JP2023160814A - 標的物質の検出方法および試薬 - Google Patents

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Abstract

【課題】試料中の標的物質を従来の技術よりも高感度で安価に検出できる技術を提供する。【解決手段】第1の反応場において、固相に固定された第1の捕捉物質と標識物質により標識された第2の捕捉物質との間に標的物質をサンドイッチすることにより複合体を形成し、前記複合体から標識物質を含む部分を分離し、これを遠心力によって、管状路内に充填された液体中を移動させ標識物質を含む部分が散乱する散乱光により、前記標識物質を含む部分を検出することを含む、標的物質の検出方法。【選択図】図1

Description

本発明は試料中の標的物質を検出する検出方法および試薬に関し、特に、標的物質を高感度かつ安価に検出できる検出方法および試薬に関する。
従来から、疾病に関連付けられた特定の抗原または抗体をバイオマーカーとして検出することで、疾病の発見や治療の効果等を定性的又は定量的に分析する免疫測定法が知られている。近年においては、より有効なバイオマーカーの検出を目的に、微量のバイオマーカーの検出を行う高感度検出への要求が高まっている。免疫測定法の1つである酵素結合免疫吸着測定法(Enzyme-Linked Immuno Sorbent Assay)(本明細書において、「ELISA法」ともいう。)は、試料溶液中に含まれる標的の抗原、抗体あるいは核酸を、特異抗体や標的抗体に結合する抗原、相補的な核酸で捕捉するとともに、酵素反応を利用して検出する方法であり、コスト等のメリットから広く普及している。
ELISA法は、標的物質の定量的検出が可能な測定法であるが、現在普及しているELISA法の殆どは、96ウェルマイクロプレート上で操作が行われており、工程数が多く、煩雑な操作が必要になっている。また、複数の反応工程を経るため、測定結果を得るのに多大な労力と時間を要してしまう。このため、作業時間や反応時間の短縮が求められている。更には、より一層の高感度検出が求められている。
高感度検出を達成するには、酵素と基質との反応性を向上させることが考えられる。このため、例えば、レポーターが付加された免疫複合体(標識化合物)を固相から遊離し、自由液体媒質中で反応させる技術が提案されている(特許文献1)。この特許文献1では、ビオチン類または官能化アゾ色素と、アビジン類とが、免疫複合体に導入されるように免疫複合体の構成要素が設計されている。例えば、標識抗体として、スプレプトアビジン-ビオチン結合を介してレポーター基が結合したものが準備される。固相上にて免疫複合体が形成されるとスプレプトアビジン-ビオチンの結合を介してレポーター基が免疫複合体中に導入される。その後、過剰のスプレプトアビジンを加えると、複合体中のスプレプトアビジンが、添加されたスプレプトアビジンに置き換わり、免疫複合体中のレポーター分子が遊離する。故に、この技術において、自由液体媒質中でレポーター分子を検出し、検体中の被検体濃度に関連付けることができる。
また、免疫複合体を高感度に検出するべく、微細加工技術によって、μmスケールの微小容器で反応を行わせるマイクロリアクタが開発されている。反応場が微小空間となるマイクロリアクタを用いれば反応速度を向上させることが期待できる。微小な流路や反応チャンバを用いて抽出や分離などの実験操作をマイクロリアクタ上で実現することは、Lab on a chipとも呼ばれている。そして、円盤状のディスクにマイクロリアクタを形成し、回転による遠心力によって試料液を分配して生物学的材料を単離することが提案されている(特許文献2)。また、円盤状のディスクに複数のチャンバや流路、リザーバ等を形成し、ディスクを回転させることによって試薬の送液、廃液を実行して、ウェルにおいて用手法で行われていた免疫測定の手順をマイクロリアクタで実施することが提案されている(特許文献3)。
このマイクロリアクタにおける免疫測定において、低濃度の標的物質の検出を目的として、標識ビーズを用いる方法が提案されている(特許文献4)。例えば、特許文献4には、表面に抗体が修飾された標識ビーズが充填されるビーズ充填部や検出領域を設けた円盤状のディスクが示されている。そして、ディスクに注入された試料液中の抗原を標識ビーズ上の抗体で捕捉すると共に、標識ビーズに抗原が結合した標識ビーズ複合体は、ディスクの回転により検出領域へ送出され、検出エリアに固定された抗体に捕捉される。これにより検出領域に固定された状態の標識ビーズ複合体を、光ディスク装置の光学的読み取り手段によって数量計数することで試料中の標的物質を検出することが開示されている。
一方で、ディスクを用いた分析方法において、ディスクに設けられた反応場内で抗原担持ビーズと蛍光IgG抗体標識試薬とサンプルとを混合し、標的物質と結合させて複合体を形成した後、ディスクを回転させて発生させた遠心力によって、反応場から密度勾配媒体が充填された分離チャンバにビーズを導入し、電磁照射ビームの照射によって、複合体を検出する方法が提案されている。分離チャンバには密度勾配媒体が充填されており、導入されたビーズは遠心力によって密度勾配媒体中の等密度点まで移動し、そこで静止する。そして、等密度点からの蛍光を検出することによって目的の免疫複合体を検出することができる。この分析方法によれば、ビーズと等密度点が異なる免疫複合体に結合しなかった余剰の蛍光標識等は、目的の免疫複合体と分離することができ、洗浄操作を行うことなく免疫複合体を検出できるというものである(特許文献5)。
特表平6-505802号公報 特開2008-185423号公報 特表2002-503331号公報 特開2012-255772号公報 特表2006-505766号公報
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、標識物質であるレポーター分子を自由液体媒質中に遊離させ、その液体中で基質と反応させることを開示するのみで、低濃度の標的物質の検出を可能とするような検出感度の向上や反応性向上を実現するには不十分である。
特許文献2においては、免疫測定法を高感度に行うことに関しては何ら開示がない。特許文献3は、従来のELISA法の工程をマイクロリアクタに実装したものを開示するに過ぎない。更に、マイクロリアクタでは、反応場を小さくすることで、反応速度や反応性を向上させることができる一方で、反応容量が小さくなることに起因して信号強度が小さくなるという問題点があった。このため、特許文献2及び3に記載の技術によって免疫複合体の高感度測定を実施しようとすれば、高感度の検出器やカメラが必要となり、高コストとなるという問題点があった。
特許文献4には、検出対象を標識ビーズとすることで、汎用の光ディスク装置を用いて免疫測定を実施する技術が開示されている。一般的に、マイクロリアクタでの粒状物の輸送は、目詰まりの原因ともなるところ、特許文献4の技術では、検出領域に抗体を固相化し、この検出領域に流れてくる抗原を担持した標識ビーズを捕捉するので、部分的に標識ビーズの集積が起きかねず、場合によっては、実際の取扱いを難しくしてしまうという問題点があった。また、検出領域に捕捉された標識ビーズ同士が近接すると、検出エラーの原因となるという問題点があった。
加えて、特許文献4に記載された技術では、標識ビーズを流下させつつ固相化された抗体と標識ビーズに担持された抗原との間で抗原抗体反応を行わせるので、検出領域全体が当該抗原抗体反応の反応場となる。反応性は、抗原と抗体との接触頻度に影響されるため、検出領域全域が反応場となる当該技術では、抗原抗体反応効率が低くなりがちである。また、標識ビーズの捕捉と、その検出(即ち、抗原の検出)とが、同じ反応場で行われるため、反応効率が低い場合には検出感度が低下してしまう。更には、抗体の流下速度によっては、固相化された抗体が標識ビーズを捕捉することが難しくなるため、検出感度や、検出速度が更に不良になるといった問題点があった。
また、特許文献5に記載された技術は、複合体を担持したビーズを密度勾配媒体中の等密度点に集合(偏在)させて検出する。このため、集積量が少なくなるほど信号検出は高度になり、サンプル中の標的物質を一層高感度に検出することは困難であった。
本発明は、上記問題点を鑑みてなされたものであって、試料中の標的物質を従来の技術よりも高感度で安価に検出できる技術を提供することを目的の一つとする。
本発明は、その一局面によれば、標識物質に結合した第1の捕捉物質と、固相に固定された第2の捕捉物質との間に標的物質をサンドイッチすることにより複合体を形成し、形成された前記複合体から標識物質を含む部分を分離した後、
分離した前記標識物質を含む部分を、遠心力によって、管状路内に充填された液体中を移動させ、
前記管状路内に照射された光を前記標識物質を含む部分が散乱する散乱光により、前記標識物質を含む部分を検出することを含む、標的物質の検出方法を提供する。
本発明の好ましい実施形態によれば、
前記複合体から前記標識物質を含む部分を分離する前に、前記複合体が前記管状路への流入を抑止された状態で前記複合体を洗浄する洗浄処理を実施する。
本発明の好ましい実施形態によれば、前記洗浄処理を実施すると、洗浄に使用した洗浄液で前記管状路が満たされる。
本発明の好ましい実施形態によれば、前記洗浄処理に使用した洗浄液を前記管状路よりも下流側に貯留する。
本発明の好ましい実施形態によれば、前記複合体を所定のチャンバに保持することにより前記複合体が前記管状路への流入を抑止された状態で前記洗浄処理を実施する。
本発明の他の好ましい実施形態によれば、本発明の方法は、
回転可能に形成されたデバイスに、前記洗浄液を貯留する第1の貯留室と、前記チャンバと、前記チャンバから流出する液体を貯留する第2の貯留室とを、この順で前記デバイスの回転中心側から外方側に向けて配置し、前記第1の貯留室と前記チャンバを開閉自在な流路で連通し、前記チャンバと前記第2の貯留室を前記管状路で連通し、
前記デバイスを回転させることにより、前記洗浄液を前記第1の貯留室から前記チャンバに給液した後、前記管状路を経由して前記第2の貯留室へ排出させて前記洗浄処理を実施することを含む。
本発明の他の好ましい実施形態によれば、前記第1の貯留室と前記チャンバを開放可能な流路で連通する。
本発明の他の好ましい実施形態によれば、前記洗浄処理は、前記第2の貯留室と前記管状路が前記洗浄液で満たされるまで行われる。
本発明の他の好ましい実施形態によれば、本発明の方法は、
前記デバイスの前記チャンバよりも回転中心側に、前記複合体から前記標識物質を含む部分を分離する試薬を含む液体を貯留する第3の貯留室を配置し、前記第3の貯留室と前記チャンバを開閉自在な流路で連通し、
前記デバイスを回転させることにより、前記洗浄処理の後、前記チャンバに前記試薬を含む液体を給液して、前記標識物質を含む部分を分離した後、分離した前記標識物質を含む部分を前記管状路内に移動させることを含む。
本発明の他の好ましい実施形態によれば、前記第3の貯留室と前記チャンバを開放可能な流路で連通する。
本発明の他の好ましい実施形態によれば、前記管状路から所定時間内に断続的に発生する散乱光を検出する。
本発明の他の好ましい実施形態によれば、前記標識物質は、前記管状路に満たされる液体よりも比重の大きい物質である。
本発明の他の好ましい実施形態によれば、前記標識物質は、金属、セラミックス、ガラス及び樹脂からなる群より選ばれた1つを主たる構成成分とする微粒子である。
本発明の他の好ましい実施形態によれば、前記標識物質は金属コロイド粒子である。
本発明の他の好ましい実施形態によれば、前記固相は、ガラス粒子、セラミックス粒子、磁性粒子、及び樹脂粒子からなる群より選ばれた少なくとも1つの粒状体である。
本発明の他の好ましい実施形態によれば、前記固相は、前記複合体を形成する際に使用される容器内側の構造体である。
本発明の他の好ましい実施形態によれば、前記複合体からの前記標識物質を含む部分の分離は、加熱処理、pH調整処理、変性処理、酸化処理、還元処理、酵素処理及び競合反応処理からなる群より選ばれた少なくとも1つの処理により行われる。
本発明の他の好ましい実施形態によれば、前記第1の捕捉物質は、標的物質と特異的に結合する抗体、抗体フラグメント、改変抗体、抗原、アプタマー及び核酸からなる群より選ばれた少なくとも1つである。
本発明の他の好ましい実施形態によれば、前記第2の捕捉物質は、標的物質と特異的に結合する抗体、抗体フラグメント、改変抗体、抗原、アプタマー及び核酸からなる群より選ばれた少なくとも1つである。
本発明の他の局面によれば、上記本発明の標的物質の検出方法において用いられる試薬であって、前記複合体から前記標識物質を含む部分を分離する作用を有する試薬が提供される。
本発明の他の好ましい実施形態によれば、上記本発明の試薬は、pH調整剤、変性剤、還元剤、酸化剤、酵素、及び競合剤からなる群より選ばれた少なくとも1つを含む。
本発明の他の好ましい実施形態によれば、上記本発明の試薬は、pH調整剤を含む。
本発明の標的物質の検出方法によれば、上記複合体から分離された前記標識物質を含む部分(本明細書では、「標識物質含有断片」ともいう)を遠心力により、管状路内に充填された液体中を移動させ、標識物質含有断片が管状路内に照射された光を反射して散乱する散乱光によって、標識物質含有断片の検出が行われる。一般に、検出対象における信号発生源(光学信号を発生させる物質、標識物質)が小さくなるほど、吸光度変化を信号として検出対象を検出するには、高度な技術が必要になる。しかし、本発明の方法は、散乱光を光学信号として取得するので、上記標識物質含有断片のような微小な検出対象を十分に検出できる。
ここで、散乱光を用いて検出対象を検出する場合、検出対象以外の物質からも散乱光が発生するため、往々にして検出対象を特異的に検出できないといった問題が生じる。しかし、本発明の方法では、液体中の標識物質含有断片は、遠心力の作用によって固有の移動速度で移動するので、検出対象たる標識物質含有断片を特異的に検出できる。更に、本発明の方法では、標識物質含有断片は、管状路内に充填された液体中を遠心力の作用で移動するので、液体の流れとともに移送される場合よりも、緩慢な速度で移動する。よって、本発明の方法によれば、標識物質含有断片が遠心力により管状路内を移動する最中でも、標識物質含有断片からの散乱光の取得を容易に行える。
更に、本発明の方法によれば、例えば、ビーズを固相として用いた場合、1のビーズに複数の標的物質が担持されてしまっても、ビーズ単位で1カウントするのではなく、ビーズから分離された標識物質含有断片の数を逐次的に検出(カウント)できるので、標的物質を高感度に検出することができるという効果を奏する。
本発明の試薬によれば、複合体のうちの標識物質を含む部分、すなわち、標識物質含有断片を良好に分離することができるので、標的物質の検出に好適な試薬を提供することができる。
本発明の検出方法の一実施形態の概要を説明する図である。 第一実施形態の検出方法を実施するのに好適なディスクの一例を示す概略平面図である。 図2aの一部拡大図である。 第一実施形態の検出方法を実施するのに好適なディスクの別の一例を示す概略平面図である。 検出装置の一例を示す概略図である。 実施例1における各試薬のpH値と切断特性との関係を示した図である。 実施例2におけるNaOHの濃度(pH値)と切断特性との関係を示した図である。 実施例3における各種変性剤の切断特性を示した図である。 実施例4における増感処理による金コロイド粒子径の変化を示した図である。 実施例5における金属コロイド粒子の粒径と散乱光強度との関係を示した図である。 実施例6において溶出された金コロイド粒子(金コロイド粒子を含む部分)の濃度(抗原濃度に対応)と散乱光強度との関係を示した図である。 実施例7において金コロイド粒子(金コロイド粒子を含む部分)の選択的な流出を説明する図である。 実施例7において金コロイド粒子(金コロイド粒子を含む部分)を測定した結果を示した図である。 実施例8において金コロイド粒子(金コロイド粒子を含む部分)を散乱光を電圧値として検出した結果を示した図である。 図13aの一部拡大図である。 実施例8において免疫複合体形成に抗原を用いなかった場合(ブランク)に金コロイド粒子(金コロイド粒子を含む部分)の散乱光を電圧値として検出した結果を示した図である。 図14aの一部拡大図である。 実施例8において測定されたスポットのカウント数と抗原濃度との関係を示した図である。
<本発明の検出方法>
本発明の検出方法では、複合体から分離した標識物質を含む部分を、遠心力によって管状路内に充填された液体中を移動させるため、標識物質を含む部分は、管状路内に充填された液体中に断続的に供給される。そして、その管状路に照射される照射光が該標識物質を含む部分によって散乱されることで生じる散乱光により標識物質を含む部分を検出する。複合体は、標識物質に結合した第1の捕捉物質と、固相に固定された第2の捕捉物質との間に標的物質をサンドイッチすることにより形成される。このため、複合体から分離した標識物質を含む部分を検出することで標的物質を検出することができる。
なお、本明細書中において、「固相-第2の捕捉物質-標的物質-第1の捕捉物質-標識物質」のように各要素をハイフンで連結して示した場合は、相互に物理的又は化学的に結合していることを意味する。また、「第1の捕捉物質-標識物質」は、「標識物質に結合した第1の捕捉物質」や、単に「第1の捕捉物質」と記載する場合がある。「外方側」、「外側方向」及び「外方」は、遠心方向を意味する。「主たる構成成分」とは、最も含有量の多い構成成分であり、例えば含有量が50質量%を超える成分をいう。
以下、本発明の検出方法の一実施形態を、図1を用いて説明する。図1は、本発明の検出方法の一実施形態の概念を示した概要図である。尚、説明を簡単にするために、図1には、標的物質を抗原とし、第1および第2の捕捉物質を一次抗体としたケースを示している。
