JP2023134883A - 内輪の製造方法 - Google Patents

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彩水 鈴木
Ayami Suzuki
達男 若林
Tatsuo Wakabayashi
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Abstract

Figure 2023134883000001
【課題】大鍔部を有する内輪に関して、大鍔部の耐久性を確保し、かつ、加工コストを抑えることができる製造方法を提供する。
【解決手段】該製造方法は、内輪10aの軌道側面取り部20zおよび反軌道側面取り部21zのそれぞれの断面形状の曲率半径R20z、R21zが、完成後の曲率半径R20、R21よりも小さい内輪素材33を得る工程と、内輪素材33の全体に熱処理を施す工程と、熱処理が施された内輪素材33に対し、軌道側面取り部20zおよび反軌道側面取り部21zのそれぞれの断面形状の曲率半径を増大させるように旋削加工を施し、かつ、該旋削加工により軌道側面取り部20aおよび反軌道側面取り部21aのそれぞれの断面形状の曲率半径を、完成後の曲率半径R20、R21とする工程とを含む。
【選択図】図4

Description

本発明は、ハブ輪とともにハブユニット軸受のハブを構成する内輪、より具体的には、大鍔部を有する内輪の製造方法に関する。
ハブユニット軸受の構造として、車輪とともに回転するハブが、車輪を結合固定するハブ輪と、ハブ輪に外嵌された内輪とを含み、かつ、ハブ輪の軸方向内側端部を径方向外方に塑性変形させてなるかしめ部により、内輪の軸方向内側面を抑え付けることで、ハブ輪に内輪が結合固定されている構造が普及している。
ハブ輪の軸方向内側端部にかしめ部を備えたハブユニット軸受では、ハブ輪の外周面のうち、かしめ部の軸方向外側に隣接する部分が、かしめ部の形成に伴って径方向外側に膨張する。そして、該膨張した部分が、内輪の軸方向内側端部の内周面を径方向外側に押圧することにより、該軸方向内側端部が拡径し、該軸方向内側端部に周方向応力が発生する。
特に、転動体として円すいころを用いるハブユニット軸受では、軸方向内側面をかしめ部により抑え付けられる内輪は、軸方向内側端部に径方向外方に突出した大鍔部を有しており、かしめ部の形成に伴って、該大鍔部に周方向応力が発生する。
軸方向内側端部に大鍔部を有する内輪は、各部の形状を旋削加工により成形した後、全体にズブ焼き入れなどの熱処理を施してから、外周面の軸方向中間部に存在する内輪軌道、大鍔部の軸方向両側の側面のうち内輪軌道側の側面である軌道側側面、および大鍔部の外周面などの所定箇所に、研削加工などによる仕上加工を施すことで製造される。この際の仕上加工は、大鍔部の軌道側側面と該大鍔部の外周面との接続部に備えられた軌道面側面取り部、および、大鍔部の軸方向両側の側面のうち内輪軌道と反対側の側面である反軌道側側面と該大鍔部の外周面との接続部に備えられた反軌道側面取り部には施されないのが通常である。
しかしながら、軌道面側面取り部および反軌道側面取り部は、角部であるため、搬送時などに周囲の物体にぶつかりやすい。特に、熱処理を施す前の段階では、硬度が低いため、周囲の物体にぶつかった場合に、打痕および打痕に伴う微小なクラックが形成されやすい。このような打痕や微小なクラックは、内輪の完成後にも残った状態となるため、かしめ部の形成に伴って、該打痕や微小なクラックに周方向応力が集中し、内輪の耐久性が低下する原因となる。
このような不都合が発生することを回避するための対策として、特開2021-032268号公報には、内輪を製造する際に、各部の形状を旋削加工により成形した後、全体にズブ焼き入れなどの熱処理を施してから、軌道面側面取り部および反軌道側面取り部を含む大鍔部の表面に、再度の旋削加工を施す方法が記載されている。この方法によれば、熱処理を施す前の段階で軌道面側面取り部および/または反軌道側面取り部に打痕や微小なクラックが形成されたとしても、再度の旋削加工によって該打痕や微小なクラックを除去することができるため、上述のような不都合が発生することを回避できる。
