JP2023138335A - 繊維強化複合材及び繊維強化複合材の製造方法 - Google Patents

繊維強化複合材及び繊維強化複合材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】曲げ強度を高めることができる繊維強化複合材を提供する。【解決手段】本発明に係る繊維強化複合材は、マトリックス樹脂と、複数の長繊維と、複数の粒子と、バインダ剤とを含み、前記長繊維と前記マトリックス樹脂とが、前記バインダ剤を介して接着しており、前記長繊維と前記粒子とが、前記バインダ剤を介して接着しており、前記マトリックス樹脂の溶融温度をTA℃としたときに、JIS K7199に準拠して測定される前記マトリックス樹脂の(TA+20)℃での粘度が1000Pa・s以上である。【選択図】図1

Description

本発明は、繊維とマトリックス樹脂とを含む繊維強化複合材に関する。また、本発明は、繊維とマトリックス樹脂とを含む繊維強化複合材の製造方法に関する。
下記の特許文献1,2に記載のように、マトリックス樹脂が、炭素繊維等の強化繊維によって強化された繊維強化複合材が知られている。繊維強化複合材は、軽量でありながら、強度、剛性及び寸法安定性に優れるという利点を有する。そのため、繊維強化複合材は、自動車及び航空機等の車両、事務機器、ICトレイ、ノートパソコンの筐体、止水板、並びに風車翼等の様々な用途に用いられており、その需要は年々増加しつつある。
特開平08-225701号公報 特開2011-246595号公報
繊維強化複合材は、繊維間部分にマトリックス樹脂を含浸させることにより製造されている。従来、繊維間部分にマトリックス樹脂を良好に含浸させるために、含浸温度での粘度が比較的小さいマトリックス樹脂が用いられている。
一方、マトリックス樹脂として粘度の大きい樹脂を用いる場合、繊維間部分にマトリックス樹脂を良好に含浸させることは困難である。繊維間部分にマトリックス樹脂が含浸していない部分が存在すると、その部分に起因して、繊維強化複合材の曲げ強度が低下する。繊維強化複合材の曲げ強度が低いと、使用時にひび又は割れが生じることがある。
本発明の目的は、曲げ強度を高めることができる繊維強化複合材を提供することである。また、本発明は、得られる繊維強化複合材の曲げ強度を高めることができる繊維強化複合材の製造方法を提供することも目的とする。
本明細書において、以下の繊維強化複合材及び繊維強化複合材の製造方法を開示する。
項1.マトリックス樹脂と、複数の長繊維と、複数の粒子と、バインダ剤とを含み、前記長繊維と前記マトリックス樹脂とが、前記バインダ剤を介して接着しており、前記長繊維と前記粒子とが、前記バインダ剤を介して接着しており、前記マトリックス樹脂の溶融温度をT℃としたときに、JIS K7199に準拠して測定される前記マトリックス樹脂の(T+20)℃での粘度が1000Pa・s以上である、繊維強化複合材。
項2.前記粒子の平均粒子径の、前記長繊維の平均繊維径に対する比が、0.01以上2.0以下である、項1に記載の繊維強化複合材。
項3.前記粒子の平均粒子径が、0.1μm以上20μm以下である、項1又は2に記載の繊維強化複合材。
項4.前記長繊維の平均繊維径が、5μm以上15μm以下である、項1~3のいずれか1項に記載の繊維強化複合材。
項5.前記長繊維が、炭素繊維、ガラス繊維、又はアラミド繊維を含む、項1~4のいずれか1項に記載の繊維強化複合材。
項6.前記長繊維の平均繊維長が30mm以上である、項1~5のいずれか1項に記載の繊維強化複合材。
項7.前記長繊維が、チョップドストランドマット、コンティニュアスマット、UD、織物又は不織布の形態で含まれる、項1~6のいずれか1項に記載の繊維強化複合材。
項8.前記粒子が、シリカ粒子、金属粒子、炭素粒子、炭酸カルシウム粒子、タルク粒子、又はジビニルベンゼン樹脂粒子を含む、項1~7のいずれか1項に記載の繊維強化複合材。
項9.前記粒子が、無機粒子である、項1~8のいずれか1項に記載の繊維強化複合材。
項10.前記マトリックス樹脂が、塩化ビニル系樹脂、又はエチレンビニルアルコール共重合体を含む、項1~9のいずれか1項に記載の繊維強化複合材。
項11.前記バインダ剤が、前記マトリックス樹脂が有する構造単位と同じ構造単位を有する、項1~10のいずれか1項に記載の繊維強化複合材。
項12.複数の長繊維、複数の粒子、及び前記長繊維と前記粒子とを接着しているバインダ剤を含む開繊繊維を得る工程と、前記開繊繊維の繊維間部分に、マトリックス樹脂を含浸させる含浸工程とを備え、前記含浸工程における含浸温度をT℃としたときに、JIS K7199に準拠して測定される前記マトリックス樹脂のT℃での粘度が1000Pa・s以上である、繊維強化複合材の製造方法。
本発明に係る繊維強化複合材は、マトリックス樹脂と、複数の長繊維と、複数の粒子と、バインダ剤とを含む。本発明に係る繊維強化複合材では、上記長繊維と上記マトリックス樹脂とが、上記バインダ剤を介して接着しており、上記長繊維と上記粒子とが、上記バインダ剤を介して接着している。本発明に係る繊維強化複合材では、上記マトリックス樹脂の溶融温度をT℃としたときに、JIS K7199に準拠して測定される上記マトリックス樹脂の(T+20)℃での粘度が1000Pa・s以上である。本発明に係る繊維強化複合材では、上記の構成が備えられているので、曲げ強度を高めることができる。