初期状態では、反応場(第1の反応場、反応が実施される空間)に、標的物質を捕捉するための第2の捕捉物質が固定された固相が準備される(ステップ1、図1(a))。ここに、標的物質を含む試料溶液が導入されると(図1(b))、試料溶液中の標的物質は第2の捕捉物質によって特異的に捕捉される(ステップ2)。必要に応じて洗浄処理によって、捕捉された標的物質以外のものを反応場から除去した後、標識物質に結合した第1の捕捉物質が反応場に導入され、この第1の捕捉物質が標的物質に結合し、標的物質が第2の捕捉物質と第1の捕捉物質との間にサンドイッチされた免疫複合体(以下、単に「免疫複合体」とも称する)が固相上に形成される(ステップ3、図1(c))。続いて、洗浄処理を行うことが好ましい。この洗浄処理により、管状路に混入すると検出結果に影響を与える物質を予め系外に除去することが好ましく、そのような物質としては、例えば、複合体を形成していない余剰の第1の捕捉物質、及び、遊離の標識物質が挙げられる。また、この洗浄処理により、その他の夾雑物を一緒に除去してもよい。これにより、固相に捕捉された標的物質に対応する分の標識物質が、固相に担持された状態となる。
そして、形成された複合体に対し、酵素、酸化還元剤、変性剤、酸や塩基などの試薬、または熱、光(電磁波)、振動などの外場を付与して(図1(d))、標識物質を含む部分を固相から分離させる(ステップ4、図1(e))。尚、この分離する部分(標識物質を含む部分)は、標識物質のみであってもよく、標識物質に何らかの分子集団が結合した状態であっても良い。分子集団は、第2の捕捉物質-標的物質-第1の捕捉物質の複合体や、標的物質-第1の捕捉物質の複合体、第1の捕捉物質のように、元の分子集団がそのまま残存しているもの(すなわち、分子間結合が切断されて生じたもの)に限られず、元の分子集団内の分子内結合が切断されて断片化されたものであっても良い。
この反応場は、標識物質に結合した第1の捕捉物質と、固相に固定された第2の捕捉物質との間に標的物質をサンドイッチすることにより複合体を形成する反応や、形成された前記複合体から標識物質を含む部分を分離する反応を実施する場であり、区画された空間を意味するものである。反応場としては、例えば反応容器や反応室(チャンバ)などが例示される。なお、本法においては、上記図1(a)~(e)に示されるステップ1~4は、標識物質を含む部分を、遠心力によって管状路内を移動させることができる限りにおいて、それぞれ別個の反応場で実施してもよく、または、連続する複数のステップを同一の反応場で実施してもよい。例えば、ステップ1~3を、単一容器を使用して完了させ、ステップ4を別の単一の容器で完了させてもよい。
なお、本実施形態においては、回転可能に構成されたデバイスに設けられる反応チャンバを反応場として用いてもよい。ステップ1~4或いは適宜実施される洗浄処理のいずれの段階から当該反応チャンバを使用するかは、適宜選択することができる。例えば、第2の捕捉物質が固定された固相を上記デバイスの反応チャンバにロードして、ステップ1~4の全てを当該反応チャンバを使用して実施してもよく、または、ステップ1~3は上記デバイス外の容器で実施し、ステップ4以降を上記デバイスの反応チャンバで実施してもよい。後者の場合、ステップ4の生成物を固液分離するかどうかにかかわらず、標識物質を含む部分を含有する溶液が反応チャンバに導入されるが、かかる場合には、反応チャンバは単に溶液を検出場、すなわち、微小径の管状路内へ供給するための前室として使用されることとなる。
ステップ4の後、溶液に含まれている標識物質を含む部分を遠心力によって検出場、すなわち、微小径の管状路内に充填された液体中へ移動させる(図1(f))。図1(f)に図示の例では、反応チャンバから回転中心よりも外側方向(図の右側)に向けて微小径の管状路が連設されている。したがって、標識物質を含む部分が、溶液に含有された状態でデバイスの反応チャンバに貯留されていれば、デバイスを回転させた場合に生じる遠心力により、標識物質を含む部分が微小径の管状路内に充填された液体中に進入して該液体中をさらに外方へ移動することができる。また、図示した例では、微小径の管状路の孔径が標識物質を含む部分を通過させるが固相は通過させない寸法とされているので、固相の流入を阻止しつつ標識物質を含む部分を管状路内に進入させることができる。ここで標識物質を含む部分は、管状路に充填された液体中を遠心力によって移動する。その移動は、いわゆる遠心沈降によるものである。つまり、標識物質を含む部分の移動速度は、管状路に充填された液体の移動速度に対して相対的に大きい。本発明において、管状路に充填された液体は、遠心力によってほとんど移動することはなく、通常、移動速度はほぼ零であるが、原理的には、標的物質を含む部分の移動に実質的に影響を与えなければ、僅かに移動することは許容される。
管状路の他端は、前記デバイス内に設けられた第2の貯留室(図1には図示せず)に接続されている。管状路と第2の貯留室とは、常に連通させてもよく、または、弁により開閉自在にしてもよい。この第2の貯留室としては、前記デバイス内の前記チャンバよりも下流側に設ければよく、例えば前記チャンバよりも外方の位置に設けることが好ましい。標識物質を含む部分を管状路に移動させる前に、管状路は液体が充填された状態とされる。第2の貯留室が前記チャンバよりも外方の位置に設けられている場合、管状路と第2の貯留室とが常に連通してと、管状路と第2の貯留室の両方が液体で充填される。管状路への液体の充填タイミングは、反応チャンバを使用するタイミングに応じて異なる。例えば、前述のステップ3以前から反応チャンバを使用する場合には、ステップ3の後の洗浄処理以降、ステップ4の前に管状路へ液体が充填される。また、ステップ4以降に反応チャンバを使用する場合には、好適には標識物質を含む部分が含有される溶液を反応チャンバに導入する前に管状路に液体が充填される。なお、反応チャンバにバルブを設け、管状路への液体の充填が完了した後に、バルブを開通させ標識物質を含む部分が管状路に充填された液体中へ導入されるように構成してもよい。かかる場合には、標識物質を含む部分が含有される溶液を反応チャンバに導入するタイミングは、管状路への液体の充填完了前であっても後であってもよい。
検出場は、管状路からの散乱光を検出する場であり、光源と受光素子が備えられ、照射光に基づいて散乱光を発生させるという光学的変化を生じせしめる場である(以下、適宜、「第2の反応場」と称することがある。)。照射光が照射される管状路の少なくとも一部を透光性材料で形成することで、光源から管状路に向かって照射された照射光は、管状路の壁を通過し、管状路を移動する標識物質によって散乱され、散乱光が生じる。この散乱光を受光素子で検出することで、標識物質の存否を検出することができる(図1(g))。
液の中にある粒子が遠心場におかれた場合の移動速度は、ストークスの法則によって説明されている。具体的には、質量mの粒子が、回転半径r、回転角速度ωで回転を受けると、下記式(1)のような遠心力fを受ける。
Figure 2023160814000002

また、粒子の半径r、粒子密度ρ、液体密度ρとすれば、その粒子に働く遠心力Fcは下記式(2)で表される。
Figure 2023160814000003

ストークスの抵抗法則によれば、粘度ηの液体中を速度vsで移動する半径rの球体が受ける抵抗Frは下記式(3)で表される。
Figure 2023160814000004

FcとFrは粒子の終端速度において釣り合うので、下記式(4)で表され、式(4)の粒子半径rを、直径Dを用いて置き換えると、粒子の移動速度vは下記式(5)で表される。
Figure 2023160814000005

Figure 2023160814000006

つまり、遠心力が作用すると、粒子の直径(D:cm)、粒子の密度(ρ:g・cm-3)、液体の密度(ρ:g・cm-3)、溶液の粘度(η:poise;g・cm-1・s-1)などが関係して、粒子の移動速度(v:cm/sec)、が定まる。換言すれば、同じ液体中であれば、粒子の密度、粒子径が大きい粒子は、液体中をより早く移動することとなる。予め密度と粒径が既知である粒子については、式(5)に基づいて、移動速度や所定位置までの移動時間を推定することができる。
標識物質の粒径、密度、更には溶液の粘度も予め把握することが可能である。また、標識物質を含む部分において、標識物質がそれ以外の部分に比して十分に大きく或いは重い場合は、標識物質を含む部分は、標識物質で近似できる。これにより、式(5)に基づいて理論的に、或いは実験によって、標識物質を含む部分の移動速度および管状路の所定位置(検出領域)への到達時間を導出することができる。なお、式(5)は、理論式であるため、式(5)の前提条件から外れる場合は、式(5)を補正したうえで移動速度等を算出してもよい。
上述のように、導出された移動速度に基づき標識物質を含む部分が検出領域を通過する時間は見積もることができる。また、遠心開始から所定時間の間に標識物質を含む部分は検出領域を通過する。故に、所定時間の間に検出領域で検出される散乱光が目的の検出対象に起因する散乱光であると判断できる。
更に、検出対象は、管状路を移動するものであるので、その散乱光は、間欠的な信号となる。このため継続して発生している散乱光は、何らかの要因によるバックグランドノイズとして識別でき、検出対象の散乱光を特異的に検出できることとなる。
このように、本発明の検出方法においては、微小な検出対象を適切に検出することができる。管状路に供給された標識物質(標識物質を含む部分)は、反応場において標的物質と複合体を形成したものに由来するので、標識物質の検出により標的物質の存在を検出できることとなる。
また、かかる所定時間に断続的に発生する散乱光については発生回数をカウントすることができる。このカウントに基づき、管状路に供給された標識物質を含む部分の数、即ち標的物質の数を定量評価することができる。特に、試料中の標的物質の数が少ない微量分析の場合には、定量性に優れたものとなる。
更に、本発明の検出方法においては固相から標識物質を含む部分を分離して、分離された標識物質を含む部分を検出場に導入するので、従来提案されているディスク様のマイクロリアクタを使用し免疫複合体を形成したビーズをカウントして免疫測定を行う場合に比べて、流路を通過する物質サイズを大幅に小さくすることでき、検出対象の物質を円滑かつ容易に検出場へ導入することができる。
<標的物質>
本発明の測定方法において分析対象となる標的物質は、特定の生体分子に結合するものであり、生化学的な反応によって特定の生体分子に結合するものでもよい。例えば、免疫学的又は遺伝子学的に検出できるものであり、特に限定されるものではない。標的物質として、具体的には、例えば、細菌やウイルスなどの病原体、タンパク質、ペプチド、DNA、RNA、アプタマーなどの核酸、エクソソーム、糖鎖などの各種化合物等が例示される。更には、ホルモンなどの生理活性物質や、そのアゴニスト、アンタゴニスト、アルカロイドなどが例示される。
<第1の捕捉物質>
本発明の第1の捕捉物質は、第2の捕捉物質に捕捉された標的物質に結合し、固相に固定された第2の捕捉物質との間で標的物質をサンドイッチして、固相に固定された複合体、すなわち、固相-第2の捕捉物質-標的物質-第1の捕捉物質(標識物質に結合した第1の捕捉物質)の順に結合した複合体を形成する。標的物質が抗原である場合は、第1の捕捉物質は、標的物質に対して特異的に反応する抗体が使用される。一方で標的物質が抗体である場合は、第1の捕捉物質としては、当該抗体が特異的に結合する抗原を用いてもよく、また当該抗体に結合する抗体であって第2の捕捉物質とは別の抗体であってよく、更に当該抗体を産生する宿主とは別の宿主で作製された抗体を使用してもよい。このため、標的物質が抗体である場合には、固相-抗原(第2の捕捉物質)-標的物質-抗原(第1の捕捉物質)または抗体(第1の捕捉物質)となる複合体や、固相-抗体(第2の捕捉物質)-標的物質-抗原(第1の捕捉物質)または抗体(第1の捕捉物質)となる複合体が形成される。
更に、本発明の第1の捕捉物質として、上記した抗原及び抗体以外に、標的物質に応じて、核酸やアプタマー、ビオチン-アビジンのいずれか一方、リガンド-受容体の何れか一方などを採用しても良い。例えば、標的物質が細菌由来のDNAである場合には、そのDNAの一部領域に対して相補的な配列を有する核酸分子を第1の捕捉物質として用いることができる。また、標的物質が転写因子のような配列特異的DNA結合タンパク質である場合には第1の捕捉物質として特定の配列を有するDNAを用いることができる。
第1の捕捉物質として用いられる抗体は、ポリクローナル抗体であっても、モノクローナル抗体であってもよいが、反応特異性の観点から、モノクローナル抗体が好ましい。
第1の捕捉物質として用いられる抗体は、抗体ならびに当該抗体と実質的に反応性が同等の抗体フラグメントおよび改変抗体も含む。抗体フラグメントとしてはFabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fab’フラグメント、scFvフラグメントなどが挙げられる。
<第2の捕捉物質>
本発明の第2の捕捉物質は、標的物質を固相上に捕捉する機能を有するものであり、固相上に固定して使用され、例えば、標的物質が抗原である場合は、標的物質に対して特異的に反応する抗体が使用され、標的物質が抗体である場合は、該抗体が特異的に反応する抗原又は抗体が使用される。
更に、本発明の第2の捕捉物質として、上記した抗原及び抗体以外に、標的物質に応じて、核酸やアプタマー、リガンド(標的物質の基質、阻害剤、拮抗剤)、受容体を使用しても良い。例えば、標的物質が細菌由来のDNAである場合には、そのDNAの一部領域に対して相補的な配列を有する核酸分子を第2の捕捉物質として用いることができる。また、標的物質が転写因子のような配列特異的DNA結合タンパク質である場合には第2の捕捉物質として特定の配列を有するDNAを用いることができる。
第2の捕捉物質として用いられる抗体は、ポリクローナル抗体であっても、モノクローナル抗体であってもよいが、反応特異性の観点から、モノクローナル抗体が好ましい。
第2の捕捉物質として用いられる抗体は、抗体ならびに当該抗体と実質的に反応性が同等の抗体フラグメントおよび改変抗体も含む。抗体フラグメントとしてはFabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fab’フラグメント、scFvフラグメントなどが挙げられる。
ここで、固相の大きさと第2の捕捉物質の大きさとを対比すると、固相の方が格段に大きい。このため、固相には複数の第2の捕捉物質が固相化されやすい。ビーズなどの固相に標的物質を捕捉させ、標的物質を捕捉したビーズを計数することで標的物質を検出する従来の方法では、1つのビーズに複数の標的物質が捕捉されると検出結果に大きな影響を与えかねない。しかし、本実施形態では、検出対象は、ビーズに拘束されない複合体から分離した標識物質を含む部分であるので、高感度な検出を実現することができる。
なお、標識物質の立体障害によって、第1の捕捉物質が固相上に捕捉された標的物質にアクセスすることに大きな影響が出る場合には、固相上の第2の捕捉物質の分布がまばら、つまり疎密となるように、第2の捕捉物質を固相に結合する際に、その濃度等を適宜調整してもよい。
<標識物質>
標識物質は第1の捕捉物質を標識するものであり、散乱光を生じさせるものであれば特に制限されない。例えば、ガラス、セラミックス、金属などの無機物や、蛍光物質又は樹脂などを主たる構成成分とする微粒子が挙げられる。樹脂の粒子としては、ポリスチレンラテックスなどの合成ラテックス、天然ゴムラテックスなどのラテックスや、ポリスチレン等に代表される合成樹脂などの粒子が例示される。また、標識物質は、単一素材で構成されたものであっても、複数素材で構成されたものであってもよい。更に、無機-有機の異種材料が組み合わされたものであってもよい。異種材料の組合せとしては、例えば、樹脂粒子やセラミックス粒子に金属粒子が担持された複合粒子や、樹脂粒子に金属が被覆された複合粒子であってもよい。また、樹脂粒子に蛍光物質が担持されたものであってもよいが、これらに限られない。
これらの標識物質の粒径は、散乱光強度やデバイス内での移動性の点から、80nm~3μmであることが好ましい。なお、標識物質の種類や大きさによって、散乱光強度、遠心場における移動速度、第1の捕捉物質への反応性などが異なるため、これらも考慮して、適正な粒径のものが選定される。
ここで、遠心力による移動速度への寄与を考慮すると、標識物質としては、管状路に満たされる液体よりも比重の大きい物質が好ましい。有機物に比べて密度の高い無機物の粒子や、比較的粒径の大きな樹脂粒子は、標識物質として好適である。標識物質を含む部分の移動速度と試料中の主たる夾雑物である有機物の移動速度とを、検出場において大きく異ならせることができるからである。このうち、良好な散乱光強度の取得が期待できる金属粒子や金属コロイド粒子は標識物質として特に好適である。
標識物質として使用し得る金属コロイド粒子としては、各種の金属コロイド粒子を適宜選択して用いることができ、例えば、金コロイド、銀コロイド、白金コロイド等の金属コロイド、またそれらの複合金属コロイドの粒子が挙げられる。複合金属コロイドとしては、例えば、白金担持金コロイド、白金担持パラジウムコロイド等が挙げられる。
本発明において好ましい金属コロイド粒子としては、金コロイド粒子、その複合金属コロイド粒子、又は銀コロイド粒子が挙げられ、より好ましくは、金コロイド粒子である。
