JP2023135588A - 積層多孔質膜、電池用セパレータ、電池および積層多孔質膜の製造方法 - Google Patents

積層多孔質膜、電池用セパレータ、電池および積層多孔質膜の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の課題は、耐熱収縮性に優れ、かつ電解液注液性が良好で低抵抗である積層多孔質膜の提供である。【解決手段】ポリオレフィン多孔質膜と、前記ポリオレフィン多孔質膜の少なくとも片面に多孔層を有し、前記多孔層は、無機粒子と有機合成樹脂成分とを含み、前記多孔層表面の谷部の面積率が8.0%以上であり、前記多孔層表面を走査型電子顕微鏡(SEM)により測定される表面SEM観察画像から計測される前記無機粒子の長軸径0.2μm以上0.5μm未満の個数基準での頻度が30%以上、前記無機粒子の長軸径1.0μm以上の無機粒子の平均アスペクト比が1.5以上3.0以下である、積層多孔質膜。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリオレフィン多孔質膜の少なくとも片面に多孔層を有する積層多孔質膜、電池用セパレータ、電池および積層多孔質膜の製造方法に関するものである。
熱可塑性樹脂多孔質膜は、物質の分離や選択透過及び隔離材等として広く用いられている。例えば、リチウムイオン二次電池、ニッケル-水素電池、ニッケル-カドミウム電池、及びポリマー電池等に用いる電池用セパレータや、電気二重層コンデンサ用セパレータ、逆浸透濾過膜、限外濾過膜、及び精密濾過膜等の各種フィルター、透湿防水衣料、及び医療用材料等である。
特に、リチウムイオン二次電池用セパレータとしては、電解液含浸によりイオン透過性を有し、電気絶縁性、耐電解液性及び耐酸化性に優れ、電池異常昇温時に120~150℃程度の温度において電流を遮断し、過度の昇温を抑制する孔閉塞効果をも備えているポリオレフィン多孔質膜が好適に使用されている。
しかしながら、何らかの原因で孔閉塞後も昇温が続く場合、ポリオレフィン多孔質膜は
破膜を生じることがある。この現象はポリオレフィンを用いた場合に限定される現象では
なく、その多孔質膜を構成する樹脂の融点以上では避けることができない。
特にリチウムイオン二次電池用セパレータは、電池特性、電池生産性及び電池安全性に深く関わっており、優れた機械的特性、耐熱性、透過性、寸法安定性、孔閉塞特性(シャットダウン特性)、及び溶融破膜特性(メルトダウン特性)等が要求される。近年では特に車載用途などの大型リチウムイオン電池に使用される場合、安全性を増す為に150℃といったより高温下でも寸法安定性に優れることや電池の充電放電を繰り返した後も電池容量が維持されるために低抵抗である電池用セパレータが求められる。
さらに電池製造時の効率化の為に電解液が電極捲回体や電極積層体に素早く浸透していくこと、すなわち電解液注液性が電池大型化につれますます求められている。
その為に、これまでに多孔質膜にさまざまな改質多孔層を積層する検討がなされている。
特許文献1では、セパレータに硫酸バリウム粒子とポリ(メタ)アクリルアミドを含む塗工液をグラビア塗布、及び乾燥することで、130℃、1時間処理後の熱収縮率に優れ、低水分率であるセパレータが開示されている。
特許文献2は、セパレータに2種のアルミナ粒子とフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体を含む塗工液を、ディップコート法で塗布し、水に浸漬させ純水で洗浄し乾燥することで短絡耐性、耐電圧性、ピン抜け性に優れたセパレータが開示されている。
特許文献3は、セパレータに硫酸バリウム粒子と有機合成樹脂成分を含む塗工液をグラビア塗布、及び乾燥することで130℃、1時間処理後の熱収縮率に優れ、低水分率、低電気抵抗であるセパレータが開示されている。
しかしながら、150℃1時間処理での熱収縮率、すなわち耐熱収縮性に優れ、かつ電解液注液性が良好で、低抵抗であることを備えたセパレータではなかった。
特許第6337512号公報 特許第6939569号公報 国際公開第2021/181815号
本発明の課題は、耐熱収縮性に優れ、かつ電解液注液性が良好で低抵抗である積層多孔質膜の提供である。また、本発明では、電解液の溶媒として一般的に適用される炭酸プロピレンを電解液の代替として使用し、積層多孔質膜の多孔層表面に滴下した後の、濡れ広がり面積を測定することで、電解液の積層多孔質膜への浸透しやすさ、引いては電解液注液性を評価することができる。
本発明者らは、従来の技術を鑑み、鋭意検討し、ポリオレフィン多孔質膜と、前記ポリオレフィン多孔質膜の少なくとも片面に多孔層を有し、前記多孔層は、無機粒子と有機合成樹脂成分とを含み、前記多孔層表面の谷部の面積率が8.0%以上であり、前記多孔層表面を走査型電子顕微鏡(SEM)により測定される表面SEM観察画像から計測される前記無機粒子の長軸径0.2μm以上0.5μm未満の個数基準での頻度が30%以上、前記無機粒子の長軸径1.0μm以上の無機粒子の平均アスペクト比が1.5以上3.0以下である、積層多孔質膜により、本課題を解決することを見出した。
更に好ましい様態は、
(1)無機粒子が沈降性硫酸バリウムである。
(2)有機合成樹脂成分が、ポリアクリルアミド樹脂である
(3)無機粒子が芒硝法により製造される硫酸バリウムである
(4)積層多孔質膜を有する電池用セパレータである。
(5)電池用セパレータを有する電池である。
(6)体積基準積算率が50%のときの粒子径(D50)が1.1~1.3μmの硫酸バリウムと、D50が0.5~0.7μmの硫酸バリウムを質量比75/25~25/75の範囲で含む無機粒子を用いる積層多孔質膜の製造方法である。
