JP2023132116A - 磁性楔及び回転電機 - Google Patents

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Abstract

【課題】低損失で高強度な磁性楔、及び、それを用いた回転電機を提供する。
【解決手段】
実施形態の磁性楔は、空隙面を介して固定子と回転子が対向してなる回転電機に用いられる磁性楔であって、第1部材と、前記第1部材と前記空隙面の間に設けられる第2部材からなり、前記第1部材は、Fe、Co及びNiからなる群から選ばれる少なくとも1つの第1元素を含む第1磁性金属相を有し、前記第2部材は、Fe、Co及びNiからなる群から選ばれる少なくとも1つの第2元素を含む第2磁性金属相を有し、前記第1部材に対する前記第1磁性金属相の割合が、前記第2部材に対する前記第2磁性金属相の割合よりも大きいことを備える。
【選択図】図4

Description

本発明の実施形態は、磁性楔及び回転電機に関する。
通常、回転電機のコイル巻線は、鉄心スロットの中に収納され、スロット開口部に設けた楔によって支持固定されている。この楔の材質には非磁性体が一般的に採用されるが、固定子鉄心及び回転子鉄心間の空隙における磁気抵抗値が不連続になるため、楔に空隙を介して対向する鉄心表面部の磁束分布に脈動が生じ、高調波損失が大きくなる。この高調波損失を低減する目的で、兼ねてより、磁性をもった楔(磁性楔)が供されている。図1は、磁性楔の使用状態及び磁性楔の効果の模式図である。図1では、ラジアルギャップ型回転電機を例として示している。
図1では、磁性楔100、コイル230、鉄心ティース250、鉄心スロット260が記載されている。
磁性楔には、例えば、軟磁性材料を圧粉化して形成された磁性楔が用いられる。しかし、かかる磁性楔の強度は不十分であるという問題があった。また、例えば、電気抵抗の低い磁性楔を用いた場合には、周波数が高い領域では損失が大きくなり、動作帯域が限定されるという問題があった。
特開昭63-161834号公報
特開2000-166156号公報
本発明が解決しようとする課題は、低損失で高強度な磁性楔、及び、それを用いた回転電機を提供する点にある。
実施形態の磁性楔は、空隙面 を介して固定子と回転子が対向してなる回転電機に用いられる磁性楔であって、磁性楔は、第1部材と、前記第1部材と前記空隙面の間に設けられる第2部材からなり、前記第1部材は、Fe、Co及びNiからなる群から選ばれる少なくとも1つの第1元素を含む第1磁性金属相を有し、前記第2部材は、Fe、Co及びNiからなる群から選ばれる少なくとも1つの第2元素を含む第2磁性金属相を有し、前記第1部材に対する前記第1磁性金属相の割合が、前記第2部材に対する前記第2磁性金属相の割合よりも大きいことを備える。
磁性楔の使用状態及び磁性楔の効果の模式図である。 第1の実施形態のラジアルギャップ型回転電機の模式図である。 第1の実施形態のアキシャルギャップ型回転電機の模式図である。 第1の実施形態の磁性楔の模式断面図である。 第1の実施形態の第1部材の一例を示す模式図である。 第1の実施形態の第2部材の一例を示す模式図である。 第1の実施形態の磁性楔の模式断面図である。 第1の実施形態の磁性体の主面を説明する模式図である。 第1の実施形態のラジアルギャップ型回転電機における磁性楔の使用状態を示す模式図である。 第1の実施形態のアキシャルギャップ型回転電機における磁性楔の使用状態を示す模式図である。 第1の実施形態の磁性楔の作用効果を説明する図である。 第2の実施形態のラジアルギャップ型回転電機の一例を示す模式図である。 第2の実施形態のアキシャルギャップ型回転電機の一例を示す模式図である。 第2の実施形態の発電機の一例を示す模式図である。 第2の実施形態のリニアモータの一例を示す模式図である。
(第1の実施形態)
実施形態の磁性楔は、空隙面を介して固定子と回転子が対向してなる回転電機に用いられる磁性楔であって、磁性楔は、第1部材と、前記第1部材と前記空隙面の間に設けられる第2部材からなり、前記第1部材は、Fe、Co及びNiからなる群から選ばれる少なくとも1つの第1元素を含む第1磁性金属相を有し、前記第2部材は、Fe、Co及びNiからなる群から選ばれる少なくとも1つの第2元素を含む第2磁性金属相を有し、前記第1部材に対する前記第1磁性金属相の割合が、前記第2部材に対する前記第2磁性金属相の割合よりも大きいことを備える。
本明細書において、「軸方向」、「回転方向」及び「径方向」の各方向は、回転電機の回転子を基準として定めるものとする。即ち、「軸方向」は回転子の回転軸に沿った方向を意味し、「回転方向」は回転子の回転軸まわりの周回方向(又は、その接線方向)を意味する。そして、「径方向」は回転子の回転軸に直交する方向を意味する。
「空隙面」については、回転子と固定子との間の空隙から規定する。図2及び図3を用いて、ラジアルギャップ型回転電機とアキシャルギャップ型回転電機の「空隙面」を説明する。図2は、本実施形態のラジアルギャップ型回転電機の模式図である。図3は、本実施形態のアキシャルギャップ型回転電機の模式図である。
図2では、回転電機200、回転子210、固定子鉄心220、コイル230、空隙面240が示されている。
図3では、回転電機200、回転子210、コイル230、空隙面240、鉄心ティース250、固定子270、軸280が示されている。
ラジアルギャップ型回転電機の場合、図2に示すように、回転子に対して径方向に所定の間隔をもって固定子が対向配置されるため、「空隙面」は回転子の回転軸を中心とする円筒面に平行な面である。したがって、径方向が空隙面に対し垂直な方向となり、軸方向と回転方向が空隙面に対し平行な方向となる。
一方、アキシャルギャップ型回転電機の場合、図3に示すように、回転子に対して軸方向に所定の間隔をもって固定子が対向配置されるため、「空隙面」は回転子の回転軸に直交する面である。したがって、軸方向が空隙面に対し垂直な方向となり、回転方向と径方向が空隙面に対し平行な方向となる。
本実施形態の磁性楔において、軸方向透磁率、回転方向透磁率、径方向透磁率の3方向の透磁率は、差を有することが好ましい。更に好ましくは差の割合として10%以上であることが好ましく、更に好ましくは50%以上、更に好ましくは100%以上であることが好ましい。これにより、磁性楔使用による漏れ磁束の増加を抑えて、回転電機の効率向上の効果を十分に享受でき好ましい。又、有効磁束(主磁束)が増加することによって、回転電機のトルク向上も期待できる。
尚、透磁率の差の割合は、低い透磁率を基準として規定する。例えば、径方向透磁率μrと回転方向透磁率μθの差の割合は、回転方向透磁率が低い場合(μr-μθ)/μθ×100(%)で算出され、径方向透磁率が低い場合(μθ-μr)/μr×100(%)で算出する。
図4は、本実施形態の磁性楔の模式断面図である。
磁性楔100は、第1部材(第1焼結部)60と、第2部材(圧粉部)70と、を備える。図4では、磁性楔100、第1部材60、第2部材70、コイル230、空隙面240、鉄心ティース250が示されている。
第1部材60は、Fe、Co及びNiからなる群から選ばれる少なくとも1つの第1元素を含む第1磁性金属相を有し、前記第1部材に対する前記第1磁性金属相の割合が、前記第2部材に対する前記第2磁性金属相の割合よりも大きい事が好ましい。磁性金属相の割合は、SEM-EDX(Scanning Electron Microscopy-Energy Dispersive X-ray Spectroscopy:走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分析法)やTEM-EDX(Transmission Electron Microscope-Energy Dispersive X-ray Spectroscopy:透過型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分析法)などの組織観察から求めても良いし、部材を切り出してVSM(Vibrating Sample Magnetometer:試料振動型磁力計)等の磁気特性を評価し飽和磁化の値から磁性金属相の割合を推定しても構わない。一例として、Feからなる部材の場合、Feの飽和磁化は2.2Tであるため、例えば部材の飽和磁化が2.0Tであれば、部材の磁性金属相の割合は2.0/2.2×100=約90.9%となる。また、組織観察と磁気測定結果を併用して総合的に判断しても構わない。前記第1磁性金属相の割合は前記第1部材60の90%以上であることが好ましく、より好ましくは95%以上である。また、相対密度は90%以上であることが好ましく、より好ましくは95%以上であることが好ましい。
