JP2023133164A - 化合物、発光材料および発光素子 - Google Patents

化合物、発光材料および発光素子 Download PDF

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Abstract

【課題】発光特性が優れた有機発光素子を提供すること。【解決手段】有機発光素子に下記一般式の化合物を用いる。R1~R5の1個はシアノ基、1個以上はアリール基、1個以上は2つ以上のドナー部位が結合した縮環カルバゾール-9-イル構造を有する基、残りは水素原子か重水素原子;X1~X3はNまたはC(R);Rは水素原子または置換基;Ar1およびAr2はアリール基;L1は単結合または連結基を表す。JPEG2023133164000082.jpg46157【選択図】なし

Description

本発明は、発光材料として有用な化合物とそれを用いた発光素子に関する。
有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)などの発光素子の発光効率を高める研究が盛んに行われている。特に、有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する電子輸送材料、ホール輸送材料、発光材料などを新たに開発して組み合わせることにより、発光効率を高める工夫が種々なされてきている。その中には、遅延蛍光材料を利用した有機エレクトロルミネッセンス素子に関する研究も見受けられる。
遅延蛍光材料は、励起状態において、励起三重項状態から励起一重項状態への逆項間交差を生じた後、その励起一重項状態から基底状態へ戻る際に蛍光を放射する材料である。こうした経路による蛍光は、基底状態から直接生じた励起一重項状態からの蛍光(通常の蛍光)よりも遅れて観測されるため、遅延蛍光と称されている。ここで、例えば、発光性化合物をキャリアの注入により励起した場合、励起一重項状態と励起三重項状態の発生確率は統計的に25%:75%であるため、直接生じた励起一重項状態からの蛍光のみでは、発光効率の向上に限界がある。一方、遅延蛍光材料では、励起一重項状態のみならず、励起三重項状態も上記の逆項間交差を介した経路により蛍光発光に利用することができるため、通常の蛍光材料に比べて高い発光効率が得られることになる。
このような原理が明らかにされて以降、様々な研究により種々の遅延蛍光材料が発見されるに至っている。その中には、シアノベンゼンにドナー性基とアクセプター性基が置換した化合物が多数含まれている。例えば、シアノベンゼンにドナー性基であるカルバゾール-9-イル基とアクセプター性基であるジフェニルトリアジニル基が置換した化合物が提案されており、一例として下記の構造を有する化合物がある(特許文献1参照)。
WO2021/046523A1
遅延蛍光を放射する材料であっても、その特性が極めて良好であって、実用面における課題がないものはこれまでに提供されるに至っていない。このため、例えば特許文献1にて提案されている遅延蛍光材料よりも、一段と発光特性が良好な遅延蛍光材料を提供することができれば、さらに有用である。特に遅延蛍光成分が多くて、遅延蛍光寿命が短い遅延蛍光材料を開発できれば有用である。しかし、遅延蛍光材料の改良は試行錯誤の段階にあり、有用な発光材料の化学構造を一般化することは容易でない。
このような状況下において本発明者らは、発光素子用の発光材料としてより有用な化合物を提供することを目的として研究を重ねた。そして、発光材料としてより有用な化合物の一般式を導きだして一般化することを目的として鋭意検討を進めた。
上記の目的を達成するために鋭意検討を進めた結果、本発明者らは、特定の条件を満たす構造を有するシアノベンゼン化合物が発光材料として有用であることを見いだした。本発明は、こうした知見に基づいて提案されたものであり、具体的に、以下の構成を有する。
[1] 下記一般式(1)で表される化合物。
[一般式(1)において、R~Rのうちの少なくとも1個はシアノ基を表す。R~Rのうちの少なくとも1個は、各々独立に置換もしくは無置換のアリール基を表す。R~Rのうちの少なくとも1個は、各々独立に第1ドナー部位と第2ドナー部位が結合した構造を有するドナー性基であって、前記第1ドナー部位と前記第2ドナー部位の少なくとも一方が縮環カルバゾール-9-イル構造を有する。残りのR~Rは、各々独立に水素原子または重水素原子を表す。X~Xは、各々独立にNまたはC(R)を表すが、X~Xの少なくとも1個はNである。Rは水素原子または置換基(置換基には重水素原子も含まれる)を表す。ArおよびArは、各々独立に置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基を表す。Lは単結合または2価の連結基を表す。]
[2] Rがシアノ基である、[1]に記載の化合物。
[3] 前記縮環カルバゾール-9-イル構造が、ベンゾフロ縮環カルバゾール-9-イル構造またはベンゾチエノ縮環カルバゾール-9-イル構造である、[1]または[2]に記載の化合物。
[4] 前記第1ドナー部位と前記第2ドナー部位の一方が置換されていてもよい非縮環カルバゾール-9-イル基であって、他方が置換されていてもよい縮環カルバゾール-9-イル基である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の化合物。
[5] 前記第2ドナー部位が置換されていてもよい縮環カルバゾール-9-イル基である、[1]~[4]のいずれか1つに記載の化合物。
[6] R~Rのうちの1個だけが第1ドナー部位と第2ドナー部位が結合した構造を有するドナー性基である、[1]~[5]のいずれか1つに記載の化合物。
[7] R~Rのうちの1個だけが置換もしくは無置換のアリール基である、[1]~[6]のいずれか1つに記載の化合物。
[8] X~XがNである、[1]~[7]のいずれか1つに記載の化合物。
[9] ArおよびArが、重水素原子およびフェニル基からなる群より選択される1つの原子か基または2つ以上を組み合わせた基で置換されていてもよいフェニル基である、[1]~[8]のいずれか1つに記載の化合物。
[10] Lが単結合である、[1]~[9]のいずれか1つに記載の化合物。
[11] Rが水素原子である、[1]~[10]のいずれか1つに記載の化合物。
[12] Rが第1ドナー部位と第2ドナー部位が結合した構造を有するドナー性基である、[1]~[11]のいずれか1つに記載の化合物。
[13] Rがシアノ基であり、Lが単結合である、[12]に記載の化合物。
[14] [1]~[13]のいずれか1つに記載の化合物からなる発光材料。
[15] [1]~[13]のいずれか1つに記載の化合物からなる遅延蛍光体。
[16] [1]~[13]のいずれか1つに記載の化合物を含む膜。
[17] [1]~[13]のいずれか1つに記載の化合物を含む有機半導体素子。
[18] [1]~[13]のいずれか1つに記載の化合物を含む有機発光素子。
[19] 前記素子が前記化合物を含む層を有しており、前記層がホスト材料も含む、[18]に記載の有機発光素子。
[20] 前記化合物を含む層が、前記化合物および前記ホスト材料の他に遅延蛍光材料も含み、前記遅延蛍光材料の最低励起一重項エネルギーが前記ホスト材料より低く、前記化合物よりも高い、[19]に記載の有機発光素子。
[21] 前記素子が前記化合物を含む層を有しており、前記層が前記化合物とは異なる構造を有する発光材料も含む、[19]に記載の有機発光素子。
[22] 前記素子に含まれる材料のうち、前記化合物からの発光量が最大である、[19]~[21]のいずれか1つに記載の有機発光素子。
[23] 前記発光材料からの発光量が前記化合物からの発光量よりも多い、[21]に記載の有機発光素子。
[24] 有機エレクトロルミネッセンス素子である、[18]~[23]のいずれか1つに記載の有機発光素子。
[25] 遅延蛍光を放射する、[18]~[24]のいずれか1つに記載の有機発光素子。
本発明の化合物は、発光材料として有用である。また、本発明の化合物の中には、良好な発光特性を示す化合物が含まれる。本発明の化合物の中には、高い発光効率を維持しながら、遅延蛍光成分の割合を増やし、遅延蛍光寿命を短くできるものが含まれる。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、本発明に用いられる化合物の分子内に存在する水素原子の一部または全部は重水素原子(H、デューテリウムD)に置換することができる。本明細書の化学構造式では、水素原子はHと表示しているか、その表示を省略している。例えばベンゼン環の環骨格構成炭素原子に結合する原子の表示が省略されているとき、表示が省略されている箇所ではHが環骨格構成炭素原子に結合しているものとする。本明細書の化学構造式では、重水素原子はDと表示している。なお、本願でいう「発光特性」は、例えば発光効率、駆動電圧、発光寿命などの発光に関する性質を意味する。本発明の化合物は、少なくとも1つの発光特性が優れており、本発明の一態様では発光効率が特に良好である。
[一般式(1)で表される化合物]
一般式(1)において、R~Rのうちの少なくとも1個はシアノ基を表す。シアノ基の個数はR~Rのうちの1個または2個であることが好ましく、1個であることがより好ましい。本発明の一態様では、Rがシアノ基である。本発明の一態様では、Rがシアノ基である。本発明の好ましい一態様では、Rがシアノ基である。
一般式(1)において、R~Rのうちの少なくとも1個は、各々独立に置換もしくは無置換のアリール基を表す。
本発明の一態様では、R~Rのうちの1個だけが置換もしくは無置換のアリール基である。本発明の一態様では、Rだけが置換もしくは無置換のアリール基である。本発明の一態様では、Rだけが置換もしくは無置換のアリール基である。本発明の一態様では、Rだけが置換もしくは無置換のアリール基である。本発明の一態様では、Rだけが置換もしくは無置換のアリール基である。本発明の一態様では、R~Rのうちの2個が置換もしくは無置換のアリール基である。本発明の一態様では、R~Rのうちの3個が置換もしくは無置換のアリール基である。本発明の一態様では、少なくともRが置換もしくは無置換のアリール基である。本発明の一態様では、少なくともRが置換もしくは無置換のアリール基である。本発明の一態様では、少なくともRが置換もしくは無置換のアリール基である。本発明の一態様では、少なくともRが置換もしくは無置換のアリール基である
「アリール基」は、単環であってもよいし、2つ以上の環が縮合した縮合環であってもよい。縮合環である場合、縮合している環の数は2~6であることが好ましく、例えば2~4の中から選択することができる。環の具体例として、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、トリフェニレン環を挙げることができる。本発明の一態様では、アリール基は置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のナフタレン-1-イル基、または置換もしくは無置換のナフタレン-2-イル基であり、好ましくは置換もしくは無置換のフェニル基である。アリール基の置換基は、例えば置換基群Aから選択してもよいし、置換基群Bから選択してもよいし、置換基群Cから選択してもよいし、置換基群Dから選択してもよいし、置換基群Eから選択してもよい。本発明の一態様では、アリール基の置換基は、アルキル基、アリール基および重水素原子からなる群より選択される1つ以上である。本発明の好ましい一態様では、アリール基は無置換である。
以下において、一般式(1)におけるR~Rのうちの少なくとも1個が採りうる置換もしくは無置換のアリール基の具体例を示す。ただし、R~Rとして採用することができる置換もしくは無置換のアリール基は、これらの具体例によって限定的に解釈されることはない。なお、以下の具体例において、メチル基は表示を省略している。このため、例えばAr4はメチル基で置換され、Ar5はイソプロピル基で置換されている。*は結合位置を示す。
上記Ar1~Ar20内に存在する水素原子をすべて重水素原子に置換したものを順にAr21~Ar40として開示する。上記Ar4~Ar20の置換基であるフェニル基またはアルキル基に存在するすべて水素原子を重水素原子に置換したものを順にAr41~Ar57として開示する。
本発明の一態様では、R~Rが採りうる置換もしくは無置換のアリール基は、Ar1~Ar57の中から選択する。本発明の一態様では、R~Rが採りうる置換もしくは無置換のアリール基は、Ar1~Ar3、Ar19~Ar23、Ar39、Ar40、Ar56、Ar57の中から選択する。本発明の一態様では、R~Rが採りうる置換もしくは無置換のアリール基は、Ar1またはAr21である。本発明の一態様では、R~Rが採りうる置換もしくは無置換のアリール基は、Ar1、Ar4~Ar18、Ar21、Ar24~Ar38、Ar41~Ar55の中から選択する。
一般式(1)において、R~Rのうちの少なくとも1個は、各々独立に第1ドナー部位と第2ドナー部位が結合した構造を有するドナー性基であって、第1ドナー部位と第2ドナー部位の少なくとも一方が縮環カルバゾール-9-イル構造を有する。このような条件を満たすドナー性基を本願では「ドナー性基D」と称する。
本発明の一態様では、R~Rのうちの1個だけがドナー性基Dである。本発明の一態様では、Rだけがドナー性基Dである。本発明の一態様では、Rだけがドナー性基Dである。本発明の一態様では、Rだけがドナー性基Dである。本発明の一態様では、Rだけがドナー性基Dである。本発明の一態様では、R~Rのうちの2個がドナー性基Dである。本発明の一態様では、R~Rのうちの3個がドナー性基Dである。本発明の一態様では、少なくともRがドナー性基Dである。本発明の一態様では、少なくともRがドナー性基Dである。本発明の一態様では、少なくともRがドナー性基Dである。本発明の一態様では、少なくともRがドナー性基Dである。
ドナー性基Dを構成する第1ドナー部位と第2ドナー部位の少なくとも一方は、縮環カルバゾール-9-イル構造を有する。ここでいう縮環カルバゾール-9-イル構造は、カルバゾール-9-イル構造を構成する2つのベンゼン環の少なくとも一方に環が縮合している構造を有していて、カルバゾール環を構成する窒素原子で結合する構造である。縮環カルバゾール-9-イル構造は、カルバゾールを含む縮合環を構成する環の数が4以上であり、5~9であることがより好ましく、5~7であることがさらに好ましい。本発明の好ましい一態様では、カルバゾールを含む縮合環を構成する環の数は5である。
カルバゾール-9-イル構造に縮合している環は、芳香族炭化水素環、芳香族複素環、脂肪族炭化水素環および脂肪族複素環からなる群より選択される1つの環または2つ以上が縮合した環である。2つ以上が縮合している場合、同一種の環が2つ以上縮合したものであってもよいし、異なる種類の環が2つ以上縮合したものであってもよい。前者の例としては、ベンゼン環が2つ縮合したナフタレン環を挙げることができ、後者の例としては、ベンゼン環とフラン環が縮合したベンゾフラン環を挙げることができる。縮合している環として好ましいのは、芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群より選択される1つの環または2つ以上が縮合した環である。
芳香族炭化水素環としてはベンゼン環を挙げることができる。芳香族複素環は、環骨格構成原子としてヘテロ原子を含む芳香性を示す環を意味し、5~7員環であることが好ましく、例えば5員環であるものや、6員環であるものを採用したりすることができる。本発明の一態様では、芳香族複素環としてフラン環、チオフェン環、ピロール環を採用することができる。ピロール環の窒素原子には、置換基群Eの中から選択した置換基が結合していることが好ましく、アルキル基やアリール基で置換されていてもよいアリール基が結合していることがより好ましい。芳香族複素環として好ましいのはフラン環とチオフェン環である。脂肪族炭化水素環としてはシクロペンタジエン環を挙げることができる。
本発明の一態様では、カルバゾール-9-イル構造に縮合している環は、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環およびシクロペンタジエン環からなる群より選択される1つの環または2つ以上が縮合した環から選択される。本発明の好ましい一態様では、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環およびピロール環からなる群より選択される1つの環または2つ以上が縮合した環から選択される。本発明のさらに好ましい一態様では、ベンゼン環、フラン環およびチオフェン環からなる群より選択される1つの環または2つ以上が縮合した環から選択される。
