JP2023166202A - 粒子及びその製造方法 - Google Patents

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正典 山崎
Masanori Yamazaki
拓 丸山
Hiroshi Maruyama
裕子 早川
Yuko Hayakawa
慎太郎 上野
Shintaro Ueno
智志 和田
Tomoshi Wada
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University of Yamanashi NUC
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University of Yamanashi NUC
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Abstract

【課題】誘電損失が低く、かつ熱膨張率の低い新規材料を提供する。【解決手段】結晶相を備える粒子であって、前記結晶相は下記式[1]で示される組成を示し、前記粒子のアスペクト比が1.20以上である、粒子。原料を混合する工程及び熱処理工程を含み、前記原料はA元素源、Si源及び添加化合物を含み、前記添加化合物は以下式[2]を満たし、かつ下記式[2]におけるmは、得られる前記粒子に係る前記式[1]におけるnと等しい値である、該粒子の製造方法。(AO)nSiO2・・・[1](Aは1種以上の二価の金属元素。0.8≦n≦2.5)(BbCcDd)mSiO2+m・・・[2](Bは1種以上の一価の金属元素。CはAと異なる1種以上の二価の金属元素。Dは1種以上の三価の金属元素。b、c、及びdは0以上1以下。0.8≦m≦2.5。b+c+d=1。b+2c+3d=2)【選択図】図2

Description

本発明は、結晶性の粒子とその製造方法に関する。本発明はまた、この粒子を含む材料及び複合体に関する。
樹脂に電気、機械、熱伝導などの物性を付与することを目的として、様々な無機フィラーを添加した複合体が開発されている。近年、ミリ波を含む高周波領域の電波を通信などに応用するに当たり、通信機器部材等において、高周波領域における誘電損失の低い材料が求められている。誘電損失の低い材料として、各種セラミックス材料等が提案されており、中でも高周波領域における誘電損失が小さく、且つ絶縁抵抗が高い材料として、例えば金属・ケイ素複合酸化物が挙げられる。これらの材料は通常粒子状の材料として用いられ、電子基板材料の低誘電フィラーとしても検討されてきた(特許文献1~2)。
しかしながら、従来技術で得られる前記金属・ケイ素複合酸化物の粒子はいずれも球状様であるため、複合体の熱膨張を抑制する効果は十分得られないと予想される。
一方で、近年、通信機器・部材の小型化により、誘電特性だけでなく寸法精度にも優れた材料が求められている。これに従い、誘電損失が低く、かつ熱膨張率の低い材料が求められている。
特開2016-222517号公報 特開2003-2640号公報
本発明は、このような事情に鑑み、誘電損失が低く、かつ熱膨張率の低い新規材料を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、金属及びケイ素を含む複合酸化物の結晶相を備え、かつアスペクト比が一定以上である粒子、及び該粒子を備える材料を用いることで上記課題を解決できることを見出した。
即ち、本発明は、少なくとも以下を含む。
<1> 結晶相を備える粒子であって、
前記結晶相は下記式[1]で示される組成を示し、
前記粒子のアスペクト比が1.20以上である、粒子。
(AO)SiO ・・・[1]
(式[1]中、Aは1種以上の二価の金属元素を含み、
Si及びOはそれぞれ珪素及び酸素を示し、
0.8≦n≦2.5を満たす。)
<2> 前記AがMg、Ca,Sr,Ba、Zn、Co及びMnから成る群より選ばれる1種以上の元素を含む、<1>に記載の粒子。
<3> 前記AがMg及びZnから成る群より選ばれる1種以上の元素を含む、<1>に記載の粒子。
<4> 前記結晶相がステアタイト(MgO・SiO)、フォルステライト((MgO)・SiO)、及びウィレマイト((ZnO)・SiO)から成る群より選ばれる1種以上の結晶相を含む、<1>に記載の粒子。
<5> 前記結晶相がフォルステライト((MgO)・SiO)である、<1>に記載の粒子。
<6> 前記結晶相から成る長径0.8μm以上の単結晶子を含む、<1>に記載の粒子。
<7> 前記結晶相から成る短径60nm以上の単結晶子を含む、<1>に記載の粒子。
