JP2023145047A - 導電性ペーストとこれを用いた電子部品の製造方法 - Google Patents

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Kazuhisa Ohashi
亮 渡部
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Abstract

【課題】低ずり速度領域における粘度の増大が抑えられ、平滑な導体膜を形成することができる導電性ペーストを提供する。【解決手段】本発明により、表面にアミン系有機物が付着した導電性粒子を含む導電性粉末と、1級アミン化合物およびアルミニウムキレート化合物のうちの少なくとも一方からなる添加剤と、溶剤と、を含む導電性ペーストが提供される。上記導電性ペーストの全体を100質量%としたときに、上記添加剤の割合が、0.2質量%以上である。【選択図】図1

Description

本発明は、導電性ペーストとこれを用いた電子部品の製造方法に関する。
積層セラミックコンデンサ(Multi-Layer Ceramic Capacitor:MLCC)等の電子部品の製造では、基材上に導電性ペーストを付与して導体膜を形成し、これを焼成することによって電極層を形成する手法が広く用いられている。
近年では、各種電子機器の小型化や高性能化に伴って、電子機器に実装される各電子部品にも薄型化や小型化、高密度化が求められている。例えばMLCCでは、内部電極層の一層分の厚みを薄くして積層数を増やすことにより、MLCCの体積を小型化しつつ静電容量を増大することが求められている。特許文献1~5には、この種の用途に用いられる導電性ペーストが開示されている。
特開2009-170242号公報 特許第3744439号公報 特許第6939015号公報 特開2010-064983号公報 特開2021-155836号公報
昨今では、内部電極層をさらに薄層化するため、導電性粉末を例えば100nm以下、さらには80nm以下にまで微粒化することが検討されている。しかし、本発明者らの検討によれば、微粒化された導電性粉末では、導電性ペーストの粘度が増大する。かかる傾向は、特にせん断速度(ずり速度)が低い低ずり速度領域でより顕著なものとなり得る。これにより、導電性ペーストの塗工性(例えば印刷性)やハンドリング性が悪化すると、導体膜の表面が荒れて凹凸が大きくなる。その結果、MLCCの積層構造に歪みが生じ、ショート不良等の不具合を招来することがあり得る。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、低ずり速度領域における粘度の増大が抑えられ、平滑な導体膜を形成することができる導電性ペーストを提供することにある。
本発明により、表面にアミン系有機物が付着した導電性粒子を含む導電性粉末と、1級アミン化合物およびアルミニウムキレート化合物のうちの少なくとも一方からなる添加剤と、溶剤と、を含む導電性ペーストが提供される。上記導電性ペーストの全体を100質量%としたときに、上記添加剤の割合が、0.2質量%以上である。
上記導電性ペーストによれば、導電性粒子の表面のアミン系有機物と、添加剤(すなわち、1級アミン化合物およびアルミニウムキレート化合物のうちの少なくとも一方)とが何らか相互作用して、導電性粒子を分散安定化させると考えられる。これにより、例えば、上記添加剤にかえて2級または3級アミン化合物やジルコニウムキレート化合物を添加した場合と比較して、せん断速度0.04s-1程度の低ずり速度領域においても、ペーストの粘度の増大を好適に抑えることができる。その結果、導電性ペーストの塗工性やハンドリング性を向上でき、相対的に表面が平滑な導体膜を形成できる。
なお、特許文献4や、本願出願人の先願である特許文献5には、ニッケル化合物と還元剤としてのアミン化合物とを液相反応させることよって、表面にアミン系有機物が付着(あるいは配位)したニッケル粒子を製造することが記載されている。このとき仮に還元剤として使用したアミン化合物が未反応のまま残ってニッケル粒子に付着したとしても、これら特許文献にも記載されるように、例えばニッケル粒子を有機溶媒で洗浄することにより、付着したアミン化合物は容易に除去される。したがって、製造時に使用した未反応のアミン化合物が非意図的に導電性ペーストに混入することは考えにくい。また仮に、導電性ペースト中で、ニッケル粒子の表面のアミン系有機物がニッケル粒子の表面から一部遊離したとしても、0.2質量%以上という高濃度にはなり得ない。すなわち、1級アミン化合物を添加剤とする場合、ここに開示される技術の特徴を備えるためには、導電性ペーストに意図的に1級アミン化合物を添加することが必要である。
ここに開示される導電性ペーストの好適な一態様では、上記1級アミン化合物の炭素数が、5~25である。これにより、導電性粉末の凝集を好適に抑制でき、低ずり速度領域における粘度の増大をより高いレベルで抑えることができる。
ここに開示される導電性ペーストの好適な一態様では、上記アルミニウムキレート化合物が、中心原子としてのアルミニウムと、配位子としての少なくとも1つのアセトネート基と、を含むキレート化合物である。なかでも、上記アルミニウムキレート化合物が、次の化学式(1):
Figure 2023145047000002
(ただし、化学式(1)中のR1~R3は、それぞれ独立して、アルキル基またはアルコキシル基である。);で表される化合物であることが好ましい。さらに、上記R1~R3のうちの2つ以上がアルコキシル基であることが好ましい。これにより、導電性粉末の凝集を好適に抑制でき、低ずり速度領域における粘度の増大をより高いレベルで抑えることができる。
ここに開示される導電性ペーストの好適な一態様では、上記導電性粉末は、電界放出型走査電子顕微鏡観察に基づく個数基準の平均粒子径が、80nm以下である。このような微粒化された導電性粉末を用いる場合、とりわけ低ずり速度領域の粘度が増加しやすい。したがって、ここに開示される技術を適用することが特に効果的である。
ここに開示される導電性ペーストの好適な一態様では、上記導電性粒子が、ニッケル系粒子を含む。これにより、導電性とコストとのバランスに優れた電極層を実現することができる。
ここに開示される導電性ペーストの好適な一態様では、25℃において、レオメーターを用いてせん断速度0.04s-1で測定される粘度が、1700Pa・s以下である。これにより、導電性ペーストの塗工性やハンドリング性が良好となり、基材上に安定して導体膜を形成できる。
