JP2023124061A - 車両の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】車輪がスリップしている状態でガレージシフトが実施される場合であっても、車両本来の走破性能を発揮させることが可能な車両の制御装置を提供する。【解決手段】エンジンと、前進走行ポジション(Dレンジ)、および、後進走行ポジション(Rレンジ)を手動操作で切り替えて設定することが可能な自動変速機とを備え、前記前進走行ポジションと前記後進走行ポジションとの間の切り替え操作が繰り返されるガレージシフトが行われる場合に、前記自動変速機で伝達する伝達トルクを制限するトルク制限制御を実行する車両の制御装置において、駆動輪のスリップが発生している状態で前記ガレージシフトが行われる場合に、前記トルク制限制御による前記伝達トルクの制限を解除または緩和する(ステップS3,S4,S5)。【選択図】図2
Description
この発明は、自動変速機を搭載した車両の制御装置に関し、特に、運転者のシフト操作によって前進および後進を繰り返すシフト操作(ガレージシフト)が行われる状況に対応して車両を制御する車両の制御装置に関するものである。
特許文献1には、ガレージシフトでの前後進切り替え時に、摩擦係合要素における摩擦材の過熱を抑制することを目的とした車両の制御装置が記載されている。この特許文献1に記載された車両の制御装置は、エンジンと、遊星歯車装置および摩擦係合要素(クラッチ、ブレーキ)を有する前後進切替機構とを備えた車両を制御対象にしている。そして、この特許文献1に記載された車両の制御装置では、前進走行レンジ(Dレンジ)と後進走行レンジ(Rレンジ)との間でシフト装置を切り替え操作する、いわゆるガレージシフトが行われる際に、エンジンのスロットル開度を上限値以下にしてエンジンの出力トルクを抑制するスロットル閉じ制御が実行される。それとともに、この特許文献1に記載された車両の制御装置は、摩擦係合要素における前後の回転数の差の絶対値が第1所定値以下になり、かつ、摩擦係合要素における前後の回転数の和の絶対値が第2所定値以下となった場合に、上記のスロットル開度の上限値をアイドリング相当値である第1開度から、その第1開度よりも大きく、かつ、運転者の操作量に応じた値よりも小さい第2開度に変更する復帰制御を実行するように構成されている。
従来、自動変速機や前後進切替機構を搭載した車両では、特許文献1に記載された車両の制御装置のように、ガレージシフトの際に、上記のようなスロットル閉じ制御によってエンジンの出力トルクを制限することにより、摩擦材の過熱を防止または抑制して、自動変速機や前後進切替機構を保護している。一方で、例えば、泥濘路や砂地あるいは凹凸の激しい悪路で車輪がスリップし、車両がスタックしてしまった場合には、前進と後進とを繰り返すことによって車両を前後に揺動させてスタックからの脱出を図る、いわゆる“揉み出し”と称されるような運転操作が行われる場合がある。すなわち、車輪がスリップしている状態で、上記のようなガレージシフトが行われることが想定される。そのような車輪のスリップが発生している状態でガレージシフトが行われた場合に、上記のようなスロットル閉じ制御が実行されると、スタック状態から脱出するために大きな駆動力が必要になるにもかかわらず、エンジンの出力トルクが制限されてしまう。その結果、車両の走破性能が低下してしまうおそれがある。
この発明は上記の技術的課題に着目して考え出されたものであり、車輪のスリップが発生している状態でガレージシフトが行われる場合であっても、車両の走破性能が低下してしまうことを回避または抑制することが可能な車両の制御装置を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、この発明は、駆動輪を駆動するトルクを出力する駆動力源と、前記駆動力源の出力軸の回転数を変化させ、かつ、前記駆動力源と前記駆動輪との間で前記トルクを伝達するとともに、前進走行ポジションおよび後進走行ポジションを運転者が手動操作で切り替えて設定することが可能な自動変速機とを備え、前記前進走行ポジションと前記後進走行ポジションとの間の切り替え操作が繰り返されるガレージシフトが行われる場合に、前記自動変速機で伝達する伝達トルクを制限するトルク制限制御を実行する車両の制御装置において、前記駆動力源および前記自動変速機をそれぞれ制御するコントローラを備え、前記コントローラは、前記駆動輪のスリップが発生している状態で前記ガレージシフトが行われる場合に、前記トルク制限制御による前記伝達トルクの制限を解除する、または、前記トルク制限制御による前記伝達トルクの制限を緩和することを特徴とするものである。
