JP2023167854A - アセトン水素化触媒及びイソプロパノールの製造方法 - Google Patents

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淳志 岡村
Atsushi Okamura
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Abstract

【課題】 例えば原料ガス中に二酸化炭素が共存する場合であっても、その悪影響を抑制してアセトン気相水素化によるイソプロパノール製造反応を効果的に促進できる触媒を提供することを目的とする。【解決手段】周期律表第8族に属する少なくとも1種の金属元素を含む、二酸化炭素の共存下でアセトンを水素化するためのアセトン水素化触媒である。【選択図】なし

Description

本発明は、アセトン水素化触媒及び該アセトン水素化触媒を用いたイソプロパノールの製造方法に関する。より詳しくは、二酸化炭素の共存下、気相でアセトンを水素化してイソプロパノールを製造するのに好適に用いることができる触媒及び該触媒を用いたイソプロパノールの製造方法に関する。
気相でアセトンを水素化してイソプロパノールを製造する方法が知られている(非特許文献1~4、特許文献1)。前記方法に用いる触媒としては、ニッケル系触媒(非特許文献1)、銅系触媒(非特許文献2)、酸化銅―酸化クロム系触媒(特許文献1)、ルテニウム系触媒(非特許文献3)、白金系触媒(非特許文献3、4)などが開示されている。
前記の文献の大半では、アセトンおよび水素を窒素やヘリウムといったキャリアガスに同伴させたものを原料ガスとし、当該原料ガスを所定温度に制御された触媒層に供給し、触媒によりアセトンを水素化してイソプロパノールとしたことが開示されている。
他方、非特許文献3には、反応ガス中に添加した水蒸気によるアセトン水素化反応速度に及ぼす影響が353K、1気圧において検討され、Ru/C触媒では反応促進効果が観察されたのに対し、Pt系触媒では効果がみられないことが開示されている。また、特許文献1の[0014]段落には、アセトン水素化反応に用いる水素ガスとしては、特別純度の高い水素を使用する必要はなく、例えば、エチレン製造プラントで発生するメタンを含む水素やエタン等の不純物を含む水素でも使用可能との記載がされている。
特開2002―128716
化学工学論文集 第13巻、第6号、頁714―717、1987年 工業化学雑誌 第68巻、第1号、頁254―255、1965年 Benginur Demir et al.,"Effects of water on the kinetics of acetone Hydrogenation over Pt and Ru catalysts",Journal Of Catalysis Volume 403、Page215―227、2021 Xin Gao et al.,"Microkinetic analysis of acetone hydrogenation over Pt/SiO2",Journal Of Catalysis Volume 374、Page183―198、2019
アセトン水素化反応において、例えば下記に例示するとおり、二酸化炭素が共存するケースが想定される。
(I)エタノールから以下反応によりアセトンを合成し、引き続きアセトン水素化を行ってイソプロパノールを製造する方法
アセトン合成反応 2COH+HO → CHCOCH+4H+CO
アセトン水素化反応 CHCOCH+H → CHCH(OH)CH
(II)メタンの水蒸気改質反応により製造した水素含有ガスをそのまま使用してアセトン水素化を行う方法
メタンの水蒸気改質反応 CH+2HO → CO+4H
上記のとおり、いくつかの先行文献において、水蒸気やメタン、エタン等の不純物を含む水素であってもアセトン水素化反応に使用できることが開示されているが、二酸化炭素が共存する場合の影響についてはこれまで検討されていなかった。このような事情に鑑み、アセトン気相水素化反応における共存二酸化炭素の影響を詳細に調べた結果、従来提案のアセトン水素化触媒を用いた場合、共存二酸化炭素により被毒を受けて著しく活性低下する問題のあることが判明した。
よって、本発明は、例えば原料ガス中に二酸化炭素が共存する場合であっても、その悪影響を抑制してアセトン気相水素化によるイソプロパノール製造反応を効果的に促進できる触媒を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成する為に種々検討を行ない、本発明に想到した。すなわち、本開示の触媒は、周期律表第8族に属する少なくとも1種の金属元素を含む、二酸化炭素の共存下でアセトンを水素化するためのアセトン水素化触媒である。
本開示によれば、例えば反応原料ガス中に二酸化炭素が共存する場合でも、その悪影響を抑制して気相でアセトンを水素化してイソプロパノールを製造することが可能となるアセトン水素化触媒を提供することが可能となる。
以下、本開示を詳細に説明する。なお、以下において記載する本開示の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本開示の好ましい形態である。
[アセトン水素化触媒]
<金属元素>
本開示のアセトン水素化触媒(以下、本開示の触媒ともいう)は、周期律表第8族に属する少なくとも1種の金属元素を含む。周期律表第8族に属する金属元素としては、Fe、Ru、Osが挙げられる。本開示の触媒は、周期律表第8族に属する金属元素を1種のみ含んでも良く、2種以上含んでも良い。本開示の触媒は、Ruを含むことがより好ましい。
本開示の触媒は、任意であるが、周期律表10族に属する金属元素を含んでも良い。周期律表10族に属する金属元素としては、Ni、Pd、Ptが挙げられる。本開示の触媒は、期律表第10族に属する金属元素を、1種または2種以上含んでも良い。
本開示の触媒は、任意であるが、周期律表第8族に属する金属元素および周期律表10族に属する金属元素以外の金属元素(以下、「その他の金属元素」もしくは、「周期律表第8族および10族以外の族に属する金属元素」とも言う)を含んでも良い。
