JP2023166706A - 燃料電池システム - Google Patents

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Hiroshi Hirose
仙光 竹内
Norimitsu Takeuchi
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Abstract

【課題】 燃料電池システム1に於いて、簡便な構成にて、カソード側触媒電極層15cに吸着したSO2を脱離させることができるようにする。【解決手段】 電解質膜14をその両側からアノード側触媒電極層15aとカソード側触媒電極層とで挟持してなる膜電極接合体を有し、アノード側触媒電極層へ水素含有ガスが供給され、カソード側触媒電極層へ酸素を含む空気が供給されて発電する燃料電池セル5を作動するシステムは、燃料電池セルの作動停止の際に、電極間の電気的接続の遮断後、カソード側触媒電極層への空気の流通を封止させると共に、アノード側触媒電極層へ流入した水素分子が電解質膜を透過してカソード側触媒電極層に到達することによりアノード側及びカソード側触媒電極層間の電位差がカソード側触媒電極層の表面に吸着しているSO2の脱離の生ずる電位差まで低減するようにアノード側触媒電極層への水素含有ガスの流入を許すよう構成される。【選択図】図3

Description

本発明は、燃料電池システムに係り、より詳細には、燃料電池の発電作動の停止及び開始の際に於ける作動制御に係る。
所謂「固体高分子形燃料電池」と称される燃料電池に於いては、電解質膜をその両側から一対の触媒電極層にて挟持してなる膜電極接合体を、一対のガス拡散層が挟持してなる積層体(単セル)が構成され、そのうちの一方の側に水素ガスを供給し(アノード側)、他方の側に酸素を含む空気を供給し(カソード側)、アノード側で水素分子が触媒電極層へ電子を放出してプロトンになる酸化反応を発生させると共に、カソード側で、酸素分子が触媒電極層から電子を受容し、電解質膜を透過してきたプロトンが結合して水を生成する還元反応を発生させて、その一連の反応で放出されるエネルギーが電気エネルギー或いは更に熱エネルギーとして取り出される。かかる燃料電池に於いて、燃料電池の動作中に空気に微量に含まれるSOなどの汚染物質や電解質膜から生ずる不純物が触媒電極層に吸着するなどして、燃料電池の出力低下を惹起することがある。そこで、そのような汚染物質や不純物に起因する燃料電池の出力低下を抑制するための技術が種々提案されている。例えば、特許文献1に於いては、カソード側の電極の酸化又は不純物の吸着による発電電圧の低下を抑制又は回復するために、燃料電池の停止時に、燃料ガス(水素ガス)の供給を停止してアノード側へ不活性なガスでパージして封止し、(水素ガスがアノード側から電解質膜を透過してカソード側へ流入しないようにした状態で、)カソード側の電位を低下させ、触媒表面の酸化物等を除去することが提案されている。また、特許文献2に於いては、燃料電池の使用に伴って電解質膜から生ずる硫黄化合物などの不純物が燃料極(アノード側)に特異吸着することにより、触媒劣化が生ずることを防止するために、適時、燃料極へ所定濃度以上のアンモニアを供給し、これにより、燃料電池内に滞留する不純物にアンモニアが配位することで、燃料極の触媒への表面への不純物の特異吸着を抑制することが提案されている。
特開2004-342406 特開2016-136478
上記に触れた如く、燃料電池セルのカソード側には酸素を含む空気が供給されるところ、燃料電池の作動中に、空気に微量に含まれるSOがカソード側の触媒電極層の表面に吸着していくと、触媒電極層の反応可能な面積が低減し、燃料電池の出力低下を惹起することとなる。従って、燃料電池システムの作動制御に於いては、適時、カソード側触媒電極層からSOを脱離させられるようになっていることが好ましい。この点に関し、カソード側触媒電極層に吸着したSOは、かかる触媒電極層の電位を十分に下げると(例えば、アノードとの電位差が殆ど無くなる程度まで下げるなど)、脱離されることが見出されているので、例えば、燃料電池の作動停止乃至起動の間に、カソード側触媒電極層の電位を十分に低下することができるようになっていれば、SOの触媒電極層への吸着により低下した出力をより確実に回復することが可能となる。また、更に、触媒電極層から脱離後のSOを燃料電池セル外へ適切に排出できるようになっていることがより好ましい。その場合、燃料電池システムに於いて、カソード側触媒電極層の電位の降下とSOの排出のための構成ができるだけ簡単であることが好ましい。
かくして、本発明の一つの課題は、燃料電池システムに於いて、できるだけ簡便な構成にて、カソード側触媒電極層に吸着したSOを脱離させることができるようにすることである。
また、本発明の更なる課題は、上記の如き燃料電池システムに於いて、カソード側触媒電極層から脱離後のSOを容易に燃料電池セル外へ排出できるようにすることである。
本発明によれば、上記の一つの課題は、電解質膜をその両側からアノード側触媒電極層とカソード側触媒電極層とで挟持してなる膜電極接合体を有し、前記アノード側触媒電極層へ水素含有ガスが供給され、前記カソード側触媒電極層へ酸素を含む空気が供給されて発電するよう構成された燃料電池セルを作動する燃料電池システムであって、
前記アノード側触媒電極層へ前記水素含有ガスを供給するアノード側流体流通手段と、
前記カソード側触媒電極層へ前記空気を供給し、前記カソード側触媒電極層に於いて生成された水を前記燃料電池セルの外へ排出するカソード側流体流通手段と、
前記アノード側及びカソード側流体流通手段の作動を制御する流体流通制御手段とを含み、