特開2021-032268号公報
特開2021-032268号公報に記載された従来方法には、未だ改良の余地がある。すなわち、該従来方法では、該公報の図面を参照すると、軌道面側面取り部および反軌道側面取り部の断面形状の曲率半径を、再度の旋削加工を施す前後で同じにするか、あるいは、再度の旋削加工を施した後で該旋削加工を施す前よりも小さくしている。したがって、再度の旋削加工を施す前後で、そのような曲率半径の推移をもたらすためには、軌道面側面取り部および反軌道側面取り部が存在する角部だけでなく、大鍔部の外周面の全体にも再度の切削加工を施す必要があり、その分、加工コストが嵩む。
特に、大鍔部の軌道側側面は、径方向外側に向かうにしたがって軸方向に関して内輪軌道側に向かう方向に傾斜しているため、大鍔部の外周面と大鍔部の軌道側側面とのなす角度は鋭角になっている。すなわち、軌道側面取り部の周辺部の肉厚は薄くなっているため、熱処理前の段階で軌道側面取り部が周囲の物体にぶつかった場合には、形成される打痕や微小クラックが大きくなりやすい。したがって、従来方法において軌道面側面取り部の圧痕を確実に除去するためには、軌道面側面取り部が存在する角部の旋削用取り代を十分に確保する必要があり、これに伴い、大鍔部の外周面の旋削用取り代も大きくする必要があるため、加工コストが嵩みやすい。
本発明は、上述のような事情に鑑み、大鍔部を有する内輪に関して、大鍔部の耐久性を確保し、かつ、加工コストを抑えることができる製造方法を提供することを目的とする。
本発明の一態様の内輪の製造方法により製造される内輪は、軸方向中間部の外周面に円すい凸面状の内輪軌道、および、軸方向に関して前記内輪軌道の大径側に隣接する大径側端部から径方向外側に突出した大鍔部を備える。前記大鍔部は、軸方向に関して前記内輪軌道側の側面である軌道側側面と該大鍔部の外周面との接続部に円弧形の断面形状を有する軌道側面取り部、および、軸方向に関して前記内輪軌道と反対側の側面である反軌道側側面と該大鍔部の外周面との接続部に円弧形の断面形状を有する反軌道側面取り部を備える。
本発明の一態様の内輪の製造方法は、前記軌道側面取り部および前記反軌道側面取り部のそれぞれの断面形状の曲率半径が、完成後の曲率半径よりも小さい内輪素材を得る工程と、前記内輪素材の全体に熱処理を施す工程と、前記熱処理が施された前記内輪素材に対し、前記軌道側面取り部および前記反軌道側面取り部のそれぞれの断面形状の曲率半径を増大させるように旋削加工を施し、かつ、該旋削加工により前記軌道側面取り部および前記反軌道側面取り部のそれぞれの断面形状の曲率半径を、前記完成後の曲率半径とする工程と、を含む。
本発明の一態様の内輪の製造方法では、前記旋削加工を施す工程において、前記軌道側面取り部の径方向幅を、前記反軌道側面取り部の径方向幅よりも大きくする。
本発明の一態様の内輪の製造方法では、前記旋削加工を施す工程において、前記大鍔部の外周面と前記反軌道側面取り部との接続部に、円弧形の断面形状を有し、前記反軌道側面取り部の断面形状の曲率半径よりも小さい断面形状の曲率半径を有する接続面部を形成する。
本発明の内輪の製造方法によれば、大鍔部の耐久性を確保し、かつ、加工コストを抑えることができる。
図1は、本発明の実施の形態の第1例のハブユニット軸受の断面図である。 図2は、図1の上部拡大図である。 図3は、該ハブユニット軸受を構成する軸方向内側の内輪の製造工程で得られる内輪素材の部分断面図である。 図4(a)および図4(b)は、該内輪の製造方法を工程順に示す、図3の右上部に相当する図である。 図5は、本発明の実施の形態の第2例に関する、図4(b)に相当する図である。 図6は、本発明の実施の形態の第3例に関する、図4(b)の右上部に相当する図である。 図7は、本発明の実施の形態の第4例に関する、図1に相当する図である。
[第1例]
本発明の実施の形態の第1例について、図1~図4を用いて説明する。
(ハブユニット軸受1の構造)