前記金属元素としては、金属単体、合金、金属酸化物などの形態で用いることができる。
本開示の触媒は、周期律表第8族および10族以外の族に属する金属(以下、その他の金属ともいう)の酸化物を含んでいても良い。前記その他の金属としては、Li、Na、K、Rb、Cs等の周期律表1族に属する金属元素;Mg、Ca、Sr、Ba等の周期律表2族に属する金属元素;Y、La、Ce等の周期律表3族に属する金属元素;Ti、Zr、Hf等の周期律表4族に属する金属元素;V、Nb、Ta等の周期律表5族に属する金属元素;Cr、Mo、W等の周期律表6族に属する金属元素;Mn、Tc、Re等の周期律表7族に属する金属元素;Co、Rh、Ir等の周期律表9族に属する金属元素;Cu等の周期律表11族に属する金属元素;Zn、Cd等の周期律表12族に属する金属元素;Al、Ga、In等の周期律表13族に属する金属元素;Si、Ge、Sn等の周期律表14族に属する金属元素;等が例示される。前記その他の金属の酸化物は、特に限定されないが、後述する担体として本開示の触媒に含まれても良い。その他の金属の酸化物の例示としては、後述する「担体」で例示した金属酸化物が挙げられる。その他の金属の酸化物としては、Al、Si、Ti、Ce、およびZrから選択される金属の酸化物の1種または2種以上を含むことが好ましい。
<担体>
本開示の触媒は、任意であるが、担体を含んでいても良い。担体としては、特に制限されないが、導電性カーボンや活性炭などの炭素質粉末;アルミナ(Al)、シリカ(SiO)、シリカ-アルミナ、チタニア(TiO),セリア(CeO)、ジルコニア(ZrO)、マグネシア(MgO)、珪藻土、ステアタイト、コージェライト、シリカ-マグネシア、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ゼオライト、CeZr1-x(x=0.1~0.9)、La10Si27、CaAlMnO、LaZr、LaZr1.90.1、CaZrO、SrZrO、BaZrO等の金属酸化物;等が例示される。上記の中でも、担体として、金属酸化物を含むことがより好ましく、Al、SiO、CeO、ZrO、またはこれらの複合酸化物を含むことがさらに好ましい。
前記担体としては、特に制限されないが、市販されているものを使用しても良い。担体の形状については特に制限はなく、球状、円柱状、リング状など公知の形状のものを使用しても良い。
前記担体は、限定されないが、触媒活性成分である周期律表第8族に属する金属元素および/または任意成分である周期律表第10族に属する金属元素を担持していることが好ましい。
前記担体は、特に限定されないが、比表面積は1~1000m/gであることが好ましく、2~750m/gであることがより好ましく、10~500m/gであることがさらに好ましい。
<アセトン水素化触媒の組成>
本開示の触媒は、金属元素を0.2~20質量%含むことが好ましく、0.5~20質量%含むことがより好ましく、1~20質量%含むことがさらに好ましい。本開示の触媒は、上記範囲で金属元素を含むことにより、二酸化炭素共存下でアセトンの水素化反応を行った場合に優れた触媒活性が得られる傾向にある。
本開示の触媒は、周期律表第8族に属する金属元素を0.2~20質量%含むことが好ましく、0.5~15質量%含むことがより好ましく、1~10質量%含むことがさらに好ましい。本開示の触媒は、上記範囲で周期律表第8族に属する金属元素を含むことにより、二酸化炭素共存下でアセトンの水素化反応を行った場合に優れた触媒活性が得られる傾向にある。
本開示の触媒は、周期律表10族に属する金属元素を、0~15質量%含むことが好ましく、0.5~15質量%含むことがより好ましく、1~10質量%含むことがさらに好ましい。本開示の触媒における、周期律表10族に属する金属元素の含有量が上記範囲であることにより、二酸化炭素共存下でアセトンの水素化反応を行った場合に優れた触媒活性が得られる傾向にある。
本開示の触媒は、周期律表第8族および10族以外の族に属する金属の酸化物を、0~99.8質量%含むことが好ましく、50~99質量%含むことがより好ましく、70~98質量%含むことがさらに好ましい。本開示の触媒における、担体の含有量が上記範囲であることにより、二酸化炭素共存下でアセトンの水素化反応を行った場合に優れた触媒活性が得られる傾向にある。
本開示の触媒は、担体を、0~99.8質量%含むことが好ましく、50~99%含むことがより好ましく、70~98質量%含むことがさらに好ましい。本開示の触媒における、担体の含有量が上記範囲であることにより、二酸化炭素共存下でアセトンの水素化反応を行った場合に優れた触媒活性が得られる傾向にある。
本開示の触媒における、その他の金属元素(ただし、その他の金属の酸化物を構成する金属元素を除く)の含有量は、0~20質量%であることが好ましく、1~10質量%であることがより好ましい。上記範囲であることにより、二酸化炭素共存下でアセトンの水素化反応を行った場合に優れた触媒活性が得られる傾向にある。
<アセトン水素化触媒の性状>
本開示の触媒は、金属単体の混合物、金属単体と金属酸化物との混合物、金属酸化物との混合物、混合金属酸化物などであっても良い。
本開示の触媒の形状は、特に制限されず、粉体状、粒子状、ペレット形状、ハニカム形状などであっても良い。
<アセトン水素化触媒の用途>
本開示の触媒は、アセトンの水素化反応に好ましく使用することができる。本開示の触媒は、二酸化炭素共存下でアセトンの水素化反応を行った場合でも、二酸化炭素による活性阻害を抑制して効果的にアセトンを水素化することが可能である。よって、本開示の触媒は、二酸化炭素の共存下でアセトンを水素化するためのアセトン水素化触媒、すなわち二酸化炭素共存下でのアセトン水素化用触媒として特に好ましく使用することができる。
<アセトン水素化触媒の好ましい形態の例示>
本開示のアセトン水素化触媒の好ましい形態として、下記の(1)~(9)が例示される。