前記流体流通制御手段が、前記燃料電池セルの作動停止の際に、前記電極間の電気的接続の遮断後、前記カソード側流体流通手段に於いて前記カソード側触媒電極層への前記空気の流通を封止させると共に、前記アノード側触媒電極層へ流入した水素分子が前記電解質膜を透過して前記カソード側触媒電極層に到達することにより前記アノード側及びカソード側触媒電極層間の電位差が前記カソード側触媒電極層の表面に吸着しているSOの該表面からの脱離の生ずる電位差まで低減するように前記アノード側流体流通手段に於いて前記アノード側触媒電極層への前記水素含有ガスの流入を許すよう構成されたシステムによって達成される。
上記の構成に於いて、「燃料電池セル」は、所謂「固体高分子形燃料電池」の単セルであってよく、電解質膜及び触媒電極層は、基本的には、燃料電池セルに通常用いられる形態のものであってよい。なお、燃料電池セルに於いては、通常の態様にて、膜電極接合体は、更に、その両側にガス拡散層が積層され、アノード側のガス拡散層には、水素含有ガスを供給する流路を画定するアノード側セパレータが配置され、カソード側のガス拡散層へ酸素を含む空気を供給すると共に生成された水を排出するための流路を画定するカソード側セパレータが配置され、セパレータの間にて膜電極接合体とガス拡散層と囲繞して支持する枠部材等が挟持された構成を有していてよい。なお、燃料電池セルは、通常の態様にて、複数枚重ねられ、電気的に接続されたスタックに構成されていてよい。「水素含有ガス」は、通常この分野で使用される水素分子(気体)を含むガスであってよく、通常は、実質的に水素分子から成る水素ガスであってよいが、これに限定されない。「酸素を含む空気」は、空気又は通常この分野で使用される酸素を含むガスであってよい。「アノード側流体流通手段」とは、アノード側触媒電極層まで水素含有ガスを流入させるための流路又は管、ガス等の流体の流通を制御する流路上の弁などを含む一連の手段であってよい。「カソード側流体流通手段」とは、カソード側触媒電極層まで空気を流入させると共に酸素が消費された後の空気とカソード側で発電反応により生成された水とをカソード側触媒電極層から排出するための流路又は管、ガス及び水等の流体の流通を制御する流路上の弁などを含む一連の手段であってよい。そして、「流体流通制御手段」とは、「アノード側流体流通手段」及び「カソード側流体流通手段」に於ける流体の流通を制御する弁等を作動して、各流体の流通を制御するための指令を与える制御装置(コンピュータ、電子又は電気回路等)であってよい。「電極間の電気的接続」とは、アノード側及びカソード側の電極間にて接続され、負荷に電流を流す電気回路に於ける電気的接続であり、「電極間の電気的接続の遮断」とは、かかる電気回路に於いて実質的に電流が流れないようにすることである。なお、流体流通制御手段によるカソード側流体流通手段に於いてカソード側触媒電極層への空気の流通の封止は、カソード側流体流通手段に於ける空気の流路を閉鎖することにより達成されてよい。また、システムに於いて、アノード側及びカソード側触媒電極層間の電位差を計測するための電圧計、電極間の電流を計測するための電流計が通常の態様にて装備され、更に、アノード側及びカソード側の水素含有ガス、空気の供給圧を計測するための圧力計が装備され、それらの計測値が流体流通制御手段に於いて参照できるようになっていてよい。
上記の本発明のシステムに於いては、要すれば、燃料電池セルの作動停止の際に、カソード側触媒電極層の表面に吸着しているSOの該表面からの脱離のための処理が実行される。本発明のシステムのかかる処理では、具体的には、上記の如く、電極間の電気的接続の遮断後、まず、カソード側に於いては、カソード側流体流通手段を封止して、カソード側触媒電極層への空気の流通が止められ、これにより、カソード側触媒電極層への酸素分子の更なる供給が停止されることとなる。一方、アノード側に於いては、或る程度まで、即ち、アノード側及びカソード側触媒電極層間の電位差がカソード側触媒電極層の表面に吸着しているSOの該表面からの脱離の生ずる電位差に低減するまで、アノード側触媒電極層への水素含有ガスの流入が許される状態とされる。より詳細には、触媒電極層間に挟持された電解質膜は、基本的には、プロトンを伝導するものであるが、或る程度にて水素分子も透過させるので、(電極間の電気的接続が遮断された状態に於いて、)徐々に、アノード側に供給された水素分子の一部は電解質膜を透過してカソード側へ到達することとなる。そうすると、カソード側の触媒電極層では、空気の流通が止められた状態にある場合には、水素分子は、初めは、そこに酸素分子が残留している間は酸素と結合して水となって消費されるが、酸素分子が無くなると、アノード側触媒電極層の周囲とカソード側触媒電極層の周囲とで水素分子濃度の差が低減し、これにより、電極間の電位差が低減されることとなる。かくして、電位差がカソード側触媒電極層の表面に吸着しているSOの該表面からの脱離の生ずるレベルまで降下するまでアノード側触媒電極層への水素含有ガスの流入を許すことにより、カソード側触媒電極層の表面からSOを脱離し、低下した出力を回復することが可能となる。なお、実験によれば、単セル当たりで、アノード側に対するカソード側の電極間の電位差が0.05V以下になるまで水素分子の流入を許すと、カソード側触媒電極層の表面に吸着しているSOを該表面から脱離させられることが確認されている。かかる処理は、アノード側或いはカソード側に対して、燃料電池の作動に用いられる水素含有ガス或いは空気以外のガスを流入させるなどの特別な構成を用いることなく、燃料電池の作動の停止の際に、カソード側流体流通手段に於ける空気の流通の封止と、アノード側流体流通手段に於ける水素含有ガスの流入の調節とにより達成できるので、簡便に実行することが可能である点で有利である。
