JP2023163151A - 浄化処理剤及び浄化処理方法 - Google Patents

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裕子 高濱
Yuko Takahama
義浩 伊藤
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Katsuyuki Iijima
剛 加藤
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Abstract

【課題】炭酸イオン又は炭酸水素イオンが含まれる汚染土壌及び汚染水を効果的に浄化する浄化処理剤、及びこの浄化処理剤を用いた効率的な浄化処理方法の提供を目的とする。【解決手段】本発明の一態様は、炭酸イオン又は炭酸水素イオンを含む汚染水又は汚染土壌から重金属又は重金属含有化合物を除去する浄化処理剤であって、鉄又はその合金で形成されている粉体と、補助剤とを有し、上記補助剤が、アルカリ土類金属化合物、及び活性炭の少なくともいずれかを含み、上記粉体100質量部に対する上記補助剤の含有量が4質量部以上である。【選択図】なし

Description

本発明は、浄化処理剤及び浄化処理方法に関する。
従来より、地下水、河川水、湖沼水、各種工業排水等や土壌の重金属による汚染が社会問題となっている。そのため、これらの汚染物質を除去するための浄化処理技術の開発が望まれている。特に、ヒ素、セレン、鉛、カドミウム、クロム等の重金属は、人体に対して有害であり、健康障害をもたらすことから、上記重金属による環境汚染が問題となっている。上記重金属で汚染された土壌(以下、「汚染土壌」ともいう)を浄化する方法として、金属鉄成分と活性炭成分とからなる複合粒子製剤を用いた汚染対策方法が知られている(特開2021-169093号公報参照)。
特開2021-169093号公報
上記公報所載の汚染対策方法は、汚染状況や施工事情に応じて、任意の金属鉄量と活性炭量を採択することが可能となり、金属鉄と活性炭の量比が固定的な複合粒子を用いた除染よりも、自由度が高く、より安価で、施工リスク要因の少ない浄化施工が達成できるとされている。また、上記汚染対策方法は、pHが3を超える弱酸性からアルカリ性の条件下にある汚染土壌に有効であるとされている。実際の汚染土壌、及び重金属で汚染された水(以下、「汚染水」ともいう)は、様々な成分が含まれる複雑系をなしており、pH値が所定の範囲内であっても、特定の種の成分が浄化剤の浄化作用を低減させている可能性があると本発明の発明者らは考えた。本発明の発明者らは、汚染土壌及び汚染水に含まれる成分を調査したところ、10ppm以上の炭酸イオン又は炭酸水素イオンが含まれているものがあり、この炭酸イオン又は炭酸水素イオンが汚染土壌及び汚染水の浄化する効率を低下させていることを知見し、その対策について検討した。
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、炭酸イオン又は炭酸水素イオンが含まれる汚染土壌及び汚染水を効果的に浄化する浄化処理剤、及びこの浄化処理剤を用いた効率的な浄化処理方法の提供を目的とする。
上記課題を解決するため本発明の一態様は、炭酸イオン又は炭酸水素イオンを含む汚染水又は汚染土壌から重金属又は重金属含有化合物を除去する浄化処理剤であって、鉄又はその合金で形成されている粉体と、補助剤とを有し、上記補助剤が、アルカリ土類金属化合物及び活性炭の少なくともいずれかを含み、上記粉体100質量部に対する上記補助剤の含有量が4質量部以上である。
上記課題を解決するため本発明の別の一態様は、炭酸イオン又は炭酸水素イオンを含む汚染水又は汚染土壌から重金属又は重金属含有化合物を除去する浄化処理方法であって、鉄又はその合金で形成されている粉体と、アルカリ土類金属化合物及び活性炭の少なくともいずれかを含む補助剤とを混合して浄化処理剤を形成する混合工程と、上記汚染水又は汚染土壌と上記浄化処理剤とを接触させる接触工程とを備え、上記混合工程で、上記鉄粉体100質量部に対して上記補助剤を4質量部以上混合する。
当該浄化処理剤は、炭酸イオン又は炭酸水素イオンを含む汚染土壌及び汚染水を効果的に浄化することができる。当該浄化処理方法は、汚染土壌及び汚染水の浄化を効率的に行うことができる。
図1は、イオン交換水に、炭酸水素ナトリウム、セレン(Se)を含む溶液、及び鉄粉を混合した混合液中の炭酸イオン及び炭酸水素イオンの状態を示すグラフである。 図2は、電位-pHの関係における混合液中のセレンの存在状態を示す図である。 図3は、炭酸水素ナトリウムの添加量の変化とpH値とが鉄粉によるセレンの除去性能に与える影響を示すグラフである。 図4は、混合液に異なる種類の活性炭を添加して炭酸イオン等の除去性能を比較したグラフである。 図5は、活性炭の比表面積とセレンの除去性能との関係を示すグラフである。 図6は、活性炭のよう素吸着性能とセレンの除去性能との関係を示すグラフである。 図7は、活性炭を添加したものと、活性炭及び塩化カルシウムを添加したものとの炭酸イオン等の除去性能を比較したグラフである。 図8は、塩化カルシウムの添加量の変化に対する炭酸イオン等の除去性能の変化を示すグラフである。 図9は、炭酸水素ナトリウムの濃度が10ppmにおける活性炭添加量と、セレンの除去量との関係を示すグラフである。 図10は、炭酸水素ナトリウムの濃度が100ppmにおける活性炭添加量と、セレンの除去量との関係を示すグラフである。 図11は、層状複水酸化物を含む浄化処理剤と、層状複水酸化物を含まない浄化処理剤とのセレン除去性能の比較結果を示すグラフである。 図12は、異なる含有量の層状複水酸化物を有する浄化処理剤の炭酸イオン除去性能の比較結果を示すグラフである。 図13は、異なる含有量の層状複水酸化物を有する浄化処理剤の炭酸水素イオン除去性能の比較結果を示すグラフである。 図14は、異なる含有量の層状複水酸化物を有する浄化処理剤のセレン除去性能の比較結果を示すグラフである。 図15は、Ni、Mo、硫黄が添加された鉄粉を有する浄化処理剤のセレン除去性能の比較結果を示すグラフである。 図16は、鉄粉のNiおよびMoの含有量と、セレンを含む溶液(汚染水)のpHとの関係におけるセレン除去能力の比較結果を示すグラフである。 図17は、補助剤として硫酸カルシウムを用いた浄化処理剤のセレン除去能力の比較結果を示すグラフである。
