JP2023151317A - 駆動力伝達制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】伝達トルクの精度をより高めることが可能な駆動力伝達制御装置を提供する。【解決手段】駆動力伝達制御装置2は、電磁コイル63に供給される電流に応じたトルクの駆動力を伝達する駆動力伝達装置2Aと、電磁コイル63に供給する電流によって駆動力伝達装置2Aを制御する制御装置2Bとを備える。制御装置2Bは、電磁コイル63に供給する電流を一定に保持したときの伝達トルクと電流の大きさとの関係を示す関係情報82を記憶する記憶部8と、トルク指令値を演算するトルク指令値演算手段71と、トルク指令値に応じて電磁コイル63に供給すべき電流の値を電流指令値として演算する電流指令値演算手段72とを備える。電流指令値演算手段72は、トルク指令値の時間当たりの変化量が所定値以上である変動状態から前記所定値未満である定常状態に移行したとき、電流指令値を、関係情報82を参照して得られる値に徐々に近づける。【選択図】図5
Description
本発明は、駆動力伝達制御装置に関する。
従来、主駆動輪と補助駆動輪とを備え、主駆動輪のみに駆動源の駆動力が伝達される二輪駆動状態と、駆動源の駆動力が主駆動輪及び補助駆動輪に伝達される四輪駆動状態とを切り替え可能な四輪駆動車には、補助駆動輪に伝達される駆動力を調節可能な駆動力伝達装置が搭載されている。本出願人は、このような駆動力伝達装置に関するものとして、特許文献1に記載のものを提案している。
特許文献1に記載の駆動力伝達装置は、潤滑油によって摩擦摺動が潤滑される複数のクラッチプレートを有するメインクラッチと、メインクラッチを押圧するスラスト力を発生させるカム機構と、カム機構を作動させる電磁クラッチ機構と、制御装置とを備える。電磁クラッチ機構は、電磁コイルと、アーマチャと、複数のパイロットアウタクラッチプレート及びパイロットインナクラッチプレートと、電磁コイルを保持するヨークとを有している。制御装置は、メインクラッチによって伝達すべき駆動力であるトルク指令値を車両状態に基づいて演算するトルク指令値演算部、トルク指令値に対応する電流指令値を演算する電流指令値演算部、電流指令値を補正する電流補正部、及び電流補正部によって補正された電流指令値に応じた電流が電磁コイルに供給されるように電流供給回路を制御する電流制御部を有している。
電流補正部は、トルク指令値が増大した後に定トルク状態となったとき、定トルク状態の継続時間に応じた補正量で電流指令値を漸減させる補正を行う。また、電流補正部は、トルク指令値が減少した後に定トルク状態となったとき、定トルク状態の継続時間に応じた補正量で電流指令値を漸増させる補正を行う。
上記のように構成された四輪駆動車では、走行状態によってはトルク指令値が増大する状態と減少する状態とが頻繁に切り替わる場合がある。このような場合には、必ずしも電流補正部における電流指令値の補正が十分に行われないケースがあり、なお改善の余地を残すものとなっていた。
そこで、本発明は、伝達トルクの精度をより高めることが可能な駆動力伝達制御装置を提供することを目的とする。
本発明は、上記の目的を達成するため、電磁コイルに供給される電流に応じたトルクの駆動力を入力側の回転部材と出力側の回転部材との間で伝達する駆動力伝達装置と、前記電磁コイルに供給する電流によって前記入力側の回転部材と前記出力側の回転部材との間で伝達される駆動力を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記電磁コイルに供給する電流を一定に保持したときに前記入力側の回転部材と前記出力側の回転部材との間で伝達されるトルクと前記電流の大きさとの関係を示す関係情報を記憶する記憶部と、前記入力側の回転部材から前記出力側の回転部材に伝達すべき駆動力の大きさをトルク指令値として演算するトルク指令値演算手段と、前記トルク指令値に応じて前記電磁コイルに供給すべき電流の値を電流指令値として演算する電流指令値演算手段と、前記電流指令値に対応する電流を前記電磁コイルに供給する電流制御手段とを備え、前記電流指令値演算手段は、前記トルク指令値の時間当たりの変化量が所定値以上である変動状態から前記所定値未満である定常状態に移行したとき、前記電流指令値を、前記関係情報を参照して得られる値に徐々に近づける、駆動力伝達制御装置を提供する。
本発明にかかる駆動力伝達制御装置によれば、伝達トルクの高精度化が可能となる。
[実施の形態]
本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
図1は、本発明の実施の形態に係る駆動力伝達制御装置が搭載された四輪駆動車の概略の構成例を示す概略構成図である。
図1に示すように、四輪駆動車1は、アクセルペダル110の操作量(踏み込み量)に応じた駆動力を発生する駆動源としてのエンジン11と、エンジン11の出力を変速するトランスミッション12と、トランスミッション12で変速されたエンジン11の駆動力が常に伝達される主駆動輪としての左右前輪181,182と、エンジン11の駆動力が四輪駆動車1の走行状態に応じて伝達される補助駆動輪としての左右後輪191,192とを備えている。左右前輪181,182及び左右後輪191,192には、車輪速センサ101~104がそれぞれ対応して配置されている。
