JP7299174B2 - 試料分析装置 - Google Patents

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Description

本願は、試料分析装置に関する。
従来、尿や血液等の試料中の特定成分を分析するために試料分析用基板を用いる技術が知られている。例えば、特許文献1は、流路、チャンバー等が形成された円盤状の試料分析用基板を用い、試料分析用基板を回転等させることで、溶液の移送、分配、混合、試料溶液中の成分の分析等を行う技術を開示している。特定成分は、例えば、免疫反応によって発生した光を検出することによって定量される。
免疫測定法や遺伝子検出法には、例えば、磁性粒子(「磁性ビーズ」、「磁気粒子」または「磁気ビーズ」等と称することもある。)が用いられる。特許文献2は、磁性粒子を用いたサンドイッチイムノアッセイ法に言及する。サンドイッチイムノアッセイ法では、抗原抗体反応により、測定対象物である試料に含まれる抗原、磁性粒子の表面に固定化された一次抗体、および標識物質が結合された二次抗体を結合させて複合体を得る。抗原抗体反応には、B/F分離(Bound/Free Separation)の工程が必要である。B/F分離工程は、磁石を用いて磁性粒子を捕捉し、液体(検体溶液、試薬溶液、洗浄液等)の除去及び磁性粒子の洗浄により、反応物と未反応物を分離し、未反応物を除去する工程を含む。磁石および磁性粒子を用いたB/F分離は、非競合法よるものだけでなく、競合法による免疫測定法やハイブリダイゼーションによる遺伝子検出法においても必要である。
B/F分離を行うため、特許文献2では試料分析用基板は磁石を有している。磁石は、試料分析用基板に対して着脱不能または着脱可能である。また、回転による重心のブレを抑えるため、試料分析用基板にはバランサーも取り付けられる。
特表平7-500910号公報 特開2018-163102号公報
一般に、試料分析用基板は使い捨てである。磁石およびバランサーが試料分析用基板に着脱不能に取り付けられている場合、試料分析用基板とともに磁石およびバランサーも廃棄される。そのため、磁石およびバランサーのコストが都度発生し、試料分析用基板のコストが高くなる。
磁石およびバランサーが試料分析用基板に着脱可能である場合には、磁石およびバランサーが都度廃棄されることはない。しかしながら、磁石およびバランサーの着脱、洗浄および保管等の作業および管理に要するコストが発生する。
そのため、低コストで試料を分析することを可能にする分析環境が必要とされていた。
本願の限定的ではないある例示的な一実施形態は、コストの発生を抑制することが可能な試料分析装置を提供する。
本開示の試料分析装置は、液体試料を保持した試料分析用基板を回転させ停止させて、前記液体試料中のアナライトと磁性粒子の表面に固定化されたリガンドとの結合反応を生じさせる試料分析装置であって、装填された前記試料分析用基板を支持するターンテーブルと、前記ターンテーブルを回転させるモータと、前記モータの回転および停止を制御する駆動回路と、前記磁性粒子を吸引する力を発生させる磁石ユニットと、前記磁石ユニットを移動させて前記磁石ユニットと前記試料分析用基板との相対位置を変化させるアクチュエータと、前記モータ、前記駆動回路、および前記アクチュエータの動作を制御する制御回路とを備え、前記試料分析用基板は、前記試料分析装置への装填および前記試料分析装置からの取り外しが可能であり、所定の厚さを有する板状のベース基板と、前記ベース基板内の、前記結合反応を生じさせる空間であるチャンバーとを有しており、前記磁石ユニットは、円またはリングの一部または全部の形状を有しており、前記チャンバー内の反応物と未反応物とを分離するB/F分離(Bound/Free Separation)時に、前記アクチュエータは、前記チャンバー内の前記磁性粒子が前記磁石ユニットに吸引される位置に前記磁石ユニットを移動させる。
本開示によれば、B/F分離に利用される磁石を、使い捨てられる試料分析用基板にではなく、試料分析装置に設けた。磁石が試料分析用基板とともに廃棄されず、かつ試料分析用基板にバランサーを設ける必要もないため、試料分析用基板のコストを低減できる。本開示によれば、コストの発生を抑制するための試料分析装置が提供される。
図1は、磁性粒子を用いたサンドイッチイムノアッセイ法を説明する模式図の一例である。 図2Aは、試料分析用基板の構造の一例を示す平面図である。 図2Bは、試料分析用基板の分解斜視図である。 図3は、試料分析装置1のハードウェア構成例を示すブロック図である。 図4Aは、試料分析用基板100の平面図である。 図4Bは、試料分析用基板100の分解斜視図である。 図5は、試料分析用基板100に設けられた複数のチャンバーの位置を示す上面図である。 図6は、試料分析用基板100に予め保持されている洗浄液130、基質液132、一次抗体134および二次抗体136の位置を示す上面図である。 図7は、検体である血液190が点着された点着チャンバー110を示す図である。 図8は、磁石ユニット16の分解斜視図である。 図9は、磁石ユニット16の平面図である。 図10Aは、本開示による磁石の形状の例を示す図である。 図10Bは、本開示による磁石の形状の例を示す図である。 図10Cは、本開示による磁石の形状の例を示す図である。 図10Dは、本開示による磁石の形状の例を示す図である。 図10Eは、本開示による磁石の形状の例を示す図である。 図10Fは、本開示による磁石の形状の例を示す図である。 図10Gは、本開示による磁石の形状の例を示す図である。 図10Hは、本開示による磁石の形状の例を示す図である。 図11は、円形の試料分析用基板100の上方に移動された半円のリング形状の磁石ユニット16と、磁石ユニット16の移動機構の構成を示す平面図である。 図12は、円形の試料分析用基板100の上方に移動された半円のリング形状の磁石ユニット16と、磁石ユニット16の移動機構の構成を示す側面図である。 図13は、試料分析用基板100を約180度回転させた後の、磁石ユニット16の位置と測定チャンバー116の位置との関係を示す図である。 図14は、図13におけるA-A断面図である。 図15は、試料分析用基板100の上方から退避した位置に移動された磁石ユニット16と、磁石ユニット16の移動機構の構成を示す平面図である。 図16は、試料分析用基板100の上方から退避した位置に移動された磁石ユニット16と、磁石ユニット16の移動機構の構成を示す側面図である。 図17は、図15におけるB-B断面拡大図である。 図18は、B/F分離処理時の制御回路22の処理の手順を示すフローチャートである。 図19は、半円のリング形状の磁石ユニット16および56と、磁石ユニット16および56をそれぞれ移動させる移動機構の構成を示す平面図である。 図20は、半円のリング形状の磁石ユニット16および56と、磁石ユニット16および56をそれぞれ移動させる移動機構の構成を示す側面図である。 図21は、試料分析用基板100から遠ざかった磁石ユニット56を示している。 図22は、磁石ユニット16の移動方向に関する変形例を説明するための側面図である。