ここに開示される導電性ペーストは、積層セラミック電子部品の内部電極層を形成するために用いることができる。上記導電性ペーストによれば、表面が平滑な導体膜を好適に形成することができる。したがって、連続性が高く均質な内部電極層を形成できる。
また、本発明により、上記導電性ペーストを基材上に付与して500℃以上で焼成することを包含する、電子部品の製造方法が提供される。上記導電性ペーストを用いることで、小型・大容量で高品質な電子部品(例えばMLCC)を好適に製造できる。
積層セラミックコンデンサの構成を模式的に示す断面図である。 未焼成積層体の構成を模式的に示す断面図である。 導体膜の表面粗さを示す断面プロファイルの一例であり、(A)は比較例1、(B)は例4、(C)は例8、(D)は例9のものである。
以下、ここに開示される技術の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項(例えば、導電性ペーストの構成や性状)以外の事柄であって、本発明の実施に必要な事柄(例えば、導電性ペーストの調製方法や、導電性ペーストの付与方法、電子部品の構成等)は、本明細書により教示されている技術内容と、当該分野における当業者の一般的な技術常識とに基づいて実施することができる。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
なお、本明細書において数値範囲を示す「X~Y(X,Yは任意の値)」の表記は、X以上Y以下の意と共に、「好ましくはXより大きい」および「好ましくはYより小さい」の意を包含する。
[導電性ペースト]
ここで開示される導電性ペーストは、(A)導電性粉末と、(B)添加剤と、(C)溶剤と、を含んでいる。導電性ペーストは、さらに(D)その他の任意成分を含有し得る。導電性ペーストは、(A)導電性粉末と(B)添加剤と(D)その他の任意成分とを、(C)溶剤に分散または溶解させることで調製し得る。導電性ペーストは、電極層の形成に用いることができる。すなわち、導電性ペーストを焼成すると、(B)添加剤や(C)溶剤等の有機成分が焼失するとともに(A)導電性粉末等の無機成分が焼結して、電極層が形成される。以下、各構成成分について順に説明する。
<(A)導電性粉末>
導電性粉末は、電極層に電気伝導性を付与するための必須成分である。導電性粉末は、電子部品の電極層(例えば、MLCCの内部電極層)の主体となる成分である。導電性粉末は、導電性粒子からなっている。導電性粒子の種類は特に限定されず、例えば導電性ペーストの用途等に応じて、従来公知のもののなかから、1種類を単独で、または2種類以上を適宜組み合わせて用いることができる。一例として、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、タングステン(W)等の卑金属の単体、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)等の貴金属の単体、カーボンブラック等の炭素質材料、およびこれらの混合物や合金等が挙げられる。合金としては、例えば、ニッケル-銅(Ni-Cu)、ニッケル-アルミニウム(Ni-Al)等のニッケル合金や、銀-パラジウム(Ag-Pd)、銀-白金(Ag-Pt)、銀-銅(Ag-Cu)等の銀合金が挙げられる。導電性粉末は、導電性金属粉末であってもよい。
特に限定されるものではないが、MLCCの内部電極層を形成する用途では、導電性粒子として、誘電体層の焼結温度(例えば約1300℃)よりも融点が低い金属種を用いることが好ましい。なかでも、低価格で導電性とコストとのバランスに優れることから、ニッケル系粒子が好ましい。なお、本明細書において「ニッケル系粒子」とは、ニッケル成分を含むもの全般を包含する。ニッケル系粒子の一例として、ニッケルの単体、ニッケル合金、ニッケルをコアとして表面を貴金属等で被覆したNiコアーシェル粒子、ニッケルをシェルとしたコア-Niシェル粒子等が挙げられる。なかでも、ニッケルまたはニッケル合金が好ましい。導電性粉末の全体に占めるニッケル系粒子の割合は、概ね50体積%以上、好ましくは80体積%以上、より好ましくは90体積%以上、例えば95体積%以上、98体積%以上、99体積%以上、実質的に100体積%であるとよい。
導電性粉末を構成する導電性粒子の性状、例えば粒子のサイズや形状等は、特に限定されない。導電性粒子のサイズは、例えば導電性ペーストの用途や形成する電極層の寸法等に応じて適宜選択することができる。粒子のサイズは、電極層(例えば内部電極層)の最小寸法、例えば厚みおよび/または幅に収まるように選択するとよい。特に限定されるものではないが、薄層化されたMLCCの内部電極層を形成する用途では、導電性粉末が、平均粒子径1μm未満の金属ナノ粒子からなるとよい。導電性粉末の平均粒子径は、電子部品を薄型化・高性能化する観点から、例えば20~300nm、40~200nm、50~150nmであってもよい。なかでも100nm以下、さらには90nm以下、80nm以下、例えば50~80nmが好ましい。このような微粒化された導電性粉末では、とりわけ粘度が増加しやすいため、ここに開示される技術を適用することが特に効果的である。
なお、本明細書において「平均粒子径」とは、電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM;Field Emission-Scanning Electron Microscope)の観察画像に基づく個数基準の粒度分布において、小径側から累積50%に相当する粒子径(D50粒子径)をいう。
導電性粒子の形状は、例えば、略球状、麟片状(フレーク状)、針状、不定形状等であってもよい。特に限定されるものではないが、薄層化されたMLCCの内部電極層を形成する用途では、導電性粉末が略球状であるとよい。これにより、導電性粉末の凝集をより好適に抑制でき、導電性ペーストの粘度をより良く低減できる。なお、本明細書において「略球状」とは、全体として概ね球体と見なせる形態を示し、上記電子顕微鏡の観察画像に基づく平均アスペクト比(長径/短径比)が、概ね1~2、例えば1~1.5であることをいう。
導電性粉末は、表面にアミン系有機物が付着(典型的には吸着)した導電性粒子を含んでいる。アミン系有機物は、アミノ基を有する。アミノ基は、後述する(B)添加剤と相互作用する構造部分であり得る。アミン系有機物は、溶剤中で導電性粒子の分散安定性を向上する機能を有する。導電性粒子が平均粒子径1μm未満の金属ナノ粒子である場合等には、さらに導電性粒子の表面を保護して表面酸化を抑える保護剤としても機能し得る。なお、アミン系有機物が付着した導電性粒子は、市販品を購入してもよく、従来公知の手法によって作製することもできる。一例として、先行技術文献として挙げた特許文献4、5に記載される方法等で作製することができる。
