JP2023152529A - 空中浮遊微生物量の評価方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】空中浮遊微生物の量を迅速に評価することができる空中浮遊微生物量の評価方法を提供する。【解決手段】空中浮遊微生物量の評価方法は、空気Aを界面活性剤及び微生物の栄養となる有機物を含む捕集液30中に取り込む捕集工程と、捕集液30中に取り込まれた微生物Mの量と相関関係があるATPの存在量を測定する測定工程と、を有する。【選択図】図1

Description

本発明は、空中浮遊微生物量の評価方法に関する。
下記特許文献1には、生物細胞の捕集時にはゲル状で、加熱した際に40℃以下でゾル状に相対変位する捕集担体を備えた捕集ユニットと、捕集担体にエアを吹き付ける吹き付け手段と、を備えた捕集装置が開示されている。この捕集装置では、空中浮遊微生物をゲル状の捕集担体(すなわち、固相の捕集担体)で捕集する。その後、ゲル状の捕集担体を加熱することで液体化して回収し、ATPを測定する。捕集担体は、捕集した生物細胞をATPにより検出するための検査用試薬を含有している。
特開2009-131186号公報
特許文献1に記載の捕集装置では、空中浮遊微生物をゲル状の捕集担体(すなわち、固相の捕集担体)で捕集する。そして、空中浮遊微生物の捕集後に、ゲル状の捕集担体を加熱することで液体化して回収し、ゾル状の捕集担体(すなわち、液体の捕集担体)のATPを測定するため、検査工程が煩雑であり、検査に時間がかかる。
本発明は上記事実を考慮し、空中浮遊微生物の量を迅速に評価することができる空中浮遊微生物量の評価方法を提供することが目的である。
第1態様に記載の空中浮遊微生物量の評価方法は、空気を界面活性剤及び微生物の栄養となる有機物を含む捕集液中に取り込む捕集工程と、前記捕集液中に取り込まれた微生物の量と相関関係があるATPの存在量を測定する測定工程と、を有する。ここで、ATPは、アデノシン三リン酸である。
第1態様に記載の空中浮遊微生物量の評価方法によれば、捕集工程では、空気を、界面活性剤及び微生物の栄養となる有機物を含む捕集液中に取り込む。さらに、測定工程では、捕集液中のATPの存在量を測定する。
ATPの存在量は、捕集液中に取り込まれた微生物の量と相関関係があるので、ATPの存在量を測定することで、空中に浮遊する微生物の量を迅速に評価できる。また、捕集液中には、界面活性剤が添加されているので、微生物が液体と接触しやすく、捕集されやすくなっている。
このように第1態様では、捕集液を寒天培地に接種して培養し、生じたコロニー(集落)を計数する場合と比較して、捕集液に含まれるATPの存在量を測定する時間が短くて済む。また、第1態様では、空中浮遊微生物をゲル状の捕集担体で捕集した後、ゲル状の捕集担体を加熱することで液体化して回収してATPを測定する場合と比較して、捕集液に含まれるATPの存在量を測定する時間が短くて済む。
また、捕集液中に微生物の栄養素となる有機物を含ませているので、培養する際に、有機物を別途添加する必要がない。
第2態様に記載の空中浮遊微生物量の評価方法は、第1態様に記載の空中浮遊微生物量の評価方法において、前記測定工程で前記ATPの存在量が少ない場合は、前記捕集液を前記微生物の生育に適した温度で保温して前記微生物を培養し、所定時間が経過した後に、前記ATPの存在量を再度測定する。
第2態様に記載の空中浮遊微生物量の評価方法によれば、ATPの存在量が少ない場合は、捕集液を微生物の生育に適した温度で保温して微生物を培養し、微生物を増殖させることで、ATPの存在量を測定することができる。このため、捕集液に微生物の栄養となる有機物を新たに添加して寒天培地で培養する必要がなく、空中に浮遊した微生物が存在するかどうかを容易に確認することができる。
第3態様に記載の空中浮遊微生物量の評価方法は、第1態様又は第2態様に記載の空中浮遊微生物量の評価方法において、前記有機物は、ペプトンである。ここで、ペプトンは、たんぱく質が酵素、熱又は酸などによって分解されたときにできる、たんぱく質とアミノ酸との中間的な物質である。
