JP2023136326A - スパンボンド不織布、及びそれを用いた接着芯地 - Google Patents

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Yasushi Yamada
慎一 峯村
Shinichi Minemura
博明 西村
Hiroaki Nishimura
公夫 川戸
Kimio Kawato
伸一郎 稲富
Shinichiro Inatomi
英夫 吉田
Hideo Yoshida
勝二 小田
Katsuji Oda
勇祐 浦谷
Yusuke Uratani
卓也 藤田
Takuya Fujita
正好 岩根
Masayoshi Iwane
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Abstract

【課題】伸張性に優れ、ニット生地が本来有する伸張性を損ねることない接着芯地に適したスパンボンド不織布を提供する。【解決手段】本発明のスパンボンド不織布は、ポリエチレンテレフタレートと共重合ポリエステルとを含む2成分複合紡糸の長繊維を含んで構成されており、MD方向及びCD方向ともに10%伸長時応力が3.0N/2.5cm幅以下である。【選択図】なし

Description

本発明は、接着芯地用途に適したスパンボンド不織布に関し、特に、ニット生地の動きに追従できる伸長性に優れた前記スパンボンド不織布を用いた接着芯地に関する。
紳士服等に用いられている編み物生地と異なり、ニット生地に対して接着芯地を接着し、ニット生地の保形性を高めたいという要望がある。このような要望に対して、従来の接着芯地を使用すると、ニット生地が本来する風合いや伸張性を損ねてしまうという問題があった。
特許文献1には、伸張性に優れる接着芯地が記載されている。また、特許文献2には、水流交絡不織布からなる基布に接着樹脂が接着されたニット生地用接着芯地が記載されている。
特願平10-8311号公報 特開2012-52267号公報
しかしながら、特許文献1の芯地はある程度伸張性に優れるものであるが、ニット生地が本来有する伸張性を損ねるものである。特許文献2の芯地は、水流交絡不織布であるため、生産性が低く、コストが高いという欠点があるものである。
そこで、本発明は、上記課題に鑑みなされ、その目的は、伸張性に優れ、ニット生地が本来有する伸張性を損ねることない接着芯地に適したスパンボンド不織布、およびそれを用いた接着芯地を提供することである。
本発明者らは、伸張性に優れ、ニット生地の伸張性を損ねることのない接着芯地に適したスパンボンド不織布について、鋭意研究を行った。その結果、新規な製造方法を採用することにより、ニット生地の本来有する伸張性を損ねることない伸張性を有するスパンボンド不織布の新規な製造方法を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下を提供する。
(1)ポリエチレンテレフタレートと共重合ポリエステルとを含む2成分複合紡糸の長繊維を含んで構成されており、MD方向及びCD方向ともに10%伸長時応力が3.0N/2.5cm幅以下であることを特徴とするスパンボンド不織布。
(2)前記(1)の構成において、前記スパンボンド不織布は、MD方向及びCD方向ともに20%伸長時応力が7.5N/2.5cm幅以下であることが好ましい。
(3)前記(1)又は(2)の構成において、MD方向及びCD方向の伸度がそれぞれ80%以上であることが好ましい。
(4)前記(1)~(3)の構成において、前記長繊維は、捲縮糸であることが好ましい。
(5)前記(1)~(4)の構成において、前記長繊維は、芯鞘構造であることが好ましい。
(6)前記(5)の構成において、前記芯鞘構造は、芯成分の中央が2%以上偏心されていることが好ましい。
(7)前記(1)~(4)の構成において、前記長繊維は、サイドバイサイド構造であることが好ましい。
(8)前記(1)~(7)の構成においては、機械的交絡処理が施されていないことが好ましい。