導電性粉末は、ここに開示される技術の効果を高いレベルで発揮する観点から、アミン系有機物が付着した導電性粒子を主体(全体の50質量%を超える成分)として構成されているとよく、アミン系有機物が付着した導電性粒子が、導電性粉末全体の概ね80質量%以上、例えば90質量%以上であるとよく、実質的に100質量%(95質量%以上)を占めているとよい。
アミン系有機物の種類は特に限定されず、例えば上記した文献に記載されるもの等のなかから、1種を単独で、または2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。一例として、n-ブチルアミン、ペンチルアミン、2-メトキシエチルアミン、2-エトキシエチルアミン、3-メトキシプロピルアミン、3-エトキシプロピルアミン、オクチルアミン、ヘキサデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、ミリスチルアミン、ラウリルアミン等の1級脂肪族アミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、メチルブチルアミン、エチルプロピルアミン、エチルイソプロピルアミン、ジオクチルアミン等の2級脂肪族アミン;トリメチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリオクチルアミン等の3級脂肪族アミン;等が例示される。なかでも、優れた分散性を有することから、オレイルアミン(C1837N)が好ましい。アミン系有機物は、金属ナノ粒子の表面保護作用を高いレベルで発揮する観点から、1級アミン化合物が好ましい。アミン系有機物は、炭素数が、概ね5以上、好ましくは10以上、より好ましくは15以上であって、例えば20以下であるとよい。これにより、溶剤中での導電性粒子の分散安定性をより良く高めることができる。
特に限定されるものではないが、導電性ペーストの全体を100質量%としたときに、導電性粉末の割合は、概ね30質量%以上、典型的には35質量%以上、例えば40質量%以上であって、概ね90質量%以下、80質量%以下、60質量%以下、50質量%以下であってもよい。上記範囲を満たすことで、塗工性やハンドリング性が良好となり、基材上に安定して導体膜を形成できる。また、上記割合が所定値以上であると、電極層において導電性粒子同士が接触しやすくなり、電気伝導性を好適に向上できる。また、上記割合が所定値以下であると、導電性粉末の凝集をより好適に抑制でき、低ずり速度領域における粘度をより良く低減できる。
<(B)添加剤>
添加剤は、少なくとも導電性粒子の表面に付着しているアミン系有機物と何らか相互作用して、低ずり速度領域の粘度を低く抑えるための必須成分である。本実施形態において、添加剤は、(B1)1級アミン化合物、および(B2)アルミニウムキレート化合物、のうちの少なくとも一方からなっている。添加剤は、(B2)アルミニウムキレート化合物を含まずに(B1)1級アミン化合物のみで構成されていてもよく、(B1)1級アミン化合物を含まずに(B2)アルミニウムキレート化合物のみで構成されていてもよく、あるいは、(B1)1級アミン化合物および(B2)アルミニウムキレート化合物をいずれも含んでいてもよい。添加剤は、典型的には常温(20±5℃。以下同じ。)で、(C)溶剤に可溶な化合物である。なお、「可溶」とは、(C)溶剤に対する溶解度が、概ね1質量%以上であることをいう。
(B1)1級アミン化合物としては、特に限定されず、従来公知のもののなかから、例えば導電性粉末やその表面に付着しているアミン系有機物の種類、溶剤の種類等に応じて、1種類を単独で、または2種類以上を適宜組み合わせて用いることができる。1級アミン化合物は、炭素(C)、水素(H)、窒素(N)の構成元素からなることが好ましい。1級アミン化合物は、典型的には1級脂肪族アミンである。1級アミン化合物の具体例としては、n-ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、2-エチルヘキシルアミン(2-EHA)、デヒドロアビエチルアミン、ジヒドロアビエチルアミン、テトラヒドロアビエチルアミン、ロジンアミン等が挙げられる。なかでも、導電性ペーストの粘度をより良く低減し得ることから、オレイルアミンが好ましい。
1級アミン化合物は、直鎖状であってもよく、分岐構造を有していてもよく、不飽和結合(例えば二重結合)を有していてもよく、環状構造を有していてもよい。1級アミン化合物は、比較的長鎖のものが好ましく、具体的には、炭素数が、概ね5以上、好ましくは8以上、例えば10以上、15以上であって、概ね30以下、好ましくは25以下、例えば20以下であるとよい。また、主鎖(炭素数が最大となる炭素鎖)の炭素数は、概ね5以上、好ましくは8以上、例えば10以上、15以上であるとよい。また、1級アミン化合物は、分子量が、概ね100以上、例えば120以上であって、概ね400以下、例えば300以下であるとよい。上記のうち少なくとも1つを満たすことにより、(A)導電性粉末の分散安定性を効果的に高めることができ、導電性ペーストの粘度をより良く低減できる。
(B2)アルミニウムキレート化合物としては、特に限定されず、従来公知のもののなかから、例えば導電性粉末やその表面に付着しているアミン系有機物の種類、溶剤の種類等に応じて、1種類を単独で、または2種類以上を適宜組み合わせて用いることができる。アルミニウムキレート化合物は、中心原子としてのアルミニウムと、配位子としての少なくとも1つのアセトネート基と、を含むキレート化合物(金属錯体)であることが好ましい。アルミニウムキレート化合物は、配位子として2つ以上のアセトネート基を含むことが好ましい。アセトネート基としては、例えばアセチルアセトネート基:-O-C(CH)=CH-C(CH)=O;メチルアセトアセトネート基:-O-C(CH)=CH-C(O-CH)=O;エチルアセトアセトネート基:-O-C(CH)=CH-C(O-C)=O;等が挙げられる。なお、一般には、配位子の炭素数が大きくなるほど、無極性溶剤に対する溶解度は大きくなる。
