JP2023159756A - コークス炉用プレキャスト耐火ブロックの設置方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】吊り具で吊り上げたプレキャスト耐火ブロックを所定の設置位置に正確に位置決めして設置することのできるコークス炉用プレキャスト耐火ブロックの設置方法を提供する。【解決手段】コークス炉の炉長方向の一側に設置されているバックステー6aの炉内側側面6a-1に鉛直方向基準線7を引く工程と、コークス炉の炉長方向の他側から鉛直方向基準線に重なるようにレーザー光8を当てる工程と、第1プレキャスト耐火ブロック10Aの上面10A-1に炉長方向ケガキ線11を引くと共に、第1プレキャスト耐火ブロック10Aの他側側面10A-2に炉長方向ケガキ線11と連続するように炉高方向ケガキ線12を引く工程と、レーザー光8が炉長方向ケガキ線11及び炉高方向ケガキ線12に重なるように第1プレキャスト耐火ブロック10Aを設置する工程とを含む、コークス炉用プレキャスト耐火ブロックの設置方法。【選択図】図5A
Description
本発明は、コークス炉用プレキャスト耐火ブロックの設置方法に関する。
室炉式コークス炉とも呼ばれるコークス炉においては、炭化室と燃焼室とが炉幅方向に交互に配置され、炭化室と燃焼室の上部には炉頂部、下部には蓄熱室が配列されている。燃焼室と蓄熱室との間の部分は蛇腹部ともいわれる。蓄熱室の下部にはソールフリューが配置されている。通常、炭化室の寸法は、炉高4~7.5m余、炉幅350~550mm、炉長13~17m程度である。燃焼室は炉長方向に配列された燃焼室フリュー列からなる。炭化室と燃焼室との隔壁及び燃焼室フリュー同士の隔壁、炉頂部、蛇腹部、蓄熱室、ソールフリューは、いずれも耐火物構造物として形成される。
これらコークス炉における耐火物構造物は、高温領域で機械的強度が大きく、かつ体積変化が少なく、熱伝導性が比較的良好であると共に、材料が安価で大量に入手できる等の理由から、その多くが珪石れんがで構築されている。耐火物として用いる珪石れんがは、原料の珪石を焼成して製造する焼成れんがであり、高さは100~150mm、長さと幅は例えば燃焼室であれば燃焼室フリューの形状から定まり、1個あたりの質量は20kg弱である。れんがとれんがの合わせ面を構成する目地にはモルタルを塗布して耐火物構造物が構築される。例えば、炭化室を50室有するコークス炉においては、珪石れんがを合計で100万個用いて、耐火物構造物が構成されている。
コークス炉の新設時、あるいはコークス炉の老朽化に対応して耐火物構造物全体を更新するに際しては、珪石れんがを、一つ一つ手積みで積み上げて構築する手積み工法が用いられる。手積み工法は、れんが積みの専門職である築炉工によって作業が行われる。
コークス炉は、製鉄所構内に設けられ、当該製鉄所の高炉で使用するコークスを製造している。したがって、既設のコークス炉を老朽更新するに際しては、老朽更新のための休止中には別の手段でコークスを手配することが必要となるので、老朽更新のための休止期間をできるだけ短縮することが要請される。珪石れんがを手積み工法で積み上げる作業はすべて手作業であるため、築炉期間を短縮するためには、膨大な人数の熟練した築炉工によって作業を行う必要がある。しかし、熟練した築炉工の人数には限りがあるため、短期間で築炉を行うために十分な人数の築炉工を確保することが困難となる。
また、手積み工法による築炉作業は、労働集約型作業であることに加え、作業を行う築炉工は上述のように熟練した技能を要求されるため、将来は更に築炉工の確保が困難となることが予想される。
コークス炉は、製鉄所構内に設けられ、当該製鉄所の高炉で使用するコークスを製造している。したがって、既設のコークス炉を老朽更新するに際しては、老朽更新のための休止中には別の手段でコークスを手配することが必要となるので、老朽更新のための休止期間をできるだけ短縮することが要請される。珪石れんがを手積み工法で積み上げる作業はすべて手作業であるため、築炉期間を短縮するためには、膨大な人数の熟練した築炉工によって作業を行う必要がある。しかし、熟練した築炉工の人数には限りがあるため、短期間で築炉を行うために十分な人数の築炉工を確保することが困難となる。
また、手積み工法による築炉作業は、労働集約型作業であることに加え、作業を行う築炉工は上述のように熟練した技能を要求されるため、将来は更に築炉工の確保が困難となることが予想される。
