JP2023134111A - 変性ブロック共重合体 - Google Patents

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Ryoji Oda
大祐 加藤
Daisuke Kato
篤史 野呂
Atsushi Noro
貴都 梶田
Takato Kajita
遥奈 長嶋
Haruna Nagashima
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Abstract

【課題】伸び、引張強度、および、高温での形状維持に優れる変性ブロック共重合体を提供すること。【解決手段】芳香族ビニル重合体ブロックに非共有結合性の結合可能な官能基が導入されてなる変性芳香族ビニル重合体ブロックと、エチレン/プロピレン共重合体ブロックとを有する変性ブロック共重合体を提供する。【選択図】図1

Description

本発明は、変性ブロック共重合体に関する。
従来、熱可塑性エラストマーは、常温でゴム弾性を示し、また加熱すると軟化して流動性を示し成形加工が容易であることから、伸縮性材料として種々の分野で利用されている。
熱可塑性エラストマーとして、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)に水素添加してなるスチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)や、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)に水素添加してなるスチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)等が知られている。なかでも、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)は、伸びが要求される、フィルム等の膜状成形体に用いられている。
フィルム等の膜状成形体は、その用途に応じて、引張応力が負荷される環境下や、高温環境下での使用に耐える必要があり、伸びに加えて、引張強度および高温での形状維持にも優れていることが求められる。
特許文献1には、たとえば、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)を使用し、下記の反応にしたがって、ミドルブロックであり、ガラス転移温度が室温(25℃)よりも十分に低いイソプレンブロックに対して変性処理を行ったことが記載されている。しかしながら、引用文献1においては、伸び、引張強度、および、高温での形状維持を高いレベルで達成することについての検討がなされていない。
Figure 2023134111000002
国際公開第2018/207683号
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、伸び、引張強度、および、高温での形状維持に優れる変性ブロック共重合体を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記目的を達成すべく検討を行ったところ、芳香族ビニル重合体ブロックと、エチレン/プロピレン共重合体ブロックとを有するブロック共重合体中の、芳香族ビニル重合体ブロックに、非共有結合性の結合可能な官能基を導入することにより、伸び、引張強度、および、高温での形状維持が高いレベルで達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、芳香族ビニル重合体ブロックに非共有結合性の結合可能な官能基が導入されてなる変性芳香族ビニル重合体ブロックと、エチレン/プロピレン共重合体ブロックとを有する変性ブロック共重合体が提供される。
本発明において、前記エチレン/プロピレン共重合体ブロックが、イソプレン重合体ブロックに水素添加することにより形成されたものであることが好ましい。
本発明において、前記イソプレン重合体ブロック中の全イソプレン単位における、1,4結合が占める割合が、50~100モル%であることが好ましい。
本発明において、前記変性芳香族ビニル重合体ブロックが、変性ブロック共重合体のエンドブロックを構成することが好ましい。
本発明において、前記芳香族ビニル重合体ブロックが、スチレン重合体ブロックであることが好ましい。
本発明において、前記非共有結合性の結合可能な官能基が、水素結合可能な官能基、配位結合可能な官能基、およびイオン結合可能な官能基から選択される少なくとも1種であることが好ましく、イオン結合可能な官能基であることがより好ましく、スルホン酸塩含有基であることがさらに好ましい。また、前記イオン結合可能な官能基が、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンをカウンターカチオンとして有することが好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオンおよびバリウムイオンから選択される金属イオンをカウンターカチオンとして有することがより好ましく、リチウムイオンをカウンターカチオンとして有することがさらに好ましい。
本発明において、前記非共有結合性の結合可能な官能基の導入率が、変性ブロック共重合体中の芳香族ビニル単量体由来の繰り返し単位100モル%に対して、5~75モル%であることが好ましい。
本発明によれば、伸び、引張強度、および、高温での形状維持に優れる変性ブロック共重合体を提供することができる。
図1は、実施例1~3および比較例1の動的粘弾性測定の結果を示すグラフである。 図2は、実施例1~2および比較例1の引張試験の結果を示すグラフである。 図3は、実施例4~6の動的粘弾性測定の結果を示すグラフである。 図4は、実施例4~6の引張試験の結果を示すグラフである。
本発明の変性ブロック共重合体は、芳香族ビニル重合体ブロックに非共有結合性の結合可能な官能基が導入されてなる変性芳香族ビニル重合体ブロックと、エチレン/プロピレン共重合体ブロックとを有するものである。
本発明の変性ブロック共重合体は、芳香族ビニル重合体ブロックと、エチレン/プロピレン共重合体ブロックとを有するブロック共重合体中の、芳香族ビニル重合体ブロックに、非共有結合性の結合可能な官能基を導入してなるものであり、これにより、従来の芳香族ビニル重合体ブロックおよびエチレン/プロピレン共重合体ブロックを有するブロック共重合体と比較して、伸び、引張強度、および、高温での形状維持が向上されたものである。
本発明の変性ブロック共重合体によれば、非共有結合性の結合可能な官能基によって、ポリマー鎖間で非共有結合(共有結合以外の物理的な結合)を形成することで、擬似架橋を形成することができるものである。特に、非共有結合は解離したり再結合したりすることが可能であるため、本発明の変性ブロック共重合体は、非共有結合性の結合可能な官能基を有することにより、従来のブロック共重合体とは異なる特性を実現することが可能である。具体的には、本発明の変性ブロック共重合体は、高温では変性芳香族ビニル重合体ブロックが溶融し流動性を示すが、室温では変性芳香族ビニル重合体ブロックがガラス化し物理的架橋点となり弾性を示す。そして、このような状況において、非共有結合性の結合可能な官能基により形成される非共有結合は、変性ブロック共重合体中の変性芳香族ビニル重合体ブロックによる物理的架橋点とともに、非共有結合性の架橋点として働くため、変性ブロック共重合体の弾性を維持あるいは向上させることができるものである。加えて、本発明の変性ブロック共重合体は、非共有結合性の結合可能な官能基が変性芳香族ビニル重合体ブロックに導入されてなるものであり、遅い伸長速度で長時間引張変形が生じる環境下においても、芳香族ビニル重合体ブロック鎖の引き抜きが抑制されている。そのため、本発明の変性ブロック共重合体は、遅い伸長速度で長時間引張変形が生じる環境下においても、優れた引張特性を実現できるものである。
なお、本明細書において、特に説明がない限り、「ブロック共重合体」とは、ピュアブロック共重合体、ランダムブロック共重合体、およびテーパーブロック構造を有する共重合体のいずれの態様も含む意味である。
<変性芳香族ビニル重合体ブロック>
本発明の変性ブロック共重合体を構成する、変性芳香族ビニル重合体ブロックは、芳香族ビニル重合体ブロックに非共有結合性の結合可能な官能基が導入されてなるものである。
変性芳香族ビニル重合体ブロックの形成に用いる、芳香族ビニル重合体ブロックは、芳香族ビニル単量体単位を主たる繰り返し単位として含有するものである。芳香族ビニル重合体ブロックにおける芳香族ビニル単量体単位の含有量は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、実質的に100質量%であることがさらに好ましい。芳香族ビニル重合体ブロックにおける芳香族ビニル単量体単位の含有量が上記範囲であることにより、伸び、引張強度、および、高温での形状維持のバランスが一層高められた変性ブロック共重合体とすることができる。
芳香族ビニル重合体ブロックのガラス転移温度は、室温(25℃)以上であることが好ましく、そのガラス転移温度はJIS K 7121:2012に記載の方法により決定できる。
芳香族ビニル重合体ブロックの形成に用いる芳香族ビニル単量体としては、芳香族ビニル化合物であれば特に限定されない。芳香族ビニル化合物としては、たとえば、スチレン;α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2-エチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、5-t-ブチル-2-メチルスチレン等のアルキル基を置換基として有するスチレン類;4-アセトキシスチレン、4-(1-エトキシエトキシ)スチレン、4-メトキシスチレン、4-エトキシスチレン、4-t-ブトキシスチレン等のエーテル基やエステル基を置換基として有するスチレン類;2-クロロスチレン、3-クロロスチレン、4-クロロスチレン、4-ブロモスチレン、2,4-ジブロモスチレン等のハロゲン原子を置換基として有するスチレン類;2-メチル-4,6-ジクロロスチレン等のアルキル基とハロゲン原子を置換基として有するスチレン類;ビニルナフタレン;等が挙げられる。これらの芳香族ビニル単量体は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これら芳香族ビニル化合物の中でも、入手の容易さの観点から、スチレン、炭素数1~12のアルキル基を置換基として有するスチレン類、エーテル基やエステル基を置換基として有するスチレン類が好ましく、スチレンを用いることが特に好ましい。すなわち、芳香族ビニル重合体ブロックが、スチレンを主たる繰り返し単位として構成される、スチレン重合体ブロックであることが好ましい。