また、四輪駆動車1には、フロントディファレンシャル13と、プロペラシャフト14と、リヤディファレンシャル15と、リヤディファレンシャル15に駆動力を伝達するピニオンギヤシャフト150と、左右の前輪側のドライブシャフト161,162と、左右の後輪側のドライブシャフト171,172と、プロペラシャフト14とピニオンギヤシャフト150との間に配置された駆動力伝達装置2Aと、駆動力伝達装置2Aを制御する制御装置2Bとが搭載されている。駆動力伝達装置2A及び制御装置2Bは、駆動力伝達制御装置2を構成する。
駆動力伝達装置2Aは、制御装置2Bから供給される電流に応じた駆動力をプロペラシャフト14からピニオンギヤシャフト150に伝達する。左右後輪191,192には、駆動力伝達装置2Aを介してエンジン11の駆動力が伝達される。制御装置2Bは、車輪速センサ101~104によって検出される左右前輪181,182及び左右後輪191,192の回転速度を示す車輪速信号、及びアクセルペダルセンサ105によって検出されるアクセルペダル110の操作量を示すアクセル開度信号を取得可能であり、駆動力伝達装置2Aに電流を供給することで駆動力伝達装置2Aを制御する。
左右前輪181,182には、エンジン11の駆動力が、トランスミッション12、フロントディファレンシャル13、及び左右の前輪側のドライブシャフト161,162を介して伝達される。フロントディファレンシャル13は、左右の前輪側のドライブシャフト161,162にそれぞれ相対回転不能に連結された一対のサイドギヤ131,131と、一対のサイドギヤ131,131にギヤ軸を直交させて噛合する一対のピニオンギヤ132,132と、一対のピニオンギヤ132,132を支持するピニオンギヤシャフト133と、これらを収容するフロントデフケース134とを有している。
フロントデフケース134には、リングギヤ135が固定され、このリングギヤ135がプロペラシャフト14の車両前方側の端部に設けられたピニオンギヤ141に噛み合っている。プロペラシャフト14の車両後方側の端部は、駆動力伝達装置2Aのハウジング20に連結されている。駆動力伝達装置2Aは、ハウジング20と相対回転可能に配置されたインナシャフト3を有しており、インナシャフト3にピニオンギヤシャフト150が相対回転不能に連結されている。駆動力伝達装置2Aの詳細については後述する。
リヤディファレンシャル15は、左右の後輪側のドライブシャフト171,172にそれぞれ相対回転不能に連結された一対のサイドギヤ151,151と、一対のサイドギヤ151,151にギヤ軸を直交させて噛合する一対のピニオンギヤ152,152と、一対のピニオンギヤ152,152を支持するピニオンギヤシャフト153と、これらを収容するリヤデフケース154と、リヤデフケース154に固定されてピニオンギヤシャフト150と噛み合うリングギヤ155とを有している。
(駆動力伝達装置の構成)
図2は、駆動力伝達装置2Aの構成例を示す断面図である。図2において、回転軸線Oよりも上側は駆動力伝達装置2Aの作動状態を、下側は駆動力伝達装置2Aの非作動状態を、それぞれ示す。以下、回転軸線Oに平行な方向を軸方向という。
図2は、駆動力伝達装置2Aの構成例を示す断面図である。図2において、回転軸線Oよりも上側は駆動力伝達装置2Aの作動状態を、下側は駆動力伝達装置2Aの非作動状態を、それぞれ示す。以下、回転軸線Oに平行な方向を軸方向という。
駆動力伝達装置2Aは、フロントハウジング21及びリヤハウジング22からなるハウジング20と、ハウジング20と同軸上で相対回転可能に支持された筒状のインナシャフト3と、ハウジング20とインナシャフト3との間に配置されたメインクラッチ4と、メインクラッチ4を押圧するスラスト力を発生させるカム機構5と、制御装置2Bから電流の供給を受けてカム機構5を作動させる電磁クラッチ機構6とを有して構成されている。ハウジング20は、本発明の入力側の回転部材の一例であり、インナシャフト3は、本発明の出力側の回転部材の一例である。ハウジング20の内部には、図略の潤滑油が封入されている。
フロントハウジング21は、円筒状の筒部21aと底部21bとを一体に有する有底円筒状である。筒部21aの開口端部における内面には、雌ねじ部21cが形成されている。フロントハウジング21の底部21bには、プロペラシャフト14(図1参照)が十字継手を介して連結される。また、フロントハウジング21は、軸方向に延びる複数の外側スプライン突起211を筒部21aの内周面に有している。
リヤハウジング22は、鉄等の磁性材料からなる第1環状部材221、第1環状部材221の内周側に溶接等により一体に結合されたオーステナイト系ステンレス等の非磁性材料からなる第2環状部材222、及び第2環状部材222の内周側に溶接等により一体に結合された鉄等の磁性材料からなる第3環状部材223によって構成されている。第1環状部材221と第3環状部材223との間には、電磁コイル63を収容する環状の収容空間22aが形成されている。また、第1環状部材221の外周面には、フロントハウジング21の雌ねじ部21cに螺合する雄ねじ部221aが形成されている。
インナシャフト3は、軸方向に延びる複数の内側スプライン突起31を外周面に有しており、玉軸受24及び針状ころ軸受25によってハウジング20の内周側に支持されている。インナシャフト3の一端部における内面には、ピニオンギヤシャフト150(図1参照)の一端部が相対回転不能に嵌合されるスプライン嵌合部32が形成されている。
