JP2023152923A - 熱可塑性樹脂ならびにその製造方法および用途 - Google Patents

熱可塑性樹脂ならびにその製造方法および用途 Download PDF

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久芳 渡邉
Hisayoshi Watanabe
梨香子 中田
Rikako Nakada
聡史 南
Satoshi Minami
樹 日比野
Tatsuki Hibino
沙恵 石川
Sae Ishikawa
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Abstract

【課題】アッベ数が高い領域であっても、高い異常分散特性(高い部分分散比θgF値)を示す熱可塑性樹脂、その製造方法および用途を提供する。【解決手段】下記式(1)で表される第1のジカルボン酸単位(A1)を有するジカルボン酸単位(A)と、脂環族モノマー成分由来の構成単位とを含む熱可塑性樹脂を調製する。TIFF2023152923000033.tif56153R1a、R1bはH又は置換基、R2a、R2bは置換基、k1、k2は0~5の整数。【選択図】なし

Description

本発明は、重合成分として特定のジカルボン酸成分および脂環族ジカルボン酸成分を含む熱可塑性樹脂ならびにその製造方法および用途に関する。
スマートフォンやタブレット型PCなどの小型機器またはモバイル機器には、画像表示機能だけでなくカメラ機能などの光学的機能を備えた物が多く、機器の高性能化に伴って光学部材に対する要求特性が高まっている。光学部材には、軽量性、耐衝撃性(柔軟性)、成形性(生産性)などの点で光学ガラスよりも有利な樹脂材料も多く利用されているが、既存の樹脂材料では高まる要求特性に対して十分に対応できない場合もある。
例えば、カメラ機能を備えた機器に搭載される撮像レンズユニットには、機器自体の薄型化や多機能化に伴い小型化が求められる一方で、撮像素子の高画素化に伴って高解像度化も要求されている。そのため、撮像レンズユニットでは、レンズ構成、形状および材料の選択に様々な工夫がなされ、小型かつ高い結像性能で諸収差の補正に対応できるよう光学設計される。一般的に、撮像レンズユニッ卜はアッベ数や屈折率の異なる複数のレンズから構成されており、例えば、高アッベ数のレンズと低アッベ数のレンズとを組み合わせて構成されることが多いが、光学レンズに使用可能な樹脂材料の種類に限りがあり、有効性の高い多様なレンズユニットの設計には限界がある。そのため、設計の自由度を高めて高機能化または高性能化する観点から、材料選択の幅を広げることが重要視され、アッベ数などの光学特性が異なる様々な光学用樹脂材料の開発が求められている。
一方、アッベ数とは別の波長分散特性を表す指標として、部分分散比θgFが知られており、この部分分散比θgFが高い(大きな異常分散特性を示す)材料では、色収差(波長による結像位置のズレ)を有効に補正または低減できる。そのため、特開2020-158723号公報(特許文献1)、特許第6712633号(特許文献2)および国際公開第2019/131258号(特許文献3)には、高い部分分散比θgFを示す樹脂または樹脂組成物が提案されている。
なお、特開2021-134355号公報(特許文献4)には、特定のジカルボン酸単位を有する樹脂はアッベ数が低く、例えば19以下の低いアッベ数を示すことが記載されている。
特開2020-158723号公報 特許第6712633号 国際公開第2019/131258号 特開2021-134355号公報
特許文献3では、特定のベンゾトリアゾール系化合物またはフェニルトリアジン系化合物を所定の割合で含む色収差補正用光学樹脂材料について開示され、実施例では、これらの化合物をジないしテトラ(メタ)アクリレート樹脂に混合した後に硬化して光学樹脂材料を調製したことが記載されている。
しかし、混合するベンゾトリアゾール系化合物またはフェニルトリアジン系化合物が低分子化合物であるため、光学樹脂材料からのブリードアウトが生じるおそれがある。また、樹脂としては多官能(メタ)アクリレート樹脂が想定されており、硬化性樹脂であることから、生産性または成形性を向上し難い場合がある。
一方、特許文献1では、異常分散性が高く、かつ射出成形を適用可能な量産性に優れる樹脂組成物として、熱可塑性樹脂と異常分散性化合物とを所定の割合で含む樹脂組成物が開示されている。この文献の実施例では、環状オレフィン系重合体(エチレンとテトラシクロドデセンとのランダム共重合体)と特定の異常分散性化合物とを溶融混練しているが、異常分散性化合物が低分子化合物であるため、樹脂組成物からブリードアウトするおそれがある。
樹脂とは別に異常分散性化合物(低分子化合物)を添加しなくても、樹脂自体が高い異常分散性を示す材料として、特許文献2には、低いアッベ数および高い異常分散性を示す特定のポリカーボネート樹脂が開示されている。この文献の実施例では、特定のポリカーボネート樹脂を射出成形して得られた成形体が、低アッベ数および高異常分散性を示したことが記載されているが、θgF値が0.600以上であることのみで、具体的な数値は記載されていない。また、アッベ数がやや高めの比較例では、実施例に比べて異常分散性が低かったことが記載されている。
従って、本発明の目的は、アッベ数が高い領域であっても、高い異常分散特性(高い部分分散比θgF値)を示す熱可塑性樹脂、その製造方法および用途を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、重合成分として特定のジカルボン酸成分および脂環族ジカルボン酸成分を組み合わせて熱可塑性樹脂を調製すると、得られる樹脂が高い異常分散特性を示すことを見いだし、本発明を完成した。すなわち、本発明は、下記態様などを包含していてもよい。
態様[1]:ジカルボン酸単位(A)と、脂環族モノマー成分由来の構成単位とを含む熱可塑性樹脂であって、前記ジカルボン酸単位(A)が、下記式(1)で表される第1のジカルボン酸単位(A1)を少なくとも有する熱可塑性樹脂。
Figure 2023152923000001
(式中、R1aおよびR1bは独立して水素原子または置換基を示し、
2aおよびR2bは独立して置換基を示し、k1およびk2は独立して0~5の整数を示す)。
態様[2]:前記式(1)において、R1aおよびR1bが水素原子、炭化水素基、アルコキシ基、アシルオキシ基または置換アミノ基であり、
2aおよびR2bがハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、ニトロ基、シアノ基または置換アミノ基であり、k1およびk2が0~3程度の整数である態様[1]記載の熱可塑性樹脂。
態様[3]:前記第1のジカルボン酸単位(A1)の割合が、前記ジカルボン酸単位(A)全体に対して、1~50モル%程度である態様[1]または[2]記載の熱可塑性樹脂。
態様[4]:前記ジカルボン酸単位(A)が、前記脂環族モノマー成分由来の構成単位として、脂環族ジカルボン酸単位である第2のジカルボン酸単位(A2)を少なくとも含む態様[1]~[3]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
態様[5]:前記第2のジカルボン酸単位(A2)が、下記式(2)で表される脂環族ジカルボン酸単位を少なくとも含む態様[4]記載の熱可塑性樹脂。
Figure 2023152923000002
(式中、Zは脂肪族炭化水素環を示し、
は置換基を示し、mは0以上の整数を示し、
1aおよびA1bは独立して直接結合あるいは直鎖状または分岐鎖状アルキレン基を示す)。
態様[6]:前記第1のジカルボン酸単位(A1)と、前記第2のジカルボン酸単位(A2)との割合が、前者/後者(モル比)=3/97~50/50程度である態様[4]または[5]記載の熱可塑性樹脂。
態様[7]:前記ジカルボン酸単位(A)が、下記式(3)で表される第3のジカルボン酸単位(A3)を少なくとも含む態様[1]~[6]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
Figure 2023152923000003
(式中、R4aおよびR4bは独立して置換基を示し、n1およびn2は独立して0~4の整数を示し、
2aおよびA2bは独立して直鎖状または分岐鎖状アルキレン基を示す)。
態様[8]:前記式(3)において、R4aおよびR4bがハロゲン原子、置換または未置換の炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、ニトロ基、シアノ基または置換アミノ基であり、n1およびn2が0~2程度の整数である態様[7]記載の熱可塑性樹脂。
態様[9]:前記第3のジカルボン酸単位(A3)が、前記式(3)において、n1およびn2のうち少なくとも一方が1以上であり、かつR4aおよび/またはR4bとして置換または未置換のアリール基を少なくとも一つ有するジカルボン酸単位を含む態様[7]または[8]記載の熱可塑性樹脂。
態様[10]:前記第1のジカルボン酸単位(A1)と、前記第3のジカルボン酸単位(A3)との割合が、前者/後者(モル比)=10/90~90/10程度である態様[7]~[9]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
態様[11]:さらに、ジオール単位(B)を含むポリエステル系樹脂である態様[1]~[10]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
態様[12]:前記ジオール単位(B)が、前記脂環族モノマー成分由来の構成単位として、脂環族ジオール単位である第1のジオール単位(B1)を少なくとも含む態様[11]記載の熱可塑性樹脂。
態様[13]:前記第1のジオール単位(B1)が、下記式(4)で表される脂環族ジオール単位を少なくとも含む態様[12]記載の熱可塑性樹脂。
Figure 2023152923000004
(式中、Zは脂肪族炭化水素環を示し、
は置換基を示し、pは0以上の整数を示し、
3aおよびA3bは独立して直接結合あるいは直鎖状または分岐鎖状アルキレン基を示す)。
態様[14]:前記第1のジオール単位(B1)の割合が、前記ジオール単位(B)全体に対して、1~100モル%程度である態様[12]または[13]記載の熱可塑性樹脂。
態様[15]:前記ジオール単位(B)が、下記式(5)で表される第2のジオール単位(B2)を少なくとも含む態様[11]~[14]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
Figure 2023152923000005
(式中、Aは直鎖状または分岐鎖状アルキレン基を示し、qは1以上の整数を示す)。
態様[16]:態様[12]~[14]のいずれかに記載の第1のジオール単位(B1)と、態様[15]記載の第2のジオール単位(B2)との割合が、前者/後者(モル比)=50/50~99/1程度である態様[11]~[15]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
態様[17]:前記ジオール単位(B)が、下記式(6)で表される第3のジオール単位(B3)を少なくとも含む態様[11]~[16]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
Figure 2023152923000006
(式中、Rは置換基を示し、rは0~8の整数を示し、
3aおよびZ3bは独立してアレーン環を示し、
7aおよびR7bは独立して置換基を示し、s1およびs2は独立して0以上の整数を示し、
5aおよびA5bは独立して直鎖状または分岐鎖状アルキレン基を示し、t1およびt2は独立して0または1以上の整数を示す)。
態様[18]:前記式(6)において、Rがハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、ニトロ基、シアノ基または置換アミノ基であり、rが0~4程度の整数であり、
3aおよびZ3bが単環式または縮合多環式アレーン環であり、
7aおよびR7bがハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、ニトロ基、シアノ基または置換アミノ基であり、s1およびs2が0~4程度の整数であり、
t1およびt2が0~10程度である態様[17]記載の熱可塑性樹脂。
態様[19]:態様[12]~[14]のいずれかに記載の第1のジオール単位(B1)と、態様[17]または[18]記載の第3のジオール単位(B3)との割合が、前者/後者(モル比)=30/70~98/2程度である態様[11]~[18]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
態様[20]:アッベ数νdが19以上であり、部分分散比θgFが0.625程度以上である態様[1]~[19]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
態様[21]:前記第1のジカルボン酸単位(A1)に対応する第1のジカルボン酸成分と、前記脂環族モノマー成分を少なくとも含む重合成分を重合して、態様[1]~[20]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂を製造する方法。
態様[22]:態様[1]~[20]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂を含む成形体。
態様[23]:光学部材である態様[22]記載の成形体。
態様[24]:光学レンズである態様[22]または[23]記載の成形体。
なお、本発明では、従たる目的として、以下の課題を解決してもよい。
すなわち、本発明の他の目的は、互いにトレードオフの光学的特性である高い屈折率および低い複屈折(低い複屈折の絶対値)をバランスよく両立可能な熱可塑性樹脂、その製造方法および用途を提供することにある。
また、本発明のさらに他の目的は、化学構造中に脂環骨格や芳香環骨格(ベンゼン環骨格)などの多くの環構造を含んでいても、成形性(または生産性)に優れた熱可塑性樹脂、その製造方法および用途を提供することにある。
本明細書および特許請求の範囲において、「ジカルボン酸単位」、「ジカルボン酸成分由来の構成単位」は、対応するジカルボン酸の2つのカルボキシル基から、OH(ヒドロキシル基)をそれぞれ除いた単位(または2価の基)を意味し、「ジカルボン酸成分」(ジカルボン酸成分として例示される化合物を含む)は、対応する「ジカルボン酸単位」と同義に用いる場合がある。また、同様に、「ジオール単位」、「ジオール成分由来の構成単位」は、対応するジオール成分の2つのヒドロキシル基から、水素原子をそれぞれ除いた単位(または2価の基)を意味し、「ジオール成分」(ジオール成分として例示される化合物を含む)は、対応する「ジオール単位」と同義に用いる場合がある。
また、本明細書および特許請求の範囲において、「ジカルボン酸成分」とは、ジカルボン酸に加えて、そのエステル形成性誘導体を含む意味に用いる。エステル形成性誘導体としては、例えば、アルキルエステル、酸クロリドなどの酸ハライド、酸無水物などが挙げられる。前記アルキルエステルとしては、低級アルキルエステル、例えば、メチルエステル、エチルエステル、t-ブチルエステルなどのC1-4アルキルエステルなどが挙げられる。なお、エステル形成性誘導体は、モノエステル(ハーフエステル)またはジエステルであってもよい。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、置換基の炭素原子の数をC、C、C10などで示すことがある。例えば、炭素数が1のアルキル基は「Cアルキル」で示し、炭素数が6~10のアリール基は「C6-10アリール」で示す。
本発明の熱可塑性樹脂は、特定のジカルボン酸成分と脂環族モノマー成分とを組み合わせて重合されるため、アッベ数が高い領域、例えば19以上であっても、高い異常分散特性(高い部分分散比θgF値)を示すことができる。また、前記熱可塑性樹脂は、比較的高い屈折率および低い複屈折(低い複屈折の絶対値)をバランスよく両立できる。そのため、光学レンズなどの光学部材にも有効に利用できる。さらに、前記熱可塑性樹脂は、化学構造中に脂環骨格や芳香環骨格(ベンゼン環骨格)などの多くの環構造を含んでいても(剛直な化学構造を含んでいても)、容易にまたは効率よく調製または成形可能であり、高い成形性(生産性)を示すことができる。
[熱可塑性樹脂]
熱可塑性樹脂は、ジカルボン酸単位(A)として式(1)で表される第1のジカルボン酸単位(A1)と、脂環族モノマー成分に由来する構成単位とを少なくとも含んでいればよい。
なお、前記脂環族モノマー成分は、化学構造中に脂環骨格、例えば、シクロアルカン環、シクロアルケン環、架橋環、スピロ環などの脂肪族炭化水素環骨格(脂肪族鎖で形成された非芳香族性の環構造)を少なくとも1つ含む重合成分であればよく、芳香環骨格を含まないのが好ましく、必要に応じて、直鎖状または分岐鎖状アルキレン基などの脂肪族鎖を含んでいてもよく、例えば、脂環骨格および重合性基を結合(または連結)する脂肪族鎖、2以上の脂環骨格同士を結合する脂肪族鎖などを含んでいてもよい。
また、前記脂環族モノマー成分は、重合反応するための官能基(重合性基)、例えば、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、これらの基から誘導される重合性基などを2つ備えていればよく、熱可塑性樹脂の種類に応じて、例えば、脂環族ジアミン成分、脂環族アミノカルボン酸成分、脂環族ヒドロキシカルボン酸成分などであってもよいが、脂環族ジカルボン酸成分[後述する脂環族ジカルボン酸単位(第2のジカルボン酸単位)(A2)を形成する成分]および/または脂環族ジオール成分[後述する脂環族ジオール単位(第1のジオール単位)(B1)を形成する成分]を少なくとも含むのが好ましい。
このような熱可塑性樹脂としては、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂などが挙げられ、低吸水性で光学部材などとして有効に利用できる点からポリエステル系樹脂が好ましい。ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂などが挙げられ、ポリエステル樹脂が好ましい。
(ジカルボン酸単位(A))
第1のジカルボン酸単位(A1)
熱可塑性樹脂が、下記式(1)で表される第1のジカルボン酸単位(A1)を脂環族モノマー成分由来の構成単位と組み合わせて含んでいると、部分分散比θgF値を大きく向上し易いようであり、また、複屈折を大きく増加することなく(あるいは維持または低減しつつ)屈折率を向上できるようである。
Figure 2023152923000007
(式中、R1aおよびR1bは独立して水素原子または置換基を示し、
2aおよびR2bは独立して置換基を示し、k1およびk2は独立して0~5の整数を示す。)
前記式(1)において、R1aおよびR1bで表される置換基としては、重合反応に不活性な置換基(非反応性置換基または非重合性置換基)であるのが好ましく、1,1’-ビナフチル骨格を形成し易く生産性に優れる点などから、電子供与性基であるのが好ましい。
電子供与性基としては、例えば、アルキル基、アリール基などの炭化水素基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、置換アミノ基(モノまたはジ置換アミノ基)などが挙げられ、ヒドロキシル基を含まない電子供与性基であってもよい。
アルキル基としては、直鎖状または分岐鎖状アルキル基、例えば、メチル基、エチル基などのC1-6アルキル基などが挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基などのC6-12アリール基などが挙げられる。
