JP2023136976A - 車両システムの振動抑制制御装置及び振動抑制制御方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】振動抑制制御とバックラッシュ制御が協調するようにガタ制御や切り替え動作の改善、また、車体に作用する外乱力やトルク制御や速度検出の誤差の抑制を図る。【解決手段】モータと駆動装置と減速機とを有する車両システムの振動抑制にあたり、前記モータの伝達トルクが負値から正値に変化する零クロスタイミングを示すFor方向のバックラッシュ開始タイミングと、当該伝達トルクの正値から負値への変化時を示すRev方向のバックラッシュ開始タイミングと、を生成する。また、伝達トルクとモータトルクとに依る推定バックラッシュトルクからFor方向のバックラッシュ終了タイミングと前記Rev方向のバックラッシュ終了タイミングとを生成する。そして、For方向並びに前記Rev方向のバックラッシュ開始タイミング並びにバックラッシュ終了タイミングに基づき車両システムの振動抑制制御を実行する期間を定める。【選択図】図13
Description
本発明は、電動機(モータ)を駆動源とする車両システムの振動抑制制御技術に関する。
モータとタイヤ間の駆動力伝達機構には、シャフトやギヤなどが存在する。シャフトの剛性が低いと弾性軸(ねじりバネ)となり、モータや車体の慣性成分と共振が生じる。さらにギヤ部にはバックラッシュが存在するので、駆動力が反転する際には「ガタ打ちショック・歯打ち音」が問題となり、トルク応答の不連続が振動源になる。この対策として、軸共振を抑制する振動抑制制御や、バックラッシュに起因する衝撃を抑制するガタ詰め制御(バックラッシュ制御)が適用されている(特許文献1~5)。
特許文献1,2では、シャフトなどの弾性軸による共振を抑制する振動抑制制御が提案されている。特許文献1では車両モデルを利用して、トルク指令と速度検出情報から振動を抑制するための補償トルクを演算し、入力トルク指令に補償トルクを加算する構成が記載されている。特許文献2では、フィードバック制御(FB制御)ループ内のトルク制御や速度検出などのムダ時間による影響を低減する方法が提案されている。特許文献3では、これらの振動抑制制御に対してさらにガタ制御機能を追加しており、トルク指令に補正を加えるフィードフォワード制御(FF制御)部と、速度検出を情報源とする振動抑制制御であるフィードバック制御(FB制御)部とを組み合わせている。FF制御内にはバックラッシュを含む車両モデルを内蔵させてあり、「トルク指令から共振帯域成分を除去する機能」と、「バックラッシュ期間の推定とモータトルクの制限機能」、および、「トルク制限中にFB制御側の振動抑制制御が不要な応答をしないように非干渉補償成分を生成」という3種類の作用がある。
しかし、バックラッシュ後の歯当たりショックまでしか対策されておらず、バックラッシュ終了後の挙動、つまりトルク制限後からトルク指令に相当する軸ねじりを発生させるまでの過渡的なトルク急変に起因する脈動までは考慮されていない。
このバックラッシュ後の過渡トルクの対策例は、特許文献4、非特許文献1に記載されている。バックラッシュ中にはギヤ間の相対速度が生じ、この相対速度が大きいとバックラッシュ後の過渡トルクも大きくなる。そこで、歯が再接触する直前に相対速度を零まで減速させることが提案されている。相対速度を零まで低減させればギヤの歯が接触するときのショックは無くなるが、その代わり相対位相の変化率も小さくなるので、逆にバックラッシュ時間が長くなってトルク指令に対する応答遅れが問題になってくる。
モデルと実機のパタメータに誤差があると振動抑制効果が低下する。モータ速度検出を用いたFB制御により共振周波数成分は抑制できるが、軸と車体側の慣性モーメントにより生じる反共振周波数成分については抑制効果が少ない。そのためFF制御にてトルク指令に含まれる反共振成分を除去しているが、モデル誤差があると正確な除去が行えなくなる。そのため、パタメータ誤差により反共振のような低い周波数の振動が生じやすい。
この課題については、特許文献5に開示のように「外乱トルクオブザーバを利用した振動抑制制御」により対策が行われている。オブザーバは車体側に作用するトルクも外乱トルクとして推定できるので、これを利用した振動抑制制御では反共振のような低周波成分も抑制できる。
加減速(駆動/回生)の切り替えが緩やかでありトルク指令が零付近で停滞するときには、相対的にトルク制御誤差の影響が大きくなる。トルク誤差が大きくなると正確なバックラッシュ位相が推定できなくなり、バックラッシュ制御の適用期間にズレが生じる。
これに対しては、図21(a)に示すように、トルク指令が小さい場合には「外乱トルクオブザーバを利用した振動抑制制御」を適用するだけで十分なバックラッシュ抑制効果が得られる。そこで、特許文献5によると、トルク指令が小さい場合条件では、「バックラッシュ制御を無効にする対策」を追加すればよいことが記載されている。
二見茂、久良修郭、七井貞明、「バックラッシュを有するサーボ機構のマイクロコンピュータを用いた衝突が生じない制御方式」,精密機械50巻11号、p.1791-1797(1984年)
しかし、特許文献5の振動抑制制御やバックラッシュ制御を適用しても、以下の課題がある。
(1)トルク指令が小さい場合のバックラッシュ検出のチャタリング
特許文献5の振動抑制制御を適用しても、例えば、図21(b)のt1~t2期間に示すように、トルク指令が緩やかな零クロスをする条件ではバックラッシュ期間中は推定軸トルク^Tdが零付近に停滞するので、外乱などによって想定外の零クロスが発生しやすくなる。バックラッシュ終了直後にこの「外乱による零クロス」を誤検出すると、バックラッシュ制御を何度も繰り返す「チャタリング」が生じることになる。想定される外乱要素としては、車体側の作用トルク(勾配路などの加速度成分)、およびモータの制御トルクや速度検出の誤差などが考えられ、これらを完全に抑制することはできない。
特許文献5の振動抑制制御を適用しても、例えば、図21(b)のt1~t2期間に示すように、トルク指令が緩やかな零クロスをする条件ではバックラッシュ期間中は推定軸トルク^Tdが零付近に停滞するので、外乱などによって想定外の零クロスが発生しやすくなる。バックラッシュ終了直後にこの「外乱による零クロス」を誤検出すると、バックラッシュ制御を何度も繰り返す「チャタリング」が生じることになる。想定される外乱要素としては、車体側の作用トルク(勾配路などの加速度成分)、およびモータの制御トルクや速度検出の誤差などが考えられ、これらを完全に抑制することはできない。
(2)登坂路など車体側に加わる加速度の影響
勾配のある路面(勾配路)などでは車体側にも重力加速度が加わるので、バックラッシュ期間中であってもタイヤや車体の速度が変化する。車体の慣性は大きいので速度変化はゆっくりしているが、それでも加速度を二階積分したものが位相成分であることから、バックラッシュ時間が長くなるとバクラッシュ位相の推定誤差も無視できない大きさになってくる。特に、トルク指令の緩やかな零クロスでは、モータ側の速度増加量も少なくまたバックラッシュ時間も長くなってくるため、車体側の加速度も考慮しないと「正確なバックラッシュ終了タイミング」が推定できなくなる。
勾配のある路面(勾配路)などでは車体側にも重力加速度が加わるので、バックラッシュ期間中であってもタイヤや車体の速度が変化する。車体の慣性は大きいので速度変化はゆっくりしているが、それでも加速度を二階積分したものが位相成分であることから、バックラッシュ時間が長くなるとバクラッシュ位相の推定誤差も無視できない大きさになってくる。特に、トルク指令の緩やかな零クロスでは、モータ側の速度増加量も少なくまたバックラッシュ時間も長くなってくるため、車体側の加速度も考慮しないと「正確なバックラッシュ終了タイミング」が推定できなくなる。
(3)バックラッシュ後の過渡トルク振動の問題
図21で示したように、バックラッシュ期間のモータトルクはモータ単体を急加速させるが、歯当たり後には軸反力により元の速度付近まで急減速する。このモータ速度の変動に振動抑制制御が反応し、1段目の「-TFcomp」に示されるような正負に変化する補償トルクを出力する。バックラッシュ期間中(t1~t2)では「-TFcomp」は負側に発生しているが、t2以降では「-TFcomp」は正方向のパルス状になるので、制御出力Tmがトルク指令Tref2を超えてオーバーシュートが生じている。このオーバーシュートが課題3であり、「バックラッシュ後の過渡トルク」と呼ぶことにする。入力されるトルク指令自体が急変するのであれば車体の加速度に紛れてTFcompの過渡成分を感じにくいが、緩やかな零クロス状態でパルス状の加速度が発生すると体感に現れやすくなる。
図21で示したように、バックラッシュ期間のモータトルクはモータ単体を急加速させるが、歯当たり後には軸反力により元の速度付近まで急減速する。このモータ速度の変動に振動抑制制御が反応し、1段目の「-TFcomp」に示されるような正負に変化する補償トルクを出力する。バックラッシュ期間中(t1~t2)では「-TFcomp」は負側に発生しているが、t2以降では「-TFcomp」は正方向のパルス状になるので、制御出力Tmがトルク指令Tref2を超えてオーバーシュートが生じている。このオーバーシュートが課題3であり、「バックラッシュ後の過渡トルク」と呼ぶことにする。入力されるトルク指令自体が急変するのであれば車体の加速度に紛れてTFcompの過渡成分を感じにくいが、緩やかな零クロス状態でパルス状の加速度が発生すると体感に現れやすくなる。
特許文献4及び非特許文献1はこの過渡トルク成分を抑制するために、バックラッシュ終了直前にギヤ間の相対速度を零に絞る方式が記載されている。しかし、相対速度を抑制しすぎると、バックラッシュ期間が長引いてトルクの応答遅れになる。つまり、「過渡トルクの抑制」と「応答遅れ」の相反する関係があるので、それらを協調させる制限方式について検討する必要がある。
(4)トルク制御の誤差や位相検出誤差の要因
「制御装置の電流制御誤差」や「モータの温度変動」等により制御出力トルクTmと実際のモータトルクとには「トルク制御誤差」が発生する。また、モータ速度についても「速度検出誤差」が存在する。
「制御装置の電流制御誤差」や「モータの温度変動」等により制御出力トルクTmと実際のモータトルクとには「トルク制御誤差」が発生する。また、モータ速度についても「速度検出誤差」が存在する。
実用に供する際には、これらの誤差成分の影響も考慮しておく必要がある。もし、推定バックラッシュ速度がほぼ零になってしまうと、推定バックラッシュ位相が停滞してバックラッシュ制御状態から抜けられないという異常状態も有り得る。そのため、バックラッシュ位相の推定誤差を抑制し、もし異常が生じても通常のトルク制御に復帰させる保護機能を追加する必要がある。
本発明は、以上の事情を鑑み、振動抑制制御とバックラッシュ制御が協調するようにバックラッシュ制御や切り替え動作の改善、さらには、車体に作用する外乱力やトルク制御や速度検出の誤差等による悪影響の抑制を図ることを課題とする。
そこで、本発明の一態様は、モータの駆動装置と当該モータの減速機を有する車両システムの振動抑制制御装置であって、前記駆動装置の入力トルク指令に基づきモータトルクを出力する振動抑制補償部と、前記モータトルクから前記モータのシャフト軸の伝達トルクを算出する外乱トルクオブザーバと、前記モータトルクと前記伝達トルクとに基づき、車両システムの振動抑制制御を実行する期間を推定する推定部とを備え、前記推定部は、前記伝達トルクが負値から正値に変化する零クロスタイミングを示すFor方向のバックラッシュ開始タイミングと、当該伝達トルクの正値から負値への変化時を示すRev方向のバックラッシュ開始タイミングと、を生成し、前記伝達トルクを前記シャフト軸のバネ定数で除算したものの時間微分により算出した推定軸ねじれ速度をバックラッシュ開始時刻でラッチして当該推定軸ねじれ速度の初期値とし、前記モータトルクからモータ慣性モーメントの時間積分に基づき算出したモータ角速度の変動分と前記推定軸ねじれ速度の初期値との和を相対速度とみなし、この相対速度を時間積分して算出した推定バックラッシュ位相に前記バネ定数を乗算して推定バックラッシュトルクを生成し、この推定バックラッシュトルクに基づき前記For方向のバックラッシュ終了タイミングと前記Rev方向のバックラッシュ終了タイミングとを生成し、前記For方向並びに前記Rev方向のバックラッシュ開始タイミング並びにバックラッシュ終了タイミングに基づき前記振動抑制制御を実行する期間を定める車両システムの振動抑制制御装置である。
本発明の一態様は、前記振動抑制制御装置において、前記推定部は、前記外乱トルクオブザーバの推定外乱トルクから前記車両システムのタイヤ及び車体の合成慣性モーメントの積分に基づき当該タイヤの角速度の変動分を算出し、この角速度の変動分と前記モータ角速度の変動分と前記推定軸ねじれ速度の初期値との合成値を相対速度とみなし、この相対速度を時間積分して算出した推定バックラッシュ位相に前記バネ定数を乗算して前記推定バックラッシュトルクを生成する。
本発明の一態様は、前記振動抑制制御装置において、前記入力トルク指令に変換ゲインを乗算して目標相対速度を設定し、前記相対速度から前記目標相対速度を減算した超過量に比例ゲインを乗算することで前記入力トルク指令を制限するトルク補正成分を生成し、前記入力トルク指令の基準上限値または当該入力トルク指令のいずれかのうち小さな値から前記トルク補正成分の正成分の値を減算することで当該入力トルク指令のトルク上限値を補正し、前記入力トルク指令の基準下限値または当該入力トルク指令のいずれかのうち大きな値から前記トルク補正成分の負成分の値を減算することで当該入力トルク指令のトルク下限値を補正するトルク制限部をさらに備える。
本発明の一態様は、前記振動抑制制御装置において、前記目標相対速度は、上下限値が設定されたものである。
本発明の一態様は、前記振動抑制制御装置において、前記推定部は、モータ回転位相θm_detとこれをバックラッシュ開始時にラッチした当該モータ回転位相θm_detの初期位相θm0との差分より算出した当該モータ回転位相θm_detの変動分(θm-θm0)にバネ定数^Kdを乗算して換算トルク^Tdm2に変換し、モータ角速度ωm_detをバックラッシュ開始時にラッチした初期モータ角速度ωm0から、前記伝達トルク^Tdを前記バネ定数^Kdで除算及び時間微分して算出された値をバックラッシュ開始時にラッチした推定ガタ速度の初期値^ωg_iniを減算して、初期タイヤ角速度^ωw_iniを算出し、前記外乱トルクオブザーバの外乱トルク^Tobsをバックラッシュ開始時でラッチした当該外乱トルク^Tobsの初期値^Tob_iniに前記車両システムのタイヤと車体の合成慣性モーメントの積分を適用してタイヤ角速度の変動分^Δωwを算出し、前記初期タイヤ角速度^ωw_iniから前記変動分^Δωwを減算してタイヤ角速度推定^ωw2とし、さらに時間積分とバネ定数^Kdの乗算を適用してタイヤ回転位相の変動分の換算トルク^Tdw2を算出し、前記モータ回転位相θm_detに基づく換算トルク^Tdm2から前記タイヤ回転位相の変動分の換算トルク^Tdw2を減算して前記推定バックラッシュ位相のトルク換算値^Tg2を算出し、この推定バックラッシュ位相のトルク換算値^Tg2に基づき、前記For方向のバックラッシュ終了タイミングと前記Rev方向のバックラッシュ終了タイミングとを生成する。