図5は第1の実施形態の第1部材の一例を示す模式図である。第1部材は、TaとCを含む析出粒子を有することが好ましい。図5には、第1部材60及び析出粒子10が示されている。このような析出粒子が磁性材料に含まれることによって、析出強化のメカニズムによって、強度などの機械特性や熱的安定性が大幅に向上する。なお、前記析出粒子は、Coも含むことが好ましい。更に好ましくは、FeとSiの少なくとも1つを含むことが好ましく、更に好ましくはFeとSiの両方を含む事が好ましい。また、前記析出粒子が配置される母相に含まれる元素(例えば0.1%未満の明らかな不純物元素を除く)を、前記析出粒子が含むことが好ましい。これらによって、析出粒子と母相の組成が似たものになるため、熱的安定性や、強度、硬度などの機械的特性が向上し好ましい。
第1部材60は、燒結材である、焼結部(第1焼結部)であることが好ましい。第1部材60の製造方法は、特に限定されるものではなく、通常の焼結手法で製造されることが好ましい。より好ましくは、以下の様な方法が挙げられる。
第1の工程は、成型用の準備の工程である。例として、磁性金属リボンを製造し、これを熱処理したのちに粉砕し成型する。この場合、磁性金属リボンの製造においては、たとえば、ロール急冷装置やスパッタ装置などの成膜装置を用いて、製造する。ロール急冷装置は、大量合成に適しているため望ましい。特に単ロール急冷装置が簡便で好ましい。また、磁性金属リボンを熱処理する場合は、熱処理するための電気炉に入れやすくするため、適当なサイズにリボンを切断しても良い。例えば、ミキサー装置等を用いて適当な大きさに切断しても良い。熱処理を行うことによって、粉砕性が向上しやすくなり好ましい。尚、熱処理の雰囲気は、低酸素濃度の真空雰囲気下、不活性雰囲気下、還元性雰囲気下が望ましく、更に望ましくは、H(水素)、CO(一酸化炭素)、CH(メタン)等の還元雰囲気下が好ましい。この理由としては、磁性金属リボンが酸化していても還元雰囲気で熱処理を施すことによって、酸化してしまった金属を還元して、金属に戻すことが可能となるためである。これによって、酸化し飽和磁化が減少した磁性金属リボンを還元して、飽和磁化を回復させることもできる。熱処理された磁性金属リボンは、粉砕して扁平磁性金属粒子を製造する。尚、本粉砕の前に、磁性金属リボン若しくは薄膜を、ミキサー装置等を用いて適当な大きさに切断しても良い。本粉砕においては、例えばビーズミルや遊星型ミルやミキサー等の粉砕装置によって粉砕を行う。尚、粉砕装置は、特に種類を選ばない。例えば、遊星ミル、ビーズミル、ミキサー回転ボールミル、振動ボールミル、撹拌ボールミル(アトライター)、ジェットミル、遠心分離機、又はミルと遠心分離を組み合わせた手法などが挙げられる。得られた扁平磁性金属粒子は成型を行う。例えば、一軸プレス成型、ホットプレス成型、CIP成型、HIP成型等で成型を行う。プレス圧は高い方が好ましく、10000kgf/cm以上であることが好ましい。また、プレスを1回行った後、熱処理を行ない(例えばH雰囲気で1000℃熱処理)、再度プレスを行う、という操作を複数回(例えば2回以上)行なうことが、緻密化(高密度化、飽和磁化向上)にとって好ましい。これによって、成型体を得る。
第2の工程は、得られた成型体を熱処理する工程である。この時、真空中で熱処理を行なうことが好ましい。この時、真空中で熱処理を行う際に、Ta箔の上に成型体を配置することが好ましい。熱処理温度は1100℃以上が好ましく、より好ましくは1200℃以上である。真空度は高いことが好ましく、10-1Pa以下であることが好ましく、より好ましくは10-2Pa以下、更に好ましくは10-3Pa以下である。また、熱処理を行なう炉内はカーボンが周囲に配置されていることが好ましい。以上によって、真空熱処理時に、Fe、Co、Si等が部分的に蒸発しながら、焼結が進行する。この時、SiよりもFe、Coの方が蒸発しやすいので(蒸気圧が高いため)、原料組成から焼結後の組成はずれる(ややSiリッチ、Fe、Coプアーになる)。材料表面は、中心部に比べて、特にややSiリッチ、Fe、Coプアーとなる。また、真空熱処理時に、Ta箔からTaが材料に拡散していき、炉内のカーボンも材料に拡散していく。以上の挙動は、Ta箔に材料を配置し、炉内にカーボンが配置された状態で、真空中で高温で熱処理を行なうことによってはじめて起こる。以上の真空熱処理によって、Ta-Co-C(Fe、Si含む)の析出粒子が母相に生成する。なお、原料組成にTa、Cを含んでいる方が好ましいが、原料組成に含まれていなくても、プロセス中においてTa、Cを取り込み、析出粒子を生成することが可能である。また、適切な真空度、熱処理温度を設定することによって、Ta3Co3Cの立方晶型結晶構造を有する(Fe、Si含む)析出粒子が生成する。また、析出粒子は母相に対して配向し、格子ミスマッチが低い状態となる。なお、得られた成型体(磁性材料)は熱処理によって格子歪みを適度に除去することが好ましい。この時の熱処理は、不活性雰囲気下、還元性雰囲気下が好ましく、更に好ましくは、H、CO、CH等の還元雰囲気下が好ましい。
第2部材70は、第1部材60と空隙面240の間に設けられている。第2部材70は、Fe、Co及びNiからなる群から選ばれる少なくとも1つの第2元素を含む第2磁性金属相を有する。また、第2部材70は、扁平面と第2磁性金属相を含む複数の扁平磁性金属粒子と、扁平磁性金属粒子間に存在し、酸素(O)、炭素(C)、窒素(N)及びフッ素(F)からなる群から選ばれる少なくとも1つの第3元素を含む介在相と、を有することが好ましい。前記第2磁性金属相の割合は前記第2部材70の90%未満であることが好ましい。また、相対密度は90%未満であることが好ましい。図6は第1の実施形態の第2部材の一例を示す模式図である。磁性体(扁平磁性金属粒子)2及び介在相20が示されている。
前記扁平磁性金属粒子は、前記扁平面内において方向による保磁力差を有することが好ましい。方向による保磁力差の割合は大きければ大きいほど好ましく、1%以上であることが好ましい。より好ましくは、保磁力差の割合が10%以上、更に好ましくは保磁力差の割合が50%以上、更に好ましくは保磁力差の割合が100%以上である。ここでいう保磁力差の割合とは、扁平面内において、最大となる保磁力Hc(max)と最小となる保磁力Hc(min)を用いて、(Hc(max)-Hc(min))/Hc(min)×100(%)で定義される。なお、保磁力は、振動試料型磁力計(VSM)等を用いて評価できる。保磁力が低い場合は、低磁界ユニットを用いることによって、0.1Oe以下の保磁力も測定することができる。測定磁界の方向に対して、扁平面内の方向を変えて測定を行う。
なお、「保磁力差を有する」というのは、扁平面内の360度方向に磁界を印加して保磁力を測定した際に、保磁力が最大になる方向と、保磁力が最小になる方向とが存在する、ことを表している。例えば、扁平面内の360度の角度に対して、22.5度おきに方向を変えて保磁力を測定した際に、保磁力差が表れる、すなわち保磁力がより大きくなる角度と、保磁力がより小さくなる角度があらわれる場合、「保磁力差を有する」ものとする。
第2部材70は、複数の扁平磁性金属粒子と介在相とを備え、複数の扁平磁性金属粒子は、平均厚さが10nm以上100μm以下であり、扁平面を有し、前記厚さに対する前記扁平面内の平均長さの比の平均値が5以上10000以下であることが好ましい。
第2部材70は、扁平面が、第2部材70が有する平面に対して平行に配向し、平面内における方向による保磁力差を有することが好ましい。
第2部材70の平面内において保磁力差を有することによって、保磁力差がほとんどない等方性の場合に比べて、最小となる保磁力値が小さくなり好ましい。平面内で磁気異方性を有する材料においては、平面内の方向によって保磁力に差を有し、磁気的に等方性の材料に比べて、最小となる保磁力値が小さくなる。これによってヒステリシス損失は低減、透磁率は向上し、好ましい。
