JP2023127721A - 熱間加工用合金工具鋼 - Google Patents

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Abstract

【課題】靱性及び軟化抵抗性の両方に優れた熱間加工用合金工具鋼の提供。【解決手段】熱間加工用合金工具鋼は、C、Si、Mn、Ni、Cr、Mo、V、Nb及びNを含有する。残部は、Fe及び不純物である。この合金工具鋼の金属組織は、マルテンサイト又はベイナイトである。この金属組織は、その径が2.0μm以上6.0μm以下であるブロックを含む。この合金工具鋼の下記数式で算出される焼入時固溶元素パラメータQは、1.12以上である。Q = (Cr1 + Mo1 + V1 + Nb1) / (Cr2 + Mo2 + V2 + Nb2)この数式において、(Cr1+Mo1+V1+Nb1)は焼入れ温度においてオーステナイトに固溶するCr、Mo、V及びNbの合計量を表し、(Cr2+Mo2+V2+Nb2)は800℃においてオーステナイトに固溶するCr、Mo、V及びNbの合計量を表す。【選択図】なし

Description

本明細書は、熱間鍛造等の熱間塑性加工に使用される工具に適した、合金鋼を開示する。
熱間金型用合金鋼として、JISに規格されたSKD61が使用されている。SKD61は、高温強度に優れている。熱間鍛造用の型に、JISに規格されたSKT4も使用されている。SKT4は、靱性に優れている。
特開2011-195917公報には、組成が改良された熱間工具鋼が開示されている。この工具鋼では、高温強度と靱性との両立が、意図されている。
特開2006-322071公報には、改良された金属組織を有する合金鋼が開示されている。この合金鋼の硬度は、大きい。
特開2011-195917公報 特開2006-322071公報
従来の熱間鍛造型用の合金は、軟化抵抗性に劣る。この合金は、高温環境下での継続的な使用には、適していない。
本出願人の意図するところは、靱性及び軟化抵抗性の両方に優れた熱間加工用合金工具鋼の提供にある。
本実施形態に係る熱間加工用合金工具鋼は、
C:0.40質量%以上0.60質量%以下、
Si:0.10質量%以上0.50質量%以下、
Mn:0.20質量%以上1.10質量%以下、
Ni:0.20質量%以上2.10質量%以下、
Cr:0.50質量%以上2.00質量%以下、
Mo:0.10質量%以上0.60質量%以下、
V及び/又はNb:合計で0.05質量%以上0.30質量%以下、
並びに
N:0.020質量%以下
を含有する。残部は、Fe及び不純物である。この合金工具鋼の金属組織は、マルテンサイト又はベイナイトである。この金属組織は、その径が2.0μm以上6.0μm以下であるブロックを含む。この合金工具鋼の、下記数式で算出される焼入時固溶元素パラメータQは、1.12以上である。
Q = (Cr1 + Mo1 + V1 + Nb1) / (Cr2 + Mo2 + V2 + Nb2)
この数式において、
Cr1は焼入れ温度においてオーステナイトに固溶するCrの量(質量%)を表し、
Mo1は焼入れ温度においてオーステナイトに固溶するMoの量(質量%)を表し、
V1は焼入れ温度においてオーステナイトに固溶するVの量(質量%)を表し、
Nb1は焼入れ温度においてオーステナイトに固溶するNbの量(質量%)を表し、
Cr2は800℃においてオーステナイトに固溶するCrの量(質量%)を表し、
Mo2は800℃においてオーステナイトに固溶するMoの量(質量%)を表し、
V2は800℃においてオーステナイトに固溶するVの量(質量%)を表し、
Nb2は800℃においてオーステナイトに固溶するNbの量(質量%)を表す。