第3態様に記載の空中浮遊微生物量の評価方法によれば、有機物はペプトンであるため、捕集液を微生物の生育に適した温度で保温して微生物を培養することで、微生物をより確実に増殖させることができる。
本開示によれば、空中浮遊微生物の量を迅速に評価することができる。
第1実施形態の空中浮遊微生物量の評価方法に用いられるエアーサンプラーを示す構成図であり、(A)~(D)は、エアーサンプラーを用いて空中浮遊微生物を捕集する工程を示す構成図である。 ATPを希釈した標準液の蛍光値とATP量との関係を示すグラフである。 捕集液及び第1比較液とATP量との関係を示すグラフである。 捕集直後の捕集液の蛍光値と総菌数との関係を示すグラフである。 補正後の捕集液の蛍光値と経過時間との関係を示すグラフである。 補正後の捕集液の蛍光値と捕集液の培養時間との関係を示すグラフである。
本発明の実施の形態について、図面を基に詳細に説明する。
<第1実施形態>
第1実施形態の空中浮遊微生物量の評価方法について説明する。
[空中浮遊微生物量の評価方法の各工程]
第1実施形態の空中浮遊微生物量の評価方法では、空気Aを捕集液30中に取り込む捕集工程(図1参照)と、捕集液30中に取り込まれた微生物の量と相関関係があるATPの存在量を測定する測定工程と、を有している。
[捕集工程]
捕集工程では、捕集装置を用いて、大量の空気を捕集液中に取り込む。一例として、図1に示すエアーサンプラー10を用いて空気Aを大量に吸引することで、エアーサンプラー10内の捕集液30中に空気Aを取り込む。これにより、空気A中に微生物(細菌やカビなどの真菌)が浮遊している場合は、空気A中に浮遊する微生物が捕集液30に捕集される。エアーサンプラー10の構成及び空気Aに浮遊する微生物の捕集方法については、後に説明する。
(捕集液)
捕集液30は、界面活性剤、及び微生物の栄養となる有機物を少量含む液体である。エアーサンプラー10で空中浮遊微生物を捕集する場合、捕集液30には少量の界面活性剤を添加した方が捕集効率は良好となる。界面活性剤を含まない液体の場合は、多くの微生物の表面は疎水性であり、液体に空気を吹き込んでも液体になじまずに、液体に捕集されることなく排気されるためである。そのため、微生物が液体を接触しやすく、捕集されやすくするために、界面活性剤を添加した捕集液30を用いている。
界面活性剤として、例えば、Tween80(オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、別名:ポリソルベート80)、Tween20(モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、別名:ポリソルベート20)などが用いられる。Tween80及びTween20は、非イオン性の界面活性剤である。捕集液30として、例えば、Tween80又はTween20を0.02g/L以上0.08g/L以下添加したものを用いることができる。第1実施形態では、捕集液30として、Tween80を0.05g/L添加したものを用いている。
微生物Mの栄養となる有機物は、捕集液30に捕集した微生物Mを培養して増やすために使用される。微生物Mの栄養となる有機物として、例えば、ペプトンなどが用いられる。上記のように、ペプトンは、たんぱく質が酵素(ペプシンなど)、熱又は酸などによって分解されたときにできる、たんぱく質とアミノ酸との中間的な物質である。ペプトンは、さまざまな長さのポリペプチド、オリゴペプチドの混合物である。ペプトンは、水溶性で加熱によって凝固しない。捕集液30として、例えば、ペプトンを5g/L以上20g/L以下添加したものを用いることができる。第1実施形態では、捕集液30として、ペプトンを10g/L添加したものを用いている。
ただし、添加するペプトンにATPが含まれていると、捕集液30のATP量のバックグランド値が上がってしまい、微量の微生物Mの検出が難しくなる。発明者はいくつかのペプトンを試したところ、品質管理が確実になされているメーカーであるディフコ社のペプトンであれば、微生物の生育に適した10g/L程度の量で捕集液30に添加しても、ATP量の測定に影響を与えることなく、微生物Mの生育に寄与すること見出した。