第2部材70の平面内において保磁力差を有することによって、保磁力差がほとんどない等方性の場合に比べて、最小となる保磁力値が小さくなり好ましい。平面内で磁気異方性を有する材料においては、平面内の方向によって保磁力に差を有し、磁気的に等方性の材料に比べて、最小となる保磁力値が小さくなる。これによってヒステリシス損失は低減、透磁率は向上し、好ましい。
第2部材70が有する平面内(扁平磁性金属粒子の扁平面に平行な平面内)において、方向による保磁力差の割合は大きければ大きいほど好ましく、1%以上であることが好ましい。より好ましくは、保磁力差の割合が10%以上、更に好ましくは保磁力差の割合が50%以上、更に好ましくは保磁力差の割合が100%以上である。ここでいう保磁力差の割合とは、扁平面内において、最大となる保磁力Hc(max)と最小となる保磁力Hc(min)を用いて、(Hc(max)-Hc(min))/Hc(min)×100(%)で定義される。
第2部材70は、圧粉材である、圧粉部であることが好ましい。第2部材70の製造方法は、特に限定されるものではなく、通常の圧粉化手法で製造されることが好ましい。より好ましくは、以下の様な方法が挙げられる。
第1の工程は、Fe、Co、Niからなる群から選ばれる少なくとも1つの第1の元素を含む磁性金属リボンを製造する工程である。本工程は、たとえば、ロール急冷装置やスパッタ装置などの成膜装置を用いて、リボン若しくは薄膜を作製する工程である。この際、成膜装置を用いて作製する成膜法においては磁場中成膜や回転成膜等によって膜面内に一軸異方性を付与させた膜を成膜することが望ましい。尚、成膜装置を用いた場合は、厚さを薄くでき、かつ、組織が洗練されたものになりやすく、回転磁化を起こしやすいため、回転磁化型のものを作る場合は成膜法を用いるのが望ましい。ロール急冷装置は、大量合成に適しているため、バルク材料を合成する際に望ましい。ロール急冷装置の場合は、単ロール急冷装置が簡便で好ましい。
第2の工程は、磁性金属リボンを50℃以上800℃以下の温度で熱処理する工程である。本工程では、熱処理するための電気炉に入れやすくするため、適当なサイズにリボンを切断しても良い。例えば、ミキサー装置等を用いて適当な大きさに切断しても良い。本工程を行うことによって、次の第3の工程である粉砕の工程において、粉砕性が向上しやすくなり望ましい。尚、熱処理の雰囲気は、低酸素濃度の真空雰囲気下、不活性雰囲気下、還元性雰囲気下が望ましく、更に望ましくは、H(水素)、CO(一酸化炭素)、CH(メタン)等の還元雰囲気下が好ましい。この理由としては、磁性金属リボンが酸化していても還元雰囲気で熱処理を施すことによって、酸化してしまった金属を還元して、金属に戻すことが可能となるためである。これによって、酸化し飽和磁化が減少した磁性金属リボンを還元して、飽和磁化を回復させることもできる。尚、熱処理によって、前記磁性金属リボンの結晶化が著しく進行してしまうと特性が劣化(保磁力が増加、透磁率が低下)してしまうため、過剰な結晶化を抑制するように条件を選定することが好ましい。また、より好ましくは、磁場中で熱処理を施すことがより望ましい。印加する磁場は大きければ大きい程好ましいが、1kOe以上印加することが好ましく、更に好ましくは10kOe以上印加することがより好ましい。これによって磁性金属リボンの面内に磁気異方性を発現させることができ、優れた磁気特性を実現できるため、好ましい。
第3の工程は、熱処理された磁性金属リボンを粉砕して扁平磁性金属粒子を製造する工程である。尚、本工程においては、本粉砕の前に、磁性金属リボン若しくは薄膜を、ミキサー装置等を用いて適当な大きさに切断しても良い。本工程においては、例えばビーズミルや遊星型ミル等の粉砕装置によって粉砕を行う。尚、粉砕装置は、特に種類を選ばない。例えば、遊星ミル、ビーズミル、回転ボールミル、振動ボールミル、撹拌ボールミル(アトライター)、ジェットミル、遠心分離機、又はミルと遠心分離を組み合わせた手法などが挙げられる。粉砕時においては、0℃以下の温度で冷却しながら粉砕を行うと、粉砕が進行しやすく好ましい。特に、液体窒素温度(77K)、ドライアイス温度(194K)などで冷却することが望ましく、その中でも特に、液体窒素温度に冷却することがより望ましい。これによって、磁性金属リボンが低温脆性を起こしやすく、粉砕が容易に行われる。つまり、磁性金属リボンに過度な応力や歪みを印加させずに、効率よく粉砕ができるため好ましい。ただし、冷却なしでも十分粉砕される場合も多く、その場合は冷却は行わなくても良い。
尚、第3の工程においては、単純に粉砕するだけでなく、圧延を組み合わせて、扁平磁性金属粒子の厚さを薄くすることができる。尚、第2の工程までで所定の厚さになっている場合は圧延のための処理は省略できる。ここで圧延は、同時に行っても良いし、粉砕後に圧延、若しくは圧延後に粉砕しても良い。この場合は、強い重力加速度を印加できる装置が好ましいが、例えば、遊星ミル、ビーズミル、回転ボールミル、振動ボールミル、撹拌ボールミル(アトライター)、ジェットミル、遠心分離機、又はミルと遠心分離を組み合わせた手法などで行うことができる。例えば、ハイパワー遊星ミル装置では、数十Gの重力加速度が簡単に印加できるため好ましい。ハイパワー遊星ミル装置の場合は、自転重力加速度の方向と公転重力加速度の方向が同一直線上の方向ではなく角度を持った方向になる、傾斜型遊星ミル装置がより好ましい。通常の遊星ミル装置では、自転重力加速度の方向と公転重力加速度の方向が同一直線上の方向であるが、傾斜型遊星ミル装置では容器が傾斜した状態で回転運動を行うため、自転重力加速度の方向と公転重力加速度の方向が同一直線上ではなく角度を持った方向になる。これによって、試料にパワーが効率よく伝達し、粉砕・圧延化が効率良く進行するため好ましい。また、量産性を考慮すると、大量処理が容易なビーズミル装置が好ましい。
以上の切断と粉砕・圧延化を行い(圧延は必要に応じて行う。不要の場合は行わない)、場合によっては切断と粉砕・圧延化を繰り返し、所定の厚さ及びアスペクト比の扁平磁性金属粒子10になるように処理を行うことが望ましい。この時、厚さが10nm以上100μm以下、より好ましくは10nm以上1μm以下、更に好ましくは10nm以上100nm以下になる様に粉砕・圧延を行うと、回転磁化を起こしやすい粒子になり、好ましい。
また得られた扁平磁性金属粒子は熱処理によって格子歪みを適度に除去することが望ましい。この時の熱処理は、第2の工程と同じように、50℃以上800℃以下の温度で行うことが好ましく、熱処理の雰囲気は、低酸素濃度の真空雰囲気下、不活性雰囲気下、還元性雰囲気下が望ましく、更に望ましくは、H、CO、CH等の還元雰囲気下が好ましい。また、より好ましくは、磁場中で熱処理を施すことがより望ましい。これらの理由や詳細については、第2の工程の場合と同じであるためここでは説明を割愛する。
以上の工程によって得られた扁平磁性金属粒子を介在相と共に圧粉化する。例えば、一軸プレス成型、ホットプレス成型、CIP成型、HIP成型等で成型を行う。この時、磁場を印加しながら成型を行うと、磁気異方性が付与されるため好ましい。その後、得られた成型体を熱処理することが好ましい。また、熱処理時は、磁気異方性を付与するために、磁場を印加することが好ましい。以上によって、圧粉材を得ることができる。
第1部材60の電気抵抗率は10-8Ωm以上10-4Ωm未満であることが好ましい。第2部材70の電気抵抗率は10-4Ωm以上であることが好ましい。なお、第1部材60及び第2部材70の電気抵抗率は、例えば直流四端子法や直流二端子法などにより測定することが可能である。
第1部材60の曲げ強度(3点曲げ強度)は3点曲げ強度が200MPa以上の特性を有することが好ましく、より好ましくは300MPa以上、更に好ましくは500MPa以上が好ましい。なお、第1部材60の曲げ強度及び第2部材70の曲げ強度は、例えばJIS-R1601等の規格に定められた3点曲げ試験方法に準じて測定することが可能である。
第1部材60の飽和磁化は1.7T以上であることが好ましく、より好ましくは1.8T以上であることが好ましい。質量飽和磁化としては180emu/g以上であることが好ましく、より好ましくは、190emu/g以上である。なお、第1部材60の飽和磁化及び第2部材70の飽和磁化は、例えばVSM等により測定することが可能である。
空隙面240に垂直な方向における第1部材60の膜厚は、空隙面240に垂直な方向における磁性楔100の膜厚の30%以上70%以下であることが好ましい。