鉄又はその合金で形成された粉体を用いた汚染土壌及び汚染水からの重金属又は重金属含有化合物の除去について、実験室内では効率的に除去できるが、現場における実際の汚染水又は汚染土壌では効率的に除去できないことがある。本発明の発明者らは、その理由が、実際の汚染水又は汚染土壌に含まれることが多い炭酸イオン又は炭酸水素イオンにあることを知見した。当該発明者らは、この炭酸イオン又は炭酸水素イオンが重金属又は重金属含有化合物の除去を妨げることを抑制できる補助剤、及びその添加量について鋭意検討し、本発明を完成させた。
(1)本発明の一態様は、炭酸イオン又は炭酸水素イオンを含む汚染水又は汚染土壌から重金属又は重金属含有化合物を除去する浄化処理剤であって、鉄又はその合金で形成されている粉体と、補助剤とを有し、上記補助剤が、アルカリ土類金属化合物及び活性炭の少なくともいずれかを含み、上記粉体100質量部に対する上記補助剤の含有量が4質量部以上である。
汚染土壌の抽出液又は汚染水(以下、「汚染水など」ともいう)には、重金属又は重金属含有化合物(以下、「重金属など」ともいう)に由来する重金属イオンが存在する。鉄又はその合金で形成されている粉体(以下、「鉄紛など」ともいう)を用いた重金属などの除去は、鉄粉などと重金属イオンとが反応して鉄粉などの表面に重金属が析出することで行われる。汚染水などが炭酸イオン又は炭酸水素イオン(以下、「炭酸イオン等」ともいう)を含むと、鉄と炭酸とは反応性が高いため、鉄紛などの表面に炭酸水による気泡が形成されることがある。この気泡より鉄粉などと重金属イオンとの反応性が低下し、鉄粉などの表面に重金属が析出し難くなる。その結果、浄化処理剤の重金属などの除去性能が低下する。これに対し、当該浄化処理剤はアルカリ土類金属化合物及び活性炭のいずれか含む補助剤を有するため、この補助剤が炭酸イオン等と反応し、汚染水などから炭酸イオン等を除去することで、鉄粉などの表面に気泡が形成されることを抑制する。このため、鉄粉などと重金属イオンとの反応性の低下を抑制でき、鉄粉などの表面に重金属が効率良く析出して吸着されるため、当該浄化処理剤は重金属などの除去性能に優れる。従って、当該浄化処理剤は、炭酸イオン等を含む汚染水などの浄化に好適に用いることができる。
(2)上記(1)において、上記粉体100質量部に対する上記アルカリ土類金属化合物及び上記活性炭の少なくともいずれかの含有量が4質量部以上であってもよい。補助剤におけるアルカリ土類金属化合物、及び活性炭のいずれかが4質量部以上であることで、鉄粉などの表面に気泡が形成されることをより抑制できる。
(3)上記(1)において、上記補助剤が、上記アルカリ土類金属化合物及び上記活性炭を共に含み、それぞれの含有量が上記粉体100質量部に対して4質量部以上であってもよい。このようにすることで、鉄粉などの表面に気泡が形成されることをさらに抑制できる。
(4)上記(1)から上記(3)のいずれかにおいて、上記アルカリ土類金属化合物が塩化カルシウムおよび硫酸カルシウムの少なくとも一方であってもよい。このようにすることで、低コストで当該浄化処理剤を形成することができる。
(5)上記(1)から上記(4)のいずれかにおいて、上記粉体がニッケル、モリブデンおよび硫黄分の少なくとも一種が添加されていてもよい。鉄粉などがニッケル、モリブデンおよび硫黄分の少なくとも一種が添加されていることで、鉄粉などの表面の酸化が促進され、上記重金属などの上記鉄粉などへの吸着が促進されると考えられる。その結果、上記重金属などの除去性能がより向上する。
(6)上記(1)から上記(5)のいずれかにおいて、上記重金属又は重金属含有化合物の金属種として少なくともセレンが含まれていてもよい。当該浄化処理剤は、上記重金属又は重金属含有化合物の金属種としてセレンを含む汚染水などに対し、より高い効果を発揮する。つまり、当該浄化処理剤は、セレンを効率良く除去することができる。
(7)本発明の別の一態様は、炭酸イオン又は炭酸水素イオンを含む汚染水又は汚染土壌から重金属又は重金属含有化合物を除去する浄化処理方法であって、鉄又はその合金で形成されている粉体と、アルカリ土類金属化合物及び活性炭の少なくともいずれかを含む補助剤とを混合して浄化処理剤を形成する混合工程と、上記汚染水又は汚染土壌と上記浄化処理剤とを接触させる接触工程とを備え、上記混合工程で、上記粉体100質量部に対して上記補助剤を4質量部以上混合する。
当該浄化処理方法は、鉄粉などの粉体と、アルカリ土類金属化合物及び活性炭の少なくともいずれかを含む補助剤とを混合した浄化処理剤を用いるため、10ppm以上の炭酸イオン又は炭酸水素イオンを含む汚染水中又は汚染土壌の抽出液中でも、上記重金属イオンと上記鉄粉などとが効率良く反応し、上記重金属などの除去性能が向上する。そのため、当該浄化処理方法は、10ppm以上の炭酸イオン又は炭酸水素イオンを含む汚染水などの浄化に好適に用いることができる。
(8)上記(7)において、当該浄化処理方法は、上記混合工程の前に、上記汚染水又は汚染土壌における上記炭酸イオン又は炭酸水素イオンの濃度を測定する測定工程をさらに備え、上記混合工程で、上記補助剤の混合量を上記測定工程で測定した上記炭酸イオン又は炭酸水素イオンの濃度に応じて調整してもよい。このように、浄化する前に汚染水などの炭酸イオン等の濃度を測定し、その測定値に基づいて上記補助剤の混合量を調整することで上記重金属などの除去性能をより向上させることができる。
(9)上記(1)から上記(8)のいずれかにおいて、上記補助剤が層状複水酸化物を含んでいてもよい。このようにすることで、汚染水などの浄化効率を向上することができる。