そこで近年、コークス炉を少人数で築炉するために、大型のプレキャスト耐火ブロックを順次設置することによりコークス炉を築炉する方法が採られることがある(例えば特許文献1)。この方法の場合、大型のプレキャスト耐火ブロックを吊り具で吊り上げて所定の設置位置まで移動させ、その設置位置に正確に位置決めして設置する必要がある。具体的な設置精度としては、炉幅方向X、炉長方向Y、炉高方向Zとも±2mm以内の精度が要求される。しかし、吊り具で吊り上げたプレキャスト耐火ブロックを所定の設置位置に正確に位置決めして設置することは困難であった。
本発明が解決しようとする課題は、吊り具で吊り上げたプレキャスト耐火ブロックを所定の設置位置に正確に位置決めして設置することのできるコークス炉用プレキャスト耐火ブロックの設置方法を提供することにある。
上述の課題を解決するために本発明者らは、コークス炉の炉長方向両端の炉外側に設置されているバックステーを、プレキャスト耐火ブロックを設置する際の位置決めの絶対基準とし、更にプレキャスト耐火ブロックにケガキ線を引き、レーザー光を用いて位置決めを行うという発想を得、本発明を想到した。
すなわち、本発明の一観点によれば、次のコークス炉用プレキャスト耐火ブロックの設置方法が提供される。
コークス炉の炉長方向の一側に設置されているバックステーの炉内側側面に鉛直方向基準線を引く工程と、
コークス炉の炉長方向の他側から、前記鉛直方向基準線に重なるようにレーザー光を当てる工程と、
前記バックステーの炉内側側面に隣接して設置する第1プレキャスト耐火ブロックの上面に炉長方向ケガキ線を引くと共に、前記第1プレキャスト耐火ブロックを設置する際にコークス炉の炉長方向の他側と対向する側面である他側側面に前記炉長方向ケガキ線と連続するように炉高方向ケガキ線を引く工程と、
前記レーザー光が前記炉長方向ケガキ線及び前記炉高方向ケガキ線に重なるように前記第1プレキャスト耐火ブロックを設置する工程とを含む、コークス炉用プレキャスト耐火ブロックの設置方法。
コークス炉の炉長方向の一側に設置されているバックステーの炉内側側面に鉛直方向基準線を引く工程と、
コークス炉の炉長方向の他側から、前記鉛直方向基準線に重なるようにレーザー光を当てる工程と、
前記バックステーの炉内側側面に隣接して設置する第1プレキャスト耐火ブロックの上面に炉長方向ケガキ線を引くと共に、前記第1プレキャスト耐火ブロックを設置する際にコークス炉の炉長方向の他側と対向する側面である他側側面に前記炉長方向ケガキ線と連続するように炉高方向ケガキ線を引く工程と、
前記レーザー光が前記炉長方向ケガキ線及び前記炉高方向ケガキ線に重なるように前記第1プレキャスト耐火ブロックを設置する工程とを含む、コークス炉用プレキャスト耐火ブロックの設置方法。
本発明のコークス炉用プレキャスト耐火ブロックの設置方法によれば、吊り具で吊り上げたプレキャスト耐火ブロックを所定の設置位置に正確に位置決めして設置することができる。
図1に、コークス炉の構造を概念的に示している。また、図2A及び図2Bにはコークス炉の擁壁及びバックステーの配列形態を概念的に示している。
コークス炉Aにおいては、炭化室1と燃焼室2とが炉幅方向Xに交互に配置され、炭化室1と燃焼室2の上部には炉頂部3、下部には蓄熱室4が配列されている。そして炉幅方向X両端にコンクリート製の擁壁5が設けられ、両擁壁5,5間の耐火物構造物を保持する機能を果たしている。また、コークス炉Aの炉長方向Y両端の炉外側には、耐火物構造物に炉締力を付与するためのバックステー6a,6bが互いに対向するように設置されている。
コークス炉Aにおいては、炭化室1と燃焼室2とが炉幅方向Xに交互に配置され、炭化室1と燃焼室2の上部には炉頂部3、下部には蓄熱室4が配列されている。そして炉幅方向X両端にコンクリート製の擁壁5が設けられ、両擁壁5,5間の耐火物構造物を保持する機能を果たしている。また、コークス炉Aの炉長方向Y両端の炉外側には、耐火物構造物に炉締力を付与するためのバックステー6a,6bが互いに対向するように設置されている。
このような構造を有するコークス炉Aの築炉を例として、以下、本発明のコークス炉用プレキャスト耐火ブロックの設置方法の実施形態について説明する。
ここで、プレキャスト耐火ブロックとは、粒状の耐火物組成物に水を加えて混練し、型枠に流し込み、乾燥させることで得られる耐火ブロックである。コークス炉用プレキャスト耐火ブロックとしては代表的には溶融シリカ質プレキャスト耐火ブロック、粘土質プレキャストブロックを用いることができる。溶融シリカ質プレキャスト耐火ブロックは、耐火物組成物の原料配合において主原料として溶融シリカを配合して得られるプレキャスト耐火ブロックである。粘土質プレキャスト耐火ブロックは、耐火物組成物の原料配合において主原料としてシャモットを配合して得られるプレキャスト耐火ブロックである。