本発明の一態様は、前記振動抑制制御装置において、前記推定部は、前記伝達トルク^Tdをシャフトのバネ定数Kdで除算したものを時間微分して推定軸ねじれ速度^ωdとし、これをバックラッシュ開始時刻でラッチして初期値^ωg_iniとし、モータトルクTmにモータ慣性モーメントJmの時間積分を適用したものをモータ角速度の変動分^Δωmとし、前記外乱トルクオブザーバの外乱トルク^Tobsはバックラッシュ開始時でラッチして^Tob_iniとし、これにタイヤと車体の合成慣性モーメントの積分を適用してタイヤ角速度の変動分^Δωwを算出し、前記初期値^ωg_iniと前記モータ角速度の変動分^Δωmと前記タイヤ角速度の変動分^Δωwの和を相対速度^ωg1とみなし、これを時間積分して算出した推定バックラッシュ位相^θgにバネ定数Kdを乗算して推定バックラッシュトルク^Tg1を算出し、モータ回転位相θm_detから、バックラッシュ開始時の初期位相θm0をラッチし、バックラッシュ中のモータ回転位相の変動分(θm-θm0)を算出し、さらに、バネ定数^Kdを乗算してガタ位相に比例したトルク^Tdm2に変換し、モータ角速度ωm_detから、バックラッシュ開始時の速度ωm0をラッチして、これから前記相対速度の初期値^ωg_iniを減算して、初期タイヤ角速度^ωw_iniを算出し、前記初期タイヤ角速度^ωw_iniから前記タイヤ角速度の変動分^Δωwを減算して推定タイヤ角速度^ωw2を算出し、この推定タイヤ角速度^ωw2を時間成分とバネ定数^Kdの乗算を適用してタイヤ位相の変動分に比例したトルク^Tdw2を算出し、前記モータ回転位相θm_detに基づくトルク^Tdm2から前記推定タイヤ角速度^ωw2に基づくトルク^Tdw2を減算して推定バックラッシュ位相のトルク換算値^Tg2を算出し、前記推定バックラッシュトルク^Tg1に基づき、信号S_Rst_For1および信号S_Rst_Rev1を生成し、前記推定バックラッシュ位相のトルク換算値^Tg2に基づき、信号S_Rst_For2および信号S_Rst_Rev2を生成し、信号S_Rst_For1と信号S_Rst_For2の論理和(OR)によりFor方向のバック終了タイミングの信号S_Rst_Forを生成し、信号S_Rst_Rev1と信号S_Rst_Rev2の論理和(OR)によりRev方向のバックラッシュ終了タイミングの信号S_Rst_Forを生成する。
本発明の一態様は、前記振動抑制制御装置において、前記モータ角速度ωm_detと前記入力トルク指令Trefに基づく重み係数Kγを出力する二次元テーブルKγ-Tableをさらに備え、前記推定バックラッシュトルク^Tg1は、重み係数Kγにより重み付けされ、前記トルク換算値^Tg2は、(1-重み係数Kγ)により重み付けされる。
本発明の一態様は、以上の振動抑制制御装置を実行する車両システムの振動抑制制御方法である。
以上の本発明によれば、振動抑制制御とバックラッシュ制御が協調するようにバックラッシュ制御や切り替え動作の改善、さらには、車体に作用する外乱力やトルク制御や速度検出の誤差の抑制を図ることできる。
以下に図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
以下の説明では、「バックラッシュ中の異常加速」「バックラッシュ直後の歯当たりショック」「バックラッシュ後から定常状態への移行時に生じる過渡トルク」という3種類の異なる現象が存在するため紛らわしくなる。そこで、以下に述べる実施形態の全体的な振動抑制制御を「ガタ制御」と略し、個別の制御内容については「ガタ中のモータ加速の抑制」、「歯当たり時の衝撃対策」、「ガタ後の過渡トルク脈動の低減」のように区別して説明する。ギヤ間の相対位相や相対速度を「ガタ位相・ガタ速度」とし、バックラッシュ期間の開始タイミングを「ガタ開始」、バックラッシュ期間の終了タイミングは「ガタ終了」と省略する。
[車両プラントモデルの定義]
制御対象である車両システムについては特許文献1に記載されているモデルを使用する。しかし、モータの極対数やギヤ比およびタイヤ径などの係数まで含めるとモデルが複雑になるので、トルクと速度の変数を定格値にて正規化することにより、図1のように変換した等価モデルを使用する。正規化手法を用いるとモータの極対数などの係数は各要素パラメータ内に統合され、「慣性モーメント」が「積分時定数」に変換されることになる。
制御対象である車両システムについては特許文献1に記載されているモデルを使用する。しかし、モータの極対数やギヤ比およびタイヤ径などの係数まで含めるとモデルが複雑になるので、トルクと速度の変数を定格値にて正規化することにより、図1のように変換した等価モデルを使用する。正規化手法を用いるとモータの極対数などの係数は各要素パラメータ内に統合され、「慣性モーメント」が「積分時定数」に変換されることになる。
バックラッシュ特性については、「モータとタイヤ間の位相差に対する軸トルクの不感帯関数」として表現することが多い。しかし以降の実施例ではギヤ間の相対位相(ガタ位相)を制御変数として使用するので、図1では、ガタ位相が明示される構成に変更してある。不感帯関数の代わりに、「ガタ位相を正負のバックラッシュ幅で飽和する関数」として表現し、「モータとタイヤ間の位相差からガタ位相を減算したもの」が軸ねじれ位相になるので、これに軸の剛性係数(バネ定数Kd)を乗算して軸トルクを得ている。
図1のパラメータは、下記の要素である。
(設定パラメータ)
TJm:モータの慣性モーメントJmに相当する時定数
TJw:駆動輪の慣性モーメントJwに相当する時定数
TJM:車両の慣性Mに相当する時定数
Kd:駆動系のねじれ剛性係数(バネ定数)
Kt:タイヤと路面の摩擦に関する係数
(変数)
ωm:モータの角速度
ωw:タイヤ(駆動輪)の角速度
ωM:車速の角速度変換値
Tm:モータトルク(制御出力トルク)
Td:シャフト軸の伝達トルク(軸ねじりトルク)
TmA:モータの慣性モーメントを加速するトルク成分(TmA=Tm-Td)
Tt:タイヤと接地面間の作用力のトルク変換値
TF:車両に加えられる外力のトルク換算値
θd:シャフト軸のねじれ位相
θg:モータ側ギヤとシャフト側ギヤ間の位相差(バックラッシュ内の相対位相、ガタ位相)
θmw:モータ軸とタイヤ軸との位相差(θm:モータ位相,θw:タイヤ位相,θmw=θm-θw)
θBL:バックラッシュ位相(遊び幅の位相であり両振幅、片振幅はθBL/2)
図1の正規化モデルと対比させた車両構造の模式図が図4である。大別すると下記の構成になっている。
TJm:モータの慣性モーメントJmに相当する時定数
TJw:駆動輪の慣性モーメントJwに相当する時定数
TJM:車両の慣性Mに相当する時定数
Kd:駆動系のねじれ剛性係数(バネ定数)
Kt:タイヤと路面の摩擦に関する係数
(変数)
ωm:モータの角速度
ωw:タイヤ(駆動輪)の角速度
ωM:車速の角速度変換値
Tm:モータトルク(制御出力トルク)
Td:シャフト軸の伝達トルク(軸ねじりトルク)
TmA:モータの慣性モーメントを加速するトルク成分(TmA=Tm-Td)
Tt:タイヤと接地面間の作用力のトルク変換値
TF:車両に加えられる外力のトルク換算値
θd:シャフト軸のねじれ位相
θg:モータ側ギヤとシャフト側ギヤ間の位相差(バックラッシュ内の相対位相、ガタ位相)
θmw:モータ軸とタイヤ軸との位相差(θm:モータ位相,θw:タイヤ位相,θmw=θm-θw)
θBL:バックラッシュ位相(遊び幅の位相であり両振幅、片振幅はθBL/2)
図1の正規化モデルと対比させた車両構造の模式図が図4である。大別すると下記の構成になっている。
駆動装置は、制御演算部(制御部)とモータの位相や速度検出部および要求トルクを発生させるインバータにて構成されている。
制御部では、上位からのトルク指令に対して振動やガタの抑制補償トルクを付加して、「制御出力トルク」としてインバータに出力し、
インバータでは、モータ位相検出や電流検出、および電流制御や半導体電力変換器により「制御出力トルク」に一致した「モータトルク」を発生させる。
動力伝達機構は、モータ・ギヤ・シャフト(弾性軸)・タイヤ・車体にて構成されるものとし、この機構部分をモデルとして示したものが図1に相当する。
制御部では、上位からのトルク指令に対して振動やガタの抑制補償トルクを付加して、「制御出力トルク」としてインバータに出力し、
インバータでは、モータ位相検出や電流検出、および電流制御や半導体電力変換器により「制御出力トルク」に一致した「モータトルク」を発生させる。
動力伝達機構は、モータ・ギヤ・シャフト(弾性軸)・タイヤ・車体にて構成されるものとし、この機構部分をモデルとして示したものが図1に相当する。
[制御用近似モデルの定義]
図1のモデルには4個の積分要素が存在するので、モータトルクTmからモータ角速度ωmまでの伝達関数を求めると4次式になる。しかし制御演算ではもっと簡素化したいので、特許文献5に記載されている図2のような「次数を低減した近似モデル」を使用した。さらに、図1ではギヤのバックラッシュ特性を「位相の非線形特性」として表現しているが、バネ定数^Kdを乗算してトルクの単位に換算してしまい図2のような「軸トルクの非線形特性」として取り扱っている。
図1のモデルには4個の積分要素が存在するので、モータトルクTmからモータ角速度ωmまでの伝達関数を求めると4次式になる。しかし制御演算ではもっと簡素化したいので、特許文献5に記載されている図2のような「次数を低減した近似モデル」を使用した。さらに、図1ではギヤのバックラッシュ特性を「位相の非線形特性」として表現しているが、バネ定数^Kdを乗算してトルクの単位に換算してしまい図2のような「軸トルクの非線形特性」として取り扱っている。
プラントと制御モデルを区別するため、以降では制御に使用する変数の先頭に「^」を付記する。
図2のGp2(s)内の要素をリスト表記しておく。
(制御パラメータ)
^TJm:モータの慣性モーメントに相当する時定数
^Kd:駆動系のねじれ剛性係数(バネ定数)
^TJwM:タイヤと車体の合成慣性モーメントに相当する時定数
^Ds:トルクと路面間の等価トルクからスリップ速度^ωslipへの変換ゲイン(すべり係数)
^TBL:バックラッシュ位相θBLにバネ定数^Kdを乗算したガタによる不感帯トルク幅
(制御変数)
^ωm:モータの角速度
^ωw:タイヤの角速度
^ωslip:タイヤと路面間のすべり速度
^ωM:車両の速度
^TmA:モータの慣性モーメントを加速するトルク成分(=Tm-^Td)
^Td:シャフト軸の伝達トルク(軸トルク推定値)
^Tg:ギヤ内のモータ側とシャフト側の位相差にバネ定数^Kdを乗算した等価ガタトルク
^Tmw:モータ軸とタイヤ軸との位相差にバネ定数^Kdを乗算した等価トルク成分
(プラント変数)以降、実トルクなので「^」は付けない。
Tm:モータトルク(制御出力トルク)
TF2:近似モデルにて車体に加わる外力を軸トルクに換算した外乱トルク成分
Tdist:外乱トルクをモータ軸に換算したトルク成分
図1から図2への近似については、タイヤの時定数TJwに比べて車体の時定数TJMが十分に大きいことを利用して、「図1の車両モデルGp(s)内の要素ブロックGTdWw(s)部分」を、「図2のGTdWw2(s)のような「次数を低減したモデル」部分」に置換するものである。この詳細については特許文献5に記載されており、ここでは(1)式~(3)式に関係式だけを示しておく。Dsは「タイヤトルク」と「タイヤと路面間のすべり速度」との比例関係を示す係数(すべり係数)に相当し、^TJwMは車体とタイヤの時定数の和であるので「一体化した合成慣性モーメント(タイヤ・車体合成時定数)」に相当している。
^TJm:モータの慣性モーメントに相当する時定数
^Kd:駆動系のねじれ剛性係数(バネ定数)
^TJwM:タイヤと車体の合成慣性モーメントに相当する時定数
^Ds:トルクと路面間の等価トルクからスリップ速度^ωslipへの変換ゲイン(すべり係数)
^TBL:バックラッシュ位相θBLにバネ定数^Kdを乗算したガタによる不感帯トルク幅
(制御変数)
^ωm:モータの角速度
^ωw:タイヤの角速度
^ωslip:タイヤと路面間のすべり速度
^ωM:車両の速度
^TmA:モータの慣性モーメントを加速するトルク成分(=Tm-^Td)
^Td:シャフト軸の伝達トルク(軸トルク推定値)
^Tg:ギヤ内のモータ側とシャフト側の位相差にバネ定数^Kdを乗算した等価ガタトルク
^Tmw:モータ軸とタイヤ軸との位相差にバネ定数^Kdを乗算した等価トルク成分
(プラント変数)以降、実トルクなので「^」は付けない。
Tm:モータトルク(制御出力トルク)
TF2:近似モデルにて車体に加わる外力を軸トルクに換算した外乱トルク成分
Tdist:外乱トルクをモータ軸に換算したトルク成分
図1から図2への近似については、タイヤの時定数TJwに比べて車体の時定数TJMが十分に大きいことを利用して、「図1の車両モデルGp(s)内の要素ブロックGTdWw(s)部分」を、「図2のGTdWw2(s)のような「次数を低減したモデル」部分」に置換するものである。この詳細については特許文献5に記載されており、ここでは(1)式~(3)式に関係式だけを示しておく。Dsは「タイヤトルク」と「タイヤと路面間のすべり速度」との比例関係を示す係数(すべり係数)に相当し、^TJwMは車体とタイヤの時定数の和であるので「一体化した合成慣性モーメント(タイヤ・車体合成時定数)」に相当している。
図2の近似モデルと対比させた車両構造の模式図が図5である。タイヤと車体が一体化した合成慣性モーメント^TJwMになり、タイヤと路面間の特性はスリップ速度(すべり速度)ωslipとして表現した。また車体に作用する外乱については、近似によって生じるフィルタ項も外乱の一部であるとみなし、新たな外乱TF2に置き換えている。
また、図5には制御に使用する位相や速度の変数定義についても記載しており、「モータ位相:θm、タイヤ・車体位相:θw、軸ねじれ位相:θd、そしてガタ位相:θg」としている。
ギヤ内部を「モータ側ギヤの位相:θgm」と「シャフト側ギヤの位相:θgd」とすると、ギヤ間の相対位相が「ガタ位相θg(=θgm-θgd)」に相当する。ここで、θgの原点はバックラッシュ位相差の中心に設定する。