本発明の一態様では、カルバゾール-9-イル構造に縮合している環は、ベンゼン環、ナフタレン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドール環である。本発明の好ましい一態様では、カルバゾール-9-イル構造に縮合している環は、ベンゼン環、ナフタレン環、ベンゾフラン環またはベンゾチオフェン環である。本発明のさらに好ましい一態様では、カルバゾール-9-イル構造に縮合している環は、ベンゼン環、ベンゾフラン環またはベンゾチオフェン環である。本発明の特に好ましい一態様では、カルバゾール-9-イル構造に縮合している環は、ベンゾフラン環またはベンゾチオフェン環である。ここでいうベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドール環およびインデン環は5員環でカルバゾール-9-イル構造を構成するベンゼン環に縮合する。
カルバゾール-9-イル構造には、1~4箇所で環が縮合していてもよいが、1箇所または2箇所で環が縮合しているのが好ましく、1箇所で環が縮合しているのがより好ましい。2箇所以上で環が縮合している場合、縮合している環は互いに同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
本発明では、縮環カルバゾール-9-イル構造として、ベンゾフラン環が縮合したカルバゾール-9-イル構造か、ベンゾチオフェン環が縮合したカルバゾール-9-イル構造を採用することが特に好ましい。
本発明では、ベンゾフラン環が縮合したカルバゾール-9-イル構造として、ベンゾフロ[2,3-a]カルバゾール-9-イル基を採用することができる。また、ベンゾフロ[3,2-a]カルバゾール-9-イル基を採用することもできる。また、ベンゾフロ[2,3-b]カルバゾール-9-イル基を採用することもできる。また、ベンゾフロ[3,2-b]カルバゾール-9-イル基を採用することもできる。また、ベンゾフロ[2,3-c]カルバゾール-9-イル基を採用することもできる。また、ベンゾフロ[3,2-c]カルバゾール-9-イル基を採用することもできる。これらの構造は下記の通りであり、下記構造中の水素原子の少なくとも1つは置換されていてもよい。また、下記構造中のベンゼン環にはさらに環が縮合していてもよいが、好ましいのは下記構造中のベンゼン環には環が縮合していない態様である。
本発明では、ベンゾチオフェン環が縮合したカルバゾール-9-イル構造として、ベンゾチエノ[2,3-a]カルバゾール-9-イル基を採用することができる。また、ベンゾチエノ[3,2-a]カルバゾール-9-イル基を採用することもできる。また、ベンゾチエノ[2,3-b]カルバゾール-9-イル基を採用することもできる。また、ベンゾチエノ[3,2-b]カルバゾール-9-イル基を採用することもできる。また、ベンゾチエノ[2,3-c]カルバゾール-9-イル基を採用することもできる。また、ベンゾチエノ[3,2-c]カルバゾール-9-イル基を採用することもできる。これらの構造は下記の通りであり、下記構造中の水素原子の少なくとも1つは置換されていてもよい。また、下記構造中のベンゼン環にはさらに環が縮合していてもよいが、好ましいのは下記構造中のベンゼン環には環が縮合していない態様である。
縮環カルバゾール-9-イル構造に存在する水素原子は、置換基でも置換されていてもよい。例えば置換基群Aから選択される置換基で置換されていてもよいし、置換基群Bから選択される置換基で置換されていてもよいし、置換基群Cから選択される置換基で置換されていてもよいし、置換基群Dから選択される置換基で置換されていてもよいし、置換基群Eから選択される置換基で置換されていてもよい。本発明の一態様では、重水素原子またはアリール基で置換されていてもよいアルキル基、重水素原子、またはその両方で置換されていてもよい。本発明の一態様では、重水素原子またはアルキル基で置換されていてもよいアリール基、重水素原子、またはその両方で置換されていてもよい。第1ドナー部位が縮環カルバゾール-9-イル構造を有する場合、その水素原子の1つは第2ドナー部位で置換されている。本発明の一態様では、第1ドナー部位が縮環カルバゾール-9-イル構造であるとき、その水素原子は第2ドナー部位と重水素原子以外では置換されていない。本発明の一態様では、第2ドナー部位が縮環カルバゾール-9-イル構造であるとき、その水素原子は重水素原子だけで置換されていてもよい。
なお、ここでいう「アルキル基」は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよく、直鎖状または分枝状であるのが好ましい。また、直鎖部分と環状部分と分枝部分のうちの2種以上が混在していてもよい。アルキル基の炭素数は、例えば1以上、2以上、4以上とすることができる。また、炭素数は30以下、20以下、10以下、6以下、4以下とすることができる。アルキル基の具体例として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、2-エチルヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、n-デカニル基、イソデカニル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基を挙げることができる。
縮環カルバゾール-9-イル構造として好ましいのは、下記一般式(2)で表される構造である。
一般式(2)において、XはO、S、N(R)またはC(R10)(R11)を表す。好ましくは、O、SまたはN(R)であり、より好ましくはOまたはSである。本発明の好ましい一態様では、XはOである。本発明の好ましい一態様では、XはSである。なお、一般式(2)では、(Rn8が結合している右上のベンゼン環と(Rn7が結合している中央のベンゼン環とは、Xを介する結合と単結合で連結しているが、これら2つの結合の位置関係は制限されない。上記一般式(2)ではXを介する結合が上方に記載され、単結合が下方に記載されているが、一般式(2)にはXを介する結合が下方で、単結合が上方に位置する構造も含まれる。
一般式(2)において、n6およびn8は各々独立に0~4のいずれかの整数を表し、0~2が好ましく、0または1であることがより好ましい。n7は0~2のいずれかの整数を表し、0または1であることが好ましい。n6+n7+n8は0~10のいずれかの整数であり、例えば0~4であり、例えば0~2である。第1ドナー部位が一般式(2)で表される基である場合は、n6+n7+n8は1~10のいずれかの整数であり、R~Rの少なくとも1個(好ましくは1~2個、より好ましくは1個)は第2ドナー性基である。本発明の一態様では、n6が1~4である。本発明の一態様では、n7が1または2である。本発明の一態様では、n8が1~4である。
一般式(2)において、R~Rは各々独立に置換基(置換基には重水素原子も含まれる)を表す。置換基は、例えば置換基群Aから選択してもよいし、置換基群Bから選択してもよいし、置換基群Cから選択してもよいし、置換基群Dから選択してもよいし、置換基群Eから選択してもよい。
一般式(2)では、隣り合う環骨格構成炭素原子に結合しているR同士、隣り合う環骨格構成炭素原子に結合しているR同士、隣り合う環骨格構成炭素原子に結合しているR同士は、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。形成される環状構造については、上記のカルバゾール-9-イル基に縮合している環の記載を参照することができる。本発明の一態様では、隣り合う環骨格構成炭素原子に結合しているR同士が互いに結合して環状構造を形成しており、好ましくはベンゾフロ構造またはベンゾチエノ構造を形成している。本発明の一態様では、隣り合う環骨格構成炭素原子に結合しているR同士が互いに結合して環状構造を形成しており、好ましくはベンゾフロ構造またはベンゾチエノ構造を形成している。本発明の一態様では、R同士、R同士、R同士が互いに結合して環状構造を形成していない。なお、RとR、RとRが互いに結合して環状構造を形成することはない。
一般式(2)の*は結合位置を表す。
本発明の好ましい一態様では、第2ドナー部位だけが一般式(2)で表される。本発明の一態様では、第1ドナー部位だけが一般式(2)で表される。本発明の一態様では、第1ドナー部位と第2ドナー部位が各々独立に一般式(2)で表される。
以下において、第1ドナー部位や第2ドナー部位が採りうる縮環カルバゾール-9-イル構造の具体例としてD1~D718を示す。第1ドナー部位がD1~D718であるとき、D1~D718に存在する水素原子または重水素原子のうちの少なくとも1個が第2ドナー部位に置換されて一般式(1)のドナー性基になる。なお、本発明で採用することができる縮環カルバゾール-9-イル構造は、以下の具体例によって限定的に解釈されることはない。以下の具体例において、*は結合位置を示し、Phはフェニル基を表す。また、メチル基は表示を省略している。このため、D218~D241はメチル基を有している。
上記D1~D244内に存在する水素原子をすべて重水素原子に置換したものを順にD245~D488として開示する。上記D13~D242の置換基であるフェニル基またはアルキル基に存在するすべて水素原子を重水素原子に置換したものを順にD489~D718として開示する。
本発明の一態様では、第1ドナー部位はD1~D718からなる群より選択される。本発明の一態様では、第1ドナー部位はD1~D157、D218~D242からなる群より選択される。本発明の一態様では、第1ドナー部位はD158~D217からなる群より選択される。本発明の一態様では、第1ドナー部位はD1~D18、D218~D244からなる群より選択される。本発明の一態様では、第1ドナー部位はD19~D217からなる群より選択される。これらの場合、D1~D718に存在する水素原子または重水素原子のうちの1個が第2ドナー部位に置換されて一般式(1)のドナー性基になる。
本発明の一態様では、第2ドナー部位はD1~D718からなる群より選択される。本発明の一態様では、第2ドナー部位はD1~D157、D218~D242からなる群より選択される。本発明の一態様では、第2ドナー部位はD158~D217からなる群より選択される。本発明の一態様では、第2ドナー部位はD1~D18、D218~D244からなる群より選択される。本発明の一態様では、第2ドナー部位はD19~D217からなる群より選択される。
第1ドナー部位と第2ドナー部位の一方は、上記の縮環カルバゾール-9-イル構造を有していないドナー構造であってもよい。
ドナー構造は、ハメットのσp値が負の基の中から選択することができる。ハメットのσp値は、L.P.ハメットにより提唱されたものであり、パラ置換ベンゼン誘導体の反応速度または平衡に及ぼす置換基の影響を定量化したものである。具体的には、パラ置換ベンゼン誘導体における置換基と反応速度定数または平衡定数の間に成立する下記式:
log(k/k0) = ρσp
または
log(K/K0) = ρσp
における置換基に特有な定数(σp)である。上式において、k0は置換基を持たないベンゼン誘導体の速度定数、kは置換基で置換されたベンゼン誘導体の速度定数、K0は置換基を持たないベンゼン誘導体の平衡定数、Kは置換基で置換されたベンゼン誘導体の平衡定数、ρは反応の種類と条件によって決まる反応定数を表す。本発明における「ハメットのσp値」に関する説明と各置換基の数値については、Hansch,C.et.al.,Chem.Rev.,91,165-195(1991)のσp値に関する記載を参照することができる。
第1ドナー部位と第2ドナー部位が採りうるドナー構造は、σpが-0.3以下であることが好ましく、-0.5以下であることがより好ましく、-0.7以下であることがさらに好ましい。例えば、-0.9以下の範囲から選択したり、-1.1以下の範囲から選択したりしてもよい。
ドナー性構造は、置換アミノ基を含むものであることが好ましい。置換アミノ基であってもよいし、置換アミノ基が結合したアリール基、なかでも置換アミノ基が結合したフェニル基であってもよい。本発明の好ましい一態様では、ドナー性基は置換アミノ基である。
置換アミノ基の窒素原子に結合する置換基は、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基であることが好ましく、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基であることがより好ましい。置換アミノ基は、特に、置換もしくは無置換のジアリールアミノ基、または置換もしくは無置換のジヘテロアリールアミノ基であることが好ましい。ここでいうジアリールアミノ基を構成する2つのアリール基は互いに結合していてもよく、またジヘテロアリールアミノ基を構成する2つのヘテロアリール基は互いに結合していてもよい。
第1ドナー部位と第2ドナー部位が採りうる、縮環カルバゾール-9-イル構造以外の好ましい構造は、非縮環カルバゾール-9-イル構造である。より好ましいのは、下記一般式(3)で表される構造である。
一般式(3)において、R12およびR13は各々独立に置換基(置換基には重水素原子も含まれる)を表す。置換基については、上記の置換もしくは無置換の非縮環カルバゾール-9-イル基の置換基の記載を参照することができる。
一般式(3)において、n12およびn13は各々独立に0~4のいずれかの整数を表す。本発明の一態様では、R12およびR13が重水素原子であるとき、n12およびn13は4である。R12およびR13が重水素原子以外の置換基であるとき、n12およびn13は0~2であることが好ましく、例えば0または1である。本発明の一態様では、n12とn13はともに0である。
一般式(3)において、R12同士、R13同士は互いに結合して単環構造を形成していない。R12とR13も互いに結合して単環構造を形成していない。
一般式(3)における*は結合位置を表す。
本発明の好ましい一態様では、R12およびR13は各々独立に置換基群Eから選択される置換基であり、n12+n13は0~4であり、好ましくは0~2であり、例えばn12とn13がともに1である場合、n12が1でn13が0である場合、n12とn13がともに0である場合を挙げることができる。なお、第1ドナー部位が一般式(3)で表される構造を有する場合、n12+n13は1~4であり、R12およびR13の少なくとも1個は第2ドナー部位である。
以下において、第1ドナー部位や第2ドナー部位が採りうる非縮環カルバゾール-9-イル構造の具体例としてD719~D759を示す。ただし、本発明で採用することができる非縮環カルバゾール-9-イル構造は、これらの具体例によって限定的に解釈されることはない。以下の具体例において、*は結合位置を示し、Phはフェニル基を表す。また、メチル基は表示を省略している。このため、例えばD720はメチル基を有している。
上記D719~D733内に存在する水素原子をすべて重水素原子に置換したものを順にD734~D748として開示する。上記D720~D730の置換基であるフェニル基およびアルキル基に存在するすべて水素原子を重水素原子に置換したものを順にD749~D759として開示する。
本発明の一態様では、第1ドナー部位はD719~D759からなる群より選択される。本発明の一態様では、第2ドナー部位は719~D759からなる群より選択される。
本発明の一態様では、一般式(1)のR~Rが採りうるドナー性基は、第1ドナー部位がD1~D759からなる群より選択され、そのD1~D759に存在する水素原子または重水素原子のうちの1個がD1~D759からなる群より選択される第2ドナー部位に置換された構造を有するドナー性基である。
本発明の一態様では、一般式(1)のR~Rが採りうるドナー性基は、第1ドナー部位がD719~D759からなる群より選択され、そのD719~D759に存在する水素原子または重水素原子のうちの1個がD1~D718からなる群より選択される第2ドナー部位に置換された構造を有するドナー性基である。このとき、第2ドナー部位は、上記のD1~D718の説明において記載した複数の群のいずれか1つから選択してもよい。
本発明の一態様では、一般式(1)のR~Rが採りうるドナー性基は、第1ドナー部位がD1~D718からなる群より選択され、そのD1~D718に存在する水素原子または重水素原子のうちの1個がD719~D759からなる群より選択される第2ドナー部位に置換された構造を有するドナー性基である。このとき、第1ドナー部位は、上記のD1~D718の説明において記載した複数の群のいずれか1つから選択してもよい。
本発明の一態様では、第1ドナー部位のカルバゾール-9-イル基の1位に第2ドナー部位が結合している。本発明の一態様では、第1ドナー部位のカルバゾール-9-イル基の2位に第2ドナー部位が結合している。本発明の一態様では、第1ドナー部位のカルバゾール-9-イル基の3位に第2ドナー部位が結合している。本発明の一態様では、第1ドナー部位のカルバゾール-9-イル基の4位に第2ドナー部位が結合している。