アルコキシ基としては、直鎖状または分岐鎖状アルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基などのC1-6アルコキシ基などが挙げられる。アシルオキシ基としては、例えば、アセトキシ基(メチルカルボニルオキシ基)などのC2-7アシルオキシ基などが挙げられる。
モノまたはジ置換アミノ基としては、例えば、モノまたはジアルキルアミノ基、具体的には、ジメチルアミノ基などのモノまたはジC1-6アルキルアミノ基;モノまたはジアシルアミノ基、具体的には、モノアセチルアミノ基(N-メチルカルボニルアミノ基)などのモノまたはジC2-7アシルアミノ基などが挙げられる。
好ましい基R1a、R1bとしては、水素原子またはアルコキシ基であり、重合反応性を向上できる観点からは水素原子が好ましく、屈折率安定性および寸法安定性と、生産性とをバランスよく向上できる観点からは直鎖状または分岐鎖状アルコキシ基が好ましく、さらに好ましくは以下段階的に、C1-5アルコキシ基、C1-4アルコキシ基、C1-3アルコキシ基であり、特に、メトキシ基などのC1-2アルコキシ基が好ましい。なお、R1aおよびR1bの種類は、互いに異なっていてもよいが、同一が好ましい。
2aおよびR2bは、重合反応に不活性な置換基(非反応性基または非重合性基)であるのが好ましく、例えば、ハロゲン原子、炭化水素基(または基[-R])、基[-OR](式中、Rは前記炭化水素基を示す)、基[-SR](式中、Rは前記炭化水素基を示す)、アシル基、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基(モノまたはジ置換アミノ基)などが挙げられる。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
前記Rで表される炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などが挙げられる。
アルキル基としては、直鎖状または分岐鎖状アルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基などのC1-10アルキル基が挙げられ、好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはC1-4アルキル基である。
シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのC5-10シクロアルキル基が挙げられる。
アリール基としては、例えば、フェニル基、アルキルフェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基などのC6-12アリール基が挙げられる。アルキルフェニル基としては、例えば、メチルフェニル基(またはトリル基)、ジメチルフェニル基(またはキシリル基)などのモノないしトリC1-4アルキル-フェニル基が挙げられる。
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基などのC6-10アリール-C1-4アルキル基が挙げられる。
前記基[-OR]としては、例えば、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基などが挙げられ、具体的には、前記炭化水素基Rの例示に対応する基が挙げられる。アルコキシ基としては、直鎖状または分岐鎖状アルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、t-ブトキシ基などのC1-10アルコキシ基が挙げられる。シクロアルキルオキシ基としては、例えば、シクロヘキシルオキシ基などのC5-10シクロアルキルオキシ基が挙げられる。アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基などのC6-10アリールオキシ基が挙げられる。アラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基などのC6-10アリール-C1-4アルキルオキシ基が挙げられる。
前記基[-SR]としては、例えば、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基などが挙げられ、具体的には、前記炭化水素基Rの例示に対応する基が挙げられる。アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、n-ブチルチオ基、t-ブチルチオ基などのC1-10アルキルチオ基が挙げられる。シクロアルキルチオ基としては、例えば、シクロヘキシルチオ基などのC5-10シクロアルキルチオ基が挙げられる。アリールチオ基としては、例えば、チオフェノキシ基などのC6-10アリールチオ基が挙げられる。アラルキルチオ基としては、例えば、ベンジルチオ基などのC6-10アリール-C1-4アルキルチオ基が挙げられる。
アシル基としては、アセチル基などのC1-6アルキル-カルボニル基などが挙げられる。
モノまたはジ置換アミノ基としては、例えば、ジアルキルアミノ基、ビス(アルキルカルボニル)アミノ基などが挙げられる。ジアルキルアミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基などのジC1-4アルキルアミノ基が挙げられる。ビス(アルキルカルボニル)アミノ基としては、例えば、ジアセチルアミノ基などのビス(C1-4アルキル-カルボニル)アミノ基が挙げられる。
これらの基のうち、代表的なR2aおよびR2bとしては、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基などが挙げられ、好ましくは臭素原子などのハロゲン原子である。
2a、R2bの置換数k1、k2は、例えば0~4程度の整数、好ましくは以下段階的に、0~3の整数、0~2の整数であり、さらに好ましくは0または1、特に0が好ましい。k1、k2は互いに異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。また、k1が2以上である場合、2以上のR2aの種類は互いに同一または異なっていてもよく、k2とR2bについても同様である。また、R2a、R2bの種類は、互いに同一または異なっていてもよい。
2a、R2bの置換位置は、1,1’-ビナフチル骨格のR1a、R1bの結合位置(2,2’位)ならびに熱可塑性樹脂の主鎖を形成する(カルボキシル基などの重合性基に由来する)カルボニル基[-C(=O)-]の結合位置以外の位置、すなわち、3~8位および3’~8’位から選択されるいずれかの位置であり、好ましくは3~5位、7~8位、3’~5’位および7’~8’位から選択されるいずれかの位置である。
前記式(1)において、熱可塑性樹脂の主鎖を形成する2つのカルボニル基[-C(=O)-]の結合位置は、それぞれ3~8位および3’~8’位から選択されるいずれかの位置であり、3~4位および3’~4’位(すなわち、1,1’-ビナフチル骨格中の1,1’位で直接結合されたベンゼン環)のいずれの位置であってもよいが、5~8位および5’~8’位(すなわち、1,1’-ビナフチル骨格中の1,1’位で直接結合されたベンゼン環とは反対側のベンゼン環)のいずれの位置が好ましく、さらに好ましくは5,5’位、6,6’位、7,7’位であり、さらに好ましくは6,6’位である。
第1のジカルボン酸単位(A1)を形成する代表的な第1のジカルボン酸成分としては、R1aおよびR1bがアルコキシ基に対応するジカルボン酸成分、例えば、6,6’-ジカルボキシ-2,2’-ジアルコキシ-1,1’-ビナフチル、具体的には、6,6’-ジカルボキシ-2,2’-ジメトキシ-1,1’-ビナフチル、6,6’-ジカルボキシ-2,2’-ジエトキシ-1,1’-ビナフチルなどの6,6’-ジカルボキシ-2,2’-ジC1-6アルコキシ-1,1’-ビナフチル;3,3’-ジカルボキシ-2,2’-ジアルコキシ-1,1’-ビナフチル、具体的には、3,3’-ジカルボキシ-2,2’-ジメトキシ-1,1’-ビナフチル、3,3’-ジカルボキシ-2,2’-ジエトキシ-1,1’-ビナフチルなどの3,3’-ジカルボキシ-2,2’-ジC1-6アルコキシ-1,1’-ビナフチル;およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
第1のジカルボン酸単位(A1)は、単独でまたは二種以上組み合わせて含んでいてもよい。これらの第1のジカルボン酸単位(A1)のうち、生産性などの点から、6,6’-ジカルボキシ-2,2’-ジメトキシ-1,1’-ビナフチルなどの6,6’-ジカルボキシ-2,2’-ジC1-4アルコキシ-1,1’-ビナフチルに由来する構成単位が好ましい。
なお、第1のジカルボン酸単位(A1)全体に対する好ましい態様の第1のジカルボン酸単位(A1)の割合、なかでも、前記式(1)において6,6’位にカルボニル基が結合した構成単位の割合、特に、6,6’-ジカルボキシ-2,2’-ジアルコキシ-1,1’-ビナフチルに対応するジカルボン酸単位の割合は、第1のジカルボン酸単位(A1)全体に対して、例えば1モル%以上、具体的には10~100モル%程度の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、30モル%以上、50モル%以上、70モル%以上、90モル%以上であり、さらに好ましくは100モル%である。前記好ましい態様の第1のジカルボン酸単位(A1)の割合が少なすぎると、部分分散比θgFを向上し難くなるおそれがある。
第2のジカルボン酸単位(A2)
熱可塑性樹脂は、第1のジカルボン酸単位(A1)と組み合わせるための脂環族モノマー成分由来の構成単位として、脂環族ジカルボン酸単位(第2のジカルボン酸単位)(A2)を含んでいてもよい。第1のジカルボン酸単位(A1)および脂環族ジカルボン酸単位(A2)を組み合わせると、アッベ数を高く維持しつつ、部分分散比θgF値を大きく向上し易いようである。
脂環族ジカルボン酸単位(A2)は、化学構造中に少なくとも1つの脂肪族炭化水素環(脂環)骨格を含んでいればよい。前記脂肪族炭化水素環は、脂肪族鎖で形成された非芳香族性の環構造であればよく、単環式、または、架橋環式、スピロ環式などの多環式であってもよく、二重結合などの不飽和結合を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。このような脂肪族炭化水素環としては、例えば、単環式脂肪族炭化水素環、架橋環式脂肪族炭化水素環などが挙げられる。
単環式脂肪族炭化水素環としては、例えば、シクロアルカン環、シクロアルケン環などが挙げられる。シクロアルカン環としては、例えば、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環などのC3-20シクロアルカン環などが挙げられる。シクロアルケン環としては、シクロペンテン環、シクロヘキセン環などのC3-20シクロアルケン環などが挙げられる。
架橋環式脂肪族炭化水素環としては、例えば、架橋環式シクロアルカン環、架橋環式シクロアルケン環などが挙げられる。架橋環式シクロアルカン環としては、デカリン環、ノルボルナン環、アダマンタン環、トリシクロデカン環、テトラシクロドデカン環などのC7-20ビないしテトラシクロアルカン環など挙げられる。トリシクロデカン環としては、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環などが挙げられる。テトラシクロドデカン環としては、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環などが挙げられる。架橋環式シクロアルケン環としては、ノルボルネン環、トリシクロデセン環、テトラシクロドデセン環などのC7-20ビないしテトラシクロアルケン環などが挙げられる。
脂環族ジカルボン酸単位(A2)は、これらの脂肪族炭化水素環を単独でまたは二種以上組み合わせて含んでいてもよい。これらの脂肪族炭化水素環のうち、シクロヘキサン環などのシクロアルカン環、デカリン環、トリシクロデカン環などのビないしテトラシクロアルカン環が好ましい。
また、脂環族ジカルボン酸単位(A2)は、化学構造中にアルキレン基を含んでいてもよく、例えば、前記脂肪族炭化水素環と、カルボキシル基などの重合性基に由来するカルボニル基[-C(=O)-]とを結合(または連結)するアルキレン基、2以上の前記脂肪族炭化水素環同士を結合するアルキレン基などを含んでいてもよい。このようなアルキレン基としては、直鎖状または分岐鎖状アルキレン基、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、1,2-ブタンジイル基、2-メチルプロパン-1,3-ジイル基などのC1-8アルキレン基が挙げられる。好ましいアルキレン基は、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、2-メチルプロパン-1,3-ジイル基などのC1-6アルキレン基、より好ましくはC1-4アルキレン基、さらに好ましくはメチレン基などのC1-3アルキレン基である。
好ましい脂環族ジカルボン酸単位(A2)は、下記式(2)で表される。
Figure 2023152923000008
(式中、Zは脂肪族炭化水素環を示し、
は置換基を示し、mは0以上の整数を示し、
1aおよびA1bは独立して直接結合(または単結合)あるいは直鎖状または分岐鎖状アルキレン基を示す)。
前記式(2)において、Zで表される脂肪族炭化水素環としては、前記単環式脂肪族炭化水素環、架橋環式脂肪族炭化水素環などが挙げられ、好ましくはシクロアルカン環、ビないしテトラシクロアルカン環であり、さらに好ましくはシクロヘキサン環などのC5-10シクロアルカン環、デカリン環、トリシクロデカン環などのビないしトリシクロアルカン環であり、特にデカリン環などのビシクロアルカン環が好ましい。
で表される置換基としては、例えば、第1のジカルボン酸単位(A1)の項においてR2a、R2bとして例示した置換基(非反応性置換基または非重合性置換基)などが挙げられ、好ましくはハロゲン原子、炭化水素基(または基[-R]、ただし、アリール基、アラルキル基などの芳香環骨格を含む基は除く)、基[-OR](式中、Rは前記炭化水素基を示す)であり、さらに好ましくは直鎖状または分岐鎖状アルキル基、シクロアルキル基などの脂肪族炭化水素基であり、なかでも、メチル基などのC1-4アルキル基、シクロヘキシル基などのC5-10シクロアルキル基である。
の置換数mは、Zの種類に応じて、例えば0~10の整数、好ましくは以下段階的に、0~6の整数、0~4の整数、0~2の整数、0~1の整数、特に0である。mが2以上である場合、2以上のRの種類は互いに同一または異なっていてもよい。
1a、A1bは、直鎖状または分岐鎖状アルキレン基であってもよく、例えば、前述した脂環族ジカルボン酸単位(A2)が化学構造中に含んでいてもよいアルキレン基として例示した直鎖状または分岐鎖状アルキレン基と同様の基が挙げられ、好ましい直鎖状または分岐鎖状アルキレン基としては以下段階的に、C1-6アルキレン基、C1-4アルキレン基、C1-3アルキレン基であり、さらに好ましくはメチレン基などのC1-2アルキレン基である。
1a、A1bはアルキレン基であってもよいが、直接結合(または単結合)、すなわち、Zとカルボニル基[-C(=O)-]とが直接結合するのが好ましい。A1aおよびA1bの種類は、互いに同一または異なっていてもよい。
と、A1aおよびA1b(またはカルボニル基[-C(=O)-])との結合位置は特に制限されず、Z中で最も離れた位置、例えば、Zがシクロヘキサン環である場合は1,4位、Zがデカリン環である場合は2,6位、Zがトリシクロデカン環である場合は4,8位などであってもよい。
前記式(2)で表される構成単位を形成する代表的な脂環族ジカルボン酸成分としては、例えば、シクロアルカンジカルボン酸、具体的には、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などのC5-10シクロアルカン-ジカルボン酸など;架橋環式シクロアルカンジカルボン酸、具体的には、デカリンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸などのビまたはトリシクロアルカンジカルボン酸など;シクロアルケンジカルボン酸、具体的には、シクロヘキセンジカルボン酸などのC5-10シクロアルケン-ジカルボン酸など;架橋環式シクロアルケンジカルボン酸、具体的には、ノルボルネンジカルボン酸などのビまたはトリシクロアルケンジカルボン酸;およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
脂環族ジカルボン酸単位(A2)は単独でまたは2種以上組み合わせて使用することもできる。これらのうち、シクロアルカンジカルボン酸、ビまたはトリシクロアルカンジカルボン酸などの架橋環式シクロアルカンジカルボン酸が好ましく、さらに好ましくは、シクロヘキサンジカルボン酸などのC5-10シクロアルカン-ジカルボン酸、2,6-デカリンジカルボン酸などのビシクロアルカンジカルボン酸であり、特に、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などのC5-8シクロアルカン-ジカルボン酸に由来する構成単位が好ましい。
前記式(2)で表される脂環族ジカルボン酸単位の割合は、脂環族ジカルボン酸単位(A2)全体に対して、例えば1モル%以上、具体的には10~100モル%程度の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、30モル%以上、50モル%以上、70モル%以上、90モル%以上であり、さらに好ましくは100モル%である。前記式(2)で表される脂環族ジカルボン酸単位の割合が少なすぎると、部分分散比θgFを向上し難くなるおそれがある。
なお、前記式(2)で表される構成単位などの脂環族ジカルボン酸単位(A2)に由来するジカルボン酸成分は異性体混合物であってもよく、例えば、trans/cis(モル比)=0/100~100/0から選択してもよく、具体的には1/99~99/1程度であってもよく、好ましくは以下段階的に、50/50~100/0、70/30~100/0、80/20~100/0、90/10~100/0である。
第3のジカルボン酸単位(A3)
必ずしも必要ではないが、熱可塑性樹脂は、第1のジカルボン酸単位(A1)および脂環族モノマー成分由来の構成単位に加えて、さらに、下記式(3)で表される第3のジカルボン酸単位(A3)を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。熱可塑性樹脂は、第3のジカルボン酸単位(A3)を含んでいても高い部分分散比θgF値を示すようである。また、第3のジカルボン酸単位(A3)を含んでいると、屈折率を大きく低下することなく(あるいは維持または向上しつつ)複屈折を低減し易いようである。
Figure 2023152923000009
(式中、R4aおよびR4bは独立して置換基を示し、n1およびn2は独立して0~4の整数を示し、
2aおよびA2bは独立して直鎖状または分岐鎖状アルキレン基を示す)。
前記式(3)において、基A2aおよびA2bで表される直鎖状または分岐鎖状アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、1,2-ブタンジイル基、2-メチルプロパン-1,3-ジイル基などのC1-8アルキレン基が挙げられる。好ましいアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、2-メチルプロパン-1,3-ジイル基などのC1-6アルキレン基が挙げられ、より好ましくはC1-4アルキレン基であり、さらに好ましくはC2-4アルキレン基であり、なかでも、エチレン基、プロピレン基などのC2-3アルキレン基が好ましく、特にエチレン基が好ましい。なお、A2aおよびA2bの種類は互いに異なっていてもよく、同一が好ましい。
