JP2023143912A - コンクリート構造物の補強体及び補強方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】コンクリート構造物の素地を視認可能であるとともに、コンクリート構造物の補強性能、及び有害ガスの発生を抑制する効果に優れたコンクリート構造物の補強体を提供する。【解決手段】コンクリート構造物の表面に少なくとも補強層及び保護層が順次設けられたコンクリート構造物の補強体である。補強層は、目付量が500~1000g/m2及び目開きが1~25mmのガラス繊維シートとコンクリート構造物用接着剤の硬化物とが一体化された構造を有する。保護層は、無機成分を含有する保護塗料の塗膜である。ガラス繊維シートの屈折率とコンクリート構造物用接着剤の硬化物の屈折率との差が0.04未満である。【選択図】なし

Description

本発明は、コンクリート構造物の補強体及び補強方法に関する。詳細には、本発明は、道路トンネルなどのコンクリート構造物の補強体及び補強方法に関する。
コンクリート構造物の補強は、一般に、劣化コンクリートの除去、ひび割れ補強剤の注入、覆工コンクリートの打設といった手順が取られるが、高所での重作業が多いため、簡便な方法が求められている。
これに対して、合成繊維製の織物、編物、不織布などを補強部に貼り、その上から樹脂を塗布して硬化させる、いわゆるFRP(fiber reinforced plastic)を形成する補強方法が提案されている。合成繊維としては、従来は、アラミド系繊維、炭素繊維が用いられてきた。
また近年、コンクリート構造物の表面の補強を行った後に、コンクリート構造物の経時変化の監視を継続する必要が多くなっている。しかしながら、従来の方法で補強を行ったコンクリート構造物の表面は、不透明な樹脂やシート部材などの補強層で被覆されており、外部からコンクリート構造物の素地の状態を目視によって観察することが困難であった。
そのため、従来の補強方法による補強層で覆われたコンクリート構造物では、素地の状態を外部から目視によって観察する際には表面に施された既存の補強層の一部を除去し、素地を露出させるための点検用窓を形成する必要があった。
しかしながら、コンクリート構造物の素地の状態を観察するための点検用窓を形成すると、その部分の強度が低下してしまうといった懸念や、点検用窓の部分が補強層の劣化の起点となり得るという懸念があった。
そこで、接着剤及び繊維シートを用いて施工後のコンクリート構造物の素地を観察可能にする施工方法が提案されている。例えば、特許文献1には、コンクリート構造物表面に下塗り樹脂(アクリル樹脂)を塗布し、該塗布面に繊維基材(ナイロン繊維又はビニロン繊維)を貼り付け、その上に上塗り樹脂(アクリル樹脂)を塗布する、コンクリート構造物の補修方法が提案されている。また、特許文献2には、コンクリート構造物表面に透明ポリウレタン樹脂溶液を塗布した後にガラス連続繊維シートを貼着し、その上から透明ポリウレタン樹脂溶液を塗布してガラス連続繊維シートに含浸させ、これを乾燥させることで固化させて透明又は半透明のコーティング層を形成する、コンクリート構造物表面の強化コーティング方法が提案されている。
特開2006-342538号公報 特開2010-1707号公報
しかしながら、特許文献1及び2に記載の方法は、コンクリートの剥落の抑制を主な目的としているため、これらの方法で形成される層は、補強層として必要な強度を有していない。すなわち、これらの方法で形成される層は引張強度が低く、コンクリート構造物の補強性能が十分でないとともに、有害ガスの発生を抑制する効果も十分に得られないという問題があった。
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、コンクリート構造物の素地を視認可能であるとともに、コンクリート構造物の補強性能、及び有害ガスの発生を抑制する効果に優れたコンクリート構造物の補強体及び補強方法を提供することを目的とする。
本発明者は、鋭意研究を行った結果、コンクリート構造物の表面に、特定の補強層及び特定の保護層を順次設けることにより、上記の問題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、コンクリート構造物の表面に少なくとも補強層及び保護層が順次設けられたコンクリート構造物の補強体であって、
前記補強層は、目付量が500~1000g/m2及び目開きが1~25mmのガラス繊維シートとコンクリート構造物用接着剤の硬化物とが一体化された構造を有し、
前記保護層は、無機成分を含有する保護塗料の塗膜であり、
前記ガラス繊維シートの屈折率と前記コンクリート構造物用接着剤の硬化物の屈折率との差が0.04未満である、コンクリート構造物の補強体である。
また、本発明は、コンクリート構造物の表面に少なくとも補強層及び保護層を順次形成するコンクリート構造物の補強方法であって、
前記補強層は、目付量が500~1000g/m2及び目開きが1~25mmのガラス繊維シートとコンクリート構造物用接着剤の硬化物とが一体化された構造を有し、
前記保護層は、無機成分を含有する保護塗料の塗膜であり、
前記ガラス繊維シートの屈折率と前記コンクリート構造物用接着剤の硬化物の屈折率との差が0.04未満である、コンクリート構造物の補強方法である。
本発明によれば、コンクリート構造物の素地を視認可能であるとともに、コンクリート構造物の補強性能、及び有害ガスの発生を抑制する効果に優れたコンクリート構造物の補強体及び補強方法を提供することができる。
