JP2023151076A - チタン含有酸化物粉末、それを用いた電極、及び蓄電デバイス - Google Patents

チタン含有酸化物粉末、それを用いた電極、及び蓄電デバイス Download PDF

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Abstract

【課題】蓄電デバイスの電極材料として用いられ、初期放電容量、及びレート特性を維持しながら、サイクル特性を高めることができるチタン含有酸化物粉末、それを用いた電極、及び蓄電デバイスを提供する。【解決手段】一般式Li4Ti5O12またはTi1-x/2Nb2O7-x(0≦X<2)で表されるチタン含有酸化物粒子を含む粉末であって、前記チタン含有酸化物粒子の表面の少なくとも一部がポリイミドで被覆されていることを特徴とするチタン含有酸化物粉末。【選択図】 なし

Description

本発明は、蓄電デバイスの電極材料等として好適なチタン含有酸化物粉末、それを用いた電極、及び蓄電デバイスに関する。
近年、蓄電デバイスの電極材料として種々の材料が研究されている。その中でも一般式Li4Ti512で表されるチタン酸リチウムは、活物質材料として用いた場合に、特に低温領域での入出力特性に優れる点から、HEV、PHEV、BEVといった電気自動車用の補助電源用デバイスの負極活物質材料として注目されている。
さらに、電気自動車用の主電源用デバイスには、電費向上の観点から高いエネルギー密度が求められる。チタン酸リチウムは入出力特性に優れる点があるものの、エネルギー密度が175mAh/gに留まるため、更なる高エネルギー化には課題が残る。そこで、380mAh/gと高いエネルギー密度を持つ、一般式TiNb27で表されるチタン酸ニオブを中心とするニオブ-チタン含有酸化物も負極活物質材料として活用する動きが見られている。
電気自動車用の蓄電デバイスには、燃費または電費向上の観点から高いエネルギー密度が求められる。加えて、高温から低温における広い温度領域での安定性も重要である。具体的には、初期の入出力特性や高温下でのガス発生抑制が挙げられる。チタン酸リチウムを含むチタン含有酸化物を蓄電デバイスに用いた場合、60℃以上の高温で長期間使用されると、ガス発生などの保存安定性に課題があることから、電池の抵抗増加を引き起こし、長期での入出力特性に変化を生じることが知られている。したがって、蓄電デバイスのエネルギー密度を高めながら初期の優れた入出力特性を維持し、かつ、長期高温動作後のガス発生や抵抗増加を抑制するチタン含有酸化物の開発が望まれている。
特許文献1には、電池の負極の材料となる活物質粒子をモノマー型ポリイミド前駆体由来のポリイミド層で被覆したポリイミドコーティング活物質粒子が開示されている。この活物質粒子を用いて電池の負極を形成することで、電池が充放電を繰り返した場合における、サイクル特性の低下を抑えることができるとされている。
特許文献2には、超高分子量の高弾性ポリマーの薄層によって包含されている電池用負極活物質粒子が開示されている。この活物質粒子を用いて電池の負極を形成することで、電池のサイクル特性の低下を抑えることができるとされている。
特開2016-157652号公報 特表2020-513138号公報
ところで、特許文献1の活物質はケイ素粉末(シリコン)を負極材料として適用しており、電池のサイクル特性改善を示されているが、蓄電デバイスには、ハイレートでの出力性能やガス発生による電池膨れ防止なども求められる。この点について特許文献1には一切示されていない。上記でも記載したとおり、特にチタン含有酸化物活物質は高温動作後のガス発生や抵抗増加を抑制が重要視される。
特許文献2の活物質も、Siナノ粒子や黒鉛などを負極材料として適用しており、電池の初期容量やサイクル特性改善を示されているが、それ以外の性能に関する知見の記載は見られない。
以上の点から、特許文献1や特許文献2の負極活物質や電極を使用した蓄電デバイスでは、チタン含有酸化物活物質を用いた場合のサイクル性能や放電レート特性改善、ならびに高温(以後、50℃以上の温度を言う)でのガス発生量抑制を両立することはできない。
そこで本発明では、蓄電デバイスの電極材料として用いられ、初期放電容量、及びレート特性を維持しながら、サイクル特性を高めることができるチタン含有酸化物粉末、それを用いた電極、及び蓄電デバイスを提供することを目的とする。
本発明者らは、前記の目的を達成すべく種々検討した結果、ポリイミドを表面形成させたチタン含有酸化物粉末を見出した。そのチタン含有酸化物粉末を活物質として電極材料に適用された蓄電デバイスが、初期放電容量、及びレート特性を維持しながら、サイクル特性を高めることができることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は以下の事項に関する。
(1)一般式LiTi12またはTi1-x/2Nb7-x(0≦X<2)で表されるチタン含有酸化物粒子を含む粉末であって、前記チタン含有酸化物粒子の表面の少なくとも一部がポリイミドで被覆されていることを特徴とするチタン含有酸化物粉末。
(2)前記チタン含有酸化物において、粒子の表面に存在するポリイミドが、ポリマー型全芳香族ポリイミド前駆体由来のポリイミドであることを特徴とする、(1)に記載のチタン含有酸化物粉末。
(3)前記チタン含有酸化物粉末において、粒子の表面に存在するポリイミドの含有率(質量%)が0.01~1.5であることを特徴とする、(1)又は(2)に記載のチタン含有酸化物粉末。
(4)一般式Ti1-x/2Nb7-x(0≦X<2)で表されるチタン含有酸化物が、TiNbであることを特徴とする、(1)~(3)のいずれか一項に記載のチタン含有酸化物粉末。
(5)(1)~(4)のいずれか一項に記載のチタン含有酸化物粉末を含むことを特徴とする電極。
(6)(5)に記載の電極含むことを特徴とする、蓄電デバイス。
本発明によると、初期放電容量、及びレート特性を維持しながら、サイクル特性を高めることができる蓄電デバイスの電極材料として好適なチタン含有酸化物粉末、それを用いた電極、及び蓄電デバイスを提供することができる。
[チタン含有酸化物粉末]
本発明のチタン含有酸化物粉末は、一般式LiTi12またはTi1-x/2Nb7-x(0≦X<2)で表されるチタン含有酸化物粒子を含む粉末であって、前記チタン含有酸化物粒子の表面の少なくとも一部がポリイミドで被覆されていることを特徴とするチタン含有酸化物粉末であるものをいう。
<LiTi12を主成分とするチタン酸リチウム粉末>
本発明のチタン含有酸化物粉末は、チタン含有酸化物粒子として、LiTi12を主成分とするものを含むことができ、この場合には、LiTi12を主成分とし、本発明の効果が得られる範囲で、LiTi12以外の結晶質成分及び/または非晶質成分を含むことができる。主成分とは、X線回折法によって測定される回折ピークのうち、LiTi12のメインピークの強度の割合が90%以上であることを言う。本発明のチタン酸リチウム粉末は、X線回折法によって測定される回折ピークのうち、LiTi12のメインピークの強度の割合は92%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。LiTi12以外の成分としては、結晶質成分に起因するメインピークの強度と、非晶質成分に起因するハローパターンの最高強度との総和である。特に本発明のチタン酸リチウム粉末は、その合成時の原料や合成条件に起因して、アナターゼ型二酸化チタン、ルチル型二酸化チタン、及び化学式が異なるチタン酸リチウムであるLiTiO、Li0.6Ti3.4、等を前記結晶質成分として含むことがある。本発明のチタン酸リチウム粉末は、これらのLiTi12以外の結晶質成分、特にLi0.6Ti3.4の発生割合が少ないほど、蓄電デバイスの充電特性及び充放電容量を向上させることができる。X線回折法によって測定される回折ピークのうち、LiTi12のメインピークの強度を100としたときに、アナターゼ型二酸化チタンのメインピークの強度と、ルチル型二酸化チタンのメインピーク強度と、LiTiOの(-133)面相当のピーク強度に100/80を乗じて算出したLiTiOのメインピークに相当する強度との総和が5以下であることが特に好ましい。ここで、LiTi12のメインピークとは、ICDD(PDF2010)のPDFカード00-049-0207におけるLiTi12の(111)面(2θ=18.33)に帰属する回折ピークに相当するピークである。アナターゼ型二酸化チタンのメインピークとは、PDFカード01-070-6826における(101)面(2θ=25.42)に帰属する回折ピークに相当するピークである。ルチル型二酸化チタンのメインピークとは、PDFカード01-070-7347における(110)面(2θ=27.44)に帰属する回折ピークに相当するピークである。LiTiOの(-133)面に相当するピークとは、PDFカード00-033-0831におけるLiTiOの(-133)面(2θ=43.58)に帰属する回折ピークに相当するピークである。Li0.6Ti3.4のメインピークとは、PDFカード01-070-2732における(101)面(2θ=19.98)に帰属する回折ピークに相当するピークである。なお、「ICDD」は、International Centre for Diffraction Data(国際回折データセンター)の略であり、「PDF」は、Powder Diffraction File(粉末回折ファイル)の略である。
