JP2023144137A - 地下構造物の周囲岩盤の圧縮装置及び圧縮方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本参考形態では、地下構造物として、地中深くまで施工される深礎杭を例に説明する。地下構造物に支持される地上構造物は橋脚であるが、建物などの建築物であってもよい。深礎杭は岩盤に埋め込まれた概ね円筒形の地下構造物である。図1は本参考形態の概念図を示している。図1(a)は地下構造物1の平面図を、図1(b)は図1(a)のA-A線に沿った断面図を示している。図2(a)は地下構造物1と地上構造物2とストランドSの斜視図を、図2(b)はストランドSの斜視図を示している。地下構造物1の周囲に沿って、複数のストランドSが設けられている。ストランドSは地下構造物1から径方向に離れた位置を周回しており、ストランドSと地下構造物1との間には岩盤Rが介在している。ストランドSは、岩盤Rに掘削された案内孔(図示せず)の内部を延びている。ストランドSはPC鋼材(PCケーブル)からなるが、アラミド繊維や炭素繊維などからなるケーブルであってもよい。ストランドSは、岩盤Rの複数の深さレベルに、概ね等間隔で水平に設けられている。各深さレベルのストランドSは、地下構造物1の全周を円状に取り囲む複数の分割ストランドS1,S2で構成されている。本参考形態では、各深さレベルに地下構造物1の周囲を半周する2本の分割ストランドS1,S2が設けられている。分割ストランドの数は限定されず、分割ストランドの長さが互いに異なっていてもよい。地下構造物1の全周を1本のストランドSが周回していてもよい。すなわち、各深さレベルにおいて、地下構造物1の側面に沿って少なくとも一つのストランドSが設けられ、ストランドSが地下構造物1の全周を円状に取り囲んでいる限り、ストランドSの数や長さは限定されない。
図4(a)は、第2の参考形態における地下構造物1と地上構造物2とストランドSの斜視図を、図4(b)はストランドSの斜視図を示している。ここでは第1の参考形態との違いを中心に説明する。説明を省略した構成、効果等は第1の参考形態と同様である。ストランドSは、地下構造物1の周囲をらせん状に延びている。図示は省略するが、ストランドSの両端は岩盤Rに支持された定着具10に固定され、緊張されている。ストランドSの一端を線11で示すようにピット3の外側の岩盤Rまで延長し、端部をグラウトで固定してもよい。ストランドSの両端は鉛直方向にみて同じ角度位置にあるため、一つのピット3を設けるだけでよい。ストランドSの両端の角度位置は互いに異なっていてもよい。例えば、ストランドSの両端の角度位置が180度異なっていれば、第1の参考形態と同様、2つのピット3が設けられる。ストランドSの巻き数は第1の参考形態におけるストランドSの段数にほぼ相当し、必要とされる耐震性やコスト、工期を勘案して適宜設定することができる。本参考形態はストランドSの巻き数に拘わらず2つの定着具10があればよいため、定着具10の数を減らすことができる。また、ピット3も一つでいいため、施工コストの削減が可能である。
図5(a)は、第3の参考形態における地下構造物1と地上構造物2とストランドSの斜視図を、図5(b)はストランドSの斜視図を、図5(c)はストランドSの平面図を示している。図5(c)では上段部のストランドSは全長に渡って示されているが、中段部と下段部のストランドSは両側の端部領域16だけが示されている。各ストランドSは、地下構造物1の全周を円状に取り囲んでいる。各ストランドSは交差部15で交差し、交差部15から両端17までの端部領域16は、地上に位置する両端17に向けて斜め上方に延びている。端部領域16は鉛直方向にみて概ね直線状に延びている。ストランドSの両端17はそれぞれ定着部10に支持されている。つまり、定着部10はストランドSの総数の2倍の数設けられている。定着部10は地上の岩盤や支持構造物に支持されている。両側の定着部10でストランドSを緊張させることによって、地下構造物1を径方向内側に押し付ける圧縮力が岩盤Rに加えられ、第1の参考形態と同様の効果が得られる。また、本参考形態ではピット3を設ける必要がないため、施工コストの削減及び工期の短縮が可能である。