以下、添付の図面を参照しながら、本発明による試料分析装置の実施形態を説明する。本明細書では、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。たとえば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、本発明者は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図しない。以下の説明においては、同一または類似する構成要素には、同一の参照符号を付している。
尿や血液等の試料の成分の分析法には、分析対象物であるアナライトと、アナライトと特異的に結合するリガンドとの結合反応が用いられる場合がある。このような分析法には、例えば、免疫測定法や遺伝子診断法が挙げられる。なお、尿や血液等の試料は医学、薬学分野では検体と呼ばれることがある。
免疫測定法の一例として、競合法および非競合法(サンドイッチイムノアッセイ法)が挙げられる。また、遺伝子診断法の一例として、ハイブリダイゼーションによる遺伝子検出法が挙げられる。これら免疫測定法や遺伝子検出法は、例えば、磁性粒子(「磁性ビーズ」、「磁気粒子」または「磁気ビーズ」等と称することもある。)が用いられる。これら分析法の一例として、磁性粒子を用いたサンドイッチイムノアッセイ法で具体的に説明する。
図1に示すように、まず、磁性粒子302の表面に固定化された一次抗体304(以下、「磁性粒子固定化抗体305」と称する。)と測定対象物である試料に含まれる抗原306とを抗原抗体反応により結合させる。次に標識物質307が結合された2次抗体(以下、「標識抗体308」と称する。)と抗原306とを抗原抗体反応により結合させる。これにより、抗原306に対して磁性粒子固定化抗体305及び標識抗体308が結合した複合体310が得られる。
この複合体310に結合した標識抗体308の標識物質307に基づくシグナルを検出し、検出したシグナルの量に応じて抗原濃度を測定する。標識物質307には、例えば、酵素(例えば、ペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、ルシフェラーゼ等がある。)、化学発光物質、電気化学発光物質、蛍光物質等が挙げられ、それぞれの標識物質307に応じた色素、発光、蛍光等のシグナルを検出する。検出する光は試料そのものから発せられるわけではない。しかし、試料の成分の分析は試料中の抗原306の濃度等を測定することであり、抗原306が結合した複合体310が発光する。このため、本願明細書では、分かりやすさのため、試料が発光すると説明する場合がある。
上述した測定方法によって、試料分析用基板に設けた複数のチャンバー間で試料の移送を行い、試料の発光を検出することによって試料の成分分析を行う場合、試料の移送の手順、あるいは、試料分析用基板の回転による遠心力を利用して試料を移送したり保持したりするため、試料分析用基板を回転させた状態で試料の発光を検出する場合がある。
上述の発光の測定は、抗原抗体反応が生じなかった未反応物を除去した後の反応液を対象として行われる。そのため、未反応物を除去・分離する工程、すなわちB/F分離(Bound/Free Separation)の工程が必要である。ここで言う「反応物」は複合体であり、「未反応物」は例えば、検体中の未反応物、磁性粒子等に非特異的に吸着した物質、当該複合体の形成に関与しなかった標識物質である。
本開示にかかる一実施形態では、未反応物を除去するための磁石を、試料分析用基板ではなく試料分析装置に設けている。すなわち本開示の試料分析装置の概要は以下のとおりである。
[項目1]
液体試料を保持した試料分析用基板を回転させ停止させて、前記液体試料中のアナライトと磁性粒子の表面に固定化されたリガンドとの結合反応を生じさせる試料分析装置であって、
前記試料分析用基板は、前記試料分析装置への装填および前記試料分析装置からの取り外しが可能であり、所定の厚さを有する板状のベース基板と、前記ベース基板内の、前記結合反応を生じさせる空間であるチャンバーとを有しており、
装填された前記試料分析用基板を支持するターンテーブルと、
前記ターンテーブルを回転させるモータと、
前記モータの回転および停止を制御する駆動回路と、
前記磁性粒子を吸引する力を発生させる磁石ユニットと、
前記磁石ユニットを移動させて前記磁石ユニットと前記試料分析用基板との相対位置を変化させるアクチュエータと、
前記モータ、前記駆動回路、および前記アクチュエータの動作を制御する制御回路と
を備え、前記磁石ユニットは、円またはリングの一部または全部の形状を有しており、
前記チャンバー内の反応物と未反応物とを分離するB/F分離(Bound/Free Separation)時に、前記アクチュエータは、前記チャンバー内の前記磁性粒子が前記磁石ユニットに吸引される位置に前記磁石ユニットを移動させる、試料分析装置。
[項目2]
前記磁石ユニットは、前記形状を有する単一の磁石、または、前記形状に沿って配置された複数の磁石を含む、項目1に記載の試料分析装置。
[項目3]
前記試料分析用基板が円形である場合において、
前記磁石ユニットは、中心角の和が90度以上360度以下の前記円または前記リングの一部または全部の形状を有している、項目1または2に記載の試料分析装置。
[項目4]
前記試料分析用基板が円形であり、かつ、前記磁石ユニットが前記円または前記リングの一部の形状を有している場合において、
前記磁石ユニットの周方向の長さは前記チャンバーの周方向の長さよりも長い、項目1から3のいずれかに記載の試料分析装置。
[項目5]
前記試料分析用基板が円形である場合において、
