JP2023138439A - 部材 - Google Patents

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弘優 徳留
Hiromasa Tokutome
拓真 川崎
Takuma Kawasaki
寿明 鴨志田
Toshiaki Kamoshida
綾子 角崎
Ayako Tsunosaki
萌美 小柳
Moemi Koyanagi
恭子 片岡
Kyoko Kataoka
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Abstract

【課題】 水垢およびタンパク質等の汚染物質の付着を抑制することが可能な部材の提供。【解決手段】 水と、有機成分および/または無機成分を含む汚染物質とが表面に付着し、且つ表面に水と汚染物質とが混在した状態で水が乾燥するというサイクルが繰り返される環境下で使用するための部材であって、当該部材は、基材と表面層とを含み、当該表面層は、特定のスルホベタイン構造および親水性かつノニオン性を有する特定の構造を含むことを特徴とする、部材。【選択図】図1

Description

本発明は、部材に関する。具体的には、水と、有機成分および/または無機成分を含む汚染物質とが表面に付着し、且つ表面に水と汚染物質とが混在した状態で水が乾燥するというサイクルが繰り返される環境下で使用するための部材に関する。
水がかかり得る環境下で使用される部材の表面に水道水が付着し乾燥すると、水道水に含まれる無機成分の付着により、水垢が形成される。代表的な無機成分として、ケイ酸イオン(SiO 2-)およびカルシウムイオン(Ca2+)が挙げられる。ケイ酸イオン(SiO 2-)は脱水縮合によりポリマー化され、カルシウムイオンは大気中あるいは水中のCOと反応して、水の蒸発とともに炭酸カルシウムとして緻密結晶化し、それらが単独でまたは混合物として部材の表面に付着して、水垢が形成される。部材表面への水の付着量が多い場合や、部材表面への水の付着および乾燥が繰り返される場合などは、部材表面におけるケイ酸イオンおよびカルシウムイオンの付着量や付着頻度が増加し、水垢の形成が加速され、部材表面に水垢が強く付着した状態、すなわち部材表面に水垢が固着した状態が生じる。
また、部材の表面には、水だけでなく、上記に示す無機成分(ケイ酸イオン、カルシウムイオンなど)や有機成分(皮脂、石鹸カス、リンス、タンパク質など)など、様々な汚染物質が付着する。これらの汚染物質は、水が乾燥すると部材の表面に残る。多くの場合、部材の表面においてはこれらの汚染物質が少なくとも1種類以上付着するため、乾燥後の部材表面に水垢と汚染物質の混合物が形成される。このような汚れの付着を抑制し、また付着した汚れの清掃性を向上させるため、部材の表面を改質する技術が提案されている。
例えば、特開2008-239949号公報(特許文献1)には、防汚性、防曇性及びその耐摩擦性に優れた表面を有する親水性部材が開示されている。具体的には、末端又は側鎖にシランカップリング基を有する親水性ポリマーに、ベタイン構造を有する両性イオン低分子化合物をシランカップリングで結合させ、Si、Ti、Zr、Alなどの無機成分を導入して緻密化させた親水性膜を基材上に形成した部材が開示されている。
また、WO2017/018146号公報(特許文献2)には、多官能(メタ)アクリルアミドモノマーと、アクリル又はアクリルアミドのベタインモノマーとを含む硬化性組成物を硬化させたコーティングを基材上に形成した部材が開示されている。この部材は、優れた防曇性を発現させることができ、高い硬度を維持しつつ防曇の耐久性に優れるものとされている。
また、特開平5-179155号公報(特許文献3)には、多官能の(メタ)アクリロイルモノマーと、(メタ)アクリロイル基を含有するスルホベタイン型モノマーとを含む組成物を硬化させた塗膜をメタクリル樹脂板上に形成した部材が開示されている。この部材は、耐擦傷性、耐摩耗性、制電性および防曇性に優れるものとされている。
特開2008-239949号公報 WO2017/018146号公報 特開平5-179155号公報
本発明者らは、水と、有機成分および/または無機成分を含む汚染物質とが表面に付着し、且つ表面に水と汚染物質とが混在した状態で水が乾燥するというサイクルが繰り返される環境下で使用される部材の表面に存在する様々な汚染物質のうちタンパク質の存在割合が高いことに着眼した。例えば、浴室環境で発生する代表的なタンパク質としては、ヒト由来のケラチンが挙げられる。タンパク質は、分子中に疎水性領域、正電荷領域および負電荷領域を有するため、水まわり部材として一般的に使用されているガラスや陶器等の無機材料、樹脂材料、または金属材料等のいずれに対しても、疎水作用や静電作用等により付着することができる。このため、タンパク質を主要な汚染物質と考えた。そして、このような主要な汚染物質であるタンパク質の部材の表面への付着を抑制することが重要であるとの着想に至った。そこで、まず、部材表面にベタイン構造を含ませることにより、タンパク質の付着を抑制できることを確認した。しかし、部材表面にベタイン構造を含ませることにより、水と、有機成分および/または無機成分を含む汚染物質とが表面に付着し、且つ表面に水と汚染物質とが混在した状態で水が乾燥するというサイクルが繰り返される環境下で使用される部材に特異的な課題が発生することを見出した。すなわち、部材表面にベタイン構造を含ませることにより、水垢の形成が促進されるとの新規な課題を見出した。そこで、部材表面にベタイン構造に加えて親水性の非イオン性構造を含ませることで、タンパク質の付着を抑制できると同時に水垢の形成も抑制することができることを見出し、上記課題を解決した。本発明は、これらの知見に基づくものである。
本発明による部材は、
水と、有機成分および/または無機成分を含む汚染物質とが表面に付着し、且つ表面に水と汚染物質とが混在した状態で水が乾燥するというサイクルが繰り返される環境下で使用される部材であって、
当該部材は、基材と表面層とを含み、
当該表面層は、下記式(A1)で表される構造および下記式(A2)で表される構造を含み、
Figure 2023138439000002
Figure 2023138439000003
式(A1)において、
は、-COO-、-CONH-、-(CH-(mは自然数である)のいずれか1つを含み、
は、HまたはCHであり、
は、下記式(B)で表される官能基であり、
Figure 2023138439000004
式(B)において、
およびRは、それぞれ独立して、-(CH-(lは1~10の自然数である)で表される炭化水素基であり、
およびRは、それぞれ独立して、必須成分としてCおよびHを、任意成分としてOを含み、かつ、NおよびSを含まない有機基であり、
式(A2)において、
は、-COO-、-CONH-、-(CH-(mは自然数である)のいずれか1つを含み、
は、HまたはCHであり、
は、下記式(C)で表される官能基であり、
Figure 2023138439000005
式(C)において、
Yは、炭素数が1~10の直鎖または分岐または環状の炭化水素基であり、
aは自然数であり、
は、H、CH、C、下記式(D1)、下記式(D2)、下記式(D3)、および下記式(D4)からなる群から選択されるいずれかの構造を含み、
Figure 2023138439000006
Figure 2023138439000007
Figure 2023138439000008
Figure 2023138439000009
式(D1)において、
Yは、炭素数が1~10の直鎖または分岐または環状の炭化水素基であり、
は、-OCO-、-NHCO-、-(CH-(mは自然数である)のいずれか1つを含み、
は、HまたはCHであり、
式(D2)において、
Yは、炭素数が1~10の直鎖または分岐または環状の炭化水素基であり、
は下記式(E1)で表される構造であり、
Figure 2023138439000010
式(E1)において、
Yは、炭素数が1~10の直鎖または分岐または環状の炭化水素基であり、
は、-OCO-、-NHCO-、-(CH-(mは自然数である)のいずれか1つを含み、
は、HまたはCHであり、
aは自然数であり、
式(D3)において、
Yは、炭素数が1~10の直鎖または分岐または環状の炭化水素基であり、
は上記式(E1)で表される構造であり、
式(D4)において、
4は下記式(E2)で表される構造であり、
Figure 2023138439000011
式(E2)において、
Yは、炭素数が1~10の直鎖または分岐または環状の炭化水素基であり、
は、-OCO-、-NHCO-、-(CH-(mは自然数である)のいずれか1つを含み、
は、HまたはCHであり、
aは自然数である
ことを特徴とする。
本発明によれば、水と、有機成分および/または無機成分を含む汚染物質とが表面に付着し、且つ表面に水と汚染物質とが混在した状態で水が乾燥するというサイクルが繰り返される環境下において、表面への汚れ、とりわけ水垢およびタンパク質の付着または固着を抑制することができ、さらに付着した汚れを容易に、すなわち小さい清掃負荷で除去することができる部材が提供される。
本発明による部材の一例の断面模式図である。 実施例1の部材サンプルの顕微鏡写真である。 比較例2の部材サンプルの顕微鏡写真である。
部材
図1は本発明による、水と、有機成分および/または無機成分を含む汚染物質とが表面に付着し、且つ表面に水と汚染物質とが混在した状態で水が乾燥するというサイクルが繰り返される環境下で使用される部材(以下、単に「部材」ということもある。)の一例の断面模式図である。本発明による部材10は、基材1を備えてなる。部材10は、表面層2をさらに備えてなる。表面層2は、部材10の最表面にあることが好ましい。部材10は、後述する中間層3および/またはプライマー層4をさらに備えていてもよい。部材10は、本発明の効果を奏し得る範囲において、上記以外の層(図示せず)をさらに備えていてもよい。なお、部材10が表面層2を備えていることは、電子顕微鏡を用いて部材10の断面を観察し、層分離することにより、確認することができる。
