JP2023170202A - モータ制御装置、ハイブリッドシステム、機電一体ユニット、電動車両システム - Google Patents

モータ制御装置、ハイブリッドシステム、機電一体ユニット、電動車両システム Download PDF

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Takafumi Hara
貴哉 塚越
Takaya Tsukagoshi
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英樹 宮崎
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Abstract

Figure 2023170202000001
【課題】モータが連れ回り駆動している場合とそうでない場合とのそれぞれにおいて、モータ駆動時に発生する電力損失を十分に低減する。
【解決手段】モータ制御装置1は、搬送波信号Trを生成する搬送波生成部17と、搬送波の周波数であるキャリア周波数fcを調整するキャリア周波数調整部16と、搬送波信号Trを用いて三相電圧指令Vu*、Vv*、Vw*をパルス幅変調し、インバータの動作を制御するためのPWMパルス信号を生成するPWM制御部18とを備える。キャリア周波数調整部16は、モータが連れ回り駆動しているときのキャリア周波数fcが、モータ2が連れ回り駆動していないときのキャリア周波数fcよりも高くなるように、キャリア周波数fcを調整する。
【選択図】図2

Description

本発明は、モータ制御装置、ハイブリッドシステム、機電一体ユニットおよび電動車両システムに関する。
従来、複数のスイッチング素子を用いて直流電力を交流電力に変換するインバータの動作を制御し、インバータから出力される交流電力を用いて交流モータを駆動させることにより、モータの制御を行うモータ制御装置が知られている。こうしたモータ制御装置は、例えば鉄道車両や電動自動車等の電動車両におけるモータの制御に広く利用されている。
電動車両に搭載されるモータには、回転子に永久磁石が取り付けられた永久磁石同期モータが広く採用されている。モータの負荷が小さい領域では、電動車両の走行に伴うモータ駆動軸の回転によってモータの回転子が回転駆動される、いわゆるモータの連れ回り駆動が生じる。モータが連れ回り駆動しているときには、モータの回転子が回転駆動されることで固定子に交番磁界が発生し、これによって無負荷鉄損(連れ回り損)が発生するという課題がある。
モータの鉄損の低減に関して、例えば特許文献1の技術が知られている。特許文献1には、モータの鉄損を減らすための電流波形を事前に電磁界解析によって計算し、計算された電流波形に従ってモータの通電制御を行うことにより、モータの鉄損を低減する交流電動機の制御装置が記載されている。
特開2008-72832号公報
モータ駆動時に発生する電力損失には、主にインバータのスイッチング損失とモータの鉄損とが含まれる。これらの損失は、インバータのスイッチング周波数やモータの負荷状態に応じてそれぞれ変動する。しかしながら、特許文献1に記載の制御装置では、この点について考慮されていない。そのため、モータが連れ回り駆動している場合とそうでない場合とのそれぞれにおいて、モータ駆動時に発生する電力損失を十分に低減することができない。
本発明の一態様によるモータ制御装置は、直流電力を交流電力に変換してモータへ出力するインバータと接続され、トルク指令に応じて前記インバータの動作を制御することで前記インバータを用いて前記モータの駆動を制御するものであって、搬送波を生成する搬送波生成部と、前記搬送波の周波数であるキャリア周波数を調整するキャリア周波数調整部と、前記搬送波を用いて電圧指令をパルス幅変調し、前記インバータの動作を制御するためのPWMパルス信号を生成するPWM制御部と、を備え、前記キャリア周波数調整部は、前記モータが連れ回り駆動しているときの前記キャリア周波数が、前記モータが連れ回り駆動していないときの前記キャリア周波数よりも高くなるように、前記キャリア周波数を調整する。
本発明の他の一態様によるモータ制御装置は、直流電力を交流電力に変換してモータへ出力するインバータと接続され、トルク指令に応じて前記インバータの動作を制御することで前記インバータを用いて前記モータの駆動を制御するものであって、前記トルク指令の絶対値が所定の閾値以下である場合に、前記モータの固定子と回転子の間におけるギャップ磁束密度の高調波脈動が抑制されるように、前記インバータの動作を制御するためのPWMパルス信号を生成する。
本発明によるハイブリッドシステムは、モータ制御装置と、前記モータ制御装置に接続された前記インバータと、前記インバータにより駆動される前記モータと、前記モータに接続されたエンジンシステムと、を備える。
本発明による機電一体ユニットは、モータ制御装置と、前記モータ制御装置に接続された前記インバータと、前記インバータにより駆動される前記モータと、前記モータの回転駆動力を伝達するギアと、を備え、前記モータ、前記インバータおよび前記ギアが一体構造となったものである。
本発明による電動車両システムは、モータ制御装置と、前記モータ制御装置に接続された前記インバータと、前記インバータにより駆動される前記モータと、を備え、前記モータの回転駆動力を用いて走行するものである。
本発明によれば、モータが連れ回り駆動している場合とそうでない場合とのそれぞれにおいて、モータ駆動時に発生する電力損失を十分に低減することができる。
本発明の一実施形態に係るモータ制御装置を備えたモータ駆動システムの全体構成図。 本発明の第1の実施形態に係るモータ制御装置の機能構成を示すブロック図。 モータ損失、インバータ損失およびこれらの損失を合わせたシステム損失の関係性の概要を示す図。 電流波形のシミュレーション結果の一例を示す図。 システム損失におけるモータ損失とインバータ損失の割合を示す図。 車両走行時のモータ回転数とモータトルクの関係の一例を示す図。 キャリア周波数を変更したときのシステム損失の例を示す図。 本発明の第1の実施形態におけるキャリア周波数調整部の処理を示すフローチャート。 本発明の第1の実施形態におけるキャリア周波数調整の例を示す図。 従来のモータ制御と本発明を適用した場合のモータ制御におけるシステム損失の計算結果の一例を示す図。 従来のモータ制御における搬送波信号とマイコン内で実施される電流制御および電流指令出力との関係を示す図。 本実施形態のモータ制御装置における搬送波信号とマイコン内で実施される電流制御および電流指令出力との関係を示す図。 本発明の第2の実施形態に係るモータ制御装置の機能構成を示すブロック図。 本発明の第2の実施形態に係る指令補正部のブロック図。 d軸電流をモータに印可したときの時間次数ごとの鉄損の一例を示す図。 本発明の第2の実施形態における指令補正部、切替部およびキャリア周波数調整部の処理を示すフローチャート。 本発明の第3の実施形態におけるハイブリッドシステムの構成図。 本発明の第4の実施の形態における機電一体ユニットの外観斜視図。 本発明の第5の実施形態に係るハイブリッド自動車システムの構成図。
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態について図面を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るモータ制御装置を備えたモータ駆動システムの全体構成図である。図1において、モータ駆動システム100は、モータ制御装置1、永久磁石同期モータ(以下、単に「モータ」と称する)2、インバータ3、回転位置検出器4、高圧バッテリ5を備える。
モータ制御装置1は、車両からモータ2に対して要求される目標トルクに応じたトルク指令T*に基づいて、インバータ3の動作を制御し、これによってモータ2の駆動を制御するためのPWMパルス信号を生成する。そして、生成したPWMパルス信号をインバータ3に出力する。なお、モータ制御装置1の詳細については後で説明する。
インバータ3は、インバータ回路31、ゲート駆動回路32および平滑キャパシタ33を有する。ゲート駆動回路32は、モータ制御装置1から入力されるPWMパルス信号に基づいて、インバータ回路31が有する各スイッチング素子を制御するためのゲート駆動信号を生成し、インバータ回路31に出力する。インバータ回路31は、U相、V相、W相の上アームおよび下アームにそれぞれ対応するスイッチング素子を有している。ゲート駆動回路32から入力されたゲート駆動信号に従ってこれらのスイッチング素子がそれぞれ制御されることで、高圧バッテリ5から供給される直流電力が交流電力に変換され、モータ2に出力される。平滑キャパシタ33は、高圧バッテリ5からインバータ回路31に供給される直流電力を平滑化する。