(1)周期律表第8族に属する少なくとも1種の金属元素を含む、二酸化炭素の共存下でアセトンを水素化するためのアセトン水素化触媒。
(2)周期律表10族に属する少なくとも1種の金属元素をさらに含む、前記(1)に記載のアセトン水素化触媒。
(3)金属元素を0.2~20質量%、好ましくは0.5~20質量%、より好ましくは1~20質量%含む、前記(1)または(2)に記載のアセトン水素化触媒。
(4)周期律表第8族および10族以外の族に属する金属の酸化物をさらに含む、前記(1)~(3)のいずれかに記載のアセトン水素化触媒。
(5)周期律表第8族から選ばれる金属元素がルテニウムであり、周期律表第10族から選ばれる金属元素がニッケルおよび/または白金である、前記(1)~(4)に記載のアセトン水素化触媒。
(6)周期律表第8族に属する金属元素を0.2~20質量%、好ましくは0.5~20質量%、より好ましくは1~20質量%含む、前記(1)~(5)に記載のアセトン水素化触媒。
(7)周期律表10族に属する金属元素を0~15質量%、好ましくは0.5~15質量%、より好ましくは1~10質量%含む、前記(1)~(6)に記載のアセトン水素化触媒。
(8)周期律表第8族および10族以外の族に属する金属の酸化物を、0~99.8質量%、好ましくは50~99質量%、より好ましくは70~98質量%含む、前記(1)~(7)に記載のアセトン水素化触媒。
(9)二酸化炭素が0.01体積%以上、好ましくは0.02体積%以上、より好ましくは0.05体積%以上、並びに20体積%以下、好ましくは5体積%以下、より好ましくは1体積%以下共存下でアセトンを水素化するための前記(1)~(8)に記載のアセトン水素化触媒。
[アセトン水素化触媒の製造方法]
本開示のアセトン水素化触媒の製法は特に制限されず、公知の方法で製造しても良い。例えば、固相反応法、含浸法、沈澱法、共沈法などによって製造することができる。例えば、構成する元素の酸化物や炭酸塩などの固体原料を混合し焼成する方法、構成する元素の一つの酸化物に別の構成元素の塩を含む水溶液を添加して混合・含浸し、乾燥、焼成する方法、構成する元素の塩を含む水溶液を混合し、pH調整し沈殿物を得た後、沈殿物を乾燥、焼成する方法、等により製造しても良い。前記構成する元素もしくは構成元素としては、周期律表第8族に属する金属元素、周期律表第10族に属する金属元素、その他の金属元素、担体を構成する金属元素等が例示される。周期律表第8族に属する金属元素を含む化合物の溶液やスラリーと、必要に応じて担体もしくはその他の金属の酸化物を混合し、乾燥させた後に焼成する方法により製造しても良い。
前記周期律表第8族に属する金属元素を含む化合物としては、特に限定されないが、硝酸ルテニウム、酢酸ルテニウム、トリス(アセチルアセトナト)ルテニウム(III)、ヘキサアンミン水酸化ルテニウム、塩化ルテニウム、硝酸鉄・九水和物、硫酸鉄・七水和物、酢酸鉄などが例示される。これらは1種のみを用いても、2種以上を用いても良い。
前記溶液に含まれる溶媒としては、特に限定されないが、水;エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等のアルコール;等が例示される。これらは1種のみを用いても、2種以上を用いても良い。
前記担体もしくはその他の金属の酸化物としては、特に限定されないが、前記「アセトン水素化触媒」で例示した化合物が例示される。
前記混合は、攪拌しながら実施しても良い。常温下で混合しても良いが、冷却条件下または加熱条件下で実施しても良い。混合工程は、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で実施しても良い。
本開示の触媒の製造方法は、成形工程を含んでも良い。成形工程では、特に制限されないが、例えば、周期律表第8族に属する金属元素を含む化合物、周期律表第10族に属する金属元素を含む化合物、金属酸化物の1種以上を、必要に応じて有機バインダーやガラス繊維などの成形助剤の存在下、ニーダーなどの混合機で十分混合し、必要に応じて固形分調整を行い、所定の形状に押出成型することができる。成形物を乾燥、焼成した後で、周期律表第8族に属する金属元素および/または周期律表第10族に属する金属元素を、含浸法などにより担持させることにより本開示の触媒を製造しても良い。
前記焼成を行う温度としては、特に限定されないが、好ましくは200~600℃、より好ましくは250~550℃、さらに好ましくは、300~500℃である。なお、焼成は一定温度で実施しても良いが、2以上の温度条件で実施しても良い。焼成工程は、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で実施しても良い。焼成時間は特に限定されないが、例えば、10分以上、10時間以下が好ましく、30分以上、5時間以下がより好ましい。
[イソプロパノールの製造方法]
<原料ガス供給工程>
本開示のイソプロパノールの製造方法は、二酸化炭素、水素、およびアセトンを含む原料ガスを、周期律表第8族に属する少なくとも1種の金属元素を含む触媒を含む触媒層に供給する工程(以下、原料ガス供給工程ともいう)を含む。原料ガスを触媒層に供給する形態としては、特に制限は無いが、原料ガス成分を全てガスとして触媒層を含む反応器に供給しても良く、原料ガス成分の1種または2種以上を液体として触媒層を含む反応器に供給し、反応器内で気化することにより原料ガスを触媒層に供給しても良い。触媒層を含む反応器の前に、加熱炉等のガス化装置を設けても良い。
本開示において触媒層とは、通常の意味に理解すればよいが、例えば反応器の中で、触媒が充填もしくは配置されている部分である。
ここで原料ガスとは、触媒層へ供給するガス全てを含む。
原料ガスは二酸化炭素、水素、およびアセトンを含めばよく、特に制限はされず、二酸化炭素、水素、およびアセトンを別々に準備しても良いが、下記(i)のエタノールからアセトンを生成する反応により得られた二酸化炭素、水素、およびアセトンを使用する方法や、下記(ii)のメタンの水蒸気改質反応により製造した二酸化炭素を含む水素含有ガスを使用する方法が好ましい。