以下、本発明の好適な実施形態について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されて解釈されるべきものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、改良などを行うことができる。実施形態に開示されている複数の構成要素は、適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
本発明の実施形態に係るコンクリート構造物の補強体は、コンクリート構造物の表面に少なくとも補強層及び保護層が順次設けられている。また、本発明の実施形態に係るコンクリート構造物の補強方法(以下、「補強方法」と略すことがある)は、コンクリート構造物の表面に少なくとも補強層及び保護層を順次形成することにより行われる。なお、特段の記載がない限り、コンクリートとは、セメントペースト、モルタル、コンクリートを総称するものとする。
補強層は、FRP層とも称され、ガラス繊維シートとコンクリート構造物用接着剤の硬化物とが一体化された構造を有する。
補強層を構成するガラス繊維シートは、ガラスヤーンやガラスロービングと呼ばれるガラス繊維を織布、不織布、組布などに成形することで得ることができる。ガラス繊維を用いた織布、不織布、組布などは市販されているため、当該市販品を用いてもよい。
また、ガラス繊維シートが織布や組布である場合、その軸構造は特に限定されず、二軸構造、三軸構造などの各種多軸構造のいずれであってもよい。その中でも、ガラス繊維シートは、経方向の繊維と緯方向の繊維とが直交した二軸織布であることが好ましい。二軸織布のガラス繊維シートを用いることにより、下地視認性を高めつつ、ガラス繊維シート及び補強層の引張強度を向上させることができる。
ガラス繊維シートの目付量は、500~1000g/m2、好ましくは600~800g/m2である。目付量を500g/m2以上とすることにより、補強層の引張強度が150kN/m以上となるため、所望の補強性能を得ることができる。また、目付量を1000g/m2以下とすることにより、補強層の柔軟性や施工性を確保できる。
ガラス繊維シートの目開きは、特に限定されないが、好ましくは1~25mm、より好ましくは2~10mmである。目開きを上記の範囲に制御することにより、コンクリート構造物に対する補強層の接着性が向上するとともに、火災時の延焼などを抑制する効果を高めることができる。
ガラス繊維シートを形成するガラス繊維は、12質量%以上のZrO2、及び10質量%以上のR2O(RはLi、Na及びKから選択される少なくとも1種)を含有することが好ましい。ZrO2及びR2Oの含有量を上記の範囲に制御することにより、コンクリート構造物由来のアルカリ成分によってガラス繊維シートが劣化し難くなるため、補強層の強度が低下することを抑制できる。
ガラス繊維シートは、ガラス繊維以外の成分を含有してもよい。ガラス繊維以外の成分としては、特に限定されないが、ガラス以外の成分からなる繊維、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、無機化合物、金属などが挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ガラス繊維シートは、少なくとも1つの方向の繊維が熱融着繊維を含むことが好ましい。ここで、熱融着繊維とは、熱によって溶ける繊維のことを意味する。熱融着繊維を用いることにより、ガラス繊維を接着でき、ガラス繊維シートが解れるのを抑制できる。熱融着繊維の例としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維などが挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ガラス繊維シートは、ガラス繊維以外の成分の含有量が50g/m2以下であることが好ましく、50g/m2未満であることがより好ましい。ガラス繊維以外の成分の含有量を50g/m2以下に制御することにより、下地視認性を高めることができる。
補強層に用いられるコンクリート構造物用接着剤は、硬化することによってガラス繊維シートと一体化する。
コンクリート構造物用接着剤としては、特に限定されないが、(メタ)アクリル樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、エポキシ樹脂及びシリコーン樹脂からなる群から選択された少なくとも1種の樹脂を含む組成物であることが好ましく、(メタ)アクリル樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、エポキシ樹脂及びシリコーン樹脂からなる群から選択された少なくとも1種の樹脂を主成分として含む組成物であることがより好ましく、(メタ)アクリル樹脂及びエポキシ樹脂からなる群から選択された少なくとも1種の樹脂を主成分として含む組成物であることが最も好ましい。これらの樹脂を含有させることにより、補強層の引張強度を向上できる。
ここで、本明細書において「主成分」とは、全体に占める割合が50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上であることを意味する。
(メタ)アクリル樹脂を含む組成物は、常温で硬化する点で、(メタ)アクリレート、ラジカル重合開始剤及び分解促進剤を含有することが好ましい。ここで、(メタ)アクリルとは、アクリル基及びメタクリル基からなる群から選択された少なくとも1種を含む。(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートからなる群から選択された少なくとも1種を含む。