モータ側ギヤの位相θgmはモータ軸と直結されており(4)式のようにモータ位相と同一とみなす。シャフト側ギヤの位相θgdは、タイヤ位相θwにシャフトの軸ねじれ位相θdを加算した(5)式で表される。図3にバックラッシュの位相やトルクの非線形特性を示してあり同図(a)がガタ位相の特性である。(6)式のようにモータ・タイヤ間位相差θmwを定義すると、ガタ位相の飽和関数は(7)式で表され、軸ねじれ位相θdは(8)式のようにモータ・タイヤ間位相差θmwからガタ位相θgを減算することにより求まる。
各位相を時間微分したものが速度であり、これについては位相変数と同じ添え字を付記して表現する。
図3(b)には「ギヤとシャフトを一体化したトルク特性」を示してあり、横軸はモータとタイヤの位相差(θm-θw)、縦軸はトルク成分である。飽和特性であるガタ位相θgにKdを乗算すると(9)式の等価ガタトルクTgになり、(10)式のようにモータ・タイヤ間の位相差θmwにKdを乗算した線形トルクからガタトルクTgを減算したものが、軸ねじりにより生じる軸トルク成分Tdとなる。
このようにガタ位相を等価なトルク成分で表現しておけば、(11)式のように積分や微分に関する係数Kdを一体化して取り扱えるようになる。
同様にモータの加速度Amから速度ωmを得る積分についても、(12)式のように積分や微分にモータ時定数TJmを使用して取り扱えば、この積分入力や微分出力はトルク単位のTmAになる。TmAは電磁気的なギャップトルクや機械的な軸反力を合成した「純粋にモータを加速するトルク」であるので、本書内ではこれを「モータ加速トルク」と呼んでいる。
(8)式のθmwとθgおよびθdを時間微分したものを、速度成分ωmwとωg及びωdとする。歯当たり中はθg=一定に固定されるので「ωmw=ωd」となり、ガタ期間中はθd=0に固定されるので「ωmw=ωg」となる。
以上が、特許文献1から引用するプラントモデルと特許文献5から引用する制御モデルの説明である。ただし本提案ではより一般的な表現にしたいので、バックラッシュの定義を両振幅に変更し、また一部の記号や変数表現なども変更している。
(本発明の振動抑制制御装置6の基本構成)
図6は特許文献5の制御部と制御対象(プラント)との関係を示す全体構成である。
図6は特許文献5の制御部と制御対象(プラント)との関係を示す全体構成である。
制御対象であるプラントモデル60は、図1の車両モデルGp(s)と速度を時間積分(304)したモータ位相θmで模擬する。このθmを検出したものがモータ回転位相検出値θm_detになる。
振動抑制制御装置6は、速度検出部61、外乱トルクオブザーバ62及び振動抑制補償部63を備える。
速度検出部61は、モータ回転位相θmを時間微分部305により速度検出ωm_detを得る。実際にはサンプル値系の検出位相θm_detを時間差分として実装するが、ここでは簡単な位相θmの微分表現としている。
上位からトルク指令Trefが与えられLPF1からは低域通過・変化率制限機能により急変を抑制したTref2が、振動抑制補償部63へのトルク指令である。振動抑制補償部63の出力は制御出力トルクTmであり、理想的なトルク制御が可能であると仮定して、プラントにはTmと等しいモータトルクが発生するものとする。
また、振動抑制のために、外乱トルクオブザーバ62の内部信号^TmAを利用してフィルタFcomp(s)にて補償トルクTFcompを計算し、そして減算部32によりトルク指令Tref2からTFcompを減算して制御出力トルクTmとしている。
外乱トルクオブザーバ62は、制御出力トルクTmを入力としており、^GpTmA2(s)を規範モデルとする。図中のスイッチ307がS側の場合は、トルク指令Tmから推定外乱トルク^Tobsを減算部44にて減算したものを規範モデルの入力^Tmsとし、この規範モデルの出力^TmAとモータの時定数による積分演算から得る速度と実機の速度^ωmとの偏差成分にオブザーバゲインKg部43の出力値を乗算して^Tobsを推定している。
規範モデル^GpTmA2(s)は図2を図7のブロック図に変形して求めたものであり、^Tmsから出力^TmAまでの伝達関数として表すと(13)式になる。これは二次フィルタ形式であり、分母が共振周波数ωrや粘性係数ζrを、分子が反共振周波数ωaやその粘性係数ζaを表すことが知られている。
特許文献5では、この(13)式の分子や分母の特性周波数や粘性係数を利用して設計しており、振動抑制制御のフィルタFcomp(s)を(14)式に設定している。ここで、ζAは調整係数である。
図6の外乱トルクオブザーバ12においては、オブザーバゲインKgの入力成分として、スイッチ307にてA側とS側の2種類の速度偏差Δωmが選択できる。
スイッチ307のS側を選択したものが一般的な外乱トルクオブザーバの構成であり、^GpTmA2(s)の出力^TmAからモータ時定数^TJmの積分部306によりモータ速度^ωmに変換し、この^ωmから実機速度検出ωm_detを減算部42に供して、速度偏差Δωm2とする。
特許文献5ではこれとは別に、スイッチのA側を選択する構成も記載している。これは、速度検出ωm_detの方にモータ時定数^TJmの微分部31によりモータ加速トルク成分TmA_detを求め、^TmAからTmA_detを減算部51に供して偏差トルクΔTmAを求めた後に、モータ時定数^TJmの積分部52により速度偏差Δωm1を得る。
2種類の速度偏差(Δωm1とΔωm2)を比較すると、A側の積分部52を、減算部51を超えて、移動すれば、^TmAと微分部31の二箇所の枝部に現れる。そうすると微分部31側は微積分が相殺され、^TmAに移動した積分部52だけが残るので、S側の積分部306の構成と一致する。
しかし、等価なのは周波数領域である伝達関数で表現したからであり、実時間領域の積分として実装する場合には2種類の積分部52,306には初期値設定の差異がある。A側を選択して、かつ惰行走行中に制御を開始するときには、空転しているモータ速度を積分部306の初期値に設定する必要がある。この初期化を表現するために、図6の積分部306のブロック図には初期値設定信号用の端子y0と制御停止中を示すclr端子を追加して示した。制御開始前でありclr端子が「on」(制御停止)の場合には、y0の入力信号initを積分の初期値として更新し続け、「off」になると積分動作を開始することを表している。これに対してS側を選択した場合には、規範モデルとプラントとの差分は速度の微分成分であり、空転中なので軸トルク推定値^Tdは略零に維持されるので積分(52)の初期値も零でよい。初期値が零であるので積分部52のy0やclr端子は省略した。
言い換えると、スイッチ307による選択される要素は積分の初期化だけが差異なので、それさえ適切に処理していれば特性には差異はない。
特許文献5の振動抑制制御の特性例として数値シミュレーションによる動作波形を図21(a)に示す。図6の制御構成と図1のプラントモデルを使用している。後述の実施形態でも利用できるように、「入力トルク指令は振幅が小さく零クロス時も緩やかな変化」という運転条件に設定してあり、入力トルク指令Trefは、±2%のトルク振幅の間を0.4sの時間幅で直線状に変化させている。モデルのパラメータは下記の条件になるように仮想値を設定し、ガタ特性を強調したいのでバックラッシュ位相は過大に設定してある。
(モデルパラメータの設定)
・共振周波数 :ωr=2π・10 [rad/s]
・反共振周波数:ωa=2π・1.5 [rad/s]
・タイヤ係数 :Kt=25 p.u
・バックラッシュ位相のトルク換算 TBL=Kd*θBL=0.2p.u.(θBL=0.2 p.u./Kd)
図21(a)のt1~t2間が回生から駆動方向に変化するバックラッシュ期間でありこれを「For方向」とする。t3~t4間が駆動から回生方向のバックラッシュ期間でありこちらを「Rev方向」とする。
・共振周波数 :ωr=2π・10 [rad/s]
・反共振周波数:ωa=2π・1.5 [rad/s]
・タイヤ係数 :Kt=25 p.u
・バックラッシュ位相のトルク換算 TBL=Kd*θBL=0.2p.u.(θBL=0.2 p.u./Kd)
図21(a)のt1~t2間が回生から駆動方向に変化するバックラッシュ期間でありこれを「For方向」とする。t3~t4間が駆動から回生方向のバックラッシュ期間でありこちらを「Rev方向」とする。
1段目はトルク成分であり、LPF1により急変や高周波成分を除去した制御入力のトルク指令Tref2(一点鎖線)、振動抑制制御の補償トルク成分「-1・TFcomp」(波線)、および制御出力「Tm=Tref2-TFcomp」(太い実線)である。ここで、「Tref2からTFcompを減算」を「Tref2に(TFcompの負値)を加算」と表現した方が分かりやすいので、「(-1)・TFcomp」として負値の波形を描いた。2段目は実機のタイヤとモータ間の速度差ωmwを(細い一点鎖線)で描いてある。バックラッシュ期間(t1~t2、t3~t4)のωmwがガタ速度ωgに相当し、終了時刻であるt2およびt4時刻のωmw成分が「歯当たり時のガタショック」を引き起こす。3段目は位相成分をトルク換算したものであり、実線がガタ位相の換算トルクTg(=Kd・θg)、破線がモータ・タイヤ間の位相の換算トルク(Kd・θmw)であり、この差分が軸ねじりトルクTd(=Kd・θmw-Tg)になる。4段目は外乱トルクオブザーバの推定トルク^Tobs(点線)と後述する軸トルクの推定^Td(実線)である。
軸ねじりトルクTdが零クロスすると(t1~t2、t3~t4)期間のバックラッシュが生じており、この期間における制御出力トルクTmが小さな値に抑制されていることが、特許文献5の「外乱トルクオブザーバによる振動抑制制御方式」の作用である。これにより、2段目のガタ速度に相当するωmwの増加量を抑制できており歯当たり時のガタショックを抑制する効果が得られる。
バックラッシュ期間の^Tobsは鋸波状になっているが、これはガタ位相の換算トルクTgを外乱成分として推定しているからである。そして、外乱オブザーバから規範モデル出力^TmA成分を取り出し、フィルタFcompに通して補償トルクTFcompを演算してTref2に減算補償すれば、Tmの増加を抑制して零付近に停滞させる作用になる。
(振動抑制制御と組み合わせるガタ制御の基本構成)
バックラッシュ期間の推定には軸ねじりトルクTdが必要だが、これは直接に検出することができない。そこで、制御出力トルクTmから外乱トルクオブザーバのモデル出力^TmAを減算した成分^Tdを代わりに使用する。これは図6の破線部で示した差分演算部308に相当する。
バックラッシュ期間の推定には軸ねじりトルクTdが必要だが、これは直接に検出することができない。そこで、制御出力トルクTmから外乱トルクオブザーバのモデル出力^TmAを減算した成分^Tdを代わりに使用する。これは図6の破線部で示した差分演算部308に相当する。
図6の^Td成分は、図2では減算器41,11にて減算する成分(Tdist+^Td)に相当する。図2と図7を比較すれば、車体に作用するトルク成分TF2の影響をモータ側に換算したものが図2のTdistであり、トルク成分TF2が存在しないと仮定するとTd成分は^Tdsに一致し、そして、TF2が存在する場合は、Tdistと^Tdsの合成成分が、以下の(15)式のように軸ねじりトルク(軸トルク推定値)^Tdと等価になる。
特許文献5では、図6の振動抑制制御に対して、さらにガタ制御を追加した図8のような構成例も開示されている。
図6の外乱トルクオブザーバ部に対応するブロックがTdist_OBS(120)のブロックであり、軸トルク推定値^Tdを利用したガタ期間の推定部BL_Est(200)が追加されている。また、バックラッシュ期間中は制御出力Tmを低く抑えたいので、TrefからTmまでの入力処理ブロックTm_Gen(100)を図示の構成に変更している。
(a)入力処理ブロックTm_Gen(100)の主要機能
Tm_Genで実現する機能は、ガタ期間の状態信号S_BLが「=1:バックラッシュ中」のときにはスイッチswAを「=1 側」に切り替えて、モータの異常加速を抑制するトルク制限TLIM1(102)を適用したTref4を選択して、制御出力トルクTmを小さなトルクに制限することである。ガタ期間中はトルク制限が邪魔をして補正トルクTFcompが正確に出力できなくなるので、このTref4には振動抑制補償トルクTFcompを補正していない。
Tm_Genで実現する機能は、ガタ期間の状態信号S_BLが「=1:バックラッシュ中」のときにはスイッチswAを「=1 側」に切り替えて、モータの異常加速を抑制するトルク制限TLIM1(102)を適用したTref4を選択して、制御出力トルクTmを小さなトルクに制限することである。ガタ期間中はトルク制限が邪魔をして補正トルクTFcompが正確に出力できなくなるので、このTref4には振動抑制補償トルクTFcompを補正していない。
ブロックTm_Gen(100)内のうち「swAとTLIM1を除いた部分」は、swAがガタ期間から通常のトルク出力「=0 側」に戻る場合の対策であり、Tmの急変(不連続)を抑制するための「バンプレス対策」と呼ばれる機能である。TmからTref3を減算部311して、ガタ制御から復帰(S_BL=1→0)したら生じてしまうTmの変化量を計算し、この変化量が少なくなるように、フィードバックゲインKαを介してトルク指令Trefから加算補正部312に供する。これにより、Tref3と現在出力中のTref4とが一致するようにTref2を修正するフィードバックが構成でき、(S_BL=1→0)の切り替えが起こってもTm出力は不連続にならない。Fcomp(s)は二次のフィルタであるので、一次フィルタのように簡単に初期化できない。そのため、ガタ制御中もFcomp(s)の演算は継続させておき、その代わりにTref2にフィードバックする構成のバンプレス対策を採用している。
復帰後は速やかに指令値Trefに追従させたいので、その追従特性をLPF1にて設定する。これは、一般的な低域通過フィルタや変化率制限で構成すればよい。一例としては、図9のような積分部316とLPF1の時定数ゲイン部314およびフィードバック減算器313で一次遅れフィルタを構成しておき、変化率を制限する飽和関数315を追加挿入すればよい。バンプレス対策の手法は提案内容と直接には関係ないので、一例のみを記載しておく。
(b)バックラッシュ期間(ガタ期間)の推定機能
特許文献5では、ガタ期間の推定を図8のBL_Estブロックで行っており、その詳細構成を図10に示す。
この構成を機能で分けると、「ガタ開始タイミングE_setの検出(220a)」、「ガタ速度^ωgとガタ位相(バックラッシュ位相)^θgの推定」、「ガタの終了タイミングS_Rstの検出」、そして「ガタ状態を生成するラッチ(sr1)」の4種類になる。
特許文献5では、ガタ期間の推定を図8のBL_Estブロックで行っており、その詳細構成を図10に示す。