本発明に係る繊維強化複合材の製造方法は、複数の長繊維、複数の粒子、及び上記長繊維と上記粒子とを接着しているバインダ剤を含む開繊繊維を得る工程と、上記開繊繊維の繊維間部分に、マトリックス樹脂を含浸させる含浸工程とを備える。本発明に係る繊維強化複合材の製造方法では、上記含浸工程における含浸温度をT℃としたときに、JIS K7199に準拠して測定される上記マトリックス樹脂のT℃での粘度が1000Pa・s以上である。本発明に係る繊維強化複合材の製造方法では、上記の構成が備えられているので、得られる繊維強化複合材の曲げ強度を高めることができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る繊維強化複合材を模式的に示す断面図である。 図2は、実施例1で得られた繊維強化複合材の電子顕微鏡画像である。 図3は、比較例1で得られた繊維強化複合材の電子顕微鏡画像である。
以下、本発明を詳細に説明する。
(繊維強化複合材)
本発明に係る繊維強化複合材は、マトリックス樹脂と、複数の長繊維と、複数の粒子と、バインダ剤とを含む。本発明に係る繊維強化複合材では、上記長繊維と上記マトリックス樹脂とが、上記バインダ剤を介して接着しており、上記長繊維と上記粒子とが、上記バインダ剤を介して接着している。本発明に係る繊維強化複合材では、上記マトリックス樹脂の溶融温度をT℃としたときに、JIS K7199に準拠して測定される上記マトリックス樹脂の(T+20)℃での粘度が1000Pa・s以上である。
本発明に係る繊維強化複合材では、上記の構成が備えられているので、曲げ強度を高めることができる。
従来、繊維間部分にマトリックス樹脂を良好に含浸させるために、含浸温度での粘度が比較的小さいマトリックス樹脂が用いられている。一方、高温(例えば200℃付近)での粘度が大きい樹脂では、繊維間部分にマトリックス樹脂を良好に含浸させることは困難である。なお、含浸性を高めるために、含浸温度を高くすることが考えられる。しかしながら、含浸温度を過度に高くした場合には、マトリックス樹脂が熱分解したり、繊維強化複合材が劣化したりして所望の繊維強化複合材を得られないことがあるため、含浸温度を過度に高くすることはできない。したがって、マトリックス樹脂として粘度の大きい樹脂を用いる場合、繊維間部分にマトリックス樹脂を良好に含浸させることは困難である。
これに対して、本発明では、上記マトリックス樹脂として、高温(例えば200℃付近)での粘度が大きい性質を有する樹脂が用いられているにもかかわらず、含浸温度を過度に高くすることなく繊維間部分にマトリックス樹脂を良好に含浸させることができる。そのため、繊維強化複合材の曲げ強度を高めることができる。
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明する。なお、以下の図において、図示の便宜上、各構成要素の大きさ及び厚みは、実際の大きさ及び厚みと異なる場合がある。
図1は、本発明の一実施形態に係る繊維強化複合材を模式的に示す断面図である。図1では、長繊維の長さ方向に沿う断面図が示されている。
図1に示す繊維強化複合材11は、マトリックス樹脂1と、複数の長繊維2と、複数の粒子3と、バインダ剤4とを含む。バインダ剤4は、長繊維2の外表面上に配置されている。バインダ剤4は、長繊維2の外周面上に配置されている。長繊維2はバインダ剤4によって被覆されている。長繊維2とマトリックス樹脂1とは、バインダ剤4を介して接着している。長繊維2と粒子3とは、バインダ剤4を介して接着している。粒子3は、バインダ剤4を介して、長繊維2の外周面上に配置されている。
以下、本発明に係る繊維強化複合材について更に説明する。
<マトリックス樹脂>
上記繊維強化複合材は、マトリックス樹脂を含む。上記繊維強化複合材は、マトリックス樹脂により構成されたマトリックス樹脂部を含む。上記マトリックス樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記マトリックス樹脂の溶融温度をT℃とする。JIS K7199に準拠して測定される上記マトリックス樹脂の(T+20)℃での粘度は、好ましくは1000Pa・s以上、より好ましくは1400Pa・s以上、更に好ましくは1800Pa・s以上、好ましくは3000Pa・s以下、より好ましくは2600Pa・s以下である。樹脂の粘度と機械的強度とは一般的に比例関係となっているため、粘度の大きいマトリックス樹脂を用いれば繊維強化複合材の機械的強度を高めることができるものの、繊維強化複合材を製造する際のマトリックス樹脂の含浸性が低下する。上記粘度が上記下限以上であると、マトリックス樹脂の含浸性と繊維強化複合材の機械的強度とがともに優れる繊維強化複合材を良好に製造することができる。上記粘度が上記上限以下であると、マトリックス樹脂の含浸性をより一層高めることができ、従って、繊維強化複合材の曲げ強度をより一層高めることができる。
なお、上記粘度は、ピストンによる押し出し速度を10mm/minとして測定することが好ましい。
また、上記マトリックス樹脂の溶融温度(T)は、示差走査熱量計(DSC)により測定することができる。
成形加工性、リサイクル性及び連続生産性を高める観点から、上記マトリックス樹脂は、熱可塑性樹脂であることが好ましい。
