JP2023147700A - チタニアナノ粒子、及びその製造方法 - Google Patents

チタニアナノ粒子、及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2023147700A
JP2023147700A JP2022055365A JP2022055365A JP2023147700A JP 2023147700 A JP2023147700 A JP 2023147700A JP 2022055365 A JP2022055365 A JP 2022055365A JP 2022055365 A JP2022055365 A JP 2022055365A JP 2023147700 A JP2023147700 A JP 2023147700A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
silver
titanium
titania nanoparticles
titania
aqueous dispersion
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2022055365A
Other languages
English (en)
Inventor
浩規 阪本
Hiroki Sakamoto
博輝 山本
Hiroki Yamamoto
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Osaka Gas Co Ltd
Original Assignee
Osaka Gas Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Osaka Gas Co Ltd filed Critical Osaka Gas Co Ltd
Priority to JP2022055365A priority Critical patent/JP2023147700A/ja
Publication of JP2023147700A publication Critical patent/JP2023147700A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Inorganic Compounds Of Heavy Metals (AREA)
  • Catalysts (AREA)

Abstract

【課題】本発明は、銀塩を使用せず、酸化チタンに微細な銀ナノ粒子を担持し、水中で沈殿を生じさせず、安定的に存在させ、高透明な光触媒を提供することを目的とする。【解決手段】(A)チタンを含む物質、有機酸、及び水を混合して、水分散液を得る工程、(B)前記工程(A)で得られた水分散液を、80℃より高い温度で、加熱する工程、及び(C)前記工程(B)の後、前記水分散液に、銀(金属銀、銀粒子)を混合し、当該銀含有水分散液に対して、可視光若しくは紫外光を照射し、チタン(チタニアナノ粒子)に銀(金属銀、銀粒子)を担持させる工程を備える、チタニアナノ粒子の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、チタニアナノ粒子、及びその製造方法に関する。
近年、衛生意識の向上を受け、屋内建材、日用品等に病原体耐性を付与する為に、光触媒を実用化し、屋内建材、日用品等に光触媒を含む塗料を表面に塗布する事が成される。
光触媒は、光触媒に光が照射される事に依り、例えば、触媒表面の酸素と水分とから、抗微生物活性に繋がる活性酸素種を生成する。光触媒は、抗微生物活性種を生成する前後で光触媒自体が変化しない事から、持続性の高い抗微生物材料として活用されている。光触媒は、一般に、紫外線を吸収し光触媒活性を示す触媒を指す。
また、光触媒は、屋内等の紫外線が届き難い環境での活用を考慮し、
可視光領域の光に応答して光触媒活性を示す可視光触媒が精力的に開発されている。可視光触媒として最も良く使用される光触媒は、酸化チタン粉末又は酸化チタンゾルに、鉄、白金、金、銅、銀等の金属を含有させた、金属含有酸化チタン粉末又は金属含有酸化チタンゾルである。
また、光触媒として、屋内環境や日用品が使われる場面では、物陰や夜中等、光が当たらない環境もあるため、暗所でも抗微生活性を発現させるべく、銀、銅等の抗微生活性の金属種を含有させた金属含有酸化チタン粉末及び金属含有酸化チタンゾルも開発されている。
ところで、屋内建材や日用品等に供する光触媒塗膜には、1液系で簡便に塗布する事が出来、透明性が高く基材の意匠性の自由度を損なう事無く、且つ手が触れる際等に滑落やクラックが起こらない様な密着性、耐クラック性を有する事が望まれる。
ところが、酸化チタン粉末に金属が含有された商品名ルミレッシュ(昭和電工株式会社)、セルミューズ(ダイセルミライズ株式会社)等を水に分散させた懸濁液をガラス基板や透明性の高い樹脂基盤上に塗工すると、酸化チタン粉末由来の白色が強く見られ、ガラス基板の透明性が損なわれる事が有る。また、この様にして形成した塗膜を指で擦ると粉末が滑落する事が有る。この様に、金属含有酸化チタン粉末を塗料とする場合は、単体では透明性や基材密着性に課題が有る。
そこで、高分子有機化合物や多孔質の無機化合物をバインダとして用い、金属含有酸化チタン粉末をバインダ中に固定し、塗膜を形成する方法がある。しかしながら、高分子有機化合物のバインダは、金属担持酸化チタン表面を被覆する事から、光触媒活性を低下させるという問題、多孔質の無機化合物バインダは、高分子有機化合物のバインダに比べて、空隙が多い為、活性は低下し難いものの、硬くて脆い為、耐クラック性に欠け、触媒の滑落が促進され耐用年数が下がるという問題等が有る。この様に光触媒にバインダを使用する事で、金属担持酸化チタン本来の持続性及び抗微生物活性を損なうという問題がある。
例えば、特許文献1は、一価銅化合物及び二価銅化合物を含む混合物を表面に担持した光触媒物質を含むウイルス不活化剤を開示している。特許文献1の実施例は、CuO粉末を使用する例と、CuO粉末をシリカ系バインダと混合して使用する例とを例示し、これらをガラス板上に塗布し、30分同条件でウイルスと接液した例を開示している。CuO単体の時は、30分で10程度ウイルス感染価が減少した事に対し、バインダ使用時は、ウイルス感染価が10程度しか減少せず、材料担体使用時とバインダ併用時では10倍程度活性の低下が生じた事を開示している。