(9)前記(1)~(8)の構成において、前記共重合ポリエステルは、ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、グリコール成分がエチレングリコール50~85モル%及びネオペンチルグリコール15~50モル%であることが好ましい。
また、前記(1)~(9)のスパンボンド不織布を用いた接着芯地も本発明の範囲に含まれる。本発明の接着芯地は、ニット生地が本来有する伸張性を損ねることのないものとすることができる。
本発明によれば、伸張性に優れ、ニット生地が本来有する伸張性を損ねることない接着芯地に適したスパンボンド不織布、およびそれを用いた接着芯地を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について説明する。
[スパンボンド不織布]
本実施形態に係るスパンボンド不織布は、ポリエチレンテレフタレートと共重合ポリエステルとを含む2成分複合紡糸の長繊維を含んで構成されている。
前記スパンボンド不織布を構成する前記長繊維は、ポリエチレンテレフタレートと共重合ポリエステルとを含む2成分複合紡糸で構成される。
本明細書において、長繊維とは、紡糸時の繊維の長さがエンドレスであるもの(無端連続繊維)をいう。ただし、最終的に得られたスパンボンド不織布が所定長さに切断されたものである場合、長繊維の長さは、前記スパンボンド不織布の長さと同一となる。一方、短繊維とは、不織布中に含まれる繊維の長さが不織布の長さ未満のものをいう。つまり、スパンボンド不織布とは、不織布の長さと同一の長さの繊維(長繊維)で構成された不織布であり、短繊維不織布とは、前記短繊維不織布の長さ未満の繊維(短繊維)で構成された不織布をいう。
前記長繊維がポリエチレンテレフタレートを含むため、ポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂を用いる場合と比較して機械的強度、耐熱性、保型性等に優れる。前記長繊維における前記ポリエチレンテレフタレートの含有割合は、好ましくは20質量%以上80質量%以下、より好ましくは30質量%以上70質量%以下、さらに好ましくは40質量%以上60質量%以下である。前記ポリエチレンテレフタレートの含有割合が前記数値範囲内であると、機械的強度、耐熱性、保型性等により優れる。なお、ポリエチレンテレフタレートは、示差走査型熱量計(DSC)による測定において、結晶化に由来する発熱ピーク、及び/又は、結晶融解に由来する吸熱ピークを示すポリエステルである。
前記非晶性ポリエステルは、示差走査熱量計(DSC)による測定において、明確な結晶化発熱ピーク及び結晶融解ピークを持たない樹脂である。また、前記非晶性ポリエステルは、ガラス転移温度(Tg)が50℃以上である。前記ガラス転移温度(Tg)は、DSCにより昇温速度20℃/minで昇温時の潜熱の転移点から求めた値である。前記非晶性ポリエステルとして、ガラス転移温度(Tg)50℃以上のものを採用することにより、耐熱性が良好となる。すなわち、前記長繊維不織布においては、耐熱性と耐衝撃性とを向上させるために、非晶性でありながらTgの高い前記共重合ポリエステルを採用している。
また、前記共重合ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(ホモポリマー)と比較して結晶性が低下している。前記スパンボンド不織布(前記長繊維)は、ポリエチレンテレフタレートと共重合ポリエステルとを含む2成分複合紡糸であるため、熱処理された際に、結晶性の差に起因して収縮量に差が生じ、捲縮が発現する。