モータ2は、インバータ3から供給される交流電力により回転駆動される同期モータであり、固定子および回転子を有する。インバータ3から入力された交流電力が固定子に設けられた電機子コイルLu、Lv、Lwに印加されると、モータ2において三相交流電流Iu、Iv、Iwが導通し、各電機子コイルに電機子磁束が発生する。この各電機子コイルの電機子磁束と、回転子に配置された永久磁石の磁石磁束との間で吸引力・反発力が発生することで、回転子にトルクが発生し、回転子が回転駆動される。
モータ2には、回転子の回転位置θを検出するための回転位置センサ8が取り付けられている。回転位置検出器4は、回転位置センサ8の入力信号から回転位置θを演算する。回転位置検出器4による回転位置θの演算結果はモータ制御装置1に入力され、モータ制御装置1がモータ2の誘起電圧の位相に合わせてPWMパルス信号を生成することで行われる交流電力の位相制御において利用される。
ここで、回転位置センサ8には、鉄心と巻線とから構成されるレゾルバがより好適であるが、GMRセンサなどの磁気抵抗素子や、ホール素子を用いたセンサであっても問題ない。また、回転位置検出器4は、回転位置センサ8からの入力信号を用いず、モータ2に流れる三相交流電流Iu、Iv、Iwや、インバータ3からモータ2に印加される三相交流電圧Vu、Vv、Vwを用いて回転位置θを推定してもよい。
インバータ3とモータ2の間には、電流検出部7が配置されている。電流検出部7は、モータ2を通電する三相交流電流Iu、Iv、Iw(U相交流電流Iu、V相交流電流IvおよびW相交流電流Iw)を検出する。電流検出部7は、例えばホール電流センサ等を用いて構成される。電流検出部7による三相交流電流Iu、Iv、Iwの検出結果はモータ制御装置1に入力され、モータ制御装置1が行うPWMパルス信号の生成に利用される。なお、図2では電流検出部7が3つの電流検出器により構成される例を示しているが、電流検出器を2つとし、残る1相の交流電流は、三相交流電流Iu、Iv、Iwの和が零であることから算出してもよい。また、高圧バッテリ5からインバータ3に流入するパルス状の直流電流を、平滑キャパシタ33とインバータ3の間に挿入されたシャント抵抗等により検出し、この直流電流とインバータ3からモータ2に印加される三相交流電圧Vu、Vv、Vwに基づいて三相交流電流Iu、Iv、Iwを求めてもよい。
次に、モータ制御装置1の詳細について説明する。図2は、本発明の第1の実施形態に係るモータ制御装置1の機能構成を示すブロック図である。図2において、モータ制御装置1は、電流指令生成部11、速度算出部12、電流変換部13、電流制御部14、三相電圧変換部15、キャリア周波数調整部16、搬送波生成部17、PWM制御部18の各機能ブロックを有する。モータ制御装置1は、例えばマイクロコンピュータにより構成され、マイクロコンピュータにおいて所定のプログラムを実行することにより、これらの機能ブロックを実現することができる。あるいは、これらの機能ブロックの一部または全部をロジックICやFPGA等のハードウェア回路を用いて実現してもよい。
電流指令生成部11は、入力されたトルク指令T*と高圧バッテリ5の電圧Hvdcに基づき、d軸電流指令Id*およびq軸電流指令Iq*を演算する。ここでは、例えば予め設定された電流指令マップや数式等を用いて、トルク指令T*に応じたd軸電流指令Id*、q軸電流指令Iq*を求める。
速度算出部12は、回転位置θの時間変化から、モータ2の回転速度(回転数)を表すモータ回転速度ωrを演算する。なお、モータ回転速度ωrは、角速度(rad/s)または回転数(rpm)のいずれで表される値であってもよい。また、これらの値を相互に変換して用いてもよい。
電流変換部13は、電流検出部7が検出した三相交流電流Iu、Iv、Iwに対して、回転位置検出器4が求めた回転位置θに基づくdq変換を行い、d軸電流値Idおよびq軸電流値Iqを演算する。
電流制御部14は、電流指令生成部11から出力されるd軸電流指令Id*およびq軸電流指令Iq*と、電流変換部13から出力されるd軸電流値Idおよびq軸電流値Iqとの偏差に基づき、これらの値がそれぞれ一致するように、トルク指令T*に応じたd軸電圧指令Vd*およびq軸電圧指令Vq*を演算する。ここでは、例えばPI制御等の制御方式により、d軸電流指令Id*とd軸電流値Idの偏差に応じたd軸電圧指令Vd*と、q軸電流指令Iq*とq軸電流値Iqの偏差に応じたq軸電圧指令Vq*とを、所定の演算周期Tvごとに求める。
三相電圧変換部15は、電流制御部14により演算されたd軸電圧指令Vd*およびq軸電圧指令Vq*に対して、回転位置検出器4が求めた回転位置θに基づく三相変換を行い、三相電圧指令Vu*、Vv*、Vw*(U相電圧指令値Vu*、V相電圧指令値Vv*およびW相電圧指令値Vw*)を演算する。これにより、トルク指令T*に応じた三相電圧指令Vu*、Vv*、Vw*を生成する。
キャリア周波数調整部16は、速度算出部12が求めた回転速度ωrに基づき、PWMパルス信号の生成に用いられる搬送波の周波数であるキャリア周波数fcを調整する。このときキャリア周波数調整部16は、トルク指令T*、または電流指令生成部11が生成したに基づき、モータ2が連れ回り駆動しているか否かを判断する。その結果、連れ回り駆動していると判断した場合には、連れ回り駆動していない場合よりもキャリア周波数fcが高くなるように、キャリア周波数fcを調整する。これにより、モータ2が連れ回り駆動している場合とそうでない場合とのそれぞれにおいて、モータ2の駆動時に発生する電力損失を低減するようにしている。なお、キャリア周波数調整部16の詳細については後述する。
搬送波生成部17は、キャリア周波数調整部16が演算したキャリア周波数fcに基づき、搬送波信号(三角波信号)Trを生成する。
PWM制御部18は、搬送波生成部17から出力される搬送波信号Trを用いて、三相電圧変換部15から出力される三相電圧指令Vu*、Vv*、Vw*をそれぞれパルス幅変調し、インバータ3の動作を制御するためのPWMパルス信号を生成する。具体的には、三相電圧変換部15から出力される三相電圧指令Vu*、Vv*、Vw*と、搬送波生成部17から出力される搬送波信号Trとの比較結果に基づき、U相、V相、W相の各相に対してパルス状の電圧を生成する。そして、生成したパルス状の電圧に基づき、インバータ3の各相のスイッチング素子に対するPWMパルス信号を生成する。このとき、各相の上アームのPWMパルス信号Gup、Gvp、Gwpをそれぞれ論理反転させ、下アームのPWMパルス信号Gun、Gvn、Gwnを生成する。PWM制御部18が生成したPWMパルス信号は、モータ制御装置1からインバータ3のゲート駆動回路32に出力され、ゲート駆動回路32によってゲート駆動信号に変換される。これにより、インバータ回路31の各スイッチング素子がオン/オフ制御され、インバータ3の出力電圧が調整される。
次に、モータ制御装置1におけるキャリア周波数調整部16の動作について説明する。キャリア周波数調整部16は前述のように、トルク指令T*、または電流指令生成部11が生成したd軸電流指令Id*およびq軸電流指令Iq*に基づき、モータ2が連れ回り駆動しているか否かを判断する。その結果、連れ回り駆動していると判断した場合には、連れ回り駆動していない場合よりもキャリア周波数fcが高くなるように、キャリア周波数fcを調整する。このキャリア周波数fcに従って搬送波生成部17が生成する搬送波信号Trの周波数を逐次的に制御することで、モータ2が連れ回り駆動している場合とそうでない場合とのそれぞれにおいて、モータ2の駆動時に発生する電力損失を低減するように、PWM制御部18においてPWMパルス信号が生成されるようにする。
モータ駆動システム100を構成するモータ2とインバータ3の損失について、以下に説明する。モータ2において発生するモータ損失には、大きく分けて銅損と鉄損の2つがある。銅損とは、固定子に接続されたコイル銅線に電流が流れることで発生する損失であり、電流振幅の2乗に比例して大きくなる。この銅損は、モータ制御装置1からインバータ3へ出力されるPWMパルス信号の刻み幅の影響を受けない。一方、鉄損とは、固定子と回転子に流れる磁束の変動によって発生する損失である。PWMパルス信号の刻みが細かければ細かいほど、固定子のコイル銅線から発生する磁束の変動が抑制されるため、鉄損が減少することが広く知られている。