4aおよびR4bで表される置換基としては、重合反応に不活性な非反応性基または非重合性基であるのが好ましく、例えば、第1のジカルボン酸単位(A1)の項においてR2a、R2bとして例示した置換基(非反応性基または非重合性基)などが挙げられる。代表的なR4aおよびR4bとしては、ハロゲン原子、炭化水素基(置換または未置換の炭化水素基)、アルコキシ基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基などが挙げられる。
なお、前記置換または未置換の炭化水素基(置換されていてもよい炭化水素基)としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などの未置換の炭化水素基であってもよく、これらの炭化水素基が1または複数の置換基、例えば、第1のジカルボン酸単位(A1)の項においてR2a、R2bとして例示した基などで置換された基であってもよい。炭化水素基に対する置換数は特に制限されず、例えば0~7程度の整数であってもよく、好ましくは以下段階的に、0~6の整数、0~4の整数、0~3の整数、0~2の整数であり、さらに好ましくは0または1であり、特に0(すなわち、未置換の炭化水素基)が好ましい。炭化水素基が、複数の置換基で置換される場合、複数の置換基の種類は同一または異なっていてもよい。
好ましいR4aおよびR4bは、置換または未置換の炭化水素基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子、シアノ基であり、さらに好ましくは置換または未置換のアルキル基、置換または未置換のアリール基である。アルキル基としては、直鎖状または分岐鎖状アルキル基、例えば、メチル基、エチル基、t-ブチル基などのC1-6アルキル基などが挙げられ、メチル基などのC1-4アルキル基が好ましい。
特に、部分分散比θgFを有効に向上でき、複屈折も大きく低減し易い点から、好ましいR4aおよびR4bは、置換または未置換のアリール基、なかでも未置換のアリール基である。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基などの縮合多環式アリール基、ビフェニリル基、テルフェニル基などの環集合アリール基などが挙げられる。代表的なアリール基としては、C6-18アリール基であり、好ましくはC6-14アリール基、より好ましくはフェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基などのC6-12アリール基、さらに好ましくはフェニル基、2-ナフチル基などのC6-10アリール基であり、特にフェニル基である。
4a、R4bの各置換数n1、n2としては、それぞれ0~4の整数、例えば1~3程度の整数であってもよく、好ましくは0~2の整数、さらに好ましくは0または1であり、特に1である。n1およびn2は互いに異なっていてもよいが、同一が好ましい。
なお、n1またはn2が2以上である場合2以上のR4aまたはR4bの種類は、互いに同一または異なっていてもよい。また、R4aおよびR4bの種類は、互いに同一または異なっていてもよく、同一が好ましい。また、R4aおよびR4bの置換位置は、それぞれフルオレン骨格の1~4位、5~8位のいずれの位置に置換していてもよいが、例えば2位、3位および/または7位、好ましくは2位および/または7位である。n1およびn2がいずれも1である場合、好ましい置換位置(または結合位置)としては、1,8位、2,7位、3,6位、4,5位などの前記式(3)において紙面上で左右対称な位置であり、特に、2,7位が好ましい。
特に、部分分散比θgFを有効に向上でき、複屈折も大きく低減し易い点から、n1およびn2のうち少なくとも一方が1以上、好ましくは双方が1以上、さらに好ましくは双方が1であり、かつR4aおよび/またはR4bとして置換または未置換のアリール基を少なくとも一つ有するのが好ましい。
前記式(3)で表される第3のジカルボン酸単位(A3)としては、R4aまたはR4bとして置換または未置換のアリール基を有しないジカルボン酸単位(A3-1);R4aまたはR4bとして置換または未置換のアリール基を少なくとも有するジカルボン酸単位(A3-2)などが挙げられる。
4aまたはR4bとして置換または未置換のアリール基を有しないジカルボン酸単位(A3-1)としては、例えば、9,9-ビス(カルボキシアルキル)フルオレン、具体的には、9,9-ビス(2-カルボキシエチル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシプロピル)フルオレンなどの9,9-ビス(カルボキシC2-6アルキル)フルオレン由来の構成単位などが挙げられる。
4aまたはR4bとして置換または未置換のアリール基を少なくとも有するジカルボン酸単位(A3-2)としては、例えば、9,9-ビス(カルボキシアルキル)-ジアリールフルオレン類、具体的には、9,9-ビス(カルボキシアルキル)-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(カルボキシアルキル)-ジナフチルフルオレンなどの9,9-ビス(カルボキシアルキル)-ジ(C6-12アリール)フルオレン由来の構成単位などが挙げられる。
9,9-ビス(カルボキシアルキル)-ジフェニルフルオレンとしては、例えば、9,9-ビス(2-カルボキシエチル)-1,8-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシエチル)-2,7-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシエチル)-3,6-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシエチル)-4,5-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシプロピル)-2,7-ジフェニルフルオレンなどの9,9-ビス(カルボキシC2-6アルキル)-ジフェニルフルオレンなどが挙げられる。
9,9-ビス(カルボキシアルキル)-ジナフチルフルオレンとしては、例えば、9,9-ビス(2-カルボキシエチル)-1,8-ジ(2-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシエチル)-2,7-ジ(2-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシエチル)-3,6-ジ(2-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシエチル)-4,5-ジ(2-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシプロピル)-2,7-ジ(2-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシエチル)-2,7-ジ(1-ナフチル)フルオレンなどの9,9-ビス(カルボキシC2-6アルキル)-ジナフチルフルオレンなどが挙げられる。
第3のジカルボン酸単位(A3)は、単独でまたは二種以上組み合わせて含んでいてもよい。これらの第3のジカルボン酸単位(A3)のうち、9,9-ビス(カルボキシC2-4アルキル)-2,7-ジフェニルフルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシエチル)-2,7-ジ(2-ナフチル)フルオレンなどの9,9-ビス(カルボキシC2-4アルキル)-2,7-ジナフチルフルオレンが好ましく;9,9-ビス(2-カルボキシエチル)-2,7-ジフェニルフルオレンなどの9,9-ビス(カルボキシC2-3アルキル)-2,7-ジフェニルフルオレンに由来する構成単位が特に好ましい。
これらの好ましい態様の第3のジカルボン酸単位(A3)の割合は、第3のジカルボン酸単位(A3)全体に対して、例えば1モル%以上、具体的には10~100モル%程度の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、30モル%以上、50モル%以上、70モル%以上、90モル%以上であり、さらに好ましくは100モル%である。前記好ましい態様の第3のジカルボン酸単位(A3)の割合が少なすぎると、部分分散比θgFを向上し難くなるおそれがある。
4aまたはR4bとして置換または未置換のアリール基を有しないジカルボン酸単位(A3-1)の割合は、第3のジカルボン酸単位(A3)全体に対して、例えば1モル%以上、具体的には10~100モル%程度の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、30モル%以上、50モル%以上、70モル%以上、90モル%以上であり、さらに好ましくは100モル%である。
4aまたはR4bとして置換または未置換のアリール基を少なくとも有するジカルボン酸単位(A3-2)の割合、特に、n1およびn2の双方が1以上、好ましくは双方が1であり、かつR4aおよびR4bの双方が置換または未置換のアリール基を有する構成単位の割合は、第3のジカルボン酸単位(A3)全体に対して、例えば1モル%以上、具体的には10~100モル%程度の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、30モル%以上、50モル%以上、70モル%以上、90モル%以上であり、さらに好ましくは100モル%である。前記割合が少なすぎると、部分分散比θgFを向上し難くなるおそれがある。
第4のジカルボン酸単位(A4)
なお、ジカルボン酸単位(A)は、必要に応じて、第1のジカルボン酸単位(A1)、第2のジカルボン酸単位(A2)および第3のジカルボン酸単位(A3)とは異なる[第1~3のジカルボン酸単位(A1)~(A3)の範疇に属さない]第4のジカルボン酸単位(A4)を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。
第4のジカルボン酸単位(A4)としては、例えば、芳香族ジカルボン酸成分[ただし、第1のジカルボン酸単位(A1)および第3のジカルボン酸単位(A3)を除く]、脂肪族ジカルボン酸成分などに由来する構成単位が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、単環式芳香族ジカルボン酸、多環式芳香族ジカルボン酸、およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。単環式芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸などのベンゼンジカルボン酸;アルキルベンゼンジカルボン酸、具体的には、4-メチルイソフタル酸などのC1-4アルキル-ベンゼンジカルボン酸などが挙げられる。
多環式芳香族ジカルボン酸としては、例えば、縮合多環式芳香族ジカルボン酸、具体的には、ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸などの縮合多環式C10-24アレーン-ジカルボン酸、好ましくは縮合多環式C10-14アレーン-ジカルボン酸など;ビアリールジカルボン酸、具体的には、2,2’-ビフェニルジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸など;ビス(カルボキシアルコキシ)ビC6-10アリール、具体的には、2,2’-ビス(カルボキシメトキシ)-1,1’-ビナフチルなどのビス(カルボキシC1-4アルコキシ)ビC6-10アリールなど;ビス[(カルボキシアルコキシ)-C6-10アリール]アルカン、具体的には、ビス[2-(カルボキシメトキシ)-1-ナフチル]メタンなどのビス[(カルボキシC1-4アルコキシ)-C6-10アリール)C1-6アルカンなど;ジアリールアルカンジカルボン酸、具体的には、4,4’-ジフェニルメタンジカルボン酸などのジC6-10アリールC1-6アルカン-ジカルボン酸など;ジアリールケトンジカルボン酸、具体的には、4,4’-ジフェニルケトンジカルボン酸などのジ(C6-10アリール)ケトン-ジカルボン酸など;ジアリールエーテルジカルボン酸、具体的には、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸などのジ(C6-10アリール)エーテル-ジカルボン酸など;ジアリールスルホンジカルボン酸、具体的には、4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸などのジ(C6-10アリール)スルホン-ジカルボン酸などが挙げられる。
前記ナフタレンジカルボン酸としては、1,2-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などが挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸成分としては、例えば、直鎖状または分岐鎖状アルカンジカルボン酸、具体的には、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸などのC2-12アルカン-ジカルボン酸など;直鎖状または分岐鎖状の不飽和脂肪族ジカルボン酸、具体的には、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのC2-10アルケン-ジカルボン酸;およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
第4のジカルボン酸単位(A4)は、単独でまたは二種以上組み合わせて含まれていてもよい。
第4のジカルボン酸単位(A4)の割合は、ジカルボン酸単位(A)全体に対して、例えば50モル%未満、好ましくは30モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下であり、実質的に第4のジカルボン酸単位(A4)を含まないのが好ましく、第4のジカルボン酸単位(A4)を含む場合の前記割合は、例えば0.1~5モル%程度であってもよい。
第1のジカルボン酸単位(A1)および第2のジカルボン酸単位(A2)の総量の割合は、ジカルボン酸単位(A)全体に対して、例えば1モル%以上、具体的には10~100モル%程度であってもよく、好ましくは以下段階的に、30モル%以上、50モル%以上、70モル%以上、90モル%以上であり、特に、実質的に100モル%が好ましい。
第1のジカルボン酸単位(A1)、第2のジカルボン酸単位(A2)および第3のジカルボン酸単位(A3)の総量の割合は、ジカルボン酸単位(A)全体に対して、例えば1モル%以上、具体的には10~100モル%程度の範囲から選択してもよく、好ましくは以下段階的に、30モル%以上、50モル%以上、70モル%以上、90モル%以上であり、特に、実質的に100モル%が好ましい。
第1のジカルボン酸単位(A1)の割合は、ジカルボン酸単位(A)全体に対して、例えば0.1~100モル%程度、具体的には1~50モル%程度であってもよく、好ましくは以下段階的に、3~40モル%、5~30モル%、8~25モル%、10~20モル%、10~15モル%である。第1のジカルボン酸単位(A1)の割合が多すぎると、アッベ数を調整し難く、特に高い範囲に調整し難くなるおそれがあり、少なすぎると、部分分散比θgFが低下したり、屈折率や耐熱性が低下するおそれがある。
第1のジカルボン酸単位(A1)と第2のジカルボン酸単位(A2)との割合は、前者/後者(モル比)=1/99~100/0程度であってもよく、好ましくは以下段階的に、3/97~50/50、5/95~40/60、5/95~30/70、8/92~25/75、10/90~20/80、11/89~15/85、12/88~15/85、13/87~15/85、14/86~15/85である。第2のジカルボン酸単位(A2)の割合が多すぎると、部分分散比θgF、屈折率や耐熱性が低下するおそれがあり、少なすぎると、アッベ数を調整し難く、特に高い範囲に調整し難くなるおそれがある。
第1のジカルボン酸単位(A1)と第3のジカルボン酸単位(A3)との割合は、前者/後者(モル比)=1/99~100/0程度であってもよく、好ましくは以下段階的に、10/90~90/10、20/80~80/20、30/70~70/30、40/60~60/40、45/55~55/45である。第3のジカルボン酸単位(A3)の割合が少なすぎると複屈折が増加するおそれがあり、多すぎると、屈折率や耐熱性が低下するおそれがある。
第2のジカルボン酸単位(A2)と第3のジカルボン酸単位(A3)との割合は、前者/後者(モル比)=0/100~100/0から選択でき、例えば、1/99~100/0程度であってもよく、好ましくは以下段階的に、30/70~99/1、50/50~97/3、70/30~95/5、80/20~92/8、85/15~90/10である。第2のジカルボン酸単位(A2)の割合が少なすぎると、アッベ数を調整し難く、特に高い範囲に調整し難くなるおそれがあり、第3のジカルボン酸単位(A3)の割合が少なすぎると複屈折が増加したり、屈折率が低下するおそれがある。
なお、ジカルボン酸単位(A)[第1~4のジカルボン酸単位(A1)~(A4)の総量]の割合は、熱可塑性樹脂の構成単位全体(熱可塑性樹脂を構成する全てのモノマー成分由来の構成単位の総量)に対して、例えば1モル%以上、具体的には10~50モル%程度であってもよく、好ましくは以下段階的に、20~50モル%、30~50モル%、40~50モル%である。
[ジオール単位(B)]
熱可塑性樹脂は、ジカルボン酸単位(A)に加えて、さらにジオール単位(B)を含むのが好ましい。そのため、熱可塑性樹脂は、ポリエステル系樹脂であるのが好ましい。
第1のジオール単位(B1)
ジオール単位(B)の種類は特に制限されないが、必要に応じて、前記脂環族モノマー成分由来の構成単位としての脂環族ジオール単位(第1のジオール単位)(B1)を少なくとも含んでいてもよい。第1のジカルボン酸単位(A1)および脂環族ジオール単位(第1のジオール単位)(B1)を組み合わせると、特に、第1のジカルボン酸単位(A1)と、脂環族モノマー成分由来の構成単位である脂環族ジカルボン酸単位(A2)および脂環族ジオール単位(第1のジオール単位)(B1)の双方とを組み合わせると、アッベ数を高めに維持しつつ、より一層部分分散比θgF値を大きく向上し易いようである。
脂環族ジオール単位(B1)は、化学構造中に少なくとも1つの脂肪族炭化水素環(脂環)骨格を含んでいればよい。前記脂肪族炭化水素環は、脂肪族鎖で形成された非芳香族性の環構造であればよく、単環式、または、架橋環式、スピロ環式などの多環式であってもよく、二重結合などの不飽和結合を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。このような脂肪族炭化水素環としては、例えば、前記第2のジカルボン酸単位(脂環族ジカルボン酸単位)(A2)の項において例示した単環式脂肪族炭化水素環、架橋環式脂肪族炭化水素環と同様の環などが挙げられる。
脂環族ジオール単位(B1)は、これらの脂肪族炭化水素環を単独でまたは二種以上組み合わせて含んでいてもよい。これらの脂肪族炭化水素環のうち、シクロヘキサン環などのシクロアルカン環、デカリン環、トリシクロデカン環などのビないしテトラシクロアルカン環が好ましい。
また、脂環族ジオール単位(B1)は、化学構造中にアルキレン基を含んでいてもよく、例えば、前記脂肪族炭化水素環と、ヒドロキシル基(重合性基)に由来するエーテル結合[-O-]とを結合(または連結)するアルキレン基、2以上の前記脂肪族炭化水素環同士を結合するアルキレン基などを含んでいてもよい。このようなアルキレン基としては、直鎖状または分岐鎖状アルキレン基、例えば、前記第2のジカルボン酸単位(脂環族ジカルボン酸単位)(A2)の項において例示した直鎖状または分岐鎖状アルキレン基と同様の基などが挙げられ、好ましいアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、2-メチルプロパン-1,3-ジイル基などのC1-6アルキレン基が、より好ましくはC1-4アルキレン基、さらに好ましくはC1-3アルキレン基、特にメチレン基などのC1-2アルキレン基である。