<8> 真球度が0.75未満である、<1>に記載の粒子。
<9> (100)に成長方位を有する単結晶粒子である、<1>に記載の粒子。
<10> <1>に記載の粒子を1個以上含む、材料。
<11> <1>に記載の粒子の製造方法であって、
前記製造方法は少なくとも、原料を混合する工程及び熱処理工程を含み、
前記原料はA元素源、Si源及び添加化合物を含み、
前記添加化合物は以下式[2]を満たし、かつ
下記式[2]におけるmは、得られる前記粒子に係る前記式[1]におけるnと等しい値である、粒子の製造方法。
(BSiO2+m・・・[2]
(式[2]中、Bは1種以上の一価の金属元素から成り、
Cは前記式[1]におけるAと異なる1種以上の二価の金属元素から成り、
Dは1種以上の三価の金属元素から成り、
Si及びOはそれぞれ珪素及び酸素を示し、
b、c、及びdはそれぞれ独立に0以上1以下であり、
0.8≦m≦2.5であり、かつ
b+c+d=1、およびb+2c+3d=2を満たす。)
<12> さらに、洗浄工程及び/又は乾燥工程を含む、<11>に記載の粒子の製造方法。
<13> 前記原料がさらにフラックス化合物を含み、前記フラックス化合物がアルカリ金属及びハロゲン元素のいずれか一方又は両方を含む塩を含む、<11>に記載の粒子の製造方法。
<14> 少なくとも、<1>に記載の粒子を含む、複合体。
<15> 更に別の材料を含み、前記別の材料が樹脂、ガラス及びセラミックスからなる群から選ばれる1種以上を含む、<14>に記載の複合体。
<16> 前記樹脂が液晶ポリマー、ポリオレフィン、ポリイミド、及びフッ素樹脂から成る群より選ばれる1種以上を含む、<14>に記載の複合体。
<17> 前記複合体において前記粒子が占める質量割合が20%以上80%以下である、<14>に記載の複合体。
<18> 20℃から120℃における線熱膨張係数(CTE)の平均値が90×10-6/K以下である、<14>に記載の複合体。
<19> 比誘電率(ε)が3.0以下である、<14>に記載の複合体。
<20> 誘電正接(tanδ)が0.005以下である、<14>に記載の複合体。
本発明によれば、誘電損失が低く、かつ熱膨張率が低い材料を提供することができる。
実施例1の粒子と比較例1の粒子のX線回折パターンである。 実施例1の粒子のSEM写真である。 実施例1の粒子のTEM写真と回折パターンである。 比較例1の粒子のSEM写真である。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本発明は、1つの実施形態においては、結晶相を備える粒子であって、
前記結晶相は下記式[1]で示される組成を示し、
前記粒子のアスペクト比は1.20以上である、粒子である。
(AO)SiO ・・・[1]
(式[1]中、Aは1種以上の二価金属元素を含み、
Si及びOはそれぞれケイ素及び酸素を示し、
0.8≦n≦2.5を満たす。)
前記式[1]におけるnの値は通常0.8以上、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.2以上であり、通常2.5以下、好ましくは2.2以下である。前記nは用途及び目的とする結晶相により適宜調整してよく、前記nが上記範囲であることで、構造安定性に優れ、誘電損失の低い材料を提供することができる。
前記Aは1種以上の二価金属元素を含み、好ましくはMg、Ca,Sr,Ba、Zn、Co及びMnから成る群より選ばれる1種以上の元素を含み、より低誘電率の材料を提供する観点からは、より好ましくはMg及びZnから成る群より選ばれる1種以上の元素を含み、特定の実施形態において、AはMg又はZnである。
特定の実施形態においては、前記結晶相はステアタイト(MgO・SiO)、フォルステライト((MgO)・SiO)、及びウィレマイト((ZnO)・SiO)から選ばれる1種以上の化合物を含み、該実施形態においては、好ましくは、前記結晶相はフォルステライト((MgO)・SiO)を含み、特定の実施形態においては前記結晶相はフォルステライト((MgO)・SiO)である。上記の化合物はいずれも誘電損失が低い化合物であり、前記結晶相が上記化合物を含むことで、誘電損失の低い材料を提供できる。
一実施形態において、前記粒子は、前記結晶相からなる単結晶子を含み、好ましくは長径が0.8μm以上、より好ましくは1.2μm以上、更に好ましくは2.0μm以上、特に好ましくは5.0μm以上の単結晶子を含む。単結晶子の長径の上限値は特に制限されず、用途に応じて適宜調節することができる。
