JP2023147791A - 脱顆粒抑制用組成物及びその製造方法 - Google Patents

脱顆粒抑制用組成物及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】新規の脱顆粒抑制用組成物を提供する。【解決手段】卵殻膜の酵素加水分解ペプチドを有効成分として含有する脱顆粒抑制用組成物。当該組成物は、優れた脱顆粒抑制作用を有し、各種医薬用組成物、化粧料組成物、サプリメント、機能性食品等に配合して用いることができる。前記酵素加水分解ペプチドは卵殻膜酵素加水分解物として含有されていてもよい。【選択図】図1

Description

本発明は、脱顆粒抑制作用を有する組成物及びその応用用途に関する。
肥満細胞は、顆粒細胞(mast cell / マスト細胞)とも呼ばれ、哺乳類の血液中の好塩基球や血管周辺や結合組織に存在する造血幹細胞由来の細胞である。肥満細胞は、ヒスタミン等を含む顆粒を持ち、細胞が脱顆粒することによってヒスタミンと共にβ-ヘキソサミニダーゼ等の酵素が放出され、花粉症などのアレルギーを誘起し、炎症を引き起こすことが知られている。そのため、肥満細胞からの脱顆粒を抑制することはアレルギーの予防や治療や抗炎症として有効である。そのため、これまでに様々な脱顆粒抑制剤や抗アレルギー剤が報告されている(例えば、特許文献1,2)。
特開2000-236848号公報 特開2010-248107号公報
特許文献1,2で開示されているように、これまでに脱顆粒抑制剤、及びこれらの作用を抑制することによる抗アレルギー剤は報告されているが、これまでに卵殻膜由来の成分に脱顆粒抑制作用があることについては一切報告されていない。
かかる状況下、本発明の目的は、卵殻膜由来の新規の脱顆粒抑制作用を有する組成物、及びその応用品を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、卵殻膜をタンパク質分解酵素処理により加水分解して生成する酵素加水分解ペプチドが優れた脱顆粒抑制作用を有することを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> 卵殻膜の酵素加水分解によるペプチドを有効成分として含有する脱顆粒抑制用組成物。
<2> 前記ペプチドを卵殻膜酵素加水分解物として含有する<1>に記載の組成物。
<3> 前記酵素が、アルカリ性プロテアーゼである<1>または<2>に記載の組成物。
<4> アレルギーの予防治療用及び/又は抗炎症用である<1>から<3>のいずれかに記載の組成物。
<5> 医薬用である、<1>から<4>のいずれかに記載の組成物。
<6> 皮膚外用用(但し、医薬用である場合を除く。)である、<1>から<4>のいずれかに記載の組成物。
<7> 経口用(但し、医薬用である場合を除く。)である、<1>から<4>のいずれかに記載の組成物。
<A1> <1>から<7>のいずれかに記載の脱顆粒抑制用組成物の製造方法であって、卵殻膜の懸濁液を酵素処理して卵殻膜酵素加水分解物を得る工程を有する製造方法。
<A2> <A1>に記載の脱顆粒抑制用組成物の製造方法において、前記卵殻膜酵素加水分解物を得る工程が、卵殻膜を含み、pH11以上に調整された懸濁液を得る工程と、得られた懸濁液にアルカリ性プロテアーゼを添加して、卵殻膜の加水分解を進行させる第1の酵素添加工程と、懸濁液がpH9未満になったのちに、さらにアルカリ性プロテアーゼを添加して卵殻膜の加水分解を進行させて、卵殻膜を可溶化する第2の酵素添加工程と、得られた卵殻膜加水分解物を含む溶液を加熱してアルカリ性プロテアーゼを失活させる工程と、を有する製造方法。
<A3> 第2の酵素添加工程の前に、アルカリを添加してpH調整する<A2>に記載の製造方法。
<B1> 脱顆粒抑制作用を有する卵殻膜由来のペプチド。
<B2> 卵殻膜酵素加水分解物の分画物である<B1>に記載のペプチド。
本発明によれば、卵殻膜由来の脱顆粒抑制用組成物及びその応用品が提供される。
実施例1(EH-ESM1)、実施例2(EH-ESM2)及び比較例1(AH-ESM)の卵殻膜加水分解物における脱顆粒抑制活性を示す図である(試料添加終濃度:1mg/mL又は200μg/mL)。 実施例1(EH-ESM1)、実施例2(EH-ESM2)及び比較例1(AH-ESM)の卵殻膜加水分解物におけるアミノ酸組成である。 実施例1(EH-ESM1)、実施例2(EH-ESM2)及び比較例1(AH-ESM)の卵殻膜加水分解物におけるサイズ排除クロマトグラムである。 実施例1(EH-ESM1)の卵殻膜加水分解物の分画物におけるアミノ酸組成である。 実施例1(EH-ESM1)の卵殻膜加水分解物の分画物における脱顆粒抑制活性を示す図である。
以下、本発明について例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下の例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。なお、本明細書において、「~」という表現を用いた場合、その前後の数値または物理値を含む意味で用いることとする。また、本明細書において、「A及び/又はB」という表現には、「Aのみ」、「Bのみ」、「A及びBの双方」が含まれる。
<1.脱顆粒抑制用組成物>
本発明は、卵殻膜の酵素加水分解ペプチドを有効成分として含有する脱顆粒抑制用組成物(以下、「本発明の脱顆粒抑制用組成物」、又は単に「本発明の組成物」と記載する。)に関する。なお、本発明の組成物の有効成分である「卵殻膜の酵素加水分解ペプチド」を、「本発明のペプチド」と称する場合がある。