アルミニウムキレート化合物の具体例として、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムアルキルアセトアセテートジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビスオレイルアセトアセテート等が挙げられる。アルミニウムキレート化合物は、分子量が、概ね100以上、例えば200以上であって、概ね500以下、例えば420以下であるとよい。
アルミニウムキレート化合物は、配位数が4の四面体型、あるいは配位数が6の八面体型をとり得る。なかでも、配位数が6のものが好ましい。
アルミニウムキレート化合物の一好適例として、次の化学式(1):
Figure 2023145047000003
(ただし、化学式(1)中のR1~R3は、それぞれ独立して、アルキル基またはアルコキシル基である。);で表される6配位のアルミニウムキレート化合物が挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。アルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、N-プロポキシ基、オレイルオキシ基等が挙げられる。アルキル基およびアルコキシル基は、典型的には鎖状である。なかでも、R1~R3のうちの2つ以上がアルコキシル基(例えばエトキシ基)であることが好ましく、R1~R3の全てがアルコキシル基(例えばエトキシ基)であることがより好ましい。
上記化学式(1)で表される添加剤としては、例えば、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)や、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)が挙げられる。アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)は、分子量が、414.4であり、化学式(1)のR1~R3が全てエトキシ基である。アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)の分子式を、下記化学式(2)に示す。アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)は、分子量が、384.3であり、化学式(1)のR1~R3のうち、2つがエトキシ基、1つがメチル基である。アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)の分子式を、下記化学式(3)に示す。
また、アルミニウムキレート化合物の他の好適例として、次の化学式(4):
Figure 2023145047000006
(ただし、化学式(4)中のR4は、アルキル基またはアルコキシル基であり、R5~R6は、それぞれ独立して、アルキル基である。);で表される4配位のアルミニウムキレート化合物が挙げられる。なお、アルキル基およびアルコキシル基については、上記化学式(1)と同様である。R4はアルコキシル基であることが好ましい。上記化学式(4)で表される添加剤としては、例えば、アルミニウムアルキルアセトアセテートジイソプロピレートが挙げられる。アルミニウムアルキルアセトアセテートジイソプロピレートは、分子量が、490.9であり、化学式(4)のR1がアルコキシル基、R2~R3がプロピル基である。アルミニウムアルキルアセトアセテートジイソプロピレートの分子式を、下記化学式(5)に示す。なお、化学式(5)中のRは、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基である。アルキル基は、典型的には鎖状である。
本実施形態では、導電性ペーストの全体を100質量%としたときに、添加剤の割合が、0.2質量%以上である。ここに開示される技術の効果をより高いレベルで発揮する観点から、添加剤の割合は、0.5質量%以上が好ましく、例えば1質量%以上であってもよい。これにより、導電性粉末の凝集をより好適に抑制でき、導電性ペーストの粘度をより良く低減できる。その結果、塗工性やハンドリング性がきわめて良好となり、精度よく導体膜を形成できる。上限値は特に限定されないが、概ね5質量%以下、例えば3質量%以下、2質量%以下であってもよい。これにより、電気伝導性や緻密性に優れた電極層を好適に実現できる。また、製造コストを低減できる。
特に限定されるものではないが、導電性粉末の平均粒子径が100nm以下、さらには80nm以下である場合、導電性粉末100質量部に対する添加剤の含有割合は、概ね0.1~10質量部、典型的には0.2~5質量部、例えば0.5~3.5質量部であるとよい。これにより、導電性粉末の凝集をより的確に抑制でき、導電性ペーストの粘度をより良く低減できる。
<(C)溶剤>
溶剤は、導電性ペーストの固形分、例えば(A)導電性粉末と(B)添加剤と(D)その他の任意成分とを分散または溶解させて、導電性ペーストを塗工やハンドリングに適した粘度(流動性)に調整するための必須成分である。溶剤は、典型的には焼成によって消失される成分である。溶剤は、典型的には有機溶剤から構成される。溶剤は、常温で(B)添加剤を可溶なものが好ましい。これにより、導電性粉末の凝集を高度に抑制でき、導電性ペーストの保存安定性を向上できる。
溶剤の種類は特に限定されず、従来公知のもののなかから、例えば導電性ペーストの用途や導体膜を形成する基材の種類等に応じて、1種類を単独で、または2種類以上を適宜組み合わせて用いることができる。一例として、-OH基を有するアルコール系溶剤、エーテル結合(R-O-R’)を有するエーテル系溶媒、エステル結合(R-C(=O)-O-R’)を有するエステル系溶剤、炭素原子と水素原子とで構成される炭化水素系溶剤等が挙げられる。
アルコール系溶剤およびエーテル系溶剤としては、例えば、ターピネオール、テキサノール、ジヒドロターピネオール、ベンジルアルコール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、プロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。エステル系溶剤としては、例えば、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールアセテート、3-メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、イソボルニルアセテート、カルビトールアセテート、エチルジグリコールアセテート、ブチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート(ブチルカルビトールアセテート)、ターピネオールアセテート、ジヒドロターピネオールアセテート等が挙げられる。炭化水素系溶剤としては、例えば、石油系炭化水素、ナフサ、ジペンテン、テレピン油、ミネラルスピリット等の脂肪族系炭化水素溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素溶剤;ノルマルパラフィン類、イソパラフィン類等のパラフィン系溶剤;単環ナフテン類、二環ナフテン類等のナフテン系溶剤;等が挙げられる。