上記マトリックス樹脂としては、塩化ビニル系樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリアリールエーテルケトン樹脂(PAEK)、ポリエーテルサルフォン樹脂(PES)、ポリエーテルケトンケトン樹脂(PEKK)、熱可塑性ポリイミド樹脂(PI)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリフタルアミド樹脂(PPA)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、ポリエチレン樹脂(PE)、及びポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)等が挙げられる。
様々な樹脂が存在する中で、本発明では、上記マトリックス樹脂として、(T+20)℃での粘度が1000Pa・s以上となる樹脂が好適に用いられる。
繊維強化複合材の曲げ強度をより一層高める観点からは、上記マトリックス樹脂は、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルケトンケトン樹脂、塩化ビニル系樹脂、又はエチレンビニルアルコール共重合体を含むことが好ましく、塩化ビニル系樹脂、又はエチレンビニルアルコール共重合体を含むことがより好ましい。繊維強化複合材の機械的強度をより一層高める観点からは、上記マトリックス樹脂は、ポリフェニレンサルファイド樹脂、又はポリエーテルケトンケトン樹脂であることが好ましい。
繊維強化複合材の耐燃焼性を高める観点からは、上記マトリックス樹脂は、塩化ビニル系樹脂を含むことが好ましく、塩化ビニル系樹脂であることがより好ましい。特に、粘度の比較的大きい塩化ビニル系樹脂は、溶融温度と分解温度とが近いため、含浸温度を高くすることによって、含浸性を高めることは困難である。これに対して、本発明では、粘度の比較的大きい塩化ビニル系樹脂を用いる場合でも含浸性を高めることができ、従って、繊維強化複合材の曲げ強度及び耐燃焼性を高めることができる。
上記塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニル樹脂であってもよく、塩素化塩化ビニル樹脂であってもよい。
上記繊維強化複合材100体積%中、上記マトリックス樹脂の含有量は、好ましくは30体積%以上、より好ましくは40体積%以上、好ましくは70体積%以下、より好ましくは60体積%以下である。上記マトリックス樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、繊維強化複合材の機械的強度をより一層高めることができる。
<長繊維>
上記繊維強化複合材は、複数の長繊維を含む。長繊維とは、繊維長が10mm以上の繊維を意味する。上記長繊維は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記長繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、及びアラミド繊維等が挙げられる。
繊維強化複合材の曲げ強度をより一層高める観点からは、上記長繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、又はアラミド繊維を含むことが好ましい。繊維強化複合材の軽量化の観点及び繊維強化複合材の機械的強度をより一層高める観点からは、上記長繊維は、炭素繊維、又はアラミド繊維であることが好ましく、炭素繊維であることがより好ましい。繊維強化複合材の製造コストを抑える観点からは、上記長繊維は、ガラス繊維であることが好ましい。
上記炭素繊維としては、PAN系炭素繊維、及びPITCH系炭素繊維等が挙げられる。
上記長繊維の平均繊維長は、好ましくは20mm以上、より好ましくは30mm以上、更に好ましくは40mm以上、好ましくは200mm以下、より好ましくは150mm以下、更に好ましくは100mm以下である。上記平均繊維長が上記下限以上であると、繊維強化複合材の曲げ強度をより一層高めることができる。上記平均繊維長が上記上限以下であると、繊維強化複合材の曲げ強度のばらつきを抑えることができる。なお、長繊維が一方向繊維(UD)又は織物の形態で含まれる場合には、該長繊維の平均繊維長は特に限定されない。UD又は織物の場合には、該UD又は該織物は、少なくとも一方向の連続繊維を含む。
上記長繊維の平均繊維長は、数平均繊維長であり、ランダムに選択した100本の繊維の繊維長の相加平均値である。上記繊維長とは、長繊維の一方の端部から他方の端部までの長さである。
上記長繊維の平均繊維径は、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは5μm以上、特に好ましくは7μm以上、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下、更に好ましくは20μm以下、特に好ましくは15μm以下、最も好ましくは13μm以下である。上記平均繊維径が上記下限以上及び上記上限以下であると、繊維強化複合材の曲げ強度をより一層高めることができる。
上記長繊維の平均繊維径は、数平均繊維径であり、ランダムに選択した100本の繊維の繊維径の相加平均値である。上記繊維径とは、長繊維の長さ方向に直交する方向に沿った断面において、該断面の円相当径の直径を意味する。
上記長繊維は、上記繊維強化複合材において、様々な形態で含まれていてもよい。上記長繊維は、複数集まって繊維束を形成していることが好ましい。上記繊維強化複合材は、複数の長繊維により形成された繊維束を含むことが好ましい。上記繊維強化複合材は、複数の長繊維により形成された繊維基材を含むことが好ましい。