この熱間加工用合金工具鋼は、靱性及び軟化抵抗性に優れている。その材質がこの工具鋼である型は、高温環境下での継続的な使用に、適している。
本実施形態に係る熱間加工用合金工具鋼は、後に詳説される焼入れ及び焼戻しを経て得られる。この合金工具鋼は、
C:0.40質量%以上0.60質量%以下、
Si:0.10質量%以上0.50質量%以下、
Mn:0.20質量%以上1.10質量%以下、
Ni:0.20質量%以上2.10質量%以下、
Cr:0.50質量%以上2.00質量%以下、
Mo:0.10質量%以上0.60質量%以下、
V及び/又はNb:合計で0.05質量%以上0.30質量%以下、
並びに
N:0.020質量%以下
を含有している。これらの元素の残部は、Fe及び不純物(不可避的不純物)である。
この合金工具鋼では、合金元素の量は比較的少ない。従ってこの合金工具鋼は、靱性に優れている。後に詳説されるように、この合金工具鋼では、金属組織が適正であり、かつ焼入時固溶元素パラメータQが適正である。従ってこの合金工具鋼は、合金元素の量が多くないにもかかわらず、軟化抵抗性に優れている。以下、それぞれの元素が、詳説される。
[炭素(C)]
Cは、合金工具鋼の焼入れ性、硬さ及び強さに寄与する。この観点から、Cの含有率は0.40質量%以上が好ましく、0.45質量%以上がより好ましく、0.49質量%以上が特に好ましい。過剰のCは、合金工具鋼の靱性を阻害する。靱性の観点から、Cの含有率は0.60質量%以下が好ましく、0.57質量%以下がより好ましく、0.55質量%以下が特に好ましい。
[ケイ素(Si)]
Siは、合金工具鋼の焼入れ性及び硬さに寄与する。Siはさらに、合金の溶製時の脱酸に寄与しうる。これらの観点から、Siの含有率は0.10質量%以上が好ましく、0.14質量%以上がより好ましく、0.15質量%以上が特に好ましい。過剰のSiは、合金工具鋼の靱性を阻害する。靱性の観点から、Siの含有率は0.50質量%以下が好ましく、0.40質量%以下がより好ましく、0.34質量%以下が特に好ましい。
[マンガン(Mn)]
Mnは、合金工具鋼の焼入れ性及び硬さに寄与する。Mnはさらに、焼入れ時にマトリクスに固溶し、焼戻し時に炭化物の析出を促す。これらの観点から、Mnの含有率は0.20質量%以上が好ましく、0.30質量%以上がより好ましく、0.50質量%以上が特に好ましい。過剰のMnは、合金工具鋼の靱性を阻害する。靱性の観点から、Mnの含有率は1.10質量%以下が好ましく、1.05質量%以下がより好ましく、1.00質量%以下が特に好ましい。
[ニッケル(Ni)]
Niは、焼入れの加熱時にマトリクスに置換固溶し、合金工具鋼の焼入れ性に寄与する。Niはさらに、合金工具鋼の靱性に寄与する。これらの観点から、Niの含有率は0.20質量%以上が好ましく、0.59質量%以上がより好ましく、1.00質量%以上が特に好ましい。過剰のNiは、Ms点の過度の低下に起因する双晶を招来し、合金工具鋼の靱性を阻害する。靱性の観点から、Niの含有率は2.10質量%以下が好ましく、1.94質量%以下がより好ましく、1.61質量%以下が特に好ましい。
[クロム(Cr)]
Crは、合金工具鋼の焼き入れ性に寄与する。Crはさらに、遷移金属Mの二次炭化物(M2C、MC等)に固溶し、これら二次炭化物の析出を促す。これらの観点から、Crの含有率は0.50質量%以上が好ましく、1.10質量%以上がより好ましく、1.50質量%以上が特に好ましい。過剰のCrは、焼入れ後の未固溶炭化物を招来し、合金工具鋼の靱性を阻害する。靱性の観点から、Crの含有率は2.00質量%以下が好ましく、1.95質量%以下がより好ましく、1.90質量%以下が特に好ましい。
[モリブデン(Mo)]