芳香族ビニル重合体ブロックは、芳香族ビニル単量体単位を主たる繰り返し単位として含有するものである限りにおいて、それ以外の単量体単位を含んでいてもよい。芳香族ビニル重合体ブロックに含まれ得る芳香族ビニル単量体単位以外の単量体単位を構成する単量体としては、1,3-ブタジエン、イソプレン(2-メチル-1,3-ブタジエン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン等の共役ジエン単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β-不飽和ニトリル単量体;無水マレイン酸、ブテニル無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水シトラコン酸等の不飽和カルボン酸無水物単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル等の不飽和カルボン酸エステル単量体;1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン等の好ましくは炭素数が5~12の非共役ジエン単量体;等が挙げられる。これらの単量体は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
芳香族ビニル重合体ブロックにおける芳香族ビニル単量体単位以外の単量体単位の含有量は、芳香族ビニル重合体ブロック全体に対して、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、実質的に0質量%であることが特に好ましい。
変性芳香族ビニル重合体ブロックは、上記の芳香族ビニル重合体ブロックを構成する芳香族ビニル単量体単位のうち、少なくとも一部に、非共有結合性の結合可能な官能基が導入されてなるものである。
芳香族ビニル単量体単位中の芳香族環への、非共有結合性の結合可能な官能基の結合位置は、特に限定されず、オルト位、メタ位、パラ位のいずれであってもよい。中でも、非共有結合性の結合可能な官能基の導入が容易であることから、主としてパラ位に非共有結合性の結合可能な官能基が導入されていることが好ましい。
非共有結合性の結合可能な官能基は、たとえば、芳香族ビニル重合体ブロックを構成する芳香族ビニル単量体単位に直接結合していてもよく、連結基を介して結合していてもよい。
非共有結合性の結合可能な官能基としては、水素結合可能な官能基、配位結合可能な官能基、イオン結合可能な官能基等を挙げることができる。これらの中でも、イオン結合可能な官能基(以下、イオン結合可能な官能基を、「イオン性基」ということがある。)が好ましい。
非共有結合性の結合の中でも、イオン性相互作用は結合力が強いことから、変性ブロック共重合体が非共有結合性の結合可能な官能基としてイオン性基を有することにより、非共有結合性の結合可能な官能基による効果をより効果的に発揮することができる。
イオン性基は、芳香族ビニル単量体単位への導入が容易であるという観点より、アレニウス酸およびアレニウス塩基を混合し、中和することで生成するイオン性基、および/または、ブレンステッド酸およびブレンステッド塩基を混合し、中和することで生成する、アニオン性基とカウンターカチオンとの塩からなるイオン性基であることが好ましい。
イオン性基としては、具体的には、カルボン酸アニオンとカウンターカチオンとの塩からなるイオン性基(カルボン酸塩含有基)、リン酸アニオンとカウンターカチオンとの塩からなるイオン性基(リン酸塩含有基)、スルホン酸アニオンとカウンターカチオンとの塩からなるイオン性基(スルホン酸塩含有基)、アルコールのヒドロキシ基からプロトンを除去したアニオンとカウンターカチオンとの塩からなるイオン性基等を挙げることができる。中でも、芳香族ビニル単量体単位への導入が容易であるという観点より、イオン性基は、スルホン酸塩含有基であることが好ましい。
イオン性基を構成するカウンターカチオンとしては、たとえば、ナトリウムイオン、リチウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン;マグネシウムイオン、カルシウムイオン、バリウムイオン等のアルカリ土類金属イオン;アンモニウムイオン;ピリジニウムイオン;イミダゾリウムイオン等が挙げられる。中でも、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属塩イオンが好ましく、ナトリウムイオン、リチウムイオン、カリウムイオン、バリウムイオンがより好ましい。また、反応の容易さや、経済性等の面から、カウンターカチオンがリチウムイオンであることも、好適な態様の1つである。
水素結合可能な官能基としては、アミド基、イミド基、ウレタン結合、カルボキシル基、ヒドロキシル基等を挙げることができる。
本発明の変性ブロック共重合体における、非共有結合性の結合可能な官能基の導入率は、特に限定されないが、変性ブロック共重合体中の芳香族ビニル単量体由来の繰り返し単位100モル%に対して、好ましくは5~75モル%であり、より好ましくは10~60モル%であり、さらに好ましくは20~50モル%であり、特に好ましくは25~45モル%であり、最も好ましくは30~40モル%である。非共有結合性の結合可能な官能基の導入率を上記範囲とすることにより、非共有結合性の結合可能な官能基の再配列が生じる前に物理的架橋点に応力が集中してしまい、これにより、破断を生じやすくなってしまうことを有効に防止しながら、非共有結合性の結合可能な官能基の導入効果を適切に高めることができる。非共有結合性の結合可能な官能基の導入率は、たとえば、非共有結合性の結合可能な官能基の導入に用いる変性剤の量や、変性反応時間を調整することにより、調整することができる。なお、非共有結合性の結合可能な官能基の導入率は、H-NMRを用いて算出することができる。また、非共有結合性の結合可能な官能基が導入されたことは、H-NMRおよび/または赤外分光分析により確認することができる。
<エチレン/プロピレン共重合体ブロック>
本発明の変性ブロック共重合体を構成する、エチレン/プロピレン共重合体ブロックは、エチレン単位およびプロピレン単位を主たる繰り返し単位として含有するものである。
エチレン/プロピレン共重合体ブロックにおける、エチレン単位およびプロピレン単位の含有量の合計は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、実質的に100質量%であることがさらに好ましい。エチレン/プロピレン共重合体ブロックにおけるエチレン単位およびプロピレン単位の含有量の合計が上記範囲であることにより、伸び、引張強度、および、高温での形状維持のバランスが一層高められた変性ブロック共重合体とすることができる。
エチレン/プロピレン共重合体ブロックは、エチレン単位およびプロピレン単位を主たる繰り返し単位として含有するものである限りにおいて、それ以外の単量体単位を含んでいてもよい。エチレン/プロピレン共重合体ブロックに含まれ得るエチレン単位およびプロピレン単位以外の単量体単位を構成する単量体としては、共役ジエン単量体;芳香族ビニル単量体;α,β-不飽和ニトリル単量体;不飽和カルボン酸無水物単量体;不飽和カルボン酸エステル単量体;非共役ジエン単量体;等が例示される。なお、各単量体の具体例については、上述の芳香族ビニル重合体ブロックに含まれ得る芳香族ビニル単量体単位以外の単量体単位を構成する単量体と同様とすることができる。これらの単量体は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
エチレン/プロピレン共重合体ブロックにおける、エチレン単位およびプロピレン単位以外の単量体単位の含有量は、エチレン/プロピレン共重合体ブロック全体に対して、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、実質的に0質量%であることが特に好ましい。
また、エチレン/プロピレン共重合体ブロックは、イソプレン重合体ブロックに水素添加することにより形成されたものであることが好ましい。
エチレン/プロピレン共重合体ブロックの形成に用いることができるイソプレン重合体ブロックは、イソプレン単位を主たる繰り返し単位として含有するものであればよい。イソプレン重合体ブロックにおける、イソプレン単位の含有量は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、実質的に100質量%であることがさらに好ましい。
エチレン/プロピレン共重合体ブロックのガラス転移温度は室温(25℃)よりも十分に低いことが好ましく、そのガラス転移温度はJIS K 7121:2012に記載の方法により決定できる。
イソプレン単位の含有量が上記範囲であることにより、伸び、引張強度、および、高温での形状維持のバランスが一層高められた変性ブロック共重合体とすることができる。
イソプレン重合体ブロックは、イソプレン単位を主たる繰り返し単位として含有するものである限りにおいて、それ以外の単量体単位を含んでいてもよい。イソプレン重合体ブロックに含まれ得るイソプレン単位以外の単量体単位を構成する単量体としては、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン等のイソプレン以外の共役ジエン単量体;芳香族ビニル単量体;α,β-不飽和ニトリル単量体;不飽和カルボン酸無水物単量体;不飽和カルボン酸エステル単量体;非共役ジエン単量体;等が例示される。なお、各単量体の具体例については、上述の芳香族ビニル重合体ブロックに含まれ得る芳香族ビニル単量体単位以外の単量体単位を構成する単量体と同様とすることができる。これらの単量体は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