本明細書において、用語「ペプチド」は、アミド結合(ペプチド結合)によって連結された2つ以上のアミノ酸から構成される分子のうち、重量平均分子量(MW)が20000以下の分子を意味するものとする。したがって、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、または2つ以上のアミノ酸の鎖(複数可)を指すために使用される他の用語は、当該「ペプチド」の定義に含まれるものとする。なお、以下において、単に「分子量」と記載された場合は「重量平均分子量」を意味するものとする。
本発明のペプチドは、上記定義のペプチドのうち、卵殻膜の酵素加水分解ペプチドであって、脱顆粒抑制作用を有するペプチドを意味する。すなわち、本発明のペプチドは、脱顆粒抑制作用を有する卵殻膜由来のペプチドである。そのため、卵殻膜の酵素加水分解ペプチドであっても脱顆粒抑制作用を有さないものは本発明のペプチドには含まれない。また、本発明のペプチドは、脱顆粒抑制作用を有する異なる分子量のペプチドの混合物であってもよい。
本発明のペプチド(または、これを含む本発明の組成物)の脱顆粒抑制作用は、β-ヘキソサミニダ-ゼ放出抑制活性を指標として評価することができる。詳細実施例にて後述する。
本発明の組成物の特徴は、有効成分として含有する卵殻膜の酵素加水分解ペプチドが脱顆粒抑制作用(β-ヘキソサミニダ-ゼ放出抑制作用)を有することにある。なお、後述の実施例にて示すように、同じ卵殻膜の加水分解ペプチドでも、アルカリで加水分解したペプチドは脱顆粒抑制作用(β-ヘキソサミニダ-ゼ放出抑制作用)を有さない。
卵殻膜の加水分解ペプチドにおいて、脱顆粒抑制活性がアルカリ加水分解ペプチドには生じず、酵素加水分解ペプチドのみに生じる原因について、現段階では理由は完全に明らかではないが、酵素加水分解ペプチドに特有のアミノ酸組成や配列が脱顆粒抑制活性に影響を及ぼすことを意味している。実施例にて後述するように、酵素加水分解ペプチドは、アルカリ加水分解ペプチドと比較して、ヒスチジン、スレオニン、システイン/シスチン、フェニルアラニンの比率が高く、これらを含む配列が脱顆粒抑制活性に関係するものと推測される。
本発明の組成物は、有効成分として本発明のペプチド(脱顆粒抑制作用を有する卵殻膜由来のペプチド)を含んでいればよく、当該ペプチドは分離処理されたものであっても、分離処理されていないものであってもよい。
本発明の第1の態様は、卵殻膜の酵素加水分解物(成分として本発明のペプチドを含有するものに限る)を含有する組成物である。卵殻膜の酵素加水分解物には本発明のペプチド(脱顆粒抑制作用を有する卵殻膜由来のペプチド)が含まれ、当該ペプチドが脱顆粒抑制作用を有するが、卵殻膜の酵素加水分解物に脱顆粒抑制作用を有さない卵殻膜由来のペプチドが含まれていることを否定するものではなく、本発明に係る卵殻膜の酵素加水分解物は、通常、特段の分離処理を行わない場合、脱顆粒抑制作用を有する本発明のペプチドと共に、脱顆粒抑制作用を有さないペプチドが含まれる。
また、本発明の第2の態様は、卵殻膜の酵素加水分解物(酵素処理による卵殻膜加水分解物)から分離処理を行って得られる卵殻膜の酵素加水分解ペプチド(脱顆粒抑制作用を有する卵殻膜由来のペプチド)を含有する組成物である。
本発明のペプチド(脱顆粒抑制作用を有する卵殻膜由来のペプチド)は、本発明に係る卵殻膜酵素加水分解物から分離して得ることができる。
上述の通り、卵殻膜の酵素加水分解物には卵殻膜の酵素加水分解物は、通常、脱顆粒抑制作用を有する本発明のペプチドと共に、脱顆粒抑制作用を有さないペプチドが含まれるが、卵殻膜の酵素加水分解物を、クロマトグラフィーカラム等を利用して分離処理することによって、脱顆粒抑制作用を有する卵殻膜由来のペプチドを分画物として得ることができる。
なお、後述する実施例においては、酵素処理による卵殻膜加水分解物を、クロマトグラフィーカラムによる分離によって得られた7つの画分の中で、分子量の大きい分画物1(Frc.1)及び分画物2(Frc.2)に含まれるペプチドが脱顆粒抑制作用を有する卵殻膜由来のペプチドと特定しているが、本発明のペプチドは、脱顆粒抑制作用を有する卵殻膜由来のペプチドであればよく、当該分画物1(Frc.1)及び分画物2(Frc.2)で特定されたペプチドのみに限定されない。例えば、実施例で使用したタンパク質分解酵素以外の酵素を用い、異なる分子量を有する卵殻膜の酵素加水分解ペプチドも脱顆粒抑制作用を有する限り、本発明のペプチドに含まれる。
本発明の組成物は、本発明のペプチドが有する脱顆粒抑制活性によって、脱顆粒抑制用の組成物として用いることができる。さらには、本発明の組成物は、脱顆粒抑制作用に由来してアレルギーの予防治療用の組成物や抗炎症用の組成物としても有用である。
以下、本発明の組成物をさらに詳細に説明する。
(卵殻膜)
本発明の組成物の原料として使用される「卵殻膜」は、鳥類(特には鶏)の卵殻の内側にある繊維質の薄膜であり、外卵殻膜及び内卵殻膜の二層の網目状構造からなる。卵殻膜の水分を除く主成分はタンパク質であるが、その他にも脂質や糖質等を含む。なお、卵殻膜のタンパク質は約20種類のアミノ酸で構成され、特にシスチンを多く含む。卵殻膜はさらにコラーゲンとヒアルロン酸を含むという特徴がある。