この構成を機能で分けると、「ガタ開始タイミングE_setの検出(220a)」、「ガタ速度^ωgとガタ位相(バックラッシュ位相)^θgの推定」、「ガタの終了タイミングS_Rstの検出」、そして「ガタ状態を生成するラッチ(sr1)」の4種類になる。
ガタ開始タイミングの推定は図10の検出ブロック(220a)で行う。この入力は図6で示した外乱トルクオブザーバを利用した軸トルク推定^Tdであり、これが零クロスするタイミングを検出してガタ開始タイミングを出力する。零クロスにはトルクの変化極性により2種類あるので、^Tdが負値から正値に変化する零クロスタイミングをE_For(For方向)、逆の正から負への変化時をE_Rev(Rev方向)とし、論理和(OR)によりこれらの両方向成分を合成してE_set信号を得る。E_ForとE_Revの差異が区別できるように、極性を示すステータス信号S_FRも出力しておく。
ガタ速度とガタ位相の推定部では、バックラッシュ中のモータ・タイヤ間の速度差^ωmw(ガタ速度^ωg)を推定して、これを時間積分してガタ位相^θgを推定している。
この位相推定原理は関係式を用いて説明する。ここで変数に「(t)」が付記してあれば時間tにより変化する成分とし、付記していないものはガタ期間中では固定値(初期値の保持値など)とする。また、時刻t=0がガタ開始時であり、開始時の変数には「(t=0)」を付記して表す。また、原理説明に関する式については「^」記号を省略する。
モータ速度ωm(t)については(16)式のように、ガタ開始時の初期速度ωm0とそれに対する増速分に分離して取り扱い、増速分は右辺第一項のようにモータトルクTmと時定数TJmの時間積分で計算する。モータ位相のθm(t)も、初期位相θm0とその後の変化成分に分離すると(17)式になり、(16)式のモータ速度ωm(t)を代入すると積分と二階積分の2種類の積分項が現れる。
同様にタイヤ側もタイヤ角速度ωw(t)を(18)式、タイヤ位相θw(t)を(19)式として表現すると、やはり積分と二階積分の2種類の積分項が現れる。
図3で示すように、バックラッシュ期間ではガタ位相θg=θmw=(θm-θw)であるので、(17)式から(19)式を減算すると(20)式となり、さらに積分回数によりまとめると(21)式のような3つの項に分離できる。
(21)式の右辺第3項(θm0-θw0)はガタの初期位相であり、特許文献5ではこの初期値を零にした。これに対応するのは図10の時間積分部250に追加したクリア端子(clr)であり、ここで初期値を零にすることを表した。また、(21)式の右辺第2項の相対速度(ωm-ωw)を(22)式のような「Td/Kd(=θd)を時間微分したもの」として推定しておき、これをガタ開始時刻(t=0)でラッチした(23)式をωg_ini=(ωm0-ωw0)とする。この(23)式は、図10では微分(210+230)とラッチsh1に相当している。
ここで、(22)式では(ωm-ωw)=ωdとみなしているが、これは図7のオブザーバ構成ではガタを含んでいないので、「θg=0に固定(ωd=0)」の条件となるからである。そこで、図10では、推定値ωmw(θg=0)を使用せず、図7の^ωdを使用して表現している。
(21)式の右辺第1項の2成分のうち、「TJwM≫TJm」という仮定をおけば、TF2による車体の速度変化が小さいとみなして無視して(24)式のように制御出力トルクTm(t)だけの項に近似することができる。
これで(21)式の右辺が全て求まったので、バックラッシュ期間中のガタ位相(ギヤ間の相対位相)を推定することができ、これが図10にて「Tmと^Tdから^θgを推定する部分」の原理式である。
図10のガタ位相推定部の各要素については、上述の関係式との対応を示すことで説明とする。
・(22)式の微分に対応するのは、「バネ定数と時間微分部(210+230)」であり推定軸ねじれ速度^ωdを出力する。
・(23)式に対応するのは、ガタ開始タイミングE_setにてsh1で^ωdをラッチして初期値^ωg_ini を得る。
・(24)式のTF2を無視した式は、入力Tm(t)に対してクリア付の時間積分部240により^Δωmを得る。
・(21)式に対応するのは、初期値^ωg_iniと変動分^Δωmを加算部251にて加算して^ωgを計算する部分と、^ωgからクリア付の時間積分部250によりガタ推定位相^θgを得る部分である。
・(22)式の微分に対応するのは、「バネ定数と時間微分部(210+230)」であり推定軸ねじれ速度^ωdを出力する。
・(23)式に対応するのは、ガタ開始タイミングE_setにてsh1で^ωdをラッチして初期値^ωg_ini を得る。
・(24)式のTF2を無視した式は、入力Tm(t)に対してクリア付の時間積分部240により^Δωmを得る。
・(21)式に対応するのは、初期値^ωg_iniと変動分^Δωmを加算部251にて加算して^ωgを計算する部分と、^ωgからクリア付の時間積分部250によりガタ推定位相^θgを得る部分である。
図10の各積分要素にはclr端子を付加してあり、ガタ開始時には零に初期化されている。さらに、図中のclr端子には論理回路の負論理を表現する「〇」印を付加してあり、ガタ期間を示すステータス信号S_BLが「0(ガタ期間でない状態)」になると時間積分部240等は零に初期化され、S_BLが「1(ガタ期間中)」の場合には、積分動作をして増速分を計算する。
ガタの終了タイミングS_Rstの検出については、図10の推定ガタ位相^θgが歯当たり状態に達したことを検出するために、ウィンドウコンパレータWinCmpにて、設定した正負の閾値[θn、θp]と比較してガタ終了のステータス信号S_Rstを出力する。閾値[θn、θp]は切り替え方向により変化させており、これは図12のように動作する。For方向では同図(a)のように、Rev方向では同図(b)のようにコンパレータが動作する。
図10の「^θgを計算する積分要素(250)」の初期値を零に設定したため、For方向とRev方向では^θgの増加方向が異なる。実際のモータ・タイヤ位相差は図3(a)のように零に対して対称に定義したが、図10の推定位相^θgは図11(a)のように、For方向では^θg_For特性(実線)のように零から正方向に、Rev方向では^θg_Rev特性(破線)のように零から負方向に変化する。これについては^θgにオフセット補正を加えてもよいのだが、図12に示すように、^θgと比較する閾値の方にオフセット補正を適用している。
図10の最後の要素sr1は、ガタ開始タイミングE_setで「S_BL=1」にセットされ、ガタ到達ステータス信号S_Rstにより「S_BL=0」にリセットされるラッチであり、ガタ期間中のステータス信号S_BLを生成して、前述のスイッチswAの切り替えや、積分の初期化に使用する。
上記にて、図6の振動抑制制御にガタ制御を追加した構成例(図8)の概要を説明したが、この作用については図21(b)の動作波形例を用いて説明する。この設定条件やトルク指令Trefは同図(a)と同じであり、制御部のみ「振動抑制制御とガタ制御機能を組み合わせた図8」に変更したものである。
図21(a)(b)において、ガタ期間中の制御出力トルクTmに違いが生じており、同図(b)ではバックラッシュ期間中は一定値に制限されている。これは、図8のスイッチswAが「1」側に切り替わると、振動抑制制御の補償成分TFcompは無効になり、Tref2をトルク制限TLIM1(102)で制限したものをTmとして出力しているからである。
その間も振動抑制制御はTFcomp(破線)を出力し続けており、入力処理ブロックTm_Gen(100)のバンプレス対策機能により「Tref3とTmを一致」するようにTref2(一点鎖線)が補正されているので、Tref2は「-TFcomp」とは逆方向に補正されているが略一定値になる。Tmがトルク制限TLIM1に抑制されたことにより、モータωmの増加量つまりガタ速度(ωm-ωw)の増加量も抑制する作用が得られている。
ガタ期間中のTmは同図(a)よりも同図(b)の方が大きくなっており、ガタ後の過渡的オーバーシュートも同図(b)の方が大きいが、この大小は設定条件により変化する。後述する実施例の波形と対比させたいので、トルク指令を「振幅が小さくまた変化も緩やかな条件」に設定したからであり、「振幅が大きく零クロスで急変する条件」では逆に図8のガタ制御を適用した方がモータの増加量やガタ後の過渡的オーバーシュートは小さくなる。
また、ガタ時間の観点で比較すると、Tmが大きい方がガタ時間幅は短くなっており。このことから、ガタショックや過渡トルクが許容できるのであれば、Tmの抑制量が少ない方がバックラッシュを短時間に通過できることもわかる。
以下に前述の課題に対応した本発明の実施形態について説明する。
[実施形態1]低トルク指令時のガタ期間推定の誤検出防止対策
図13に示された実施形態1の振動抑制制御装置は、前述の課題の(1)を解決する「チャタリング対策」に対応したものである。これにより、軸トルク推定^Tdに微小な脈動により零クロスが生じても、誤検出によりガタ制御を繰り返す異常動作(チャタリング)を防止できる。
図13に示された実施形態1の振動抑制制御装置は、前述の課題の(1)を解決する「チャタリング対策」に対応したものである。これにより、軸トルク推定^Tdに微小な脈動により零クロスが生じても、誤検出によりガタ制御を繰り返す異常動作(チャタリング)を防止できる。
実施形態1の全体構成例は図8の「ガタ期間の推定部BL_Est」の内部構成において図10の態様から図13に示された推定部の態様に置き換えたものである。
図13の態様は、軸トルク推定^Tdの零クロス検出に対して許可条件を追加してあり、^Tdだけでなく制御出力トルクTmも利用して、ヒステリシス特性を利用した歯当たり検出や多重防止用のラッチなどによりガタ検出の許可信号を生成し、これにより不要な^Tdの零クロスを無効化する。
同図に示された本態様の推定部は、「(a)ガタ開始検出のチャタリング保護部」、「(b)ガタ状態信号の生成部」、「(c)ガタ位相の推定部」、「(d)ガタ終了(ガタ位相到達)判定部」で構成される。
(a)ガタ開始検出のチャタリング保護部
まずガタ検出前に「歯面が接触状態」であることを推定する。これは、「軸トルク推定^Tdが十分なトルクを発生していること」をヒステリシス幅の2個のコンパレータ324p,324nにより検出し、また同様に「制御出力トルクTmが十分なトルクを発生」していることをヒステリシス幅の2個のコンパレータ325p,325nにより検出して推定とする。For方向側の2種類のコンパレータ324p,325pの出力を論理積したATT_F」を「For方向側の歯面が接触中またはその直後」の信号とし、Rev方向側も「2種類のコンパレータ324n,325nの出力を論理積したATT_R」を「Rev方向側の歯面が接触中またはその直後」の信号とみなす。
まずガタ検出前に「歯面が接触状態」であることを推定する。これは、「軸トルク推定^Tdが十分なトルクを発生していること」をヒステリシス幅の2個のコンパレータ324p,324nにより検出し、また同様に「制御出力トルクTmが十分なトルクを発生」していることをヒステリシス幅の2個のコンパレータ325p,325nにより検出して推定とする。For方向側の2種類のコンパレータ324p,325pの出力を論理積したATT_F」を「For方向側の歯面が接触中またはその直後」の信号とし、Rev方向側も「2種類のコンパレータ324n,325nの出力を論理積したATT_R」を「Rev方向側の歯面が接触中またはその直後」の信号とみなす。
ATT_Fがラッチsr_ENRのセット端子(S)に与えられ、For側のギヤの歯面が接触した後の状態なのでRev方向のガタ開始制御を許可する信号を「EN_R=1(許可)」にする。同様に、ATT_Rがsr_ENFのセット端子(S)に与えられ、Rev側のギヤの歯面が接触した後の状態なのでFor方向のガタ開始制御を許可する信号を「EN_F=1(許可)」にする。
ラッチsr_ENRのリセット端子には反対方向の許可信号ATT_Rを、ラッチsr_ENFのリセット端子にはATT_Fを入力して、相互に許可状態をリセットさせる。また、このリセット信号を利用して多重動作防止機能も追加しているが、これについては次の項にて説明する。
こうして生成した許可信号を利用して、軸トルクの零クロス検出信号E_Forと許可信号EN_Fとの論理積(AND)327pをとり、無効分を排除したSet_Forをガタ開始タイミングとして利用する。同様に、軸トルクの零クロス検出信号E_Revと許可信号EN_Rとの論理積(AND)327nをとり、無効分を排除したSet_Revをガタ開始タイミングとして利用する。これにより、^Tdが微振動して零クロス検出がチャタリングしても異常なガタ開始検出を防止(無効化)することができる。
(b)ガタ状態信号の生成部
図10では、「Set_ForとSet_Revの論理和信号とラッチsr1のみ」でガタ状態を示す出力信号S_BLを作成していた。これを図13では、方向別の2個のラッチ(sr1_Fとsr1_R)に変更する。それぞれ(Set_ForとSet_Rev)をセット端子に入力して状態保持をさせ、その各ラッチの出力(Sg_ForとSg_Rev)の論理和328をとったものを図10のS_BL信号に置き換える。これはガタ状態信号のセット動作であり、リセット動作については「ガタ終了(ガタ位相到達)判定部」にて説明する。
図10では、「Set_ForとSet_Revの論理和信号とラッチsr1のみ」でガタ状態を示す出力信号S_BLを作成していた。これを図13では、方向別の2個のラッチ(sr1_Fとsr1_R)に変更する。それぞれ(Set_ForとSet_Rev)をセット端子に入力して状態保持をさせ、その各ラッチの出力(Sg_ForとSg_Rev)の論理和328をとったものを図10のS_BL信号に置き換える。これはガタ状態信号のセット動作であり、リセット動作については「ガタ終了(ガタ位相到達)判定部」にて説明する。
許可信号用のラッチ(sr_ENRとsr_ENF)に同方向の2回目のガタ開始検出を無効化する多重動作防止機能を追加するために、ガタ状態信号(Sg_ForとSg_Rev)を利用してラッチ(sr_ENRとsr_ENF)のリセット条件を拡張する。Sg_For信号が出力された場合には、次の同じガタ開始検出を無効化するために、ATT_Rと論理和をとったものをsr_ENFのリセット入力にした。同様に、Sg_Rev信号が出力された場合には、ATT_Fと論理和をとったものをsr_ENRのリセット入力にした。これにより、同じ方向のガタ検出が繰り返さないようにする保護機能として動作する。
(c)ガタ位相の推定部
ガタ位相の推定部は図10と同じ構成であり、範囲は入力信号Tmと^Tdから推定ガタトルク(推定バックラッシュトルク)^Tgを出力するまでの演算部である。また、図10の時間積分部250をバネ係数^Kdも含めた時間積分及びKd乗算部321に変更し、出力信号を推定ガタ位相^θgと等価な推定ガタトルク^Tgに置き換えたものである。