メインクラッチ4は、軸方向に沿って交互に配置された複数のメインアウタクラッチプレート41及び複数のメインインナクラッチプレート42からなる。メインアウタクラッチプレート41はフロントハウジング21と共に回転し、メインインナクラッチプレート42はインナシャフト3と共に回転する。メインアウタクラッチプレート41は、フロントハウジング21の外側スプライン突起211に係合する複数の係合突起411を外周端部に有している。メインアウタクラッチプレート41は、係合突起411が外側スプライン突起211に係合することにより、フロントハウジング21との相対回転が規制され、かつフロントハウジング21に対して軸方向に移動可能である。
メインインナクラッチプレート42は、インナシャフト3の内側スプライン突起31に係合する複数の係合突起421を内周端部に有している。メインインナクラッチプレート42は、係合突起421が内側スプライン突起331に係合することにより、インナシャフト3との相対回転が規制され、かつインナシャフト3に対して軸方向に移動可能である。また、メインインナクラッチプレート42は、金属からなる円盤状の基材431と、基材431の両側面にそれぞれ張り付けられた摩擦材432とを有している。基材431には、摩擦材432が貼着された部分よりも内側に、潤滑油を流通させる複数の油孔433が形成されている。メインアウタクラッチプレート41には、摩擦材432との接触面に、潤滑油を流動させる図略の油溝が形成されている。
カム機構5は、電磁クラッチ機構6を介してハウジング20の回転力を受けるパイロットカム51と、メインクラッチ4を軸方向に押圧する押圧部材としてのメインカム52と、パイロットカム51とメインカム52との間に配置された複数の球状のカムボール53とを有して構成されている。
メインカム52は、メインクラッチ4の一端におけるメインインナクラッチプレート42に接触してメインクラッチ4を押圧する環板状の押圧部521と、押圧部521よりもメインカム52の内周側に設けられたカム部522とを一体に有している。メインカム52は、押圧部521の内周端部に形成されたスプライン係合部521aがインナシャフト3の内側スプライン突起331に係合し、インナシャフト3との相対回転が規制されている。また、メインカム52は、インナシャフト3に形成された段差面3aとの間に配置された皿ばね54により、メインクラッチ4から軸方向に離間するように付勢されている。
パイロットカム51は、メインカム52に対して相対回転する回転力を電磁クラッチ機構6から受けるスプライン突起511を外周端部に有している。パイロットカム51とリヤハウジング22の第3環状部材223との間には、スラスト針状ころ軸受55が配置されている。パイロットカム51とメインカム52のカム部522との対向面には、周方向に沿って軸方向の深さが変化する複数のカム溝51a,522aがそれぞれ形成されている。カムボール53は、パイロットカム51のカム溝51aとメインカム52のカム溝522aとの間に配置されている。
カム機構5は、パイロットカム51がメインカム52に対して相対回転することにより、メインクラッチ4を押し付ける押圧力を発生させる。メインクラッチ4は、カム機構5から押圧力を受けてメインアウタクラッチプレート41とメインインナクラッチプレート42とが摩擦接触し、メインアウタクラッチプレート41とメインインナクラッチプレート42との間に発生する摩擦力によって駆動力を伝達する。
電磁クラッチ機構6は、アーマチャ60と、複数のパイロットアウタクラッチプレート61と、複数のパイロットインナクラッチプレート62と、電磁コイル63と、電磁コイル63を保持する磁性材料からなる環状のヨーク64とを有して構成されている。電磁コイル63は、ヨーク64に保持されてリヤハウジング22の収容空間22aに収容されている。ヨーク64は、玉軸受26によってリヤハウジング22の第3環状部材223に支持され、その外周面が第1環状部材221の内周面に対向している。また、ヨーク64の内周面は、第3環状部材223の外周面に対向している。
電磁コイル63には、電線631を介して制御装置2Bからの電流が励磁電流として供給される。電磁コイル63に通電されると、図2に示す磁路Gに磁束が発生する。この磁束の通路となるヨーク64、リヤハウジング22の第1環状部材221及び第3環状部材223、複数のパイロットアウタクラッチプレート61及びパイロットインナクラッチプレート62、及びアーマチャ60は、磁路Gを形成する磁路形成部材である。これらの磁路形成部材は、それぞれの材質に固有の保磁力を有し、磁化率がその時点での磁界の強さだけでなく過去の磁化過程に影響を受ける磁気ヒステリシスを有している。
複数のパイロットアウタクラッチプレート61及び複数のパイロットインナクラッチプレート62は、鉄等の磁性材料からなる円盤状の部材であり、アーマチャ60とリヤハウジング22との間に、軸方向に沿って交互に配置されている。パイロットアウタクラッチプレート61及びパイロットインナクラッチプレート62には、磁束の短絡を防ぐための複数の円弧状のスリットがリヤハウジング22の第2環状部材222と軸方向に並ぶ位置に形成されている。
パイロットアウタクラッチプレート61は、フロントハウジング21の外側スプライン突起211に係合する複数の係合突起611を外周端部に有している。パイロットインナクラッチプレート62は、パイロットカム51のスプライン突起511に係合する複数の係合突起621を内周端部に有している。なお、パイロットアウタクラッチプレート61とパイロットインナクラッチプレート62との摩擦摺動も、メインクラッチ4と同様に、潤滑油によって潤滑される。