原料である卵殻膜は、その用途に応じて、未加工、又は適当な形状に加工されて、加水分解工程に供される。すなわち、卵殻膜をそのまま、あるいは乾燥して粉砕する、細断する等により、細粒物として使用することもできる。産業への応用の点からは、卵殻膜は乾燥させて用いることが好ましい。
卵殻膜は、加水分解工程に供する前に、必要に応じて分離・精製等の前処理を行ってもよい。典型的には、卵殻から卵殻膜を分離する際に卵殻由来のカルシウム成分を含むことがあるため、このカルシウム成分を除去する前処理が挙げられる。
(卵殻膜酵素加水分解物)
卵殻膜酵素加水分解物(本発明に係る卵殻膜加水分解物)は、原料である卵殻膜を、タンパク質分解酵素によって加水分解することによって得ることができる。
本発明に係る卵殻膜加水分解物は、卵殻膜をそのまま又は粉砕して水に懸濁し、所定pH条件に調整した後にタンパク質分解酵素を添加し、所定時間反応させた処理液、処理液の可溶化物、これらの乾燥物などが挙げられ、脱顆粒抑制活性を有する成分(本発明のペプチド)が含有されていれば特に限定されない。
タンパク質分解酵素としては、アルカリ性プロテアーゼ、中性プロテアーゼ、酸性プロテアーゼのいずれも使用することができるが、アルカリ性プロテアーゼが好適である。
本発明に係る卵殻膜加水分解物は、例えば、卵殻膜の酵素加水分解処理液、あるいは遠心分離、脱水分離、ろ過などの方法により不溶物を除去した液をそのままあるいは濃縮し、さらにこれらを乾燥したものなどが挙げられる。乾燥は、噴霧乾燥、凍結乾燥、減圧乾燥、流動乾燥、ドラム乾燥などの公知の方法により行うことができる。
ペプチドの純度を高めるため、不溶物の除去後に限外ろ過、逆浸透ろ過、電気透析などの脱塩処理を行ってもよい。
本発明に係る卵殻膜加水分解物は粉状や粒状、顆粒状などの粉末に成形したものを用いてもよい。成形方法としては、特に限定されず、特に造粒が必要な場合は、適切な結合剤や賦形剤などを添加の上、公知の湿式、乾式などの顆粒造粒法を使用することができる。
本発明に係る卵殻膜加水分解物の粉状又は顆粒状の粒子における粒子径としては、特に制限されるものではなく、目的に応じて適宜選択することができる。
以下、本発明に係る卵殻膜加水分解物の好適な製造方法を挙げるが、本発明に係る卵殻膜加水分解物の製造方法は、脱顆粒抑制活性を有する成分(本発明のペプチド)が含有されていれば特に限定されない。
本発明に係る卵殻膜加水分解物の好適な製造方法は、卵殻膜を含み、pH11以上に調整された懸濁液を得る工程(工程(1))と、得られた懸濁液にアルカリ性プロテアーゼを添加して、卵殻膜の加水分解を進行させる第1の酵素添加工程(工程(2))と、懸濁液がpH9未満になったのちに、さらにアルカリ性プロテアーゼを添加して卵殻膜の加水分解を進行させて、卵殻膜を可溶化する第2の酵素添加工程(工程(3))と、得られた卵殻膜加水分解物を含む溶液を加熱してアルカリ性プロテアーゼを失活させる工程(工程(4))と、を有する。
この酵素加水分解処理による製造方法によれば、優れた脱顆粒抑制活性を有するペプチドを含有する卵殻膜加水分解物を再現性よく製造することができる。
なお、当該好適な卵殻膜加水分解物の製造方法の具体例については、後述する[実施例]で詳述する。
工程(1)は、卵殻膜を含み、pH11以上に調整された懸濁液を得る工程である。
工程(1)における懸濁液は、溶媒に対して、卵殻膜を含み、pH11以上に調整されていれば、その調製方法は任意である。例えば、アルカリを添加してpH11以上に調整した溶媒に卵殻膜を分散させてもよいし、卵殻膜を溶媒に分散させた後にアルカリを添加してpH11以上に調整してもよい。pHの上限値は、後工程で添加されるアルカリ性プロテアーゼの種類にもよるが、pHが高すぎると酵素活性が低下する場合が多いため、好適にはpH12以下である。
pH調整に使用するアルカリとしては、本発明の目的が達成される限り、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の無機アルカリであっても、有機アルカリであってもよいが、通常、無機アルカリが用いられ、特に水酸化ナトリウムは好適なアルカリのひとつである。
pH調整に使用するアルカリの量は、懸濁液のpHが所望のアルカリ条件となるように調整され、原料となる未処理卵殻膜に含まれるカルシウム成分の量を考慮して適宜決定される。
溶媒としては、卵殻膜及びその分解物が分散、溶解するものであればよく、水、アルコール類、水溶性ケトン類又はこれらの混合物が用いられ、通常、水または水を主体とする溶媒(水50重量%以上)が用いられる。
懸濁液に対する卵殻膜の量は、卵殻膜及びその分解物が分散、溶解できる範囲であれば任意である。但し、卵殻膜の量が少なすぎると生産性が悪くなり、多すぎると品質にばらつきがでるおそれがあるため、通常、溶媒100重量部に対して、5~30重量部である。
工程(1)における温度は、pH調整に使用するアルカリが溶解できる温度であればよいが、後工程で添加されるアルカリ性プロテアーゼの至適温度であることが好ましい。そのため、使用されるアルカリ性プロテアーゼの種類にもよるが、通常、20~60℃である。
工程(2)は、工程(1)で得られた懸濁液にアルカリ性プロテアーゼを添加して、卵殻膜の加水分解を進行させる工程(第1の酵素添加工程)である。
本発明におけるアルカリ性プロテアーゼは、アルカリ条件下で、卵殻膜のタンパク質を可溶化できる程度に加水分解できるものであればよい。なお、本発明で使用するアルカリ性プロテアーゼは精製品でなくともよいが、精製品であることが好ましい。