また、インバータ3において発生するインバータ損失には、大きく分けて導通損失とスイッチング損失の2つがある。導通損失とは、各スイッチング素子の導通時に発生する損失であり、インバータ3を流れる電流に応じて増大する。一方、スイッチング損失とは、各スイッチング素子のオン/オフ動作によって発生する損失である。PWMパルス信号の刻みが細かければ細かいほど、スイッチング素子のオン/オフ回数が増加するため、スイッチング損失が増大することが広く知られている。
図3は、モータ駆動システム100におけるモータ損失、インバータ損失およびこれらの損失を合わせたシステム損失の関係性の概要を示す図である。図3では、縦軸に各損失の大きさを表し、横軸にPWMパルス信号の刻み幅を定めるスイッチング周波数、すなわちキャリア周波数fcを表している。図3から、スイッチング周波数を高くするほど、モータ損失が低下する一方でインバータ損失が増大し、これらの損失がトレードオフ関係にあることが分かる。そのため、従来のモータ制御手法では、システム損失が最小となる極小点(システム最高効率点)を目指して、キャリア周波数fcの調整を行うことが一般的であった。
しかしながら、本発明の発明者らは、モータのトルクや回転数によっては、必ずしも上記のようなトレードオフ関係が成り立つわけではないことを見出した。この点について、以下に詳しく説明する。
図4は、キャリア周波数fcを8kHzとしたときのPWMパルス信号を用いて、8極機の永久磁石同期モータを8,000r/minで駆動させたときの電流波形のシミュレーション結果の一例を示す図である。図6(a)は、シミュレーションにより求められたU相電流波形の例を示し、図6(b)は、図6(a)の電流波形の周波数成分をFFT(Fast Fourier Transformation)により解析した結果を示す図である。これらの図から、電流指令に応じた基本波の振幅が数A程度とあまり大きくなくても、キャリア周波数fc近傍の周波数成分の電流歪み(時間高調波に起因した電流歪み)が基本波と同程度の振幅で発生しており、これによって電流波形の変動が大きくなっていることが分かる。
図5は、図4のモータ駆動条件でのシステム損失におけるモータ損失とインバータ損失の割合を示す図である。図5では、図4(a)に例示した電流波形で発生するモータ損失およびインバータ損失と、これらを合計したシステム損失とを、電磁界解析によりそれぞれ計算した例を示している。図5より、モータに流れる電流が数A程度とあまり大きくない領域では、システム損失においてモータ損失が99.88%と大多数を占める一方で、インバータ損失は0.12%と極小であることが分かる。さらに、モータ損失の内訳を詳しく分析すると、高調波に由来する各種モータ損失(高調波鉄損、磁石損、AC銅損)が、モータ損失全体のうち18%を占めることも分かった。さらに、この高調波由来のモータ損失(高調波鉄損、磁石損、AC銅損)は、上記の時間高調波に起因した電流歪みによって発生していることも分かった。
続いて、車両走行時のモータ動作例について以下に説明する。図6は、車両走行時のモータ回転数とモータトルクの関係の一例を示す図である。図6では、モータ駆動システム100を搭載した車両をWLTC(Worldwide harmonized Light vehicle Test Cycles)モードで走行させたときのモータ回転数とモータトルクの関係を、横軸をモータ回転数(r/min)、縦軸をモータトルク(Nm)としたNT特性図上に示している。図6より、WLTC走行モードにおけるモータトルクの動作点は、トルク値0を中心とした一定範囲内、すなわちモータ負荷が一定以下の領域に多く存在することが確認できる。特に、トルク値0付近の領域ではモータ2が連れ回り駆動しており、この連れ回り駆動の領域内にも多くのトルク動作点が存在していることが分かる。
なお、一般的にはモータトルクが大きくなるほど変調率も増大するため、図6より、WLTC走行モードにおけるモータトルクの動作点は、変調率が一定範囲内の領域に多く存在するとも言える。変調率とは直流電圧と交流電圧の比を表すパラメータであり、電圧利用率とも呼ばれる。変調率は、d軸電圧Vd、q軸電圧Vqおよび高圧バッテリ5の電圧Hvdcに基づいて、以下の式(1)により算出される。
H=√(Vd+Vq)/Hvdc ・・・(1)
以上説明したように、WLTC走行モードでは、モータトルクの絶対値が一定値以下(変調率1.25以下)の領域が過半であり、その中にはモータ2が連れ回り駆動している領域も多く含まれている。なお、モータ2の回転速度が一定値以上のときには、回転子の磁石の誘起電圧によって高圧バッテリ5からインバータ3に印加される電圧Hvdcが飽和しないように、弱め界磁電流をモータ2に通電する必要がある。しかしながら、図6から分かるように、WLTC走行モードではモータトルクが全体的に小さく、そのため弱め界磁電流の通電は車両走行中の多くの時間帯で行われていない。
そこで本実施形態では、モータ2が連れ回り駆動している場合には、インバータ損失が増加しない範囲で、キャリア周波数fcの向上による時間高調波の改善を実施することとした。上記のように、車両走行中には変調率が1.25を超過しないことが多いため、モータ2の連れ回り駆動時にキャリア周波数fcを向上させることで、システム損失の低減に対してより大きな効果が得られる。
なお、本実施形態のモータ制御装置1では、モータ2が最高回転数のときに固定子の各電機子コイルに誘起される誘起電圧が、インバータ3のスイッチング素子の耐圧を超過しないように、モータ2の各部品特性を選定している。すなわち、本実施形態のモータ制御装置1は、モータ2の回転により発生する誘起電圧がインバータ3のスイッチング素子の耐圧未満となるように、モータ2の駆動を制御する。
図7は、キャリア周波数fcを変更したときのシステム損失(モータ損失とインバータ損失の和)の例を示す図である。図7では、図4と同様のモータ駆動条件においてキャリア周波数fcを変化させた場合のスイッチング周波数とシステム損失の関係を例示している。図7において、グラフ41はIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)をスイッチング素子に用いた場合のスイッチング周波数とシステム損失の例を表し、グラフ42はSiC(シリコンカーバイド)半導体をスイッチング素子に用いた場合のスイッチング周波数とシステム損失の例を表している。
なお、モータ2の連れ回り駆動時には、図5で説明したようにインバータ損失が極小であるため、図3に示したようなシステム最高効率となる極小点が存在しない。そのため、図7のグラフ41,42に示すように、システム損失はスイッチング周波数の増加に対して単調減少となる。このように、本発明の発明者らは、モータ負荷が比較的小さい場合のシステム損失は、キャリア周波数fcに対して単調減少となることを発見した。つまり、モータ2が連れ回り駆動しているときには、モータ制御装置1を実現するマイコンの処理負荷の制約や、インバータ3のゲート駆動回路32に電源を供給する不図示のゲート電源の容量の制約に応じた範囲内で、できるだけキャリア周波数fcを向上することにより、モータ高調波損を最大限に低減できる。
なお、グラフ41,42に示すような単調減少の曲線と、システム最高効率となる極小点を持つ曲線との分岐点は、モータトルクや電流によって決定される。そのため、事前に電磁界解析によるシミュレーションや実機検証を行うことにより、キャリア周波数fcの制御を切り替えるトルク条件や電流条件を決定する必要がある。こうして決定したトルク条件や電流条件を閾値として、キャリア周波数fcを向上させるか否かを閾値の前後で切り替えることにより、モータ2が連れ回り駆動している場合とそうでない場合とのそれぞれにおいて、モータ駆動時に発生する電力損失を十分に低減することが可能となる。
図8は、本発明の第1の実施形態におけるキャリア周波数調整部16の処理を示すフローチャートである。図8のフローチャートに示す処理は、キャリア周波数調整部16において、例えば所定の処理周期ごとに実施される。
ステップS101では、トルク指令T*、または電流指令生成部11が生成したd軸電流指令Id*およびq軸電流指令Iq*の値を取得する。なお、これらの両方を取得してもよいし、一方のみを取得してもよい。
ステップS102では、ステップS101で取得したトルク指令T*または電流指令(d軸電流指令Id*およびq軸電流指令Iq*)の絶対値を所定の閾値と比較し、トルク指令T*または電流指令の絶対値が閾値以下であるか否かを判定する。このとき、ステップS101でトルク指令T*を取得した場合は、そのトルク指令T*の絶対値をトルク指令に対する閾値と比較し、電流指令を取得した場合は、その電流指令の絶対値を電流指令に対する閾値と比較すればよい。なお、ステップS102の判定で用いられる閾値は、前述のように、事前に行われた電磁界解析によるシミュレーションもしくは実験の結果に基づいて決定されたものが、モータ制御装置1において記憶されている。