金属コロイド粒子の粒子径は、通常、1nm~500nmである。選択する光学検出系の感度、精度、測定条件などに依存して、検出に適切な金属コロイド粒子の粒径は異なるが、例えば、レーザ光源とフォトダイオードとを組み合わせて散乱光を検出する簡便な検出系を用いる場合には、金属コロイド粒子の粒子径は80nm以上であればよく、150nm以上であれば更に好適であり、200nm以上であれば、更に容易に検出が可能である。好適には、80nm~500nmであり、より好適には100nm~500nmであり、更に好適には120nm~300nmであり、特に好適には180nm~250nmである。
なお、第1の捕捉物質が抗体である場合には、第1の捕捉物質たる抗体が標識される場合と、当該抗体を認識する抗体(例えば二次抗体)が標識される場合とが含まれる。
標識物質と第1の捕捉物質との結合方法は制限されず、例えば、物理的吸着による結合、化学的結合、親和性を利用した結合、およびこれらの組み合わせなどの結合方法が利用できる。公知の手法によって標識物質と第1の捕捉物質は結合させることができる。
この標識物質と第1の捕捉物質との大きさを対比すると、標識物質の方が相対的に大きい。従って、標識物質に複数の第1の捕捉物質が結合するといった場合が生じ得る。標識物質に多数の第1の捕捉物質が結合している場合には、第1の捕捉物質と標的物質との反応性は向上する一方で、標的物質が高濃度になるほど、複数の標的物質と1の標識物質とが対応した状態になりやすい。その場合には、実際より標的物質の濃度が低濃度で評価される。このため、定量的な検出が可能となる濃度範囲をより高濃度側まで広域化するべく、標識物質と第1の捕捉物質との比率を最適化するための処理を実施してもよい。このような処理として、例えば標識物質に結合した第1の捕捉物質と標的物質とを結合させる反応において、標識物質に結合した第1の捕捉物質と標的物質との仕込み比を調整する処理等が挙げられる。
また、検出場への試料(標識物質を含む部分)の導入には中空の導管である管状路が使用され、好適には微小径の管状路が使用される。微小径の管状路としては、例えばマイクロ流路であってよい。標識物質が金属コロイド粒子などの不溶性物質の場合、流路の目詰まりを回避するためには、第1の捕捉物質に結合した標識物質の粒径は小さいほど好ましい。一方で、粒径が小さくなると散乱光強度が低下する点を鑑み、上述したように、標識物質は好ましくは80nm~3μmの粒径範囲のものが適宜選定される。
ここで、標識物質が金属コロイド粒子である場合には、例えば、コロイド粒子を成長させて粒径を大きくする増感反応を行ってもよい。これによれば、第1の捕捉物質と標識物質の金属コロイド粒子とを結合させる際には、より小さな金属コロイド粒子が用いられるので、1の金属コロイド粒子に結合する第1の捕捉物質の数を抑制することができる。そして、検出場に標識物質を導入する前に、増感反応によって金属コロイド粒子の粒子径を増大させれば、散乱光強度を増加させることができる。本発明においては、標識物質が検出場に導入されれば足り、標的物質やこれに結合する第1の捕捉物質が検出場に導入される必要がない。このため、増感反応によって標識物質に結合する標的物質や第1の捕捉物質に分解や変性が生じても問題がない。
具体的には、標識物質が金属コロイド粒子である場合において、例えば、その金属コロイドの触媒活性を利用し、または還元剤を併用することにより、標識物質の金属コロイド表面に、別途添加した金イオンや銀イオンを含む金属塩溶液中の金属イオンを還元、集積させ、金属コロイドの粒径を大きくすることができる。
この増感反応に供する金属コロイド粒子としては、核となる金属種が酸化還元に対する安定性の高いものが好ましい。なお、核となる金属コロイド粒子は、単一の金属で形成されていても、複合金属であってもよい。かかる金属コロイド粒子としては、例えば、金コロイド粒子、白金コロイド粒子、パラジウムコロイド粒子等が挙げられる。また複合金属コロイド粒子としては、金コロイド粒子に白金コロイド粒子を担持させた白金-金コロイド粒子等が挙げられる。
かかる金属コロイド粒子の増感反応において、金属イオンの供給源となる金属塩としては、周期律表第4、5、6周期に属する金属の塩が挙げられるが、金、白金、銀、パラジウム、ニッケル、コバルト、銅などの塩を使用することが好ましい。析出させる金属は、金属コロイド粒子と同種の金属であっても、異種の金属であってもよく、安易な条件で還元反応が実施できれば制限されない。
例えば、パラジウム-白金コロイド粒子は、ニッケルイオン、コバルトイオン、銅イオンの金属イオンのいずれかを含む溶液を増感剤溶液として用いることで、当該コロイド粒子を成長させることができる。
また、例えば、金コロイド粒子は、金イオンの供給源として塩化金酸を含む増感剤溶液を用いることで、標識物質としての金コロイド粒子表面に金コロイドを集積させ、当該コロイド粒子を成長させることができる。また、金コロイド粒子は、硝酸銀を含む増感剤溶液を用いることで、金コロイド粒子表面に銀コロイドを集積させ、複合金属コロイド粒子として成長させることができる。白金-金コロイド粒子は、白金の触媒活性を利用し、硝酸銀、硫酸銅などの銅の塩などを含む増感剤溶液を用いて成長させることができる。
増感剤溶液は、上記金属イオンの供給源となる各種金属塩を必須成分として含有し、必要に応じて錯化剤、pH調製剤、緩衝剤、安定剤などを更に含有することができる。このような増感剤溶液としては、従来公知の無電解めっき溶液を使用することもできる。
錯化剤としては、アンモニア、クエン酸塩、酒石酸塩、乳酸塩などが挙げられる。pH調製剤としては、酢酸塩、プロピオン酸塩、アンモニウム塩などが挙げられる。安定剤としては、各種の界面活性剤などが挙げられる。
金属イオンの還元反応を促進させるため、還元剤を含有する溶液を使用しても良い。還元剤としては、クエン酸、アスコルビン酸、次亜リン酸ナトリウム、抱水ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボラン、ホルムアルデヒド、ロッシェル塩、ブドウ糖、エチレングリコールなどが挙げられるがこれに限られるものでない。使用される還元剤は、還元する金属イオンに適したものが適宜選択される。
なお、増感反応は、金属イオン成分と還元剤の両方を含む増感剤溶液により行ってもよく、この場合、金属イオン成分を含む金属塩溶液と、還元剤を含む還元剤溶液とを別々に用意し、増感反応の直前で混合したものを用いて行ってもよい。好適には、金属塩溶液と還元剤溶液とは別々に用意し、夫々を反応系に添加する方法が好ましい。なお、金属コロイド粒子の触媒活性によっては、還元剤溶液を添加せず増感反応を実施してもよい。
この増感反応は、複合体が形成された後、標識物質を含む部分を分離する前に実施されることが好ましい。
<標識物質を含む部分の切り出し方法>
本発明の検出方法では、反応場で、固相上に第2の捕捉物質-標的物質-第1の捕捉物質(標識物質に結合した第1の捕捉物質)の複合体が形成された後、この複合体から標識物質を含む部分を切り出し(分離させ)、固相から液中に遊離させる。この切り出し及び分離は、複合体が液体に含侵された状態で行われる。管状路が液体で充填されていることに加え、反応場にも液体が貯留されて固相が液体に浸漬されている状態にすると、管状路と反応場とが液体で連通する。切り出しによって固相から分離された反応場の液中の標識物質を含む部分は、遠心力によって管状路内に充填された液体中に断続的に供給される。上記したように、この分離部分は、標識物質を含んでいればよく、標識物質を含む第1の捕捉物質そのままの状態である必要はない。つまり標識物質または標識物質を含む部分が分離される限りにおいて、複合体内のいずれの結合が切断されても良い。
なお、複合体から分離された標識物質を含む部分は、搬送性等の観点から、固相(固相の部分)を含まないことが好ましい。したがって、複合体を、固相と第2の捕捉物質との間、第2の捕捉物質の途中、第2の捕捉物質と標的物質との間、標的物質の途中、標的物質と第1の捕捉物質との間、第1の捕捉物質の途中、又は、第1の捕捉物質と標識物質との間で分離して、標識物質を含む部分を遊離させることが好ましい。
上記したように、標識物質の第1の捕捉物質への結合方法は制限されず、例えば、物理的吸着による結合、化学的結合、親和性を利用した結合、およびこれらの組み合わせなどの結合方法が利用できる。公知の手法によって標識物質と第1の捕捉物質は結合させることができる。
標識物質を含む部分を切断する(分離する)手段として、外場から熱、光、振動などの物理的エネルギーを与えることで切断する方法、酸化剤や還元剤等からなる切断試薬を添加する方法を例示することができる。切断試薬は、固相と第2の捕捉物質との結合を切断するものであっても、複合体内のその他の結合を切断するものであってもよい。かかる切断試薬は、固相上に形成された複合体から標識を含む部分を分離することができ標識物質の性状を著しく損なうものでなければ特に制限はないが、好適には、標的物質と第2の捕捉物質または第1の捕捉物質との間、または第1の捕捉物質と標識物質との結合を切断するものである。
結合を切断する切断試薬としては、pH調整剤、変性剤、還元剤、酵素、競合剤、酸化剤などが例示され、好適には、pH調整剤、変性剤、還元剤、酵素が例示され、より好適には、pH調整剤、変性剤が例示される。
pH調整剤は、酸、塩基やこれらの塩を含み、pHを変化させる化合物又は組成物である。酸は無機酸及び有機酸の何れであってもよく、塩基は無機塩基及び有機塩基の何れであってもよい。かかる酸及び塩基としては、一例としてブレンステッド酸、塩基やその塩などが例示され、例えば、塩酸、ホウ酸、炭酸、硝酸、酢酸、ボロン酸、ギ酸、クエン酸、リン酸、シュウ酸、乳酸、リンゴ酸、サリチル酸、グリシン塩酸、グリシン水酸化ナトリウム、水酸化ナトリウム、トリエチルアミン、ジメチルアミン、メチルアミンなどのアミン類、アンモニア、炭酸水素ナトリウムなどが例示されるがこれらに限られない。このうち、強酸及び強塩基が好ましく、その具体例としては、塩酸、硝酸、ギ酸、リン酸、シュウ酸、グリシン塩酸、グリシン水酸化ナトリウム、水酸化ナトリウム、トリエチルアミン、ジメチルアミン、メチルアミンなどのアミン類が挙げられる。
変性剤はタンパク質や核酸の高次構造を変化させる試薬であり、尿素やグアニジン塩などのタンパク質変性剤、ドデシル硫酸ナトリウムなどの界面活性剤が例示される。また、他の変性剤として、上記のpH調整剤に含まれないルイス酸や、アルコールまたはエステルおよびこれらの誘導体などが例示されるが、これらに限られるものではない。
還元剤としては、ジスルフィド結合を切断するものとして2-メルカプトエタノールやジチオスレイトールが例示される。
酵素は、複合体の構成要素の一部を加水分解するものであり、ペプシン、パパイン、フィシン、ヌクレアーゼや、構成要素の特定の結合に特異的に作用する酵素が例示される。
競合剤は、標的物質と第1又は第2の捕捉物質との結合に対して競合するアゴニスト、アンタゴニスト、競合抗体が例示される。
また、標的物質に影響を与えない限りにおいて、過酸化水素などを含む過酸化物やその他の酸化剤を切断試薬として用いてもよい。
切断試薬の種類や濃度は、対象の複合体の構造や結合力に応じて適宜選択され、標識物質の機能や構造が著しく損なわれない範囲で調整される。
ここで、複合体の任意の部分が特異的に切断されるように、予め、複合体の所定の部分にリンカーを導入しておいてもよい。このリンカーは、例えば、固相と第2の捕捉物質と、又は標識物質と第1の捕捉物質とを結合させるに際し、これら2つの物質の間を連結させる目的で使用することが可能である。リンカーが、その両末端に化学結合を形成できる所定の官能基や反応基を有しているものであれば、リンカーの両末端の官能基を介して、固相と第2の捕捉物質または標識物質と第1の捕捉物質との間を連結させることができる。このリンカーは、固相と第2の捕捉物質と、又は標識物質と第1の捕捉物質とを連結させる目的で使用できるがこれに限られない。例えば、第1の捕捉物質や第2の捕捉物質の内部にリンカーを導入してもよい。リンカーの両末端の官能基又は反応基としては、例えば、アミド結合、ジスルフィド結合、エステル結合等の共有結合を形成するものが挙げられる。この場合、リンカーの末端結合部位を加水分解や還元剤処理することによって、リンカーの末端部分の結合が分解され、複合体を切断することができる。
また、リンカーと対象物質との結合機構は上記共有結合に限定されず、例えば、物理的吸着、イオン結合、分子間の親和性を利用した結合、およびこれらの組み合わせなどの結合であってもよい。
さらに、リンカーを構成する分子構造は限定されず、タンパク質、ペプチド、糖鎖、核酸、ポリエチレングリコールなどの合成高分子が使用できる。また、更には、親和性結合を形成するビオチン-アビジンなどを使用してもよい。
かかるリンカー部分の切断は、外場からの物理的エネルギーや試薬によって切断することができる。試薬としては、リンカーの種類に応じ、エンドペプチダーゼ、糖分解酵素、エンドヌクレアーゼ等の酵素、還元剤、酸、塩基、界面活性剤、競合剤などを用いることができる。
具体的には、例えば、ジスルフィド結合に対し、2-メルカプトエタノールやジチオスレイトールのように分子内にチオール基を有する還元剤を作用させることで切断することができる。またビオチン-アビジン結合であれば、pH調整剤の添加により反応系のpHを変化させることや溶出バッファーを使用することで、前記結合を切断することができる。更にはリンカー分子を糖鎖で構成した場合は構成する単糖と単糖の結合に特異的な酵素を作用させることで特定の結合を切断することができる。
更に、ヒスチジンタグを有するリンカーを用いる場合は、例えば、第2の捕捉物質にヒスチジンタグを末端に有するリンカー分子を結合させ、固相の表面にキレート剤でニッケルを固定することにより、ヒスチジンタグを介して第2の捕捉物質を固相に固定化することができる。ここにヒスチジンタグに対する競合剤であるヒスチジンやイミダゾールを切断試薬として添加すれば、ヒスチジンタグをニッケルから解離させることができるので、標識物質を含む複合体を固相から分離することができる。
この標識物質を含む部分を複合体から分離するための切断試薬は、切断反応の後、除去してもよく、失活させてもよい。例えば、pH調整剤の添加によって、反応場が中性から酸性やアルカリ性に傾いた場合に、更にpH調整剤を加えて中性に戻すといった処理がこれに該当する。
本発明の試薬は上述の切断試薬を備えて構成される。なお、本発明の試薬を試薬キットの形態に構成してもよい。試薬キットは、本発明の試薬(切断試薬)に加え、例えば洗浄液、標識物質と結合した第1の捕捉物質が分散された分散液、第2の捕捉物質が担持された固相の分散液のいずれか1以上を備えてもよい。
<固相>
固相は、第2の捕捉物質が結合する不溶性の固体である。反応場に留置できる形態、形状、大きさに加工されている。
固相の形態又は形状は特に限定されるものではない。反応場としての反応容器の内面壁や反応容器の内側に形成され反応容器と一体となった突起や構造物などの構造体や、反応容器と別体で形成されたもののいずれであってもよい。
反応容器と別体で形成される固相としては、反応容器内に収容されることが可能な板状体、粒状体、繊維状体、織布、不織布、フィルム、シートなどが例示される。板状体、粒状体及び繊維状体は、中空、中実、多孔質などのいずれであってもよい。粒状体の形状は、球体、環状体、扁平体、柱状体、不定形状体などのいずれであってもよい。粒状体は、例えば、磁性粒子、ガラス粒子、セラミックス粒子、ラテックスやポリスチレンなどの高分子からなる樹脂粒子より選ばれた少なくとも1つであってよい。固相としては、ガラス粒子、セラミックス粒子、磁性粒子、又は樹脂粒子が好ましい。
かかる固相は、好適には、粒状体、繊維状体、織布、不織布が用いられ、より好適には、粒状体、繊維状体が用いられ、更に好適には粒状体が用いられる。
なお、固相と第2の捕捉物質との間の結合には、例えば、物理的吸着、共有結合、イオン結合、親和性を利用した結合、およびこれらの組み合わせなどの結合様式が利用できる。好適には、共有結合、イオン結合により、親和力や吸着力による結合力よりも強い結合で第2の捕捉物質は固相に固定化される。また、固相には、設定された検出レンジ(検出可能として設定される標的物質の濃度範囲)において、検出可能な最大量の標的物質の捕捉に必要な量の第2の捕捉物質が固相化される。
かかる粒状体は標的物質を捕捉することを考慮すれば、比表面積がより大きいものが好適ではあるが、管状路に連通する反応チャンバに導入する場合には、管状路の入口から該管状路へ流入しない大きさのものが選択される。例えば、粒状体の長さ、幅、厚みのうちの最も小さな寸法が、入口径の1.2倍から5倍程度のものであれば、その管状路への流入が十分に抑止される。なお、管状路の入口形状が異方形である場合は、該入口径は短軸方向の寸法とされる。粒状体としては、直径1μm~100μm程度の各種ビーズが市販品として入手可能である。従って、入口の大きさに応じて、適切なものを適宜選択することができる。使用する粒状体は好適には樹脂ビーズであり、更に好適には粒径10μm~100μmの樹脂ビーズであり、より好適には粒径10μm~50μm、特には粒径15μm~30μmの樹脂ビーズである。
<反応場>
本実施形態において標的物質の検出方法は、第2の捕捉物質が予め固定化された固相を有する反応場に試料を導入し、固相上の第2の捕捉物質と試料中の標的物質を反応させた後に第1の捕捉物質を導入して、標的物質をサンドイッチした複合体を形成する。その後、余剰の第1の捕捉物質を反応系外へ排出する。そして、上述したように、複合体の結合を切断して、標識物質を含む部分を分離させる。この標識物質を含む部分を分離させるまでの工程が反応場で行われる。固定される第2の捕捉物質の固相上の面密度は予め調整することができる。このため、このように第2の捕捉物質に標的物質を反応させた後第1の捕捉物質を導入することで、検体に含まれる標的物質の濃度が低濃度から高濃度の広い範囲において、検出の定量性を向上させることができる。