アルカリ性プロテアーゼは市販品を用いることができ、例えば、ナガセケムテックス株式会社のビオプラーゼシリーズ(ビオプラーゼOP,ビオプラーゼ SP-20FG等);天野エンザイム株式会社のプロチンシリーズ(プロチンSD AY10等)、プロテアーゼシリーズ(プロテアーゼP,プロテアーゼA等)など、が挙げられる。
この中でも、実施例で使用したビオプラーゼOP(ナガセケムテックス株式会社)は好適な市販品の一例である。
工程(2)では、懸濁液中の卵殻膜と、アルカリ性プロテアーゼと接触させ、酵素の触媒作用によって卵殻膜を加水分解する。この過程において、タンパク質の加水分解に伴う反応生成物の影響のため、pHは徐々に小さくなるが、後工程(工程(3))におけるpH9未満になるまで酵素処理を進行させる。
工程(2)におけるアルカリ性プロテアーゼの使用量は、卵殻膜100重量部に対して、1~10重量部程度である。
工程(2)の処理温度は、使用されるアルカリ性プロテアーゼの種類に応じて適宜温度が決定される。温度条件の例を挙げると40℃~70℃である。
工程(2)の時間は、pH9未満になる範囲で決定され、例えば10分~3時間である。
工程(2)は、還元剤の共存下で行ってもよい。還元剤としては特に制限はないが、例えば、亜硫酸水素ナトリウムが挙げられる。
工程(3)は、工程(2)で懸濁液がpH9未満になったのちに、さらにアルカリ性プロテアーゼを添加して卵殻膜の加水分解を進行させて、卵殻膜を可溶化する工程(第2の酵素添加工程)である。
工程(3)において、酵素の添加を複数回に分けて行うことによって、加水分解の進行を進めて、卵殻膜加水分解物の歩留まりを高めることができる。また、酵素の添加を1回で行う場合と比較して、得られる卵殻膜加水分解物に含まれるシステイン及びシスチンの合計含有量が増加する傾向にある。
工程(3)における酵素の添加回数は、1回でも、2回以上でもよいが、通常、1回である(すなわち、工程(2)と併せて、酵素添加2回)。
工程(3)で添加される酵素は、工程(2)で例示したアルカリ性プロテアーゼと同様である。なお、工程(2)と工程(3)で使用する酵素は、本発明の目的を損なわない限り、同じ酵素であっても異なっていてもよい。
工程(2)の後、酵素添加を行う前に、アルカリを添加してpH調整することが好ましい。アルカリ性プロテアーゼは、至適pH範囲から外れると酵素活性が低下する。そのため、工程(3)にて酵素添加を行う前に、pH調整を行うことにより、反応環境を至適pHに近づけるという利点がある。例えば、アルカリ性プロテアーゼが、実施例で開示されたビオプラーゼOPの場合であると、pH10~12に調整すればよい。
pH調整に使用するアルカリとしては、工程(1)で説明したものと同様である。通常、無機アルカリが用いられ、特に水酸化ナトリウムは好適なアルカリのひとつである。
pH調整に使用するアルカリの量は、pHが所望のアルカリ条件となるように適宜決定される。
工程(3)の処理温度は、使用されるアルカリ性プロテアーゼの種類に応じて適宜温度が決定される。温度条件の例を挙げると40℃~70℃である。
工程(3)の時間は、卵殻膜が、目的の可溶化が達成可能になるように反応時間を設定され、例えば3~24時間である。
工程(4)は、得られた卵殻膜加水分解物を含む溶液を加熱してアルカリ性プロテアーゼを失活させる工程である。
工程(3)において、処理液に存在するアルカリ性プロテアーゼは、卵殻膜が分解されて可溶化した後においても、その加水分解物をさらに分解してより分子量が小さくなる。そのため、目的とする程度の加水分解が終わった後には、酵素を失活させることが求められる。
加熱温度は、使用したアルカリ性プロテアーゼが失活する温度であればよく、通常、85℃以上である。なお、加熱温度が高すぎると得られた卵殻膜加水分解物が変性するおそれがあるため、通常、110℃以下である。加熱方法は特に制限はなく、例えば、熱交換器を使用する方法もあるが、簡易に加熱する方法として、沸騰水(100℃)による湯煎が挙げられる。
また、上述の好適な卵殻膜加水分解物の製造方法は、上記工程を含めばよく、その前後に別の工程を設けてもよい。例えば、上記工程のあとに、脱塩処理等の精製を行ってもよい。通常、卵殻膜加水分解物の固形物を得るために、まず、卵殻膜加水分解物を含む溶液を公知の方法(フィルタープレス、遠心脱水、遠心分離等)で固液分離した後に、乾燥工程に供される。
乾燥工程は、上記工程で得られた卵殻膜加水分解物を含む溶液から、溶媒成分を留去して卵殻膜加水分解物の乾燥物を得る工程である。
乾燥工程を行うことにより、卵殻膜加水分解物の保存性がより向上し、また、卵殻膜加水分解物を後述する応用品に使用しやすくなる。卵殻膜加水分解物の使用用途にもよるが、含水率を通常、30重量%以下、好ましくは10重量%以下まで乾燥させる。
乾燥工程に用いる手段としては、卵殻膜加水分解物の品質を損なわない限り特に制限はなく、公知の乾燥方法を採用すればよい。乾燥機として、典型的には、ドラムドライヤー、スプレードライヤー、凍結乾燥機等が挙げられる。乾燥条件は、卵殻膜加水分解物を目的とする含水量になるように決定すればよい。加熱乾燥の場合では、例えば、温度70℃~90℃で12時間~30時間乾燥させる方法がある。
上記の通り、本発明に係る卵殻膜加水分解物の好適な製造方法について説明したが、制限的なものではなく、最適な条件(各工程の反応時間、温度、酵素使用量など)は、本明細書の教示事項を参考にして、予備実験を通して容易に決定することができる。また、明示的に開示されていない条件や、各種パラメータなどは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用することができる。