一般式(1)のR~Rのうち、置換もしくは無置換のアリール基でも、ドナー性基Dでもないもの(残りのR~R)は、各々独立に水素原子または重水素原子である。残りのR~Rは0~2個であり、例えば0個であり、例えば1個であり、例えば2個である。本発明の一態様では、残りのR~Rはすべてが水素原子である。本発明の一態様では、残りのR~Rはすべてが重水素原子である。本発明の一態様では、少なくともRが水素原子または重水素原子である。本発明の一態様では、少なくともRが水素原子または重水素原子である。本発明の一態様では、少なくともRが水素原子または重水素原子である。本発明の一態様では、少なくともRが水素原子または重水素原子である。本発明の一態様では、少なくともRが水素原子または重水素原子である。本発明の一態様では、RとRが水素原子または重水素原子である。本発明の一態様では、RとRが水素原子または重水素原子である。本発明の一態様では、RとRが水素原子または重水素原子である。
一般式(1)におけるX~Xは、各々独立にNまたはC(R)を表す。ただし、X~Xの少なくとも1個はNである。Rは水素原子または置換基(置換基には重水素原子も含まれる)を表す。ここでいう置換基は、置換基群Aから選択してもよいし、置換基群Bから選択してもよいし、置換基群Cから選択してもよいし、置換基群Dから選択してもよいし、置換基群Eから選択してもよい。本発明の好ましい一態様では、X~XはNである。本発明の一態様では、XおよびXがNであり、XがC(R)である。本発明の一態様では、XおよびXがNであり、XがC(R)である。本発明の一態様では、XがNであり、XおよびXがC(R)である。本発明の一態様では、XがNであり、XおよびXがC(R)である。本発明の一態様では、Rは水素原子または重水素原子である。本発明の一態様では、Rは重水素原子で置換されていてもよいアルキル基である。本発明の一態様では、Rは重水素原子、アルキル基またはアリール基で置換されていてもよいアリール基である。
一般式(1)におけるArおよびArは、各々独立に置換もしくは無置換のアリール基を、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基表す。置換もしくは無置換のアリール基の説明と好ましい範囲については、上記のR~Rの少なくとも1個として採用しうる置換もしくは無置換のアリール基の説明と好ましい範囲を参照することができる。本発明の一態様では、ArおよびArは置換もしくは無置換のアリール基であり、好ましくは置換もしくは無置換のフェニル基であり、さらに好ましくは重水素原子およびフェニル基からなる群より選択される1つの原子か基または2つ以上を組み合わせた基で置換されていてもよいフェニル基である。本発明の好ましい一態様では、無置換のフェニル基である。本発明の一態様では、ArおよびArは置換もしくは無置換のヘテロアリール基である。本発明の好ましい一態様では、ArとArは同一である。
「ヘテロアリール基」は、単環であってもよいし、2つ以上の環が縮合した縮合環であってもよい。縮合環である場合、縮合している環の数は2~6であることが好ましく、例えば2~4の中から選択することができる。環の具体例として、ピリジン環、ピリミジン環を挙げることができ、これらの環にはさらに別の環が縮合していてもよい。ヘテロアリール基の具体例として、2-ピリジル基、3-ピリジル基、4-ピリジル基を挙げることができる。ヘテロアリール基の環骨格構成原子数は4~40であることが好ましく、5~20であることがより好ましく、5~14の範囲内で選択したり、5~10の範囲内で選択したりしてもよい。
ArおよびArが採りうる置換もしくは無置換のアリール基の具体例として、上記Ar1~Ar57を挙げることができる。また、ArおよびArが採りうる置換もしくは無置換のヘテロアリール基の具体例として、下記のAr58~Ar62と、Ar58~Ar62内に存在する水素原子をすべて重水素原子に置換したAr63~Ar67を挙げることができる。ただし、ArおよびArが採りうる置換もしくは無置換のアリール基と置換もしくは無置換のヘテロアリール基は、これらの具体例によって限定的に解釈されることはない。なお、以下の具体例において、*は結合位置を示す。
本発明の一態様では、ArおよびArはAr1~Ar67から選択する。本発明の一態様では、ArおよびArはAr1~Ar57から選択する。本発明の一態様では、ArおよびArはAr1~Ar3、Ar19~Ar23、Ar39、Ar40、Ar56、Ar57の中から選択する。本発明の一態様では、ArおよびArはAr1、Ar4~Ar18、Ar21、Ar24~Ar38、Ar41~Ar55の中から選択する。本発明の一態様では、ArおよびArはAr1、Ar19、Ar21、Ar57の中から選択する。本発明の一態様では、ArおよびArは同一である。本発明の一態様では、ArとArは異なっている。例えばArとArがともにAr1である態様、ArとArがともにAr21である態様、ArがAr1でArがAr19である態様、ArがAr21でArがAr57である態様を好ましく挙げることができる。
一般式(1)におけるLは単結合または2価の連結基を表す。2価の連結基として、置換もしくは無置換のアリーレン基、置換もしくは無置換のヘテロアリーレン基を挙げることができる。本発明の好ましい一態様では、Lは単結合である。本発明の一態様では、Lは置換もしくは無置換のアリーレン基である。本発明の一態様では、Lは置換もしくは無置換のヘテロアリーレン基である。アリーレン基を構成するアリール部分については、上記のドナー性基の記載欄におけるアリール基の説明と好ましい範囲を参照することができる。ヘテロアリーレン基としては、アリーレン基を構成する環骨格炭素原子の少なくとも1つを窒素原子へ置換した連結基を挙げることができる。
以下において、Lの具体例を挙げる。ただし、本発明で採用することができるLは、これらの具体例によって限定的に解釈されることはない。なお、以下の具体例において、メチル基は表示を省略している。このため、例えばL3~L5はメチル基で置換されている。*は結合位置を示す。L1は単結合である。
本発明の好ましい一態様では、X~XはNであり、ArおよびArは置換もしくは無置換のアリール基(好ましくは置換もしくは無置換のフェニル基、より好ましくはフェニル基)であり、Lは単結合である。
本発明の一態様では、X~XはNであり、ArおよびArは置換もしくは無置換のアリール基(好ましくは置換もしくは無置換のフェニル基、より好ましくはフェニル基)であり、LはL2である。
本発明の一態様では、X~XはNであり、ArおよびArは置換もしくは無置換のアリール基(好ましくは置換もしくは無置換のフェニル基、より好ましくはフェニル基)であり、LはL6である。
本発明の好ましい一態様では、X~XはNであり、ArおよびArは置換もしくは無置換のアリール基(好ましくは置換もしくは無置換のフェニル基、より好ましくはフェニル基)であり、Lは単結合であり、R~Rの少なくとも1個がドナー性基Dであり、R~Rの少なくとも1個が置換もしくは無置換のアリール基であり、R~Rの残りとRが水素原子または重水素原子であり、Rがシアノ基である。
本発明のより好ましい一態様では、X~XはNであり、ArおよびArは置換基群Eから選択される置換基で置換されていてもよいアリール基(好ましくは置換基群Eから選択される置換基で置換されていてもよいフェニル基、より好ましくはフェニル基)であり、Lは単結合であり、R~Rの1個がドナー性基Dであり、R~Rの1個が置換もしくは無置換のアリール基であり、R~Rの残りとRが水素原子または重水素原子であり、Rがシアノ基である。
これらの態様において、例えばRはドナー性基Dであり、Rは置換基群Eから選択される置換基で置換されていてもよいアリール基であり、Rは水素原子または重水素原子である。例えば、Rはドナー性基Dであり、Rは水素原子または重水素原子であり、Rは置換基群Eから選択される置換基で置換されていてもよいアリール基である。例えば、Rは水素原子または重水素原子であり、Rはドナー性基Dであり、Rは置換基群Eから選択される置換基で置換されていてもよいアリール基である。例えば、Rは水素原子または重水素原子であり、Rは置換基群Eから選択される置換基で置換されていてもよいアリール基であり、Rはドナー性基Dである。例えば、Rは置換基群Eから選択される置換基で置換されていてもよいアリール基であり、Rは水素原子または重水素原子であり、Rはドナー性基Dである。例えば、Rは置換基群Eから選択される置換基で置換されていてもよいアリール基であり、Rはドナー性基Dであり、Rは水素原子または重水素原子である。これらの態様におけるドナー性基Dとしては、上記のドナー性基Dの説明欄にて記載した態様を選択することが可能である。
本発明の一態様では、ドナー性基Dの第1ドナー部位が非縮環カルバゾール-9-イル構造を有し、第2ドナー部位が縮環カルバゾール-9-イル構造を有する。本発明の好ましい一態様では、第1ドナー部位が非縮環カルバゾール-9-イル構造を有し、第2ドナー部位が縮環カルバゾール-9-イル構造を有していて、第1ドナー部位を構成する非縮環カルバゾール-9-イル構造の4位に結合している。これらの態様において、第1ドナー部位に用いる非縮環カルバゾール-9-イル構造の好ましい範囲と具体例については、上記の「非縮環カルバゾール-9-イル構造」についての記載を参照することができ、第2ドナー部位に用いる縮環カルバゾール-9-イル構造の説明と好ましい範囲、具体例については、上記の「縮環カルバゾール-9-イル構造」についての記載を参照することができる。
本発明の一態様では、第1ドナー部位が一般式(3)で表される構造を有していて、一般式(3)のR12およびR13の少なくとも1個が、一般式(2)で表される構造を有する第2ドナー部位である。本発明の好ましい一態様では、第1ドナー部位が一般式(3)で表される構造を有していて、一般式(3)のR12およびR13の少なくとも1個(好ましくは1個)が、一般式(2)で表される構造を有する第2ドナー部位であり、そのうちの1個が、一般式(3)におけるカルバゾール-9-イル構造の4位に結合している。これらの態様において、一般式(2)のXは、好ましくはOまたはSであり、より好ましくはOである。一般式(2)で表される構造として、下記一般式(4a)~(4f)のいずれかで表される構造を挙げることができる。本発明の好ましい一態様では、第1ドナー部位が一般式(3)で表される構造を有していて、一般式(3)のR12およびR13の少なくとも1個が、一般式(4a)で表される構造を有する第2ドナー部位である。本発明のより好ましい一態様では、第1ドナー部位が一般式(3)で表される構造を有していて、一般式(3)のR12およびR13の少なくとも1個(好ましくは1個)が、一般式(4a)で表される構造を有する第2ドナー部位であり、そのうちの1個が、一般式(3)におけるカルバゾール-9-イル構造の4位に結合している。
一般式(4a)~(4f)において、X21~X71は各々独立にOまたはSを表す。R21~R80は各々独立に、水素原子または置換基(置換基には重水素原子も含まれる)を表す。置換基については、上記の一般式(2)のR~Rが採りうる置換基についての記載を参照することができる。本発明の好ましい一態様では、X21~X71はOである。
本発明の一態様では、ドナー性基Dの第1ドナー部位が縮環カルバゾール-9-イル構造を有し、第2ドナー部位が非縮環カルバゾール-9-イル構造を有する。第1ドナー部位に用いる縮環カルバゾール-9-イル構造の説明と好ましい範囲、具体例については、上記の「縮環カルバゾール-9-イル構造」についての記載を参照することができ、第2ドナー部位に用いる非縮環カルバゾール-9-イル構造の好ましい範囲と具体例については、上記の「非縮環カルバゾール-9-イル構造」についての記載を参照することができる。
本発明の一態様では、第1ドナー部位が一般式(2)で表される構造を有していて、一般式(2)のR~Rの少なくとも1個が、一般式(3)で表される構造を有する第2ドナー部位である。本発明の好ましい一態様では、第1ドナー部位が一般式(2)で表される構造を有していて、一般式(2)のRおよびRの少なくとも1個が、一般式(3)で表される構造を有する第2ドナー部位である。これらの態様において、一般式(2)のXは、好ましくはOまたはSであり、より好ましくはOである。一般式(2)で表される構造として、上記の一般式(4a)~(4f)のいずれかで表される構造を挙げることができる。ここで、一般式(4a)のR21~R30の少なくとも1個(好ましくはR21~R24およびR27~R30の少なくとも1個、より好ましくはR21~R23およびR29のうちの少なくとも1個)は第2ドナー部位であり、一般式(4b)のR31~R40の少なくとも1個(好ましくはR31~R34およびR37~R40の少なくとも1個)は第2ドナー部位であり、一般式(4c)のR41~R50の少なくとも1個(好ましくはR41~R44およびR46~R49の少なくとも1個)は第2ドナー部位であり、一般式(4d)のR51~R60の少なくとも1個(好ましくはR51~R54およびR56~R59の少なくとも1個)は第2ドナー部位であり、一般式(4e)のR61~R70の少なくとも1個(好ましくはR61~R64およびR65~R68の少なくとも1個)は第2ドナー部位であり、一般式(4f)のR71~R80の少なくとも1個(好ましくはR71~R74およびR75~R78の少なくとも1個)は第2ドナー部位である。本発明の好ましい一態様では、第1ドナー部位が一般式(4a)で表される構造を有していて、一般式(4a)のR21~R24およびR27~R30の少なくとも1個が、一般式(3)で表される構造を有する第2ドナー部位である。本発明のより好ましい一態様では、第1ドナー部位が一般式(4a)で表される構造を有していて、一般式(4a)のR21~R23およびR29の少なくとも1個が一般式(3)で表される構造を有する第2ドナー部位である。すなわち、本発明のより好ましい一態様では、第1ドナー部位が一般式(4a)で表される構造を有していて、一般式(4a)のR21が一般式(3)で表される構造を有する第2ドナー部位である。また、本発明のより好ましい一態様では、第1ドナー部位が一般式(4a)で表される構造を有していて、一般式(4a)のR22が一般式(3)で表される構造を有する第2ドナー部位である。本発明のより好ましい一態様では、第1ドナー部位が一般式(4a)で表される構造を有していて、一般式(4a)のR23が一般式(3)で表される構造を有する第2ドナー部位である。本発明のより好ましい一態様では、第1ドナー部位が一般式(4a)で表される構造を有していて、一般式(4a)のR29が一般式(3)で表される構造を有する第2ドナー部位である。
一般式(1)で表される化合物は、金属原子を含まないことが好ましく、炭素原子、水素原子、重水素原子、窒素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群より選択される原子だけで構成される化合物であってもよい。本発明の好ましい一態様では、一般式(1)で表される化合物は、炭素原子、水素原子、重水素原子、窒素原子および酸素原子からなる群より選択される原子だけで構成される。また、一般式(1)で表される化合物は、炭素原子、水素原子、重水素原子、窒素原子および硫黄原子からなる群より選択される原子だけで構成される化合物であってもよい。一般式(1)で表される化合物は、炭素原子、水素原子、重水素原子および窒素原子からなる群より選択される原子だけで構成される化合物であってもよい。さらに、一般式(1)で表される化合物は重水素原子を含む化合物であってもよい。
本明細書において「置換基群A」とは、重水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(例えば炭素数1~40)、アルコキシ基(例えば炭素数1~40)、アルキルチオ基(例えば炭素数1~40)、アリール基(例えば炭素数6~30)、アリールオキシ基(例えば炭素数6~30)、アリールチオ基(例えば炭素数6~30)、ヘテロアリール基(例えば環骨格構成原子数5~30)、ヘテロアリールオキシ基(例えば環骨格構成原子数5~30)、ヘテロアリールチオ基(例えば環骨格構成原子数5~30)、アシル基(例えば炭素数1~40)、アルケニル基(例えば炭素数1~40)、アルキニル基(例えば炭素数1~40)、アルコキシカルボニル基(例えば炭素数1~40)、アリールオキシカルボニル基(例えば炭素数1~40)、ヘテロアリールオキシカルボニル基(例えば炭素数1~40)、シリル基(例えば炭素数1~40のトリアルキルシリル基)およびニトロ基からなる群より選択される1つの原子か基または2つ以上を組み合わせた基を意味する。