前記円または前記リングの半径の大きさは、前記試料分析用基板の回転中心から前記チャンバーまでの距離に応じて決定される、項目1から4のいずれかに記載の試料分析装置。
[項目6]
前記磁石ユニットが前記リングの一部または全部の形状を有している場合において、
前記アクチュエータは、前記B/F(Bound/Free)分離時に前記磁石ユニットを移動させて、前記リングの半径方向に関する中心位置を、前記試料分析用基板の回転中心から最も離れた前記チャンバー内の位置に一致させる、項目1から5のいずれかに記載の試料分析装置。
[項目7]
前記アクチュエータは、前記試料分析用基板の回転軸に平行な方向に沿って前記磁石ユニットを移動させる、項目1から6のいずれかに記載の試料分析装置。
[項目8]
前記アクチュエータは、前記試料分析用基板の回転軸に垂直な方向に沿って前記磁石ユニットを移動させる、項目1から6のいずれかに記載の試料分析装置。
[項目9]
前記アクチュエータは、前記試料分析用基板の回転軸に平行な方向から見て、前記磁石ユニットと前記試料分析用基板とが重ならない位置まで前記磁石ユニットを移動させる、項目8に記載の試料分析装置。
[項目10]
前記磁石ユニットは、前記試料分析用基板に関して前記ターンテーブルと反対側に位置する、項目1から9のいずれかに記載の試料分析装置。
[項目11]
前記磁石ユニットは、前記試料分析用基板に関して前記ターンテーブルと同じ側に位置する、項目1から9のいずれかに記載の試料分析装置。
[項目12]
前記磁石ユニットを第1磁石ユニットとし、前記アクチュエータを第1アクチュエータとするとき、
前記第1磁石ユニットとは異なる第2磁石ユニットと、
前記第2磁石ユニットを前記試料分析用基板の回転軸に垂直な方向に沿って移動させて、前記第2磁石ユニットと前記試料分析用基板との相対位置を変化させる第2アクチュエータと
をさらに備える、項目1から11のいずれかに記載の試料分析装置。
[項目13]
前記第2磁石ユニットは、円またはリングの一部または全部の形状を有する単一の磁石、または、前記形状に沿って配置された複数の磁石を含む、項目12に記載の試料分析装置。
[項目14]
前記アクチュエータはステッピングモータまたはリニアモータである、項目1から13のいずれかに記載の試料分析装置。
[項目15]
前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータは、ステッピングモータまたはリニアモータである、項目12または13に記載の試料分析装置。
[項目16]
前記第1磁石ユニットは、前記試料分析用基板に関して前記ターンテーブルと反対側に位置し、
前記第2磁石ユニットは、前記試料分析用基板に関して前記ターンテーブルと同じ側に位置する、項目12から15のいずれかに記載の試料分析装置。
以下、本開示の例示的な実施形態にかかる試料分析装置を説明する。
図2Aおよび図2Bは、本開示の例示的な実施形態にかかる試料分析装置1の外観の一例を示す斜視図である。また、図3は、試料分析装置1のハードウェア構成例を示すブロック図である。
試料分析装置1は、液体試料を保持した試料分析用基板100を回転させ停止させて、液体試料中のアナライトと磁性粒子の表面に固定化されたリガンドとの結合反応を生じさせる。
試料分析装置1は、開閉可能なドア3を有する筐体2を備える。筐体2は、試料分析用基板100を回転可能に収納する収納室2aを有し、収納室2a内に、ターンテーブル10を有するモータ12が配置されている。ドア3を開けた状態で収納室2a内のターンテーブル10に試料分析用基板100を着脱可能である。ドア3を閉じることにより、ドア3は収納室2aに外部から光が入射しないように、収納室2aを遮光する。筐体2には分析結果を表示する表示装置5が設けられている。
以下では、まず試料分析用基板100の構成を説明する。本実施形態では、試料分析用基板100を用いて分析される対象は血液であるとする。試料分析用基板100もまた、血液の分析に好適なチャンバーおよび試薬を有している。なお、本実施形態における試料分析用基板100は磁石およびバランサーを有していない。磁石は試料分析装置1側に設けられている。
図4Aおよび図4Bは、試料分析用基板100の平面図および分解斜視図である。試料分析用基板100は、遮光キャップ101と、回転軸102および回転軸102に平行な方向に所定の厚さを有する板形状の基板103とを備える。本実施形態では、試料分析用基板100の基板103は円形形状を有しているが、多角形形状、楕円形形状、扇形形状等を有していてもよい。基板103は、2つの主面103c、103dを有している。本実施形態では、主面103cおよび主面103dは互いに平行であり、主面103cおよび主面103dの間隔で規定される基板103の厚さは、基板103のどの位置でも同じである。しかし、主面103c、103dは、平行でなくてもよい。例えば、2つの主面の一部分が非平行または平行であってもよいし、全体的に非平行であってもよい。また、基板103の主面103c、103dの少なくとも一方に凹部または凸部を有する構造を備えていてもよい。
遮光キャップ101は、一対の遮光部101aと連結部101bとを含み、遮光部101aが基板103の主面103c、103dの一部を覆うように基板103に取り付けられている。本実施形態では、遮光部101aは略扇形の形状を有している。遮光部101aは、複合体310から生じる発光を透過しない材料によって形成されている。遮光部101aは、基板103の主面103c、103dのうち、光検出器30の受光面30aに対向する位置に設けられていることが好ましい。光検出器30は、測定チャンバー116における試料の発光を検出する際に用いられ、受光面30aは光を受ける領域である。また、主面103cまたは主面103dにおける、遮光部101aが位置する領域の中心角αは、測定チャンバー116が位置する領域の中心角βよりも大きいことが好ましい。
試料分析用基板100の基板103は、ベース基板103aとカバー基板103bとによって構成されている。
試料分析用基板100は、基板100内に位置する複数のチャンバーおよび、各チャンバー間を接続する流路を有する。複数のチャンバーは、例えば反応チャンバー、測定チャンバー、基質保持チャンバー、回収チャンバーである。