(メタ)アクリレートの中では、本発明の効果が大きい点で、芳香族基を有する(メタ)アクリレート及びアルキル(メタ)アクリレートからなる群から選択された少なくとも1種を含むことが好ましい。芳香族基を有する(メタ)アクリレートの中では、ベンジル(メタ)アクリレートが好ましい。アルキル(メタ)アクリレートの中では、シクロヘキシル(メタ)アクリレートが好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、有機過酸化物が好ましい。有機過酸化物の中では、本発明の効果が大きい点で、クメンヒドロペルオキシドが好ましい。
ラジカル重合開始剤の使用量は、(メタ)アクリレート100質量部に対して、0.5~10質量部が好ましく、1~7質量部がより好ましい。
分解促進剤は、常温にてラジカル重合開始剤と反応し、ラジカルを発生するものが好ましい。分解促進剤としては、金属塩が好ましい。金属塩の中では、本発明の効果が大きい点で、オクチル酸コバルトが好ましい。
分解促進剤の使用量は、(メタ)アクリレート100質量部に対して、0.05~10質量部が好ましく、0.1~4質量部がより好ましい。
エポキシ樹脂を含む組成物は、硬化性の点で、A剤に少なくとも主剤を、B剤に少なくとも硬化剤を別々に貯蔵する。この場合、両剤を同時に又は別々に被着体に塗布して接触、硬化することにより、使用できる。
エポキシ樹脂としては、芳香族エポキシ樹脂が好ましい。芳香族エポキシ樹脂の中では、ビスフェノール構造を有する化合物が好ましい。ビスフェノール構造を有する化合物としては、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテルが好ましい。
硬化剤は、エポキシ樹脂を硬化させうる成分である。硬化剤としては、アミン化合物が好ましい。
硬化剤の使用量は、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して、硬化剤の活性水素当量が0.5~1.5当量が好ましく、0.8~1.3当量がより好ましい。
硬化剤の使用量は、エポキシ樹脂100質量部に対して、30~100質量部が好ましく、50~70質量部がより好ましい。
コンクリート構造物用接着剤(組成物)は、必要に応じて無機成分を更に含んでもよい。無機成分としては、金属元素(典型元素、遷移元素)の酸化物を含むことが好ましい。金属元素(典型元素、遷移元素)の酸化物の中では、酸化チタンが好ましい。
無機成分の使用量は、樹脂100質量部に対して、0.5~10質量部が好ましく、1~7質量部がより好ましい。
コンクリート構造物用接着剤は、その性能を低下させない範囲において、オイル、ゴム、粘度調整剤、顔料、染料、可塑剤、増感剤、触媒、重合禁止剤、ワックス、粘着付与剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、難燃剤、有機溶剤などの公知の成分を更に含むことができる。
コンクリート構造物用接着剤の硬化方法は、特に限定されず、公知の様々な硬化方法を用いることができる。例えば、揮発成分を揮発させることで硬化する方法、コンクリート構造物用接着剤の成分を空気中の水分と反応させることで硬化する方法、主剤及び硬化剤の二剤(又はそれ以上)を混合させて化学反応により硬化する方法、熱や光などの外部エネルギーを与えて硬化する方法などを用いることができる。これらの中でも、補強層の強度や、コンクリート構造物に対する施工性を考慮すると、二剤を混合させて化学反応により硬化させる方法が好ましい。
コンクリート構造物用接着剤は2種以上を併用してもよい。2種以上のコンクリート構造物用接着剤を併用する場合、2種以上のコンクリート構造物用接着剤を予め混合して使用してもよいし、1種目のコンクリート構造物用接着剤を塗工した後に、2種目以降のコンクリート構造物用接着剤を使用してもよい。
コンクリート構造物用接着剤の硬化物は、ガードナー色数が8以下であることが好ましい。ガードナー色数を8以下に制御することにより、下地視認性を高めることができる。ガードナー色数は、JIS K 0071-2:1998に準拠して測定することができる。
補強層を構成するガラス繊維シート及びコンクリート構造物用接着剤の硬化物は、それらの屈折率の差が0.04未満、好ましくは0.025以下、より好ましくは0.025未満である。このような範囲に屈折率の差を制御することにより、下地視認性を確保できる。
ここで、本明細書において「屈折率」とは、JIS K7142:2014に準拠して測定される屈折率のことを意味する。
補強層に用いられるガラス繊維シート及びコンクリート構造物用接着剤を用いてJIS A1191:2004に準拠して作製されたB形試験片の単位長さあたりの引張強度は、好ましくは150kN/m以上、より好ましくは175kN/m以上である。ここで、B形試験片とは、ガラス繊維シートにコンクリート構造物用接着剤を含浸させたものをいう。このような範囲の引張強度であれば、従来の炭素繊維シートやアラミド繊維シートを用いたコンクリート構造物の補強方法に匹敵する補強性能を発現できる。
補強層は、上記のガラス繊維シート及びコンクリート構造物用接着剤を用いて形成される。具体的には、補強層は、ガラス繊維シートにコンクリート構造物用接着剤を含浸させた後、コンクリート構造物用接着剤を硬化させることによって形成される。
コンクリート構造物の表面に補強層を形成する場合、コンクリート構造物の表面にコンクリート構造物用接着剤を塗布し、その塗布面にガラス繊維シートを配置した後、ガラス繊維シートにコンクリート構造物用接着剤を含浸させて硬化させればよい。
コンクリート構造物用接着剤の塗布方法としては、ローラー、コテ、ヘラによる塗付け、スプレー塗装などの既知の方法を用いることができる。