本発明のポリオレフィン多孔質膜の少なくとも片面に多孔層を有する積層多孔質膜は、耐熱収縮性に優れ、かつ良好な電解液注液性、低抵抗であり、製造時の効率化や電池高性能化に寄与する。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実
施形態に限定されるものではない。
<ポリオレフィン多孔質膜>
本発明の実施形態におけるポリオレフィン多孔質膜の厚さは、積層多孔質膜の機能を有する限りにおいて特に制限されるものではないが、25μm以下が好ましい。より好ましくは3μm以上、20μm以下であり、さらに好ましくは5μm以上、16μm以下である。ポリオレフィン多孔質膜の厚さが25μm以下であると、実用的な膜強度と孔閉塞機能を両立させることができ、電池ケースの単位容積当たりの面積が制約されず、電池の高容量化に適する。
ポリオレフィン多孔質膜の透気抵抗度は30sec/100mlAir以上、300
sec/100mlAir以下が好ましい。より好ましくは40sec/100mlAir以上、250sec/100mlAir以下であり、さらに好ましくは50sec/100mlAir以上、150sec/100mlAir以下である。透気抵抗度が30sec/100cmlAir以上であると、十分な機械的強度と絶縁性が得られることで電池の充放電時に短絡が起こる可能性が低くなる。300sec/100mlAir以下であると、十分な電池の充放電特性、特にイオン透過性(充放電作動電圧)及び電池の寿命(電解液の保持量と密接に関係する)において十分であり、電池としての機能を十分に発揮することができる。
ポリオレフィン多孔質膜の空孔率は20%以上、70%以下が好ましい。より好ましくは30%以上、60%以下であり、さらに好ましくは55%以下である。空孔率が20%以上、70%以下であると、十分な電池の充放電特性、特にイオン透過性(充放電作動電圧)及び電池の寿命(電解液の保持量と密接に関係する)において十分であり、電池としての機能を十分に発揮することができ、十分な機械的強度と絶縁性が得られることで充放電時に短絡が起こる可能性が低くなる。
ポリオレフィン多孔質膜の平均孔径は、孔閉塞性能に大きく影響を与えるため、0.01μm以上、1.0μm以下が好ましい。より好ましくは0.02μm以上、0.5μm以下であり、さらに好ましくは0.03μm以上、0.3μm以下である。ポリオレフィン多孔質膜の平均孔径が0.01μm以上であると、多孔層を積層した際の有機合成成分による孔の目詰まりを抑制し、透気抵抗度および電気抵抗が好適となる。1.0μm以下であると、多孔層組成物による孔の目詰まりによる透気抵抗度および電気抵抗の悪化、および微短絡の発生による電池の安全性低下を抑制し、好適となる。
また、ポリオレフィン多孔質膜の平均孔径が0.01μm以上、1.0μm以下であると、組成物のアンカー効果により、ポリオレフィン多孔質膜に対する、十分な多孔層の密着強度が得られ、多孔層を積層した際に透気抵抗度及び電気抵抗が大幅に悪化せず、かつ、孔閉塞現象の温度に対する応答が緩慢になることもなく、昇温速度による孔閉塞温度がより高温側にシフトすることも少ない。本発明での平均孔径とはJIS K 3832:1990で規定されるバブルポイント法にて得た測定値である。
ポリオレフィン多孔質膜を構成するポリオレフィン樹脂は特に制限されるものではないが、ポリエチレンやポリプロピレンが好ましい。また、単一物又は2種以上の異なるポリオレフィン樹脂の混合物、例えばポリエチレンとポリプロピレンとの混合物であってもよいし、異なるオレフィンの共重合体であってもよい。電気絶縁性、及びイオン透過性等の基本特性に加え、電池異常昇温時において、電流を遮断し、過度の昇温を抑制する孔閉塞効果を具備しているからである。
中でもポリエチレンが優れた孔閉塞性能の観点から特に好ましい。以下、本発明に用いるポリオレフィン樹脂としてポリエチレンを例に詳述するが、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。
ポリエチレンとしては、例えば、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレン等が挙げられる。また重合触媒にも特に制限はなく、チーグラー・ナッタ系触媒やフィリップス系触媒やメタロセン系触媒等が挙げられる。これらのポリエチレンはエチレンの単独重合体のみならず、他のα-オレフィンを少量含有する共重合体であってもよい。エチレン以外のα-オレフィンとしてはプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸のエステル、スチレン等が好適である。ポリエチレンは単一物でもよいが、2種以上のポリエチレンからなる混合物であることが好ましい。ポリエチレン混合物としては重量平均分子量(Mw)の異なる2種類以上の超高分子量ポリエチレン同士の混合物、同様な高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレンの混合物を用いてもよいし、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレンからなる群から選ばれる2種以上ポリエチレンの混合物を用いてもよい。
本発明のポリオレフィン多孔質膜は、充放電反応の異常時に孔が閉塞する機能を有することが好ましい。従って、構成する樹脂の融点(軟化点)は70℃以上、150℃以下が好ましい。より好ましくは80℃以上、140℃以下、さらに好ましくは100℃以上、130℃以下である。構成する樹脂の融点が70℃以上、150℃以下であると、正常使用時に孔閉塞機能が発現して電池が使用不可になることがなく、また、異常反応時に孔閉塞機能が発現することで安全性を確保できる。