一実施形態において、前記粒子は、前記結晶相からなる単結晶子を含み、好ましくは短径が60nm以上、より好ましくは70nm以上、更に好ましくは80nm以上、特に好ましくは100nm以上の単結晶子を含む。単結晶子の短径の上限値は長径より短ければよく、特に制限されず、用途に応じて適宜調節することができる。
ここで、粒子の長径とは、当該粒子を2枚の平行な板で挟んだときに、この板間の距離が最も大きくなる箇所の長さに相当し、短径とは、通常、長径と交叉する方向において、最も短い箇所の長さに相当する。
前記粒子が長径又は短径が大きい単結晶子を含み、好ましくは長径又は短径が大きい単結晶粒子であることで、粒子に含まれる粒界が減少し、粒界に起因する誘電損失が減少した粒子及び材料を得ることができる。
前記粒子のアスペクト比は、通常1.20以上であるが、好ましくは1.50以上、より好ましくは2.0以上、更に好ましくは3.0以上、より更に好ましくは4.0以上、特に好ましくは5.0以上、とりわけ好ましくは8.0以上である。アスペクト比の上限は特に制限されず、高ければ高いほど良いが、通常1000以下であり、500以下、200以下、100以下、50以下、30以下または20以下としてもよい。
前記粒子の真球度は通常0.85未満であり、好ましくは0.8未満、より好ましくは0.75未満、更に好ましくは0.7未満である。真球度の下限は特に制限されず、低ければ低いほどよいが、通常0.0001以上である。
前記アスペクト比が上記下限以上であることで、或いは真球度が上記上限未満であることで、球状粒子などのアスペクト比が小さい粒子或いは真球度が高い粒子と比べ、粒子同士の接触面積が大きくなり、従って複合体に用いた際に熱伝導および耐変形強度に優れ、熱膨張率が低い材料を提供することができる。この様な材料を用いることで、寸法精度に優れた材料を提供することができる。
なお、本明細書において、粒子の長径及び短径は、後掲の実施例の項に記載されるように、走査型電子顕微鏡観察により測定して求める。また、アスペクト比は長径/短径比として算出する。また、真球度は参考文献(John R.Grace and Arian Ebneyamini, Particuology Volume 54, February 2021, Pages 1-4)を参考に、走査型電子顕微鏡観察において粒子の周囲長を測定し、該粒子と同面積を持つ円の円周を、前記粒子の周囲長で除した値により求める。
一実施形態において、前記粒子は、好ましくは特定の一方位に主な結晶成長方位を有し、より好ましくは(100)に成長方位を有する単結晶粒子である。この様な構成である場合、高アスペクト比であるとともに単結晶から成る粒子を得ることができ、熱膨張率が低く、かつ比誘電率および誘電損失を低く抑えることができる。
なお、粒子の成長方位は、後掲の実施例の項に記載の通り、透過型電子顕微鏡観察により確認することができる。
上記のアスペクト比、更には長径、短径及び真球度の好ましい値、好ましい成長方位を満たす粒子は、例えば後述の本発明の粒子の製造方法に従って、特定の添加化合物を用いることで得ることができる。
本実施形態に係る粒子は用途を問わないが、例えば緻密なセラミックス焼結体を作製する場合の高純度かつ高結晶性の原料粉末として使用することもできる。また、複合絶縁材料のフィラーとして使用される場合に、樹脂の誘電損失を維持した状態で熱膨張率の低いフィラーとして使用することもできる。
本発明は、1つの実施形態において、前記粒子を少なくとも1個以上含む、材料である。
前記材料は粉末状粒子群であってもよく、分散材、添加物などと混合された混合材料であってもよく、溶剤を含む溶液又はスラリー等の流体状物質であってもよい。或いは後述するように樹脂などの連続相と混合された複合材であってもよい。
本実施形態における材料は、材料を用いて製造する製品の用途、加工段階、形状、態様、或いは材料を用いる方法の態様に応じて、常法の範囲でその使用態様を変更することができる。
本発明は1つの実施形態においては、前記粒子の製造方法であって、前記製造方法は少なくとも、原料を混合する工程、及び熱処理工程を含み、前記原料はA元素源、Si源及び添加化合物を含み、前記添加化合物は以下式[2]を満たす、粒子の製造方法である。
(BSiO2+m・・・[2]
(式[2]中、Bは1種以上の一価の金属元素から成り、
Cは前記式[1]におけるAと異なる1種以上の二価の金属元素から成り、
Dは1種以上の三価の金属元素から成り、
Si及びOはそれぞれ珪素及び酸素を示し、
b、c、及びdはそれぞれ独立に0以上1以下であり、
0.8≦m≦2.5であり、かつ