イソプレン重合体ブロックの1,4結合含有量(イソプレン重合体ブロック中の全イソプレン単位において、シス-1,4結合およびトランス-1,4結合が占める割合)は、特に限定されないが、好ましくは20~100モル%であり、より好ましくは50~100モル%であり、さらに好ましくは70~99モル%であり、特に好ましくは80~98モル%であり、最も好ましくは85~97モル%である。イソプレン重合体ブロックの1,4結合含有量が上記範囲であることにより、伸び、引張強度、および、高温での形状維持のバランスが一層高められた変性ブロック共重合体とすることができる。
イソプレン重合体ブロックのビニル結合含有量(イソプレン重合体ブロック中の全イソプレン単位において、1,2-ビニル結合および3,4-ビニル結合が占める割合)は、特に限定されないが、好ましくは0~80モル%であり、より好ましくは0~50モル%であり、さらに好ましくは1~30モル%であり、特に好ましくは2~20モル%であり、最も好ましくは3~15モル%である。イソプレン重合体ブロックのビニル結合含有量が上記範囲であることにより、伸び、引張強度、および、高温での形状維持のバランスが一層高められた変性ブロック共重合体とすることができる。なお、イソプレン重合体ブロックの1,4結合含有量およびビニル結合含有量は、H-NMRを用いて測定することができる。
なお、熱可塑性エラストマーとしては、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)に水素添加してなるスチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)が知られている。スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)は、1,4結合を比較的多く(たとえば50モル%以上)含有するブタジエン重合体ブロック由来のエチレン/ブチレン共重合体ブロックを有する場合には、ゴム弾性が発現されにくく、伸びに劣るものとなる傾向がある。これに対し、本発明の変性ブロック共重合体は、1,4結合を比較的多く(たとえば50モル%以上)含有するイソプレン重合体ブロック由来のエチレン/プロピレン共重合体ブロックを有する場合にも、優れたゴム弾性が発現され、その結果、優れた伸び、引張強度、および、高温での形状維持が発現される。
なお、イソプレン重合体ブロックが、シス-1,4結合、トランス-1,4結合、1,2-ビニル結合、および、3,4-ビニル結合のいずれかを有するイソプレン単位を含む場合、イソプレン重合体ブロックに水素添加することにより形成されるエチレン/プロピレン共重合体ブロックは、通常、それぞれ、シス-1,4結合、トランス-1,4結合、1,2-ビニル結合、および、3,4-ビニル結合のいずれかを有するイソプレン単位に水素添加してなる繰り返し単位を含む。
イソプレン重合体ブロックを水素添加することにより形成されるエチレン/プロピレン共重合体ブロックは、イソプレン重合体ブロック中のイソプレン単位のうち、少なくとも一部に対して水素添加してなるものであればよいが、実質的に全てのイソプレン単位に対して水素添加してなるものであることが好ましい。イソプレン重合体ブロックに水素添加することにより形成されるエチレン/プロピレン共重合体ブロックの水添率は、特に限定されないが、80~100%の範囲であることが好ましく、90~100%の範囲であることがより好ましく、95~100%の範囲であることがさらに好ましく、98~100%の範囲であることが特に好ましく、99~100%の範囲であることが特に好ましい。ここで、エチレン/プロピレン共重合体ブロックの水添率とは、イソプレン重合体ブロック中に含まれる全炭素-炭素二重結合のうち、水素化されたものの割合(モル%)である。エチレン/プロピレン共重合体ブロックの水添率が上記範囲であることにより、伸び、引張強度、および、高温での形状維持のバランスが一層高められた変性ブロック共重合体とすることができる。
<変性ブロック共重合体>
本発明の変性ブロック共重合体は、上述した変性芳香族ビニル重合体ブロックと、エチレン/プロピレン共重合体ブロックとを有する。本発明の変性ブロック共重合体は、少なくとも1つの変性芳香族ビニル重合体ブロックと、少なくとも1つのエチレン/プロピレン共重合体ブロックとを有するものであれば、各重合体ブロックの数やそれらの結合形態は特に限定されない。
本発明の変性ブロック共重合体の形態の具体例としては、Aが変性芳香族ビニル重合体ブロックを表し、Bがエチレン/プロピレン共重合体ブロックを表し、Xが単結合またはカップリング剤の残基を表し、nが2以上の整数を表すものとした場合において、A-Bとして表されるブロック共重合体、A-B-Aまたは(A-B)-Xとして表されるブロック共重合体、B-A-Bまたは(B-A)-Xとして表されるブロック共重合体、A-B-A-Bとして表されるブロック共重合体を挙げることができるが、これらに限定されない。中でも、変性ブロック共重合体としては、A-B、A-B-Aまたは(A-B)-Xとして表されるブロック共重合体が好適であり、A-B-Aとして表されるブロック共重合体がより好適である。すなわち、変性芳香族ビニル重合体ブロックが、本発明の変性ブロック共重合体のエンドブロックを構成することが好ましく、変性芳香族ビニル重合体ブロックが、本発明の変性ブロック共重合体に含まれる全てのエンドブロックを構成することがより好ましい。
本発明の変性ブロック共重合体が、A-B-Aとして表されるブロック共重合体である場合、変性ブロック共重合体は、2つの変性芳香族ビニル重合体ブロック(A)および1つのエチレン/プロピレン共重合体ブロック(B)を有する。この場合において、2つの変性芳香族ビニル重合体ブロック同士は、同一であっても、相異なっていてもよいが、実質的に同一であることが好ましい。この2つの変性芳香族ビニル重合体ブロックのうち、重量平均分子量が小さい方の変性芳香族ビニル重合体ブロックの重量平均分子量(Mwsmall)に対する、重量平均分子量が大きい方の変性芳香族ビニル重合体ブロックの重量平均分子量(Mwlarge)の比率(Mwlarge/Mwsmall)は、特に限定されないが、1.0~4.0であることが好ましく、1.0~2.0であることがより好ましく、1.0~1.5であることがさらに好ましく、1.0~1.2であることが特に好ましく、1.0~1.1であることが最も好ましい。重量平均分子量の比率(Mwlarge/Mwsmall)が上記範囲であることにより、伸び、引張強度、および、高温での形状維持のバランスが一層高められた変性ブロック共重合体とすることができる。
本発明の変性ブロック共重合体が、複数の変性芳香族ビニル重合体ブロックを有する場合においては、複数の変性芳香族ビニル重合体ブロック同士は、同一であっても、相異なっていてもよい。たとえば、複数の変性芳香族ビニル重合体ブロック同士は、同一または相異なる芳香族ビニル単量体単位を主たる繰り返し単位として含有する芳香族ビニル重合体ブロックに対し、同一または相異なる非共有結合性の結合可能な官能基が導入されてなるものであってよい。また、本発明の変性ブロック共重合体が、複数のエチレン/プロピレン共重合体ブロックを有する場合においては、複数のエチレン/プロピレン共重合体ブロック同士は、同一であっても、相異なっていてもよい。
変性ブロック共重合体の重量平均分子量は、特に限定されないが、好ましくは20,000~200,000、より好ましくは25,000~150,000、さらに好ましくは30,000~70,000である。変性ブロック共重合体の重量平均分子量が上記範囲であることにより、伸び、引張強度、および、高温での形状維持のバランスが一層高められた変性ブロック共重合体とすることができる。
変性ブロック共重合体における、変性芳香族ビニル重合体ブロックが占める割合は、好ましくは10~65重量%であり、より好ましくは13~60重量%、さらに好ましくは15~57重量%である。また、変性ブロック共重合体における、エチレン/プロピレン共重合体ブロックが占める割合は、好ましくは35~90重量%であり、より好ましくは40~87重量%、さらに好ましくは43~85重量%である。変性ブロック共重合体における、各重合体ブロックが占める割合が上記範囲であることにより、伸び、引張強度、および、高温での形状維持のバランスが一層高められた変性ブロック共重合体とすることができる。
変性ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表される分子量分布も、特に限定されないが、それぞれ、好ましくは1.8以下であり、より好ましくは1.3以下、さらに好ましくは1.1以下である。変性ブロック共重合体の分子量分布が上記範囲であることにより、伸び、引張強度、および、高温での形状維持のバランスが一層高められた変性ブロック共重合体とすることができる。
また、変性ブロック共重合体の各重合体ブロックの重量平均分子量も特に限定されない。変性芳香族ビニル重合体ブロックの重量平均分子量は、好ましくは2,000~40,000であり、より好ましくは2,500~30,000、さらに好ましくは3,000~10,000、特に好ましくは3,500~6,000である。また、エチレン/プロピレン共重合体ブロックの重量平均分子量は、好ましくは好ましくは10,000~300,000であり、より好ましくは15,000~300,000、さらに好ましくは15,000~150,000、さらにより好ましくは20,000~80,000、特に好ましくは25,000~50,000である。各重合体ブロックの重量平均分子量が上記範囲であることにより、伸び、引張強度、および、高温での形状維持のバランスが一層高められた変性ブロック共重合体とすることができる。
なお、本明細書において、重合体や重合体ブロックの重量平均分子量や、分子量分布(Mw/Mn)は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とする高速液体クロマトグラフィの測定による、ポリスチレン換算の値として求めるものとする。
変性ブロック共重合体のヨウ素価は、0~100gI/100gの範囲内であることが好ましく、0~50gI/100gの範囲内であることがより好ましく、0~25gI/100gの範囲内であることがさらに好ましく、0~10gI/100gの範囲内であることが特に好ましい。変性ブロック共重合体のヨウ素価が上記範囲であることにより、伸び、引張強度、および、高温での形状維持のバランスが一層高められた変性ブロック共重合体とすることができる。