そこで、バインダを使用せず、1液系での塗布が可能な酸化チタンゾルに抗微生物性金属を担持させ、抗微生物性金属担持酸化チタンゾルの塗膜を1液系の塗布に依り形成する方法が提案されている。しかしながら、酸化チタンゾルは、塗膜に白濁、クラック等が生じる問題が有り、透明性が高く耐久性の高い塗膜の実現は難しい。
実際に、X線粒子径が7nmという極小の水溶性酸化チタンゾル商品名CSB(堺化学工業株式会社)をガラス基板上に塗工したところ、塗膜が白濁した。また、非特許文献1に記載の方法で合成した酸化チタンを塗布したところ、クラックが生じた。
この様に、従来技術では、金属含有酸化チタン粉末及び酸化チタンゾルを使用する際、バインダレスで(バインダを使用せずに)、透明性が高く、耐クラック性や密着性の高い塗料を形成するのは難しいという現状が有る。
上述の様に、屋内塗装用の金属担持酸化チタン粉末及びゾルは、単体では基材密着性、耐クラック性等が低いという問題、バインダの添加等でこれらを補強するが、バインダによる触媒表面が被覆されたり、触媒の滑落が生じたりするという問題が有り、現状では、金属含有酸化チタン本来の抗微生物活性及び活性持続性を損なっていた。
また、屋内建材、日用品等は、色味の観点で意匠性が求められる物が多い一方で、金属含有酸化チタン粉末は白濁粉末である為、その意匠性の幅が著しく低いという問題が有る。
従って、バインダレスで基材に密着し、塗布膜として高い物理耐性を有す透明性の高い可視光触媒が求められている。
また、金属含有酸化チタン粉末及び酸化チタンゾルは、別の問題として、酸化チタンとは別に含有させる金属成分の不安定性が挙げられる。例えば、特許文献2が開示する通り、酸化チタンを分散させた水溶液に、銀錯体を添加すると、溶液の色が徐々に変化し、最終的に銀の沈殿が見られる。この様に、金属成分が不安定化する事に由り沈殿が見られる現象は、銀、銅等のイオン化傾向の低い元素で良く見られる。
そこで、銀及び銅を複合させ、第四級アンモニウムを酸化チタンゾルに含有させる事に依り金属成分を安定剤により安定化させる方法(特許文献2)が提案されている。しかしながら、特許文献2が開示する方法は、人体に対して毒性の強い第四級アンモニウムイオンを含む為、安全性に懸念が有る。
また、銀の表面をチオール系配位子や酸化チタンで被覆する方法(非特許文献2)等が提案されている。しかしながら、非特許文献2が開示する、銀の表面をチオール系配位子や酸化チタンで被覆する方法は、完全に被覆した場合、抗微生物性金属である銀の溶出が妨げられ、抗微生物活性が損なわれるという問題、一方、部分的に被覆した場合、抗微生物性金属である銀が溶出と再析出を繰り返し、変色や沈殿を引き起こすという問題が有る。
また、光触媒に対して、銀の担持に、銀塩を使用する場合には、安全性、着色性、腐食性等の問題が挙げられる。殆どの無機系の銀塩は劇物である。例えば、最も良く使われる銀塩としては硝酸塩が挙げられるが、硝酸塩は、劇物であり、手に付着すると感光して黒色の化合物が沈着する。また、硝酸塩は、分解して酸を発生した場合、金属等の腐食に繋がる場合が有る。また、銀塩は、保存安定性が悪く、遮光は必須であり、低酸素下、低温での保管が望ましく、変質した場合は、銀ナノ粒子の合成に使用する事が出来ない為、管理に手間が係る。
光触媒に銀を担持する場合、粒径が小さい程、活性が高い事が予想される。一方、銀は、白金等と比較して凝集体を形成し易い。白金は、一般に、比較的容易に、5nm以下の粒子を作製する事が出来る。白金に比べて、銀は、20nm以下の独立した粒子を形成し難い。
上述の様に、銀、銅等のイオン化傾向の低い抗微生物性金属成分を、酸化チタン溶液中で沈殿を生じさせずに、安定的に存在させ、且つこれら金属の溶出を妨げる事のない可視光触媒であって、簡易で安全に製造出来る方法が待望されている。
特開2013-166705号公報 特開2008-260684号公報
Journal of the Society of Inorganic Materials, Japan 11.313 (2004): 481-488. 色材協会誌,2014年,87巻,2号,43-49
本発明は、銀塩を使用せず、酸化チタンに微細な銀ナノ粒子を担持し、水中で沈殿を生じさせず、安定的に存在させ、高透明な光触媒を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を鑑み、鋭意検討した結果、表面に存在する少なくとも一部のチタン原子にアセトキシ基が結合し、且つ示差熱熱重量同時測定装置によって600℃まで昇温させた場合の200℃以上における質量減少が5質量%以上であるチタニアナノ粒子の分散液と、金属銀とを、可視光若しくは紫外光存在下で撹拌するだけで、均一で透明性の高い銀担持酸化チタンを合成出来る事を見出した。
そして、本発明者は、更に研究を重ね、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、以下の構成を包含する。
項1.
チタニアナノ粒子の製造方法であって、
チタニアナノ粒子の水分散液に、銀粒子を加えて撹拌し、チタニアナノ粒子に銀を担持させる工程を含み、
前記チタニアナノ粒子は、表面に存在する少なくとも一部のチタン原子にアセトキシ基が結合しており、示差熱熱重量同時測定装置によって600℃まで昇温させた場合の200℃以上における質量減少が5質量%以上のものである、
製造方法。
項2.
チタニアナノ粒子の製造方法であって、
(A)チタンを含む物質、有機酸、及び水を混合して、水分散液を得る工程、
(B)前記工程(A)で得られた水分散液を、80℃より高い温度で、加熱する工程、及び
(C)前記工程(B)の後、前記水分散液に、銀(金属銀、銀粒子)を混合し、当該銀含有水分散液に対して、可視光若しくは紫外光を照射し、チタン(チタニアナノ粒子)に銀(金属銀、銀粒子)を担持させる工程
を備える、製造方法。
項3.
前記工程(A)の水分散液は、水を50質量%以上含むものである、前記項2に記載の製造方法。
項4.
前記工程(A)の水分散液のpHは、2以上、5以下である、前記項1~3の何れか1項に記載の製造方法。
項5.
前記銀は、粒径が1μm以上、1mm以下の銀粒子である、前記項1~4の何れか1項に記載の製造方法。
項6.