特に限定されるものではないが、グリーンシートの上に導電性ペーストを付与する場合は、シートアタック現象(溶剤がグリーンシートを浸食する現象)を抑える観点等から、溶剤として、炭化水素系溶剤を含むことが好ましく、例えば、炭化水素系溶剤と、炭化水素系以外の溶剤、例えばアルコール系溶剤およびエステル系溶剤のうちの少なくとも1つと、を組合せて用いることが好ましい。また、溶剤として炭化水素系溶剤と、炭化水素系以外の溶剤とを同時に含む場合、炭化水素系溶剤と、炭化水素系以外の溶剤との合計を100質量%としたときに、炭化水素系以外の溶剤の割合は、概ね50~95質量%、例えば70~90質量%であってもよい。
溶剤の含有量は、固形分を均質に溶解または分散可能な量であって、導体膜の形成に適した粘度となるように適宜調整すればよい。一例として、導電性ペーストの全体を100質量%としたときに、溶剤の割合は、概ね80質量%以下、典型的には10~70質量%、例えば30~60質量%であってもよい。溶剤の量を必要最小限に抑えることで、緻密な導体膜を形成することができ、導体膜の電気伝導性を向上できる。
<(D)その他の任意成分>
導電性ペーストは、ここに開示される技術の効果を著しく損なわない限りにおいて、上記した成分(A)~(C)に加えて、必要に応じて種々の任意成分を含有することができる。任意成分としては、一般的な導電性ペーストに用いられている従来公知のもののなかから、必要に応じて、1種類を単独で、または2種類以上を適宜組み合わせて用いることができる。任意成分の一例としては、例えば、(D1)誘電体粉末、(D2)バインダ、(D3)分散剤、界面活性剤、レベリング剤、湿潤剤、消泡剤、帯電防止剤、ゲル化防止剤、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、防腐剤、着色剤(顔料、染料)、pH調整剤等が挙げられる。
(D1)誘電体粉末は、導電性ペーストの焼成時に導電性粒子の間に配置され、導電性粉末の熱収縮を緩和する成分である。また、MLCCの内部電極層を形成する用途では、誘電体層と内部電極層との焼結接合性を向上させる共材としても機能し得る。
誘電体粉末の種類は特に限定されず、従来公知の無機材料のなかから、例えば導電性粉末の種類や、導電性ペーストの用途等に応じて、1種類を単独で、または2種類以上を適宜組み合わせて用いることができる。一例として、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、チタン酸ジルコニウム、チタン酸亜鉛、ニオブ酸マグネシウム酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、ジルコン酸ストロンチウム、ジルコン酸バリウム等のABOで表されるペロブスカイト構造を有する金属酸化物や、二酸化チタン、五酸化チタン、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、フォルステライト、酸化ニオブ、チタン酸ネオジウム酸バリウム等のその他の金属酸化物が挙げられる。なかでも、MLCCの内部電極層を形成する用途では、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、ジルコン酸カルシウム等を用いることが好ましい。
誘電体粉末を構成する誘電体粒子の性状、例えば粒子のサイズや形状等は、特に限定されない。誘電体粒子のサイズは、例えば導電性ペーストの用途や形成する電極層の寸法等に応じて適宜選択することができる。粒子のサイズは、焼成収縮率を考慮して、電極層(例えば内部電極層)の最小寸法、例えば厚みおよび/または幅に収まるように選択するとよい。誘電体粉末の平均粒子径は、概ね数nm~数μm、例えば1nm~1μmであってもよい。一例として、薄層化されたMLCCの内部電極層を形成する用途では、誘電体粉末の平均粒子径が、概ね5nm以上、例えば10nm以上であってもよく、概ね0.5μm以下、典型的には0.3μm以下、例えば0.2μm以下、0.1μm以下であってもよい。また、電気伝導性に優れた電極層を形成する観点からは、誘電体粉末の平均粒子径が、導電性粉末の平均粒子径よりも小さいことが好ましい。誘電体粉末の平均粒子径に対する導電性粉末の平均粒子径の比(粒径比)は、概ね2以上、例えば3以上、4以上、さらには5以上であるとよい。上記粒径比は、均質で平滑な導体膜を形成する観点から、概ね50以下、例えば20以下、さらには10以下であるとよい。
導電性ペーストが誘電体粉末を含む場合、その含有量は、典型的には(A)導電性粉末よりも少ない。特に限定されるものではないが、導電性ペーストの全体を100質量%としたときに、誘電体粉末の割合は、概ね0.2~20質量%、典型的には1~15質量%、例えば3~10質量%であってもよい。また、導電性粉末100質量部に対する誘電体粉末の割合は、概ね3~35質量部、典型的には5~30質量部、例えば10~25質量部であってもよい。上記範囲を満たすことで、焼成時に導電性粉末の熱収縮を好適に抑制するとともに、電気伝導性や緻密性に優れた電極層を好適に実現できる。
(D2)バインダは、導電性ペーストの粘度(流動性)を調整すると共に、導体膜に粘着性を付与して導電性粉末同士および導電性粉末と基材とを密着させる成分である。バインダは、典型的には焼成によって消失される成分である。言い換えれば、バインダは、導体膜の焼成時に燃え抜ける化合物である。バインダは、例えば分解温度が導体膜の焼成温度より低く、概ね500℃以下であってもよい。