b+c+d=1、およびb+2c+3d=2を満たす。)
ここで、前記mの値は、得られる粒子に係る式前記[1]におけるnと同じ値であることが好ましい。
なお、本実施形態に係る製造方法は、そのまま前記粒子を製造する方法として用いることができる。
<原料>
前記各元素の原料、すなわち、A元素源、Si源は特に制限されず、例えば各元素の酸化物、水酸化物、ハロゲン化物の他、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩などの無機塩、酢酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩、アルコキシド等の有機錯体、等を用いることができる。また、前記各元素の化合物は水和物等であってもよい。また、A元素及びSiの両方を兼ねる化合物を用いてもよく、例えば、A元素のオルトケイ酸塩を用いることもできる。
また、各元素源は、結晶格子中に水分子を含まないことが好ましい。この様な原料を用いることで、水分を含まず、良好な特性を示す粒子を得ることができる。
酸素(O)の導入方法は特に制限されず、各元素の原料に酸素原子を含む化合物を用いること、熱処理を空気等酸素含有雰囲気中で行うこと、等で導入することができる。
本実施形態において、前記原料は、下記式[2]を満たす、添加化合物を含み、かつ下記式[2]におけるmは、得られる粒子に係る前記式[1]におけるnと等しい値である。
(BSiO2+m・・・[2]
(式[2]中、Bは1種以上の一価の金属元素から成り、
Cは前記式[1]におけるAと異なる1種以上の二価の金属元素から成り、
Dは1種以上の三価の金属元素から成り、
Si及びOはそれぞれ珪素及び酸素を示し、
b、c、及びdはそれぞれ独立に0以上1以下であり、
0.8≦m≦2.5であり、かつ
b+c+d=1、およびb+2c+3d=2を満たす。)
前記B元素には例えばLi、Na、K、Rb、Cs及びCuから成る群より選ばれる1種以上の元素を用いることができる。
前記C元素は前記Aと異なる二価の金属元素であればよく、例えばMg、Ca、Sr、Ba、Zn、Co及びMnから成る群より選ばれる1種以上の元素を用いることができる。
前記D元素は、三価の金属元素であればよく、例えばB、Al、Ga、希土類元素、および遷移金属元素のいずれか1種以上の元素を用いることができる。
上記の様な添加化合物を用いることで、より穏やかな条件で結晶を成長させることができ、結晶性が高く、長径若しくは短径の大きい単結晶子を含む粒子を得ることができる。更には、アスペクト比の高い粒子或いは真球度の低い粒子を得ることができ、又は、(100)に成長方位を有する単結晶粒子を得ることができる。
この理由は定かではないが、例えば、目的物と添加化合物とがA元素以外の組成において一致する添加化合物を用いることで、B、C、及びD元素又は前記各元素を含む化合物ないしイオン等と、A元素又はA元素を含む化合物ないしイオンが反応中に生じた際に、両者が置換することで目的とする粒子が生成し、その結果、組成又は構造の異なる原料化合物から目的物を合成する場合に比べ、穏やかな条件で目的物を得ることができる可能性が挙げられる。
なお、添加化合物は、Si源を兼ねるものであってもよい。
添加化合物としては、前記式[2]を満たす化合物であれば良く、例えば後述の実施例に示す様に、AがMgであり、n=m=2であるMgSiOを製造する際には、CaSiO、SrSiO、BaSiO、ZnSiO、CoSiO、MnSiO、LiFeSiO、LiVSiO等を用いることができる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
上記の内容は、A元素とC元素に当たる各元素を読み変えても良い。
前記製造方法は、原料としてさらにフラックス化合物を用いてもよく、前記フラックスは好ましくはアルカリ金属及び/又はハロゲン元素を含む塩であり、より好ましくはアルカリ金属とハロゲン元素の両方を含む塩である。また、前記フラックス化合物は1種のみを用いても良く、2種以上を組み合わせ用いることもできる。
前記アルカリ金属元素は特に制限されないが、好ましくはLi、Na及びKから成る群より選ばれる1種以上の元素を含む。
前記ハロゲン元素は特に制限されないが、好ましくはF及び/又はClを含む。
フラックス化合物としては、具体的には塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム等が挙げられる。
<原料を混合する工程>