(i) 2COH+HO → CHCOCH+4H+CO
(ii) CH+2HO → CO+4H
原料ガス供給工程における周期律表第8族に属する少なくとも1種の金属元素を含む触媒としては、後述するアセトン水素化工程における周期律表第8族に属する少なくとも1種の金属元素を含む触媒と同様である。
原料ガスの二酸化炭素、水素、およびアセトンは、混合して反応器に添加しても良いが、別々に反応器に添加しても良い。
反応器の形状は特に制限されない。例えば、固定床流通反応器などであっても良い。反応器の材質も特に制限されない。例えばSUS製の反応器であっても良い。
原料ガスにおける二酸化炭素の濃度は、原料の精製工程を簡素化もしくは省略できる観点から、0.01体積%以上であることが好ましく、0.02体積%以上であることがより好ましく、0.05体積%以上であることがさらに好ましい。上記範囲であれば、二酸化炭素によるアセトン水素化反応の活性阻害を抑制しつつ、反応原料の精製を簡略化できるため、効率よくイソプロパノールを製造することが可能となる。
原料ガスにおける二酸化炭素の濃度は、20体積%以下であることが好ましく、5体積%以下であることがより好ましく、1体積%以下であることがさらに好ましい。
原料ガスにおけるアセトンの濃度は、2体積%以上、50体積%以下であることが好ましく、5体積%以上、45体積%以下であることがより好ましく、10体積%以上、40体積%以下であることがさらに好ましい。なお、上記は通常、触媒層に供給される濃度(すなわち、アセトンなどが気化している濃度)である。
原料ガスにおけるアセトン濃度に対する水素濃度の比率は、1.1~5であることが好ましく、1.2~3であることがより好ましい。原料ガスにおけるアセトン濃度に対する水素濃度の比率が1.1未満であると、アセトン転化率が低下する傾向にある。原料ガスにおけるアセトン濃度に対する水素濃度の比率が5を超えるとイソプロパノールの水素化分解反応等の副反応が進行しやすくなる傾向にある。
原料ガスは、任意であるが、窒素やヘリウムなどの不活性ガスを含んでもよい。
原料ガスは、任意であるが、水、メタン、一酸化炭素などを含んでもよい。なお、一酸化炭素はアセトン水素化触媒の活性金属に吸着してアセトン水素化活性が低下する傾向にあるため、原料ガスに含まれる一酸化炭素の濃度は20体積ppm未満であることが好ましい。
<アセトン水素化工程>
本開示のイソプロパノールの製造方法は、アセトンの水素化を行う工程(以下、アセトン水素化工程とも言う)を含む。前記アセトン水素化工程は、周期律表第8族に属する少なくとも1種の金属元素を含む触媒の存在下で実施される。周期律表第8族に属する少なくとも1種の金属元素を含む触媒としては、上記本開示の触媒が好適に例示される。周期律表第8族に属する少なくとも1種の金属元素を含む触媒は、1種または2種以上で用いても良い。周期律表第8族に属する少なくとも1種の金属元素を含む触媒を2種以上使用する場合には、混合して使用しても良く、タンデム構造に充填しても良く、2以上の反応器に分けて充填しても良い。
本開示のイソプロパノールの製造方法は、周期律表第8族に属する少なくとも1種の金属元素を含む触媒以外の、例えば公知のアセトン水素化触媒を併用しても良い。
アセトン水素化工程は、気相反応で実施することが好ましい。気相反応による反応形式は特に限定されず、固定床、移動床、流動床などが挙げられるが、より簡便な固定床形式が好ましい。
アセトン水素化工程は、反応圧力は、0.1MPa~2MPaであることが好ましく、より好ましくは、0.1MPa~1.0MPaである。
アセトン水素化工程における反応温度は20℃~200℃であることが好ましく、より好ましくは25℃~150℃である。反応温度が低くなると、平衡的には有利となるが、水素化が進行し難い傾向にあり、一方反応温度が高くなると、平衡制約のためにアセトン水素化転化率が低くなる傾向にあり、加えて、アセトンやイソプロパノールの水素化分解が併発し、収率が低下する傾向にある。
アセトン水素化工程における空間速度は、200~50000(1/h)であることが好ましく、より好ましくは1000~20000(1/h)であり、さらに好ましくは、2000~10000(1/h)である。
アセトン水素化工程は、前記原料ガス供給工程における、原料ガスを供給する触媒層を含む反応器でアセトンの水素化を行う工程を含む。アセトン水素化工程で2以上の反応器を使用する場合には、少なくとも1つが、前記原料ガス供給工程における、原料ガスを供給する触媒層を含む反応器であればよい。
<その他の工程>
本開示のイソプロパノールの製造方法は、原料ガス供給工程と、アセトン水素化工程以外に任意の工程(以下、その他の工程とも言う)を含んでも良い。
(アセトン製造工程)
本開示のイソプロパノールの製造方法は、エタノールと水を触媒存在下で反応させてアセトンを得る工程(以下、アセトン製造工程とも言う)を含んでも良い。前記エタノールの一部または全部はバイオエタノールであることが好ましい。
前記アセトン製造工程で使用する触媒としては、特に限定されないが、各種金属元素を含有すればよく、好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、マンガン、亜鉛、銅、アルミニウム、ジルコニウムなどの元素を含むことが好ましい。上記の中でも、触媒活性の観点から、鉄を含有することが好ましい。より好ましくは、鉄(Fe)ならびにマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、マンガン(Mn)および亜鉛(Zn)からなる群より選ばれる一種以上の金属(Me)を含むことが好ましい。
前記アセトン製造工程で使用する触媒に含まれる金属元素の状態は特に限定されず、例えば、前記金属元素を含む金属酸化物、前記金属元素を含む担体、前記金属元素を担持した担体などが挙げられる。金属酸化物を担体に担持してもよい。金属酸化物は、複合金属酸化物であってもよい。複合金属酸化物として、例えば、スピネル型、ペロブスカイト型、マグネトプランバイト型、ガーネット型などが挙げられるが、好ましくは、スピネル型である。