アーマチャ60は、鉄等の磁性材料からなる環状の部材であり、外周部にはフロントハウジング21の外側スプライン突起211に係合する複数の係合突起601が形成されている。これにより、アーマチャ60は、フロントハウジング21に対して軸方向に移動可能で、かつフロントハウジング21に対する相対回転が規制されている。
電磁クラッチ機構6は、電磁コイル63への通電により発生する磁力によってアーマチャ60をヨーク64側に吸引し、このアーマチャ60の移動によってパイロットアウタクラッチプレート61とパイロットインナクラッチプレート62との間に摩擦力を発生させる。パイロットアウタクラッチプレート61及びパイロットインナクラッチプレート62は、アーマチャ60によってリヤハウジング22側に押し付けられて摩擦接触する。
駆動力伝達装置2Aは、この電磁クラッチ機構6の作動によって、電磁コイル63に供給される電流に応じた回転力がパイロットカム51に伝達され、パイロットカム51がメインカム52に対して相対回転し、カムボール53がカム溝51a,522aを転動する。そして、このカムボール53の転動により、メインカム52にメインクラッチ4を押圧するスラスト力が発生し、複数のメインアウタクラッチプレート41と複数のメインインナクラッチプレート42との間に摩擦力が発生する。すなわち、駆動力伝達装置2Aは、電磁コイル63に供給される電流に応じたトルクの駆動力をハウジング20とインナシャフト3との間で伝達する。制御装置2Bは、電磁コイル63に供給する電流によってハウジング20とインナシャフト3との間で伝達される駆動力を制御する。以下、ハウジング20とインナシャフト3との間で伝達される駆動力の大きさを伝達トルクという。
(制御装置の構成)
図3は、制御装置2Bの機能構成例を示すブロック図である。制御装置2Bは、CPU(演算処理装置)を有する制御部7と、EEPROMやフラッシュメモリ等の不揮発性メモリを有する記憶部8と、バッテリー等の直流電源の電圧をスイッチングして駆動力伝達装置2Aの電磁コイル63に電流を供給するスイッチング電源部9とを有している。スイッチング電源部9は、トランジスタ等のスイッチング素子を有し、制御部7から出力されるPWM(Pulse Width Modulation)信号に基づいて直流電圧をスイッチングし、電流を生成する。
図3は、制御装置2Bの機能構成例を示すブロック図である。制御装置2Bは、CPU(演算処理装置)を有する制御部7と、EEPROMやフラッシュメモリ等の不揮発性メモリを有する記憶部8と、バッテリー等の直流電源の電圧をスイッチングして駆動力伝達装置2Aの電磁コイル63に電流を供給するスイッチング電源部9とを有している。スイッチング電源部9は、トランジスタ等のスイッチング素子を有し、制御部7から出力されるPWM(Pulse Width Modulation)信号に基づいて直流電圧をスイッチングし、電流を生成する。
制御部7は、記憶部8に記憶されたプログラム81をCPUが実行することにより、トルク指令値演算手段71、電流指令値演算手段72、及び電流制御手段73として機能する。トルク指令値演算手段71、電流指令値演算手段72、及び電流制御手段73としての処理動作は、所定の制御周期(例えば5ms)ごとに実行される。
トルク指令値演算手段71はハウジング20からインナシャフト3に伝達すべき駆動力の大きさをトルク指令値として演算する。トルク指令値は、例えば左右前輪181,182の平均回転速度と左右後輪191,192の平均回転速度との差である前後輪回転速度差が大きいほど、またアクセルペダル110の操作量が大きいほど、大きな値に設定される。例えば、アクセルペダル110が所定の操作量まで操作され、その後に操作量が一定となった場合には、トルク指令値も同様に変化する。また、ヨーレイトや車両前後方向及び車両左右方向の加速度等に応じてトルク指令値を増減させてもよい。以下、トルク指令値が実質的に一定である状態をトルク指令値の定常状態といい、トルク指令値が時間の経過とともに変動している状態をトルク指令値の変動状態という。より具体的には、定常状態とは、制御周期あたりのトルク指令値の変化量が所定値(例えば駆動力伝達装置2Aの定格トルクの0.01%)未満であることをいい、変動状態とは、制御周期あたりのトルク指令値の変化量がこの所定値以上であることをいう。
電流指令値演算手段72は、トルク指令値演算手段71が演算したトルク指令値に応じて電磁コイル63に供給すべき電流の値を電流指令値として演算する。電流制御手段73は、電流指令値演算手段72が演算した電流指令値に対応する電流を電磁コイル63に供給する。具体的には、スイッチング電源部9のスイッチング素子をオン・オフさせるPWM信号のデューティー比を調整し、電流指令値に対応する電流が電磁コイル63に供給されるようにフィードバック制御を行う。
記憶部8は、プログラム81の他に、制御部7の処理に用いられる情報として、関係情報82、第1のトルク特性情報83、第2のトルク特性情報84、第1のマップ情報85、及び第2のマップ情報86を記憶している。