<一般式Ti1-x/2Nb7-x(0≦X<2)で表されるニオブチタン複合酸化物粉末>
本発明のチタン含有酸化物粉末は、チタン含有酸化物粒子として、一般式Ti1-x/2Nb7-x(0≦X<2)で表されるニオブチタン複合酸化物を含有することができる。具体的な化合物の例には、LiイオンやNaイオンを吸蔵・放出することが可能なニオブチタン複合酸化物であるTiNb等が含まれる。初期放電容量、及びレート特性を維持しながら、サイクル特性を高める観点では、TiNbを含有することが好ましい。ニオブチタン複合酸化物については、一部に合成原料由来のチタン酸化物相(例えばルチル型TiO、TiOなど)を含んでもよい。ニオブチタン複合酸化物の場合、Nbのモル数とTiのモル数の比(Nb/Ti比)は、1.5~2.5の範囲が好ましく、さらに好ましいのは、1.8~2.2の範囲が好ましい。この範囲であると、ニオブチタン複合酸化物の電子伝導性が向上し、レート特性に優れる。
本発明のニオブチタン複合酸化物について、結晶系に制限はないが、チタン酸リチウムの場合は立方晶、ニオブチタン複合酸化物の場合は単斜晶型であることが一般的である。単斜晶型の場合、アスペクト比が大きくなる傾向だが、電極密度向上の観点から、1.0~4.0の範囲であることが好ましい。
<ポリイミド>
本発明のポリイミドとは、繰り返し単位にイミド結合(-O=C-N-C=O-)を主鎖に持つ高分子である。通常は酸二無水物とジアミンが直接イミド結合で繰り返し連結されたポリイミドのことを指す。
<ポリイミドの被覆>
本発明のポリイミドの被覆とは、チタン含有酸化物の粒子の表面の全部または一部を前記ポリイミドで被覆している状態を言う。具体的には、本発明のチタン含有酸化物粉末を、走査型電子顕微鏡やオージェ電子分光法、またはフーリエ変換赤外分光法等を用いて分析した場合、ポリイミド由来成分が検出されることをいう。
<ポリマー型全芳香族ポリイミド前駆体由来のポリイミド>
本発明において、チタン含有酸化物粒子の被覆に用いるポリイミドとしては、特に限定されないが、その作用効果が大きいことから、ポリマー型全芳香族ポリイミド前駆体由来のポリイミドであることが好ましい。ポリイミド前駆体は水溶性であることがより好ましく、ポリマー型全芳香族ポリイミド前駆体は、有機溶媒中で得られたポリアミド酸(有機溶媒中で、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミンとを反応させることで得られるポリアミド酸)を加水分解した後で水中に投入してポリアミド酸粉末を得、そのポリアミド酸粉末をさらに温水中で粉砕及び洗浄し、次いで、水及び2-メチルアミノジエタノールなどの特定のアミン化合物と混合してポリアミド酸塩水溶液組成物を得る方法により製造されるものが挙げられる。この方法で使用するテトラカルボン酸二無水物としてはベンゾフェノン-3,3′,4,4′-テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルホン-3,3′,4,4′-テトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(4-無水フタル酸)プロパン、オキシ-ビス(4-無水フタル酸)、4,4′-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)フタル酸二無水物、3,3′,4,4′-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3″,4,4″-p-ターフェニルテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテル-3,3′,4,4′-テトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、トリフルオロメチルピロメリット酸二無水物、ビス(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物等がある。
一方、芳香族ジアミン成分として、任意の芳香族ジアミン、例えば、o-トリジン、p-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノジフェニルエーテル、4,4′-ジアミノジフェニルエーテル、4,4′-ジアミノジフェニルスルホン、4,4′-ジアミノジフェニルメタン、4,4′-ジアミノジフェニルスルファイド、4,4′-ジアミノターフェニル、1,5-ジアミノナフタレン、4,4′-ビス(p-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4′-ビス(m-アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、2,2-ビス(4-(p-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、3,3′-ジメチル-4,4′-ジアミノジフェニルメタン、2,7-ジアミノフルオレン、3,3′-ジメトキシベンジジン、m-フェニレンジミン、2,2-ビス(4-(p-アミノフェノキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,6-ジアミノアントラキノン、1,4-ジアミノデュレン、2,6-アミノトルエン、2,5-ジアミノトルエン、4,4′-ジアミノベンゾフェノン、4,4′-ビス(p-アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、ベンゾグアナミン、2,7-ジアミノナフタレン、3,4-ジアミノトルエン、m-キシレンジアミン、p-キシレンジアミン、4,4′-ジチオジアニリン、o-フェニレンジアミンなどがある。芳香族ジアミンに加えて、ジアミノポリシロキサン、ノルボルナンジアミン等の脂環式ジアミンやエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン等の脂肪族ジアミンを用いることもできる。これらは単独で用いても良く、2種以上を組み合わせてもよい。
また、有機溶媒中で得られたポリアミック酸(ポリアミド酸)と1,2-ジメチルイミダゾール及び/又は1-メチル-2-エチルイミダゾールとの反応混合物からポリイミド前駆体を分離取得する方法が挙げられる。この方法においてテトラカルボン酸成分として、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパンの二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタンの二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エ-テルの二無水物などを使用することができる。また、芳香族ジアミン成分として、任意の芳香族ジアミン、例えばp-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエ-テル、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2’-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2’-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕エ-テル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホンが挙げられるが、好適には1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、脂環式ジアミン成分として、例えば、ジアミノポリシロキサン、ノルボルナンジアミン、脂肪族ジアミンとして、例えば、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,12-ドデカンジアミンなどを使用することができる。