(エアーサンプラーの構成)
ここで、捕集工程で使用されるエアーサンプラー10について説明する。図1(A)~(D)には、エアーサンプラー10の構成及びエアーサンプラー10で空気Aを取り込む工程が示されている。図1において示される矢印UPで示す方向を鉛直方向の上方側とする。エアーサンプラー10は、空気A中に浮遊する微生物を捕集する捕集装置の一例であり、サイクロン方式のエアーサンプラーである。エアーサンプラー10として、例えば、ベルタン社製のコリオリスμエアーサンプラーが用いられている。
図1(A)等に示すように、エアーサンプラー10は、容器12と、容器12の上部に装着された装着部14と、を備えている。エアーサンプラー10は、装着部14の側部16に設けられて空気Aが導入されるサンプリング口18と、装着部14の上部に設けられて空気Aが排出される排出部20と、を備えている。
容器12は、略円錐状の凹部を備えたカップであり、上部12A側に対して下部12B側の内径が徐々に小さくなるように形成されている。容器12には、捕集液30が収容されている。捕集液30は、容器12の内径が変化する部位の上下方向の中間部付近まで収容されている(図1(A)参照)。
装着部14は、容器12の上部に着脱可能に装着されている。装着部14は、軸方向が上下方向となるように配置される筒状の部材であり、筒状の部材の上端が上壁部14Aで閉塞されている。一例として、装着部14は、平面視にて円形状であり、内面に雌ねじ部(図示省略)を備えている。一例として、容器12は、上部12A側の縁部の外面に雄ねじ部(図示省略)を備えている。そして、装着部14の雌ねじ部を容器12の雄ねじ部に締め付けることで、装着部14は、容器12の上部12Aに着脱可能に装着されている。
装着部14の側部16は、半径方向外側に突出する枠部16Aを備えており、枠部16Aの内部に矩形状のサンプリング口18が形成されている。枠部16Aには、空気Aを供給する図示しない供給部が取り付けられ、供給部からサンプリング口18に空気Aが導入される。
装着部14の上壁部14Aには、内部の空気Aが排出される排出部20が設けられている。排出部20は、円筒状の管体であり、上壁部14Aの中心部から上方側に延びている。
(エアーサンプラーによる捕集工程)
次に、エアーサンプラー10により空気A中に浮遊する微生物Mを捕集液30で捕集する工程について説明する。図1(A)に示すように、容器12には、捕集液30が収容され、容器12の上部12Aに装着部14が装着される。一例として、容器12には、15mlの捕集液30が収容される。図1(A)~(D)では、構成を分かりやすくするため、微生物Mを円形で大きく図示しているが、微生物Mの実際の形状は異なり、微生物Mの実際の大きさはかなり小さい。
図1(B)に示すように、エアーサンプラー10では、サンプリング口18に空気Aが導入される。これにより、サンプリング口18から空気Aが高速で旋回して、容器12内に吸引渦巻きを形成する。
図1(C)に示すように、容器12内で吸引渦巻を形成した空気Aは、上方の装着部14側に導かれ、装着部14の排出部20から排出される。その際、空気A中の微生物Mは、捕集液30中で高速回転し、遠心力で容器12の内壁に押し付けられて空気Aから分離され、捕集液30中に濃縮分離される(図1(D)参照)。これにより、エアーサンプラー10による捕集液30での微生物Mの捕集が完了する。エアーサンプラー10では、例えば、5分間で1500L(すなわち、1分間で300L)の空気Aを吸引することが可能である。
[測定工程]
測定工程では、捕集工程の後に、ATP測定器を用いて、捕集液30のATPの存在量を測定する。ATPの存在量は、捕集工程で捕集液30中に取り込まれた微生物Mの量と相関関係がある。このため、捕集液30のATPの存在量を測定することで、空気A中に浮遊する微生物Mの量を評価することができる。これにより、食品工場、医薬品工場、医療施設などでの衛生管理、及び環境微生物の制御に生かすことが可能である。