なお、以下の説明では、「コークス炉用プレキャスト耐火ブロック」のことを単に「プレキャスト耐火ブロック」という。
ここで、プレキャスト耐火ブロックとは、粒状の耐火物組成物に水を加えて混練し、型枠に流し込み、乾燥させることで得られる耐火ブロックである。コークス炉用プレキャスト耐火ブロックとしては代表的には溶融シリカ質プレキャスト耐火ブロック、粘土質プレキャストブロックを用いることができる。溶融シリカ質プレキャスト耐火ブロックは、耐火物組成物の原料配合において主原料として溶融シリカを配合して得られるプレキャスト耐火ブロックである。粘土質プレキャスト耐火ブロックは、耐火物組成物の原料配合において主原料としてシャモットを配合して得られるプレキャスト耐火ブロックである。
なお、以下の説明では、「コークス炉用プレキャスト耐火ブロック」のことを単に「プレキャスト耐火ブロック」という。
本実施形態では、図3Aに示しているように、コークス炉の炉長方向Yの一側に設置されているバックステー6aの炉内側側面6a-1に、鉛直方向に延びる基準線である鉛直方向基準線7を引く。この鉛直方向基準線7は通常、炉内側側面6a-1の中央に引くが、必ずしも炉内側側面6a-1の中央には限定されない。要するに、炉内側側面6a-1に鉛直方向基準線7を引けばよい。また、鉛直方向基準線7の線幅は、上述の±2mm以内という設置精度を考慮すると、2mm以下であることが好ましい。
このように本実施形態では、コークス炉の炉長方向Yの一側に設置されているバックステー6aを、プレキャスト耐火ブロックを設置する際の位置決めの絶対基準とする。バックステー6aは地盤に固定されて動かないから位置決めの絶対基準として好適である。
このように本実施形態では、コークス炉の炉長方向Yの一側に設置されているバックステー6aを、プレキャスト耐火ブロックを設置する際の位置決めの絶対基準とする。バックステー6aは地盤に固定されて動かないから位置決めの絶対基準として好適である。
次に、図3Bに示しているように、コークス炉の炉長方向Yの他側から鉛直方向基準線7に重なるようにレーザー光8を当てる。具体的に本実施形態では、コークス炉の炉長方向Yの他側に設置されているバックステー6bの炉内側側面6b-1に、スリット状のレーザー光8を発振するレーザー発振器9を設置することで、コークス炉の炉長方向Yの他側から鉛直方向基準線7に重なるようにレーザー光8を当てるようにしている。なお、図3Bでは、スリット状のレーザー光8の照射範囲を破線で示している。
スリット状のレーザー光8のスリット幅すなわち線幅は、上述の±2mm以内という設置精度を考慮すると、鉛直方向基準線7の線幅と同様に2mm以下であることが好ましい。また、レーザー光8の種類は特に限定されないが、プレキャスト耐火ブロックの設置に作業者が介在することを前提とするならば可視光とする。一方、プレキャスト耐火ブロックの設置をロボットアームなどにより自動的に行う場合、レーザー光8は可視光でなくてもよい。
このように本実施形態では、コークス炉の炉長方向Yの他側に設置されているバックステー6bにレーザー発振器9を設置して、コークス炉の炉長方向Yの他側から鉛直方向基準線7に重なるようにレーザー光8を当てるようにしている。このレーザー光8は後述するようにプレキャスト耐火ブロックを設置する際の位置決めの基準となる。そのため、レーザー光8の照射範囲は動かないことが望まれる。この点、本実施形態では、上述のバックステー6aと同様に地盤に固定されて動かないバックステー6bにレーザー発振器9を設置しているから、レーザー光8の照射範囲は動かない。このように本発明においてレーザー発振器9のようなレーザー光の発振源は、コークス炉の炉長方向の他側に設置されているバックステーに設置することが好ましい。
スリット状のレーザー光8のスリット幅すなわち線幅は、上述の±2mm以内という設置精度を考慮すると、鉛直方向基準線7の線幅と同様に2mm以下であることが好ましい。また、レーザー光8の種類は特に限定されないが、プレキャスト耐火ブロックの設置に作業者が介在することを前提とするならば可視光とする。一方、プレキャスト耐火ブロックの設置をロボットアームなどにより自動的に行う場合、レーザー光8は可視光でなくてもよい。