前記アセトン製造工程で使用する触媒としては、一般式、MeO・nFe(Meは、Mg、Ca、MnおよびZnからなる群より選ばれる一種以上の金属を表し、nは1~6の整数を表す)で表される、鉄複合酸化物(フェライトという場合がある)が例示される。
前記アセトン製造工程で使用する触媒としては、鉄1モルに対し、マグネシウム、カルシウム、マンガンおよび亜鉛からなる群より選ばれる一種以上の金属(Me)を、0.4~0.7モル含むことが好ましく、より好ましくは0.4~0.6モルであり、さらに好ましくは、0.45~0.55モルである。上記範囲であることにより、触媒活性が向上する傾向にある。
前記アセトン製造工程で使用する触媒としては、鉄1モルに対し、ジルコニウムを、0.01~1モル含むことが好ましく、より好ましくは0.1~0.8モルであり、さらに好ましくは、0.2~0.6モルである。上記範囲とすることで、耐久性が向上する傾向にある。
前記アセトン製造工程で使用する触媒としては、マグネシウム、カルシウム、マンガンおよび亜鉛からなる群より選ばれる一種以上の金属(Me)、鉄、並びにジルコニウムの合計量が、触媒100質量%に対し、50~100質量%が好ましく、より好ましくは、80~100質量%である。
前記アセトン製造工程では、原料であるエタノールと水とを触媒と接触させることにより、アセトン、水素および二酸化炭素を含む反応生成物を得ることができる。反応式で表すと、下記のとおりである。
2COH+HO → CHCOCH+4H+CO
前記アセトン製造工程は、バッチ式で行っても良いが、生産性の観点から連続式で実施することが好ましい。前記アセトン製造工程は、液相反応で実施しても良いが、気相反応で実施することが好ましい。気相反応による反応形式としては、固定床、移動床、流動床などが例示されるが、より簡便な固定床形式が好ましい。固定床形式である場合、原料ガスは、ガス状のエタノールとガス状の水(水蒸気という場合もある)を混合してから、反応器へ供給して触媒と接触させてもよく、ガス状のエタノールと水蒸気を別々に反応器へ供給して触媒と接触させてもよい。原料ガスには、窒素やヘリウムなどの不活性ガスを含んでいてもよい。ここで原料ガスとは、反応器へ供給するガス全てを含む。
前記アセトン製造工程において、原料ガスに含まれるエタノール濃度は、3~66モル%であることが好ましく、より好ましくは5~50モル%である。原料ガスに含まれるエタノールに対する水のモル比率は、0.5~10であることが好ましく、1~5であることがより好ましい。
前記アセトン製造工程において、原料ガスに用いるエタノールは、特に限定されない。エチレンの水和反応により得られるエタノールや、バイオマス原料、例えば、サトウキビ等の糖質系、穀物等のでんぷん系、草木などのセルロース系などを原料にしたバイオエタノールなどが挙げられる。
前記アセトン製造工程において、原料ガスに用いるエタノールには、バイオエタノールが含まれていることが好ましい。エタノール100質量%に含まれるバイオエタノールの含有量は、より好ましくは50質量%以上であり、さらに好ましくは75質量%以上であり、よりさらに好ましくは90質量%以上である。
前記アセトン製造工程において、反応圧力は、減圧、常圧、加圧のいずれでも実施できるが、0.07MPa~0.2MPaであることが好ましく、より好ましくは、0.1MPa~0.15MPaである。反応温度は、250~600℃が好ましく、より好ましくは300~550℃であり、さらに好ましくは330~500℃である。空間速度は、300~10000(1/h)であることが好ましく、より好ましくは400~8000(1/h)であり、さらに好ましくは、500~6000(1/h)である。
(アセトン精製工程)
アセトンの水素化反応を行う際に、周期律表第8族に属する少なくとも1種の金属元素を含む触媒を使用することにより、二酸化炭素共存下でも二酸化炭素による活性阻害を抑制できる傾向にあることから、必ずしもアセトンの水素化反応の原料に使用するアセトンや水素を精製する必要は無いが、本開示のイソプロパノールの製造方法は、アセトンを分離及び/または精製する工程(以下、アセトン精製工程とも言う)を含んでも良い。
アセトン精製工程は、公知の気液分離方法等により、実施しても良い。例えば、前記アセトン製造工程で得られた組成物を、水素や二酸化炭素などを主体とする気体と、アセトンを主体とする液体混合物に分離(気液分離という場合もある)してもよい。
アセトン精製工程は、アセトンを蒸留する工程を含んでも良い。
(水素精製工程)
本開示のイソプロパノールの製造方法は、水素を精製する工程(以下、水素精製工程とも言う)を含んでも良い。水素精製工程は、特に限定されないが、物理吸収法、化学吸収法、膜分離法、深冷分離法、圧縮液化法などの公知の方法を実施することができる。
物理吸収法とは、二酸化炭素を、化学反応を行うことなしに、吸着、溶解など物理的作
用により混合ガスから分離回収する方法であり、特に好ましくはPSA(Pressur
e Swing Adsorption)法が挙げられる。化学吸収法とは主にアミンやアルカリなど塩基性物質に二酸化炭素を反応させ、炭酸水素塩などの形に変換して吸収させるものである。二酸化炭素を吸収した吸収液を加熱あるいは減圧することで吸収液から二酸化炭素が気体として分離・回収される。膜分離法は、選択的に水素又は二酸化炭素を透過させる分離膜を用いる方法が好ましい。この時使用する膜は特に限定されないが、高分子素材膜、デンドリマー膜、アミン基含有膜、ゼオライト膜を始めとする無機素材膜、などを挙げることができる。分離膜には金属原子を含んでいてもよい。金属原子は特に限定されないが、例えば、Pd等が挙げられる。これらの方法は、1種または2種以上を実施しても良い。
例えば、例えば、前記アセトン製造工程で得られた組成物からアセトンを分離した後に、水素と二酸化炭素を含む組成物から、二酸化炭素を分離しても良い。
(イソプロパノールの精製工程)