<多孔層>
本発明の多孔層は、前記ポリオレフィン多孔質膜の少なくとも片面に有するものであり、無機粒子と有機合成樹脂成分を含有する。片面のみに設ける場合、多孔層を形成する工程が少なく、生産コストを抑えることができ、両面に設ける場合、ポリオレフィン多孔質膜の熱による収縮を両面から抑制することで、より効果的に積層多孔質膜の熱による収縮を低減することができる。
本発明の積層多孔質膜の多孔層表面は、後述する測定方法により求められる谷部を所定の面積率で有していることが必要である。多孔層表面の谷部の面積率とは、実施例で後述するレーザー顕微鏡にて多孔層表面の形状解析を行った際の凹部が占める面積を表す。谷部が所定の割合で存在すると、電池製造工程においては電解液が注液される際、谷部に電解液が入り込むことで積層多孔質膜内部に浸透しやすくなり、炭酸プロピレン濡れ広がり面積が大きくなり、ひいては電池製造時の電解液注液性が向上する。また、電池抵抗については、定かではないが多孔質表面が電極版と接触する面積が低下しイオンが移動しやすくなることや、多孔層をイオンが通過する際、谷部分を介して移動できることで谷部分が少ない多孔層比短い経路でイオン移動できることから電気抵抗が低下するものと推定している。
多孔層表面の谷部の面積率は、8.0%以上である。谷部の面積率が8.0%以上であると、谷の形成量が十分となり電解液注液性や抵抗に対して好適となる。より好ましくは10.0%以上である。谷部の面積率の上限としては、30.0%以下であることが好ましく、20.0%以下であることがより好ましい。
<無機粒子>
本発明の多孔層中の無機粒子は、前記多孔層表面を走査型電子顕微鏡(SEM)により測定される表面SEM観察画像から計測される長軸径が1.0μm以上の無機粒子の平均アスペクト比が、1.5以上3.0以下であり、長軸径0.2μm以上0.5μm未満の個数基準での頻度が30%以上である。これらは、実施例にて後述する方法で算出する。
長軸径1.0μm以上の無機粒子の平均アスペクト比は、より好ましくは、1.5以上2.5以下である。長軸径1.0μm以上の無機粒子の平均アスペクト比が、1.5以上3.0以下であると、他の粒子と共に塗布された際、粒子が積み重なり、密に充填されることを阻害し多孔層表面を歪にして、谷を形成することができる。長軸径1.0μm以上の無機粒子の平均アスペクト比が1.5未満であると谷の形成が不十分であり、3.0を超えると、多孔層が歪になりすぎて、熱収縮しやすくなってしまう。
また、長軸径0.2μm以上0.5μm未満の無機粒子の個数基準での頻度は、40%以上であると好ましく、50%以上であることがより好ましい。また長軸径0.2μm以上0.5μm未満の無機粒子の個数基準での頻度は、80%以下であることが好ましく、70%以下であることがより好ましく、64%以下であることがさらに好ましい。長軸径0.2μm以上0.5μm未満の無機粒子の個数基準での頻度が30%以上であると、多孔層の無機粒子同士の接点が十分となり熱収縮率が低下し耐熱性が向上し好適である。30%未満であると、多孔層の無機粒子同士の接点が不十分となり熱収縮率が上昇し悪化する場合がある。
本発明における無機粒子は電気化学的に安定であれば特に材質を制限するものではない。具体的には、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化ストロンチウム、酸化バナジウム、SiO-MgO(ケイ酸マグネシウム)、SiO-CaO(ケイ酸カルシウム)、ハイドロタルサイト、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸ランタン、炭酸セリウム、塩基性チタン酸塩、塩基性ケイチタン酸塩、層状複水酸化物(Mg-Alタイプ、Mg-Feタイプ、Ni-Feタイプ、Li-Alタイプ)、層状複水酸化物-アルミナシリカゲル複合体、ベーマイト、アルミナ、ヘマタイト、酸化ビスマス、酸化スズ、酸化チタン、酸化ジルコニウム等の陰イオン吸着材、リン酸ジルコニウム、リン酸チタニウム、アパタイト、非塩基性チタン酸塩、ニオブ酸塩、ニオブ・チタン酸塩等の陽イオン吸着材、ゼオライト、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、石膏、硫酸バリウム、アルミナ三水和物(ATH)、ヒュームドシリカ、沈殿シリカ、ジルコニア、及びイットリア等の酸化物系セラミックス、窒化ケイ素、窒化チタン、及び窒化ホウ素等の窒化物系セラミックス、シリコンカーバイド、カオリナイト、タルク、ディカイト、ナクライト、ハロイサイト、パイロ無機粒子イト、モンモリロナイト、セリサイト、アメサイト、ベントナイト等の層状シリケート、アスベスト、ケイ藻土、ガラス繊維、合成層状シリケート、雲母から成る群から選択される。これらのうち、レーザー回折法で測定される体積基準積算率が50%のときの粒子径(D50)の異なる2種以上を併用することが本願の範囲に制御を精度よく行う観点から好ましい。
これらのなかでも特に硫酸バリウム、酸化アルミニウム、ベーマイト、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、硫酸ストロンチウム、酸化ストロンチウムが好ましく、より好ましくは硫酸バリウムである。