なお、反応場において、複合体を形成するための反応、即ち、第1の捕捉物質と、第2の捕捉物質が担持された固相と、標的物質が含まれる試料とを混合する工程は、複合体が形成される限りにおいて、いずれの順番で反応場に導入されてもよく、一部または全部が同時に導入されてもよい。
つまり、複合体を形成する工程としては、上述のように固相に固定された第2の捕捉物質に標的物質を反応させた後、標識物質に結合した第1の捕捉物質を反応させて複合体を形成するものに限定されない。例えば、標識物質に結合した第1の捕捉物質に標的物質を反応させた後、固相に固定された第2の捕捉物質を反応させて複合体を形成してもよく、標識物質に結合した第1の捕捉物質と、標的物質と、固相に固定された第2の捕捉物質を同時に反応させて複合体を形成してもよい。
また、反応場は、固相-第2の捕捉物質-標的物質-第1の捕捉物質(標識物質に結合した第1の捕捉物質)の複合体の形成と、標識物質を含む部分をこの複合体から分離することができる場であれば、特に制限はない。この反応工程を実施するために、1の反応場のみが使用されてもよく、複数の反応場が使用されてもよい。すなわち、複合体の形成と標識物質を含む部分の分離とが、同じ反応場(空間)で実施されてもよく、異なる反応場(空間)で実施されてもよい。
この反応場は、例えば区画された容器、室を用いて形成されてよい。反応場としては、例えば、試験管、マイクロチューブ、マイクロプレートや、マイクロリアクタ、バイオディスクなどに形成されるチャンバやチャネルを用いることができる。また、反応場での操作は手動で行われても自動で行われてもよい。反応場での操作を自動化する場合には、例えば、反応場をチャンバの形態で実装したデバイスを用いてもよく、更には該デバイスを中心軸回りに回転可能なディスクの形態としてもよい。
好適には、該デバイスは、少なくとも1つの反応場を反応チャンバの形態で備える。ディスクの形態のデバイスの場合に、反応チャンバは、管状路よりもディスクの中心軸側に配置され、外方側で管状路に連通する。管状路の管の内径に比して、反応チャンバは、通常、深さ方向にも幅方向にも大きなサイズで形成される。好適には、反応チャンバは、管状路に向かって絞った形状(すり鉢形状)に形成されていてもよい。切断試薬によって固相から分離された反応チャンバの液中の標識物質を含む部分は、ディスクが回転すると、容量の大きな反応チャンバから細い管状路内に充填された液体中へ断続的に供給される。
反応チャンバと管状路とが連通される連通口(管状路の入口)は、標識物質を含む部分を通過させ、かつ、反応チャンバに反応チャンバとは別体で形成された固相が導入された場合(例えば固相がビーズ等の固体である場合等、反応チャンバ内において流動性を有する場合)にはその固相が流出しない大きさで形成される必要がある。一般的な加工精度を考慮すれば、連通口は、例えば、5μm以上、好適には10μm以上、より好適には15μm以上であるが、固相が管状路へ流入しない形状大きさを前提に加工が容易な大きさで設計される。
検出対象である標識物質を含む部分は夾雑物を低減した状態で検出場に導入されることが望ましい。本発明の方法においては、遠心力によって管状路に移動した標識物質を検出するので、管状路に導入される試料中に余剰の標識物質が混在すると、検出精度に大きく影響する。このため、管状路に供される試料中から余剰の第1の捕捉物質(標識物質と結合する第1の捕捉物質であって、標的物質を捕捉していないものや、遊離した標識物質が含まれる)を除去することが重要になる。
余剰の第1の捕捉物質を試料中から除去する方法としては、洗浄処理を選択してもよい。具体的には、標的物質をサンドイッチした複合体を形成した後に、洗浄処理を行えば、反応に関与しなかった余剰の第1の捕捉物質を取り除くことができる。一方で、標的物質を捕捉した第1の捕捉物質は、標的物質と第2の捕捉物質とを介して固相に固定されているので、反応場に保持されている。かかる状態で切断試薬を添加すれば、検出結果に影響を与えないレベルまで余剰の第1の捕捉物質が除去された条件下で、分離された標識物質を含む部分を、検出場に導入することができる。
また、余剰の第1の捕捉物質を試料中から除去する方法としては、遠心による排除を選択してもよい。遠心による余剰の第1の捕捉物質の排除は、ディスクを用いれば容易に実施することができる。具体的には、例えば、反応チャンバにて複合体を形成(または導入)すると、標的物質を捕捉した第1の捕捉物質は固相に固定された状態で、反応チャンバに留置される。一方、余剰の第1の捕捉物質は、固定されていないので、上記の管状路に液体を充填した状態で、かつ反応チャンバの固相が液体に含侵され、反応チャンバと管状路とが液体で連通している状態で遠心力を付与すれば、遠心力によって管状路に移動させて、反応チャンバの外へ排出することができる。その後に切断試薬を反応チャンバに添加して、標識物質を含む部分を複合体から分離すれば、余剰の第1の捕捉物質が共存しない状態で、標識物質を含む部分を検出場に導入することができる。このように、遠心力を用いて余剰の第1の捕捉物質を除去する場合には、洗浄剤などの洗浄液を用いた洗浄処理は不要とできる。なお、洗浄力を向上する観点から、遠心力による余剰の第1の捕捉物質の除去と洗浄液による洗浄とを併用して洗浄処理をしてもよい。
なお、反応チャンバから排出された余剰の第1の捕捉物質を、その第1の捕捉物質に特異的に結合する結合剤にて固定するべく、余剰の第1の捕捉物質の移動経路に結合剤を保持してもよい。この結合剤は、標識物質を含む部分が管状路を通過するのに支障のない場所に担持される。これにより、反応チャンバから排出された余剰の第1の捕捉物質は、デバイス内の所定の場所に固定される。
結合剤には、例えば、第1の捕捉物質に特異的に結合する抗原や、抗体が使用され、第1の捕捉物質の標的物質と同じものであってもよい。
また、上記した抗原及び抗体以外に、第1の捕捉物質が結合する核酸、アプタマー、リガンド(基質、阻害剤、拮抗剤)や、受容体を結合剤として用いてもよい。
結合剤として用いられる抗体は、ポリクローナル抗体であっても、モノクローナル抗体であってもよいが、反応特異性の観点から、モノクローナル抗体とすることが好ましい。
また、結合剤として用いられる抗体は、抗体ならびに当該抗体と実質的に反応性が同等の抗体フラグメントおよび改変抗体も含む。抗体フラグメントとしてはFabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fab’フラグメント、scFvフラグメントなどが挙げられる。
<検出場>
検出場(第2の反応場)は、反応場(第1の反応場)で分離された標識物質を含む部分が導入され、その標識物質を含む部分に起因する散乱光を検出する場である。この検出場には、標識物質を含む部分が移動する管状路が配置され、この管状路に向かって照射光を照射する光源と、管状路の標識物質から放射される散乱光を検出する受光素子とが設けられる。
上述した反応場(第1の反応場)において、複合体が形成された後、上記した洗浄処理や遠心処理を実施すれば、複合体以外の要素は系外に排出される。その後、標識物質を含む部分の切断を行えば、検出場には、検出に影響を与える余剰の第1の捕捉物質やその他の夾雑物が低減された状態で試料が導入される。
管状路は、回転可能に形成されたデバイス中に設けられている。管状路は、光源から照射された照射光がその内部に達するように、そして、検出対象に起因して発生する散乱光が放射されるように透光性の材料で形成される。
この管状路は、両末端が開放された中空の筒状の形状に形成されることが好ましく、回転半径に沿って回転中心側から外方へ向かって延設されている。管状路の回転中心側(向心方向側)の開放端(以下、「一方の開放端」ということもある)は、標識物質を含む部分を含有する溶液を保持する反応場(第1の反応場)に連通している。管状路は中空の管であれば、その断面形状は制限されない。円管であっても角管であってもよく、扁平な形状であってもよい。また、継ぎ目のない1のパーツで構成されていてもよく、複数のパーツが組み合わされて構成されたものであってもよい。
管状路の内径は、目詰まりすることのないように、検出対象の3倍~150倍程度の範囲にあって、反応場(反応チャンバ)内の固相が流入しない形状で設計される。上記したように反応チャンバとの連通口(管状路の入口)は、反応チャンバに固相が導入される場合、すなわち固相が反応チャンバとは別体で形成されている場合には、管状路の内径は固相の大きさよりも小さく、例えば固相の1/1.2から1/5倍程度の大きさとされる。詳細には、例えば固相の縦、横、高さのそれぞれの最大値のうち最も小さい値を基準値とし、その基準値より管状路の入口径が小さくなるようにすればよい。固相が等方形の場合、縦、横、高さは等しいので、いずれを基準値としてもよい。管状路の内径は、かかる入口径と同じ幅で均一に形成されてもよく入口径と異なる幅で形成されてもよく、例えば、テーパ状又は階段状に広く、または狭くなるように形成されてもよい。
具体的には、例えば、この管状路の内径は、1μm~100μmであり、好適には、5μm~50μmであり、より好適には、10μm~20μmである。内径が小さいほど、管状路内の夾雑物の存在量(絶対量)が低減するため、夾雑物に起因する散乱光ノイズを低減できる。
なお、管状路の断面が楕円形や長方形などの異方形である場合には、断面短手方向が管状路の流路高さとされ、長手方向が流路幅となるように形成される。そして、高さ方向が上記の内径となるように管状路は設計される。
固相が流入しないように管状路の高さを規定すれば、流路幅は、固相の大きさとは無関係に設計可能となる。管状路の流路幅の最小値は、標識物質を含む部分の大きさであり、上限値は連通する反応チャンバの当接面の幅である。管状路が幅広になるほど管状路の液の流れを円滑にできるが、反応チャンバへの当接部位が拡大する結果、反応チャンバから管状路へ向かうすり鉢形状の傾斜が浅くなり固相の集積範囲に影響を与えかねない。かかる点からは、管状路の流路幅は狭いほうが好適である。よって、管状路の流路幅は、液の流れと反応チャンバでの固相の集積状態を鑑みて適切な幅が設定され、例えば100μm~1cmであり、好適には100μm~5mmであり、より好適には500μm~3mmであり、更に好適には500μm~1mmである。
管状路の外方側の開放端(以下、「他方の開放端」ということもある)は、第2の貯留室としての排液貯留室に連通している。この排液貯留室は、管状路を通過した液体を貯留する区画された室である。デバイスに形成された反応場(第1の反応場)において洗浄処理が行われると、洗浄処理の廃液は、管状路を経由して排出され、この排液貯留室に貯留される。排液貯留室は、管状路よりも下流側に配設されていればよく、例えば管状路よりも回転半径に沿って回転中心側に一部が配設されていてもよく、全部が外方側に配設されていてもよい。
ここで、本発明の方法では、標識物質の検出を実施するために、管状路を液体で充填した状態にすることが必要である。言い換えれば、遠心力を作用させた場合でも、管状路内の液体が開放端から流出しないようにしておく必要がある。このため、管状路の液体の流動を制限する制限機構を設けられる。この制限機構は、例えば、この排液貯留室の端部から回転中心側に向かう細い流路を延設することで実現できる。これによれば、遠心力の作用下で管状路に供給された液体は、排液貯留室に貯留されつつ、溢れでた液体は回転中心側へ向かって細い流路を進行する。ここで、液面は回転中心から同じ距離に形成されるので、管状路の回転中心側の開放端(前記一方の開放端)に到達するまで液体を供給すれば、回転中心側へ向かう流路においても、管状路の回転中心側の開放端(前記一方の開放端)と同じ位置に液面が形成される。その際、遠心力を受けていると、液体の供給を中断しても上流側への液戻りを抑制することができる。これにより、管状路は液体で充填されることとなる。
また、制限機構として、排液貯留室を用いてもよい。例えば排液貯留室は、少なくとも一部が管状路に対して回転中心側に配設される場合、管状路に連通していない側の端部が管状路の回転中心側の開放端(前記一方の開放端)に達するように又は管状路の回転中心側の開放端よりも回転中心側となるように配設すればよい。液体を管状路の回転中心側の開放端(前記一方の開放端)に到達するまで供給すると、排液貯留室の液面と管状路の液面とは、回転中心から同じ距離に形成される。これにより、管状路は液体で充填されることとなる。なお、この場合、排液貯留室が、管状路内の液体が開放端から流出しないように作用するため、管状路の液体の流動を制限する制限機構を別途設けなくてもよい。
なお、デバイス内で洗浄処理を行わない場合には、この排液貯留室を非設とし、管状路の突当りから回転中心側に向かう細い流路を延設することとしてもよい。
また、この制限機構の他の例としては、例えば、管状路の他方の開放端、または開放端がつながる空間に開閉弁を設けることが例示される。これにより、開閉弁を閉塞すれば管状路の先方が閉塞されるため、管状路に液体を充填することが可能となる。開閉弁としては、電気的、電磁的、機械的に作動するもののみならず、後述するキャピラリーバーストバルブ(所定の値を超える遠心力が付与されるまでは開放端から液体が流出しないため、バルブとして機能する機構)などが例示され、これらの中から適切なものを選択して用いることができる。
検出に際しては、管状路に供給された液体がこの管状路に充填された状態で遠心力が付与されることで、標識物質を含む部分がこの管状路を通って回転中心側の反応場(第1の反応場)からデバイスの外方側に移動する。
そして、管状路に検出対象たる標識物質を含む部分が導入されることにより、照射光が散乱されて散乱光が生じる。この散乱光がフォトダイオードなどの受光素子にて検出され、これにより目的の標的物質が検出されることとなる。
散乱光強度は、標識物質の粒径が所定の範囲にある場合には粒径との間に相関があり、また、粒径に応じて特定の方向の散乱光強度が変化する。標識物質に用いる当該粒子の粒径は予め把握されているので、散乱光を検出できる位置に受光素子を配置することができ、適切に散乱光を検出することができる。なお、全方向に散乱光が生じる場合は、任意の位置に受光素子を配置できる。検出する散乱光は、前方散乱光であっても後方散乱光であってもよい。検出する散乱光が散乱する方向に応じて受光素子は適切に配置される。
また、照射光が入射する界面においてノイズとなる反射光が生じるが、光源および受光素子のそれぞれの位置、角度を調整することにより、反射光のノイズを低減し、標識物質からの散乱光を適切に検出することができる。
ここで、例えば、光ピックアップで使用されるような汎用のレーザ光源を用いた光学系や、回転機構を使用すれば、小型で安価な検出装置を実現できる。しかし、検出対象である標識物質を含む部分が検出場を高速で通過すると、安価な汎用部材を使用した検出系では、微小な標識物質に基づく散乱光を的確に検出することは困難になってしまう。
ここで、本実施形態においては、、レーザ光源のレーザスポットが直径Dμmである場合に、Nrpmで回転するデバイス(1回転:60/N秒)において、検出対象の標識物質が最低1回、レーザスポット内に入るように、標識物質を含む部分は移動速度v μm/sで移動する。この場合、以下の式が成り立つ。
Figure 2023160814000007

これを移動速度vについて解くと下記の数式で表される。
Figure 2023160814000008
これによれば、例えば、レーザスポット径が10μmでディスクを2000rpmで回転させる場合、標識物質の移動速度は333μm/sec以下とすることが必要になる。
本発明の方法とは異なり、標識物質を含む部分を、通液によって管状路を通過させ、管状路を移動する標識物質からの散乱光を検出することも考えられる。このため、デバイスを遠心力で流動する液の移動速度を下記式にて計算した。
Figure 2023160814000009

Uは流速(m/s)、Qは流量(m/s)、Aは流路断面積(m)、dは水力直径(m)、ρは流体の密度(kg/m)、ωは角速度(rad/s)、rは流路中の液の平均の回転半径(m)、Δrは流路出入口の回転半径差、ηは流体の粘度(kg/m・s)、Lは流路長さ(m)である。
媒体を20℃の水、回転数2000rpmで回転させた場合のディスク上の半径方向の所定位置において、遠心力で流動する媒体の移動速度を式(8)で、発生する遠心力により媒体中を移動する200nmの金コロイド粒子の移動速度をストークスの式に基づき算出すると、前者は60mm/secとなり、後者は84μm/secとなる。また、実際に、回転によってディスク内の液は高速に移動することが確認された。故に、金コロイド粒子(標識物質)の移動が液の流れに支配される場合には、散乱光検出が困難となる。
そこで、本発明においては、菅状路を液体で充填して遠沈管のように機能させ、標識物質を含む部分は、遠心力により液体中を移動するようにし、散乱光が検出可能な移動速度で管状路を移動させることができるようにしているのである。
管状路中の標識物質を含む部分の移動が液流動に支配されない本発明においては、標識物質を含む部分が管状路を移動する移動速度は、管状路に充填される液体が同じであれば標識物質を含む部分(標識物質)の密度および粒径と、遠心力とにより変化する。このためデバイスの回転数と標識物質とを適宜選択することによって、移動速度を所望の範囲にすることができる。
<デバイス>
デバイスは、バイオディスクやマイクロリアクタとも称されるものであり、複合体を保持し、必要に応じて反応を行うための反応チャンバ(上述の反応場に対応する)と、検出対象を移動させる管状路(上述の検出場に対応する)とを少なくとも備え、必要に応じ、液体が流通する微小径の流路や、試薬や液体を貯留する貯留室が形成され、生物試料の分析に使用されるものとなっている。また、本デバイスは、遠心力を付与するため回転可能に形成されている。