前記原料を混合する工程においては、通常、粉末状の各原料を用い、混合する。原料の混合法は、特に限定されるものではなく、乳鉢、ボールミル、ジェットミル等通常の機器を用い、湿式又は乾式で混合することができるが、好ましくは乾式混合である。
原料の混合において、A元素とSi元素との割合は、目的とする粒子のA/Siモル比をxとして、通常0.5以上、好ましくは0.8以上、より好ましくは1.0以上であり、通常4.0以下であり、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.5以下、さらに好ましくは2.0以下である。
A/Siモル比が上記範囲であることで、目的とする組成の結晶相を効率良く得ることができる。
一実施形態において、添加化合物の使用量は、全原料中に含まれるA元素の総量/B、C、D元素の総量のモル比A/(B+C+D)が0.8以上、好ましくは0.9以上、より好ましくは1.0以上となる様に用いる。前記モル比A/(B+C+D)の上限は特に制限されず、大きくても良いが、一実施形態においては通常5.0以下、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.0以下、更に好ましくは2.0以下、特に好ましくは1.5以下となる様に用いる。モル比A/(B+C+D)が上記下限以上であることで添加化合物の残存を低減でき、上記上限以下であることで過剰なA源由来の不純物の生成を抑制できる。
別の観点では、前記添加化合物の使用量は、全原料中に含まれるSi元素の総量/得られる粒子に含まれるA元素の総量のモル比Si/Aが0.4以上、好ましくは0.45以上となる様に用いる。前記モル比Si/Aの上限は通常0.75以下、好ましくは0.6以下、より好ましくは0.55以下となる様に用いる。モル比Si/Aが上記下限以上であることで、反応に添加化合物を利用して穏やかな反応条件で目的物を得ることができ、上記上限以下であることで過剰なSi源由来の不純物の生成を抑制できる。
フラックス化合物を用いる場合、その使用量には特に制限はないが、Si源に対して通常200質量%以上、好ましくは500質量%以上であり、通常2500質量%以下、好ましくは2200質量%以下である。フラックス化合物の使用量が上記下限以上であることで、フラックスが溶融した時に、各原料が十分な流動性を得ることができ、また上記上限以下であることで、原料化合物の濃度を確保でき、反応性が向上する。
<熱処理工程>
原料を混合する工程の後、熱処理を行うことで、目的の化合物から成る結晶相を含む粒子を得ることができる。熱処理の雰囲気は特に制限されないが、酸素欠乏を防止する観点からは、大気中など酸素含有雰囲気で行うことが好ましい。
熱処理の温度は、通常200℃以上、好ましくは300℃以上、より好ましくは400℃以上であり、通常1500℃以下、好ましくは1200℃以下、より好ましくは1100℃以下、更に好ましくは1000℃以下である。熱処理の温度が上記下限以上であることで反応性が向上し、上記上限以下であることで前記結晶相のガラス転移などを防ぐことができる。
なお、前記フラックス化合物を適切に利用することで反応温度を下げ、より穏やかな条件で反応を行い、結晶性の高い粒子を得ることもできる。
熱処理の加熱時間は、加熱温度によっても異なるが、通常1時間以上、20時間以下である。
前記製造方法は、好ましくは、前記工程に加え、洗浄工程、乾燥工程及び粉砕工程の1つ以上を含む。これらの工程を含むことで、不純物を適切に除去し、純度の高い目的の粒子を得ることができる。
<洗浄工程>
洗浄工程は通常、熱処理後に行う。洗浄工程を含むことで、未反応物やフラックス化合物、添加化合物など、原料由来の不純物を除去することができる。
洗浄工程における溶媒は特に制限されず、原料由来の不純物がよく溶解する溶媒を適宜選ぶことができ、適切な溶媒を選択することで、不純物を選択的に取り除き、目的物のみを純度高く得ることができる。
前記不純物に応じた溶媒の具体例を挙げると、例えば原料由来の水、無機塩等に対しては水、アルコールほか極性溶媒を用いることができ、MgO、ZnO等の酸に溶解しやすい金属化合物を取り除く必要がある場合には酢酸、塩酸など各種酸を用いることができ、疎水性不純物があれば有機溶媒を用いてもよい。洗浄工程は同種又は異種の溶媒で複数回行ってもよい。
また、洗浄の方法は制限されないが、例えば吸引濾過、遠心分離、溶媒中での撹拌、煮沸など、常法を用いることができる。
<粉砕工程>
本製造方法においては、洗浄工程の前又は後に、得られた粒子を粉砕してもよい。粉砕を行うことで、凝集を起こした粒子を分離させ、アスペクト比の高い粒子が得られるとともに、凝集していた粒子間に含まれる不純物や溶媒などを引き離し、洗浄又は乾燥工程で除去し易くすることができる。