変性ブロック共重合体の軟化温度は、特に限定されないが、好ましくは100℃以上、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは200℃以上である。本発明の変性ブロック共重合体は、比較的高い軟化温度を有し、高温での形状維持に優れるものである。本明細書において、軟化温度は、JIS K 7196に基づき、熱機械分析装置を使用して、昇温速度5℃/分で、針侵入モードで測定する。
<ブロック共重合体の製造方法>
本発明の変性ブロック共重合体の製造方法としては、芳香族ビニル重合体ブロックと、エチレン/プロピレン共重合体ブロックとを有する、変性前のブロック共重合体を用意し、この変性前のブロック共重合体中の、芳香族ビニル重合体ブロックに、非共有結合性の結合可能な官能基を導入する製造方法が好適である。
芳香族ビニル重合体ブロックと、エチレン/プロピレン共重合体ブロックとを有する、変性前のブロック共重合体は、常法に従って製造することが可能である。たとえば、芳香族ビニル重合体ブロックと、イソプレン共重合体ブロックとを有する、水添前のブロック共重合体中のイソプレン単位に対して水素添加を行う方法により、好適に製造することができる。
水添前のブロック共重合体は、たとえば、ラジカルリビング重合やカチオンリビング重合、開環メタセシス重合等を用いて製造することができる。最も一般的な製造法としては、アニオンリビング重合法により、芳香族ビニル単量体とイソプレンとをそれぞれ逐次的に重合して重合体ブロックを形成し、必要に応じて、カップリング剤を反応させてカップリングを行う方法を挙げることができる。
カップリング剤としては、たとえば、ケイ素原子に直接結合したアルコキシ基を1分子あたり2個以上有するアルコキシシラン化合物を用いることができる。アルコキシシラン化合物の具体例としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジメチルジフェノキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、ジエチルジフェノキシシランなどのジアルキルジアルコキシシラン化合物;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、エチルトリフェノキシシランなどのモノアルキルトリアルコキシシラン化合物;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、テトラトルイロキシシランなどのテトラアルコキシシラン化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、アリルトリメトキシシラン、オクテニルトリメトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、スチリルトリメトキシシランなどのアルケニルアルコシキシシラン化合物;フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、フェニルトリブトキシシラン、フェニルトリフェノキシシランなどのアリールアルコキシシラン化合物;トリメトキシクロロシラン、トリエトキシクロロシラン、トリプロポキシクロロシラン、トリブトキシクロロシラン、トリフェノキシクロロシラン、ジメトキシジクロロシラン、ジプロポキシジクロロシラン、ジフェノキシジクロロシラン、メトキシトリクロロシラン、エトキシトリクロロシラン、プロポキシトリクロロシラン、フェノキシトリクロロシラン、トリメトキシブロモシラン、トリエトキシブロモシラン、トリプロポキシブロモシラン、トリフェノキシブロモシラン、ジメトキシジブロモシラン、ジエトキシジブロモシラン、ジフェノキシジブロモシラン、メトキシトリブロモシラン、エトキシトリブロモシラン、プロポキシトリブロモシラン、フェノキシトリブロモシラン、トリメトキシヨードシラン、トリエトキシヨードシラン、トリプロポキシヨードシラン、トリフェノキシヨードシラン、ジメトキシジヨードシラン、ジエトキシジヨードシラン、ジプロポキシヨードシラン、メトキシトリヨードシラン、エトキシトリヨードシラン、プロポキシトリヨードシラン、フェノキシトリヨードシランなどのハロゲノアルコキシシラン化合物;β-クロロエチルメチルジメトキシシラン、γ-クロロプロピルメチルジメトキシシランなどのハロゲノアルキルアルコキシシラン化合物;ヘキサメトキシジシラン、ヘキサエトキシジシラン、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリメトキシシリル)プロパン、ビス(トリエトキシシリル)プロパン、ビス(トリメトキシシリル)ブタン、ビス(トリエトキシシリル)ブタン、ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、ビス(トリエトキシシリル)ヘプタン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン、ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、ビス(トリメトキシシリル)シクロヘキサン、ビス(トリエトキシシリル)シクロヘキサン、ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)エタンなどが挙げられる。
また、カップリング剤としては、たとえば、ジクロロシラン、モノメチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン等の2官能性ハロゲン化シラン;ジクロロエタン、ジブロモエタン、メチレンクロライド、ジブロモメタン等の2官能性ハロゲン化アルカン;ジクロロスズ、モノメチルジクロロスズ、ジメチルジクロロスズ、モノエチルジクロロスズ、ジエチルジクロロスズ、モノブチルジクロロスズ、ジブチルジクロロスズ等の2官能性ハロゲン化スズ;等を用いることもできる。
これらのカップリング剤は、1種類を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記にて得られた水添前のブロック共重合体中のイソプレン単位に対して、水素添加を行う方法としては、特に限定されないが、たとえば、水素化触媒の存在下において、水添前のブロック共重合体を、水素と接触させる方法などが挙げられる
水素化触媒としては、特に限定されないが、たとえば、Ni、Pt、Pd、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等の担体に担持させた担持型不均一系触媒と、Ni、Co、Fe、Crなどの有機塩またはアセチルアセトン塩と有機Alなどの還元剤とを用いるチーグラー型触媒;Ru、Rhなどの有機金属化合物などの有機錯体触媒;チタノセン化合物に還元剤として有機Li、有機Al、有機Mgなどを用いる均一触媒;などが挙げられる。このなかでも、チーグラー型触媒が好ましい。
水素化反応は、たとえば、特公昭42-8704号公報、特公昭43-6636号公報、特開昭59-133203号公報、特開昭60-220147号公報等に開示されている方法に従って行うことができる。
水素化反応の条件は、目的とする変性ブロック共重合体のヨウ素価に応じて選択すればよいが、水素添加反応温度は、好ましくは0~200℃であり、より好ましくは30~150℃である。また、水素添加反応に使用される水素の圧力は、好ましくは0.1~15MPaであり、より好ましくは0.2~10MPa、さらに好ましくは0.3~5MPaであり、水素添加反応時間は、好ましくは3分~10時間であり、より好ましくは10分~5時間である。なお、水素添加反応は、バッチプロセス、連続プロセス、あるいはこれらの組み合わせのいずれであってもよい。
上記のように、芳香族ビニル重合体ブロックと、イソプレン共重合体ブロックとを有する、水添前のブロック共重合体中のイソプレン単位に対して水素添加を行うことにより、芳香族ビニル重合体ブロックと、エチレン/プロピレン共重合体ブロックとを有する、変性前のブロック共重合体を得ることができる。なお、変性前のブロック共重合体は、上記の方法以外の方法によって得てもよい。たとえば、芳香族ビニル重合体ブロックを形成するための単量体混合物と、エチレン/プロピレン共重合体ブロックを形成するための単量体混合物と、をそれぞれ逐次的に重合して重合体ブロックを形成し、必要に応じて、カップリング剤を反応させてカップリングを行う方法を採用してもよい。
変性前のブロック共重合体中の芳香族ビニル重合体ブロックに、非共有結合性の結合可能な官能基を導入する方法としては、芳香族ビニル重合体単位に非共有結合性の結合可能な官能基を導入できる方法であればよく、たとえば、変性剤による変性方法、官能基変換反応を用いる方法等が挙げられる。中でも、変性剤による変性方法が好ましい。
また、変性剤による変性方法を用いる場合、変性剤による変性によって非共有結合性の結合可能な官能基を導入してもよく、変性剤による変性後、さらに反応させることによって非共有結合性の結合可能な官能基を導入してもよい。
変性剤としては、目的とする非共有結合性の結合可能な官能基を、芳香族ビニル単位に導入することができるものとして公知のものを、適宜採用することができる。たとえば、非共有結合性の結合可能な官能基としてのイオン基性基を導入する場合には、変性剤として、酸または塩基を用いることができる。変性剤は、単独でまたは2種以上を組合せて用いることができる。
より具体的には、非共有結合性の結合可能な官能基としてのスルホン酸基を導入する場合には、変性剤として、スルホン化剤を用いることができる。以下、非共有結合性の結合可能な官能基としてのスルホン酸基を導入する場合について例示する。
スルホン化剤としては、硫酸アセチル等の硫酸アシル、三酸化硫黄とリン酸トリアルキル(リン酸トリエチル等)との錯体などが挙げられ、中でも、硫酸アシルが好ましく、硫酸アセチルがより好ましい。スルホン化剤としての硫酸アセチルは、たとえば、溶媒および無水酢酸を含む溶液中に、濃硫酸を滴下することで、硫酸アセチルの溶液として調製することができる。この場合に用いる溶媒としては、たとえば、1,2-ジクロロエタンを用いることができる。
変性前のブロック共重合体とスルホン化剤とを反応させる方法としては、たとえば、不活性ガス雰囲気下で、変性前のブロック共重合体とスルホン化剤とを、溶媒中で混合する方法が挙げられる。不活性ガスとしては、たとえば、アルゴンを用いることができる。また、溶媒としては、たとえば、1,2-ジクロロエタンを用いることができる。また、変性反応の際に、必要に応じて、希釈剤、ゲル化防止剤および反応促進剤などを存在させてもよい。