本例の製造対象となる内輪10aを含んで構成されるハブユニット軸受1の構造について、図1~図3を用いて説明する。ハブユニット軸受1は、従動輪用であり、使用時にも回転しない外輪2と、使用時に車輪とともに回転するハブ3と、それぞれが転動体である複数個の円すいころ4とを備える。
ハブユニット軸受1に関して、軸方向内側は、車両への組み付け状態で車両の幅方向中央側となる、図1および図2の右側であり、軸方向外側は、車両への組み付け状態で車両の幅方向外側となる、図1および図2の左側である。
外輪2は、中炭素鋼などの硬質金属製であり、複列の外輪軌道5a、5bと、静止フランジ6とを有する。複列の外輪軌道5a、5bは、外輪2の内周面に備えられている。複列の外輪軌道5a、5bのそれぞれは、軸方向に関して互いに離れる方向に向かうにしたがって直径が大きくなる方向に傾斜した円すい凹面により構成されている。静止フランジ6は、外輪2を懸架装置のナックルに結合固定するために用いられる部位であり、外輪2の軸方向中間部から径方向外側に突出している。
ハブ3は、外輪2の径方向内側に、外輪2と同軸に配置されており、複列の内輪軌道7a、7bと、回転フランジ8とを有する。複列の内輪軌道7a、7bは、ハブ3の外周面のうち、複列の外輪軌道5a、5bに対向する部分に備えられている。複列の内輪軌道7a、7bのそれぞれは、軸方向に関して互いに離れる方向に向かうにしたがって直径が大きくなる方向に傾斜した円すい凸面により構成されている。回転フランジ8は、ハブ3に車輪および制動用回転部材を結合固定するために用いられる部位であり、ハブ3の軸方向外側部から径方向外側に突出している。
本例では、ハブ3は、ハブ輪9と、1対の内輪10a、10bとを組み合わせることにより構成されている。
ハブ輪9は、中炭素鋼などの硬質金属製であり、軸方向外側部に回転フランジ8を有する。ハブ輪9は、軸方向中間部の外周面に円筒面状の嵌合面部11、および、嵌合面部11の軸方向外側端部に軸方向内側を向いた円輪面状の段差面12を有する。
1対の内輪10a、10bを構成するそれぞれの内輪10a、10bは、軸受鋼などの硬質金属製であり、全体が筒状に構成されている。内輪10a、10bは、軸方向中間部の外周面に内輪軌道7a、7b、軸方向に関して内輪軌道7a、7bの大径側に隣接する大径側端部から径方向外側に突出した大鍔部13a、13b、および、軸方向に関して内輪軌道7a、7bの小径側に隣接する小径側端部から径方向外側に突出した小鍔部14a、14bを有する。内輪10a、10bは、軸方向に関して大鍔部13a、13b側の側面である大径側側面15a、15b、および、軸方向に関して小鍔部14a、14b側の側面である小径側側面16a、16bを有する。大径側側面15a、15bおよび小径側側面16a、16bのそれぞれは、軸方向に対して直交する平坦面により構成されている。
大鍔部13a、13bは、外周面17a、17bと、軸方向に関して内輪軌道7a、7b側の側面である軌道側側面18a、18bと、軸方向に関して内輪軌道7a、7bと反対側の側面である反軌道側側面19a、19bと、外周面17a、17bと軌道側側面18a、18bとの接続部に備えられた軌道側面取り部20a、20bと、外周面17a、17bと反軌道側側面19a、19bとの接続部に備えられた反軌道側面取り部21a、21bとを有する。
外周面17a、17bは、軸方向に関して外径寸法が変化しない円筒面により構成されている。軌道側側面18a、18bは、径方向外側に向かうにしたがって軸方向に関して内輪軌道7a、7b側に向かう方向に傾斜した円すい凹面により構成されている。したがって、外周面17a、17bと軌道側側面18a、18bとのなす角度は鋭角である。軌道側側面18a、18bと内輪軌道7a、7bとの接続部には、逃げ溝22a、22bが備えられている。反軌道側側面19a、19bは、大径側側面15a、15bの径方向外側部を構成している。したがって、反軌道側側面19a、19bは、軸方向に対して直交する平坦面により構成されており、外周面17a、17bと反軌道側側面19a、19bとのなす角度は、直角である。軌道側面取り部20a、20bおよび反軌道側面取り部21a、21bのそれぞれは、円弧形の断面形状を有する。