用途
本発明による部材は、水まわりで用いられる部材全般に適用することができる。水まわりとしては、例えば、浴室、トイレ、洗面所、キッチンが挙げられる。水まわり部材の具体例としては、浴室については、床、浴槽、壁、天井、カウンター、エプロン、排水溝、鏡等が挙げられる。トイレについては、便器、タンク、便フタ、便座、ウォシュレット(登録商標)等が挙げられる。洗面所については、洗面ボウル、洗面カウンター、鏡、照明、水栓金具、排水口、キャビネット、洗濯機パン等が挙げられる。キッチンについては、流し台(シンク)、カウンター、水栓金具、排水口、食器洗浄器、食器乾燥器、調理レンジ、キッチンフード、換気扇等が挙げられる。
本発明による部材は、水と、有機成分および/または無機成分を含む汚染物質とが表面に付着し、且つ表面に水と汚染物質とが混在した状態で水が乾燥するというサイクルが繰り返される環境下で使用される部材である。例えば、部材の表面に水と、水垢を構成する成分(ケイ酸イオン、カルシウムイオン等)およびタンパク質とが付着し、これらが混在した状態で水が乾燥するというサイクルが繰り返される環境下で使用される部材である。また、上記サイクルが繰り返される状況であれば、本発明は適用可能である。例えば、部材が浴槽の場合、湯張り状態(水と汚染物質とが表面に付着する状態)と、湯抜き状態(水と汚染物質とが混在した状態で水が乾燥する状態)は、1つの状態が長く保持された後に他の状態に移行する状況や、2つの状態が不均等に存在する状況も現出するが、そのような場合でも本発明は適用可能である。本発明による部材は、そのような環境下でタンパク質の付着だけでなく水垢の固着も効果的に抑制することができる。ここで、汚染物質とは、水の付着および乾燥が繰り返される環境下で使用される部材の表面に付着する汚れ全般を指し、より具体的には、ケイ酸イオン、カルシウムイオン、皮脂、石鹸カス、リンス、タンパク質から選択される一種以上を意味する。また、本発明による部材は、水と汚染物質の付着、およびこれらが混在した状態で水が乾燥するというサイクルが繰り返される環境下で使用される部材において一般に使用されている基材を材料種問わず利用可能であり、様々な基材に対して上述した効果を奏することが可能である。
表面層
本発明において、表面層は、下記式(A1)で表される構造および下記式(A2)で表される構造を含む。
Figure 2023138439000012
Figure 2023138439000013
式(A1)において、
は、-COO-、-CONH-、-(CH-(mは自然数である)のいずれか1つを含み、
は、HまたはCHであり、
は、下記式(B)で表される官能基であり、
Figure 2023138439000014
式(B)において、
およびRは、それぞれ独立して、-(CH-(lは1~10の自然数である)で表される炭化水素基であり、
およびRは、それぞれ独立して、必須成分としてCおよびHを、任意成分としてOを含み、かつ、NおよびSを含まない有機基である。
式(A2)において、
は、-COO-、-CONH-、-(CH-(mは自然数である)のいずれか1つを含み、
は、HまたはCHであり、
は、下記式(C)で表される官能基であり、
Figure 2023138439000015
式(C)において、
Yは、炭素数が1~10の直鎖または分岐または環状の炭化水素基であり、
aは自然数であり、
は、H、CH、C、下記式(D1)、下記式(D2)、下記式(D3)、および下記式(D4)からなる群から選択されるいずれかの構造を含む
ことを特徴とする。
Figure 2023138439000016
Figure 2023138439000017
Figure 2023138439000018
Figure 2023138439000019
式(D1)において、
Yは、炭素数が1~10の直鎖または分岐または環状の炭化水素基であり、
は、-OCO-、-NHCO-、-(CH-(mは自然数である)のいずれか1つを含み、
は、HまたはCHである。
式(D2)において、
Yは、炭素数が1~10の直鎖または分岐または環状の炭化水素基であり、
は下記式(E1)で表される構造である。
Figure 2023138439000020
式(E1)において、
Yは、炭素数が1~10の直鎖または分岐または環状の炭化水素基であり、
は、-OCO-、-NHCO-、-(CH-(mは自然数である)のいずれか1つを含み、
は、HまたはCHである
aは自然数である。
式(D3)において、
Yは、炭素数が1~10の直鎖または分岐または環状の炭化水素基であり、
は上記式(E1)で表される構造である。
式(D4)において、
4は下記式(E2)で表される構造である。
Figure 2023138439000021
式(E2)において、
Yは、炭素数が1~10の直鎖または分岐または環状の炭化水素基であり、
は、-OCO-、-NHCO-、-(CH-(mは自然数である)のいずれか1つを含み、
は、HまたはCHである
aは自然数である。
表面層が式(A1)で表される構造および式(A2)で表される構造を含むことにより、本発明による部材は、様々な汚染物質の表面への付着を抑制することができる。とりわけ、タンパク質の付着および水垢の固着の双方を抑制することが可能である。これらの抑制メカニズムは以下のように考えられるが、あくまで仮説であり、この仮説により本発明は何ら制限されるものではない。式(A1)で表される構造は、後述するようにベタイン構造であり、アンチファウリング能(タンパク質の吸着抑制能)を有する。この性能により、部材表面へのタンパク質の付着を抑制することができる。その一方で、式(A1)で表される構造中のN部位にケイ酸イオンが静電吸着するおそれがある。この場合、ケイ酸イオンの付着量が多くなる。すなわちケイ酸イオンの付着密度が増加する。これにより、ケイ酸イオン同士の脱水縮合によるポリマー化が誘発又は促進され、この状態でケイ酸イオンの付着密度がさらに増加すると、生成されたポリマーはより緻密なものとなり、これが水垢の固着を加速させるおそれがある。また、式(A1)で表される構造中のSO 部位にカルシウムイオンが静電吸着するおそれがある。この場合、カルシウムイオンの吸着量が多くなる。すなわちカルシウムイオンの吸着密度が増加する。これにより、炭酸カルシウムの結晶化が誘発又は促進され、この状態でカルシウムイオンの吸着密度がさらに増加すると、生成された結晶はより緻密なものとなり、これが水垢の固着を加速させるおそれがある。しかしながら、本発明による部材の表面層は式(A1)で表される構造とともに式(A2)で表される構造を含むため、ケイ酸イオンのポリマー化および/または炭酸カルシウムの結晶化、さらに生成されたポリマーおよび/または結晶の緻密化を抑制することができる。すなわち、式(A2)で表される構造は、後述するように親水性かつノニオン性を有する構造であるため、表面層において親水性かつノニオン性を有する構造が存在する領域にはケイ酸イオンおよび/またはカルシウムイオンが静電吸着することができない。本発明による部材の表面層には、式(A2)で表される親水性かつノニオン性を有する構造と式(A1)で表されるベタイン構造とが共存している(例えば、両者がランダムに存在している)。そのため、式(A1)で表される構造中のNにケイ酸イオンが付着した部位および/または同構造中のSO にカルシウムイオンが吸着した部位が存在していても、親水性かつノニオン性を有する構造によりケイ酸イオンおよび/またはカルシウムイオンの吸着が阻害された部位も存在する。したがって、この部位でケイ酸イオンのポリマー化および/または炭酸カルシウムの結晶化、さらに生成されたポリマーおよび/または結晶の緻密化を遮断することができ、水垢の固着を抑制することができる。このように、式(A1)で表される構造および式(A2)で表される構造を含むことにより、本発明による部材は、タンパク質の付着だけでなく水垢の固着も同時に抑制することができる。
なお、本発明において、表面層が式(A1)で表される構造を含むとは、表面層が式(A1)で表される特定数の構造の1種または複数種を含むことを指し、表面層が式(A2)で表される構造を含むとは、表面層が式(A2)で表される特定数の構造の1種または複数種を含むことを指す。
本発明において、表面層は、式(A1)で表される構造および式(A2)で表される構造のみを含む層であることが好ましい。
本発明において、表面層は、高分子層であることが好ましい。高分子層とは、高分子化合物を含有する層である。本発明において、表面層は、式(A1)で表される構造および式(A2)で表される構造を含む高分子化合物を含むことが好ましい。表面層は、式(A1)で表される構造および式(A2)で表される構造のみを含む高分子化合物を含むことがさらに好ましい。この場合、式(A1)で表される構造と式(A2)で表される構造はランダムに結合していることが好ましい。
式(A1)で表される構造および式(A2)で表される構造についてさらに説明する。
式(A1)で表される構造
式(A1)において、Lは-COO-であることが好ましい。これにより、タンパク質の付着および水垢の固着をより抑制することができる。
式(A1)のX、つまり式(B)において、RおよびRのlは、1~6であることが好ましく、1~5であることがより好ましく、1~3であることがさらにより好ましい。これにより、カチオン性であるN部位へのアニオン性であるケイ酸イオンの吸着および/またはアニオン性であるSO 部位へのカチオン性であるカルシウムイオンの吸着を最小限に抑制することができる。これにより、式(A1)で表される構造は安定な分子を構成することができる。すなわち、カチオン性のN部位と、式(A1)で表される構造の末端にあるアニオン性のSO 部位との距離が大きくなりすぎないため、アニオン性のケイ酸イオンおよび/またはカチオン性のカルシウムイオンが式(A1)で表される構造(つまり、表面層)に容易に近づくことを抑制し、アニオン性のケイ酸イオンおよび/またはカチオン性のカルシウムイオンの吸着を抑制できる。