前記共重合ポリエステルの共重合成分としては、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸、2,6ナフタリンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸;ヘキサヒドロテレフタル酸等の脂環族ジカルボン酸が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール等の脂肪族グリコール;ビスフェノール、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4-(ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等の芳香族グリコールが挙げられる。これらは、1種又は2種以上を用いることができる。前記共重合成分は、前記共重合ポリエステルのTgが50℃以上を保持できる範囲で選択されることが好ましい。
前記共重合ポリエステルは、なかでも、以下の(a)~(d)が好ましく、(a)がより好ましい。
(a)ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、グリコール成分がエチレングリコール50~85モル%及びネオペンチルグリコール15~50モル%である共重合ポリエステル。
(b)ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、グリコール成分がエチレングリコール50~85モル%及び1,4-シクロヘキサンジメタノール15~50モルdである共重合ポリエステル。
(c)ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、グリコール成分が1,4ブタンジオール50~85モル%及びネオペンチルグリコール15~50モル%である共重合ポリエステル。
(d)ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、グリコール成分が1,4ブタンジオール50~85モル%及び1,4-シクロヘキサンジメタノール15~50モル%である共重合ポリエステル。
前記(a)、前記(b)の場合、エチレングリコールの含有量は、50~85モル%がより好ましく、65~75モル%がさらに好ましい。
前記(c)、前記(d)の場合、1,4ブタンジオールの含有量は、50~85モル%がより好ましく、65~75モル%がさらに好ましい。
前記(a)、前記(c)の場合、ネオペンチルグリコールの含有量は、15~50モル%がより好ましく、25~35モル%がさらに好ましい。
前記(b)、前記(d)の場合、1,4-シクロヘキサンジメタノールの含有量は、15~50モル%がより好ましく、25~35モル%がさらに好ましい。
前記(a)~前記(d)の共重合ポリエステルは、結晶性が適度に低下し、スパンボンド不織布に好適な捲縮を発現させることができる。また、熱安定性等の特性が好適である。
前記長繊維における前記共重合ポリエステルの含有割合は、好ましくは20質量%以上80質量%以下、より好ましくは30質量%以上70質量%以下、さらに好ましくは40質%以上60質量%以下である。前記共重合ポリエステルの含有割合が前記数値範囲内であると、好適に捲縮を発現させることができる。
前記共重合ポリエステルを製造するための共重合方法としては、特に限定されず、従来知の方法を採用することができる。
前記長繊維は、芯鞘構造であることが好ましい。前記長繊維が芯鞘構造であると、製造時に、好適に捲縮加工を施すことが可能となる。
前記芯鞘構造は、繊維断面が偏心されていることが好ましい。具体的には、芯成分の中央が2%以上偏心されていることが好ましく、3%以上偏心されていることがより好ましい。すなわち、実施例に記載の方法にて測定される偏心率が2%以上であることが好ましく、3%以上であることがより好ましい。前記芯成分の中央の偏心は、大きいほど好ましいが、例えば、80%以下、60%以下等とすることができる。
前記芯鞘構造は、好適な捲縮が得られる観点から、鞘側が共重合ポリエステルであり、芯側がポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。
前記長繊維は、共重合ポリエステルとポリエチレンテレフタレートとが貼り合わせられたサイドバイサイド構造であることも好ましい。前記長繊維がサイドバイサイド構造であると、製造時に、好適に捲縮加工を施すことが可能となる。