<3.本発明の組成物の応用>
本発明の組成物は、本発明のペプチド(脱顆粒抑制作用を有する卵殻膜由来のペプチド)又はこれを含む酵素処理による卵殻膜加水分解物をそのまま使用してもよいが、通常、本発明の効果を損なわないその他の成分を組み合わせて使用される。その他の成分としては、ヒトが安全に使用できる成分であればよく、後述する使用形態(医薬用、皮膚外用用、経口用)を考慮して適宜決定される。
その他の成分の配合割合は、本発明の効果を損なわない限りその目的に応じて適宜選択して決定することができる。
本発明の組成物は、脱顆粒抑制活性(β-ヘキソサミニダ-ゼ放出抑制活性)を有し、これらの活性に関連する抗アレルギー作用、抗炎症作用を有する。そのため、本発明の組成物は、「アレルギーの予防治療用組成物」や「抗炎症用組成物」として、使用することができる。
また、本発明の組成物は、その目的に応じて任意の形態で使用することができる。すなわち、医薬用組成物、及び医薬用組成物に該当しない皮膚外用用組成物(化粧料組成物等)、経口用組成物(サプリメント、機能性食品等)等への使用が可能である。
本発明の組成物を脱顆粒抑制用として用いる場合、含有させる本発明のペプチド(脱顆粒抑制作用を有する卵殻膜由来のペプチド)の量は、脱顆粒が関与する症状の種類及び程度、本発明の組成物の形態、使用方法を考慮して、必要量が摂取できるような範囲で適宜決定される。
以下、本発明の組成物の好適な応用用途である、医薬用組成物、化粧料組成物、サプリメント、機能性食品について説明するが、本発明の組成物の応用用途はこれらに限定されない。
(医薬組成物)
本発明の組成物は、その有効量を薬学的に許容される基材とともに配合して医薬組成物(以下、「本発明の医薬組成物」と記載する場合がある。)としてもよい。
本明細書において、「医薬組成物」とは、対象となる疾患の予防、治療、症状の改善の少なくともひとつに対して有用な薬剤を意味する。また、本明細書において、「医薬組成物」には、医薬品のみならず、医薬部外品も含む。
本発明の医薬組成物は、本発明の組成物以外にもその効能を損なわない範囲で他の薬剤や薬理学的に許容される任意の成分を含んでもよい。また、本発明の組成物そのもの(脱顆粒抑制作用を有する卵殻膜由来のペプチド、またはこれを含む卵殻膜加水分解物である場合を含む)を、本発明の医薬組成物として使用してもよい。
本発明の医薬組成物は、脱顆粒が関与する疾患の予防、治療、症状の改善の少なくともひとつに対して有用である。すなわち、「予防」には、当該疾患または症状の発症の抑制および遅延が含まれる。また、「治療」には、当該疾患または症状の病態の改善および寛解、並びに当該疾患または症状の進展の抑制が含まれる。
本発明の医薬組成物の対象となる、疾患又は症状の具体例として、例えば、アトピー性皮膚炎、炎症(急性炎症、慢性炎症等)、花粉症、アレルギー性鼻炎、気管支喘息、蕁麻疹、食物アレルギー、好酸球性肺炎等が挙げられる。
本発明の医薬組成物は、本発明の組成物の有効成分である本発明のペプチド(これを含む卵殻膜加水分解物である場合を含む)を含有していればよく、どのような形態の薬剤であっても構わない。本発明の医薬組成物の形態としては、錠剤、丸剤、顆粒剤、散剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、又はカプセル剤等の剤型がある。本発明の医薬組成物の形態は、固体又は液体同士でもよいし、固体と液体でも良いし、特に限定されない。投与方法としては、経口又は非経口であってもよい。本発明の医薬組成物の好適な態様としては、経口剤や皮膚外用剤が挙げられる。
本発明の医薬組成物は、ヒト以外の動物に対して適用することもできる。そのため、動物用の医薬組成物とすることもできる。
本発明の医薬組成物の摂取量は、本発明の効果を発揮できる量であれば、特に限定されず、摂取させる対象者の性別、体重、健康状態等に応じて適宜決定される。当該摂取量は、1回で摂取してもよく、1日数回に分けて摂取してもよい。また、対象となる疾患の予防、治療、症状の改善の観点から、本発明の医薬組成物は、持続して摂取することが好ましい。
<医薬組成物以外の形態>
上述の通り、本発明の組成物の有効成分である本発明のペプチド(これを含む卵殻膜加水分解物である場合を含む)は、医薬品、医薬部外品以外の製品に配合してもよい。そのような用途のうち、好適な具体例としては、皮膚外用用組成物や経口用組成物(但し、医薬組成物である場合は除く)が挙げられる。
(皮膚外用用組成物)
本発明の組成物の好適な形態のひとつは、本発明の組成物の有効成分である本発明のペプチド(これを含む卵殻膜加水分解物である場合を含む)を配合した皮膚外用用組成物(以下、「本発明の皮膚外用用組成物」と記載する場合がある。)である。
以下、本発明の皮膚外用用組成物の典型例である化粧料組成物について説明するが、本発明の皮膚外用用組成物は化粧料組成物に限定されない。
本発明の皮膚外用用組成物は、優れた脱顆粒抑制作用を有し、上述の通り、脱顆粒が関与する症状を予防又は改善することができる。
本発明の皮膚外用用組成物は、慣用の化粧料基材を適宜配合し、所望の剤型とすることができる。その形態は特に制限はないが、化粧水、乳液、ジェル、クリーム、パック、ヘアトニック、ヘアクリームファンデーション、水性軟膏、スプレー等の形態が挙げられる。また、本発明において、化粧料組成物は、入浴剤、ボディーソープ、シャンプー等の入浴用組成物も含む概念である。