脂環族ジオール単位(B1)としては、例えば、ビスフェノールAの水添物などの芳香族ジオール成分、具体的には、後述する芳香族ジオールの水添物などに由来するジオール単位;下記式(4)で表されるジオール単位;およびこれらに対応するジオール成分のアルキレンオキシド(アルキレンカーボネートまたはハロアルカノール)付加体に由来するジオール単位などが挙げられる。これらは単独でまたは二種以上組み合わせて含まれていてもよい。好ましい脂環族ジオール単位(B1)は、下記式(4)で表されるジオール単位である。
Figure 2023152923000010
(式中、Zは脂肪族炭化水素環を示し、
は置換基を示し、pは0以上の整数を示し、
3aおよびA3bは独立して直接結合(または単結合)あるいは直鎖状または分岐鎖状アルキレン基を示す)。
前記式(4)において、Zで表される脂肪族炭化水素環としては、前記単環式脂肪族炭化水素環、架橋環式脂肪族炭化水素環などが挙げられ、好ましくはシクロアルカン環、ビないしテトラシクロアルカン環であり、さらに好ましくはシクロヘキサン環などのC5-10シクロアルカン環、デカリン環、トリシクロデカン環などのビないしテトラシクロアルカン環であり、特にトリシクロデカン環などのビまたはトリシクロアルカン環が好ましい。
で表される置換基としては、例えば、第1のジカルボン酸単位(A1)の項においてR2a、R2bとして例示した置換基(非反応性基または非重合性基)などが挙げられ、好ましくはハロゲン原子、炭化水素基(または基[-R]、ただし、アリール基、アラルキル基などの芳香環骨格を含む基は除く)、基[-OR](式中、Rは前記炭化水素基を示す)であり、さらに好ましくは直鎖状または分岐鎖状アルキル基、シクロアルキル基などの脂肪族炭化水素基であり、なかでも、メチル基などのC1-4アルキル基、シクロヘキシル基などのC5-10シクロアルキル基である。
の置換数pは、Zの種類に応じて、例えば0~10の整数、好ましくは以下段階的に、0~6の整数、0~4の整数、0~2の整数、0~1の整数、特に0である。pが2以上である場合、2以上のRの種類は互いに同一または異なっていてもよい。
3a、A3bは、直鎖状または分岐鎖状アルキレン基であってもよく、例えば、前述した脂環族ジオール単位(B1)[または脂環族ジカルボン酸単位(A2)]が化学構造中に含んでいてもよいアルキレン基として例示した直鎖状または分岐鎖状アルキレン基と同様の基が挙げられ、好ましい直鎖状または分岐鎖状アルキレン基としては以下段階的に、C1-6アルキレン基、C1-4アルキレン基、C1-3アルキレン基であり、さらに好ましくはメチレン基などのC1-2アルキレン基である。
3a、A3bはアルキレン基であってもよく、直接結合(または単結合)、すなわち、Zとエーテル結合[-O-]とが直接結合していてもよく、アルキレン基であるのが好ましい。A3aおよびA3bの種類は、互いに同一または異なっていてもよい。
と、A3aおよびA3b(またはエーテル結合[-O-])との結合位置は特に制限されず、Z中で最も離れた位置、例えば、Zがシクロヘキサン環である場合は1,4位、Zがデカリン環である場合は2,6位、Zがトリシクロデカン環である場合は4,8位などであってもよい。
前記式(4)で表される代表的な脂環族ジオール単位としては、例えば、Zが(B1-1)単環式脂肪族炭化水素環、または(B1-2)架橋環式脂肪族炭化水素環に対応するジオール単位などが挙げられる。
が単環式脂肪族炭化水素環であるジオール単位(B1-1)に対応するジオール成分としては、例えば、シクロヘキサンジオールなどのシクロアルカンジオール、具体的には、1,4-シクロヘキサンジオールなどのC5-10シクロアルカンジオール;シクロヘキサンジメタノールなどのビス(ヒドロキシアルキル)シクロアルカン、具体的には、1,4-シクロヘキサンジメタノールなどのビス(ヒドロキシC1-3アルキル)C5-10シクロアルカン;シクロヘキセンジオールなどのシクロアルケンジオール、具体的には、2-シクロヘキセン-1,4-ジオールなどのC5-10シクロアルケンジオール;ビス(ヒドロキシアルキル)シクロアルケン、具体的には、シクロヘキセンジメタノールなどのビス(ヒドロキシC1-3アルキル)C5-10シクロアルケンなどが挙げられる。
が架橋環式脂肪族炭化水素環であるジオール単位(B1-2)に対応するジオール成分としては、例えば、ノルボルナンジオール、アダマンタンジオールなどの架橋環式シクロアルカンジオール、具体的には、デカリンジオール、2,3-ノルボルナンジオール、1,3-アダマンタンジオール、トリシクロデカンジオール、テトラシクロドデカンジオールなどのビないしペンタシクロアルカンジオール;アダマンタンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールなどのビス(ヒドロキシアルキル)架橋環式シクロアルカン、具体的には、アダマンタン-1,3-ジメタノール、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-4,8-ジメタノールなどのビス(ヒドロキシC1-3アルキル)ビないしテトラシクロアルカン;ノルボルネンジメタノールなどのビス(ヒドロキシアルキル)架橋環式シクロアルケン、具体的には、ノルボルネン-2,3-ジメタノールなどのビス(ヒドロキシC1-3アルキル)ビないしテトラシクロアルケンなどが挙げられる。
これらの前記式(4)で表される代表的な脂環族ジオール単位は、単独でまたは二種以上組み合わせて含まれていてもよい。これらのうち、Zが単環式脂肪族炭化水素環であるジオール単位(B1-1)では、シクロアルカンジオール、ビス(ヒドロキシアルキル)シクロアルカンに由来する単位が好ましく;Zが架橋環式脂肪族炭化水素環であるジオール単位(B1-2)では、架橋環式シクロアルカンジオール、ビス(ヒドロキシアルキル)架橋環式シクロアルカンが好ましい。さらに好ましくはシクロアルカンジオール、ビス(ヒドロキシアルキル)架橋環式シクロアルカン、なかでも、シクロヘキサンジオールなどのC5-8シクロアルカンジオール;アダマンタンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールなどのビス(ヒドロキシC1-3アルキル)ビまたはトリシクロアルカンが好ましい。これらの中でも、特に、ビス(ヒドロキシC1-2アルキル)トリシクロアルカンなどのビス(ヒドロキシアルキル)架橋環式シクロアルカンが好ましい。
ビス(ヒドロキシアルキル)架橋環式シクロアルカンなどのZが架橋環式脂肪族炭化水素環であるジオール単位(B1-2)の割合は、前記式(4)で表される構成単位全体に対して、例えば10~100モル%程度の範囲から選択してもよく、好ましくは以下段階的に、30モル%以上、50モル%以上、70モル%以上、90モル%以上、100モル%である。
なお、前記ジオール単位(B1-1)および(B1-2)は組み合わせて含まれていてもよい。すなわち、前記ジオール単位(B1-1)と(B1-2)との割合は、前者/後者(モル比)=0/100~100/0の範囲から選択してもよく、好ましくは以下段階的に、20/80~80/20、30/70~70/30、40/60~60/40であってもよく、さらに好ましくは以下段階的に、0/100~50/50、0/100~30/70、0/100~20/80、0/100~10/90である。
前記ジオール単位(B1-1)および(B1-2)の総量の割合は、前記式(4)で表される構成単位全体に対して、例えば1モル%以上、具体的には10~100モル%程度の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、30モル%以上、50モル%以上、70モル%以上、90モル%以上であり、さらに好ましくは100モル%である。
前記式(4)で表される脂環族ジオール単位の割合は、脂環族ジオール単位(B1)全体に対して、例えば1モル%以上、具体的には10~100モル%程度の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、30モル%以上、50モル%以上、70モル%以上、90モル%以上であり、さらに好ましくは100モル%である。前記式(4)で表されるジオール単位の割合が少なすぎると、部分分散比θgFを向上し難くなるおそれがある。
なお、前記式(4)で表される構成単位などの脂環族ジオール単位(B1)に由来するジオール成分は異性体混合物であってもよい。
第2のジオール単位(B2)
必ずしも必要ではないが、ジオール単位(B)は、下記式(5)で表される第2のジオール単位(B2)を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。第2のジオール単位(B2)を含むと、重合反応を効率よく進行して高分子量に調整し易く、熱可塑性樹脂に柔軟性または靱性などを付与して成形性や取り扱い性も向上できる場合がある。
Figure 2023152923000011
(式中、Aは直鎖状または分岐鎖状アルキレン基を示し、qは1以上の整数を示す)。
前記式(5)において、Aで表される直鎖状または分岐鎖状アルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、1,2-ブタンジイル基、1,3-ブタンジイル基、テトラメチレン基、1,5-ペンタンジイル基、1,6-ヘキサンジイル基、1,8-オクタンジイル基、1,10-デカンジイル基などのC2-12アルキレン基などが挙げられる。好ましい直鎖状または分岐鎖状アルキレン基としては以下段階的に、C2-10アルキレン基、C2-8アルキレン基、C2-6アルキレン基、C2-4アルキレン基であり、さらに好ましくはエチレン基、プロピレン基などのC2-3アルキレン基であり、特にエチレン基が好ましい。
アルキレンオキシ基[-(AO)-]の繰り返し数qは、例えば1~10程度の範囲から選択してもよく、好ましくは以下段階的に、1~4、1~3、1~2であり、特に1が好ましい。なお、繰り返し数qは、平均値(算術平均値または相加平均値)であってもよく、好ましい態様は前記整数の範囲と同様である。qが2以上である場合、2以上のアルキレンオキシ基[(-AO-)]の種類は、互いに異なっていてもよいが、同一が好ましい。
第2のジオール単位(B2)に対応する第2のジオール成分(B2)としては、例えば、アルカンジオール(またはアルキレングリコール)、ポリアルカンジオール(またはポリアルキレングリコール)などが挙げられる。
アルキレングリコールとしては、例えば、前記式(5)においてqが1、Aが前記例示のアルキレン基に対応する直鎖状または分岐鎖状アルキレングリコール、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、テトラメチレングリコール(または1,4-ブタンジオール)、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオールなどのC2-12アルキレングリコールなどが挙げられ、好ましい態様は前記アルキレン基Aに対応して同様である。
ポリアルキレングリコールとしては、例えば、前記式(5)においてqが2以上、好ましくは2~10、より好ましくは2~6、さらに好ましくは2~4であり、Aが前記例示のアルキレン基に対応するポリ直鎖状または分岐鎖状アルキレングリコール、具体的には、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコールなどのジないしデカC2-12アルキレングリコールなどが挙げられ、好ましくはジないしヘキサC2-6アルキレングリコール、さらに好ましくはジないしテトラC2-4アルキレングリコールが挙げられる。
これらの第2のジオール単位(B2)は、単独でまたは二種以上組み合わせて含まれていてもよい。好ましい第2のジオール単位(B2)としては、C2-6アルキレングリコールなどの直鎖状または分岐鎖状アルキレングリコールであり、好ましくはC2-4アルキレングリコール、さらに好ましくはエチレングリコール、プロピレングリコールなどのC2-3アルキレングリコール、特にエチレングリコールに由来する単位を含むのが好ましい。
なお、直鎖状または分岐鎖状アルキレングリコールなどの好ましい態様の第2のジオール単位(B2)の割合は、第2のジオール単位(B2)全体に対して、例えば10~100モル%程度、好ましくは以下段階的に、50モル%以上、70モル%以上、90モル%以上であり、さらに好ましくは100モル%である。
第3のジオール単位(B3)
必ずしも必要ではないが、ジオール単位(B)は、下記式(6)で表される第3のジオール単位(B3)を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。第3のジオール単位(B3)を含むと、複屈折を大きく増加することなく(維持または低減しつつ)屈折率およびガラス転移温度などの耐熱性を向上し易いようである。
Figure 2023152923000012
(式中、Rは置換基を示し、rは0~8の整数を示し、
3aおよびZ3bは独立してアレーン環を示し、
7aおよびR7bは独立して置換基を示し、s1およびs2は独立して0以上の整数を示し、
5aおよびA5bは独立して直鎖状または分岐鎖状アルキレン基を示し、t1およびt2は独立して0または1以上の整数を示す)。
前記式(6)において、Z3aおよびZ3bで表されるアレーン環(芳香族炭化水素環)としては、例えば、ベンゼン環などの単環式アレーン環、多環式アレーン環などが挙げられ、多環式アレーン環には、縮合多環式アレーン環(縮合多環式芳香族炭化水素環)、環集合アレーン環(環集合多環式芳香族炭化水素環)などが含まれる。
縮合多環式アレーン環としては、例えば、縮合二環式アレーン環、縮合三環式アレーン環などの縮合二ないし四環式アレーン環などが挙げられる。縮合二環式アレーン環としては、例えば、ナフタレン環、インデン環などの縮合二環式C10-16アレーン環などが挙げられる。縮合三環式アレーン環としては、例えば、アントラセン環、フェナントレン環などの縮合三環式C14-20アレーン環などが挙げられる。好ましい縮合多環式アレーン環は、ナフタレン環などの縮合多環式C10-14アレーン環である。
環集合アレーン環としては、例えば、ビフェニル環、フェニルナフタレン環、ビナフチル環などのビアレーン環;テルフェニル環などのテルアレーン環などが挙げられる。好ましい環集合アレーン環は、ビフェニル環などのC12-18ビアレーン環である。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、「環集合アレーン環」とは、2つ以上の環系(アレーン環系)が一重結合(単結合)か二重結合で直結し、環を直結する結合の数が環系の数より1つだけ少ないものを意味し、例えば、上述のように、フェニルナフタレン環、ビナフチル環などは縮合多環式アレーン環骨格を有していても環集合アレーン環に分類され、ナフタレン環(非環集合アレーン環)などの「縮合多環式アレーン環」と明確に区別される。
3aおよびZ3bの種類は、互いに同一または異なっていてもよく、同一であるのが好ましい。好ましいZ3aおよびZ3bは、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環などのC6-12アレーン環であり、さらに好ましくはベンゼン環、ナフタレン環などのC6-10アレーン環、特にベンゼン環である。
なお、フルオレン環の9位に結合するZ3aおよびZ3bの置換位置は、特に限定されず、例えば、Z3a、Z3bがベンゼン環の場合はいずれの位置であってもよく、Z3a、Z3bがナフタレン環の場合、1位(1-ナフチル)または2位(2-ナフチル)のいずれかの位置、好ましくは2位であり、Z3a、Z3bがビフェニル環の場合、2位、3位、4位のいずれかの位置、好ましくは3位である。
で表される置換基としては、反応に不活性な非反応性基または非重合性基であるのが好ましく、例えば、第1のジカルボン酸単位(A1)の項においてR2a、R2bとして例示した置換基(非反応性基または非重合性基)などが挙げられ、代表的な置換基としては、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基などが挙げられる。好ましいRは、ハロゲン原子、炭化水素基、シアノ基であり、さらに好ましくはアルキル基などの炭化水素基である。アルキル基としては、直鎖状または分岐鎖状アルキル基、例えば、メチル基、エチル基、t-ブチル基などのC1-6アルキル基などが挙げられ、メチル基などのC1-4アルキル基が好ましい。
また、Rの置換数rとしては、例えば0~6の整数、好ましくは以下段階的に、0~4の整数、0~3の整数、0~2の整数、0~1の整数であり、特に0が好ましい。なお、置換数rが2以上である場合、2以上の基Rの種類は互いに同一または異なっていてもよく、同一が好ましい。Rの結合位置(置換位置)は、特に限定されず、例えば、フルオレン環の2位、7位、2,7位などが挙げられ、2,7位が好ましい。
7aおよびR7bで表される置換基としては、反応に不活性な非反応性基または非重合性基であるのが好ましく、例えば、第1のジカルボン酸単位(A1)の項においてR2a、R2bとして例示した置換基(非反応性基または非重合性基)などが挙げられ、代表的な置換基としては、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基などが挙げられる。好ましいR7a、R7bとしては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基などの炭化水素基、アルコキシ基などの基[-OR]が挙げられ、さらに好ましくはメチル基などの直鎖状または分岐鎖状C1-6アルキル基、シクロヘキシル基などのC5-8シクロアルキル基、フェニル基などのC6-14アリール基、メトキシ基などの直鎖状または分岐鎖状C1-4アルコキシ基が挙げられる。なかでも、アルキル基、アリール基が好ましく、特に、メチル基などの直鎖状または分岐鎖状C1-4アルキル基、フェニル基などのC6-10アリール基が好ましい。なお、基R7a、R7bがアリール基であるとき、R7a、R7bは、それぞれ環Z3a、Z3bとともに前記環集合アレーン環を形成してもよい。
7a、R7bの置換数s1、s2は、それぞれ0以上の整数であればよく、環Z3a、Z3bの種類に応じて適宜選択でき、例えば0~6程度の整数であってもよく、好ましくは0~4の整数、より好ましくは0~2の整数、さらに好ましくは0または1、特に0である。s1、s2は、互いに異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。また、s1が2以上である場合、2以上のR7aの種類は、それぞれ互いに同一または異なっていてもよく、s2およびR7bについても同様である。また、R7a、R7bの種類は、互いに同一または異なっていてもよい。R7a、R7bの置換位置は特に制限されず、Z3a、Z3bにおいて、主鎖を形成するエーテル結合(-O-)およびフルオレン環の9位との結合位置以外の位置に置換していればよく、例えば、Z3a、Z3bにおける前記エーテル結合(-O-)に対してオルト位(エーテル結合の結合位置に隣接する炭素原子)に置換していてもよい。
5a、A5bとしては、直鎖状または分岐鎖状アルキレン基、例えば、エチレン基、プロピレン基(1,2-プロパンジイル基)、トリメチレン基、1,2-ブタンジイル基、テトラメチレン基などのC2-6アルキレン基などが挙げられ、好ましくはC2-4アルキレン基、さらに好ましくはエチレン基、プロピレン基などのC2-3アルキレン基、特にエチレン基が好ましい。