コンクリート構造物用接着剤は、一度に全て塗布しても、二度以上に分けて塗布してもよいが、二度以上に分けて塗布することが好ましい。コンクリート構造物用接着剤を二度以上に分けて塗布することで、液だれなどを防止しつつ、ガラス繊維シートとの一体化に必要な量を塗布することができる。コンクリート構造物用接着剤を二度以上に分けて塗布する場合、ガラス繊維シートを配置した後、その上にコンクリート構造物用接着剤を塗布すればよい。
コンクリート構造物用接着剤の塗布量は、ガラス繊維シート1枚に対して、好ましくは0.2~2.0kg/m2、より好ましくは0.5~1.4kg/m2である。コンクリート構造物用接着剤の塗布量を0.2kg/m2以上に制御することにより、ガラス繊維シートを固定できる。また、コンクリート構造物用接着剤の塗布量を2.0kg/m2以下に制御することにより、下地視認性を高めることができる。
ガラス繊維シートにコンクリート構造物用接着剤を含浸させる方法としては、特に限定されないが、脱泡ローラーを用いることが好ましい。脱泡ローラーを用いることにより、コンクリート構造物用接着剤及びガラス繊維シート内の気泡が取り除かれるため、ガラス繊維シートにコンクリート構造物用接着剤を含浸させ易くなる。
補強層は、ガラス繊維シートとして、2枚以上のガラス繊維シートを含むことが好ましく、特に2枚のガラス繊維シートを含むことがより好ましい。2枚以上のガラス繊維シートを用いることで、既存の炭素繊維シートやアラミド繊維シートを用いた補強方法と同等の補強性能を発揮できる。
2枚以上のガラス繊維シートを用いる場合、ガラス繊維シートは、コンクリート構造物用接着剤の塗布面に対して一度に2枚以上配置してもよく、二度以上に分けて1枚ずつ配置してもよいが、二度以上に分けて1枚ずつ配置することが好ましい。ガラス繊維シートを二度以上に分けて1枚ずつ配置することで、自重によるガラス繊維シートの落下を抑制できる。ガラス繊維シートを二度以上に分けて1枚ずつ配置する場合、コンクリート構造物用接着剤の塗布面にガラス繊維シートを配置した後、その上にコンクリート構造物用接着剤を更に塗布し、その塗布面にガラス繊維シートを配置することを繰り返し行えばよい。
補強層には、必要に応じて、アンカーピン、アンカーボルトなどの公知の技術を用いたガラス繊維シートの落下防止策を講じてもよい。アンカーピン、アンカーボルトの使用点数(本数)については特に限定されないが、アンカーピン、アンカーボルトによって補強層が覆われる面積は、補強層全体の20%以下であることが好ましく、20%未満であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、10%未満であることが最も好ましい。補強層が覆われる面積を上記の範囲に制御することにより、下地視認性を確保できる。
補強層をコンクリート構造物の表面に形成する前に、必要に応じてコンクリート構造物の下地処理を行ってもよい。コンクリート構造物の下地処理を行うことにより、コンクリート構造物に対する補強層の接着性を長期に渡って維持できる。
下地処理は、レイタンスや表面の汚れ、劣化した素地の除去をするために行われるものであり、ウォータージェット処理、サンドブラスト処理、サンダーケレン処理、ワイヤーブラシなどの公知の技術を用いることができる。
また、補強層をコンクリート構造物の表面に形成する前に、必要に応じてコンクリート構造物の断面修復を行ってもよい。断面修復を行うことにより、コンクリート構造物に対する補強層の接着性を向上できる。
断面修復材料としては、コンクリート、モルタル、セメントペースト、グラウト材、ポリマーセメントモルタル、樹脂モルタルなどの公知の材料を用いることができる。これらの材料は、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
更に、補強層をコンクリート構造物の表面に形成する前に、必要に応じてコンクリート構造物の表面にプライマーを塗工してもよい。プライマーを塗工することにより、コンクリート構造物と補強層との接着性を向上させるだけでなく、プライマーがひび割れなどの劣化したコンクリート構造物に含浸してコンクリート構造物を健全化できる。また、プライマーは、コンクリート構造物より滲出する水分、アルカリ金属類、気体などを阻害し、長期に渡って補強層の性能を維持する機能も有する。
プライマーとしては、(メタ)アクリル樹脂系プライマー、エポキシ樹脂系プライマー、ビニルエステル樹脂系プライマー、シリコーン樹脂系プライマー、無機系プライマーなどの公知の材料を用いることができる。これらの材料は、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
プライマーは、その硬化物のガードナー色数が8以下であることが好ましい。ガードナー色数を8以下に制御することにより、下地視認性を高めることができる。
プライマーの塗布量は、コンクリート構造物の状態により変わるが、一般的には、0.05~1.0kg/m2である。
プライマーの塗布方法としては、特に限定されず、ローラー、刷毛、コテ、ヘラなどによる塗付けや、スプレー塗装など公知の方法を用いることができる。
また、補強層をコンクリート構造物の表面に形成する前に、必要に応じて事前に構造物の不陸調整を行ってもよい。不陸調整を行うことにより、コンクリート構造物の表面に補強層を均一に形成できるため、大面積に渡って補強性能を安定的に発揮できる。
不陸調整には、不陸調整材を用いることができる。不陸調整材としては、樹脂及び骨材を併用した樹脂モルタルやポリマーセメントモルタルなどの公知の材料を用いることができる。これらの材料は、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
不陸調整材は、その硬化物のガードナー色数が8以下であることが好ましい。ガードナー色数を8以下に制御することにより、下地視認性を高めることができる。