さらに硫酸バリウム粒子は、沈降性硫酸バリウム粒子が好ましい。沈降性硫酸バリウム粒子は、一般的な合成法で得られるものを用いることができる。さらに中でも塩化バリウムを出発物質とし、硫酸ナトリウム(芒硝)と反応させる芒硝法により合成される硫酸バリウム粒子を用いることが好ましい。この理由は硫酸バリウム粒子の検討過程で芒硝法により合成される硫酸バリウム粒子は硫化水素の発生が極めて少なく、腐食性ガスの発生を抑制できるためである。さらに芒硝法により合成される硫酸バリウム粒子はモース硬度が低いことや、アスペクト比の観点から、多孔層用塗工液の作製条件の調整等で本願の範囲の制御を精度よく行うことができ好ましい。特に、体積基準積算率が50%のときの粒子径(D50)が1.1~1.3μmの硫酸バリウムと、D50が0.5~0.7μmの硫酸バリウムを質量比75/25~25/75の範囲、さらに好ましくは60/40~25/75の範囲で含む無機粒子を原料として用いると、本発明の効果を特に良好に得ることができるため好ましい。
<有機合成樹脂成分>
本発明で用いる有機合成樹脂成分は、高分子骨格に、アミノ基、アミド基、カルボニル基、カルボキシル基、スルホニル基、リン酸基、水酸基、アルキル基およびハロゲン基からなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基を含んでいる。この事により多孔層を構成する無機粒子同士を結着させる効果、及び多孔層をポリオレフィン多孔質膜と密着させる効果(バインダー効果)を発現することができる。有機合成樹脂成分として、具体的には(メタ)アクリル酸共重合樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ(メタ)アラミド樹脂、ポリエチレングリコール樹脂、セルロースエーテル樹脂、の群より選ばれる1つ以上を使用することができ、中でも、セルロースエーテル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアクリルアミド樹脂が好ましく、セルロースエーテル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂がさらに好ましい。これらの水溶性高分子は、単独あるいは二種以上を混合して用いてもよい。例えば、市販されている水溶液を使用することができ、アクリル系樹脂として、具体的には、東亜合成株式会社製“ジュリマー”(登録商標)AT-210、ET-410、“アロン”(登録商標)A-104、AS-2000、NW-7060、荒川化学株式会社製“ポリストロン”(登録商標)117、705、1280、昭和電工株式会社製“コーガム”(登録商標)シリーズ、日本ゼオン株式会社製“BM”シリーズ等が挙げられる。ポリビニルアルコールとして、クラレ株式会社製“クラレポバール”(登録商標)3-98、3-88、三菱ケミカル株式会社製“ゴーセノール”(登録商標)N-300、GH-20等が挙げられる。セルロース系樹脂として、日本製紙株式会社製“サンローズ”(登録商標)MACシリーズ等が挙げられる。
<添加剤>
前記多孔層には、無機粒子の分散安定性を向上させる目的の分散剤や、塗工性を向上させる目的で増粘剤及び濡れ剤等、耐熱性を向上させる目的で熱硬化剤及び架橋剤等を適宜含んでもよい。
<多孔層の重量組成比>
本発明の実施形態における多孔層に含まれる無機粒子の含有量は、耐熱性多孔質層を形成する組成物の合計を100質量%として92質量%以上、99質量%以下である。より好ましくは93質量%以上、98質量%以下である。無機粒子の含有量が92質量%以上であると、透気抵抗度の上昇を抑制でき好適となる。
<多孔層の平均厚さ>
本発明の実施形態における多孔層の平均厚さは、1.0μm以上、5.0μm以下であることが好ましい。より好ましくは1.0μm以上、4.5μm以下であり、さらに好ましくは1.0μm以上、4.0μm以下であり、特に好ましくは1.0μm以上3.0μ以下である。多孔層の厚さが前述の範囲以上であると、多孔層表面の谷部の形成が十分にでき好適となる。多孔層の平均厚さが前述の範囲以下であると、電池セルの正極と負極の極間距離が大きくなるために、電池の体積に占める積層多孔質膜の割合が多くなり、電池の体積エネルギー密度が低くなることを抑制し、好適となる。
<多孔層、積層多孔質膜の形成方法>
本発明における多孔層、積層多孔質膜は以下の工程で得ることができる。
(a)無機粒子と有機合成樹脂成分、必要に応じて添加剤と分散媒を用いた多孔層用塗工液の作製。
(b)ポリオレフィン多孔質膜の少なくとも片面、又は両面に前記塗工液を塗工する工程。
(c)前記塗工後、分散媒をドライヤーで乾燥させ、多孔層を形成する工程。
前記工程(a)において、分散媒として水を用いることが好ましい。多孔層用塗工液の分散安定性を損なわない範囲であれば、分散媒として水にエタノール、イソプロパノール、N-メチルピロリドンなどの親水性の溶媒を混ぜたものを使用してもよい。無機粒子を分散する方法は、公知の方法を用いることができる。例えば、ボールミル、ビーズミル、遊星ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、コロイドミル、ロールミル、高速インペラー分散、ディスパーザー、ホモジナイザー、プラネタリーミキサーおよび遊星式混練機、超音波分散、撹拌羽根等による機械撹拌等が挙げられる。
2種の粒子を使用する場合は、分散前に粒子を混合してもよいがそれぞれの粒子種について無機粒子の割れ、及び欠けができるだけ発生しないマイルド分散で処理したのち、塗工液を作製しその後それら塗工液を混合する方が、無機粒子の割れ、及び欠けが抑制でききる。割れ、及び欠けにより生成された粒子が塗工時ポリオレフィン多孔質膜の孔をふさぐことで透気抵抗度が上昇し悪化してしまう場合がある為、好ましい。さらに割れ欠けによって生成された0.3μmより小さい粒子は、表面積が増加し炭酸プロピレン濡れ広がり面積が小さくなる、ひいては電解液注液性が悪化する場合がある。