Moは、合金工具鋼の焼き入れ性に寄与する。Moはさらに、遷移金属Mの二次炭化物(M2C、MC等)に固溶し、これら二次炭化物の析出を促す。これらの観点から、Moの含有率は0.10質量%以上が好ましく、0.17質量%以上がより好ましく、0.33質量%以上が特に好ましい。過剰のMoは、焼入れ後の未固溶炭化物を招来し、合金工具鋼の靱性を阻害する。靱性の観点から、Moの含有率は0.60質量%以下が好ましく、0.55質量%以下がより好ましく、0.50質量%以下が特に好ましい。
[バナジウム(V)]
Vは、炭化物を析出させうる。Vは特に、焼戻し時に二次炭化物VCとして析出する。この観点から、Vの含有率は0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.10質量%以上が特に好ましい。過剰のVは、焼入れ後の未固溶炭化物を招来し、合金工具鋼の靱性を阻害する。靱性の観点から、Vの含有率は0.30質量%以下が好ましく、0.25質量%以下がより好ましく、0.20質量%以下が特に好ましい。本実施形態の合金工具鋼は、V及びNbのいずれか一方又は両方を含む。この合金工具鋼において、Vは必須の元素ではない。従って、Vの含有率が実質的にゼロであってもよい。換言すれば、Vの含有率が、検出限界値未満であってもよい。
[ニオブ(Nb)]
Nbは、炭化物を析出させうる。Nbは特に、焼戻し時に二次炭化物NbCとして析出する。この観点から、Nbの含有率は0.01質量%以上が好ましく、0.02質量%以上がより好ましく、0.03質量%以上が特に好ましい。過剰のNbは、焼入れ後の未固溶炭化物を招来し、合金工具鋼の靱性を阻害する。靱性の観点から、Nbの含有率は0.30質量%以下が好ましく、0.15質量%以下がより好ましく、0.08質量%以下が特に好ましい。前述の通り、本実施形態の合金工具鋼は、V及びNbのいずれか一方又は両方を含む。この合金工具鋼において、Nbは必須の元素ではない。従って、Nbの含有率が実質的にゼロであってもよい。換言すれば、Nbの含有率が、検出限界値未満であってもよい。
[V、Nb]
前述の通り、本実施形態の合金工具鋼は、V及びNbのいずれか一方又は両方を含む。二次炭化物の析出の観点から、V及びNbの合計含有率は0.05質量%以上が好ましく、0.10質量%以上がより好ましく、0.12質量%以上が特に好ましい。靱性の観点から、この合計含有率は0.30質量%以下が好ましく、0.27質量%以下がより好ましく、0.24質量%以下が特に好ましい。
[窒素(N)]
Nは、V又はNbと結合し、窒化物又は炭窒化物を析出させうる。この窒化物及び炭窒化物は、合金工具鋼の靱性に寄与しうる。これらの観点から、Nの含有率は0.001質量%以上が好ましく、0.002質量%以上がより好ましく、0.003質量%以上が特に好ましい。窒化物及び炭窒化物は、焼入れ時にマトリクスに固溶せず、残存しやすい。窒化物及び炭窒化物が過剰である合金工具鋼では、後述される固溶元素パラメータQが小さい。この合金工具鋼では、焼戻し後の二次炭化物の量が、不十分である。この合金工具鋼は、軟化抵抗性に劣る。軟化抵抗性の観点から、Nの含有率は0.020質量%以下が好ましく、0.015質量%以下がより好ましく、0.010質量%以下が特に好ましい。この合金工具鋼において、Nは必須の元素ではない。従って、Nの含有率が実質的にゼロであってもよい。換言すれば、Nの含有率が、検出限界値未満であってもよい。
[焼入時固溶元素パラメータQ]
本明細書では、下記の数式により、焼入時固溶元素パラメータQが算出される。
Q = (Cr1 + Mo1 + V1 + Nb1) / (Cr2 + Mo2 + V2 + Nb2)
Cr1:焼入れ温度においてオーステナイトに固溶するCrの量(質量%)
Mo1:焼入れ温度においてオーステナイトに固溶するMoの量(質量%)