また、本発明の皮膚外用用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で通常化粧料や皮膚外用医薬、入浴用製品で使用される任意の成分を添加することができる。かかる任意成分の具体例としては、増粘・ゲル化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素剤、金属封鎖剤、防腐剤、pH調整剤、香料、ミツロウ等が挙げられる。これら任意成分の配合割合は、その目的に応じて適宜選択して決定することができる。
本発明のペプチド(これを含む卵殻膜加水分解物である場合を含む)を、皮膚外用用組成物に配合する割合は任意であるが、脱顆粒抑制活性に有意性がある範囲で配合割合が選択される。
本発明の皮膚外用用組成物は、ヒト以外の動物に対して適用することもできる。そのため、動物用の皮膚外用用組成物とすることもできる。
(経口用組成物)
本発明の組成物の好適な形態のひとつは、本発明の組成物の有効成分である本発明のペプチド(これを含む卵殻膜加水分解物である場合を含む)を配合した経口用組成物(以下、「本発明の経口用組成物」と記載する場合がある。)である。
本発明の経口用組成物は、優れた脱顆粒抑制作用を有するため、機能性食品、サプリメント等へ好適に使用される。
以下、本発明の経口用組成物の典型例である機能性食品、サプリメント、食品添加剤について説明するが、本発明の経口用組成物は機能性食品、サプリメント、食品添加剤に限定されない。
本発明の経口用組成物の摂取量は、本発明の効果を発揮できる量であれば、特に限定されず、本発明の経口用組成物の形態、摂取させる対象者の性別、体重、健康状態等に応じて適宜決定される。当該摂取量は、1回で摂取してもよく、1日数回に分けて摂取してもよい。また、本発明の経口用組成物の有する作用又は効能を得るために、本発明の経口用組成物は、持続して摂取することが好ましい。
本発明の組成物は、日常的に経口摂取しやすいように、各種の食品、飲料と混ぜて機能性食品とすることで、長期的に摂取することも容易である。
ここでいう「機能性食品」とは、一般食品に加えて、健康の維持の目的で摂取する食品及び/又は飲料を意味し、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品又は機能性表示食品)や、健康食品、栄養補助食品、栄養保険食品等を含む概念である。この中でも保健機能食品である特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品が好ましい機能性食品の態様である。なお、機能性食品として製品化する場合には、食品に用いられる様々な添加剤、具体的には、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤漂白剤、防菌防黴剤、酸味料、調味料、乳化剤、強化剤、製造用剤、香料等を添加していてもよい。
機能性食品の対象となる、食品、飲料は特に限定されるものではない。例えば、食品として、乾燥粉末、ソーセージ、ハム、魚介加工品、ゼリー、キャンディー、チューインガムなどの食品類が挙げられる。また、飲料としては、各種の茶類、青汁飲料、清涼飲料水、酒類、栄養ドリンクなどが挙げられる。
また、本発明の経口用組成物は、サプリメントの形態として使用することも可能である。サプリメントの形態は、特に制限されず、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、糖衣錠、フィルム剤、トローチ剤、チュアブル剤、溶液、乳濁液、懸濁液等の任意の形態でよい。
本発明のサプリメントは、本発明の組成物以外に、サプリメントとして通常使用される任意の成分を含んでいてもよい。そのような成分としては、例えば、アミノ酸,ペプチド;ビタミンE、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンB、葉酸等のビタミン類;ミネラル類;糖類;無機塩類;クエン酸またはその塩;茶エキス;油脂;プロポリス、ローヤルゼリー、タウリン等の滋養強壮成分;ショウガエキス、高麗人参エキス等の生薬エキス;ハーブ類:コラーゲン等が挙げられる。
本発明のペプチド(これを含む卵殻膜加水分解物である場合を含む)を、機能性食品やサプリメントに配合する割合は任意であるが、脱顆粒抑制活性に有意性がある範囲で配合割合が選択される。
本発明の経口用組成物を保健機能食品として用いる場合、製品において本発明のペプチドによりもたらされる作用又は効能が表示されていてもよい。例えば、本発明に係る製品の本体、包装、容器、パッケージ等の収納物、又はその広告等への表示が挙げられる。また、製品化の際に付される作用又は効能に関する表示としては、例えば、「花粉やハウスダスト、ホコリなどによる目の不快感を軽減する」、「肌や顔の乾燥を緩和し、ムズムズ感を改善する」、「炎症に伴う赤みを改善する」等が挙げられる。
また、本発明の組成物は、それ自体またはこれに他の成分を添加して食品添加剤として使用することも可能である。他の成分は、飲食品添加剤として使用可能であるならば特に制限はない。食品添加剤の添加対象となる飲料、食品についても任意であり、特に制限はない。