関係情報82は、電磁コイル63に供給する電流を一定に保持したときにハウジング20とインナシャフト3との間で伝達されるトルクと電流の大きさとの関係を示す情報である。第1のトルク特性情報83は、電磁コイル63に供給する電流を漸次増大させたときの伝達トルクの変化の特性である第1のトルク特性を示す情報である。第2のトルク特性情報84は、電磁コイル63に供給する電流を漸次減少させたときの伝達トルクの変化の特性である第2のトルク特性を示す情報である。第1のマップ情報85は、トルク指令値が漸次増大する変動状態から定常状態に移行したとき電流指令値演算手段72が参照するマップ情報である。第2のマップ情報86は、トルク指令値が漸次減少する変動状態から定常状態に移行したとき電流指令値演算手段72が参照するマップ情報である。
第1のトルク特性情報83及び第2のトルク特性情報84は、駆動力伝達装置2Aの製造ラインにおける個々の駆動力伝達装置2Aの組み立て後において、電磁コイル63に供給する電流を所定の時間変化率で増大及び減少させたときの伝達トルクを測定した結果に基づくものである。制御装置2Bの記憶部8には、制御装置2Bの四輪駆動車1への搭載時に、その四輪駆動車1において組み合わされる駆動力伝達装置2Aの第1のトルク特性情報83及び第2のトルク特性情報84が記憶される。なお、第2のトルク特性情報84は、電磁コイル63に供給する電流を漸次増大させたときと電磁コイル63に供給する電流を漸次減少させたときの伝達トルクの差であってもよい。すなわち、以下の説明において、第2のトルク特性に基づく制御は、第1のトルク特性及び上記の差に基づく制御とすることができる。
関係情報82は、例えば複数の駆動力伝達装置2Aを用いた実験結果又はコンピュータシミュレーションの結果に基づいて設定される。複数の駆動力伝達装置2Aを用いた実験結果に基づいて関係情報82を設定する場合には、ヨーク64等の磁路形成部材における磁束密度の増減や、複数のメインアウタクラッチプレート41とメインインナクラッチプレート42との間ならびに複数のパイロットアウタクラッチプレート61とパイロットインナクラッチプレート62との間に介在する潤滑油の量の増減がなく、伝達トルクが一定となったときの電磁コイル63への供給電流と伝達トルクの測定結果に基づいて関係情報82が設定される。
駆動力伝達装置2Aは、電磁コイル63に供給される電流が増大する過程では、この電流に対してヨーク64等の磁路形成部材が十分に磁化されていないので、電磁コイル63に供給される電流に対する伝達トルクの値が小さくなる。一方、電磁コイル63に供給される電流が減少する過程では、ヨーク64等の磁路形成部材の残留磁気によって磁路形成部材における磁束密度が高められており、電磁コイル63に供給される電流に対する伝達トルクの値が大きくなる。また、複数のメインアウタクラッチプレート41とメインインナクラッチプレート42との間ならびに複数のパイロットアウタクラッチプレート61とパイロットインナクラッチプレート62との間に介在する潤滑油の量の変化も、伝達トルクを変動させる要因となる。
図4は、電磁コイル63に供給する電流を0から定格電流まで漸次増大させた後、定格電流から0まで漸次減少させた場合の、電流と伝達トルクとの関係の一例を示すグラフである。このグラフでは、電磁コイル63に供給する電流を漸次増大させたときの伝達トルクを示す第1のトルク特性線L1、及び電磁コイル63に供給する電流を漸次減少させたときの伝達トルクを示す第2のトルク特性線L2を示している。図4に示すように、電磁コイル63に供給する電流が徐々に増大していく場合には、電流が徐々に減少していく場合に比較して、ハウジング20とインナシャフト3との間の伝達トルクが小さくなる。
図4の縦軸に示すTのトルクをハウジング20からインナシャフト3に伝達する場合、このトルクTに対応する第1のトルク特性線L1上の座標点P1の電流値はI1であり、トルクTに対応する第2のトルク特性線L2上の座標点P2の電流値はI2である。つまり、トルクTの伝達トルクを得る場合に電磁コイル63に供給することが必要な電流の電流値は、電流増大時にはI1であり、電流減少時にはI2である。
ここで、電磁コイル63に供給する電流を漸次増大させたときと漸次減少させたときとで、ハウジング20とインナシャフト3との間で所定の大きさの駆動力を伝達するために必要となる電流値の差をヒステリシス量と定義する。図4に示す例では、I1とI2との差であるΔI(=I1-I2)が、トルクTに対応するヒステリシス量となる。ヒステリシス量は、トルクの大きさによって異なる。
また、図4では、関係情報82を示す第3のトルク特性線L3を破線で示している。第3のトルク特性線L3は、第1のトルク特性線L1と第2のトルク特性線L2との間にあり、第1のトルク特性線L1及び第2のトルク特性線L2の中央位置よりも第2のトルク特性線L2側に片寄っている。図4に示すように、トルクTに対応する第3のトルク特性線L3上の座標点P3の電流値をI3としたとき、電流値I1と電流値I3との差をヒステリシス量ΔIで除した値である電流差係数は、(I1-I3)/ΔIの演算式で求められる。関係情報82には、0から定格トルクまでの複数のトルク指令値に対応する電流差係数が記憶されている。なお、電流差係数は、左右前輪181,182及び左右後輪191,192との相対回転速度や温度によって変化する値であってもよい。
上記のように、第3のトルク特性線L3は、第2のトルク特性線L2側に片寄っているため、電流差係数は何れのトルク指令値においても0.5より大きな値である。この理由としては、カム機構5のメインカム52がインナシャフト3に形成された段差面3aとの間に配置された皿ばね54によってメインクラッチ4から離間するように付勢されており、電磁コイル63に供給される電流が減少する過程では、皿ばね54の付勢力によって速やかにメインクラッチ4の複数のメインアウタクラッチプレート41とメインインナクラッチプレート42との摩擦力が低減されることが要因として挙げられる。