アルキレンオキシ基[-(A5aO)-]、[-(A5bO)-]の繰り返し数(付加モル数)t1、t2は、それぞれ0以上であればよく、例えば0~15程度の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、0~10、0~8、0~6、0~4、0~2、0~1である。また、繰り返し数t1、t2は、1以上であると重合反応性を向上し易く、例えば1~15程度の範囲から選択してもよく、好ましくは以下段階的に、1~10、1~8、1~6、1~4、1~3、1~2であり、特に1が好ましい。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、「繰り返し数(付加モル数)」は、平均値(算術平均値、相加平均値)または平均付加モル数であってもよく、好ましい態様は、上述の好ましい整数の範囲と同様であってもよい。t1、t2が大きすぎると、耐熱性や屈折率が低下するおそれがある。また、t1、t2は、互いに同一または異なっていてもよい。t1が2以上の場合、2以上のアルキレンオキシ基[-(A5aO)-]の種類は互いに異なっていてもよいが、同一であるのが好ましく、t2および基[-(A5bO)-]についても同様である。また、A5aおよびA5bの種類は、互いに同一または異なっていてもよい。
基[-O-(A5aO)t1-]、[-O-(A5bO)t2-](すなわち、前記主鎖を形成するエーテル結合)の環Z3a、Z3bに対する置換位置は、特に限定されず、Z3a、Z3bの適当な位置にそれぞれ置換していればよい。基[-O-(A5aO)t1-]、[-O-(A5bO)t2-]の環Z3a、Z3bに対する置換位置は、Z3a、Z3bがベンゼン環である場合、フルオレン環の9位に結合するフェニル基の2位、3位、4位のいずれかの位置、なかでも、3位または4位、特に4位に置換するのが好ましい。また、Z3a、Z3bがナフタレン環である場合、フルオレン環の9位に結合するナフチル基の5~8位のいずれかの位置に置換している場合が多く、例えば、フルオレン環の9位に対してナフタレン環の1位または2位が置換し(1-ナフチルまたは2-ナフチルの関係で置換し)、この置換位置に対して、1,5位、2,6位の関係、特に2,6位の関係で置換するのが好ましい。また、Z3a、Z3bが環集合アレーン環である場合、基[-O-(A5aO)t1-]、[-O-(A5bO)t2-]の置換位置は特に限定されず、例えば、フルオレンの9位に結合するアレーン環またはこのアレーン環に隣接するアレーン環に置換していてもよい。例えば、Z3a、Z3bがビフェニル環(またはZ3a、Z3bがベンゼン環、s1、s2が1、R7a、R7bがフェニル基)の場合、ビフェニル環の3位または4位、好ましくは3位がフルオレンの9位に結合していてもよく、ビフェニル環の3位がフルオレンの9位に結合する場合、基[-O-(A5aO)t1-]、[-O-(A5bO)t2-]の置換位置は、例えば、ビフェニル環の2位、4位、5位、6位、2’位、3’位、4’位のいずれの位置であってもよく、好ましくは6位または4’位、特に6位が好ましい。
第3のジオール単位(B3)に対応する第3のジオール成分としては、例えば、前記式(6)において、t1およびt2が0である9,9-ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類;t1およびt2が1以上、例えば1~10程度である9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール]フルオレン類などが挙げられる。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、特に断りのない限り、「(ポリ)アルコキシ」とは、アルコキシ基およびポリアルコキシ基の双方を含む意味に用いる。
9,9-ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類としては、例えば、9,9-ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(アルキル-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(アリール-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレンなどが挙げられる。
9,9-ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレンとしては、例えば、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンなどが挙げられる。
9,9-ビス(アルキル-ヒドロキシフェニル)フルオレンとしては、例えば、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス[(モノまたはジ)C1-4アルキル-ヒドロキシフェニル]フルオレンなどが挙げられる。
9,9-ビス(アリール-ヒドロキシフェニル)フルオレンとしては、例えば、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス(C6-10アリール-ヒドロキシフェニル)フルオレンなどが挙げられる。
9,9-ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレンとしては、例えば、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(5-ヒドロキシ-1-ナフチル)フルオレンなどが挙げられる。
9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール]フルオレン類としては、例えば、9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル]フルオレン、9,9-ビス[アルキル-ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル]フルオレン、9,9-ビス[アリール-ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル]フルオレン、9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシナフチル]フルオレンなどが挙げられる。
9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル]フルオレンとしては、例えば、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9-ビス[ヒドロキシ(モノないしデカ)C2-4アルコキシ-フェニル]フルオレンなどが挙げられる。
9,9-ビス[アルキル-ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル]フルオレンとしては、例えば、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシプロポキシ)-3-メチルフェニル]フルオレンなどの9,9-ビス[(モノまたはジ)C1-4アルキル-ヒドロキシ(モノないしデカ)C2-4アルコキシ-フェニル]フルオレンなどが挙げられる。
9,9-ビス[アリール-ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル]フルオレンとしては、例えば、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシプロポキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス[C6-10アリール-ヒドロキシ(モノないしデカ)C2-4アルコキシ-フェニル]フルオレンなどが挙げられる。
9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシナフチル]フルオレンとしては、例えば、9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[5-(2-ヒドロキシエトキシ)-1-ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシプロポキシ)-2-ナフチル]フルオレンなどの9,9-ビス[ヒドロキシ(モノないしデカ)C2-4アルコキシ-ナフチル]フルオレンなどが挙げられる。
これらの第3のジオール単位(B3)は、単独でまたは二種以上組み合わせて含んでいてもよい。好ましい第3のジオール単位(B3)としては、9,9-ビス[ヒドロキシ(モノないしペンタ)C2-4アルコキシC6-10アリール]フルオレンなどの9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール]フルオレン類;より好ましくは9,9-ビス[ヒドロキシC2-4アルコキシC6-10アリール]フルオレンなどの9,9-ビス[ヒドロキシアルコキシアリール]フルオレン;さらに好ましくは9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9-ビス[ヒドロキシC2-3アルコキシ-フェニル]フルオレン由来の構成単位である。
なお、9,9-ビス[ヒドロキシアルコキシアリール]フルオレンなどの好ましい第3のジオール単位(B3)の割合は第3のジオール単位(B3)全体に対して、例えば10~100モル%程度、好ましくは以下段階的に、50モル%以上、70モル%以上、90モル%以上であり、さらに好ましくは100モル%である。
第4のジオール単位(B4)
なお、ジオール単位(B)は、必ずしも含んでいなくてもよいが、必要に応じて、第1のジオール単位(B1)、第2のジオール単位(B2)および第3のジオール単位(B3)とは異なる第4のジオール単位(B4)を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。
第4のジオール単位(B4)としては、例えば、芳香族ジオール成分[ただし、前記第3のジオール単位(B3)は除く]およびそのジオール成分のアルキレンオキシド(アルキレンカーボネートまたはハロアルカノール)付加体に由来する構成単位などが挙げられる。
芳香族ジオールとしては、例えば、ヒドロキノン、レゾルシノールなどのジヒドロキシアレーン;ベンゼンジメタノールなどの芳香脂肪族ジオール;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールC、ビスフェノールG、ビスフェノールSなどのビスフェノール類;p,p’-ビフェノールなどのビフェノール類などが挙げられる。
これらのジオール成分のアルキレンオキシド(対応するアルキレンカーボネートまたはハロアルカノール)付加体としては、例えば、C2-4アルキレンオキシド付加体、好ましくはエチレンオキシド付加体、プロピレンオキシド付加体などのC2-3アルキレンオキシド付加体が挙げられ、付加モル数は特に制限されない。具体的には、ビスフェノールA 1モルに対して、2~10モル程度のエチレンオキシドが付加した付加体などが挙げられる。
これらの第4のジオール単位(B4)は、単独でまたは二種以上組み合わせて含まれていてもよい。
第4のジオール単位(B4)の割合は、ジオール単位(B)全体に対して、例えば50モル%未満、好ましくは30モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下であり、実質的に第4のジオール単位(B4)を含まないのが好ましく、第4のジオール単位(B4)を含む場合の前記割合は、例えば0.1~5モル%程度であってもよい。
第1のジオール単位(B1)および第2のジオール単位(B2)の総量の割合は、ジオール単位(B)全体に対して、例えば1モル%以上、具体的には10~100モル%程度であってもよく、好ましくは以下段階的に、30モル%以上、50モル%以上、70モル%以上、90モル%以上であり、特に100モル%である。
第1のジオール単位(B1)、第2のジオール単位(B2)および第3のジオール単位(B3)の総量の割合は、ジオール単位(B)全体に対して、例えば1モル%以上、具体的には10~100モル%程度であってもよく、好ましくは以下段階的に、30モル%以上、50モル%以上、70モル%以上、90モル%以上であり、特に100モル%である。
第1のジオール単位(B1)の割合は、ジオール単位(B)全体に対して、例えば1~100モル%程度、具体的には30~100モル%程度であってもよく、好ましくは以下段階的に、50~100モル%、60~99モル%、70~98モル%、80~95モル%、85~92モル%である。第1のジオール単位(B1)の割合が少なすぎると、部分分散比θgFが低下したり、アッベ数を調整し難く、特に高い範囲に調整し難くなるおそれがあり、多すぎると、重合反応性が低下して分子量や成形性(生産性)が低下したり、屈折率が低下したりするおそれがある。
第1のジオール単位(B1)と第2のジオール単位(B2)との割合は、前者/後者(モル比)=0/100~100/0の範囲から選択でき、例えば1/99~100/0程度であってもよく、好ましくは以下段階的に、30/70~100/0、50/50~99/1、70/30~98/2、80/20~95/5、85/15~92/8である。第1のジオール単位(B1)の割合が少なすぎると、部分分散比θgFが低下したり、アッベ数を調整し難く、特に高い範囲に調整し難くなったりするおそれがあり、多すぎると、重合反応性が低下して分子量や成形性(生産性)が低下したり、屈折率が低下したりするおそれがある。
第1のジオール単位(B1)と第3のジオール単位(B3)との割合は、前者/後者(モル比)=0/100~100/0の範囲から選択でき、例えば1/99~100/0程度であってもよく、好ましくは以下段階的に、30/70~98/2、40/60~95/5、50/50~90/10、60/40~85/15である。第3のジオール単位(B3)の割合が少なすぎると、屈折率や耐熱性が低下するおそれがあり、多すぎると、部分分散比θgFが低下したり、アッベ数を調整し難く、特に高い範囲に調整し難くなったりするおそれがある。
第2のジオール単位(B2)と第3のジオール単位(B3)との割合は、前者/後者(モル比)=0/100~100/0の範囲から選択でき、例えば1/99~100/0程度であってもよく、好ましくは以下段階的に、5/95~50/50、10/90~40/60、15/85~35/65、20/80~30/70である。第2のジオール単位(B2)の割合が少なすぎると、重合反応性が低下して分子量や成形性(生産性)が低下したり、屈折率が低下したりするおそれがあり、第3のジオール単位(B3)の割合が少なすぎると、屈折率や耐熱性が低下するおそれがある。
なお、ジオール単位(B)[第1~4のジオール単位(B1)~(B4)の総量]の割合は、熱可塑性樹脂の構成単位全体(熱可塑性樹脂を構成する全てのモノマー成分由来の構成単位の総量)に対して、例えば1モル%以上、具体的には10~50モル%程度であってもよく、好ましくは以下段階的に、20~50モル%、30~50モル%、40~50モル%である。
熱可塑性樹脂中のジカルボン酸単位(A)と、ジオール単位(B)との割合は、前者/後者(モル比)=1/0.8~1/1.2、好ましくは1/0.9~1/1.1であり、ほぼ等モルであるのが好ましい。
また、脂環族ジカルボン酸単位(第2のジカルボン酸単位)(A2)および脂環族ジオール単位(第1のジオール単位)(B1)の総量の割合は、脂環族モノマー成分由来の構成単位全体に対して、例えば1モル%以上、具体的には10~100モル%程度であってもよく、好ましくは以下段階的に、30モル%以上、50モル%以上、70モル%以上、90モル%以上であり、特に100モル%である。
第2のジカルボン酸単位(A2)と第1のジオール単位(B1)との割合は、前者/後者(モル比)=0/100~100/0の範囲から選択でき、例えば10/90~90/10程度であってもよく、好ましくは以下段階的に、15/85~80/20、25/75~70/30、35/65~60/40、40/60~55/45である。このような範囲に調整すると、部分分散比θgFを向上し易いようである。
第1のジカルボン酸単位(A1)と脂環族モノマー成分由来の構成単位との割合、特に、第1のジカルボン酸単位(A1)と第2のジカルボン酸単位(A2)および第1のジオール単位(B1)の総量との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=1/99~99/1程度であってもよく、好ましくは以下段階的に、2/98~25/75、3/97~20/80、4/96~15/85、5/95~12/88である。このような範囲に調整すると、部分分散比θgFを向上し易いようである。
第1のジカルボン酸単位(A1)と第1のジオール単位(B1)との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=1/99~100/0程度であってもよく、好ましくは以下段階的に、1/99~50/50、3/97~35/65、5/95~30/70、8/92~25/75、10/90~20/80である。このような範囲に調整すると、部分分散比θgFを向上し易いようである。
カーボネート単位(C)
熱可塑性樹脂がジオール単位(B)を含むポリエステル系樹脂である場合、必ずしも含んでいなくてもよいが、必要に応じてさらにカーボネート単位(C)を含むことでポリエステルカーボネート樹脂を形成してもよい。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、「カーボネート単位」とは、ジオール成分などとの反応によりカーボネート結合[-O-C(=O)-O-]を形成可能なカーボネート結合形成成分に由来する構成単位、すなわち、カルボニル基[-C(=O)-]を意味する。換言すると、カーボネート単位(カルボニル基)に隣接して結合する2つのジオール単位の末端酸素原子とともにカーボネート結合を形成できる。
そのため、カーボネート結合形成成分(C)としては、ジオール成分との反応により、カーボネート結合を形成可能な化合物であればよく、代表的なカーボネート結合形成成分(C)としては、例えば、ホスゲン、トリホスゲンなどのホスゲン類、ジフェニルカーボネートなどの炭酸ジエステル類などが挙げられる。
これらのカーボネート結合形成成分(C)は単独でまたは二種以上組み合わせて使用することもできる。これらのカーボネート結合形成成分(C)のうち、安全性などの観点からジフェニルカーボネートなどの炭酸ジエステル類が好ましい。
熱可塑性樹脂中のジカルボン酸単位(A)およびカーボネート単位(C)の総量と、ジオール単位(B)との割合は、前者/後者(モル比)=1/0.8~1/1.2、好ましくは1/0.9~1/1.1であり、ほぼ等モルであるのが好ましい。また、ジカルボン酸単位(A)とカーボネート単位(C)との割合(A/Cともいう)は、A/C(モル比)=100/0~1/99程度、例えば90/10~10/90の範囲から選択してもよく、好ましくは以下段階的に、80/20~20/80、70/30~30/70、60/40~40/60である。
他の構成単位(D)
なお、熱可塑性樹脂は、ジカルボン酸単位(A)、ジオール単位(B)およびカーボネート単位(C)とは異なる他の構成単位(D)を含んでいなくてもよいが、必要に応じ、本発明の効果を害しない範囲で含んでいてもよい。
他の構成単位(D)としては、熱可塑性樹脂の種類などに応じて、例えば、ジアミン成分、アミノカルボン酸成分またはラクタム成分、ジイソシアネート成分などの重合成分に由来する構成単位であってもよく、ポリエステル系樹脂である場合、例えば、ヒドロキシカルボン酸成分や対応するラクトン成分、3以上の重合性基(カルボキシル基および/またはヒドロキシル基)を有する多官能性重合成分などに由来する構成単位が挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸成分としては、例えば、ヒドロキシ安息香酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸;乳酸、3-ヒドロキシ酪酸、6-ヒドロキシヘキサン酸などの脂肪族ヒドロキシカルボン酸(ヒドロキシアルカン酸);これらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。対応するラクトン成分としては、例えば、ε-カプロラクトンなどのヒドロキシアルカン酸に対応するラクトンなどが挙げられる。