前記長繊維の繊維径は、好ましくは5~60μm、より好ましくは10μm~50μm、さらに好ましくは12μm~40μmである。前記繊維径が5μm以上であると、スパンボンド法での可紡性がより良好となり、安定した製造が可能となる。また、前記繊維径が60μm以下であると、不織布の斑が悪くなりにくく、優れた外観品位を得ることができる。
前記スパンボンド不織布は、機械的交絡処理が施されていないことが好ましい。機械的交絡処理としては、例えば、ニードルパンチ法やウォーターパンチ法による交絡処理等が挙げられる。前記機械的交絡処理が施されていない場合、安価に製造できる点で好ましい。また、ニードルパンチ法を採用した場合に生じ得るニードル針の混入といったリスクを回避することができる点で好ましい。また、ウォーターパンチ法は、大量の水を使用し、且つ、莫大なエネルギーを必要とする。そのため、環境保存の観点、及び、省エネルギーの観点から、前記機械的交絡処理が施されていないことが好ましい。
前記スパンボンド不織布は、MD方向及びCD方向ともに10%伸長時応力が3.0N/2.5cm幅以下であり、好ましくは2.5N/2.5cm幅以下、より好ましくは2.0N/2.5cm幅以下である。MD方向及びCD方向ともに10%伸長時応力が3.0N/2.5cm幅を超えると、スパンボンド不織布をニット生地の芯地として使用する際、ニット生地の伸長を阻害する。
前記スパンボンド不織布は、好ましくはMD方向及びCD方向ともに20%伸長時応力が7.5N/2.5cm幅以下であり、より好ましくは6.5N/2.5cm幅以下であり、さらに好ましくは5.0N/2.5cm幅以下である。MD方向及びCD方向ともに20%伸長時応力が7.5N/2.5cm幅を超えると、スパンボンド不織布をニット生地の芯地として使用する際、ニット生地の伸長を阻害する。
前記スパンボンド不織布は、好ましくはMD方向及びCD方向ともに伸度が80%以上であり、より好ましくは90%以上であり、さらに好ましくは100%以上である。MD方向及びCD方向ともに伸度が80%未満であると、スパンボンド不織布をニット生地の芯地として使用する際、ニット生地の伸長を阻害する。
以上、本実施形態に係るスパンボンド不織布について説明した。次に、本実施形態に係るスパンボンド不織布の製造方法について説明する。
[スパンボンド不織布の製造方法]
本実施形態に係るスパンボンド不織布の製造方法は、溶融させたポリエチレンテレフタレートと共重合ポリエステルとを紡糸口金から吐出して、冷却固化させたのち、エジェクタにて牽引、延伸して2成分複合紡糸の長繊維を形成する工程Aと、前記工程Aで得られた前記長繊維を捕集して長繊維ウェブを形成する工程Bと、前記長繊維ウェブを仮圧着する工程Cと、仮圧着された前記長繊維ウェブに捲縮加工を施す工程Dとを備える。
<工程A>
本実施形態に係るスパンボンド不織布の製造方法においては、まず、溶融させたポリエチレンテレフタレートと共重合ポリエステルとを紡糸口金から吐出して、冷却固化させたのち、エジェクタにて牽引、延伸して2成分複合紡糸の長繊維を形成する。
この工程Aは、従来公知の2成分スパンボンド紡糸機を用いて実施することができる。つまり、前記長繊維は、繊維を作る工程(紡糸工程)からそのまま不織布を製造する紡糸直結タイプの製造方法であるスパンボンド法にて製造することができる。
前記ポリエチレンテレフタレート、前記共重合ポリエステルとしては、上記のスパンボンド不織布の項で説明したもの採用することができる。