さらに水を反応溶媒として、イミダゾール類の存在下に、テトラカルボン酸二無水物と25℃の水に対する溶解度が0.1g/L以上であるジアミンとを反応させて、ポリイミド前駆体の水溶液組成物を得る方法などが挙げられる。この方法で用いる芳香族ジアミンとしては、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’―ジアミノジフェニルエーテル、4,4’―ジアミノジフェニルメタン、2,4-トルエンジアミン、3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、ビス(4-アミノ-3カルボキシフェニル)メタンなど、脂環式ジアミン成分として、例えば、ジアミノポリシロキサン、ノルボルナンジアミン、脂肪族ジアミンとして、例えば、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,12-ドデカンジアミンなどが挙げられる。以上のようなポリイミド前駆体をイミド化させたポリイミドを言う。ポリマー型全芳香族ポリイミド前駆体には全芳香族ポリイミド前駆体と一部脂肪族ポリイミド前駆体が含まれ、レート特性を向上させる観点では、全脂肪族ポリイミド前駆体を含有しない、ポリマー型全芳香族ポリイミド前駆体由来のポリイミドが好ましい。より好ましいのは一部脂肪族ポリイミド前駆体を含有しないポリマー型全芳香族ポリイミド前駆体由来のポリイミドである。
<ポリイミドの含有率>
チタン含有酸化物粒子の表面に存在するポリイミドがチタン含有酸化物粉末の全体質量に占めるポリイミドの質量をポリイミドの含有率(質量%)として示す。算出方法は後述するが、添加する各ポリイミド前駆体溶液のポリマー濃度、及びチタン含有酸化物粉末の質量から算出され、0.01質量%~1.5質量%であればよい。ポリイミドの含有率がこの範囲であれば、レート特性、及び、サイクル特性を高めた蓄電デバイスが得られる。好ましくは0.02質量%~1.0質量%であり、より好ましくは0.5質量%~1.0質量%である。
チタン含有酸化物粒子の表面に存在するポリイミドのイミド化率は、好ましくは70~100%であり、より好ましくは85~100%、さらに好ましくは95~100%である。イミド化率を上記範囲とすることにより、初期放電容量、充電レート特性をより一層高めることができる。なお、ポリイミドのイミド化率は、反応温度などのイミド化反応条件を制御することにより調整することができる。
<比表面積>
本発明のチタン含有酸化物粉末の比表面積とは、窒素を吸着ガスとして用いて、単位質量あたりの表面積のことである。測定方法については、後述する実施例にて説明する。
本発明のチタン含有酸化物粉末は、比表面積が8.0m/g以下であればよく、7.0m/g以下が好ましく、6.4m/g以下がより好ましい。
<D50>
本発明のチタン含有酸化物粉末のD50とは体積中位粒径の指標である。レーザー回折・散乱型粒度分布測定によって求めた体積分率で計算した累積体積頻度が、粒径の小さい方から積算して50%になる粒径を意味する。測定方法については、後述する実施例にて説明する。
本発明のチタン含有酸化物粉末について、一次粒子であっても、一次粒子が凝集した二次粒子であっても良い。チタン含有酸化物粒子からなる一次粒子が凝集した二次粒子を含む場合、その一部としては、二次粒子を形成しておらず、一次粒子そのものの形態となっていてもよい。
本発明のチタン含有酸化物粉末が二次粒子の場合、二次粒子のD50は、電極密度向上の観点から、下限値は、11μm以上であることが好ましく、12μm以上がより好ましく、13μm以上がさらに好ましい。さらに、二次粒子のD50の上限値は、20μm以下であることが好ましく、18μm以下がより好ましく、14μm以下がさらに好ましい。なお、二次粒子のD50は、解砕処理(超音波器で超音波をかける)前のD50を表す。
本発明のチタン含有酸化物粉末の一次粒子のD50は、放電レート特性及びサイクル特性両立の観点から、一次粒子のD50の下限値は、0.6μm以上であればよく、0.7μm以上が好ましい。また、一次粒子のD50の上限値は、10μm以下であればよく、7μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。なお、一次粒子のD50は、解砕処理(超音波器で超音波をかけた)後のD50を表す。また、該チタン含有酸化物粉末は一次粒子径0.6μm未満の一次粒子を15%~30%の範囲で含んでいてもよく、0.7μm未満の一次粒子を15%~45%の範囲で含んでいてもよい。該チタン含有酸化物粉末は一次粒子径10μmを超える一次粒子を0.1%~10%の範囲で含んでいてもよく、7μmを超える一次粒子を0.1%~15%の範囲で含んでいてもよく、5μmを超える一次粒子を0.1%~20%の範囲で含んでいてもよい。
[チタン含有酸化物粉末の製造方法]
以下に、本発明のチタン含有酸化物粉末の製造方法の一例を、原料の調製工程、焼成工程、及び表面処理工程に分けて説明するが、本発明のチタン含有酸化物粉末の製造方法はこれに限定されない。
<原料の調製工程>
まず、出発原料を混合する。チタン酸リチウム粉末の原料は、チタン原料及びリチウム原料からなる。リチウム原料としては、水酸化リチウム一水和物、酸化リチウム、炭酸水素リチウム、炭酸リチウム等のリチウム化合物が用いられる。チタン原料としては、アナターゼ型二酸化チタン、ルチル型二酸化チタン等のチタン化合物が用いられる。また、ニオブチタン複合酸化物の場合、出発原料として、Tiと、Nbとを含む酸化物または塩を用いる。ニオブチタン複合酸化物のその他の添加元素を含む場合、出発原料として用いる塩は、水酸化物塩、炭酸塩、硝酸塩のような、比較的低融点で分解して酸化物を生じる塩であることが好ましい。
原料の混合方法については、特に制限はなく、湿式混合または乾式混合のいずれの方法でも良い。例えば、ヘンシェルミキサー、超音波分散装置、ホモミキサー、乳鉢、ボールミル、遠心式ボールミル、遊星ボールミル、振動ボールミル、アトライター式の高速ボールミル、ビーズミル、ロールミル等を用いることができる。
<焼成工程>
次に、上記で得られた混合物を焼成する。焼成により得られる粉末の比表面積や結晶子径、粉末の一次粒子径制御、炉材などからの不純物量を少なくする観点からは、高温かつ短時間で焼成することが好ましい。焼成は500~1300℃の温度範囲で、より好ましくは700~1100℃の範囲で行う。焼成温度を1100℃以下で行うことで汎用の設備を利用することができる。
前記条件で焼成できる方法であれば、焼成方法は特に限定されるものではない。利用できる焼成方法としては、固定床式焼成炉、ローラーハース式焼成炉、メッシュベルト式焼成炉、流動床式焼成炉、ロータリーキルン式焼成炉が挙げられる。ただし、短時間で効率的な焼成をする場合は、ローラーハース式焼成炉、メッシュベルト式焼成炉、ロータリーキルン式焼成炉が好ましい。特に、ロータリーキルン式焼成炉は、混合物を収容する容器が不要で、連続的に混合物を投入しながら焼成ができる点、被焼成物への熱履歴が均一で、均質な酸化物を得ることができる点から特に好ましい焼成炉である。
<解砕工程>
焼成後のチタン含有酸化物粉末を解砕する方法としては、ハンマーミル、ボールミル、ジェットミル、振動ミル、ビーズミルなどがあり、特にビーズミルが好ましい。ビーズミルを使用した場合の解砕方法としては、湿式解砕の循環式処理、湿式解砕のバッチ式処理または乾式解砕の循環処理、乾式解砕のバッチ式処理のいずれの方法も採用することができるが、解砕を均一に行うことが好ましく、その点においては湿式解砕の循環式処理が好ましい。循環条件は、焼成工程における焼成温度等と考慮して決定すればよいが、たとえば、循環条件を調整することで、チタン含有酸化物粉末の一次粒子のlog10(D90)-log10(D10)の値を好適に制御することができる。湿式解砕としては、水またはアルコール溶媒中に焼成後のチタン含有酸化物粉末を投入し、スラリー状態で混合させる。アルコール溶媒としてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなど沸点が100℃以下のものが溶媒除去しやすい点で好ましい。また、回収、廃棄のしやすさから、工業的には水溶媒が好ましい。
溶媒量としては、焼成後のチタン含有酸化物粉末が、溶媒中で均一に分散していることが好ましく、そのためにはスラリー粘度として8000cP以下が好ましく、より好ましくは5000cP以下であり、さらに好ましくは3000cP以下である。
湿式解砕の循環処理時間(循環処理による解砕パス回数)は、チタン含有酸化物の結晶性が低下し、電池性能に悪影響を及ぼさない限りは特に限定されないが、一次粒子のlog10(D90)-log10(D10)の値に応じて決定することが望ましい。より好ましくは、log10(D90)-log10(D10) < 0.7の範囲が好ましい。(なお、D90とは粒度分布において一次粒子の累積体積分布が90%となる点の粒径を示し、D10とは粒度分布において一次粒子の累積体積分布が10%となる点の粒径を示す。)