上記のように、ATPは、アデノシン三リン酸である。アデノシン三リン酸は、プリン塩基であるアデニンに糖のリボースがN-グリコシド結合により結合したアデノシンに、リボースの5’-ヒドロキシ基にリン酸エステル結合によりリン酸基が結合し、さらにリン酸がもう2分子連続してリン酸無水結合により結合した構造を有する化合物である。リボースの5位の炭素に、リン酸が結合しているため、アデノシン5’-三リン酸とも記載される。ATPの存在量の測定では、アデノシン三リン酸及びその誘導体からなる群より選択される化合物が測定される場合がある。アデノシン5’-三リン酸及びその誘導体からなる群より選択される化合物には、アデノシン5’-三リン酸(ATP)、ATPの塩、ATP水和物、及び、ATPの塩の水和物などが包含され、アデノシン5’-三リン酸の基本構造を有する。
ATP測定器では、ATPの存在量の測定として、捕集液30の蛍光値を測定する。一例として、ATP測定器では、図示しない測定容器に反応試薬を混合した捕集液30が収容され、蛍光値が測定される。ATP測定器では、測定容器に捕集液30を収容する前に、フィルタカートリッジで捕集液30をろ過してもよい。第1実施形態では、捕集工程の後の捕集液30に反応試薬を混合することで、ルシフェラーゼとマグネシウムイオンとの存在下、捕集液30中のATPとルシフェリンとが反応した結果、発光する。ここで生じる光の発光強度をATP測定器にて測定することで、反応試薬を含む捕集液30中に含まれるATP類の定量分析が行われる。例えば、蛍光値とATPの存在量の関係は、予めATPを希釈した標準液を用いて検量線が作成されており、測定された蛍光値を検量線に当てはめることで、捕集液30のATPの存在量が測定される。ATP測定器として、例えば、ルミノメーターPi-102(Hygiena International社製)が使用される。なお、ATP測定器は、ルミノメーターPi-102に限定するものではなく、他のATP測定器(例えば、キッコーマン株式会社製のルミテスターC110など)を使用してもよい。
例えば、エアーサンプラー10を用いて捕集液30に空気Aを取り込み、その捕集液30のATPの存在量を測定する方法で、屋外の空気や一般的な室内の空気を捕集液30に捕集したところ、捕集前に比べて捕集液30のATPの量は増加し、測定されたATP量は空中浮遊微生物量に相関することが確認できた。
また、測定工程でATPの存在量が少ない場合は、捕集液30を微生物Mの生育に適した温度で保温して微生物を培養し、所定時間が経過した後に、ATPの存在量を再度測定する。
一般的な室内よりも空気が清浄な環境では、空気を捕集液30に捕集しても、捕集液30のATPの量は、捕集前と変わらない場合がある。このため、測定工程でATPの存在量が少ない場合は、捕集液30を微生物Mの生育に適した温度で保温して微生物Mを培養し、所定時間が経過した後に、捕集液30のATPの存在量を再度測定する。
微生物の生育に適した温度は、測定対象となる微生物の種類に合わせて適切な温度に設定する。微生物の生育に適した温度として、例えば、25℃から35℃の範囲の温度を使用することができる。第1実施形態では、例えば、捕集液30を30℃で保温する。一例として、捕集液30は、容器12に収容したまま容器12を密閉し、30℃の温度に設定された恒温槽に入れることで、捕集液30を保温することができる。
また、微生物Mを培養する所定時間は、測定対象となる微生物の種類に合わせて適切な時間を設定する。微生物Mを培養する所定時間は、例えば、1日程度である。
[比較例]
ここで、比較例の空中浮遊微生物量を評価する方法について説明する。
空中浮遊微生物量を評価する方法としては、例えば、第1比較例では、微生物の栄養を含む寒天培地にサンプル空気を高速で吹き付けて寒天培地上に捕集し、その寒天培地の微生物の生育に適した温度で保温して培養することで、生じたコロニー(集落)を計数する衝突法がある。また、第2比較例では、微生物の栄養を含む寒天培地にサンプル空気を遠心力で吹き付けて寒天培地上に捕集し、その寒天培地の微生物の生育に適した温度で保温して培養することで、生じたコロニー(集落)を計数する遠心法がある。また、第3比較例では、サンプル空気を微生物の捕捉ができるフィルターでろ過してフィルターに空中浮遊微生物を捕集し、フィルターを寒天培地に貼り付けて培養して生じたコロニーを計数するろ過法がある。さらに、第4比較例では、サンプル空気を液体で捕集して、その液体を寒天培地に接種して培養して生じたコロニーを計数するインピンジャー法などがある。