前記工程Aでは、紡糸速度を3500m/分以上で紡糸することが好ましい。つまり、溶融させたポリエチレンテレフタレートと共重合ポリエステルとを紡糸口金から吐出して、冷却固化させたのち、エジェクタにて紡糸速度3500m/分以上で牽引、延伸して2成分複合紡糸の長繊維を形成することが好ましい。前記紡糸速度を3500m/分以上とすることにより、ポリエステルテレフタレートの配向結晶化度が高くなる。前記紡糸速度を3500m/分以上にすると、共重合ポリエステルも配向は進む。しかしながら、共重合ポリエステルは、結晶性が低いことから、その後に実施する捲縮加工工程(工程Dにおける加熱工程)において、共重合ポリエステル側の成分の収縮が起こることになり、捲縮が好適に発現する。前記紡糸速度は、より好ましくは3800m/分以上、さらに好ましくは4200m/分以上である。また、前記紡糸速度は、可紡性の観点から、好ましくは5500m/分以下、より好ましくは5000m/分以下である。
本明細書において、前記紡糸速度は、下記式(1)で得られる値をいう。
V=(10000×Q)/T (1)
ここで、Vは紡糸速度(m/分)、Tは単繊維の繊度(dtex)、Qは単孔吐出量(g/分)である。
単孔吐出量Qは、2成分の合計で、好ましくは0.2~5g/分である。前記単孔吐出量Qを0.2~5g/分に制御することにより、紡糸速度Vを所望の範囲に制御し易くなる。より好ましくは0.3~4g/分より好ましくは0.5~3g/分である。なお、単繊維の繊度T(dtex)は、10000メートルの単繊維の質量をグラム単位で表した値である。
前記工程Aにおいては、前記紡糸口金として偏心芯鞘ノズルを使用し、芯成分としての前記ポリエチレンテレフタレートと、鞘成分としての前記共重合ポリエステルを、前記偏心芯鞘ノズルから吐出する工程A-1を含むことが好ましい。前記偏心芯鞘ノズルとしては、従来公知のものを採用することができる。前記紡糸口金として偏心芯鞘ノズルを使用し、芯成分としての前記ポリエチレンテレフタレートと、鞘成分としての前記共重合ポリエステルを、前記偏心芯鞘ノズルから吐出すると、後の捲縮加工工程(工程D)において、好適に捲縮加工を施すことが可能となる。
前記工程Aにおいては、前記紡糸口金としてサイドバイサイドノズルを使用し、前記ポリエチレンテレフタレートと前記共重合ポリエステルとを繊維長さ方向にサイドバイサイド型に貼り合わせるように前記サイドバイサイドノズルから吐出する工程A-2を含むことも好ましい。前記サイドバイサイドノズルとしては、従来公知のものを採用することができる。前記紡糸口金としてサイドバイサイドノズルを使用し、前記ポリエチレンテレフタレートと前記共重合ポリエステルとを繊維長さ方向にサイドバイサイド型に貼り合わせるように前記サイドバイサイドノズルから吐出すると、後の捲縮加工工程(工程D)好適に捲縮加工を施すことが可能となる。
前記工程Aにおいては、前記工程A-1、又は、前記工程A-2のいずれかを採用することが好ましい。
前記工程A-1、前記工程A-2のいずれを採用する場合であっても、オリフィス径0.1~0.5mmの紡糸口金より紡出し、エジェクタに1.5~4.0kg/cmの圧力(ジェット圧)で乾燥エアを供給し、延伸することが好ましい。前記紡糸口金のオリフィス径は、0.15~mmであることがより好ましく、0.18~0.45mmであることがさらに好ましい。前記ジェット圧は、2.0~4.0kg/cmがより好ましく、2.5~3.8kg/cmがさらに好ましい。オリフィス径を上記範囲内に制御することにより、所望の繊維径が得られ易くなる。また、乾燥エアの供給圧力(ジェット圧)を上記範囲内に制御することにより、紡糸速度を所望の範囲に制御し易くなるとともに、適度に乾燥させることができる。
<工程B>
次に、前記工程Aで得られた前記長繊維を捕集して長繊維ウェブを形成する(工程B)。例えば、下方のコンベア上へ前記長繊維を開繊させつつ捕集して、長繊維ウェブを形成すればよい。
<工程C>
次に、前記工程Bにより得られた前記長繊維ウェブを仮圧着する(工程C)。前記仮圧着は、前記長繊維ウェブが収縮しない温度範囲内において行う。これにより、好適に搬送することが可能となる。前記仮圧着時の温度としては、50℃~80℃が好ましく、より好ましくは、55℃~75℃、さらに好ましくは、60℃~70℃である。前記仮圧着は、フラットロールを用いることができる。仮圧着時の線圧としては、好ましくは1~10kg/cm、より好ましくは3~7kg/cmである。前記線圧を前記数値範囲内にすると、搬送による破断が生じず工程通過できる。