式(A2)で表される構造
式(A2)において、Lは-COO-であることが好ましい。これにより、タンパク質の付着および水垢の固着をより抑制することができる。
式(A2)のX、つまり式(C)において、RはH、CH、C、または式(D1)で表される構造のいずれかを含むことが好ましい。ここで、RがH、CH、またはCである場合、これらは1価官能基である。これにより、タンパク質を含む様々な汚染物質の付着を防止する効果を高めることができる。Rは、H、またはCHであることがより好ましい。これにより、式(A2)中の親水性部(-YO-の繰り返し構造)の割合を大きくすることができるため、表面層の親水性を高くすることができる。その結果、汚染物質の付着を防止する効果をより高めることが可能となる。一方で、Rは式(D1)、式(D2)、式(D3)、または式(D4)のいずれかを含むことが好ましい。ここで、式(D1)で表される構造は2価官能基であり、式(D2)、(D3)で表される構造は3価官能基であり、式(D4)で表される構造は4価官能基である。これにより、摺動耐久性、耐摩耗性などの耐久性を高めることが可能となる。Rは式(D2)、式(D3)、または式(D4)であることがより好ましい。これにより、表面構造中の架橋密度を高くすることができ、耐久性をより高めることが可能となる。
の価数が2価~4価のいずれの場合も、Yは、炭素数が1~10の直鎖の炭化水素基であることが好ましく、炭素数が1~5であることがより好ましく、炭素数が1~3であることがさらにより好ましい。これによっても、表面層の親水性が高くなるため、タンパク質を含む様々な汚染物質の付着を防止することが可能となる。
本発明において、表面層が式(A1)で表される構造および式(A2)で表される構造を含むことは、下記の方法により特定することができる。
(赤外分光法(IR))
赤外分光法によって表面層の表面近傍の赤外光吸収スペクトルを測定することで、表面層に含まれる官能基を推定することができる。例えば、エステル結合(-COO-)における-C=Oおよび-C-O-の存在を吸収波数から特定することが可能である。表面層の表面近傍の赤外吸収スペクトルを測定する方法としては、表面層を削り取るなどして回収し、この粉末を透過法で測定する方法や、より簡便な方法として一回反射ATR法や顕微ATR法などが挙げられる。
(飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS))
TOF-SIMSによって、表面層の表面に存在する有機物の構造情報を得ることができる。表面層をTOF-SIMSで評価することにより、式(A1)で表される構造や式(A2)で表される構造に固有のフラグメントピークから部分構造を特定することが可能である。例えば式(A1)で表される構造が下記式(A1-1)で表される構造の場合、m/z=279.11,m/z=421.26に固有のフラグメントピークを検出することができる。また、式(A2)で表される構造が下記式(A2-1)で表される構造の場合、m/z=88.99に固有のフラグメントピークを検出することができる。TOF-SIMSで測定する際、測定するサンプル表面の汚れを除去するために、前処理として、GCIBなどのイオン源でサンプル表面を数nm程度スパッタし、その後Bi 2+などの一次イオン源を照射し、そのフラグメントを測定する。
Figure 2023138439000022
Figure 2023138439000023
(X線光電子分光測定法(XPS))
XPSにより、表面層を構成する分子中に含まれるC、N、O、Sの組成比率および化学結合状態を特定可能である。例えば、式(A1-1)に示すようなスルホベタイン構造に由来するN原子のXPSスペクトル(N1s軌道)は、ピーク位置が結合エネルギー401.2eVである。これに対し、式(A1)で表される構造が下記式(A3)(カチオン性のアンモニウム部位を含む構造)に示すような構造、または式(A3)と下記式(A4)(アニオン性のスルホン酸部位を含む構造)の混合物である場合は、ピーク位置がそれぞれ402.0eVまたは401.8eVとなる。このように、N原子について、ピーク位置の違いからスルホベタイン由来のN原子かどうかを特定することが可能である。またS原子についても同様にピーク位置からスルホベタイン由来かどうかを特定可能であり、式(A1-1)に示すような構造に由来するS原子のXPSスペクトル(S2p軌道)は、ピーク位置が結合エネルギー166.2eVであるのに対し、式(A4)に示すような構造(アニオン性のスルホン酸)または式(A3)と式(A4)の混合物である場合は、ピーク位置がそれぞれ167.5eV、167.1eVとなる。なお、これらのすべてのピーク位置は、C1s軌道のピーク位置284.5[eV]で補正を行うことにより得られる。
Figure 2023138439000024
Figure 2023138439000025
(核磁気共鳴測定法(NMR))
NMRにより、表面層を構成する分子中に含まれるH、C、Nの結合状態および隣接原子との相互作用に関する情報を標準試料との比較による化学シフトにより得ることができる。これにより、表面層を構成する分子構造を詳細に特定することができる。
表面層の静的接触角
本発明において、表面層の表面に対する水の静的接触角が低いほど好ましい。具体的には、30°以下であることが好ましく、25°以下であることがより好ましく、15°以下であることがさらにより好ましい。これにより、親水性が高くなるため、タンパク質を含む様々な汚染物質の付着を防止することが可能となる。
表面層の表面に対する水の静的接触角は、例えば下記装置およびソフトウェアを用い、下記測定条件にて測定される。
装置:SA-301(協和界面化学社製)
ソフトウェア:界面測定/解析統合システム FAMAS
バージョン:5.0.16
測定方法:液滴法
液滴量:2.0μL
待ち時間:1000ms
解析方法:θ/2法
表面層における式(A1)で表される構造(ベタイン構造)の存在割合
本発明において、表面層における式(A1)で表される構造(スルホベタイン構造)の存在割合(SB比率)は、14%<SB比率<92%であることが好ましく、22%<SB比率<75%であることが好ましい。これにより、タンパク質の付着および水垢の固着を良好に抑制することができる。
<SB比率の算出方法>
SB比率は、後述するように、表面層をXPS測定して得られたS原子濃度より算出することが可能である。スルホベタイン構造を有する化合物のみからなる表面層のXPS測定によって得られたS原子濃度と、スルホベタイン構造を有さない(S原子を含まない)表面層のXPS測定によって得られたS原子濃度とを用い、各試料の表面のXPS測定によって得られたS原子濃度を規格化することにより、各試料の表面に存在するスルホベタイン構造の存在割合を推測することができる。
より詳細には、表面層の構成成分として、スルホベタイン構造を有する化合物のみを含む部材サンプルのS原子濃度を100%とし、(スルホベタイン構造を有する化合物を含まず)非イオン性モノマーのみを含む部材サンプルのS原子濃度を0%として規格化する。この2点から得られる線形回帰直線を使用することで、XPS測定で得られたS濃度の値から各部材サンプルの規格化した値を算出し、この値を各部材サンプルのSB比率とする。
<XPS測定>
・測定試料の準備
板状の部材サンプルから適切なサイズの領域を切断したものを測定試料とすることができる。なお、測定前に測定試料の表面を洗浄することが好ましい。例えば、測定試料の表面を中性洗剤とスポンジを用いて洗浄し、その後超純水にて十分にすすぎ洗いを行うことがより好ましい。
・XPS測定装置
XPS測定装置には、K-alpha(ThermoFisher Scientific社製)を用いることができる。
・XPS測定条件
X線条件:単色化AlKα線,72W-12KV
光電子取出角:90°
分析領域:400μmφ
中和銃条件:200μA
イオン銃条件:10mA
(サーベイ)
Time per step:10ms
Energy step size:1.000eV
Sweep:2回
Pass energy:200eV
走査範囲:-10~1350eV
(ナロー)
Time per step:50ms
Energy step size:0.100eV
Sweep:5回
Pass energy:50eV
走査範囲:C1sピーク 279.000eV~298.000eV、O1sピーク 525.000eV~545.000eV、N1sピーク 392.000eV~410.000eV、S2pピーク 157.000eV~175.000eV、Si2pピーク 95.000eV~110.000eV、P2pピーク 124.000eV~144.000eV
<各原子濃度(S、N、Si、P)の算出>
検出された原子の濃度は、得られたスペクトルから、例えばデータ解析ソフトThermo Avantage(バージョン5.9916、ThermoFisher Scientific社製)を用いて算出することができる。ナロー分析で得たスペクトルに対して、C1sピークを284.5eVとしてチャージ補正する。その後、測定された各原子の電子軌道に基づくピークに対してShirley法でバックグラウンドを除去した後にピーク面積強度を算出し、データ解析ソフトウェアに予め設定されている装置固有の感度係数で除算する解析処理を行い、C原子、O原子、N原子、S原子、Si原子、P原子の合計を100%としたときの各原子濃度を算出する。
Si原子の濃度
本発明において、部材の表面をXPS測定することによって得られるSi原子の濃度が1.0%以下であることが好ましい。部材の表面に含まれるSi原子濃度が低いため、水垢の形成や吸着を抑制することができる。Si原子の濃度は0.4%以下であることがより好ましい。
S原子の濃度
本発明において、部材の表面をXPS測定することによって得られるS原子の濃度が0.5%以上であることが好ましい。これにより、タンパク質の吸着を抑制することができる。S原子の濃度は、好ましくは0.7%以上である。なお、S原子の濃度は、スルホベタイン構造中のSが表面に存在しているものによる濃度と考えられる。
