JP2023122798A - マルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼の製造方法およびマルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼製品 - Google Patents

マルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼の製造方法およびマルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼製品 Download PDF

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【課題】時効処理温度が高い時効処理条件を適用したときに、0.2%耐力と靭性とのバランスに優れたマルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼の製造方法と、これによる製品とを提供する。【解決手段】マルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼の組成を有する熱処理素材に、固溶化処理と時効処理とを行って熱処理材とするマルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼の製造方法において、上記の固溶化処理は1020~1080℃で加熱保持後急冷し、上記の時効処理は570~630℃で加熱保持後、300~500℃までを50℃/h以下の平均冷却速度で冷却する第1冷却工程と、この第1冷却工程に続いて空冷以上の平均冷却速度で冷却する第2冷却工程とを行うマルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼の製造方法である。そして、この製造方法によって製造された製品である。【選択図】図1

Description

本発明は、マルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼の製造方法およびマルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼製品に関するものである。
マルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼は、析出硬化元素としてCu、Nb、Ti、Al、Moなどが添加されており、固溶化処理後の時効処理で析出物が形成され高強度の製品が得られるものである。マルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼でなる製品は、優れた耐食性と高強度を有しており、シャフト、歯車、バルブ、タービン部品、航空機用部品など幅広い用途で使用されている。
マルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼は、その製品に求められる機械的特性に応じて、固溶化処理後の時効処理によって析出硬化相の析出状態を調整することができる。例えば、17-4PHは析出硬化元素としてCuを含む合金であり、時効処理によってCu相の析出状態を調整することができる。そして、17-4PH相当合金としてJIS-G-4303の規格に登録されるSUS630では、固溶化処理に続いて実施する4種類の時効処理(「析出硬化処理」と記されている。)の条件が規定されている。この他には、固溶化処理後に2種類の時効処理温度で保持を行う2段熱処理法によって従来のマルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼の硬度および耐摩耗性を大幅に向上させる製造方法が提案されている(特許文献1)。
特開平7―18387号公報
マルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼の場合、時効処理条件を調整することで、時効処理後の機械的特性を調整することができる。よって、用途毎に求められる製品の各種特性に応じて、時効処理条件が使い分けられている。そして、靭性が求められる用途においては、時効処理温度が高い時効処理条件が有利であるところ、時効処理温度が高いと引張強度(0.2%耐力)が大きく低下する懸念があった。
本発明の目的は、時効処理温度が高い時効処理条件を適用したときに、0.2%耐力と靭性とのバランスに優れたマルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼の製造方法を提供することである。そして、この製造方法によって製造されたマルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼製品を提供することである。
本発明は、マルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼の組成を有する熱処理素材に、固溶化処理と時効処理とを行って熱処理材とするマルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼の製造方法において、上記の固溶化処理は1020~1080℃で加熱保持後急冷し、上記の時効処理は570~630℃で加熱保持後、300~500℃までを50℃/h以下の平均冷却速度で冷却する第1冷却工程と、この第1冷却工程に続いて空冷以上の平均冷却速度で冷却する第2冷却工程とを行うマルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼の製造方法である。そして、この製造方法によって製造されたマルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼製品である。
なお、上記のマルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼の組成は、質量%で、
C:0.10%以下、
Si:1.0%以下、
Mn:1.0%以下、
Cr:14.0~18.0%、
Ni:3.0~6.0%
を含有し、且つ、
Cu:1.0~5.0%、
Nb:0.5%以下、
Mo:2.0%以下、
N:0.1%以下
の何れか1種以上を更に含有し、
残部はFe及び不可避的不純物からなることが好ましい。
本発明によれば、時効処理温度が高い時効処理条件を適用したときに、時効処理後のマルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼製品の0.2%耐力と靭性とのバランスを良好にすることができる。
本発明例、比較例および従来例の製造方法で製造したマルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼製品の、0.2%耐力と衝撃値との関係を示すグラフである。