本発明のペプチド(これを含む卵殻膜加水分解物である場合を含む)を、食品添加剤に配合する割合は任意であるが、脱顆粒抑制活性に有意性がある範囲で配合割合が選択される。
本発明の経口用組成物は、ヒト以外の動物に対して適用することもできる。そのため、ペットフード等の動物用の経口用組成物とすることもできる。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、実施例の混合溶媒において示す「%」は、特に明示しない限り「体積%」を示す。
1.卵殻膜加水分解物の調製
以下の方法で、実施例1、実施例2及び比較例1の卵殻膜加水分解物を製造した。
卵殻膜粉末は、以下の手順で得た。
食品工場から廃棄された、鶏卵由来の乾燥済みの卵殻と卵殻に付着した卵殻膜(それぞれ鶏卵由来)を、比重分離装置にて卵殻と卵殻膜を分離した後、得られた卵殻膜を粉砕して卵殻膜の乾燥粉砕物(粒径20~700μm)を得た。
(実施例1)酵素処理
卵殻膜(タンパク質含量80重量%)の乾燥粉砕物10重量部に、水90重量部を添加し、50~55℃の範囲で調温しながら撹拌し、8mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液でpH11.2に調整することにより、卵殻膜懸濁液を得た。これに、タンパク質分解酵素であるアルカリ性プロテアーゼ(ビオプラーゼOP、ナガセケムテックス株式会社)を0.05重量部添加し、酵素加水分解反応を開始した。反応2時間後に水酸化ナトリウム水溶液でpH10.8に調整し、再度プロテアーゼ(ビオプラーゼOP)を0.05重量部添加して16時間反応させた。反応後沸騰水中で湯煎により90℃以上に加温して酵素を失活させ、遠心分離により加水分解反応液を得た。得られた加水分解反応液を電気透析により脱塩した後、これを凍結乾燥により乾燥させることによって、実施例1の卵殻膜加水分解物(EH-ESM1)を得た。
(実施例2)酵素処理(還元剤共存)
実施例1の方法において、酵素(アルカリ性プロテアーゼ)の添加直前に、亜硫酸水素ナトリウムを卵殻膜懸濁液(卵殻膜10重量部+水90重量部)に0.5重量部添加した以外は同様な方法で実施例2の卵殻膜加水分解物(EH-ESM2)を得た。
(比較例1)アルカリ処理
卵殻膜(タンパク質含量80重量%)の乾燥粉砕物10重量部に、4重量%水酸化ナトリウム水溶液90重量部を添加し、50~55℃の範囲で調温しながら5時間静置して、卵殻膜をアルカリ加水分解反応させた。反応後濃塩酸によりpH7.5に中和し、遠心分離により加水分解反応液を得た。得られた加水分解反応液を電気透析により脱塩し、これを凍結乾燥により乾燥させることによって、比較例1の卵殻膜加水分解物(AH-ESM)を得た。
2.評価
2-1.卵殻膜加水分解物の脱顆粒抑制活性(β-ヘキソサミニダ-ゼ放出抑制活性)の評価
脱顆粒抑制活性の指標としてβ-ヘキソサミニダ-ゼ放出抑制活性を以下の通り評価した。
5×10cellsのラット好塩基球様細胞株RBL-2H3(JCRB)をTyrode Buffer(Sigma)で洗浄した後、所定量の卵殻膜加水分解物及び10μMのcalcium ionophore A23187(Sigma)を含むTyrode Bufferで懸濁し、37℃で30分間反応させた。その後、5分間氷冷し、反応を停止させ、遠心分離により上清を回収した。
回収した上清に2mMのp-nitrophenyl N-2-actyl-β-D-glucosamine/citrate buffer(pH4.5)(Sigma)を加え、37℃でインキュベートした。30分間静置後、carbonate buffer(pH10)を添加して反応を停止させ、吸光波長405nmでβ-ヘキソサミニダ-ゼを検出、定量した。
脱顆粒抑制活性は、β-ヘキソサミニダ-ゼ放出抑制活性として評価した。
卵殻膜加水分解物を添加しなかったコントロールを100%として、実施例1、実施例2又は比較例1の卵殻膜加水分解物を添加した試験群のβ-ヘキソサミニダ-ゼ量の相対値(%)を算出した。結果を図1に示す。
図1に示す通り、卵殻膜を酵素処理した実施例1の卵殻膜加水分解物(EH-ESM1)ではコントロールと比較して、β-ヘキソサミニダ-ゼの放出が少ないことから、実施例1の卵殻膜加水分解物(EH-ESM1)によってβ-ヘキソサミニダ-ゼの放出が抑制されていることがわかる。また、還元剤である亜硫酸水素ナトリウム共存下で卵殻膜を酵素加水分解処理した実施例2の卵殻膜加水分解物(EH-ESM2)では、還元剤なしの実施例1と比較してさらにβ-ヘキソサミニダ-ゼの放出が抑制された。
一方、図1に示すとおり、卵殻膜を水酸化ナトリウム(アルカリ触媒)で処理した加水分解物である比較例1(AH-ESM)では、コントロールとほとんど差がなく、β-ヘキソサミニダ-ゼの放出にほぼ影響を及ぼしていない。
以上の結果から、卵殻膜の酵素処理による加水分解物(実施例1,2)は、脱顆粒抑制活性(β-ヘキソサミニダ-ゼ放出の抑制活性)を有するのに対し、卵殻膜のアルカリ処理による加水分解物(比較例1)は脱顆粒抑制活性(β-ヘキソサミニダ-ゼ放出の抑制活性)を有さないことが判明した。
2-2.卵殻膜加水分解物のアミノ酸組成の分析
実施例1(EH-ESM1)、実施例2(EH-ESM2)及び比較例1(AH-ESM)の卵殻膜加水分解物について、アミノ酸組成分析により各卵殻膜加水分解物に含まれるアミノ酸成分の含有量を算出した。結果を図2に示す。