本明細書において「置換基群B」とは、重水素原子、アルキル基(例えば炭素数1~40)、アルコキシ基(例えば炭素数1~40)、アリール基(例えば炭素数6~30)、アリールオキシ基(例えば炭素数6~30)、ヘテロアリール基(例えば環骨格構成原子数5~30)、ヘテロアリールオキシ基(例えば環骨格構成原子数5~30)、ジアリールアミノアミノ基(例えば炭素原子数0~20)からなる群より選択される1つの原子か基または2つ以上を組み合わせた基を意味する。
本明細書において「置換基群C」とは、重水素原子、アルキル基(例えば炭素数1~20)、アリール基(例えば炭素数6~22)、ヘテロアリール基(例えば環骨格構成原子数5~20)、ジアリールアミノ基(例えば炭素原子数12~20)からなる群より選択される1つの原子か基または2つ以上を組み合わせた基を意味する。
本明細書において「置換基群D」とは、重水素原子、アルキル基(例えば炭素数1~20)、アリール基(例えば炭素数6~22)およびヘテロアリール基(例えば環骨格構成原子数5~20)からなる群より選択される1つの原子か基または2つ以上を組み合わせた基を意味する。
本明細書において「置換基群E」とは、重水素原子、アルキル基(例えば炭素数1~20)およびアリール基(例えば炭素数6~22)からなる群より選択される1つの原子か基または2つ以上を組み合わせた基を意味する。
本明細書において「置換もしくは無置換の」または「置換されていてもよい」と記載されている場合の置換基は、例えば置換基群Aの中から選択してもよいし、置換基群Bの中から選択してもよいし、置換基群Cの中から選択してもよいし、置換基群Dの中から選択してもよいし、置換基群Eの中から選択してもよい。
以下の表1~表6において、一般式(1)で表される化合物の具体例を例示する。ただし、本発明において用いることができる一般式(1)で表される化合物はこれらの具体例によって限定的に解釈されるべきものではない。
表1および表2では、一般式(1a)のR~Rを特定することにより化合物1~5744の各構造を特定している。R~Rのうちの1個が採るドナー性基は、一般式(2a)で表される構造を有しており、その一般式(2a)中のM~Mを表1および表2で特定している。表1では、化合物1~50のR~RとM~Mをそれぞれ規定することにより、各化合物の構造を特定している。例えば、化合物1であれば、一般式(1a)のRとRがHであり、RがAr1であり、Rが一般式(2a)で表され、一般式(2a)中のMがD1であって、M~MがHである基である構造を有する。
表2では各段に複数の化合物のR~RとM~Mをまとめて表示することにより、化合物1~5744の各構造を示している。例えば、表2の化合物1~718の段であれば、RとRがHであり、RがAr1に固定されていて、Rが一般式(2a)で表される基であって、一般式(2a)中のMがD1~D718であるものを、順に化合物1~718としている。このため、表2の化合物1~713の段のうち、化合物1~50は表1で特定される化合物1~50をまとめて表示したものである。同様にして、表2の化合物719~1434の段であれば、RとRがHであり、RがAr1に固定されていて、Rが一般式(2a)で表される基であって、一般式(2a)中のMがD1~D718であるものを、順に化合物719~1434としている。表2の化合物1437~5744も同じ要領で構造を特定している。
表3および表4では、一般式(1a)のR~Rを特定することにより化合物5745~278984の各構造を特定している。R~Rのうちの1個が採るドナー性基は、一般式(3a)~(3f)のいずれかで表される構造を有しており、その一般式(3a)~(3f)中のM~M10を表3および表4で特定している。表3および表4では、一般式(3a)~(3f)中のXはOに固定されている。表3では、化合物5745~5794のR~RとM~M10をそれぞれ規定することにより、各化合物の構造を特定している。例えば、化合物5745であれば、一般式(1a)のRとRがHであり、RがAr1であり、Rが一般式(3a)で表され、一般式(3a)中のMがD1であって、M~M10がHである基である構造を有する。
表4では各段に複数の化合物のR~RとM~M10をまとめて表示することにより、化合物5745~278984の各構造を示している。例えば、表4の化合物5745~6503の段であれば、RとRがHであり、RがAr1に固定されていて、Rが一般式(3a)で表される基であって、一般式(3a)中のMがD1~D759であるものを、順に化合物5745~6503としている。このため、表2の化合物5745~6503の段のうち、化合物5745~5794は表3で特定される化合物5745~5794をまとめて表示したものである。同様にして、表4の化合物6504~7262の段であれば、RとRがHであり、RがAr1に固定されていて、Rが一般式(3a)で表される基であって、一般式(3a)中のMがD1~D759であるものを、順に化合物6504~7262としている。表2の化合物7263~278984も同じ要領で構造を特定している。
表3および表4には、一般式(3a)から(3f)のXがOである化合物5745~278984を掲載している。これらの化合物5745~278984におけるXをSに置換した化合物を順に化合物278985~552223としてここに開示する。
ここまでに開示した化合物1~552223は、いずれも一般式(1a)のR~Rのうちの1個がAr1である構造を有している。化合物1~552223におけるAr1を、Ar2~A57に置換した化合物を表5に示すように化合物552224~31476711としてここに開示する。例えば、表5の化合物552224~1104446の段であれば、化合物1~552223のAr1をAr2に置換した構造を有するものを順に化合物552224~1104446として特定している。同様にして、化合物1104447~31476711も特定している。
ここまでは、一般式(1a)のArとArがフェニル基(Ar1)であるものを化合物1~31476711として特定した。表6には、化合物1~31476711のそれぞれについて、ArとArを表6に示す通りに置換した化合物を順に表の形式で表示した。表6には、対応関係をわかりやすくするために、化合物1~31476711も表示している。例えば化合物1(1)は、化合物1のArであるAr1をAr2に置換した構造を有する化合物を示している。また、化合物2(1)は化合物2のArであるAr1をAr2に置換した構造を有する化合物を示している。化合物31476711(1)は化合物31476711のArであるAr1をAr2に置換した構造を有する化合物を示している。化合物1(2)~31476711(2)やそれ以降の化合物も、同じ要領で特定している。
表1~6を用いて一般式(1)におけるRが水素原子である具体例を化合物1~31476711(132)として例示した。これらの各化合物におけるRの水素原子をそれぞれ重水素原子に置換したものを順に化合物1d~31476711d(132)としてここにさらに例示する。また、化合物1~31476711(132)に存在する水素原子をすべて重水素原子に置換したものを順に化合物1D~31476711D(132)としてここにさらに例示する。これらの全ての例示化合物は本明細書に個別に開示されているものとする。
本発明の好ましい一態様では、一般式(1)で表される化合物は、下記の化合物群から選択される。
一般式(1)で表される化合物の分子量は、例えば一般式(1)で表される化合物を含む有機層を蒸着法により製膜して利用することを意図する場合には、1500以下であることが好ましく、1200以下であることがより好ましく、1000以下であることがさらに好ましく、900以下であることがさらにより好ましい。分子量の下限値は、一般式(1)で表される最小化合物の分子量である。
一般式(1)で表される化合物は、分子量にかかわらず塗布法で成膜してもよい。塗布法を用いれば、分子量が比較的大きな化合物であっても成膜することが可能である。一般式(1)で表される化合物は、有機溶媒に溶解しやすいという利点がある。このため、一般式(1)で表される化合物は塗布法を適用しやすいうえ、精製して純度を高めやすい。
本発明を応用して、分子内に一般式(1)で表される構造を複数個含む化合物を、発光材料として用いることも考えられる。
例えば、一般式(1)で表される構造中にあらかじめ重合性基を存在させておいて、その重合性基を重合させることによって得られる重合体を、発光材料として用いることが考えられる。例えば、一般式(1)のいずれかの部位に重合性官能基を含むモノマーを用意して、これを単独で重合させるか、他のモノマーとともに共重合させることにより、繰り返し単位を有する重合体を得て、その重合体を発光材料として用いることが考えられる。あるいは、一般式(1)で表される構造を有する化合物どうしをカップリングさせることにより、二量体や三量体を得て、それらを発光材料として用いることも考えられる。
一般式(1)で表される構造を含む繰り返し単位を有する重合体の例として、下記2つの一般式のいずれかで表される構造を含む重合体を挙げることができる。
上の一般式において、Qは一般式(1)で表される構造を含む基を表し、LおよびLは連結基を表す。連結基の炭素数は、好ましくは0~20であり、より好ましくは1~15であり、さらに好ましくは2~10である。連結基は-X11-L11-で表される構造を有するものであることが好ましい。ここで、X11は酸素原子または硫黄原子を表し、酸素原子であることが好ましい。L11は連結基を表し、置換もしくは無置換のアルキレン基、または置換もしくは無置換のアリーレン基であることが好ましく、炭素数1~10の置換もしくは無置換のアルキレン基、または置換もしくは無置換のフェニレン基であることがより好ましい。
上の一般式において、R101、R102、R103およびR104は、各々独立に置換基を表す。好ましくは、炭素数1~6の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1~6の置換もしくは無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは炭素数1~3の無置換のアルキル基、炭素数1~3の無置換のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子であり、さらに好ましくは炭素数1~3の無置換のアルキル基、炭素数1~3の無置換のアルコキシ基である。
およびLで表される連結基は、Qを構成する一般式(1)のいずれかの部位に結合することができる。1つのQに対して連結基が2つ以上連結して架橋構造や網目構造を形成していてもよい。
繰り返し単位の具体的な構造例として、下記式で表される構造を挙げることができる。
これらの式を含む繰り返し単位を有する重合体は、一般式(1)のいずれかの部位にヒドロキシ基を導入しておき、それをリンカーとして下記化合物を反応させて重合性基を導入し、その重合性基を重合させることにより合成することができる。
分子内に一般式(1)で表される構造を含む重合体は、一般式(1)で表される構造を有する繰り返し単位のみからなる重合体であってもよいし、それ以外の構造を有する繰り返し単位を含む重合体であってもよい。また、重合体の中に含まれる一般式(1)で表される構造を有する繰り返し単位は、単一種であってもよいし、2種以上であってもよい。一般式(1)で表される構造を有さない繰り返し単位としては、通常の共重合に用いられるモノマーから誘導されるものを挙げることができる。例えば、エチレン、スチレンなどのエチレン性不飽和結合を有するモノマーから誘導される繰り返し単位を挙げることができる。
ある実施形態では、一般式(1)で表される化合物は発光材料である。
ある実施形態では、一般式(1)で表される化合物は、遅延蛍光を発することができる化合物である。
本開示のある実施形態では、一般式(1)で表される化合物は、熱的または電子的手段で励起されるとき、UV領域、可視スペクトルのうち青色、緑色、黄色、オレンジ色、赤色領域(例えば約420nm~約500nm、約500nm~約600nmまたは約600nm~約700nm)または近赤外線領域で光を発することができる。
本開示のある実施形態では、一般式(1)で表される化合物は、熱的または電子的手段で励起されるとき、可視スペクトルのうち赤色またはオレンジ色領域(例えば約620nm~約780nm、約650nm)で光を発することができる。
本開示のある実施形態では、一般式(1)で表される化合物は、熱的または電子的手段で励起されるとき、可視スペクトルのうちオレンジ色または黄色領域(例えば約570nm~約620nm、約590nm、約570nm)で光を発することができる。
本開示のある実施形態では、一般式(1)で表される化合物は、熱的または電子的手段で励起されるとき、可視スペクトルのうち緑色領域(例えば約490nm~約575nm、約510nm)で光を発することができる。
本開示のある実施形態では、一般式(1)で表される化合物は、熱的または電子的手段で励起されるとき、可視スペクトルのうち青色領域(例えば約400nm~約490nm、約475nm)で光を発することができる。
本開示のある実施形態では、一般式(1)で表される化合物は、熱的または電子的手段で励起されるとき、紫外スペクトル領域(例えば280~400nm)で光を発することができる。
本開示のある実施形態では、一般式(1)で表される化合物は、熱的または電子的手段で励起されるとき、赤外スペクトル領域(例えば780nm~2μm)で光を発することができる。
本開示のある実施形態では、一般式(1)で表される化合物を用いた有機半導体素子を作製することができる。ここでいう有機半導体素子は、光が介在する有機光素子であってもよいし、光が介在しない有機素子であってもよい。有機光素子は、素子が光を放射する有機発光素子であってもよいし、光を受け取る有機受光素子であってもよいし、素子内で光によるエネルギー移動を生じる素子であってもよい。本開示のある実施形態では、一般式(1)で表される化合物を用いて有機エレクトロルミネッセンス素子や固体撮像素子(例えばCMOSイメージセンサー)などの有機光素子を作製することができる。本開示のある実施形態では、一般式(1)で表される化合物を用いたCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などを作製することができる。
小分子の化学物質ライブラリの電子的特性は、公知のab initioによる量子化学計算を用いて算出することができる。例えば、基底として、6-31G*、およびベッケの3パラメータ、Lee-Yang-Parrハイブリッド汎関数として知られている関数群を用いた時間依存的な密度汎関数理論を使用してHartree-Fock方程式(TD-DFT/B3LYP/6-31G*)を解析し、特定の閾値以上のHOMOおよび特定の閾値以下のLUMOを有する分子断片(部分)をスクリーニングすることができる。
それにより、例えば-6.5eV以上のHOMOエネルギー(例えばイオン化ポテンシャル)があるときは、供与体部分(「D」)が選抜できる。また例えば、-0.5eV以下のLUMOエネルギー(例えば電子親和力)があるときは、受容体部分(「A」)が選抜できる。ブリッジ部分(「B」)は、例えば受容体と供与体部分を特異的な立体構成に厳しく制限できる強い共役系であることにより、供与体および受容体部分のπ共役系間の重複が生じるのを防止する。
ある実施形態では、化合物ライブラリは、以下の特性のうちの1つ以上を用いて選別される。
1.特定の波長付近における発光
2.算出された、特定のエネルギー準位より上の三重項状態
3.特定値より下のΔEST
4.特定値より上の量子収率
5.HOMO準位
6.LUMO準位
ある実施形態では、77Kにおける最低の一重項励起状態と最低の三重項励起状態との差(ΔEST)は、約0.5eV未満、約0.4eV未満、約0.3eV未満、約0.2eV未満または約0.1eV未満である。ある実施形態ではΔEST値は、約0.09eV未満、約0.08eV未満、約0.07eV未満、約0.06eV未満、約0.05eV未満、約0.04eV未満、約0.03eV未満、約0.02eV未満または約0.01eV未満である。
ある実施形態では、一般式(1)で表される化合物は、25%超の、例えば約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%またはそれ以上の量子収率を示す。
[一般式(1)で表される化合物の合成方法]
一般式(1)で表される化合物は、新規化合物を含む。
一般式(1)で表される化合物は、既知の反応を組み合わせることによって合成することができる。例えば、一般式(1)のR~Rのうちのドナー性基Dがハロゲン原子である化合物を合成しておき、D-Hと反応させることにより、一般式(1)の化合物を合成することができる。反応条件の詳細については、後述の合成例を参考にすることができる。