N原子の濃度/S原子の濃度
本発明において、部材の表面をXPS測定することによって得られるN原子の濃度/S原子の濃度が、0.5以上2.5以下であることが好ましい。これにより、タンパク質の吸着および水垢の形成や吸着を効果的に抑制することができる。N原子の濃度/S原子の濃度は、より好ましくは、0.6以上2.0以下である。
本発明において、表面層は、基材上に設けられていても良い。表面層は、基材の表面に設けられていても良い。つまり、基材と表面層との間に他の層を含まずに、基材の表面に直接表面層が形成されていても良い。表面層が基材の表面に設けられる場合、表面層は、組成が傾斜した傾斜膜であることが好ましい。具体的には、表面層の表面側には、式(A1)で表される構造および式(A2)で表される構造を含み、表面層の基材側には、例えば後述する主鎖がアクリル系樹脂やポリビニル系樹脂を多く含む傾斜膜であることが好ましい。これにより、タンパク質の吸着および水垢の形成や吸着を抑制しつつ、基材との密着を確保することが可能となる。
表面層形成用組成物
本発明において、表面層は、表面層形成用組成物を硬化させたものであることが好ましい。本発明において、表面層形成用組成物は、ベタイン構造を有する化合物と、非イオン性モノマーと、重合開始剤と、任意成分として溶媒と、を含むものを使用することができる。
ベタイン構造を有する化合物
本発明において、表面層形成用組成物は、ベタイン構造を有する化合物を含むことができる。これにより、表面層形成用組成物が硬化して得られる表面層において、式(A1)で表される構造を含むことが可能となる。本発明において、ベタイン構造を有する化合物とは、同一分子内に少なくとも一つ以上の陽イオンと陰イオンおよびエチレン性不飽和基をもつ化合物を意味する。本発明において、陽イオンとして、四級アンモニウム、スルホニウム、ホスホニウムなどのカチオンが挙げられる。また陰イオンとして、-COO、-PO 2-、-HPO 、-SO などのアニオンが挙げられる。
本発明において、ベタイン構造を有する化合物として、分子内に陽イオンとして四級アンモニウムを含み、陰イオンとして-SO を含むスルホベタインが好ましい。分子内に(メタ)アクリル骨格を有するスルホベタインがより好ましい。
本発明において、ベタイン構造を有する化合物として、下記式(F1)で表される化合物1を挙げることができる。
化合物1:
Figure 2023138439000026
化合物1において、
は、-COO-、-CONH-、-(CH)m-(mは自然数である)のいずれか1つを含み、
は、HまたはCHであり、
およびRは、それぞれ独立して、-(CH-(lは1~10の自然数である)で表される炭化水素基であり、
、R、Rは、それぞれ独立して、必須成分としてCおよびHを、任意成分としてOを含み、かつ、NおよびSを含まない有機基であり、
Aは、PO であり、
Bは、N、SまたはPである。
なお、Lが、-CO-を含むことは、上述したIRから特定することが可能である。
本発明において、ベタイン構造を有する化合物として、下記式(F2)で表される化合物2を挙げることができる。
化合物2:
Figure 2023138439000027
化合物2において、
は、-COO-、-CONH-、-(CH)m-(mは自然数である)のいずれか1つを含み、
は、HまたはCHであり、
およびRは、それぞれ独立して、-(CH-(lは1~10の自然数である)で表される炭化水素基であり、
およびRは、それぞれ独立して、必須成分としてCおよびHを、任意成分としてOを含み、かつ、NおよびSを含まない有機基であり、
Aは、COO、PO 2-、HPO またはSO であり、
Bは、N、SまたはPである。
本発明において、ベタイン構造を有する化合物の具体例として、3-[[2-(アクリロイルオキシ)エチル]ジメチルアンモニオ]プロパン-1-スルホン酸、3-[[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチルアンモニオ]プロパン-1-スルホン酸、4-[(3-メタクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]ブタン-1-スルホン酸、3-[[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチルアンモニオ]プロピオナート、2-[[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチルアンモニオ]酢酸、リン酸2-(メタクリロイルオキシ)エチル2-(トリメチルアンモニオ)エチル]、4-[[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチルアンモニオ]ブタン-1-スルホン酸、3-[(3-アクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]プロパノアート、3-[(3-アクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]プロパン-1-スルホン酸、3-[(3-メタクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]プロパン-1-スルホン酸が挙げられる。これらの中で、3-[[2-(アクリロイルオキシ)エチル]ジメチルアンモニオ]プロパン-1-スルホン酸、3-[[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチルアンモニオ]プロパン-1-スルホン酸、[3-(メタクリロイルアミノ)プロピル]ジメチル(3-スルホブチル)アンモニウムヒドロキシドが好ましい。
非イオン性モノマー
本発明において、表面層形成用組成物は、非イオン性モノマーを含むことができる。これにより、表面層形成用組成物が硬化して得られる表面層において、式(A2)で表される構造を含むことが可能となる。本発明において、非イオン性モノマーとは、分子内に一つ以上のエチレン性不飽和基とオキシアルキレンとを有するモノマーを意味する。非イオン性モノマーは、親水性である。非イオン性モノマーは、より好ましくは、分子内に(メタ)アクリル骨格とオキシアルキレン基とを有するモノマーである。
本発明において、非イオン性モノマーとして、下記式(G1)で表される1官能非イオン性モノマーを挙げることができる。
Figure 2023138439000028
式(G1)中、
は、-COO-、-CONH-、-(CH-(mは自然数である)のいずれか1つを含み、
は、HまたはCHであり、
は、HまたはCHまたはCであり、
Yは、炭素数が1~10の直鎖または分岐または環状の炭化水素基であり、
aは自然数である。
本発明において、非イオン性モノマーとして、下記式(G2)で表される2官能非イオン性モノマーを挙げることができる。
Figure 2023138439000029
式(G2)中、
は、-COO-、-CONH-、-(CH-(mは自然数である)のいずれか1つを含み、
は、-OCO-、-NHCO-、-(CH-(mは自然数である)のいずれか1つを含み、
は、HまたはCHであり、
Yは、炭素数が1~10の直鎖または分岐または環状の炭化水素基であり、
aは自然数である。
本発明において、非イオン性モノマーとして、下記式(G3)で表される3官能非イオン性モノマー1を挙げることができる。
Figure 2023138439000030
式(G3)中、
は、-OCO-、-NHCO-、-(CH-(mは自然数である)のいずれか1つを含み、
は、HまたはCHであり、
Yは、炭素数が1~10の直鎖または環状の炭化水素基であり、
b、c、dはそれぞれ独立した自然数である。
本発明において、非イオン性モノマーとして、下記式(G4)で表される3官能非イオン性モノマー2を挙げることができる。
Figure 2023138439000031
上記式中、
は、-OCO-、-NHCO-、-(CH-(mは自然数である)のいずれか1つを含み、
は、HまたはCHであり、
Yは、炭素数が1~10の直鎖または環状の炭化水素基であり、
b、c、dはそれぞれ独立した自然数である
ことを特徴とする。
本発明において、非イオン性モノマーとして、下記式(G5)で表される4官能非イオン性モノマーを挙げることができる。
Figure 2023138439000032
式(G5)中、
は、-COO-、-CONH-、-(CH-(mは自然数である)のいずれか1つを含み、
は、-OCO-、-NHCO-、-(CH-(mは自然数である)のいずれか1つを含み、
は、HまたはCHであり、
Yは、炭素数が1~10の直鎖または環状の炭化水素基であり、b、c、d、eはそれぞれ独立した自然数である。
本発明において、非イオン性モノマーの具体例として、4-ヒドロキシブチルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート(アクリル酸2-メトキシエチル)、2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]エチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA))、2-メトキシエチルメタクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、N-(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N-(メトキシメチル)アクリルアミド、N-(メトキシメチル)メタクリルアミド、N-(ヒドロキシメチル)メタクリルアミド、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシテトラエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、N-(4-ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、アルコキシ化トリメチロールプロパンアクリレート、アルコキシ化トリメチロールプロパンメタクリレート、アルコキシ化グリセリンアクリレート、アルコキシ化グリセリンメタクリレート、アルコキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルコキシ化ペンタエリスリトールテトラメタクリレートが挙げられる。これらの中で、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)、メトキシテトラエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、アクリル酸2-メトキシエチル、ジエチレングリコールジメタクリレートが好ましい。より好ましくは、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)、メトキシポリエチレングリコールメタクリレートである。