上記のアノード側及びカソード側触媒電極層間の電位差が、前記のSOの脱離が生ずる電位差以下に下がったときには、水素ガスの無用な放出を回避するべく、アノード側触媒電極層への水素含有ガスの流入は、停止されるようになっていることが好ましい(アノード側流体流通手段が封止されてよい。)。
上記の本発明のシステムの構成に於いて、燃料電池の作動の停止の際に、アノード側及びカソード側触媒電極層間の電位差ができるだけ速やかに降下し、また、電位差の降下に要する水素含有ガスの流量をできるだけ節約するために、カソード側流体流通手段の封止前のアノード側の水素含有ガスの圧力Panとカソード側の空気の圧力Pcaが、
Pan≧0.1×Pca …(1)
の関係が成立するように調節されてよい。かかる圧力の調節は、アノード側流体流通手段及びカソード側流体流通手段に於ける弁やガス又は空気を圧送するポンプ等の手段の出力を調節することにより達成されてよい。式(1)が成立するときには、アノード側の触媒電極層の周囲の水素分子の分圧PH2(≒Pan)とカソード側の触媒電極層の周囲の酸素分子の分圧PO2(≒0.2×Pca)との関係が
H2: PO2≧2:1 …(2)
となり、この状態でアノード側とカソード側とで流体流通手段を封止して、ガス又は空気の流通を遮断した場合には、理論上、アノード側の水素分子により、カソード側に残留する酸素分子の全てが還元され、速やかに、アノード側及びカソード側触媒電極層間の電位差が降下することが期待される。しかしながら、実際には、より確実に、カソード側に残留する酸素分子の全てを還元できるように、アノード側に於いては、水素含有ガスの流入が或る程度にて許されることとなる。
上記のシステムの実施の態様に於いて、カソード側流体流通手段の封止後のアノード側流体流通手段に於ける水素含有ガスの流入は、間欠的に許されるようになっていてよい。燃料電池セルの作動停止の際のカソード側流体流通手段の封止後のアノード側への水素含有ガスの流入は、上記の如く、水素分子をカソード側へ漏出させてカソード側に残留する酸素分子を還元し尽すためであるところ、水素分子の電解質膜の透過はやや遅いので、水素含有ガスがアノード側に供給された後、水素分子がカソード側まで到達するため、或る程度の時間、待つ必要がある。従って、アノード側への水素含有ガスの流入を連続的に許すと、或る水素分子がカソード側に到達する前にアノード側へ次の水素分子が供給されることとなり、流入量がカソード側に残留する酸素分子の還元に要する量を過剰に上回ってしまう場合がある。そこで、上記の如く、カソード側流体流通手段の封止後のアノード側への水素含有ガスの流入は、電極間の電位差を監視しながら、間欠的に、即ち、アノード側流体流通手段の封止と開通とを交互に繰返す態様にて実行され、水素含有ガスの流入量をできるだけ少なく抑えられるようになっていてよい。一つの態様としては、最初のカソード側の空気の流通の遮断と同時に、アノード側の水素含有ガスの流入も遮断し、その後、電極間の電位差の降下を監視しながら、かかる電位差が上記の如く十分に降下するまで、間欠的に、アノード側へ水素含有ガスを流入させるようになっていてよい。なお、水素分子がアノード側からカソード側へ十分に到達できるように、アノード側流体流通手段の流路に於いて、水素含有ガスの圧力が適当な圧力に保持できるようになっていることが好ましい。従って、アノード側流体流通手段の封止時に、アノード側触媒電極層へ供給された水素含有ガス中の水素分子がカソード側へ透過できるのに十分な圧力を保持するための封止弁がアノード側流体流通手段の流路に於いて設けられていてよい。実験によれば、かかる封止弁として、例えば、20kPaの圧力を保持できるものが利用可能である。
本発明のシステムに於いて、上記の如く、燃料電池の作動停止の際に、カソード側触媒電極層の表面から脱離されたSOは、燃料電池の作動再開の際に、燃料電池セル外へ排出されてよい。そのために、本発明のシステムでは、燃料電池の作動再開の際に、通常の燃料電池の運転に先立って、所定の電圧での定電圧発電を実行し、そこに於いて、カソード側にて生成された水がカソード側流体流通手段を通じて排出されると共に、カソード側触媒電極層の表面から脱離されたSO2も排出されるようになっていてよい。この通常の燃料電池の運転に先立つ定電圧発電処理に於ける所定の電圧は、燃料電池の作動停止の際のSOの脱離処理により電極層表面から脱離したSOが該表面に再吸着しない程度の電圧であって、SOを排出するのに十分な程度の水を生成するのに要する電流よりも過剰に電流が流れないようする電圧に設定される(燃料電池セルに於いては、発電電圧が低いほど電流が多くなるが、その分、水素分子の消費量も多くなるので、水素分子の消費量がSOを排出するのに十分な程度の水の生成に要する以上にならない程度に発電電圧を調節することが好ましい。)。かかる定電圧発電処理に於ける所定の電圧は、実験によれば、単セルに於いて、アノード側に対するカソード側の電極間の電位差にして0.75V程度であってよいことが見出されている。また、この0.75Vにて定電圧発電処理を開始した場合、実験によれば、電極間の電流密度は、一旦、1A/cmまで上昇した後、定常状態に落ち着くことが見出されているので、定電圧発電処理は、電流密度が1A/cmになるまで継続されてよい。かかる定電圧発電処理を実行すると、燃料電池の作動停止の前までにSOのカソード側触媒電極層への吸着により低下した出力が、SOの吸着がない程度まで回復(上昇)することが実験的に見出されている。
上記のSOの排出に於いても、アノード側或いはカソード側に対して、燃料電池の作動に用いられる水素含有ガス或いは空気以外のガスを流入させるなどの特別な構成を用いることなく、定電圧発電処理を実行するだけでよいので、簡便に実行することができ、有利である。