ここで、「重金属」とは、25℃における比重が4.5以上の金属種であって、例えばヒ素、セレン、鉛、カドミウム、クロム、水銀等が挙げられる。「重金属又は重金属含有化合物」には、重金属の単体、その化合物及びイオンが含まれる。「アルカリ土類金属化合物」には、アルカリ土類金属の単体、その塩及びイオンが含まれる。「硫黄分」には、硫黄単体及びその化合物が含まれる。「硫黄分の添加量」とは、炭素/硫黄分析装置(LECO社製)を用いて測定される値である。「汚染土壌の抽出液」とは、汚染土壌に雨水等が接触することで汚染土壌中の水溶性成分が溶出した溶液、及び汚染土壌に水を添加し汚染土壌中の水溶性成分を抽出した溶液を指す。この汚染土壌の抽出液には、水に溶解しない鉱物等の固形分は含まれないものとする。「セレンの除去」とは、セレン酸イオン、亜セレン酸イオンなどのセレンイオンを鉄粉などにより還元してセレン金属として除去することを意味する。
[発明を実施するための形態の詳細]
以下、当該浄化処理剤の実施形態について詳説する。
[浄化処理剤]
本発明の浄化処理剤は、炭酸イオン又は炭酸水素イオンを含む汚染水又は汚染土壌から重金属又は重金属含有化合物を除去する浄化処理剤であって、鉄又はその合金で形成されている粉体と、アルカリ土類金属化合物及び活性炭のいずれかを含む補助剤とを主に含有する。また、当該浄化処理剤の態様としては、例えばアルカリ土類金属イオンを含有する液体に鉄粉などが分散したもの、固体のアルカリ土類金属もしくはその塩、又は活性炭と鉄粉などとを混合したもの等が挙げられる。
<粉体>
粉体は、鉄又はその合金で形成されている。鉄粉などは、その表面に重金属又は重金属含有化合物を吸着する。重金属などは水中で重金属イオンとして存在しており、この重金属イオンと鉄粉などとを反応させることで重金属イオンが還元され、重金属などが鉄粉の表面に析出する。その結果、重金属などは、上記鉄粉などの表面に吸着される。
上記鉄粉などとしては、鉄を主成分とする粉体であれば特に限定されず、工業的に入手可能なあらゆる鉄粉を用いることができる。鉄粉の種類としては、例えばアトマイズ鉄粉、鋳鉄粉、スポンジ鉄粉、これらの鉄粉の合金粉等が挙げられる。また、上記合金が含有する鉄以外の元素としては、例えば炭素、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウム、コバルト等が挙げられる。ここで「主成分」とは、鉄又はその合金粉を構成する成分のうち質量基準で最も多く含まれる成分(例えば50質量%以上)を指す。
上記鉄粉などとしては、アトマイズ法により製造されたアトマイズ鉄粉又はアトマイズ合金粉が好ましい。アトマイズ鉄粉は、鉄粉の成分及び粒径の均一性を向上させることができる。その結果、上記鉄粉と上記重金属イオンとの反応効率がより向上する。アトマイズ合金粉としては、鉄合金をアトマイズした完全合金粉でもよく、鉄粉をアトマイズした後に合金粉を付着させた部分合金化粉でもよい。
上記鉄粉などの平均粒径の上限としては、1000μmが好ましく、500μmがより好ましく、100μmがさらに好ましい。鉄粉などの平均粒径の下限としては、特に限定されるものではないが、例えば5μmが好ましい。上記平均粒径が上記上限を超えると、鉄粉などの表面積が小さくなり重金属などを除去する速度が低下するおそれがある。上記平均粒径が上記下限に満たない場合、歩留まりが低くなり取り扱い性が低下するおそれがある。ここで「平均粒径」とは、JIS-Z-8801(2006)に規定されるふるいを用いた乾式ふるい分け試験により粒子径分布を求め、この粒子径分布において累積質量が50%となる粒径をいう。
上記粉体にニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)および硫黄分の少なくとも一種が添加されていることが好ましい。このような成分の存在により上記鉄粉などによる重金属などの除去性能が向上する。このような結果を奏する理由としては、例えば、硫黄では以下のように推測することができる。硫黄の作用により鉄粉などの表面において鉄のアノード反応が起こり、鉄が酸化され、汚染水中又は汚染土壌の抽出液中に電子が放出される。この電子により汚染水中又は汚染土壌の抽出液中に溶出した重金属イオン等が還元され、鉄粉などの表面に重金属などが析出すると考えられる。
上記鉄粉などにおけるNiの添加量(含有量)の上限としては、1.8質量%が好ましく、1.6質量%がより好ましく、1.5質量%がさらに好ましい。一方、上記Niの添加量の下限としては、0.2質量%が好ましく、0.4質量%がより好ましく、0.5質量%がさらに好ましい。上記Niの添加量を上記範囲とすることで、重金属などの除去の確実性を向上できる。
上記鉄粉などにおけるMoの添加量(含有量)の上限としては、1.5質量%が好ましく、1.2質量%がより好ましく、1.0質量%がさらに好ましい。一方、上記Moの添加量の下限としては、0.2質量%が好ましく、0.4質量%がより好ましく、0.5質量%がさらに好ましい。上記Moの添加量を上記範囲とすることで、重金属などの除去の確実性を向上できる。
上記鉄粉などにおける硫黄分の添加量の上限としては、5質量%が好ましく、4質量%がより好ましく、3質量%がさらに好ましい。一方、上記硫黄分の添加量の下限としては、0.6質量%が好ましく、0.7質量%がより好ましく、0.8質量%がさらに好ましい。上記硫黄分の添加量を上記範囲とすることで、コストを抑制しつつ硫黄分による鉄の酸化作用を十分なものとすることができ、鉄粉などによる重金属の吸着効率を向上することができる。
<補助剤>
補助剤は、アルカリ土類金属化合物及び活性炭の少なくともいずれかを含む。上記補助剤の含有量の下限値としては、上記粉体100質量部に対して4質量部である。上記補助剤は、アルカリ土類金属化合物及び活性炭の少なくともいずれかを、上記粉体100質量部に対して4質量部以上含むことが好ましい。上記補助剤は、アルカリ土類金属化合物及び活性炭を共に含み、それぞれの含有量が上記粉体100質量部に対して4質量部以上であることがより好ましい。
(アルカリ土類金属化合物)