これらの第1~第4比較例では、いずれも微生物の栄養を含む寒天培地上で培養するため、微生物の菌体の塊であるコロニーが生じるのに1日から数日かかり、迅速に評価ができない欠点がある。
[作用及び効果]
次に、第1実施形態の作用及び効果について説明する。ここでは、第1実施形態の作用及び効果を説明する前に、本開示の技術の背景について説明する。
一般的に空気中に含まれる微生物は、環境中の液体に含まれる微生物よりも圧倒的に少ない。例えば、河川水や海水に含まれる微生物量は1ml当たり100個程度存在することが多く、1L当たりに換算すると10万個程度となる。しかし、空気中では1立米あたりで多くても1000個から1万個、1L当たりに換算すると1個や10個となり、環境水と環境の空気とでは数桁、含まれる微生物量が異なる。そのため、空中浮遊微生物量の評価では大量の空気を捕集することが必要となる。
例えば、第4比較例として、液体に空中浮遊微生物を捕集するインピンジャー法では、空気を導入する管体をガス捕集管の液体の中に配置し、管体の下部から液体内に空気を導入することで、空気中の微生物を捕集する。しかし、インピンジャー法では、1分間で数Lしか空気を捕集できず、それ以上の空気を液体に吹き込んでも、液体に捕集されずに素通りしてしまい、捕集効率が悪くなる。このため、1立米あたりで数千個の空中浮遊微生物(換算すると、1L当たりに数個)に対して、インピンジャー法で微生物を捕集することは難しい。
これに対して、第1実施形態の空中浮遊微生物量の評価方法は、空気Aを界面活性剤及び微生物Mの栄養となる有機物を含む捕集液30中に取り込む捕集工程と、捕集液30中に取り込まれた微生物Mの量と相関関係があるATPの存在量を測定する測定工程と、を有する。
捕集工程では、空気Aを、界面活性剤及び微生物の栄養となる有機物を含む捕集液30中に取り込む。第1実施形態では、エアーサンプラー10を用いて空気Aを捕集液30中に取り込む(図1参照)。エアーサンプラー10では、サイクロン方式により空気Aを高速で旋回させ、空気Aを大量に吸引することで、空気Aを捕集液30中に取り込む。これにより、空気A中に微生物Mが浮遊している場合は、微生物Mが遠心力によりエアーサンプラー10の容器12の内壁に押し付けられ、空気A中の微生物Mが捕集液30に捕集される。
さらに、測定工程では、捕集液30中のATPの存在量を測定する。第1実施形態では、ATP測定器を用いて捕集液30の蛍光値を測定することで、捕集液30中のATPの存在量を測定する。ATPの存在量は、捕集液30中に取り込まれた微生物Mの量と相関関係があるので、ATPの存在量を測定することで、空中に浮遊する微生物Mの量を迅速に評価できる。また、捕集液30中には、界面活性剤が添加されているので、微生物Mが液体と接触しやすく、捕集されやすくなっている。
上記のように、第1実施形態では、サイクロン方式のエアーサンプラー10を用いて空気Aを捕集液30に取り込んで空気Aを捕集液30に捕集し、捕集後にただちに捕集液30のATPの存在量をATP測定器で測定する。捕集液30には、微生物Mの捕集効率をよくする界面活性剤と、微生物Mの生育を促進するペプトンが含まれている。これにより、捕集液30中の微生物Mの量と相関関係があるATPの存在量を測定することで、空気A中に含まれる空中浮遊微生物量を迅速に評価することができる。このため、捕集した場所の空気が清浄であるか、清浄ではないかの評価を迅速に行うことができる。
このように第1実施形態の空中浮遊微生物量の評価方法では、捕集液30を寒天培地に接種して培養し、生じたコロニー(集落)を計数する場合と比較して、捕集液30に含まれるATPの存在量を測定する時間が短くて済む。また、第1実施形態の空中浮遊微生物量の評価方法では、空中浮遊微生物をゲル状の捕集担体で捕集した後、ゲル状の捕集担体を加熱することで液体化して回収してATPを測定する場合と比較して、捕集液30に含まれるATPの存在量を測定する時間が短くて済む。このため、第1実施形態の空中浮遊微生物量の評価方法では、空中浮遊微生物の量を迅速に評価することができる。