(溶媒)
本発明において、表面層形成用組成物は溶媒を含むことができる。これにより、基材への濡れ性を向上させたり、表面層形成用組成物の粘度を調整したりすることができる。溶媒としては、メタノール、エタノール、IPA(イソプロパノール)、n―ブタノール等のアルコール類、2-メトキシエタノール、メトキシプロパノール等のセロソルブ類、アセトン等のケトン類、DMF(N,N’-ジメチルホルムアミド)、水などを使用することができるが、これらに限定されない。また、溶媒は必要に応じて複数種類を混合して用いても良い。なお、溶媒は、後述するプライマー層形成用組成物、中間層形成用組成物を調製する際にも使用することができる。
(重合開始剤)
表面層形成用組成物は、重合開始剤を含むことが好ましい。重合開始剤としては、公知のものを使用することができ、例えば光重合開始剤や熱重合開始剤が挙げられる。
光重合開始剤の好ましい例として、例えばBASF社が提供するイルガキュアー651、イルガキュアー184、イルガキュアー500、イルガキュアー2959、イルガキュアー127、イルガキュアー907、イルガキュアー369、イルガキュアー1300、イルガキュアー819、イルガキュアー1800、イルガキュアーOXE01、イルガキュアーOXE02、ダロキュアー1173、ダロキュアーTPO、ダロキュアー4265等が挙げられる。
熱重合開始剤の好ましい例として、例えば過酸化物、過硫酸物、アゾ化合物等の熱ラジカル発生剤が好ましく用いられる。
表面層形成用組成物は、上記以外に、表面の機能を損なわない範囲で、目的に応じて界面活性剤など、公知の添加剤を含むことができる。
表面層形成用組成物は、ベタイン構造を含む化合物以外に、硫黄原子を含む化合物を含まないことが好ましい。表面層が硫黄原子を多く含むことにより、タンパク質の付着が増えると考えられる。本発明において、表面層形成用組成物は、硫黄原子を含む化合物としてベタイン構造を含む化合物のみを含むことにより、これを硬化して得られた表面層において、タンパク質の吸着を抑制することができる。
中間層
本発明において、基材1と表面層2の密着をより強固にするため、基材1と表面層2との間に中間層3を形成してもよい。有機膜である表面層2との強固な密着性を得るために、中間層3は、主鎖がアクリル系樹脂(ポリアクリル系共重合体)、またはビニルアルコールを含むポリビニル系共重合体を含むことが好ましい。
中間層形成用組成物
本発明において、中間層3は中間層形成用組成物を硬化させたものであることが好ましい。中間層形成用組成物は、ポリアクリル系またはポリビニル系共重合体を形成可能なモノマーを含むことが好ましい。中間層形成用組成物は、その他、上述した溶媒や重合開始剤を含むことが好ましい。
(多官能アクリレート)
ポリアクリル系共重合体を構成するモノマーとして、多官能アクリレートを好適に用いることができる。本発明において、多官能アクリレートとは、分子内にエチレン性不飽和基を少なくとも二つ以上有するモノマーを意味する。多官能アクリレートの具体例として、2-ヒドロキシー3-アクリロイロキシプロピルメタクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、9、9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、プロポキシ化ビスフェノールAジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、1、10-デカンジオールジアクリレート、1、6-ヘキサンジオールジアクリレート、1、9-ノナンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアククリレート、ジトリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、2、2ビス[4-(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、1、10-デカンジオールジメタクリレート、1、6-ヘキサンジオールメタクリレート、1、9-ノナンジオールメタクリレート、ネオペンチルグリコールメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、グリセリントリアクリレートエトキシレート、ジペンタエリスリトールポリアクリレート、エトキシ化ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレンジメタクリレート等が挙げられる。
また多官能アクリレートとして、エチレン性不飽和基を二つ以上有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(ポリマー)が挙げられる。例えば、フェニルグリシジルエーテルアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、フェニルグリシジルエーテルアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、オリゴウレタンアクリレート、カルボン酸含有ウレタンアクリレートオリゴマーなどが挙げられる。
また多官能アクリレートとして、エチレン性不飽和基を二つ以上有するエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー(ポリマー)が挙げられる。例えば、クレゾールノボラック型エポキシアクリレート、カルボン酸無水物変性エポキシアクリレートなどが挙げられる。
本発明において、好ましい多官能アクリレートの具体例として、エチレン性不飽和基の官能基当量が200g/eq以下であるものが好ましい。これにより、耐久性の高いプライマー層とすることができる。また、エチレン性不飽和基の官能基当量は、好ましくは150g/eq以下であり、より好ましくは27g/eq以上150g/eq以下である。これにより、より耐久性の高いプライマー層を得ることができる。ここで、官能基当量とは、官能基1個あたりの化合物の分子量をあらわす。すなわち、多官能アクリレートの分子量をエチレン性不飽和基の数で割った値である。具体的には、多官能アクリレートとしての、(メタ)アクリレートモノマー(オリゴマー)、そのウレタン変性物であるウレタン(メタ)アクリレートモノマー(オリゴマー)、そのエポキシ変性物であるエポキシ(メタ)アクリレートモノマー(オリゴマー)の分子量をエチレン性不飽和基である(メタ)アクリロイル基の数で割った値である。このような官能基当量を満たす化合物としては、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(88g/eq)、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(105g/eq)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(96g/eq)、トリメチロールプロパントリアクリレート(99g/eq)、トリメチロールプロパンテトラアクリレート(117g/eq)、1、3、5-トリス(2、2-ジアクリロイルオキシメチル-3-(2、2、2-トリアクリロイルオキシメチルエトキシ)プロピルヘキシルカルバメート)イソシアヌレート(153g/eq)、エトキシ化ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(185g/eq)などが挙げられる。
これらの中でも、中間層の耐久性を一層高めるために一分子中の官能基数が6個以上のものが特に好ましく、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(6官能)、エトキシ化ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(6官能)、1、3、5-トリス(2、2-ジアクリロイルオキシメチル-3-(2、2、2-トリアクリロイルオキシメチルエトキシ)プロピルヘキシルカルバメート)イソシアヌレート(15官能)が挙げられる。
(多官能ビニル化合物)
ポリビニル系共重合体を構成するモノマーとして、多官能ビニル化合物を好適に用いることができる。本発明において、多官能ビニル化合物とは、分子内にエチレン性不飽和基を少なくとも二つ以上有するモノマーを意味する。多官能ビニル化合物の具体例として、ジアリルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、1、3-ジアリルオキシ-2-プロパノール、1、2、3-トリアリルオキシ-2-プロパノール、2、2ビスアリルオキシメチル-1-プロパノール、2、2ビスアリルオキシエチル-1-ブタノール、2、2ビスアリルオキシメチル-1-ヘキサノール、3、3ビスアリルオキシエチル-1-ブタノール、3、3ビスアリルオキシエチル-1-ヘキサノール、2、2、2トリアリルオキシメチル-1-エタノール、2、2、2トリアリルオキシメチル-1-プロパノール、2、2、2トリアリルオキシメチル-1-ブタノール、2、2、2トリアリルオキシメチル-1-ヘキサノール、1、5-ヘキサジエン-3、4-ジオール、イソフタル酸ジアリル、1、5-ヘキサンジエン、テトラアリルオキシエタン、テトラアリルオキシプロパン、テトラアリルオキシブタン、クエン酸トリアリル、アジピン酸ジビニル、等が挙げられる。