複数のチャンバーの各々の空間はベース基板103a内に形成され、カバー基板103bでベース基板103aを覆うことにより、それぞれの空間の上部および下部が形成される。つまり、複数のチャンバーの各々の空間は試料分析用基板100の少なくとも1つの内面によって規定されている。流路もベース基板103aに形成されており、カバー基板103bでベース基板103aを覆うことにより、流路の空間の上部および下部が形成される。このように、各チャンバーおよび流路は基板103に閉じ込められている。
図5は、試料分析用基板100に設けられた複数のチャンバーの位置を示す上面図である。試料分析用基板100は、例えば、点着チャンバー110、血漿定量チャンバー112、反応チャンバー114、測定チャンバー116、基質保持チャンバー118、回収チャンバー120を有している。図5にも、光検出器30の受光面30aの位置が示されている。
図6は、試料分析用基板100に予め保持されている洗浄液130、基質液132、一次抗体134および二次抗体136の位置を示す上面図である。一次抗体134は磁性粒子固定化抗体305である。二次抗体136は標識抗体308である。磁性粒子固定化抗体305および標識抗体308は乾燥された状態で反応チャンバー114に担持されている。これらは「ドライ化試薬」とも呼ばれ得る。
図7は、検体である血液190が点着された点着チャンバー110を示している。点着時、使用者は支点103を中心に遮光キャップ101を時計回りに回転させ、点着部192を露出させる。使用者は、例えば注射筒194を用いて血液を点着部から点着させる。
血液190は、試料分析装置1による試料分析用基板100の高速回転によって遠心分離される。遠心分離された血漿は、試料分析装置1による試料分析用基板100の回転、揺動および回転の停止により、図5に示す血漿定量チャンバー112から流路を通って移送され、反応チャンバー114に到達する。血漿は、抗原306を含む試料溶液である。反応チャンバー114では当該試料溶液によってドライ化試薬が溶解されて抗原抗体反応(免疫反応)が生じる。それにより複合体310が形成される。
背景技術欄で説明したように、抗原抗体反応が生じると、反応物と未反応物とを分離するB/F分離の工程が必要である。ここで言う「反応物」は複合体であり、「未反応物」は例えば、検体中の未反応物、当該複合体の形成に関与しなかった標識物質である。
本開示による一実施形態では、磁石は試料分析装置1に設けられており、試料分析用基板100には磁石およびバランサーは不要である。試料分析装置1は磁石を試料分析用基板100に近付くよう制御して磁性粒子を捕捉し、未反応物を除去する。
再び図3を参照し、試料分析装置1のハードウェア構成を説明する。
試料分析装置1は、開閉検出スイッチ4と、表示装置5と、モータ12と、駆動回路14および20と、磁石ユニット16と、アクチュエータ18と、制御回路22と、光検出器30と、エンコーダ34と、通信回路36とを有している。
開閉検出スイッチ4は、例えば、ドア3の開閉を検出するモーメンタリスイッチであるが、他の任意のスイッチを採用し得る。
モータ12は、装填された試料分析用基板100を支持するターンテーブル10を有し、試料分析用基板100を回転軸102の周りに回転させる。回転軸102は重力方向に対して0°以上90°以下の角度で重力方向から傾いていてもよい。モータ12は、例えば、試料分析用基板100を100rpmから8000rpmの範囲で回転させることができる。回転速度は各チャンバーおよび流路の形状、液体の物性、液体の移送や処理のタイミング等に応じて決定される。モータ12は例えば、直流モータ、ブラシレスモータ、超音波モータ等であってよい。
駆動回路14はモータ12の回転および停止を制御する。具体的には、駆動回路14は、制御回路22からの指令に基づき、試料分析用基板100を時計回りまたは反時計回りに回転させ、揺動させ、回転および揺動の停止を制御する。
磁石ユニット16は1つまたは複数の磁石を有しており、当該1つまたは複数の磁石により、磁性粒子を吸引する力(磁力)を発生させる。磁石ユニット16は、「円またはリング」の「一部または全部」の形状を有している。「円またはリング」の「一部または全部」の形状は、1つの磁石の形状により、または、複数の磁石の配置により実現される。磁石ユニット16の具体的な構成は後述する。磁石ユニット16には、歯が設けられたラック44が取り付けられている。
アクチュエータ18は、ラック44を長手方向に移動させることにより磁石ユニット16を移動させ、磁石ユニット16と試料分析用基板100との相対位置を変化させる。アクチュエータ18の動作は駆動回路20によって制御される。アクチュエータ18の一例は、回転運動を行う電動モータである。アクチュエータ18は、例えば、ステッピングモータ、リニアモータである。アクチュエータ18に関する構成および動作の詳細は後に図11および図12等を参照しながら説明する。
制御回路22は、モータ12、アクチュエータ18、および、駆動回路14および20の動作を制御する。
光検出器30は、試料分析用基板100の測定チャンバー116(図5)に保持された複合体310(図1)に結合した標識抗体308の標識物質307から生じる発光を検出する。ここで発光とは、蛍光、りん光等の発光原理は問わず、光子が放出されることをいう。つまり、光検出器30は、標識物質307から生じて受光面30aに入射した、発光の光子数を測定する。
光検出器30の受光面30aは、試料分析用基板100をターンテーブル10に取り付けた状態で、測定チャンバー116が位置する同心円の下方、すなわち、試料分析用基板100に関してターンテーブル10と同じ側に配置される。
光検出器30は、例えば、レンズシャッターおよび光子カウンタ(いずれも図示せず)を有する光電子増倍管である。レンズシャッターは、光検出器30の受光面30aと、試料分析用基板100との間に設けられて、受光面30aの開閉を制御する。シャッターを開いた状態では、回転する試料分析用基板100の測定チャンバー116に保持された複合体310から生じる発光が受光面30aに入射する。また、シャッターが閉じた状態では、発光を遮断する。シャッターは、機械的構造を備えていてもよいし、液晶シャッター等であってもよい。光電子増倍管は、受光面30aにおいて標識物質307から生じる発光の光子を受け取って光子の数に応じた数のパルスをカウントし、カウント数を出力する。
制御回路22は、光子のカウント数を、試料分析用基板100の回転角度と関連付けて光子カウント分布信号を生成する。