<乾燥工程>
洗浄工程もしくは粉砕工程後、粒子は、各種溶媒、或いは吸着水などを除去する目的で、乾燥させてもよい。乾燥方法は特に制限されないが、乾燥機、真空乾燥機、凍結乾燥機などにより乾燥することができる。
乾燥する際の温度雰囲気は50℃以上300℃未満であり、水を蒸発させるのに十分な温度であることが好ましい。
本発明において電子顕微鏡観察による一次粒子径とは、走査型電子顕微鏡を用いて観察される個々の微粒子の粒子径を指す。
本発明は一実施形態において、少なくとも前記粒子を含む、複合体である。
特定の実施形態においては、前記複合体は更に別の材料を含む。
前記別の材料は特に制限されず、例えば樹脂、ガラス、セラミックス、結晶性無機化合物、炭素繊維などを用いることができる。用途に応じて別の材料と併せることで、粒子と別の材料との双方の利点を兼ね備える材料を得ることができる。
特定の実施形態においては、前記別の材料に樹脂を用いることができる。樹脂の種類は特に制限されないが、誘電損失の低い複合材を得る用途においては、例えば液晶ポリマー、ポリオレフィン、ポリイミド、及びフッ素樹脂(fluorocarbon polymers)等を用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
前記粒子と前記別の材料は互いに混ざり合って複合体となっていればその態様は特に制限されないが、一方を分散相、添加材又はフィラーとして用い、もう一方を連続相(母材、マトリックス等と読み変えてもよい)として用いてもよい。どの材料を連続相とみなすかは、粒子及び別の材料の体積比率、質量割合等により適宜判断されるが、一般的に体積比率が大きく、また粒径が小さい材料が連続相と見なされる。特定の実施形態においては、前記別の材料を連続相又は母材(Matrix)として用いる。
前記複合体における前記粒子が占める質量割合は特に制限されないが、通常10%以上であり、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上であり、通常90%以下、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下である。粒子の質量割合が上記範囲内にあることで、複合材における分散性が向上し、均一な複合材を得ることができる。
前記複合材の形状は特に制限されず、用途に合わせて形状及び大きさを変更することができる。例えば粉末、顆粒、球形、矩形、シート状、その他の形状をとることができる。
複合体のサイズは前記粒子より大きければ、特に制限されない。
また、前記複合体は当該複合体の形状、構成及び用途に応じて、押し出し成形、射出成形、プレス成形、スプレー、塗布、焼結と切削加工、その他常法により成形することができる。
前記複合体の比誘電率(ε)は、低誘電損失を達成する観点から、通常5.0以下であり、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.0以下、更に好ましくは2.9以下である。
比誘電率(ε)は常法で測定することができるが、本明細書においては後述する実施例の項に記載の手法で測定した値を採用する。
前記複合体の誘電正接(tanδ)は、低誘電損失を達成する観点から、通常0.005以下であり、好ましくは0.003以下、より好ましくは0.002以下、更に好ましくは0.0015以下である。
誘電正接(tanδ)は常法で測定することができるが、本明細書においては後述する実施例の項に記載の手法で測定した値を採用する。
前記複合体の比誘電率εr及び誘電正接tanδの値が小さいことで、誘電損失の低い材料を提供できる。
前記複合体の熱膨張率を線熱膨張係数(Coefficient of Thermal Expansion。以下、「CTE」と記載する場合もある。)で評価する場合、前記複合体のCTEは20℃から120℃(293.15Kから393.15K)までの平均値において、通常150×10-6/K以下、好ましくは120×10-6/K以下、より好ましくは90×10-6/K以下、更に好ましくは70×10-6/K以下、特に好ましくは50×10-6/K以下、とりわけ好ましくは40×10-6/K以下、最も好ましくは35×10-6/K以下である。
線熱膨張係数が低いほど、寸法精度に優れた材料を提供することができる。
線熱膨張係数は常法で測定することができるが、本明細書においては後述する実施例の項に記載の手法で測定した値を採用する。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