[一般式(1)で表される化合物を用いた構成物]
ある実施形態では、一般式(1)で表される化合物と組み合わせ、同化合物を分散させ、同化合物と共有結合し、同化合物をコーティングし、同化合物を担持し、あるいは同化合物と会合する1つ以上の材料(例えば小分子、ポリマー、金属、金属錯体等)と共に用い、固体状のフィルムまたは層を形成させる。例えば、一般式(1)で表される化合物を電気活性材料と組み合わせてフィルムを形成することができる。いくつかの場合、一般式(1)で表される化合物を正孔輸送ポリマーと組み合わせてもよい。いくつかの場合、一般式(1)で表される化合物を電子輸送ポリマーと組み合わせてもよい。いくつかの場合、一般式(1)で表される化合物を正孔輸送ポリマーおよび電子輸送ポリマーと組み合わせてもよい。いくつかの場合、一般式(1)で表される化合物を、正孔輸送部と電子輸送部との両方を有するコポリマーと組み合わせてもよい。以上のような実施形態により、固体状のフィルムまたは層内に形成される電子および/または正孔を、一般式(1)で表される化合物と相互作用させることができる。
[フィルムの形成]
ある実施形態では、一般式(1)で表される化合物を含むフィルムは、湿式工程で形成することができる。湿式工程では、本発明の化合物を含む組成物を溶解した溶液を面に塗布し、溶媒の除去後にフィルムを形成する。湿式工程として、スピンコート法、スリットコート法、インクジェット法(スプレー法)、グラビア印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。湿式工程では、本発明の化合物を含む組成物を溶解することができる適切な有機溶媒を選択して用いる。ある実施形態では、組成物に含まれる化合物に、有機溶媒に対する溶解性を上げる置換基(例えばアルキル基)を導入することができる。
ある実施形態では、本発明の化合物を含むフィルムは、乾式工程で形成することができる。ある実施形態では、乾式工程として真空蒸着法を採用することができる、これに限定されるものではない。真空蒸着法を採用する場合は、フィルムを構成する化合物を個別の蒸着源から共蒸着させてもよいし、化合物を混合した単一の蒸着源から共蒸着させてもよい。単一の蒸着源を用いる場合は、化合物の粉末を混合した混合粉を用いてもよいし、その混合粉を圧縮した圧縮成形体を用いてもよいし、各化合物を加熱溶融して冷却した混合物を用いてもよい。ある実施形態では、単一の蒸着源に含まれる複数の化合物の蒸着速度(重量減少速度)が一致ないしほぼ一致する条件で共蒸着を行うことにより、蒸着源に含まれる複数の化合物の組成比に対応する組成比のフィルムを形成することができる。形成されるフィルムの組成比と同じ組成比で複数の化合物を混合して蒸着源とすれば、所望の組成比を有するフィルムを簡便に形成することができる。ある実施形態では、共蒸着される各化合物が同じ重量減少率になる温度を特定して、その温度を共蒸着時の温度として採用することができる。
[一般式(1)で表される化合物の使用の例]
一般式(1)で表される化合物は、有機発光素子の材料として有用である。特に有機発光ダイオード等に好ましく用いられる。
有機発光ダイオード:
本発明の一態様は、有機発光素子の発光材料としての、本発明の一般式(1)で表される化合物の使用に関する。ある実施形態では、本発明の一般式(1)で表される化合物は、有機発光素子の発光層における発光材料として効果的に使用できる。ある実施形態では、一般式(1)で表される化合物は、遅延蛍光を発する遅延蛍光(遅延蛍光体)を含む。ある実施形態では、本発明は一般式(1)で表される構造を有する遅延蛍光体を提供する。ある実施形態では、本発明は遅延蛍光体としての一般式(1)で表される化合物の使用に関する。ある実施形態では、本発明は一般式(1)で表される化合物は、ホスト材料として使用することができ、かつ、1つ以上の発光材料と共に使用することができ、発光材料は蛍光材料、燐光材料またはTADFでよい。ある実施形態では、一般式(1)で表される化合物は、正孔輸送材料として使用することもできる。ある実施形態では、一般式(1)で表される化合物は、電子輸送材料として使用することができる。ある実施形態では、本発明は一般式(1)で表される化合物から遅延蛍光を生じさせる方法に関する。ある実施形態では、化合物を発光材料として含む有機発光素子は、遅延蛍光を発し、高い光放射効率を示す。
ある実施形態では、発光層は一般式(1)で表される化合物を含み、一般式(1)で表される化合物は、基材と平行に配向される。ある実施形態では、基材はフィルム形成表面である。ある実施形態では、フィルム形成表面に対する一般式(1)で表される化合物の配向は、整列させる化合物によって発せられる光の伝播方向に影響を与えるか、あるいは、当該方向を決定づける。ある実施形態では、一般式(1)で表される化合物によって発される光の伝播方向を整列させることで、発光層からの光抽出効率が改善される。
本発明の一態様は、有機発光素子に関する。ある実施形態では、有機発光素子は発光層を含む。ある実施形態では、発光層は発光材料として一般式(1)で表される化合物を含む。ある実施形態では、有機発光素子は有機光ルミネッセンス素子(有機PL素子)である。ある実施形態では、有機発光素子は、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)である。ある実施形態では、一般式(1)で表される化合物は、発光層に含まれる他の発光材料の光放射を(いわゆるアシストドーパントとして)補助する。ある実施形態では、発光層に含まれる一般式(1)で表される化合物は、その最低の励起一重項エネルギー準位にあり、発光層に含まれるホスト材料の最低励起一重項エネルギー準位と発光層に含まれる他の発光材料の最低励起一重項エネルギー準位との間に含まれる。
ある実施形態では、有機光ルミネッセンス素子は、少なくとも1つの発光層を含む。ある実施形態では、有機エレクトロルミネッセンス素子は、少なくとも陽極、陰極、および前記陽極と前記陰極との間の有機層を含む。ある実施形態では、有機層は、少なくとも発光層を含む。ある実施形態では、有機層は、発光層のみを含む。ある実施形態では、有機層は、発光層に加えて1つ以上の有機層を含む。有機層の例としては、正孔輸送層、正孔注入層、電子障壁層、正孔障壁層、電子注入層、電子輸送層および励起子障壁層が挙げられる。ある実施形態では、正孔輸送層は、正孔注入機能を有する正孔注入輸送層であってもよく、電子輸送層は、電子注入機能を有する電子注入輸送層であってもよい。
発光層:
ある実施形態では、発光層は、陽極および陰極からそれぞれ注入された正孔および電子が再結合して励起子を形成する層である。ある実施形態では、層は光を発する。
ある実施形態では、発光材料のみが発光層として用いられる。ある実施形態では、発光層は発光材料とホスト材料とを含む。ある実施形態では、発光材料は、一般式(1)で表される1つ以上の化合物である。ある実施形態では、有機エレクトロルミネッセンス素子および有機光ルミネッセンス素子の光放射効率を向上させるため、発光材料において発生する一重項励起子および三重項励起子を、発光材料内に閉じ込める。ある実施形態では、発光層中に発光材料に加えてホスト材料を用いる。ある実施形態では、ホスト材料は有機化合物である。ある実施形態では、有機化合物は励起一重項エネルギーおよび励起三重項エネルギーを有し、その少なくとも1つは、本発明の発光材料のそれらよりも高い。ある実施形態では、本発明の発光材料中で発生する一重項励起子および三重項励起子は、本発明の発光材料の分子中に閉じ込められる。ある実施形態では、一重項および三重項の励起子は、光放射効率を向上させるために十分に閉じ込められる。ある実施形態では、高い光放射効率が未だ得られるにもかかわらず、一重項励起子および三重項励起子は十分に閉じ込められず、すなわち、高い光放射効率を達成できるホスト材料は、特に限定されることなく本発明で使用されうる。ある実施形態では、本発明の素子の発光層中の発光材料において、光放射が生じる。ある実施形態では、放射光は蛍光および遅延蛍光の両方を含む。ある実施形態では、放射光は、ホスト材料からの放射光を含む。ある実施形態では、放射光は、ホスト材料からの放射光からなる。ある実施形態では、放射光は、一般式(1)で表される化合物からの放射光と、ホスト材料からの放射光とを含む。ある実施形態では、TADF分子とホスト材料とが用いられる。ある実施形態では、TADFはアシストドーパントであり、発光層中のホスト材料よりも励起一重項エネルギーが低く、発光層中の発光材料よりも励起一重項エネルギーが高い。
一般式(1)で表される化合物をアシストドーパントとして用いるとき、発光材料(好ましくは蛍光材料)として様々な化合物を採用することが可能である。そのような発光材料としては、アントラセン誘導体、テトラセン誘導体、ナフタセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、クリセン誘導体、ルブレン誘導体、クマリン誘導体、ピラン誘導体、スチルベン誘導体、フルオレン誘導体、アントリル誘導体、ピロメテン誘導体、ターフェニル誘導体、ターフェニレン誘導体、フルオランテン誘導体、アミン誘導体、キナクリドン誘導体、オキサジアゾール誘導体、マロノニトリル誘導体、ピラン誘導体、カルバゾール誘導体、ジュロリジン誘導体、チアゾール誘導体、金属(Al,Zn)を有する誘導体等を用いることが可能である。これらの例示骨格には置換基を有してもよいし、置換基を有していなくてもよい。また、これらの例示骨格どうしを組み合わせてもよい。
以下において、一般式(1)で表される構造を有するアシストドーパントと組み合わせて用いることができる発光材料を例示する。
また、WO2015/022974号公報の段落0220~0239に記載の化合物も、一般式(1)で表される構造を有するアシストドーパントとともに用いる発光材料として、特に好ましく採用することができる。
さらに好ましい発光材料として、以下の一般式(E1)で表される化合物も挙げることができる。
一般式(E1)において、R、R~R16は、各々独立に水素原子または置換基(置換基には重水素原子も含まれる)を表す。Rはアクセプター性基を表すか、RとRが互いに結合してアクセプター性基を形成しているか、またはRとRが互いに結合してアクセプター性基を形成している。RとR、RとR、RとR、RとR、RとR、RとR10、R10とR11、R11とR12、R12とR13、R13とR14、R14とR15、R15とR16は互いに結合して環状構造を形成していてもよい。XはOまたはNRを表し、Rは置換基を表す。X~Xのうち、XおよびXの少なくとも一方はOまたはNRであり、残りはOまたはNRであっても連結していなくてもよい。連結していないとき、両端はそれぞれ独立に水素原子または置換基(置換基には重水素原子も含まれる)を表す。一般式(1)中のC-R、C-R、C-R、C-R、C-R、C-R、C-R、C-R、C-R10、C-R11、C-R12、C-R13、C-R14、C-R15、C-R16は、Nに置換されていてもよい。
さらに好ましい発光材料として、以下の一般式(E2)で表される化合物も挙げることができる。
一般式(E2)において、RおよびRは、各々独立に置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基を表し、R~R16は、各々独立に水素原子または置換基(置換基には重水素原子も含まれる)を表す。RとR、RとR、RとR、RとR、RとR、RとR、RとR、RとR、RとR10、R10とR11、R11とR12、R12とR13、R13とR14、R14とR15、R15とR16、R16とRは互いに結合して環状構造を形成していてもよい。一般式(1)中のC-R、C-R、C-R、C-R、C-R、C-R、C-R、C-R10、C-R11、C-R12、C-R13、C-R14、C-R15、C-R16は、Nで置換されていてもよい。
さらに好ましい発光材料として、以下の一般式(E3)で表される化合物も挙げることができる。
一般式(E3)において、ZおよびZは、各々独立に置換もしくは無置換の芳香環、または置換もしくは無置換の複素芳香環を表し、R~Rは、各々独立に水素原子または置換基(置換基には重水素原子も含まれる)を表す。RとR、RとR、RとR、RとR、RとR、RとR、RとRは互いに結合して環状構造を形成していてもよい。ただし、Z、Z、RとRが互いに結合して形成する環、RとRが互いに結合して形成する環、RとRが互いに結合して形成する環、およびRとRが互いに結合して形成する環の少なくとも1つは、置換もしくは無置換のベンゾフランのフラン環、置換もしくは無置換のベンゾチオフェンのチオフェン環、置換もしくは無置換のインドールのピロール環であり、かつ、R~Rの少なくとも1つが置換もしくは無置換のアリール基、またはアクセプター性基であるか、あるいは、ZとZの少なくとも1つが置換基としてアリール基またはアクセプター性基を有する環である。前記ベンゾフラン環、前記ベンゾチオフェン環、前記インドール環を構成するベンゼン環骨格構成炭素原子のうち置換可能な炭素原子は窒素原子で置換されていてもよい。一般式(1)中のC-R、C-R、C-R、C-R、C-R、C-R、C-R、C-R、C-Rは、Nに置換されていてもよい。
さらに好ましい発光材料として、以下の一般式(E4)で表される化合物も挙げることができる。
一般式(E4)において、Zは、置換もしくは無置換のベンゼン環が縮合したフラン環、置換もしくは無置換のベンゼン環が縮合したチオフェン環、または置換もしくは無置換のベンゼン環が縮合したN-置換ピロール環を表し、ZおよびZは各々独立に置換もしくは無置換の芳香環、または置換もしくは無置換の複素芳香環を表し、Rは水素原子または置換基(置換基には重水素原子も含まれる)を表し、RおよびRは各々独立に置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基を表す。ZとR、RとZ、ZとZ、ZとRは互いに結合して環状構造を形成していてもよい。ただし、RとZ、ZとZ、ZとRの少なくとも1組は互いに結合して環状構造を形成している。
さらに好ましい発光材料として、以下の一般式(E5)で表される化合物も挙げることができる。
一般式(E5)において、RおよびRは、各々独立に置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基を表し、ZおよびZは、各々独立に置換もしくは無置換の芳香環、または置換もしくは無置換の複素芳香環を表し、R~Rは、各々独立に水素原子または置換基(置換基には重水素原子も含まれる)を表す。ただし、R、R、ZおよびZの少なくとも1つは、置換もしくは無置換のベンゾフラン環、置換もしくは無置換のベンゾチオフェン環、置換もしくは無置換のインドール環を含む。RとZ、ZとR、RとR、RとR、RとZ、ZとR、RとR、RとR、RとR、RとR、RとRは互いに結合して環状構造を形成していてもよい。前記ベンゾフラン環、前記ベンゾチオフェン環、前記インドール環を構成するベンゼン環骨格構成炭素原子のうち置換可能な炭素原子は窒素原子で置換されていてもよい。一般式(1)中のC-R、C-R、C-R、C-R、C-R、C-R、C-Rは、Nに置換されていてもよい。
さらに好ましい発光材料として、以下の一般式(E6)で表される化合物も挙げることができる。
一般式(E6)において、XおよびXは、一方が窒素原子であり、他方がホウ素原子である。R~R26、A、Aは、各々独立に水素原子または置換基(置換基には重水素原子も含まれる)を表す。RとR、RとR、RとR、RとR、RとR、RとR、RとR、RとR、RとR10、R10とR11、R11とR12、R13とR14、R14とR15、R15とR16、R16とR17、R17とR18、R18とR19、R19とR20、R20とR21、R21とR22、R22とR23、R23とR24、R24とR25、R25とR26は、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。ただし、Xが窒素原子であるとき、R17とR18は互いに結合して単結合となりピロール環を形成し、Xが窒素原子であるとき、R21とR22は互いに結合して単結合となりピロール環を形成する。ただし、Xが窒素原子であって、RとRおよびR21とR22が窒素原子を介して結合して6員環を形成し、R17とR18が互いに結合して単結合を形成しているとき、R~Rの少なくとも1つは置換もしくは無置換のアリール基であるか、RとR、RとR、RとR、RとR、RとRのいずれかが互いに結合して芳香環または複素芳香環を形成している。
さらに好ましい発光材料として、以下の一般式(E7)で表される化合物も挙げることができる。