エンコーダ34は、モータ12の回転軸に取り付けられ、モータ12の回転角度を検出する、いわゆるロータリーエンコーダである。ターンテーブル10に試料分析用基板100を取り付けると、試料分析用基板100が回転軸102周りに回転するので、エンコーダ34の出力は、試料分析用基板100の回転角度を検出し、回転角度信号として利用できる。回転角度信号は、例えば、所定の角度ごとに出力されるパルスを含むパルス信号である。モータ12がブラシレスモータである場合には、エンコーダ34に代えて、ブラシレスモータに備えられているホール素子およびホール素子の出力信号を受け取り、回転軸201aの角度を示す回転角度信号を出力する検出回路を採用し得る。制御回路22は、回転角度信号を利用して光子カウント分布信号を生成し、光子カウント分布信号を利用して測定チャンバー116からの光子数を測定することができる。
表示装置5は、光子の測定値を表示する。表示装置5は、液晶表示パネル、有機ELパネルなどの表示パネルであり、制御回路22から出力される、光子の測定値および/または測定値に基づく情報、過去の測定値を表示する。なお表示装置5は、他の情報、例えば試料分析装置1の操作方法、操作のための入力を促す情報等を表示する。
光子の測定値は、通信回路36を介して試料分析装置1の外部に送信されてもよい。通信回路36は、例えばイーサネット(登録商標)規格による有線通信を行う回路、または例えばWi-Fi(登録商標)規格による無線通信を行う回路であり得る。
制御回路22は、内部のメモリ22aに記憶されたコンピュータプログラムを実行することにより、上述の試料分析装置1の動作を実現するとともに、駆動回路20を制御して、後述する磁石ユニット16と試料分析用基板100との相対位置を変化させる。
コンピュータプログラムが読み込まれたメモリ22a、例えば、コンピュータプログラムを格納するRAMは、揮発性であってもよいし、不揮発性であってもよい。揮発性RAMは、電力を供給しなければ記憶している情報を保持できないRAMである。たとえば、ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(DRAM)は、典型的な揮発性RAMである。不揮発性RAMは、電力を供給しなくても情報を保持できるRAMである。たとえば、磁気抵抗RAM(MRAM)、抵抗変化型メモリ(ReRAM)、強誘電体メモリ(FeRAM)は、不揮発性RAMの例である。揮発性RAMおよび不揮発性RAMはいずれも、一時的でない(non-transitory)、コンピュータ読み取り可能な記録媒体の例である。また、ハードディスクのような磁気記録媒体や、光ディスクのような光学的記録媒体も一時的でない、コンピュータ読み取り可能な記録媒体の例である。すなわち本開示にかかるコンピュータプログラムは、コンピュータプログラムを電波信号として伝搬させる、大気などの媒体(一時的な媒体)以外の、一時的でない種々のコンピュータ読み取り可能な媒体に記録され得る。
次に、磁石ユニット16の構成、および、磁石ユニット16と試料分析用基板100との相対位置を変化させるための試料分析装置1の動作を説明する。
図8は、磁石ユニット16の分解斜視図である。また図9は磁石ユニット16の平面図である。図8および図9に示されるように、磁石ユニット16は磁石40およびケース42を有している。ケース42は磁石40を収容し、ケース42内で固定している。
磁石40は、例えば、磁気粒子を用いた競合法による免疫測定法に一般的に用いられる磁石である。具体的には、磁石40としてフェライト磁石、ネオジム磁石等を用いることができる。特に、ネオジム磁石は磁力が強いため、磁石40として好適である。
図8および図9では磁石40は半円のリング形状を有しているが、これは一例である。他の形状を採用してもよい。図10A~図10Dは、本実施形態において採用することが可能な磁石40の形状の例を示している。図10Aは先に説明した半円のリング形状の磁石40aを示している。図10Bは、円形の中央部分に開口を有するリング形状の磁石40bを示している。図10Cは、扇形形状の磁石40cを示している。図10Dは、円形状の磁石40dを示している。ケース42の形状は、採用する磁石40a~40dのいずれかの形状に適合させればよい。
図10A~図10Dは、1つの磁石に関する形状の例であったが、複数の磁石を利用してもよい。図10E~図10Hは、複数の磁石を用いて、図10A~図10Dに示す磁石40a~40dと同等の形状を実現した例を示している。図10Eは半円のリング形状に配置された複数の磁石群40eを示している。図10Fは、円形の中央部分に開口を有するリング形状に配置された磁石群40fを示している。図10Gは、扇形形状に配置された磁石群40gを示している。図10Hは、円形状に配置された磁石群40hを示している。ケース42の形状は、採用する磁石群40e~40hのいずれかの形状に適合させればよい。
図10A~図10Hでは、磁石は1個であり、または複数の磁石群が1つにまとめられているが、複数の磁石が互いに離れていてもよい。その場合、例えば半円のリング形状と扇形とを組み合わせることもできる。図10A~図10Hの例では、リング形状(半円または円)、扇形形状および円形状のいずれも、真円に基づいた形状である必要はなく、楕円に基づいた形状であってもよい。本実施形態では、磁石または磁石群は、円または楕円の中心角の和が90度以上360度以下の円またはリングの一部または全部の形状を有していればよい。
次に、磁石ユニット16を駆動させる機構および動作の詳細を説明する。当該機構は試料分析装置1の筐体2内に設けられている。以下では必要な構成要素の図示および説明にとどめ、例えば、筐体2およびドア3等の、特に必要でない構成要素の図示および説明は省略する。
図11および図12は、円形の試料分析用基板100の上方に移動された半円のリング形状の磁石ユニット16と、磁石ユニット16の移動機構の構成を示す平面図および側面図である。まず磁石ユニット16の移動機構を説明する。なお、上述のとおり、磁石ユニット16に利用される磁石の個数および形状は任意である。
本実施形態では、磁石ユニット16は、試料分析用基板100に関してターンテーブル10とは反対側に位置する。ただし、磁石ユニット16を、試料分析用基板100に関してターンテーブル10とは同じ側に配置してもよい。