バインダの種類は特に限定されず、この種の用途に使用されている従来公知の有機化合物のなかから、例えば導電性ペーストの用途や使用する基材の種類等に応じて、1種類を単独で、または2種類以上を適宜組み合わせて用いることができる。バインダは、典型的には熱可塑性樹脂である。ただし、熱硬化性樹脂であってもよい。バインダとしては、例えば、セルロース系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ロジン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン系樹脂等の有機高分子化合物が挙げられる。なかでも、焼成時の燃え抜け性や電極層の表面平滑性を向上する観点等から、セルロース系樹脂を含むことが好ましい。また、上記のように微細な導電性粉末や誘電体粉末を含む導電性ペーストでは、導体膜の一体性や導体膜と基材との接着性を向上する観点等から、ポリビニルアセタール系樹脂を含むことが好ましく、例えばセルロース系樹脂とポリビニルアセタール系樹脂とを組合せて用いることが好ましい。
セルロース系樹脂は、β-グルコースを繰り返し単位として含む直鎖の重合体(セルロース)、およびその誘導体の全般を包含する。セルロース系樹脂としては、例えば、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ニトロセルロース等が挙げられる。なかでもMCやECが好ましい。ポリビニルアセタール系樹脂は、連続するビニルアルコール構造単位がアルデヒド化合物によってアセタール化された構造単位を有し、未反応のビニルアルコール構造単位およびポリビニルアルコール系樹脂の未ケン化部分である酢酸ビニル構造単位のうちの1つ以上を有し得る重合体、およびその誘導体(変性物等)の全般を包含する。ポリビニルアセタール系樹脂は、例えばセルロース系樹脂に比べて、接着性や柔軟性に優れている。ポリビニルアセタール系樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコールをブタノールでアセタール化した構造を有するポリビニルブチラール樹脂(PVB)が挙げられる。
導電性ペーストが(D2)バインダを含む場合、その含有量は、典型的には(B)添加剤よりも多い。特に限定されるものではないが、導電性ペーストの全体を100質量%としたときに、バインダの割合は、概ね0.1~5質量%、典型的には1~4質量%、例えば2~3質量%であってもよい。上記範囲を満たすことで、導電性ペーストを塗工性やハンドリング性に適した性状に調整しやすくなる。また、導体膜と基材との密着性を向上して、電極層を安定して形成できる。
(D3)分散剤としては、従来公知のもののなかから、1種類を単独で、または2種類以上を適宜組み合わせて用いることができる。一例として、カルボキシル基を有するカルボン酸系分散剤、ホスホン酸基を有するリン酸系分散剤、スルホン酸基を有するスルホン酸系分散剤等の有酸価分散剤が挙げられる。なかでも、カルボン酸系分散剤を含むことが好ましい。これにより、(B)添加剤との相乗効果で、ここに開示される技術の効果が高いレベルで発揮され得る。特に限定されるものではないが、導電性ペーストの全体を100質量%としたときに、(D3)分散剤の割合は、概ね5質量%以下、典型的には3質量%以下、2質量%以下、例えば1質量%以下であるとよい。
(E)導電性ペーストの性状
ここに開示される導電性ペーストは、低ずり速度領域においてもペーストの粘度の増大が抑えられている。好ましくは、25℃において、レオメーターを用いてせん断速度0.04s-1で測定される粘度が、1700Pa・s以下である。なかでも、1000Pa・s以下、さらには700Pa・s以下、例えば500Pa・s以下であることが好ましい。これにより、導電性ペーストの塗工性やハンドリング性が良好となり、基材上に安定して導体膜を形成できる。導電性ペーストの粘度は、例えば、(A)導電性粉末の平均粒子径、(B)添加剤の種類や含有割合、(C)溶剤の種類や含有割合等によって調整できる。
[導電性ペーストの用途]
ここに開示される導電性ペーストは、任意の基材上に付与して乾燥することで導体膜を形成し、これを焼成することによって電極層を形成するために用いることができる。なかでも、電極層の表面平滑性や均質性が求められる用途で好適に用いることができる。代表的な使用用途としては、例えば、各辺が概ね5mm以下、好ましくは1mm以下である小型の積層セラミック電子部品の内部電極層の形成が挙げられる。とりわけ、誘電体層の厚みが2μm以下のレベルにまで薄層化された小型・大容量のMLCCの内部電極層の形成に好適に用いることができる。
なお、本明細書において「セラミック電子部品」とは、結晶質のセラミック基材および/または非晶質のセラミック基材を有する電子部品一般を包含する。例えば、セラミック製の基材を含むセラミックコンデンサ、チップインダクタ、高周波フィルター、高温焼成積層セラミック(High Temperature Co-fired Ceramics:HTCC)基材、低温焼成積層セラミック(Low Temperature Co-fired Ceramics:LTCC)基材等は、ここでいう「セラミック電子部品」に包含される典型例である。
[積層セラミックコンデンサ]
図1は、積層セラミックコンデンサ(MLCC)1の構成を模式的に示す断面図である。MLCC1は、多数の誘電体層20と内部電極層30とが、交互にかつ一体的に積層されて構成された、チップタイプのコンデンサである。誘電体層20と内部電極層30とからなる積層チップ10の側面には、一対の外部電極40が設けられている。一例として、内部電極層30は、積層順で交互に異なる外部電極40に接続される。このことにより、誘電体層20とこれを挟む一対の内部電極層30とからなるコンデンサ構造が並列に接続され、小型・大容量のMLCC1が構築される。MLCC1の誘電体層20は、例えば誘電体材料で構成されている。内部電極層30は、ここに開示される導電性ペーストの焼成体で構成されている。このようなMLCC1は、例えば、以下の手順で製造することができる。
図2は、未焼成積層体10a(未焼成の積層チップ10)の構成を模式的に示す断面図である。MLCC1の製造に際しては、まず、未焼成の誘電体グリーンシート20aを用意する。次に、ここに開示される導電性ペーストを用意する。そして、誘電体グリーンシート20a上に、用意した導電性ペーストを、所定のパターンで所望の厚み(例えば、1μm以下)になるように付与して、導体膜30aを形成する。ここに開示される導電性ペーストによれば、表面の平滑性に優れた導体膜30aを安定して形成できる。