V1:焼入れ温度においてオーステナイトに固溶するVの量(質量%)
Nb1:焼入れ温度においてオーステナイトに固溶するNbの量(質量%)
Cr2:800℃においてオーステナイトに固溶するCrの量(質量%)
Mo2:800℃においてオーステナイトに固溶するMoの量(質量%)
V2:800℃においてオーステナイトに固溶するVの量(質量%)
Nb2:800℃においてオーステナイトに固溶するNbの量(質量%)
上記数式において(Cr1+Mo1+V1+Nb1)は、この合金工具鋼に施された焼入れ温度においてオーステナイト(FCC_A1)に固溶するCr、Mo、V及びNbの合計量(質量%)を、表す。上記数式において(Cr2+Mo2+V2+Nb2)は、800℃においてオーステナイトに固溶するCr、Mo、V及びNbの合計量(質量%)を、表す。Nbの含有率が0.01質量%に満たない合金工具鋼における、固溶元素パラメータQの算出においては、上記数式中のNb1及びNb2に、ゼロが代入される。
この固溶元素パラメータQは、データベース「TCFE10」が用いられ、ソフトウェア「Thermo-calc」によって算出される。Thermo-calcは、Thermo-Calc Software AB社が提供する、統合型熱力学計算ソフトウェアである。このソフトウェアにより、熱力学平衡計算がなされる。計算の条件は、以下の通りである。
モード:グラフィカル
圧力:1×10Pa
トータルサイズ:1mol
元素を選択した場合に自動的に選択される全ての相が考慮されて、計算がなされる。
合金工具鋼の固溶元素パラメータQは、1.12以上が好ましい。固溶元素パラメータQが1.12以上である合金工具鋼では、焼戻し後の二次炭化物の量が多い。この二次炭化物は、合金工具鋼が高温環境で使用されたときの、転位の回復を抑制する。この合金工具は、軟化抵抗性に優れる。軟化抵抗性の観点から、このパラメータQは1.13以上がより好ましく、1.14以上が特に好ましい。軟化抵抗性の観点からは、このパラメータQは、大きいほど好ましい。現実の合金工具鋼において達成されうるパラメータQは、1.70以下である。
固溶元素パラメータQが1.12以上である合金工具鋼を得る手段として、
(1)Cr、Mo、V又はNbを、比較的多く添加すること、
(2)Nの含有率を、比較的少なくすること、
及び
(3)焼入れ温度を、比較的高くすること
が、例示される。
前述の通り、この合金工具鋼は、焼入れ及び焼戻しを経て得られる。この合金工具鋼の金属組織は、マルテンサイト又はベイナイトである。この金属組織を有する合金工具鋼は、靱性及び軟化抵抗性に優れる。例えば焼鈍で得られるフェライト組織を有する合金鋼に比べると、本発明に係る合金工具鋼では、靱性及び軟化抵抗性がより高い次元で両立されうる。後述されるブロックの径が大きく、従ってより軟化抵抗性に優れるとの観点から、金属組織がベイナイトである合金工具鋼が好ましい。
マルテンサイト及びベイナイトは、旧オーステナイト粒内に、下部組織として、パケット、ブロック及びラスを有する。パケットは、同じ晶癖面を有するラスの集団である。このパケットにおける方位差は、15°以上である。ブロックは、パケットを分断する組織であり、同じ結晶方位を有するラスの集団である。このブロックの方位差は、15°以上である。ラスは、マルテンサイトの最も小さな下部組織と考えられている。ラス同士の方位差、は2°程度である。
本発明者は、ブロックの径が大きい合金工具鋼において転位の回復が抑制されることを、見出した。この合金工具鋼は、軟化抵抗性に優れる。軟化抵抗性の観点から、ブロックの径は2.0μm以上が好ましく、2.2μm以上がより好ましく、2.4μm以上が特に好ましい。靱性の観点から、ブロックの径は6.0μm以下が好ましく、5.7μm以下がより好ましく、5.5μm以下が特に好ましい。