このように本実施形態では、コークス炉の炉長方向Yの他側に設置されているバックステー6bにレーザー発振器9を設置して、コークス炉の炉長方向Yの他側から鉛直方向基準線7に重なるようにレーザー光8を当てるようにしている。このレーザー光8は後述するようにプレキャスト耐火ブロックを設置する際の位置決めの基準となる。そのため、レーザー光8の照射範囲は動かないことが望まれる。この点、本実施形態では、上述のバックステー6aと同様に地盤に固定されて動かないバックステー6bにレーザー発振器9を設置しているから、レーザー光8の照射範囲は動かない。このように本発明においてレーザー発振器9のようなレーザー光の発振源は、コークス炉の炉長方向の他側に設置されているバックステーに設置することが好ましい。
続いて、図5A及び図5B並びに図6A及び図6Bに示しているように、バックステー6aの炉内側側面6a-1に隣接して第1プレキャスト耐火ブロック10Aを設置する工程を実施するが、この工程を実施する前に、図4に示しているように、第1プレキャスト耐火ブロックに炉長方向ケガキ線11と炉高方向ケガキ線12を引く工程を実施する。具体的には、バックステー6aの炉内側側面6a-1に隣接して設置する第1プレキャスト耐火ブロック10Aの上面10A-1に炉長方向Yに延びるケガキ線である炉長方向ケガキ線11を引く。また、第1プレキャスト耐火ブロック10Aを設置する際にコークス炉の炉長方向Yの他側と対向する側面である他側側面10A-2に炉長方向ケガキ線11と連続するように炉高方向Zに延びるケガキ線である炉高方向ケガキ線12を引く。なお、図4では炉長方向ケガキ線11と炉高方向ケガキ線12を便宜的に破線で示しているが、実際は実線である。図4以降においても同様である。ただし、炉長方向ケガキ線11と炉高方向ケガキ線12は破線であってもよい。
ここで、炉長方向ケガキ線11及び炉高方向ケガキ線12の線幅は、上述の±2mm以内という設置精度を考慮すると、鉛直方向基準線7の線幅と同様に2mm以下であることが好ましい。
なお、第1プレキャスト耐火ブロック10Aの上面10A-1には、図示を省略している吊り具と連結するための吊り環13が4つ着脱可能に取り付けられている。
ここで、炉長方向ケガキ線11及び炉高方向ケガキ線12の線幅は、上述の±2mm以内という設置精度を考慮すると、鉛直方向基準線7の線幅と同様に2mm以下であることが好ましい。
なお、第1プレキャスト耐火ブロック10Aの上面10A-1には、図示を省略している吊り具と連結するための吊り環13が4つ着脱可能に取り付けられている。
次に、図5A及び図5B並びに図6A及び図6Bに示しているように、バックステー6aの炉内側側面6a-1に隣接して第1プレキャスト耐火ブロック10Aを設置する。具体的には図5A及び図5Bに示すように、レーザー光8が、図示を省略している吊り具で吊り上げた第1プレキャスト耐火ブロック10Aの上面10A-1及び他側側面10A-2に引かれている炉長方向ケガキ線11及び炉高方向ケガキ線12に重なるように、第1プレキャスト耐火ブロック10Aの位置や姿勢を調整し、最終的には図6A及び図6Bに示しているように、第1プレキャスト耐火ブロック10Aをバックステー6aの炉内側側面6a-1に隣接して設置する。
なお、第1プレキャスト耐火ブロック10Aを設置する位置には図5A及び図5Bに表れているように、予めモルタル14を塗布しておく。
なお、第1プレキャスト耐火ブロック10Aを設置する位置には図5A及び図5Bに表れているように、予めモルタル14を塗布しておく。
このようにして第1プレキャスト耐火ブロック10Aを設置した後、図7A及び図7B並びに図8A及び図8Bに示しているように、第1プレキャスト耐火ブロック10Aの他側側面10A-2に隣接して第2プレキャスト耐火ブロック10Bを設置する工程を実施するが、この工程を実施する前に図7A及び図7Bに表れているように、第1プレキャスト耐火ブロック10Aの他側側面10A-2にスペーサー15を取り付ける工程を実施する。スペーサー15は、図9に示しているように逆L字状の形状を有し、上部の水平部である係止部15aを第1プレキャスト耐火ブロック10Aの上面10A-1に係止することで、鉛直方向に延びるスペーサー15の本体部15bが第1プレキャスト耐火ブロック10Aの他側側面10A-2に接するように取り付けられる。なお、本実施形態では図7A及び図7Bに示しているように、第1プレキャスト耐火ブロック10Aの他側側面10A-2に2つのスペーサー15を取り付けるようにしている。