特に、本例では、軸方向内側の内輪10aに関して、軌道側面取り部20aおよび反軌道側面取り部21aのそれぞれの断面形状の曲率半径R20、R21は、互いにほぼ等しい(R20=R21)。また、本例では、軌道側面取り部20aおよび反軌道側面取り部21aのそれぞれの径方向幅も、互いにほぼ等しい。ただし、本発明を実施する場合には、軌道側面取り部と反軌道側面取り部とで、断面形状の曲率半径や径方向幅を互いに異ならせることもできる。
小鍔部14a、14bは、軸方向に関して内輪軌道7a、7b側の側面である軌道側側面23a、23bを有する。軌道側側面23a、23bは、径方向外側に向かうにしたがって軸方向に関して内輪軌道7a、7bと反対側に向かう方向に傾斜した円すい凸面により構成されている。軌道側側面23a、23bと内輪軌道7a、7bとの接続部には、逃げ溝24a、24bが備えられている。
軸方向外側の内輪10bは、嵌合面部11の軸方向外側部に圧入により外嵌され、かつ、軸方向外側面である大径側側面15bを段差面12に当接させている。軸方向内側の内輪10aは、嵌合面部11の軸方向内側部に圧入により外嵌され、かつ、軸方向外側面である小径側側面16aを、軸方向外側の内輪10bの軸方向内側面である小径側側面16bに当接させている。さらに、軸方向内側の内輪10aの軸方向内側面である大径側側面15aの径方向内側部は、ハブ輪9の軸方向内側端部を径方向外方に塑性変形させることにより形成されたかしめ部25により抑え付けられている。すなわち、1対の内輪10a、10bは、段差面12とかしめ部25との間に挟み込まれた状態で、ハブ輪9に結合固定されている。
円すいころ4は、軸受鋼などの硬質金属製あるいはセラミックス製であり、複列の外輪軌道5a、5bと複列の内輪軌道7a、7bとの間に、それぞれの列ごとに複数個ずつ配置され、かつ、それぞれの列の保持器26により転動自在に保持されている。さらに、この状態で、円すいころ4は、大鍔部13a、13b側の端面である大径側端面を、大鍔部13a、13bの軌道側側面18a、18bに接触させ、小鍔部14a、14b側の端面である小径側端面を、小鍔部14a、14bの軌道側側面23a、23bに隙間を介して対向させている。
図示の例では、外輪2の内周面とハブ3の外周面との間に存在する内部空間27の軸方向外側の開口部は、外輪2の軸方向外側端部の内周面と軸方向外側の内輪10bの大鍔部13bの外周面17bとの間に組み付けられた組み合わせシールリング28により塞がれている。外輪2の軸方向外側端面と回転フランジ8の軸方向内側面との間部分は、外輪2の軸方向外側端部に外嵌固定されたシールリング29により塞がれている。外輪2の軸方向内側の開口部は、外輪2の軸方向内側端部に内嵌固定された非磁性材製のキャップ30により塞がれている。軸方向内側の内輪10aの大鍔部13aの外周面17aに、回転速度検出装置を構成する円環状のエンコーダ31が外嵌固定されている。エンコーダ31は、軸方向内側面にS極とN極とが円周方向に関して交互に配置された被検出面32を有する。ハブユニット軸受1を車両に組み付けた状態で、被検出面32には、キャップ30を介して磁気センサが軸方向に対向する。
(内輪10aの製造方法)
図3および図4を参照して、内輪10aの製造方法について説明する。本例の内輪10aの製造方法は、第1工程と、第2工程と、第3工程とを備える。
第1工程では、金属素材に、鍛造加工を施して内輪10aの大まかな形状を成形した後、旋削加工を施すことにより、図3に示すような、内輪素材33を得る。
内輪素材33は、完成後の内輪10aとほぼ同様の形状を有するが、軌道側面取り部20zおよび反軌道側面取り部21zのそれぞれの断面形状の曲率半径が、完成後の該曲率半径よりも小さい。すなわち、軌道側面取り部20zの断面形状の曲率半径R20zは、完成後の軌道側面取り部20aの断面形状の曲率半径R20よりも小さく(R20z<R20)、反軌道側面取り部21zの断面形状の曲率半径R21zは、完成後の反軌道側面取り部21aの断面形状の曲率半径R21よりも小さい(R21z<R21)。