本デバイスは、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコン樹脂などの各種プラスチックや、ガラス、シリコンなどの無機材料などの公知材料を用い、公知の方法で作製することができる。該素材は、検出対象を光学的に検出できるよう透光性を有していることが好ましく、透明であればより好ましい。
本デバイスは、公知の手法を使用して作製することができる。例えば流路やチャンバのパターンを有するシートもしくはプレートと平坦なシートもしくはプレートを貼り合わせることにより製造することができる。反応チャンバ等の内部構造は、機械加工やフォトリソグラフィーを用いたエッチング、その他一般的な成型技術により形成してもよい。更に、受光素子へ入射するシグナルの光量を増大させるため、管状路の裏面には反射層が配置されてもよい。
本デバイスに設けられ試薬や液体を貯留する貯留室は、遠心力によって液体を反応チャンバに供給するため、反応チャンバに対して回転中心側に配設される。本発明の標的物質の検出方法では、管状路に液体を満たした状態で、管状路内の液体中を、遠心力により検出対象を移動させる。このため、管状路に充填される液体が予め貯留室に貯留されている場合、所定のタイミングで貯留室に貯留された液体が管状路に充填される。また、本実施形態において、反応チャンバ内に保持する複合体に対し洗浄処理を実施する場合には、第1の貯留室としての洗浄液貯留室と、第2の貯留室としての排液貯留室とが設けられ、洗浄液が洗浄液貯留室に貯留される。排液貯留室は、管状路の下流側に配設されていればよく、少なくとも一部が管状路に対して回転中心側に配設されていてもよく、全部が管状路に対して外方側に配設されていてもよい。なお、洗浄液は管状路に充填する液体を兼ねることができ、かかる場合には、上述の管状路に充填される液体を貯留する貯留室と洗浄液貯留室とは1つの室としてもよい。
洗浄液貯留室に貯留される洗浄液で管状路を充填する場合において、排液貯留室は、例えば少なくとも一部が管状路に対して回転中心側に配設されるときは、管状路に連通していない側の端部が管状路の回転中心側の開放端(上記一方の開放端)と回転中心から等距離またはそれよりも短い距離に位置するように配設すればよい。そして、排液貯留槽及び管状路において少なくとも管状路の回転中心側の開放端に達する容量の洗浄液を洗浄貯留室に貯留すればよい。排液貯留室の全部が管状路に対して外方側に配設される場合には、排液貯留室と管状路との総内容量を超え、排液貯留室と管状路と反応チャンバとの総内容量に満たない量の洗浄液を洗浄液貯留室に貯留すればよい。このような量の洗浄液を貯留することで、洗浄後、管状路が洗浄液で充填され、反応チャンバにも液体が貯留されると共に、反応チャンバの残りの空間に標識物質を含む部分の切断試薬を受容できることとなる。
また、洗浄液貯留室に貯留される洗浄液で管状路を充填する場合、洗浄処理は、排液貯留室と管状路が洗浄液で満たされるまで行わればよく、反応チャンバの残りの空間に標識物質を含む部分の切断試薬を受容できれば、洗浄液が管状路の容量を超えて反応チャンバに流入するまで行われてもよい。管状路に加え洗浄液が反応チャンバに流入して反応チャンバに洗浄液が貯留されると、管状路と反応チャンバとが液体で連通する。
更に、本実施形態においては、複合体から標識物質を含む部分を分離するための切断処理が実施されるが、これをデバイスにおいて実施する場合には、第3の貯留室としての切断試薬貯留室が設けられ、必要な切断試薬が貯留される。また、上述したように、金属コロイド粒子の増感反応を行う場合には、増感剤貯留室が設けられ、増感反応に必要な増感剤溶液が貯留される。
かかる貯留室に貯留される試薬は、液体の状態で貯留されても、固体の状態で貯留されてもよい。固体状態で貯留する場合には、これらが貯留される貯留室へ試薬を溶解するための溶解液が流入した後に、貯留室から反応チャンバへと試薬が送出されるように構成される。
なお、熱や電磁波など、外場からエネルギーを付与することで、標識物質を含む部分を分離する切断反応を実施する場合には、切断試薬貯留室は非設としてもよい。
<制御システム>
散乱光検出を行うために検出場に配置される各装置は、情報処理装置によって電気的に制御される。また、受光した散乱光に基づき信号処理が実施され、散乱光をシグナルとして標識物質(標識物質を含む部分)が検出される。
本発明の検出方法においては、デバイスを回転させて発生する遠心力によって検出対象たる標識物質を管状路内において移動させる。その移動速度は、標識物質、管状路に充填する液体、付与する遠心力が既知であれば求めることができる。また、回転数とレーザ光源のスポット径とから許容される標識物質の移動速度も算出できる(上記式(7))。これらに基づき、回転速度の設定可能範囲を導出することができる。
受光素子は、所定の回転半径の位置からの散乱光を検知する。言い換えれば所定の回転半径の位置にレーザ光源からの照射光が照射され、そのスポット径が検出領域となる。受光素子は、検出領域からの散乱光を検出する位置に配設される。受光素子としては、例えば、フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード、光電子増倍管、CMOS、CCDが例示できるが、これに限られるものではない。
レーザ光源のスポット径に標識物質が入ると、受光素子としての、例えばフォトダイオードに散乱光が入射する。そして、入射光は光電変換されてフォトダイオードから出力され入射した散乱光強度に対応する電圧値がA/Dコンバータに入力される。そしてA/Dコンバータにて所定のサンプリングタイムでサンプリングされることでデジタル信号化され、A/Dコンバータから情報処理装置に入力される。A/Dコンバータはアナログ信号をデジタル信号に変換できるものであれば特に限定されないが、例えば、集積回路やオシロスコープであってよい。サンプリングタイムは、流路幅に対する分解能に基づいて設計される。例えばレーザ光源のスポット径に対して、1/10以上、1/1未満毎の間隔でデータを取得できるよう設定される。例えば、2000rpmで回転する管状路に対し、回転半径50mmの位置でレーザ光源のスポット径が10μmの場合に、略1μmの間隔でデータを取得するには、サンプリングタイムは約100ns付近で設定される。
情報処理装置では、必要に応じて、例えば管状路に液体が充填された直後で標識物質が管状路に供給される前に、ブランクデータが、管状路の流路の幅方向の所定のポジションに対応つけて記憶される。その後、所定のサンプリングタイム毎に、入力される電圧値が同じポジションに対応つけて記憶されるとともに、ブランクデータとの差分が算出される。両者の差分が所定の閾値以下であれば、そのポジションにおいて標識物質は検出されていない、またはノイズの散乱光であると判断され、散乱光発生はカウントされない(カウントがキャンセルされる)。一方、算出された差分が所定の閾値を超えている場合には、標識物質に基づく散乱光であると判断される。なお、標識物質はレーザ光源のスポット径よりも小さいため、スポット径(検出領域)を抜けるまでに複数回にわたり、散乱光が検出されるという結果が得られる。このため、複数回の測定後に電圧値が下がったこと(ブランクと入力された電圧値との差分が所定の閾値以下になったこと)をもって、散乱光の発生回数1をカウントするように構成してもよい。
更に、本発明の検出方法によれば、十分に標識物質(標識物質を含む部分)と夾雑物とを分離して検出することができるが、何らかの理由で、標識物質を検出するタイミング(検出開始から標識物質の移動速度に基づいた所定時間の範囲)に標識物質以外の異物が管状路に混入することや、傷などの管状路の状態に起因した散乱光が発生することが想定され得る。かかる場合において、異物や管状路に起因した散乱光の信号パターンは、標識物質とは異なる信号パターンとなるので、両者を判別することができ、目的の検出対象を的確に検出できる。目的の検出対象を判別して検出できる場合、上記したような標識物質検出前のブランクデータの取得は必ずしも必要ではない。
更に、本検出方法においては、標識物質と管状路に充填する液体、更にはレーザ光源(スポット径)も予め定めることができ、検出に最適のデバイスの回転速度(回転数)も予め導出可能である。従って、これらの値は情報処理装置にデフォルトで記憶させておくことができる。なお、検出に際して、使用者が適宜必要な値を入力する構成としてもよい。さらには、管状路の傷などにより固有の散乱光が生じることが予め判明している場合は、その信号パターンをブランクデータとしてデフォルトで記憶させてもよい。
<標的物質の検出方法1(抗体検査)>
本実施形態にかかる標的物質(抗体)の例示的な検出方法1について説明する。本検出方法は、図1を用いて説明した検出方法の概要を抗体検査に具体化したものである。本法では、まず、標的物質に対する抗原(第2の補足物質)を常法に従いポリスチレンビーズ(固相)表面に固定化する。次いで、ブロッキングを行ってから、所定容量の容器にポリスチレンビーズ(固相に固定された第2の補足物質)を導入する。ポリスチレンビーズは、バッファーに分散させた状態で導入し、次いで、ろ過や遠心分離などを適宜実施して溶媒を除去する。その後、標的物質(抗体)を含む血清などの試料を加えて、一定時間ビーズと接触させて反応させた後、必要な場合はバッファーによって洗浄し、次いで二次抗体溶液(標識物質に結合した第1の捕捉物質)を加えて、一定時間反応させる。なお、ここでは、標識物質は金属コロイド粒子とする。これにより、ビーズ上に、抗原-抗体-二次抗体のサンドイッチ様式の免疫複合体が形成される。バッファーで洗浄した後、pH0~4又は、pH10~14となるように切断試薬(pH調整剤)を導入して、金属コロイド粒子を含む部分を固相上に形成された免疫複合体から遊離させる。
なお、かかる抗体検査においても、ポリスチレンビーズ(固相)に抗原を固定化した後、いずれの段階から反応場としてデバイスの反応チャンバを使用するかは、上述したように使用者により任意の選択が可能である。また、デバイスの反応チャンバを使用する場合には、洗浄処理を、ポリスチレンビーズ上に、抗原-抗体-二次抗体の免疫複合体が形成された後の1回のみとしてもよい。
切断処理の後は、分離した金属コロイド粒子を含む部分の検出を行う。本方法においては、切断処理にて分離された金属コロイド粒子を含む部分を、デバイスの管状路に導入して検出を行う。管状路に連設された反応チャンバには、ポリスチレンビーズ径よりも小さな寸法となる高さで形成された連通口(入口)が設けられており、金属コロイド粒子を含む部分は、管状路の前室であるこの反応チャンバに導入または貯留されている。そして、遠心力によって、連通口(入口)を経由して管状路に導入されると共に管状路を外方に向かって移動する。ここで、管状路には液体が充填されており、液体の移動は実質的に生じないようになっているので、遠心力によって、金属コロイド粒子を含む部分がこの液相内を移動する。この管状路には照射光が照射されており、金属コロイド粒子が管状路を通過する際に、散乱光が発生する。散乱光は金属コロイド粒子が通過する毎に断続的に発生する。各金属コロイド粒子に対応する信号は、連続的ではなく、かつ特有の信号として得られるので、これを計測することで金属コロイド粒子を検知でき、その結果、標的物質である抗体を検出することができる。
以上述べたように、かかる方法により、標的物質を検出する標的物質の検出方法を実施できる。
<標的物質の検出方法2(抗原検査)>
本実施形態にかかる標的物質(抗原)の例示的な検出方法2について説明する。本検出方法は、図1において概要を説明したサンドイッチ方式と称される免疫測定法について更に具体化したものである。本法では、まず、リン酸緩衝生理食塩水(以下、PBSと称する)または緩衝液を用いて標的物質に対する抗体(第2の捕捉物質)を適切な濃度に希釈し、常法に従いポリスチレンビーズ(固相)表面に抗体を固定化する。次いで、ブロッキングを行ってから、所定容量の容器に所定容量のポリスチレンビーズ(固相に固定された第2の捕捉物質)を充填する。標的物質(抗原)を含む血清などの試料を加えて、一定時間ビーズと接触させて反応させた後、バッファーによって洗浄し、続いて金属コロイド粒子で標識された一次抗体(標識物質に結合した第1の捕捉物質)を加えて抗原と結合させる。これによりスチレンビーズ上に、抗体-抗原-抗体のサンドイッチ様式の免疫複合体が形成される。
なお、本法も上記の検出方法1と同様に、いずれの段階からデバイスの反応チャンバを使用するかは、使用者による任意の選択が可能である。また、デバイスの反応チャンバを使用する場合には、洗浄処理を、ポリスチレンビーズ上に抗体-抗原-抗体の免疫複合体が形成された後の1回のみとしてもよい。金属コロイド粒子を含む部分の検出は、上述した検出方法1と同様であり、これにより標的物質を検出する免疫測定法を実施できる。
以下、本実施形態のデバイスの一例について図2を用いて更に詳細に説明する。図2は、標的物質の検出を実施するためのディスク1の概要を示した図であり、図2(a)にディスクの全体図を図2(b)にその部分拡大図を示している。本ディスク1は、コンパクトディスク(CD)、DVD、ブルーレイディスク(BD)のような円板状のプラスチックディスク内に、液体が流動可能な微小径の流路や室が形成されたものである。遠心力を付与するため、回転に好適な円板形状が採用されており、円板の中心が回転中心となっている。ディスク1には、6つのユニット2が設けられており、それぞれのユニット2で独立して標的物質の検出ができるように構成されている。
各ユニット2には、複合体が保持される反応チャンバ10と、反応チャンバ10に連設される管状路11と、管状路11に連設される排液貯留室12と、洗浄液を貯留する洗浄液貯留室13と、切断試薬を貯留する切断試薬貯蔵室14とを備えている。
反応チャンバ10はチャンバ内外を貫通する供給口10aをその上面に備えており、供給口10aから固相を含む溶液や試薬などを投入可能に形成されている。反応チャンバ10は、本ディスク1における反応場となっている。反応チャンバ10に導入された固相は遠心力が付与されると管状路11側の内壁(上面、底面、側面の何れも含む)に集積する。ここで、固相が、反応チャンバ10の幅(回転半径と交差する方向の長さ)方向への広がりを抑制しつつ集積するように、反応チャンバ10の外方側は上面視すり鉢状に形成されている。また、反応チャンバ10の管状路11側の内部は、底面が、管状路11側に向かって次第に底が浅くなるよう、斜めに傾斜して形成されている。
本ディスク1においては、図1に示したステップに従って順次必要な工程が実施できるようになっている。本ディスク1では、反応チャンバ10において複合体から標識物質を含む部分を分離する処理を行うことができ、反応チャンバ10には、形成された複合体(固相-第2の捕捉物質-標的物質-標識物質に結合した第1の捕捉物質で構成されるもの等)が保持される。
管状路11は、両端が開放された中空の管であり、ディスク1の回転半径に沿って延設されると共に、回転中心側の開放端は反応チャンバ10に連通する連通口(入口)11aを形成し、他方の開放端は、排液貯留室12に連通する連通口(出口)11bを形成する。この管状路11は、透光性材料で形成されている。管状路11の流路幅は、反応チャンバ10の幅よりも狭く形成される。また、その深さは、反応チャンバ10に導入された固相を堰き止めることができるように、導入される固相の外形の最小径よりも小さく形成されている。本ディスク1では、管状路11は、反応チャンバ10の上側に当接して、反応チャンバ10に連通している。管状路11は、その深さ方向を規定することで反応チャンバ10に導入された固相を堰き止める構造としているため、流路幅は固相サイズとは無関係に設計されている。
排液貯留室12は、管状路11に対しディスク1の回転半径方向外側に連設されており、反応チャンバ10で生じた廃液を貯留する。管状路11と排液貯留室12とは連通口(出口)11bによって連通しており、反応チャンバ10の廃液は、管状路11を経由して排液貯留室12に排出される。また、排液貯留室12は、連通口11bを中心に両側に展開し、その両端から回転中心側に向かって延設された細い流路17に接続している。流路17は、その先端において洗浄液貯留室13に連通する。排液貯留室12の容量を超えて供給された液体は、この流路17に侵入するとともに管状路11にも浸入する。
洗浄液貯留室13は、反応チャンバ10に加える洗浄液を貯留する画設された室であり、洗浄液を導入するために貫通形成された導入口13aをディスク上面側に備えている。また、洗浄液貯留室13は、反応チャンバ10に対し回転中心側に配置され、流路15によって反応チャンバ10に接続されている。なお、ユニット2には、洗浄液貯留室13は1室のみ設けられ、1回分の洗浄液が保存されている。本ディスク1においては、洗浄液貯留室13には、貯留室12と管状路11との総内容量を超え、貯留室12と管状路11と反応チャンバ10との総内容量に満たない量の洗浄液が貯留されている。
切断試薬貯蔵室14は、反応チャンバ10に添加する切断試薬を貯留する画設された室であり、試薬を導入するために貫通形成された導入口14aをディスク上面側に備えている。また、切断試薬貯蔵室14は、反応チャンバ10に対し回転中心側に配置され、流路16によって反応チャンバ10に接続されている。
切断試薬は、切断試薬貯蔵室14に貯留された全量が反応チャンバ10に添加された場合に所望の終濃度となるように、高濃度に調整されたものが切断試薬貯蔵室14に収容されている。