チタニアナノ粒子であって、
チタニアナノ粒子に銀が担持されており、
前記チタニアナノ粒子は、表面に存在する少なくとも一部のチタン原子にアセトキシ基が結合しており、示差熱熱重量同時測定装置によって600℃まで昇温させた場合の200℃以上における質量減少が5質量%以上のものである、
チタニアナノ粒子。
本発明に依れば、安全性が低く変質し易い銀塩を使用せずとも、簡易に均一且つ透明性が高く、保存安定性も良い銀担持酸化チタンナノ粒子分散液を得る事が出来る。
本発明に依り得られる銀担持酸化チタンナノ粒子分散液は、基材密着性、及び耐クラック性が高く、これを用いて、透明の高い光触媒塗膜を得る事が出来る。
本発明の実施態様を表す図である。図1は、実施例1で得られた金属Agについて、ESCA分析を行った結果を表す。金属Agが生じている。 本発明の実施態様を表す図である。図2は、実施例1で得られたチタニアに銀ナノ粒子が担持されている銀含有水分散液である。銀含有水分散液は、均一であり、3か月後も、均一性及び透明性を維持していた。 本発明の実施態様を表す図である。図3は、実施例1で得られた銀ナノ粒子が担持しているチタニアナノ粒子について、TEM観察を行った結果を表す。Agは、一次粒子3nm~7nmであった。 本発明の実施態様を表す図である。図4は、実施例1で得られた銀ナノ粒子が担持しているチタニアナノ粒子について、TEM観察を行った結果を表す。Agは、凝集した二次粒子において10nm~20nmであった。 比較態様を表す図である。図5は、比較例1で得られた金属Agが担持された分散液について、TEM観察を行った結果を表す。Agは、一次粒子40nm~50nmのAgナノ粒子の凝集体の形態であった 比較態様を表す図である。図6は、比較例3で得られたチタニア水分散液である。チタニア水分散液は、上澄み及び沈殿が見られた。
以下に本発明を詳細に説明する。
本明細書において、「含む」及び「含有」は、「含む(comprise)」、「実質的にのみからなる(consist essentially of)」、及び「のみからなる(consist of)」のいずれも包含する概念である。
本明細書において、数値範囲を「A~B」で示す場合、「A以上、B以下」を意味する。
1.チタニアナノ粒子(銀担持チタニアナノ粒子)の製造方法
本発明のチタニアナノ粒子の製造方法は、
チタン(チタニアナノ粒子)の水分散液に、銀(金属銀、銀粒子)を加えて撹拌し、チタンに銀を担持させる工程を含み、
前記チタンは、表面に存在する少なくとも一部のチタン原子にアセトキシ基が結合しており、示差熱熱重量同時測定装置によって600℃まで昇温させた場合の200℃以上における質量減少が5質量%以上のものである。
本発明のチタニアナノ粒子の製造方法は、
(A)チタンを含む物質、有機酸、及び水を混合して、水分散液を得る工程、
(B)前記工程(A)で得られた水分散液を、80℃より高い温度で、加熱する工程、及び
(C)前記工程(B)の後、前記水分散液に、銀(金属銀、銀粒子)を混合し、当該銀含有水分散液に対して、可視光若しくは紫外光を照射し、チタン(チタニアナノ粒子)に銀(金属銀、銀粒子)を担持させる工程
を備える。
本明細書において、「酸化チタン」又は「チタニア」は、二酸化チタン(TiO)のみを指すものではなく、三酸化二チタン(Ti)、一酸化チタン(TiO)、Ti、Ti等に代表される二酸化チタンから酸素欠損した組成のもの等も含む。「酸化チタン」又は「チタニア」は、末端OH基に代表される様に、一部酸化チタンの合成に起因するTi-O-Ti以外の基を含んでいても良い。「酸化チタン」又は「チタニア」は、末端OH基に有機酸等が結合したものも含む。
本発明のチタニアナノ粒子(銀担持チタニアナノ粒子)は、チタニアナノ粒子の表面に銀ナノ粒子が担持された複合体であって、前記チタニアナノ粒子は、表面に存在する少なくとも一部のチタン原子にアセトキシ基が結合しており、前記チタニアナノ粒子を示差熱熱重量同時測定装置によって600℃まで昇温させた場合の200℃以上における質量減少が5質量%以上である。
従来、この様な複合体を合成する場合、酸化チタンと銀塩を水中で共存させ、還元剤を加えるか、光を照射する事が殆どである。
本発明のチタニアナノ粒子(複合体)の製造方法では、チタンを含む物質として、好ましくは、酸化チタンを用いる。酸化チタンについては、好ましくは、粒径が1nm~10nmであり、比表面積が大きく、且つ、表面にアセトキシ基が結合した酸化チタンを、水分散液の形で使用する。
本発明のチタニアナノ粒子(複合体)の製造方法では、銀については、銀塩、銀ナノ粒子等を用いず、好ましくは、金属銀を用い、チタンを含む物質と共存させて撹拌する。
本発明のチタニアナノ粒子の製造方法では、金属銀から微量の銀イオンが徐放され、それが広大な比表面積の酸化チタンの表面において銀ナノ粒子として析出する。本発明のチタニアナノ粒子の製造方法では、従来技術に比べて、より微細な銀ナノ粒子が酸化チタンの表面に担持される。
(1)チタニアナノ粒子
通常、水、無機酸、遊離した有機酸等は、200℃以下で殆ど揮発する。
一方、本発明の金属担持チタニアナノ粒子を構成するチタニアナノ粒子は、表面に存在する少なくとも一部のチタン原子にアセトキシ基が結合している事から、200℃~600℃の範囲で、チタン原子に結合しているアセトキシ基が徐々に脱離する。
本発明の金属担持チタニアナノ粒子を構成するチタニアナノ粒子は、表面に存在する少なくとも一部のチタン原子にアセトキシ基が結合している事から、乾燥時又は焼成時に、チタニアナノ粒子同士の凝集を抑制出来る為、クラック、剥がれ等が起こり難く、特に塗布性及び透明性に優れる。
チタニアナノ粒子は、クラック、剥がれ等を抑制する事が出来、更に、後述の金属を強固に担持させ易い結果、可視光触媒活性にも優れる。
従来、表面にアセトキシ基を有していると、可視光触媒活性は低下する。
チタニアナノ粒子は、前記説明の通り、乾燥時又は焼成時に、チタニアナノ粒子同士の凝集を抑制出来る為クラック、剥がれ等の抑制効果が特に優れているとともに、後述の金属を強固に担持させやすいためアセトキシ基を有しているにもかかわらず、可視光触媒活性も向上させる事が出来る。