かくして、上記の本発明の構成によれば、カソード側へ供給される空気中に微量に含まれており、燃料電池の作動中にカソード側触媒電極層表面に吸着して燃料電池の出力低下を惹起するSOを、燃料電池の作動の停止の際に、カソード側流体流通手段に於ける空気の流通の封止と、アノード側流体流通手段に於ける水素含有ガスの流入の調節とを実行することで、カソード側触媒電極層表面から脱離又は除去させることが可能となる。また、この処理により、カソード側触媒電極層表面から除去されたSOは、燃料電池の再始動の際の定電圧発電処理により、セル外に排出することが可能となる。これらの処理は、アノード側或いはカソード側に対して燃料電池の作動に用いられる水素含有ガス或いは空気以外のガスを流入させるなどの特別な構成を要せずに達成でき、簡便に実行可能である点で有利である。また、適時、SOがカソード側触媒電極層から除去できるので、SOを微量に含んでいる空気をカソード側へ酸化剤ガスとして利用する場合でも、かかるSOのカソード側触媒電極層への吸着に起因する燃料電池の出力低下が生じても、出力を回復させながら、燃料電池を利用し続けることが可能となる。
本発明のその他の目的及び利点は、以下の本発明の好ましい実施形態の説明により明らかになるであろう。
図1(A)は、本実施形態が適用される燃料電池システムのスタックの模式的な斜視図である。図1(B)は、本実施形態が適用される燃料電池システムの単セルに於ける一対のセパレータと膜電極接合体を分離して表わした模式的な斜視図である。図1(C)は、本実施形態による燃料電池セルの一つの態様の模式的な断面図である。 図2は、本実施形態が適用される燃料電池システムの構成をブロック図の形式にて表わした図である。 図3(A)及び(B)は、それぞれ、本実施形態の燃料電池システムの燃料電池の作動停止時に実行される処理と、作動開始時に実行される処理の流れをフローチャートの形式にて表わした図である。 図4(A)は、燃料電池セルのサイクリックボルタンメトリーにより得られたサイクリックボルタモグラムであり、図4(B)は、その部分的な拡大図である。図に於いて、使用開始時の燃料電池セル(初期)、SO汚染後の燃料電池セル(汚染時)、SOの除去処理後の燃料電池セル(回復後)のサイクリックボルタモグラムが示されている。図4(C)は、(A)、(B)のサイクリックボルタモグラムの各例から見積もられたSOの吸着量の程度を示している。 図5(A)は、本実施形態による定電圧発電処理によるSOの排出処理前後の燃料電池セルの発電出力の維持率を示している。出力維持率は、燃料電池セルを初めて使用する際の出力に対する比である。横軸の汚染物量は、燃料電池セルの発電時間と共に増加するSOの電極への供給量を表わしている。図5(B)は、本実施形態による定電圧発電処理を実行した際の電極間の電流密度の時間変化の例を示している。
1…燃料電池スタック
2a…アノード側(水素含有ガス)供給管
2b…カソード側(空気)供給管
3a…アノード側(水素含有ガス)排出管
3b…カソード側(空気)排出側管
4a…アノード側流路弁
4b…カソード側流路弁
5…単セル
10…アノード側セパレータ
10a…燃料ガス流路
11…カソード側セパレータ
11a…酸化剤ガス流路
12…支持枠
13…膜電極接合体(発電膜)
14…電解質膜
15a、15c…アノード側触媒電極層、カソード側触媒電極層
16a、16c…アノード側ガス拡散層、カソード側ガス拡散層
20…冷却水管
25…回路スイッチ
31…電極間電圧計
32…電極間電流計
33a…アノード側流路圧力計
33b…カソード側流路圧力計
50…作動制御装置
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を好ましい実施形態について詳細に説明する。図中、同一の符号は、同一の部位を示す。
燃料電池システムの構成
(a)セル、スタックの基本構造
図1(A)を参照して、本実施形態が適用される燃料電池システムに於いて、燃料電池本体は、所謂「固体高分子形燃料電池」であり、複数の単セル5が積層されてスタック1を形成する。かかるスタック1には、アノード側供給管2aと、カソード側供給管2bとが接続されて、それぞれの供給管から、燃料ガスである水素含有ガス(H)と、酸化剤ガスである酸素ガス(O)を含む空気とが、それぞれ、アノードとカソードとに供給されて、発電反応を起こし、それぞれの電極層に於ける反応後のガスが、スタック1に接続されたアノード側排出管3aと、カソード側排出管3bとから流出される。
スタック1に於いて積層されている単セル5のそれぞれは、図1(B)に模式的に描かれている如く、アノード側セパレータ10とカソード側セパレータ11との間にて、絶縁性の樹脂等から形成された支持枠12に支持された膜電極接合体13が挟持された構成に形成される。膜電極接合体13に於いては、図1(C)に模式的に描かれている如く、電解質膜14がアノード側及びカソード側触媒電極層15a、15cに挟持され、更に、アノード側及びカソード側ガス拡散層16a、16cに挟持された積層体が形成され、この積層体13と、その周囲を囲繞するように配置された支持枠12とがアノード側及びカソード側セパレータ10、11に挟持される。電解質膜14は、典型的には、高分子電解質材料により形成されたプロトン伝導性のある厚み数μm程度のイオン交換膜であり、例えば、側鎖末端にスルホ基を有するパーフルオロスルホン酸ポリマーなどから形成されてよい。触媒電極層15a、15cは、水の生成反応を進行する触媒金属(例えば、白金若しくは白金とルテニウムなどの他の金属とから成る白金合金など)を担持するカーボン粒子とプロトン伝導性を有する高分子電解質とを含む材料が、厚み数μm程度の層状に適用されて形成される。ガス拡散層16a、16cは、カーボンクロスやカーボンペーパなどのカーボン製材料と樹脂バインダとから成る多孔質性材料の層である。そして、セパレータ10、11のガス拡散層16a、16cに面する側には、それぞれ、流体が流通する通路(流路)10a、11cが設けられ、積層体13の周囲が支持枠12によりセパレータ10、11の間に封止される。セパレータ10、11は、カーボンペーパや金属板にて形成されていてよい。