アルカリ土類金属化合物は、汚染水中又は汚染土壌の抽出液中においてイオン化し、炭酸イオン等と反応して沈殿させる沈殿反応を奏する。この反応によって、汚染水中又は汚染土壌の抽出液中の炭酸イオン等が減少し、上記炭酸イオン等が上記鉄粉などの表面に気泡を形成することを抑制できる。このため、鉄粉などと重金属イオン等との反応性が向上し、上記鉄粉の表面に重金属などが析出し易くなる。
アルカリ土類金属化合物としては、鉄粉などと重金属などとの反応効率を低下させないものであれば特に限定されないが、水への溶解性、入手容易性及びコストの観点から、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、塩化マグネシウム、リン酸二水素カルシウム又は酢酸カルシウムが挙げられる。この中でも、低コストで反応効率の高い塩化カルシウムまたは硫酸カルシウムが好ましい。塩化カルシウムと硫酸カルシウムとは、その両方が含まれていてもよい。
当該浄化処理剤におけるアルカリ土類金属化合物の含有量の下限としては、上記粉体100質量部に対して4質量部であることが好ましい。この含有量は、浄化する汚染水などの炭酸イオン等の量に応じ適宜変更できる。アルカリ土類金属化合物の含有量の上限としては、特に限定されるものではないが、例えば上記粉体100質量部に対して100質量部であってもよい。上記含有量の上限は、当該浄化処理剤の経済性などを考慮して、上記粉体100質量部に対して40質量部とすることが好ましい。
アルカリ土類金属化合物として硫酸カルシウムを用いる場合、その含有量の下限としては、上記粉体100質量部に対して4質量部であってもよいが、10質量部であることが好ましい。上記含有量の上限としては、上記粉体100質量部に対して25質量部が好ましく、20質量部であることがより好ましい。アルカリ土類金属化合物として硫酸カルシウムを用いる場合は、その含有量を上記範囲とすることで重金属などを効率的に除去できる。
当該浄化処理剤が液体でアルカリ土類金属化合物をアルカリ土類金属イオンとして含有する場合、当該浄化処理剤におけるアルカリ土類金属イオンの濃度の下限としては、300ppmが好ましく、500ppmがより好ましい。上記アルカリ土類金属イオンの濃度の上限としては、5000ppmが好ましく、2500ppmがより好ましい。上記アルカリ土類金属イオンの濃度が上記下限に満たない場合、当該浄化処理剤による上記炭酸イオン等の除去が不十分となることがある。上記アルカリ土類金属イオンの濃度が上記上限を超えると、上記アルカリ土類金属イオンの除去性能が向上し難くなり、コストが増大するおそれがある。
(活性炭)
上記鉄粉などは、上記アルカリ土類金属化合物に換えて、又は上記アルカリ土類金属化合物と共に活性炭を含むことが好ましい。活性炭の存在により上記鉄粉などによる重金属などの除去性能が向上する。活性炭は、汚染水及び汚染土壌の抽出液中の炭酸イオン等を吸着する吸着反応を奏するため、上記炭酸イオン等が上記鉄粉などの表面に気泡を形成することを抑制できる。このため、鉄粉などと重金属イオン等との反応性が向上し、上記鉄粉の表面に重金属などが析出し易くなる。
鉄又はその合金粉100質量部に対する活性炭の含有量の下限としては、4質量部であることが好ましい。上記含有量が上記下限に満たない場合、上記活性炭による上記炭酸イオン等の吸着作用が不十分となって、上記鉄粉などと上記重金属イオン等との反応性が低下するおそれがある。上記活性炭の含有量の上限は、特に限定されるものではないが、例えば上記鉄又はその合金粉100質量部に対して100質量部とすることができる。上記含有量の上限は、当該浄化処理剤の経済性などを考慮して、上記鉄又はその合金粉100質量部に対して40質量部とすることが好ましい。
上記補助剤は、層状複水酸化物を含むことが好ましい。層状複水酸化物としては、特に限定されないが、例えばハイドロタルサイトが挙げられる。層状複水酸化物は、積層構造を有するため、その層間にセレン等の重金属を取り込むことができ、上記鉄粉などによる重金属などの除去性能をより向上することができる。
上記補助剤における層状複水酸化物の含有量の下限としては、特に限定されるものではないが、例えば上記粉体100質量部に対して4質量部とすることができる。上記含有量の上限としては、特に限定されるものではないが、例えば上記粉体100質量部に対して100質量部であってもよく、50質量部であってもよく、40質量部であってもよい。上記含有量を上記範囲とすることで、上記鉄粉などによる重金属などの除去の確実性を向上できる。
<汚染水及び汚染土壌>
当該浄化処理剤が浄化する汚染水又は汚染土壌は、炭酸イオン又は炭酸水素イオンを含み、重金属又は重金属含有化合物をさらに含む。この汚染水又は汚染土壌は炭酸イオン又は炭酸水素イオンを含有するため、上述のように鉄粉のみを用いた浄化処理剤では重金属などの除去性能が低下する。
(重金属又は重金属化合物)
上記重金属又は重金属化合物は、汚染水中又は汚染土壌の抽出液中では重金属イオンとして存在し、汚染水中又は汚染土壌の抽出液中に溶解している。
上記重金属イオンとしては、例えばヒ酸イオン(AsO 3-)、セレン酸イオン(SeO 2-)、鉛イオン(Pb2+)、カドミウムイオン(Cd2+)、クロムイオン(Cr3+、Cr6+)、水銀イオン(Hg 2+、Hg2+)等が挙げられる。上記重金属化合物としては、例えばヒ酸水素ナトリウム、セレン酸ナトリウム、二クロム酸カリウム、硝酸塩、硝酸カドミウム、硫化水銀等が挙げられる。
当該浄化処理剤は、上記重金属などの中でも特にセレンを含む汚染水又は汚染土壌に対し、より高い効果を発揮する。つまり、当該浄化処理剤は、セレンを効率良く除去することができる。
(炭酸イオン又は炭酸水素イオン)
上記炭酸イオン又は炭酸水素イオンは、イオンとして汚染水中又は汚染土壌の抽出液中に溶解している。また、汚染土壌中では炭酸、炭酸水化物などの化合物又は単体の炭酸として存在する。
上述のように、炭酸イオン又は炭酸水素イオンを含有する汚染水などでは、鉄粉などによる重金属などの除去性能が低下する。この炭酸イオン又は炭酸水素イオンと鉄とが反応して炭酸鉄となるには、以下の式1及び式2がある。
Fe+HCO→FeCO+H↑ ・・・・ (1)