ここで言うマイルド分散とは、凝集状態にある無機粒子を分散媒に分散させる工程において、粒子に過剰なエネルギーを与えることなく、無機粒子の一次粒子のサイズ、形状、結晶構造、表面状態などを維持したまま分散させた状態であり、具体的には、例えば、ビーズミル分散装置を用いる場合、ビーズ径が、より小さいビーズを使用したり、ビーズ比重がより小さいビーズを使用することでマイルド分散状態を得ることができる。また、ビーズミル分散装置のローターの周速を調節し、マイルド分散状態を得ることができる。
マイルド分散状態とするには、前記セラミック製ビーズのビーズ粒径は0.3mm以上、1.0mm以下が好ましい。より好ましくは0.4mm以上、0.8mm以下であり、さらに好ましくは0.5mm以上0.7mm以下である。
ビーズ粒径が0.3mm未満であると、セラミック製ビーズ1個あたりの質量が小さく、セラミック製ビーズ間に発生するずり応力が小さくなるため、無機粒子の凝集体を十分に解砕できず、塗工前の濾過時につまりが発生しやすくなったり、塗工時に塗布欠陥が発生したりする場合がある。
ビーズ粒径が1.0mmより大きいと、セラミック製ビーズ1個当たりの衝撃力が増えるため、すでに解砕された個々の無機粒子を、より細かいく粉砕してしまい、多孔層を形成する無機粒子同士の隙間に細かい粒子が入ることで、炭酸プロピレン濡れ広がり面積が不十分となる場合がある。
ここでセラミック製ビーズの材質は、アルミナ、ジルコニア、窒化ケイ素から選ばれる少なくとも1種類を使用できる。
ビーズミル分散装置のローターの周速によってマイルド分散状態とする方法は、特に限られるものでは無いが、分散させる無機粒子の体積基準積算率が50%のときの粒子径(D50)に応じて条件を調節する方法が挙げられる。この方法では、分散させる無機粒子の体積基準積算率が50%のときの粒子径(D50)が小さいほど、無機粒子の凝集力が強い為、分散させるためのセラミック製ビーズ間に発生させるずり応力を大きくさせる、すなわちローターの周速を増加させる必要がある。
無機粒子の体積基準積算率が50%のときの粒子径(D50)が0.75μm以下の場合、ローターの周速が8m/sec以上、12m/sec以下が好ましい。無機粒子の体積基準積算率が50%のときの粒子径(D50)が0.75μmを超える場合、ローターの周速が4m/sec以上、10m/sec以下が好ましく、さらに好ましくは5m/sec以上、8m/sec以下である。
ローターの周速が、好ましい範囲未満の場合、セラミック製ビーズ間に発生するずり応力が小さくなるため、無機粒子の凝集体を十分に解砕できず、塗工前の濾過時につまりが発生しやすくなったり、塗工時に塗布欠陥が発生したりする場合がある。
ローターの周速が、好ましい範囲を超える場合、セラミック製ビーズ間に発生するずり応力が大きくなりすぎて、無機粒子の割れ、及び欠けが発生し、これにより生成された0.3μmより小さい粒子によって多孔層の表面積が増加し炭酸プロピレン濡れ広がり面積が小さくなる、ひいては電解液注液性が悪化する場合がある。
無機粒子を分散させる方法の一例として、ビーズミル分散装置を用いた条件を上記したが、本発明はかかる例に限られるものでは無い。その他の分散装置、撹拌装置を用いた場合においても、分散条件、撹拌条件のずり応力を制御し、無機粒子の凝集体の解砕しつつ、無機粒子の割れ、及び欠けを抑制することで、本発明に好適な無機粒子を調製することが出来る。
前記工程(b)において、ポリオレフィン多孔質膜の少なくとも片面又は両面に多孔層用塗工液を塗工する方法は公知の方法を用いることができる。例えば、ダイレクトグラビアコート法、リバースグラビアコート法、キスリバースグラビアコート法、ダイレクトバーコート法、エアナイフコート法、マイヤーバーコート法、パイプドクター法、ブレードコート法及びダイコート法等が挙げられ、これらの方法は単独又は組み合わせて行うことができる。
<積層多孔質膜>
本発明の積層多孔質膜は、MD方向(長さ方向)とTD方向(幅方向)の熱収縮率は、それぞれ0%以上14.0%以下であることが好ましく、0%以上10.0%以下であることがより好ましく、0%以上7.5%以下であることがさらに好ましい。熱収縮率を前記範囲とすると電池の異常発熱時に積層多孔質膜の端部が収縮し正極と負極が短絡することを抑制しやすくなり、好適である。
本発明の実施形態に係る積層多孔質膜は、ニッケル-水素電池、ニッケル-カドミウム電池、ニッケル-亜鉛電池、銀-亜鉛電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池、及びリチウム-硫黄電池等の二次電池等の電池用セパレータとして用いることができる。特に、リチウムイオン二次電池のセパレータとして用いるのが好ましい。
以下、実施例を示して具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例よって何ら制限されるものではない。なお、実施例中の測定値は以下の方法で得た値である。
<厚さ(μm)>
ポリオレフィン多孔質膜及び積層多孔質膜を接触式膜厚計(株式会社ミツトヨ製、“ライトマチック”(登録商標))を使用して、超硬球面測定子φ10.5mm、加重0.15Nの条件で測定し、5点の測定値を平均することによって厚さを求めた。さらに、多孔層の厚さは、積層多孔質膜を前記多孔層用塗工液に含まれる分散媒と同じ分散媒で洗浄し、多孔層を除去したポリオレフィン多孔質膜を前記接触式膜厚計にて測定し、下記の計算式にて得た。
多孔層の厚さ=積層多孔質膜の厚さ-ポリオレフィン多孔質膜の厚さ。