不陸調整材の塗布量は、表面の凹凸状態により変わるが、一般的には、1.8kg/m2以下が好ましく、1.8kg/m2未満がより好ましい。
不陸調整材の塗布方法としては、コテやヘラによる塗付け、スプレー塗装など公知の方法を用いることができる。
保護層は、保護塗料の塗膜であり、補強層の表面に形成される。ここで、本明細書において「塗膜」とは保護塗料の硬化物を意味する。
保護層を形成する保護塗料は、融点が1000℃以下の無機成分を含有する。このような無機成分を保護塗料に含有させることにより、火災時に無機成分が溶融してガラス質塗膜を形成するため、延焼や有害ガスの発生を抑制する効果を得ることができる。なお、無機成分の融点の下限は、特に限定されないが、一般に400℃である。
ここで、本明細書において「融点」とは、示差走査熱量計(DSC)によって測定される融点のことを意味する。
融点が1000℃以下の無機成分としては、二酸化ケイ素、ケイ酸、ケイ酸塩、シリカなどのSiO2含有成分;金属元素(典型元素、遷移元素)、非金属元素、及びこれらの水素化合物、酸化物、オキソ酸塩、水酸化物、ハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩;金属錯体(配位化合物)などが挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、ケイ酸塩としては、例えば、アルミノケイ酸塩、ウルトラマリン、エジプシャンブルー、苦土イットリウムローランド石、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸ハフニウム(IV)、ケイ酸マグネシウム、水酸エレスタド石、砥部雲母、ヘキサフルオロケイ酸ナトリウム、ベントナイトなどが挙げられる。
保護塗料は、有機系バインダーを更に含有できる。保護塗料に有機系バインダーを含有させることにより、無機成分の結合力を高め、塗膜を安定して形成できる。
有機系バインダーとしては、ワックス、ポリビニルアルコール、パラフィン、ポリビニルブチラール、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、グリオキザール樹脂、フェノール樹脂、ブタジエン樹脂、ポリカルボン酸、脂肪酸、脂肪酸アミド、ポリエステルなどが挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
融点が1000℃以下の無機成分と有機系バインダーとの固形分質量比は、30:70~70:30であることが好ましい。このような範囲に固形分質量比を制御することにより、塗膜形成性と、保護層による効果(火災時の延焼や有害ガスの発生を抑制する効果)とを安定的に両立できる。
無機成分は、無機成分中のSiO2の含有量が30質量%以上であることが好ましい。このような範囲にSiO2の含有量を制御することにより、保護層による上記の効果を安定して向上できる。
保護塗料は、その性能を低下させない範囲において、無機充填材、オイル、ゴム、粘度調整剤、顔料、染料、可塑剤、重合開始剤、増感剤、触媒、重合禁止剤、ワックス、粘着付与剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、難燃剤、有機溶剤などの公知の成分を含有できる。
保護層(塗膜)は、補強層の表面に保護塗料を塗布した後、硬化させることによって形成される。
保護塗料の硬化方法は、特に限定されず、公知の様々な方法を用いることができる。例えば、保護塗料の揮発成分を揮発させることで硬化する方法、保護塗料の成分を空気中の水分と反応させることで硬化する方法、主剤及び硬化剤の二剤(又はそれ以上)を混合させて化学反応により硬化する方法、熱や光などの外部エネルギーを与えて硬化する方法などを用いることができる。これらの中でも、無機成分との相性や施工性を考慮すると、保護塗料の揮発成分(水分)を揮発させることで硬化する方法が好ましい。
保護塗料の塗布は、ローラー、刷毛、コテ、ヘラによる塗付け、スプレー塗装など公知の方法を用いることができる。
保護塗料の塗布量は、固形分換算で、好ましくは0.01~1.0kg/m2、より好ましくは0.02~0.2kg/m2である。
保護層(塗膜)は、ガードナー色数が8以下であることが好ましい。ガードナー色数を8以下に制御することにより、下地視認性を高めることができる。
本発明の実施形態に係るコンクリート構造物の補強体及び補強方法は、必要に応じて、補強層と保護層との間又は保護層の表面上に、当該技術分野において公知の塗膜、接着層、繊維シート、フィルム、樹脂成形物などを単独又は組み合わせて設けてもよい。
本発明の実施形態に係るコンクリート構造物の補強体は、日本国の建築基準法に基づく防耐火性能試験・評価業務方法書に定めるガス有害性試験(複数匹のマウスを用いる)に供した際に、試験開始からマウスが行動を停止するまでの平均時間が6.8分以上であることが好ましい。このような平均時間であれば、トンネル火災を想定した際に、避難者が有害な燃焼ガスに巻き込まれて生命に危険を及ぼす可能性が低くなる。そのため、本発明の実施形態に係るコンクリート構造物の補強体をトンネル内で使用することが可能となる。
本発明の実施形態に係るコンクリート構造物の補強体は、NEXCO試験法738における延焼性試験において、消炎時間が30秒以下、燃焼による火災の先端が着火点より600mm未満であることが好ましい。このような消炎時間などであれば、トンネル火災を想定した際に、避難者が有害な燃焼ガスに巻き込まれて生命に危険を及ぼす可能性が低くなる。そのため、本発明の実施形態に係るコンクリート構造物の補強体をトンネル内で使用することが可能となる。
ここで、本明細書において「NEXCO試験法738における延焼性試験」とは、NEXCO試験法738-2011「トンネル補修材料の延焼性試験方法」のことを意味する。