スルホン化剤の使用量は、目的とするスルホン酸基の導入率が達成できる量とすればよく、特に限定されないが、変性前のブロック共重合体中の、芳香族ビニル単量体由来の繰り返し単位100モル%に対して、好ましくは10~1500モル%であり、より好ましくは100~1000モル%であり、さらに好ましくは200~800モル%である。
変性前のブロック共重合体とスルホン化剤との反応条件は、特に限定されないが、反応温度は、20~60℃であることが好ましく、30~40℃であることがより好ましく、反応時間は、10~120分であることが好ましく、20~60分であることがより好ましい。
さらに、変性反応後には、未反応のスルホン化剤を除去することが好ましい。スルホン化剤を除去する方法としては、特に限定されないが、たとえば、洗浄、中和、ろ過、乾燥等を挙げることができる。
上記のようにして、芳香族ビニル重合体ブロックにスルホン酸基を導入することができる。なお、変性剤として、スルホン化剤を用いる場合について例示したが、これに限定されることはなく、目的とする非共有結合性の結合可能な官能基を、芳香族ビニル単位に導入することができるものとして公知のものを、変性剤として適宜採用することにより、種々の非共有結合性の結合可能な官能基を導入してもよい。
変性剤として、酸または塩基を用いて、芳香族ビニル重合体ブロックに変性剤由来の基を導入した場合には、さらに、中和反応を生じさせることにより、芳香族ビニル重合体ブロックにイオン性基を導入することができる。たとえば、変性剤として酸を用いて、芳香族ビニル重合体ブロックに、変性剤由来の変性基を導入した後には、さらに、塩基を用いて中和反応を生じさせることにより、芳香族ビニル重合体ブロックに、変性剤由来のアニオン性基および塩基由来のカウンターカチオンからなるイオン性基を導入することができる。
このような中和反応に用いることができる塩基としては、目的とするイオン性基が有するカウンターカチオンの種類や、変性剤由来の変性基との反応性等に応じて選択すればよく、特に限定されないが、たとえば、金属含有化合物、アンモニウム、アミン化合物、ピリジン、イミダゾール等の、アレニウス塩基および/またはブレンステッド塩基を用いることができる。中でも、安定して上記イオン性基を生成することができるという観点より、アルカリ金属含有化合物およびアルカリ土類金属含有化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。アルカリ金属含有化合物としては、たとえば、ナトリウム、リチウム、カリウム等のアルカリ金属のアルコキシド、酸化物、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、酢酸塩、硫酸塩、リン酸塩等が挙げられる。アルカリ土類金属含有化合物としては、たとえば、マグネシウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属のアルコキシド、酸化物、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、酢酸塩、硫酸塩、リン酸塩等が挙げられる。
たとえば、カウンターカチオンとしてナトリウムイオンを有するスルホン酸塩含有基を目的とする場合には、ナトリウムメトキシドを用いることが好ましく、カウンターカチオンとしてリチウムイオンを有するスルホン酸塩含有基を目的とする場合には、リチウムメトキシドを用いることが好ましく、カウンターカチオンとしてカリウムイオンを有するスルホン酸塩含有基を目的とする場合には、カリウムメトキシドを用いることが好ましく、カウンターカチオンとしてバリウムイオンを有するスルホン酸塩含有基を目的とする場合には、バリウムエトキシドを用いることが好ましい。
このような中和反応に用いる酸または塩基の量は、変性ブロック共重合体に導入された変性基に対して、等モル以上とすることができ、具体的には1~2倍モル程度とすることができる。
このような中和反応は、無溶媒で行ってもよく、溶媒中で行ってもよい。中和反応を溶媒中で行う場合、溶媒としては、たとえば、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,1-ジクロロエタン等の炭素数1~2の脂肪族ハロゲン化炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン等の脂肪族環状炭化水素、ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,2-ジメトキシエタン、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ピロリドン、水等が挙げられる。溶媒は、単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
このような中和反応の反応温度は、変性ブロック共重合体に導入された変性基の種類および酸または塩基の種類に応じて異なるが、たとえば、0~200℃とすることができ、好ましくは10~150℃である。また、反応時間は、反応温度によって異なるが、たとえば、1分間~40時間とすることができ、好ましくは3分間~2時間である。
このような中和反応の後には、残留している酸または塩基を除去することが好ましい。除去方法は、酸または塩基の種類等に応じて適宜選択され、たとえば、洗浄、中和、ろ過、乾燥等を挙げることができる。
本発明の変性ブロック共重合体は、その用途に応じて、本発明の変性ブロック共重合体以外の他の成分と混合して用いることができる。他の成分としては、たとえば、本発明の変性ブロック共重合体以外の他の重合体、粘着付与樹脂、軟化剤、酸化防止剤、抗菌剤、光安定剤、紫外線吸収剤、染料、滑剤、架橋剤、架橋促進剤などの添加剤が挙げられる。
他の重合体としては、特に限定されないが、本発明の変性ブロック共重合体以外のブロック共重合体、芳香族ビニル重合体、ポリオレフィン重合体、ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル重合体、ポリカーボネート樹脂、ポリ(4-スチレンスルホン酸ナトリウム)、ポリスチレン系樹脂、スチレン-マレイミド系共重合体、スチレン-N-フェニルマレイミド-メタクリル酸メチル共重合体、アクリロニトリル-スチレン共重合体、ABS系共重合体樹脂、メタクリル酸メチル系樹脂等が挙げられる。他の重合体は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の変性ブロック共重合体と、上述した他の重合体などのその他の成分とを混合する方法は特に限定されない。たとえば、それぞれの成分を溶剤に溶解し均一に混合した後、溶剤を加熱等により除去する方法、各成分をスクリュー押出機やニーダー等で溶融混合する方法を挙げることができる。
本発明の変性ブロック共重合体の用途は、特に限定されるものではなく、例えば医療分野、接着分野、電子分野、光学分野等、様々な技術分野が挙げられる。特に、本発明の変性ブロック共重合体は、伸び、引張強度、および、高温での形状維持に優れるものであるため、これらの特性が要求される材料として好適に用いることができる。例えば、フィルム、手袋、エラスティックバンド、避妊具、OA機器、事務用等の各種ロール、電気電子機器用防振シート、防振ゴム、衝撃吸収シート、衝撃緩衝フィルム・シート、住宅用制振シート、制振ダンパー材等に用いられる成形材料用途、粘着テープ、粘着シート、粘着ラベル、ゴミ取りローラー等に用いられる粘着剤用途、衛生用品や製本に用いられる接着剤用途、衣料、スポーツ用品等に用いられる弾性繊維用途等を挙げることができる。
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に断りのない限り質量基準である。
[合成例1]
(1)水添前のブロック共重合体の製造
耐圧反応器に、シクロヘキサン56.6kg、ジブチルエーテル518ミリモル、およびスチレン1.5kgを添加した。全容を40℃で攪拌しながら、n-ブチルリチウム(1.6M溶液)278ミリモルを添加した。添加終了後、50℃に昇温して1時間重合反応を行った(重合1段目)。このときのスチレンの重合転化率は100重量%であった。
引き続き、50~60℃を保つように温度制御しながら、反応器に、イソプレン7.0kgを1時間にわたり連続的に添加した。イソプレンの添加を完了した後、さらに1時間重合反応を行った(重合2段目)。このときのイソプレンの重合転化率は100%であった。
次いで、50~60℃を保つように温度制御しながら、スチレン1.5kgを1時間にわたり連続的に添加した。スチレンの添加を完了した後、さらに1時間重合反応を行うことで、活性末端を有するスチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体を含有する溶液を得た(重合3段目)。このときのスチレンの重合転化率は100%であった。
最後に、重合停止剤として、メタノール555ミリモルを添加して、混合することにより、活性末端を有するスチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体の活性末端を全て失活させて、重合反応を完了させ、これにより、水添前のブロック共重合体(スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体)を含む溶液を得た。反応に用いた各試剤の量を表1にまとめて示す。
(2)水添前のブロック共重合体の水素添加反応
上記にて得られた水添前のブロック共重合体を含む溶液に対し、水素添加反応を行うことにより、水添ブロック共重合体を含む溶液を得た。水素添加反応は、上記にて得られた水添前のブロック共重合体を含む溶液に、水素添加触媒として、Ni(AcAc)2-TIBAL触媒を、水添前のブロック共重合体に対して0.5重量%の割合で添加し、水素圧力3MPa、反応温度80℃、反応時間3時間の条件で行った。
このようにして得られた水添ブロック共重合体を含む溶液の一部を取り出し、水添ブロック共重合体の重量平均分子量、各スチレン重合体ブロック(Ar1,Ar2)の重量平均分子量〔Mw(Ar1)、Mw(Ar2)〕、スチレン単位含有量、(水添)イソプレン重合体ブロックの重量平均分子量、(水添)イソプレン重合体ブロックの1,4結合含有量、ビニル結合含有量、およびヨウ素価を求めた。これらの値を、表2にまとめて示す。