本開示のイソプロパノールの製造方法は、イソプロパノールの精製工程を含んでいても良い。例えば、前記アセトン水素化工程で得られた組成物が、気体を含有する気液混合物である場合は、公知の気液分離の方法により、例えば水素などの気体主体とする気体と、イソプロパノールを含む液体混合物に分離してもよい。ここで、気体とは、気液分離操作における加圧・冷却条件下で気体として存在する物質をいう。イソプロパノールの精製工程において、気液分離操作における圧力は、0.1MPa~2MPaであることが好ましく、より好ましくは、0.2MPa~1MPaである。イソプロパノールの精製工程において、気液分離操作における温度は、0℃~50℃であることが好ましく、より好ましくは、5℃~40℃である。
イソプロパノールの精製工程は、蒸留工程を含んでも良い。蒸留工程は、例えば、薄膜蒸留や精留で実施しても良い。連続式でもバッチ式であってもよい。蒸留工程は、共沸蒸留を行っても良い。イソプロパノールは水と共沸混合物を形成するため、前記イソプロパノールを含む液体混合物が水を含有する場合、共沸蒸留を行うことで、高純度のイソプロパノールを取得することもできる。
(触媒再生工程)
本開示のイソプロパノールの製造方法において、触媒の活性に変化が見られた場合は、触媒を再生する工程を含んでいてもよい。再生する方法は特に限定されないが、酸素などの酸化性ガスと高温で接触させることにより再生することができる。例えば、原料ガスを固定床形式の反応器に供給しておこなった場合、原料ガスを酸化性ガスに変更しておこなってもよく、反応器から触媒を抜き出しておこなってもよい。
<イソプロパノールの製造方法の好ましい形態の例示>
本開示のイソプロパノールの製造方法の好ましい形態として、下記の(10)~(14)が例示される。
(10)二酸化炭素、水素、およびアセトンを含む原料ガスを、周期律表第8族に属する少なくとも1種の金属元素を含む触媒を含む触媒層に供給する工程と、
アセトンの水素化を行う工程と、を含むイソプロパノールの製造方法。
(11)原料ガスに含まれる二酸化炭素濃度が、0.01体積%以上、好ましくは0.02体積%以上、より好ましくは0.05体積%以上である前記(10)に記載のイソプロパノールの製造方法。
(12)原料ガスに含まれる二酸化炭素濃度が、20体積%以下、好ましくは5体積%以下、より好ましくは1体積%以下である前記(10)または(11)に記載のイソプロパノールの製造方法。
(13)前記触媒が前記(1)~(8)のいずれかに記載のアセトン水素化触媒である、前記(10)~(12)のいずれかに記載のイソプロパノールの製造方法。
(14)前記アセトン製造工程をさらに含む、前記(10)~(13)のいずれかに記載のイソプロパノールの製造方法。
[イソプロパノールの用途]
本開示のイソプロパノールの製法で得られたイソプロパノールは、例えばアクリル酸の製造原料として使用することができる。前記イソプロパノールは、直接アクリル酸の製造原料として使用しても良く、アルミナ等の脱水触媒により脱水してプロピレンとした後に、アクリル酸製造触媒を用いてアクリル酸を製造しても良い。
以下に実施例を掲げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではなく、これらの実施例により制限を受けるものでもない。
<触媒調製例1>
ジニトロジアンミン白金硝酸溶液(田中貴金属社製 Pt含有率8.19質量%)0.49gをビーカーに秤取り、純水を加えて白金含有水溶液を調製した。磁性皿に入れた4gのZrO粉末(第一稀元素化学社製 EP-L、比表面積102m/g)に前記白金含有水溶液を加えた後、ガラス棒で混ぜながら加熱して水分を蒸発させた。得られた粉体を120℃で10時間乾燥後、400℃で1時間焼成して参考触媒1を調製した。得られた参考触媒1の組成は、1質量%Pt/ZrO(すなわち、1質量%のPtに対し、99質量%のZrO)であった。
<触媒調製例2>
硝酸銅・三水和物(ナカライテスク社製 特級)30g、硝酸亜鉛・六水和物(ナカライテスク社製 特級)18g、硝酸アルミニウム・六水和物(ナカライテスク社製 特級)12.1gを300mLの純水に溶解した(溶液A)。炭酸ナトリウム(ナカライテスク社製 特級)52.5gを純水300mLに溶解した(溶液B)。750mLの純水を入れたビーカーに、攪拌下、室温で溶液Aと溶液Bを等速で滴下して沈殿物を生成させた。生成した沈殿物をろ過・水洗後、120℃で10時間乾燥、300℃で4時間焼成して参考触媒2を調製した。得られた参考触媒2の組成は、60質量%CuO/30質量%ZnO/10質量%Alであった。
<触媒調製例3>
触媒調製例1におけるジニトロジアンミン白金硝酸溶液0.49gを硝酸ルテニウム溶液(田中貴金属社製 Ru含有率3.92質量%)5.37gに変更した以外は触媒調製例1と同様にして本開示の触媒3を調製した。得られた本開示の触媒3の組成は、5質量%Ru/ZrO(すなわち、5質量%のRuに対し、95質量%のZrO)であった。
<触媒調製例4>
触媒調製例1におけるジニトロジアンミン白金硝酸溶液0.49gを硝酸ルテニウム溶液(田中貴金属社製 Ru含有率3.92質量%)11.3gに変更した以外は触媒調製例1と同様にして本開示の触媒4を調製した。得られた本開示の触媒4の組成は、10質量%Ru/ZrO(すなわち、10質量%のRuに対し、90質量%のZrO)であった。
<触媒調製例5>
触媒調製例1におけるジニトロジアンミン白金硝酸溶液0.49gを硝酸ニッケル・六水和物(ナカライテスク製 特級)1.24gに変更した以外は触媒調製例1と同様にして参考触媒5を調製した。得られた参考触媒5の組成は、5.9質量%Ni/ZrO(すなわち、5.9質量%のNiに対し、94.1質量%のZrO)であった。
<触媒調製例6>
触媒調製例1におけるジニトロジアンミン白金硝酸溶液0.49gを硝酸ニッケル・六水和物(ナカライテスク製 特級)0.36gおよびジニトロジアンミン白金硝酸溶液(田中貴金属社製 Pt含有率8.19質量%)0.49gに変更した以外は触媒調製例1と同様にして参考触媒6を調製した。得られた参考触媒6の組成は、1.8質量%Ni―1質量%Pt/ZrO(すなわち、ZrOは、97.2質量%)であった。