また、図1(B)を再度参照して、アノード側セパレータ10、支持枠12及びカソード側セパレータ11が重ね合わされると、それぞれの4角の開口部分2a、2b、3a、3bが整合し、更に、複数のセル5が積層することで、供給側の流路(供給管)2a及び2b、排出側の流路(排出管)3a及び3bが形成される。アノード側セパレータ10上のガス流路10aは、アノード側の供給管2aと排出管3aとに連通し、これにより、水素含有ガスは、アノード側の供給管2aからガス流路10aへ流入して膜電極接合体13上に通り、排出管3aへ排出されることとなる。一方、カソード側セパレータ11上のガス流路11aは、カソード側の供給管2bと排出管3bとに連通し、酸素を含む空気は、供給管2bからガス流路11cへ流入して膜電極接合体13上に通り、排出管3bへ排出されることとなる。なお、アノード側供給管2aとカソード側排出管3bとの間、並びに、カソード側供給管2bとアノード側排出管3aとの間に、燃料電池セルの温度を調節するための冷媒を流通する流路20が設けられていてよい。
(b)システムの作動制御のための構成
図2を参照して、上記の如き燃料電池セルが積層されたスタック1の作動を制御するシステムに於いては、燃料電池スタック1のアノードAnとカソードCaとの間の電気回路に任意の負荷(モータ、バッテリなど)が電気的に接続され、かかる負荷への電流の流通は、その回路内の任意の箇所に設けられたスイッチ25が開閉することにより、制御されてよい。また、燃料電池スタック1へのアノード側の供給管2aとカソード側の供給管2bとには、それぞれ、水素含有ガスをガス源(ボンベ等)から調圧しながら送出する弁手段(図示せず)と空気を圧送するポンプ手段(図示せず)が接続され、燃料電池スタック1へのアノード側の供給管2a及び排出管3aと、カソード側の供給管2b及び排出管3bとのそれぞれの流路に於ける流体の流通は、各管に設けられた弁4a、4bを開閉することにより、制御されてよい(これらの流路を画定する管及び弁が、アノード側流体流通手段及びカソード側流体流通手段を構成する。)。なお、図示していないが、アノード側排出管は、選択的に供給管2aへ連通し、アノードから排出されたガスが再度供給されるようになっていてよい。スイッチ25の開閉並びに各弁4a、4bの開閉は、作動制御装置50の制御指令によって実行されてよい。作動制御装置50は、通常の形式の、双方向コモン・バスにより相互に連結されたCPU、ROM、RAM及び入出力ポート装置を有するコンピュータ及び駆動回路を含むコンピュータ装置であってよく、電気回路に設けられた電圧計31及び電流計32により計測される燃料電池スタック1のアノードとカソードとの間の電圧(アノードに対するカソードの電位差)及び電流、或いは更に、アノード側供給管2a又は排出管3aとカソード側供給管2b又は排出管3bとに設けられた圧力計33a、33bにより計測されるアノード側供給管2a又は排出管3a内の圧力及びカソード側供給管2b又は排出管3b内の圧力に基づいて、スイッチ25と、各弁4a、4bとの状態を制御するよう構成されていてよい。
上記の燃料電池システムの通常の発電作動に於いては、各弁4a、4bが開状態にされ、各流路に於ける流体が流通可能となると、水素含有ガスと空気とが、それぞれ、アノード側供給管2a、カソード側供給管2bを通してアノード側流路10a、カソード側流路11cへ供給され、ガス拡散層16a、16cを経て、触媒電極層15a、触媒電極層15cに到達する。この状態で、スイッチ25が閉じられて、電流の流通が可能となると、触媒電極層15aにて、水素ガスが電子を放出してプロトンとなる水素の酸化反応が惹起され、これにより、電子は、アノードAnから負荷を通ってカソードCaへ流れ、プロトンが、電解質膜14を通って触媒電極層15cに到達することとなる。そして、触媒電極層15cに於いては、空気中の酸素が、負荷を通ってカソードCaに到達した電子を触媒電極層15cから受容して、そこで、プロトンと反応して、水を生成する酸素の還元反応を起こし、生成された水は、カソード側流路11cへ回収されてカソード側排出管3bを通ってセル外へ排出されることとなる。
空気中に含まれるSO の影響と、その除去のための処理
カソードへ供給される空気に微量にて含まれ得るSOは、触媒電極層15cの電位が或る程度以上に高いと、触媒電極層15cの表面に吸着する性質があり、これにより、燃料電池の作動中に、徐々に、触媒電極層15cの表面を覆っていくこととなり、それに伴って、酸素の還元反応の発生する領域の面積が減少し、セルの出力低下を惹起することとなる。かかる触媒電極層15cの表面に吸着したSOは、触媒電極層15cの電位を下げると、触媒電極層15cの表面から脱離することが見出されている。そこで、燃料電池システムの作動制御に於いては、触媒電極層15cの表面上からSOを除去するために、アノードに対するカソードの電位差を低減する処理が、適時、典型的には、燃料電池の作動の停止時に、実行される。
かかるSOの除去のためのアノードに対するカソードの電位差の低減について、SOをより確実に触媒電極層15cの表面から除去するためにカソードの電位差を十分に低減することが必要となる。本発明の発明者等の実験によれば、単セルに於いて、アノードに対するカソードの電位差が、例えば、0.05V以下となるほどに低減されると、SOを除去することが可能であることが確認されている。また、触媒電極層15cの表面から脱離したSOが触媒電極層15cの表面の近傍にて比較的高い濃度にて存在したままである場合、燃料電池の作動を再開した際に、カソードの電位が或る程度以上に高くなったときには、触媒電極層15cの表面に直ぐに再吸着してしまうので、燃料電池の(通常の)作動前に、触媒電極層15cの表面から脱離したSOをセルから排出できるようになっていることが好ましい。そして、上記の触媒電極層15cの表面上からのSOの脱離のためのカソードの電位の低減処理、及び更に、セルからのSOの排出処理は、できるだけ簡便に、システムに於いてできるだけ特別な構成を要せずに達成できることが好ましい。