一般式(E7)において、R201~R221は各々独立に水素原子または置換基(置換基には重水素原子も含まれる)を表し、好ましくは水素原子、重水素原子、アルキル基、アリール基、またはアルキル基とアリール基が結合した基を表す。R201とR202、R202とR203、R203とR204、R205とR206、R206とR207、R207とR208、R214とR215、R215とR216、R216とR217、R218とR219、R219とR220、R220とR221のうちの少なくとも1組は、互いに結合してベンゾフロ構造またはベンゾチエノ構造を形成している。好ましくは、R201とR202、R202とR203、R203とR204、R205とR206、R206とR207、R207とR208のうちの1組または2組と、R214とR215、R215とR216、R216とR217、R218とR219、R219とR220、R220とR221のうちの1組または2組が、互いに結合してベンゾフロ構造またはベンゾチエノ構造を形成している。さらに好ましくは、R203とR204が互いに結合してベンゾフロ構造またはベンゾチエノ構造を形成して、さらにより好ましくはR203とR204、R216とR217が互いに結合してベンゾフロ構造またはベンゾチエノ構造を形成している。特に好ましくは、R203とR204、R216とR217が互いに結合してベンゾフロ構造またはベンゾチエノ構造を形成していて、R206とR219が置換もしくは無置換のアリール基(好ましくは置換もしくは無置換のフェニル基、より好ましくは無置換のフェニル基)である。
さらに特願2021-103698号、特願2021-103699号、特願2021-103700号、特願2021-081332号、特願2021-103701号、特願2021-151805号、特願2021-188860号の各明細書に記載される一般式(1)で表される化合物を発光材料として用いることができる。これらの一般式(1)の説明および具体的な化合物を本明細書の一部としてここに引用する。
ある実施形態では、ホスト材料を用いるとき、発光層に含まれる発光材料としての本発明の化合物の量は、0.1重量%以上である。ある実施形態では、ホスト材料を用いるとき、発光層に含まれる発光材料としての本発明の化合物の量は、1重量%以上である。ある実施形態では、ホスト材料を用いるとき、発光層に含まれる発光材料としての本発明の化合物の量は、50重量%以下である。ある実施形態では、ホスト材料を用いるとき、発光層に含まれる発光材料としての本発明の化合物の量は、20重量%以下である。ある実施形態では、ホスト材料を用いるとき、発光層に含まれる発光材料としての本発明の化合物の量は、10重量%以下である。
ある実施形態では、発光層のホスト材料は、正孔輸送機能および電子輸送機能を有する有機化合物である。ある実施形態では、発光層のホスト材料は、放射光の波長が増加することを防止する有機化合物である。ある実施形態では、発光層のホスト材料は、高いガラス転移温度を有する有機化合物である。
いくつかの実施形態では、ホスト材料は以下からなる群から選択される:
ある実施形態では、発光層は2種類以上の構造が異なるTADF分子を含む。例えば、励起一重項エネルギー準位がホスト材料、第1TADF分子、第2TADF分子の順に高い、これら3種の材料を含む発光層とすることができる。このとき、第1TADF分子と第2TADF分子は、ともに最低励起一重項エネルギー準位と77Kの最低励起三重項エネルギー準位の差ΔESTが0.3eV以下であることが好ましく、0.25eV以下であることがより好ましく、0.2eV以下であることがより好ましく、0.15eV以下であることがより好ましく、0.1eV以下であることがさらに好ましく、0.07eV以下であることがさらにより好ましく、0.05eV以下であることがさらにまた好ましく、0.03eV以下であることがさらになお好ましく、0.01eV以下であることが特に好ましい。発光層における第1TADF分子の濃度は、第2TADF分子の濃度よりも大きいことが好ましい。また、発光層におけるホスト材料の濃度は、第2TADF分子の濃度よりも大きいことが好ましい。発光層における第1TADF分子の濃度は、ホスト材料の濃度よりも大きくてもよいし、小さくてもよいし、同じであってもよい。ある実施形態では、発光層内の組成を、ホスト材料を10~70重量%、第1TADF分子を10~80重量%、第2TADF分子を0.1~30重量%としてもよい。ある実施形態では、発光層内の組成を、ホスト材料を20~45重量%、第1TADF分子を50~75重量%、第2TADF分子を5~20重量%としてもよい。ある実施形態では、第1TADF分子とホスト材料の共蒸着膜(この共蒸着膜における第1TADF分子の濃度=A重量%)の光励起による発光量子収率φPL1(A)と、第2TADF分子とホスト材料の共蒸着膜(この共蒸着膜における第2TADF分子の濃度=A重量%)の光励起による発光量子収率φPL2(A)が、φPL1(A)>φPL2(A)の関係式を満たす。ある実施形態では、第2TADF分子とホスト材料の共蒸着膜(この共蒸着膜における第2TADF分子の濃度=B重量%)の光励起による発光量子収率φPL2(B)と、第2TADF分子の単独膜の光励起による発光量子収率φPL2(100)が、φPL2(B)>φPL2(100)の関係式を満たす。ある実施形態では、発光層は3種類の構造が異なるTADF分子を含むことができる。本発明の化合物は、発光層に含まれる複数のTADF化合物のいずれであってもよい。
ある実施形態では、発光層は、ホスト材料、アシストドーパント、および発光材料からからなる群より選択される材料で構成することができる。ある実施形態では、発光層は金属元素を含まない。ある実施形態では、発光層は炭素原子、水素原子、重水素原子、窒素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群より選択される原子のみから構成される材料で構成することができる。あるいは、発光層は、炭素原子、水素原子、重水素原子、窒素原子および酸素原子からなる群より選択される原子のみから構成される材料で構成することもできる。あるいは、発光層は、炭素原子、水素原子、窒素原子および酸素原子からなる群より選択される原子のみから構成される材料で構成することもできる。
発光層が本発明の化合物以外のTADF材料を含むとき、そのTADF材料は公知の遅延蛍光材料であってよい。好ましい遅延蛍光材料として、WO2013/154064号公報の段落0008~0048および0095~0133、WO2013/011954号公報の段落0007~0047および0073~0085、WO2013/011955号公報の段落0007~0033および0059~0066、WO2013/081088号公報の段落0008~0071および0118~0133、特開2013-256490号公報の段落0009~0046および0093~0134、特開2013-116975号公報の段落0008~0020および0038~0040、WO2013/133359号公報の段落0007~0032および0079~0084、WO2013/161437号公報の段落0008~0054および0101~0121、特開2014-9352号公報の段落0007~0041および0060~0069、特開2014-9224号公報の段落0008~0048および0067~0076、特開2017-119663号公報の段落0013~0025、特開2017-119664号公報の段落0013~0026、特開2017-222623号公報の段落0012~0025、特開2017-226838号公報の段落0010~0050、特開2018-100411号公報の段落0012~0043、WO2018/047853号公報の段落0016~0044に記載される一般式に包含される化合物、特に例示化合物であって、遅延蛍光を放射しうるものが含まれる。また、ここでは、特開2013-253121号公報、WO2013/133359号公報、WO2014/034535号公報、WO2014/115743号公報、WO2014/122895号公報、WO2014/126200号公報、WO2014/136758号公報、WO2014/133121号公報、WO2014/136860号公報、WO2014/196585号公報、WO2014/189122号公報、WO2014/168101号公報、WO2015/008580号公報、WO2014/203840号公報、WO2015/002213号公報、WO2015/016200号公報、WO2015/019725号公報、WO2015/072470号公報、WO2015/108049号公報、WO2015/080182号公報、WO2015/072537号公報、WO2015/080183号公報、特開2015-129240号公報、WO2015/129714号公報、WO2015/129715号公報、WO2015/133501号公報、WO2015/136880号公報、WO2015/137244号公報、WO2015/137202号公報、WO2015/137136号公報、WO2015/146541号公報、WO2015/159541号公報に記載される発光材料であって、遅延蛍光を放射しうるものを好ましく採用することができる。なお、この段落に記載される上記の公報は、本明細書の一部としてここに引用する。
以下において、有機エレクトロルミネッセンス素子の各部材および発光層以外の各層について説明する。
基材:
いくつかの実施形態では、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は基材により保持され、当該基材は特に限定されず、有機エレクトロルミネッセンス素子で一般的に用いられる、例えばガラス、透明プラスチック、クォーツおよびシリコンにより形成されたいずれかの材料を用いればよい。
陽極:
いくつかの実施形態では、有機エレクトロルミネッセンス装置の陽極は、金属、合金、導電性化合物またはそれらの組み合わせから製造される。いくつかの実施形態では、前記の金属、合金または導電性化合物は高い仕事関数(4eV以上)を有する。いくつかの実施形態では、前記金属はAuである。いくつかの実施形態では、導電性の透明材料は、CuI、酸化インジウム・スズ(ITO)、SnOおよびZnOから選択される。いくつかの実施形態では、IDIXO(In-ZnO)などの、透明な導電性フィルムを形成できるアモルファス材料を使用する。いくつかの実施形態では、前記陽極は薄膜である。いくつかの実施形態では、前記薄膜は蒸着またはスパッタリングにより作製される。いくつかの実施形態では、前記フィルムはフォトリソグラフィー方法によりパターン化される。いくつかの実施形態では、パターンが高精度である必要がない(例えば約100μm以上)場合、当該パターンは、電極材料への蒸着またはスパッタリングに好適な形状のマスクを用いて形成してもよい。いくつかの実施形態では、有機導電性化合物などのコーティング材料を塗布しうるとき、プリント法やコーティング法などの湿式フィルム形成方法が用いられる。いくつかの実施形態では、放射光が陽極を通過するとき、陽極は10%超の透過度を有し、当該陽極は、単位面積あたり数百オーム以下のシート抵抗を有する。いくつかの実施形態では、陽極の厚みは10~1,000nmである。いくつかの実施形態では、陽極の厚みは10~200nmである。いくつかの実施形態では、陽極の厚みは用いる材料に応じて変動する。
陰極:
いくつかの実施形態では、前記陰極は、低い仕事関数を有する金属(4eV以下)(電子注入金属と称される)、合金、導電性化合物またはその組み合わせなどの電極材料で作製される。いくつかの実施形態では、前記電極材料は、ナトリウム、ナトリウム-カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム-銅混合物、マグネシウム-銀混合物、マグネシウム-アルミニウム混合物、マグネシウム-インジウム混合物、アルミニウム-酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム-アルミニウム混合物および希土類元素から選択される。いくつかの実施形態では、電子注入金属と、電子注入金属より高い仕事関数を有する安定な金属である第2の金属との混合物が用いられる。いくつかの実施形態では、前記混合物は、マグネシウム-銀混合物、マグネシウム-アルミニウム混合物、マグネシウム-インジウム混合物、アルミニウム-酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム-アルミニウム混合物およびアルミニウムから選択される。いくつかの実施形態では、前記混合物は電子注入特性および酸化に対する耐性を向上させる。いくつかの実施形態では、陰極は、蒸着またはスパッタリングにより電極材料を薄膜として形成させることによって製造される。いくつかの実施形態では、前記陰極は単位面積当たり数百オーム以下のシート抵抗を有する。いくつかの実施形態では、前記陰極の厚は10nm~5μmである。いくつかの実施形態では、前記陰極の厚は50~200nmである。いくつかの実施形態では、放射光を透過させるため、有機エレクトロルミネッセンス素子の陽極および陰極のいずれか1つは透明または半透明である。いくつかの実施形態では、透明または半透明のエレクトロルミネッセンス素子は光放射輝度を向上させる。
いくつかの実施形態では、前記陰極を、前記陽極に関して前述した導電性の透明な材料で形成されることにより、透明または半透明の陰極が形成される。いくつかの実施形態では、素子は陽極と陰極とを含むが、いずれも透明または半透明である。
注入層:
注入層は、電極と有機層との間の層である。いくつかの実施形態では、前記注入層は駆動電圧を減少させ、光放射輝度を増強する。いくつかの実施形態では、前記注入層は、正孔注入層と電子注入層とを含む。前記注入層は、陽極と発光層または正孔輸送層との間、並びに陰極と発光層または電子輸送層との間に配置することがきる。いくつかの実施形態では、注入層が存在する。いくつかの実施形態では、注入層が存在しない。
以下に、正孔注入材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
次に、電子注入材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
障壁層:
障壁層は、発光層に存在する電荷(電子または正孔)および/または励起子が、発光層の外側に拡散することを阻止できる層である。いくつかの実施形態では、電子障壁層は、発光層と正孔輸送層との間に存在し、電子が発光層を通過して正孔輸送層へ至ることを阻止する。いくつかの実施形態では、正孔障壁層は、発光層と電子輸送層との間に存在し、正孔が発光層を通過して電子輸送層へ至ることを阻止する。いくつかの実施形態では、障壁層は、励起子が発光層の外側に拡散することを阻止する。いくつかの実施形態では、電子障壁層および正孔障壁層は励起子障壁層を構成する。本明細書で用いる用語「電子障壁層」または「励起子障壁層」には、電子障壁層の、および励起子障壁層の機能の両方を有する層が含まれる。
正孔障壁層:
正孔障壁層は、電子輸送層として機能する。いくつかの実施形態では、電子の輸送の間、正孔障壁層は正孔が電子輸送層に至ることを阻止する。いくつかの実施形態では、正孔障壁層は、発光層における電子と正孔との再結合の確率を高める。正孔障壁層に用いる材料は、電子輸送層について前述したのと同じ材料であってもよい。
以下に、正孔障壁層に用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
電子障壁層:
電子障壁層は、正孔を輸送する。いくつかの実施形態では、正孔の輸送の間、電子障壁層は電子が正孔輸送層に至ることを阻止する。いくつかの実施形態では、電子障壁層は、発光層における電子と正孔との再結合の確率を高める。電子障壁層に用いる材料は、正孔輸送層について前述したのと同じ材料であってもよい。
以下に電子障壁材料として用いることができる好ましい化合物の具体例を挙げる。
励起子障壁層:
励起子障壁層は、発光層における正孔と電子との再結合を通じて生じた励起子が電荷輸送層まで拡散することを阻止する。いくつかの実施形態では、励起子障壁層は、発光層における励起子の有効な閉じ込め(confinement)を可能にする。いくつかの実施形態では、装置の光放射効率が向上する。いくつかの実施形態では、励起子障壁層は、陽極の側と陰極の側のいずれかで、およびその両側の発光層に隣接する。いくつかの実施形態では、励起子障壁層が陽極側に存在するとき、当該層は、正孔輸送層と発光層との間に存在し、当該発光層に隣接してもよい。いくつかの実施形態では、励起子障壁層が陰極側に存在するとき、当該層は、発光層と陰極との間に存在し、当該発光層に隣接してもよい。いくつかの実施形態では、正孔注入層、電子障壁層または同様の層は、陽極と、陽極側の発光層に隣接する励起子障壁層との間に存在する。いくつかの実施形態では、正孔注入層、電子障壁層、正孔障壁層または同様の層は、陰極と、陰極側の発光層に隣接する励起子障壁層との間に存在する。いくつかの実施形態では、励起子障壁層は、励起一重項エネルギーと励起三重項エネルギーを含み、その少なくとも1つが、それぞれ、発光材料の励起一重項エネルギーと励起三重項エネルギーより高い。