流路15,16は、両端を開口する開閉自在の微小径の中空管である。ここで、「開閉自在」とは、流路内外への流体の移動が制御可能な状態を示す。つまり、回転数に応じて開状態と閉状態とが切り替えられるようになっている。尚、段階的に回転数を上げる本実施形態においては、開状態となると、一連の処理が終わるまで流路15、16は開放されたままとなり、開閉自在の機能を有しているが、実体的には開放可能に形成されている。すなわち、本発明の検出方法においては、開閉自在な流路に代えて開放可能な流路で切断試薬貯蔵室14と反応チャンバ10とを連通してもよい。流路15,16は、キャピラリーバーストバルブと称される機能を有しており、所定の値以上の遠心力が付与されることで、開通モードとなり、それ以下の遠心力では液体の流通は生じないものとなっている。流路15の内径は、流路16の内径よりも大きく設計されており、流路16が開通するよりも低遠心力(低回転数)で開通する。これにより、洗浄液が洗浄液貯留室13から反応チャンバ10に供給される。その後、回転数を上げれば流路16が開通し、切断試薬貯蔵室14の切断試薬が流通し、反応チャンバ10に切断試薬が添加される。
なお、洗浄液を反応チャンバ10に供給する回転数は、バーストの容易性に基づき決定される。バーストの容易性は、流路の形状と、流路を流動する液体の特性によって変動する。例えば、流路断面積、流路長さ、流路の入口および出口位置(回転半径)および形状、液体の表面張力、接触角、粘度が影響する。従ってこれらの要因を考慮して理論的または実験的に回転数が選定される。なお、機械的な負荷から好適には回転数は1万rpm以下とすることが望ましい。
本ディスク1は、洗浄回数を1回とする構成であるが、洗浄回数が複数になる場合は、洗浄液貯留室13は複数に区画して設けられ、それぞれに流路が設けられる。そして、各流路は、反応チャンバ10に接続される。また、それぞれの流路は流路16が開通するよりも低い回転数で且つ異なる回転数でそれぞれ開通するように設計される。
このディスク1を用いて、標的物質を検出する場合、反応チャンバ10内には、まず、第2の捕捉物質が固相化されたビーズ(固相)が分散された溶液が、供給口10aから反応チャンバ10に導入される。反応チャンバ10には、管状路11との連通口11aが形成されているが、固相には、この連通口11aを通過しないサイズのものが選択される。従って、導入された溶液中の固相は反応チャンバ10内に留置される。
次に、適切な濃度に希釈した試料を供給口10aから反応チャンバ10に供給し、試料中の標的物質をビーズ上の第2の捕捉物質にて捕捉させる。所定時間経過後に第1の捕捉物質を含む溶液を供給口10aから反応チャンバ10に供給すると標的物質に第1の捕捉物質が結合し、複合体が形成される。これにより、複合体が反応チャンバ10に保持される。なお、反応チャンバ10内の溶媒は回転に伴い連通口11aから排出され、管状路11を経由して、排液貯留室12に貯留される。
所定の回転数でディスク1を回転させ、流路15を開通させると、洗浄液貯留室13の洗浄液が反応チャンバ10に供給されて、洗浄が実施される。これにより、反応チャンバ10内の余剰の第1の捕捉物質や、その他の夾雑物は洗浄液によって排液貯留室12に移送される。
洗浄液貯留室13から洗浄液が排出されるにつれ排液貯留室12に次第に洗浄液が貯留される。洗浄液貯留室13には排液貯留室12の内容量を超える洗浄液が貯留されているので、排液貯留室12から洗浄液は溢れて流路17に浸入し、更に管状路11においても液面が上昇する。ここで、ディスク1には外方へ向かう遠心力が働いているため、洗浄液が無秩序に反応チャンバ10側へ流れてしまうことはない。また、流路17は空気抜きとなっており、反応チャンバ10、管状路11、排液貯留室12の空気は流路17へ追い出され、洗浄液貯留室13へ押し出される。洗浄液貯留室13から洗浄液が全て排出されると、排液貯留室12および管状路11は、液体で充填され、更に、反応チャンバ10にも液体が溜まり、回転中心側に空隙を残しつつ、固相が浸漬された状態が形成される。なお、洗浄液の流れによって排液貯留室12に移送された大部分の第1の捕捉物質は、作用している遠心力によって、排液貯留室12の底面(外方側)へ沈降する。
次いで、流路16が開通する所定の回転数まで回転数を上昇させ、切断試薬貯蔵室14に貯留される切断試薬を反応チャンバ10へと流出させる。これにより、反応チャンバ10内の切断試薬の濃度が徐々に上昇し、複合体から標識物質を含む部分が切断され、分離される。分離された標識物質を含む部分は、管状路11を通過して排液貯留室12まで移動する。
管状路の所定位置には光源からの照射光が照射されている。このため、標識物質を含む部分が管状路11を通過する際に、散乱光が発生する。これを受光素子で検出することで、適切に標識物質を含む部分を検出することができ、その結果、標的物質を検出することができる。
図3は、第一実施形態のディスク1の変形例であり、ディスクの別の一例を示す図である。本変形例は、具体的には、ディスク1のユニット2が変更されたものであり、図3には本変形例のユニット2が図示されている、上述のディスク1と同じ部分には同じ符号を付してその説明を省略する。
本ユニット2においては、回転中心側から外方に向かって、試料を保持するための第1貯留室101、第1貯留室101と連通する流路102、管状路11に充填する液体を貯留する第2貯留室103、管状路11が設けられており、さらに管状路11の先端から分岐した分岐流路の端部から回転中心側に向かって延設される細い流路17が設けられている。
本ユニット2は、ディスク1の外の反応場において標識物質を含む部分の分離まで実施した試料をディスク1内に導入して、標識物質を含む部分の検出を行うためのものである。このためディスク1での洗浄処理は実施されない。
本ユニット2においては、まず、試料溶液の所定量が第1貯留室101の上面の開口101aから第1貯留室101内へ導入される。ここで、流路102はキャピラリーバーストバルブの機能を備えて構成されているので、静置した状態で導入された試料溶液が流路102を通じて第2貯留室103へ流出することはない。また、管状路11に充填する液体の所定量が、第2貯留室103の上面の開口103aから第2貯留室103内へ導入される。第2貯留室103には、回転中心側の端部において、流路102の延長上から外れた位置であって回転中心側に向かって凸設された導入部が設けられている。開口103aは、この導入部の上面に貫通形成されている。これにより、第2貯留室103へ第1貯留室101に保持される試料溶液が導入された際に、開口103aから液が漏れ出ることを抑止することができる。
第2貯留室103の深さ方向における上方部には、管状路11が当接し、連通する構造となっている。第2貯留室103には管状路11を充填するに必要な量の液体が貯留されるが、管状路11を液体で満たすには、管状路11およびその先の分岐流路と、これに連通する流路17において管状路11の連通口(入口)11aに対応する位置まで液体が充填されることとなるので、これら管状路11、その先の分岐流路及び流路17の対応部分の内容積の総計を基準に第2貯留室103は設計されている。また、かかる液体を貯留した状態で管状路11の連通口11aの底面よりも貯留する液体の液面が下になるように第2貯留室103の構造は設計されている。なお、デバイス1を汎用的な樹脂材料で形成すると第1、第2貯留室101,103の内部は疎水性表面となっているため、導入された水系の試料溶液および管状路充填用の液体をそれぞれ室内に留まらせる方向に作用する。
そしてデバイス1を、流路102を開通させない所定の回転数で回転させ、第2貯留室103の液体を管状路11へと導入する。ここで、流路17は、エア抜きとして機能するため、所定の回転数でディスク1を回転させると、第2貯留室103の液体は円滑に管状路11へ導入される。
続いて、流路102が開通する回転数まで回転速度を上げると、第1貯留室101から試料溶液が第2貯留室103へ流出する。そして、標識物質を含む部分が、遠心力によって管状路11内を外方に向かって移動する。このように、ディスク1の外の反応場で切断処理まで実施した場合には、簡素なデバイス構成で標的物質の検出を実施することができる。
なお、ディスク1の回転には、例えば、図4に示す装置が使用される。当該装置は、モータ(Motor)と、モータに接続された回転軸とを備えており、この回転軸には、ディスク1を水平方向に回転させるための載置台が軸支されている。モータが駆動されると載置台の上面に載置されたディスク1が回転し、遠心力が付与される。モータは、非図示のマイクロコントローラに接続されており、マイクロコントローラを介して情報処理装置(パーソナルコンピュータ(PC))に接続されている。情報処理装置は、接続される各装置との間で信号を送受信し、各装置を制御する。尚、情報処理装置(PC)は、信号制御を実施できる装置であれば特に限定されない。情報処理装置からの制御信号がマイクロコントローラに入力されると、マイクロコントローラは予め定めた所定の回転数で所定時間回転するようモータを制御する。
載置台は、ディスク1が載置された場合に管状路11と対向する位置において、厚み方向に貫通する窓が設けられている。載置台の上方には、載置台の上面に対し斜めの角度で照射光が入射するように調整されたレーザ光源(LD)が設置されている。レーザ光源の前面には、フォーカスレンズ(Lens)が配設されており、レーザ光源からの照射光が、管状路11の内部に集光するように調整されている。このレーザ光源には、上記のマイクロコントローラを介してPCが接続されており、PCからの指示を受けたマイクロコントローラによって出力が制御される。
載置台の窓の下方には、集光レンズ(Lens)とフォトダイオード(PD)が配置され、散乱光を受光するように構成されている。フォトダイオードによる光電変換により散乱光強度は電圧に変換され信号検出器(Oscilloscope)に入力される。信号検出器では、所定のサンプリングタイムで標本化が実施され、入力されたアナログ信号(電圧値)はデジタル信号に変換されてPCに入力される。そして、PCにおいて散乱光の測定結果が出力される。これにより、標識物質の散乱光を取得し、標的物質を検出することができる。
以上、実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
例えば、ディスク1は、流体の移動を制御する機構を適宜設けて構成してもよい。かかる機構としては、弁等が例示される。かかる弁は、流路や室の連通口を閉塞状態と開放状態とに切り替えるものであり、上記流路15、16に設けたキャピラリーバーストバルブ以外に、電気、磁力、電磁力、機械的機構、慣性力、遠心力、熱によって作動する各種のものを使用できる。
更に、例えば、ディスク1は円形の円板で説明したが、本発明においては、円板に限定されるものではなく、他の形状であってもよい。つまり本発明の方法においては、デバイスは、遠心力を付与できる態様であればその形状に大きな制限はない。このため、例えば、ユニット2を1つだけ備えたもので、外形を扇状や、矩形状に成型されたチップ型のものが例示できる。かかる場合には、デバイスを回転させる装置の載置台にチップを保持する機構や治具を設け、これらにチップを嵌め込んで回転することで遠心力を付与することができる。
本発明の変形例としては以下の発明が例示できる。
標識物質に結合した第1の捕捉物質に標的物質が捕捉されて形成された複合体と、標的物質を捕捉していない前記第1の捕捉物質が混在する試料に、前記第1の捕捉物質に特異的に結合する結合剤を接触させて、標的物質を捕捉していない前記第1の捕捉物質を前記結合剤に結合させることと、前記結合剤を試料が貯留されるチャンバに留置することと、遠心力を付与し、前記複合体を前記チャンバから導出して液体が充填された管状路を移動させ、前記管状路を移動する前記複合体が照射光を散乱して生じる散乱光により、前記複合体を検出する標的物質の検出方法が示される。
本変形例において、検出対象は標的物質と第1の捕捉物質が結合して形成された複合体である。ここで標的物質に結合しなかった余剰の第1の捕捉物質も標識物質に結合しているので、これが検出場に導入されてしまうと、未反応の第1の捕捉物質からも散乱光が検出されてしまい、検出結果に誤差が生じてしまう。上述の第一実施形態では、標的物質を固相に固定化し一旦、第1の捕捉物質を固相に担持することで、また、適宜の洗浄処理によって余剰の第1の捕捉物質を除去したが、本変形例では、余剰の第1の捕捉物質は結合剤に結合し、また、結合剤はチャンバに留置されるので、余剰の第1の捕捉物質をチャンバに留置することができ、検出場にこれが導入されることを抑止して、洗浄を不要としつつ複合体検出の精度向上を図ることが可能となる。
複合体の形成および余剰の第1の捕捉物質の結合剤への結合は、液体が貯留された状態で実施される。例えば管状路と該管状路に試料を供給するための前室(チャンバ)とを1のデバイスに設けると共に、前室に結合剤を留置すれば、前室に導入した試料に含まれる余剰の第1の補足物質を結合剤に結合させて、前室に留めることができる。尚、結合剤を留置するチャンバは、デバイスと必ずしも一体で形成されている必要はなく、デバイスの外に設けた別のチャンバを余剰の第1の捕捉物質を留置するために用いてもよい。チャンバにおいて、余剰の第1の捕捉物質を留置する場合には、チャンバの内壁に結合剤を固定しておく、または、結合剤を固体に固定してチャンバに導入するといった方法を適宜選択することができる。
また、前室に結合剤を導入する場合は、結合剤が固定される固体を、管状路よりも大きなものにすれば、余剰の第1の捕捉物質を留置することができる。さらに、チャンバにバルブを設け、管状路への液体の充填が完了した後に、バルブを開通させ標的物質と第1の捕捉物質が結合して形成された複合体が管状路へ導入されるように構成してもよい。
<結合剤>
結合剤は、第1の捕捉物質と特異的に結合するものであり、好適には抗原が例示される。また、抗原は、直接的に内壁や固体などの固相に担持されてもよく、抗体等を介して間接的に固相に固定されてもよい。また、例えば、結合剤に抗原を用いる場合に、この抗原にビオチンなどのタグを付加しておき、固相の方にアビジンを結合させておけば、ビオチンーアビジンの結合によって結合剤を固相に固定化することができる、
なお、固相と結合剤との間の結合には、例えば、物理的吸着、共有結合、イオン結合、親和性を利用した結合、およびこれらの組み合わせなどの結合様式が利用できる。好適には、共有結合、イオン結合により、親和力や吸着力による結合力よりも強い結合で結合剤は固相に固定化される。
なお、標識物質が第1の捕捉物質に比べて大きい場合には、標識物質に複数の第1の捕捉物質が結合することが想定されるが、本変形例においては、標識物質に結合する第1の捕捉物質の数が少ないほど良好に実現でき、理想的には標識物質に結合する第1の捕捉物質が1つであることが望ましい。
本発明について、以下、実施例によって更に詳述する。なお、本発明は、実施例の記載に限定されるものではない。
(参考例1)白金-金コロイド懸濁液の調製
使用するガラス器具をすべて王水にて洗浄した。390mLの超純水をフラスコに入れて沸騰させ、この沸騰水に塩化金酸水溶液(水溶液1リットル当たり金として1g、片山化学工業株式会社製)30mLを加え、その後、1重量%クエン酸ナトリウム水溶液60mLを添加した。クエン酸ナトリウム水溶液の添加後に、塩化白金酸水溶液(水溶液1リットル当たり白金として1g、和光純薬工業株式会社製)数十mLを加えた。さらにその5分後に、1重量%クエン酸ナトリウム水溶液60mLを加え、4時間還流を行い、白金-金コロイド懸濁液を得た。なお、標識物質を含む部分を的確に検出できるよう、適宜、試薬や還元剤を添加してコロイドの粒径が100nm以上となるように調整した。
(参考例2)モノクローナル抗体の調整
市販のSARS-CoV-2 ヌクレオカプシドタンパク質(以下、単に「SARS-CoV-2NP」と称す)(CUSABIO社)を免疫用抗原として、常法に従い抗SARS-CoV-2NPモノクローナル抗体(以下、単に「抗NP抗体」と称す)を取得した。
具体的には、100μgのSARS-CoV-2NPを、マウス(BALB/c、5週齢、日本SLC)に3回免疫し、その脾臓細胞を細胞融合に用いた。細胞融合には、マウスの骨髄腫細胞であるSp2/0-Ag14細胞(Shulmanら、1978)を用いた。細胞の培養には、Dulbecco’s Modified Eagle Medium(Gibco)にL-グルタミン 0.3mg/ml、ペニシリンGカリウム 100単位/ml、硫酸ストレプトマイシン 100μg/ml、Gentacin 40μg/mlを添加し(DMEM)、これに牛胎児血清(JRH)を10%となるように加えた培養液を用いた。細胞融合は、免疫マウスの脾臓細胞とSp2/0-Ag14細胞を混合し、そこにPolyethylene glycol solution(Sigma)を添加することにより行った。融合細胞はHAT-RPMI[0.1mM Sodium Hypoxantine、0.4μM Aminopterinおよび0.1mM Thymidine(Gibco)を含む血清加RPMI]で培養し、酵素結合抗体法(ELISA)により培養上清中の抗体産生を確認した。抗体産生陽性の細胞をHT-RPMI[0.1mM Sodium Hypoxantineおよび0.1mM Thymidineを含む血清加RPMI]で培養し、増殖させた。
クローニングした細胞は、2,6,10,14-Tetramethylpentadecane(キシダ化学)を接種しておいたマウス(BALB/c、リタイア、日本SLC)に腹腔内接種し、腹水を採取した。この腹水をプロテインGカラムに供し、モノクローナル抗体を精製した。最終的にSARS-CoV-2NPに対するモノクローナル抗体産生細胞が83クローン得られた。
(参考例3)金コロイド懸濁液の調製
塩化金酸水溶液(水溶液1リットル当たり金として1g、片山化学工業株式会社製)を原料とし常法に従い金コロイド粒子を調整した。具体的には、加熱によって沸騰させた純水99mlに、1%(v/w)塩化金酸水溶液1mlを加え、さらに、その1分後に1%(v/w)クエン酸ナトリウム水溶液1.5mlを加えて加熱し5分間沸騰させた後、室温に放置して冷却した。次いで、この溶液に200mM炭酸カリウム水溶液を加えてpH9.0に調製し、これに超純水を加えて全量を100mlとして金コロイド粒子が懸濁する金コロイド懸濁液を得た。なお、所望の粒径が得られなかった場合には、塩化金酸に対する還元剤の添加量等を適宜調整し、必要な粒径の金コロイド粒子を作製した。