図7は、本実施形態の磁性楔の模式断面図である。
図7(a)は、本実施形態の磁性楔100の模式断面図である。第2部材70は、第1凹部72を有していることが好ましい。そして、第1部材60は、第2部材70の第1凹部72の上に設けられていることが好ましい。言い換えると、第1部材60の一部は、第1凹部72に設けられていることが好ましい。第1凹部72を設けることにより、第1部材60を第2部材70に対して固定することができる。そのため、回転電機200内に磁性楔100を取り付けることが容易になるためである。
ここで、図7(a)に示した磁性楔100の場合、例えば磁束が空隙面240に対して垂直な方向に流れることにより、かかる磁束の流れを打ち消す方向に、例えば図7(a)に示したように、第1部材60に渦電流が生じる。あまりにも強い渦電流が流れると、第1部材60の発熱量が多くなる(損失が大きくなる)ため、問題となる。
図7(b)は、本実施形態の変形例である磁性楔110の模式断面図である。磁性楔110は、複数の第1部材60a、第1部材60b及び第1部材60cを有する。そして、第1部材60a、第1部材60b及び第1部材60cは、空隙面240に平行な図7(b)の方向に設けられている。これにより、磁束に垂直な方向における個々の第1部材60a、60b又は60cが占める面積が、図7(a)に示した第1部材60の場合よりも小さくなる。そのため、個々の第1部材60a、60b及び60cに生じる渦電流の大きさを小さくすることができる。そのため、第1部材60全体としての発熱量を小さくすることができる(損失を小さくできる)。
図7(c)は、本実施形態の変形例である磁性楔120の模式断面図である。
磁性楔120は、第1部材60と第2部材70の間に設けられ、第2凹部82を有する第3部材80をさらに備えることが好ましい。ここで、第2部材70は、第1部材60と第2部材70の間に設けられた第1凹部72を有することが好ましい。さらに、第2凹部82は、第1部材60と第3部材80の間に設けられていることが好ましい。さらに、第3部材80の一部は第1凹部72に設けられ、第1部材60の一部は第2凹部82に設けられていることが好ましい。さらに、第3部材80は、焼結部(第2焼結部)であることが好ましい。これは、第1部材60の強度は第2部材70の強度より高いために、回転電機の製造作業を繰り返す度に、第1凹部72(第2部材70)が摩耗してしまうためである。そこで、第1凹部72に、焼結部(第2焼結部)である第3部材80の一部を設け、さらに、第1部材60の一部を第3部材の第2凹部82に設けるようにする。これにより、より頻繁に取り外しが繰り返される第1部材60については、焼結部(第2焼結部)である第3部材80との接触/非接触が繰り返されるようになる。言い換えると、より頻繁に取り外しが繰り返される第1部材60については、圧粉部である第2部材70との接触/非接触の繰り返しが抑制される。これにより、第1凹部72(第2部材)の摩耗を抑制することができる。
磁性楔は、主面を有する平面型構造の磁性体を含む。平面型構造の磁性体として、磁性体は、扁平粒子、薄帯(リボン)、薄膜、厚膜、及び板状部材、からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む。扁平粒子は、扁平状(flaky,flatened)の形状(flaky shape,flatened shape)をした、扁平粒子(flaky particle、flatened particle)である。薄帯(リボン)は厚さ数μm程度から百μm程度のリボン状のもの、薄膜は厚さ数nm程度から十μm程度の薄い膜、厚膜は厚さ数μm程度から数百μm程度の厚い膜、板状部材は厚さ百μm程度から数百mm程度の板状の部材を指すが、厳密に区別されるものではなく、また、厚さ範囲から多少外れても良い。いずれにおいても、前記主面内の平均長さ(最大長さa、最小長さbを用いて、(a+b)/2で定義。詳細は後述)が厚さよりも大きいことが好ましい。尚、前述の厚さ範囲及び区分は、あくまで一つの目安であり、磁性体が、扁平粒子、薄帯(リボン)、薄膜、厚膜、板状部材のいずれかを含むかどうかは、外観、形状などの情報を含めて総合的に判断する。
尚、磁性体における「主面」とは、平面型の構造における、平面に相当する面のことである。図8は、本実施形態の磁性体の主面を説明する模式図である。例えば、角柱の場合は図8(a)に示すように面積が最も広い面、又はそれに対向する面が主面である。角柱の場合は、第1の面2a又は第2の面2bが主面である。円柱の場合は図8(b)に示すように底面を意味する。円柱の場合は、第1の面2a又は第2の面2bが主面である。扁平楕円体の場合は図8(c)に示すように面積が最も広くなる断面が主面である。扁平楕円体の場合は、第1の面2aが主面である。直方体の場合は図8(d)に示すように最も面積の広い面を意味する。直方体の場合は、第1の面2a又は第2の面2bが主面である。つまり、扁平粒子の場合は扁平面を、薄帯(リボン)や板の場合は板面を、薄膜や厚膜の場合は膜面を指す。図8(a)の角柱、図8(b)の円柱、図8(c)の扁平楕円体において最も面積の広い面を第1の面2aとする。そして、第2の面2bは、第1の面2aに対向する面とする。主面は、第1の面2a又は第2の面2bである。磁性体が扁平磁性金属粒子である場合には、主面は、扁平磁性金属粒子の扁平面である。
また、主面内の平均長さは厚さよりも大きいことが好ましい。更に好ましくは、厚さに対する主面内の平均長さの比が5以上であることが好ましい。これによって、磁性楔の透磁率に差が生まれやすくなる(異方性が大きくなる)ため好ましい。低損失化の観点からも、渦電流損を低減することができるため好ましい。
主面内の平均長さは、最大長さa、最小長さbを用いて、(a+b)/2で定義される。最大長さa及び最小長さbに関しては、次のようにして求める。主面の輪郭線の各点の接線に対して垂直な方向に線を引き、向かい側の輪郭線と交わった点までの長さを測る。これを輪郭線上の全ての点において行い、最大長さaと最小長さbを決定する。厚さtは、主面に垂直方向の長さで定義される。また、厚さに対する主面内の平均長さの比は、最大長さa、最小長さb、厚さtを用いて、((a+b)/2)/tで定義される。
漏れ磁束を抑制する観点からは、磁性体が空隙面に対し略垂直となるように配置されることが好ましい。磁性体の一部に垂直でないものがあっても良いが、半分以上の磁性体の主面が空隙面に垂直な面に対し±20°の範囲に入っていることが、本実施形態における「略垂直」の定義であり、本定義の「略垂直」を満たすことが好ましい。より好ましくは、半分以上の磁性体の主面が空隙面に垂直な面に対し±10°の範囲に入っていることが好ましい。このような構成にすることで、磁性楔の透磁率は空隙面に対し垂直な方向に高く平行な方向に低くなるため、磁性楔使用による漏れ磁束の増加を抑えて、回転電機の効率向上の効果を十分に享受でき好ましい。又、有効磁束(主磁束)を増加し、回転電機のトルクを向上できる。
なお、本実施形態の透磁率とは、形状により左右されない真の透磁率である。つまり、反磁界の影響を受けない真の透磁率である。実効的な透磁率は、形状が変わると反磁界の影響度合いが変わるため、変化する。しかしながら真の透磁率は、反磁界の影響を除去した透磁率であり、完全な閉磁路を形成して測定することで求めることが可能である。例えば、試料(磁性楔)がリング状であれば完全に閉磁路を形成するため、真の透磁率が容易に求まる。また、試料(磁性楔)がリング状でない場合も、ヨークを用いて閉磁路を形成すれば、真の透磁率を求めることができる。ヨークを用いることによって、3方向それぞれにおいて閉磁路を形成し、これによって、3方向それぞれの真の透磁率を求めることができる。しかしながら、軸方向透磁率μz、回転方向透磁率μθ、径方向透磁率μrの3方向の透磁率を正確に測定することが難しい場合がある。その場合は、3方向で保磁力を測定し、透磁率を推測しても良い。一般に、保磁力、及び、透磁率は、磁気異方性の大きさに左右され、磁気異方性が小さいと保磁力も小さくなり、反対に透磁率は大きくなる。逆に、磁気異方性が大きいと、保磁力が大きくなり、反対に透磁率は小さくなる。そのため、保磁力と透磁率は磁気異方性を介して相関があり、保磁力の値から透磁率の大きさを推測することができる。