ステップS102の処理において、トルク指令T*または電流指令の絶対値が閾値以下である場合は、モータ2が連れ回り駆動していると判定してステップS110へ進む。一方、トルク指令T*または電流指令の絶対値が閾値より大きい場合は、モータ2が連れ回り駆動していないと判定し、図8のフローチャートに示す処理を終了する。この場合、キャリア周波数調整部16は、通常の同期PWM制御と同様に、回転速度ωrに基づいてキャリア周波数fcを調整する。
ステップS110では、通常の同期PWM制御におけるキャリア周波数fcに対して、所定の制約範囲内でキャリア周波数fcを上昇させる。これにより、モータ2が連れ回り駆動しているときのキャリア周波数fcが、モータ2が連れ回り駆動していないときのキャリア周波数fcよりも高くなるように、キャリア周波数fcを調整する。その結果、トルク指令T*または電流指令の絶対値が所定の閾値以下である場合は、PWM制御部18により、モータ2の固定子と回転子の間におけるギャップ磁束密度の高調波脈動が抑制されるように、インバータ3の動作を制御するためのPWMパルス信号を生成することができる。なお、キャリア周波数fcの制約範囲は、前述のように、例えばモータ制御装置1を実現するマイコンの処理負荷や、インバータ3のゲート駆動回路32に電源を供給するゲート電源の容量などに基づいて決定されたものが、モータ制御装置1において記憶されている。
ステップS110でキャリア周波数fcの調整を実施したら、図8のフローチャートに示す処理を終了する。
図9は、本発明の第1の実施形態におけるキャリア周波数調整の例を示す図である。図9(a)は、トルク指令T*または電流指令の時間変化の様子の一例を示す図であり、横軸に時間を、縦軸にトルク指令T*または電流指令の絶対値を示している。図9(b)は、図9(a)に対する調整後のキャリア周波数fcの時間変化の様子の一例を示す図であり、横軸に時間を、縦軸にキャリア周波数fcを示している。
図9(a)に示すように、時刻t1まではモータ2が通常駆動しており、このときのトルク指令T*または電流指令の絶対値は比較的大きい。一方、時刻t1以降ではモータ2が連れ回り駆動しており、このときのトルク指令T*または電流指令の絶対値は通常駆動時よりも小さく、所定の閾値未満となっている。その結果、図9(b)に示すように、時刻t1以降の連れ回り駆動時には、時刻t1までの通常駆動時と比べて所定の制約範囲内でキャリア周波数fcが高くなるように、キャリア周波数fcが変化する。
なお、時刻t1においてキャリア周波数fcを一度に上昇させると、これに応じてモータ2の制御量も急峻に変化するため、モータ2の駆動状態が急激に変わって振動や騒音の原因となることがある。これを避けるため、通常駆動から連れ回り駆動への変化に応じてキャリア周波数fcを変更するときには、単位時間あたりのキャリア周波数fcの変化レートが所定値以下となるように、キャリア周波数fcの変化幅に上限を設けてもよい。
本実施形態のモータ制御装置1は、以上説明したような動作を行うことにより、モータ2が連れ回り駆動している場合とそうでない場合とのそれぞれにおいて、インバータ3のスイッチング周波数の増加によるインバータ損失の増加を抑制しつつ、モータ2における高調波由来のモータ損失(高調波鉄損、磁石損、AC銅損)を抑制することができる。その結果、システム損失を低減することが可能となる。
図10は、本発明を適用しない従来のモータ制御と、本発明を適用した場合のモータ制御とについて、それぞれの場合におけるシステム損失の計算結果の一例を示す図である。なお、図10の例では、車両の走行パターンがWLTCモードであるときのシステム損失の計算結果を示している。
図10から、本発明を適用した場合のモータ制御では、従来のモータ制御と比べて、システム損失を2.7%削減できることが分かる。
続いて、本実施形態におけるマイコン処理負荷の低減方法について以下に説明する。
本実施形態のモータ制御装置1において、連れ回り駆動時のシステム損失を最小化するためには、前述のように、マイコンの処理負荷やゲート電源の容量に応じた制約範囲内で、キャリア周波数fcをできるだけ高くしてスイッチング周波数を向上させる必要がある。そのためには、マイコンの処理負荷をできるだけ低減することが望ましい。以下では、図11および12を参照し、本実施形態のモータ制御装置1におけるマイコン処理負荷の軽減手法の一例を述べる。
図11は、従来のモータ制御における搬送波信号Trと、モータ制御装置1であるマイコン内で実施される電流制御および電流指令出力との関係を示す図である。従来のモータ制御では、例えば搬送波信号Trの山部分(上昇から下降に転じる点)と谷部分(下降から上昇に転じる点)でそれぞれマイコンの電流制御を開始し、算出されたデューティの電圧指令(d軸電圧指令Vd*およびq軸電圧指令Vq*)を、次の電流制御期間に対応する搬送波信号Trの山部分または谷部分の期間で出力する。これにより、刻みが細かく時間高調波が少ないPWMパルス信号を生成することができる。
しかしながら、図11のような従来のモータ制御方法では、例えばキャリア周波数fcが20kHzである場合、電流制御の開始タイミングの間隔は25μsとなる。そのため、マイコンにおける電流制御の処理負荷が相対的に大きく、他の処理に充てられる時間が減ってしまうという問題がある。
図12は、本実施形態のモータ制御装置1における搬送波信号Trと、モータ制御装置1であるマイコン内で実施される電流制御および電流指令出力との関係を示す図である。本実施形態のモータ制御装置1では、例えば図12に示すように、搬送波信号Trの山部分と谷部分の3回あたりに1回の割合で、マイコンの電流制御を開始する。そして、算出されたデューティの電圧指令(d軸電圧指令Vd*およびq軸電圧指令Vq*)を、次の電流制御期間に対応する搬送波信号Trの期間、すなわち連続する3つの山部分および谷部分の期間において、繰り返し出力する。これにより、電流制御の周期と搬送波信号Trの周期とを分離して、マイコンにおける電流制御の処理負荷を低減しつつ、刻みが細かく時間高調波が少ないPWMパルス信号を生成することを可能としている。
なお図12では、搬送波信号Trの山部分と谷部分の3回あたりに1回の割合でマイコンの電流制御を行う例を示したが、他の割合としてもよい。少なくとも、搬送波信号Trの周期の半分、すなわち山部分と谷部分の間隔よりも、電流制御部14が行う電圧指令の演算周期が長ければ、上記のような効果を奏することができる。すなわち、キャリア周波数調整部16は、搬送波信号Trの周期の半分よりも電流制御部14が行う電圧指令の演算周期が長くなるように、モータ2が連れ回り駆動しているときのキャリア周波数fcを調整することで、電流制御の処理負荷を低減し、さらなるスイッチング周波数の向上を図ることができる。なお、マイコンの処理能力に余裕がある場合は、必ずしも図12のようなモータ制御方法を採用する必要はなく、図11のような従来のモータ制御方法であっても構わない。
以上説明した本発明の第1の実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
(1)モータ制御装置1は、直流電力を交流電力に変換してモータ2へ出力するインバータ3と接続され、トルク指令T*に応じてインバータ3の動作を制御することでインバータ3を用いてモータ2の駆動を制御する。モータ制御装置1は、搬送波信号Trを生成する搬送波生成部17と、搬送波の周波数であるキャリア周波数fcを調整するキャリア周波数調整部16と、搬送波信号Trを用いて三相電圧指令Vu*、Vv*、Vw*をパルス幅変調し、インバータ3の動作を制御するためのPWMパルス信号を生成するPWM制御部18とを備える。キャリア周波数調整部16は、モータ2が連れ回り駆動しているときのキャリア周波数fcが、モータ2が連れ回り駆動していないときのキャリア周波数fcよりも高くなるように、キャリア周波数fcを調整する(ステップS110)。このようにしたので、モータ2が連れ回り駆動している場合とそうでない場合とのそれぞれにおいて、モータ駆動時に発生する電力損失を十分に低減することができる。
(2)キャリア周波数調整部16は、トルク指令T*の絶対値を所定の閾値と比較し(ステップS102)、トルク指令T*の絶対値が閾値以下である場合に(ステップS102:Yes)、モータ2が連れ回り駆動していると判定する。このようにしたので、モータ2が連れ回り駆動しているか否かを容易に判定することができる。