なお、ブロック共重合体についての測定は、以下の方法により行った。
〔ブロック共重合体の重量平均分子量〕
流速0.35ml/分のテトラヒドロフランをキャリアとする高速液体クロマトグラフィによりポリスチレン換算分子量として求めた。装置は、東ソー社製HLC8320、カラムは昭和電工社製Shodex(登録商標)KF-404HQを3本連結したもの(カラム温度40℃)、検出器は示差屈折計および紫外検出器を用い、分子量の較正はポリマーラボラトリー社製の標準ポリスチレン(500から300万)の12点で実施した。
〔各スチレン重合体ブロック(Ar1,Ar2)の重量平均分子量〔Mw(Ar1)、Mw(Ar2)〕〕
Rubber Chem.Technol.,45,1295(1972)に記載された方法に従い、水添前のブロック共重合体をオゾンと反応させ、水素化リチウムアルミニウムで還元することにより、水添前のブロック共重合体のイソプレン重合体ブロックを分解した。
具体的には、以下の手順で行なった。すなわち、モレキュラーシーブで処理したジクロロメタン100mlを入れた反応容器に、試料を300mg溶解した。この反応容器を冷却槽に入れ-25℃としてから、反応容器に170ml/minの流量で酸素を流しながら、オゾン発生器により発生させたオゾンを導入した。反応開始から30分経過後、反応容器から流出する気体をヨウ化カリウム水溶液に導入することにより、反応が完了したことを確認した。次いで、窒素置換した別の反応容器に、ジエチルエーテル50mlと水素化リチウムアルミニウム470mgを仕込み、氷水で反応容器を冷却しながら、この反応容器にオゾンと反応させた溶液をゆっくり滴下した。そして、反応容器を水浴に入れ、徐々に昇温して、40℃で30分間還流させた。その後、溶液を撹拌しながら、反応容器に希塩酸を少量ずつ滴下し、水素の発生がほとんど認められなくなるまで滴下を続けた。この反応の後、溶液に生じた固形の生成物をろ別し、固形の生成物は、100mlのジエチルエーテルで10分間抽出した。この抽出液と、ろ別した際のろ液とをあわせ、溶媒を留去することにより、固形の試料を得た。このようにして得られた試料について、上記の重量平均分子量の測定法に従い、重量平均分子量を測定し、その値をスチレン重合体ブロックの重量平均分子量とした。
〔スチレン単位含有量〕
上記の高速液体クロマトグラフィの測定における、示差屈折計と紫外検出器との検出強度比に基づいて求めた。なお、予め、異なるスチレン単位含有量を有する共重合体を用意し、それらを用いて、検量線を作成した。
〔水添イソプレン重合体ブロックの重量平均分子量〕
上記のようにして求められた、水添ブロック共重合体の重量平均分子量から、対応するスチレン重合体ブロックの重量平均分子量を引き、その計算値に基づいて、水添イソプレン重合体ブロックの重量平均分子量を求めた。
〔水添イソプレン重合体ブロックの1,4結合含有量およびビニル結合含有量〕
プロトンNMRの測定に基づき求めた。
〔ヨウ素価〕
JIS K0070に準拠して測定した。
(3)水添ブロック共重合体組成物の回収、成形
以上のようにして得られた水添ブロック共重合体組成物を含む溶液100部に、酸化防止剤として、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール0.3部を加えて混合し、混合溶液を少量ずつ85~95℃に加熱された温水中に滴下して、溶媒を揮発させて析出物を得た。得られた析出物を粉砕し、85℃で熱風乾燥することにより、ポリスチレン-ポリ(エチレン-co-プロピレン)-b-ポリスチレントリブロック共重合体(以下、SEPSと表記する)を主成分とするクラム状の水添ブロック共重合体組成物を回収した。
[合成例2]
(1)水添前のブロック共重合体の製造において使用した各材料の使用量を、表1に記載の量に変更した以外は、合成例1と同様にして、水添ブロック共重合体を含む溶液を得た。得られた水添ブロック共重合体を含む溶液の一部を取り出し、合成例1と同様に測定した。結果を表2にまとめて示す。また、このようにして得られた水添ブロック共重合体を含む溶液を用いた以外は、合成例1と同様にして、ポリスチレン-ポリ(エチレン-co-プロピレン)-b-ポリスチレントリブロック共重合体(以下、SEPSと表記する)を主成分とするクラム状の水添ブロック共重合体組成物を回収した。
[合成例3]
(1)水添前のブロック共重合体の製造において、ジブチルエーテル518ミリモルに代えて、エチレングリコールジブチルエーテル278ミリモルを使用した以外は、合成例1と同様にして、水添ブロック共重合体を含む溶液を得た。得られた水添ブロック共重合体を含む溶液の一部を取り出し、合成例1と同様に測定した。結果を表2にまとめて示す。また、このようにして得られた水添ブロック共重合体を含む溶液を用いた以外は、合成例1と同様にして、ポリスチレン-ポリ(エチレン-co-プロピレン)-b-ポリスチレントリブロック共重合体(以下、SEPSと表記する)を主成分とするクラム状の水添ブロック共重合体組成物を回収した。
Figure 2023134111000003
Figure 2023134111000004
[実施例1]
実施例1では、ベースポリマーとして、合成例1で得られた水添ブロック共重合体組成物を使用し、下記の反応式にしたがって、ポリスチレンブロックをスルホン化し(スルホン化率36モル%)、その後アルカリ金属アルコキシドの一つであるナトリウムメトキシドを用いて中和することで、イオン性官能基(スルホネートアニオン)とアルカリ金属カチオン(ナトリウムイオン)のイオンペアを有するトリブロック共重合体(以下、Na-S-SEPSと表記する)を合成し、力学特性を評価した。以下に具体的な手順を示す。なお、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求めたSEPSの数平均分子量は54,000(標準ポリスチレン換算)、分子量分布は1.02であり、プロトン核磁気共鳴分光(H-NMR)法により求めたポリスチレンのモル分率は21.5%でその重量分率は28.9%であった。
Figure 2023134111000005
[1-1]第1工程(SEPSのスルホン化)
第1工程のSEPSのスルホン化は、Makoski,H.S.;Lundberg, R.D.;Singhal,G.,U.S.Patent 3870841,1975.やWeiss,R.A.;Sen,A.;Willis,C.L.;Pottick,L.A.,Polymer,1991,32(10),1867-1874.に記載の反応を参考にして下記のように行った。容器内雰囲気をアルゴンで置換したナスフラスコ中に10.0gのSEPSと100mLの1,2-ジクロロエタンを入れた。50℃のオイルバスに上記のナスフラスコをつけて600rpmで1.5時間撹拌し、SEPS溶液を調製した。別のナスフラスコ中で40mLの無水酢酸と100mLの1,2-ジクロロエタンを混合し、氷浴中で11mLの濃硫酸(97%)をゆっくり滴下することで、変性剤溶液を調整した。この溶液のうち、115mLをSEPS溶液に加え、40℃のオイルバス中で40分間撹拌した。ここで使用したスルホン化剤の量は、芳香族ビニル単量体由来の繰り返し単位100モル%に対して500モル%であった。その後、150mLの2-プロパノールを加えることで反応を停止させた。
スルホン化されたSEPSの粗生成物を精製するために透析を行った。セルロース製の透析チューブにスルホン化反応停止後の溶液を入れ、チューブの両端を閉じ、約2Lの純水中にそのチューブを浸して約6時間静置した。チューブを浸した水を交換して一晩静置した。この操作を合計3回繰り返した。チューブ内で2相に分離した溶液と析出固体が生じ、溶液中の褐色部と析出固体とをナスフラスコに移し、ロータリーエバポレーションによって濃縮した後、約100gのクロロホルムに溶かし、45℃での溶液キャストによって粗生成物の膜を調製した。この膜を約100mLのメタノールに約2時間浸漬させた。メタノールを交換し、膜を再度約2時間浸漬させた。この操作を合計3回繰り返すことで、未反応の無水酢酸や硫酸、およびこれらに由来する副生成物を除去し、スルホン化されたSEPSを得た。
プロトン核磁気共鳴分光(H-NMR)法によりSEPS中のポリスチレンブロックのスルホン化率を見積もった。7.4~8.0ppmにスルホン化されたスチレンユニットベンゼン環中の2つのプロトンに由来するピークが新たに現れ、6.0~7.2ppmのスルホン化されたスチレンユニットベンゼン環中の他2つのプロトン、およびスルホン化されていないスチレンユニットベンゼン環中の5つのプロトンに由来するピークとの積分比から、ポリスチレンブロックのスルホン化率は36モル%と見積もられた。
[1-2]第2工程(スルホン酸基のイオン化)
第1工程で得られたスルホン化されたSEPS、老化防止剤としてIrgafos(登録商標)168(BASF社製)とIrganox(登録商標)565(BASF社製)それぞれ1.00g、0.0010g、0.0007gをクロロホルムとメタノールの混合溶媒(重量比98:2)20.5gに溶解させた。さらにナトリウムメトキシドのメタノール溶液(濃度5mol/L)0.184mLを加え、スルホン酸基と反応させた。このとき、ナトリウムメトキシドの量はスルホン酸基とほぼ等モル量であった。得られた溶液をポリパーフルオロアルコキシアルカン(以下、PFAと称することとする)製の容器(内径約45mm)に移し、40℃のホットプレート上で1日間静置させることで溶媒を揮発させた。その後、真空乾燥器を用いて約1日間乾燥させてNa-S-SEPS膜試料を得た。
[2-1]動的粘弾性測定
得られたNa-S-SEPS膜の耐熱性を評価するために動的粘弾性測定により弾性率の温度依存性を調査した。厚さ約0.50mmのNa-S-SEPS膜試料を約20mm×4mmの長方形に切り取ることで試験片を調製した。測定装置にはユービーエム製のRheogel-E4000を用い、引張モードで治具間距離約10mm、周波数1Hz、昇温速度10℃/minにて試験を行った。得られた貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E”)、tanδ(=E”/E’)をそれぞれ図1a、b、cに◇で示す。約-50℃以下ではE’~2×10Paでガラス状態であり、-50~-20℃ではE’が低下していくガラス転移領域が見られ、-36℃にポリエチレン/プロピレン共重合体ブロックのガラス転移温度(T)に相当するtanδのピークが見られた。-20~240℃ではE’~2×10PaでE’がほぼ一定値のゴム状平坦域が見られ、240℃までE’は低下しなかった。したがって、このNa-S-SEPSは240℃までの耐熱性を示す熱可塑性エラストマーであった。