<表面処理工程>
次に、上記で得られたチタン含有酸化物について、表面処理を実施する。本発明のチタン含有酸化物は、粒子の表面にポリイミドが存在することを特徴としており、好適には、粒子の表面にポリマー型全芳香族ポリイミド前駆体由来のポリイミドが存在するものであり、電池の負極材料として適用した場合にレート特性、及び、サイクル特性を高めることができる。次のような表面処理工程などを採用することで、適切かつ比較的簡便に、本発明のチタン含有酸化物粉末を製造することができる。以下においては、粒子の表面にポリマー型全芳香族ポリイミド前駆体由来のポリイミドが存在する場合を例示して、表面処理工程を説明する。
まず、基材のチタン含有酸化物粉末とポリマー型全芳香族ポリイミド前駆体(ポリアミック酸溶液)を表面処理剤として混合添加し乾燥する。混合方法に特に制限はなく、湿式混合または乾式混合のいずれの方法も採用することができるが、基材のチタン含有酸化物粉末を構成する粒子の表面にポリマー型全芳香族ポリイミド前駆体を均一に分散させることが好ましく、その点においては湿式混合が好ましい。また乾燥方法にも特に制限はなく、恒温槽などを用いた蒸発乾固などが挙げられる。
湿式混合としては、水またはアルコール溶媒中にポリマー型全芳香族ポリイミド前駆体(ポリアミック酸溶液)と基材のチタン含有酸化物粉末を投入し、スラリー状態で混合させる。アルコール溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなど沸点が100℃以下のものが溶媒除去しやすい点で好ましい。また、回収、廃棄のしやすさから、工業的には水溶媒が好ましい。
前記ポリマー型全芳香族ポリイミド前駆体(ポリアミック酸溶液)の添加量としては、チタン含有酸化物表面のポリイミドの量が本発明の範囲内に収まれば、どのような量でも良いが、例えば、ポリマー濃度10質量%のポリアミック酸溶液を用いる場合、基材のチタン含有酸化物粉末に対して0.1質量%以上の割合で添加すればよい。また、基材のチタン含有酸化物粉末に対して20質量%以下の割合で添加することが好ましく、より好ましくは15質量%以下の割合である。添加量が少ない場合、チタン含有酸化物表面にポリイミドが形成されず、電池性能の改善効果が見られない。また、添加量が多すぎる場合、チタン含有酸化物表面にポリイミドが過剰に形成されてしまい、レート特性の低下などが見込まれる。
上記表面処理を行った後に熱処理を行うことが好ましい。熱処理温度としては、基材のチタン含有酸化物粉末の粒子表面にポリマー型全芳香族ポリイミド前駆体由来のポリイミドが形成される温度(イミド化温度)であって、かつ、基材のチタン含有酸化物が焼結することにより比表面積の大幅な減少が発生しない温度が良い。熱処理温度の上限値としては700℃以下が好ましく、より好ましくは600℃以下である。熱処理温度の下限値としては、100℃以上が好ましく、より好ましくは200℃以上である。熱処理時間としては、好ましくは0.1時間~8時間であり、より好ましくは0.5時間~5時間である。また、熱処理における加熱方法は特に限定されるものではない。利用できる熱処理炉としては、固定床式焼成炉、ローラーハース式焼成炉、メッシュベルト式焼成炉、流動床式焼成炉、ロータリーキルン式焼成炉などが挙げられる。熱処理時の雰囲気としては、大気雰囲気でも、窒素雰囲気などの不活性雰囲気のどちらでも良い。
以上のようにして得られた熱処理後のチタン含有酸化物粉末は、軽度の凝集はあるものの、粒子を破壊するような粉砕を行わなくても良く、そのため、熱処理後には、必要に応じて凝集を解す程度の解砕や分級を行えば良い。
本発明のチタン含有酸化物粉末は、表面処理工程でTiまたはNbを除く異種金属元素を含有する化合物を追加混合した後に造粒して熱処理を行い、一次粒子が凝集した二次粒子を含む粉末にしても良い。異種金属元素としては、周期表の第2族、第12族、又は第13族の元素;周期表の第14族の金属元素;およびモリブデン元素;からなる群から選ばれるいずれか一つ以上が挙げられ、具体的には、Al、Mg、Ca、Sr、Zn、Ga、Ge、In、及び、Mо、からなる元素群から選ばれるいずれか一つ以上が挙げられる。造粒は二次粒子ができるのであれば、どのような方法でも良いが、スプレードライヤーが大量に処理できるため好ましい。
本発明のチタン含有酸化物粉末に含まれる水分量を低減させるために、熱処理工程で露点管理を行っても良い。熱処理後の粉末は、そのまま大気に晒すと粉末に大気中の水分が吸着するため、熱処理炉内での冷却時と熱処理後は、露点管理された環境下で粉末を扱うことが好ましい。熱処理後の粉末は、粒子を所望の最大粒径の範囲にするために必要に応じて分級を行っても良い。熱処理工程で露点管理をする場合は、チタン含有酸化物粉末をアルミラミネート袋などで密閉した後に露点管理外の環境下に出すことが好ましい。露点管理下においても、熱処理後のチタン含有酸化物粉末の粉砕を行うと破砕面から水分を取り込みやすくなり、粉末に含まれる水分量が増加するため、熱処理を行った場合には粉砕を行わないことが好ましい。熱処理条件としては、温度と保持時間が特定の範囲にあることで二次粒子形態や表面処理工程に大きく影響する。熱処理温度としては、450℃以上が好ましく、550℃未満が好ましい。熱処理温度が550℃を超えると比表面積が大きく低下し、電池性能、特にレート特性が大幅に低下するためである。また保持時間は1時間以上が好ましい、保持時間が短い場合、粉末に含まれる水分量が増加に加え、粒子表面状態にも影響を与えると推測されるためである。
[活物質材料]
本発明の活物質材料は、本発明のチタン含有酸化物粉末を含むものである。本発明の活物質材料は、本発明のチタン含有酸化物粉末以外の物質を1種又は2種以上含んでいてもよい。他の物質としては、例えば、炭素材料〔熱分解炭素類、コークス類、グラファイト類(人造黒鉛、天然黒鉛等)、有機高分子化合物燃焼体、炭素繊維〕、スズやスズ化合物、ケイ素やケイ素化合物、リチウムを含む金属酸化物が使用される。
[蓄電デバイス]
本発明の蓄電デバイスは、本発明の活物質材料を含む電極を備え、このような電極へのリチウムイオンのインターカレーション、脱インターカレーションを利用してエネルギーを貯蔵、放出するデバイスであって、例えば、ハイブリッドキャパシタやリチウム電池などが挙げられる。
[リチウム電池]
本発明のリチウム電池は、リチウム一次電池及びリチウム二次電池を総称する。また、本明細書において、リチウム二次電池という用語は、いわゆるリチウムイオン二次電池や全固体型リチウムイオン二次電池も含む概念として用いる。
前記リチウム電池は、正極、負極及び非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液、または固体電解質等により構成されているが、本発明の活物質材料は電極材料として用いることができる。本発明の活物質材料は、通常、前記リチウム電池の電極シートの形態にて用いられる。この活物質材料は、正極活物質及び負極活物質のいずれとして用いてもよいが、以下には負極活物質として用いた場合を説明する。
<負極>
負極は、負極集電体の片面または両面に、負極活物質(本発明の活物質材料)、導電剤及び結着剤を含む負極層を有する。この負極層は、通常、電極の形態とされる。多孔質体などで空孔を有する負極集電体の場合は、空孔中に負極活物質(本発明の活物質材料)、導電剤、結着剤を含む負極層を有する。
前記負極用の導電剤としては、化学変化を起こさない電子伝導材料であれば特に制限はない。例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛等)、人造黒鉛等のグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チェンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類、単相カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ(グラファイト層が多層同心円筒状)(非魚骨状)、カップ積層型カーボンナノチューブ(魚骨状(フィッシュボーン))、節型カーボンナノファイバー(非魚骨構造)、プレートレット型カーボンナノファイバー(トランプ状)等のカーボンナノチューブ類等が挙げられる。また、グラファイト類とカーボンブラック類とカーボンナノチューブ類を適宜混合して用いてもよい。
導電剤の添加量は、活物質の比表面積や導電剤の種類や組合せにより異なるため、最適化を行うべきであるが、負極層中に、好ましくは0.1質量%~10質量%であり、さらに好ましくは0.5質量%~5質量%である。0.1質量%未満では、負極層の導電性が確保できなくなり、10質量%超では、活物質比率が減少し、負極層の単位質量及び単位体積あたりの蓄電デバイスの放電容量が不十分になるため高容量化に適さない。なお、導電剤の添加形式は、電極作製時でもよく、活物質そのものに導電剤を被覆する形でも構わない。炭素繊維などの導電剤で被覆することで、負極層の導電性が更に向上しうるためである。