なお、この発明における前記トルク制限制御は、前記駆動力源の出力トルクの大きさに制限を設けて、前記伝達トルクを制限する制御を含んでいてもよく、この発明における前記コントローラは、前記出力トルクの大きさに対する制限を解除する、または、前記出力トルクの大きさに対する制限を緩和することにより、前記伝達トルクの制限を解除する、または、前記伝達トルクの制限を緩和するように構成してもよい。
また、この発明における前記トルク制限制御は、前記自動変速機の変速動作に制限を設けて、前記伝達トルクを制限する制御を含んでいてもよく、この発明における前記コントローラは、前記自動変速機の変速動作に対する制限を解除する、または、前記自動変速機の変速動作に対する制限を緩和することにより、前記伝達トルクの制限を解除する、または、前記伝達トルクの制限を緩和するように構成してもよい。
この発明の車両の制御装置は、前進走行ポジション(例えば、Dレンジ)と後進走行ポジション(Rレンジ)との間で自動変速機のシフト位置の切り替えを繰り返す、いわゆるガレージシフトが行われる場合に、自動変速機内のクラッチやブレーキ等を保護するため、自動変速機の伝達トルクを制限するトルク制限制御が実行される。例えば、駆動力源の出力トルクの大きさに制限を設けることにより、自動変速機の伝達トルクが制限される。あるいは、自動変速機の変速動作に制限を設けることにより、自動変速機の伝達トルクが制限される。そして、この発明の車両の制御装置では、上記のようなガレージシフトが、車両の駆動輪にスリップが生じている状況で行われる場合には、トルク制限制御による自動変速機の伝達トルクの制限が解除される。あるいは、トルク制限制御による自動変速機の伝達トルクの制限が緩和される。例えば、駆動力源の出力トルクの大きさに対する制限を解除することにより、自動変速機の伝達トルクの制限が解除される。あるいは、駆動力源の出力トルクの大きさに対する制限を緩和することにより、自動変速機の伝達トルクの制限が緩和される。そのため、例えば、泥濘路や砂地あるいは悪路で車輪がスリップし、車両がスタックしてしまったような状況から脱出するためにガレージシフトが行われる場合に、トルク制限制御による自動変速機の伝達トルクの制限を解除または緩和して、スタック状態から脱出するために必要な大きな駆動力を発生させることができる。したがって、この発明の車両の制御装置によれば、車輪がスリップしている状態でガレージシフトが実施される場合であっても、車両の走破性能が低下してしまうことを回避し、車両本来の走破性能を発揮させることができる。
この発明の実施形態を、図を参照して説明する。なお、以下に示す実施形態は、この発明を具体化した場合の一例に過ぎず、この発明を限定するものではない。
この発明の実施形態で制御対象にする車両は、駆動力源と、駆動力源の出力トルクが伝達されて駆動力を発生する駆動輪と、駆動力源の出力軸の回転数を変化させ、かつ、駆動力源と駆動輪との間でトルクを伝達する自動変速機機と、駆動力源および自動変速機の動作を制御するコントローラと、を備えている。そのような車両の構成(駆動系統および制御系統)の一例を、図1に示してある。
図1に示す車両Veは、主要な構成要素として、駆動力源1、駆動輪2、自動変速機(AT)3、シフト装置4、検出部5、および、コントローラ(ECU)6を備えている。
駆動力源1は、駆動輪2を駆動するトルク、すなわち、車両Veの駆動力を発生させるためのトルクを出力する。図2に示す例では、駆動力源1として、エンジン(ENG)7が設けられている。エンジン7は、例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関であり、出力の調整、ならびに、始動および停止などの作動状態が電気的に制御するように構成される。ガソリンエンジンであれば、スロットルバルブの開度、燃料の供給量または噴射量、点火の実行および停止、ならびに、点火時期などが電気的に制御される。