ブロックの径は、FESEM-EBSP法により得られるαFeの方位マップから、測定される。測定条件は、以下の通りである。
視野:50μm×50μm
ピッチ:0.05μm
ソフトウェア:OIM-Analysis(TSLソリューションズ)
隣接する結晶との方位差が15°以上で囲まれる領域をブロックの一つとして扱い、求めたブロックの面積から円相当径を求めた。求めた円相当径の面積荷重平均した値が、ブロック径と定義される。
ブロックの径が2.0μm以上6.0μm以下である合金工具鋼を得る手段として、
(1)焼入れ温度を、比較的高くすること、
(2)焼入れ時の保持時間を、比較的長くすること、
及び
(3)V及びNbの添加量を適正とすること
が、例示される。
[製造方法]
以下、この合金工具鋼の製造方法の一例が説明される。この製造方法では、まず、前述の組成を有する母材が溶製によって得られる。この母材に塑性加工が施され、中間体が得られる。この中間体が、焼入れに供される。焼入れの温度は、通常は、850℃以上1050℃以下である。焼入れでは、中間体が急冷される。急冷により、中間体で変態が生じる。この中間体に、焼戻しが施される。焼戻しの温度は、通常は、550℃以上700℃以下である。この焼戻しにより、その材質が合金工具鋼である製品が得られる。この合金工具鋼の金属組織は、マルテンサイト又はベイナイトである。
[合金工具鋼の用途]
この合金工具鋼の典型的な用途は、熱間塑性加工に使用される工具である。特に、熱間鍛造用の型に、この合金工具鋼は適している。熱間鍛造用の型として、ハンマー型及びプレス型が例示される。
[熱間鍛造用型]
前述の通り、本明細書は、熱間鍛造用型にも向けられる。この熱間鍛造用型の材質は、合金工具鋼である。この合金工具鋼は、
C:0.40質量%以上0.60質量%以下、
Si:0.10質量%以上0.50質量%以下、
Mn:0.20質量%以上1.10質量%以下、
Ni:0.20質量%以上2.10質量%以下、
Cr:0.50質量%以上2.00質量%以下、
Mo:0.10質量%以上0.60質量%以下、
V及び/又はNb:合計で0.05質量%以上0.30質量%以下、
並びに
N:0.020質量%以下
を含有する。残部は、Fe及び不純物である。この合金工具鋼の金属組織は、マルテンサイト又はベイナイトである。この金属組織は、その径が2.0μm以上6.0μm以下であるブロックを含む。この合金工具鋼の、焼入時固溶元素パラメータQは、1.12以上である。この熱間鍛造用型は、靱性及び軟化抵抗性に優れる。この熱間鍛造用型は、長寿命である。
以下、実施例に係る熱間加工用合金工具鋼の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本明細書で開示された範囲が限定的に解釈されるべきではない。
[実施例1]
原料を真空溶解炉に投入して溶融し、直径が190mmである鋳型に鋳込み、インゴット得た。このインゴットを1100℃に加熱し、鍛伸を施して、サイズが15mm×15mmである角材を得た。この角材を、900℃の温度下に30分間保持した後、油冷による焼入れを施した。この角材を所定温度まで加熱し、空冷による焼戻しを施して、実施例1に係る熱間加工用合金工具鋼を得た。焼戻し後の角材の硬さが39HRCから41HRCとなるように、焼戻し温度を調整した。この合金工具鋼の組成が、下記の表1に示されている。
[実施例2-6及び比較例1-10]
組成を表1に示される通りとし、焼入れ温度を800℃以上1250℃の範囲内で調整した他は実施例1と同様にして、実施例2-6及び比較例1-10の熱間加工用合金工具鋼を得た。
[軟化抵抗試験]
前述の角材(焼戻し後)を、620℃の温度下に100時間保持した。この角材を、空冷した。この角材の硬さを測定し、下記の基準に従って格付けした。