ガタ位相の推定部は図10と同じ構成であり、範囲は入力信号Tmと^Tdから推定ガタトルク(推定バックラッシュトルク)^Tgを出力するまでの演算部である。また、図10の時間積分部250をバネ係数^Kdも含めた時間積分及びKd乗算部321に変更し、出力信号を推定ガタ位相^θgと等価な推定ガタトルク^Tgに置き換えたものである。
(d)ガタ終了(ガタ位相到達)判定部
^Tgを入力として、ウィンドウコンパレータWinCmp_F部322pによりFor方向のガタ終了信号S_Rst_Forを、ウィンドウコンパレータWinCmp_R部322nによりRev方向のガタ終了信号S_Rst_Revを検出する。WinCmp_Fの閾値261pには図12の[θn_For、θp_For]に^Kdを乗算した[Tn_For,Tp_For]を設定し、WinCmp_Rの閾値261nには図12の[θn_Rev、θp_Rev]に^Kdを乗算した[Tn_Rev,Tp_Rev]を設定する。
^Tgを入力として、ウィンドウコンパレータWinCmp_F部322pによりFor方向のガタ終了信号S_Rst_Forを、ウィンドウコンパレータWinCmp_R部322nによりRev方向のガタ終了信号S_Rst_Revを検出する。WinCmp_Fの閾値261pには図12の[θn_For、θp_For]に^Kdを乗算した[Tn_For,Tp_For]を設定し、WinCmp_Rの閾値261nには図12の[θn_Rev、θp_Rev]に^Kdを乗算した[Tn_Rev,Tp_Rev]を設定する。
図12において、誤差が無ければ到達判定位相は「バックラッシュの両振幅位相^θBLもしくは零」になるはずであるが、推定誤差を考慮して余裕を持たせてある。「^θBL+Δθg1」や「-^θBL-Δθg1」のように余裕幅Δθg1を加算することによりガタ終了の推定タイミングが遅れるように補正し、また反転側の判定レベルも零ではなく微小な余裕分Δθg2を加算して「-Δθg2」や「Δθg2」に設定してある。
WinCmp_Fの出力はS_Rst_ForがラッチSg_Forのリセット端子に入力し、WinCmp_Rの出力S_Rst_RevはラッチSg_Revのリセット端子に入力して、ガタ状態信号(Sg_ForとSg_Rev)を終了(リセット)する。
(実施形態1の動作例)
以下、本実施形態の動作例について各ブロックに分けて説明する。
以下、本実施形態の動作例について各ブロックに分けて説明する。
(a)ガタ開始検出のチャタリング保護部
チャタリング防止機能は、ラッチ(sr_ENRとsr_ENF)の許可信号(EN_RとEN_F)を生成することにより行われる。セット側には微小な脈動により発生する成分を無効化させる機能を、リセット側には連続した2回目以降の信号を無効化させる機能が組み込まれる。
チャタリング防止機能は、ラッチ(sr_ENRとsr_ENF)の許可信号(EN_RとEN_F)を生成することにより行われる。セット側には微小な脈動により発生する成分を無効化させる機能を、リセット側には連続した2回目以降の信号を無効化させる機能が組み込まれる。
セット側の作用としては、^Tdのレベル判定である正側のコンパレータ324pが「=1」になるとFor動作後の歯面接触状態であるとみなし、負側のコンパレータ(324n)が「=1」になるとRev動作後の歯面接触状態であるとみなす。同様に制御出力Tmについても同じ正と負のコンパレータ325p,324nにより、ForとRevの歯面接触を推定しておき、同方向の検出結果の論理積を取ってATT-FとATT-Rとする。そして、ラッチsr-ENFによりEN_Fを、ラッチsr-ENRによりEN_Rを得る。この2種類の信号源を使用したのはノイズを考慮したものであり、^TdとTmとはほぼ似た動作をするのでこれらで二重化することにより許可信号(EN-RとEN-F)の誤検出が生じる確率を低減する。
リセット側の作用としては、Set_ForとSet_Rev信号がガタ状態にセットされたならば、許可信号のラッチ(sr_ENRとsr_ENF)をリセットさせることにより、同じ種類の開始信号が繰り返しても、次回以降は無効化させることができ同じ検出を何度も繰り返す異常を防止できる。
(b)ガタ状態信号の生成部
ガタ状態を示す出力信号S_BLの生成部を、図13では方向別の2個のラッチ(sr1_Fとsr1_R)に増やした。この理由は二つあり、一つ目は、ラッチ(sr_ENRとsr_ENF)のリセット側に「連続した2回目以降の信号を無効化させる機能」を実装するためには、ガタ状態信号を方向ごとに分離する必要があった。二つ目は、図10のガタ終了タイミングの検出に使用する方向信号S_FRを削除したかったことによる。^Tdの脈動によりS_FRが変化すると正確な閾値選択ができない。そこで、ガタ終了判定部でも2種類の閾値に対応させてコンパレータWinCmpも2個に増やした。そうすると、ラッチ(sr1_Fとsr1_R)もこれに対応させて2個にする必要がある。
ガタ状態を示す出力信号S_BLの生成部を、図13では方向別の2個のラッチ(sr1_Fとsr1_R)に増やした。この理由は二つあり、一つ目は、ラッチ(sr_ENRとsr_ENF)のリセット側に「連続した2回目以降の信号を無効化させる機能」を実装するためには、ガタ状態信号を方向ごとに分離する必要があった。二つ目は、図10のガタ終了タイミングの検出に使用する方向信号S_FRを削除したかったことによる。^Tdの脈動によりS_FRが変化すると正確な閾値選択ができない。そこで、ガタ終了判定部でも2種類の閾値に対応させてコンパレータWinCmpも2個に増やした。そうすると、ラッチ(sr1_Fとsr1_R)もこれに対応させて2個にする必要がある。
つまり、2方向の状態信号に分離することにより、チャタリング防止効果と方向信号が不要になる効果が得られる。
(c)ガタ位相の推定部
ガタ位相はギヤ間の相対速度を推定し、それを時間積分して求めている。ギヤの歯が接触していれば、除算及び微分部(210+230)により「^Tdを^Kdの除算と時間微分」したものは、モータとタイヤの速度差ωmw(軸ねじれ速度)の推定値になる。そこで、ガタ開始時の値をsh1でラッチして、この初期値^ωg_iniが継続するものと近似する。また、モータトルクTmによるモータ速度変動分^Δωmを時間積分部240により求め、これらの和をギヤ間の相対速度^ωgとし、さらに時間積分及び^Kd乗算部321にて「ガタ位相^θgと等価なガタトルク^Tg」を推定する。
ガタ位相はギヤ間の相対速度を推定し、それを時間積分して求めている。ギヤの歯が接触していれば、除算及び微分部(210+230)により「^Tdを^Kdの除算と時間微分」したものは、モータとタイヤの速度差ωmw(軸ねじれ速度)の推定値になる。そこで、ガタ開始時の値をsh1でラッチして、この初期値^ωg_iniが継続するものと近似する。また、モータトルクTmによるモータ速度変動分^Δωmを時間積分部240により求め、これらの和をギヤ間の相対速度^ωgとし、さらに時間積分及び^Kd乗算部321にて「ガタ位相^θgと等価なガタトルク^Tg」を推定する。
ここでは車体慣性が十分に大きいとものとみなし、タイヤ・車体側の速度変動分は零に近似して省略している。
(d)ガタ終了(ガタ位相到達)判定部
推定した等価ガタトルク^Tgにより、ForとRev両方向のウィンドウコンパレータによりバックラッシュの終了判定(歯面の再接触)を判定し、状態信号Sg_ForとSg_Revをリセットさせる。
推定した等価ガタトルク^Tgにより、ForとRev両方向のウィンドウコンパレータによりバックラッシュの終了判定(歯面の再接触)を判定し、状態信号Sg_ForとSg_Revをリセットさせる。
WinCmp_F(322p)の閾値261pには図12の[θn_For、θp_For]に^Kdを乗算した[Tn_For,Tp_For]を設定しておけば、^Tgが閾値の範囲を超えると「For方向のガタ終了信号S_Rst_For」を出力し、sr1-Fのリセット端子からガタ状態信号Sg_Forをリセットする。
同様に、WinCmp_R(322n)の閾値261nには図12の[θn_Rev、θp_Rev]に^Kdを乗算した[Tn_Rev,Tp_Rev]を設定しておけば、^Tgが閾値の範囲を超えると「Rev方向のガタ終了信号S_Rst_Rev」を出力し、sr1-Rのリセット端子からガタ状態信号Sg_Revをリセットする。
このように、ガタ終了(ガタ位相到達)判定を二方向に分離したので、前述のように図10の方向信号S_FR信号が不要になる。
図13の構成例の動作例が図22(a)であり、これは図21(b)と同一条件とした。ガタ期間の判定部の動作を4段目に示してあり、t1~t2およびt3~t4がバックラッシュ推定期間である。
図示されていないが、t1以前では^Tdが十分大きな負値になっていたので許可信号EN_Fが「=1(許可)」になっており、^Tdが負から正方向に変化する零クロス時(t1)にはE_ForとEN_FによりSet_Forのパルスが発生し、図のようにSg_Forの状態信号が「Sg_For=1(ON)」になる。バックラッシュ期間中に^Tgが変化すると、最初に検出Rst_Revが立ち上がるが、これは「For方向のガタ制御状態:Sg_For」が動作中は作用しない。そして、t2時刻になるとRst_Forが立ち上がってSg_Forはリセットされる。比較のために、「実機Sg(破線)」にて実機のバックラッシュ期間も示しているが、ほぼ一致していることから正確なバックラッシュ期間を推定できることが確認できる。Rev側も同様であり、t3~t4期間がバックラッシュの推定期間であり、実機ともよく一致している。
図22(b)は下り勾配路の条件であり、プラントモデルの車体側にTF=0.2 p.u.の加速トルクを加えた。車体側の速度変動成分も相対速度を変化させるので、t1~t2期間では実機よりも推定期間の方が短くなっており、逆にt3~t4期間では実機よりも推定期間の方が長くなっている。これは、重力による加速度成分を無視して(24)式のように近似したために、ガタ終了タイミングの推定誤差が生じたものである。尚、後述の実施形態2は前記誤差の抑制を図るものである。
(実施形態1の効果)
以上の実施形態1を適用する以前の形態では、ガタ開始検出に、外乱トルクオブザーバを利用した軸トルク推定値^Tdの零クロスを使用しているため、オブザーバに使用している速度検出のノイズなどにより^Tdが脈動して不要な零クロスが生じやすい。そのため、「チャタリング」のような、異常に何度もガタ制御を繰り返す可能性がある。
以上の実施形態1を適用する以前の形態では、ガタ開始検出に、外乱トルクオブザーバを利用した軸トルク推定値^Tdの零クロスを使用しているため、オブザーバに使用している速度検出のノイズなどにより^Tdが脈動して不要な零クロスが生じやすい。そのため、「チャタリング」のような、異常に何度もガタ制御を繰り返す可能性がある。
そこで、実施形態1では、^Tdや制御出力トルクTmの振幅を利用した「歯面の接触状態を判定する機能」と、その直後の零クロスのみ有効にする「許可条件生成機能」を追加した。さらに、ガタ状態信号を利用して、同方向の検出は連続して検出しないようにして、連続的に検出する異常も回避した。さらに、ガタ状態のラッチやガタ終了判定を、^Tdの変化方向別に2個に分離した構成により、零クロスにより頻繁に変化する方向信号を使用しない構成にした。
以上の対策により、零クロスをヒステリシス特性に拡張し、さらに再トリガの防止機能を追加したように作用し、トルク指令が緩やかに駆動と回生との極性を変化させる場合など、軸トルク推定値^Tdに異常な零クロスが発生しやすい場合でも不要なガタ制御動作を抑制する効果が得られる。
[実施形態2]車体に作用する外乱力成分の補正
図14の実施形態2は、近似モデルの車体側に作用する加速度成分TF2の影響を考慮したガタ終了タイミングの推定方法である。加速度成分TF2は検出できないので、代わりに外乱トルクオブザーバの推定トルク^Tobsを利用するものであり、図10と比較して、図14にはラッチsh3と積分部329が追加されている。これにより、車体に作用するトルクによって生じるタイヤ速度の変動分^Δωwを推定し、これを(^Δωm+^ωg_ini)成分に追加加算する。
図14の実施形態2は、近似モデルの車体側に作用する加速度成分TF2の影響を考慮したガタ終了タイミングの推定方法である。加速度成分TF2は検出できないので、代わりに外乱トルクオブザーバの推定トルク^Tobsを利用するものであり、図10と比較して、図14にはラッチsh3と積分部329が追加されている。これにより、車体に作用するトルクによって生じるタイヤ速度の変動分^Δωwを推定し、これを(^Δωm+^ωg_ini)成分に追加加算する。
(実施形態2の動作例)
ガタ速度^ωgを(^Δωm+^Δωw+^ωg_ini)に変更したことにより推定誤差が減少し、勾配路などの外乱成分も考慮した補正効果が得られる。
ガタ速度^ωgを(^Δωm+^Δωw+^ωg_ini)に変更したことにより推定誤差が減少し、勾配路などの外乱成分も考慮した補正効果が得られる。
この構成での動作例を図23に示した。これは図22(a)(b)と同じ条件である。図23(a)は誤差要因が無いので、図22と同様に図23でも正確に推定できる。図23(b)については図22の方はバックラッシュ期間に推定誤差が生じていたが、図23の方では正確に推定できるようになった。下記の改善項目が本実施例の効果である。
・2段目のバックラッシュ期間中の「推定^ωg」が、「実機のωmw」と略一致する。
・4段目のガタ推定状態信号(Sg_For)(Sg_Rev)が、「実機のガタ期間Sg」と略一致する。
・2段目のバックラッシュ期間中の「推定^ωg」が、「実機のωmw」と略一致する。
・4段目のガタ推定状態信号(Sg_For)(Sg_Rev)が、「実機のガタ期間Sg」と略一致する。
尚、図23に示されたようにt2とt4以降のTm波形に大きなオーバーシュートが残るが、後述の実施形態3により当該オーバーシュートを抑制できる。
(実施形態2の効果)
以上の実施形態2によれば、ガタ制御期間は、ガタ開始検出部と、ガタ位相を推定してガタ終了を判定する終了検出部にて構成されている。従来のガタ位相の推定演算方式では車体に作用する加速度成分は無視していたが、バックラッシュが長時間続く場合にはこの無視した成分が有意な推定誤差を生じることが分かった。
以上の実施形態2によれば、ガタ制御期間は、ガタ開始検出部と、ガタ位相を推定してガタ終了を判定する終了検出部にて構成されている。従来のガタ位相の推定演算方式では車体に作用する加速度成分は無視していたが、バックラッシュが長時間続く場合にはこの無視した成分が有意な推定誤差を生じることが分かった。
そこで、振動抑制制御のために組み込んだ外乱トルクオブザーバを利用して、推定外乱トルクが車体側の加速トルクに相当するものとみなしてタイヤ側の速度変動分も計算することにより、ガタ位相推定の演算精度を改善した。これにより、勾配路であってもガタ制御の適用期間が正確になり、その結果、ガタショックや過渡的なトルク脈動を抑制する効果が得られる。