ところで、上記の燃料電池セル5の構成(図1(C)参照)に於いて、電解質膜14は、基本的には、水溶液に含浸された状態でプロトンを伝導するものであるが、水素分子も、非常に小さいため、電解質膜14を或る程度にて透過する。従って、アノード側の流路2a、3aとカソード側の流路2b、3bのそれぞれでガス、空気の流通がある場合には、殆ど影響されないが、カソード側の流路2b、3bの弁4bが閉弁され、流通が遮断されると、水素分子がアノード側から電解質膜14を透過してカソード側へ到達することとなり、カソード側に到達した水素分子は、酸素が残っている間は、それらと反応して水に変化し、酸素が無くなると、カソード側の水素濃度が、アノード側の水素濃度と差が低減していき、アノードに対するカソードの電位差が低下することとなる(カソード側とアノード側とで水素濃度差が殆どなくなると、アノードに対するカソードの電位差は、略0となる。)。
そこで、本実施形態に於いては、カソード触媒電極層15cの表面からのSOの脱離のためのカソードの電位の低減処理として、燃料電池の作動の停止時に、負荷への電気回路のスイッチの開放による電流の遮断の後に、カソード側の流路に於いては空気の流通を遮断し、一方、アノード側の流路では、カソード触媒電極層15cの電位が、そこに吸着したSOの脱離が生ずる程度に低減するまで、水素含有ガスの流入を許す処理が実行される。かかる処理によれば、電流の遮断及びカソード側の流路の空気の流通の遮断の直後に於いてカソード側の触媒電極層15cの周囲に残留している酸素分子が、アノード側から電解質膜14を透過してくる水素分子と反応して水に変化し尽すと、カソード側の水素濃度が、アノード側の水素濃度に近づき、これにより、アノードに対するカソードの電位差を十分に低下させることが可能となる。本発明の発明者等の実験(後述)によれば、既に触れた通り、単セル当たりのアノードに対するカソードの電位差が0.05V以下となるまで、アノード側からの水素含有ガスの流入を許す処理を実行した場合に、カソード触媒電極層15cに吸着したSOの脱離が生ずることが確認されている。
更に、上記の如く、カソードの電位の低減処理によりカソード触媒電極層15cの表面から脱離したSOがそのまま触媒電極層15c周囲に滞留している場合には、燃料電池の(通常の)作動を再開したときに、カソードの電位が上昇したときに、滞留しているSOが触媒電極層15cの表面に再吸着してしまうこととなる。そこで、本実施形態に於いては、燃料電池の通常の作動に先立って、触媒電極層15cの周囲に遊離しているSOが触媒電極層15cに再吸着をしない程度の電圧にて、燃料電池セルに発電動作を実行させて水を生成し、これにより、生成された水の排出と共に、遊離しているSOをセル外へ排出する処理が実行されてよい。本発明の発明者等の実験によれば、後に説明される如く、燃料電池を単セル当たりのアノードに対するカソードの電位差が0.75V以下となる定電圧発電作動を、電流密度が1A/cmを超えるまで実行すると、SOがセル外に排出でき、燃料電池セルの出力が、触媒電極層15cへのSOの吸着による出力低下前のレベルまで回復できることが確認されている(上記の定電圧発電作動の電圧は、0.75Vより低くても良いが、ここでの電圧が低いほど、電流が多くなり、水素分子の消費量が増大するので、定電圧発電作動の電圧は、燃料電池セルの出力の回復可能な最大値に設定しておくことが好ましい。)。
燃料電池の作動の停止時及び再開時に実行される処理
本実施形態に於いては、上記の如く、燃料電池の作動の停止時に、カソード触媒電極層15cに吸着したSOの脱離のためのカソードの電位差の低減処理が実行され、燃料電池の作動の再開時に、カソード触媒電極層15cから脱離したSOをセル外に排出するための定電圧発電処理が実行される。
先ず、図3(A)を参照して、燃料電池の作動の停止時のカソードの電位差の低減処理に於いては、燃料電池の作動の停止が指示されると(例えば、モータの休止など)、スイッチ25が閉状態から開状態にされて、電気回路に於ける電流の流通が遮断される(ステップ1)。しかる後、カソード側への空気の供給圧Pcaと、アノード側への水素含有ガスの供給圧Panとが、
Pan≧0.1×Pca …(1)
の関係が成立するように調節され(ステップ2)、それから、カソード側の弁4bを閉鎖して、カソード側の流体の流通が封止され(ステップ3)、アノード側の弁4aを閉鎖して、アノード側の流体の流通が封止されてよい(ステップ4)。なお、アノード側の流路を封止するための弁としては、例えば、アノード側の封止された空間内の圧力を20kPa以上に保持できるものが用いられてよい。この状態に於いて、カソード側の封止された空間内の酸素分子の分圧PO2と、アノード側の封止された空間内の水素分子の分圧PH2との関係は、
H2: PO2≧2:1 …(2)
となるので、水素分子がアノード側から電解質膜14を徐々に透過してカソード側へ移行すると、カソード側の酸素分子を還元し尽し、アノード側とカソード側との水素濃度の差が殆ど無くなって、アノードに対するカソードの電位差が低下することが期待される。