また、第2プレキャスト耐火ブロック10Bを設置する工程を実施する前に、第2プレキャスト耐火ブロック10Bの上面10B-1に炉長方向ケガキ線11を引くと共に、第2プレキャスト耐火ブロック10Bの他側側面10B-2に炉長方向ケガキ線11と連続するように炉高方向ケガキ線12を引く工程を実施する。第2プレキャスト耐火ブロック10Bに引かれた炉長方向ケガキ線11及び炉高方向ケガキ線12は図7Aに表れているが、これらのケガキ線を引く工程の詳細、及び好ましい形態等については、上述の第1プレキャスト耐火ブロック10Aの場合と同一である。なお、第2プレキャスト耐火ブロック10Bに炉長方向ケガキ線11及び炉高方向ケガキ線12を引く工程と、上述のスペーサー15を取り付ける工程とは、いずれを先に実施してもよいし同時並行的に実施してもよい。
第2プレキャスト耐火ブロック10Bを設置する工程は、基本的には上述の第1プレキャスト耐火ブロック10Aを設置する工程と同様に、レーザー光8が、図示を省略している吊り具で吊り上げた第2プレキャスト耐火ブロック10Bの上面10B-1及び他側側面10B-2に引かれている炉長方向ケガキ線11及び炉高方向ケガキ線12に重なるように、第2プレキャスト耐火ブロック10Aの位置や姿勢を調整しながら設置する。加えて、第2プレキャスト耐火ブロック10Bを第1プレキャスト耐火ブロック10Aの他側側面10A-2に隣接して設置するときには、この第2プレキャスト耐火ブロックを設置する際にコークス炉の炉長方向Yの一側と対向する側面である一側側面10B-3がスペーサー15の本体部15bに接触するように、第2プレキャスト耐火ブロック10Bの位置を調整する。第2プレキャスト耐火ブロック10Bの設置が終わったら、スペーサー15を取り外す。これにより、図8A及び図8Bに示しているように、スペーサー15の本体部15bの厚み分の隙間Wを介して、第2プレキャスト耐火ブロック10Bが第1プレキャスト耐火ブロック10Aの他側側面10A-2に隣接して設置される。なお、第2プレキャスト耐火ブロック10Bを設置する位置には図7A及び図7Bに表れているように、予めモルタル14を塗布しておく。そして、上述の隙間Wには後工程でモルタルが施工されモルタル目地が形成される。なお、図7A及び図7Bにおいて第2プレキャスト耐火ブロック10Bの上面10B-1には、第1プレキャスト耐火ブロック10Aから取り外した吊り環13が取り付けられている。
ここで、第2プレキャスト耐火ブロック10Bを設置する際に、この第2プレキャスト耐火ブロック10Bの一側側面10B-3がスペーサー15(本体部15b)に接触するように、第2プレキャスト耐火ブロック10Bの位置を調整するとは、吊り具で吊り上げた第2プレキャスト耐火ブロック10Bを第1プレキャスト耐火ブロック10Aと隣接する所定の設置位置に設置する最中に、この第2プレキャスト耐火ブロック10Bの一側側面10B-3がスペーサー15(本体部15b)に接触するようにすることのほか、吊り具で吊り上げた第2プレキャスト耐火ブロック10Bを第1プレキャスト耐火ブロック10Aと隣接する所定の設置位置の近傍位置に仮置きした後、この第2プレキャスト耐火ブロック10Bを水平移動させて、その一側側面10B-3がスペーサー15(本体部15b)に接触するようにすることを含む概念である。いずれにしても、第2プレキャスト耐火ブロック10Bの一側側面10B-3がスペーサー15(本体部15b)に接触するように第2プレキャスト耐火ブロック10Bの位置を調整することで、第2プレキャスト耐火ブロック10Bが、スペーサー15の本体部15bの厚み分の隙間Wを介して第1プレキャスト耐火ブロック10Aの他側側面10A-2に隣接して設置される。
第2プレキャスト耐火ブロック10Bの設置が終わったら、図示を省略しているが、第2プレキャスト耐火ブロック10Bの他側側面10B-1に隣接して第3プレキャスト耐火ブロックを設置し、続いて第3プレキャスト耐火ブロックの他側側面に隣接して第4プレキャスト耐火ブロックを設置するといった要領で、コークス炉の炉長方向Yの他側に設置されているバックステー6bの炉内側側面6b-1に隣接する位置まで、複数のプレキャスト耐火ブロックを隣接して設置する。その際も、上述の要領でスペーサー15を使用し、またレーザー光8と炉長方向ケガキ線11及び炉高方向ケガキ線12とを利用した位置調整や姿勢調整を行って、各プレキャスト耐火ブロックを隣接して設置する。
なお、コークス炉においては例えば図2Bに表れているように、対向するバックステー6a,6bの対が炉幅方向Xに複数配置されているから、各バックステー6a,6bの対において複数のプレキャスト耐火ブロックを隣接して設置する。