チタニアナノ粒子は、表面に存在するチタン原子にアセトキシ基が大量に結合している事が好ましい。表面に存在する少なくとも一部のチタン原子にアシルオキシ基が存在している場合は、前記説明の通り、200℃~600℃の範囲で、チタン原子に存在しているアシルオキシ基が徐々に離脱する事から、示差熱熱重量同時測定装置(TG-DTA)に依って昇温させた場合に、200℃以上での質量減少が大きい。
本発明では、チタニアナノ粒子は、示差熱熱重量同時測定装置(TG-DTA)に依って昇温させた場合に、200℃以上での質量減少は、表面に存在するチタン原子にアセトキシ基が結合している数の指標を意味している。この為、チタニアナノ粒子は、示差熱熱重量同時測定装置(TG-DTA)に依って600℃まで昇温させた場合の200℃以上における質量減少は、5質量%以上であり、好ましくは、7質量%~20質量%である。この際、示差熱熱重量同時測定装置(TG-DTA)の詳細な条件は、雰囲気:空気、昇温速度:3℃/分である。
チタニアナノ粒子は、前記説明の通り、表面に存在する少なくとも一部のチタン原子にアセトキシ基が結合しているものである。チタニアナノ粒子は、他のアシルオキシ基が存在していても良い。他のアシルオキシ基として、例えば、モノカルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸等が挙げられ、ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、乳酸、3-ヒドロキシ酪酸等が挙げられる。チタニアナノ粒子に、他のアシルオキシ基として、例えば、乳酸を併用若しくは後添加する事に依り、透明性を更に増すことができる。
チタニアナノ粒子の平均粒子径は、好ましくは、1nm~10nmであり、より好ましくは、2nm~6nmである。チタニアナノ粒子の平均粒子径は、電子顕微鏡(TEM)観察により測定する。
本発明では、チタニアナノ粒子の平均粒子径をこの範囲とする事に依り、金属(銀及び銅)を適度且つより強固に担持させ易く、可視光触媒活性がより高く、且つ透明性のより高い膜が形成し易い。
チタニアナノ粒子は、一般に、平均粒子径が小さい場合、加熱時の収縮が大きい為、クラックや基板からの剥離が起こす傾向が有る。
本発明の金属担持チタニアナノ粒子は、平均粒子径が小さいチタニアナノ粒子を使用した場合にも塗布性に優れる材料である。
チタニアナノ粒子の比表面積は、好ましくは、150m/g~500m/gであり、より好ましくは、200m/g~400m/gである。チタニアナノ粒子の比表面積は、BET法により測定する。
本発明では、チタニアナノ粒子の比表面積をこの範囲とする事に依り、金属(銀及び銅)を適度且つより強固に担持させやすく、可視光触媒活性を高くし易い。
チタニアナノ粒子は、N、Cl及びS元素の濃度を、いずれも、好ましくは、0ppm~5000ppm、更に好ましくは、0ppm~1000ppmとする事が出来る。チタニアナノ粒子のN、Cl及びS元素の濃度は、WDX(蛍光X線)により測定する。
本発明では、チタニアナノ粒子のN、Cl及びS元素の濃度をこの範囲とする事に依り、基材の腐食等を抑え易い。この条件は、TiCl、TiOSO等の酸性チタニア前駆体由来の不純物が存在しないか、又はごく少量であることを意味している。
チタニアナノ粒子の結晶形は、アナターゼ型が好ましい。本発明では、アナターゼ型を採用する事により、可視光触媒活性を特に向上させる事が出来る。チタニアナノ粒子の結晶形は、また、同様の理由から、アナターゼ型以外の結晶形は存在せず、アナターゼ型100%であることが好ましい。
(2)金属担持チタニアナノ粒子及び光触媒の製造方法
本発明では、銀をチタニアナノ粒子に担持させる方法として、金属銀とチタニアナノ粒子とを可視光若しくは紫外光の存在下で混合する。
具体的には、本発明の金属担持チタニアナノ粒子及び光触媒は、
(A)チタンを含む物質、有機酸及び水を混合して水分散液を得る工程と、
(B)前記工程(A)で得られた水分散液を、80℃より高い温度で、加熱する工程と、
(C)前記工程(B)で得られた水分散液と、銀を可視光若しくは紫外光存在下で混合する工程
を備える方法により製造する事が出来る。
工程(C)は、加熱する事に依り、担持効率を向上させる事が可能である。加熱温度を高温にすると、チタニアナノ粒子の水和水が外れ、高粘度化が生じたり、分散性が低下したりする傾向が有る。工程(C)の反応温度は、通常、0℃~100℃であり、好ましくは、10℃~50℃であり、より好ましくは、15℃~40℃である。
(2-1)工程(A)
工程(A)では、チタンを含む物質、有機酸及び水を混合して水分散液を得る。
使用するチタンを含む物質としては、加熱により酸化チタンとなる物質であれば特に制限はない。つまり、チタンを含む物質としては、好ましくは、酸化チタン及び/又は酸化チタン前駆体である。チタンを含む物質としては、好ましくは、具体的には、酸化チタン;水酸化チタン;チタンアルコキシド;三塩化チタン、四塩化チタン等のハロゲン化チタン(特に塩基で中和したもの);金属チタン等が挙げられる。これらのチタンを含む物質は単独で用いる事も出来、2種以上を組合せて用いる事も出来る。
これらチタンを含む物質の中でも、得られるチタニアの分散性、塗布性及び可視光触媒性の観点から、好ましくは、チタンアルコキシド、水酸化チタン又はハロゲン化チタン(特に塩基で中和したもの)であり、更に、純度、分散性、塗布性、透明性及び可視光触媒性の観点から、より好ましくは、チタンアルコキシドである。
チタンアルコキシドとしては、好ましくは、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラn-ブトキシド、チタンテトラn-プロポキシド、チタンテトラエトキシド等が挙げられ、更に、コスト、副生成物の水溶性、塗布性及び可視光触媒性の観点から、より好ましくは、チタンテトライソプロポキシドである。