[2-2]引張試験
単純な引張特性とその初期歪み速度依存性を評価するために、一軸引張試験を行った。得られたNa-S-SEPS膜試料を日本工業規格JIS K6251:2017に記載されているダンベル状7号形(国際標準化機構ISO37:2017におけるType 4に相当)に対応する打抜き刃型で打ち抜き、試験片を調製した。試験片の厚みは約0.5mmであった。測定装置は島津製作所製のAGS-X、50Nロードセル、空気式平面形つかみ具を用い、つかみ具の空気圧0.45MPa、室温、つかみ具間距離約20mm、初期歪み速度0.33/s(引張速度約6.7mm/s)にて引張試験を行った。引張試験の結果である応力-歪み曲線を図2aに実線で示す。ヤング率、引張強度、破断伸び、応力-ひずみ曲線の内面積値(材料の丈夫さの指標)はそれぞれ、14.3MPa、38.9MPa、1000%、142MJ/mであった。なお、ヤング率は応力-ひずみ曲線の初期勾配(ひずみ5%以内)、引張強度は応力の最大値、破断伸びは破断が生じたときの伸びより求めた。同様にして、初期歪み速度0.0033/s(引張速度約0.067mm/s)にて引張試験を行ったところ、図2bの実線で示す結果が得られ、ヤング率、引張強度、破断伸び、応力-ひずみ曲線の内面積値はそれぞれ、13.3MPa、33.2MPa、1160%、131MJ/mであり、引張速度が低下してもヤング率や引張強度、破断伸び、応力-ひずみ曲線の内面積値には大きな変化は見られなかった。実施例1の試料はポリスチレンドメイン内でイオンマルチプレットが形成されると考えられ、伸長速度が遅く、試料の伸長時間が長くてもドメインからのポリスチレン鎖の引き抜き、試料破断が抑えられたと考えられる。上記の結果は表3にもまとめている。
[比較例1]
比較例1では、実施例1のベースポリマーであるSEPSそのものに対して力学特性を評価した。SEPS膜試料の調製は、実施例1と同様に行った。
[1-1]動的粘弾性測定
SEPS膜の耐熱性を評価するために実施例1と同様にして動的粘弾性測定により弾性率の温度依存性を調査した。得られたE’、E”、tanδをそれぞれ図1a、b、cに□で示す。実施例1とほぼ同様に約-50℃以下ではE’~2×10Paでガラス状態であり、-50~-20℃ではE’が低下していくガラス転移領域が見られ、-38℃にポリエチレン/プロピレン共重合体ブロックのTに相当するtanδのピークが見られた。-20~90℃ではE’~2×10PaでE’がほぼ一定値のゴム状平坦域が見られ、ポリスチレンブロックのTに相当する約90℃においてE’は低下し始めた。したがって、比較例1のSEPSよりも実施例1のNa-S-SEPSのほうが高い耐熱性を有していた。示差走査熱量計により決定できるポリスチレンのTはおおよそ100℃であるが、イオン性官能基をポリスチレンブロック中に導入することで、ポリスチレンのT以上になったためと考えられる。
[1-2]引張試験
単純な引張特性とその初期歪み速度依存性を評価するために、実施例1と同様にして一軸引張試験を行った。初期歪み速度0.33/s(引張速度約6.7mm/s)にて引張試験を行ったところ、図2aの点線で示す結果が得られ、ヤング率、引張強度、破断伸び、応力-ひずみ曲線の内面積値はそれぞれ、12.9MPa、16.2MPa、670%、61MJ/mであり、実施例1のNa-S-SEPSと比べてヤング率はほぼ同じであったが、実施例1のNa-S-SEPSのほうが破断伸び、引張強度、内面積値は大きかった。これは実施例1ではポリスチレンドメイン内でイオンマルチプレットが形成されており、ドメインからの分子鎖の引き抜きが抑制されたためと考えられる。また、初期歪み速度0.0033/s(引張速度0.067mm/s)にて引張試験を行ったところ、図2bの点線で示す結果が得られ、ヤング率、最大応力、破断伸び、応力-ひずみ曲線の内面積値はそれぞれ、10.6MPa、8.3MPa、530%、30MJ/mであった。実施例1のNa-S-SEPSとは異なり、引張速度が低下すると引張強度、破断伸びの減少が見られた。上記の結果は表3にもまとめている。
[実施例2]
実施例2では、変性剤溶液の使用量を変更し、スルホン化剤の量を芳香族ビニル単量体由来の繰り返し単位100モル%に対して335モル%とし、反応時間を20分とした以外は、実施例1と同様にしてスルホン化率13モル%のNa-S-SEPSを合成し、その力学特性を評価した。
[1-1]動的粘弾性測定
耐熱性を評価するために実施例1と同様にして動的粘弾性測定により弾性率の温度依存性を調査した。得られたE’、E”、tanδをそれぞれ図1a、b、cに○で示す。実施例1とほぼ同様に約-50℃以下ではE’~1×10Paでガラス状態であり、-50~-20℃ではE’が低下していくガラス転移領域が見られ、-36℃にポリエチレン/プロピレン共重合体ブロックのTに相当するtanδのピークが見られた。-20~90℃ではE’~2×10PaでE’がほぼ一定値のゴム状平坦域が見られ、90~160℃でE’は少し低下し、160~240℃ではE’~3×10PaでE’がほぼ一定値の平坦域が見られた。したがって、比較例1のSEPSよりも実施例2のNa-S-SEPSのほうが高い耐熱性を示した。イオン性官能基をポリスチレンブロック中に導入することでポリスチレンドメイン中ではイオンマルチプレットが形成されており、このイオンマルチプレットに由来するTのために2段の平坦域を示したと考えられる。
[1-2]引張試験
単純な引張特性とその初期歪み速度依存性を評価するために、実施例1と同様にして一軸引張試験を行った。初期歪み速度0.33/s(引張速度約6.7mm/s)にて引張試験を行ったところ、図2aの破線で示す結果が得られ、ヤング率、引張強度、破断伸び、応力-ひずみ曲線の内面積値はそれぞれ、13.5MPa、48.9MPa、960%、166MJ/mであった。比較例1のSEPSと比べてヤング率はほぼ同じであったが、実施例2のNa-S-SEPSのほうが破断伸び、引張強度、内面積値は大きかった。これはポリスチレンドメイン内でイオンマルチプレットが形成されており、ドメインからの分子鎖の引き抜きが抑制されたためと考えられる。また、初期歪み速度0.0033/s(引張速度0.067mm/s)にて引張試験を行ったところ、図2bの破線で示す結果が得られ、ヤング率、最大応力、破断伸び、応力-ひずみ曲線の内面積値はそれぞれ、15.1MPa、38.1MPa、1090%、145MJ/mであった。比較例1のSEPSとは異なり、引張速度が低下しても破断伸びは減少しなかった。上記の結果は表3にもまとめている。
[実施例3]
実施例3では、反応時間を50分に変更した以外は、実施例2と同様にしてスルホン化率22モル%のNa-S-SEPSを合成し、その力学特性を評価した。
[1-1]動的粘弾性測定
耐熱性を評価するために実施例1と同様にして動的粘弾性測定により弾性率の温度依存性を調査した。得られたE’、E”、tanδをそれぞれ図1a、b、cに△で示す。実施例1とほぼ同様に約-50℃以下ではE’~1×10Paでガラス状態であり、-50~-20℃ではE’が低下していくガラス転移領域が見られ、-37℃にポリエチレン/プロピレン共重合体ブロックのTに相当するtanδのピークが見られた。-20~100℃ではE’~2×10PaでE’がほぼ一定値のゴム状平坦域が見られ、100~140℃でE’は少し低下し、140~200℃ではE’~7×10PaでE’ がほぼ一定値の平坦域が見られた。したがって、比較例1のSEPSよりも実施例3のNa-S-SEPSのほうが高い耐熱性を示した。イオン性官能基をポリスチレンブロック中に導入することでポリスチレンドメイン中ではイオンマルチプレットが形成されており、このイオンマルチプレットに由来するTのために2段の平坦域を示したと考えられる。
[1-2]引張試験
単純な引張特性とその初期歪み速度依存性を評価するために、実施例1と同様にして一軸引張試験を行った。得られた結果は表3にまとめている。
[実施例4]
実施例4では、アルカリ金属アルコキシドの一つであるナトリウムメトキシドを用いる代わりにリチウムメトキシドによってスルホン化率13モル%のスルホン化されたSEPSを中和することで、スルホネートアニオンとリチウムイオンが導入されたトリブロック共重合体(以下、Li-S-SEPSと表記する)を合成した以外は実施例2と同様にして試料を調製し、力学特性を評価した。
[1-1]動的粘弾性測定
耐熱性を評価するために実施例1と同様にして動的粘弾性測定により弾性率の温度依存性を調査した。得られたE’、E”、tanδをそれぞれ図3a、b、c△で示す。実施例1とほぼ同様に約-50℃以下ではE’~1×10Paでガラス状態であり、-50~-20℃ではE’が低下していくガラス転移領域が見られ、-39℃にポリエチレン/プロピレン共重合体ブロックのTに相当するtanδのピークが見られた。-20~110℃ではE’~3×10PaでE’がほぼ一定値のゴム状平坦域が見られ、110~170℃でE’は少し低下し、170~230℃ではE’~4×10Paでほぼ一定値の平坦域が見られた。したがって、比較例1のSEPSよりも実施例4のLi-S-SEPSのほうが高い耐熱性を示した。イオン性官能基をポリスチレンブロック中に導入することでポリスチレンドメイン中ではイオンマルチプレットが形成されており、このイオンマルチプレットに由来するTのために2段の平坦域を示したと考えられる。
[1-2]引張試験
単純な引張特性とその初期歪み速度依存性を評価するために、実施例1と同様にして一軸引張試験を行った。初期歪み速度0.33/s(引張速度約6.7mm/s)にて引張試験を行ったところ、図4aの実線で示す結果が得られ、ヤング率、引張強度、破断伸び、応力-ひずみ曲線の内面積値はそれぞれ、17.1MPa、22.4MPa、800%、77MJ/mであった。比較例1のSEPSと比べてヤング率はほぼ同じであったが、実施例4のLi-S-SEPSのほうが破断伸び、引張強度、内面積値は大きかった。これはポリスチレンドメイン内ではイオンマルチプレットが形成されており、ドメインからの分子鎖の引き抜きが抑制されたためと考えられる。また、初期歪み速度0.0033/s(引張速度0.067mm/s)にて引張試験を行ったところ、図4bの実線で示す結果が得られ、ヤング率、最大応力、破断伸び、応力-ひずみ曲線の内面積値はそれぞれ、23.4MPa、30.5MPa、920%、102MJ/mであった。比較例1のSEPSとは異なり、引張速度が低下しても破断伸びは減少しなかった。上記の結果は表3にもまとめている。