前記負極用の結着剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルピロリドン(PVP)、スチレンとブタジエンの共重合体(SBR)、アクリロニトリルとブタジエンの共重合体(NBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等が挙げられる。特に限定されることはないが、ポリフッ化ビニリデンの分子量は、好ましくは2万~100万である。負極層の結着性を確保する観点から、2.5万以上であることが好ましく、3万以上であることがより好ましく、5万以上であることがさらに好ましい。活物質と導電剤との接触を妨げずに導電性が確保する観点から、50万以下であることが好ましい。特に活物質の比表面積が10m/g以上の場合には、分子量は10万以上であることが好ましい。
前記結着剤の添加量は、活物質の比表面積や導電剤の種類や組合せにより異なるため、最適化を行うべきであるが、負極層中に、好ましくは0.2質量%~15質量%である。結着性を高め負極層の強度を確保する観点から、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、2質量%以上であることがさらに好ましい。活物質比率が減少し、負極層の単位質量及び単位体積あたりの蓄電デバイスの放電容量を低減させない観点から、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
<正極>
正極は、正極集電体の片面または両面に、正極活物質、導電剤及び結着剤を含む正極層を有する。
前記正極活物質としては、リチウムを吸蔵及び放出可能な材料が使用され、例えば、活物質としては、コバルト、マンガン、ニッケルを含有するリチウムとの複合金属酸化物やリチウム含有オリビン型リン酸塩などが挙げられ、これらの正極活物質は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。このような複合金属酸化物としては、例えば、LiCoO、LiMn、LiNiO、LiCo1-xNi(0.01<X<1)、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3、LiNi1/2Mn3/2等が挙げられ、これらのリチウム複合酸化物の一部は他元素で置換してもよく、コバルト、マンガン、ニッケルの一部をB、Nb、Sn、Mg、Fe、Ti、Al、Zr、Cr、V、Ga、Zn、Cu、Bi、Mo、La等の少なくとも1種以上の元素で置換したり、Oの一部をSやFで置換したり、あるいは、これらの他元素を含有する化合物を被覆することができる。リチウム含有オリビン型リン酸塩としては、例えば、LiFePO、LiCoPO、LiNiPO、LiMnPO、LiFe1-xMxPO(MはCo、Ni、Mn、Cu、Zn、及びCdから選ばれる少なくとも1種であり、Xは、0≦X≦0.5である。)等が挙げられる。
前記正極用の導電剤及び結着剤としては、負極と同様のものが挙げられる。前記正極集電体としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、焼成炭素、アルミニウムやステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀を表面処理させたもの等が挙げられる。これらの材料の表面を酸化してもよく、表面処理により正極集電体表面に凹凸を付けてもよい。また、集電体の形態としては、例えば、シート、ネット、フォイル、フィルム、パンチングされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群、不織布の成形体などが挙げられる。
<非水電解液>
非水電解液は、非水溶媒中に電解質塩を溶解させたものである。この非水電解液には特に制限は無く、種々のものを用いることができる。
前記電解質塩としては、非水電解質に溶解するものが用いられ、例えば、LiPF、LiBF、LiPO、LiN(SOF)、LiClO等の無機リチウム塩、LiN(SOCF、LiN(SO、LiCFSO、LiC(SOCF、LiPF(CF、LiPF(C、LiPF(CF、LiPF(iso-C、LiPF(iso-C)等の鎖状のフッ化アルキル基を含有するリチウム塩や、(CF(SONLi、(CF(SONLi等の環状のフッ化アルキレン鎖を含有するリチウム塩、ビス[オキサレート-O,O’]ホウ酸リチウムやジフルオロ[オキサレート-O,O’]ホウ酸リチウム等のオキサレート錯体をアニオンとするリチウム塩が挙げられる。これらの中でも、特に好ましい電解質塩は、LiPF、LiBF、LiPO、及びLiN(SOF)であり、最も好ましい電解質塩はLiPFである。これらの電解質塩は、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、これらの電解質塩の好適な組み合わせとしては、LiPFを含み、更にLiBF、LiPO、及びLiN(SOF)から選ばれる少なくとも1種のリチウム塩が非水電解液中に含まれている場合が好ましい。
一方、前記非水溶媒としては、環状カーボネート、鎖状カーボネート、鎖状エステル、エーテル、アミド、リン酸エステル、スルホン、ラクトン、ニトリル、S=O結合含有化合物等が挙げられ、環状カーボネートを含むことが好ましい。なお、「鎖状エステル」なる用語は、鎖状カーボネート及び鎖状カルボン酸エステルを含む概念として用いる。
環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、1,2-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン(FEC)、トランスもしくはシス-4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン(以下、両者を総称して「DFEC」という)、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、及び4-エチニル-1,3-ジオキソラン-2-オン(EEC)から選ばれる一種又は二種以上が挙げられ、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン及び4-エチニル-1,3-ジオキソラン-2-オン(EEC)から選ばれる一種以上が、蓄電デバイスの充電レート特性の向上や高温動作時のガス発生量を抑制する観点からより好適であり、プロピレンカーボネート、1,2-ブチレンカーボネート及び2,3-ブチレンカーボネートから選ばれるアルキレン鎖を有する環状カーボネートの一種以上が更に好適である。全環状カーボネート中のアルキレン鎖を有する環状カーボネートの割合が55体積%~100体積%であることが好ましく、60体積%~90体積%であることが更に好ましい。
鎖状エステルとしては、メチルエチルカーボネート(MEC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、メチルイソプロピルカーボネート(MIPC)、メチルブチルカーボネート、及びエチルプロピルカーボネートから選ばれる1種又は2種以上の非対称鎖状カーボネート、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート、及びジブチルカーボネートから選ばれる1種又は2種以上の対称鎖状カーボネート、ピバリン酸メチル、ピバリン酸エチル、ピバリン酸プロピル等のピバリン酸エステル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酢酸メチル、及び酢酸エチル(EA)から選ばれる1種又は2種以上の鎖状カルボン酸エステルが好適に挙げられる。
<リチウム電池の構造>
本発明のリチウム電池の構造は特に限定されるものではなく、正極、負極及び単層又は複層のセパレータを有するコイン電池、さらに、正極、負極及びロール状のセパレータを有する円筒型電池や角型電池等が一例として挙げられる。
前記セパレータとしては、大きなイオン透過度を持ち、所定の機械的強度を持った絶縁性の薄膜が用いられる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース紙、ガラス繊維紙、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド微多孔膜などが挙げられ、2種以上を組み合わせて構成された多層膜としたものも用いることができる。またこれらのセパレータ表面にPVDF、シリコン樹脂、ゴム系樹脂などの樹脂や、酸化アルミニウム、二酸化珪素、酸化マグネシウムなどの金属酸化物の粒子などをコーティングすることもできる。前記セパレータの孔径としては、一般的に電池用として有用な範囲であればよく、例えば、0.01μm~10μmである。前記セパレータの厚みとしては、一般的な電池用の範囲であればよく、例えば5μm~300μmである。