(実施例1)pH調整剤による標識物質(白金-金コロイド粒子)を含む部分の分離
(1)白金-金コロイド標識抗体溶液の調製
参考例2で取得した抗NP抗体から選択した1の抗NP抗体に対して、以下の手順で白金-金コロイド標識を行った。抗NP抗体のタンパク質換算重量1μg(以下、タンパク換算重量を示すときは、その精製タンパク質の重量分析による重量数値で示す)と参考例1で調製した粒径120nmの白金-金コロイド懸濁液1mLを混合し、2分間室温で静置することで白金-金コロイド粒子の表面に抗NP抗体を結合させた。その後、全体液量に対して最終濃度が1、0%となるように10%ウシ血清アルブミン(以下、「BSA」と記す)水溶液を加え、白金-金コロイド粒子の残余表面をBSAでブロッキングすることで、白金-金コロイド標識抗NP抗体溶液を調製した。その後、この溶液を遠心分離(600×g、25分間)し、白金-金コロイド標識抗NP抗体を沈殿させ、上清を除去することで白金-金コロイド標識抗NP抗体を取得した。取得した白金-金コロイド標識抗NP抗体を10%サッカロース・1%BSA・0.5%Triton-X100(商品名)を含有する50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.4)に懸濁することで白金-金コロイド標識抗体溶液とした。
(2)pH調整剤による切断処理
参考例2で取得した抗NP抗体のうち、前述の白金-金コロイド標識抗NP抗体に用いた抗NP抗体とは別の抗体をトリス塩酸緩衝液にて20μg/mLに調整した抗体希釈液を作製し、96ウェルマイクロプレートの各ウェルに当該抗体希釈液100μLを加え15-18時間静置して抗体を固相化した。その後、ブロッキング処理を施してから、10ng/mLに調整されたSARS-CoV-2NP溶液50μLと、白金-金コロイド標識抗体溶液50μLとを加え、37℃で10分間静置した。続いて、TBS-T(Tris Buffered Saline with Tween 20)で洗浄し、洗浄液を排出した後にpHの異なる各種の試薬を100μL加え、室温で2分間静置した後、ウェル内の溶液を回収した。用いた試薬の種類およびpH値を表1に示す。pH値はpHメーター(LAQUA 堀場社製)を用いて測定した。
なお、クエン酸溶液のpHは、クエン酸とクエン酸三ナトリウムとを混合して所望のpHの溶液(pH2.94~pH6.96)となるように調整した。また、リン酸溶液は、リン酸二水素ナトリウムとリン酸水素二ナトリウムを混合して中性近傍の所望のpH(pH6.99~8.56)となるように調整し、リン酸水素二ナトリウムとリン酸三ナトリウムとを混合してアルカリ性の所望のpH(pH11.33~12.85)になるよう調整した。グリシン塩酸緩衝液、グリシンNaOH緩衝液、及びトリエチルアミン溶液については、塩酸または水酸化ナトリウムを添加して所望のpHに調製した。また、塩酸溶液及び水酸化ナトリウム溶液は、希釈倍率を変更してpHを調整した。
Figure 2023160814000010
(3)白金-金コロイド粒子の測定
上記の操作によって回収した溶液について、含有する白金-金コロイド粒子量を測定した。具体的には、試料セルに回収した溶液を導入し、試料セルに対し650nmのレーザ光を照射して得られる散乱光を、所定位置にセットしたフォトダイオードで測定した。
溶液中の白金-金コロイド粒子の濃度に比例して散乱光強度が増加するため、散乱光強度を測定することで、溶液中の白金-金コロイド粒子の濃度を定量的に分析できる。即ち、pH調整剤で免疫複合体を処理することによって、固相または免疫複合体から分離された「白金-金コロイド粒子を含む部分」を検出できる。
なお、白金-金コロイド標識抗NP抗体が、(抗原以外の場所に)非特異的に吸着し、洗浄処理によって除去されなかった場合には、pH調整剤によって分離されて測定試料に混入してしまう。そこで、上記同様に抗体を固相化処理したウェルに、白金-金コロイド標識抗NP抗体溶液100μLのみを加えて37℃で10分間静置し、次いで、TBS-T で洗浄してからpH調整剤液100μLを加え、室温で2分間静置後、ウェルから溶液を回収して、散乱光測定を行った。それぞれのpH調整剤毎に同様の操作を行い、得られた散乱光強度を各pH調整剤に対するブランク値とした。なお、pH調整剤が複合体を切断する処理能力が弱い場合には、サンプルの散乱光強度とブランクとの散乱光強度との差が小さくなるため、両者の差分の結果において、サンプルの測定結果の散乱光強度が、負の値で示されることがある。
ブランク値は、ウェル内に非特異的に吸着した白金-金コロイド標識抗NP抗体に由来する白金-金コロイド粒子の散乱光強度と見積もることができるので、測定値からこのブランク値を控除して、形成された免疫複合体の「白金-金コロイド粒子を含む部分」の散乱光強度とした。結果を図5に示す。
図5は、各試薬のpH値と切断特性との関係を示した図である。図5の下方には、各試薬のpH値と対応する散乱光強度の値を表示しており、図5の上側には、各値をグラフで示している。グラフ横軸はpH値であり、縦軸は散乱光強度である。図5からもわかるように、pH値が中性付近にある場合には、散乱光強度が低い。つまり、添加した中性の試薬は、複合体の「白金-金コロイド粒子を含む部分」の切断性能が低いことが示されている。一方、添加した試薬が酸性や塩基性である場合には、散乱光強度が上昇しており、酸や塩基などのpH調整剤によって、固相に結合する複合体(固相-抗NP抗体-SARS-CoV-2NP-白金-金コロイド標識抗NP抗体)の「白金-金コロイド粒子を含む部分」を、切断できることが示された。
特に、pH4未満のpH調整剤(酸)、pH10.6以上となるpH調整剤(塩基)は良好な切断性能を有し、更には、pH11.6以上のpH調整剤(塩基)は優れた切断性能を有することが示された。
(実施例2)水酸化ナトリウムによる標識物質(白金-金コロイド粒子)を含む部分の分離
実施例1の結果、水酸化ナトリウム溶液の切断能力が特に良好であったため、固相に結合する複合体(固相-抗NP抗体-SARS-CoV-2NP-白金-金コロイド標識抗NP抗体)からの標識物質を含む部分の切断性能を、水酸化ナトリウムの濃度を変更し、更に評価を行った。
水酸化ナトリウム濃度は、0.01mM、0.1mM、1mM,10mM,100mM,1Mとした。そして、各濃度に調整した水酸化ナトリウム水溶液100μLを用いた以外は、実施例1と同様に処理を行った。結果を図6に示す。
図6は、複合体に対する水酸化ナトリウムによる切断性能を示した図である。図6の下方には、水酸化ナトリウムの各濃度におけるpH値と散乱光強度の値を表示しており、図6の上側には、各値をグラフで表示している。グラフ横軸は水酸化ナトリウムのモル濃度であり、縦軸は散乱光強度である。
図6からもわかるように、10mM以上の濃度で、水酸化ナトリウムは、免疫複合体の白金-金コロイド粒子を含む部分を、分離(遊離)させることが明らかとなった。なお、10mMの水酸化ナトリウム溶液のpHは、11.87であった。
(実施例3)変性剤による標識物質(白金-金コロイド粒子)を含む部分の分離
実施例1と同様の方法で抗NP抗体を固相化しブロッキング処理を施したウェルを備えたマイクロプレートを準備した。そして、
このマイクロプレートのウェルを固相として形成した複合体(固相-抗NP抗体-SARS-CoV-2NP-白金-金コロイド標識抗NP抗体)に対し、pH調整剤に代えて変性剤を作用させた以外、実施例1と同様に、ウェルの溶液を回収し、実施例1(3)と同様に白金-金コロイド粒子量の測定を行った。なお、変性剤には8M尿素、6Mグアニジン塩酸、又は1%SDSを用いた。結果を図7に示す。なお、比較のため、1M-NaOHを用いて同様に処理を行った結果を、あわせて図7に示す。
図7は、固相に結合した免疫複合体に対する変性剤の作用を、分離(遊離)された白金-金コロイド(白金-金コロイド粒子を含む部分)の散乱光強度にて示した図である。比較データとして、1M-NaOHを用いた場合を表示している。図7からもわかるように、いずれの変性剤も白金-金コロイド粒子を含む部分を遊離させることが明らかとなった。
(実施例4)金コロイド粒子の増感処理
参考例3で調整した金コロイド粒子懸濁液(粒径約12nm)を純水にて4.36nMの 濃度に調整し、その2μLを1M NaOH100μLに加えて混合した。この1M NaOHでの処理は、複合体に対するpH調整剤での切断処理を模式的に行ったものである。そこに1M HClを100μL加えて中和した。この中和液6.35μLを10mM Walpole buffer(pH2.0)972μLと12.1M塩化金酸液1.65μLの混合液に加え、さらに375mM塩酸ヒドロキシルアミン20μLを加えて混合し、室温で10分間静置して増感反応を行った。この後、遠心して溶液中の金コロイド粒子を沈降させ、上清を除去し、超純水で洗浄した。これにより得た金コロイド粒子分散液の1μLを、カーボンテープを貼った試料ホルダ上に滴下、脱大気し、電子顕微鏡TM4000Plus(日立製作所社製)で撮影した。加圧電圧は15kv、倍率は1000とした。5視野以上を撮影し、画像を解析することで平均粒径と標準偏差を計算した。なお、4.36nM金コロイド粒子分散液に代えて、金コロイド粒子を含まない超純水を用いて同様の増感処理を行ったものを比較対象に用いた。結果を図8に示す。
図8は、増感反応による金コロイド粒子径の変化を示した図である。図8の縦軸は粒径を示している。図8からもわかるように、増感反応によって、4.36nM金コロイド粒子分散液中の金コロイド粒子を、粒子径約3~5μmの粒子に成長させることができた。一方、金コロイド粒子を含まない場合にも金コロイド粒子の析出が認められたが、増感処理を行った場合に比べて顕著に小さな粒子であるため、両者は検出において明らかに区別できるものであった。なお、反応条件を調整すれば当然に粒子径は調整可能であることから、検出系に適した粒径の金コロイド粒子を作出できることは明らかである。
このことから、微小な金コロイド粒子を増感反応によって大径化ができること、更にその増感後の金(コロイド)粒子を光学的に十分に検出できることが示された。
(実施例5)金属粒子の粒径による散乱光強度の変化
(1)各種粒径の金コロイド粒子および白金コロイド粒子の準備
参考例1によって粒径120nmの白金-金コロイド粒子を準備した。また、参考例3によって、粒径12nm及び200nmの金コロイド粒子を準備し、粒径500nm及び1000nmの金(コロイド)粒子は市販のもの(NANOPARTz,A11-500-CIT-DIH-1-50, A11-1000-NPC-DIH-1-100)を入手した。それぞれの粒子は溶液に分散された状態のものを準備した。
(2)散乱光強度の測定
上記にて準備した各粒径の金コロイド粒子分散液は、散乱光が測定できる範囲の濃度に希釈し、実施例1と同じ手法にて散乱光の測定を実施した。得られた散乱光強度の値を濃度で割り、1nMにおける散乱光強度を算出した。その結果、金コロイド粒子の粒径の増加に応じて散乱光強度は増加することが分かった。結果を図9に示す。
図9は、金属コロイド粒子の粒径と散乱光強度との関係を示した図である。横軸は粒径(nm)、縦軸には散乱光強度を対数表示にて示している。図9からもわかるように、120nmから顕著に散乱光強度が増加することから、レーザ光源とフォトダイオードとの簡単な散乱光検出系で、100nm程度から金属コロイド粒子を検出可能であることが示された。
(実施例6)標識物質(白金-金コロイド粒子)を含む部分に基づく抗原検出
実施例1で固相化に用いた抗NP抗体を、トリス塩酸緩衝液にて20μg/mLに調整し、抗体希釈液を作製した。これを、磁性粒子(JSRライフサイエンス社製)と混合し、化学結合にて磁性粒子に抗NP抗体を固相化した。そして、磁性粒子に固相化された抗NP抗体と、10、100、1000、10000pg/mL濃度に調整したSARS-CoV-2NP溶液のそれぞれと、実施例1で調整した白金-金コロイド標識抗NP抗体とを37℃で30分間反応させた。反応後の各溶液から、それぞれ0.45μm遠心式フィルター(メルク社)で遠心ろ過して磁性粒子を回収し、TBS-Tにて5回洗浄した。その後、磁性粒子に1M-NaOHを加え、磁性粒子に結合する複合体(磁性粒子-抗NP抗体-SARS-CoV-2NP-白金-金コロイド標識抗NP抗体)に対して切断処理(溶出)を行い、回収した溶出液の散乱光強度を測定した。測定結果を図10に示す。なお、実施例において溶出とは、複合体からその一部である標識物質を含む部分が切断され、その結果、その一部分が固相から分離されて液中に放出されれば足り、分離された一部分が液中に溶解することに限定解釈されるものではない。
図10は、溶出された白金-金コロイド粒子(白金-金コロイド粒子を含む部分)の濃度を散乱光強度にて示した図である。縦軸は、散乱光強度を対数表示にて示しており、横軸は抗原濃度を示している。図10からもわかるように、白金-金コロイド粒子に基づく散乱光強度は抗原濃度に比例していた。即ち、抗原濃度が上昇するとこれに伴い溶出される白金-金コロイド粒子も増加したことから、固相に抗原抗体反応によって形成された複合体に対し、有効に切断処理が実施され、更に切断された標識物質を含む部分が分離、溶出し、適切に検出されたことが実証された。
(実施例7)回転するディスクからの散乱光検出
(1)金コロイド粒子の流出性評価実験
本実施例は、金コロイド粒子の流出性を実験的に評価するものである。この実験のため、円板の中心側に区画されたチャンバと、チャンバに連通し、円板の半径方向外側に向かって延設された流路とを備えたディスクを準備した。このディスクは、チャンバと流路とが凹設された円板の上面に、50μm厚さのポリプロピレンシート(以下、「PPシート」と略す。)が粘着層を介して密着されており、該PPシートによってチャンバと流路の上面が形成されている。
図11は、本実施例で用いたディスクの流路部分の一部の断面を模式的に示した図である。チャンバの内側は厚み方向の深さが1000μmとなるように形成されており、また、チャンバにおける回転中心と反対側の壁の上方に流路が連通している。流路は、幅230μm、深さ15μmで形成されており、矩形状の流路断面を有し、所定の回転数を超えてディスクが回転すると開通して液を通流するキャピラリーバーストバルブになっている。また、図11に示すように、流路に接するチャンバの壁は、底面から斜めに上昇するように傾斜している。このため、流路に向かって次第にチャンバの深さは浅くなっている。準備したディスクにおいて、チャンバの上面のPPシートを穿刺してチャンバの内外を貫通する貫通口を穿設した。
穿設した貫通孔を介してこのチャンバにポリスチレンビーズ(PSビーズ)(Micromod社製 粒径20μm 25mg/ml 水系分散液)分散液を注入した。注入した分散液はチャンバの容量に比して少量であったため、貫通口の近傍において表面張力によって液溜りを形成した。次いで、2000rpmで1分間回転して、チャンバ内の溶媒を流路に排出した。流路を通過した溶媒は、流路の先のチャンバにおいて、上面のPPシートに孔を開け、全量をピペットで吸引し回収した。
その後、参考例3で作製した金コロイド粒子分散液10μLを貫通口からチャンバに注入した。これにより貫通口の近傍に表面張力によって金コロイド粒子分散液の液溜りが形成された。続いて2000rpmで1分間回転してチャンバ内の溶液を流路へ流出させ、流路を通過した液を流路の先のチャンバから同様に回収した。参考例3で作製した金コロイド粒子分散液およびPSビーズ分散液の回収液は、微量分光光度計もしくは散乱光強度測定装置で吸光度もしくは散乱光強度を測定し、両者を比較した。その結果、いずれの回収液にもPSビーズは含まれなかった一方、金コロイド粒子分散液に由来する回収液には初期濃度の6割を超える金コロイド粒子が含まれていた。これにより、堰き止められたPSビーズの間を縫って、金コロイド粒子がチャンバから流路へ流出することが確認できた。
(2)散乱光による標識物質の特異的検出
次に、生体材料が共存する場合における標識物質の散乱光検出を行った。夾雑物として模式的にBSAを用いた。金コロイド粒子は参考例3と同様に作製した粒径200nmの金コロイド粒子が分散した分散液を使用した。10%のBSA溶液(オリエンタル酵母社製、Cat 47408903)または水を準備し、それぞれを溶媒として、2pMの金コロイド粒子分散液を、2fMに希釈した。希釈した金コロイド粒子分散液と10%BSA溶液を、それぞれ300μLキュベットに添加して、実施例1で用いた散乱光検出装置で散乱光強度を測定した。
この実験のため、回転の中心側に区画されたチャンバと、チャンバに連通し、円板の半径方向外側に向かって延設された流路とを備えたディスクを準備した。このディスクは、チャンバと流路とが樹脂製の円板に凹設されており、円板の上面には粘着層を介して、50μm厚さのPPシートが密着している。このPPシートによってチャンバと流路の上面が形成されている。チャンバおよび流路はいずれも深さ15μmで形成され、底面は相互に連続している。流路の幅は1mmであり、延設された流路の先端は、流路に直行する分岐路に接続し、分岐路はその両端において回転中心側へ向かう細い流路に接続している。この細い流路はチャンバの回転中心側の端部においてチャンバの回転中心側の端部に接続され連通している。チャンバは流路よりも幅広に形成されている。また、チャンバの上面には貫通口が穿設されている。
このディスクのチャンバに、BSA溶液またはBSA溶液にて2fMに希釈した金コロイド粒子分散液をそれぞれ注入した。ディスクは、図4に示した装置の載置台にセットされ、2000rpmで2分間回転させて、散乱光の発生数をカウントした。結果を表2に示す。