(3)上記閾値は、事前に行われた電磁界解析シミュレーションもしくは実験の結果に基づいて決定される。このようにしたので、適切な閾値を設定することができる。
(4)モータ2が連れ回り駆動しているときのキャリア周波数fcは、モータ制御装置1の処理負荷と、インバータ3が有するゲート駆動回路32に電源を供給するゲート電源の容量と、の少なくとも一方に基づいて決定される。このようにしたので、モータ2が連れ回り駆動しているときのキャリア周波数fcを可能な範囲内で上昇することができる。
(5)モータ制御装置1は、モータ2の回転により発生する誘起電圧がインバータ3のスイッチング素子の耐圧未満となるように、モータ2の駆動を制御する。このようにしたので、モータ2を高回転駆動させた場合であっても、誘起電圧によりインバータ3のスイッチング素子が破壊されてしまうのを防止できる。
(6)モータ制御装置1は、d軸電圧指令Vd*およびq軸電圧指令Vq*を所定の演算周期ごとに演算する電流制御部14を備える。キャリア周波数調整部16は、搬送波信号Trの周期の半分よりも電流制御部14による電圧指令の演算周期が長くなるように、モータ2が連れ回り駆動しているときのキャリア周波数fcを調整することができる。このようにすれば、マイコンを用いてモータ制御装置1を実現する際に、マイコンにおける電流制御の処理負荷を低減しつつ、刻みが細かく時間高調波が少ないPWMパルス信号を生成することができる。
(7)キャリア周波数調整部16は、キャリア周波数fcの変化レートが所定値以下となるように、キャリア周波数fcを調整してもよい。このようにすれば、モータ2の駆動状態が通常の駆動状態から連れ回り駆動に切り替えられた際に、振動や騒音が発生するのを防ぐことができる。
(8)モータ制御装置1は、直流電力を交流電力に変換してモータ2へ出力するインバータ3と接続され、トルク指令T*に応じてインバータ3の動作を制御することでインバータ3を用いてモータ2の駆動を制御する。モータ制御装置1は、トルク指令T*の絶対値が所定の閾値以下である場合に、モータ2の固定子と回転子の間におけるギャップ磁束密度の高調波脈動が抑制されるように、インバータ3の動作を制御するためのPWMパルス信号を生成する。このようにしたので、モータ2が連れ回り駆動している場合において、モータ駆動時に発生する電力損失を低減することができる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について図面を用いて説明する。前述の第1の実施形態では、モータ2の連れ回り駆動時にはインバータ損失が少ないことに着目して、キャリア周波数fcを上昇させることで時間高調波を削減し、これによって高調波由来のモータ損失(磁石損、AC銅損、鉄損)を削減することで、システム損失を低減するモータ制御方法を説明した。これに対して、第2の実施形態では、さらに弱め界磁制御時の鉄損の削減を実現するモータ制御方法について説明する。
図13は、本発明の第2の実施形態に係るモータ制御装置1Aの機能構成を示すブロック図である。図13において、モータ制御装置1Aは、指令補正部11Aおよび切替部11Bをさらに備えている以外の点では、第1の実施形態で説明したモータ制御装置1と同様の構成を有している。
指令補正部11Aは、電流指令生成部11が生成するd軸電流指令Id*およびq軸電流指令Iq*をそれぞれ補正するための補正d軸電流指令Ihd*および補正q軸電流指令Ihq*を演算する。このとき指令補正部11Aは、d軸電流指令Id*、q軸電流指令Iq*に所定の時間次数に応じた脈動をそれぞれ重畳するための電流指令を演算し、その演算結果を、補正d軸電流指令Ihd*および補正q軸電流指令Ihq*として出力する。なお、指令補正部11Aによる補正d軸電流指令Ihd*、補正q軸電流指令Ihq*の演算方法の詳細については後述する。
切替部11Bは、電流指令生成部11と指令補正部11Aとの接続状態を切り替える。切替部11Bにより電流指令生成部11と指令補正部11Aが接続されると、電流指令生成部11から出力されたd軸電流指令Id*、q軸電流指令Iq*に、指令補正部11Aから出力された補正d軸電流指令Ihd*、補正q軸電流指令Ihq*がそれぞれ重畳され、d軸電流指令Id*およびq軸電流指令Iq*が補正される。こうして補正された補正後のd軸電流指令Id*およびq軸電流指令Iq*は、電流制御部14に入力され、d軸電圧指令Vd*およびq軸電圧指令Vq*の演算に利用される。
本実施形態のモータ制御装置1Aは、モータ2が連れ回り駆動しており、かつモータ2の弱め界磁制御を実施しているときに、電流指令生成部11と指令補正部11Aを接続するように切替部11Bを切り替える。これにより、d軸電流指令Id*およびq軸電流指令Iq*の補正が行われるようにする。
次に、モータ制御装置1Aにおける指令補正部11Aの動作について説明する。指令補正部11Aは、前述のように、d軸電流指令Id*、q軸電流指令Iq*に所定の時間次数に応じた脈動をそれぞれ重畳するための補正d軸電流指令Ihd*、補正q軸電流指令Ihq*を求める。このとき指令補正部11Aは、モータ2において発生する振動や騒音を打ち消すように、モータ回転速度ωrやトルク指令T*に基づいて電流指令に重畳する脈動の振幅および位相を調整することで、補正d軸電流指令Ihd*、補正q軸電流指令Ihq*を演算する。
図14は、本発明の第2の実施形態に係る指令補正部11Aのブロック図である。指令補正部11Aは、重畳dq軸電流振幅演算部111、重畳dq軸電流位相演算部112、補正dq軸電流指令生成部113を有する。
重畳dq軸電流振幅演算部111は、トルク指令T*、高圧バッテリ5の電圧Hvdcおよびモータ回転速度ωrに基づき、d軸電流指令Id*、q軸電流指令Iq*にそれぞれ重畳する脈動の振幅を演算する。本実施形態では、重畳dq軸電流振幅演算部111は、例えば8極48スロットのモータ2を対象として、電気角周波数の6倍から24倍までの各時間次数、すなわち時間6次(回転24次)、時間12次(回転48次)、時間18次(回転72次)、時間24次(回転96次)の各次数について、d軸電流指令Id*、q軸電流指令Iq*に対してそれぞれ重畳する脈動の振幅を演算する。なお図14では、d軸電流指令Id*に対する脈動の振幅と、q軸電流指令Iq*に対する脈動の振幅とを併せて、次数ごとに示している。すなわち、図14に示した重畳dq軸電流振幅Idq6、Idq12、Idq18、Idq24は、d軸電流指令Id*およびq軸電流指令Iq*に対する6次、12次、18次、24次の各時間次数での脈動の振幅をそれぞれ表している。
重畳dq軸電流位相演算部112は、トルク指令T*、高圧バッテリ5の電圧Hvdc、モータ回転速度ωrおよび回転位置θに基づき、d軸電流指令Id*、q軸電流指令Iq*にそれぞれ重畳する脈動の位相を演算する。本実施形態では、重畳dq軸電流位相演算部112は、例えば8極48スロットのモータ2を対象として、電気角周波数の6倍から24倍までの各時間次数、すなわち時間6次(回転24次)、時間12次(回転48次)、時間18次(回転72次)、時間24次(回転96次)の各次数について、d軸電流指令Id*、q軸電流指令Iq*に対してそれぞれ重畳する脈動の位相を演算する。なお図14では、d軸電流指令Id*に対する脈動の位相と、q軸電流指令Iq*に対する脈動の位相とを併せて、次数ごとに示している。すなわち、図14に示した重畳dq軸電流位相θdq6、θdq12、θdq18、θdq24は、d軸電流指令Id*およびq軸電流指令Iq*に対する6次、12次、18次、24次の各時間次数での脈動の位相をそれぞれ表している。
補正dq軸電流指令生成部113は、重畳dq軸電流振幅演算部111が演算した各次数の脈動の振幅、すなわち重畳dq軸電流振幅Idq6、Idq12、Idq18、Idq24と、重畳dq軸電流位相演算部112が演算した各次数の脈動の位相、すなわち重畳dq軸電流位相θdq6、θdq12、θdq18、θdq24とに基づき、当該脈動に対応する重畳d軸電流指令Ihd*および重畳q軸電流指令Ihq*を生成する。
補正dq軸電流指令生成部113が生成した重畳d軸電流指令Ihd*および重畳q軸電流指令Ihq*は、切替部11Bを介して電流指令生成部11の出力側に入力され、電流指令生成部11が生成したd軸電流指令Id*、q軸電流指令Iq*からこれらの値がそれぞれ減算される。これにより、d軸電流指令Id*およびq軸電流指令Iq*に対して、モータ2の回転に応じた脈動としての重畳d軸電流指令Ihd*および重畳q軸電流指令Ihq*がそれぞれ重畳される。そして、得られた各演算結果が、補正後のd軸電流指令Id*、q軸電流指令Iq*として、電流制御部14へ入力される。