そこで、本実施形態に於いては、カソード側とアノード側の流体の流通の封止後、水素分子がアノード側からカソード側へ移行する時間、待機し(ステップ5)、アノードに対するカソードの電位差、即ち、電極間の電圧が、カソード触媒電極層表面に吸着しているSOが該表面から離脱する電圧(閾値電圧)まで低下したか否かが確認される。カソード触媒電極層表面に吸着しているSOが該表面から離脱する電圧は、既に触れた如く、セル当たりの電圧OCVにして、例えば、0.05V以下であってよい(具体的に電圧値は、実験等に基づいて種々変更されてよい。)。ここで、セル当たりの電圧OCVが閾値電圧を下回らない場合には、アノード側の流体流通手段が一時的に開放され、アノード側への水素含有ガスの流入が許されて、水素含有ガスの追加供給が為される。そうすると、アノード側に供給された水素分子が電解質膜14を徐々に透過してカソード側へ移行することとなるので、ステップ5の待機と、セル当たりの電圧OCVが閾値電圧を下回ったか否かの確認が繰返される。そして、かかるステップ7→ステップ4→ステップ5→ステップ6の処理が繰返されて、水素含有ガスのアノード側への流入が、セル当たりの電圧OCVが閾値電圧を下回るまで許されることとなる。かくして、セル当たりの電圧OCVが閾値電圧を下回ると、カソード触媒電極層表面に吸着しているSOが該表面から離脱することが期待されるので、燃料電池の作動の停止処理が完了する。
なお、上記の処理に於いて、水素含有ガスのアノード側への流入は、セル当たりの電圧OCVが閾値電圧を下回るまで連続的に実行されてもよく、そのような場合も本実施形態の範囲に属する。
次に、図3(B)を参照して、燃料電池の作動の再開する際に於いては、通常の発電作動を開始するのに先立って、上記の如く、カソード触媒電極層15cから脱離したSOをセル外に排出するための定電圧発電処理が実行される。具体的には、スイッチ25を閉状態にして、電気回路に於いて、電流が流通可能な状態にした後(ステップ11)、カソード側への空気の供給とアノード側への水素含有ガスの供給を再開し、セル当たりの発電電圧が所定の電圧となるように発電電圧を調節して発電作動が実行される(ステップ12-定電圧発電)。かかる定電圧発電により、カソード側に於いて水が生成されて、カソード側の流路を通じて、セル外に排出されるので、その水と一緒に、SOもセル外に排出されることとなる。かかる定電圧発電に於いて発電電圧の所定の電圧への調節は、電圧計を監視しながら、負荷の抵抗を調節するなどして実行されてよい。また、「所定の電圧」は、SOのカソード触媒電極層への再吸着を生じない程度の最大の電圧であってよい。即ち、電圧が高過ぎると、SOのカソード触媒電極層への再吸着が生じるが、電圧が低過ぎると、電流が増大し、水素分子の消費量が多くなるので、「所定の電圧」は、できるだけ水素の消費量を抑えつつ、SOのカソード触媒電極層への再吸着の発生しない電圧に設定されることが好ましい。実験によれば、後に説明される如く、かかる「所定の電圧」は、0.75Vにすると、良好な結果が得られることが見出されている。
上記の定電圧発電処理を実行した場合、電流は、徐々に増大して最高値に達した後に、定常状態に落ち着くことが見出されているので、上記の定電圧発電処理を実行する期間の目安としては、電流が基準値に達するまでであってよい(ステップ13)。実験によれば、後に説明される如く、かかる電流の最大値は、セル当たりで0.75Vの定電圧発電の場合には、発電面に於ける面積当たりの電流密度にして、1A/cm程度なので、セル当たりで0.75Vの定電圧発電を実施する場合には、定電圧発電処理は、電流密度iが1A/cmを超えるまで、実施されてよい。
そして、ステップ12、13の定電圧発電処理を実施すると、SOがカソード触媒電極層の周囲から排出され、セルの出力が回復されることとなる(上記の図3(A)の処理の後、カソード側にも水素ガスが存在することとなるが、発電動作の開始時に空気が送入されることで、カソード側の水素ガスは、パージされることとなる。)。
アノードに対するカソードの電位差の低減によるカソード触媒電極層からのSO の脱離
図3(A)に示されている本実施形態の処理に従って、アノードに対するカソードの電位差を低減する処理を実行することによって、カソード触媒電極層からのSOを脱離させられることは、以下の実験により確認された。
実験に於いては、燃料電池セルが、SOの汚染前の状態(使用開始したばかりの状態)、SOの汚染後の状態及び本実施形態によるSO除去(図3(A))及び排出(図3(B))の後の状態のそれぞれであるときに、サイクリックボルタンメトリーを用いて、電極上のSOの吸着量の程度を確認した。サイクリックボルタンメトリーに於いては、カソードを作用極に、アノードを参照極に、それぞれ接続し、カソードの電位を掃引し、電極間電圧と電流密度を計測した。なお、測定に於いては、アノードへは水素ガスを流し、カソードへは、窒素ガスを流して、酸素をパージした後、流通を封鎖した。
図4(A)、(B)は、燃料電池セルが上記の三つの状態にあるときのサイクリックボルタモグラムを示している((B)は、(A)の部分的な拡大図である。)。図に於いて、「初期」は、SOの汚染前の状態、即ち、カソード側触媒電極層にSOが吸着する前の状態であり、「汚染時」は、発電が或る期間に亙って実行されて、カソード側触媒電極層に有意なSOが吸着した後の状態であり、「回復後」は、本実施形態によるSO除去及び排出処理の実行後の状態である。なお、「汚染時」のセルは、その発電に於いてSOを含む空気を用い、電極面積当たりのSOの供給量が13.2μg/cmとなった状態のものである。また、「回復後」に於いては、SO除去処理に於いて電極間電圧OCVを0.05V以下とし、SO排出処理に於いて0.75Vの定電圧処理を行った。図4(A)、(B)を参照すると、「初期」と「汚染時」の結果を比較して、「汚染時」の結果に於いては、0.2~0.3Vの範囲に於いて、「初期」の値からの電流密度の極大変化(又は極小変化)pが観察されることが理解される。