Figure 2023160814000011
表2は上段から順に、金コロイド粒子分散液(「GNP」)、BSA溶液(「BSA」)、BSA溶液希釈金コロイド粒子分散液(「GNP+BSA」)の測定結果を示しており、中欄には散乱光検出装置による散乱光強度の測定結果を、最右欄には回転させたディスクからの散乱光発生数のカウント結果を示している。これからもわかるように、キュベットを用いた散乱光強度の測定では、金コロイド粒子分散液とBSA溶液のそれぞれで散乱光が測定され、両者を混合した試料では、より強い散乱光が測定された。この結果から、300μLキュベットのような容量の比較的大きなセルを用い静置した状態で照射光を照射して散乱光を検出するような測定方法では、夾雑物が存在する場合には、金コロイド粒子などの検出対象を、散乱光によって特異的に検出することが困難であることが示された。一方、ディスクを用いた場合には、水をブランクとした測定とBSA溶液の測定とは同様の結果となり、BSAに起因する散乱光の発生はカウント(検出)されなかった。更に、金コロイド粒子分散液を測定した場合には、金コロイド粒子に由来する散乱光の発生がカウントされ、金コロイド粒子の検出が示された。
図12は、ディスクを用いた金コロイド粒子の検出結果を示した図である。図12の横軸は管状路における流路幅方向の位置(position)を示し、縦軸は散乱光の強度を電圧値で示している。また、カウントされた金コロイド粒子のピークを▼にて示している。図12には、上から下に向かって、時間経過による検出ピークの変化が示されている。これによれば、経時変化せず連続的に観察されるピークと、短時間だけ出現する間欠的なピークとがあることがわかる。経時変化しないピークはノイズと判断できる。従って、管状路の同じポジションにおいてブランクの散乱光の強度(電圧値)を取得し、測定時における任意の周回で得られた散乱光の強度(電圧値)との間で差分することでノイズをキャンセルすることができる。一方、断続的に生じる間欠的なピークは、流路を通過する動的な金コロイド粒子に基づくものと判断できる。よって、夾雑物が存在しても、目的の検出対象を分離して特異的に検出することができることが示された。
(実施例8)回転するチップ型デバイスを用いた標識物質(金コロイド粒子)を含む部分の分離及び散乱光検出
(1)金コロイド標識抗体溶液の調製
標識物質として、白金-金コロイド粒子に代えて参考例3で調製した粒径200nmの金コロイド粒子を用いた以外は、実施例1の白金-金コロイド標識抗体の作製と同様の手順で金コロイド標識抗NP抗体を作製した。作製した金コロイド標識抗NP抗体は検体抽出液に懸濁して金コロイド標識抗体溶液とした。
(2)ポリスチレンビーズ固相化抗体の調製
参考例2で調製した抗NP抗体のうち、前述の金コロイド標識抗NP抗体に用いた抗NP抗体とは別の抗体を選択し、マレイミド法によってポリスチレンビーズ(Micromod社製 粒径20μm 25mg/ml 水系分散)に結合させてポリスチレンビーズ固相化抗NP抗体を調製した。
(3)抗体-抗原-抗体のサンドイッチ様式の免疫複合体の形成
抗原として、SARS-CoV-2NPを用い、抗原、上記金コロイド標識抗体溶液、上記ポリスチレンビーズ固相化抗NP抗体のそれぞれを、所定濃度になるように検体抽出液で調整した。そして、これらを混合し、室温でで10分間反応させて、抗体-抗原-抗体のサンドイッチ様式の免疫複合体を生成させた。
(4)洗浄処理
図2bと同様の反応チャンバ、流路、管状路、排液貯留室、洗浄液貯留室及び試薬貯蔵室(切断試薬貯留室を備え、ユニット1つが独立して形成されているチップ型デバイスを準備した。
そして、上記で調製した免疫複合体を含む溶液を該チップ型デバイスに導入した。具体的には、上記にて調製した免疫複合体を含む溶液を反応チャンバに注入し、このチップ型デバイスを図4に示す装置の載置台にセットし、2000rpmで10秒間回転させて、液体を反応チャンバから排出した後、、回転を停止し洗浄液を反応チャンバに注入した。その後、このチップ型デバイスを2000rpmで9分間回転させて、洗浄処理を行った。洗浄処理後、管状路は液体で充填されていた。また、洗浄液は管状路の入口を超え、反応チャンバ内のポリスチレンビーズが概ね浸漬される位置まで充填され貯留された状態とした。
(5)標識物質(金コロイド粒子)を含む部分の分離及び散乱光による標識物質の特異的検出
洗浄処理後、切断試薬として1M NaOHを反応チャンバに注入した。そして、このチップ型デバイスを2000rpmで3分間回転させて金コロイド粒子(金コロイド粒子を含む部分)を複合体から分離、即ち、反応チャンバに貯留される液中へ溶出させた。反応チャンバ内の液中に溶出された金コロイド粒子は、遠心力によって管状路を通過し、その際、照射光が照射されることによって発生する散乱光を検出する。検出された散乱光は、電気信号に変換され電圧値として取得される。抗体濃度が0.5pg/mLとなるように調整して免疫複合体を形成した場合の散乱光検出結果を図13a及び図13bに示す。
図13a、図13bは、本実施例において金コロイド粒子(金コロイド粒子を含む部分)を散乱光で検出した結果を示した図である。図13aにおいて、横軸はチップ型デバイスの回転時間(time(round))を示し、1000timeは30秒間に相当する。縦軸は管状路における幅方向の位置(position(smp:sampling))を示し、100smpは492μmに相当する。また、検出された散乱光に対応する電圧値は、グレースケールの画像データとして出力され表示されている。グレースケールの濃淡は電圧値の高低に対応しており、電圧値が高くなるほど明度が低くなるようになっている。図13bは、図13aの一部拡大図であり、横軸1000~2000roundの範囲を示し、縦軸が200~300smpの範囲を示している。
ここで、抗原を加えずに、ポリスチレンビーズ固相化抗NP抗体と金コロイド標識抗体溶液を混合したものをサンプルとして、本実施例の上記手順(4)洗浄処理と(5)標識物質(金コロイド粒子)を含む部分の分離(溶出)及び散乱光による標識物質の特異的検出とを行った結果を図14a、図14bに示した。図14a、図14bの縦軸、横軸、表示データは図13a、図13bとそれぞれ同じであり、図14bは図14aの部分拡大図である。
反応チャンバに導入された金コロイド標識抗NP抗体は、抗原以外のものに対しても吸着(非特異的な吸着)を生じることがある。この非特異的に吸着した金コロイド標識抗NP抗体も、NaOH(切断試薬)が添加されると金コロイド粒子を含む部分が被着体から分離されることとなる。この現象は、切断試薬の添加によって生じるので、検出対象である金コロイド粒子(複合体を形成した金コロイド粒子)と共に、非検出対象の金コロイド粒子も管状路に導入され意図せず検出されてしまう。しかし、予め、上記のような方法で非特異的に吸着する金コロイド標識抗NP抗体の量を把握しておくことで、得られた結果の補正をすることができる。
尚、図13a及び図14aにおいては、管状路の幅方向両端付近には経時変化せずに連続する強いシグナルが観察される。図14aにおいても認められることから、かかるシグナルは金コロイド粒子によるものとは想定され難く、管状路の端部近傍において生じる光の屈折、散乱、ひずみなどに起因するノイズであると判断できる。このようなシグナルが計測される場合、管状路の両端部近傍は、検出の有効範囲から除外される。
また、同じポジションで持続的に検出されるシグナル(図13a、図14aにおいては、時間軸に沿って同じ強度で出力されるため線状の画像で表示されている。)は、管状路を移動していないものに由来する散乱光であるので、管状路内の傷などに基づくノイズと判断できる。
更に、金コロイド粒子のみをチップ型デバイスの管状路に流して散乱光を検出し、得られた画像データから金コロイド粒子の散乱光を示すシグナルの形状を確認したところ、図13a~図14bにおいて、略円形の微小なスポットが金コロイド粒子のシグナルに該当することがわかった。これにより、図14aにおいて認められる異方形や、やや大きめの点状のスポットは、金コロイド粒子に由来するシグナルとは形状が異なるので、異物に基づく散乱光(ノイズ)と判断できる。よってこれらのノイズシグナルは検出結果から除外することができる。
一方、断続的に発生する略円形の微小なスポットは、管状路を通過する動的な金コロイド粒子に由来する散乱光に基づくものと判断できる。管状路の幅方向両端近傍を除いた検出の有効範囲において、この金コロイド粒子に対応するスポットを図13a及び図14aのそれぞれにおいてカウントした。
そして、図13aのカウント数から図14aのカウント数を控除して、抗原に対応する金コロイド粒子のカウント数とした。そのカウント数(count(-blank))と免疫複合体を形成した際の抗原濃度との関係を図15に示す。横軸は抗原濃度を常用対数で示し、縦軸は抗原に対応する散乱光のカウント数を示す。
図13aと図14aとの比較からわかるように、図14aに表示される金コロイド粒子を示すスポットは、図13aに比べてはるかに多い。更に、図15に示すように、検出されたカウント数(count(-blank))は千の単位の「正の値」であり、抗原が存在しない場合に比べて明らかな有意差がある。よって、デバイスを用い、固相に固定された免疫複合体に対し、洗浄処理及び切断試薬による切断処理を実施し、複合体から標識物質を含む部分を分離できること、その分離した標識物質を含む部分を遠心力によって管状路内を移動させ、その移動する標識物質に由来する散乱光によって該標識物質を検出できることが示された。
更には、図13b、図14bに示すように、金コロイド粒子に対応するスポットは明瞭に確認できる。つまり、個々の金コロイド粒子の散乱光に基づくシグナルは、カウント可能であり、金コロイド粒子の定量評価を実現し得ることが示された。
特に、図15から、抗原濃度が低濃度である場合に、金コロイド粒子に基づく散乱光のカウント数と抗原濃度との相関がよいという傾向がみられた。このことから、特にサンプルに含まれる抗原が低濃度である場合に、抗原濃度に対応する金コロイド粒子をより定量的に検出できる可能性が示された。
当該方法が従来の免疫クロマトグラフ法と比べてより低濃度の抗原を検出することができるのかを検討するために、上記結果を従来の免疫クロマトグラフ法によるものと比較した。従来の免疫クロマトグラフ法には、イムノエース SARS-CoV-2 II(株式会社タウンズ社製)を用い、抗原検出結果は目視により評価した。なお、抗原としては、所定濃度となるように調整したSARS-CoV-2NPを用いた。その結果を表3に示す。
Figure 2023160814000012
表3中、最左欄は、免疫複合体を形成した際に用いた抗原の最終濃度を示す。中欄は、従来の免疫クロマトグラフ法による結果を示す。最右欄は、実施例8の当該方法による結果を示す。「+」は、免疫クロマトグラフ法では抗原が検出されたことを示し、本実施例の方法では散乱光がカウントされたことを示す。「ND」は、免疫クロマトグラフ法では抗原が検出されなかったことを示し、本実施例の方法では散乱光がカウントされなかったことを示す。検出が確認された最も低い抗原濃度は、本実施例の方法では0.5pg/mLであったのに対し、従来の免疫クロマトグラフ法では、50pg/mLであった。このことから、本実施例の方法では、従来の免疫クロマトグラフ法と比べてより低濃度の抗体を検出でき、感度に優れるといえる。
なお、上述した本実施例の方法では、洗浄処理の際に、外部から洗浄液を反応チャンバに直接注入したが、これに替えて、洗浄液貯留室に洗浄液を貯留し、チップ型デバイスを回転させることにより、洗浄液貯留室から反応チャンバに洗浄液を供給してもよい。これに関し、別途実施した実験において、洗浄液貯留室に洗浄液を注入し、チップ型デバイスを2000rpmで1分間回転させた後、洗浄液貯留室の洗浄液が減少し、反応チャンバの洗浄液が増加したことを目視で確認した。このことから、洗浄液貯留室に貯留した洗浄液は、回転によって反応チャンバに導入され、洗浄処理を行うことができることが示された。
また、チップ型デバイスには試薬貯蔵室(切断試薬貯留室)が反応チャンバに対し回転中心側に配置され、流路によって反応チャンバに接続されている。この試薬貯留室は、洗浄液貯留室と同様の流路によって反応チャンバ及び管状路とつながっているので、上記の回転による洗浄液の移送実験から、切断試薬についても試薬貯留室に貯留しておけば、チップ型デバイスを回転させることにより、発生する遠心力によって洗浄液同様、反応チャンバに切断試薬を供給でき、反応チャンバで切断処理を実施できるといえる。
本発明によれば、標的物質を高感度かつ安価に検出できるので、医療分野の他、各種産業分野における物質の検出方法及び装置として利用できる。
1 ディスク
2 ユニット
10 反応チャンバ
11 管状路
12 排液貯留室
13 洗浄液貯留室
14 切断試薬貯蔵室

Claims (22)

  1. 標識物質に結合した第1の捕捉物質と、固相に固定された第2の捕捉物質との間に標的物質をサンドイッチすることにより複合体を形成し、形成された前記複合体から標識物質を含む部分を分離した後、
    分離した前記標識物質を含む部分を、遠心力によって、管状路内に充填された液体中を移動させ、
    前記管状路内に照射された光を前記標識物質を含む部分が散乱する散乱光により、前記標識物質を含む部分を検出することを含む、標的物質の検出方法。
  2. 前記複合体から前記標識物質を含む部分を分離する前に、前記複合体が前記管状路への流入を抑止された状態で前記複合体を洗浄する洗浄処理を実施することを含む請求項1に記載の標的物質の検出方法。
  3. 前記洗浄処理を実施すると、洗浄に使用した洗浄液で前記管状路が満たされる請求項2に記載の標的物質の検出方法。
  4. 前記洗浄処理に使用した洗浄液を前記管状路よりも下流側に貯留する請求項2に記載の標的物質の検出方法。
  5. 前記複合体を所定のチャンバに保持することにより前記複合体が前記管状路への流入を抑止する請求項2に記載の標的物質の検出方法。
  6. 回転可能に形成されたデバイスに、前記洗浄液を貯留する第1の貯留室と、前記チャンバと、前記チャンバから流出する液体を貯留する第2の貯留室とを、この順で前記デバイスの回転中心側から外方側に向けて配置し、前記第1の貯留室と前記チャンバを開閉自在な流路で連通し、前記チャンバと前記第2の貯留室を前記管状路で連通し、
    前記デバイスを回転させることにより、前記洗浄液を前記第1の貯留室から前記チャンバに給液した後、前記管状路を経由して前記第2の貯留室へ排出させて前記洗浄処理を実施することを含む、
    請求項5に記載の標的物質の検出方法。
  7. 前記第1の貯留室と前記チャンバを開放可能な流路で連通する請求項6に記載の標的物質の検出方法。
  8. 前記洗浄処理は、前記第2の貯留室と前記管状路が前記洗浄液で満たされるまで行われる、請求項6に記載の標的物質の検出方法。
  9. 前記デバイスの前記チャンバよりも回転中心側に、前記複合体から前記標識物質を含む部分を分離する試薬を含む液体を貯留する第3の貯留室を配置し、前記第3の貯留室と前記チャンバを開閉自在な流路で連通し、
    前記デバイスを回転させることにより、前記洗浄処理の後、前記チャンバに前記試薬を含む液体を給液して、前記標識物質を含む部分を分離した後、分離した前記標識物質を含む部分を前記管状路内に移動させることを含む、請求項8に記載の標的物質の検出方法。
  10. 前記第3の貯留室と前記チャンバを開放可能な流路で連通する請求項9に記載の標的物質の検出方法。
  11. 前記管状路から所定時間内に断続的に発生する散乱光を検出する請求項1から10のいずれか1項に記載の標的物質の検出方法。
  12. 前記標識物質は、前記管状路に満たされる液体よりも比重の大きい物質である請求項1から10のいずれか1項に記載の標的物質の検出方法。
  13. 前記標識物質は、金属、セラミックス、ガラス及び樹脂からなる群より選ばれた1つを主たる構成成分とする微粒子である請求項12に記載の標的物質の検出方法。
  14. 前記標識物質は金属コロイド粒子である請求項13に記載の標的物質の検出方法。
  15. 前記固相は、ガラス粒子、セラミックス粒子、磁性粒子、及び樹脂粒子からなる群より選ばれた少なくとも1つの粒状体である、請求項1から10のいずれか1項に記載の標的物質の検出方法。
  16. 前記固相は、前記複合体を形成する際に使用される容器内側の構造体である、請求項1から10のいずれか1項に記載の標的物質の検出方法。
  17. 前記複合体からの前記標識物質を含む部分の分離は、加熱処理、pH調整処理、変性処理、酸化処理、還元処理、酵素処理及び競合反応処理からなる群より選ばれた少なくとも1つの処理により行われる、請求項1から10のいずれか1項に記載の標的物質の検出方法。
  18. 前記第1の捕捉物質が、標的物質と特異的に結合する抗体、抗体フラグメント、改変抗体、抗原、アプタマー及び核酸からなる群より選ばれた少なくとも1つである、請求項1から10のいずれか1項に記載の標的物質の検出方法。
  19. 前記第2の捕捉物質が、標的物質と特異的に結合する抗体、抗体フラグメント、改変抗体、抗原、アプタマー及び核酸からなる群より選ばれた少なくとも1つである、請求項1から10のいずれか1項に記載の標的物質の検出方法。
  20. 請求項1の標的物質の検出方法において用いられる試薬であって、前記複合体から前記標識物質を含む部分を分離する作用を有する試薬。
  21. pH調整剤、変性剤、還元剤、酸化剤、酵素、及び競合剤からなる群より選ばれた少なくとも1つを含む、請求項20に記載の試薬。
  22. pH調整剤を含む、請求項21に記載の試薬。
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