本例では、内輪素材33の軌道側面取り部20zおよび反軌道側面取り部21zのそれぞれの断面形状の曲率半径R20z、R21zを、互いにほぼ等しくしている(R20z=R21z)。ただし、本発明を実施する場合には、該曲率半径R20z、R21zを互いに異ならせることもできる(R20z≠R21z)。
本発明を実施する場合には、軌道側面取り部20zの断面形状の曲率半径R20zに対する、完成後の軌道側面取り部20aの断面形状の曲率半径R20の倍率N(=R20/R20z)、および、反軌道側面取り部21zの断面形状の曲率半径R21zに対する、完成後の反軌道側面取り部21aの断面形状の曲率半径R21の倍率M(=R21/R21z)を、それぞれ任意に設定することができる。該倍率N、Mの下限値は、3倍以上とすることが好ましく、4倍以上とすることがより好ましく、5倍以上とすることがさらに好ましい。該倍率N、Mの上限値は、8倍以下とすることが好ましく、7倍以下とすることがより好ましく、6倍以下とすることがさらに好ましい。本例では、該倍率N、Mを、5倍以上6倍以下の範囲に設定している。
第2工程では、内輪素材33の全体に、ズブ焼き入れなどの熱処理を施す。これにより、内輪素材33の硬さなどの機械的性質を向上させる。
第3工程では、前記熱処理が施された内輪素材33に対し、軌道側面取り部20zおよび反軌道側面取り部21zのそれぞれの断面形状の曲率半径R20z、R21zを増大させるように旋削加工、すなわちハードターニング加工を施す。具体的には、前記熱処理が施された内輪素材33のうち、軌道側面取り部20zが存在する角部の肉(図4(a)に斜格子を付したX部の肉)、および、反軌道側面取り部21zが存在する角部の肉(図4(a)に斜格子を付したY部の肉)を、旋削加工により除去する。これにより、図4(b)に示すように、軌道側面取り部20aおよび反軌道側面取り部21aのそれぞれの断面形状の曲率半径を、完成後の曲率半径R20、R21とする。
本例の第3工程では、さらに、内輪軌道7a、軌道側側面18a、および外周面17aに対し、表面粗さなどの面性状を向上させるための加工である、研削加工、超仕上加工などの仕上加工を施すことにより、内輪10aを完成させる。第3工程において、該仕上げ加工は、前記旋削加工の後、または、前記旋削加工の前に行うことができる。
本例の内輪10aの製造方法では、第1工程において取得した内輪素材33に対し、第2工程において熱処理を施す前の段階、すなわち内輪素材33の硬度が低い段階で、軌道側面取り部20zおよび/または反軌道側面取り部21zに打痕や微小なクラックが形成されたとしても、第3工程において、軌道側面取り部20zが存在する角部の肉(X部の肉)、および、反軌道側面取り部21zが存在する角部の肉(Y部の肉)を、旋削加工により除去する。このため、該肉とともに、該打痕や微小なクラックを除去することができる。したがって、かしめ部25の形成に伴い、該打痕や微小なクラックに周方向応力が集中するといった不都合が生じることを回避して、大鍔部13aの耐久性を向上させることができる。
さらに、本例の内輪10aの製造方法では、第3工程において、軌道側面取り部20zおよび反軌道側面取り部21zのそれぞれの断面形状の曲率半径R20z、R21zを増大させるように旋削加工を施す。このような旋削加工を施す際には、軌道側面取り部20zが存在する角部の肉(X部の肉)、および、反軌道側面取り部21zが存在する角部の肉(Y部の肉)を旋削加工により除去すればよい。すなわち、本例の製造方法では、特開2021-032268号公報に記載された従来の製造方法と異なり、軌道側面取り部20zが存在する角部と反軌道側面取り部21zが存在する角部との間に位置する大鍔部13aの外周面17aには、旋削加工を施す必要がない。したがって、その分、加工コストを抑えることができる。なお、該外周面17aには、前述した仕上げ加工を施すことにより、該外周面17aの表面粗さなどの面性状を向上させることができる。
[第2例]
本発明の実施の形態の第2例について、図5を用いて説明する。