なお、重畳dq軸電流振幅演算部111における重畳dq軸電流振幅Idq6、Idq12、Idq18、Idq24の演算や、重畳dq軸電流位相演算部112における重畳dq軸電流位相θdq6、θdq12、θdq18、θdq24の演算は、例えば、予め記憶されたマップ情報に基づいて行うことができる。各マップ情報は、トルク指令T*、高圧バッテリ5の電圧Hvdcおよびモータ回転速度ωrの様々な組み合わせに対して、弱め界磁制御時のモータ2に発生する鉄損を効果的に低減可能な脈動の振幅や位相ずれを、予めシミュレーションや実測により次数毎に求めることで、事前に作成しておくことが可能である。
続いて、本実施形態における弱め界磁制御時の鉄損の削減について説明する。第1の実施形態では、図6に例示したように、車両走行中には変調率が1.25を超過しないことが多いモータ2を対象として、連れ回り駆動時のシステム損失を削減する方法を説明した。しかしながら、近年では誘起電圧を向上させ、電流あたりのモータ損失を減らした構造のモータが増えている。そのようなモータを図1のモータ駆動システム100においてモータ2として使用する場合、第1の実施形態で説明したモータ制御方法だけでは、システム損失の削減に十分な効果が得られない可能性がある。その理由を、以下に図15を参照して説明する。
図15は、d軸電流Idをモータ2に印可したときの時間次数ごとの鉄損の一例を示している。時間次数とd軸電流Idの関係に着目すると、d軸電流Idを0Aとした場合は、時間1次の鉄損が多く発生することが分かる。また、d軸電流Idを0Aから徐々に増加させると、時間5次成分の鉄損が増加する一方、d軸電流Idの通電による弱め界磁効果によって時間1次の鉄損は減少することが分かる。
上記のように、モータ2では時間5次成分の鉄損が弱め界磁によって大きく変わることから、この時間成分(dq軸に換算すると時間6次成分)の脈動電流指令により、弱め界磁制御時の鉄損を抑制することができる。つまり、事前の電磁界解析によってdq軸脈動電流の6次成分の振幅と位相を予め計算しておき、その電流指令に追従するように電流制御を行うことで、弱め界磁によって増大した鉄損を低減させることが可能となる。
本実施形態では、図13、14で説明した指令補正部11Aおよび切替部11Bにより、上記のような電流制御を実現している。すなわち、モータ2が弱め界磁制御されているときには、切替部11Bにより電流指令生成部11と指令補正部11Aを接続し、指令補正部11Aが生成した重畳d軸電流指令Ihd*および重畳q軸電流指令Ihq*を用いて、モータ2の回転に応じた脈動をd軸電流指令Id*およびq軸電流指令Iq*にそれぞれ重畳する。そして、補正後のd軸電流指令Id*、q軸電流指令Iq*を電流制御部14に入力して電流制御を行うことにより、弱め界磁によって増大した鉄損を低減可能なPWMパルス信号がPWM制御部18において生成されるようにしている。
図16は、本発明の第2の実施形態における指令補正部11A、切替部11Bおよびキャリア周波数調整部16の処理を示すフローチャートである。図16のフローチャートに示す処理は、指令補正部11A、切替部11Bおよびキャリア周波数調整部16において、例えば所定の処理周期ごとに実施される。
ステップS101、S102では、第1の実施形態で説明した図8のフローチャートと同様の処理をそれぞれ実施する。ステップS102の処理において、トルク指令T*または電流指令の絶対値が閾値以下である場合は、モータ2が連れ回り駆動していると判定してステップS103へ進む。一方、トルク指令T*または電流指令の絶対値が閾値より大きい場合は、モータ2が連れ回り駆動していないと判定し、図16のフローチャートに示す処理を終了する。この場合、キャリア周波数調整部16は、通常の同期PWM制御と同様に、回転速度ωrに基づいてキャリア周波数fcを調整する。
ステップS103では、モータ2に対して弱め界磁制御を実施中であるか否かを判定する。PWM制御部18がモータ2の磁束を弱めるようにPWMパルス信号を生成する弱め界磁制御をモータ2に対して実施中である場合はステップS120へ進み、そうでない場合はステップS110へ進む。
ステップS103からステップS110へ進んだ場合は、図8のフローチャートと同様に、通常の同期PWM制御におけるキャリア周波数fcに対して、所定の制約範囲内でキャリア周波数fcを上昇させる。なお、この場合も第1の実施形態と同様に、キャリア周波数fcの制約範囲は、例えばモータ制御装置1Aを実現するマイコンの処理負荷や、インバータ3のゲート駆動回路32に電源を供給するゲート電源の容量などに基づいて決定されたものが、モータ制御装置1Aにおいて記憶されている。
ステップS110でキャリア周波数fcの調整を実施したら、図16のフローチャートに示す処理を終了する。
一方、ステップS103からステップS120へ進んだ場合、ステップS120では、切替部11Bを接続側に切り替えて、指令補正部11Aを電流指令生成部11の出力側に接続する。
ステップS121では、指令補正部11Aによる電流指令の補正を実施する。このとき指令補正部11Aは、前述のようにして重畳d軸電流指令Ihd*および重畳q軸電流指令Ihq*を生成し、これらを用いてd軸電流指令Id*およびq軸電流指令Iq*をそれぞれ補正することで、モータ2の回転に応じた脈動をd軸電流指令Id*、q軸電流指令Iq*に重畳する。
ステップS121で電流指令の補正を実施したら、図16のフローチャートに示す処理を終了する。
なお図13では、指令補正部11Aが生成する重畳d軸電流指令Ihd*および重畳q軸電流指令Ihq*により、電流指令生成部11が生成したd軸電流指令Id*およびq軸電流指令Iq*を補正する例を説明したが、d軸電流指令Id*とq軸電流指令Iq*を補正する代わりに、電流制御部14が生成したd軸電圧指令Vd*およびq軸電圧指令Vq*を補正するようにしてもよい。この場合、指令補正部11Aでは、重畳d軸電流指令Ihd*および重畳q軸電流指令Ihq*を生成する代わりに、d軸電圧指令Vd*、q軸電圧指令Vq*に所定の時間次数に応じた脈動をそれぞれ重畳するための電圧指令として、重畳d軸電圧指令Vhd*および重畳q軸電圧指令Vhq*を生成すればよい。なお、重畳d軸電圧指令Vhd*および重畳q軸電圧指令Vhq*の生成は、重畳d軸電流指令Ihd*および重畳q軸電流指令Ihq*の生成と同様に、例えば予め記憶されたマップ情報に基づいて行うことができる。
以上説明した本発明の第2の実施形態によれば、第1の実施形態で説明した各作用効果に加えて、さらに以下の作用効果を奏する。
(9)モータ制御装置1Aは、トルク指令T*に基づくd軸電流指令Id*およびq軸電流指令Iq*を生成する電流指令生成部11と、d軸電流指令Id*およびq軸電流指令Iq*に基づいてd軸電圧指令Vd*およびq軸電圧指令Vq*を演算する電流制御部14と、モータ2に流れる電流において特定次数の高調波成分が重畳されるように、d軸電流指令Id*およびq軸電流指令Iq*、または、d軸電圧指令Vd*およびq軸電圧指令Vq*を補正する指令補正部11Aとを備える。PWM制御部18は、モータ2の磁束を弱めるようにPWMパルス信号を生成する弱め界磁制御を実施可能である。指令補正部11Aは、モータ2が連れ回り駆動しており(ステップS102:Yes)、かつ、PWM制御部18が弱め界磁制御を実施しているとき(ステップS103:Yes)に、d軸電流指令Id*およびq軸電流指令Iq*、または、d軸電圧指令Vd*およびq軸電圧指令Vq*の補正を実施する(ステップS121)。キャリア周波数調整部16は、PWM制御部18が弱め界磁制御を実施していない場合において(ステップS103:No)、モータ2が連れ回り駆動しているときのキャリア周波数fcが、モータ2が連れ回り駆動していないときのキャリア周波数fcよりも高くなるように、キャリア周波数fcを調整する(ステップS110)。このようにしたので、モータ2が連れ回り駆動している場合とそうでない場合とのそれぞれにおいて、モータ駆動時に発生する電力損失を十分に低減するとともに、さらに弱め界磁制御時の鉄損の削減を実現することができる。
(10)上記の特定次数は、例えば6次、12次、18次、24次のように、電気角で6の倍数の次数である。このようにしたので、d軸電流Idをモータ2に印可したときの時間次数ごとの鉄損のうち、弱め界磁によって大きく変わる次数成分を、効果的に削減することが可能となる。