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、実施例21及び22は参考例である。
<ガラス繊維シートの作製>
表1に示す組成の原料を溶融し、ヤーン状に紡糸してガラス繊維(ガラスヤーン)を得た。
次に、所定の本数のガラスヤーンと、ナイロン繊維(熱融着繊維)から形成された熱融着糸とを、集束剤によって束ねてビーム(繊維束)を得た。集束剤として、シランカップリング剤を含有するエマルジョンを用いた。得られたビームを用いて各軸構造のガラス繊維シートを得た。作製したガラス繊維シートの詳細を表2に示す。ビーム構成のうち、「その他」とは、集束剤をいう。
<コンクリート構造物用接着剤>
表3に示す成分を混合してコンクリート構造物用接着剤を調製した。また、調製したコンクリート構造物用接着剤は、その硬化物についてガードナー色数及び屈折率を測定した。その結果も表3にあわせて示す。なお、ガードナー色数及び屈折率は、上述の方法に従って測定した。
表3に示す各成分は以下の通りである。
(アクリル樹脂組成物A)
ビスコート#160(商品名、大阪有機化学社製、ベンジルアクリレート)とパークミルH(商品名、日油社製、クメンヒドロペルオキシド)とオクチル酸コバルト(大崎工業社製)とを100:2:2の質量比で含む、レドックス重合によって硬化するアクリル樹脂組成物である。
(アクリル樹脂組成物B)
ビスコート#155(商品名、大阪有機化学社製、シクロヘキシルアクリレート)とパークミルH(商品名、日油社製、クメンヒドロペルオキシド)とオクチル酸コバルト(大崎工業社製)とを100:2:2の質量比で含む、レドックス重合によって硬化するアクリル樹脂組成物である。
(エポキシ樹脂組成物)
jER828(商品名、三菱ケミカル社製、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル)とST11(商品名、三菱ケミカル社製、変性アミン)とを100:60の質量比で含む、グリシジル基とアミノ基との重付加反応によって硬化するエポキシ樹脂組成物である。
(酢酸ビニル樹脂組成物)
水の揮発によって硬化する一液硬化型接着剤CH18(商品名、コニシ社製、酢酸ビニル樹脂系エマルジョン型接着剤)である。
(水ガラス)
水の揮発によって硬化する、JIS K1408に規定の3号水ガラス(富士化学株式会社製)である。
(酸化チタン)
R820(商品名、石原産業社製、硫酸法酸化チタン)である。酸化チタンは、コンクリート構造物用接着剤の色数を調整するために用いた。
<保護塗料>
SiO2含有成分としてスノーテックス40(商品名、日産化学工業社製、コロイダルシリカ)、その他の無機成分としてTTO-W-5(商品名、石原産業社製、中性チタニアゾル)、有機系バインダーとしてR967(商品名、楠本化成工業社製、水性ポリウレタン樹脂)を用いて、表4に示す組成の保護塗料を作製した。作製した保護塗料の塗膜(硬化物)について、ガードナー色数を上述の方法に従って測定した。また、無機成分の融点を示差走査熱量計(Brucker社製DSC3100SA)にて測定した。その結果も表4にあわせて示す。
上記で得られたガラス繊維シート、コンクリート構造物用接着剤及び保護塗料を用いて下記の評価を行った。各実施例及び比較例で使用した材料の組み合わせを表5に示す。なお、表5において、屈折率の差とは、ガラス繊維シートの屈折率とコンクリート構造物用接着剤の硬化物の屈折率との差を意味する。
(1)視認性
JIS R5201:2015に準拠して作製した150mm×70mm×10mmのモルタル片の施工面(150mm×70mmの面)を#150のペーパーサンダーにてケレンしてレイタンスを除去し、粉塵をエアブローで除去した。施工面の長手方向に対し0.2mm巾、0.5mm巾の2本のひび割れ模様を黒色、HBの鉛筆で書き込んで試験片を得た(以下、「視認性評価用モルタル片」と表記する)。
次に、視認性評価用モルタル片の施工面に、プライマーとしてデンカ社製アクリル系ひび割れ注入補修材(デンカDK550-003R)をローラーで塗布した。プライマーの塗布量は、0.15kg/m2とした。
プライマーを塗布してから15分放置し、プライマー上に補強層を形成した。補強層は、以下により形成した。下塗りとしてコンクリート構造物用接着剤をゴムベラ又は金ゴテで塗布(塗布量0.6kg/m2)した。塗布直後の塗布面に、所定枚数のガラス繊維シートを配置し、脱泡ローラーを用いて下塗り樹脂をガラス繊維シートに含浸させた。下塗り樹脂として、コンクリート構造物用接着剤を用いた。次に、上塗りとしてコンクリート構造物用接着剤をゴムベラ又は金ゴテで塗布(塗布量0.6kg/m2)した後、20℃で24時間養生してコンクリート構造物用接着剤を硬化させ、補強層を形成した。
次に、補強層の表面に保護層を形成した。保護層は、保護塗料を補強層の表面にローラーで塗布(塗布量0.15kg/m2)した後、20℃で7日間養生して保護塗料を乾燥硬化させることにより、保護層を形成した。
視認性は、補強層の形成後、目視でひび割れ模様を観察し、下記の基準で評価した。
〇:0.2mm巾及び0.5mm巾のひび割れ模様が全域に渡って目視確認可能である。
△:0.5mm巾のひび割れ模様が全域に渡って目視確認可能であるが、0.2mm巾のひび割れ模様の一部又は全部が目視確認できない。
×:0.2mm巾及び0.5mm巾の両方のひび割れ模様の一部又は全部が目視確認できない。
(2)耐アルカリ性
JIS R5201:2015に準拠して作製した150mm×70mm×10mmのモルタル片の施工面(150mm×70mmの面)を#150のペーパーサンダーにてケレンしてレイタンスを除去し、粉塵をエアブローで除去することで試験片を得た(以下、「耐アルカリ性評価用モルタル片」と表記する)。