電流指令値演算手段72は、トルク指令値が増大するとき、第1のトルク特性情報83として記憶された第1のトルク特性を参照して電流指令値を演算し、トルク指令値が減少するとき、第2のトルク特性情報84として記憶された第2のトルク特性を参照して電流指令値を演算する。また、電流指令値演算手段72は、トルク指令値が増大又は減少する状態から、トルク指令値の時間当たりの変化量が所定値未満の定常状態に移行したとき、電流指令値を、第1のトルク特性又は第2のトルク特性を参照して得られる値から、関係情報82として記憶された第3のトルク特性を参照して得られる値に徐々に近づける。この際、電流指令値演算手段72は、定常状態となる前の制御状態に応じて、電流指令値を、第1のトルク特性側から又は第2のトルク特性側から、第3のトルク特性を参照して得られる値に徐々に近づける。
すなわち、電流指令値演算手段72は、トルク指令値の時間当たりの変化量が所定値以上である変動状態から、トルク指令値の時間当たりの変化量がこの所定値未満である定常状態に移行したとき、電流指令値を、関係情報82を参照して得られる値に徐々に近づける。これにより、ヨーク64等の磁路形成部材の磁気ヒステリシスや複数のメインアウタクラッチプレート41とメインインナクラッチプレート42との間ならびに複数のパイロットアウタクラッチプレート61とパイロットインナクラッチプレート62との間に介在する潤滑油の影響によって伝達トルクが変動してしまうことが抑制され、伝達トルクの精度が高められる。
また、電流指令値演算手段72は、トルク指令値が増大する変動状態から定常状態に移行したとき、定常状態に移行してからの経過時間に応じて第1のマップ情報85を参照して得られる第1の電流補正量に基づいて電流指令値を小さくなるように補正し、トルク指令値が減少する変動状態から定常状態に移行したとき、定常状態に移行してからの経過時間に応じて第2のマップ情報86を参照して得られる第2の電流補正量に基づいて電流指令値を大きくなるように補正する。電流指令値演算手段72は、この補正の方向、すなわち電流指令値を小さくなるように補正するか大きくなるように補正するかを、定常状態となる前の制御状態が、図4のグラフにおける第3のトルク特性の右側(大電流側)か左側(小電流側)かによって切り替える。
次に、図5及び図6(a),(b)を参照し、トルク指令値の変動状態から定常状態に移行する前後の駆動力伝達制御装置の動作例について具体的に説明する。
図5は、第1のトルク特性線L1、第2のトルク特性線L2、及び第3のトルク特性線L3の一部を拡大して示すグラフである。図6(a),(b)及び図7(a),(b)は、電磁コイル63に供給される電流と伝達トルクの時間的な変化の例を示すグラフである。図6(a),(b)及び図7(a),(b)では、電磁コイル63に供給される電流の変化を実線で示し、伝達トルクの変化を破線で示している。
図5では、電磁コイルに63に供給する電流を0から一定の時間変化率でI1まで上昇させた変動状態の後に、電磁コイルに63に供給する電流をI1で一定にした場合の電流と伝達トルクとの関係の変化を矢印A1で示している。図6(a)では、このときの伝達トルク及び電流の時間的な変化を示している。トルク指令値の変動状態から定常状態に移行するタイミングは、図6(a)の横軸(時間軸)に示す時刻t1である。
このように電磁コイル63に供給する電流を変化させた場合には、時刻t1以降に電流を一定にしているにもかかわらず伝達トルクが上昇してしまう。これは、時刻t1以降において、ヨーク64等の磁路形成部材の磁気ヒステリシスによって磁路形成部材の磁束密度が徐々に増大してしまうこと、及び複数のメインアウタクラッチプレート41とメインインナクラッチプレート42との間ならびに複数のパイロットアウタクラッチプレート61とパイロットインナクラッチプレート62との間に介在する潤滑油の量が減少することによるものである。
本実施の形態では、トルク指令値が漸次増大する状態から定常状態に移行したとき、定常状態に移行してからの経過時間に応じて第1のマップ情報85を参照して得られる第1の電流補正量に基づいて電流指令値を小さくなるように補正する。図5では、この場合の電流と伝達トルクとの関係の変化を矢印A2で示している。図6(b)では、このときの伝達トルク及び電流の時間的な変化を示している。図5に矢印A2で示すように、時刻t1以降に電磁コイルに63に供給する電流の電流値をI1から徐々に小さくすることにより、時刻t1以降における伝達トルクの変動が抑えられる。
また、図5では、電磁コイル63に供給する電流を定格電流から一定の時間変化率でI2まで減少させた変動状態の後に、電磁コイルに63に供給する電流をI2で一定にした場合の電流と伝達トルクとの関係の変化を矢印B1で示している。図7(a)では、このときの伝達トルク及び電流の時間的な変化を示している。トルク指令値の変動状態から定常状態に移行するタイミングは、図7(a)の横軸(時間軸)に示す時刻t2である。
このように電磁コイル63に供給する電流を変化させた場合には、時刻t2以降に電流を一定にしているにもかかわらず伝達トルクが下降してしまう。これは、ヨーク64等の磁路形成部材の磁気ヒステリシスによって時刻t2以降に磁路形成部材の磁束密度が減少してしまうこと、及び複数のメインアウタクラッチプレート41とメインインナクラッチプレート42との間ならびに複数のパイロットアウタクラッチプレート61とパイロットインナクラッチプレート62との間に介在する潤滑油の量が増大することによるものである。