<工程D>
次に、仮圧着された前記長繊維ウェブに捲縮加工を施す(工程D)。捲縮加工を施された長繊維は、捲縮糸となる。本工程は長繊維ウェブに熱をかけることで実現することができ、特に限定はされないが、エアスルーなど熱風による処理、加熱ローラーに接触させることによる処理、熱水や蒸気による処理などが好ましく採用される。以下に捲縮加工方法について説明する。
加熱ローラーを使用する方法としては、温度変調および速度比率の変更可能な2本以上の加熱ローラーを用いて、前記長繊維ウェブに、速度比率を徐々に落としながら捲縮加工を施す。前記加熱ローラーは、捲縮が発現する温度又はそれ以上に設定することになり、収縮も発生することになるが、本実施形態では、速度比率を徐々に落としながら捲縮加工を施すため、捲縮に伴って収縮させた分、搬送の速度比率を下げるため、急激な収縮に起因した皺の発生等を抑制することができる。
前記加熱ローラーの本数は、2本以上が好ましく、4本以上がこのましい。複数の加熱ローラーを用い、徐々に速度比率を落としていくことにより、収縮量に応じて前記長繊維ウェブの面積を小さくすることができ、皺の発生等を抑制することができる。前記加熱ローラーの本数の上限は特に制限されないが、設備コストの観点から、例えば、12本以下、10本以下等とすればよい。
捲縮加工の際の加熱温度(前記加熱ローラーの温度)としては、60~150℃が好ましく、70~140℃がより好ましく、80~130℃がさらに好ましい。前記加熱温度が前記数値範囲内であると、好適に捲縮を発現させることができる。前記搬送速度は、捲縮加工時の前記長繊維ウェブの収縮量に応じて遅くすればよい。
捲縮加工の際、必要に応じてニップを行ってもよい。ニップは、一番温度の高い加熱ローラーでの捲縮加工時に行うことが好ましい。一番温度の高い加熱ローラーでの捲縮加工時にニップを行うと、密着を向上させることができる。
熱水処理による方法としては、前記長繊維ウェブを80℃以上の沸水に浸漬する工程となる。前記沸水の温度は、80℃以上であれば特に限定されないが、85℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましい。前記沸水の温度は、急激な収縮に起因した皺の発生を抑制する観点から、99℃以下が好ましく、97℃以下がより好ましい。前記沸水の温度が80℃以上であるため、長繊維に好適に捲縮加工を施すことができる。
前記沸水への浸漬時間としては、特に制限されないが、好ましくは2秒以上、より好ましくは3秒以上である。前記沸水への浸漬時間が5秒以上であれば、充分に捲縮加工を施すことができる。前記沸水への浸漬時間としては、生産性の観点から、例えば、20秒以下、10秒以下等とすることができる。
沸水に使用する水分は特に限定しないが、含浸速度を向上させるために親水性を付与する液体を混ぜてもよく、環境面を考慮し中性洗剤などを適量加えることができる。
前記長繊維ウェブを前記沸水に浸漬している間は、横方向に張力を加えないことが好ましい。横方向に張力を加えないことにより、見掛密度(嵩密度)をより高めることができる。
本実施形態に係るスパンボンド不織布の製造方法は、前記工程Dの後、前記長繊維ウェブを横方向に延伸する工程Eを有していてもよい。前記工程Dの後、前記長繊維ウェブを横方向に延伸すると、延伸倍率に応じた厚さのスパンボンド不織布が得られる。すなわち、横方向の延伸倍率により、得られるスパンボンド不織布の厚さを調節することができる。
前記工程Eにおける延伸方法としては、従来公知のテンターを用いた延伸が好ましい。前記工程Eにおける横方向の延伸倍率としては、2%以上が好ましく、5%以上がより好ましい。また、前記延伸倍率としては、20%以下が好ましく、15%以下がより好ましい。なお、本明細書において、横方向の延伸倍率とは、延伸前の横幅に対する延伸倍率をいう。すなわち、延伸後の横幅は、延伸前の横幅100%に対して延伸倍率を加えた幅となる。例えば、延伸倍率が10%である場合、延伸後の横幅は、延伸前の横幅に対して110%となる。