本例の内輪10aの製造方法では、第3工程における切削加工により、軌道側面取り部20a′の径方向幅W20を、反軌道側面取り部21aの径方向幅W21よりも大きくしている(W20>W21)。すなわち、本例では、該切削加工により除去する肉を、軌道側面取り部20zが存在する角部において、反軌道側面取り部21zが存在する角部よりも多くしている。
大鍔部13aの軌道側側面18aは、径方向外側に向かうにしたがって軸方向外側に向かう方向に傾斜しているため、大鍔部13aの外周面17aと軌道側側面18aとのなす角度は鋭角になっている。すなわち、軌道側面取り部20zの周辺部の肉厚は薄くなっているため、熱処理前の段階で軌道側面取り部20zが周囲の物体にぶつかった場合には、形成される打痕が大きくなりやすい。これに対して、本例では、切削加工により除去する肉を、軌道側面取り部20zが存在する角部において、反軌道側面取り部21zが存在する角部よりも多くしている。このため、反軌道側面取り部21zが存在する角部の旋削量を抑えつつ、軌道側面取り部20zに形成された打痕や微小クラックを適切に除去することができる。
軌道側側面18aは、円すい凹面であるため、第3工程において軌道側側面18aに仕上げの研削加工を施す際には、砥石と軌道側側面18aとの接触弧長が長くなり、研削焼け、焼き戻り、および割れが発生しやすい。これに対し、本例のように、軌道側面取り部20aの径方向幅を、反軌道側面取り部21aの径方向幅よりも大きくすることにより、軌道側側面18aの径方向幅を減らせば、その後に軌道側側面18aに仕上げの研削加工を施す際に、研削面の径方向幅が小さくなる。その結果、研削加工時における接触弧へのクーラントの供給がよくなり、研削焼け、焼き戻り、および割れが発生しにくくなる。
軌道側面取り部20zが存在する角部は、表面積が大きい割に体積が少ないため、第2工程における熱処理の際に、オーバーヒートによる組織の粗粒化や表面の脱炭などの欠陥が発生しやすい。これに対して、本例では、切削加工により除去する肉を、軌道側面取り部20zが存在する角部において、反軌道側面取り部21zが存在する角部よりも多くしている。このため、反軌道側面取り部21zが存在する角部の旋削量を抑えつつ、軌道側面取り部20zが存在する角部において、前記オーバーヒートによる欠陥部分を適切に除去しやすい。したがって、大鍔部13aの耐久性をより確保しやすい。
本例のように、軌道側面取り部20aの径方向幅を大きくすると、その分、軌道側側面18aの外径が小さくなる。また、これに伴い、軌道側側面18aに対する円すいころ4の大径側端面の接触位置を、内輪軌道7aの延長線に近い位置に設定する必要がある。この点に関して、円すいころ軸受のトルクは、該接触位置が内輪軌道7aの延長線に近くなるほど小さくなるため、都合が良い。その他の構成および作用効果は、第1例と同様である。
[第3例]
本発明の実施の形態の第3例について、図6を用いて説明する。
本例の内輪10aの製造方法では、第3工程における旋削加工によって、大鍔部13aの外周面17aと反軌道側面取り部21aとの接続部に、外周面17aと反軌道側面取り部21aとを滑らかに接続するための、円弧形の断面形状を有する接続面部34を形成する。接続面部34の断面形状の曲率半径R34は、反軌道側面取り部21aの曲率半径R21よりも小さい(R34<R21)。
本例では、完成後の内輪10aが接続面部34を備えているため、ハブユニット軸受を組み立てる際に、大鍔部13aの外周面17aに軸方向内側から圧入外嵌する部材(本例では、エンコーダ31(図2参照))を、内輪10aと同軸となるように姿勢良く圧入外嵌する作業の容易化を図れる。接続面部34の軸方向寸法および断面形状の曲率半径R34(<R21)の具体的な大きさは、該容易化の機能を適切に果たせる範囲で任意に設定することができる。なお、本例では、接続面部34にも、第3工程における仕上げ加工を施すことができる。その他の構成および作用効果は、第1例と同様である。
[第4例]
本発明の実施の形態の第4例について、図7を用いて説明する。