また、ディーゼルエンジンであれば、燃料の噴射量、燃料の噴射時期、あるいは、(EGRシステムにおける)スロットルバルブの開度などが電気的に制御される。なお、この発明の実施形態における駆動力源1は、上記のようなエンジン7の他に、例えば、エンジン7およびモータ(モータジェネレータ)と、後述する自動変速機3とを組み合わせたハイブリッド駆動ユニット(図示せず)、あるいは、モータと、後述する自動変速機3とを組み合わせたモータ駆動ユニット(図示せず)であってもよい。この発明の実施形態における車両の制御装置では、そのようなハイブリッド駆動ユニットまたはモータ駆動ユニットを駆動力源1とする車両Veを制御の対象にすることもできる。
駆動輪2は、駆動力源1の出力トルクが伝達されることによって車両Veの駆動力を発生する車輪である。図2に示す例では、駆動輪2は、車両Veの後輪になっており、プロペラシャフト8、および、デファレンシャルギヤ9、ならびに、左右のドライブシャフト10を介して、後述する変速機3の出力軸3bに連結されている。すなわち、図2に示す例では、車両Veは、後輪を駆動輪2とし、その後輪で駆動力を発生する後輪駆動車両となっている。なお、この発明の実施形態における車両Veは、前輪を駆動輪2とし、その前輪で駆動力を発生する前輪駆動車両(図示せず)であってもよい。または、駆動力源1の出力トルクをトランスファ(図示せず)で前輪と後輪とに分配し、すなわち、前輪および後輪を駆動輪2とし、それら前輪および後輪で駆動力を発生する四輪駆動(もしくは全輪駆動)車両(図示せず)であってもよい。あるいは、エンジン7で前輪または後輪のいずれか一方を駆動し、前輪または後輪の他方をモータで駆動する四輪駆動(もしくは全輪駆動)のハイブリッド車両(図示せず)であってもよい。
自動変速機3は、駆動力源1と駆動輪2との間に設けられており、駆動力源1の出力軸(例えば、エンジン7の出力軸7a)の回転数を変化させる。それとともに、自動変速機3は、駆動力源1と駆動輪2との間で、駆動力源1の出力トルクを伝達する。図1に示す実施形態では、自動変速機3は、トルクコンバータ等(図示せず)を介して、エンジン7の出力側に連結されおり、エンジン7と駆動輪2との間で、エンジン7の出力トルクを駆動輪2側に伝達する。そして、自動変速機3は、入力軸3aの回転数に対する出力軸3bの回転数の比率、すなわち、変速比を適宜に変更できる装置であって、変速比の変更、すなわち、変速制御を自動制御する。具体的には、自動変速機3は、従来、一般的に用いられている車両用の変速機であり、例えば、複数の遊星歯車機構(図示せず)の間の動力伝達状態を油圧制御するステップ式(有段)の“自動変速機”である。あるいは、二系統のクラッチおよび常時噛み合い式の歯車機構を用いたいわゆる“デュアルクラッチトランスミッション”(DCT)のような“自動変速機”であってもよい。あるいは、前述の特許文献1に記載されているような“ベルト式無段変速機”(CVT)のように、油圧制御で動作させる“前後進切替機構”(図示せず)を備えた“自動変速機”であってもよい。
また、自動変速機3は、変速段(変速比)の変更、前後進段の切り替え、および、ニュートラル状態の設定等の変速動作を油圧制御によって行う。具体的には、自動変速機3の内部に構成された係合機構(図示せず)の動作を油圧制御する。例えば、自動変速機3の内部に設けられているクラッチおよびブレーキ(図示せず)の係合および解放の動作を油圧制御することにより、上記のような変速動作を行う。前述の特許文献1に記載されているような“ベルト式無段変速機”であれば、“前後進切替機構”の動作を油圧制御することにより、前後進段の切り替えが行われる。
シフト装置4は、例えば、シフトレバー(図示せず)や、シフトパドル(図示せず)などを有しており、運転者によって操作される。具体的には、シフト装置4は、運転者によって手動操作されて、自動変速機3のシフトポジションとして、少なくとも、前進走行ポジション(ドライブポジション、または、Dレンジ)、後進走行ポジション(リバースポジション、または、Rレンジ)、および、ニュートラルポジション(または、Nレンジ)を切り替えて設定する。