なお、アミノ酸組成分析は、酸化剤であるアジ化ナトリウム存在下6mol/L塩酸で加水分解して、AccQTag誘導体化法(日本ウォーターズ株式会社)により超高圧高速液体クロマトグラフィー(日本ウォーターズ株式会社製UPLC H class)で分析した。
図2に示す通り、実施例1、実施例2及び比較例1の卵殻膜加水分解物の総アミノ酸含量は3試料間に差が認められなかった。
一方、上記の通り、脱顆粒抑制活性(β-ヘキソサミニダ-ゼ放出の抑制活性)には差が認められることから、卵殻膜加水分解物のアミノ酸組成や配列が脱顆粒抑制活性に影響を及ぼすことを意味している。
卵殻膜の酵素処理による加水分解物(実施例1(EH-ESM1)及び実施例2(EH-ESM2))は、ヒスチジン、スレオニン、システイン/シスチン、フェニルアラニンの比率が、卵殻膜のアルカリ処理による加水分解物(比較例1(AH-ESM))と比較して高いことから、これらのアミノ酸を含む配列が脱顆粒抑制活性に関係することが示唆された。
2-3.卵殻膜加水分解物のサイズ排除クロマトグラフィーによる評価
実施例1、実施例2及び比較例1の卵殻膜加水分解物について、サイズ排除クロマトグラフィーを測定した。なお、卵殻膜加水分解物は、下記試料濃度に調整後、精密ろ過フィルター(ザルトリウス製ミニザルトRC15、孔径0.2μm)を通して、装置に注入した。得られたサイズ排除クロマトグラムを図3に示す。
なお、サイズ排除クロマトグラフィーの条件は以下のとおりである。
株式会社島津製作所社製高速液体クロマトグラフ、装置名「プロミネンス」
カラム:GE製、商品名「Superdex peptide HR 10/300」1本
溶離液:30%アセトニトリル-70%水-0.1%トリフルオロ酢酸
流量:0.5mL/min
カラム温度:40℃
検出器:紫外吸光光度計(測定波長214nm)
試料濃度:5~10mg/mL
試料注入量:25μL
また、同条件のサイズ排除クロマトグラフィーにて既知分子量のペプチド注入時におけるピークトップ保持時間から分子量検量曲線を作成し、卵殻膜加水分解物の重量平均分子量を算出した。結果を表1に示す。
Figure 2023147791000002
図3に示すように、卵殻膜の酵素処理による加水分解物(実施例1(EH-ESM1)及び実施例2(EH-ESM2))は、アルカリ処理による加水分解物(比較例1(AH-ESM))と異なる分子量分布であった。特に酵素処理加水分解物(実施例1及び実施例2)は、重量平均分子量(MW)1274以下のペプチドを多く含み、アルカリ加水分解物(比較例1)には存在しない保持時間(RT)30~35分にメインピークを有していた。
2-4.卵殻膜加水分解物(酵素処理)における分画物の評価
実施例1(EH-ESM1)の卵殻膜加水分解物について、(2-3.)と同様の方法でサイズ排除クロマトグラフィーを実施し、カラムから溶出する試料を含んだ移動相を保持時間毎に試験管に採取した。溶媒を留去して7つの分画物を得た。得られた分画物の分画時の保持時間範囲(分)、重量平均分子量(MW)及び収率(%)を表2に示す。
Figure 2023147791000003
また、実施例1(EH-ESM1)の卵殻膜加水分解物の分画物について、(2-3.)と同様の方法で分画物ごとのアミノ酸成分の含有量を算出した結果を図4に示す。
図4に示されるように分画物によってアミノ酸組成に違いが認められ、Frc.1(MW:3528)やFrc.2(MW:2263)では、システイン/シスチン、プロリンが多いことが分かった。
2-5.卵殻膜加水分解物(酵素処理)における分画物の脱顆粒抑制活性(β-ヘキソサミニダ-ゼ放出抑制活性)の評価
実施例1の分画物(Frc.1~7)について、(2-1.)と同様の方法でβ-ヘキソサミニダ-ゼ放出抑制活性を評価した結果を図5に示す。
図5に示すように、Frc.1及びFrc.2は、分画前の実施例1(EH-ESM1)の卵殻膜加水分解物と同等以上の脱顆粒抑制活性(β-ヘキソサミニダ-ゼ放出抑制活性)を示したのに対し、Frc.3~7はほとんど脱顆粒抑制活性(β-ヘキソサミニダ-ゼ放出抑制活性)を示さなかった。
この結果から、卵殻膜加水分解物(酵素処理)における脱顆粒抑制活性(β-ヘキソサミニダ-ゼ放出抑制活性)は、Frc.1及びFrc.2に含まれる特有のペプチドに由来することが判明した。
本発明の脱顆粒抑制用組成物は、優れた脱顆粒抑制作用を有し、各種医薬用組成物、化粧料組成物、サプリメント、機能性食品等に配合して用いることができる。

Claims (8)

  1. 卵殻膜の酵素加水分解ペプチドを有効成分として含有することを特徴とする脱顆粒抑制用組成物。
  2. 前記ペプチドを卵殻膜酵素加水分解物として含有する請求項1に記載の組成物。
  3. 前記酵素が、アルカリ性プロテアーゼである請求項1または2に記載の組成物。
  4. アレルギーの予防治療用及び/又は抗炎症用である請求項1から3のいずれかに記載の組成物。
  5. 医薬用である、請求項1から4のいずれかに記載の組成物。
  6. 皮膚外用用(但し、医薬用である場合を除く。)である、請求項1から4のいずれかに記載の組成物。
  7. 経口用(但し、医薬用である場合を除く。)である、請求項1から4のいずれかに記載の組成物。
  8. 請求項1から7のいずれかに記載の脱顆粒抑制用組成物の製造方法であって、
    卵殻膜の懸濁液を酵素処理して卵殻膜酵素加水分解物を得る工程を有することを特徴とする製造方法。
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