正孔輸送層:
正孔輸送層は、正孔輸送材料を含む。いくつかの実施形態では、正孔輸送層は単層である。いくつかの実施形態では、正孔輸送層は複数の層を有する。
いくつかの実施形態では、正孔輸送材料は、正孔の注入または輸送特性および電子の障壁特性のうちの1つの特性を有する。いくつかの実施形態では、正孔輸送材料は有機材料である。いくつかの実施形態では、正孔輸送材料は無機材料である。本発明で使用できる公知の正孔輸送材料の例としては、限定されないが、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導剤、イミダゾール誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導剤、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリルアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導剤、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリンコポリマーおよび導電性ポリマーオリゴマー(特にチオフェンオリゴマー)、またはその組合せが挙げられる。いくつかの実施形態では、正孔輸送材料はポルフィリン化合物、芳香族三級アミン化合物およびスチリルアミン化合物から選択される。いくつかの実施形態では、正孔輸送材料は芳香族三級アミン化合物である。以下に正孔輸送材料として用いることができる好ましい化合物の具体例を挙げる。
電子輸送層:
電子輸送層は、電子輸送材料を含む。いくつかの実施形態では、電子輸送層は単層である。いくつかの実施形態では、電子輸送層は複数の層を有する。
いくつかの実施形態では、電子輸送材料は、陰極から注入された電子を発光層に輸送する機能さえあればよい。いくつかの実施形態では、電子輸送材料はまた、正孔障壁材料としても機能する。本発明で使用できる電子輸送層の例としては、限定されないが、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン、アントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体、アゾール誘導体、アジン誘導体またはその組合せ、またはそのポリマーが挙げられる。いくつかの実施形態では、電子輸送材料はチアジアゾール誘導剤またはキノキサリン誘導体である。いくつかの実施形態では、電子輸送材料はポリマー材料である。以下に電子輸送材料として用いることができる好ましい化合物の具体例を挙げる。
さらに、各有機層に添加可能な材料として好ましい化合物例を挙げる。例えば、安定化材料として添加すること等が考えられる。
有機エレクトロルミネッセンス素子に用いることができる好ましい材料を具体的に例示したが、本発明において用いることができる材料は、以下の例示化合物によって限定的に解釈されることはない。また、特定の機能を有する材料として例示した化合物であっても、その他の機能を有する材料として転用することも可能である。
デバイス:
いくつかの実施形態では、発光層はデバイス中に組み込まれる。例えば、デバイスには、OLEDバルブ、OLEDランプ、テレビ用ディスプレイ、コンピューター用モニター、携帯電話およびタブレットが含まれるが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態では、電子デバイスは、陽極、陰極、および当該陽極と当該陰極との間の発光層を含む少なくとも1つの有機層を有するOLEDを含む。
いくつかの実施形態では、本願明細書に記載の構成物は、OLEDまたは光電子デバイスなどの、様々な感光性または光活性化デバイスに組み込まれうる。いくつかの実施形態では、前記構成物はデバイス内の電荷移動またはエネルギー移動の促進に、および/または正孔輸送材料として有用でありうる。前記デバイスとしては、例えば有機発光ダイオード(OLED)、有機集積回線(OIC)、有機電界効果トランジスタ(O-FET)、有機薄膜トランジスタ(O-TFT)、有機発光トランジスタ(O-LET)、有機太陽電池(O-SC)、有機光学検出装置、有機光受容体、有機磁場クエンチ(field-quench)装置(O-FQD)、発光燃料電池(LEC)または有機レーザダイオード(O-レーザー)が挙げられる。
バルブまたはランプ:
いくつかの実施形態では、電子デバイスは、陽極、陰極、当該陽極と当該陰極との間の発光層を含む少なくとも1つの有機層を含むOLEDを含む。
いくつかの実施形態では、デバイスは色彩の異なるOLEDを含む。いくつかの実施形態では、デバイスはOLEDの組合せを含むアレイを含む。いくつかの実施形態では、OLEDの前記組合せは、3色の組合せ(例えばRGB)である。いくつかの実施形態では、OLEDの前記組合せは、赤色でも緑色でも青色でもない色(例えばオレンジ色および黄緑色)の組合せである。いくつかの実施形態では、OLEDの前記組合せは、2色、4色またはそれ以上の色の組合せである。
いくつかの実施形態では、デバイスは、
取り付け面を有する第1面とそれと反対の第2面とを有し、少なくとも1つの開口部を画定する回路基板と、
前記取り付け面上の少なくとも1つのOLEDであって、当該少なくとも1つのOLEDが、陽極、陰極、および当該陽極と当該陰極との間の発光層を含む少なくとも1つの有機層を含む、発光する構成を有する少なくとも1つのOLEDと、
回路基板用のハウジングと、
前記ハウジングの端部に配置された少なくとも1つのコネクターであって、前記ハウジングおよび前記コネクターが照明設備への取付けに適するパッケージを画定する、少なくとも1つのコネクターと、を備えるOLEDライトである。
いくつかの実施形態では、前記OLEDライトは、複数の方向に光が放射されるように回路基板に取り付けられた複数のOLEDを有する。いくつかの実施形態では、第1方向に発せられた一部の光は偏光されて第2方向に放射される。いくつかの実施形態では、反射器を用いて第1方向に発せられた光を偏光する。
ディスプレイまたはスクリーン:
いくつかの実施形態では、本発明の発光層はスクリーンまたはディスプレイにおいて使用できる。いくつかの実施形態では、本発明に係る化合物は、限定されないが真空蒸発、堆積、蒸着または化学蒸着(CVD)などの工程を用いて基材上へ堆積させる。いくつかの実施形態では、前記基材は、独特のアスペクト比のピクセルを提供する2面エッチングにおいて有用なフォトプレート構造である。前記スクリーン(またマスクとも呼ばれる)は、OLEDディスプレイの製造工程で用いられる。対応するアートワークパターンの設計により、垂直方向ではピクセルの間の非常に急な狭いタイバーの、並びに水平方向では大きな広範囲の斜角開口部の配置を可能にする。これにより、TFTバックプレーン上への化学蒸着を最適化しつつ、高解像度ディスプレイに必要とされるピクセルの微細なパターン構成が可能となる。
ピクセルの内部パターニングにより、水平および垂直方向での様々なアスペクト比の三次元ピクセル開口部を構成することが可能となる。更に、ピクセル領域中の画像化された「ストライプ」またはハーフトーン円の使用は、これらの特定のパターンをアンダーカットし基材から除くまで、特定の領域におけるエッチングが保護される。その時、全てのピクセル領域は同様のエッチング速度で処理されるが、その深さはハーフトーンパターンにより変化する。ハーフトーンパターンのサイズおよび間隔を変更することにより、ピクセル内での保護率が様々異なるエッチングが可能となり、急な垂直斜角を形成するのに必要な局在化された深いエッチングが可能となる。
蒸着マスク用の好ましい材料はインバーである。インバーは、製鉄所で長い薄型シート状に冷延された金属合金である。インバーは、ニッケルマスクとしてスピンマンドレル上へ電着することができない。蒸着用マスク内に開口領域を形成するための適切かつ低コストの方法は、湿式化学エッチングによる方法である。
いくつかの実施形態では、スクリーンまたはディスプレイパターンは、基材上のピクセルマトリックスである。いくつかの実施形態では、スクリーンまたはディスプレイパターンは、リソグラフィー(例えばフォトリソグラフィーおよびeビームリソグラフィー)を使用して加工される。いくつかの実施形態では、スクリーンまたはディスプレイパターンは、湿式化学エッチングを使用して加工される。更なる実施形態では、スクリーンまたはディスプレイパターンは、プラズマエッチングを使用して加工される。
デバイスの製造方法:
OLEDディスプレイは、一般的には、大型のマザーパネルを形成し、次に当該マザーパネルをセルパネル単位で切断することによって製造される。通常は、マザーパネル上の各セルパネルは、ベース基材上に、活性層とソース/ドレイン電極とを有する薄膜トランジスタ(TFT)を形成し、前記TFTに平坦化フィルムを塗布し、ピクセル電極、発光層、対電極およびカプセル化層、を順に経時的に形成し、前記マザーパネルから切断することにより形成される。
OLEDディスプレイは、一般的には、大型のマザーパネルを形成し、次に当該マザーパネルをセルパネル単位で切断することによって製造される。通常は、マザーパネル上の各セルパネルは、ベース基材上に、活性層とソース/ドレイン電極とを有する薄膜トランジスタ(TFT)を形成し、前記TFTに平坦化フィルムを塗布し、ピクセル電極、発光層、対電極およびカプセル化層、を順に経時的に形成し、前記マザーパネルから切断することにより形成される。
本発明の他の態様では、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイの製造方法を提供し、当該方法は、
マザーパネルのベース基材上に障壁層を形成する工程と、
前記障壁層上に、セルパネル単位で複数のディスプレイユニットを形成する工程と、
前記セルパネルのディスプレイユニットのそれぞれの上にカプセル化層を形成する工程と、
前記セルパネル間のインタフェース部に有機フィルムを塗布する工程と、を含む。
いくつかの実施形態では、障壁層は、例えばSiNxで形成された無機フィルムであり、障壁層の端部はポリイミドまたはアクリルで形成された有機フィルムで被覆される。いくつかの実施形態では、有機フィルムは、マザーパネルがセルパネル単位で軟らかく切断されるように補助する。
いくつかの実施形態では、薄膜トランジスタ(TFT)層は、発光層と、ゲート電極と、ソース/ドレイン電極と、を有する。複数のディスプレイユニットの各々は、薄膜トランジスタ(TFT)層と、TFT層上に形成された平坦化フィルムと、平坦化フィルム上に形成された発光ユニットと、を有してもよく、前記インタフェース部に塗布された有機フィルムは、前記平坦化フィルムの材料と同じ材料で形成され、前記平坦化フィルムの形成と同時に形成される。いくつかの実施形態では、前記発光ユニットは、不動態化層と、その間の平坦化フィルムと、発光ユニットを被覆し保護するカプセル化層と、によりTFT層と連結される。前記製造方法のいくつかの実施形態では、前記有機フィルムは、ディスプレイユニットにもカプセル化層にも連結されない。
前記有機フィルムと平坦化フィルムの各々は、ポリイミドおよびアクリルのいずれか1つを含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記障壁層は無機フィルムであってもよい。いくつかの実施形態では、前記ベース基材はポリイミドで形成されてもよい。前記方法は更に、ポリイミドで形成されたベース基材の1つの表面に障壁層を形成する前に、当該ベース基材のもう1つの表面にガラス材料で形成されたキャリア基材を取り付ける工程と、インタフェース部に沿った切断の前に、前記キャリア基材をベース基材から分離する工程と、を含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記OLEDディスプレイはフレキシブルなディスプレイである。
いくつかの実施形態では、前記不動態化層は、TFT層の被覆のためにTFT層上に配置された有機フィルムである。いくつかの実施形態では、前記平坦化フィルムは、不動態化層上に形成された有機フィルムである。いくつかの実施形態では、前記平坦化フィルムは、障壁層の端部に形成された有機フィルムと同様、ポリイミドまたはアクリルで形成される。いくつかの実施形態では、OLEDディスプレイの製造の際、前記平坦化フィルムおよび有機フィルムは同時に形成される。いくつかの実施形態では、前記有機フィルムは、障壁層の端部に形成されてもよく、それにより、当該有機フィルムの一部が直接ベース基材と接触し、当該有機フィルムの残りの部分が、障壁層の端部を囲みつつ、障壁層と接触する。
いくつかの実施形態では、前記発光層は、ピクセル電極と、対電極と、当該ピクセル電極と当該対電極との間に配置された有機発光層と、を有する。いくつかの実施形態では、前記ピクセル電極は、TFT層のソース/ドレイン電極に連結している。
いくつかの実施形態では、TFT層を通じてピクセル電極に電圧が印加されるとき、ピクセル電極と対電極との間に適切な電圧が形成され、それにより有機発光層が光を放射し、それにより画像が形成される。以下、TFT層と発光ユニットとを有する画像形成ユニットを、ディスプレイユニットと称する。
いくつかの実施形態では、ディスプレイユニットを被覆し、外部の水分の浸透を防止するカプセル化層は、有機フィルムと無機フィルムとが交互に積層する薄膜状のカプセル化構造に形成されてもよい。いくつかの実施形態では、前記カプセル化層は、複数の薄膜が積層した薄膜状カプセル化構造を有する。いくつかの実施形態では、インタフェース部に塗布される有機フィルムは、複数のディスプレイユニットの各々と間隔を置いて配置される。いくつかの実施形態では、前記有機フィルムは、一部の有機フィルムが直接ベース基材と接触し、有機フィルムの残りの部分が障壁層の端部を囲む一方で障壁層と接触する態様で形成される。
一実施形態では、OLEDディスプレイはフレキシブルであり、ポリイミドで形成された柔軟なベース基材を使用する。いくつかの実施形態では、前記ベース基材はガラス材料で形成されたキャリア基材上に形成され、次に当該キャリア基材が分離される。
いくつかの実施形態では、障壁層は、キャリア基材の反対側のベース基材の表面に形成される。一実施形態では、前記障壁層は、各セルパネルのサイズに従いパターン化される。例えば、ベース基材がマザーパネルの全ての表面上に形成される一方で、障壁層が各セルパネルのサイズに従い形成され、それにより、セルパネルの障壁層の間のインタフェース部に溝が形成される。各セルパネルは、前記溝に沿って切断できる。
いくつかの実施形態では、前記の製造方法は、更にインタフェース部に沿って切断する工程を含み、そこでは溝が障壁層に形成され、少なくとも一部の有機フィルムが溝で形成され、当該溝がベース基材に浸透しない。いくつかの実施形態では、各セルパネルのTFT層が形成され、無機フィルムである不動態化層と有機フィルムである平坦化フィルムが、TFT層上に配置され、TFT層を被覆する。例えばポリイミドまたはアクリル製の平坦化フィルムが形成されるのと同時に、インタフェース部の溝は、例えばポリイミドまたはアクリル製の有機フィルムで被覆される。これは、各セルパネルがインタフェース部で溝に沿って切断されるとき、生じた衝撃を有機フィルムに吸収させることによってひびが生じるのを防止する。すなわち、全ての障壁層が有機フィルムなしで完全に露出している場合、各セルパネルがインタフェース部で溝に沿って切断されるとき、生じた衝撃が障壁層に伝達され、それによりひびが生じるリスクが増加する。しかしながら、一実施形態では、障壁層間のインタフェース部の溝が有機フィルムで被覆されて、有機フィルムがなければ障壁層に伝達されうる衝撃を吸収するため、各セルパネルをソフトに切断し、障壁層でひびが生じるのを防止してもよい。一実施形態では、インタフェース部の溝を被覆する有機フィルムおよび平坦化フィルムは、互いに間隔を置いて配置される。例えば、有機フィルムおよび平坦化フィルムが1つの層として相互に接続している場合には、平坦化フィルムと有機フィルムが残っている部分とを通じてディスプレイユニットに外部の水分が浸入するおそれがあるため、有機フィルムおよび平坦化フィルムは、有機フィルムがディスプレイユニットから間隔を置いて配置されるように、相互に間隔を置いて配置される。