かかる電流密度変化pは、カソード触媒電極層にSOが吸着しており、SOに於いて電子の授受が生じたために発生する。これに対して、「回復後」のセルの結果を参照すると、「汚染時」の結果に見られていた電流密度変化pが略消失していることが理解される。また、電流密度変化pが観察されている領域の変化分の面積a(図4(B))が、カソード触媒電極層に吸着しているSOの量に対応するところ、かかる電流密度変化pの観察領域に於ける変化分の面積aを、「初期」、「汚染時」及び「回復後」とで比較すると、図4(C)に示されている如く、「汚染時」には、SO吸着量が「初期」に対して増大したが、そのようなセルに対して、本実施形態によるSO除去及び排出処理を実行すると(「回復後」)、SO吸着量が「初期」と同程度まで低減したことが観察された。このことから、本実施形態の教示に従って電極間電圧OCVを(例えば、0.05V以下となるまで)低減する処理により、カソード触媒電極層に吸着しているSOを脱離させられることが示された。
定電圧発電処理によるSO の排出
カソード触媒電極層から脱離したSOを定電圧発電処理によりセル外に排出し、セルの出力が回復することは、以下の実験により確認された。
実験に於いては、燃料電池セルに於いて、SOを含む空気を用いて発電動作を或る時間に亙って実行した後に、図3(A)のSOの脱離のための処理を実行し、更に、いくつかの電圧にて定電圧発電処理を実行し、しかる後、出力を計測した。定電圧発電処理は、電流が一旦上昇した後に低下して安定化するまで継続した。この実験に於いては、セルの使用開始直後の出力に対する定電圧発電処理後の出力の割合(出力維持率)が高いほど、触媒電極層から離脱したSOを定電圧発電処理に於いて触媒電極層に再吸着させずにセル外により多く排出できていることとなる。
図5(A)は、上記の処理後の燃料電池セル出力維持率を示している。同図に於いて、△:0.75V(回復時)、□:0.8V(回復時)、×:0.85Vは、横軸の発電時間に亙って発電動作の実行後に、SOの脱離処理を行い、表記の電圧にて定電圧発電処理を実行した場合の出力維持率を示している(0.75V、0.8Vの場合は、発電動作は約100時間実行した。0.85Vの場合は、発電動作を図示の各点の時間に亙って実行した後にSOの脱離処理と定電圧発電処理を実行した。)。なお、参考のため、発電動作後にSOの脱離処理及び排出処理を実行しない場合の例(汚染時)と、SOを含まない空気を用いて発電動作を実行した場合の例(汚染なし)の、横軸の発電時間に亙って発電動作の実行後の出力維持率も示されている。下の横軸の汚染物量は、空気と共にカソードへ供給されたSOの供給量を示している。
図5(A)を参照して理解される如く、発電動作を約100時間に亙って実行した後に、SOの脱離処理及び排出処理を実行しない場合には、出力維持率は、83%程度まで低下したのに対し、SOの脱離処理と定電圧発電処理を実行すると、出力維持率の回復が見られ、特に、定電圧発電処理に於いて電圧を0.75Vとすると、出力維持率の低下が殆ど見られないほど、出力が回復することが示された(電圧が0.8V以上のときに、出力維持率が十分に回復しないのは、脱離したSOが触媒電極層に再吸着するためであると考えられる。)。なお、図5(B)に例示されている如く、定電圧発電処理に於いて電圧を0.75Vとすると、セルの電極面積当たりの電流密度は、1(A/cm)まで上昇した後に徐々に低下して安定化する。電流量は、発電反応で生成されてSOをセル外へ排出する水量に対応するので、上記の定電圧発電処理は、電圧を0.75Vとしたときに、電流密度が1(A/cmを超える程度まで実行すればよいことが理解される。これらの結果から、定電圧発電処理により、脱離したSOを排出し、セルの出力を回復することが可能であり、その際、好適には、電圧を0.75V以下とし、セルの電極面積当たりの電流密度が1(A/cm)を上回るまで継続すればよいことが示された。
以上の説明は、本発明の実施の形態に関連してなされているが、当業者にとつて多くの修正及び変更が容易に可能であり、本発明は、上記に例示された実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の概念から逸脱することなく種々の装置に適用されることは明らかであろう。

Claims (1)

  1. 電解質膜をその両側からアノード側触媒電極層とカソード側触媒電極層とで挟持してなる膜電極接合体を有し、前記アノード側触媒電極層へ水素含有ガスが供給され、前記カソード側触媒電極層へ酸素を含む空気が供給されて発電するよう構成された燃料電池セルを作動する燃料電池システムであって、
    前記アノード側触媒電極層へ前記水素含有ガスを供給するアノード側流体流通手段と、
    前記カソード側触媒電極層へ前記空気を供給し、前記カソード側触媒電極層に於いて生成された水を前記燃料電池セルの外へ排出するカソード側流体流通手段と、
    前記アノード側及びカソード側流体流通手段の作動を制御する流体流通制御手段とを含み、
    前記流体流通制御手段が、前記燃料電池セルの作動停止の際に、前記電極間の電気的接続の遮断後、前記カソード側流体流通手段に於いて前記カソード側触媒電極層への前記空気の流通を封止させると共に、前記アノード側触媒電極層へ流入した水素分子が前記電解質膜を透過して前記カソード側触媒電極層に到達することにより前記アノード側及びカソード側触媒電極層間の電位差が前記カソード側触媒電極層の表面に吸着しているSOの該表面からの脱離の生ずる電位差まで低減するように前記アノード側流体流通手段に於いて前記アノード側触媒電極層への前記水素含有ガスの流入を許すよう構成されたシステム。
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