本実施形態に係るスパンボンド不織布の製造方法は、前記工程Eの後、前記長繊維ウェブにカレンダー加工を施す工程Eを備えていてもよい。前記工程Eの後、前記長繊維ウェブにカレンダー加工を施すと、カレンダー加工のロール間距離により、得られる長繊維不織布の厚さをより好適に調節することができる。また、厚みの均一化が図れる。
前記工程Fにおけるカレンダー加工のロール間距離は、0.1mm以上であることが好ましく、より好ましくは0.2mm以上である。前記工程Eにおけるカレンダー加工のロール間距離が0.1mm以上であると、繊維の過剰圧着に伴う伸縮機能低下や初期引張応力向上を抑えられる。前記ロール間距離は、得られる長繊維不織布の厚さを好適に調節する観点から、0.7mm以下が好ましく、より好ましくは0.5mm以下である。
前記工程Fにおけるカレンダー温度(ロールの温度)は、40℃以上であることが好ましく、より好ましくは50℃以上である。前記カレンダー温度を40℃以上とすることにより、スパンボンド不織布の厚さをさらに好適に調節することができる。また、厚みの均一化がより図れる。
以上、本実施形態に係るスパンボンド不織布の製造方法について説明した。
本実施形態に係るスパンボンド不織布を用いた接着芯地も本発明の範囲に含まれる。本発明の接着芯地は、ニット生地が本来有する伸張性を損ねることのないものとすることができる。
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
(固有粘度)
樹脂(ポリエチレンテレフタレート、又は、共重合ポリエステル)0.1gを秤量し、25mlのフェノール/テトラクロルエタン(60/40(重量比))の混合溶媒に溶解し、オストワルド粘度計を用いて30℃で3回測定し、その平均値を求めた。
(ガラス転移温度(Tg))
JIS K7122(1987)に従って、20℃/分の昇温速度で、共重合ポリエステルのガラス転移温度を求めた。
(目付)
JIS L1913(2000)5.2に従って、単位面積当たりの質量を測定した。
(厚さ、見掛密度(嵩密度))
JIS-L1913(2010)5.2に準拠して求められた上記目付及び厚さから1cm当りの重量に換算し、嵩密度とした。具体的には、厚さ測定器により0.5g/cmの端子を用いて厚さを計測し、目付を厚さで除することにより嵩密度を求めた。
(繊維径)
試料(仮圧着前の長繊維ウェブ)の任意の場所5点を選び、光学顕微鏡を用いて単繊維の径をn=20で測定し、平均値を求めた。
(繊度(dtex))
試料(仮圧着前の長繊維ウェブ)の任意の場所5点を選び、光学顕微鏡を用いて単繊維径をn=20で測定して、平均単繊維径を求めた。同じ場所5点の繊維を取り出し、密度勾配管を用いて繊維の比重をn=5で測定し、平均比重を求めた。ついで、平均単繊維径より求めた単繊維断面積と平均比重から10000mあたりの繊維重量である繊度[dtex]を求めた。
(偏心率)
0.5~2mmの孔の開いた金属板を準備した。また、不織布からなる繊維を切り出し、黒色の繊維で包埋した。前記金属板の前記孔に、黒色の繊維で包埋した不織布からなる繊維を詰め込み、両端を剃刀でカットした。距離が計測できるソフトが導入されているコンピューターに接続された光学顕微鏡で、鞘側の外円の半径(R)を計測した。芯側の中心部と鞘側中心部の距離を計測し、これを偏心距離(L)とした。次に、偏心率(%)を、下記式にて求めた。
(偏心率)=(L/R)×100
(紡糸速度(m/分))
紡糸速度V(m/分)は、上記繊度T(dtex)と設定の単孔吐出量Q(g/分)から下記式に基づいて求めた。
V=(10000×Q)/T
(伸長時応力及び伸度)
JIS L1913(2010)に準じて測定した。引張試験機は島津製オートグラフAGS-1kNを用い、幅50mm、縦方向の測定長さ200mmのサンプルを、掴み間隔100mm、引張速度200mm/minの引張条件で得られたn5の平均値を求めた。
(実施例1)