合計で3以上の重合性基(カルボキシル基および/またはヒドロキシル基)を有する多官能性重合成分としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸;グリセリン、ペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコールなどが挙げられる。
このような他の構成単位(D)の割合は、構成単位全体(ジカルボン酸単位(A)、ジオール単位(B)、カーボネート単位(C)および他の構成単位(D)の総量)に対して、例えば、50モル%以下、好ましくは以下段階的に、0~30モル%、0~10モル%、0.01~5モル%であり、他の構成単位(D)を実質的に含まないのが好ましい。
(代表的な熱可塑性樹脂)
本発明の代表的な熱可塑性樹脂は、第1のジカルボン酸単位(A1)を含むジカルボン酸単位(A)と、ジオール単位(B)とを少なくとも含むポリエステル系樹脂であって、好ましくは第1のジカルボン酸単位(A1)、第2のジカルボン酸単位(A2)、第1のジオール単位(B1)および第2のジオール単位(B2)を少なくとも含むポリエステル系樹脂である(以下、単に樹脂(P)ともいう)。樹脂(P)は、所定の構成単位を上述した各割合で含んでいてもよい。
樹脂(P1)
樹脂(P)のうち、アッベ数が高くても、部分分散比θgF(またはΔθgF値)を有効に向上できる点から、さらに、前記ジカルボン酸単位(A3-2)[第3のジカルボン酸単位(A3)のうち、R4a,R4bとして置換または未置換のアリール基を有する単位]を少なくとも含む樹脂(P1)が好ましい。なお、樹脂(P1)は、前記ジカルボン酸単位(A3-1)[第3のジカルボン酸単位(A3)のうち、R4a,R4bとして置換または未置換のアリール基を有しない単位]を含んでいなくてもよい。また、樹脂(P1)は、第2のジカルボン酸単位(A2)として、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸由来の構成単位などの環Zが単環式である単位を含むのが好ましい。
樹脂(P1)は、第1のジオール単位(B1)として、トリシクロデカンジメタノールなどの環Zが架橋環式である単位(B1-2)を含むのが好ましい。環Zが単環式である単位(B1-1)を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。
なお、樹脂(P1)は、所定の構成単位を上述した各割合で含んでいてもよい。
特に、樹脂(P1)において、第1のジカルボン酸単位(A1)および第2のジカルボン酸単位(A2)の総量と、ジカルボン酸単位(A3-2)との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=70/30~99/1、好ましくは以下段階的に、80/20~97/3、85/15~95/5、87/13~93/7である。ジカルボン酸単位(A3-2)が少なすぎると、部分分散比θgF(またはΔθgF値)を有効に向上し難くなるおそれがあり、多すぎると、複屈折が増加したり、成形性が低下したりするおそれがある。
樹脂(P1)において、第1のジカルボン酸単位(A1)と、第2のジカルボン酸単位(A2)との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=1/99~30/70、好ましくは以下段階的に、3/97~20/80、5/95~15/85、7/93~13/87である。第2のジカルボン酸単位(A2)の割合が多すぎると、屈折率や耐熱性が低下するおそれがあり、少なすぎると、アッベ数を調整し難く、特に高い範囲に調整し難くなるおそれがある。
樹脂(P1)において、第1のジカルボン酸単位(A1)、第2のジカルボン酸単位(A2)およびジカルボン酸単位(A3-2)の総量の割合は、ジカルボン酸単位(A)全体に対して、例えば50~100モル%、好ましくは以下段階的に、70モル%以上、90モル%以上、100モル%である。
樹脂(P1)において、第1のジオール単位(B1)と第2のジオール単位(B2)との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=70/30~99/1、好ましくは以下段階的に、80/20~97/3、85/15~95/5である。第1のジオール単位(B1)の割合が少なすぎると、部分分散比θgFが低下したり、アッベ数を調整し難く、特に高い範囲に調整し難くなったりするおそれがあり、多すぎると、重合反応性が低下して分子量や成形性(生産性)が低下したり、屈折率が低下したりするおそれがある。
樹脂(P1)において、第1のジオール単位(B1)および第2のジオール単位(B2)の総量の割合は、ジオール単位(B)全体に対して、例えば50~100モル%、好ましくは以下段階的に、70モル%以上、90モル%以上、100モル%である。
樹脂(P2)
前記樹脂(P)は、ジカルボン酸単位(B3-2)を含まない樹脂(P2)であってもよい。樹脂(P2)は、所定の構成単位を上述した各割合で含んでいてもよい。従来、アッベ数νdが、例えば28~38、好ましくは30~35程度、かつ部分分散比θgFが、例えば0.63~0.66、好ましくは0.64~0.65程度の光学材料(樹脂材料)はあまり知られていなかったが、樹脂(P2)は、このような特性を示すこともできる。代表的な樹脂(P2)としては、例えば、下記樹脂(P2-1)~(P2-3)などが挙げられる。
樹脂(P2-1)
樹脂(P2-1)は、ジカルボン酸単位(B3-2)を含まない前記樹脂(P2)のうち、さらに、ジカルボン酸単位(B3-1)を含む樹脂である。
樹脂(P2-1)は、第2のジカルボン酸単位(A2)として、2,6-デカリンジカルボン酸由来の構成単位などの環Zが架橋環式である単位を含むのが好ましい。
また、樹脂(P2-1)は、第1のジオール単位(B1)として、シクロヘキサンジオールなどの環Zが単環式である単位(B1-1)と、トリシクロデカンジメタノールなどの環Zが架橋環式である単位(B1-2)とを含むのが好ましい。樹脂(P2-1)は、第3のジオール単位(B3)を含んでいなくてもよいが、部分分散比θgFだけでなく、耐熱性や屈折率も向上し易く、複屈折を低減し易い点で、第3のジオール単位(B3)を含むのが好ましい。
なお、樹脂(P2-1)は、所定の構成単位を上述した各割合で含んでいてもよい。
特に、樹脂(P2-1)において、第1のジカルボン酸単位(A1)および第2のジカルボン酸単位(A2)の総量と、ジカルボン酸単位(A3-1)との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=70/30~99/1、好ましくは以下段階的に、80/20~97/3、85/15~95/5、87/13~93/7である。ジカルボン酸単位(A3-1)が少なすぎると、複屈折が増加するおそれがある。
樹脂(P2-1)において、第1のジカルボン酸単位(A1)と、第2のジカルボン酸単位(A2)との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=1/99~30/70、好ましくは以下段階的に、5/95~20/80、10/90~15/85である。第2のジカルボン酸単位(A2)の割合が多すぎると、屈折率や耐熱性が低下するおそれがあり、少なすぎると、アッベ数を調整し難く、特に高い範囲に調整し難くなるおそれがある。
樹脂(P2-1)において、第1のジカルボン酸単位(A1)、第2のジカルボン酸単位(A2)およびジカルボン酸単位(A3-1)の総量の割合は、ジカルボン酸単位(A)全体に対して、例えば50~100モル%、好ましくは以下段階的に、70モル%以上、90モル%以上、100モル%である。
樹脂(P2-1)において、第1のジオール単位(B1)が単位(B1-1)と単位(B1-2)とを含む場合、その割合は、例えば、前者/後者(モル比)=30/70~90/10、好ましくは以下段階的に、40/60~80/20、50/50~75/25、60/40~70/30である。
樹脂(P2-1)において、第1のジオール単位(B1)と第2のジオール単位(B2)との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=80/20~99/1、好ましくは以下段階的に、85/15~97/3、90/10~95/5である。第1のジオール単位(B1)の割合が少なすぎると、部分分散比θgFが低下したり、アッベ数を調整し難く、特に高い範囲に調整し難くなったりするおそれがあり、多すぎると、重合反応性が低下して分子量や成形性(生産性)が低下したり、屈折率が低下したりするおそれがある。
樹脂(P2-1)において、第1のジオール単位(B1)および第2のジオール単位(B2)の総量と、第3のジオール単位(B3)との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=50/50~100/0、好ましくは以下段階的に、60/40~97/3、70/30~95/5、80/20~90/10である。第3のジオール単位(B3)が少なすぎると、部分分散比θgFだけでなく、耐熱性や屈折率も低下し易く、複屈折が増加するおそれがある。
樹脂(P2-1)において、第1のジオール単位(B1)、第2のジオール単位(B2)および第3のジオール単位(B3)の総量の割合は、ジオール単位(B)全体に対して、例えば50~100モル%、好ましくは以下段階的に、70モル%以上、90モル%以上、100モル%である。
樹脂(P2-2)
樹脂(P2-2)は、ジカルボン酸単位(B3-2)を含まない前記樹脂(P2)のうち、さらに、第3のジオール単位(B3)を含む樹脂である。
樹脂(P2-2)は、第2のジカルボン酸単位(A2)として、2,6-デカリンジカルボン酸由来の構成単位などの環Zが架橋環式である単位を含むのが好ましい。樹脂(P2-2)は、第3のジカルボン酸単位(A3)を含んでいなくてもよい。
また、樹脂(P2-2)は、第1のジオール単位(B1)として、トリシクロデカンジメタノールなどの環Zが架橋環式である単位(B1-2)を含むのが好ましく、シクロヘキサンジオールなどの環Zが単環式である単位(B1-1)を含んでいなくてもよい。
なお、樹脂(P2-2)は、所定の構成単位を上述した各割合で含んでいてもよい。
樹脂(P2-2)において、第1のジカルボン酸単位(A1)と、第2のジカルボン酸単位(A2)との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=5/95~30/70、好ましくは以下段階的に、8/92~25/75、10/90~20/80、12/88~17/83である。第2のジカルボン酸単位(A2)の割合が多すぎると、部分分散比θgF、屈折率や耐熱性が低下するおそれがあり、少なすぎると、アッベ数を調整し難く、特に高い範囲に調整し難くなるおそれがある。
樹脂(P2-2)において、第1のジカルボン酸単位(A1)および第2のジカルボン酸単位(A2)の総量の割合は、ジカルボン酸単位(A)全体に対して、例えば50~100モル%、好ましくは以下段階的に、70モル%以上、90モル%以上、100モル%である。
樹脂(P2-2)において、単位(B1-2)などの第1のジオール単位(B1)と第2のジオール単位(B2)との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=60/40~99/1、好ましくは以下段階的に、70/30~95/5、80/20~90/10である。第1のジオール単位(B1)の割合が少なすぎると、部分分散比θgFが低下したり、アッベ数を調整し難く、特に高い範囲に調整し難くなったりするおそれがあり、多すぎると、重合反応性が低下して分子量や成形性(生産性)が低下したり、屈折率が低下したりするおそれがある。
樹脂(P2-2)において、第1のジオール単位(B1)および第2のジオール単位(B2)の総量と、第3のジオール単位(B3)との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=50/50~85/15、好ましくは以下段階的に、60/40~80/20、65/35~75/25である。第3のジオール単位(B3)が少なすぎると、部分分散比θgFだけでなく、耐熱性や屈折率も低下し易く、複屈折が増加するおそれがある。
樹脂(P2-2)において、第1のジオール単位(B1)、第2のジオール単位(B2)および第3のジオール単位(B3)の総量の割合は、ジオール単位(B)全体に対して、例えば50~100モル%、好ましくは以下段階的に、70モル%以上、90モル%以上、100モル%である。
樹脂(P2-3)
樹脂(P2-3)は、ジカルボン酸単位(B3-2)を含まない前記樹脂(P2)のうち、さらに、ジカルボン酸単位(B3-1)[第3のジカルボン酸単位(A3)]および第3のジオール単位(B3)を含まない樹脂である。
樹脂(P2-3)は、第2のジカルボン酸単位(A2)として、2,6-デカリンジカルボン酸由来の構成単位などの環Zが架橋環式である単位を含むのが好ましい。
また、樹脂(P2-3)は、第1のジオール単位(B1)として、トリシクロデカンジメタノールなどの環Zが架橋環式である単位(B1-2)を含むのが好ましく、シクロヘキサンジオールなどの環Zが単環式である単位(B1-1)を含んでいなくてもよい。
なお、樹脂(P2-3)は、所定の構成単位を上述した各割合で含んでいてもよい。
樹脂(P2-3)において、第1のジカルボン酸単位(A1)と、第2のジカルボン酸単位(A2)との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=5/95~40/60、好ましくは以下段階的に、8/92~35/65、10/90~30/70、12/88~29/71、13/87~28/72、14/86~27/73、15/85~25/75、18/82~22/78である。第2のジカルボン酸単位(A2)の割合が多すぎると、部分分散比θgF、屈折率や耐熱性が低下するおそれがあり、少なすぎると、アッベ数を調整し難く、特に高い範囲に調整し難くなったり、部分分散比θgFが低下するおそれがある。
樹脂(P2-3)において、第1のジカルボン酸単位(A1)および第2のジカルボン酸単位(A2)の総量の割合は、ジカルボン酸単位(A)全体に対して、例えば50~100モル%、好ましくは以下段階的に、70モル%以上、90モル%以上、100モル%である。
樹脂(P2-3)において、単位(B1-2)などの第1のジオール単位(B1)と第2のジオール単位(B2)との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=70/30~99/1、好ましくは以下段階的に、80/20~97/3、85/15~95/5である。第1のジオール単位(B1)の割合が少なすぎると、部分分散比θgFが低下したり、アッベ数を調整し難く、特に高い範囲に調整し難くなったりするおそれがあり、多すぎると、重合反応性が低下して分子量や成形性(生産性)が低下したり、屈折率が低下したりするおそれがある。
樹脂(P2-3)において、第1のジオール単位(B1)および第2のジオール単位(B2)の総量の割合は、ジオール単位(B)全体に対して、例えば50~100モル%、好ましくは以下段階的に、70モル%以上、90モル%以上、100モル%である。
樹脂(P2)のうち、アッベ数および部分分散比θgFを前記所定の範囲に調整し易いだけでなく、高耐熱性および高屈折率と低複屈折とを充足し易い点で、樹脂(P2-1)または樹脂(P2-2)が好ましく、樹脂(P2-2)がさらに好ましい。
[熱可塑性樹脂の製造方法]
熱可塑性樹脂の製造方法(重合または重縮合)は、前記第1のジカルボン酸成分(A1)を少なくとも含むジカルボン酸成分(A)および脂環族モノマー成分を重合成分として用いること以外は特に制限されず、樹脂の種類や他の重合成分(共重合成分)などに応じて、慣用の方法が利用できる。例えば、ポリエステル樹脂などのポリエステル系樹脂である場合、前述の各ジカルボン酸単位などに対応するジカルボン酸成分(A)と、前述のジオール単位などに対応するジオール成分(B)と、必要に応じてカーボネート結合形成成分(C)などとを反応させて製造すればよく、慣用の方法、具体的には、エステル交換法、直接重合法などの溶融重合法、溶液重合法、界面重合法などで調製できる。
重合方法に応じて、反応は溶媒の存在下または非存在下で行ってもよいが、得られた熱可塑性樹脂中に溶媒が残存すると、成形の際に金型を腐食するおそれがある。また、重合方法に応じて、塩などの副生成物が残留すると、熱可塑性樹脂(またはその成形体)の濁りの原因となり、特に光学部材のように高度な透明性などが要求される用途では不良となるおそれがある。そのため、成形性(生産性)や透明性を向上する観点から、溶媒や塩などの残存または混入を有効に抑制できる溶融重合法(または溶融重合体)が好ましい。
ジカルボン酸成分(A)とジオール成分(B)との仕込み割合は、通常、前者/後者(モル比)=例えば、1/1.2~1/0.8、好ましくは1/1.1~1/0.9であるが、必ずしもこの範囲である必要はなく、各ジカルボン酸成分(A)および各ジオール成分(B)から選択される少なくとも一種の成分を、予定する導入割合に対して過剰に用いて反応させてもよい。例えば、反応系から留出可能なエチレングリコールなどの第2のジオール成分(B2)は、ポリエステル系樹脂中に導入される割合(または導入割合)よりも過剰に使用してもよい。
また、カーボネート結合形成成分(C)を用いる場合、ジカルボン酸成分(A)およびカーボネート結合形成成分(C)の総量と、ジオール成分(B)との使用割合は、例えば、前者/後者(モル比)=1/1.2~1/0.8、好ましくは1/1.1~1/0.9である。なお、カーボネート結合形成成分(C)は、反応における揮発や分解を考慮して、予定する導入割合に対してやや過剰に用いてもよく、ジカルボン酸単位(A)およびカーボネート単位(C)の総量(樹脂中への導入予定量の総量)に対して、例えば0.1~5モル%、好ましくは2~3モル%過剰にカーボネート結合形成成分(C)を用いてもよい。
反応は、触媒の存在下で行ってもよい。触媒としては、慣用のエステル化触媒、例えば、金属触媒などが利用できる。金属触媒としては、例えば、ナトリウムなどのアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属;チタン、マンガン、コバルトなどの遷移金属;亜鉛、カドミウムなどの周期表第12族金属;アルミニウムなどの周期表第13族金属;ゲルマニウム、鉛などの周期表第14族金属;アンチモンなどの周期表第15族金属などを含む金属化合物が用いられる。金属化合物としては、例えば、アルコキシド;酢酸塩、プロピオン酸塩などの有機酸塩;ホウ酸塩、炭酸塩などの無機酸塩;酸化物などであってもよく、これらの水和物であってもよい。代表的な金属化合物としては、例えば、二酸化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム、シュウ酸ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウム-n-ブトキシドなどのゲルマニウム化合物;三酸化アンチモン、酢酸アンチモン、アンチモンエチレングリコレートなどのアンチモン化合物;テトラ-n-プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネート(またはチタン(IV)テトラブトキシド)、シュウ酸チタン、シュウ酸チタンカリウムなどのチタン化合物;酢酸マンガン・4水和物などのマンガン化合物;酢酸カルシウム・1水和物などのカルシウム化合物などが挙げられる。