次に、用意した導体膜30a付きの誘電体グリーンシート20aを、複数枚(例えば、数百~数千枚)積層して、圧着する。これにより、積層圧着体を作製する。積層圧着体は、必要に応じてチップ形状に切断する。ここで、上記導電性ペーストを用いてなる導体膜30aは、表面の凹凸が小さいことから、積層したり圧着したりしても、積層構造の歪みが生じにくい。そのため、品質の安定した未焼成積層体10aを作製できる。
次に、未焼成積層体10aを適当な加熱条件で焼成する。例えば、窒素水素含有雰囲気中で、概ね500℃以上、例えば1000~1300℃程度で焼成する。これにより、誘電体グリーンシート20aが焼成されて、誘電体層20となる。また、導体膜30aが焼成されて、内部電極層30となる。このようにして、図1に示すように、誘電体層20と内部電極層30とが一体的に焼結された積層チップ10を得ることができる。ここで、上記導電性ペーストによれば、内部電極層30を電気的に連続でかつ均質なものとして形成することができる。その後、積層チップ10の側面に外部電極材料を塗布して焼き付けることにより、外部電極40を形成する。以上のようにして、ショート不良等の不具合が生じにくい高品質なMLCC1を製造することができる。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明を係る実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
<試験例I>
[導電性ペーストの調製]
本試験例では、(A)導電性粉末と、(B)添加剤と、(D1)誘電体粉末と、(D2)バインダと、(D3)分散剤とを、(C)溶剤中で撹拌混合することにより、(B)添加剤のみを異ならせた導電性ペースト(比較例1~4、例1~5)を調製した。
(A)導電性粉末としては、平均粒子径が60nmで、表面にアミン系有機物(オレイルアミン)が付着したニッケル粉末(Ni)を、導電性ペースト全体に対して45質量%の割合となるように用いた。
(D1)誘電体粉末としては、平均粒子径が10nmのチタン酸バリウム粉末(BT)を、導電性ペースト全体に対して4.5質量%の割合となるように用いた。
(D2)バインダとしては、エチルセルロース(EC)と、ポリビニルブチラール(PVB)とを、55:45で混合して、導電性ペースト全体に対して2.3質量%の割合となるように用いた。
(D3)分散剤としては、カルボン酸系分散剤を、導電性ペースト全体に対して0.7質量%の割合となるように用いた。
(C)溶剤としては、イソボルニルアセテートと、ジヒドロターピネオールと、石油系溶剤とを、7:2:1で混合して用い、上記した導電性粉末と誘電体粉末とバインダと添加剤とを差し引いた残部を、導電性ペースト中の(D)溶剤の割合とした。
(B)添加剤は、比較例1では添加せず、それ以外の例については、表1に示すアミン化合物を、導電性ペースト全体に対して1.0質量%の割合となるように用いた。
[ペースト粘度の測定]
HAAKE社製の回転振動型レオメーターMARS IIIを用いて、上記調製した導電性ペーストの粘度を測定した。測定条件は以下の通りである。せん断速度が、400s-1、40s-1、4s-1、0.4s-1、0.04s-1のときの粘度(Pa・s)を、表1に示す。また、せん断速度が0.04s-1のときの粘度について、比較例1を基準とした粘度低下率(%)をあわせて表1に示す。
測定モード:せん断速度依存性測定
センサー :コーンプレート(φ20mm、角度1°)
測定温度 :25℃
ギャップ :0.052mm
せん断速度:1000~0.001s-1
測定時間 :1分
[表面粗さの評価]
以下の手順で導体膜を形成し、導体膜の表面粗さを測定した。具体的には、まず、チタン酸バリウムを含む誘電体グリーンシートを用意した。次に、上記導電性ペーストを誘電体グリーンシート上に約1μmの厚みで付与し、80℃で約5分間乾燥させることで導体膜を形成した。次に、株式会社ニコン製の超分解能非接触三次元表面形状計測システム(型式:BW-A501)を用いて、導体膜の表面粗さを測定した。測定条件は以下の通りである。そして、導体膜の高さ画像を取り込み、その画像を解析して、断面プロファイルを得た。断面プロファイルは、各サンプルにつき5箇所分を(n=5で)準備した。なお、図3は、導体膜の表面粗さを示す断面プロファイルの一例であり、(A)は比較例1、(B)は例4のものである。そして、得られた断面プロファイルの最も高い点と最も低い点との差分をそれぞれ求め、n=5の算術平均値を「最大粗さRmax」とした。結果を、表1に示す。
・光学顕微鏡:株式会社ニコン製の干渉顕微鏡(型式:ECLIPSE LV150)
・対物レンズ倍率:10倍
・測定範囲:50μm×1000μm
Figure 2023145047000008
表1に示すように、添加剤を不添加の比較例1に比べて、2級アミン化合物であるジ(2-エチルヘキシル)アミンを用いた比較例2、およびジシクロヘキシルアミンを用いた比較例3では、せん断速度0.04s-1の低ずり速度領域において、比較例1に比べてわずかに粘度の低下が認められたものの、塗工性やハンドリング性を考慮すると、十分とはいえなかった。また、3級アミン化合物であるTris(2-エチルへキシル)アミンを用いた比較例4では、かえって粘度が増加した。
これら比較例に対して、1級アミン化合物を用いた例1~5は、いずれもせん断速度0.04s-1の低ずり速度領域において、粘度が1000Pa・s以下であり、十分に粘度が低減されていた。また、例4では、比較例1に比べてRmaxの値が小さく、図3(A)、(B)の比較から、例4では相対的に導体膜の表面の凹凸が抑えられていた。
以上のことから、1級アミン化合物を用いることで、例えば2級アミン化合物や3級アミン化合物を用いる場合と比較して、相対的に低ずり速度領域の粘度を低下させて平滑な導体膜を形成できることがわかった。かかる結果は、ここに開示される発明の技術的意義を裏付けるものである。
<試験例II>
本試験例では、1級アミン化合物(オレイルアミン)の割合を、それぞれ、0.1質量%、0.5質量%としたこと以外は例4と同様にして、導電性ペースト(比較例5、例6)を調製し、試験例Iと同様に評価を行った。結果を表2に示す。
Figure 2023145047000009
表2に示すように、1級アミン化合物の割合を0.1質量%とした比較例5では、低ずり速度領域における粘度の低下が十分ではなかった。したがって、1級アミン化合物の割合は0.2質量%以上、好ましくは例6のように0.5質量%以上とすることで、ここに開示される技術の効果を適切に発揮できるとわかった。
<試験例III>