次に、耐アルカリ性評価用モルタル片の施工面に、視認性の評価と同様の条件で、プライマーを塗布した後、その上に、コンクリート構造物用接着剤及びガラス繊維シートを用いて補強層を形成し、保護塗料を用いて保護層を形成した。補強層と保護層は、順次形成した。
耐アルカリ性は、以下により測定した。保護層の形成後、耐アルカリ性評価用モルタル片を、飽和水酸化カルシウム溶液に28日間水没させた。水没させた後、耐アルカリ性評価用モルタル片を当該溶液から引き上げた。表面の状態を直ちに目視で観察し、下記の基準で評価した。
〇:表面に変色、割れ、剥がれ、膨れ、亀裂、流出などが確認されない。
△:表面に変色、割れ、剥がれ、膨れ、亀裂、流出などのいずれかが確認される。
(3)施工性
JIS A5371:2016に準拠して作製した300mm×300mm×60mmのコンクリート普通平板(呼び名:N300)の施工面(300mm×300mmの面)を#150のペーパーサンダーにてケレンしてレイタンスを除去し、粉塵をエアブローで除去することで試験片を得た(以下、「コンクリート平板」と表記する)。
次に、コンクリート平板の300mm×60mmの面を地面に接触させ、施工面が地面と垂直となるように設置した後、視認性の評価と同様の条件で、プライマーを塗布した後、その上に、コンクリート構造物用接着剤及びガラス繊維シートを用いて補強層を形成した。
補強層の形成工程において、コンクリート構造物用接着剤の硬化が完了するまでの状態を目視にて観察し、下記の基準で評価した。
〇:ガラス繊維シートのはがれ、ずり落ち、落下などが無く、コンクリート構造物用接着剤のダレなども発生しない。
△:ガラス繊維シートの軽微なずり落ち、コンクリート構造物用接着剤のダレなどが観察される。
×:ガラス繊維シートのはがれ、落下又は著しいずり落ち、コンクリート構造物用接着剤のダレなどが観察される。
(4)コンクリート接着性
施工性の評価において補強層を形成したコンクリート平板を用い、補強層の表面に、視認性の評価と同様の条件で、保護層を形成した。次に、保護層の表面に、40mm×40mmの鋼製冶具をデンカ社製アクリル系樹脂モルタル(デンカダイナN)で貼り付けて、該冶具に沿ってコンクリート平板に達するまで切込みを入れた。その後、該冶具を、建研式引張接着試験器を用いて貼り付け面に対して垂直に引張り、付着強度(N/mm2)を測定した。測定結果は、下記の基準で評価した。
〇:2.0N/mm2以上(阪神高速道路株式会社補修要領表面保護工法(中防食C種)適合基準)
△:1.5N/mm2以上(NEXCO橋梁構造物はく落防止工法適合基準)
×:1.5N/mm2未満
(5)FRP引張強度
補強層の作製に用いたガラス繊維シート及びコンクリート構造物用接着剤を用い、JIS A1191:2004に準拠してB形試験片(FRP)を作製し、その最大引張荷重(kN)を算出した。次に、下記の式[1]に従い、単位長さあたり(単位長当たり)のFRP引張強度を算出した。
A=F÷A×B ・・・ [1]
A:単位長当たりの試験片の引張強度(kN/m)
F:試験片の最大引張荷重(kN)
A:試験片中の繊維束数(本)
B:ガラス繊維シート1m巾あたりの引張方向に配列した繊維束数(本/m)
(6)補強層の引張強度
上記で得られた単位長当たりのFRP引張強度(kN/m)を用い、下記の式[2]に従い、補強層の引張強度を算出した。
B=fA×C ・・・ [2]
B:補強層の引張強度(kN/m)
A:単位長当たりの試験片の引張強度(kN/m)
C:ガラス繊維シートの枚数(枚)
補強層の引張強度は、下記の基準で評価した。
〇:350kN/m以上
△:300kN/m以上350kN/m未満
×:300kN/m未満
(7)ガス有害性
JIS A5430:2013に準拠して作製した220mm×220mm×10mmのケイ酸カルシウム板の施工面(220mm×220mmの面)の表面の粉塵をエアブローで除去することで試験片を得た。
次に、この試験片の施工面に、視認性の評価と同様の条件で、プライマーを塗布した後、その上に、コンクリート構造物用接着剤及びガラス繊維シートを用いて補強層を形成し、保護塗料を用いて保護層を形成した。補強層と保護層は、順次形成した。
ガス有害性試験は、日本国の建築基準法に基づく防耐火性能試験・評価業務方法書に定めるマウスを使用したガス有害性試験において、マウスの平均行動停止時間(Xs)を算出し、下記の基準で評価した。上記の防耐火性能試験・評価業務方法書としては、例えば、一般財団法人ベターリビングが公開しているものがある。
〇:Xsが7.2分以上
△:Xsが6.8分以上7.2分未満
×:Xsが6.8分未満
(8)延焼性
JIS A5430:2013に準拠して作製した900mm×600mm×12mmのケイ酸カルシウム板の施工面(900mm×600mmの面)の表面の粉塵をエアブローで除去することで試験片を得た。
次に、この試験片の施工面に、視認性の評価と同様の条件で、プライマーを塗布した後、その上に、コンクリート構造物用接着剤及びガラス繊維シートを用いて補強層を形成し、保護塗料を用いて保護層を形成した。補強層と保護層は、順次形成した。
延焼性は、NEXCO試験法738に定める延焼性試験において、消炎時間及び燃焼による火災の先端の着火点を測定し、下記の基準で評価した。
〇:消炎時間が10秒以下で、且つ燃焼による火災の先端が着火点より500mm未満である。
△:消炎時間が30秒以下で、且つ燃焼による火災の先端が着火点より600mm未満である。
×:消炎時間が30秒を超えるか、又は燃焼による火災の先端が着火点より600mm以上である。
上記の各評価結果を表6に示す。
表6に示されるように、特定の補強層及び特定の保護層を形成した実施例1~31の補強方法では、全ての評価が良好であった。