これらの触媒は単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。複数の触媒を用いる場合、反応の進行に応じて、各触媒を添加することもできる。これらの触媒のうち、酢酸マンガン・4水和物、酢酸カルシウム・1水和物、二酸化ゲルマニウム、チタン(IV)テトラブトキシドなどが好ましい。触媒の使用量は、例えば、ジカルボン酸成分(A)1モルに対して、0.01×10-4~100×10-4モル、好ましくは0.1×10-4~40×10-4モルである。
また、反応は、必要に応じて、熱安定剤や酸化防止剤などの安定剤の存在下で行ってもよい。通常、熱安定剤がよく利用され、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジブチルホスフェート(またはリン酸ジブチル)、亜リン酸、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイトなどのリン化合物などが挙げられる。これらのうち、リン酸ジブチルがよく利用される。熱安定剤の使用量は、例えば、ジカルボン酸成分(A)1モルに対して、0.01×10-4~100×10-4モル、好ましくは0.1×10-4~40×10-4モルである。
反応は、不活性ガス、例えば、窒素ガス;ヘリウム、アルゴンなどの希ガスなどの雰囲気中で行ってもよい。また、反応は、減圧下、例えば、1×10~1×10Pa程度で行うこともできる。エステル交換反応は、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下で行ってもよく、重縮合反応は、減圧下で行ってもよい。反応温度は、重合方法に応じて選択でき、例えば、溶融重合法における反応温度は、例えば150~320℃、好ましくは250~310℃、さらに好ましくは270~300℃である。
反応終了後、生成した熱可塑性樹脂は、慣用の方法、例えば、洗浄、抽出、濃縮、再沈殿、遠心分離、ろ過、カラムクロマトグラフィー、吸着などの分離精製手段や、これらを組み合わせた手段により分離精製してもよい。
[熱可塑性樹脂の特性および用途]
(特性)
本発明の熱可塑性樹脂は、前記第1のジカルボン酸単位(A1)と脂環族モノマー成分由来の構成単位とを含むため、従来の熱可塑性樹脂に比べて、大きな異常分散特性を示す。熱可塑性樹脂の部分分散比θgF値は、温度20℃において、例えば0.59以上、なかでも0.625以上、具体的には0.63~0.8程度であってもよく、好ましくは以下段階的に、0.64~0.75(例えば0.64~0.65)、0.65~0.73、0.66~0.72、0.67~0.715、0.68~0.71、0.69~0.7である。また、アッベ数が同じ基準分散ガラスのθgFに対する差(ΔθgF値)は、例えば0.03以上、具体的には0.035~0.2程度であってもよく、好ましくは以下段階的に、0.04~0.18、0.05~0.15、0.06~0.13、0.07~0.125、0.08~0.12、0.09~0.115、0.1~0.11である。部分分散比θgFまたはΔθgFが低すぎると、色収差を有効に低減または補正できないおそれがある。
熱可塑性樹脂のアッベ数νdは、温度20℃において、例えば19以下または19未満であってもよいが、好ましくは19以上、さらに好ましくは以下段階的に、19~55、19~50、19.5~45、19.5~43、20~40であってもよく、より好ましくは以下段階的に、22~38、25~37、27~36、30~35である。本発明の熱可塑性樹脂は、アッベ数が比較的高い領域にあっても、部分分散比θgFを有効に向上できるようである。そのため、前記アッベ数νdの範囲における下限値は、例えば22以上、好ましくは24以上、さらに好ましくは28以上、特に30以上であってもよく、必要に応じて、35以上、37以上などであってもよい。なお、上限値は特に制限されないが、35以下、34以下、33以下、32以下、31以下などであってもよい。アッベ数が高すぎると屈折率が大きく低下するおそれがある。本発明では、アッベ数を所望の範囲、なかでも比較的高い領域で所望の範囲に調整しても、大きな異常分散特性を示すため、光学材料の選択肢を有効に増やすことができ、特に光学レンズとして好適に利用できる。
また、熱可塑性樹脂は比較的高屈折率であり、その屈折率ndは、温度20℃、波長587.6nmにおいて、例えば1.53~1.63程度の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、1.55~1.62、1.56~1.61、1.57~1.6、1.58~1.59である。
また、熱可塑性樹脂は比較的高屈折率であっても、低複屈折である。熱可塑性樹脂の複屈折は、熱可塑性樹脂単独で形成したフィルムを、延伸温度:ガラス転移温度Tg+10℃、延伸速度:25mm/分、延伸倍率:3倍で一軸延伸した延伸フィルムの複屈折(3倍複屈折)により評価してもよい。前記延伸フィルムの3倍複屈折の絶対値は、測定温度20℃、波長600nmにおいて、例えば0~75×10-4程度の範囲であってもよく、好ましくは以下段階的に、70×10-4以下、50×10-4以下、40×10-4以下、30×10-4以下、25×10-4以下、20×10-4以下、15×10-4以下である、なお、前記3倍複屈折の絶対値の範囲における下限値は0以上であればよいが、例えば1×10-4以上、5×10-4以上、10×10-4以上などであってもよい。
熱可塑性樹脂は、前記式(1)で表される第1のジカルボン酸単位(A1)や、脂環族モノマー成分由来の構成単位などの剛直で嵩高い骨格を有するにもかかわらず、意外にも容易にまたは効率よく高分子量に調製できる。熱可塑性樹脂の重量平均分子量Mwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)などにより測定でき、ポリスチレン換算で、例えば10000~300000程度であってもよく、好ましくは以下段階的に、20000~200000、25000~150000、30000~100000、40000~80000、50000~70000である。重量平均分子量Mwが低すぎると、成形性(生産性)が低下したり、用途が制限されるおそれがある。
熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgは、例えば90~170℃程度であってもよく、好ましくは以下段階的に、100~160℃、110~150℃、120~145℃、130~140℃である。Tgが低過ぎると、耐熱性が低下して、製造および/または使用に際して変色(または着色)し易くなったり、所定形状に成形後、高温環境下で変形し易くなり、高い熱安定性が要求される用途などで利用できないおそれがある。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、部分分散比θgF値、ΔθgF値、アッベ数νd、屈折率nd、3倍複屈折、重量平均分子量Mw、ガラス転移温度Tgは、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
なお、熱可塑性樹脂は、結晶性(結晶性高分子)であってもよいが、複屈折を低減し易い点から、特に光学レンズなどの光学部材などの用途では、非晶性(非晶性高分子)であるのが好ましい。
(成形体)
成形体は、少なくとも前記熱可塑性樹脂を含んでいればよく、優れた光学的特性や成形性などをバランスよく備えているため、光学フィルム(光学シート)、光学レンズなどの光学部材、特に光学レンズとして有効に利用できる。
成形体は、慣用の添加剤、例えば、充填剤または補強剤、染顔料などの着色剤、導電剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、分散剤、流動調整剤、レベリング剤、消泡剤、表面改質剤、加水分解抑制剤、炭素材、安定剤、低応力化剤などを含んでいてもよい。安定剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤などが挙げられる。低応力化剤としては、シリコーンオイル、シリコーンゴム、各種プラスチック粉末、各種エンジニアリングプラスチック粉末などが挙げられる。これらの添加剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用してもよい。これらの添加剤の合計割合は、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して、例えば50質量部以下、好ましくは以下段階的に、30質量部以下、0~10質量部であり、0.1~5質量部程度であってもよい。
成形体は、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、トランスファー成形法、ブロー成形法、加圧成形法、キャスティング成形法などを利用して製造することができる。
また、成形体の形状は、特に限定されず、例えば、線状、繊維状、糸状などの一次元的構造、フィルム状、シート状、板状などの二次元的構造、凹または凸レンズ状などのレンズ状、棒状、中空状(管状)などの三次元的構造などが挙げられる。
熱可塑性樹脂は、光学的特性に優れているため、光学フィルム(または光学シート)を形成するのに有用である。フィルム(光学フィルム)は、前記熱可塑性樹脂を、慣用の成膜方法、例えば、キャスティング法(溶剤キャスト法)、溶融押出法、カレンダー法などを用いて成膜(または成形)することにより製造できる。
フィルムの平均厚みは、1~1000μm程度の範囲から用途に応じて選択でき、例えば1~200μm、好ましくは5~150μm、さらに好ましくは10~120μmである。
フィルムは、未延伸または延伸フィルムであってもよく、延伸フィルムであっても低い複屈折を維持できる。なお、このような延伸フィルムは、一軸延伸フィルムまたは二軸延伸フィルムのいずれであってもよい。
延伸倍率は、一軸延伸または二軸延伸において各方向にそれぞれ、例えば1.1~10倍、好ましくは1.2~8倍、さらに好ましくは1.5~6倍である。なお、二軸延伸の場合、等延伸、例えば、縦横両方向に1.5~5倍延伸であってもよく、偏延伸、例えば、縦方向に1.1~4倍、横方向に2~6倍延伸であってもよい。また、一軸延伸の場合、縦延伸、例えば、縦方向に2.5~8倍延伸であってもよく、横延伸、例えば、横方向に1.2~5倍延伸であってもよい。
延伸フィルムの平均厚みは、例えば1~150μm、好ましくは3~120μm、さらに好ましくは5~100μmである。
なお、このような延伸フィルムは、成膜後のフィルム(または未延伸フィルム)に、延伸処理を施すことにより得ることができる。延伸方法は、特に制限が無く、一軸延伸の場合、湿式延伸法または乾式延伸法のいずれであってもよく、二軸延伸の場合、テンター法(フラット法)であってもチューブ法であってもよいが、延伸厚みの均一性に優れるテンター法が好ましい。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。以下に、評価項目および原料の詳細について示す。
[評価方法]
H-NMR)
試料を、内部標準物質としてテトラメチルシランを含む重クロロホルムに溶解し、核磁気共鳴装置(BRUKER社製「AVANCE III HD」)を用いて、H-NMRスペクトルを測定した。
(ガラス転移温度Tg)
示差走査熱量計(エスアイアイナノテクノロジー(株)製「EXSTAR6000 DSC6220 ASD-2」)を用いて、窒素雰囲気下、10℃/分の昇温速度で測定した。
(分子量)
試料をクロロホルムに溶解し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー(株)製「HLC-8320GPC」)を用いて、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwを求めた。
(屈折率nd)
試料を200~240℃で熱プレスすることによって、厚みが約1mmの試験片を成形した。この試験片を、カルニュ-精密屈折率計「KPR-2000」[(株)島津デバイス製造製]を用いて、測定温度20℃で、試験片の接触液として屈折率1.52の接触液を使用し、波長587.6nm(d線)の屈折率ndを測定した。
(アッベ数νd)
587.6nm(d線)の屈折率ndを測定した試験片を用いて、測定波長を486.1nm(F線)、656.3nm(C線)に変更する以外は屈折率ndと同様にして、屈折率nF、nCをそれぞれ測定した。得られた各波長における屈折率nF、ndおよびnCから、アッベ数νdを以下の式によって算出した。
(アッベ数νd)=(nd-1)/(nF-nC)
(部分分散比θgF)
587.6nm(d線)の屈折率ndを測定した試験片を用いて、測定波長を435.8nm(g線)、486.1nm(F線)、656.3nm(C線)に変更する以外は屈折率ndと同様にして、屈折率ng、nF、nCをそれぞれ測定した。得られた各波長における屈折率ng、nFおよびnCから、部分分散比θgFの値を以下の式によって算出した。
(部分分散比θgF)=(ng-nF)/(nF-nC)
また、以下の方法によりΔθgF値を算出した。すなわち、横軸をアッベ数νd、縦軸を部分分散比θgFとしたグラフにおいて、異常分散性を示さない2種類の光学ガラスK7(νd,θgF)=(60.5,0.547)およびF2(νd,θgF)=(36.3,0.583)をプロットしたとき、この2つの基準分散ガラスの座標を結ぶ直線は下記式で表される。
(部分分散比θgF)=-0.00149×(アッベ数νd)+0.637
この式に得られた樹脂のアッベ数νdを代入して求めた基準分散ガラスのθgF値を、実測した樹脂のθgF値から減じて、ΔθgF値を算出した。
(複屈折(3倍延伸))
試料を200~240℃で熱プレスすることによって、厚みが200~600μmのフィルムを成形した。このフィルムを10mm×50mmの短冊状に切り出し、ガラス転移温度Tg+10℃の温度条件下、25mm/分で延伸倍率が3倍となるように一軸延伸して試験片を得た。得られた試験片を、位相差フィルム・光学材料検査装置(大塚電子(株)製「RETS-100」)を用いて、測定温度20℃、測定波長600nmの条件下、平行ニコル回転法にてリタデーションを測定し、その値を測定部位の厚みで除して複屈折(または3倍複屈折)を算出した。
[原料]
(ジカルボン酸成分)
2,6-BMN-m:下記式で表される6,6’-ビス(メトキシカルボニル)-2,2’-ジメトキシ-1,1’-ビナフチル、特開2021-135355号公報の実施例1に準じて調製したもの
Figure 2023152923000013
DDCM:下記式で表されるデカリン-2,6-ジカルボン酸ジメチル(trans/cis(モル比)=90/10)
Figure 2023152923000014
DMCD:下記式で表されるシクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ジメチル(trans/cis(モル比)=98/2)
Figure 2023152923000015
FDP-m:下記式で表される9,9-ビス(2-メトキシカルボニルエチル)フルオレン[あるいは9,9-ビス(2-カルボキシエチル)フルオレンまたはフルオレン-9,9-ジプロピオン酸のジメチルエステル]、特開2005-89422号公報記載の実施例1において、アクリル酸t-ブチルに代えて、アクリル酸メチル[37.9g(0.44モル)]を用いること以外は同様にして合成したもの
Figure 2023152923000016
DPFDP-m:下記式で表される2,7-ジフェニル-9,9-ビス(2-メトキシカルボニルエチル)フルオレン、国際公開第2020/213470号記載の実施例1B(2-DNFDP-m)に準じて、2-ナフチルボロン酸に代えて、フェニルボロン酸を用いて合成したもの
Figure 2023152923000017
(ジオール成分)
TCDM:下記式で表されるトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール(異性体混合)
Figure 2023152923000018
1,4-CHD:下記式で表されるシクロヘキサン-1,4-ジオール(trans/cis混合)
Figure 2023152923000019
1,4-CHDM:下記式で表される1,4-シクロヘキサンジメタノール(trans/cis混合)
Figure 2023152923000020
EG:下記式で表されるエチレングリコール
Figure 2023152923000021
BPEF:下記式で表される9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン
Figure 2023152923000022
[実施例1]
反応器に、ジカルボン酸成分として2,6-BMN-m(8.6g(20mmol))、DDCM(38.2g(150mmol))、FDP-m(10.2g(30mmol)、ジオール成分としてTCDM(17.7g(90mmol))、1,4-CHD(10.5g(90mmol))、EG(7.5g(120mmol))、エステル交換反応および重縮合反応の触媒として、チタン(IV)テトラブトキシド(27.2mg(80μmol))を仕込み、窒素雰囲気下、240℃まで徐々に加熱しつつ撹拌し、エステル交換反応を行った。エステル交換反応により生成するアルコール成分を除去した後、徐々に250℃、130Paまで昇温、減圧し、EGを除去しながら重縮合反応を行った。反応終了後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂を得た。
[実施例2]
反応器に、ジカルボン酸成分として2,6-BMN-m(10.3g(24mmol))、DDCM(24.4g(96mmol))、ジオール成分としてTCDM(21.2g(108mmol))、EG(8.2g(132mmol))、エステル交換反応および重縮合反応の触媒として、チタン(IV)テトラブトキシド(8.2mg(24μmol))を仕込み、窒素雰囲気下、240℃まで徐々に加熱しつつ撹拌し、エステル交換反応を行った。エステル交換反応により生成するアルコール成分を除去した後、熱安定剤として、リン酸ジブチル(10.1mg(48μmol))を加え、徐々に280℃、130Paまで昇温、減圧し、EGを除去しながら重縮合反応を行った。反応終了後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂を得た。
[実施例3]
反応器に、ジカルボン酸成分として2,6-BMN-m(12.9g(30mmol))、DDCM(38.2g(150mmol))、FDP-m(6.8g(20mmol)、ジオール成分としてTCDM(11.8g(60mmol))、1,4-CHD(11.6g(100mmol))、EG(6.8g(110mmol))、BPEF(13.2g(30mmol))、エステル交換反応および重縮合反応の触媒として、チタン(IV)テトラブトキシド(34.0mg(100μmol))を仕込み、窒素雰囲気下、240℃まで徐々に加熱しつつ撹拌し、エステル交換反応を行った。エステル交換反応により生成するアルコール成分を除去した後、徐々に250℃、130Paまで昇温、減圧し、EGを除去しながら重縮合反応を行った。反応終了後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂を得た。
[実施例4]
反応器に、ジカルボン酸成分として2,6-BMN-m(12.9g(30mmol))、DDCM(36.9g(145mmol))、FDP-m(8.5g(25mmol)、ジオール成分としてTCDM(7.9g(40mmol))、1,4-CHD(9.3g(80mmol))、EG(6.8g(110mmol))、BPEF(30.7g(70mmol))、エステル交換反応および重縮合反応の触媒として、チタン(IV)テトラブトキシド(27.2mg(80μmol))を仕込み、窒素雰囲気下、240℃まで徐々に加熱しつつ撹拌し、エステル交換反応を行った。エステル交換反応により生成するアルコール成分を除去した後、徐々に250℃、130Paまで昇温、減圧し、EGを除去しながら重縮合反応を行った。反応終了後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂を得た。