[粒子の製造]
<実施例1>
Si源を兼ねる添加化合物として(ZnO)・SiOの組成で表されるオルト珪酸亜鉛16.713g、A源として硝酸マグネシウム六水和物38.461g、フラックス化合物として塩化リチウム95.380gと塩化カリウム111.822gを乳鉢で混合し、大気中にて550℃で8時間焼成することで透明結晶性粉末が得られた。この透明結晶性粉末を吸引濾過を用いて水洗浄及び酢酸にて酸洗浄することにより白色粉末の粒子が得られた。
得られた粉末をX線回折分析により同定したところ、生成相は(MgO)・SiOの組成で表されるフォルステライトの単相であった。X線回折パターンを図1に示した。
また、走査型電子顕微鏡写真を図2(a),(b)に示す。また、図2(b)中、1~10の番号を付与した粒子について短径及び長径を測定し、アスペクト比を算出した。結果を表1に示す。
本実施例にて得られた粒子群は少なくとも、長径が0.8μm乃至13μm、短径が0.4μm乃至3μm、アスペクト比が1.20以上16以下の粒子を含むことが分かった。また、透過型電子顕微鏡による観察より、矩形粒子が単結晶で、且つ成長方位が(100)であることがわかった。透過型電子顕微鏡写真を図3に示す。
Figure 2023166202000002
<比較例1>
純水84mLにオルトケイ酸テトラエチル2mL(純度95.0%以上)、2-プロパノール226mL、28質量%アンモニア水46mLの順に添加し、35℃で30分撹拌した。オルトケイ酸テトラエチル18mLを再度添加し、2時間撹拌して白濁液を得た。得られた白濁液を遠心分離で水により2回洗浄し、最後にエタノールにて洗浄して80℃で乾燥させ、シリカ粉末を得た。
次に、得られたシリカ粉末4.3g、硝酸マグネシウム六水和物72.9g、塩化ナトリウム207.7gを乳鉢で混合し、大気中にて820℃で8時間焼成することで透明結晶性粉末を得た。この透明結晶性粉末を吸引濾過を用いて水洗浄した後、酢酸にて酸洗浄することにより白色粉末粒子を得た。
得られた粉末をX線回折分析により同定したところ、生成相は(MgO)・SiOの組成で表されるフォルステライトの単相であった。X線回折パターンを図1に示す。
また、走査型電子顕微鏡写真を図4に示す。前記写真を観察した結果、得られた粒子は一次粒子径が100nm前後、二次粒子径が1μmから10μmであり、形状は球状様粒子であった。
[複合体材料の製造]
<実施例2>
実施例1と同様にして調製した粒子1.0gを100℃で1晩乾燥させた後、トルエンと混合して分散液を得た。また、50質量%酸変性環状ポリオレフィン樹脂共重合体/50質量%水添スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS)(旭化成社製、製品銘柄H1052)から成る組成の樹脂を、トルエンを溶剤として80℃で溶融撹拌した。次に、粒子分散液と前記樹脂を溶融した溶液とを、前記粒子と前記樹脂の質量比が7:10となる様に混合撹拌しながら、架橋剤としてトリアリルイソシアヌレートを、また開始剤として2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-3-ヘキシンを樹脂に対してそれぞれ15質量%及び1質量%添加し、さらに撹拌しスラリーを得た。得られたスラリーを100℃で1時間乾燥し、熱プレスにて200℃で30分間圧縮することで、厚み300μmの硬化シートを得た。
<比較例2>
比較例1で得られた粒子を用いた以外は、実施例2と同様にして、粒子と樹脂との複合体から成る硬化シートを製造した。
<参考例1>
粒子を使用せず、樹脂のみを用いた以外は、実施例2と同様にして、樹脂のみを熱プレスした硬化シートを製造した。
<比誘電率、誘電正接及び線熱膨張係数の測定>
実施例2、比較例2及び参考例1で得られた硬化シートについて、ネットワークアナライザ(アンリツ株式会社製「MS46122B」)及び空洞共振器(株式会社AET製、TEモード空洞共振器)を用いて、10GHzの電波に対する各硬化シートの比誘電率(ε)及び誘電正接(tanδ)を測定した。比誘電率(ε)及び誘電正接(tanδ)は、作製直後の硬化シートと、100℃で3時間静置した後の硬化シートについて、それぞれ測定した。
また、熱機械分析装置(Thermomechanical Analyzer、メトラー・トレド製「TMA841」)を用いて、20℃から120℃における線熱膨張係数(CTE)(単位:10-6/K)の平均値を測定した。線熱膨張係数の平均値は、30℃から測定を開始して100℃まで昇温し、一旦0℃まで冷却した後、150℃まで再昇温した際の再昇温過程での20℃から120℃における寸法変化から算出した。