なお、コークス炉においては例えば図2Bに表れているように、対向するバックステー6a,6bの対が炉幅方向Xに複数配置されているから、各バックステー6a,6bの対において複数のプレキャスト耐火ブロックを隣接して設置する。
次に、設置済のプレキャスト耐火ブロックの上面に更にプレキャスト耐火ブロックを設置する方法について説明する。なお、本発明では設置済のプレキャスト耐火ブロックの上面に設置するプレキャスト耐火ブロックを上段プレキャスト耐火ブロックと呼ぶが、設置済のプレキャスト耐火ブロックと上段プレキャスト耐火ブロックは基本的に同一の形状を有する。
以下、第2プレキャスト耐火ブロック10Bの上面に同一形状の上段プレキャスト耐火ブロックを設置する場合を例に、上段プレキャスト耐火ブロックの設置方法について説明する。
以下、第2プレキャスト耐火ブロック10Bの上面に同一形状の上段プレキャスト耐火ブロックを設置する場合を例に、上段プレキャスト耐火ブロックの設置方法について説明する。
図10A及び図10Bに、第2プレキャスト耐火ブロック10Bを含む1段目のプレキャスト耐火ブロックの上面に上段プレキャスト耐火ブロックを設置する工程において、第2プレキャスト耐火ブロック10Bの上面に上段プレキャスト耐火ブロックを設置する前の状態を示している。なお、図10A及び図10Bにおいて第2プレキャスト耐火ブロック10Bを含む1段目のプレキャスト耐火ブロックについては上面のみを概念的に示し、上面以外は省略している。後述する図11A及び図11B、図12A及び図12B、並びに図13A及び図13Bにおいても同様である。
図10A及び図10Bに表れている第2プレキャスト耐火ブロック10Bの上面10B-1に上段プレキャスト耐火ブロックを設置する場合、その前に図11A及び図11Bに示しているように、第2プレキャスト耐火ブロック10Bの上面10B-1にモルタル14を塗布する工程、及びスペーサー15を取り付ける工程を実施する。そしてモルタル14を塗布する工程では、第2プレキャスト耐火ブロック10Bの上面10B-1の周縁部を除いてモルタル14を塗布する。モルタル14を塗布しない周縁部の面積割合は上面10B-1の全面積の5~20%程度とすることができる。言い換えれば、モルタル14の塗布面積割合は上面10B-1の全面積の80~95%程度とすることができる。
一方、スペーサー15を取り付ける工程では、第2プレキャスト耐火ブロック10Bの上面10B-1を取り囲む3つ上段プレキャスト耐火ブロックの側面にスペーサー15を上述と同様の要領で取り付ける。
一方、スペーサー15を取り付ける工程では、第2プレキャスト耐火ブロック10Bの上面10B-1を取り囲む3つ上段プレキャスト耐火ブロックの側面にスペーサー15を上述と同様の要領で取り付ける。
モルタル14を塗布する工程とスペーサー15を取り付ける工程を実施した後、図12A及び図12B並びに図13A及び図13Bに示しているように、第2プレキャスト耐火ブロック10Aの上に上段プレキャスト耐火ブロック10Cを設置する工程を実施するが、この工程を実施する前に、上段プレキャスト耐火ブロック10Cの上面10C-1に炉長方向ケガキ線11を引くと共に、上段プレキャスト耐火ブロック10Cの他側側面10C-2に炉長方向ケガキ線11と連続するように炉高方向ケガキ線12を引く工程を実施する。これらのケガキ線を引く工程の詳細、及び好ましい形態等については、上述の第1プレキャスト耐火ブロック10Aの場合と同一である。なお、上段プレキャスト耐火ブロック10Cに炉長方向ケガキ線11及び炉高方向ケガキ線12を引く工程は、上述のモルタル14を塗布する工程及びスペーサー15を取り付ける工程の前に実施してもよいし、同時並行的に実施してもよい。
上段プレキャスト耐火ブロック10Cを設置する工程は、基本的には上述の第1プレキャスト耐火ブロック10A及び第2プレキャスト耐火ブロック10Bを設置する工程と同様に、レーザー光8が、図示を省略している吊り具で吊り上げた上段プレキャスト耐火ブロック10Cの上面10C-1及び他側側面10C-2に引かれている炉長方向ケガキ線11及び炉高方向ケガキ線12に重なるように、上段プレキャスト耐火ブロック10Cの位置や姿勢を調整しながら設置する。加えて、上述の第2プレキャスト耐火ブロック10Bを設置するときと同様に、上段プレキャスト耐火ブロック10Cの3つの側面がそれぞれスペーサー15の本体部15bに接触するように、上段プレキャスト耐火ブロック10Cの位置を調整する。上段プレキャスト耐火ブロック10Cの設置が終わったら、スペーサー15を取り外す。これにより、図13A及び図13Bに示しているように、上段プレキャスト耐火ブロック10Cが、スペーサー15の本体部15bの厚み分の隙間Wを介して、周囲の3つの上段プレキャスト耐火ブロックに隣接して設置される。なお、図12A及び図12Bにおいて上段プレキャスト耐火ブロック10Cの上面10C-1には吊り環13が取り付けられている。また、図12A及び図12Bでは図11A及び図11Bに表れているスペーサー15を省略して示している。