A:硬さが26HRC以上である。
B:硬さが26HRC未満である。
この結果が、下記の表2に示されている。
[転位密度]
前述の軟化抵抗試験の後の角材に、下記の条件にて、X線回折測定を実施した。
X線源:Cu-Kα線
計数時間:2秒
ステップサイズ:0.02°
測定範囲2θ:35°から140°
得られたマルテンサイトからの回折ピークを用いて、Modified Williamson-Hall/Modified Warren-Averbach法による転位密度の定量を実施した。装置起因のピーク広がりは、LaB6を用いて補正した。この転位密度を、下記の基準に従って格付けした。
A:転位密度が1.0×1014以上である。
B:転位密度が1.0×1014未満である。
この結果が、下記の表2に示されている。
[靱性]
前述の角材(焼戻し後)に、「JIS Z 2242:2005」の規定に準拠してシャルピー衝撃試験を施し、衝撃値を測定した。条件は、下記の通りである。
試験片:JIS-3号 縦:10mm、横:10mm、長さ:50mm
ノッチ:Uノッチ
温度:常温
この衝撃値を、下記の基準に従って格付けした。
A:衝撃値が50J/cm以上である。
B:衝撃値が50J/cm以下である。
この結果が、下記の表2に示されている。
Figure 2023127721000001
表1に示されたそれぞれの合金の残部は、Fe及び不可避的不純物である。
Figure 2023127721000002
表2に示される通り、各実施例に係る熱間加工用合金工具鋼は、靱性及び軟化抵抗性に優れている。これらの評価結果から、この合金工具鋼の優位性は明らかである。
以上説明された熱間加工用合金工具鋼は、高温環境下にて使用される種々の金属製品に、適している。

Claims (1)

  1. C:0.40質量%以上0.60質量%以下、
    Si:0.10質量%以上0.50質量%以下、
    Mn:0.20質量%以上1.10質量%以下、
    Ni:0.20質量%以上2.10質量%以下、
    Cr:0.50質量%以上2.00質量%以下、
    Mo:0.10質量%以上0.60質量%以下、
    V及び/又はNb:合計で0.05質量%以上0.30質量%以下、
    並びに
    N:0.020質量%以下
    を含有しており、
    残部がFe及び不純物であり、
    その金属組織がマルテンサイト又はベイナイトであり、
    上記金属組織が、その径が2.0μm以上6.0μm以下であるブロックを含んでおり、
    下記数式で算出される焼入時固溶元素パラメータQが1.12以上である、熱間加工用合金工具鋼。
    Q = (Cr1 + Mo1 + V1 + Nb1) / (Cr2 + Mo2 + V2 + Nb2)
    (この数式において、
    Cr1は焼入れ温度においてオーステナイトに固溶するCrの量(質量%)を表し、
    Mo1は焼入れ温度においてオーステナイトに固溶するMoの量(質量%)を表し、
    V1は焼入れ温度においてオーステナイトに固溶するVの量(質量%)を表し、
    Nb1は焼入れ温度においてオーステナイトに固溶するNbの量(質量%)を表し、
    Cr2は800℃においてオーステナイトに固溶するCrの量(質量%)を表し、
    Mo2は800℃においてオーステナイトに固溶するMoの量(質量%)を表し、
    V2は800℃においてオーステナイトに固溶するVの量(質量%)を表し、
    Nb2は800℃においてオーステナイトに固溶するNbの量(質量%)を表す。)
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