ただし、保磁力が同じでも、透磁率が同じではない場合もあるため注意が必要である。たとえば、同じ保磁力であっても、磁性楔に含まれる磁性体の形状が棒状の形状を有する場合は、棒に平行な方向では形状磁気異方性の効果で透磁率は大きくなり、棒に垂直な方向では透磁率は小さくなる。また、同じ保磁力であっても、磁性楔に含まれる磁性体の形状が扁平状の形状を有する場合は、扁平面に平行な方向では形状磁気異方性の効果で透磁率は大きくなり、扁平面に垂直な方向では透磁率は小さくなる。以上のことから、保磁力で透磁率の大きさの関係を求める場合は、最初に保磁力の大きさで透磁率を推測した上で、その後、磁性楔に含まれる磁性体の形状を観察し、その形状から形状磁気異方性の効果を見積もり、総合的に透磁率の大きさの関係を求めることも可能である。
径方向透磁率μrは、回転方向透磁率μθ及び軸方向透磁率μzよりも高くなるように、磁性体を配置することが好ましい。 これは特にラジアルギャップ型回転電機の場合に好ましい。この効果について、図9を用いて詳細に説明する。図9は、本実施形態のラジアルギャップ型回転電機における磁性楔の使用状態を示す模式図である。ラジアルギャップ型回転電機に対して、磁性楔は、回転方向に所定の間隔をあけて配置された鉄心ティース間を橋絡するように装着され、軸方向に沿って延びるスロット開口部を塞ぐ。
このため、磁性楔を介して鉄心ティース間を流れる漏れ磁束を低減する観点からは、回転方向透磁率μθが径方向透磁率μrよりも低いことが好ましい。一方、空隙端部から軸方向鉄心外側へ流れる漏れ磁束を低減する観点からは、軸方向透磁率μzが径方向透磁率μrよりも低いことが好ましい。
まとめると、径方向透磁率μrが回転方向透磁率μθ及び軸方向透磁率μzよりも高くなるように、前記磁性体を配置することによって、漏れ磁束の増加を最小限に抑えることができ好ましい。これによって、磁性楔使用による回転電機の効率向上の効果を十分に享受することが可能となる。更に好ましくは、径方向、回転方向、軸方向の順番で透磁率が高くなっている(径方向透磁率μr>回転方向透磁率μθ>軸方向透磁率μzとなっている)ことが好ましい。回転方向透磁率μθが軸方向透磁率μzよりも大きいと、鉄心ティースから楔を介して空隙側に通過する磁束が増え、又、高調波損失を低減できため、好ましい。即ち、磁性楔使用による回転電機の効率をさらに向上させることが可能となる。
図9では、鉄心スロットにおいて、磁性楔がコイルと鉄心表面の間の全ての空間を満たしているが、必ずしも全てを満たす必要はない。磁性楔の占める空間がコイルと鉄心表面の間の一部であっても良い。
図9では、磁性楔100、コイル230、鉄心ティース250が示されている。図9は、第1部材60、第2部材70及び第3部材80をまとめて磁性楔100として模式的にまとめて示したものである。第1部材、第2部材、第3部材すべてが上述の透磁率の関係を有することが好ましいが、いずれか1つ若しくはいずれか2つが上述の透磁率の関係を有していても好ましい。
軸方向透磁率μzは、回転方向透磁率μθ及び径方向透磁率μrよりも高くなるように、磁性体を配置することが好ましい。これは特にアキシャルギャップ型回転電機の場合において好ましい。 この効果について、図10を用いて詳細に説明する。図10は、アキシャルギャップ型回転電機における磁性楔の使用状態を示す模式図である。アキシャルギャップ型回転電機に対して、磁性楔は、回転方向に所定の間隔をあけて配置された鉄心ティース間を橋絡するように装着され、径方向に沿って延びるスロット開口部を塞ぐ。
図10では、磁性楔100、コイル230、鉄心ティース250が示されている。図10は、第1部材60、第2部材70及び第3部材80をまとめて磁性楔100として模式的にまとめて示したものである。
このため、磁性楔を介して鉄心ティース間を流れる漏れ磁束を低減する観点からは、回転方向透磁率μθが軸方向透磁率μzよりも低いことが好ましい。一方、空隙端部から径方向鉄心外側へ流れる漏れ磁束を低減する観点からは、径方向透磁率μrが軸方向透磁率μzよりも低いことが好ましい。
まとめると、軸方向透磁率μzが回転方向透磁率μθ及び径方向透磁率μrよりも高くなるように、前記磁性体を配置することによって、漏れ磁束の増加を最小限に抑えることができ好ましい。これによって、磁性楔使用による回転電機の効率向上の効果を十分に享受することが可能となる。更に好ましくは、軸方向、回転方向、径方向の順番で透磁率が高くなっている(軸方向透磁率μz>回転方向透磁率μθ>径方向透磁率μrとなっている)ことが好ましい。回転方向透磁率μθが径方向透磁率μrよりも大きいと、鉄心ティースから楔を介して空隙側に通過する磁束が増え、又、高調波損失を低減できため、好ましい。即ち、磁性楔使用による回転電機の効率をさらに向上させることが可能となる。
なお、第1部材、第2部材、第3部材すべてが上述の透磁率の関係を有することが好ましいが、いずれか1つ若しくはいずれか2つが上述の透磁率の関係を有していても好ましい。
なお、磁性楔を介して鉄心ティースを流れる漏れ磁束を低減するのに適した磁性体の配置状態としては、磁性体の主面は、回転方向に対し略垂直となるように沿って配向して配置されることが好ましい。これは、ラジアルギャップ型回転電機とアキシャルギャップ型回転電機の両方の場合において好ましい。このような構成にすることで、磁性楔を介して鉄心ティース間を流れる漏れ磁束を大幅に低減することが可能となる。これによって、磁性楔使用による回転電機の効率向上の効果を十分に享受することが可能となる。
前記磁性体は、主面内の方向によって透磁率に差を有することが好ましい。より好ましくは、磁性体の透磁率が最も高くなる方向(磁化容易軸方向)が一方向に揃っていることが好ましい。このような構成にすることで、磁性楔の透磁率に差が生まれやすくなる(異方性が大きくなる)ため好ましい。更に好ましくは、磁性体の磁化容易軸方向が空隙面に垂直な方向に揃っていることが好ましい。つまり、ラジアルギャップ型回転電機の場合は、磁性体の磁化容易軸方向が径方向に揃っていることが好ましく、アキシャルギャップ型回転電機の場合は、磁性体の磁化容易軸方向が軸方向に揃っていることが好ましい。このような構成にすることで、磁性楔の透磁率は空隙面に対し垂直な方向に高く平行な方向に低い異方性を有し易くなる。これによって、磁性楔使用による漏れ磁束の増加を抑えて、回転電機の効率向上の効果を十分に享受でき好ましい。又、有効磁束(主磁束)を増加し、回転電機のトルクを向上できる。
磁性体は、扁平粒子、薄帯(リボン)、薄膜、厚膜及び板状部材からなる群より選ばれる少なくとも一つを含むことが好ましい。このような構成にすることで、製造が容易となり製造歩留りが向上し、製造コストを低減できる。磁性体は、特に、薄帯(リボン)、又は板状部材であることが好ましい。これは、製造が容易となり製造歩留りが向上し、製造コストを特に低減できるためである。
磁性体は、特に、扁平粒子であることが好ましい。このような構成にすることで、磁性楔で発生する渦電流損を低減することが可能となる。これによって、磁性楔使用による回転電機の効率向上の効果を十分に享受することが可能となる。また複雑な形状の磁性楔を製造する場合、粉を固めるだけなので、製造が容易となり、製造歩留りが向上し、製造コストを低減できる。
磁性体は、鉄(Fe)、コバルト(Co)及びニッケル(Ni)からなる群より選ばれる少なくとも1つの磁性元素を含有し、厚さ10nm以上100μm以下で、厚さに対する主面内の平均長さの比5以上10000以下であることが好ましい。磁性体が扁平粒子の場合は、扁平状(flaky,flatened)の形状(flaky shape,flatened shape)をした、扁平粒子(flaky particle、flatened particle)である。
磁性体は、Fe、Coを含み、Coの量はFeとCoの合計量に対して10原子%以上60原子%以下であることが好ましく、10原子%以上40原子%以下であることが更に好ましい。これによって磁気異方性が適度に大きく付与されやすいため好ましい。また、Fe-Co系は高飽和磁化を実現し易いため好ましい。更にFeとCoの組成範囲が上記の範囲に入ることによって、より高い飽和磁化が実現でき好ましい。