本例では、製造対象となる内輪10aを含むハブユニット軸受1aの構造が、第1例と若干異なる。すなわち、本例のハブユニット軸受1aは、軸方向外側の内輪を有しておらず、軸方向外側列の内輪軌道7bは、ハブ輪9aの軸方向中間部外周面に直接形成されている。製造対象となる内輪10aは、ハブ輪9aの軸方向内側部の外周面に備えられた嵌合面部11aに圧入により外嵌され、かつ、軸方向外側面である小径側側面16aを嵌合面部11aの軸方向外側端部に存在する段差面12aに当接させた状態で、ハブ輪9aの軸方向内側端部に形成されたかしめ部25により、軸方向内側面である大径側側面15aの径方向内側部を抑え付けられている。本例では、内部空間27の軸方向外側の開口部は、外輪2の軸方向外側端部に内嵌されたシールリング35により塞がれている。内部空間27の軸方向内側の開口部は、外輪2の軸方向内側端部の内周面と内輪10aの大鍔部13aの外周面17aとの間に組み付けられた組み合わせシールリング36により塞がれている。本例では、組み合わせシールリング36を構成する摺接環であるスリンガが、大鍔部13aの外周面17aに軸方向内側から圧入外嵌される部材となる。その他の構成および作用効果は、第1例と同様である。
本発明は、上述した各実施の形態の構成を、矛盾が生じない範囲で、適宜組み合わせて実施することができる。
本発明の製造対象となる内輪を含むハブユニット軸受は、駆動輪用であっても良い。
1、1a ハブユニット軸受
2 外輪
3 ハブ
4 円すいころ
5a、5b 外輪軌道
6 静止フランジ
7a、7b 内輪軌道
8 回転フランジ
9、9a ハブ輪
10a、10b 内輪
11、11a 嵌合面部
12、12a 段差面
13a、13b 大鍔部
14a、14b 小鍔部
15a、15b 大径側側面
16a、16b 小径側側面
17a、17b 外周面
18a、18b 軌道側側面
19a、19b 反軌道側側面
20a、20a′、20b、20z 軌道側面取り部
21a、21b、21z 反軌道側面取り部
22a、22b 逃げ溝
23a、23b 軌道側側面
24a、24b 逃げ溝
25 かしめ部
26 保持器
27 内部空間
28 組み合わせシールリング
29 シールリング
30 キャップ
31 エンコーダ
32 被検出面
33 内輪素材
34 接続面部
35 シールリング
36 組み合わせシールリング

Claims (3)

  1. 軸方向中間部の外周面に円すい凸面状の内輪軌道、および、軸方向に関して前記内輪軌道の大径側に隣接する大径側端部から径方向外側に突出した大鍔部を備え、かつ、前記大鍔部は、軸方向に関して前記内輪軌道側の側面である軌道側側面と該大鍔部の外周面との接続部に円弧形の断面形状を有する軌道側面取り部、および、軸方向に関して前記内輪軌道と反対側の側面である反軌道側側面と該大鍔部の外周面との接続部に円弧形の断面形状を有する反軌道側面取り部を備える、内輪の製造方法であって、
    前記軌道側面取り部および前記反軌道側面取り部のそれぞれの断面形状の曲率半径が、完成後の曲率半径よりも小さい内輪素材を得る工程と、
    前記内輪素材の全体に熱処理を施す工程と、
    前記熱処理が施された前記内輪素材に対し、前記軌道側面取り部および前記反軌道側面取り部のそれぞれの断面形状の曲率半径を増大させるように旋削加工を施し、かつ、該旋削加工により前記軌道側面取り部および前記反軌道側面取り部のそれぞれの断面形状の曲率半径を、前記完成後の曲率半径とする工程と、を含む、
    内輪の製造方法。
  2. 前記旋削加工を施す工程において、前記軌道側面取り部の径方向幅を、前記反軌道側面取り部の径方向幅よりも大きくする、請求項1に記載の内輪の製造方法。
  3. 前記旋削加工を施す工程において、前記大鍔部の外周面と前記反軌道側面取り部との接続部に、円弧形の断面形状を有し、前記反軌道側面取り部の断面形状の曲率半径よりも小さい断面形状の曲率半径を有する接続面部を形成する、請求項1または2に記載の内輪の製造方法。
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