<触媒調製例7>
硝酸ニッケル・六水和物(ナカライテスク製 特級)1.10gおよび硝酸ルテニウム溶液(田中貴金属社製 Ru含有率3.92質量%)5.67gを秤取り、純水を加えてニッケルとルテニウムを含む混合水溶液を調製した。磁性皿に入れた4gのZrO粉末(第一稀元素化学社製 EP-L、比表面積102m/g)に前記混合水溶液を加えた後、ガラス棒で混ぜながら加熱して水分を蒸発させた。得られた粉体を120℃で10時間乾燥後、400℃で1時間焼成して本開示の触媒7を調製した。得られた本開示の触媒7の組成は、5質量%Ni―5質量%Ru/ZrO(すなわち、ZrOは、90質量%)であった。
<触媒調製例8>
触媒調製例7におけるZrO粉末(第一稀元素化学社製 EP-L、比表面積102m/g)をZrO粉末(第一稀元素化学社製 RC-100、比表面積118m/g)に変更した以外は触媒調製例7と同様にして本開示の触媒8を調製した。得られた本開示の触媒8の組成は、5質量%Ni―5質量%Ru/ZrO(すなわち、ZrOは、90質量%)であった。
<触媒調製例9>
触媒調製例7におけるZrO粉末(第一稀元素化学社製 EP-L、比表面積102m/g)をCeO粉末(Rhodia社製3CO、比表面積171m/g)に変更した以外は触媒調製例7と同様にして本開示の触媒9を調製した。得られた本開示の触媒9の組成は、5質量%Ni―5質量%Ru/CeO(すなわち、CeOは、90質量%)であった。
<触媒調製例10>
触媒調製例7におけるZrO粉末(第一稀元素化学社製 EP-L、比表面積102m/g)をSiO粉末(富士シリシア化学社製Cariact Q―6、比表面積113m/g)に変更した以外は触媒調製例7と同様にして本開示の触媒10を調製した。得られた本開示の触媒10の組成は、5質量%Ni―5質量%Ru/SiO(すなわち、SiOは、90質量%)であった。
<実施例1>
参考触媒1(0.35g)をステンレス製の固定床流通式反応器に充填し、窒素(N)26cm/分(標準状態:0℃、1気圧での流量)および水素(H)15cm/分(標準状態:0℃、1気圧での流量)を流通しながら300℃で1時間前処理を行った。次いで、反応温度に設定後、窒素と水素からなる混合ガス流を25℃とした純水入りバブラーに導入して飽和水蒸気に相当する水蒸気を同伴させた。バブラーを出た窒素、水素および水からなる混合ガス流中に、マイクロシリンジフィーダーによりアセトン(ナカライテスク社製 特級)を19.4mg/分で追加導入することで二酸化炭素非共存下でのアセトン水素化によるイソプロパノール製造反応を開始した。
反応器出口ガスは氷水浴に配置されたトラップに導入し、ここで未反応原料、生成物を捕集した。トラップで捕集された液体成分はGC-FID(Agilent社 7890B / キャピラリーカラム HP―plot Q)により定量分析を行った。トラップで捕集されなかった気体生成物については直接GC-FIDに導入して分析した。これらの分析結果から、下記式によりアセトン転化率とイソプロパノール選択率を算出した。電気炉温度100℃で得られた反応結果を表1に示す。

転化率(%)=100-(出口アセトンモル流速/入口アセトンモル流速)
選択率(%)=100×[生成物したイソプロパノールモル流速/(入口アセトンモル流速×転化率)]
<実施例2>
参考触媒1(0.35g)をステンレス製の固定床流通式反応器に充填し、窒素(N)25.5cm/分(標準状態:0℃、1気圧での流量)および水素(H)15cm/分(標準状態:0℃、1気圧での流量)を流通しながら300℃で1時間前処理を行った。次いで、反応温度に設定後、二酸化炭素(CO)0.5cm/分(標準状態:0℃、1気圧での流量)を追加し、窒素、水素、二酸化炭素からなる混合ガス流を調製した。この混合ガス流を25℃とした純水入りバブラーに導入して飽和水蒸気に相当する水蒸気を同伴させた。バブラーを出た窒素、水素、二酸化炭素および水からなる混合ガス流中に、マイクロシリンジフィーダーによりアセトン(ナカライテスク社製 特級)を19.4mg/分で追加導入することで二酸化炭素共存下でのアセトン水素化によるイソプロパノール製造反応を開始した。反応器出口ガスは実験例1と同様に分析した。
電気炉温度100℃で得られた反応結果を表1に示す。
Figure 2023167854000001
表1の結果から、1質量%Pt/ZrOを触媒とした100℃でのアセトン水素化反応における共存二酸化炭素の影響を調べた結果、二酸化炭素を含まないガス条件では、アセトン転化率90%が得られたが、1体積%の二酸化炭素が共存すると、アセトン転化率は24.7%に低下した。1質量%Pt/ZrO触媒では共存二酸化炭素によりアセトン水素化活性が著しく阻害されることがわかる。
<実施例3>
参考触媒2(0.7g)をステンレス製の固定床流通式反応器に充填し、窒素(N)55cm/分(標準状態:0℃、1気圧での流量)および水素(H)30cm/分(標準状態:0℃、1気圧での流量)を流通しながら250℃で1時間前処理を行った。次いで、反応温度に設定後、窒素と水素からなる混合ガス流中に、マイクロシリンジフィーダーによりアセトン(ナカライテスク社製 特級)を38.8mg/分で追加導入することで二酸化炭素非共存下でのアセトン水素化によるイソプロパノール製造反応を開始した。電気炉温度100℃で得られた反応結果を表2に示す。
<実施例4>
参考触媒2(0.7g)をステンレス製の固定床流通式反応器に充填し、窒素(N)42cm/分(標準状態:0℃、1気圧での流量)および水素(H)30cm/分(標準状態:0℃、1気圧での流量)を流通しながら250℃で1時間前処理を行った。次いで、反応温度に設定後、二酸化炭素(CO)13.5cm/分(標準状態:0℃、1気圧での流量)を追加し、窒素、水素、二酸化炭素からなる混合ガス流を調製した。この混合ガス流中に、マイクロシリンジフィーダーによりアセトン(ナカライテスク社製 特級)を38.8mg/分で追加導入することで二酸化炭素共存下でのアセトン水素化によるイソプロパノール製造反応を開始した。電気炉温度100℃で得られた反応結果を表2に示す。