本実施の形態では、トルク指令値が漸次減少する状態から定常状態に移行したとき、定常状態に移行してからの経過時間に応じて第2のマップ情報86を参照して得られる第2の電流補正量に基づいて電流指令値を大きくなるように補正する。図5では、この場合の電流と伝達トルクとの関係の変化を矢印B2で示している。図7(b)では、このときの伝達トルク及び電流の時間的な変化を示している。図5に矢印B2で示すように、時刻t2以降に電磁コイルに63に供給する電流の電流値をI2から徐々に大きくすることにより、時刻t2以降における伝達トルクの変動が抑えられる。
図8(a)は、第1のマップ情報85の一例を示すグラフである。第1のマップ情報85には、定常状態に移行してからの経過時間が長くなるほど、絶対値が大きくなる第1の電流補正量が記憶されている。なお、第1の電流補正量は、負の値であるが、図8(a)では、第1の電流補正量の絶対値を縦軸に示している。
図8(b)は、第2のマップ情報86の一例を示すグラフである。第2のマップ情報86には、第1のマップ情報85と同様に、定常状態に移行してからの経過時間が長くなるほど、絶対値が大きくなる正の値の第2の電流補正量が記憶されている。ただし、第2の電流補正量は、何れのトルク指令値及び経過時間においても、第1の電流補正量の絶対値より小さく設定されている。図8(b)に示すグラフの各軸のスケールは、図8(a)に示すグラフの各軸のスケールと共通である。
図9は、制御部7が制御周期ごとに実行する処理の一例を示すフローチャートである。制御部7は、トルク指令値演算手段71、電流指令値演算手段72、及び電流制御手段73として、図9に示す処理を制御周期ごとに繰り返し実行する。図9に示すフローチャートの各ステップのうち、ステップS1はトルク指令値演算手段71としての処理であり、ステップS16は電流制御手段73としての処理である。その他のステップは、電流指令値演算手段72としての処理である。
トルク指令値演算手段71は、前後輪回転速度差やアクセルペダル110の操作量等の各種の車両状態に基づいてトルク指令値を演算する(ステップS1)。電流指令値演算手段72は、ステップS1で演算されたトルク指令値に応じて、例えば第1のトルク特性情報83又は第2のトルク特性情報84を参照し、第1のトルク特性と第2のトルク特性との間で電流指令値を演算する(ステップS2)。
次に、電流指令値演算手段72は、前回の制御周期におけるトルク指令値の値であるトルク指令値前回値と、ステップS1で演算されたトルク指令値との差の絶対値が所定値未満であるか否かを判定する(ステップS3)。ステップS3の判定の結果がYesである場合、カウント値をインクメントする(ステップS4)。このカウント値は、トルク指令値が定常状態となってからの経過時間を示している。一方、ステップS3の判定の結果がYesである場合には、カウント値をゼロにクリアする(ステップS5)。
次に、電流指令値演算手段72は、ステップS1で演算されたトルク指令値に応じて関係情報82を参照して得られる値である関係情報参照値を求め、ステップS2で演算された電流指令値がこの関係情報参照値よりも大きいか否かを判定する(ステップS6)。この判定は、図4に示すグラフでは、ステップS2で演算された電流指令値が第3のトルク特性線L3の右側であるか否かの判定に相当する。
ステップS6の判定がYesである場合、電流指令値演算手段72は、ステップS1で演算されたトルク指令値及びカウンタ値に示される経過時間に応じて第1のマップ情報85を参照し、第1の電流補正値を取得する(ステップS7)。次に、電流指令値演算手段72は、ステップS2で演算した電流指令値にステップS7で取得した第1の電流補正値を加算して電流指令値とする(ステップS8)。前述のように、第1の電流補正量は負の値であるため、ステップS2で演算した電流指令値に第1の電流補正値を加算することにより、加算後の電流指令値は、ステップS2で演算した電流指令値よりも第1の電流補正量の絶対値分だけ小さな値となる。
次に、電流指令値演算手段72は、ステップS8で演算された電流指令値が上記の関係情報参照値以上であるか否かを判定する(ステップS9)。このステップS9の判定の結果がNoである場合、ステップS8で行った電流指令値の補正が過剰であることとなるので、電流指令値を関係情報参照値とする(ステップS10)。
一方、ステップS6の判定の結果がNoである場合、電流指令値演算手段72は、ステップS1で演算されたトルク指令値及びカウンタ値に示される経過時間に応じて第2のマップ情報86を参照し、第2の電流補正値を取得する(ステップS11)。次に、電流指令値演算手段72は、ステップS2で演算した電流指令値にステップS11で取得した第2の電流補正値を加算して電流指令値とする(ステップS12)。第2の電流補正値は正の値であるので、ステップS2で演算した電流指令値に第2の電流補正値を加算することにより、加算後の電流指令値は、ステップS2で演算した電流指令値よりも第2の電流補正量の絶対値分だけ大きな値となる。
次に、電流指令値演算手段72は、ステップS12で演算された電流指令値が上記の関係情報参照値以上であるか否かを判定する(ステップS13)。このステップS13の判定の結果がNoである場合、ステップS12で行った電流指令値の補正が過剰であることとなるので、電流指令値を関係情報参照値とする(ステップS14)。