磁石ユニット16は、アクチュエータ18によって駆動される。アクチュエータ18が回転運動を行う電動モータであるとする。当該電動モータの回転軸にはピニオンギア18aが取り付けられており、ラック44と噛み合っている。駆動回路20は、制御回路22からの指令に基づき、アクチュエータ18を時計回りまたは反時計回りに回転させ、または回転を停止させる。アクチュエータ18が時計回りに回転し、または反時計回りに回転することにより、ピニオンギア18aがラック44を図面の下方向または上方向に送り出す。すると、ラック44に取り付けられた磁石ユニット16が試料分析用基板100に近付き、または試料分析用基板100から遠ざかる。
アクチュエータ18は、試料分析用基板100の回転軸102に垂直な方向、換言すれば試料分析用基板100の円形の表面に平行な方向、に沿って磁石ユニット16を移動させる。磁石ユニット16の移動を実現するために、図11には、1対のガイド50が設けられている。例えば、ガイド50は略「コ」の字形状の断面を有し、溝部分で磁石ユニット16の上面および下面を挟みこむ。それにより、試料分析用基板100の移動はガイド50の長手方向のみに規制される。
チャンバー内の反応物と未反応物とを分離するB/F分離時には、アクチュエータ18は、測定チャンバー116内の磁性粒子が磁石ユニット16に吸引される位置に磁石ユニットを移動させる。具体的には、アクチュエータ18は、図11および図12に示される位置まで磁石ユニット16を移動させ、当該位置で固定する。
反応チャンバー114内で抗原抗体反応に関与しなかった未反応物はその後、反応物とともに測定チャンバー116に移送される。B/F分離は、測定チャンバー116に存在する未反応物(非磁性成分)を除去するために行われるため、磁石ユニット16の磁石の磁力が測定チャンバー116に存在する磁性粒子を効果的に吸引することを要する。そのため、磁石ユニット16のリングの半径の大きさは、当該位置に固定されたときの試料分析用基板100の測定チャンバー116の位置に応じて決定されている。すなわち、磁石ユニット16のリングの半径の大きさは、試料分析用基板100の回転軸102(回転中心)から測定チャンバー116までの距離に応じて決定されている。
より具体的には、磁石ユニット16のリングの半径方向に関する中心位置を、試料分析用基板100の回転中心から最も離れた測定チャンバー116内の位置に一致させる。図11には、破線で示す2つの円が記載されている。内側の円は、磁石ユニット16の最内周に沿っており、半径方向に関して測定チャンバー116の概ね中心位置を通過している。一方、外側の円は、磁石ユニット16のリングの半径方向に関する中心位置に沿っており、半径方向に関して測定チャンバー116の最も外側の位置を通過している。
図13は、試料分析用基板100を約180度回転させた後の、磁石ユニット16の位置と測定チャンバー116の位置との関係を示している。図13には、図11における外側の円(破線)のみが示されている。また図14は、図13におけるA-A断面図である。説明の便宜のため、図14は測定チャンバー116周辺の断面を拡大して示している。
特に図14から明らかなように、磁石ユニット16のリングの半径方向に関する中心位置Lが、回転中心から最も離れた測定チャンバー116内の位置116aに一致していることが理解される。磁性粒子142は、試料分析用基板100の半径方向に関しては、試料分析用基板100の回転中は遠心力の作用により、回転中心から最も離れた測定チャンバー116内の位置116a側に集まる。磁性粒子142は、複合体310に含まれる磁性粒子302、一次抗体304が表面に固定化された磁性粒子302である。なお、後者は、一次抗体304と抗原306との抗原抗体反応が生じた磁性粒子302と、生じていない磁性粒子302とを含む。
一方、試料分析用基板100の回転軸方向に関しては、磁性粒子142は、磁石ユニット16の磁石40の吸引力により、測定チャンバー116内の位置116b側に張り付く。つまり、磁性粒子142を効果的に吸引することができる。この状態で試料分析用基板100を適切に回転させることにより、磁性粒子142を測定チャンバー116に残しながら、反応液を測定チャンバー116から他のチャンバーへ移送することが可能になる。この後も、磁性粒子142を磁力で吸引した状態で、例えば洗浄液/基質液を測定チャンバー116に移送し、排出してもよい。
また、図13に示されるように、磁石ユニット16の周方向の長さは測定チャンバー116の周方向の長さよりも長い。これにより、測定チャンバー116内の磁性粒子全体に吸引力を印加できる。
図15および図16は、試料分析用基板100の上方から退避した位置に移動された磁石ユニット16と、磁石ユニット16の移動機構の構成を示す平面図および側面図である。
アクチュエータ18は、試料分析用基板100の回転軸に平行な方向から見て、磁石ユニット16と試料分析用基板100とが重ならない位置まで磁石ユニット16を移動させる。
具体的には、磁石ユニット16が図13に示す状態において、駆動回路20は、制御回路22からの指令に基づき、アクチュエータ18を反時計回りに回転させる。アクチュエータ18が反時計回りに回転することにより、ピニオンギア18aがラック44を図面の上方向に送り出す。すると、ラック44に取り付けられた磁石ユニット16が試料分析用基板100の円形の表面に平行な方向に沿って移動し、試料分析用基板100から遠ざかる。
図17は、図15におけるB-B断面図である。説明の便宜のため、図17は測定チャンバー116周辺の断面を拡大して示している。
図17から明らかなように、磁石ユニット16が試料分析用基板100から離れることにより、磁石ユニット16の磁石40の磁力が弱まる。その結果、磁性粒子142が磁石40の吸引力から解放され、磁性粒子142は回転中心から最も離れた測定チャンバー116内の位置116a側に広がる。B/F分離により、捕捉されなかった不純物を含む非磁性成分が除去されて反応生成物の洗浄効果が高まり、より高精度な分析結果が得られる。
このように、磁石ユニット16を移動させて磁石ユニット16と試料分析用基板100との相対位置を変化させることにより、磁性粒子を効果的に吸引させ、未反応物を含む反応液を測定チャンバー116から移送し、他のチャンバーにおいて未反応物を除去することができる。
図18は、B/F分離処理時の制御回路22の処理の手順を示すフローチャートである。制御回路22は、当該フローチャートに記載された処理を実行するための命令群を含むコンピュータプログラムを実行する。