本試験例では、添加剤として、1級アミン化合物にかえて表3に示す各種キレート化合物を、導電性ペースト全体に対して1.4質量%(比較例6のみ0.2質量%)の割合となるように用いたこと以外は例1と同様にして、導電性ペースト(比較例6、例7~9)を調製した。なお、「アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)」、「アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)」、「アルミニウムアルキルアセトアセテートジイソプロピレート」の分子式は、化学式(2)、化学式(3)、化学式(5)に示したとおりである。そして、試験例Iと同様に評価を行った。結果を表3に示す。また、図3は、導体膜の表面粗さを示す断面プロファイルの一例であり、(C)は例8、(D)は例9のものである。
また、例4に、さらにキレート化合物を1.4質量%の割合で用い(すなわち、1級アミン化合物とキレート化合物とを併用して)、導電性ペースト(例10)を調製し、試験例Iと同様に評価を行った。また、キレート化合物の割合を、0.2質量%としたこと以外は例8と同様にして、導電性ペースト(例11)を調製し、試験例Iと同様に評価を行った。結果を表3に示す。
Figure 2023145047000010
表3に示すように、1級アミン化合物にかえてジルコニウムキレート化合物を用いた比較例6では、かえって粘度が増加した。これに対して、1級アミン化合物にかえてアルミニウムキレート化合物を用いた例7~9、あるいは1級アミン化合物に加えてアルミニウムキレート化合物を用いた例10では、低ずり速度領域において、粘度が十分に低減されていた。また、例8および例9では、いずれも、比較例1に比べてRmaxの値が小さく、図3(A)と図3(C)、(D)との比較から、例8および例9では、相対的に導体膜の表面の凹凸が抑えられていた。かかる結果は、ここに開示される発明の技術的意義を裏付けるものである。また、例11の結果から、アルミニウムキレート化合物の割合を0.2質量%以上とすることで、ここに開示される技術の効果を適切に発揮できるとわかった。
<試験例IV>
本試験例では、導電性粉末の表面のアミン系有機物の必要性について検討した。具体的には、表4に示す導電性粉末(Ni)とアルミニウムキレート化合物とを用いて、導電性ペースト(比較例7~12、例12~15)を調製した。なお、導電性ペーストの配合は、導電性ペースト全体に対して、(A)導電性粉末を40質量%、(D1)誘電体粉末を4.0質量%、(D2)バインダを2.0質量%、(D3)カルボン酸系分散剤を0.6質量%、(B)アルミニウムキレート化合物を表4に示す割合とし、残部を(C)溶剤とした。そして、試験例Iと同様に評価を行った。結果を表4に示す。
Figure 2023145047000011
表4に示すように、比較例7,8および比較例10,11のそれぞれの比較から、表面にアミン系有機物が付着していない導電性粉末を用いた場合は、アルミキレート化合物の添加の有無が、低ずり速度領域の粘度変化に殆ど影響しないことがわかった。これに対し、比較例9,例12および比較例12,例14のそれぞれの比較から、表面にアミン系有機物が付着している導電性粉末を用いた場合は、アルミキレート化合物の添加の有無が、低ずり速度領域の粘度低下に大きく影響し、ここに開示される技術の効果が適切に発揮されることがわかった。また、例13~例15の比較から、アルミキレート化合物の割合が2質量%程度までは添加量の増加と共にここに開示される技術の効果が高くなるが、2質量%を超えたあたりから、ここに開示される技術の効果が頭打ちになる傾向が看取された。
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上述の実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を組み合わせたり、他の変形態様に置き換えたりすることも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
1 積層セラミックコンデンサ(MLCC)
10 積層チップ
10a 未焼成積層体
20 誘電体層
20a 誘電体グリーンシート
30 内部電極層
30a 導体膜
40 外部電極

Claims (10)

  1. 表面にアミン系有機物が付着した導電性粒子を含む導電性粉末と、
    1級アミン化合物およびアルミニウムキレート化合物のうちの少なくとも一方からなる添加剤と、
    溶剤と、を含む導電性ペーストであって、
    前記導電性ペーストの全体を100質量%としたときに、前記添加剤の割合が、0.2質量%以上である、導電性ペースト。
  2. 前記1級アミン化合物の炭素数が、5~25である、
    請求項1に記載の導電性ペースト。
  3. 前記アルミニウムキレート化合物が、中心原子としてのアルミニウムと、配位子としての少なくとも1つのアセトネート基と、を含むキレート化合物である、
    請求項1または2に記載の導電性ペースト。
  4. 前記アルミニウムキレート化合物が、次の化学式(1):
    Figure 2023145047000012

    (ただし、化学式(1)中のR1~R3は、それぞれ独立して、アルキル基またはアルコキシル基である。);で表される化合物である、
    請求項1~3のいずれか1項に記載の導電性ペースト。
  5. 前記R1~R3のうちの2つ以上がアルコキシル基である、
    請求項4に記載の導電性ペースト。
  6. 前記導電性粉末は、電界放出型走査電子顕微鏡観察に基づく個数基準の平均粒子径が、80nm以下である、
    請求項1~5のいずれか1項に記載の導電性ペースト。
  7. 前記導電性粒子が、ニッケル系粒子を含む、
    請求項1~6のいずれか1項に記載の導電性ペースト。
  8. 25℃において、レオメーターを用いてせん断速度0.04s-1で測定される粘度が、1700Pa・s以下である、
    請求項1~7のいずれか1項に記載の導電性ペースト。
  9. 積層セラミック電子部品の内部電極層を形成するために用いられる、
    請求項1~8のいずれか1項に記載の導電性ペースト。
  10. 請求項1~9のいずれか1項に記載の導電性ペーストを基材上に付与して500℃以上で焼成することを包含する、電子部品の製造方法。
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