電流制御手段73は、ステップS2で演算された電流指令値、もしくはステップS4及びS6~14の処理で補正された電流指令値の電流が電磁コイル63に供給されるように、電磁コイル63に供給される電流を検出する電流センサの検出値に基づいてスイッチング電源部9のスイッチング素子をオン・オフさせるPWM信号のデューティー比を調整し、フィードバック制御を行う。これにより、トルク指令値に応じた大きさの駆動力がハウジング20とインナシャフト3との間で伝達される。
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明した本実施の形態によれば、トルク指令値が変動状態から定常状態に移行したとき、そのことを検知して電流指令値を関係情報82を参照して得られる値に徐々に近づけるので、ヨーク64等の磁路形成部材の磁気ヒステリシスや複数のクラッチプレート間に介在する潤滑油の影響によって伝達トルクが変動してしまうことが抑制され、伝達トルクの精度が高められる。
以上説明した本実施の形態によれば、トルク指令値が変動状態から定常状態に移行したとき、そのことを検知して電流指令値を関係情報82を参照して得られる値に徐々に近づけるので、ヨーク64等の磁路形成部材の磁気ヒステリシスや複数のクラッチプレート間に介在する潤滑油の影響によって伝達トルクが変動してしまうことが抑制され、伝達トルクの精度が高められる。
(付記)
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、この実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、一部の構成を省略し、あるいは構成を追加もしくは置換して、適宜変形して実施することが可能である。
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、この実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、一部の構成を省略し、あるいは構成を追加もしくは置換して、適宜変形して実施することが可能である。
2…駆動力伝達制御装置 20…ハウジング(入力側の回転部材)
2A…駆動力伝達装置 2B…制御装置
3…インナシャフト(出力側の回転部材) 71…トルク指令値演算手段
72…電流指令値演算手段 73…電流制御手段
8…記憶部 82…関係情報
83…第1のトルク特性情報 84…第2のトルク特性情報
85…第1のマップ情報 86…第2のマップ情報
2A…駆動力伝達装置 2B…制御装置
3…インナシャフト(出力側の回転部材) 71…トルク指令値演算手段
72…電流指令値演算手段 73…電流制御手段
8…記憶部 82…関係情報
83…第1のトルク特性情報 84…第2のトルク特性情報
85…第1のマップ情報 86…第2のマップ情報
Claims (3)
- 電磁コイルに供給される電流に応じたトルクの駆動力を入力側の回転部材と出力側の回転部材との間で伝達する駆動力伝達装置と、前記電磁コイルに供給する電流によって前記入力側の回転部材と前記出力側の回転部材との間で伝達される駆動力を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記電磁コイルに供給する電流を一定に保持したときに前記入力側の回転部材と前記出力側の回転部材との間で伝達されるトルクと前記電流の大きさとの関係を示す関係情報を記憶する記憶部と、
前記入力側の回転部材から前記出力側の回転部材に伝達すべき駆動力の大きさをトルク指令値として演算するトルク指令値演算手段と、
前記トルク指令値に応じて前記電磁コイルに供給すべき電流の値を電流指令値として演算する電流指令値演算手段と、
前記電流指令値に対応する電流を前記電磁コイルに供給する電流制御手段とを備え、
前記電流指令値演算手段は、前記トルク指令値の時間当たりの変化量が所定値以上である変動状態から前記所定値未満である定常状態に移行したとき、前記電流指令値を、前記関係情報を参照して得られる値に徐々に近づける、
駆動力伝達制御装置。 - 前記記憶部は、前記トルク指令値が増大する状態から前記定常状態に移行したときに前記電流指令値演算手段が参照する第1のマップ情報と、前記トルク指令値が減少する状態から前記定常状態に移行したときに前記電流指令値演算手段が参照する第2のマップ情報とを記憶し、
前記電流指令値演算手段は、
前記トルク指令値が増大する状態から前記定常状態に移行したとき、前記定常状態に移行してからの経過時間に応じて前記第1のマップ情報を参照して得られる第1の電流補正量に基づいて前記電流指令値を小さくなるように補正し、
前記トルク指令値が減少する状態から前記定常状態に移行したとき、前記定常状態に移行してからの経過時間に応じて前記第2のマップ情報を参照して得られる第2の電流補正量に基づいて前記電流指令値を大きくなるように補正する、
請求項1に記載の駆動力伝達制御装置。 - 前記第1のマップ情報を参照して得られる前記第1の電流補正量の絶対値が、前記第2のマップ情報を参照して得られる前記第2の電流補正量の絶対値よりも大きい、
請求項2に記載の駆動力伝達制御装置。
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