
(ロストワックス法のワックス模型について)
前記ワックス模型は、積層造形装置を利用して製造しても良い。近年の積層造形技術の向上により、低コストで、ワックス模型を製造することも可能となっている。
前記ワックス模型は、積層造形装置を利用して製造しても良い。近年の積層造形技術の向上により、低コストで、ワックス模型を製造することも可能となっている。
(誤差について)
骨格の直径は、0.5mmが最も好ましいが、製造過程で生じる熱による膨張及び収縮のため、±0.1mm~0.2mmの誤差が生じる。
骨格の直径は、0.5mmが最も好ましいが、製造過程で生じる熱による膨張及び収縮のため、±0.1mm~0.2mmの誤差が生じる。
(2)金属積層造形装置による製造方法
多くの金属積層造形装置で採用されているパウダーヘッド方式での製造工程を説明する(3Dシステムズ社製 ProX DMP320使用)。アルミニウム合金にて本発明を製造する場合、アルミニウムの光沢によるレーザー光の反射に留意する。
多くの金属積層造形装置で採用されているパウダーヘッド方式での製造工程を説明する(3Dシステムズ社製 ProX DMP320使用)。アルミニウム合金にて本発明を製造する場合、アルミニウムの光沢によるレーザー光の反射に留意する。
まず、ビルドプレートを組み立て、装置のプレチャンバーにセットする。次に、本発明の3Dデータを装置に入力し、製造する。使用する金属粉末は、AlSi10Mgを粉末状にしたものを利用するのが好ましい。
骨格の直径は、0.5mmが最も好ましいが、通常の金属積層造形装置のレーザースポット径は0.1mm、金属粉末の粒径は40μm~60μmであることや製造過程で生じる熱による膨張及び収縮のため、±0.1mm~0.2mmの誤差が生じる。
次に、本発明の使用例について説明する。
本発明は、ヒートシンクとして使用することが可能で、特に空冷ファンを併用する強制空冷に使用するのが好ましい。
半導体素子など冷却対象物の形状に合わせて、本発明を切断し、放熱用両面テープや放熱用接着剤を使用して取り付ける。
以下、従来技術である一般的なプレート型ヒートシンクと本発明を比較した実験について説明する。
(比較例について)
比較例としてプレート型ヒートシンク(株式会社ザワード社製)を使用した。寸法はW80mm×L80mm×H40mm、フィンの厚みは4mm、フィンの間隔は4mmである。
比較例としてプレート型ヒートシンク(株式会社ザワード社製)を使用した。寸法はW80mm×L80mm×H40mm、フィンの厚みは4mm、フィンの間隔は4mmである。
(実施例について)
本発明における実施例の寸法はW80mm×L80mm×H40mmで、3次元網目状格子の寸法は球相当径で15mm、骨格の直径は4mmとした。比較例のフィンの厚みと実施例の3次元網目状格子における骨格の直径を等しくし、骨格の直径と3次元網目状格子の球相当径が最適となるように作製した。
本発明における実施例の寸法はW80mm×L80mm×H40mmで、3次元網目状格子の寸法は球相当径で15mm、骨格の直径は4mmとした。比較例のフィンの厚みと実施例の3次元網目状格子における骨格の直径を等しくし、骨格の直径と3次元網目状格子の球相当径が最適となるように作製した。
(実験装置について)
図8に示すように、30Wのヒーター4本を入れた密閉式の鉄製ボックス内にヒートシンクを取り付け、その外側に別のヒートシンクを取り付けた。鉄製ボックスの外側にあるヒートシンクは、ファン(山洋電気株式会社製「SanAce172」)を用いて冷却する。ファンの電圧は100V、最大風量は187.3CFM、回転数は2900rpm、最大静圧は147Paである。
図8に示すように、30Wのヒーター4本を入れた密閉式の鉄製ボックス内にヒートシンクを取り付け、その外側に別のヒートシンクを取り付けた。鉄製ボックスの外側にあるヒートシンクは、ファン(山洋電気株式会社製「SanAce172」)を用いて冷却する。ファンの電圧は100V、最大風量は187.3CFM、回転数は2900rpm、最大静圧は147Paである。
(実験内容について)
実験室内を密閉し、室温を25度にした。ヒーターの温度が一定となるように調整し、ファンを回転させ、測定を行った。測定時間は2時間である。その結果を表1に示す。
実験室内を密閉し、室温を25度にした。ヒーターの温度が一定となるように調整し、ファンを回転させ、測定を行った。測定時間は2時間である。その結果を表1に示す。
上記結果によれば、実施例は、比較例と比べて、熱抵抗値が低く、熱交換能力が高い。したがって従来技術と比較して、本発明は、放熱性能が優れているといえる。
本発明のアルミニウム構造体は、本体の内部全体が多数の3次元網目状格子によって形成されているため、従来技術と比較して比表面積が大きい。また、前記3次元網目状格子によって区画された連通気孔が3次元状に連通しており、その骨格の直径が0.3mm~4mmであって、略切頂八面体を空間充填するように設けられているため、流体の圧力損失を減少させている。従来技術より、比表面積が大きく、圧力損失を減少させたことにより、熱抵抗値が小さくなり、ヒートシンクなどの熱交換機器に利用できる。
また、前記3次元網目状格子の骨格における直径を大きくすることで、構造体全体の強度が増すと考えられ、補強材や軽量強化材への用途にも適用可能である。
また、前記3次元網目状格子の骨格における直径を大きくすることで、構造体全体の強度が増すと考えられ、補強材や軽量強化材への用途にも適用可能である。
1 本体
2 3次元網目状格子
21 格子骨格
22 格子切頂面
23 格子側面
3 連通気孔
4 ベースプレート
2 3次元網目状格子
21 格子骨格
22 格子切頂面
23 格子側面
3 連通気孔
4 ベースプレート
Claims (7)
- 一体成型されたアルミニウム構造体であって、
本体と、
多数の3次元網目状格子によって区画され、3次元状に連通する連通気孔を備え、
前記3次元網目状格子は、略切頂八面体形状で、骨格の直径が0.3mm~4mmであり、
前記本体内部に空間充填するように設けられていることを特徴とするアルミニウム構造体。 - 前記3次元網目状格子において、骨格の直径が0.3mm~0.5mmであることを特徴とする、請求項1に記載のアルミニウム構造体。
- 前記3次元網目状格子において、骨格の直径が0.5mm~0.7mmであることを特徴とする、請求項1に記載のアルミニウム構造体。
- 前記3次元網目状格子において、容積が球相当径で2mm~2.5mmであることを特徴とする、請求項1に記載のアルミニウム構造体。
- 前記3次元網目状格子において、骨格の直径が0.3mm~0.5mm、容積が球相当径で2mm~2.5mmあることを特徴とする、請求項1に記載のアルミニウム構造体。
- 前記3次元網目状格子において、骨格の直径が0.5mm~0.7mmで、
容積が球相当径で2mm~2.5mmあることを特徴とする、請求項1に記載のアルミニウム構造体。 - 前記3次元網目状格子において、骨格の直径が4mmで、
容積が球相当径で15mmあることを特徴とする、請求項1に記載のアルミニウム構造体。
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