磁性体は、Mg、Al、Si、Ca、Zr、Ti、Hf、Zn、Mn、Ba、Sr、Cr、Mo、Ag、Ga、Sc、V、Y、Nb、Pb、Cu、In、Sn及び希土類元素からなる群より選ばれる少なくとも1つの非磁性金属を含むことが好ましい。これによって、前記磁性体の熱的安定性や耐酸化性を高めることができる。中でも、Al、Siは、磁性体の主成分であるFe、Co、Niと固溶し易く、熱的安定性や耐酸化性の向上に寄与するために特に好ましい。
磁性体の厚さ、及び、厚さに対する主面内の平均長さの比は、磁性体を透過電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscopy)又は走査電子顕微鏡(SEM)で観察することにより求めることができ、10個以上の値を平均した値を採用する。
磁性体の厚さは10nm以上100μm以下が好ましく、更に好ましくは、1μm以上100μm以下である。また、厚さに対する主面内の平均長さの比は5以上10000以下が好ましく、更に好ましくは10以上1000以下であることが好ましい。複数の磁性体が磁性楔に含まれる場合は、厚さ及び、厚さに対する主面内の平均長さの比を個々の磁性体に対して求め、その平均値が上記範囲に入っていることが好ましい。厚さが薄く、厚さに対する主面内の平均長さの比が大きいと、渦電流損失を低減し易いという観点からは好ましいが、一方で、保磁力がやや大きくなる傾向にある。そのため、保磁力を低減するという観点からは、適度な厚さ、適度な厚さに対する主面内の平均長さの比を有することが好ましい。上述の範囲の厚さ、厚さに対する主面内の平均長さの比においては、渦電流損失と低保磁力(低ヒステリシス損失が可能)の点でバランスの良い材料となる。
磁性体の間に、酸素(O)、炭素(C)、窒素(N)及びフッ素(F)からなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を含有する介在相を有することが好ましい。これによって、介在相の電気抵抗が高くなり、磁性楔の渦電流損を低減することができるためである。この観点においては、磁性体よりも介在相の電気抵抗が高いことが好ましい。介在相は、磁性体を取り囲んで存在するため、扁平粒子の耐酸化性、熱的安定性を向上させることができ好ましい。この中で酸素を含むものは、高い耐酸化性、高い熱的安定性の観点からより好ましい。介在相は、磁性体同士を機械的に接着する役割も担っているため、高い強度の観点からも好ましい。
また介在相は、磁性体同士を機械的に接着する役割も担っているため、ガラス繊維、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、アラミド繊維、PBO繊維、ポリアリレート繊維、ポリエチレン繊維、ポリオレフィン繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維から選択される少なくとも1つ以上の補強材料を混合することが好ましい。
また、本実施形態の磁性楔においては、磁性楔の内部に非磁性体を配設することによって、回転方向の透磁率を低くし、磁性楔を介して鉄心ティース間を流れる漏れ磁束の一層の低減を図ることができる。
また、本実施形態の磁性楔は、磁性楔の表面を樹脂で覆うことによって、磁性楔の機械的な強度を一層高めることができる。この場合、樹脂は、特に限定されないが、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリブタジエン系樹脂、テフロン系樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース系樹脂、ABS樹脂、ニトリル-ブタジエン系ゴム、スチレン-ブタジエン系ゴム、シリコーン樹脂、その他の合成ゴム、天然ゴム、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アリル樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、アミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、或いはそれらの共重合体が用いられる。特に、耐熱性の高いシリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、を含むことが好ましい。
次に、本実施形態の効果について説明する。
図11は、本実施形態の作用効果を説明する図である。図11の左側に示したグラフは、実施例としての、空隙側に第2部材70を配置した場合のグラフである。言い換えると、図11の左側に示したグラフは、実施例としての、第2部材70を第1部材60と空隙面240の間に配置した場合のグラフである。図11の右側に示したグラフは、比較例としての、空隙側に第1部材(焼結部)60を配置した場合のグラフである。言い換えると、図11の右側に示したグラフは、比較例としての、第1部材60を第2部材70と空隙面240の間に配置した場合のグラフである。いずれのグラフも、横軸に、第1部材60の膜厚の割合を、0(磁性楔100の全てが第2部材70からなる場合)から1(磁性楔100の全てが第1部材60からなる場合)まで変化させた場合としている。
ここで、第2部材70は、第1部材60より電気抵抗率が高く、第1部材60より曲げ強度が低く、第1部材60より飽和磁化が低い。具体的には、第1部材60については、磁化は1.86T、比透磁率は500、電気抵抗率は10-7Ωm、曲げ強度は670MPaとしている。磁性金属相の割合は95Vol%である。また、第2部材70については、磁化は1T、比透磁率は120、電気抵抗率は10-3Ωm、曲げ強度は90MPaである。磁性金属相の割合は50Vol%である。
まず、実施例(空隙側に第2部材70を配置した場合)においては、高効率化の観点で重要である「高調波磁束」について、第1部材60の膜厚が磁性楔の膜厚の20%以上である場合において、十分に小さくなり好ましい結果が得られた。また、高効率化の観点で重要である「磁性楔の渦電流損失」については、第1部材60の膜厚が磁性楔の膜厚の70%以下である場合において、渦電流損失が十分に小さくなり好ましい結果が得られた。高効率化の観点では、「高調波磁束」と「磁性楔の渦電流損失」の両方を下げる必要があるが、そのためには、上記の結果から、第1部材60の膜厚を磁性楔の膜厚の20%以上70%以下にする必要があることが分かった。一方で、高信頼性の観点で重要である「磁性楔の耐荷重」については、第1部材60の膜厚が30%以上である場合において、耐荷重が十分に高く、好ましい特性が得られた。以上のことから、高効率化と高信頼性を両立させるためには(低損失と高耐荷重を両立)、第1部材60の膜厚を磁性楔の膜厚の30%以上70%以下にする必要があることが分かった。
これに対して、比較例(空隙側に第1部材60を配置した場合)においては、高効率化の観点で重要である「高調波磁束」について、第1部材60の膜厚が磁性楔の膜厚の約5%以上である場合において、十分に小さくなり好ましい結果が得られた。また、高効率化の観点で重要である「磁性楔の渦電流損失」については、第1部材60の膜厚が磁性楔の膜厚の約5%未満である場合において、渦電流損失が十分に小さくなり好ましい結果が得られた。高効率化の観点では、「高調波磁束」と「磁性楔の渦電流損失」の両方を下げる必要があるが、両方を同時に下げることは厳しいことが分かった。比較例の場合は、空隙側に第1部材60を配置しており、実施例よりも、第1部材60の膜厚が小さくても、高調波磁束を低減し易いが、電気抵抗率が低く、渦電流損失が劇的に増加してしまい、この影響が大きく、「高調波磁束」と「磁性楔の渦電流損失」の両方を同時に効果的に下げることが難しいことが分かった。なお、高信頼性の観点で重要である「磁性楔の耐荷重」については、第1部材60の膜厚が30%以上である場合において、耐荷重が十分に高くなる点は実施例と同じである。以上のことから、比較例においては、実施例と異なり、高効率化と高信頼性を両立させる(低損失と高耐荷重を両立)ことは困難であることが分かった。
以上より、磁性楔100は、第1部材60と、第1部材60と空隙面240の間に第2部材70が設けられることが好ましい。また、第2部材70の電気抵抗率は第1部材60より高いことが好ましく、第1部材60の曲げ強度は第2部材70の曲げ強度より高いことが好ましく、第1部材60の飽和磁化は第2部材70の飽和磁化よりも高いことが好ましい。また、空隙面240に垂直な方向における第1部材60の膜厚は、空隙面240に垂直な方向における磁性楔100の膜厚の30%以上70%以下であることが好ましい。