上段プレキャスト耐火ブロック10C以外の他の上段プレキャスト耐火ブロックも、上段プレキャスト耐火ブロック10Cの設置方法と同様の要領で設置する。そのときスペーサー15は、隣接する設置済の他の上段プレキャスト耐火ブロックの側面に適宜取り付ける。そして、2段目のプレキャスト耐火ブロックの設置が終わったら、引き続き3段目のプレキャスト耐火ブロックの設置を2段目と同様の要領で行う。4段目以降も同様である。
本実施形態では以上のようにして、対向して設置されているバックステー6a,6bの対の間にプレキャスト耐火ブロックを順次設置してコークス炉における蓄熱室等の耐火物構造物を構築する。このとき、設置するプレキャスト耐火ブロックの形状は、構築する耐火物構造物に応じて適宜変更される。
以上の通り本実施形態によれば、プレキャスト耐火ブロックを設置する際に、バックステー6aの炉内側側面6a-1に引いた鉛直方向基準線7に重なるようにレーザー光8を当て、そしてこのレーザー光8がプレキャスト耐火ブロックに引いた炉長方向ケガキ線11及び炉高方向ケガキ線12に重なるように当該プレキャスト耐火ブロックを設置することで、吊り具で吊り上げたプレキャスト耐火ブロックを所定の設置位置に正確に位置決めして設置することができる。また、設置済のプレキャスト耐火ブロックに隣接して別のプレキャスト耐火ブロックを設置する際に、この別のプレキャスト耐火ブロックが設置済のプレキャスト耐火ブロックと接触することを抑制することができ、プレキャスト耐火ブロックの損傷を抑制することもできる。
更に設置済のプレキャスト耐火ブロックに隣接して別のプレキャスト耐火ブロックを設置する際に、スペーサー15を使用して別のプレキャスト耐火ブロックの側面がスペーサー15に接触するように別のプレキャスト耐火ブロックの位置を調整することで、隣接するプレキャスト耐火ブロック間にモルタル目地を形成するための隙間Wを簡単かつ正確に形成することができる。
また更に、設置済のプレキャスト耐火ブロックの上面に上段プレキャスト耐火ブロックを設置するときに、設置済のプレキャスト耐火ブロックの上面にモルタル14を塗布する際、設置済のプレキャスト耐火ブロックの上面の周縁部を除いてモルタル14を塗布することで、上段プレキャスト耐火ブロックが傾いて設置されることを抑制できる。すなわち、設置済のプレキャスト耐火ブロックの上面の全面にモルタル14を塗布した場合、その上に上段プレキャスト耐火ブロックを設置すると、モルタル14が周囲に流出することになり、その流出の方向に偏りがあると、プレキャスト耐火ブロックの上面に残っているモルタルの厚みにバラツキが生じ、その結果、上段プレキャスト耐火ブロックが傾いて設置されることになる。例えば図10A及び図10Bに示しているように3つの上段プレキャスト耐火ブロックに囲まれた位置に上段プレキャスト耐火ブロックを設置する場合、モルタル14の流出方向は殆どがコークス炉の炉長方向Yの他側方向となる。そうすると、プレキャスト耐火ブロックの上面に残っているモルタルの厚みは、コークス炉の炉長方向Yの他側方向に向かうに連れて薄くなり、その結果、上段プレキャスト耐火ブロックがコークス炉の炉長方向Yの他側方向に向かうに連れて低くなるように傾いて設置されることになる。
これに対して、本実施形態では設置済のプレキャスト耐火ブロックの上面の周縁部を除いてモルタル14を塗布するので、モルタル14が流出しない、あるいは流出しにくくなり、モルタル14の流出方向の偏りが小さくなる。その結果、上段プレキャスト耐火ブロックが傾いて設置されることを抑制できる。
これに対して、本実施形態では設置済のプレキャスト耐火ブロックの上面の周縁部を除いてモルタル14を塗布するので、モルタル14が流出しない、あるいは流出しにくくなり、モルタル14の流出方向の偏りが小さくなる。その結果、上段プレキャスト耐火ブロックが傾いて設置されることを抑制できる。
A コークス炉
X 炉幅方向
Y 炉長方向
Z 炉高方法
W 隙間
1 炭化室
2 燃焼室
3 炉頂部
4 蓄熱室
5 擁壁
6a,6b バックステー
6a-1,6b-1 バックステーの炉内側側面
7 鉛直方向基準線
8 レーザー光
9 レーザー発振器
10A 第1プレキャスト耐火ブロック