FeCO+O→Fe+CO↑ ・・・・ (2)
汚染水又は汚染土壌における炭酸イオン又は炭酸水素イオンの含有量の下限としては、特に限定されるものではなく、例えば10ppmである。上記含有量の上限としては、特に限定されるものではなく、例えば1500ppmであってもよいし、1000ppmであってもよいし、750ppmであってもよいし、500ppmであってもよい。上記炭酸イオン等の濃度が上記下限に満たない場合、当該浄化処理剤による上記炭酸イオン等の除去が不必要となることがある。上記炭酸イオン等の濃度が上記上限を超えると、上記炭酸イオン等の除去性能が向上し難くなり、コストが増大するおそれがある。
<利点>
当該浄化処理剤は、鉄又はその合金で形成されている粉体と、アルカリ土類金属化合物及び活性炭のいずれかを含む補助剤とを有する。アルカリ土類金属化合物のイオンは炭酸イオン又は炭酸水素イオンと反応し、活性炭は炭酸イオン又は炭酸水素イオンを吸着することで、汚染水中又は汚染土壌の抽出液中で鉄紛などの表面に炭酸水による気泡が形成されることを抑制する。このため、鉄粉などと重金属イオン等との反応性の低下を抑制できる。その結果、鉄粉などの表面に重金属などが効率良く析出して吸着されるため、当該浄化処理剤は重金属などの除去性能に優れる。従って、当該浄化処理剤は、上記炭酸イオン又は炭酸水素イオンを含有する汚染水又は汚染土壌の浄化に好適に用いることができる。
[浄化処理方法]
次に、上述の浄化処理剤を用いた浄化処理方法の実施形態について詳説する。
当該浄化処理方法は、炭酸イオン又は炭酸水素イオンを含む汚染水又は汚染土壌から重金属又は重金属含有化合物を除去する浄化処理方法であって、鉄又はその合金で形成されている粉体と、アルカリ土類金属化合物及び活性炭の少なくともいずれかを含む補助剤とを混合して浄化処理剤を形成する混合工程と、上記汚染水又は汚染土壌と上記浄化処理剤とを接触させる接触工程とを主に備える。
当該浄化処理方法は、上記混合工程の前に、上記汚染水又は汚染土壌における上記炭酸イオン又は炭酸水素イオンの濃度を測定する測定工程をさらに備え、上記混合工程で、上記補助剤の混合量を上記測定工程で測定した上記炭酸イオン又は炭酸水素イオンの濃度に応じて調整することが好ましい。当該浄化処理方法は、上記粉体にニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)および硫黄分の少なくとも一種が添加されていることがより好ましい。
当該浄化処理方法は、上記接触工程の前又は上記接触工程と同時に、汚染水又は汚染土壌の抽出液のpHを調整するpH調整工程を備えることが好ましい。
<測定工程>
測定工程では、汚染水又は汚染土壌における上記炭酸イオン又は炭酸水素イオンの濃度を測定する。浄化する前に汚染水などの炭酸イオン等の濃度を測定することで、その測定値に基づいて上記重金属などを効率的に浄化するためのアルカリ土類金属化合物の混合量を調整することができる。このため、浄化後の上記重金属などの濃度の目標値、この目標値まで浄化に要する期間などの計画を立てやすくなる。上記炭酸イオン等の測定方法としは、特に限定されるものでなく、上記汚染水などをイオンクロマトグラフィーで測定する方法など、公知の方法を採用することができる。
<混合工程>
混合工程では、鉄又はその合金で形成されている粉体と、アルカリ土類金属化合物及び活性炭のいずれかを含む補助剤とを混合して浄化処理剤を形成する。混合工程では、上記補助剤は、上記粉体100質量部に対して4質量部以上を混合する。混合工程では、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)および硫黄分の少なくとも一種をさらに混合することが好ましい。これらの混合量は、上記測定工程における測定値に応じて、上述の下限値以上の範囲で増減することができる。このようにすることで、効率的な浄化、コストの低減などを図ることができる。
上記鉄紛などと補助剤とを混合する方法としては、特に限定されるものでなく、準備した容器に鉄又はその合金紛、アルカリ土類金属化合物、活性炭、及びニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)および硫黄分の少なくとも一種を投入して攪拌する方法など、公知の方法を採用することができる。
<接触工程>
接触工程では、当該浄化処理剤と炭酸イオン等を含む汚染水又は汚染土壌の抽出液とを接触させる。接触方法は特に限定されるものでなく、例えば、当該浄化処理剤を充填した容器中に汚染水などを連続的に通過させる方法、当該浄化処理剤を汚染水などに添加して撹拌する方法などが挙げられる。
当該浄化処理剤を汚染水などに添加する場合の当該浄化処理剤の添加量の上限としては、汚染水などにおける重金属など1mgに対する鉄粉などの質量で3gが好ましく、2gがより好ましい。上記添加量の下限としては、汚染水などにおける重金属など1mgに対する鉄粉などの質量で0.3gが好ましく、0.5gがより好ましい。当該浄化処理剤の添加量が上記上限を超えると、鉄粉などの量の増加に比して重金属などの除去性能が向上し難くなるおそれがある。上記添加量が上記下限に満たない場合、重金属などが十分に除去されないおそれがある。
当該浄化処理剤を汚染水などに添加して攪拌する場合の攪拌時間の上限としては、72時間が好ましく、48時間がより好ましく、36時間がさらに好ましい。上記攪拌時間の下限としては、1分が好ましく、1時間がより好ましく、10時間がさらに好ましく、15時間が特に好ましい。上記攪拌時間が上記上限を超えると、攪拌時間に比して重金属などの除去量が向上し難くなり重金属などの除去性能が低下するおそれがある。上記攪拌時間が上記下限に満たない場合、重金属などが十分に除去できないおそれがある。