チタンアルコキシドと有機酸との組合せによっては、得られるチタニアを触媒として水に溶けにくいエステル化合物が遊離する傾向が有るが、チタニア自身には問題はない。例えば、チタンテトラn-ブトキシドと酢酸の組合せにおいて、混合し加熱した段階で酢酸ブチルが生じ遊離する傾向が有る。
均一な分散液を得る観点からは、好ましくは、水溶性に優れる有機酸アルコキシドが得られる有機酸とチタンアルコキシドとの組合せを採用する。
ハロゲン化チタン(四塩化チタン、三塩化チタン等)については、不純物(ハロゲン)、量産時の反応器の腐食、結晶性制御、塗布性、透明性及び可視光触媒性の観点から、好ましくは、ハロゲン化チタンを塩基で中和し、沈殿物の洗浄を行ってから用いる。その場合、得られるチタニアの分散性の観点から、好ましくは、その洗浄を行ったハロゲン化チタンを、乾燥を行わずに用いる。
チタンを含む物質として、酸化チタン、金属チタン等の固体を用いる場合は、平均粒子径は、好ましくは、10nm以下であり、より好ましくは、6nm以下である。チタンを含む物質の平均粒子径は、下限値は特に設定されないが、通常1nm程度である。酸化チタン、金属チタン等の固体の平均粒子径は、電子顕微鏡(TEM)観察により測定する。チタンを含む物質の粒径が大きい場合、遊星ボールミル、ペイントシェーカー等を用いて、乾式又は湿式で粉砕して用いる事が出来る。
工程(A)で生成する分散液中のチタンを含む物質の濃度は、生産性、反応液の粘度、塗布性、透明性及び可視光触媒性の観点から、好ましくは、0.01mol/L~5mol/Lであり、より好ましくは、0.05mol/L~3mol/Lである。
反応に使用する酸は、有機酸であり、好ましくは、揮発性の有る酸であり、具体的には、より好ましくは、酢酸である。反応に使用する酸は、例えば、酢酸に、ギ酸、乳酸、酪酸、ヒドロキシ酪酸等を併用しても良い。
有機酸の使用量は、分散性、塗布性、透明性、可視光触媒性及びコストの観点から、チタンを含む物質中のチタン1モルに対して、アセトキシ基のモル数が、好ましくは、1モル以上であり、より好ましくは、1.5モル以上と成る様に調整する。有機酸を多く用いる程、経時安定性、塗布性、透明性等を向上させ易い。有機酸の使用量の上限値は、特に制限されない。有機酸の使用量の上限値は、チタンを含む物質中のチタン1モルに対して、アセトキシ基のモル数が、好ましくは、10モル以下と成る様に調整する。
工程(A)で得られる分散液中の有機酸(酢酸等)の濃度は、分散性、塗布性、透明性、可視光触媒性及びコストの観点から、好ましくは、0.02mol/L~10mol/Lであり、より好ましくは、0.1mol/L~7mol/Lである。
本発明では、工程(A)の水分散液は、好ましくは、水を50質量%以上含む。反応溶媒としては、好ましくは、水等の水性溶媒を主成分として用いる。反応溶媒としては、水等の水性溶媒を、具体的には、例えば、50質量%以上として用いる。反応溶媒としては、反応時にアルコール又はエステルを含んでいても良い。
例えば、チタンテトライソプロポキシドを原料として用いた場合、有機酸との反応に依りイソプロピルアルコールが生じる。また、加熱により有機酸のイソプロピルエステルが生じる事も有る。
工程(A)により得られる分散液中には、アルコール又はエステルを投入しても良いし、反応系中で発生していても良い。このアルコール又はエステルについては、100℃以下の開放系における加熱に依り除去しても良いし、減圧に依り除去しても良いし、反応液中に残留していても良い。
分散液中にアルコールが含まれる場合には、得られるチタニアナノ粒子及び本発明の銀担持チタニアナノ粒子の平均粒子径が小さくなる傾向に有り、平均粒子径を制御する為に、意図的にアルコールを添加しても良い。
本発明では、一般に、チタニアナノ粒子の水熱合成反応に用いる事が多い硝酸、塩酸、硫酸等の無機酸(特に無機強酸)は、得られるチタニアナノ粒子の結晶形がアナターゼ型の他に、ブルッカイト型も混在するだけでなく、得られる分散液の貯蔵安定性、装置の腐食、不純物、排水等の観点からも、原則用いないことが好ましい。
本発明では、原料の分散性、透明性、均一性等を高め取扱いを容易にする場合には、効果を損なわない範囲で、無機酸を、例えば、0.01mol/L以下の範囲で補助的に使用する事も出来る。この場合、工程(A)で得られる分散液中のN、Cl及びS元素の濃度がいずれも0.01mol/L以下となる。
工程(A)で得られる水分散液のpHは、装置の腐食や取扱いの安全性、分散性等の観点から、好ましくは、2以上、6未満である。水分散液のpHは、より好ましくは、2以上、5以下であり、更に好ましくは、2.1以上、5以下である。
工程(A)において、水分散液の作製方法は、特に制限は無い。工程(A)の水分散液の作製方法は、チタンを含む物質、有機酸及び水(溶媒)を同時に混合しても良いし、逐次混合してもよい。工程(A)の水分散液の作製方法は、例えば、量産スケールにおいては、凝集して大きな塊を形成し難く、攪拌を継続し易い観点から、好ましくは、有機酸及び水(溶媒)を混合した後に、攪拌しながらチタンを含む物質を投入する。工程(A)の水分散液の作製方法は、例えば、ラボスケールにおいては、好ましくは、チタンを含む物質及び有機酸を混合した後に、攪拌しながら水を投入する。
(2-2)工程(B)
工程(B)では、工程(A)で得られた水分散液を、80℃より高い温度で、好ましくは、1時間以上加熱する。
工程(B)は、常圧下に行っても良いし、密閉容器内で加圧下に行っても良い。工程(B)は、チタニアナノ粒子及び本発明の金属ナノ粒子担持チタニアナノ粒子の平均粒子径を小さくする観点から、好ましくは、常圧下に行い、具体的には、0.09MPa~0.11MPaの条件で行う。なお、工程(B)は、加圧下に行う場合では、可視光触媒活性が高く、且つ透明性の高い膜が形成し易い観点から、好ましくは、0.2MPa以下、より好ましくは、0.11MPa~0.2MPaにおいて、短時間(例えば5~30分程度)の反応を行う。
工程(B)の加熱の際には、チタンを含む物質と有機酸(酢酸等)と水とを十分に反応させる観点から、好ましくは、撹拌して行う。攪拌の方法は、特に制限は無く、常法に従う事が出来る。