[実施形態3]ガタ後の過渡トルクを抑制するギヤ相対速度の計算とその制限速度の実現
実施形態2の動作例の波形には、全てガタ終了直後(t=2.3 s と3.45s付近)に制御出力Tmのオーバーシュートが生じている。
実施形態2の動作例の波形には、全てガタ終了直後(t=2.3 s と3.45s付近)に制御出力Tmのオーバーシュートが生じている。
そこで、実施形態3は以下のトルク制限部である入力処理ブロックTm_Gen(100a)により前記オーバーシュートを抑制する。
図15に示された実施形態3の入力処理ブロックTm_Gen(100a)は、図8の態様において、TLIM_ASR(330)を追加したものであり、トルク制限TLIM1の上下限値(TGLim_P,TGLim_N)を可変させるものである。
図16は、TLIM_ASR(330)の内部構成例を示す。入力信号は「入力指令トルクTref」と「ガタ時の基本トルク制限値TGLim」、及び図15のガタ制御ブロックBL_Est2(200a)の出力である「推定ガタ速度^ωg」と「For方向やRev方向のガタ状態を示す信号(Sg_For・Sg_Rev)」である。ここで、BL_Est2は、BL_Estから出力信号を増やしたものであり、さらに後述する実施例のために入力信号も増やしているがここでは使用しない。
図15のTLIM_ASR(330)の構成部(図16)の主要な部分は、「入力トルクTrefと比例制御ゲインKTWとを乗算部331にて乗算してガタ速度の基準値(目標相対速度)ωg_refを演算する部分」と、「制御対象である^ωgから基準値ωg_refを減算部332にて減算し、これに比例制御ゲインKASRを乗算部333にて乗算して上下限値の補正成分Tc_asrを演算する部分」である。
このTc_asr成分を直接トルク指令Tmに加減算する構成も考えられるが、ここではトルク制限TLIM1(図15)の上下限値を可変調整する間接的な補正方法を採用した。
基準となるトルク制限値TGLimに正負の符号をつけて上限値と下限値に分け、最小関数min(334)により「基準上限値TGLimとトルク指令Trefとの小さい方」を選択し、これから「トルク補正成分Tc_asrからLimTpにより正成分のみ抽出したもの」を減算部335にて減算して、「補正されたトルク上限値TGLim_P」として出力する。同様に、最大関数max(336)により「基準下限値(-TGLim)とトルク指令Trefとの大きい方」を選択して、これから「トルク補正成分Tc_asrからLimTnにより負成分のみ抽出したもの」を減算部337にて減算して、「補正されたトルク下限値TGLiIm_N」として出力する。
ここで上限値と下限値の大小関係が入れ替わらないように、スイッチ(swGLpとswGLn)を追加して、For方向では「TGLim_Pのみ補正出力して反対側のTGLim_Nは零に固定」し、Rev方向では「TGLim_Nのみ補正出力し反対側のTGLim_Pは零に固定」してある。
以上が、実施形態3で追加したTLIM_ASRブロックの内容である。
次に、基準値の計算に使用するゲインKTW(331)の設定方法について説明する。まず、減速時に生じる軸共振を単純化するため、仮想的に弾性軸のタイヤ側を固定しておきモータ角速度ωd_0で歯当たりした後の共振特性を考える。「モータ初期角速度ωd_0の運動エネルギー」は「ねじれ位相θdの位置エネルギー」と相互にエネルギーを授受するのでこれらの波形は余弦波と正弦波状になる。ねじれ位相のピーク値をθd_pとすると(25)式のエネルギーの関係式が得られ、さらにθd_pをKdにてトルク換算してTd_pとおけば、初期モータ速度ωd0と軸トルクのピーク値Td_pとが(26)式の関係になる。
理想的な共振抑制制御としては、Tm波形に「ピーク値Td_pの正弦波波形」を出力するはずであり、そうすれば共振の90°経過時点で軸速度が零になって振動抑制が完了する。見方を変えると、初期モータ角速度ωd0と(26)式により、これから振動抑制制御が発生するはずのトルクピーク値Tm_peakを予測できることになる。
図21(a)の波形例で検算してみると、(26)式の係数項1/√(Kd×TJm)=0.62とt2時刻のωmw(t2)=0.028 p.u. にて計算した「t2後のTmのピーク値」はTm_peak =0.028/0.62=0.045 p.u. である。これに対して、図21(a)のt2後に生じるTm_peak は約0.042であるので、ほぼ似た値になっている。ことからこの予測に関する妥当性が確認できる。
ガタ後のTmピークがトルク指令Trefを超えないようにしたければ、この予測式を利用して、ガタ終了時のガタ速度を(27)式で求めるような目標速度ωg_ref以下に制限しておけばよい。この(27)式の係数をTLIM_ASRブロックのゲインKTW(331)として設定する。実際にはタイヤ側は固定していないし各種の減衰項も存在する。また、「ωgの制御部」を比例制御ゲインKASR(333)に簡素化すれば定常偏差も生じる。これらの影響を厳密に計算すると複雑になること、Tmのオーバーシュートを抑制するだけならそれほど制御精度も要求されないことから、調整係数kadjを追加して、これを過渡応答シミュレーションや実機試験などで調整することにする。比例制御ゲインKASRも同様な調整パラメータとする。
(実施形態3の動作例)
実施形態3を適用した動作例を説明した加減速特性を図24に示した。パラメータや入力信号は図22や図23と同じ設定であり、KTWの調整係数をkadj=0.7、比例ゲインをKASR=2とした。トルク指令Trefは省略しているが図21のTref2と同じ波形であり、(27)式を適用すると上下限目標はωg_ref(2段目:破線)のような波形になる。
実施形態3を適用した動作例を説明した加減速特性を図24に示した。パラメータや入力信号は図22や図23と同じ設定であり、KTWの調整係数をkadj=0.7、比例ゲインをKASR=2とした。トルク指令Trefは省略しているが図21のTref2と同じ波形であり、(27)式を適用すると上下限目標はωg_ref(2段目:破線)のような波形になる。
2段目の速度^ωgはガタ推定開始(t1)直後に急増するが、TLIM_ASRにより、上下限目標ωg_refを超えると比例制御ゲインKASRおよびTLIM1の上下限制限による抑制動作が生じ、制御出力Tmを零付近まで低減させて、ガタ推終了時(t2)の^ωgを抑制している。この^ωgが目標速度付近に抑制されているので、t2後に生じるTmのピーク値はちょうどトルク指令Trefと一致するようになり、トルク指令を超過するオーバーシュートは発生していない。TLIM_ASRが動作すると、TmもTref2も零付近に減衰してほぼ一致するようになるので、バンプレス対策としての効果も得られる。さらに、振動抑制制御の補償トルク「-TFcomp」も、ガタ終了時に零付近に抑制されており、ガタ後のTmピーク後に負に逆ぶれする量も減って、直ぐに定常状態に移行できている。
このことから、ガタ後の過渡的なオーバーシュートを抑制するだけでなく、ガタ状態からスムーズに定常状態に移行できる効果も得られており、振動抑制制御とガタ制御が協調して動作するようになった。
特許文献4及び非特許文献1では相対速度を零まで制限しているが、図24(a)のωmw(≒ωg)は、最初は速く立ちあがり目標速度を超えると上限値に飽和させて速度を維持する。この立ち上がりが膨らんだ矩形状の波形にするとガタ位相の変化を速くさせることができるので、「ωgの抑制(過渡トルクの抑制)」と「ガタ時間の短縮(応答遅れ)」の相反する課題を協調させる解であるとも言える。
しかし、図24(b)のように車体側の外乱力(加速度)が存在すると、ωmwの波形にはFor方向とRev方向で差異が生じてくる。For方向ではωmwは飽和しているが、Rev側では十分に抑制できておらずωmwは鋸歯状に増加を続けている。これは、図16のLimTnにて逆方向の補正を禁止したからであり、後述する誤差成分の悪影響も懸念して補正限界を零に設定した。LimTnを逆符号まで拡張することも可能であるが、現状でもガタ速度の抑制効果は得られているし、またバックラッシュ期間の推定(Sg_For、Sg_Rev)も正確に推定できている。
この方式のもう一つの長所は、トルク指令が十分に大きな場合には、上限目標値ωg_refが大きな値になるので^ωgがこれを超過することはなく、Tmの抑制機能が動作しなくなることである。実施例3が作用するのは、Tmのオーバーシュートが発生しやすい場合のみであり、Trefが急上昇するのでガタ時間が短くTmのオーバーシュートも発生しないときには不要な補正動作をしないこともある意味での効果である。
(実施形態3の効果)
弾性軸による共振を有するシステムにギヤのバックラッシュが加わると、2種類の問題が生じる。一つは、「ガタ期間中のモータ増速による歯当たり時の衝撃」であり、もう一つは、「バックラッシュ後の過渡トルク成分」である。従来法では前者の対策だけでありバックラッシュ期間中のモータ加速を抑制した。しかし、後者のバックラッシュ後のトルク脈動までは考慮していなかった。
弾性軸による共振を有するシステムにギヤのバックラッシュが加わると、2種類の問題が生じる。一つは、「ガタ期間中のモータ増速による歯当たり時の衝撃」であり、もう一つは、「バックラッシュ後の過渡トルク成分」である。従来法では前者の対策だけでありバックラッシュ期間中のモータ加速を抑制した。しかし、後者のバックラッシュ後のトルク脈動までは考慮していなかった。
実施形態3は、「バックラッシュ後に振動抑制制御が発生する過渡トルク成分」を抑制するための対策であり、特にトルク指令の振幅が小さく緩やかに零クロスする条件において効果が得られる。対策としては、トルク指令からガタ期間中のギヤ相対速度(ガタ速度)の制限速度を計算しておき、推定ガタ速度がこの制限速度以下になるように制御出力Tmを抑制する一種の速度制御機能を追加した。さらに、共振特性が存在してもモータトルクがオーバーシュートしないための条件式を導出し、トルク指令に応じて適切な制限速度を計算して可変設定する。
実施形態3が適用されることで、まずガタ期間中のガタ速度の上限が制限されるので、歯当たり時の衝撃が抑制できる。さらに、ガタ速度の上限値を共振特性まで考慮して可変設定することにより、ガタ後の過渡トルクが生じても、制御出力(モータトルク)Tmのピーク値がトルク指令Trefに一致するように制御でき、オーバーシュートの抑制と定常時へのスムーズな移行が実現できた。これにより衝撃音だけでなく、体感として不快な加速度成分も抑制できる。
本実施形態では、相対速度を零にするのではなく、許容できる上限速度に制限しているのでガタ時間の長期化も抑制でき、トルク指令の応答遅れも防止できる。
それ以外にも、本実施例が作用した場合には、振動抑制制御の補償トルク成分が零方向に抑制される。バックラッシュ後の補償トルクが零にリセットできれば、次のトルクの立ち上がり特性にガタ制御が干渉しないことになり、トルク応答の制御性がよくなる。
[実施形態4]ガタ後の過渡トルクを抑制するギヤ相対速度の計算とその制限速度の実現
図17に示された実施形態4の全体構成は、図15の実施形態3の構成と同じである。変更点は図16で示したTLIM_ASRの構成例に対して、図17のようにガタ速度の上限目標値の部分に上下限制限LimWg(338)を設定するトルク制限部を備える。
図17に示された実施形態4の全体構成は、図15の実施形態3の構成と同じである。変更点は図16で示したTLIM_ASRの構成例に対して、図17のようにガタ速度の上限目標値の部分に上下限制限LimWg(338)を設定するトルク制限部を備える。
(実施形態4の動作例)
既に述べているように、バックラッシュが存在すると「ガタ期間中にモータが増速するため歯当たり時の衝撃が発生する課題」と、バックラッシュ後に「振動抑制制御の過渡トルク成分が発生するという課題」とがある。実施形態3では後者の課題に対する対策であり、これはトルク指令が緩やかに零クロスする場合でガタ時間が長期化する場合にのみ作用し、トルク指令が大きく急な零クロスの場合には作用しない。
既に述べているように、バックラッシュが存在すると「ガタ期間中にモータが増速するため歯当たり時の衝撃が発生する課題」と、バックラッシュ後に「振動抑制制御の過渡トルク成分が発生するという課題」とがある。実施形態3では後者の課題に対する対策であり、これはトルク指令が緩やかに零クロスする場合でガタ時間が長期化する場合にのみ作用し、トルク指令が大きく急な零クロスの場合には作用しない。
しかし、「トルク指令が急変しながら零クロスする場合」には、初期ガタ速度^ωg_iniが大きな値を持つ。そのため、少しのモータ速度の増速であってもガタ速度ωgが過大になり、歯当たり時のショックが大きくなってくる。そこで、トルク指令の挙動とは無関係に、単純に「ガタ速度の過大状態」を検出して、その場合でもTmを抑制するように機能拡張する。
実施形態4を適用した動作例を説明した加減速特性を図25に示した。実施形態4では、実施形態3の構成に対して追加した上下限制限LimWg(338)が「トルク指令に無関係なガタ速度の上下限抑制機能」として作用する。実施例3の「トルク指令に比例した制限速度ωg_refの出力部分」に「上下限制限LimWg(338)を追加して±ΔωgLimの範囲内に制限」するだけで、±ΔωgLimを超えるガタ速度になるとKASRによるフォードバック補正が作用してTmを減少させることにより、ガタ速度ωgの増加を抑制して歯当たり時のガタショックを低減する効果が得られる。
(実施形態4の効果)
弾性軸による共振を有するシステムにギヤのバックラッシュが加わると、2種類の問題が生じる。一つは、「ガタ期間中のモータ増速による歯当たり時の衝撃」であり、もう一つは、「バックラッシュ後の過渡トルク成分」である。
弾性軸による共振を有するシステムにギヤのバックラッシュが加わると、2種類の問題が生じる。一つは、「ガタ期間中のモータ増速による歯当たり時の衝撃」であり、もう一つは、「バックラッシュ後の過渡トルク成分」である。
従来法では前者の対策だけであったが、実施形態3により両方を考慮した対策ができた。しかし、これらはトルク指令が小さい領域を想定した対策であった。
これ以外にも、トルク指令が急変しながら零クロスする場合にはガタ開始時のギヤの相対速度が大きくなるので、ガタ時間が短くモータ加速量が少なくても、歯当たり時の衝撃音が大きくなる。
そこで、実施形態4においては、実施例3を拡張して、トルク指令とは無関係にギヤの相対速度の上下限を抑制する。これにより、トルク指令が急変しながらバックラッシュが発生した場合でも、「歯当たり音」を軽減できる効果が得られる。
[実施形態5]モータ位相検出を利用したガタ位相の推定