汚染土壌の抽出液の調製方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、汚染土壌を水などの溶媒と混合する方法が挙げられる。この溶媒としては、重金属など及び補助剤を溶解できるものであれば特に限定されるものではないが、水が好ましい。溶媒が水である場合、汚染土壌100質量部に対する水の混合量の上限としては、1500質量部が好ましく、1200質量部がより好ましい。上記混合量の下限としては、800質量部が好ましく、750質量部がより好ましく、500質量部がさらに好ましい。上記混合量が上記上限を超えると、鉄粉などと重金属イオンなどとの反応が起こり難くなるおそれがある。上記混合量が上記下限に満たない場合、汚染土壌中の重金属などが十分にイオン化しないおそれがある。
<pH調整工程>
当該浄化処理方法は、上記接触工程の前又は上記接触工程と同時に、汚染水又は汚染土壌の抽出液のpHを調整するpH調整工程を備えることが好ましい。pH調整工程は、汚染水又は汚染土壌の抽出液のpHが3以上7以下となるようpH調整剤を添加する。当該浄化処理剤はアルカリ土類金属化合物を含有するため、汚染水などに当該浄化処理剤を接触させることで、汚染水などがアルカリ性になることがある。pH調整剤を添加して汚染水などのpHを上記範囲内とすることで、当該浄化処理剤が含有する鉄粉などへの重金属などの吸着効率が低下することを抑制できる。
(pH調整剤)
pH調整剤としては、汚染水などのpHを上記範囲内とでき、当該浄化処理剤の働きを阻害しないものであれば特に限定されるものではないが、例えば塩酸、硫酸などの無機酸、蟻酸、酢酸などの有機酸、塩化鉄などの無機塩化物、カルボン酸塩化物などの有機塩化物、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム等の無機アルカリなどが挙げられる。これらの中で、無機酸、無機塩化物又は無機アルカリが好ましく、塩酸、塩化鉄又は水酸化ナトリウムがより好ましい。また、pH調整剤の形状としては、固体、液体などを適宜選択することができる。
pH調整工程は、汚染水、汚染土壌の抽出液又は当該浄化処理剤に予めpH調整剤を添加することで上記接触工程の前に行ってもよいが、上記接触工程と同時に行うことが好ましい。このように接触工程と同時にpH調整工程を行うことで、汚染水などを容易に所望のpHとすることができる。また、当該浄化処理剤に塩化鉄を含有させ、この塩化鉄をpH調整剤として作用させてもよい。このようにすることで、接触工程とpH調整工程とを同時に行うことができる。
<利点>
当該浄化処理方法は、鉄粉などと所定量の補助剤とを含有する浄化処理剤を用いているため、炭酸イオン又は炭酸水素イオンを含有する汚染水中又は汚染土壌の抽出液中でも、上記重金属イオンと鉄粉などとが効率良く反応し、上記重金属などの除去性能が向上する。このため、当該浄化処理方法は、上記炭酸イオン又は炭酸水素イオンを含有する汚染水又は汚染土壌の浄化に好適に用いることができる。
[その他の実施形態]
上記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、上記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて上記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
当該浄化処理剤は、炭酸イオン等及び重金属などの除去性能を阻害しないものであれば、例えば溶媒などのその他の成分も含むことができる。
当該浄化処理方法は、汚染水中又は汚染土壌の抽出液中に、鉄粉、補助剤及びニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)および硫黄分の少なくとも一種のそれぞれを同時に投入して攪拌することで、混合工程と接触工程とを同時に行うこともできる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
炭酸イオン又は炭酸水素イオンが鉄紛などへの重金属の吸着を抑制していることを確認するための試験を行った。重金属としては、セレンを選択した。
汚染水として、イオン交換水に炭酸水素ナトリウム、セレン(Se)を含ませた溶液を混合し、この混合液に固液比が1:1000になるように鉄粉をさらに混合した。炭酸水素ナトリウムは1000ppm以下の濃度、セレンは1mg/Lの濃度になるように調整した。鉄粉は、硫黄を含有するエコメル(株式会社神戸製鋼所製、登録商標)の53NJを用いた。上記混合液を24時間水平振とうして、0.10μmのメッシュフィルター、及び0.45μmのメッシュフィルターでろ過した。ろ過後の混合液中におけるセレンの成分定性を分析した。
ろ過後の混合液中の炭酸イオン及び炭酸水素イオンの状態の計算結果を図1に示す。図1より、pHによってイオン状態が異なることが分かる。pH4付近ではCOの存在割合が高く、pH8付近ではHCO (炭酸水素イオン)の存在割合が高く、pH12付近ではCO -2(炭酸イオン)の存在割合が高い。
混合液中のセレンの存在状態を図2に示す。セレンは、電位(EV)が0の状態では、金属セレン又は亜セレン酸として存在している。
炭酸水素ナトリウムの添加量の変化とpH値とが鉄粉によるセレンの除去性能に与える影響を図3に示す。炭酸水素ナトリウムの添加量が多いほどセレンの除去性能が低下している。また、溶液のpHが上昇すると、セレンの除去性能が低下している。このことから、炭酸イオン及び炭酸水素イオンがセレンの除去性能を低下させていることが分かる。メッシュフィルターのメッシュサイズが小さいほどセレンの除去性能が低下しているが、これは還元後のセレンが炭酸鉄コロイドとなってメッシュフィルターを通過したためと考えられる。
混合液中の炭酸イオン及び炭酸水素イオンを除去する手段としては、塩化カルシウム等のアルカリ土類金属化合物による沈殿反応、活性炭やシリカゲル等による吸着反応、ゼオライト等による電荷反応が考えられる。