また、捕集液中に微生物の栄養素となる有機物を含ませているので、培養する際に、有機物を別途添加する必要がない。
また、第1実施形態の空中浮遊微生物量の評価方法では、測定工程でATPの存在量が少ない場合は、捕集液30を微生物Mの生育に適した温度で保温して微生物Mを培養し、所定時間が経過した後に、捕集液30のATPの存在量を再度測定する。
一般的な室内よりも空気が清浄な環境では、空気を捕集液30に捕集しても、捕集液30のATPの量は、捕集前と変わらない場合がある。このため、測定工程でATPの存在量が少ない場合は、捕集液30を微生物Mの生育に適した温度(例えば、30℃)で保温して微生物Mを培養し、所定時間(例えば、1日程度)が経過した後に、捕集液30のATPの存在量を再度測定する。捕集液30を微生物Mの生育に適した温度(例えば、30℃)で保温することで、捕集液30中に微量の微生物Mが存在する場合は、微生物Mを増殖させることが可能である。微生物Mを増殖させることで、ATPの存在量を測定することができる。
このため、第1実施形態の空中浮遊微生物量の評価方法では、捕集液30に微生物の栄養となる有機物を新たに添加して寒天培地で培養する必要がなく、空気A中に浮遊した微生物が存在するかどうかを容易に確認することができる。すなわち、捕集液30のATP量が増加していないか確認することで、ごく微量で存在する空中浮遊微生物量を短時間で評価することができる。したがって、捕集した場所の空気が本当に清浄かどうか、空中浮遊微生物がほとんど存在しないかどうかを確認することができる。
また、第1実施形態の空中浮遊微生物量の評価方法では、微生物Mの栄養となる有機物は、ペプトンである。
このため、第1実施形態の空中浮遊微生物量の評価方法では、ペプトンを含んだ捕集液30を微生物Mの生育に適した温度で保温して微生物Mを培養することで、微生物Mをより確実に増殖させることができる。
<空中浮遊微生物量の評価方法の検証>
次に、空中浮遊微生物量の評価方法を検証するために行った実験について説明する。
[実験1]
実験1では、ATP量を測定するATP測定器の精度を確認する実験を行った。ATPは、アデノシン5’-三リン酸二ナトリウム三水和物(関東化学株式会社製)を使用し、10mM(10mmol/l)の水溶液を作成して、その10倍希釈を繰り返し行い、0.1fmol(fmolは10のマイナス15乗mol)までの希釈系列の水溶液を準備した。その水溶液0.1mlをATP測定器のルミノメーターPi-102(Hygiena International社製)で測定するため、専用の綿棒であるUltrasnap(Hygiena International社製の検査キッド)に添加し、反応試薬を混合してATP測定器にかけて、蛍光値を読み取った。
複数回のATP量の測定を、各希釈液ごとに行い、プロットしたものが図2に示すグラフである。すなわち、各希釈液は、ATP量を測定する標準液である。図2は、標準液の蛍光値とATP量との関係を示すグラフである。図2に示すように、ATP測定器による標準液の蛍光値とATP量に高い比例関係があることが確認できた。図2に示すグラフは、検量線として使用することもできる。
[実験2]
実験2では、空中浮遊微生物の捕集液の組成による違いを確認する実験を行った。実験2では、Tween80(関東化学株式会社製)を0.05g/L添加した第1比較液で捕集した時と、0.05g/LのTween80(関東化学株式会社製)と10g/Lのペプトン(ディフコ社製)を添加した捕集液(TP液)で捕集した時で、捕集後に第1比較液及び捕集液を30℃の恒温槽に入れて保温し、ATP量(測定器の蛍光値とATP量は比例関係にあるので、今後蛍光値で評価した)が増加するか調べた。