検出部5は、車両Veを制御する際に必要な各種のデータや情報を取得するための機器あるいは装置であり、例えば、電源部、マイクロコンピュータ、センサ、および、入出力インターフェース等を含む。特に、この発明の実施形態における検出部5は、駆動力源1(エンジン7)、および、自動変速機3をそれぞれ制御するための各種のデータや情報を検出する。具体的には、検出部5は、少なくとも、駆動輪2を含む全車輪の回転速度を検出する車輪速センサ5a、エンジン7の出力軸1aの回転数を検出するエンジン回転数センサ5b、自動変速機3の入力軸3a(または、入力軸3a側の回転部材)の回転数を検出する入力軸回転数センサ5c、自動変速機3の出力軸3b(または、出力軸3b側の回転部材)の回転数を検出する出力軸回転数センサ5d、自動変速機3の係合機構(クラッチ、ブレーキ)を制御するための係合油圧等を検出する油圧センサ5e、ならびに、自動変速機3の変速段およびシフト装置4の選択位置を検出するシフトポジションセンサ5fなどの各種センサを有している。その他に、検出部5は、駆動輪2のスリップ状態を検出または判定するためのカメラ(図示せず)や、車両Veの加速度を検出する加速度センサ(図示せず)等を有していてもよい。そして、検出部5は、後述するコントローラ6と電気的に接続されており、上記のような各種センサや機器・装置等の検出値または算出値に応じた電気信号を検出データとしてコントローラ6に出力する。
コントローラ6は、例えば、マイクロコンピュータを主体にして構成される電子制御装置であり、特に、この発明の実施形態におけるコントローラ6は、主に、駆動力源1(エンジン7)の動作、および、自動変速機3の動作をそれぞれ制御する。コントローラ6には、上記の検出部5で検出または算出された各種データが入力される。コントローラ6は、入力された各種データおよび予め記憶させられているデータや計算式等を使用して演算を行う。そして、コントローラ6は、その演算結果に基づく制御指令信号を出力し、上記のような、駆動力源1(エンジン7)の動作、および、自動変速機3の動作等をそれぞれ制御するように構成されている。なお、図1では一つのコントローラ6が設けられた例を示しているが、コントローラ6は、制御する装置や機器毎に、あるいは制御内容毎に、複数設けられていてもよい。
上記のように、この発明の実施形態における車両Veは、シフト装置4によって操作される自動変速機3を備えており、例えば、車両Veを所定のスペースに駐車する場合や、方向転換あるいは切り返し操作の際には、前進と後進とを繰り返す、いわゆるガレージシフトが行われる。前述したように、上記のような自動変速機3を搭載した車両Veや、“ベルト式無段変速機”における“前後進切替機構”等を搭載した“車両”では、ガレージシフトの際に、自動変速機3や“前後進切替機構”におけるクラッチやブレーキの摩擦材を保護するために、自動変速機3や“前後進切替機構”で伝達する伝達トルクを制限するトルク制限制御が実行される。例えば、前述の特許文献1に記載された車両の制御装置におけるスロットル閉じ制御のように、エンジン7の出力トルクを制限することにより、自動変速機3に入力されるトルク、すなわち、自動変速機3で伝達する伝達トルクが制限される。また、例えば、自動変速機3で設定可能な変速段を制限する、あるいは、自動変速機3の変速制御を行うための油圧を抑制するなど、自動変速機3の変速動作に制限や上限を設けることにより、自動変速機3で伝達する伝達トルクが制限される。それにより、ガレージシフトが行われることによって、自動変速機3のクラッチやブレーキの摩擦材間の回転数差が大きくなりやすい状況であっても、そのようなクラッチやブレーキに掛かる負荷を抑制し、摩擦材の過熱や焼損を防止することができる。すなわち、自動変速機3を保護することができる。
ところで、車両Veが泥濘路や砂地あるいは凹凸の激しい悪路等を走行する際に、駆動輪2のスリップが発生し、車両Veがスタックしてしまった場合には、例えば、前進と後進とを繰り返すことによって車両Veを前後に揺動させてスタックからの脱出を図る、いわゆる“揉み出し”と称されるような運転操作が行われる場合がある。すなわち、駆動輪2がスリップしている状況で、上記のようなガレージシフトが行われることが想定される。そのような状況に対して、前述したような従来の制御技術では、駆動輪2のスリップが発生している状態であっても、ガレージシフトが行われることによって、トルク制限制御が実行され、自動変速機3の伝達トルクが制限されてしまう。その結果、スタック状態から脱出するために大きな駆動力が要求されるにもかかわらず、必要な駆動力を得られなくなってしまい、車両Veの走破性能が低下してしまうおそれがあった。