図7は、第4の参考形態の図5と同様の図である。ここでは第1の参考形態との違いを中心に説明する。説明を省略した構成、効果等は第1の参考形態と同様である。本参考形態では、3つのストランドSが設けられている。各ストランドSは地下構造物1を周方向に部分的に取り囲み、両端17が地上に設置されている。各ストランドSは地下構造物1を120度の範囲で弧状に取り囲む弧状部19を有しており、3つのストランドSは互いに120度ずれている。従って、地下構造物1の全周は3つのストランドSによって取り囲まれている。ストランドSの数は3つに限定されず、2つまたは4つ以上でもよい。図示は省略するが、複数のストランドSを複数の深さレベルにそれぞれ設けてもよい。各ストランドSは、弧状部19の両端に接続された端部領域20を有している。端部領域20は弧状部19の端部から、地上に位置する両端17に向けて斜め上方に延びている。端部領域20は鉛直方向にみて概ね直線状に延びている。定着具10は、ストランドSの両端17にそれぞれ設けられている。本参考形態でも、端部領域20の長さはストランドSの設置深さレベルによって異なる。深い位置に設置されたストランドSほど、端部領域20が長くされている。これによって、端部領域20の勾配をストランドS間で揃えることができる。本参考形態では第3の参考形態と比べて各ストランドSの長さが短く、ストランドSが湾曲する範囲も限定されているため、案内孔の掘削やストランドSの設置が容易である。また、3つのストランドSは並行して施工できるため、工期短縮上有利である。なお、岩盤Rに均等に圧縮力を加えるため、3つのストランドSの緊張作業は同時に行うことが好ましい。
図10は、第1の実施形態を示す概念図であり、図10(a)は地下構造物1の平面図を、図10(b)は図10(a)のA-A線に沿った断面図を示している。ここでは第1の参考形態との違いを中心に説明する。説明を省略した構成、効果等は第1の参考形態と同様である。異なる深さレベルに水平に延びる複数のストランドSが設けられている。各深さレベルでは、8本のストランドSが地下構造物1から水平方向に延び、合計4段のストランドSが設けられている。8本のストランドSは、地下構造物1を中心に等間隔で放射状に延びている。地下構造物1の側壁に沿って、各段のストランドSと同数(本実施形態では8つ)のピット3が設けられている。定着具10は地下構造物1に固定されている。ストランドSの他端はピット3の側壁から掘削された案内孔(図示せず)に挿入され、グラウトGにより岩盤Rに定着されている。本実施形態では上述の各参考形態と異なり、ストランドSの緊張によるたが効果ではなく、ストランドSの圧縮力で岩盤Rを圧縮する。第1の参考形態と同様、一体化領域R1は地下構造物1と概ね同心の環状の領域となる。ピット3が地下構造物1の側壁に沿って設けられるため、本実施形態は敷地面積が限定されている場合に有利である。
図12は、第2の実施形態を示す概念図であり、図12(a)は平面図、図12(b)は図12(a)のA-A線に沿った断面図である。ここでは第1の参考形態との違いを中心に説明する。説明を省略した構成、効果等は第1の参考形態と同様である。複数のストランドSは、地下構造物1に支持される地上構造部2から斜め下方に、地下構造物1から離れる方向に延びている。地下構造物1の頂部に橋脚の周囲を覆う円形の支持部31が設けられ、複数の定着具10が地上構造部2の一部である支持部31に設けられている。ストランドSの下端はグラウトGによって岩盤Rに定着され、ストランドSは定着具10によって緊張されている。岩盤Rには緊張力の水平成分が地下構造物1を中心に放射状に加えられる。この緊張力の水平成分によって、地下構造物1の周囲の岩盤Rが地下構造物1に向けて圧縮され、第1の実施形態と同様の効果を奏する。本実施形態では、複数段のストランドSを設けなくても鉛直方向の広い領域に圧縮力を加えることができるため、ストランドSと定着具10の数を減らすことができる。