攪拌時間(反応時間)は、チタンを含む物質と有機酸(酢酸等)と水とを十分に反応させる観点から、好ましくは、1時間以上であり、より好ましくは、1.5時間以上である。攪拌時間の上限値は、特に制限されないが、通常240時間である。
工程(B)の加熱は、80℃より高い温度で行い、好ましくは、82℃以上の温度で行う。加熱温度を80℃より高い温度に設定する事に依り、得られる金属担持チタニアナノ粒子の結晶化及び表面の官能基反応が完結し、反応液の経時安定性にも優れる。一方、加熱温度が80℃以下では、クラックが発生し易く、塗布性に劣り、直ぐに脱落する事から、塗膜を形成する事が困難と成る。なお、加熱温度の上限値は、特に制限は無く、常圧で反応する場合は、通常120℃である。
工程(B)で得られる水分散液のpHは、装置の腐食防止、装置の取扱いの安全性、水分散液の分散性等の観点から、好ましくは、2以上、6未満である。水分散液のpHは、より好ましくは、2以上、5以下であり、更に好ましくは、2.1以上、5以下である。
(2-3)工程(C)
工程(C)では、工程(B)で得られた水分散液と、銀(金属銀、銀粒子)とを、紫外光若しくは可視光存在下で混合する。
工程(C)では、銀は、好ましくは、粒径が1μm以上、1mm以下の銀粒子である。銀の粒子を使用する場合、粒径は、コストの観点から、好ましくは、1μm~1mmである。
工程(C)で得られる水分散液のpHは、装置の腐食防止の観点から、好ましくは、1以上、4以下である。
工程(C)の反応が進むと、反応液は、粒径が小さい銀ナノ粒子を示す黄色に着色する。
工程(C)の後、チタニアナノ粒子に銀が担持されており、チタニアナノ粒子は、表面に存在する少なくとも一部のチタン原子にアセトキシ基が結合しており、示差熱熱重量同時測定装置によって600℃まで昇温させた場合の200℃以上における質量減少が5質量%以上のものである、チタニアナノ粒子を得る事が出来る。
本発明の金属担持チタニアナノ粒子(銀が担持しているチタニアナノ粒子)では、チタニアナノ粒子に担持された銀(金属銀、銀粒子)の粒径は、好ましくは、20nm以下である。チタニアナノ粒子に担持された銀の粒径が前記範囲に収まる事に依り、金属担持チタニアナノ粒子は透明性を有し、経時安定性が高。また、チタニアナノ粒子に担持された銀の粒径が極めて小さい事に依り、優れた抗菌性を発揮する。
2.銀ナノ粒子担持チタニアナノ粒子分散液
本発明の金属担持チタニアナノ粒子分散液(特に光触媒分散液、更には可視光応答型光触媒分散液)は、上記工程(A)と、工程(B)と、工程(C)とを経た反応液を用い、必要に応じて超音波分散等の分散工程を加える事に依り、更に均一な分散液を作製出来る。
本発明では、工程(C)の前に、金属担持チタニアナノ粒子分散液の分散が十分に行われており、強い分散、分散剤の添加等は必ずしも必要では無なく、透明性の有る金属担持チタニアナノ粒子分散液が得る事が出来る。
本発明の金属担持チタニアナノ粒子分散液は、分散性が良い結果、コーティングの耐クラック性に優れる。本発明の金属担持チタニアナノ粒子分散液は、分散剤を加えなくてもよい結果、緻密なチタニアのコーティングが可能に成り、塗布性及び透明性に優れる上に、可視光触媒活性にも優れる。
工程(C)の後で、金属担持チタニアナノ粒子分散液の濡れ性を高めコーティングし易くする目的と、銀の安定性を高める目的で、有機溶媒を加えても良い。
分散液に使用する有機溶媒としては、好ましくは、アルコール、エーテル、ケトン等が挙げられる。有機溶媒は、チタニアとの親和性の観点から、より好ましくは、炭素数が4以下のアルコール類である。
アルコールとしては、好ましくは、例えば、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール等の一価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール等が挙げられる。
エーテルとしては、好ましくは、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、3-メトキシ-1,2-プロパンジオール、1,3-ジメトキシ-2-プロパノール、トリメトキシメタン等が挙げられる。
ケトンとしては、好ましくは、例えば、アセチルアセトン等が挙げられる。
これらの有機溶媒は、単独で用いる事も出来、2種以上を組合せて用いる事も出来る。
分散液に使用する有機溶媒の中でも、より好ましくは、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、2-ブタノール、tert-ブチルアルコール等である。
本発明のコーティング液を塗布する際の安全性、及びチタニアとの親和性の観点では、分散液に使用する有機溶媒は、好ましくは、少なくとも、エタノール、2-プロパノール、1-プロパノール等を含む。本発明では、有機溶媒の総量を100質量%として、エタノール、2-プロパノール、1-プロパノールの和が、好ましくは、50質量%~100質量%であり、より好ましくは、60質量%~100質量%である。
本発明の銀担持チタニアナノ粒子分散液は、用途に応じて粘度を調整し、塗料とする事が出来る。銀担持チタニアナノ粒子分散液の塗布に、スピンコート、ディップコート、スプレー等に用いる場合は、銀担持チタニアナノ粒子分散液は、低粘度である事が好ましい。銀担持チタニアナノ粒子分散液の塗布に、刷毛塗り、スキージ法等に用いる場合は、銀担持チタニアナノ粒子分散液は、それより粘度を高く調整する事が好ましい。銀担持チタニアナノ粒子分散液の塗布に、スクリーン印刷に用いる場合は、銀担持チタニアナノ粒子分散液は、更に粘度を高く調製し、流動性を抑制する事が好ましい。この様にして得られる本発明の塗膜は、緻密なコーティングである。