上記繊維束の目付は、好ましくは20g/m以上、より好ましくは100g/m以上、更に好ましくは150g/m以上、好ましくは1000g/m以下、より好ましくは700g/m以下、更に好ましくは500g/m以下である。上記目付が上記下限以上であると、繊維強化複合材の機械的強度をより一層高めることができる。上記目付が上記上限以下であると、マトリックス樹脂の含浸性をより一層高めることができ、従って、繊維強化複合材の曲げ強度をより一層高めることができる。
上記長繊維は、チョップドストランドマット、コンティニュアスマット、UD(UniDirection)、織物又は不織布の形態で含まれることが好ましい。上記長繊維は、チョップドストランドマット、コンティニュアスマット、UD、織物又は不織布を形成していることが好ましい。この場合には、繊維強化複合材の曲げ強度を含む機械的強度をより一層高めることができる。なお、繊維形態は必ずしも一つに限定されず、UD又は織物等の連続繊維と、チョップドストランドマット等の長繊維とを複合的に用いてもよい。
上記繊維強化複合材100体積%中、上記長繊維の含有量は、好ましくは30体積%以上、より好ましくは40体積%以上、好ましくは70体積%以下、より好ましくは60体積%以下である。上記長繊維の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、繊維強化複合材の機械的強度をより一層高めることができる。
上記マトリックス樹脂100重量部に対して、上記長繊維の含有量は、好ましくは50重量部以上、より好ましくは75重量部以上、好ましくは200重量部以下、より好ましくは150重量部以下である。上記長繊維の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、繊維強化複合材の機械的強度をより一層高めることができる。上記長繊維の含有量が上記上限以下であると、マトリックス樹脂の含浸性をより一層高めることができ、従って、繊維強化複合材の曲げ強度をより一層高めることができる。
<粒子>
上記繊維強化複合材は、複数の粒子を含む。上記粒子は、バインダ剤を介して、長繊維の外周面上に配置されている。上記粒子を用いることにより、長繊維を開繊させることができる。すなわち、上記粒子は、長繊維間に配置されており、長繊維間を所定の間隔に広げている。これにより、マトリックス樹脂の含浸性が高められ、繊維強化複合材の曲げ強度を高めることができる。上記粒子は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記粒子は、有機粒子であってもよく、無機粒子であってもよい。なお、上記粒子が有機粒子である場合、該有機粒子は、上記(T+20)℃又は後述の含浸温度(T)において、変形可能な成分により構成されている粒子であることが好ましい。
上記有機粒子としては、エポキシ系樹脂粒子、フェノール系樹脂粒子、メラミン系樹脂粒子、尿素樹脂粒子、不飽和ポリエステル樹脂粒子及びオキサジン樹脂粒子等の熱硬化性樹脂粒子;ジビニルベンゼン樹脂粒子;ポリオレフィン樹脂粒子;ポリブチレンテレフタレート樹脂粒子;ポリエチレンテレフタレート樹脂粒子;アクリル系樹脂粒子;ポリカーボネート系樹脂粒子等が挙げられる。
上記無機粒子としては、炭素粒子、シリカ粒子、金属粒子、炭酸カルシウム粒子、及びタルク粒子等が挙げられる。上記炭素粒子としては、アモルファスカーボン粒子、黒鉛粒子及びダイヤモンド粒子等の炭素粒子(炭素同素体粒子)が挙げられる。上記金属粒子としては、アルミナ粒子、酸化チタン粒子、フェライト粒子、鉄粒子、及び銅粒子等が挙げられる。なお、上記無機粒子は、導電性、磁性又は色調付与等の機能性を有する粒子であってもよい。
上記粒子は、無機粒子、又はジビニルベンゼン樹脂粒子であることが好ましく、無機粒子であることがより好ましい。この場合には、開繊状態が良好に維持されるのでマトリックス樹脂の含浸性をより一層高めることができ、従って、繊維強化複合材の曲げ強度をより一層高めることができる。
上記粒子は、シリカ粒子、金属粒子、炭素粒子、炭酸カルシウム粒子、タルク粒子、又はジビニルベンゼン樹脂粒子を含むことがより好ましく、シリカ粒子、アルミナ粒子、酸化チタン粒子、炭素粒子、炭酸カルシウム粒子、タルク粒子、又はジビニルベンゼン樹脂粒子を含むことが更に好ましい。上記粒子は、シリカ粒子であることが特に好ましい。この場合には、開繊状態が良好に維持されるのでマトリックス樹脂の含浸性をより一層高めることができ、従って、繊維強化複合材の曲げ強度をより一層高めることができる。
上記粒子の平均粒子径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、更に好ましくは3μm以上、特に好ましくは5μm以上、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下、更に好ましくは20μm以下、特に好ましくは15μm以下である。上記平均粒子径が上記下限以上及び上記上限以下であると、開繊状態が良好に維持されるのでマトリックス樹脂の含浸性をより一層高めることができ、従って、繊維強化複合材の曲げ強度をより一層高めることができる。
上記粒子の平均粒子径は、数平均粒子径であり、ランダムに選択した100個の粒子の粒子径の相加平均値である。上記粒子径とは、粒子の断面の円相当径の直径を意味する。