<多孔層表面の無機粒子の長軸径0.2μm以上0.5μm未満の個数基準での頻度および長軸径1.0μm以上の無機粒子の平均アスペクト比の算出>
走査電子顕微鏡(SEM)を用いて下記の方法で多孔層表面を観察し、多孔層表面の無機粒子の長軸径0.2μm以上0.5μm未満の個数基準での頻度および長軸径1.0μm以上の無機粒子の平均アスペクト比を算出した。
(1)電子線によるチャージアップを防ぐため、日本電子株式会社製JFC-1600オートファインコーターを用いて多孔層表面に白金を蒸着させる。
(2)走査電子顕微鏡(日本電子株式会社製JSM-6701F)を用いて下記の条件で多孔層表面を観察した。
観察モード:SEM
加速電圧:2kV
イメージセレクタ:LEI
倍率:10000倍
観察視野数:3か所
スケールバー:1μm
(3)粒子抽出
前記観察画像をマイクロソフト社製パワーポイント2016ソフトウエアのスライド上に貼り付け、無作為に50個の粒子を抽出した。それら粒子を、図形描画ツールのフリーフォームを用いて粒子形状に沿うように黒色で塗りつぶされた図形として計50個トレースした。スケールバーも図形描画ツールの長方形を用いて黒色長方形としてトレースした。50個の粒子が重なり合う場合は、粒子解析時の誤検出を防ぐ為トレースした図形が重なり合わないよう移動させたのち、前記観察画像を取り除き、50個の粒子と、スケールバーをトレースした図形が表示されるスライドとした。このスライドから2値化画像を得た。
(4)粒子解析
前記2値化画像を下記条件で粒子計測した。これを3視野で実施し計150個の粒子の長軸径、アスペクト比データを得た。その後、下記式(1)に基づき、長軸径0.2μm以上0.5μm未満の個数基準での頻度(%)を算出した。なお小数点第一位を四捨五入して算出している。
また検出された長軸径1.0μm以上の無機粒子のアスペクト比の平均値を算出し、小数点第二位を四捨五入したものを長軸径1.0μm以上の無機粒子の平均アスペクト比とした。

長軸径0.2μm以上0.5μm未満の個数基準での頻度(%)
=100×長軸径0.2μm以上0.5μm未満の個数/150 式(1)

粒子解析条件
解析ソフト:ImageJ バージョン1.53f51
Javaバージョン:1.8.0_265(64-bit)
Image Type:8bit
Threshold処理:自動
単位換算:1μmスケールバーのピクセル数を計測後Set Scaleにて換算
Analyze Particle(粒子解析)処理:
Size(pixel^2):0-Infinity
Circularity: 0.00-1.00
Display resultsにチェック
Set Measurementウィンドウ:Fit ellipse(楕円近似)とShape descriptorsにチェック(長軸径とアスペクト比を結果に表示させる為)
粒子解析実行後のデータ抽出:
ResultsウィンドウからMajor(長軸径、単位μm)、AR(アスペクト比、単位なし)を50粒子分の結果を記録する。スケールバーをトレースした図形も粒子として計測される場合がありその場合はスケールバーをトレースした図形のデータは結果から除外した。
<無機粒子の粒子径(μm)及びアスペクト比>
塗工液作製に用いる無機粒子の粒子径は、JIS Z 8825(2013)に従いレーザー回折式粒度分布測定装置(マイクロトラック製、MT3300-EXIIを用いて、体積基準積算率が50%のときの粒子径D50を測定し、表1に記載した。
なお、測定条件は下記に記載した。
溶媒条件
溶媒種:水
溶媒屈折率:1.33
粒子条件
透過性:透過
形状:非球形
粒子屈折率:硫酸バリウム:1.65、アルミナ:1.77、酸化チタン:2.62。
無機粒子のアスペクト比は、無機粒子の粉末約10mgをカーボンテープに貼り付け、無機粒子を蒸着処理した以外は、前記長軸径1.0μm以上の無機粒子の平均アスペクト比の算出時と同様に観察、粒子抽出し150個分の粒子解析データを得た。次いでこれら150個分のアスペクト比の平均値を無機粒子のアスペクト比とし、表1に記載した。
<多孔層表面の谷部の面積率>
多孔層表面の谷部の面積率は下記の方法で測定した。
1)積層多孔質膜の多孔層を上にして皺なく固定する。
2)レーザー顕微鏡(株式会社キーエンス製)を用いて下記の条件で多孔層の5点を測定する。
測定部:VK-X160(赤色レーザー658nm)
制御部:VK-X150
対物レンズ:株式会社ニコン製CF IC EPI Plan 100倍
解析ソフト:マルチファイル解析アプリケーション バージョン2.2.0.93
測定範囲:141μm×105.7μm
画像処理
基準面設定:画像全体
うねり除去:あり(強さ:5)
欠測点除去:あり
3)体積面積計測にて凹部の面積率を計測し、5点の平均値を谷部の面積率とした。
体積面積計測
測定範囲:141μm×105.7μm
計測モード:凹部
微小領域設定 下限値:1.9μm
高さしきい値:-0.1μm。
<積層多孔質膜の熱収縮率(%)>
積層多孔質膜のMD方向(長さ方向)とTD方向(幅方向)の熱収縮率は下記の方法にて測定した。
(1)積層多孔質膜をMD方向100mm×TD方向100mmの大きさに3枚切り
出し、正方形の重心からMD方向に25mmとなるよう該当する2か所に点をうった。このおおよそ50mmである2点間の寸法をMD方向の初期寸法とした。さらに正方形の重心からTD方向に25mmとなるよう該当する2か所に点を打った。このおおよそ50mmである2点間の寸法をTD方向の初期寸法とした。これらの初期寸法は、透明なガラススケール(測定精度0.1mm)を用いて、各方向の初期寸法として0.1mm刻みで計測した。