いくつかの実施形態では、ディスプレイユニットは、発光ユニットの形成により形成され、カプセル化層は、ディスプレイユニットを被覆するためディスプレイユニット上に配置される。これにより、マザーパネルが完全に製造された後、ベース基材を担持するキャリア基材がベース基材から分離される。いくつかの実施形態では、レーザー光線がキャリア基材へ放射されると、キャリア基材は、キャリア基材とベース基材との間の熱膨張率の相違により、ベース基材から分離される。
いくつかの実施形態では、マザーパネルは、セルパネル単位で切断される。いくつかの実施形態では、マザーパネルは、カッターを用いてセルパネル間のインタフェース部に沿って切断される。いくつかの実施形態では、マザーパネルが沿って切断されるインタフェース部の溝が有機フィルムで被覆されているため、切断の間、当該有機フィルムが衝撃を吸収する。いくつかの実施形態では、切断の間、障壁層でひびが生じるのを防止できる。
いくつかの実施形態では、前記方法は製品の不良率を減少させ、その品質を安定させる。
他の態様は、ベース基材上に形成された障壁層と、障壁層上に形成されたディスプレイユニットと、ディスプレイユニット上に形成されたカプセル化層と、障壁層の端部に塗布された有機フィルムと、を有するOLEDディスプレイである。
以下に合成例と実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下に示す材料、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。なお、発光特性の評価は、ソースメータ(ケースレー社製:2400シリーズ)、半導体パラメータ・アナライザ(アジレント・テクノロジー社製:E5273A)、光パワーメータ測定装置(ニューポート社製:1930C)、光学分光器(オーシャンオプティクス社製:USB2000)、分光放射計(トプコン社製:SR-3)およびストリークカメラ(浜松ホトニクス(株)製C4334型)を用いて行った。また、HOMOとLUMOのエネルギーの測定は大気中光電子分光法(理研計器社製AC-3等)により行った。
以下の合成例において、一般式(1)に含まれる化合物を合成した。
(合成例1)化合物1の合成
化合物a
窒素気流下、4-ブロモカルバゾール(4.00g,16.3mmol)、5H-ベンゾフロ[3,2-c]カルバゾール(8.36g,32.5mmol)のトルエン(100mL)溶液に酢酸パラジウム(II)(0.11g,0.49mmol)、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート(4.72g,16.3mmol)、ナトリウムtert-ブトキシド(3.12g,32.5mmol)を加え、130℃で15時間撹拌した。反応溶液を室温に戻し、クロロホルムで抽出後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:トルエン=1:1)で精製した。得られた白色固体をトルエン/ヘキサン混合溶媒で再結晶を行い、白色固体の化合物aを0.73g(1.7mmol,収率11%)得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.67 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 8.34 (s, 1H), 7.95 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 7.84 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.78 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.67-7.62 (m, 2H), 7.48-7.36 (m, 6H), 7.29 (d, J= 8.0 Hz, 1H), 7.18 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.09 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 6.71 (t, J = 7.2 Hz, 1H), 6.42 (d, J = 8.4 Hz, 1H),.
ASAP MSスペクトル分析: C30H18N2O: 理論値422.14, 観測値423.32 [M+H+]
化合物b
窒素気流下、3-ブロモ-4-フルオロベンゾニトリル(10.00g,50.0mmol)、フェニルボロン酸(6.71g,55.0mmol)のテトラヒドロフラン(100mL)溶液に2M炭酸ナトリウム水溶液(25mL)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(0.35g,0.50mmol)を加え、70℃で15時間撹拌した。反応溶液を室温に戻し、クロロホルムで抽出後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:トルエン=3:7)で精製し、白色固体の化合物bを9.50g(48.2mmol,収率96%)得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.77 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 7.66-7.62 (m, 1H), 7.53-7.44 (m, 5H), 7.29-7.25 (m, 1H).
ASAP MSスペクトル分析: C13H8FN: 理論値197.06, 観測値198.03 [M+H+]
化合物c
窒素気流下、化合物b(3.00g,15.2mmol)のテトラヒドロフラン(35mL)溶液を-78℃で30分間攪拌し、1Mジイソプロピルアミドリチウム溶液(14.5ml,14.5mmol)を加え、さらに-78℃で30分間攪拌した。反応溶液に2-イソプロポキシ-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(2.69g,14.5mmol)を加え、-78℃で30分間攪拌した。反応溶液に水を加え、室温に戻した。
反応溶液に、2-クロロ-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(4.89g,18.3mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(0.32g,0.46mmol)、2M炭酸ナトリウム水溶液(11mL)、テトラヒドロフラン(20ml)を加え、60℃で15時間攪拌した。反応溶液を室温に戻し、クロロホルムで抽出後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:トルエン=3:7)で精製した。得られた白色固体をトルエン溶媒で再結晶を行い、白色固体の化合物cを3.00g(7.00mmol,収率46%)得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.79-8.74 (m, 5H), 7.93 (d, J = 6.4 Hz, 1H), 7.67-7.47 (m, 12H).
ASAP MSスペクトル分析: C28H17FN4: 理論値428.14, 観測値429.73 [M+H+]
化合物1
窒素気流下、化合物c(0.55g,1.3mmol)、化合物a(0.57g,1.4mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(20mL)溶液に炭酸カリウム(0.36g,2.6mmol)を加え、140℃で2時間攪拌した。反応混合物を室温に戻し、水とメタノールを加えて、ろ過した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:トルエン=3:7)で精製し、黄色固体の化合物1を0.90g(1.1mmol,収率84%)得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.75 (d, J = 4.8 Hz, 1H), 8.60-8.55 (m, 1H), 8.18 (s, 1H), 8.10 (t, J = 6.8 Hz, 4H), 7.96 (m, 1H), 7.75 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.52-7.27 (m, 11H), 7.25-7.05 (m, 8H), 7.00-6.96 (m, 2H), 6.87-6.83 (m, 1H), 6.62 (t, J = 7.6 Hz, 1H), 6.27-6.21 (m, 2H).
ASAP MSスペクトル分析: C58H34N6O: 理論値830.28, 観測値831.48 [M+H+]
(実施例1)薄膜の作製と評価
石英基板上に真空蒸着法にて、真空度1×10-3Pa未満の条件にて化合物1とPYD2Czとを異なる蒸着源から蒸着し、化合物1の濃度が20重量%であるドープ薄膜を100nmの厚さで形成した。
化合物1の代わりに比較化合物C1を用いて、同様にしてニート薄膜とドープ薄膜を形成した。
形成した各ドープ薄膜に300nmの励起光を照射したときの最大発光波長(λmax)、フォトルミネッセンス量子収率(PLQY)、遅延蛍光の寿命(τ)を測定した。また、発光に占める遅延蛍光成分の割合も測定した。結果を表7に示す。
一般式(1)で表される化合物を用いることにより、高い発光効率を維持しながら、遅延蛍光成分の割合を増やし、遅延蛍光寿命を短くできることが確認された。
(実施例2)有機エレクトロルミネッセンス素子の作製と評価
膜厚50nmのインジウム・スズ酸化物(ITO)からなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度5.0×10-5Paで積層した。まず、ITO上にHAT-CNを10nmの厚さに形成し、その上にNPDを35nmの厚さに形成し、さらにその上にPTCzを10nmの厚さに形成した。次に、H1と化合物1を異なる蒸着源から共蒸着し、40nmの厚さの層を形成して発光層とした。発光層における化合物1の濃度は30質量%とした。次に、ET1を10nmの厚さに形成した後、LiqとSF3-TRZを異なる蒸着源から共蒸着し、20nmの厚さの層を形成した。この層におけるLiqとSF3-TRZの濃度はそれぞれ30質量%と70質量%であった。さらにLiqを2nmの厚さに形成し、次いでアルミニウム(Al)を100nmの厚さに蒸着することにより陰極を形成し、有機エレクトロルミネッセンス素子とした。
化合物1の代わりに比較化合物C1を用いて、同様の手順により各有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。
作製した各有機エレクトロルミネッセンス素子について、0.01mAにおける外部量子収率(EQE)を測定したところ、化合物1を用いた素子は19.0%であり、比較化合物C1を用いた素子は16.2%であった。これにより、一般式(1)で表される化合物を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の発光特性が優れていることが確認された。
(実施例3)有機エレクトロルミネッセンス素子の作製と評価
実施例2における発光層の代わりに、H1と化合物1と発光材料であるEM1をそれぞれ異なる蒸着源から順に69.5重量%、30.0重量%、0.5重量%で蒸着させることにより40nmの厚さの発光層を形成した点だけを変更して、その他は実施例2と同じ手順により有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。
一般式(1)で表される化合物をアシストドーパントとして用いたときも、発光特性が良好な有機エレクトロルミネッセンス素子を提供できる。
(ΔESTの計算例)
化合物1および比較化合物C1、並びに、下記の化合物6463、7222、7981、12535および比較化合物C2について、Q-Chem 5.1プログラム(Q-chem社製)を用い、時間依存密度汎関数法(TD-DFT法)にて、最低一重項励起状態と最低三重項励起状態のエネルギー差ΔEST(T)を求めた。ここで、ΔEST(T)は最低三重項励起状態Tで構造最適化したときのΔESTの計算値であり、その構造最適化と電子状態計算には、B3LYP/6-31G(d)法を使用した。ΔEST(T)の計算結果を表8に示す。
表8に示すように、化合物1、6463、7222、7981および12535は、いずれも比較化合物C1に比べてΔEST(T)が小さくて、遅延蛍光の寿命(τ)が短いことが示唆された。これにより、一般式(1)で表される化合物は、第1ドナー部位および第2ドナー部位のいずれに縮環カルバゾール-9-イル構造を有する場合にも素子性能の向上をもたらすことが確認された。
一般式(1)で表される化合物を用いることにより、発光特性が良好な有機発光素子を提供できる。このため、本発明は産業上の利用可能性が高い。

Claims (25)

  1. 下記一般式(1)で表される化合物。
    [一般式(1)において、R~Rのうちの少なくとも1個はシアノ基を表す。R~Rのうちの少なくとも1個は、各々独立に置換もしくは無置換のアリール基を表す。R~Rのうちの少なくとも1個は、各々独立に第1ドナー部位と第2ドナー部位が結合した構造を有するドナー性基であって、前記第1ドナー部位と前記第2ドナー部位の少なくとも一方が縮環カルバゾール-9-イル構造を有する。残りのR~Rは、各々独立に水素原子または重水素原子を表す。X~Xは、各々独立にNまたはC(R)を表すが、X~Xの少なくとも1個はNである。Rは水素原子または置換基(置換基には重水素原子も含まれる)を表す。ArおよびArは、各々独立に置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基を表す。Lは単結合または2価の連結基を表す。]
  2. がシアノ基である、請求項1に記載の化合物。
  3. 前記縮環カルバゾール-9-イル構造が、ベンゾフロ縮環カルバゾール-9-イル構造またはベンゾチエノ縮環カルバゾール-9-イル構造である、請求項1に記載の化合物。
  4. 前記第1ドナー部位と前記第2ドナー部位の一方が置換されていてもよい非縮環カルバゾール-9-イル基であって、他方が置換されていてもよい縮環カルバゾール-9-イル基である、請求項1に記載の化合物。
  5. 前記第2ドナー部位が置換されていてもよい縮環カルバゾール-9-イル基である、請求項1に記載の化合物。
  6. ~Rのうちの1個だけが第1ドナー部位と第2ドナー部位が結合した構造を有するドナー性基である、請求項1に記載の化合物。
  7. ~Rのうちの1個だけが置換もしくは無置換のアリール基である、請求項1に記載の化合物。
  8. ~XがNである、請求項1に記載の化合物。
  9. ArおよびArが、重水素原子およびフェニル基からなる群より選択される1つの原子か基または2つ以上を組み合わせた基で置換されていてもよいフェニル基である、請求項1に記載の化合物。
  10. が単結合である、請求項1に記載の化合物。
  11. が水素原子である、請求項1に記載の化合物。
  12. が第1ドナー部位と第2ドナー部位が結合した構造を有するドナー性基である、請求項1に記載の化合物。
  13. がシアノ基であり、Lが単結合である、請求項12に記載の化合物。
  14. 請求項1~13のいずれか1項に記載の化合物からなる発光材料。
  15. 請求項1~13のいずれか1項に記載の化合物からなる遅延蛍光体。
  16. 請求項1~13のいずれか1項に記載の化合物を含む膜。
  17. 請求項1~13のいずれか1項に記載の化合物を含む有機半導体素子。
  18. 請求項1~13のいずれか1項に記載の化合物を含む有機発光素子。
  19. 前記素子が前記化合物を含む層を有しており、前記層がホスト材料も含む、請求項18に記載の有機発光素子。
  20. 前記化合物を含む層が、前記化合物および前記ホスト材料の他に遅延蛍光材料も含み、前記遅延蛍光材料の最低励起一重項エネルギーが前記ホスト材料より低く、前記化合物よりも高い、請求項19に記載の有機発光素子。
  21. 前記素子が前記化合物を含む層を有しており、前記層が前記化合物とは異なる構造を有する発光材料も含む、請求項19に記載の有機発光素子。
  22. 前記素子に含まれる材料のうち、前記化合物からの発光量が最大である、請求項19に記載の有機発光素子。
  23. 前記発光材料からの発光量が前記化合物からの発光量よりも多い、請求項21に記載の有機発光素子。
  24. 有機エレクトロルミネッセンス素子である、請求項18に記載の有機発光素子。
  25. 遅延蛍光を放射する、請求項18に記載の有機発光素子。
    ho
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