そして、第1部材60の電気抵抗率は10-8Ωm以上10-4Ωm未満であり、第2部材70の電気抵抗率は10-4Ωm以上であり、第1部材60の曲げ強度は200MPa以上であることが好ましく、より好ましくは300MPa以上、更に好ましくは500MPa以上である。また、第1部材60の飽和磁化は1.7T以上であることが好ましく、より好ましくは1.8T以上である。これにより、低損失で高強度な磁性楔が得られる。
第1部材60に対する前記第1磁性金属相の割合は、前記第2部材に対する前記第2磁性金属相の割合よりも大きいことが好ましい。上記の電気抵抗率、曲げ強度及び飽和磁化を、容易に満たすことができるためである。
第1部材60は焼結材である焼結部であり、第2部材70は圧粉材料である圧粉部であることが好ましい。上記の電気抵抗率、曲げ強度及び飽和磁化を、容易に満たすことができるためである。
本実施の形態の磁性楔によれば、低損失で高強度の磁性楔を得ることが可能となる。
(第2の実施形態)
本実施形態の回転電機は、第1の実施形態の磁性楔を備えることを特徴とする。したがって、第1の実施形態と重複する内容については記載を省略する。本明細書において、回転電機とは、電動機(モータ)、発電機(ジェネレータ)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータの何れをも含む概念を意味する。
本実施形態のラジアルギャップ型モータは、主面を有する磁性体を空隙面に対し主面が略垂直となるように配置し、軸方向透磁率、回転方向透磁率、径方向透磁率の3方向の透磁率に差を付与した磁性楔を有することを特徴とする。
図12は、本実施形態のラジアルギャップ型回転電機の一例を示す模式図である。図12は、本実施形態のラジアルギャップ型モータの一例である。ラジアルギャップ型回転電機は、回転子と、この回転子に対して径方向に所定の空隙をもって対向配置される固定子を有する。図12では、回転子は固定子の内側に配置されているが、外側に配置されていても構わない。回転子は、回転子鉄心と軸を備えており、回転できるように支持されている。一方、固定子は、固定子鉄心と、固定子鉄心のスロットに挿置した界磁コイルと、スロット開口部の楔溝に保持された磁性楔を備える。図12では、該磁性楔は、径方向透磁率μrが回転方向透磁率μθ及び軸方向透磁率μzよりも高くなるように配置されている場合を一例として示しているがこれに限定されない。
このように磁性楔において、軸方向透磁率μz、回転方向透磁率μθ、径方向透磁率μrの3方向の透磁率に差を有することによって、漏れ磁束の増加を抑えながら、回転子表面部に生じる高調波損失の低減を図ることが可能となる。また、空隙を通過する磁束が増加するため、ラジアルギャップ型モータのトルクは増大される。以上の損失低減効果とトルク増加効果のいずれか若しくは両方によって、高効率化を実現することができる。
鉄心の材料としては、磁性薄板の積層コア、磁性粒子を圧縮成形した圧粉コア、フェライトコア等のいずれを採用しても構わない。
特に、磁性薄板の積層コアを採用したラジアルギャップ型モータにおいては、磁性楔に含まれる磁性体の主面と積層コアを形成する磁性薄板の主面を平行に配置した場合においては、渦電流損を低減することができるため、特に好ましい。
又、ラジアルギャップ型モータとしては、回転子に導体を備えたもの(誘導モータ)、永久磁石を備えたもの(永久磁石モータ)、磁性体を備えたもの(リラクタンスモータ)の何れであっても構わない。
本実施形態のアキシャルギャップ型モータは、主面を有する磁性体を空隙面に対し主面が略垂直となるように配置し、軸方向透磁率、回転方向透磁率、径方向透磁率の3方向の透磁率に差を付与した磁性楔を有することを特徴とする。
図13は、本実施形態のアキシャルギャップ型回転電機の一例を示す模式図である。図13は、本実施形態のアキシャルギャップ型モータの一例である。アキシャルギャップ型モータは、回転子と、この回転子に対して軸方向に所定の空隙を隔てて対向配置される固定子を有し、固定子に、固定子鉄心と、固定子鉄心のスロットに挿置した界磁コイルと、スロット開口部の楔溝に保持された磁性楔を備える。図13では、該磁性楔は、軸方向透磁率μzが径方向透磁率μr及び回転方向透磁率μθよりも高くなるように配置されている場合を一例として示しているがこれに限定されない。このように磁性楔において、軸方向透磁率μz、回転方向透磁率μθ、径方向透磁率μrの3方向の透磁率に差を有することによって、漏れ磁束の増加を抑えながら、回転子表面部に生じる高調波損失の低減を図ることが可能となる。又、空隙を通過する磁束が増加するため、アキシャルギャップ型モータのトルクは増大される。以上により、高効率化を実現することができる。
図13では、回転子は2つの固定子の間に配置されているが、1つの固定子の片側若しくは両側に配置されていても構わない。
鉄心の材料としては 、磁性薄板の積層コア、磁性粒子を圧縮成形した圧粉コア、フェライトコア等のいずれを採用しても構わない。特に、磁性薄板の積層コアを採用したアキシャルギャプ型モータにおいては、磁性楔に含まれる磁性体の主面と積層コアを形成する磁性薄板の主面を平行に配置した場合においては、渦電流損を低減することができるため、特に好ましい。
本実施形態の発電機は、主面を有する磁性体を空隙面に対し主面が略垂直となるように配置し、軸方向、回転方向、径方向の3方向で透磁率に差を付与した磁性楔を有することを特徴とする。
図14は、本実施形態の発電機の一例を示す模式図である。発電機は、通常、回転子鉄心のスロットに励磁コイルを収納する回転子(この他、永久磁石を励磁源とした回転子を採用しても良い)と、固定子鉄心のスロットに電機子コイルを収納する固定子を有し、回転子を回転させて、かつ、前記励磁コイルに励磁電流を流すことで、前記電機子コイルに電力を発電する。回転子は、回転子鉄心と、回転子鉄心のスロットに挿置した界磁コイルと、スロット開口部の楔溝に保持された磁性楔を備え、軸受によって回転できるように支持される。図14では、該磁性楔は、径方向透磁率μrが回転方向透磁率μθ及び軸方向透磁率μzよりも高くなるように配置されている場合を一例として示しているがこれに限定されない。
このように磁性楔において、軸方向透磁率μz、回転方向透磁率μθ、径方向透磁率μrの3方向の透磁率に差を有することによって、漏れ磁束の増加を抑えながら、固定子表面部に生じる高調波損失を低減することが可能となる。また、空隙を通過し電機子コイルと鎖交する磁束が増加するため、電機子コイルに誘起される発電電圧は増大する。以上により、高効率化を実現することができる。
図14では、回転子鉄心のスロット開口部に磁性楔が配置されているが、固定子鉄心のスロット開口部に配置されていても構わない。又、図では、回転子に励磁コイルを備えた巻線式の発電機を示したが、回転子に永久磁石を備えた永久磁石式の発電機であっても良い。この場合、磁性楔は固定子鉄心のスロット開口部に配置される。
鉄心の材料としては、磁性薄板の積層コア、磁性粒子を圧縮成形した圧粉コア、フェライトコア等のいずれを採用しても構わない。特に、磁性薄板の積層コアを採用した発電機においては、磁性楔に含まれる磁性体の主面と積層コアを形成する磁性薄板の主面を平行に配置した場合においては、渦電流損を低減することができるため、特に好ましい。
リニアモータはラジアルギャップ型モータを展開し平板状の構造としたものであるため、本発明の磁性楔をリニアモータに適用することも可能である。即ち、固定子は固定子鉄心と、固定子鉄心のスロットに挿置した界磁コイルを備え、スロット開口部に磁性楔を設けても良い。図15は、本実施形態のリニアモータの一例を示す模式図である。リニアモータにおいては、可動子の進行方向、可動子の進行方向に直角な方向、固定子に対し鉛直な方向が、ラジアルギャップ型モータの回転方向、軸方向、径方向にそれぞれ対応している。
このとき、磁性楔の磁気特性としては、図15に示すように、磁性楔において、固定子に対し鉛直な方向の透磁率μz、可動子の進行方向の透磁率μx、進行方向に直角な方向の透磁率μyの3方向の透磁率に差を付与させることが好ましい。図15では、固定子に対し鉛直な方向の透磁率μzが可動子の進行方向の透磁率μx及び進行方向に直角な方向の透磁率μyよりも高くなるように配置しているがこれに限定されない。これによって、漏れ磁束の増加を抑えながら、可動子表面部に生じる高調波損失の低減を図ることが可能となる。また、空隙を通過する磁束が増加するため、リニアモータの推力は向上される。以上により、高効率化を実現することができる。図15には可動子290が示されている。