前述の実施形態までは、ガタ制御中に制御出力トルクTmを補正してガタショックやガタ後の過渡トルクを改善する方法を提案した。どちらかといえば「制御的」な内容であったが、以降では、実用上の課題である「トルク制御誤差や速度検出誤差」等の「ノイズ対策や信頼性向上」を図る。具体的には、下記の実施形態5~7が挙げられる。
(実施形態5)特許文献5や実施形態2と異なる原理のガタ速度・位相の推定の適用
(実施形態6)原理の異なる二種類のガタ位相推定を「異常保護機能」として応用
(実施形態7)原理の異なる二種類のガタ位相推定を利用して「推定ガタ位相の精度」を向上
図18に示された実施形態5は、終了タイミング検出部分の「ガタ位相の推定方法」を、異なる原理の推定方法に置き換える。特許文献5や前述の実施形態と同様に全体構成は図8や図15の態様を使用するが、図15の態様において、BL_Est2の部分を、図18の構成例のような「モータの位相・速度検出を利用した新たな推定方法」を適用した構成に置き換える。
前述の実施形態までは、ガタ制御中に制御出力トルクTmを補正してガタショックやガタ後の過渡トルクを改善する方法を提案した。どちらかといえば「制御的」な内容であったが、以降では、実用上の課題である「トルク制御誤差や速度検出誤差」等の「ノイズ対策や信頼性向上」を図る。具体的には、下記の実施形態5~7が挙げられる。
(実施形態5)特許文献5や実施形態2と異なる原理のガタ速度・位相の推定の適用
(実施形態6)原理の異なる二種類のガタ位相推定を「異常保護機能」として応用
(実施形態7)原理の異なる二種類のガタ位相推定を利用して「推定ガタ位相の精度」を向上
図18に示された実施形態5は、終了タイミング検出部分の「ガタ位相の推定方法」を、異なる原理の推定方法に置き換える。特許文献5や前述の実施形態と同様に全体構成は図8や図15の態様を使用するが、図15の態様において、BL_Est2の部分を、図18の構成例のような「モータの位相・速度検出を利用した新たな推定方法」を適用した構成に置き換える。
図18のうち変更した構成部分は、「モータ回転位相検出θm_det,モータ速度検出ωm_et、および外乱トルクオブザーバの推定外乱トルク^Tobs」を入力とし、推定ガタ位相^Tg2を出力する演算部分であり、この^Tg2を図14の^Tgの代わりに使用する。それ以外の、ガタ開始や終了タイミングおよびガタ制御信号の生成部などは共通である。本実施形態では、ガタ位相Tg2を推定演算する変更部分だけ説明する。
従来は定常分と変動分に分離したが、今回はモータの位相変動分(θm-θm0)とタイヤの位相変動分(θw-θw0)とに分離する。両ギヤの位相変動分を個別に計算しておき、それにバネ定数を乗算してトルク^Tdm2を求め、これと^Tdw2にトルク換算したものを減算することにより推定ガタトルク^Tg2を求めるものである。
先ず、モータの位相変動(θm-θm0)と^Tdm2を計算するために、モータ位相θmを「ガタ期間中の状態信号S_BLにより保持動作をするラッチsh4」により保持してθm0を生成し、減算部340により、検出位相θmからθm0を減算して変動量(θm-θm0)を求める。これにバネ定数^Kd(341)を乗算してトルク換算値の^Tdm2を得る。
次に、タイヤの位相変動(θw-θw0)であるが、これは直接に計測できないので初期速度と速度変動分に分離して推定する。初期速度は、軸トルク推定値^Tdを時間微分(210+230)して推定軸ねじれ速度^ωdとしさらにガタ開始時刻でラッチ(sh1)にて保持したものを推定ガタ速度の初期値^ωg_iniとする。検出モータ角速度ωmも同じタイミングでラッチsh5にて保持してωm0としておき、ωm0から^ωg_iniを減算部342に供して「ガタ開始時のタイヤ角速度^ωw_ini」を求める。
タイヤ速度変動分については、外乱トルクオブザーバの推定トルク^Tobsをガタ開始時刻でラッチsh5により保持して^Tobs_iniに固定しておき、これがタイヤ・車体を加速するトルクとみなして時定数^TJwMの積分部329にて「推定タイヤ速度の変動分(^Δωw)」を計算する。ここで、積分部329は初期リセット機能を付加してある。
そして、初期値^ωw_iniから変動分^Δωwを減算して、ガタ期間中のタイヤ速度^ωw2を得ている。ここで、^Tobsは速度が減速する方向を正にしたので、初期速度^ωw_iniから変動分^Δωwを減算した。
^ωw2から位相成分およびトルク単位への変換をするために、「時間積分(初期リセット付)と^Kd乗算ブロック(321)」を適用して「タイヤの位相変動分(θw-θw0)に相当する^Tdw2」を得る。
最後に、モータ側の^Tdm2からタイヤ側の^Tdw2を減算部345に供すれば、目的であるガタ位相推定^θgに比例するトルク換算値^Tg2を求めるこれができ、これを使えばガタ到達判定が可能になる。
もし、実施形態3や実施形態4の機能も追加適用する場合には、「ガタ速度^ωg」の情報が必要になる。これについても、「ωmから^ωw2を減算した^ωg2」を計算して、これをガタ速度^ωgの代わりに使用すればよい。この^ωg2が、図15に示すTLIM_ASR(330)の^ωgの代りに入力される。
(実施形態5の動作例)
実施形態5(図18)の動作例を説明する前に、新しいガタ位相推定についての関係式を示す。
実施形態5(図18)の動作例を説明する前に、新しいガタ位相推定についての関係式を示す。
(17)式に示されているモータ位相の変動分(θm(t)-θm0)は、(28)式のような二階積分に変形できる。
同様に、ガタ期間中のタイヤ位相の変動分も外乱トルクTF2を積分して求め、(28)式からこれを減算すれば(29)式のガタ位相になる。
この(29)式の右辺第2項のうち、ガタ開始時のタイヤ速度の初期値ωw0は、モータ速度から(23)式の軸ねじれ速度を減算した(30)式で計算する。
これらをまとめると(31)式のようなガタ位相の推定式が得られる。これは、「モータ検出位相の変動分(θm(t)-θm0)」と、「タイヤ速度を時間積分して求めたタイヤ位相の変動分」との差の形にしたことが特徴である。ここで、タイヤ位相の初期値は(θw0=0)として省略している。
(31)式ではトルク指令Tmの項が消えており、その代わりモータの位相検出θmや速度検出ωmを利用しているので、入力信号源が異なる「新しい原理のガタ位相の推定方式」とみなせる。
実施形態5は、(21)式の代わりに(31)式を使用する構成に変更したものであり、(31)式と図18の各変数との対応について下記に示しておく。(31)式と図18との対応を以下に示す。
以上が本実施形態の動作であり、トルク指令Tmを使用しないで、「モータの位相検出θmや速度検出ωmなどの情報からガタトルク^Tgを推定」することにより、トルク制御誤差が大きな条件でも、ガタ期間の推定誤差を抑制することができる。
(実施形態5の効果)
実施例3などでは、モータ速度の推定に制御出力トルクTmを使用していたが、Tmが小さいためガタ時間が長くなる場合にはトルク制御誤差の影響を受けて異常な位相推定になる危険性がある。特に、ガタ位相が停滞してしまいガタ到達の検出に達しない場合には、ガタ期間が永遠に続くことになる。
実施例3などでは、モータ速度の推定に制御出力トルクTmを使用していたが、Tmが小さいためガタ時間が長くなる場合にはトルク制御誤差の影響を受けて異常な位相推定になる危険性がある。特に、ガタ位相が停滞してしまいガタ到達の検出に達しない場合には、ガタ期間が永遠に続くことになる。
トルクTmに含まれる誤差は二階積分すると大きな位相誤差になるが、実施例5では位相検出θmを直接利用してガタ位相を求める方法なので、トルク誤差の影響を受けず位相推定の誤差が抑制できる効果が得られる。
実施例3と比較して基本となる関係式は等価であるので原理的な差はなく、性能の優劣は各システムの誤差の種類や大きさによって決まるのであり、どちらが優れているかは一概には決められない。しかし大局的な視野に立てば、異なる原理の方式を考案することは「誤差特性を抑制するための選択肢」という対策方法を増やしたことになり、これが本実施例の効果であるともいえる。
[実施形態6]2種類のガタ位相推定情報による異常保護(トルク誤差による異常動作の監視・保護)
実施形態5はモータの位相検出や速度検出を利用した新たなガタ位相の推定を行う。
実施形態5はモータの位相検出や速度検出を利用した新たなガタ位相の推定を行う。
これに対し、実施形態6は前記新たなガタ位相の推定法と従来の推定方法とを組み合わせたものである。従来の推定方法にて制御システムを構成しておき、実施形態5の新しい推定方法を利用して異常監視を行わせることにより保護機能を追加する。
図19に示された実施形態6は、図14の実施形態2の態様において、図18の実施形態5の「新たなガタ位相推定^Tg2の計算部」を追加し、さらにこれを利用したガタ終了検出用のコンパレータも追加したものである。
^Tg2の計算部は実施形態5(図18)と同じ構成であるが、実施形態2(図14)で得られている成分「^ωg_ini,^Δωw」はそのまま取り出して使用している。また実施態様2と連動させるため、ラッチ(sh4,sh5)の動作タイミングは従来の信号S_BLを使用して同期させている。
監視用としてこの^Tg2によるガタ終了検出信号を得るために、ウィンドウコンパレータWinCmp2-F(For方向用)により到達信号S_Rst_For2を、同様にWinCmp2-R(Rev方向用)により到達信号S_Rst_Rev2を得る。そして、従来の推定法の^Tg1から検出した信号S_Rst_For1とこのS_Rst_For2との論理和部352にて論理和を取ったS_Rst_ForをFor方向のガタ状態信号生成ラッチsr1_Forのリセット端子に入力する。同様に、従来の推定法の^Tg1から検出した信号S_Rst_Rev1とS_Rst_Rev2との論理和部353にて論理和を取ったS_Rst_RevをRev方向のガタ状態信号生成ラッチsr1_Revのリセット端子に入力する。
これにより、ガタ到達の判定(ガタ状態のリセット信号)は二重化されることになる。さらに、WinCmp2-FとWinCmp2-Rに与える閾値として、従来の閾値(261pと261n)を拡大係数Kβだけ補正した値にする。
図19の態様では、ガタ開始時の値を保持するラッチを使用しているが、等価であれば挿入位置を変更することも可能である。例えば、加算器(342)はsh5とsh1の保持値の差分となっているが、先に(ωm_det-^ωd)の差分を演算してからラッチして^ω_iniを得ることもできる。ここで、相対速度^ωg1が、図15のTLIM_ASR(330)の^ωgの代りに入力される。
(実施形態6の動作例)
従来のガタ位相の推定には、制御出力トルクTmを使用していたためトルク制御誤差の影響を受けやすく、特にガタ時間が長くなると推定誤差は大きくなる。また、ガタ位相が停滞つまりガタ終了が検出できずガタ期間が永遠に続く危険性もある。
従来のガタ位相の推定には、制御出力トルクTmを使用していたためトルク制御誤差の影響を受けやすく、特にガタ時間が長くなると推定誤差は大きくなる。また、ガタ位相が停滞つまりガタ終了が検出できずガタ期間が永遠に続く危険性もある。
これに対して、位相検出と速度検出を利用する方法では、制御出力トルクTmを使用していないのでトルク制御誤差の影響を受けない。これを利用して、2種類のガタ位相の終了検出にて多重化することにより、どちらかが誤差によって検出遅れが生じても、異常が継続することなくガタ終了が可能となり信頼性が向上する。
両推定法のウィンドウコンパレータの閾値を等しくしておくと、常に「早い方の検出信号」が利用されるので、全体的にはガタ時間が短くなる。そこで、一方の閾値を少し大きな値(広い位相幅)に設定することにより、通常は精度が良い位相検出による推定法の方だけ動作させ、もう一方は異常時だけ保護機能として作用させる。図19は、^Tg2を利用したコンパレータ(Wincmp2_F,WinCmp2_R)の方を拡大(Kβ倍)する例を示しており、通常は^Tg1を入力とするコンパレータ(Wincmp1-F,Wincmp1-R)の検出信号(S_Rst_For1,S_Rst_Rev1)が動作しているが、トルク制御誤差により勾配路などの影響により到達検出が遅れてしまったときには、^Tg2を利用したコンパレータ(Wincmp2_F,WinCmp2_R)の検出信号(S_Rst_For2,S_Rst_Rev2)が保護機能として作用して、ガタ状態検出を強制リセットさせる。つまり、従来法に対して異常監視機能を追加した効果が得られる。
(実施形態6の効果)
ガタ位相の推定やガタ終了検出を、制御出力トルクTmを利用した推定方法と、モータの位相検出や速度検出を利用した推定方法との2種類とも実装して二重化する。実施形態6では、それぞれの誤差特性が異なることを利用して、これらを組み合わせて異常監視・保護機能として応用する。
ガタ位相の推定やガタ終了検出を、制御出力トルクTmを利用した推定方法と、モータの位相検出や速度検出を利用した推定方法との2種類とも実装して二重化する。実施形態6では、それぞれの誤差特性が異なることを利用して、これらを組み合わせて異常監視・保護機能として応用する。
保護監視機能として作用させる場合には、特性の良い推定方法を第一の推定方法として制御系を組んでおき、第二の推定方法のガタ終了検出レベルを広く設定しておく。こうすれば、第一の推定方法の誤差が大きくなった時だけ、第二の推定法が作用するので異常保護として機能するようになる。
これにより、第一の推定方法にガタ期間が長期化するという異常が生じても、第二の推定方法がガタ終了を検出して強制的にガタ制御を終了させることができ、システムの信頼性が向上する。
[実施形態7]2種類のガタ位相推定情報の混合法(誤差特性を考慮した重み付き加算)
実施形態7は、実施形態5で提案したモータの位相・速度検出を利用したガタ位相の推定法を利用して、推定ガタ位相の精度向上を図る。2種類の推定方式には、運転領域(速度やトルク)により、異なる精度特性を有していることを前提として、2種類のうち優れた情報の方の重みを増やして合成することにより推定精度を改善する。
実施形態7は、実施形態5で提案したモータの位相・速度検出を利用したガタ位相の推定法を利用して、推定ガタ位相の精度向上を図る。2種類の推定方式には、運転領域(速度やトルク)により、異なる精度特性を有していることを前提として、2種類のうち優れた情報の方の重みを増やして合成することにより推定精度を改善する。
実施形態7の構成例を図20に示す。
実施形態2で計算する推定方式により^Tg1成分を求め、実施形態5の推定方式により^Tg2成分を求めて、2種類のガタトルク(ガタ位相の換算値)を推定しておく。
これとは別に、速度検出ωm_detと制御出力トルク指令Tref(またはTmなど)を二次元テーブルKγ-Tableに入力して、重み係数Kγを出力させる。ここで、Kγの範囲は「0~1」である。