上記粒子の平均粒子径の、上記長繊維の平均繊維径に対する比(粒子の平均粒子径/長繊維の平均繊維径)は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.3以上、特に好ましくは0.4以上、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.5以下、更に好ましくは1.35以下、特に好ましくは1.2以下である。上記比(粒子の平均粒子径/長繊維の平均繊維径)が上記下限以上であると、マトリックス樹脂の含浸性をより一層高めることができ、従って、繊維強化複合材の曲げ強度をより一層高めることができる。また、上記比(粒子の平均粒子径/長繊維の平均繊維径)が上記下限以上であると、長繊維間の間隔を比較的揃えることができ、従って、繊維強化複合材の曲げ強度のばらつきを抑えることができる。上記比(粒子の平均粒子径/長繊維の平均繊維径)が上記上限以下であると、粒子への応力集中を適度に小さくすることができ、従って、繊維強化複合材の曲げ強度をより一層高めることができる。
上記長繊維100重量部に対して、上記粒子の含有量は、好ましくは0.5重量部以上、より好ましくは1重量部以上、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下である。上記粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、開繊状態が良好に維持されるのでマトリックス樹脂の含浸性をより一層高めることができ、従って、繊維強化複合材の曲げ強度をより一層高めることができる。
<バインダ剤>
上記繊維強化複合材は、バインダ剤を含む。上記繊維強化複合材は、バインダ剤により構成されたバインダ剤部を含む。上記繊維強化複合材において、上記バインダ剤は、上記長繊維と上記マトリックス樹脂とを接着している。また、上記繊維強化複合材において、上記バインダ剤は、上記長繊維と上記粒子とを接着している。上記バインダ剤を用いることにより、マトリックス樹脂の含浸時に粒子が長繊維から剥がれにくくなる。そのため、開繊状態が良好に維持され、マトリックス樹脂の含浸性を高めることができる。また、含浸工程を経て得られる繊維強化複合材では、バインダ剤を介して長繊維とマトリックス樹脂とが良好に接着しており、かつ、長繊維と粒子とが良好に接着しているので、繊維強化複合材の曲げ強度を高めることができる。上記バインダ剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記バインダ剤は、上記長繊維の外表面の全体に配置されていてもよく、上記長繊維の外表面の一部にのみ配置されていてもよい。上記バインダ剤は、上記長繊維の外表面の全体を覆っていてもよく、上記長繊維の外表面の一部のみを覆っていてもよい。上記バインダ剤は、上記長繊維の外周面の全体に配置されていてもよく、上記長繊維の外周面の一部にのみ配置されていてもよい。上記バインダ剤は、上記長繊維の外周面の全体を覆っていてもよく、上記長繊維の外周面の一部のみを覆っていてもよい。
上記バインダ剤の種類は、長繊維の種類、マトリックス樹脂の種類及び粒子の種類により適宜変更可能である。上記バインダ剤の種類は、マトリックス樹脂の種類によって選択することが好ましい。
上記バインダ剤は、上記マトリックス樹脂が有する構造単位と同じ構造単位を有することが好ましい。この場合には、バインダ剤とマトリックス樹脂との接着力をより一層高めることができる。
上記マトリックス樹脂が塩化ビニル系樹脂である場合に、上記バインダ剤は、下記式(1)で表される構造単位を有することが好ましい。上記マトリックス樹脂が塩化ビニル系樹脂である場合に、上記バインダ剤は、下記式(1)で表される構造単位と、下記式(1)で表される構造単位とは異なる構造単位とを有する共重合体であることが好ましい。この場合には、バインダ剤とマトリックス樹脂(塩化ビニル系樹脂)との接着力をより一層高めることができる。
Figure 2023138335000002
上記式(1)中、nは1以上の数を表し、*は、他の原子との結合位置を表す。
上記マトリックス樹脂がエチレンビニルアルコール共重合体である場合に、上記バインダ剤は、下記式(2A)又は下記式(2B)で表される構造単位を有することが好ましい。上記マトリックス樹脂がエチレンビニルアルコール共重合体である場合に、上記バインダ剤は、下記式(2A)又は下記式(2B)で表される構造単位と、下記式(2A)で表される構造単位及び下記式(2B)で表される構造単位の双方とは異なる構造単位とを有する共重合体であることが好ましい。なお、上記バインダ剤は、下記式(2A)で表される構造単位と下記式(2B)で表される構造単位とのうち、下記式(2A)で表される構造単位のみを有していてもよく、下記式(2B)で表される構造単位のみを有していてもよく、下記式(2A)で表される構造単位と下記式(2B)で表される構造単位との双方を有していてもよい。この場合には、バインダ剤とマトリックス樹脂(エチレンビニルアルコール共重合体)との接着力をより一層高めることができる。
Figure 2023138335000003
上記式(2A)中、nは1以上の数を表し、*は、他の原子との結合位置を表す。
Figure 2023138335000004
上記式(2B)中、nは1以上の数を表し、*は、他の原子との結合位置を表す。
上記バインダ剤の溶解パラメータをSP(cal/cm1/2とし、上記マトリックス樹脂の溶解パラメータをSP(cal/cm1/2としたときに、SPは、好ましくは0.8×SP(cal/cm1/2以上、好ましくは1.2×SP(cal/cm1/2以下である。上記SPが上記下限以上及び上記上限以下であると、バインダ剤とマトリックス樹脂との接着力をより一層高めることができる。上記SPが上記下限以上及び上記上限以下であると、上記バインダ剤が、上記マトリックス樹脂が有する構造単位と同じ構造単位を有さない場合であっても、バインダ剤とマトリックス樹脂との接着力をより一層高めることができる。