本発明において、表面層形成用組成物と中間層形成用組成物を混合した組成物を用いることで、表面層と中間層を同時に形成することができる。その際、式(A1)で表される構造と式(A2)で表される構造が十分に表面層に含まれるように製膜する必要がある。例えば、組成物に界面活性剤などの添加剤を加えることで、式(A1)で表される構造と式(A2)で表される構造を表面に傾斜偏析させることが可能である。ここで、界面活性剤としては、親水部および有機残基からなる疎水部を有し、分子量が10000未満であるものが好ましい。
プライマー層
本発明において、基材1がガラス、陶器、金属等の無機材料の場合は、これら無機材料と表面層2との密着性を強固にするためにプライマー層4を形成してもよい。プライマー層4は、基材1である無機材料(以下、「無機基材」という。)と表面層2との間に形成することが好ましい。プライマー層4は密着力を高めるために、無機基材と表面層2との両方に結合することが必要である。このため、プライマー層4は、ケイ素原子を含む層であることが好ましい。
プライマー層形成用組成物
プライマー層4は、プライマー層形成用組成物を硬化させたものであることが好ましい。プライマー層形成用組成物は、一般的に使用されているシラン系やリン酸系のカップリング剤を含むものを用いることが可能である。また、これらのカップリング剤は、表面層との密着をより強固にするため、アクリロイル基やメタクリロイル基などのエチレン性不飽和基を含んでいることが好ましい。
(シラン化合物)
シランカップリング剤として、シラン化合物を好適に用いることができる。本発明において、シラン化合物とは、加水分解性のSi-OR基(反応性シリル基、ORは、水酸基または加水分解可能な基であってよい。加水分解可能な基は、例えば、アルコキシ基、ハロゲノ基である。具体的には、-OCH、-OCHCH、-Clが挙げられる。)を有する有機化合物を意味する。シラン化合物の具体例として、テトラエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、8-メタクリロキシオクチルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物などが挙げられる。
本発明において、好ましいシラン化合物の具体例として、無機基材と密着するための加水分解性Si-OR基を3つ以上持ち、かつ有機膜である表面層と密着するためのアクリルまたはメタクリル重合官能基を持つ化合物が好ましい。このようなシラン化合物として、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、8-メタクリロキシオクチルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシメチルトリメトキシシランが挙げられる。
(リン酸化合物)
リン酸カップリング剤として、リン酸化合物を好適に用いることができる。本発明において、リン酸化合物とは、共有結合性のP(OH)基(吸着性リン酸基、nは1~3のいずれかであり、OH基は、その塩基置換体であるONa、OK、ONH等であってもよい)を有する有機化合物を意味する。リン酸化合物としては、分子内に、吸着性官能基としてリン酸あるいはリン酸塩、および、重合性官能基としてアクリル基あるいはメタクリル基あるいはビニル基を含んでいるものが好ましい。具体例としては、2-アクロイロキシエチルリン酸、2-アクロイロキシエチルリン酸、2-メタクロイロキシエチルリン酸、2-メタクロイロキシエチルリン酸、2-アクロイロキシプロピルリン酸、2-アクロイロキシプロピルリン酸、2-メタクロイロキシプロピルリン酸、2-メタクロイロキシプロピルリン酸ビニルリン酸、2-アクロイロキシブチルリン酸、2-アクロイロキシブチルリン酸、2-メタクロイロキシブチルリン酸、2-メタクロイロキシブチルリン酸、ビニルリン酸、あるいはそれらのリン酸塩等が用いられる。
基材
本発明において、基材は特に制限されない。基材の材料としては、樹脂、金属、無機材料(ガラス、陶器等)など水まわり部材として一般に使用されている材料をいずれも使用することができる。また基材の形状として、水まわり部材の一般的な形状をとることができる。例えば、平板であってもよく、複雑形状であってもよい。
部材の製造方法
本発明による部材は、例えば、以下の方法により製造することができる。
<基材の用意>
基材を用意する。本発明において、基材を前処理することが好ましい。例えば、基材を中性洗剤で洗浄し、イオン交換水または超純水ですすぐことが好ましい。基材表面に残った水滴は、エアブローや乾燥機を用いて乾燥させることが好ましい。
<表面層形成用組成物の調製>
式(A1)で表される構造を含む化合物(ベタイン構造を有する化合物)および式(A2)で表される構造を含む化合物(非イオン性モノマー)、ならびにその他の成分を任意の割合で混合し、溶媒に溶解させる。この溶液に、重合開始剤を後添加し、撹拌することにより、表面層形成用組成物を得る。式(A1)で表される構造を含む化合物および式(A2)で表される構造を含む化合物の合計重量濃度は0.5%から20%であることが好ましく、それぞれの組成物中の重量濃度比は90:10から5:95であることが好ましい。
<表面層形成用組成物の塗布>
基材上に表面層形成用組成物を塗布する。塗布方法としては公知の方法を使用してよい。例えば、ハケ塗り、スプレーコート、ディップコート、スピンコート、カーテンコート、バーコートなどの一般的な方法によって塗布することができる。
<乾燥>
基材上に塗布された表面層形成用組成物を乾燥させる。本発明において、表面層形成用組成物が溶媒(溶剤)を含む場合、この溶媒を乾燥させるため、表面層形成用組成物を基材上に塗布した後、乾燥させることが好ましい。また部材の生産性を鑑みた場合、加熱による乾燥を好適に用いることが可能である。
<硬化>
基材上に塗布された表面層形成用組成物を硬化させる。硬化手段としては、例えば、熱硬化、活性エネルギー線硬化、または熱硬化と活性エネルギー線硬化との組み合わせが挙げられる。熱硬化を行う場合は、重合開始剤として公知の熱重合開始剤を用いることができ、また赤外線または熱風等により加熱する公知の方法を用いることができる。また、活性エネルギー線硬化の場合、放射線としては、400~800nmの可視光線、400nm以下の紫外線、または電子線が挙げられる。通常、装置が高価な電子線よりも、比較的に安価な紫外線または可視光線が好ましく用いられる。紫外線または可視光線を利用して活性エネルギー線硬化を行う場合は、公知の光重合開始剤を用いることができる。紫外線を用いる場合、紫外線発生源としては、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ガリウムランプ、メタルハライドランプ、紫外線レーザー、太陽光等の紫外線などが挙げられる。照射雰囲気は空気でもよいし、窒素、アルゴン等の不活性ガスでもよい。
<中間層の形成>
本発明において、基材1上に表面層2を形成する前に、基材1上に中間層3を形成してもよい。これにより、基材1と表面層2との密着性をより強固にすることができる。中間層形成用組成物は、例えば、上述したポリアクリル系またはポリビニル系共重合体を形成可能なモノマーと溶媒を任意の重量比で溶解させた溶液に、重合開始剤を後添加し、撹拌して調製することができる。その後、調製した中間層形成用組成物を基材1上に塗布し、乾燥させ、そして硬化させることにより、中間層3を形成することができる。
<プライマー層の形成>
本発明において、基材1がガラス、陶器、金属等の無機材料の場合は、無機基材上に中間層3を形成する前に、無機基材上にプライマー層4を形成してもよい。これにより、無機基材と表面層2との密着性をより強固にすることができる。プライマー層形成用組成物は、例えば、上述したカップリング剤と溶媒、必要に応じて加水分解反応を促進するための触媒を任意の重量比で溶解させ、撹拌して調製することができる。その後、調製したプライマー層形成用組成物を無機基材上に塗布し、乾燥させることにより、プライマー層4を形成させることができる。
以下の実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
1.準備
1-1.基材
下記5種類の基材を用意した。
・アクリル板:アクリライトEX(三菱レイヨン社製)
・PETフィルム:ルミラーフィルムT60(アズワン社製)
・ガラス:ホウケイ酸ガラス
・陶器:表面に釉薬層を備えた衛生陶器
・金属:黄銅の表面にニッケルクロムめっき層を有する板
1-2.試薬
下記試薬を用意した。
<多官能アクリレート>
ジペンタエリスリトールポリアクリレート
<重合開始剤>
1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとベンゾフェノンを重量比1:1で混合したもの
<溶媒>
2-メトキシエタノール
<ベタイン構造を有する化合物>
・化合物1:3-[[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチルアンモニオ]プロパン-1-スルホン酸
・化合物2:4-[(3-メタクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]ブタン-1-スルホン酸
<非イオン性モノマー>
・非イオン性モノマー1:メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)
・非イオン性モノマー2:メトキシテトラエチレングリコールメタクリレート
・非イオン性モノマー3:メトキシポリエチレングリコールメタクリレート