空中浮遊微生物の捕集は、サイクロン方式のエアーサンプラー10として、コリオリスμエアーサンプラー(ベルタン社製)を使用し、専用の容器12に捕集液又は第1比較液を15ml入れ、1分間300Lのスピードで5分間、1500Lの空気を取り込んだ。捕集場所は、屋外と実験室内、それぞれの捕集液又は第1比較液で2回ずつ捕集した。捕集直後から2時間後、4時間後、17時間後に各捕集液又は各第1比較液の0.1mlをUltrasnapに添加し、ATP測定器としてルミノメーターPi-102で蛍光値を測定した。
図3は、捕集液(TP液)及び第1比較液とATP量との関係を示すグラフである。図3に示すように、Tween80のみを添加した第1比較液ではほとんど蛍光値は変化せず、Tween80とペプトンを添加した捕集液(TP液)では17時間後に蛍光値が急上昇している物が認められた。そのため、ペプトンを添加した捕集液(TP液)により、捕集した微生物が増殖して蛍光値が増加、すなわち、ATP量が増加していることが確認できた。
[実験3]
実験3では、ATP測定器による捕集液の蛍光値と捕集液の総菌数との関係を確認する実験を行った。
捕集液に0.05g/LのTween80(関東化学株式会社製)と10g/Lのペプトン(ディフコ社製)を添加した液(TP液)を用いて、屋外、3か所の実験室、及びクリーンルーム内で合計31回の空中浮遊微生物の捕集を行った。空中浮遊微生物の捕集は、サイクロン方式のエアーサンプラー10として、コリオリスμエアーサンプラーを使用し、専用の容器12に捕集液を15ml入れ、1分間300Lのスピードで5分間、1500Lの空気を取り込んだ。捕集直後に各捕集液の0.1mlをUltrasnapに添加し、ATP測定器としてルミノメーターPi-102で蛍光値を測定した。
コリオリスμエアーサンプラーでの捕集と同時に、寒天培地を用いた空中浮遊微生物の捕集を行った。バイオサンプMBSー1000N(ミドリ安全社製)を用い、空気を吸気して寒天培地に当てることで、空中浮遊微生物の捕集を行った。寒天培地にはSCD寒天培地(ソイビーンカゼインダイジェスト寒天培地、多くの細菌や真菌の生育に適した培地)を使用し、1分間100Lのスピードで1分間、100Lの空気の吸気を行い、1か所で5枚から10枚の寒天培地で捕集した。寒天培地は30℃で5日間保温し、生じたコロニー(細菌と真菌)をそれぞれ計数し、合計して総菌数を求めた(培養法)。
図4は、捕集直後の捕集液の蛍光値の1立米あたりの数値の対数と、培養法で求めた総菌数(1立米あたりの菌数)をプロットして作成したグラフ(散布図)である。図4に示すように、捕集液の蛍光値と培養法で求めた総菌数には相関関係が認められ、蛍光値が高いほど、総菌数が多いことが確認できた。
[実験4]
実験4では、ATP測定器による捕集液の補正後の蛍光値と経過時間との関係を確認する実験を行った。
捕集液に0.05g/LのTween80(関東化学株式会社製)と10g/Lのペプトン(ディフコ社製)を添加した液(TP液)を用いて、屋外、2か所の実験室(実験室1と実験室2)、及びクリーンルーム内で合計16回の空中浮遊微生物の捕集を行った。空中浮遊微生物の捕集は、サイクロン方式のエアーサンプラー10として、コリオリスμエアーサンプラーを使用し、専用の容器12に捕集液を15ml入れ、1分間300Lのスピードで5分間、1500Lの空気を取り込んだ。捕集する前にあらかじめ、各容器12中の捕集液0.1ml採取してUltrasnapに添加し、ATP測定器としてルミノメーターPi-102で蛍光値を測定した。捕集後に捕集液を30℃の恒温槽に入れて保温し、捕集直後(0時間、すなわち保温しない状態)、12時間後、24時間後、36時間後、108時間後に捕集液の蛍光値を測定し、どのように変化するかを調べた。
図5は、時間ごとの蛍光値から捕集前の蛍光値を差し引いて補正し、その補正した蛍光値の時間変化をプロットしたグラフである。図5に示すように、空中浮遊微生物の多い屋外、実験室1、実験室2では、捕集直後ですでに蛍光値が高く、保温後12時間から48時間で急激に蛍光値が上昇しており、多くの空中浮遊微生物が存在していたことが確認できた。