上記バインダ剤の溶解パラメータ(SP)及び上記マトリックス樹脂の溶解パラメータ(SP)はそれぞれ、下記式(X)により算出される。
δ={(ΔH-RT)/V}1/2 ・・・(X)
δ:溶解パラメータ[(cal/cm1/2
ΔH:モル蒸発熱[J/mol]
R:気体定数[J/(K・mol)]
T:温度[K]
V:モル体積[m/mol]
<他の成分>
上記繊維強化複合材は、上述した成分(マトリックス樹脂、長繊維、粒子及びバインダ剤)以外の他の成分を含んでいてもよい。上記他の成分としては、界面活性剤及び短繊維等が挙げられる。上記他の成分は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
<繊維強化複合材の他の詳細>
上記繊維強化複合材の形状及びサイズは特に限定されない。上記繊維強化複合材の形状は、板状であってもよく、波板状であってもよく、曲面状であってもよい。上記繊維強化複合材の最大厚みは、2.0mm以上であってもよく、2.0mm以下であってもよい。また、上記繊維強化複合材は、複数を積層して用いられてもよい。複数の上記繊維強化複合材を積層して用いることで、例えば、2.0mm以上の最大厚みを有する部材(繊維強化複合材の積層体)を得ることもできる。
(繊維強化複合材の製造方法)
本発明に係る繊維強化複合材の製造方法は、(1)複数の長繊維、複数の粒子、及び上記長繊維と上記粒子とを接着しているバインダ剤を含む開繊繊維を得る工程と、(2)上記開繊繊維の繊維間部分に、マトリックス樹脂を含浸させる含浸工程とを備える。本発明に係る繊維強化複合材の製造方法では、上記含浸工程における含浸温度をT℃としたときに、JIS K7199に準拠して測定される上記マトリックス樹脂のT℃での粘度が1000Pa・s以上である。
本発明に係る繊維強化複合材の製造方法では、上記の構成が備えられているので、得られる繊維強化複合材の曲げ強度を高めることができる。
なお、上記繊維強化複合材の製造方法において、長繊維、粒子、バインダ剤及びマトリックス樹脂としてそれぞれ、上記の繊維強化複合材の欄で説明した長繊維、粒子、バインダ剤及びマトリックス樹脂を用いることができる。上記繊維強化複合材の製造方法は、上述した繊維強化複合材を製造する方法であることが好ましい。
<開繊繊維を得る工程>
上記開繊繊維を得る方法としては、下記の(i)及び(ii)の方法等が挙げられる。
(i)バインダ剤と複数の粒子とを含む液を、複数の長繊維に接触させて、長繊維の外表面にバインダ剤を介して粒子を接着する方法。
(ii)バインダ剤と複数の長繊維とを接触させた後、複数の粒子を含む液を、バインダ剤が付着した長繊維に接触させて、長繊維の外表面にバインダ剤を介して粒子を接着する方法。
なお、上記(i)又は上記(ii)において、粒子を含む液と長繊維との接触方法及びバインダ剤と長繊維との接触方法としては、スプレー、塗布、及び浸漬等の方法が挙げられる。
粒子と接触させる長繊維は、繊維束であることが好ましい。
上記(i)又は上記(ii)において、粒子と接触した長繊維(繊維束)を回転又は振動させたり、ローラー等で扱いたりすることにより、粒子を含む液が繊維表面に濡れ拡がり、粒子が繊維間部分に入り込み、開繊繊維を得ることができる。
粒子を含む液の繊維表面への濡れ拡がり性を高める観点から、粒子を含む液は、有機溶媒を含むことが好ましい。上記有機溶媒としては特に限定されない。作業性の観点からは、上記有機溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、テトラヒドロフラン、又はアセトンを含むことが好ましい。なお、粒子を含む液は、水を含んでいてもよい。
なお、溶媒(有機溶媒及び水等)を除去するために、上記開繊繊維を得る工程では、粒子を含む液と長繊維(繊維束)とを接触させた後、加熱又は乾燥して、上記開繊繊維を得ることが好ましい。
<含浸工程>
上記開繊繊維の繊維間部分にマトリックス樹脂を含浸させる方法は特に限定されない。例えば、溶融したマトリックス樹脂を、シートダイ等を用いてフィルム状に押し出し、上記開繊繊維上に積層した後、加熱しながら圧縮することによりマトリックス樹脂を開繊繊維の繊維間部分に含浸させる方法等が挙げられる。
上記開繊繊維では上記長繊維と上記粒子とがバインダ剤を介して接着しているので、上記含浸工程時に、上記粒子が上記長繊維から剥がれにくい。そのため、開繊状態が良好に維持され、マトリックス樹脂の含浸性を高めることができる。
上記含浸工程における含浸温度をT℃としたときに、JIS K7199に準拠して測定される上記マトリックス樹脂のT℃での粘度は、好ましくは1000Pa・s以上、より好ましくは1400Pa・s以上、更に好ましくは1800Pa・s以上、好ましくは3000Pa・s以下、より好ましくは2600Pa・s以下である。樹脂の粘度と機械的強度とは一般的に比例関係となっているため、粘度の大きいマトリックス樹脂を用いれば繊維強化複合材の機械的強度を高めることができるものの、繊維強化複合材を製造する際のマトリックス樹脂の含浸性が低下する。上記粘度が上記下限以上であると、マトリックス樹脂の含浸性と繊維強化複合材の機械的強度とがともに優れる繊維強化複合材を良好に製造することができる。上記粘度が上記上限以下であると、マトリックス樹脂の含浸性をより一層高めることができ、従って、繊維強化複合材の曲げ強度をより一層高めることができる。