本実施の形態の回転電機によれば、磁性楔使用による漏れ磁束の増加を抑えて、鉄心表面部における磁束分布の脈動を効果的に緩和できるため、高効率化を実現することができる。
本実施形態の回転電機のスロット形状は、半閉スロット(若しくはセミクローズドスロット)であっても良いが、好ましくは開放スロット(若しくは開口スロット、オープンスロット)である。この時、高調波損失を大幅に低減でき好ましい。
本実施形態の回転電機は、鉄道、電気自動車、ハイブリッドカーなどの交通システム、エレベータ、空調機などの社会システム、ロボット、ポンプ、圧縮機、送風機などの産業システム、火力発電機、水力発電機、風力発電機、原子力発電機、地熱発電機などのエネルギーシステム、洗濯機などの家電に応用でき、システムの高効率化を図ることができる。特に産業用の大容量機では、スロット形状に開放スロットが一般的に採用されるため、第1の実施形態の磁性楔を備えることが好ましい。また、鉄道用の主電動機では、高電圧と振動に耐える必要性から型巻コイルを使用しており、スロット形状に開放スロットが採用されるため、第1の実施形態の磁性楔を備えることが好ましい。
特に鉄道では、鉄道走行時の消費電力量の約半分を回転電機の損失が占めているため、回転電機の損失低減による高効率化の効果が大きい。また、電気自動車、ハイブリッドカーでは、第1の実施形態の磁性楔を用いることによって主電動機の効率を向上できるため、航続距離を伸ばすことができる。
本発明のいくつかの実施形態及び実施例を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態及び実施例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態や実施例及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
なお、上記の実施形態を、以下の技術案にまとめることができる。
技術案1
空隙面を介して固定子と回転子が対向してなる回転電機に用いられる磁性楔であって、
前記磁性楔は、
第1部材と、
前記第1部材と前記空隙面の間に設けられる第2部材からなり、
前記第1部材は、Fe、Co及びNiからなる群から選ばれる少なくとも1つの第1元素を含む第1磁性金属相を有し、
前記第2部材は、Fe、Co及びNiからなる群から選ばれる少なくとも1つの第2元素を含む第2磁性金属相を有し、前記第1部材に対する前記第1磁性金属相の割合が、前記第2部材に対する前記第2磁性金属相の割合よりも大きい、磁性楔。
技術案2
前記第2部材は前記第1部材より電気抵抗率が高く、前記第1部材は前記第2部材より曲げ強度が高く、飽和磁化が高い技術案1記載の磁性楔。
技術案3
前記第1部材の電気抵抗率は10-8Ωm以上10-4Ωm未満である技術案1又は技術案2記載の磁性楔。
技術案4
前記第1部材の曲げ強度は200MPa以上である技術案1から技術案3のいずれか1項に記載の磁性楔。
技術案5
前記第1部材の飽和磁化は1.7T以上である技術案1から技術案4のいずれか1項に記載の磁性楔。
技術案6
前記空隙面に垂直な方向における前記第1部材の膜厚は、前記空隙面に垂直な方向における前記磁性楔の膜厚の30%以上70%以下である、技術案1から技術案5のいずれか1項に記載の磁性楔。
技術案7
前記第1部材は第1焼結部であり、前記第2部材は圧粉部である、技術案1から技術案6のいずれか1項に記載の磁性楔。
技術案8
前記第2部材は、複数の扁平磁性金属粒子と介在相とを備え、
前記複数の扁平磁性金属粒子は、平均厚さが10nm以上100μm以下であり、扁平面を有し、前記厚さに対する前記扁平面内の平均長さの比の平均値が5以上10000以下であり、前記介在相は、前記複数の扁平磁性金属粒子間に存在し、酸素(O)、炭素(C)、窒素(N)及びフッ素(F)からなる群から選ばれる少なくとも1つの第3元素を含む技術案1から技術案7のいずれか1項に記載の磁性楔。
技術案9
前記第2部材は、前記扁平面が、前記第2部材が有する平面に対して平行に配向し、前記平面内における方向による保磁力差を有する技術案8に記載の磁性楔。
技術案10
前記第1部材は、TaとCを含む析出粒子を有する技術案1から技術案9のいずれか1項に記載の磁性楔。
技術案11
技術案1ないし技術案10いずれか1項に記載の磁性楔を用いた回転電機。
2 磁性体(扁平磁性金属粒子)
2a 第1の面
2b 第2の面
10 析出粒子
20 介在相
60 第1焼結部(第1部材)
60a 第1部材
60b 第1部材
60c 第1部材
70 圧粉部(第2部材)
72 第1凹部
80 第2焼結部(第3部材)
82 第2凹部
100 磁性楔
110 磁性楔
120 磁性楔
200 回転電機
200a ラジアルギャップ型回転電機
200b アキシャルギャップ型回転電機
210 回転子
220 固定子鉄心
230 コイル
240 空隙面
250 鉄心ティース
260 鉄心スロット
270 固定子
280 軸
290 可動子
RP 基準面

Claims (11)

  1. 空隙面を介して固定子と回転子が対向してなる回転電機に用いられる磁性楔であって、
    前記磁性楔は、
    第1部材と、
    前記第1部材と前記空隙面の間に設けられる第2部材からなり、
    前記第1部材は、Fe、Co及びNiからなる群から選ばれる少なくとも1つの第1元素を含む第1磁性金属相を有し、
    前記第2部材は、Fe、Co及びNiからなる群から選ばれる少なくとも1つの第2元素を含む第2磁性金属相を有し、
    前記第1部材に対する前記第1磁性金属相の割合が、前記第2部材に対する前記第2磁性金属相の割合よりも大きい磁性楔。
  2. 前記第2部材は前記第1部材より電気抵抗率が高く、前記第1部材は前記第2部材より曲げ強度が高く、飽和磁化が高い請求項1記載の磁性楔。
  3. 前記第1部材の電気抵抗率は10-8Ωm以上10-4Ωm未満である請求項1又は請求項2記載の磁性楔。
  4. 前記第1部材の曲げ強度は200MPa以上である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の磁性楔。
  5. 前記第1部材の飽和磁化は1.7T以上である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の磁性楔。
  6. 前記空隙面に垂直な方向における前記第1部材の膜厚は、前記空隙面に垂直な方向における前記磁性楔の膜厚の30%以上70%以下である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の磁性楔。
  7. 前記第1部材は第1焼結部であり、前記第2部材は圧粉部である、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の磁性楔。
  8. 前記第2部材は、複数の扁平磁性金属粒子と介在相とを備え、
    前記複数の扁平磁性金属粒子は、平均厚さが10nm以上100μm以下であり、扁平面を有し、前記厚さに対する前記扁平面内の平均長さの比の平均値が5以上10000以下であり、前記介在相は、前記複数の扁平磁性金属粒子間に存在し、酸素(O)、炭素(C)、窒素(N)及びフッ素(F)からなる群から選ばれる少なくとも1つの第3元素を含む請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の磁性楔。
  9. 前記第2部材は、前記扁平面が、前記第2部材が有する平面に対して平行に配向し、前記平面内における方向による保磁力差を有する請求項8に記載の磁性楔。
  10. 前記第1部材は、TaとCを含む析出粒子を有する請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の磁性楔。
  11. 請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の磁性楔を用いた回転電機。
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