・非イオン性モノマー4:アクリル酸2-メトキシエチル
・非イオン性モノマー5:ジエチレングリコールジメタクリレート
<シラン化合物>
・シラン化合物1:3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン
・シラン化合物2:3メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
・シラン化合物3:テトラエトキシシラン
<界面活性剤>
・ジ-2-エチルヘキシルスルホこはく酸ナトリウム(エーロゾルOT)(規格含量が重量濃度75%のものを使用した。)
2.部材サンプルの作製
実施例1~13、19
(前処理)
基材であるアクリル板の表面を中性洗剤で洗浄し、イオン交換水または超純水ですすいだ。エアブローで基材表面の水滴を飛ばし、乾燥機で60℃、30分乾燥させた。
(中間層)
多官能アクリレート:溶媒=33:67(重量比)の溶液に、重合開始剤を重量濃度で0.6%添加し、スターラーで1時間撹拌し、中間層形成用組成物を調製した。この組成物を、前処理した基材に対し、表1に示すように、スピンコート(1500rpm,15秒)またはバーコート(#10)で塗布した。塗布後すぐに熱風乾燥炉に入れ、60℃で10分間静置した。その後、紫外線照射装置(MDB15001N-01、サンエナジー社製)を用い積算光量が1000mJ/cm(紫外線積算光量計、C9536-254、浜松ホトニクス社製で測定)となるように、塗布面にUV照射し、硬化させた。
(表面層)
表1に示すベタイン構造を有する化合物と非イオン性モノマーとを任意の割合で混合し、これらの合計が重量濃度で10%となるように、溶媒に溶解させた。この溶液に、重合開始剤を重量濃度で0.2%後添加し、スターラーで1時間撹拌し、表面層形成用組成物を調製した。この組成物を中間層に対し、表1に示すように、スピンコート(1500rpm,15秒)またはバーコート(#10)で塗布した。塗布後すぐに熱風乾燥炉に入れ、60℃で10分間静置した。その後、紫外線照射装置(MDB15001N-01、サンエナジー社製))を用い積算光量が3J/cm(紫外線積算光量計、C9536-254、浜松ホトニクス社製で測定)となるように、塗布面にUV照射し、硬化させた。
未硬化の成分を除去するため、中性洗剤で洗浄後、イオン交換水または超純水ですすぎ、室温で静置して乾燥させ、部材サンプルを得た。
実施例14
基材としてアクリル板をPETフィルムに置き換えた以外は実施例1と同様の製法で部材サンプルを得た。
実施例15~17
(前処理)
基材として、表1に示す無機基材を用い、実施例1と同様の前処理において、乾燥後、UVオゾン処理により基材の表面を活性化させた。UVオゾン処理は、UVオゾン照射装置(あすみ技研社製)を用い、10分間UVオゾンを照射した。
(プライマー層)
シラン化合物(1または2):10wt%酢酸水溶液:エタノール=0.5:2:97.5(重量比)の混合溶液をスターラーで室温1時間撹拌し、プライマー層形成用組成物を調製した。その後、この組成物を無機基材表面に、表1に示すようにバーコート(#10)で塗布し、乾燥機で50℃にて5分間、その後120℃にて30分間乾燥させ、プライマー層を形成した。この後は、実施例1と同様の製法により、中間層および表面層をこの順に作製し、部材サンプルを得た。
実施例18
実施例1の製法において、表面層形成用組成物として、ベタイン構造を有する化合物1と非イオン性モノマー1の他に、多官能アクリレートをさらに加え、これらの合計が重量濃度で10%となるよう溶媒に溶解させた。この溶液に、重合開始剤を重量濃度で0.2%後添加し、スターラーで1時間撹拌し、表面層形成用組成物を調製した。この後は、実施例1と同様の製法により部材サンプルを得た。
実施例20
実施例1の製法において、表面層形成用組成物として、ベタイン構造を有する化合物1と非イオン性モノマー1の他に、シラン化合物3(テトラエトキシシラン)をさらに加え、これらの合計が重量濃度で10%となるよう溶媒に溶解させた。この溶液に、重合開始剤を重量濃度で0.2%後添加し、スターラーで1時間撹拌し、表面層形成用組成物を調製した。この後は、実施例1と同様の製法により部材サンプルを得た。
実施例21
それぞれ重量濃度で、ベタイン構造を有する化合物1を1%、非イオン性モノマー3を0.5%、多官能アクリレートを30%、重合開始剤を0.75%、および界面活性剤を0.1%、溶媒に溶解させ、スターラーで1時間攪拌し、バーコート(#24)で基材に塗布した。塗布後すぐに熱風乾燥炉に入れ、60℃で10分間静置した。その後、紫外線照射装置(MDB15001N-01、サンエナジー社製)を用い、積算光量が1000mJ/cm(紫外線積算光量計、C9536-254、浜松ホトニクス社製で測定)となるように、塗布面にUV照射し、硬化させ、部材サンプルを得た。
実施例22
それぞれ重量濃度で、ベタイン構造を有する化合物1を0.5%、非イオン性モノマー1を10%、非イオン性モノマー3を1.5%、多官能アクリレートを30%、重合開始剤を0.75%、および界面活性剤を0.025%、溶媒に溶解させ、スターラーで1時間攪拌した。その後は実施例21と同様の製法により部材サンプルを得た。
比較例1
実施例1の製法において、表面層形成用組成物として、ベタイン構造を有する化合物1のみを用いた以外は同様にして部材サンプルを得た。
比較例2
実施例1の製法において、表面層形成用組成物として、非イオン性モノマー1のみを用いた以外は同様にして部材サンプルを得た。
比較例3
実施例1の製法において、表面層形成用組成物として、非イオン性モノマー5のみを用いた以外は同様にして部材サンプルを得た。
比較例4
基材であるアクリル板をそのまま部材サンプルとした。
3.評価および結果
3-1.XPS評価
<評価サンプルの準備>
板状の部材サンプルから約1cm角サイズの領域を切断したものを測定試料とした。測定前に測定試料の表面を洗浄し、表面に付着した汚れを十分に除去した。具体的には中性洗剤を用いてスポンジで摺動洗浄し、その後超純水にて十分にすすぎ洗いを行った。
<XPS測定>
・XPS測定装置
K-alpha(ThermoFisher Scientific社製)を用いた。
・XPS測定条件
X線条件:単色化AlKα線,72W-12KV
光電子取出角:90°
分析領域:400μmφ
中和銃条件:200μA
イオン銃条件:10mA
(サーベイ)
Time per step:10ms
Energy step size:1.000eV
Sweep:2回
Pass energy:200eV
走査範囲:-10~1350eV
(ナロー)
Time per step:50ms
Energy step size:0.100eV
Sweep:5回
Pass energy:50eV
走査範囲:C1sピーク 279.000eV~298.000eV、O1sピーク 525.000eV~545.000eV、N1sピーク 392.000eV~410.000eV、S2pピーク 157.000eV~175.000eV、Si2pピーク 95.000eV~110.000eV、P2pピーク 124.000eV~144.000eV
<各原子濃度(S、N、Si、P)>
検出された原子の濃度は、得られたスペクトルから、データ解析ソフトThermo Avantage(バージョン5.9916、ThermoFisher Scientific社製)を用いて算出した。ナロー分析で得たスペクトルに対して、C1sピークを284.5eVとしてチャージ補正した後に、測定された各原子の電子軌道に基づくピークに対してShirley法でバックグラウンドを除去した後にピーク面積強度を算出し、データ解析ソフトウェアに予め設定されている装置固有の感度係数で除算する解析処理を行い、C原子、O原子、N原子、S原子、Si原子、P原子の合計を100%としたときの各原子濃度を算出した。結果を表1に示す。
<SB比率>
上記のXPS測定により得られたS原子濃度よりSB比率を算出した。SB比率は、XPS測定から得られたS原子濃度を用いて算出することが可能である。スルホベタイン構造を有する化合物のみからなる表面層のXPS測定によって得られたS原子濃度と、スルホベタイン構造を有さない表面層(S原子を含まない膜)のXPS測定によって得られたS原子濃度とを用い、各試料の表面のXPS測定によって得られたS原子濃度を規格化することにより、各試料の表面に存在するスルホベタイン構造の存在割合を推測するのに利用できる。また、XPSによる分析深さはおよそ10nmであるが、実施例および比較例の部材サンプルの製法においては10nmの層厚を形成するのに十分な量の組成物を塗布して硬化させており、層厚はXPSによる分析深さよりも十分に厚い。したがって、XPSによる分析は基材の影響を受けることなく表面層成分の分析を行うことができる。また、スピンコートまたはバーコートによる塗布で被塗布表面を覆うことができており、基材の露出はない。以上より、XPSでは基材の影響を受けず、表面層成分の分析を行うことができる。
(算出方法)
表面層の構成成分として、ベタイン構造を有する化合物1のみを含む比較例1の部材サンプルから切り出した試料のS濃度=2.9%を100%とし、非イオン性モノマー1のみを含む比較例2の部材サンプルから切り出した試料のS濃度=0.1%を0%として規格化した。この2点から得られる線形回帰直線を使用することで、XPS測定で得られたS濃度の値から各部材サンプルの規格化した値を算出し、この値を各部材サンプルのSB比率とした。得られた値を表1に示す。
3-2.接触角
下記装置およびソフトウェアを用い、下記測定条件にて、表面層の表面に対する水の静的接触角を測定した。結果を表1に示す。
装置:SA-301(協和界面化学社製)
ソフトウェア:界面測定/解析統合システム FAMAS
バージョン:5.0.16
測定方法:液滴法
液滴量:2.0μL
待ち時間:1000ms
解析方法:θ/2法
3-3.水垢清掃性評価
<水垢の作製1>