ステップS10において、制御回路22は、駆動回路14を介してモータ12の動作を制御して、試料分析用基板100の回転/揺動/停止を実行する。これにより、制御回路22は、反応チャンバー114内で抗原抗体反応を生じさせ、未反応物を含む反応液を測定チャンバー116に移送する。
ステップS12において、制御回路22は、駆動回路20を介してアクチュエータ18の動作を制御し、磁石ユニット16を移動させて磁石ユニット16を試料分析用基板100に近付ける。
ステップS14において、制御回路22は、磁石ユニット16が、磁性粒子を吸引し得る位置に到達したか否かを判定する。具体的には制御回路22は、図14に示すように、磁石ユニット16のリングの半径方向に関する中心位置Lと、回転中心から最も離れた測定チャンバー116内の位置116aとが一致したか否かを判定する。
判定にあたっては、制御回路22は、磁石ユニット16の位置を検出するセンサ(図示せず)の出力を利用することができる。あるいはアクチュエータ18がステッピングモータである場合には、アクチュエータ18に送信された駆動パルスの数により、磁石ユニット16の位置を判定してもよい。ステッピングモータの駆動量は、与えられた駆動パルスの数に比例する。つまり、アクチュエータ18に送信された駆動パルスの数によって磁石ユニット16の移動量を判定できる。試料分析用基板100が装填された直後の磁石ユニット16の位置(固定位置)を基準とする。基準位置にある磁石ユニット16の中心位置L(図14)が測定チャンバー116内の位置116a(図14)に一致するまでにN個の駆動パルスが必要であるとする。このとき制御回路22は、アクチュエータ18に送信された駆動パルスの数がN個になったか否かを判定することにより、ステップS14の判定を行ってもよい。
ステップS14で磁石ユニット16が磁性粒子を吸引し得る位置に到達した場合には処理はステップS16に進み、到達していなければステップS12に戻る。
ステップS16において、制御回路22は、磁石ユニット16の移動を停止し、B/F分離のために試料分析用基板100の回転/揺動/停止を実行する。この動作により、磁石ユニット16の磁力によって捕捉された磁性粒子を含む磁性成分と、捕捉されなかった不純物を含む非磁性成分とを分離することができる。
ステップS18において、制御回路22は、所定の磁石退避条件を満たすか否かを判定する。「所定の磁石退避条件」とは、例えば洗浄液/基質液を測定チャンバー116に移送し、排出する動作を所定回数完了したこと(B/F分離が完了したこと)、試料の分析中に開閉検出スイッチ4がドア3のオープンを検出したこと、等である。制御回路22は、所定の磁石退避条件が満たされるまではステップS18の判定を継続し、満たされたと判定すると、処理はステップS20に進む。
ステップS20において、制御回路22は、磁石ユニット16を移動させて磁石ユニット16を試料分析用基板100から遠ざける。
以上により、B/F分離処理が終了する。
次に、試料分析装置1の変形例を説明する。図3では、試料分析装置1は1つの磁石ユニット16を移動させて、磁性粒子を含む複合体310または未反応の磁性粒子と、磁性粒子以外の未反応の物質とを分離した。変形例にかかる試料分析装置1は、複数の磁石ユニットを有し、複数の磁石ユニットの各々を駆動するための移動機構を有している。
図19および図20は、半円のリング形状の磁石ユニット16および56と、磁石ユニット16および56をそれぞれ移動させる移動機構の構成を示す平面図および側面図である。磁石ユニット16および磁石ユニット16を駆動するアクチュエータ18の関係は先に説明したとおりであるから説明は省略する。
図19に示す例では、磁石ユニット56の形状は磁石ユニット16の形状と同じである。しかしながら、磁石ユニット16と同様、磁石ユニット56もまた、図10A~図10Hに示すような、円またはリングの一部または全部の形状を有する単一の磁石、または、当該形状に沿って配置された複数の磁石を含んでいてもよい。
図20から理解されるように、磁石ユニット56は、試料分析用基板100に関してターンテーブル10と同じ側に位置する。磁石ユニット16は、アクチュエータ58によって駆動される。本変形例では、アクチュエータ58は回転運動を行う電動モータである。アクチュエータ58は、例えば、ステッピングモータ、リニアモータである。アクチュエータ58を駆動するための駆動回路(図示せず)も別途設けられており、制御回路22によって制御される。
アクチュエータ58の回転軸にはピニオンギア58a(図19)が取り付けられており、ラック84と噛み合っている。駆動回路は、制御回路22からの指令に基づき、アクチュエータ58を時計回りまたは反時計回りに回転させ、または回転を停止させる。アクチュエータ58が時計回りに回転し、または反時計回りに回転することにより、ピニオンギア58aがラック84を図面の上方向または下方向に送り出す。すると、ラック84に取り付けられた磁石ユニット56が試料分析用基板100に近付き、または試料分析用基板100から遠ざかる。図21は、試料分析用基板100から遠ざかった磁石ユニット56を示している。
アクチュエータ58は、試料分析用基板100の回転軸102に垂直な方向、または試料分析用基板100の円形の表面に平行な方向、に沿って磁石ユニット56を移動させる。磁石ユニット56の移動を実現するために、図21には、1対のガイド90が設けられている。例えば、ガイド90もまた略「コ」の字形状の断面を有し、溝部分で磁石ユニット56の上面および下面を挟みこむ。それにより、試料分析用基板100の移動はガイド90の長手方向のみに規制される。
本変形例によれば、試料分析用基板100の一方の側について、磁石ユニット16を近付けたり遠ざけたりすることに加え、試料分析用基板100の他方の側についても磁石ユニット56を近付けたり遠ざけたりすることが可能である。これにより、磁性粒子を試料分析用基板100の所望する側に吸着させておくこともできる。
図22は、磁石ユニット16の移動方向に関する変形例を説明するための側面図である。本変形例では、磁石ユニット16は試料分析用基板100の回転軸102に平行な方向に駆動することにより、磁石ユニット16と試料分析用基板100との相対位置を変化させる。そのため、アクチュエータ18およびラック44が取り付けられる向きが図12の構成例とは異なる。向き以外は図12の構成例と同じである。よってこれ以上の説明は省略する。