各測定結果、及び誘電損失の指標となる[ε 1/2×tanδ]の値(100℃、3時間静置後)を表2に示す。
なお、熱プレスで製膜された硬化シートのため、方向性はないものとした。
Figure 2023166202000003
表2から明らかなように、実施例1に係る粒子を用いた実施例2に係る複合体の硬化シートは、粒子を用いない参考例1と同等の誘電率及び誘電正接を示し、かつ線熱膨張係数は大幅に低下していた。
一方、本発明の要件を満たさない粒子を用いた比較例2では、誘電率、誘電正接、及び誘電損失の指標となる[ε 1/2×tanδ]が小さく、線熱膨張係数が大きかった。
以上示した通り、本発明により、誘電損失が低く、かつ熱膨張率が低い材料を提供することができる。

Claims (20)

  1. 結晶相を備える粒子であって、
    前記結晶相は下記式[1]で示される組成を示し、
    前記粒子のアスペクト比が1.20以上である、粒子。
    (AO)SiO ・・・[1]
    (式[1]中、Aは1種以上の二価の金属元素を含み、
    Si及びOはそれぞれ珪素及び酸素を示し、
    0.8≦n≦2.5を満たす。)
  2. 前記AがMg、Ca,Sr,Ba、Zn、Co及びMnから成る群より選ばれる1種以上の元素を含む、請求項1に記載の粒子。
  3. 前記AがMg及びZnから成る群より選ばれる1種以上の元素を含む、請求項1に記載の粒子。
  4. 前記結晶相がステアタイト(MgO・SiO)、フォルステライト((MgO)・SiO)、及びウィレマイト((ZnO)・SiO)から成る群より選ばれる1種以上の結晶相を含む、請求項1に記載の粒子。
  5. 前記結晶相がフォルステライト((MgO)・SiO)である、請求項1に記載の粒子。
  6. 前記結晶相から成る長径0.8μm以上の単結晶子を含む、請求項1に記載の粒子。
  7. 前記結晶相から成る短径60nm以上の単結晶子を含む、請求項1に記載の粒子。
  8. 真球度が0.75未満である、請求項1に記載の粒子。
  9. (100)に成長方位を有する単結晶粒子である、請求項1に記載の粒子。
  10. 請求項1に記載の粒子を1個以上含む、材料。
  11. 請求項1に記載の粒子の製造方法であって、
    前記製造方法は少なくとも、原料を混合する工程及び熱処理工程を含み、
    前記原料はA元素源、Si源及び添加化合物を含み、
    前記添加化合物は以下式[2]を満たし、かつ
    下記式[2]におけるmは、得られる前記粒子に係る前記式[1]におけるnと等しい値である、粒子の製造方法。
    (BSiO2+m・・・[2]
    (式[2]中、Bは1種以上の一価の金属元素から成り、
    Cは前記式[1]におけるAと異なる1種以上の二価の金属元素から成り、
    Dは1種以上の三価の金属元素から成り、
    Si及びOはそれぞれ珪素及び酸素を示し、
    b、c、及びdはそれぞれ独立に0以上1以下であり、
    0.8≦m≦2.5であり、かつ
    b+c+d=1、およびb+2c+3d=2を満たす。)
  12. さらに、洗浄工程及び/又は乾燥工程を含む、請求項11に記載の粒子の製造方法。
  13. 前記原料がさらにフラックス化合物を含み、前記フラックス化合物がアルカリ金属及びハロゲン元素のいずれか一方又は両方を含む塩を含む、請求項11に記載の粒子の製造方法。
  14. 少なくとも、請求項1に記載の粒子を含む、複合体。
  15. 更に別の材料を含み、前記別の材料が樹脂、ガラス及びセラミックスからなる群から選ばれる1種以上を含む、請求項14に記載の複合体。
  16. 前記樹脂が液晶ポリマー、ポリオレフィン、ポリイミド、及びフッ素樹脂から成る群より選ばれる1種以上を含む、請求項14に記載の複合体。
  17. 前記複合体において前記粒子が占める質量割合が20%以上80%以下である、請求項14に記載の複合体。
  18. 20℃から120℃における線熱膨張係数(CTE)の平均値が90×10-6/K以下である、請求項14に記載の複合体。
  19. 比誘電率(ε)が3.0以下である、請求項14に記載の複合体。
  20. 誘電正接(tanδ)が0.005以下である、請求項14に記載の複合体。
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