なお、以上説明した第1、第2の各実施形態では、外部から入力されるトルク指令T*に基づいて、モータ制御装置1,1Aがモータ2の駆動を制御する例を説明したが、トルク指令T*でなく、例えば車両の運転者が行うアクセルペダルの操作に応じたアクセル指令や、車両の自動運転制御を行う自動運転制御装置から出力されるトルク指令等に基づいて、モータ2の駆動を制御するようにしてもよい。
また、以上説明した第1、第2の各実施形態において、トルク指令T*の絶対値が所定の閾値以下であり、電流指令生成部11から出力されるd軸電流指令Id*およびq軸電流指令Iq*がほぼ0とみなせる場合には、モータ制御装置1,1Aからインバータ3へのPWMパルス信号の出力を停止してもよい。このようにすれば、モータ2において連れ回り駆動時に流れる電流がダイオードで整流されるため、さらなるシステム損失の低減を図ることができる。
あるいは、以上説明した第1、第2の各実施形態において、インバータ3とモータ2の間に遮断器を設け、トルク指令T*の絶対値が所定の閾値以下であり、電流指令生成部11から出力されるd軸電流指令Id*およびq軸電流指令Iq*がほぼ0とみなせる場合には、この遮断器をオフすることにより、インバータ3とモータ2の接続を遮断してもよい。このようにすれば、モータ2において連れ回り駆動時に電流が流れないようにして、システム損失を最小化することができる。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について図面を用いて説明する。
図17は、本発明の第3の実施形態におけるハイブリッドシステム72の構成図である。
図17に示すように、ハイブリッドシステム72は、第1、第2の実施形態で説明したモータ駆動システム100(モータ制御装置1または1A、モータ2、インバータ3、回転位置検出器4、高圧バッテリ5、電流検出部7)と、これと同様のモータ駆動システム101(モータ制御装置1または1A、モータ2a、インバータ3a、回転位置検出器4a、高圧バッテリ5、電流検出部7a)とを含んで構成される。モータ駆動システム100,101は、モータ制御装置1,1Aと高圧バッテリ5を共有している。
モータ2aには、回転子の回転位置θaを検出するための回転位置センサ8aが取り付けられている。回転位置検出器4aは、回転位置センサ8aの入力信号から回転位置θaを演算し、モータ制御装置1,1Aに出力する。インバータ3aとモータ2aの間には、電流検出部7aが配置されている。モータ2aの回転子において発生したトルクは、回転子に固定された回転軸からモータ駆動システム101の外部へと伝達される。
インバータ3aは、インバータ回路31a、ゲート駆動回路32aおよび平滑キャパシタ33aを有する。ゲート駆動回路32aは、インバータ3のゲート駆動回路32と共通のモータ制御装置1,1Aに接続されており、モータ制御装置1,1Aから入力されるPWMパルス信号に基づいて、インバータ回路31aが有する各スイッチング素子を制御するためのゲート駆動信号を生成し、インバータ回路31aに出力する。インバータ回路31aおよび平滑キャパシタ33aは、インバータ回路31および平滑キャパシタ33と共通の高圧バッテリ5に接続されている。
モータ制御装置1,1Aには、モータ2に対するトルク指令T*と、モータ2aに対するトルク指令Ta*とが入力される。モータ制御装置1,1Aは、これらのトルク指令に基づき、第1の実施形態または第2の実施形態で説明したような方法でモータ2,2aの駆動を制御するためのPWMパルス信号をそれぞれ生成し、インバータ3,3aにそれぞれ出力する。すなわち、モータ制御装置1,1Aが有するキャリア周波数調整部16により、モータ2,2aが連れ回り駆動している場合には、連れ回り駆動していない場合よりもキャリア周波数fcが高くなるように、キャリア周波数fcを調整する。これにより、システム損失を低減する。なお、キャリア周波数調整部16は、モータ2,2aのそれぞれに対してキャリア周波数fcを別々の値で設定してもよい。
モータ2には、エンジンシステム721とエンジン制御部722が接続されている。エンジンシステム721は、エンジン制御部722の制御により駆動し、モータ2を回転駆動させる。モータ2は、エンジンシステム721により回転駆動されることで発電機として動作し、交流電力を発生する。モータ2が発生した交流電力は、インバータ3により直流電力に変換され、高圧バッテリ5に充電される。これにより、ハイブリッドシステム72をシリーズハイブリッドシステムとして機能させることができる。なお、エンジンシステム721とエンジン制御部722は、モータ2aに接続可能としてもよい。
本実施形態によれば、第1、第2の実施形態でそれぞれ説明したモータ制御装置1またはモータ制御装置1Aを用いて、図17のハイブリッドシステム72が実現されることで、第1、第2の実施形態と同様に、モータ駆動システム100とモータ駆動システム101のそれぞれに対して、システム損失の低減という効果が得られる。
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について図面を用いて説明する。
図18は、本発明の第4の実施の形態における機電一体ユニット71の外観斜視図である。機電一体ユニット71は、第1、第2の実施形態で説明したモータ駆動システム100(モータ制御装置1または1A、モータ2およびインバータ3)を含んで構成される。モータ2とインバータ3はバスバー712を介して結合部713で接続される。モータ2の出力がギア711を介し、図示省略したディファレンシャルギアへと伝達され、車軸へと伝達される。なお、図18ではモータ制御装置1,1Aの図示を省略しているが、モータ制御装置1,1Aは任意の位置に配置することができる。
この機電一体ユニット71の特徴は、モータ2とインバータ3とギア711とが一体となった構造である。機電一体ユニット71では、モータ2とインバータ3を合わせたシステム損失の低減が要求される。そこで、第1、第2の実施形態でそれぞれ説明したモータ制御装置1またはモータ制御装置1Aを用いることにより、システム損失を低減できるため、高効率な機電一体ユニットを実現できる。
(第5の実施形態)
次に、図19を用いて、第1の実施形態で説明したモータ駆動システム100を車両に適用した実施形態を説明する。
図19は、本発明の第5の実施形態に係るハイブリッド自動車システムの構成図である。本実施形態のハイブリッド自動車システムは、図19に示すように、モータ2をモータ/ジェネレータとして適用したパワートレインを有する。
図19に示すハイブリッド自動車システムにおいて、車体800のフロント部には、前輪車軸801が回転可能に軸支されており、前輪車軸801の両端には、前輪802、803が設けられている。車体800のリア部には、後輪車軸804が回転可能に軸支されており、後輪車軸804の両端には後輪805、806が設けられている。
前輪車軸801の中央部には、動力分配機構であるディファレンシャルギア811が設けられており、エンジン810から変速機812を介して伝達された回転駆動力を左右の前輪車軸801に分配するようになっている。
エンジン810のクランクシャフトに設けられたプーリーとモータ2の回転軸に設けられたプーリーとがベルトを介して機械的に連結されている。
これにより、モータ2の回転駆動力がエンジン810に、エンジン810の回転駆動力がモータ2にそれぞれ伝達できるようになっている。モータ2は、モータ制御装置1または1Aの制御に応じてインバータ3から出力された三相交流電力がステータのステータコイルに供給されることによって、ロータが回転し、三相交流電力に応じた回転駆動力を発生する。
すなわち、モータ2は、モータ制御装置1,1Aの制御によってインバータ3から出力される三相交流電力を用いて電動機として動作する一方、エンジン810の回転駆動力を受けてロータが回転することによって、ステータのステータコイルに起電力が誘起され、三相交流電力を発生する発電機として動作する。
インバータ3は、高電圧(42Vあるいは300V)系電源である高圧バッテリ5から供給された直流電力を三相交流電力に変換する電力変換装置であり、運転指令値とロータの磁極位置に従って、モータ2のステータコイルに流れる三相交流電流を制御する。
モータ2によって発電された三相交流電力は、インバータ3によって直流電力に変換されて高圧バッテリ5を充電する。高圧バッテリ5にはDC-DCコンバータ824を介して低圧バッテリ823に電気的に接続されている。低圧バッテリ823は、自動車の低電圧(14V)系電源を構成するものであり、エンジン810を初期始動(コールド始動)させるスタータ825、ラジオ、ライトなどの電源に用いられている。