また、上記のように、駆動輪2がスリップしている状態でガレージシフトが行われた場合、特に、後進走行ポジション(Rレンジ)で駆動輪2がスリップしている場合は、最低速段(例えば、第1速段、発進用変速段等)よりも高速の変速段(例えば、第2速段、第3速段等)が形成されてしまい、必要な駆動力を得られなくなってしまう可能性もある。通常、車速の検出は、前進または後進の区別をせずに、常に、前進状態を前提にして行われる。それとともに、自動変速機3における変速は、車速およびアクセル開度に基づいて行われる。例えば、車速とアクセル開度との関係を示す線図上で各変速段への切り替えを判断する変速線を規定した変速線図あるいは変速マップを基に、自動変速機3の変速段が形成される。したがって、従来の制御では、上記のように後進走行ポジション(Rレンジ)で駆動輪2がスリップしている状態では、実際には車速が0であっても、スリップしている駆動輪2の車輪速から所定の車速が出ていると判定されてしまい、その車速に対応する高速の変速段が形成されてしまう場合がある。そのため、駆動輪2がスリップしている状態から、駆動輪2のグリップが回復した際に、上記のような高速の変速段が形成されていると、必要な、大きな駆動力が得られなくなってしまう可能性がある。
そこで、この発明の実施形態における車両の制御装置は、駆動輪2がスリップしている状態でガレージシフトが行われた場合であっても、適切な駆動力を発生して、車両Veが本来の走破性能を発揮できるようにするために、例えば、以下の図2のフローチャートで示す制御を実行するように構成されている。
図2のフローチャートにおいて、先ず、ステップS1では、タイヤスリップ状態であるか否かが判断される。具体的には、駆動輪2にスリップが生じているか否かが判断される。例えば、車輪速センサ5aの検出値と、加速度センサの検出値から算出した車速とを比較することにより、駆動輪2におけるスリップの有無を判断することができる。
駆動輪2にスリップが生じていないこと、すなわち、タイヤスリップ状態ではないことにより、このステップS1で否定的に判断された場合は、以降の制御を実行することなく、この図2のフローチャートで示すルーチンを一旦終了する。
それに対して、駆動輪2にスリップが生じていること、すなわち、タイヤスリップ状態であることにより、ステップS1で肯定的に判断された場合には、ステップS2へ進む。
ステップS2では、前進走行ポジション(Dレンジ)と後進走行ポジション(Rレンジ)との間でシフトポジションの切り替えが繰り返されるシフト操作、すなわち、ガレージシフトが実施されたか否かが判断される。要するに、このステップS2では、駆動輪2がスリップしている状況でガレージシフトが行われたか否かが判断される。
DレンジとRレンジとの間のガレージシフトが実施されていないことにより、このステップS2で否定的に判断された場合は、以降の制御を実行することなく、この図2のフローチャートで示すルーチンを一旦終了する。
それに対して、DレンジとRレンジとの間のガレージシフトが実施されたこと、すなわち、駆動輪2がスリップしている状況でガレージシフトが行われたことにより、ステップS2で肯定的に判断された場合には、ステップS3、ステップS4、および、ステップS5へ進み、トルク制限制御による伝達トルクの制限が解除または緩和される。
前述したように、この発明の実施形態における車両に制御装置では、ガレージシフトが行われる場合に、自動変速機3の保護を目的として、自動変速機3で伝達する伝達トルクを制限するトルク制限制御が実行される。具体的には、トルク制限制御では、
(1)車速(前進時の車速、および、後進時の車速)が、極低車速(例えば、0km/hから10km/h程度の範囲)の場合に、所定の期間(例えば、数秒程度)、エンジン7の出力トルクが制限される(例えば、エンジン7の出力トルクに、通常よりも低い所定の上限が設定され、自動変速機3の伝達トルクが低下させられる)、
(2)車速が、極低車速の範囲よりも高い場合に、所定の期間(例えば、数秒程度)、エンジン7の出力トルクが0にされる、もしくは、自動変速機3がニュートラルに設定され、自動変速機3の伝達トルクが0にされる、