この様にして得られる本発明の塗膜を備える塗装製品としては、特に制限されない。本発明の塗装製品としては、例えば、建材、建物外装、建物内装、窓枠、窓ガラス、各種レンズ、構造部材、住宅等建築設備、調理器具、繊維製品、家具、ディスプレイ、ディスプレイ保護フィルム、水回り部材、車両用照明灯のカバー及び窓ガラス、機械装置又は物品の外装、防塵カバー及び塗装、表示機器、そのカバー、交通標識、各種表示装置、広告塔等の表示物、道路用及び鉄道用等の遮音壁、橋梁、ガードレールの外装及び塗装、トンネル内装及び塗装、碍子、太陽電池カバー、太陽熱温水器集熱カバー等外部で用いられる電子、電気機器の外装部、特に透明部材、ビニールハウス、温室等の外装等が挙げられる。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明する。
本発明は、これらのみに限定されるものではない。
[実施例1]
チタンテトライソプロポキシド142.1g(0.5mol)に、酢酸120g(2mol)を加え、60分撹拌し、水を538g加えた。この分散液は、チタンテトライソプロポキシドの濃度が0.625mol/Lであり、酢酸の濃度が2.5mol/Lであり、pHが2.2であった。
この分散液では、半透明の沈殿が大量に発生したが、60分間撹拌した後に、加熱を行ったところ、70℃で沈殿が全て溶解した。なお、この分散液において、無機酸の濃度、N、Cl及びS元素の濃度は、いずれも0mol/Lであった。
その後、常圧(0.10MPa)で、99℃で3時間撹拌したところ、有機分散剤を使うこと無く半透明の均一なチタニア分散液が得られた。
この分散液に超音波分散を加えたところ、粘度が低減され、透明性が増した。この分散液のpHは2.2であった。
この分散液を乾燥し、チタニアナノ粒子を得た。このチタニアナノ粒子について、BET比表面積を測定したところ、BET比表面積は256m/gであった。また、TEM観察を行ったところ、平均粒子径は約3nmであった。また、得られたチタニアナノ粒子について、X線回折で結晶性を解析したところ、アナターゼ型100%であり、他の結晶形は存在しなかった。
この分散液を、水分計を用いて、200℃で保持し、質量減少がなくなるまで乾燥したチタニアナノ粒子のTG-DTAを、空気雰囲気下3℃/分の昇温条件で600℃まで昇温させて測定したところ、200℃以上での質量減少は13質量%であった。この200℃以上での質量減少は、有機酸である酢酸の脱離に起因する。遊離した酢酸は、200℃以下で殆ど揮発する事から、200℃以上における質量減少が13質量%である事は、チタニアナノ粒子表面にアシルオキシ基である大量のアセチル基が-OCOCHの形でチタン原子と結合している事を示唆している。
空気雰囲気下において、この分散液50g(チタニア5.0質量%)に等量の水を加え、2.5質量%の分散液を100g作製した。
この分散液に対して、銀粒子(50μm)0.125gを加え、室内で撹拌した。紫外光は照射せず、室内光(約1000lx)のみで、チタニアナノ粒子に銀粒子を担持させる反応を行った。3時間後、分散液は、黄色味を帯びてチタニアナノ粒子に銀ナノ粒子が担持されていることが分かった。
銀ナノ粒子が担持しているチタニアナノ粒子を80℃減圧下で乾燥し、得られた粉末をXRD(X線回折)で分析したところ、2θ=44-45°及び64-65°にピークが見られ、金属Agが生成している事が分かった。また、半定量分析に依り、TiOに対してAgは約0.2質量%担持されている事が分かった。
また、ESCA(X線光電子分光法)分析に依り、Binding Energy(束縛エネルギー):368.1eVであり、金属Agが生じていると推定された(図1)。
余剰のAgを除去したところ、分散液は均一であり、3か月後も均一性と透明性を維持していた(図2)。
合成した材料についてTEM観察を行ったところ、Agは一次粒子3nm~7nmであり、凝集した二次粒子であっても精々10nm~20nmであることがわかり、液の色との整合性が見られた(一般的に銀ナノ粒子は30nm以下で黄色であり、粒径が大きくなると赤みが増し、オレンジ色に変化する)(図3、図4)。
[比較例1]
銀粒子0.125gに変えて酢酸銀0.193gを使用する事以外は、実施例1と同様に紫外光は照射せず、室内光(約1000lx)のみで反応を行った。
比較例1では、その結果、8時間後に薄い青紫色を帯びた金属Agが担持された分散液が得られた。比較例1では、TEM分析の結果、Agは一次粒子40nm~50nmのAgナノ粒子の凝集体の形態であった(図5)。比較例1では、分散液は、反応後均一であったが、1週間後に濁りが見られ、3か月後にわずかに上澄みが見られた。
[比較例2]
分散液50g(チタニア5.0質量%)に変えて、市販のチタニア(P25:日本アエロジル製)2.5gと水47.5gとの混合物を用いる事以外は、実施例1と同様に試験を行った。
比較例2では、3時間後色に変化はなく、攪拌を60時間まで延長したが変化が起こらなかった。比較例2では、分散液を4時間静置したところ、上澄みと沈殿が見られた。
[比較例3]
分散液50g(チタニア5.0質量%)に変えて、市販のチタニア(P25:日本アエロジル製)2.5gと酢酸7.5gと水40gとの混合物を用いる事以外は、実施例1と同様に試験を行った。
比較例3では、3時間後色に変化はなく、攪拌を60時間まで延長したが変化が起こらなかった。比較例3では、分散液を4時間静置したところ、上澄みと沈殿が見られた(図6)。
本発明のチタニアナノ粒子の製造方法では、安全性が低く変質し易い銀塩を使用せずとも、簡易に均一且つ透明性が高く、保存安定性も良い銀担持酸化チタンナノ粒子分散液を得る事が出来る。
本発明のチタニアナノ粒子の製造方法に依り得られる銀担持酸化チタンナノ粒子分散液は、基材密着性、及び耐クラック性が高く、これを用いて、透明の高い光触媒塗膜を得る事が出来る。

Claims (6)

  1. チタニアナノ粒子の製造方法であって、
    チタニアナノ粒子の水分散液に、銀粒子を加えて撹拌し、チタニアナノ粒子に銀を担持させる工程を含み、
    前記チタニアナノ粒子は、表面に存在する少なくとも一部のチタン原子にアセトキシ基が結合しており、示差熱熱重量同時測定装置によって600℃まで昇温させた場合の200℃以上における質量減少が5質量%以上のものである、
    製造方法。
  2. チタニアナノ粒子の製造方法であって、