車両が信号待ちなどの停車時(アイドルストップモード)にあるとき、エンジン810を停止させ、再発車時にエンジン810を再始動(ホット始動)させる時には、インバータ3でモータ2を駆動し、エンジン810を再始動させる。尚、アイドルストップモードにおいて、高圧バッテリ5の充電量が不足している場合や、エンジン810が十分に温まっていない場合などにおいては、エンジン810を停止せず駆動を継続する。また、アイドルストップモード中においては、エアコンのコンプレッサなど、エンジン810を駆動源としている補機類の駆動源を確保する必要がある。この場合、モータ2を駆動させて補機類を駆動する。
加速モード時や高負荷運転モードにある時にも、モータ2を駆動させてエンジン810の駆動をアシストする。逆に、高圧バッテリ5の充電が必要な充電モードにある時には、エンジン810によってモータ2を発電させて高圧バッテリ5を充電する。すなわち、車両の制動時や減速時などの回生モードを行う。
第1、第2の実施形態で説明したモータ駆動システム100を用いて実現される図19のハイブリッド自動車システムでは、モータ制御装置1,1Aにおいて、モータ2が連れ回り駆動している場合には、連れ回り駆動していない場合よりもキャリア周波数fcが高くなるように、キャリア周波数fcを調整する。これにより、システム損失を低減することが可能となる。
なお、以上説明した各実施形態において、モータ制御装置1,1A内の各構成(図2、図13など)は、ハードウェアによる構成によらず、CPUとプログラムによって各構成の機能を実現するようにしてもよい。モータ制御装置1,1A内の各構成をCPUとプログラムによって実現する場合、ハードウェアの個数が減るため低コスト化できるという利点がある。また、このプログラムは、予めインバータ制御装置の記憶媒体に格納して提供することができる。あるいは、独立した記憶媒体にプログラムを格納して提供したり、ネットワーク回線によりプログラムをインバータ制御装置の記憶媒体に記録して格納することもできる。データ信号(搬送波)などの種々の形態のコンピュータ読み込み可能なコンピュータプログラム製品として供給してもよい。
なお、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
1,1A…モータ制御装置、2…モータ、3…インバータ、4…回転位置検出器、5…高圧バッテリ、7…電流検出部、8…回転位置センサ、11…電流指令生成部、11A…指令補正部、11B…切替部、12…速度算出部、13…電流変換部、14…電流制御部、15…三相電圧変換部、16…キャリア周波数調整部、17…搬送波生成部、18…PWM制御部、31…インバータ回路、32…ゲート駆動回路、33…平滑キャパシタ、71…機電一体ユニット、72…ハイブリッドシステム、100,101…モータ駆動システム、711…ギア、712…バスバー、713…結合部、800…車体、801…前輪車軸、802…前輪、803…前輪、804…後輪車軸、805…後輪、806…後輪、810…エンジン、811…ディファレンシャルギア、812…変速機、823…低圧バッテリ、824…DC-DCコンバータ、825…スタータ

Claims (15)

  1. 直流電力を交流電力に変換してモータへ出力するインバータと接続され、トルク指令に応じて前記インバータの動作を制御することで前記インバータを用いて前記モータの駆動を制御するモータ制御装置であって、
    搬送波を生成する搬送波生成部と、
    前記搬送波の周波数であるキャリア周波数を調整するキャリア周波数調整部と、
    前記搬送波を用いて電圧指令をパルス幅変調し、前記インバータの動作を制御するためのPWMパルス信号を生成するPWM制御部と、を備え、
    前記キャリア周波数調整部は、前記モータが連れ回り駆動しているときの前記キャリア周波数が、前記モータが連れ回り駆動していないときの前記キャリア周波数よりも高くなるように、前記キャリア周波数を調整するモータ制御装置。
  2. 請求項1に記載のモータ制御装置において、
    前記キャリア周波数調整部は、前記トルク指令の絶対値を所定の閾値と比較し、前記トルク指令の絶対値が前記閾値以下である場合に、前記モータが連れ回り駆動していると判定するモータ制御装置。
  3. 請求項2に記載のモータ制御装置において、
    前記閾値は、事前に行われた電磁界解析シミュレーションもしくは実験の結果に基づいて決定されるモータ制御装置。
  4. 請求項2に記載のモータ制御装置において、
    前記トルク指令の絶対値が前記閾値以下である場合に、前記インバータへの前記PWMパルス信号の出力を停止するモータ制御装置。
  5. 請求項2に記載のモータ制御装置において、
    前記トルク指令の絶対値が前記閾値以下である場合に、前記インバータと前記モータの接続を遮断するモータ制御装置。
  6. 請求項1に記載のモータ制御装置において、
    前記モータが連れ回り駆動しているときの前記キャリア周波数は、前記モータ制御装置の処理負荷と、前記インバータが有するゲート駆動回路に電源を供給するゲート電源の容量と、の少なくとも一方に基づいて決定されるモータ制御装置。
  7. 請求項1に記載のモータ制御装置において、
    前記モータの回転により発生する誘起電圧が前記インバータのスイッチング素子の耐圧未満となるように、前記モータの駆動を制御するモータ制御装置。
  8. 請求項1に記載のモータ制御装置において、
    前記電圧指令を所定の演算周期ごとに演算する電流制御部を備え、
    前記キャリア周波数調整部は、前記搬送波の周期の半分よりも前記演算周期が長くなるように、前記モータが連れ回り駆動しているときの前記キャリア周波数を調整するモータ制御装置。
  9. 請求項1に記載のモータ制御装置において、
    前記キャリア周波数調整部は、前記キャリア周波数の変化レートが所定値以下となるように、前記キャリア周波数を調整するモータ制御装置。
  10. 請求項1に記載のモータ制御装置において、
    前記トルク指令に基づく電流指令を生成する電流指令生成部と、
    前記電流指令に基づいて前記電圧指令を演算する電流制御部と、
    前記モータに流れる電流において特定次数の高調波成分が重畳されるように、前記電流指令または前記電圧指令を補正する指令補正部と、を備え、
    前記PWM制御部は、前記モータの磁束を弱めるように前記PWMパルス信号を生成する弱め界磁制御を実施可能であり、
    前記指令補正部は、前記モータが連れ回り駆動しており、かつ、前記PWM制御部が前記弱め界磁制御を実施しているときに、前記電流指令または前記電圧指令の補正を実施し、
    前記キャリア周波数調整部は、前記PWM制御部が前記弱め界磁制御を実施していない場合において、前記モータが連れ回り駆動しているときの前記キャリア周波数が、前記モータが連れ回り駆動していないときの前記キャリア周波数よりも高くなるように、前記キャリア周波数を調整するモータ制御装置。
  11. 請求項10に記載のモータ制御装置において、
    前記特定次数は、電気角で6の倍数の次数であるモータ制御装置。
  12. 直流電力を交流電力に変換してモータへ出力するインバータと接続され、トルク指令に応じて前記インバータの動作を制御することで前記インバータを用いて前記モータの駆動を制御するモータ制御装置であって、
    前記トルク指令の絶対値が所定の閾値以下である場合に、前記モータの固定子と回転子の間におけるギャップ磁束密度の高調波脈動が抑制されるように、前記インバータの動作を制御するためのPWMパルス信号を生成するモータ制御装置。
  13. 請求項1乃至12のいずれか一項に記載のモータ制御装置と、
    前記モータ制御装置に接続された前記インバータと、
    前記インバータにより駆動される前記モータと、
    前記モータに接続されたエンジンシステムと、を備えるハイブリッドシステム。
  14. 請求項1乃至12のいずれか一項に記載のモータ制御装置と、
    前記モータ制御装置に接続された前記インバータと、
    前記インバータにより駆動される前記モータと、
    前記モータの回転駆動力を伝達するギアと、を備え、
    前記モータ、前記インバータおよび前記ギアが一体構造となった機電一体ユニット。
  15. 請求項1乃至12のいずれか一項に記載のモータ制御装置と、
    前記モータ制御装置に接続された前記インバータと、
    前記インバータにより駆動される前記モータと、を備え、
    前記モータの回転駆動力を用いて走行する電動車両システム。
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