(3)車速が、極低車速の範囲よりも高い場合に、自動変速機3に対する油圧制御が制限される(例えば、クラッチおよびブレーキを動作させる変速制御の制御油圧が通常よりも低い油圧レベルに抑えられ、自動変速機3の変速動作または変速速度が抑制される)、
(4)車速が、極低車速の範囲よりも高い場合に、自動変速機3における後進走行ポジション(Rレンジ)の設定が禁止される、もしくは、後進走行ポジション(Rレンジ)が設定されている状態から、前進走行ポジション(Dレンジ)や他のシフトポジションへのシフトが禁止される(自動変速機3の変速動作が制限される)、
ことなどにより、自動変速機3の伝達トルクが制限される。
(1)車速(前進時の車速、および、後進時の車速)が、極低車速(例えば、0km/hから10km/h程度の範囲)の場合に、所定の期間(例えば、数秒程度)、エンジン7の出力トルクが制限される(例えば、エンジン7の出力トルクに、通常よりも低い所定の上限が設定され、自動変速機3の伝達トルクが低下させられる)、
(2)車速が、極低車速の範囲よりも高い場合に、所定の期間(例えば、数秒程度)、エンジン7の出力トルクが0にされる、もしくは、自動変速機3がニュートラルに設定され、自動変速機3の伝達トルクが0にされる、
(3)車速が、極低車速の範囲よりも高い場合に、自動変速機3に対する油圧制御が制限される(例えば、クラッチおよびブレーキを動作させる変速制御の制御油圧が通常よりも低い油圧レベルに抑えられ、自動変速機3の変速動作または変速速度が抑制される)、
(4)車速が、極低車速の範囲よりも高い場合に、自動変速機3における後進走行ポジション(Rレンジ)の設定が禁止される、もしくは、後進走行ポジション(Rレンジ)が設定されている状態から、前進走行ポジション(Dレンジ)や他のシフトポジションへのシフトが禁止される(自動変速機3の変速動作が制限される)、
ことなどにより、自動変速機3の伝達トルクが制限される。
上記のようなトルク制限制御に対して、この発明の実施形態における車両の制御装置では、駆動輪2がスリップしている状況でガレージシフトが行われた場合には、次のステップS3、ステップS4、および、ステップS5の各ステップで、トルク制限制御による伝達トルクの制限を解除する、または、トルク制限制御による伝達トルクの制限を無効にする。もしくは、トルク制限制御による伝達トルクの制限を緩和する。
ステップS3では、自動変速機3の油圧制御の切り替えが実行される。具体的には、自動変速機3のクラッチおよびブレーキを動作させる変速制御の制御油圧が、トルク制限制御で抑制される油圧レベルよりも高く、かつ、トルク制限制御が実行されない通常時の油圧レベル以下の油圧レベルに切り替えられる。すなわち、トルク制限制御による伝達トルクの制限が緩和される。もしくは、トルク制限制御による自動変速機3に対する油圧制御の制限が解除または無効にされ、変速制御の制御油圧が、トルク制限制御が実行されない通常時の油圧レベルに切り替えられる。すなわち、トルク制限制御による伝達トルクの制限が解除される。または、トルク制限制御による伝達トルクの制限が無効にされる。なお、このステップS3で切り替えられる油圧制御の油圧レベルは、例えば、車速や車両Veの状態に応じて変更してもよい。
ステップS4では、エンジン7のトルク制御の切り替えが実行される。具体的には、自動変速機3に伝達されるエンジン7の出力トルクが、トルク制限制御で抑制されるトルクレベルよりも高く、かつ、トルク制限制御が実行されない通常時のトルクレベル以下の出力トルクに切り替えられる。すなわち、トルク制限制御による伝達トルクの制限が緩和される。もしくは、トルク制限制御によるエンジン7の出力トルクに対する制限が解除または無効にされ、エンジン7の出力トルクが、トルク制限制御が実行されない通常時のトルクレベルに切り替えられる。すなわち、トルク制限制御による伝達トルクの制限が解除される。または、トルク制限制御による伝達トルクの制限が無効にされる。なお、このステップS3で切り替えられるエンジン7の出力トルクのトルクレベルは、例えば、車速や車両Veの状態に応じて変更してもよい。