クリーンルームでは、捕集直後では蛍光値は低い値で、空中浮遊微生物が僅かながら存在する時には24時間以降で蛍光値は上昇した。しかし、クリーンルームでは、24時間から108時間後に測定してもほとんど蛍光値が変化しないサンプルもあり、これは空中浮遊微生物がほとんど存在しないことを示している。このため、空中浮遊微生物が少ない環境でも24時間後にATP量を測定し、少しでも上昇していることが認められた場合、空中浮遊微生物が存在することが確認できることがわかった。
[実験5]
実験5では、ATP測定器による捕集液の補正後の蛍光値と培養時間との関係を確認する実験を行った。
捕集液に0.05g/LのTween80(関東化学株式会社製)と10g/Lのペプトン(ディフコ社製)を添加した液(TP液)を用いて、クリーンルーム内で合計15回の空中浮遊微生物の捕集を行った。空中浮遊微生物の捕集は、サイクロン方式のエアーサンプラー10として、コリオリスμエアーサンプラーを使用し、専用の容器12に捕集液を15ml入れ、1分間300Lのスピードで5分間、1500Lの空気を取り込んだ。捕集する前にあらかじめ、各容器12中の捕集液0.1ml採取してUltrasnapに添加し、ATP測定器としてルミノメーターPi-102で蛍光値を測定した。捕集後に捕集液を30℃の恒温槽に入れて保温し、捕集直後(0時間、すなわち保温しない状態)、24時間後、48時間後、108時間後に蛍光値を測定し、どのように変化するかを調べた。
図6は、時間ごとの蛍光値から捕集前の蛍光値を差し引いて補正し、その補正した蛍光値の時間変化をプロットしたグラフである。図6に示すように、空中浮遊微生物の少ないクリーンルームであっても、24時間後の補正後の蛍光値が30から50程度の数値(ATP量としては0.1fmol程度)より低いと、その後の蛍光値の増加はないことから空中浮遊微生物は全く存在しないことが分かる。また、24時間後の補正後の蛍光値が30から50程度の数値より高いと、その後に蛍光値が上昇していることから空中浮遊微生物が微量ながら存在していたことがわかる。このように捕集直後の蛍光値では微量の空中浮遊微生物量の存在量を評価できないが、24時間程度培養してから蛍光値を測定することで、微量の空中浮遊菌量の存在を評価することができる。
<その他>
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。
例えば、第1実施形態では、サイクロン方式のエアーサンプラー10を用いて空気Aを捕集液30に取り込んだが、本開示はこの構成に限定されるものではない。例えば、サイクロン方式以外の方式で大量の空気Aを吸引又は吹き込むことが可能な捕集装置であれば、他の吸引又は吹き込み方式の捕集装置を用いて、空気Aを捕集液30に取り込んでもよい。
また、第1実施形態では、捕集液30に含まれる微生物の栄養となる有機物として、ペプトンを用いたが、本開示はこの構成に限定されるものではなく、微生物の栄養となる有機物であれば、他の有機物を用いてもよい。
また、第1実施形態において、捕集液30を保温するときの微生物Mの生育に適した温度、捕集液30を保温する時間は、変更可能である。
更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得る。複数の実施形態及び変形例等は、適宜、組み合わされて実施可能である。
10 エアーサンプラー
12 容器
30 捕集液
M 微生物

Claims (3)

  1. 空気を界面活性剤及び微生物の栄養となる有機物を含む捕集液中に取り込む捕集工程と、
    前記捕集液中に取り込まれた微生物の量と相関関係があるATPの存在量を測定する測定工程と、
    を有する空中浮遊微生物量の評価方法。
  2. 前記測定工程で前記ATPの存在量が少ない場合は、前記捕集液を前記微生物の生育に適した温度で保温して前記微生物を培養し、所定時間が経過した後に、前記ATPの存在量を再度測定する請求項1に記載の空中浮遊微生物量の評価方法。
  3. 前記有機物は、ペプトンである請求項1又は請求項2に記載の空中浮遊微生物量の評価方法。
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