Figure 2023167854000002
表2の結果から、60質量%CuO/30質量%ZnO/10質量%Alを触媒とした100℃でのアセトン水素化反応における共存二酸化炭素の影響を調べた結果、二酸化炭素を含まないガス条件では、アセトン転化率67.8%が得られたが、13.4体積%の二酸化炭素が共存すると、アセトン転化率は5.0%に低下し、イソプロパノール選択率も1%に激減した。60質量%CuO/30質量%ZnO/10質量%Al触媒では共存二酸化炭素によりアセトン水素化活性が著しく阻害されることがわかる。
<実施例5>
本開示の触媒3(0.35g)をステンレス製の固定床流通式反応器に充填し、窒素(N)20cm/分(標準状態:0℃、1気圧での流量)および水素(H)15cm/分(標準状態:0℃、1気圧での流量)を流通しながら300℃で1時間前処理を行った。次いで、反応温度に設定後、二酸化炭素(CO)7.5cm/分(標準状態:0℃、1気圧での流量)を追加し、窒素、水素、二酸化炭素からなる混合ガス流を調製した。この混合ガス流を25℃とした純水入りバブラーに導入して飽和水蒸気に相当する水蒸気を同伴させた。バブラーを出た窒素、水素、二酸化炭素および水からなる混合ガス流中に、マイクロシリンジフィーダーによりアセトン(ナカライテスク社製 特級)を19.4mg/分で追加導入することで二酸化炭素共存下でのアセトン水素化によるイソプロパノール製造反応を開始した。電気炉温度100℃で得られた反応結果を表3に示す。
<実施例6>
本開示の触媒3を本開示の触媒4に変更した以外は実験例5と同様にして二酸化炭素共存下でのアセトン水素化によるイソプロパノール製造反応を開始した。電気炉温度100℃で得られた反応結果を表3に示す。
<実施例7>
本開示の触媒3を参考5に変更した以外は実験例5と同様にして二酸化炭素共存下でのアセトン水素化によるイソプロパノール製造反応を開始した。電気炉温度100℃で得られた反応結果を表3に示す。
<実施例8>
本開示の触媒3を参考触媒6に変更した以外は実験例5と同様にして二酸化炭素共存下でのアセトン水素化によるイソプロパノール製造反応を開始した。電気炉温度100℃で得られた反応結果を表3に示す。
<実施例9>
本開示の触媒3を本開示の触媒7に変更した以外は実験例5と同様にして二酸化炭素共存下でのアセトン水素化によるイソプロパノール製造反応を開始した。電気炉温度100℃で得られた反応結果を表3に示す。
<実施例10>
本開示の触媒3を本開示の触媒8に変更した以外は実験例5と同様にして二酸化炭素共存下でのアセトン水素化によるイソプロパノール製造反応を開始した。電気炉温度100℃で得られた反応結果を表3に示す。
<実施例11>
本開示の触媒3を本開示の触媒9に変更した以外は実験例5と同様にして二酸化炭素共存下でのアセトン水素化によるイソプロパノール製造反応を開始した。電気炉温度100℃で得られた反応結果を表3に示す。
<実施例12>
本開示の触媒3を本開示の触媒10に変更した以外は実験例5と同様にして二酸化炭素共存下でのアセトン水素化によるイソプロパノール製造反応を開始した。電気炉温度100℃で得られた反応結果を表3に示す。
Figure 2023167854000003
15体積%の二酸化炭素共存条件でも、金属成分として周期律表第8族に属するルテニウムを5質量%含有する本開示の触媒3(5質量%Ru/ZrO)を用いるとアセトン転化率55.1%が得られた。ルテニウム担持量を10質量%に増加させた本開示の触媒4(10質量%Ru/ZrO)では、アセトン転化率が69.0%に増加した。
一方、金属成分として周期律表第10族に属するニッケルのみを5.9質量%含有する参考触媒5(5.9質量%Ni/ZrO)ではアセトン転化率が14.7%と低位であった。
周期律表第10族に属するニッケルと白金をそれぞれ1.8質量%、1質量%含有する参考触媒6のアセトン転化率も40.6%と不十分であった。
周期律表第8族に属するルテニウムと周期律表第10族に属するニッケルをそれぞれ5質量%ZrO(EP-L)に担持した本開示の触媒7では、ルテニウムのみを5質量%担持した本開示の触媒3、ニッケルのみを5.9質量%担持した参考触媒5よりも優れたアセトン水素化活性を与え、アセトン転化率は66.8%となった。ルテニウムとニッケル担持量をそれぞれ5質量%に固定し、担体をZrO(RC-100)、CeO、SiOとした本開示の触媒8、9、10でも高いアセトン転化率が得られた。
以上より、本開示の触媒を使用すれば、反応ガス中に二酸化炭素が共存する場合であっても、その悪影響を大きく受けることなくアセトン水素化を効果的に促進することができることが分かる。

Claims (7)

  1. 周期律表第8族に属する少なくとも1種の金属元素を含む、二酸化炭素の共存下でアセトンを水素化するためのアセトン水素化触媒。
  2. 周期律表10族に属する少なくとも1種の金属元素をさらに含む、請求項1に記載のアセトン水素化触媒。
  3. 金属元素を0.2~20質量%含む、請求項1または2に記載のアセトン水素化触媒。
  4. 周期律表第8族および10族以外の族に属する金属の酸化物をさらに含む、請求項1または2に記載のアセトン水素化触媒。
  5. 周期律表第8族から選ばれる金属元素がルテニウムであり、周期律表第10族から選ばれる金属元素がニッケルおよび/または白金である、請求項2に記載のアセトン水素化触媒。
  6. 二酸化炭素、水素、およびアセトンを含む原料ガスを、周期律表第8族に属する少なくとも1種の金属元素を含む触媒を含む触媒層に供給する工程と、
    アセトンの水素化を行う工程と、
    を含むイソプロパノールの製造方法。
  7. 原料ガスに含まれる二酸化炭素濃度が、0.01体積%以上である請求項6に記載のイソプロパノールの製造方法。
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