ステップS5では、自動変速機3に対する判定ギヤ段の切り替えが実行される。具体的には、自動変速機3の変速動作に対する制限や禁止が解除または緩和される。例えば、車速が極低車速の範囲よりも高い場合であっても、自動変速機3における後進走行ポジション(Rレンジ)の設定が許可される。あるいは、後進走行ポジション(Rレンジ)が設定されている状態から、前進走行ポジション(Dレンジ)や他のシフトポジションへのシフトが許可される。その場合は、例えば、トルク制限制御が実行されない通常時の変速線に基づいて所定の変速段(ギヤ段)が選択される。
更に、このステップS5では、後進走行ポジション(Rレンジ)が設定されている場合、すなわち、後進走行ポジション(Rレンジ)で駆動輪2がスリップしている場合に、必ずしも変速線に基づかない、任意の変速段を選択することが可能な状態にされる。前述したように、従来の制御では、後進走行ポジション(Rレンジ)で駆動輪2がスリップしている場合に、通常の変速線どおりに変速段が選択されると、実際には車速が0であっても、第2速段や第3速段の高速の変速段が選択されてしまい、必要な大きな駆動力を得られない可能性があった。それに対して、この発明の実施形態における制御では、上記のように、任意に変速段の選択が可能になることにより、通常の変速線では高速の変速段が判定されたとしても、第1速段や発進用変速段など、より低速の変速段を選択することができる。そのため、スリップしている駆動輪2のグリップが回復した際に、状況に即した大きな駆動力を得ることができる。
したがって、このステップS5においても、結局、トルク制限制御による伝達トルクの制限が緩和される。もしくは、トルク制限制御による伝達トルクの制限が解除される。または、トルク制限制御による伝達トルクの制限が無効にされる。
なお、上記のステップS3、ステップS4、および、ステップS5の各ステップにおける制御は、例えば、同時に、あるいは、併行して実行されてもよい。もしくは、適宜、順序を入れ替えて実行されてもよい。
そして、ステップS6では、自動変速機3に対する同期判定が完了したか否かが判断される。具体的には、自動変速機3のクラッチおよびブレーキにおける摩擦材間の回転数差が0になった、または、所定値以下になったか否かが判断される。すなわち、このステップS6では、上記のようにして、トルク制限制御による自動変速機3の伝達トルクの制限が解除または緩和された状態の下でガレージシフトが行われ、そのガレージシフトによる自動変速機3の変速制御が完了したか否かが判断される。
未だ、自動変速機3に対する同期判定が完了していないことにより、このステップS6で否定的に判断された場合は、再度、このステップS6の制御が実行される。すなわち、自動変速機3に対する同期判定が完了するまで、ステップS6の制御が繰り返される。
したがって、自動変速機3に対する同期判定が完了したこと、すなわち、上記のようにして、トルク制限制御による自動変速機3の伝達トルクの制限が解除または緩和された状態の下で行われたガレージシフトが終了したことにより、ステップS6で肯定的に判断された場合には、この図2のフローチャートで示すルーチンを一旦終了する。
以上のように、この発明の実施形態における車両の制御装置では、従来と同様に、ガレージシフトが行われる場合に、自動変速機3のクラッチやブレーキ等を保護するため、自動変速機3の伝達トルクを制限するトルク制限制御が実行される。例えば、エンジン7の出力トルクの大きさに制限を設けることにより、自動変速機3の伝達トルクが制限される。あるいは、自動変速機3の変速動作に制限を設けることにより、自動変速機3の伝達トルクが制限される。そして、この発明の実施形態における車両の制御装置では、上記のようなガレージシフトが、車両Veの駆動輪2にスリップが生じている状況で行われる場合には、トルク制限制御による自動変速機3の伝達トルクの制限が解除される。あるいは、トルク制限制御による自動変速機3の伝達トルクの制限が緩和される。例えば、エンジン7の出力トルクのトルクレベルに対する制限を解除することにより、自動変速機3の伝達トルクの制限が解除される。あるいは、エンジン7の出力トルクのトルクレベルに対する制限を緩和することにより、自動変速機3の伝達トルクの制限が緩和される。そのため、例えば、泥濘路や砂地あるいは悪路で駆動輪2がスリップし、車両Veがスタックしてしまったような状況から脱出するためにガレージシフトが行われる場合、トルク制限制御による自動変速機3の伝達トルクの制限を解除または緩和して、スタック状態から脱出するために必要な大きな駆動力を発生させることができる。