(2)前記積層多孔質膜をA3サイズの紙2枚で挟み、温度150℃のオーブンに入れ、1時間放置した後、オーブンから積層多孔質膜を取り出して30分間室温で放置した。
(3)前記ガラススケールを用いて、積層多孔質膜のMD方向2点間を計測し、収縮後の寸法とし、TD方向2点間を計測し収縮後の寸法(mm)を計測した。これらは0.1mm刻みで計測した。
得られた初期寸法と、収縮後の寸法より、下記式(2)にてMD方向、及びTD方向の熱収縮率(%)を得た。得られた3枚分のMD方向、及びTD方向の熱収縮率をそれぞれ平均しその値をMDおよびTD方向の積層多孔質膜の熱収縮率とした。また、MDおよびTD方向の積層多孔質膜の熱収縮率が10%以下であるものを良好とし、10%を超えるものを不十分とした。

熱収縮率(%)=
{初期寸法(mm)-収縮後の寸法(mm)}/初期寸法(mm)×100 式(2)

<炭酸プロピレン濡れ広がり面積>
積層多孔質膜の炭酸プロピレン濡れ広がり面積は下記の方法にて測定した。詳細な手順を下記に説明する。
(1)積層多孔質膜MD100mm×TD100mmの大きさで切り出し、これを測定試料とした。
(2)温度23℃、露点温度-50℃のドライルームに24時間放置した。
(3)前記ドライルーム内で、積層多孔質膜の多孔層を上にしてセパレータのMD方向両端から5mmをそれぞれクリップでシワが入らないように水平に把持した。
(4)炭酸プロピレン(富士フィルム和光純薬株式会社製)を測定液とし、マイクロシリンジを用いて測定液0.5μLを採取し、測定試料に静かに滴下した。
(5)測定液滴下から5分経過後の測定試料を条件から撮影し、その撮影像から試料液が濡れ拡がった液滴の面積(mm)を測定し、かかる面積を炭酸プロピレンの拡張面積とした。90mm以上であるものを特に良好としAと表記し、75mm以上90mm未満であるものを良好としBと表記し、75mm未満のものを不十分としてCと表記した。
<電気抵抗>
積層多孔質膜の電気抵抗は、下記の方法にて測定した。CR2032型コインセルを積層多孔質膜の枚数が1枚となるように作製した。具体的には、切り出した積層多孔質膜に電解液(1M-LiPF / EC:EMC (4:6 vol%))を含侵させる。これをコイン状のケースの中に減圧封入しセルを計2個作製した。前記セルを25℃の恒温槽中に入れ、交流インピーダンス法で振幅20mV、周波数200kHzにて前記セルの抵抗を測定した。測定されたセルの抵抗値の平均値を、積層多孔質膜の電気抵抗(Ω)とした。0.80Ω以下であるものを特に良好としAと表記し、0.80Ωを超え0.90Ω以下であるものを良好としBと表記し、0.90Ωを超えるものを不十分としCと表記した。
(作製例1)
表1に示す無機粒子A(硫酸バリウム(芒硝法)、粒子径D50=0.6μm)100重量部に対し、0.25重量部(有効成分)のポリアクリル酸系分散剤(東亜合成株式会社製、アロン(登録商標))を用意し、水に加える。次に、ディスパー型の羽根を取り付けた撹拌機(東機産業株式会社製、スリーワンモーター)にて800rpmで撹拌しながら、前記硫酸バリウムを全量加え、1200rpmで1時間攪拌して、固形分が60重量%の混合液を得た。
ビーズ粒径が0.5mmのジルコニアビーズ(東レ株式会社製、トレセラムφ0.5mm)を130g充填したビーズミル分散機(淺田鉄工株式会社製、ピコミルPCM-LR、分散部容量0.048L)を用いて、得られた混合液を周速10m/sec、流速18kg/hの条件で2回分散を行い、マスターバッチ液を得た。
得られたマスターバッチ液を前記撹拌機にて800rpmで撹拌しながら、有機合成樹脂成分として、ポリアクリルアミド(荒川化学工業株式会社製、ポリストロン117)1.5重量部(有効成分)、アクリル樹脂(昭和電工株式会社製、ポリゾール)1.0重量部(有効成分)、添加剤として、ぬれ剤(サンノプコ株式会社製、SNウェット366)0.2重量部(有効成分)、及び水を加えた。その後、前記撹拌機にて800rpmで30分撹拌し、固形分50重量%の多孔層用塗工液aを得た。
(作製例2)
作製例1の無機粒子Aを表1に示す無機粒子B(硫酸バリウム(芒硝法)、粒子径D50=1.2μm)とし、周速6m/secで分散した以外は、作製例1と同様にして多孔層用塗工液bを得た。
(作製例3)
作製例2の無機粒子Bを表1に示す無機粒子C(硫酸バリウム(芒硝法)、粒子径D50=1.0μm)とした以外は、作製例2と同様にして多孔層用塗工液cを得た。
(作製例4)
作製例2の無機粒子Bを表1に示す無機粒子D(略球状アルミナ、粒子径D50=0.9μm)とした以外は、作製例2と同様にして多孔層用塗工液dを得た。
(作製例5)
作製例2の無機粒子Bを表1に示す無機粒子E(針状酸化チタン、粒子径D50=1.2μm)とした以外は、作製例2と同様にして多孔層用塗工液eを得た。
(作製例6)
作製例2の周速を10m/secとして分散した以外は作製例2と同様にして多孔層用塗工液fを得た。
(作製例7)
作製例1の周速を3m/secとして分散した以外は作製例1と同様にして多孔層用塗工液gを得た。
(作製例8)
作製例2の周速を3m/secとして分散した以外は作製例2と同様にして多孔層用塗工液hを得た。
(作製例9)
作製例1の周速を15m/secとして分散した以外は作製例1と同様にして多孔層用塗工液iを得た。
(作製例10)
作製例2の周速を15m/secとして分散した以外は作製例2と同様にして多孔層用塗工液jを得た。
(実施例1)