なお、上記粘度は、ピストンによる押し出し速度を10mm/minとして測定することが好ましい。
上記マトリックス樹脂の溶融温度をT℃とする。上記含浸工程における含浸温度(T)は、好ましくは(T+0)℃以上、より好ましくは(T+10)℃以上、好ましくは(T+40)℃以下、より好ましくは(T+30)℃以下である。上記含浸温度(T)が上記下限以上であると、上記下限未満の場合よりも粘度を低くすることができ、マトリックス樹脂の含浸性をより一層高めることができ、従って、繊維強化複合材の曲げ強度をより一層高めることができる。上記含浸温度(T)が上記上限以下であると、含浸温度を低くすることができ、従って、マトリックス樹脂の熱分解及び繊維強化複合材の焼けを生じ難くすることができる。
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を明らかにする。本発明は以下の実施例に限定されない。
以下の材料を用意した。
(マトリックス樹脂)
塩素化塩化ビニル樹脂(CPVC、徳山積水工業社製「HA-05K」、溶融温度(T):180℃、溶解パラメータ(SP):12(cal/cm1/2
エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH、クラレ社製、溶融温度(T):165℃、溶解パラメータ(SP):10.6(cal/cm1/2
塩化ビニル系樹脂(PVC、KYDEX社製「KYDEX T」、溶融温度(T):180℃、溶解パラメータ(SP):10.8(cal/cm1/2
なお、JIS K7199に準拠して測定される上記塩素化塩化ビニル樹脂の(T+20)℃での粘度及び後述の含浸温度(T℃)での粘度は、いずれも、1000Pa・s以上である。また、JIS K7199に準拠して測定される上記エチレンビニルアルコール共重合体の(T+20)℃での粘度及び後述の含浸温度(T℃)での粘度は、いずれも、1000Pa・s以上である。また、JIS K7199に準拠して測定される上記塩化ビニル系樹脂の(T+20)℃での粘度及び後述の含浸温度(T℃)での粘度は、いずれも、1000Pa・s以上である。
(長繊維)
ガラス繊維(日東紡社製「チョップドストランドマットMC450A」)
炭素繊維(東レ社製「T300綾織り3K」)
(粒子)
シリカ粒子1(AGCエスアイテック社製「サンスフェア L-51」)
シリカ粒子2(AGCエスアイテック社製「サンスフェア L-121」)
シリカ粒子3(AGCエスアイテック社製「サンスフェア L-31」)
(バインダ剤)
バインダ剤1(住化ケムテックス社製「スミカフレックス 850HQ」、溶解パラメータ(SP):9.4(cal/cm1/2
バインダ剤2(三洋化成社製「アクロバインダーBG-7」、溶解パラメータ(SP):8.4(cal/cm1/2
バインダ剤3(日信化学社製「ビニフラン630HA」、溶解パラメータ(SP):9.6(cal/cm1/2
バインダ剤4(三菱ケミカル社製「エポキシ系バインダ剤」、溶解パラメータ(SP):10.9(cal/cm1/2
(実施例1)
開繊繊維を得る工程:
エタノール-水混合溶媒(エタノール60体積%、水40体積%)にバインダ剤1とシリカ粒子1とを添加した。得られた液に、長繊維(ガラス繊維)を浸漬させ60秒間放置した。次いで、長繊維を取り出し、ローラーで余分な液を除去しながら、均一に押し拡げた。次いで、170℃で3分間加熱して揮発成分(エタノール及び水等)を除去し、開繊繊維を得た。なお、開繊繊維における平均繊維長は30mm以上であることを確認した。
含浸工程:
マトリックス樹脂として、塩素化塩化ビニル樹脂を用いた。溶融したマトリックス樹脂をフィルム状に押し出して、得られた開繊繊維(繊維束)上に積層した。次いで、200℃(含浸温度)に加熱しながら2MPaの圧力で1分間圧縮することにより、マトリックス樹脂を開繊繊維の繊維間部分に含浸させた。このようにして、縦150mm×横150mm×厚み2.0mmの板状の繊維強化複合材を作製した。
(実施例2)
粒子として、シリカ粒子2を用いたこと以外は実施例1と同様にして、繊維強化複合材を作製した。
(実施例3)
バインダ剤として、バインダ剤2を用いたこと以外は実施例1と同様にして、繊維強化複合材を作製した。
(実施例4)
バインダ剤として、バインダ剤3を用いたこと以外は実施例1と同様にして、繊維強化複合材を作製した。
(実施例5)
バインダ剤として、バインダ剤3を用いたこと、及び、粒子として、シリカ粒子3を用いたこと以外は実施例1と同様にして、繊維強化複合材を作製した。
(実施例6)
マトリックス樹脂として、エチレンビニルアルコール共重合体を用い、バインダ剤として、バインダ剤2を用いた。また、含浸温度を170℃とした。これら以外は実施例1と同様にして、繊維強化複合材を作製した。
(実施例7)
マトリックス樹脂として、塩化ビニル系樹脂を用い、長繊維として、炭素繊維を用い、バインダ剤として、バインダ剤4を用いた。これら以外は実施例1と同様にして、繊維強化複合材を作製した。
(比較例1)
バインダ剤及び粒子を用いなかったこと、すなわち、開繊されていない繊維束を用いたこと以外は実施例1と同様にして、繊維強化複合材を作製した。
(比較例2)
バインダ剤及び粒子を用いなかったこと、すなわち、開繊されていない繊維束を用いたこと以外は実施例6と同様にして、繊維強化複合材を作製した。
(比較例3)