[実施例5]
反応器に、ジカルボン酸成分として2,6-BMN-m(4.3g(10mmol))、DMCD(16.0g(80mmol))、DPFDP-m(4.9g(10mmol))、ジオール成分としてTCDM(17.7g(90mmol))、EG(6.8g(110mmol))、エステル交換反応および重縮合反応の触媒として、チタン(IV)テトラブトキシド(6.8mg(20μmol))を仕込み、窒素雰囲気下、240℃まで徐々に加熱しつつ撹拌し、エステル交換反応を行った。エステル交換反応により生成するアルコール成分を除去した後、熱安定剤として、リン酸ジブチル(8.4mg(40μmol))を加え、徐々に280℃、130Paまで昇温、減圧し、EGを除去しながら重縮合反応を行った。反応終了後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂を得た。
[実施例6]
反応器に、ジカルボン酸成分として2,6-BMN-m(4.3g(10mmol))、DDCM(19.1g(75mmol))、DPFDP-m(7.4g(15mmol))、ジオール成分としてTCDM(8.8g(45mmol))、1,4-CHD(5.2g(45mmol))、EG(6.8g(110mmol))、エステル交換反応および重縮合反応の触媒として、チタン(IV)テトラブトキシド(27.2mg(80μmol))を仕込み、窒素雰囲気下、240℃まで徐々に加熱しつつ撹拌し、エステル交換反応を行った。エステル交換反応により生成するアルコール成分を除去した後、熱安定剤として、リン酸ジブチル(8.4mg(40μmol))を加え、徐々に280℃、130Paまで昇温、減圧し、EGを除去しながら重縮合反応を行った。反応終了後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂を得た。
[実施例7]
反応器に、ジカルボン酸成分として2,6-BMN-m(4.3g(10mmol))、DDCM(19.1g(75mmol))、DPFDP-m(7.4g(15mmol))、ジオール成分として1,4-CHDM(13.0g(90mmol))、EG(6.8g(110mmol))、エステル交換反応および重縮合反応の触媒として、チタン(IV)テトラブトキシド(27.2mg(80μmol))を仕込み、窒素雰囲気下、240℃まで徐々に加熱しつつ撹拌し、エステル交換反応を行った。エステル交換反応により生成するアルコール成分を除去した後、熱安定剤として、リン酸ジブチル(8.4mg(40μmol))を加え、徐々に280℃、130Paまで昇温、減圧し、EGを除去しながら重縮合反応を行った。反応終了後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂を得た。
[参考例1]
反応器に、ジカルボン酸成分としてDDCM(22.9g(90mmol)、FDP-m(3.4g(10mmol))、ジオール成分としてTCDM(6.4g(32.5mmol))、1,4-CHD(3.8g(32.5mmol))、EG(6.8g(110mmol))、BPEF(11.0g(25mmol))、エステル交換反応および重縮合反応の触媒として、チタン(IV)テトラブトキシド(27.2mg(80μmol))を仕込み、窒素雰囲気下、240℃まで徐々に加熱しつつ撹拌し、エステル交換反応を行った。エステル交換反応により生成するアルコール成分を除去した後、熱安定剤として、リン酸ジブチル(8.4mg(40μmol))を加え、徐々に250℃、130Paまで昇温、減圧し、EGを除去しながら重縮合反応を行った。反応終了後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂を得た。
[参考例2]
反応器に、ジカルボン酸成分としてDMCD(20.0g(100mmol)、ジオール成分として1,4-CHD(5.2g(45mmol))、EG(6.8g(110mmol))、BPEF(19.7g(45mmol))、エステル交換反応および重縮合反応の触媒として、チタン(IV)テトラブトキシド(27.2mg(80μmol))を仕込み、窒素雰囲気下、240℃まで徐々に加熱しつつ撹拌し、エステル交換反応を行った。エステル交換反応により生成するアルコール成分を除去した後、熱安定剤として、リン酸ジブチル(8.4mg(40μmol))を加え、徐々に260℃、130Paまで昇温、減圧し、EGを除去しながら重縮合反応を行った。反応終了後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂を得た。
実施例および参考例で得られた各ポリエステル樹脂のポリマー組成比(調製に用いた各重合成分に由来する構成単位の割合(モル比))および各物性値の評価結果を表に示す。なお、H-NMRスペクトルのピークが重複して正確なポリマー組成比の算出が困難であったが、下記表に記載の程度と推測される(以降の表についても同じ)。
Figure 2023152923000023
Figure 2023152923000024
表1~2の結果から明らかなように、実施例では参考例に比べて部分分散比θgF値およびΔθgF値が大きく、例えば、同程度のアッベ数νdの例による比較、すなわち、実施例1と参考例1との比較や、実施例3,5と参考例2との比較などからも、実施例の方が大きな異常分散特性を示すことが分かった。そのため、光学レンズ、特に、複数のレンズを組み合わせて色収差を低減または補正するための光学レンズなどに有効に利用できる。
[参考例3]
ジカルボン酸成分として、DDCM(30.5g(120mmol))のみを用いたこと以外は、実施例2と同様にして、ポリエステル樹脂を得た。
[実施例8]
ジカルボン酸成分として、2,6-BMN-m(2.6g(6mmol))、DDCM(29.0g(114mmol))を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、ポリエステル樹脂を得た。
[実施例9]
ジカルボン酸成分として、2,6-BMN-m(5.2g(12mmol))、DDCM(27.5g(108mmol))を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、ポリエステル樹脂を得た。
[実施例10]
ジカルボン酸成分として、2,6-BMN-m(7.7g(18mmol))、DDCM(25.9g(102mmol))を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、ポリエステル樹脂を得た。
[参考例4]
反応器に、ジカルボン酸成分としてDDCM(30.5g(120mmol))、ジオール成分としてTCDM(14.1g(72mmol))、EG(7.0g(112mmol))、BPEF(15.8g(36mmol))、エステル交換反応および重縮合反応の触媒として、チタン(IV)テトラブトキシド(8.2mg(24μmol))を仕込み、窒素雰囲気下、240℃まで徐々に加熱しつつ撹拌し、エステル交換反応を行った。エステル交換反応により生成するアルコール成分を除去した後、熱安定剤として、リン酸ジブチル(10.1mg(48μmol))を加え、徐々に280℃、130Paまで昇温、減圧し、EGを除去しながら重縮合反応を行った。反応終了後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂を得た。
[実施例11]
ジカルボン酸成分として、2,6-BMN-m(3.1g(7.2mmol))、DDCM(28.7g(112.8mmol))を用いたこと以外は、参考例4と同様にして、ポリエステル樹脂を得た。
[実施例12]
ジカルボン酸成分として、2,6-BMN-m(4.1g(9.6mmol))、DDCM(28.1g(110.4mmol))を用いたこと以外は、参考例4と同様にして、ポリエステル樹脂を得た。
[実施例13]
ジカルボン酸成分として、2,6-BMN-m(5.2g(12mmol))、DDCM(27.5g(108mmol))を用いたこと以外は、参考例4と同様にして、ポリエステル樹脂を得た。
[実施例14]
ジカルボン酸成分として、2,6-BMN-m(7.2g(16.8mmol))、DDCM(26.2g(103.2mmol))を用いたこと以外は、参考例4と同様にして、ポリエステル樹脂を得た。
実施例および参考例で得られた各ポリエステル樹脂のポリマー組成比(調製に用いた各重合成分に由来する構成単位の割合(モル比))および各物性値の評価結果を下記表に示す。
Figure 2023152923000025
Figure 2023152923000026
表3~4の結果から明らかなように、実施例では参考例に比べて部分分散比θgF値およびΔθgF値が大きかった。そのため、光学レンズ、特に、複数のレンズを組み合わせて色収差を低減または補正するための光学レンズなどに有効に利用できる。
また、参考例3、実施例8~10、および実施例2と、参考例4および実施例11~14とは、いずれも2,6-BMN-m(由来の構成単位)の割合を変化させた例であるが、2,6-BMN-mの割合の増加に伴って、θgF値,ΔθgF値が増加する傾向が見られた。これらの結果から、θgF値,ΔθgF値を大きくするためには、2,6-BMN-mの割合を増加させるのが好ましく、例えば、θgF値を0.625以上とするためには、2,6-BMN-mの割合をジカルボン酸単位中約8モル%以上、好ましくは約12モル%以上、さらに好ましくは約13モル%以上とするのがよいことがわかった。
なお、2,6-BMN-mの割合の増加に伴って、θgF値,ΔθgF値のみならず、Tg(または耐熱性)、屈折率ndについても増加する傾向が見られた。一方、アッベ数νdについては、2,6-BMN-mの割合の増加に伴って減少する傾向が見られ、複屈折については、2,6-BMN-mの割合が増加しても、さほど大きくは変化しなかった。
本発明の熱可塑性樹脂は様々な用途で利用でき、例えば、コーティング剤またはコーティング膜、具体的には、塗料、インキ、電子機器や液晶部材などの保護膜など;接着剤、粘着剤;樹脂充填剤;電気・電子材料または電気・電子部品(電気・電子機器)、具体的には、帯電防止剤、キャリア輸送剤、発光体、有機感光体、感熱記録材料、フォトクロミック材料、ホログラム記録材料、帯電防止トレイ、導電シート、光ディスク、インクジェットプリンタ、デジタルペーパ、カラーフィルタ、有機EL素子、有機半導体レーザ、色素増感型太陽電池、センサ、EMIシールドフィルムなど;機械材料または機械部品(機器)、具体的には、自動車用材料または部品、航空・宇宙関連材料または部品、摺動部材などに利用してもよい。
また、熱可塑性樹脂は、優れた光学特性および成形性(生産性)をバランスよく充足でき、光学部材として有効に利用できる。
代表的な光学部材としては、液晶用フィルム、有機EL用フィルムなどの光学フィルム(光学シート);メガネ用レンズ、カメラ用レンズなどの光学レンズ;プリズム、ホログラム、光ファイバーなどが挙げられる。
光学フィルムとしては、例えば、偏光フィルム、偏光フィルムを構成する偏光素子と偏光板保護フィルム、位相差フィルム、配向膜(配向フィルム)、視野角拡大(補償)フィルム、拡散板(フィルム)、プリズムシート、導光板、輝度向上フィルム、近赤外吸収フィルム、反射フィルム、反射防止(AR)フィルム、反射低減(LR)フィルム、アンチグレア(AG)フィルム、透明導電(ITO)フィルム、異方導電性フィルム(ACF)、電磁波遮蔽(EMI)フィルム、電極基板用フィルム、カラーフィルタ基板用フィルム、バリアフィルム、カラーフィルタ層、ブラックマトリクス層、光学フィルム同士の接着層もしくは離型層などが挙げられる。これらの光学フィルムは、液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイ(OLED)、プラズマディスプレイ(PDP)、フィールド・エミッション・ディスプレイ(FED)、電子ペーパなどのディスプレイ用の光学フィルムとして有効に利用でき、具体的な機器または装置としては、テレビジョン;デスクトップ型PC、ノート型PCまたはタブレット型PCなどのパーソナル・コンピュータ(PC);スマートフォン、携帯電話;カー・ナビゲーションシステム;タッチパネルなどフラットパネルディスプレイ(FPD)を備えた機器または装置などが挙げられる。
光学レンズとしては、例えば、メガネ用レンズ、コンタクトレンズ、カメラ用レンズ、VTRズームレンズ、ピックアップレンズ、フレネルレンズ、太陽集光レンズ、対物レンズ、ロッドレンズアレイなどが挙げられる。
特に、熱可塑性樹脂は高い異常分散特性を示すため、カメラ用レンズなどの光学レンズに好適に利用してもよい。このような光学レンズが搭載される代表的な機器または装置としては、スマートフォン、携帯電話、デジタルカメラなどのカメラ機能を有する小型機器またはモバイル機器;ドライブレコーダー、バックカメラ(リアカメラ)などの車載用カメラなどが挙げられる。

Claims (24)

  1. ジカルボン酸単位(A)と、脂環族モノマー成分由来の構成単位とを含む熱可塑性樹脂であって、前記ジカルボン酸単位(A)が、下記式(1)
    Figure 2023152923000027
    (式中、R1aおよびR1bは独立して水素原子または置換基を示し、
    2aおよびR2bは独立して置換基を示し、k1およびk2は独立して0~5の整数を示す。)
    で表される第1のジカルボン酸単位(A1)を少なくとも有する熱可塑性樹脂。
  2. 前記式(1)において、R1aおよびR1bが水素原子、炭化水素基、アルコキシ基、アシルオキシ基または置換アミノ基であり、
    2aおよびR2bがハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、ニトロ基、シアノ基または置換アミノ基であり、k1およびk2が0~3の整数である請求項1記載の熱可塑性樹脂。
  3. 前記第1のジカルボン酸単位(A1)の割合が、前記ジカルボン酸単位(A)全体に対して、1~50モル%である請求項1または2記載の熱可塑性樹脂。
  4. 前記ジカルボン酸単位(A)が、前記脂環族モノマー成分由来の構成単位として、脂環族ジカルボン酸単位である第2のジカルボン酸単位(A2)を少なくとも含む請求項1または2記載の熱可塑性樹脂。
  5. 前記第2のジカルボン酸単位(A2)が、下記式(2)
    Figure 2023152923000028
    (式中、Zは脂肪族炭化水素環を示し、
    は置換基を示し、mは0以上の整数を示し、
    1aおよびA1bは独立して直接結合あるいは直鎖状または分岐鎖状アルキレン基を示す。)
    で表される脂環族ジカルボン酸単位を少なくとも含む請求項4記載の熱可塑性樹脂。
  6. 前記第1のジカルボン酸単位(A1)と、前記第2のジカルボン酸単位(A2)との割合が、前者/後者(モル比)=3/97~50/50である請求項4記載の熱可塑性樹脂。
  7. 前記ジカルボン酸単位(A)が、下記式(3)
    Figure 2023152923000029
    (式中、R4aおよびR4bは独立して置換基を示し、n1およびn2は独立して0~4の整数を示し、
    2aおよびA2bは独立して直鎖状または分岐鎖状アルキレン基を示す。)
    で表される第3のジカルボン酸単位(A3)を少なくとも含む請求項1または2記載の熱可塑性樹脂。
  8. 前記式(3)において、R4aおよびR4bがハロゲン原子、置換または未置換の炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、ニトロ基、シアノ基または置換アミノ基であり、n1およびn2が0~2の整数である請求項7記載の熱可塑性樹脂。
  9. 前記第3のジカルボン酸単位(A3)が、前記式(3)において、n1およびn2のうち少なくとも一方が1以上であり、かつR4aおよび/またはR4bとして置換または未置換のアリール基を少なくとも一つ有するジカルボン酸単位を含む請求項7記載の熱可塑性樹脂。
  10. 前記第1のジカルボン酸単位(A1)と、前記第3のジカルボン酸単位(A3)との割合が、前者/後者(モル比)=10/90~90/10である請求項7記載の熱可塑性樹脂。
  11. さらに、ジオール単位(B)を含むポリエステル系樹脂である請求項1または2記載の熱可塑性樹脂。
  12. 前記ジオール単位(B)が、前記脂環族モノマー成分由来の構成単位として、脂環族ジオール単位である第1のジオール単位(B1)を少なくとも含む請求項11記載の熱可塑性樹脂。
  13. 前記第1のジオール単位(B1)が、下記式(4)
    Figure 2023152923000030
    (式中、Zは脂肪族炭化水素環を示し、
    は置換基を示し、pは0以上の整数を示し、
    3aおよびA3bは独立して直接結合あるいは直鎖状または分岐鎖状アルキレン基を示す。)
    で表される脂環族ジオール単位を少なくとも含む請求項12記載の熱可塑性樹脂。
  14. 前記第1のジオール単位(B1)の割合が、前記ジオール単位(B)全体に対して、1~100モル%である請求項12記載の熱可塑性樹脂。
  15. 前記ジオール単位(B)が、下記式(5)
    Figure 2023152923000031
    (式中、Aは直鎖状または分岐鎖状アルキレン基を示し、qは1以上の整数を示す)
    で表される第2のジオール単位(B2)を少なくとも含む請求項11記載の熱可塑性樹脂。
  16. 請求項12記載の第1のジオール単位(B1)と、請求項15記載の第2のジオール単位(B2)との割合が、前者/後者(モル比)=50/50~99/1である請求項11記載の熱可塑性樹脂。
  17. 前記ジオール単位(B)が、下記式(6)
    Figure 2023152923000032
    (式中、Rは置換基を示し、rは0~8の整数を示し、
    3aおよびZ3bは独立してアレーン環を示し、
    7aおよびR7bは独立して置換基を示し、s1およびs2は独立して0以上の整数を示し、
    5aおよびA5bは独立して直鎖状または分岐鎖状アルキレン基を示し、t1およびt2は独立して0または1以上の整数を示す。)
    で表される第3のジオール単位(B3)を少なくとも含む請求項11記載の熱可塑性樹脂。
  18. 前記式(6)において、Rがハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、ニトロ基、シアノ基または置換アミノ基であり、rが0~4の整数であり、
    3aおよびZ3bが単環式または縮合多環式アレーン環であり、
    7aおよびR7bがハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、ニトロ基、シアノ基または置換アミノ基であり、s1およびs2が0~4の整数であり、
    t1およびt2が0~10である請求項17記載の熱可塑性樹脂。
  19. 請求項12記載の第1のジオール単位(B1)と、請求項17記載の第3のジオール単位(B3)との割合が、前者/後者(モル比)=30/70~98/2である請求項11記載の熱可塑性樹脂。
  20. アッベ数νdが19以上であり、部分分散比θgFが0.625以上である請求項1または2記載の熱可塑性樹脂。
  21. 前記第1のジカルボン酸単位(A1)に対応する第1のジカルボン酸成分と、前記脂環族モノマー成分を少なくとも含む重合成分を重合して、請求項1または2記載の熱可塑性樹脂を製造する方法。
  22. 請求項1または2記載の熱可塑性樹脂を含む成形体。
  23. 光学部材である請求項22記載の成形体。
  24. 光学レンズである請求項22記載の成形体。
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