<固体電解質>
固体電解質とは、その内部においてイオンを移動させることができる固体状の電解質のことである。特に、無機固体電解質は定常状態では固体であるため、通常カチオンおよびアニオンに解離または遊離していない。無機固体電解質は周期律表第1族に属する金属イオンの伝導性を有するものであれば特に限定されず電子伝導性をほとんど有さないものが一般的である。無機固体電解質は(A)硫化物無機固体電解質と(B)酸化物無機固体電解質が代表例として挙げられる。特に、高いイオン伝導性を有し、室温での加圧のみで、粒界の少ない緻密な成形体が形成できるため、硫化物無機固体電解質が好ましく用いられる。なお、本発明の周期律表とは、IUPAC(国際純正応用化学連合)の規定に基づく長周期型の元素の周期律表をいう。
硫化物無機固体電解質は非結晶ガラスであっても良く、結晶化ガラスであっても良く、結晶性材料であっても良い。硫化物無機固体電解質として、具体的に以下の組み合わせが好適に挙げられるが特に限定されない。
LiS-P、LiS-P-Al、LiS-GeS、LiS-Ga、LiS-GeS-Ga、LiS-GeS-P、LiS-GeS-Sb、LiS-GeS-Al、LiS-SiS、LiS-Al、LiS-SiS-Al、LiS-SiS-P、Li10GeP12
前記組み合わせのなかでも、LiS-Pを組み合わせて製造されるLPSガラスおよびLPSガラスセラミックスが好ましい。また上記以外の硫化物無機固体電解質として、LiPSClやLiPSBrなどのアルジェロダイト型固体電解質も好適に挙げられる。
酸化物無機固体電解質は、酸素原子を含有し、かつ、周期律表第1族に属する金属イ
オン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有するものが好ましい。
酸化物無機固体電解質としては、例えば、LISICON(Lithium super ionic conductor)型結晶構造を有するLi3.5Zn0.25GeO、ペロブスカイト型結晶構造を有するLa0.55Li0.35TiO、NASICON(Natrium super ionic conductor)型結晶構造を有するLiTi12、ガーネット型結晶構造を有するLiLaZr12(LLZ)、リン酸リチウム(LiPO)、リン酸リチウムの酸素の一部を窒素で置換したLiPON、LiBO-LiSO、LiO-B-P、LiO-SiO、およびLiBaLaTa12等が好適に挙げられる。
無機固体電解質の体積平均粒径は特に限定されないが、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。上限としては、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。
次に、実施例及び比較例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨から容易に類推可能な様々な組み合わせを包含する。
(チタン酸リチウムを用いた液系リチウムイオン二次電池)
[実施例1-1]
<原料調製工程>
Tiに対するLiの原子比Li/Tiが0.83になるように、LiCO(平均粒径 4.6μm)とアナターゼ型TiO(比表面積10m/g)を秤量して得た原料粉末に、スラリーの固形分濃度が41質量%となるようにイオン交換水を加えて撹拌し原料混合スラリーを作製した。この原料混合スラリーを、ビーズミル(ウィリー・エ・バッコーフェン社製、形式:ダイノーミル KD-20BC型、アジテーター材質:ポリウレタン、ベッセル内面材質:ジルコニア)を使用して、ジルコニア製のビーズ(外径:0.65mm)をベッセルに80体積%充填し、アジテーター周速13m/s、スラリーフィード速度55kg/hrで、ベッセル内圧が0.02~0.03MPaになるように制御しながら処理して、原料粉末を湿式混合・粉砕した。
<焼成工程>
得られた混合スラリーを、付着防止機構を備えたロータリーキルン式焼成炉(炉芯管長さ:4m、炉芯管直径:30cm、外部加熱式)を用い、焼成炉の原料供給側から炉心管内に導入し、窒素雰囲気中で乾燥し、焼成した。このときの、炉心管の水平方向からの傾斜角度を2.5度、炉心管の回転速度を20rpm、焼成物回収側から炉心管内に導入する窒素の流速を20L/分として、炉心管の加熱温度を、原料供給側:600℃、中央部:900℃、焼成物回収側:900℃とし、焼成物の900℃での保持時間を30分とした。
<後処理工程>
炉心管の焼成物回収側から回収した焼成物を、ビーズミル(アイメックス製、NVM-1.5型)を使用して解砕し、焼成粉末試料を取得した。得られた焼成粉末試料について、粉末X線回折測定を実施したところ、チタン含有酸化物粉末であるチタン酸リチウム(ICDD(PDF2010)のPDFカード00-049-0207)であることが確認された。
<表面処理工程>
得られた焼成粉末試料に、スラリーの固形分濃度が30質量%となるようにイオン交換水を加え撹拌することで解砕し、表面処理剤として水溶性を有するポリマー型全芳香族ポリイミド前駆体であるポリアミック酸溶液としてUPIA(R)-NF1001(宇部興産社製ポリアミック酸ワニス(芳香族テトラカルボン酸+芳香族ジアミン、ポリマー濃度10質量%、溶媒:水)を、解砕した焼成粉末100gに対して1質量%加え、混合スラリーを作製した。この混合スラリーを、ペイントシェーカーで3時間混合処理した後、温度60℃で、乾燥した後、マッフル炉を用いて200℃で3時間熱処理することで、実施例1-1に係る粒子表面にポリマー型全芳香族ポリイミド前駆体由来のポリイミドを有するチタン含有酸化物粉末としてチタン酸リチウム(以下、LTO)を製造した。なお、LTO表面に存在するポリイミドのイミド化率を、特開2009-6542号に記載の、測定装置としてIR-ATRを活用し、各キュア条件品とフルキュア品との振動帯ピーク高さの比を利用して、イミド化率を算出する方法により測定したところ、イミド化率は99%であった(後述する実施例1-2~1-4、参考例1-1においても同程度であった。)。
[実施例1-2~1-3、参考例1-1]
表面処理工程において、処理剤としてUPIA(R)-NF1001の添加量を表1に示すようにしたこと以外は実施例1-1と同様に行い、実施例1-2、実施例1-3、参考例1-1に係るLTOを製造した。
[実施例1-4]
(一部脂肪族ポリイミド前駆体ポリアミック酸水溶液Aの重合)
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えたガラス製の反応容器に、溶媒として水の349gを加え、これに1,10-デカンジアミンの37.06g(0.214モル)と、1,2-ジメチルイミダゾ-ルの51.42g(カルボキシル基に対して2.50倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液に3,3‘、4,4’―ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の62.94g(0.214モル)を加え、70℃で6時間撹拌して、固形分濃度18.5質量%、溶液粘度6.6Pa・secのポリアミック酸水溶液Aを得た。表面処理工程において、ポリアミック酸水溶液Aを、解砕した焼成粉末100gに対して5質量%加えたこと以外は、実施例1-1と同様に実施例1-4に係るLTOを製造した。
[比較例1-1]
表面処理工程において、表面処理剤を添加しなかったこと以外は、実施例1-1と同様に比較例1-1に係るLTOを製造した。
[比較例1-2]
表面処理工程において、表面処理剤として特許文献1に記載の3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)とメタフェニレンジアミン(MPDA)と水溶媒を混合したモノマー型全芳香族ポリイミド前駆体溶液を、解砕した焼成粉末100gに対して5質量%ずつ加えた以外は、実施例1-1と同様に比較例1-2に係るLTOを製造しようとしたが、表面処理剤そのものが水に溶解せず、モノマー型全芳香族ポリイミド前駆体溶液そのものが作製できなかった。
<ポリイミドの含有率の算出方法>
各実施例、比較例のチタン含有酸化物粉末に含まれるポリイミドの含有率は、添加する各ポリイミド前駆体溶液のポリマー濃度、及びチタン含有酸化物粉末の質量から算出した。
<イミド化率の測定方法>