バインダ剤及び粒子を用いなかったこと、すなわち、開繊されていない繊維束を用いたこと以外は実施例7と同様にして、繊維強化複合材を作製した。
(参考例A)
塩素化塩化ビニル樹脂をシート状に成形し、縦150mm×横150mm×厚み2.0mmの板状の樹脂材を作製した。
(参考例B)
エチレンビニルアルコール共重合体をシート状に成形し、縦150mm×横150mm×厚み2.0mmの板状の樹脂材を作製した。
(参考例C)
塩化ビニル系樹脂をシート状に成形し、縦150mm×横150mm×厚み2.0mmの板状の樹脂材を作製した。
(評価)
(1)長繊維の平均繊維長
得られた繊維強化複合材において、長繊維の平均繊維長をデジタルマイクロスコープにより観察した。上述した方法に従って、ランダムに選択した100本の繊維の繊維長から、長繊維の平均繊維長を算出した。その結果、実施例1~7及び比較例1~3において、長繊維の平均繊維長は30mm以上であった。
(2)長繊維の平均繊維径
得られた繊維強化複合材の断面を走査電子顕微鏡(SEM)により観察した。上述した方法に従って、長繊維の繊維径方向(長繊維の長さ方向に直交する方向)に沿った断面形状が円形の繊維からランダムに選択した100本の繊維の繊維径から、長繊維の平均繊維径を算出した。
(3)粒子の平均粒子径
得られた繊維強化複合材の断面を走査電子顕微鏡(SEM)により観察した。上述した方法に従って、ランダムに選択した100個の粒子の直径から、粒子の平均粒子径を算出した。
(4)含浸性
得られた繊維強化複合材の断面を走査電子顕微鏡(SEM)により観察した。得られた電子顕微鏡画像から、マトリックス樹脂の繊維間部分への含浸性を以下の基準で評価した。なお、図2は、実施例1で得られた繊維強化複合材の電子顕微鏡画像である。図3は、比較例1で得られた繊維強化複合材の電子顕微鏡画像である。なお、図2,3では、長繊維の繊維径方向(長繊維の長さ方向に直交する方向)に沿った電子顕微鏡断面の写真が示されている。
<含浸性の判定基準>
○:空隙率(電子顕微鏡画像における黒色部の面積割合)が5%以下
×:空隙率(電子顕微鏡画像における黒色部の面積割合)が5%を超える
(5)曲げ強度
得られた繊維強化複合材及び樹脂材の曲げ強度を、JIS K7017の繊維強化プラスチックの曲げ試験に準拠して測定した。参考例A,B,Cで得られた樹脂材と、該樹脂材と同じ種類のマトリックス樹脂が用いられている繊維強化複合材との曲げ強度とから、曲げ強度の向上倍率を下記式(Z)により算出し、以下の基準で評価した。
曲げ強度の向上倍率=X/Y ・・・(Z)
X:繊維強化複合材の曲げ強度(MPa)
Y:樹脂材の曲げ強度(MPa)
<曲げ強度の判定基準>
○:曲げ強度の向上倍率が2.0以上
×:曲げ強度の向上倍率が2.0未満
構成及び結果を下記の表1~3に示す。
Figure 2023138335000005
Figure 2023138335000006
Figure 2023138335000007
1…マトリックス樹脂
2…長繊維
3…粒子
4…バインダ剤
11…繊維強化複合材

Claims (12)

  1. マトリックス樹脂と、
    複数の長繊維と、
    複数の粒子と、
    バインダ剤とを含み、
    前記長繊維と前記マトリックス樹脂とが、前記バインダ剤を介して接着しており、
    前記長繊維と前記粒子とが、前記バインダ剤を介して接着しており、
    前記マトリックス樹脂の溶融温度をT℃としたときに、JIS K7199に準拠して測定される前記マトリックス樹脂の(T+20)℃での粘度が1000Pa・s以上である、繊維強化複合材。
  2. 前記粒子の平均粒子径の、前記長繊維の平均繊維径に対する比が、0.01以上2.0以下である、請求項1に記載の繊維強化複合材。
  3. 前記粒子の平均粒子径が、0.1μm以上20μm以下である、請求項1又は2に記載の繊維強化複合材。
  4. 前記長繊維の平均繊維径が、5μm以上15μm以下である、請求項1又は2に記載の繊維強化複合材。
  5. 前記長繊維が、炭素繊維、ガラス繊維、又はアラミド繊維を含む、請求項1又は2に記載の繊維強化複合材。
  6. 前記長繊維の平均繊維長が30mm以上である、請求項1又は2に記載の繊維強化複合材。
  7. 前記長繊維が、チョップドストランドマット、コンティニュアスマット、UD、織物又は不織布の形態で含まれる、請求項1又は2に記載の繊維強化複合材。
  8. 前記粒子が、シリカ粒子、金属粒子、炭素粒子、炭酸カルシウム粒子、タルク粒子、又はジビニルベンゼン樹脂粒子を含む、請求項1又は2に記載の繊維強化複合材。
  9. 前記粒子が、無機粒子である、請求項1又は2に記載の繊維強化複合材。
  10. 前記マトリックス樹脂が、塩化ビニル系樹脂、又はエチレンビニルアルコール共重合体を含む、請求項1又は2に記載の繊維強化複合材。
  11. 前記バインダ剤が、前記マトリックス樹脂が有する構造単位と同じ構造単位を有する、請求項1又は2に記載の繊維強化複合材。
  12. 複数の長繊維、複数の粒子、及び前記長繊維と前記粒子とを接着しているバインダ剤を含む開繊繊維を得る工程と、
    前記開繊繊維の繊維間部分に、マトリックス樹脂を含浸させる含浸工程とを備え、
    前記含浸工程における含浸温度をT℃としたときに、JIS K7199に準拠して測定される前記マトリックス樹脂のT℃での粘度が1000Pa・s以上である、繊維強化複合材の製造方法。
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