したがって、この発明の実施形態における車両の制御装置によれば、駆動輪2がスリップしている状態でガレージシフトが実施される場合であっても、車両Veの走破性能が低下してしまうことを回避し、車両Veに本来の走破性能を発揮させることができる。
1 駆動力源
2 駆動輪(後輪)
3 自動変速機(AT)
3a (自動変速機の)入力軸
3b (自動変速機の)出力軸
4 シフト装置
5 検出部
5a (検出部の)車輪速センサ
5b (検出部の)エンジン回転数センサ
5c (検出部の)入力軸回転数センサ
5d (検出部の)出力軸回転数センサ
5e (検出部の)油圧センサ
5f (検出部の)シフトポジションセンサ
6 コントローラ(ECU)
7 エンジン(ENG;駆動力源)
7a (エンジンの)出力軸
8 プロペラシャフト
9 デファレンシャルギヤ
10 ドライブシャフト
Ve 車両
2 駆動輪(後輪)
3 自動変速機(AT)
3a (自動変速機の)入力軸
3b (自動変速機の)出力軸
4 シフト装置
5 検出部
5a (検出部の)車輪速センサ
5b (検出部の)エンジン回転数センサ
5c (検出部の)入力軸回転数センサ
5d (検出部の)出力軸回転数センサ
5e (検出部の)油圧センサ
5f (検出部の)シフトポジションセンサ
6 コントローラ(ECU)
7 エンジン(ENG;駆動力源)
7a (エンジンの)出力軸
8 プロペラシャフト
9 デファレンシャルギヤ
10 ドライブシャフト
Ve 車両
Claims (1)
- 駆動輪を駆動するトルクを出力する駆動力源と、前記駆動力源の出力軸の回転数を変化させ、かつ、前記駆動力源と前記駆動輪との間で前記トルクを伝達するとともに、前進走行ポジションおよび後進走行ポジションを運転者が手動操作で切り替えて設定することが可能な自動変速機と、を備え、前記前進走行ポジションと前記後進走行ポジションとの間の切り替え操作が繰り返されるガレージシフトが行われる場合に、前記自動変速機で伝達する伝達トルクを制限するトルク制限制御を実行する車両の制御装置において、
前記駆動力源および前記自動変速機をそれぞれ制御するコントローラを備え、
前記コントローラは、
前記駆動輪のスリップが発生している状態で前記ガレージシフトが行われる場合に、前記トルク制限制御による前記伝達トルクの制限を解除する、または、前記トルク制限制御による前記伝達トルクの制限を緩和する
ことを特徴とする車両の制御装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2022027631A JP2023124061A (ja) | 2022-02-25 | 2022-02-25 | 車両の制御装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2022027631A JP2023124061A (ja) | 2022-02-25 | 2022-02-25 | 車両の制御装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2023124061A true JP2023124061A (ja) | 2023-09-06 |
Family
ID=87886411
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2022027631A Pending JP2023124061A (ja) | 2022-02-25 | 2022-02-25 | 車両の制御装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2023124061A (ja) |
-
2022
- 2022-02-25 JP JP2022027631A patent/JP2023124061A/ja active Pending
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
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A621 | Written request for application examination |
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