これに対して比較例1の補強方法では、補強層の形成に用いたガラス繊維シートの目付量が少なすぎたため、補強層の引張強度が十分でなかった。
比較例2の補強方法では、補強層の形成に用いたガラス繊維シートの目付量が多すぎたため、補強層の施工性が十分でなかった。
比較例3~6の補強方法では、ガラス繊維シートの屈折率とコンクリート構造物用接着剤の硬化物の屈折率との差が大きすぎたため、視認性が十分でなかった。
比較例7の補強方法では、保護塗料が無機成分を含有していないため、ガス有害性及び延焼が十分でなかった。
比較例8の補強方法では、保護層を形成しなかったため、ガス有害性及び延焼が十分でなかった。
比較例9の補強方法では、ガラス繊維シートを用いなかったため、補強層の引張強度、ガス有害性及び延焼が十分でなかった。
比較例10の補強方法では、コンクリート構造物用接着剤を用いなかったため、補強層(FRP)自体を形成することができず、各評価を行うことができなかった。
以上の結果からわかるように、本発明によれば、コンクリート構造物の素地を視認可能であるとともに、コンクリート構造物の補強性能、及び火災時の延焼や有害ガスの発生を抑制する効果に優れたコンクリート構造物の補強体及び補強方法を提供できる。

Claims (15)

  1. コンクリート構造物の表面に少なくとも補強層及び保護層が順次設けられたコンクリート構造物の補強体であって、
    前記補強層は、目付量が500~1000g/m2及び目開きが1~25mmのガラス繊維シートとコンクリート構造物用接着剤の硬化物とが一体化された構造を有し、
    前記保護層は、無機成分を含有する保護塗料の塗膜であり、
    前記ガラス繊維シートの屈折率と前記コンクリート構造物用接着剤の硬化物の屈折率との差が0.04未満である、コンクリート構造物の補強体。
  2. 前記ガラス繊維シートを形成するガラス繊維は、12質量%以上のZrO2、及び10質量%以上のR2O(RはLi、Na及びKから選択される少なくとも1種)を含有する、請求項1に記載のコンクリート構造物の補強体。
  3. 前記ガラス繊維シートは、経方向の繊維と緯方向の繊維とが直交した二軸織布である、請求項1又は2に記載のコンクリート構造物の補強体。
  4. 前記ガラス繊維シートは、少なくとも1つの方向の繊維が熱融着繊維を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のコンクリート構造物の補強体。
  5. 前記ガラス繊維シートは、ガラス繊維以外の成分の含有量が50g/m2未満である、請求項1~4のいずれか一項に記載のコンクリート構造物の補強体。
  6. 前記コンクリート構造物用接着剤は、(メタ)アクリル樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、エポキシ樹脂及びシリコーン樹脂からなる群から選択された少なくとも1種の樹脂を含む組成物である、請求項1~5のいずれか一項に記載のコンクリート構造物の補強体。
  7. 前記コンクリート構造物用接着剤の硬化物はガードナー色数が8以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載のコンクリート構造物の補強体。
  8. 前記補強層は、2枚以上の前記ガラス繊維シートを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のコンクリート構造物の補強体。
  9. 前記保護塗料は、融点が1000℃以下の無機成分と有機系バインダーとを30:70~70:30の固形分質量比で含有し、且つ前記無機成分中のSiO2の含有量が30質量%以上である、請求項1~8のいずれか一項に記載のコンクリート構造物の補強体。
  10. 前記保護層はガードナー色数が8以下である、請求項1~9のいずれか一項に記載のコンクリート構造物の補強体。
  11. 前記ガラス繊維シート及び前記コンクリート構造物用接着剤を用いてJIS A1191:2004に準拠して作製されたB形試験片の単位長さあたりの引張強度が150kN/m以上である、請求項1~10のいずれか一項に記載のコンクリート構造物の補強体。
  12. 日本国の建築基準法に基づく防耐火性能試験・評価業務方法書に定めるガス有害性試験において、試験開始からマウスが行動を停止するまでの平均時間が6.8分以上である、請求項1~11のいずれか一項に記載のコンクリート構造物の補強体。
  13. NEXCO試験法738における延焼性試験において、消炎時間が30秒以下、燃焼による火災の先端が着火点より600mm未満である、請求項1~12のいずれか一項に記載のコンクリート構造物の補強体。
  14. コンクリート構造物の表面に少なくとも補強層及び保護層を順次形成するコンクリート構造物の補強方法であって、
    前記補強層は、目付量が500~1000g/m2及び目開きが1~25mmのガラス繊維シートとコンクリート構造物用接着剤の硬化物とが一体化された構造を有し、
    前記保護層は、無機成分を含有する保護塗料の塗膜であり、
    前記ガラス繊維シートの屈折率と前記コンクリート構造物用接着剤の硬化物の屈折率との差が0.04未満である、コンクリート構造物の補強方法。
  15. 前記補強層は、前記コンクリート構造物の表面に前記コンクリート構造物用接着剤を塗布し、その塗布面に前記ガラス繊維シートを配置した後、前記ガラス繊維シートに前記コンクリート構造物用接着剤を含浸させて硬化することによって形成される、請求項14に記載のコンクリート構造物の補強方法。
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