水道水(茅ヶ崎市)20μLをマイクロピペットで各部材サンプルの表面に滴下し、恒温槽(エスペック社製)に入れ、25℃、相対湿度75%で24時間静置し、水垢が形成された試料を得た。
<水垢の作製2>
上記「水垢の作製1」において、水道水の代わりに、水道水に羊毛ケラチン(東京化成工業株式会社)を0.1wt%混合させ、10分間超音波処理して分散させて得た懸濁液を用いた以外は、同様の方法により水垢が形成された試料を得た。
<清掃性評価>
得られた試料に対し、下記方法にて水垢清掃性評価を行った。摺動機(テスター産業社製)を用い、段階的に摺動負荷を大きくし、下記のレベルにて水垢が形成された表面を摺動した。その後、試料表面を目視で観察し、水垢が見えなくなった時点のレベルをその試料の水垢清掃性として評価した。結果を表1に示す。
・レベル5:市販のウレタンスポンジ(スコッチブライト バスシャイン,3Mジャパン社製)に水を含ませ、荷重50[g/cm2]で5往復
・レベル4:市販のウレタンスポンジ(スコッチブライト バスシャイン,3Mジャパン社製)に重量比90:10で混合した水と中性洗剤(バスマジックリン、花王)を含ませ、荷重25[g/cm2]で5往復
・レベル3:市販のウレタンスポンジ(スコッチブライト バスシャイン,3Mジャパン社製)にレベル4と同様の割合で混合した水と中性洗剤(バスマジックリン、花王)を含ませ、荷重50[g/cm2]で5往復
・レベル2:市販のウレタンスポンジ(スコッチブライト バスシャイン,3Mジャパン社製)にレベル4と同様の割合で混合した水と中性洗剤(バスマジックリン、花王)を含ませ、荷重50[g/cm2]で30往復
・レベル1:市販のウレタンスポンジ(スコッチブライト バスシャイン,3Mジャパン社製)に水と研磨剤入りクリーナー(きらりあ、TOTO社製)を含ませ、荷重50[g/cm2]で5往復
・レベル0:レベル1でも取れない
3-4.タンパク質吸着量評価
<タンパク質を含む懸濁液の作製>
イオン交換水100mLに、タンパク質として市販の羊毛ケラチン2g(東京化成工業株式会社製)を混合し懸濁して得た液に、ケラチンの分散性を高める目的でトリオレイン(関東化学社製)を0.2g添加し、10分間超音波処理を行って、懸濁液を得た。
<タンパク質の付着と洗浄>
上記懸濁液に部材サンプルを5分間浸漬させた後、部材サンプルを懸濁液から取り出した。その後、部材サンプルの表面に、スポイトを用いて超純水を0.4[mL/cm]かけて洗浄した。その後、部材サンプルを乾燥機にて60℃、10分間乾燥し、ケラチンの固着を加速させた。この手順を3回繰り返し行い、ケラチンを付着させた部材サンプルを得た。
<タンパク質が付着した部材サンプルの表面観察>
レーザー顕微鏡 LEXT OLS5000(オリンパス製)を用い、倍率:467倍、標準モード(ピッチ1.2μm)を選択し、1視野あたり645μm×645μmの画像を撮影した。上記顕微鏡のスペックは以下のとおりである。
装置:OLS5000
製品バージョン:1.2.1.4807
光源:405nm半導体レーザー
検出系:フォトマルチプライヤー
対物レンズ:OLYMPUS MPlan APO N 20X/0.60 LEXT
撮影した画像を、図2および図3に示す。図2は実施例1の部材サンプル、図3は比較例2の部材サンプルを撮影した画像である。画像中に見られる黒い粒々が付着したタンパク質である。以下に示す方法によってタンパク質の付着面積率を算出することができる。
<タンパク質付着面積率の算出>
得られた画像を画像処理ソフトウェア「WinROOF2018」(三谷商事製、ソフトウェアバージョン:3.10.0)を用いて、タンパク質付着面積率を算出した。先ず、レーザー顕微鏡で撮影し画像を前記ソフトウェアに取込み、モノクロ画像処理を経て、2値化処理を行った。2値化処理の閾値の設定については、付着したタンパク質が選択されるように適宜調整した。次に、「形状特長の処理」により「穴埋め処理」を選択し、これにより総面積率を算出した。この総面積率をタンパク付着面積率とした。結果を表1に示す。
<摺動耐久性評価>
実施例5の部材サンプルに対し、摺動機(テスター産業社製)を用い摺動耐久性試験を行った。
市販のウレタンスポンジ(スコッチブライト バスシャイン,3Mジャパン社製)に重量比90:10で混合した水と中性洗剤(バスマジックリン、花王)を含ませ、荷重25[g/cm2]でサンプルの表面を5000往復させた。サンプルを流水洗浄後、乾燥させ、上述した方法で接触角を測定した。摺動耐久性は以下の基準で判定した。
〇:摺動試験後の接触角が30度以下
×:摺動試験後の接触角が30度より大きい
その結果、実施例5の部材サンプルにおける摺動耐久性試験後の接触角は7.0度であり、評価は〇であった。
Figure 2023138439000033
10 部材
1 基材
2 表面層
3 中間層
4 プライマー層

Claims (13)

  1. 部材であって、
    当該部材は、基材と表面層とを含み、
    当該表面層は、下記式(A1)で表される構造および下記式(A2)で表される構造を含み、
    Figure 2023138439000034
    Figure 2023138439000035
    式(A1)において、
    は、-COO-、-CONH-、-(CH-(mは自然数である)のいずれか1つを含み、
    は、HまたはCHであり、
    は、下記式(B)で表される官能基であり、
    Figure 2023138439000036
    式(B)において、
    およびRは、それぞれ独立して、-(CH-(lは1~10の自然数である)で表される炭化水素基であり、
    およびRは、それぞれ独立して、必須成分としてCおよびHを、任意成分としてOを含み、かつ、NおよびSを含まない有機基であり、
    式(A2)において、
    は、-COO-、-CONH-、-(CH-(mは自然数である)のいずれか1つを含み、
    は、HまたはCHであり、
    は、下記式(C)で表される官能基であり、
    Figure 2023138439000037
    式(C)において、
    Yは、炭素数が1~10の直鎖または分岐または環状の炭化水素基であり、
    aは自然数であり、
    は、H、CH、C、下記式(D1)、下記式(D2)、下記式(D3)および下記式(D4)からなる群から選択されるいずれかの構造を含み、
    Figure 2023138439000038
    Figure 2023138439000039
    Figure 2023138439000040
    Figure 2023138439000041
    式(D1)において、
    Yは、炭素数が1~10の直鎖または分岐または環状の炭化水素基であり、
    は、-OCO-、-NHCO-、-(CH-(mは自然数である)のいずれか1つを含み、
    は、HまたはCHであり、
    式(D2)において、
    Yは、炭素数が1~10の直鎖または分岐または環状の炭化水素基であり、
    は下記式(E1)で表される構造であり、
    Figure 2023138439000042
    式(E1)において、
    Yは、炭素数が1~10の直鎖または分岐または環状の炭化水素基であり、
    は、-OCO-、-NHCO-、-(CH-(mは自然数である)のいずれか1つを含み、
    は、HまたはCHであり、
    aは自然数であり、
    式(D3)において、
    Yは、炭素数が1~10の直鎖または分岐または環状の炭化水素基であり、
    は上記式(E1)で表される構造であり、
    式(D4)において、
    4は下記式(E2)で表される構造であり、
    Figure 2023138439000043
    式(E2)において、
    Yは、炭素数が1~10の直鎖または分岐または環状の炭化水素基であり、
    は、-OCO-、-NHCO-、-(CH-(mは自然数である)のいずれか1つを含み、
    は、HまたはCHであり、
    aは自然数であり、
    前記部材は、水と、有機成分および/または無機成分を含む汚染物質とが表面に付着し、且つ表面に水と汚染物質とが混在した状態で水が乾燥するというサイクルが繰り返される環境下で使用されることを特徴とする、部材。
  2. 前記式(C)において、RがHまたはCHまたはCである、請求項1に記載の部材。
  3. 表面に対する水の静的接触角が30°以下である、請求項1または2に記載の部材。
  4. 前記式(A1)および式(A2)において、LおよびLが-COO-である、請求項1または2に記載の部材。
  5. 前記式(A1)および式(A2)において、LおよびLが-COO-である、請求項3に記載の部材。
  6. 前記部材の表面をX線光電子分光法(XPS)測定することによって得られるSi原子の濃度が1.0%以下である、請求項4に記載の部材。
  7. 前記部材の表面をX線光電子分光法(XPS)測定することによって得られるSi原子の濃度が1.0%以下である、請求項5に記載の部材。
  8. 前記部材の表面をX線光電子分光法(XPS)測定することによって得られるS原子の濃度が0.5%以上である、請求項6に記載の部材。
  9. 前記部材の表面をX線光電子分光法(XPS)測定することによって得られるS原子の濃度が0.5%以上である、請求項7に記載の部材。
  10. 前記部材の表面をX線光電子分光法(XPS)測定することによって得られるN原子の濃度/S原子の濃度が、0.5以上2.5以下である、請求項8に記載の部材。
  11. 前記部材の表面をX線光電子分光法(XPS)測定することによって得られるN原子の濃度/S原子の濃度が、0.5以上2.5以下である、請求項9に記載の部材。
  12. 前記基材は、樹脂、無機材料または金属からなるものである、請求項10に記載の部材。
  13. 前記基材は、樹脂、無機材料または金属からなるものである、請求項11に記載の部材。

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