測定装置としてIR-ATRを活用し、各キュア条件品(チタン含有酸化物粉末の粒子表面に含有するポリイミドの前駆体をガラス板にキャストし、前記粉末と同じキュア条件で処理したもの)とフルキュア品との振動帯ピーク高さの比を利用して、イミド化率を算出した。具体的には、イミド基に対応するピークを基準にベースラインを引き、このイミド基ピークの高さとベンゼン環に対応するピークの高さの比率を算出した。次にイミド化率を求めたい各キュア(熱処理)条件品を同様の手法で比率を算出して、イミド化完結フィルムに対する各キュア(熱処理)条件品のイミド化率を算出した。
<平均粒径D50の算出:乾式レーザー回折散乱法>
各実施例、比較例のチタン含有酸化物粉末の平均粒径D50を、レーザー回折・散乱型粒度分布測定機(日機装株式会社製、マイクロトラックMT3300EXII)を使用して測定した粒度分布曲線より算出したところ、いずれも1.0μmであり差は見られなかった。
<比表面積の測定>
各実施例、比較例のチタン含有酸化物粉末の比表BET比表面積(m/g)は、全自動BET比表面積測定装置(株式会社マウンテック製、商品名「Macsorb HM model-1208」)を使用し、吸着ガスは窒素ガスを使用した。測定サンプル粉末を0.5g秤量し、φ12標準セル(HM1201-031)に入れ、100℃真空下で0.5時間脱気した後、BET一点法で測定した。
[電池特性の評価]
各実施例、比較例のLTOを用いてコイン型電池を作製し、それらの電池特性を評価した。評価結果を表1に示す。
<負極シートの作製>
負極シートは、室温25℃、露点-20℃以下に管理された部屋で次のようにして作製した。各実施例のLTOを活物質として90質量%、アセチレンブラックを導電剤として5質量%、ポリフッ化ビニリデンを結着剤として5質量%の割合で、次のように混合して塗料を作製した。あらかじめ1-メチル-2-ピロリドンに溶解させたポリフッ化ビニリデンとアセチレンブラックと1-メチル-2-ピロリドンを遊星式撹拌脱泡装置にて混合した後、LTOを加え、全固形分濃度が64質量%となるように調製して、遊星式撹拌脱泡装置にて混合した。その後、1-メチル-2-ピロリドンを加え全固形分濃度が50質量%となるように調製し遊星式撹拌脱泡装置にて混合して塗料を調製した。得られた塗料をアルミニウム箔上に塗布し乾燥させて、後述のコイン電池に用いる負極片面シート、及び後述のラミネート電池に用いる負極両面シートを作製した。なお、塗工時の目標目付けは7.5mg/cmとした。
<正極シートの作製>
活物質としてニッケルコバルトマンガン酸リチウム粉末を用いたこと以外は、活物質、導電剤及び結着剤の比率を含めて、前述の<負極シートの作製>にて説明した方法と同じ方法で、正極片面シートを作製した。
<電解液の調製>
特性評価用の電池に用いる電解液は、次のように調製した。温度25℃で露点-70℃以下に管理されたアルゴングローブボックス内で、エチレンカーボネート(EC):ジメチルカーボネート(DMC)=1:2(体積比)の非水溶媒を調製し、これに電解質塩としてLiPFを1Mの濃度になるように溶解して後述のコイン電池用電解液を調製した。同様にプロピレンカーボネート(PC):ジエチルカーボネート(DEC)=1:2(体積比)の非水溶媒を調製し、これに電解質塩としてLiPFを1.3Mの濃度になるように溶解して後述のラミネート電池用電解液を調製した。
<コイン電池(単極)の作製>
前述の方法で作製した負極片面シートを直径14mmの円形に打ち抜き、2t/cmの圧力でプレス加工した後、120℃で5時間真空乾燥することによって評価電極を作製した。作製した評価電極と金属リチウム(厚み0.5mm、直径16mmの円形に成形したもの)をグラスフィルター(ADVANTEC製GA-100とワットマン製GF/Cを各1枚ずつ)を介して対向させ、前述の<電解液の調製>にて説明した方法で調製した非水電解液を加えて封止することによって、2032型コイン電池を作製した。
<ラミネート電池(フルセル)の作製>
ラミネート電池は、室温25℃、露点-40℃以下に管理された部屋で次のようにして作製した。前述の方法で作製した負極両面シートを2t/cmの圧力でプレス加工した後、リード線接続部分を有する負極を作製した。次に、正極片面シートを2t/cmの圧力でプレス加工した後、リード線接続部分を有する正極を作製した。作製した負極と正極は、150℃で12時間真空乾燥した。真空乾燥後の正極と負極を、セパレータ(宇部興産製、UPZ210)を介して対向させ、積層し、アルミ箔のリード線を正極、負極それぞれに接続し、前述の<電解液の調製>にて説明した方法で調製した、ラミネート電池用電解液を加えてアルミラミネートで真空封止することで、評価用のラミネート電池を作製した。このとき電池の容量は30mAhで負極と正極の容量の比(負極容量/正極容量)は1.2であった。次に、エージング工程として、60℃の恒温槽内にて、前述の<ラミネート電池の作製>で説明した方法で作製したラミネート電池に、0.2Cの電流で2.75Vまで充電させ、さらに2.75Vで充電電流が0.05Cの電流になるまで充電させる定電流定電圧充電を行った後、0.2Cの電流で1.4Vまで放電させる定電流放電を2サイクル繰り返した。その後、ラミネート電池の体積をアルキメデス法によって測定し、ラミネート電池の初期体積(以下、初期体積と記すことがある)とした。
<初期電池特性(単極):初回効率、0.2C初期放電容量、10Cレート充放電特性>
25℃の恒温槽内にて、上述の<コイン電池の作製>で説明した方法で作製したコイン型電池に、評価電極にLiが吸蔵される方向を充電として、0.2mA/cmの電流密度で1Vまで充電を行い、さらに1Vで充電電流が0.05mA/cmの電流密度になるまで充電させる定電流定電圧充電を行った後、0.2Cに相当する電流密度で2Vまで放電させる定電流放電を3サイクル行った。1サイクル目の放電容量(mAh)を充電容量(mAh)で割った割合を求めることで、初回効率(%)をを算出した。また、3サイクル目の放電容量をLTOの重量で割ることで、0.2C初期放電容量(mAh/g)として算出した。次に、初期放電容量の10Cに相当する電流で1Vまで充電し、10Cレート充電容量を求めた。その10Cレート充電容量を0.2C初期放電容量で除することで10Cレート充電容量維持率(%)を算出した。その後、上記した方法に従い、定電流定電圧充電を行った後、初期放電容量の10Cに相当する電流で2Vまで放電し、10Cレート放電容量を求めた。その10Cレート放電容量を0.2C初期放電容量で除することで10Cレート放電容量維持率(%)を算出した。結果を表1に示す。LTOの10Cレート充放電特性が高いと、蓄電デバイスの電極材料として適用した場合に、蓄電デバイスの急速充放電性能の改善が期待できる。なお、1CのCとは充放電するときの電流値を表す。例えば、1Cは理論容量を1/1時間で完全放電(もしくは完全充電)できる電流値を指し、0.1Cなら理論容量を1/0.1時間で完全放電(もしくは完全充電)できる電流値を指す。
<高温電池特性:サイクル容量維持率、サイクル後10Cレート放電容量維持率、ガス発生量>
上述の<ラミネート電池の作製>で説明した方法で作製したラミネート電池を用いて、55℃の恒温槽内にて、1Cの電流で2.75Vまで充電させ、さらに2.75Vで充電電流が0.05Cの電流になるまで充電させる定電流定電圧充電を行った後、1Cの電流で1.4Vまで放電させる定電流放電を、100サイクル繰り返した。ここで言う高温電池特性とは、50℃以上の温度での電池特性の評価のことを指し、例えば25℃での電池特性の評価と比べて、電池劣化が比較的起きやすい測定温度環境下での評価である。
100サイクル後、25℃において、0.2Cまたは10C相当の電流値で2.75Vまで充放電させた際の放電容量を測定した。サイクル後の0.2Cレートでの放電容量を0.2C初期放電容量で除することでサイクル容量維持率(%)を算出した。また、サイクル後の10Cレートでの放電容量を0.2C初期放電容量で除することでサイクル後10Cレート放電容量維持率(%)を算出した。
25℃の恒温槽内にて、前述の<ラミネート電池の作製>で説明した方法で作製したラミネート電池に、0.2Cの電流で充電容量30%相当まで充電させた状態で、60℃の恒温槽にて30日間の保存試験を行った。保存試験が終了したラミネート電池の体積をアルキメデス法によって測定し、保存後体積(以下、保存後体積と記すことがある)を測定した。保存後体積から初期体積を差し引いて、ガス発生量(ml)を求め、比較例1-1でのガス発生量を100%とした際の相対値を表1に示す。
Figure 2023151076000001
<評価結果>