2成分スパンボンド紡糸設備で偏心度が0.1mmの芯鞘ノズルを使用し、ポリエチレンテレフタレート(固有粘度(iv値):0.63)と共重合ポリエステル(ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、グリコール成分がエチレングリコール70モル%及びネオペンチルグリコール30モル%である共重合体、固有粘度(iv値):0.75、Tg:75℃)を6.5:3.5の割合で紡出した。紡出は、オリフィス径0.36mmの紡糸口金より単孔吐出量1.0g/分にて行った。その後、さらに、エジェクタに3.5kg/cmの圧力(ジェット圧)で乾燥エアを供給し、1段階で延伸して、下方のコンベア上へ繊維を開繊させつつ捕集し、長繊維ウェブを得た。次に、得られた前記長繊維ウェブを仮圧着した。仮圧着の条件は、仮圧着ロール温度60℃、線圧5kg/cmとした。
以上により得られた長繊維ウェブの繊維径は14.5μm、紡糸速度は4500m/分、目付量25g/mであった。
次に、得られた長繊維ウェブを90℃の水に5秒浸漬した。なお、沸水への浸漬時は、横方向に張力を加えていない。
前記長繊維ウェブを沸水に浸漬した後、前記長繊維ウェブを横方向に延伸倍率5%延伸した。さらに、カレンダー温度(ロールの温度)60℃、及び、カレンダー加工のロール間距離0.2mmの条件でカレンダー加工を施し、110℃で乾燥させ、実施例1のスパンボンド不織布を得た。物性を表1に示す。
(比較例1)
スパンボンド紡糸設備を用い、固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレート(以下PETという)をノズルオリフィスがL/D=3.0のノズルを用い、紡糸温度295℃、単孔吐出量0.7g/分にて溶融紡糸し、紡糸速度5000m/分にて引取り、ネットコンベア上に堆積させ、繊度1.8dtexの長繊維ウェブを得た。次に圧着面積率22%のエンボスロールを使用し、エンボスロール表面温度を250℃、フラットロール表面温度を150℃、線圧30kN/mで圧着加工して、目付100g/mとなる比較例1のスパンボンド不織布を得た。物性を表1に示す。
実施例と比較例の物性は以下の表1の通りであった。
実施例1と比較例1を比べると、実施例1のスパンボンド不織布は、10%伸長時応力、20%伸長時応力ともに低く、伸張性に優れ、ニット生地の芯地として用いた場合、ニット生地が本来有する伸張性を損ねることないものであった。

Claims (10)

  1. ポリエチレンテレフタレートと共重合ポリエステルとを含む2成分複合紡糸の長繊維を含んで構成されており、MD方向及びCD方向ともに10%伸長時応力が3.0N/2.5cm幅以下であるスパンボンド不織布。
  2. MD方向及びCD方向ともに20%伸長時応力が7.5N/2.5cm幅以下である請求項1に記載のスパンボンド不織布。
  3. MD方向及びCD方向の伸度がそれぞれ80%以上である請求項1または2に記載のスパンボンド不織布。
  4. 長繊維が捲縮糸である請求項1~3のいずれか1に記載のスパンボンド不織布。
  5. 長繊維が芯鞘構造である請求項1~4にいずれか1に記載のスパンボンド不織布。
  6. 芯鞘構造が芯成分の中央が2%以上偏心されている請求項5に記載のスパンボンド不織布。
  7. 長繊維がサイドバイサイド構造である請求項1~3のいずれか1に記載のスパンボンド不織布。
  8. 機械的交絡処理が施されていない請求項1~7のいずれか1に記載のスパンボンド不織布。
  9. 前記共重合ポリエステルは、ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、グリコール成分がエチレングリコール50~85モル%及びネオペンチルグリコール15~50モル%である請求項1~8のいずれかに記載のスパンボンド不織布。
  10. 請求項1~9のいずれかに記載のスパンボンド不織布を用いた接着芯地。
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