多孔層用塗工液aおよびbを25:75の重量比で配合し前記攪拌機にて800rpmで30分攪拌し塗工液を得た。得られた孔層用塗工液を、厚さ8μmのポリオレフィン多孔質膜(空孔率45%)の片面に、キスリバースグラビア法にて塗工し、温度60℃で乾燥して、表2に記載の積層多孔質膜を得た。得られた積層多孔質膜について、多孔層の厚さ、長軸径0.2μm以上0.5μm未満の個数基準での頻度、長軸径1.0μm以上の無機粒子の平均アスペクト比、多孔層表面の谷部の面積率、積層多孔質膜のMD方向及びTD方向の熱収縮率、炭酸プロピレン濡れ広がり面積、電気抵抗を評価した結果を表2に示す。
(実施例2)
作製例1、2の多孔層用塗工液aおよびbを、多孔層用塗工液a:b=40:60の重量比で配合した以外は、実施例1と同様に積層多孔質膜を得た。
(実施例3)
作製例1、2の多孔層用塗工液aおよびbを、多孔層用塗工液a:b=50:50の重量比で配合した以外は、実施例1と同様に積層多孔質膜を得た。
(実施例4)
作製例1、2の多孔層用塗工液aおよびbを、多孔層用塗工液a:b=60:40の重量比で配合した以外は、実施例1と同様に積層多孔質膜を得た。
(実施例5)
作製例1、2の多孔層用塗工液aおよびbを、多孔層用塗工液a:b=75:25の重量比で配合した以外は、実施例1と同様に積層多孔質膜を得た。
(実施例6)
作製例2の多孔層用塗工液bを作製例3の多孔層用塗工液cに置き換え、多孔層用塗工液aおよびcを、多孔層用塗工液a:c=50:50の重量比で配合した以外は、実施例1と同様に積層多孔質膜を得た。
(実施例7,8)
実施例3の多孔層の厚さを表2の厚さとなるようそれぞれ変えた以外は実施例3と同様に積層多孔質膜を得た。
(実施例9)
実施例3の多孔層の厚さを表2の厚さとなるよう変え、厚さ9μm(空孔率49%)のポリオレフィン多孔質膜を用いた以外は、実施例3と同様に積層多孔質膜を得た。
(実施例10)
作製例2の多孔層用塗工液bを作製例6の多孔層用塗工液fに置き換え、多孔層用塗工液aおよびfを、多孔層用塗工液a:f=50:50の重量比で配合した以外は、実施例1と同様に積層多孔質膜を得た。
(比較例1)
作製例2の多孔層用塗工液bを用いて、積層多孔膜を得た以外は、実施例1と同様に積層多孔膜を得た。
(比較例2)
作製例1、2の多孔層用塗工液aおよびbを、多孔層用塗工液a:b=20:80の重量比で配合した以外は、実施例1と同様に積層多孔質膜を得た。
(比較例3)
作製例1、2の多孔層用塗工液aおよびbを、多孔層用塗工液a:b=80:20の重量比で配合した以外は、実施例1と同様に積層多孔質膜を得た。
(比較例4)
作製例1の多孔層用塗工液aを用いて、積層多孔膜を得た以外は、実施例1と同様に積層多孔膜を得た。
(比較例5)
作製例2の多孔層用塗工液bを作製例4の多孔層用塗工液dに置き換え、多孔層用塗工液aおよびdを、多孔層用塗工液a:d=50:50の重量比で配合した以外は、実施例1と同様に積層多孔質膜を得た。
(比較例6)
作製例2の多孔層用塗工液bを作製例5の多孔層用塗工液eに置き換え、多孔層用塗工液aおよびeを、多孔層用塗工液a:e=50:50の重量比で配合した以外は、実施例1と同様に積層多孔質膜を得た。
(比較例7)
作製例3の多孔層用塗工液cを用いて、積層多孔膜を得た以外は、実施例1と同様に積層多孔膜を得た。
(比較例8)
作製例1の多孔層用塗工液aを作製例7の多孔層用塗工液gに置き換え、作製例2の多孔層用塗工液bを作製例8の多孔層用塗工液hに置き換え、多孔層用塗工液gおよびhを、多孔層用塗工液g:h=50:50の重量比で配合した以外は、実施例1と同様に積層多孔質膜を得た。得られた積層多孔質膜の多孔層表面を目視で観察すると、塗布欠陥および凝集物がみられた為、不適とし、これ以降の評価は実施しなかった。
(比較例9)
作製例1の多孔層用塗工液aを作製例9の多孔層用塗工液iに置き換え、作製例2の多孔層用塗工液bを作製例10の多孔層用塗工液jに置き換え、多孔層用塗工液iおよびjを、多孔層用塗工液i:j=50:50の重量比で配合した以外は、実施例1と同様に積層多孔質膜を得た。
Figure 2023135588000001
Figure 2023135588000002
本発明の積層多孔質膜は、リチウムイオン二次電池などの非水電解質電池に用いられ
る電池用セパレータとして好適に用いることができる。

Claims (7)

  1. ポリオレフィン多孔質膜と、前記ポリオレフィン多孔質膜の少なくとも片面に多孔層を有し、
    前記多孔層は、無機粒子と有機合成樹脂成分とを含み、
    前記多孔層表面の谷部の面積率が8.0%以上であり、
    前記多孔層表面を走査型電子顕微鏡(SEM)により測定される表面SEM観察画像から計測される前記無機粒子の長軸径0.2μm以上0.5μm未満の個数基準での頻度が30%以上、前記無機粒子の長軸径1.0μm以上の無機粒子の平均アスペクト比が1.5以上3.0以下である、積層多孔質膜。
  2. 前記無機粒子が沈降性硫酸バリウムである請求項1に記載の積層多孔質膜。
  3. 前記有機合成樹脂成分が、ポリアクリルアミド樹脂である請求項1または2に記載の積層多孔質膜。
  4. 前記無機粒子が芒硝法により製造される硫酸バリウムである、請求項1または2に記載の積層多孔質膜。
  5. 請求項1または2に記載の積層多孔質膜を有する電池用セパレータ。
  6. 請求項5に記載の電池用セパレータを有する電池。
  7. 体積基準積算率が50%のときの粒子径(D50)が1.1~1.3μmの硫酸バリウムと、D50が0.5~0.7μmの硫酸バリウムを質量比75/25~25/75の範囲で含む無機粒子を用いる請求項1または2に記載の積層多孔質膜の製造方法。

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