実施例1-1~1-3、ならびに1-4のLTOを用いた電極は、チタン含有酸化物粒子の表面にポリマー型全芳香族ポリイミド前駆体由来のポリイミドを所定量含有することで、初期放電容量、レート特性を維持しながら、高温でのサイクル特性、高温レート特性に優れ、さらに、高温保存後のガス発生量を抑制することができることが分かった。特に、ポリマー型一部脂肪族ポリイミド前駆体を含有しない全芳香族ポリイミド前駆体の場合、初期放電レート特性がより改善する傾向が見られた。また、参考例1-1のように、ポリマー型全芳香族ポリイミド前駆体由来のポリイミドを比較的多く含有した場合でも、初回効率が低下するものの、放電レート特性を良好に保ちながら、サイクル特性が高められたものであった。一方で、比較例1-1のLTOは、初期10Cレート充放電特性の低下、または、高温保存後のガス発生量抑制が見られず、電池特性の改善には至らなかった。また、被覆用に特許文献1に記載のモノマー型の表面処理剤を水溶液に加工しようとしたが、表面処理剤が水に溶解せず、モノマー型全芳香族ポリイミド前駆体溶液自体の作製ができなかった。
[実施例2-1~2-2]
表面処理工程において、表面処理剤としてUPIA(R)-NF1001の添加量を表2に示したこと、さらに、熱処理温度を350℃または250℃としたこと以外は実施例1-1と同様に行い、実施例2-1、実施例2-2、に係るLTOを製造し、実施例1-1と同様に、初期電池特性(単極)の評価を行った。実施例1-3、比較例1-1のデータと併せて、表2に結果を示す。
Figure 2023151076000002
<評価結果>
実施例2-1~2-2、ならびに1-3のLTOを用いた結果から、イミド化率が所定の数値範囲において、充電レート特性が改善することが分かった。なお、実施例2-1と2-2の高温電池特性については、実施例1-3と同等の性能を示した。
(チタン酸ニオブを用いた液系リチウムイオン二次電池)
<原料調製工程>
Nb(平均粒径0.2μm)とアナターゼ型TiO(比表面積10m/g)をモル比で1:1となるように秤量し、混合した。この混合粉末を1000℃で5時間熱処理を施した。得られた焼成粉末試料について、サンプリング間隔0.01°、スキャン速度2°/minの条件にて粉末X線回折測定を実施した。リートベルト法による結晶構造解析結果から、合成した試料が目的とするニオブチタン複合酸化物であるチタン酸ニオブ(TiNb:Titanium niobium oxide, ICDD(PDF2010)のPDFカード01-077-1374)であることが確認された。
[実施例3]
基剤として上記で得られた焼成粉末を用いて、かつ、表面処理工程において、表面処理剤としてUPIA(R)-NF1001の添加量を表3に示したこと以外は実施例1-1と同様に行い、粒子表面に水溶性を有するポリマー型全芳香族ポリイミド前駆体由来のポリイミドを有するチタン含有酸化物粉末としてチタン酸ニオブ(以下、TNO)を製造した。なお、TNO表面に存在するポリイミドのイミド化率を、測定装置としてIR-ATRを活用し、各キュア条件品とフルキュア品との振動帯ピーク高さの比を利用して、イミド化率を算出する方法により測定したところ、イミド化率は99%であった。
[比較例3]
表面処理工程において、表面処理剤を添加しなかったこと以外は、実施例3と同様に比較例3に係るTNOを製造した。
[電池特性の評価]
各実施例、比較例のTNOを用いた以外は、実施例1-1と同様の手順でコイン型電池を作製し、それらの電池特性を評価した。評価結果を表3に示す。
<電池特性:電極密度、0.2C初期放電容量、2Cレート放電容量維持率、サイクル容量維持率>
各実施例、比較例のTNOを用いて作製した電極シートの質量と厚みを測定し、電極密度を算出した。また、作製したコイン電池を用いて、実施例1-1と同様の試験を行い、0.2C初期放電容量、2Cレート放電容量維持率を算出した。
サイクル容量維持率は、0.8Vで充電電流が0.05Cに相当する電流値になるまで充電させる定電流定電圧充電を行った後、初期放電容量の0.5Cに相当する電流値で2Vまで放電させる定電流放電を1サイクルとし、計15サイクル繰り返し実施した。15サイクル実施した後の放電容量を初期放電容量で割ることで、放電容量維持率(%)として求めた。
Figure 2023151076000003
<評価結果>
実施例3のTNOを用いた電極は、チタン含有酸化物粒子の表面にポリマー型全芳香族ポリイミド前駆体由来のポリイミドを所定量含有することで、比較例3と比べて、電極密度や初期放電特性を損なうことなく、サイクル特性に優れることが分かった。
(全固体二次電池)
[実施例4]
アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、上記実施例3のTNO(粒子表面にポリマー型全芳香族ポリイミド前駆体由来のポリイミドを有するチタン酸ニオブ)及び硫化物無機固体電解質であるLiPSCl粉末(レーザー回折・散乱型粒度分布測定機を使用して得られる体積平均粒径:6μm)をTNO:LiPSCl=60:40の質量比になるように秤量し、メノウ乳鉢で混合した。次に80mLのジルコニアポットにジルコニアボール(直径3mm、20g)を投入し、混合した粉末を投入した。その後、このポットを遊星型ボールミル機にセットし、回転数200rpmで15分間撹拌を続け、実施例4の負極活物質組成物を得た。得られた負極活物質組成物を室温で10分プレス(360MPa)することで直径10mm、厚さ約0.7mmのペレット(成形体)を作製した。この負極活物質組成物を含むペレット状電極、セパレータ層としてペレット状の固体電解質層(LiS:P=75:25のモル比であるLPSガラス)、及び対極としてのリチウムインジウム合金箔をこの順で積層し、積層体をステンレススチール製の集電体で挟むことで全固体二次電池を作製し、電池特性を評価した。結果を表4に示す。
[比較例4]
比較例3のTNO(表面処理剤を添加していないチタン酸ニオブ)に変更した以外は、上記実施例4と同様にして全固体二次電池を作製し、電池特性を評価した。結果を表4に示す。
<充電レート特性の測定>
25℃の恒温槽内にて、上述の方法で作製した全固体二次電池に、評価電極にLiが吸蔵される方向を充電として、TNOの理論容量の0.05Cに相当する電流で0.5Vまで充電を行い、さらに0.5Vで充電電流が0.01C4に相当する電流になるまで充電させる定電流定電圧充電を行った後、0.05Cに相当する電流で2Vまで放電させる定電流放電を行った。放電容量(mAh)をTNOの質量で割ることで、初期放電容量(mAh/g)として求めた。次に、TNOの理論容量の0.4Cに相当する電流で0.5Vまで充電した後、0.05Cの電流で2Vまで放電させて、0.4C充電容量(mAh/g)を求めた。その0.4C充電容量を初期放電容量で除することでレート特性(%)を算出した。充電レート特性は、比較例3の値を100%としたときを基準とし、相対的な値を調べた。評価結果を表4に示す。
Figure 2023151076000004
全固体二次電池の系においても、実施例4のTNOを用いた負極層を含む電極は、粒子表面にポリマー型全芳香族ポリイミド前駆体由来のポリイミドを含有することで、充電レート特性に優れることが分かった。
本発明で得られるポリイミド被覆チタン含有酸化物粉末は、初期の充放電レート特性を改善でき、さらに、長期でのサイクル特性や保存特性を改善できるので、リチウムイオン二次電池の電極活物質として有用である。また、このポリイミド被覆チタン含有酸化物粉末を電極活物質として用いるリチウムイオン二次電池は、安定した高速充放電ができるため、自動車や電子機器等、各種機器の駆動用またはバックアップ用、家庭や事務所等での夜間電力貯蔵用の二次電池として有用である。

Claims (6)

  1. 一般式LiTi12またはTi1-x/2Nb7-x(0≦X<2)で表されるチタン含有酸化物粒子を含む粉末であって、前記チタン含有酸化物粒子の表面の少なくとも一部がポリイミドで被覆されていることを特徴とするチタン含有酸化物粉末。
  2. 前記チタン含有酸化物において、粒子の表面に存在するポリイミドが、ポリマー型全芳香族ポリイミド前駆体由来のポリイミドであることを特徴とする請求項1に記載のチタン含有酸化物粉末。
  3. 前記チタン含有酸化物粒子において、粒子の表面に存在するポリイミドの含有率(質量%)が0.01~1.5であることを特徴とする請求項1又は2に記載のチタン含有酸化物粉末。
  4. 一般式Ti1-x/2Nb7-x(0≦X<2)で表されるチタン含有酸化物が、TiNbであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のチタン含有酸化物粉末。
  5. 請求項1~4のいずれか一項に記載のチタン含有酸化物粉末を含むことを特徴とする電極。
  6. 請求項5に記載の電極を含むことを特徴とする蓄電デバイス。
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