そして、^Tg1にはKγを乗算部354にて乗算し、^Tg2には(1-Kγ)を乗算部363にて乗算し、これらの出力値を加算することにより合成して推定位相^Tgを得て、これをガタ終了タイミングの検出に利用するようにした。
実施形態3や実施形態4も追加して適用するためには推定ガタ速度^ωgが必要になるが、これも同じ重みを使用する。逐次更新される入力ωm_detからsh5でサンプルした^ωm0を減算部361にて減算してガタ期間中の変化量を求め、これからさらに^Δωwを加算部362にて加算してモータ位相・速度検出を利用した推定ガタ速度の変化成分^ωg2を求めておき、従来の推定変化速度^ωg1にはKγを乗算部357にて乗算し、^ωg2には(1-Kγ)を乗算部356にて乗算してから加算合成したものを^ωg成分として使用する。この^ωg成分は、図15に示すTLIM_ASR(330)に入力される。
(実施形態7の動作例)
特許文献5や実施形態2等のガタ位相推定方法はトルク制御誤差による影響を受けやすく、もう一方の実施形態5で示したガタ位相の推定方式は角速度検出値ωmの誤差の影響を受けやすい。このように影響する誤差要因が異なるので、「トルクと回転速度の二次元平面」を設定すると、それぞれ誤差成分のマップ(等高線)が描ける。そして、2種類の誤差の大小関係を利用して重み係数Kγを設定しておく。運転時には、各推定方式の結果である^Tg1と^Tg2に、この精度に応じた重み係数「Kγ(354,537)」と「(1-Kγ)(353,536)」を乗算して加算合成すると、精度の良い方の重みを増やすことができるので、これを使って二種類の合成推定値^Tgとすれば精度を改善することができる。これが実施例7の作用と効果である。
特許文献5や実施形態2等のガタ位相推定方法はトルク制御誤差による影響を受けやすく、もう一方の実施形態5で示したガタ位相の推定方式は角速度検出値ωmの誤差の影響を受けやすい。このように影響する誤差要因が異なるので、「トルクと回転速度の二次元平面」を設定すると、それぞれ誤差成分のマップ(等高線)が描ける。そして、2種類の誤差の大小関係を利用して重み係数Kγを設定しておく。運転時には、各推定方式の結果である^Tg1と^Tg2に、この精度に応じた重み係数「Kγ(354,537)」と「(1-Kγ)(353,536)」を乗算して加算合成すると、精度の良い方の重みを増やすことができるので、これを使って二種類の合成推定値^Tgとすれば精度を改善することができる。これが実施例7の作用と効果である。
図20では、二次元テーブルKγ-Tableの入力にωm_detとTrefを利用したが、各方式の誤差特性を表現できればよく、制御出力トルクTmなどで代用することもできる。また、安定化のためにテーブルの入力信号に低域通過フィルタ(LPF)を追加するなどの構成も挙げられる。
(実施形態7の効果)
ガタ位相の推定部を、制御出力トルクTmを利用した推定方法と、モータの位相検出や速度検出を利用した推定方法との2種類とも実装して二重化する。実施形態7では、それぞれの誤差特性が異なることを利用して、これらを組み合わせてお互いに補完させることによりガタ位相の推定誤差を抑制させる。
ガタ位相の推定部を、制御出力トルクTmを利用した推定方法と、モータの位相検出や速度検出を利用した推定方法との2種類とも実装して二重化する。実施形態7では、それぞれの誤差特性が異なることを利用して、これらを組み合わせてお互いに補完させることによりガタ位相の推定誤差を抑制させる。
2種類の方式の推定位相に重みを掛けて合成するものであり、その重みはあらかじめトルクや速度などの運転状態に応じた誤差特性に基づいて設定する。精度のよい方の重みを大きくして合成することにより、誤差が大きな領域をお互いに補完させることができ、運転領域全体において精度の底上げができるという効果が得られる。
6…振動抑制制御装置、60…プラントモデル(車両システム)、61…速度検出部、62…外乱トルクオブサーバ、63…振動抑制補償部
324p,324n、325p,325n…コンパレータ、327p、327n…論理積積、Set_For、Set_Rev…ラッチ、328…論理和部、210+230…除算及び微分部、240…時間積部、321…時間積分及び^Kd乗算部、322p…WinCmp_F、322n…WinCmp_R
329…積分
100,100a…入力処理ブロックTm_Gen、330、330a…TLIM_ASR、311、312、332、337…減算部、333…乗算部、KASR…比例ゲイン、334…最小関数min、335…減算部、336…最大関数max
329…積分部、340、342、345…減算部、341…乗算部
352、353…論理和部、354…乗算部
361…減算部、362…加算部、363…乗算部
sh4、sh5、sh6…ラッチ
324p,324n、325p,325n…コンパレータ、327p、327n…論理積積、Set_For、Set_Rev…ラッチ、328…論理和部、210+230…除算及び微分部、240…時間積部、321…時間積分及び^Kd乗算部、322p…WinCmp_F、322n…WinCmp_R
329…積分
100,100a…入力処理ブロックTm_Gen、330、330a…TLIM_ASR、311、312、332、337…減算部、333…乗算部、KASR…比例ゲイン、334…最小関数min、335…減算部、336…最大関数max
329…積分部、340、342、345…減算部、341…乗算部
352、353…論理和部、354…乗算部
361…減算部、362…加算部、363…乗算部
sh4、sh5、sh6…ラッチ
Claims (8)
- モータの駆動装置と当該モータの減速機を有する車両システムの振動抑制制御装置であって、
前記駆動装置の入力トルク指令に基づきモータトルクを出力する振動抑制補償部と、
前記モータトルクから前記モータのシャフト軸の伝達トルクを算出する外乱トルクオブザーバと、
前記モータトルクと前記伝達トルクとに基づき、車両システムの振動抑制制御を実行する期間を推定する推定部と
を備え、
前記推定部は、
前記伝達トルクが負値から正値に変化する零クロスタイミングを示すFor方向のバックラッシュ開始タイミングと、当該伝達トルクの正値から負値への変化時を示すRev方向のバックラッシュ開始タイミングと、を生成し、
前記伝達トルクを前記シャフト軸のバネ定数で除算したものの時間微分により算出した推定軸ねじれ速度をバックラッシュ開始時刻でラッチして当該推定軸ねじれ速度の初期値とし、
前記モータトルクからモータ慣性モーメントの時間積分に基づき算出したモータ角速度の変動分と前記推定軸ねじれ速度の初期値との和を相対速度とみなし、この相対速度を時間積分して算出した推定バックラッシュ位相に前記バネ定数を乗算して推定バックラッシュトルクを生成し、
この推定バックラッシュトルクに基づき前記For方向のバックラッシュ終了タイミングと前記Rev方向のバックラッシュ終了タイミングとを生成し、
前記For方向並びに前記Rev方向のバックラッシュ開始タイミング並びにバックラッシュ終了タイミングに基づき前記振動抑制制御を実行する期間を定めること
を特徴とする車両システムの振動抑制制御装置。 - 前記推定部は、
前記外乱トルクオブザーバの推定外乱トルクから前記車両システムのタイヤ及び車体の合成慣性モーメントの積分に基づき当該タイヤの角速度の変動分を算出し、
この角速度の変動分と前記モータ角速度の変動分と前記推定軸ねじれ速度の初期値との合成値を相対速度とみなし、この相対速度を時間積分して算出した推定バックラッシュ位相に前記バネ定数を乗算して前記推定バックラッシュトルクを生成すること
を特徴とする請求項1に記載の車両システムの振動抑制制御装置。 - 前記入力トルク指令に変換ゲインを乗算して目標相対速度を設定し、
前記相対速度から前記目標相対速度を減算した超過量に比例ゲインを乗算することで前記入力トルク指令を制限するトルク補正成分を生成し、
前記入力トルク指令の基準上限値または当該入力トルク指令のいずれかのうち小さな値から前記トルク補正成分の正成分の値を減算することで当該入力トルク指令のトルク上限値を補正し、
前記入力トルク指令の基準下限値または当該入力トルク指令のいずれかのうち大きな値から前記トルク補正成分の負成分の値を減算することで当該入力トルク指令のトルク下限値を補正するトルク制限部をさらに備えたこと
を特徴とする請求項1または2に記載の車両システムの振動抑制制御装置。 - 前記目標相対速度は、上下限値が設定されたこと
を特徴とする請求項3に記載の車両システムの振動抑制制御装置。 - 前記推定部は、
モータ回転位相θm_detとこれをバックラッシュ開始時にラッチした当該モータ回転位相θm_detの初期位相θm0との差分より算出した当該モータ回転位相θm_detの変動分(θm-θm0)にバネ定数^Kdを乗算して換算トルク^Tdm2に変換し、
モータ角速度ωm_detをバックラッシュ開始時にラッチした初期モータ角速度ωm0から、前記伝達トルク^Tdを前記バネ定数^Kdで除算及び時間微分して算出された値をバックラッシュ開始時にラッチした推定ガタ速度の初期値^ωg_iniを減算して、初期タイヤ角速度^ωw_iniを算出し、
前記外乱トルクオブザーバの外乱トルク^Tobsをバックラッシュ開始時でラッチした当該外乱トルク^Tobsの初期値^Tob_iniに前記車両システムのタイヤと車体の合成慣性モーメントの積分を適用してタイヤ角速度の変動分^Δωwを算出し、
前記初期タイヤ角速度^ωw_iniから前記変動分^Δωwを減算してタイヤ角速度推定^ωw2とし、さらに時間積分とバネ定数^Kdの乗算を適用してタイヤ回転位相の変動分の換算トルク^Tdw2を算出し、
前記モータ回転位相θm_detに基づく換算トルク^Tdm2から前記タイヤ回転位相の変動分の換算トルク^Tdw2を減算して前記推定バックラッシュ位相のトルク換算値^Tg2を算出し、
この推定バックラッシュ位相のトルク換算値^Tg2に基づき、前記For方向のバックラッシュ終了タイミングと前記Rev方向のバックラッシュ終了タイミングとを生成すること
を特徴とする請求項3または4に記載の車両システムの振動抑制制御装置。 - 前記推定部は、
前記伝達トルク^Tdをシャフトのバネ定数Kdで除算したものを時間微分して推定軸ねじれ速度^ωdとし、
これをバックラッシュ開始時刻でラッチして初期値^ωg_iniとし、モータトルクTmにモータ慣性モーメントJmの時間積分を適用したものをモータ角速度の変動分^Δωmとし、
前記外乱トルクオブザーバの外乱トルク^Tobsはバックラッシュ開始時でラッチして^Tob_iniとし、これにタイヤと車体の合成慣性モーメントの積分を適用してタイヤ角速度の変動分^Δωwを算出し、
前記初期値^ωg_iniと前記モータ角速度の変動分^Δωmと前記タイヤ角速度の変動分^Δωwの和を相対速度^ωg1とみなし、
これを時間積分して算出した推定バックラッシュ位相^θgにバネ定数Kdを乗算して推定バックラッシュトルク^Tg1を算出し、
モータ回転位相θm_detから、バックラッシュ開始時の初期位相θm0をラッチし、バックラッシュ中のモータ回転位相の変動分(θm-θm0)を算出し、さらに、バネ定数^Kdを乗算してガタ位相に比例したトルク^Tdm2に変換し、
モータ角速度ωm_detから、バックラッシュ開始時の速度ωm0をラッチして、これから前記相対速度の初期値^ωg_iniを減算して、初期タイヤ角速度^ωw_iniを算出し、
前記初期タイヤ角速度^ωw_iniから前記タイヤ角速度の変動分^Δωwを減算して推定タイヤ角速度^ωw2を算出し、この推定タイヤ角速度^ωw2を時間成分とバネ定数^Kdの乗算を適用してタイヤ位相の変動分に比例したトルク^Tdw2を算出し、
前記モータ回転位相θm_detに基づくトルク^Tdm2から前記推定タイヤ角速度^ωw2に基づくトルク^Tdw2を減算して推定バックラッシュ位相のトルク換算値^Tg2を算出し、
前記推定バックラッシュトルク^Tg1に基づき、信号S_Rst_For1および信号S_Rst_Rev1を生成し、
前記推定バックラッシュ位相のトルク換算値^Tg2に基づき、信号S_Rst_For2および信号S_Rst_Rev2を生成し、
信号S_Rst_For1と信号S_Rst_For2の論理和(OR)によりFor方向のバック終了タイミングの信号S_Rst_Forを生成し、
信号S_Rst_Rev1と信号S_Rst_Rev2の論理和(OR)によりRev方向のバックラッシュ終了タイミングの信号S_Rst_Forを生成すること
を特徴とする請求項3または4に記載の車両システムの振動抑制制御装置。 - 前記モータ角速度ωm_detと入力トルク指令Trefに基づく重み係数Kγを出力する二次元テーブルKγ-Tableをさらに備え、
前記推定バックラッシュトルク^Tg1は、重み係数Kγにより重み付けされ、
前記トルク換算値^Tg2は、(1-重み係数Kγ)により重み付けされること
を特徴とする請求項6に記載の車両システムの振動抑制制御装置。 - 請求項1から7のいずれか1項に記載の車両システムの振動抑制制御装置を実行することを特徴とする車両システムの振動抑制制御方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2022042933A JP2023136976A (ja) | 2022-03-17 | 2022-03-17 | 車両システムの振動抑制制御装置及び振動抑制制御方法 |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2022042933A JP2023136976A (ja) | 2022-03-17 | 2022-03-17 | 車両システムの振動抑制制御装置及び振動抑制制御方法 |
Publications (1)
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JP2023136976A true JP2023136976A (ja) | 2023-09-29 |
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ID=88146306
Family Applications (1)
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JP2022042933A Pending JP2023136976A (ja) | 2022-03-17 | 2022-03-17 | 車両システムの振動抑制制御装置及び振動抑制制御方法 |
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-
2022
- 2022-03-17 JP JP2022042933A patent/JP2023136976A/ja active Pending
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