10A-1 上面
10A-2 他側側面
10B 第2プレキャスト耐火ブロック
10B-1 上面
10B-2 他側側面
10B-3 一側側面
10C 上段プレキャスト耐火ブロック
10C-1 上面
10C-2 他側側面
11 炉長方向ケガキ線
12 炉高方向ケガキ線
13 吊り環
14 モルタル
15 スペーサー
X 炉幅方向
Y 炉長方向
Z 炉高方法
W 隙間
1 炭化室
2 燃焼室
3 炉頂部
4 蓄熱室
5 擁壁
6a,6b バックステー
6a-1,6b-1 バックステーの炉内側側面
7 鉛直方向基準線
8 レーザー光
9 レーザー発振器
10A 第1プレキャスト耐火ブロック
10A-1 上面
10A-2 他側側面
10B 第2プレキャスト耐火ブロック
10B-1 上面
10B-2 他側側面
10B-3 一側側面
10C 上段プレキャスト耐火ブロック
10C-1 上面
10C-2 他側側面
11 炉長方向ケガキ線
12 炉高方向ケガキ線
13 吊り環
14 モルタル
15 スペーサー
Claims (3)
- コークス炉の炉長方向の一側に設置されているバックステーの炉内側側面に鉛直方向基準線を引く工程と、
コークス炉の炉長方向の他側から、前記鉛直方向基準線に重なるようにレーザー光を当てる工程と、
前記バックステーの炉内側側面に隣接して設置する第1プレキャスト耐火ブロックの上面に炉長方向ケガキ線を引くと共に、前記第1プレキャスト耐火ブロックを設置する際にコークス炉の炉長方向の他側と対向する側面である他側側面に前記炉長方向ケガキ線と連続するように炉高方向ケガキ線を引く工程と、
前記レーザー光が前記炉長方向ケガキ線及び前記炉高方向ケガキ線に重なるように前記第1プレキャスト耐火ブロックを設置する工程とを含む、コークス炉用プレキャスト耐火ブロックの設置方法。 - 設置後の前記第1プレキャスト耐火ブロックの他側側面にスペーサーを取り付ける工程と、
前記第1プレキャスト耐火ブロックの他側側面に隣接して設置する第2プレキャスト耐火ブロックの上面に炉長方向ケガキ線を引くと共に、前記第2プレキャスト耐火ブロックの他側側面に前記炉長方向ケガキ線と連続するように炉高方向ケガキ線を引く工程と、
前記レーザー光が第2プレキャスト耐火ブロックの前記炉長方向ケガキ線及び前記炉高方向ケガキ線に重なるように前記第2プレキャスト耐火ブロックを設置する工程とを更に含み、
前記第2プレキャスト耐火ブロックを設置する工程は、前記第2プレキャスト耐火ブロックを設置する際にコークス炉の炉長方向の一側と対向する側面である一側側面が前記スペーサーに接触するように前記第2プレキャスト耐火ブロックの位置を調整する工程を含む、請求項1に記載のコークス炉用プレキャスト耐火ブロックの設置方法。 - 設置済のプレキャスト耐火ブロックの上面にモルタルを塗布する工程と、
前記設置済のプレキャスト耐火ブロックの上面に設置される上段プレキャスト耐火ブロックの上面に炉長方向ケガキ線を引くと共に、前記上段プレキャスト耐火ブロックの他側側面に前記炉長方向ケガキ線と連続するように炉高方向ケガキ線を引く工程と、
前記レーザー光が前記上段プレキャスト耐火ブロックの前記炉長方向ケガキ線及び前記炉高方向ケガキ線に重なるように前記上段プレキャスト耐火ブロックを設置する工程とを更に含み、
前記モルタルを塗布する工程では、前記設置済のプレキャスト耐火ブロックの上面の周縁部を除いてモルタルを塗布する、請求項1又は2に記載のコークス炉用プレキャスト耐火ブロックの設置方法。
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JP2022069663A JP2023159756A (ja) | 2022-04-20 | 2022-04-20 | コークス炉用プレキャスト耐火ブロックの設置方法 |
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JP2022069663A Pending JP2023159756A (ja) | 2022-04-20 | 2022-04-20 | コークス炉用プレキャスト耐火ブロックの設置方法 |
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2022
- 2022-04-20 JP JP2022069663A patent/JP2023159756A/ja active Pending
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