    (A)チタンを含む物質、有機酸、及び水を混合して、水分散液を得る工程、
    (B)前記工程(A)で得られた水分散液を、80℃より高い温度で、加熱する工程、及び
    (C)前記工程(B)の後、前記水分散液に、銀を混合し、当該銀含有水分散液に対して、可視光若しくは紫外光を照射し、チタンに銀を担持させる工程
    を備える、製造方法。
  3. 前記工程(A)の水分散液は、水を50質量%以上含むものである、請求項2に記載の製造方法。
  4. 前記工程(A)及び(B)の水分散液のpHは、2以上、5以下である、請求項1~3の何れか1項に記載の製造方法。
  5. 前記銀は、粒径が1μm以上、1mm以下の銀粒子である、請求項1~4の何れか1項に記載の製造方法。
  6. チタニアナノ粒子であって、
    チタニアナノ粒子に銀が担持されており、
    前記チタニアナノ粒子は、表面に存在する少なくとも一部のチタン原子にアセトキシ基が結合しており、示差熱熱重量同時測定装置によって600℃まで昇温させた場合の200℃以上における質量減少が5質量%以上のものである、
    チタニアナノ粒子。
JP2022055365A 2022-03-30 2022-03-30 チタニアナノ粒子、及びその製造方法 Pending JP2023147700A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022055365A JP2023147700A (ja) 2022-03-30 2022-03-30 チタニアナノ粒子、及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022055365A JP2023147700A (ja) 2022-03-30 2022-03-30 チタニアナノ粒子、及びその製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2023147700A true JP2023147700A (ja) 2023-10-13

Family

ID=88288413

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2022055365A Pending JP2023147700A (ja) 2022-03-30 2022-03-30 チタニアナノ粒子、及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2023147700A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4974459B2 (ja) 光触媒性TiO2層を含む支持体
US7449245B2 (en) Substrates comprising a photocatalytic TiO2 layer
JP5512934B2 (ja) 非晶質のZr−O系粒子を分散質とするゾル、その製造方法、このゾルをバインダーとする光触媒体コーティング液、およびその光触媒体コーティング液を塗布した光触媒機能製品の製造方法
US11059036B2 (en) Mixture of visible light-responsive photocatalytic titanium oxide fine particles, dispersion liquid thereof, method for producing dispersion liquid, photocatalyst thin film, and member having photocatalyst thin film on surface
EP2133311B1 (en) Zirconium oxalate sol
WO2011145385A1 (ja) 可視光応答型酸化チタン系微粒子分散液及びその製造方法
JP6245832B2 (ja) チタニアナノ粒子及びチタニア分散液の製造方法
JP5212353B2 (ja) 可視光応答型酸化チタン系微粒子分散液およびその製造方法
JP2002038054A (ja) 酸化チタン膜形成用塗布剤、酸化チタン膜形成方法及び光触媒
EP2644662B1 (en) Hybrid photocatalytic coatings, method for applying said coatings to different substrates and uses of the substrates thus coated
JP5282735B2 (ja) 可視光応答型酸化チタン系微粒子分散液およびその製造方法
JP5343604B2 (ja) 酸化チタン系光触媒薄膜の製造方法
EP2900843B1 (en) Coatable composition, photocatalytic articles, and methods of making the same
JP7088082B2 (ja) 酸化チタン微粒子混合物、その分散液、光触媒薄膜、光触媒薄膜を表面に有する部材及び酸化チタン微粒子分散液の製造方法
JP5313051B2 (ja) 蓚酸ジルコニウムゾル
JP7224767B2 (ja) チタニアナノ粒子及びそれを用いた紫外線遮蔽材
JP2023147700A (ja) チタニアナノ粒子、及びその製造方法
JP7206056B2 (ja) 光触媒
JP2022156812A (ja) 酸化亜鉛ナノ粒子の製造方法
JP3806998B2 (ja) 光触媒組成物とその形成剤および光触媒組成物付き基体
JP2022155211A (ja) 金属担持チタニアナノ粒子及びその製造方法
JPWO2012046493A1 (ja) ルチル型酸化チタン微粒子分散液、その製造方法及び該ルチル型酸化チタン薄膜を表面に有する部材
JP2022156818A (ja) 複合ナノ粒子
JP2021154233A (ja) 金属ナノ粒子担持チタニアナノ粒子及びそれを用いた光触媒
JP4034885B2 (ja) 光触媒性塗料組成物