図15は、第3の実施形態を示す概念図であり、図15(a)は平面図、図15(b)は図15(a)のA-A線に沿った断面図である。本実施形態では、地下構造物1は例えば円筒形の地下タンクであり、ストランドSは主にタンクの周辺の岩盤Rの遮水性を高める目的で設置される。本実施形態では、地下構造物は新設であり、ストランドSとともに設けられる。タンクの構造は限定されないが、例えば岩盤を掘削して形成した地下空洞に鉄筋コンクリート製の躯体または金属製のライナを施工したものが挙げられる。本実施形態では、水平に延びる複数のストランドSが、異なる深さレベルに、複数段(本実施形態では合計4段)設けられている。各段には複数(本実施形態では8本)のストランドSが等間隔で設けられている。ストランドSの一端はグラウトGで岩盤Rに定着され、ストランドSの他端は定着具10に接続されている。定着具10は地下構造物1の内部に設けられているが、地下構造物1の外部に設けられてもよい。
図10に示す第1の実施形態について、岩盤Rの3次元FEM解析を行った。図16(a)は地下構造物1と、地下構造物1に支持された地上構造物2と、岩盤Rの3次元FEM解析モデルを示している。地上構造物2に図示の位置で水平方向の荷重を加え、地上構造物2、地下構造物1及び岩盤Rの水平変位を求めた。水平方向の力は地震時の水平力を模擬している。解析は、ストランドSを配置しない場合(比較例)、地下構造物1の上部から下部に渡って10段のストランドSを配置した場合(実施例1)、地下構造物1の上部のみに5段のストランドSを配置した場合(実施例2)について実施した。図16(b)は実施例1における変位のコンター図であり、薄い色は変位が大きく、濃い色は変位が小さいことを示している。これより、地下構造物1の周囲の岩盤Rが地下構造物1とほぼ同じ挙動を示すことがわかる。これは、上述の通り、岩盤Rに作用する圧縮力のため、岩盤Rが地下構造物1に抱き込まれ、あるいは地下構造物1と一体化されたためであると考えられる。他の実施形態及び参考形態についても同様の結果が得られると考えられる。
2 地上構造物
3 ピット
10,33 定着具
12 らせん部
13 上部接続部
14 下部接続部
32 プレストレス付与手段
100 圧縮装置
G グラウト
R 岩盤
S ストランド
S1,S2 分割ストランド
S3 他のストランド(鉛直ストランド)
Claims (10)
- 岩盤の内部を地下構造物から放射状に延びる複数のストランドと、
前記複数のストランドを緊張させ、前記複数のストランドの外側端部より内側の岩盤を圧縮させる複数の定着具と、を有する、地下構造物の周囲岩盤の圧縮装置。 - 前記複数のストランドは前記地下構造物から水平方向に延び、前記複数のストランドの一端は岩盤または前記地下構造物に定着され、前記複数の定着具は、前記複数のストランドの他端側に位置する前記地下構造物または岩盤に設けられている、請求項1に記載の圧縮装置。
- 前記複数のストランドの前記外側端部より内側の岩盤の内部を鉛直に延びる複数の他のストランドと、前記複数の他のストランドを緊張させ、前記複数のストランドの前記外側端部より内側の岩盤を圧縮させる複数の他の定着具と、を有する、請求項2に記載の圧縮装置。
- 前記複数のストランドは、前記地下構造物に支持される地上構造部から斜め下方に、前記地下構造物から離れる方向に延び、前記複数のストランドの下端は岩盤に定着され、前記複数の定着具は前記地上構造部に設けられている、請求項1に記載の圧縮装置。
- 前記地上構造部に設けられた前記複数のストランドの支持部と、前記支持部に円周方向のプレストレスを加えるプレストレス付与手段と、を有する、請求項4に記載の圧縮装置。
- 前記地上構造部に設けられた前記複数のストランドの支持部を有し、前記支持部は前記ストランド毎に周方向に分割されている、請求項4に記載の圧縮装置。
- 前記地下構造物の側方の岩盤に設けられ、前記定着具を収容するピットを有する、請求項2または3に記載の圧縮装置。
- 前記少なくとも一つのストランドは、前記地下構造物の上側半分の領域だけに設けられている、請求項1に記載の圧縮装置。
- 岩盤の内部を地下構造物から放射状に延びる複数のストランドを設けることと、
複数の定着具によって前記複数のストランドを緊張させ、前記複数のストランドの外側端部より内側の岩盤を圧縮させることと、を有する、地下構造物の周囲岩盤の圧縮方法。 - 前記複数のストランドを緊張させる前に岩盤の亀裂にグラウト材を注入する、請求項9に記載の圧縮方法。
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