吸着反応について、材質、細孔面積などが異なる複数の種類の活性炭による比較試験を行った。比較試験は、イオン交換水に炭酸水素ナトリウム及びセレンを含ませた溶液を混合した混合液に鉄粉のみを添加したもの、及び上記混合液に鉄粉と以下の表1の活性炭No.1~10とを添加したもので比較した。混合液は、セレンの濃度1ppm(1mg/L)、炭酸水素ナトリウムの濃度を10ppm、100ppm及び1000ppmとし、それぞれで比較試験を行った。この混合液に添加した鉄粉は0.25g、添加した各種活性炭はいずれも0.1gである。使用した活性炭はいずれも市販品である。鉄粉及び各種活性炭を添加後の混合液は、pH8.5となるように調整した。この比較試験で用いた鉄粉は、すべてエコメル53NJである。
Figure 2023163151000001
比較試験の結果を図4に示す。細孔容量、比表面積、よう素吸着性能のそれぞれが比較的大きい活性炭ほど、セレンの除去性能が向上(残Se濃度が低下)していることから、細孔容量、比表面積、よう素吸着性能のそれぞれが比較的大きい活性炭ほど、炭酸イオン等の除去性能に優れる傾向がある。この傾向から、活性炭の表面に炭酸イオン等が吸着していることが分かる。
炭酸水素ナトリウム濃度10ppmにおけるNo.6~9の比表面積とセレンの除去性能との関係を図5に示す。炭酸水素ナトリウム濃度10ppmにおけるNo.6~9のよう素吸着性能とセレンの除去性能との関係を図6に示す。いずれもその値が大きいほどセレンの除去性能が向上していることから、活性炭の比表面積及びよう素吸着量が大きいほど、炭酸イオン等の除去性能に優れることが分かる。
吸着効果に沈殿効果を加えた際の炭酸イオン等の除去性能を検討するための比較試験を行った。混合液に、0.25gの鉄粉のみの浄化処理剤、0.25gの鉄粉と0.1gのNo.5又はNo.6の活性炭とを添加した浄化処理剤、0.25gの鉄粉と0.1gのNo.6の活性炭と0.2gの塩化カルシウム(補助剤)を添加した浄化処理剤で比較した。炭酸水素ナトリウムの濃度は100ppmと1000ppmとで比較した。添加後の混合液は、pH8.5に調整した。その結果を図7に示す。活性炭に加えて塩化カルシウムを添加することで、セレンの除去性能がより向上した。この比較試験で用いた鉄粉は、すべてエコメル53NJである。
混合液に、0.25gの鉄粉のみの浄化処理剤、0.25gの鉄粉と0.1gのNo.5又はNo.8の活性炭とを添加した浄化処理剤、0.25gの鉄粉と0.1gの塩化カルシウム(補助剤)、0.25gの鉄粉と0.1gのNo.5又はNo.8の活性炭と0.1g又は1.0gの塩化カルシウム(補助剤)を添加した浄化処理剤で比較した。その結果を図8に示す。塩化カルシウムの添加量を増大することで、1000ppmと高濃度の炭酸イオン等の存在下でもセレン除去性能がさらに向上していることが分かる。この比較試験で用いた鉄粉は、すべてエコメル53NJである。
炭酸水素ナトリウムの濃度が10ppmにおけるNo.2の活性炭添加量と、セレンの除去量との関係を図9に示す。活性炭の添加量の増大に伴いセレンの除去性能が向上していることが分かる。
炭酸水素ナトリウム100ppm存在下における活性炭添加量と、セレンの除去量との関係を図10に示す。活性炭の添加量の増加に伴いセレンの除去性能が向上していることが分かる。
上述のように、炭酸イオン等の存在量が多い場合、活性炭や塩化カルシウムの添加量を増やすことでセレンの除去性能を向上することができる。上述の各試験では、炭酸水素ナトリウムの濃度が100ppm(すなわち、炭酸イオン及び炭酸水素イオンが100ppm)の場合、鉄粉0.25gに対して活性炭および塩化カルシウムを0.1g添加することでセレンを0.1ppm以下に除去することができた。また、炭酸水素ナトリウムの濃度が1000ppmの場合、鉄粉0.25gに対して0.1gの活性炭及び1gの塩化カルシウムを添加することでセレンを0.1ppm以下に除去することができた。
セレンを含む炭酸ナトリウム濃度1000ppmの混合液にNo.6の活性炭を添加したもの、及び上記混合液に塩化カルシウムを添加したものにおけるセレンの除去量及び炭酸イオン等の除去量の比較試験を行った。混合液のpHは8.5に調整した。その結果を表2に示す。この比較試験では、鉄粉を用いていない。
Figure 2023163151000002
表中「蒸留水」は、各試料の評価におけるベースラインとして用いたものである。
活性炭及び塩化カルシウムの添加前後でセレン濃度に変化がなかったことから、活性炭や塩化カルシウムはセレンの除去ができないことが分かる。
活性炭及び塩化カルシウムの添加量を増大することで炭酸水素イオンが低下したことから、高濃度の炭酸水素イオンが存在する汚染水などでは、活性炭及び塩化カルシウムの添加量を増大することが好ましいと判断できる。
表2の比較試験ではpHを8.5に調整したため、炭酸イオンの存在量が少なく、大気中の二酸化炭素を吸収、又は活性炭に初期から含まれている二酸化炭素の溶解によって、炭酸イオンのばらつきが生じたと考えられる。塩化カルシウムを添加した試料2及び試料3では、添加量の増大に伴い炭酸イオンの濃度が低下している。
層状複水酸化物について、セレン濃度が1mg/L、炭酸イオンおよび炭酸水素イオンの濃度が100ppmの混合液に対する評価を行った。層状複水酸化物としては、ハイドロタルサイトを用いた。0.25gの鉄粉のみの浄化処理剤、0.25gの鉄粉と0.1gのハイドロタルサイトとを用いた浄化処理剤、0.25gの鉄粉と0.1gの塩化カルシウムと0.1gのハイドロタルサイトとを用いた浄化処理剤、0.25gの鉄粉と0.1gの塩化カルシウムと0.1gの活性炭とを用いた浄化処理剤、および0.25gの鉄粉と0.1gの塩化カルシウムとを用いた浄化処理剤とを準備し、それぞれを上記混合液に添加した。添加後の混合液中のセレン濃度の結果を図11に示す。この比較試験で用いた鉄粉は、すべてエコメル53NJである。
図11より、鉄粉に層状複水酸化物(ハイドロタルサイト)を添加することでセレンの除去性能が向上し、さらに補助剤(塩化カルシウム)を有することでセレンの除去性能が顕著に向上していることが分かる。
セレン濃度が1mg/Lの溶液に、炭酸イオンおよび炭酸水素イオン源として炭酸水素ナトリウムを0g、0.025g(100ppm)、および0.25g(1000ppm)添加したものを準備し、ハイドロタルサイトのみによる炭酸イオン、炭酸水素イオン及びセレンの除去能力を評価した。その結果を図12、図13および図14に示す。