[実施例5]
実施例5では、アルカリ金属アルコキシドの一つであるナトリウムメトキシドを用いる代わりにカリウムメトキシドでスルホン化率14モル%のスルホン化されたSEPSを中和することで、スルホネートアニオンとカリウムイオンが導入されたトリブロック共重合体(以下、K-S-SEPSと表記する)を合成した以外は実施例2と同様にして試料を調製し、力学特性を評価した。
[1-1]動的粘弾性測定
耐熱性を評価するために実施例1と同様にして動的粘弾性測定により弾性率の温度依存性を調査した。得られたE’、E”、tanδをそれぞれ図3a、b、c◇で示す。実施例1とほぼ同様に約-50℃以下ではE’~1×10Paでガラス状態であり、-50~-20℃ではE’が低下するガラス転移領域が見られ、-39℃にポリエチレン/プロピレン共重合体ブロックのTに相当するtanδのピークが見られた。-20~100℃ではE’~2×10PaでE’がほぼ一定値のゴム状平坦域が見られ、100~160℃でE’は少し低下し、160~230℃ではE’~3×10PaでE’がほぼ一定値の平坦域が見られた。したがって、比較例1のSEPSよりも実施例5のK-S-SEPSのほうが高い耐熱性を示した。イオン性官能基をポリスチレンブロック中に導入することでポリスチレンドメイン中にはイオンマルチプレットが形成されており、このイオンマルチプレットに由来するTのために2段の平坦域を示したと考えられる。
[1-2]引張試験
単純な引張特性とその初期歪み速度依存性を評価するために、実施例1と同様にして一軸引張試験を行った。初期歪み速度0.33/s(引張速度約6.7mm/s)にて引張試験を行ったところ、図4aの破線で示す結果が得られ、ヤング率、引張強度、破断伸び、応力-ひずみ曲線の内面積値はそれぞれ、12.4MPa、37.8MPa、1060%、130MJ/mであった。比較例1のSEPSと比べてヤング率はほぼ同じであったが、実施例5のK-S-SEPSのほうが破断伸び、引張強度、内面積値は大きかった。これはポリスチレンドメイン内ではイオンマルチプレットが形成されており、ドメインからの分子鎖の引き抜きが抑制されたためと考えられる。また、初期歪み速度0.0033/s(引張速度0.067mm/s)にて引張試験を行ったところ、図4bの実線で示す結果が得られ、ヤング率、最大応力、破断伸び、応力-ひずみ曲線の内面積値はそれぞれ、13.3MPa、34.4MPa、1180%、132MJ/mであった。比較例1のSEPSとは異なり、引張速度が低下しても破断伸びは減少しなかった。上記の結果は表3にもまとめている。
[実施例6]
実施例6では、アルカリ金属アルコキシドの一つであるナトリウムメトキシドを用いる代わりにアルカリ土類金属アルコキシドの一つであるバリウムエトキシドでスルホン化率13モル%のスルホン化SEPSを中和することで、スルホネートアニオンとバリウムイオンが導入されたトリブロック共重合体(以下、Ba-S-SEPSと表記する)を合成した以外は実施例2と同様にして試料を調製し、力学特性を評価した。ここで、スルホネートアニオンとバリウムイオンのモル比はおよそ2:1となるようにした。
[1-1]動的粘弾性測定
耐熱性を評価するために実施例1と同様にして動的粘弾性測定により弾性率の温度依存性を調査した。得られたE’、E”、tanδをそれぞれ図3a、b、c+で示す。実施例1とほぼ同様に約-50℃以下ではE’~1×10Paでガラス状態であり、-50~-20℃ではE’が低下していくガラス転移領域が見られ、-38℃にポリエチレン/プロピレン共重合体ブロックのTに相当するtanδのピークが見られた。-20~120℃ではE’~5×10Paでほぼ一定のゴム状平坦域が見られ、120~160℃でE’は少し低下した。160~240℃ではE’は徐々に低下し、240℃以上でE’は急激に低下した。したがって、比較例1のSEPSよりも実施例6のBa-S-SEPSのほうが高い耐熱性を示した。イオン性官能基をポリスチレンブロック中に導入することでポリスチレンドメイン中にはイオンマルチプレットが形成されており、このイオンマルチプレットに由来する高いTのためと考えられる。
[1-2]引張試験
単純な引張特性とその初期歪み速度依存性を評価するために、実施例1と同様にして一軸引張試験を行った。初期歪み速度0.33/s(引張速度約6.7mm/s)にて引張試験を行ったところ、図4aの点線で示す結果が得られ、ヤング率、引張強度、破断伸び、応力-ひずみ曲線の内面積値はそれぞれ、56.7MPa、48.7MPa、780%、146MJ/mであった。比較例1のSEPSと比べてヤング率はほぼ同じであったが、実施例6のBa-S-SEPSのほうが破断伸び、引張強度、内面積値は大きかった。これはポリスチレンドメイン内ではイオンマルチプレットが形成しており、ドメインからの分子鎖の引き抜きが抑制されたためと考えられる。また、初期歪み速度0.0033/s(引張速度0.067mm/s)にて引張試験を行ったところ、図4bの点線で示す結果が得られ、ヤング率、最大応力、破断伸び、応力-ひずみ曲線の内面積値はそれぞれ、37.1MPa、35.5MPa、880%、123MJ/mであった。比較例1のSEPSとは異なり、引張速度が低下しても破断伸びは減少しなかった。上記の結果は表3にもまとめている。
[実施例7]
実施例7では、アルカリ金属アルコキシドの一つであるナトリウムメトキシドを用いる代わりにリチウムメトキシドでスルホン化率36モル%のスルホン化SEPSを中和することでLi-S-SEPSを合成した以外は実施例1と同様にして試料を調製し、単純な引張特性を評価した。得られた結果は表3にまとめている。
[実施例8]
実施例8では、アルカリ金属アルコキシドの一つであるナトリウムメトキシドを用いる代わりにカリウムメトキシドでスルホン化率36モル%のスルホン化SEPSを中和することでK-S-SEPSを合成した以外は実施例1と同様にして試料を調製し、単純な引張特性を評価した。得られた結果は表3にまとめている。
各実施例において得られた各変性ブロック共重合体の膜試料、および、比較例1において得られたSEPSの膜試料について、JIS K 7196に基づき、熱機械分析装置(TMA SS6100、圧子先端直径1.0mm、セイコーインスツルメンツ社製)を使用して、昇温速度5℃/分で、+30℃から+250℃の範囲で、針侵入モードで軟化温度を測定した。比較例1においては、軟化温度が80℃であったのに対し、実施例1~8においては、軟化温度が100℃以上であった。したがって、各実施例において得られた変性ブロック共重合体は、軟化温度が高く、高温での形状維持に優れるものであることが確認された。一方、比較例1において得られたSEPSは、軟化温度が低く、高温での形状維持に劣るものであることが確認された。
また、ベースポリマーとして、合成例1で得られた水添ブロック共重合体組成物に代えて、合成例2,3で得られた水添ブロック共重合体組成物を使用する以外は、実施例1~8と同様にして、イオン性官能基(スルホネートアニオン)とアルカリ金属カチオンのイオンペアを有するトリブロック共重合体を合成することができる。このようにして合成された、イオン性官能基(スルホネートアニオン)とアルカリ金属カチオンのイオンペアを有するトリブロック共重合体も、伸び、引張強度、および、高温での形状維持に優れるものであるといえる。
Figure 2023134111000006

Claims (12)

  1. 芳香族ビニル重合体ブロックに非共有結合性の結合可能な官能基が導入されてなる変性芳香族ビニル重合体ブロックと、エチレン/プロピレン共重合体ブロックとを有する変性ブロック共重合体。
  2. 前記エチレン/プロピレン共重合体ブロックが、イソプレン重合体ブロックに水素添加することにより形成されたものである請求項1に記載の変性ブロック共重合体。
  3. 前記イソプレン重合体ブロック中の全イソプレン単位における、1,4結合が占める割合が、50~100モル%である請求項2に記載の変性ブロック共重合体。
  4. 前記変性芳香族ビニル重合体ブロックが、変性ブロック共重合体のエンドブロックを構成する請求項1~3のいずれかに記載の変性ブロック共重合体。
  5. 前記芳香族ビニル重合体ブロックが、スチレン重合体ブロックである請求項1~4のいずれかに記載の変性ブロック共重合体。
  6. 前記非共有結合性の結合可能な官能基が、水素結合可能な官能基、配位結合可能な官能基、およびイオン結合可能な官能基から選択される少なくとも1種である請求項1~5のいずれかに記載の変性ブロック共重合体。
  7. 前記非共有結合性の結合可能な官能基が、イオン結合可能な官能基である請求項1~6のいずれかに記載の変性ブロック共重合体。
  8. 前記イオン結合可能な官能基が、スルホン酸塩含有基である請求項7に記載の変性ブロック共重合体。
  9. 前記イオン結合可能な官能基が、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンをカウンターカチオンとして有する請求項7または8に記載の変性ブロック共重合体。
  10. 前記イオン結合可能な官能基が、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオンおよびバリウムイオンから選択される金属イオンをカウンターカチオンとして有する請求項7~9のいずれかに記載の変性ブロック共重合体。
  11. 前記イオン結合可能な官能基が、リチウムイオンをカウンターカチオンとして有する請求項7~10のいずれかに記載の変性ブロック共重合体。
  12. 前記非共有結合性の結合可能な官能基の導入率が、変性ブロック共重合体中の芳香族ビニル単量体由来の繰り返し単位100モル%に対して、5~75モル%である請求項1~11のいずれかに記載の変性ブロック共重合体。
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