図22の例では磁石ユニット16は1つである。しかしながら、図19~図21を参照しながら説明した磁石ユニット56のような別の磁石ユニットおよびアクチュエータを設け、回転軸102に平行な方向に移動させてもよい。
上述の実施形態およびその変形例の説明では、各磁石ユニットを駆動させるため、ピニオンギアとラックとを利用する態様を挙げた。しかしながら当該態様は一例に過ぎず、他の機構を用いることも可能である。例えば、磁石ユニットとモータとを機械的に接続し、モータの回転位置に応じて磁石ユニットの位置を変化させて、試料分析用基板100からの退避と試料分析用基板100への接近を実現してもよい。磁石ユニットを移動させる構造を包括的に「磁石移動機構」と呼んでもよい。
本開示による試料分析装置は、B/F分離処理に好適に利用され得る。
1:試料分析装置、2:筐体、10:ターンテーブル、12:モータ、14:駆動回路、16:磁石ユニット、18:アクチュエータ、20:駆動回路、22:制御回路、30:光検出器、40、40a~40d:磁石、40e~40h:磁石群、42:ケース、56:磁石ユニット、58:アクチュエータ、100:試料分析用基板、114:反応チャンバー、116:測定チャンバー、142:磁性粒子

Claims (16)

  1. 液体試料を保持した試料分析用基板を回転させ停止させて、前記液体試料中のアナライトと磁性粒子の表面に固定化されたリガンドとの結合反応を生じさせる試料分析装置であって、
    前記試料分析用基板は、前記試料分析装置への装填および前記試料分析装置からの取り外しが可能であり、所定の厚さを有する板状のベース基板と、前記ベース基板内の、前記結合反応を生じさせる空間であるチャンバーとを有しており、
    装填された前記試料分析用基板を支持するターンテーブルと、
    前記ターンテーブルを回転させるモータと、
    前記モータの回転および停止を制御する駆動回路と、
    前記磁性粒子を吸引する力を発生させる磁石ユニットと、
    前記磁石ユニットを移動させて前記磁石ユニットと前記試料分析用基板との相対位置を変化させるアクチュエータと、
    前記モータ、前記駆動回路、および前記アクチュエータの動作を制御する制御回路と
    を備え、前記磁石ユニットは、円またはリングの一部または全部の形状を有しており、
    前記チャンバー内の反応物と未反応物とを分離するB/F分離(Bound/Free Separation)時に、前記アクチュエータは、前記チャンバー内の前記磁性粒子が前記磁石ユニットに吸引される位置に前記磁石ユニットを移動させる、試料分析装置。
  2. 前記磁石ユニットは、前記形状を有する単一の磁石、または、前記形状に沿って配置された複数の磁石を含む、請求項1に記載の試料分析装置。
  3. 前記試料分析用基板が円形である場合において、
    前記磁石ユニットは、中心角の和が90度以上360度以下の前記円または前記リングの一部または全部の形状を有している、請求項1または2に記載の試料分析装置。
  4. 前記試料分析用基板が円形であり、かつ、前記磁石ユニットが前記円または前記リングの一部の形状を有している場合において、
    前記磁石ユニットの周方向の長さは前記チャンバーの周方向の長さよりも長い、請求項1から3のいずれかに記載の試料分析装置。
  5. 前記試料分析用基板が円形である場合において、
    前記円または前記リングの半径の大きさは、前記試料分析用基板の回転中心から前記チャンバーまでの距離に応じて決定される、請求項1から4のいずれかに記載の試料分析装置。
  6. 前記磁石ユニットが前記リングの一部または全部の形状を有している場合において、
    前記アクチュエータは、前記B/F(Bound/Free)分離時に前記磁石ユニットを移動させて、前記リングの半径方向に関する中心位置を、前記試料分析用基板の回転中心から最も離れた前記チャンバー内の位置に一致させる、請求項1から5のいずれかに記載の試料分析装置。
  7. 前記アクチュエータは、前記試料分析用基板の回転軸に平行な方向に沿って前記磁石ユニットを移動させる、請求項1から6のいずれかに記載の試料分析装置。
  8. 前記アクチュエータは、前記試料分析用基板の回転軸に垂直な方向に沿って前記磁石ユニットを移動させる、請求項1から6のいずれかに記載の試料分析装置。
  9. 前記アクチュエータは、前記試料分析用基板の回転軸に平行な方向から見て、前記磁石ユニットと前記試料分析用基板とが重ならない位置まで前記磁石ユニットを移動させる、請求項8に記載の試料分析装置。
  10. 前記磁石ユニットは、前記試料分析用基板に関して前記ターンテーブルと反対側に位置する、請求項1から9のいずれかに記載の試料分析装置。
  11. 前記磁石ユニットは、前記試料分析用基板に関して前記ターンテーブルと同じ側に位置する、請求項1から9のいずれかに記載の試料分析装置。
  12. 前記磁石ユニットを第1磁石ユニットとし、前記アクチュエータを第1アクチュエータとするとき、
    前記第1磁石ユニットとは異なる第2磁石ユニットと、
    前記第2磁石ユニットを前記試料分析用基板の回転軸に垂直な方向に沿って移動させて、前記第2磁石ユニットと前記試料分析用基板との相対位置を変化させる第2アクチュエータと
    をさらに備える、請求項1から11のいずれかに記載の試料分析装置。
  13. 前記第2磁石ユニットは、円またはリングの一部または全部の形状を有する単一の磁石、または、前記形状に沿って配置された複数の磁石を含む、請求項12に記載の試料分析装置。
  14. 前記アクチュエータはステッピングモータまたはリニアモータである、請求項1から13のいずれかに記載の試料分析装置。
  15. 前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータは、ステッピングモータまたはリニアモータである、請求項12または13に記載の試料分析装置。
  16. 前記第1磁石ユニットは、前記試料分析用基板に関して前記ターンテーブルと反対側に位置し、
    前記第2磁石ユニットは、前記試料分析用基板に関して前記ターンテーブルと同じ側に位置する、請求項12から15のいずれかに記載の試料分析装置。
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