図12、図13および図14より、層状複水酸化物は、セレンの除去能力は認められないが、炭酸イオンおよび炭酸水素イオンの除去能力を有することが認められる。
セレン濃度が1mg/L、炭酸イオンおよび炭酸水素イオンの濃度が100ppmの混合液で、Ni、Mo、硫黄分が添加された鉄粉の浄化処理剤と、これらの鉄粉に補助剤(塩化カルシウム)を加えた浄化処理剤とによるセレンの除去性能の比較試験を行った。この比較試験は、Niを0.5質量%およびMoを1.0質量%含有する0.25gの鉄粉(合金)の浄化処理剤と、Niを0.5質量%およびMoを1.0質量%含有する0.25gの鉄粉に0.1gの塩化カルシウムを加えた浄化処理剤と、硫黄が添加された0.25gの鉄粉(エコメル53NJ)の浄化処理剤と、0.25gのエコメル53NJに0.1gの塩化カルシウムを加えた浄化処理剤とで行った。その結果を図15に示す。
図15より、浄化処理剤に補助剤がない場合であっても、NiおよびMoを鉄粉が含有することでセレン除去性能が向上し、さらに補助剤を有することでセレン除去性能が顕著に向上していることが分かる。
鉄粉として、エコメル53NJ(硫黄含有)、純鉄、およびMoとNiとの少なくとも1つを含有する鉄粉(合金)を用意し、それぞれのセレン除去能力を比較した。併せて、MoとNiとの含有量によるセレン除去能力と、セレンを含む溶液(汚染水)のpHとの関係におけるセレン除去能力とを比較した。その結果を表3および図16に示す。鉄粉は、いずれも0.25gである。表3中、「-」は、成分を含有していないことを示す。
Figure 2023163151000003
表3および図16を見ると、酸性環境下(pH4.0)では、鉄粉種、およびNi、Moの含有によらずセレンの除去能力を有する。塩基性環境下(pH12.0)になると、鉄粉種、およびNi、Moの含有によらずセレンの除去が困難になる。中性環境下(pH8.5)では鉄粉種によってセレンの除去能力に差が生じており、NiおよびMoの含有によりセレンの除去能力が向上していることが分かる。なお、図16では、pH4.0およびpH12.0における各試験例の残Se濃度の値が重なり合っている。
補助剤として硫酸カルシウムを用いた浄化処理剤のセレンの除去能力を評価した。セレン濃度が1mg/L、炭酸イオンおよび炭酸水素イオン源として炭酸水素ナトリウム(NaHCO)を添加し、NaHCO濃度を100ppm、500ppmおよび1000ppmとした溶液を準備した。浄化処理剤としては、鉄粉と、補助剤として硫酸カルシウム(石膏)を鉄粉0.25gに対して0.01g、0.025g、0.05gおよび0.1gを添加したものを準備し、それぞれで比較した。その結果を図17に示す。この比較試験で用いた鉄粉は、すべてエコメル53NJである。
図17より、NaHCO濃度が高い(500ppm、1000ppm)場合では、鉄粉に対する硫酸カルシウム(補助剤)の添加量を増大させることによりセレンの除去性能が向上しているといえる。NaHCO濃度が低い(100ppm)場合では、鉄粉に対する硫酸カルシウムの添加量が0.025gに対して、添加量が0.05g、0.1gでセレンの除去性能が低下する傾向が見られるが、添加量が0.001gとの比較でいえば、添加量を増大させることによりセレンの除去性能が向上しているといえる。
本発明の浄化処理剤及び浄化処理方法は、炭酸イオン、炭酸水素イオンを含む汚染土壌及び汚染水から重金属又は重金属含有化合物を効率良く除去できる。

Claims (10)

  1. 炭酸イオン又は炭酸水素イオンを含む汚染水又は汚染土壌から重金属又は重金属含有化合物を除去する浄化処理剤であって、
    鉄又はその合金で形成されている粉体と、補助剤とを有し、
    上記補助剤が、アルカリ土類金属化合物及び活性炭の少なくともいずれかを含み、
    上記粉体100質量部に対する上記補助剤の含有量が4質量部以上である浄化処理剤。
  2. 上記粉体100質量部に対する上記アルカリ土類金属化合物及び上記活性炭の少なくともいずれかの含有量が4質量部以上である請求項1に記載の浄化処理剤。
  3. 上記補助剤が、上記アルカリ土類金属化合物及び上記活性炭を共に含み、それぞれの含有量が上記粉体100質量部に対して4質量部以上である請求項1に記載の浄化処理剤。
  4. 上記補助剤が、層状複水酸化物を含む請求項1、請求項2または請求項3に記載の浄化処理剤。
  5. 上記アルカリ土類金属化合物が、塩化カルシウムおよび硫酸カルシウムの少なくとも一方である請求項1、請求項2または請求項3に記載の浄化処理剤。
  6. 上記粉体にニッケル、モリブデンおよび硫黄分の少なくとも一種が添加されている請求項1、請求項2または請求項3に記載の浄化処理剤。
  7. 上記重金属又は重金属含有化合物の金属種として少なくともセレンが含まれている請求項1、請求項2または請求項3に記載の浄化処理剤。
  8. 炭酸イオン又は炭酸水素イオンを含む汚染水又は汚染土壌から重金属又は重金属含有化合物を除去する浄化処理方法であって、
    鉄又はその合金で形成されている粉体と、アルカリ土類金属化合物及び活性炭の少なくともいずれかを含む補助剤とを混合して浄化処理剤を形成する混合工程と、
    上記汚染水又は汚染土壌と上記浄化処理剤とを接触させる接触工程と
    を備え、
    上記混合工程で、上記粉体100質量部に対して上記補助剤を4質量部以上混合する浄化処理方法。
  9. 上記混合工程の前に、上記汚染水又は汚染土壌における上記炭酸イオン又は炭酸水素イオンの濃度を測定する測定工程をさらに備え、
    上記混合工程で、上記補助剤の混合量を上記測定工程で測定した上記炭酸イオン又は炭酸水素イオンの濃度に応じて調整する請求項8に記載の浄化処理方法。
  10. 上記補助剤が、層状複水酸化物を含む請求項8または請求項9に記載の浄化処理方法。
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