本発明の特徴は、マルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼の時効処理条件を、高い時効処理温度のものに限定したときに、その加熱保持後の冷却条件を調整すれば、時効処理後の0.2%耐力と靭性とのバランスを良好にできるところにある。ここで「0.2%耐力と靭性とのバランスが良好である」とは、衝撃値または0.2%耐力の値を“個々に”評価すれば、それは従来達成されていた値であるとしても、それらの値を“同時に”達成できるということである。以下、本発明の構成要件について説明する。
<固溶化処理は1020~1080℃で加熱保持後急冷する>
マルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼は、Ms点(マルテンサイト化開始温度)が室温以上にあり、固溶化処理後にマルテンサイト組織を発現する合金である。そして、この固溶化処理では、これに続く時効処理で析出硬化を促すために、析出硬化元素を母相に固溶化させることが重要である。よって、本発明の固溶化処理は、加熱保持温度を1020℃以上とする。好ましくは1025℃以上とし、より好ましくは1030℃以上とする。ただし、固溶化処理時の加熱保持温度が高すぎると、δフェライト相が生成されて、機械的特性に悪影響を及ぼす。よって、上記の加熱保持温度は1080℃以下とする。好ましくは1070℃以下とし、より好ましくは1060℃以下、さらに好ましくは1050℃以下とする。
なお、加熱保持時間については、特別の取決めはない。析出硬化元素を母相に十分に固溶化させることができるのであれば、例えば、30分以上や1時間以上であるなど、従来の要領に従うことができる。上限についても、20時間以下や15時間以下、10時間以下、5時間以下であるなど、析出硬化元素の固溶状況に応じて、決めることができる。
そして、上記の加熱保持後には、析出硬化元素を母相に固溶化させたままマルテンサイト組織を得るために急冷を行う。この急冷工程自体に特徴はなく、例えば、空冷であるなど、従来の冷却要領に従うことができる。
<時効処理は570~630℃で加熱保持する>
固溶化処理後のマルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼に時効処理を行うとき、その処理温度に、室温における硬さが最高となるような低温域を選択すれば(例えば、17-4PH等において、470~490℃の範囲を選択すれば)、時効処理後の硬さや0.2%耐力、引張強さを高くできるので、強度を重視する用途に有利である。しかし、強度が高くなることで靭性が低下する。そこで、本発明では、マルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼製品の靭性向上をも目的とすることから、そのための時効処理の前提として、時効処理温度に570~630℃の高温域を選択し、この温度範囲で加熱保持することを必須とする。時効処理温度を570℃以上とすることで、時効処理後の組織に残留オーステナイトが存在しやすく、マルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼製品の靭性が向上する。また、時効処理温度を最高硬さが達成される温度以上にすることで、過時効となり、析出硬化相が粗大になり、靭性が向上する。そして、時効処理温度を630℃以下とすることで、固溶化処理によって生成されたマルテンサイトに固溶している合金元素が、時効処理により過剰に放出されることを抑制して、本来のマルテンサイトによる強化機構も維持できる。上記の時効処理温度の範囲内で、時効処理温度が高くなるに連れて、残留オーステナイトが多くなり、過時効になることで、靭性はさらに向上する。
なお、上記の時効処理温度における加熱保持時間については、特別の制限はない。そして、本発明のマルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼の場合、これに相当する材料規格であるAMS5643等を参考にでき、例えば、100分以上や150分以上、200分以上であるなど、とすることができる。上限についても、400分以下や350分以下、300分以下であるなど、とすることができる。
<上記の加熱保持後、300~500℃までを50℃/h以下の平均冷却速度で冷却する第1冷却工程を行う>
時効処理温度を570~630℃の高温域とすることで、時効処理後の組織に残留オーステナイトが存在しやすく、また、過時効となり、製品の靭性が高くなる。しかし、過時効になるということは、本来、調整された組成に応じて発揮されるべき析出硬化相による強化能が“低いままの状態である”ということである。そして、これによって、特に、製品の0.2%耐力が低下する。そこで、本発明に係る時効処理においては、上記の時効処理温度で加熱保持後の冷却速度を、従来の空冷の場合よりも遅い、徐冷とすることで、冷却中に微細な析出硬化相が析出して、本来の析出硬化相の強化能を得ることができる。これによって、0.2%耐力と靭性とのバランスを良好にすることが可能となる。
上記の徐冷による析出硬化相の強化能の向上効果は、熱処理素材を時効処理温度から冷却して、熱処理素材の温度が500℃近辺に下がった時点でも継続して、これ以降の温度でも効果があると考えられる。しかし、上記の徐冷を300℃以下まで続けることは作業性の面で効率的でない。また、上記の徐冷を熱処理素材の温度が低くなるまで続けると、Ms点に近くなって、後述する第2冷却工程でマルテンサイト変態させるときに支障を来たし得る。よって、上記の徐冷は、時効処理温度から開始して、徐冷終了温度は300~500℃の温度範囲から選択するものとする。
そして、上記の徐冷の際の冷却速度は、50℃/h以下の“遅い”平均冷却速度とする必要がある。平均冷却速度とは、冷却開始温度(この場合、時効処理温度)から冷却終了温度(この場合、徐冷終了温度)までの温度差を、その時の所要時間で除した冷却速度である。この平均冷却速度が50℃/hよりも速い場合、析出硬化相の強化能の向上が十分ではなく、もはや、100℃/h辺りにまで速くなると、0.2%耐力と靭性とのバランスは従来の空冷を適用した場合とほぼ変わりない。したがって、本発明では、上記の徐冷の際の平均冷却速度を50℃/h以下とする「第1冷却工程」を行う必要がある。好ましくは45℃/h以下とする。
なお、上記の第1冷却工程における平均冷却速度の下限については、特別の制限は設けない。但し、冷却が遅すぎると、後述する第2冷却工程でのマルテンサイト変態に支障を来たし得るので、上記の平均冷却速度は、例えば、10℃/h以上や20℃/h以上、さらには30℃/h以上、40℃/h以上など、とすることができる。このような冷却速度は、加熱炉内で、加熱ヒータの出力を制御しながら冷却したり、放冷したりすることによって得ることができる。
<第1冷却工程に続いて、空冷以上の平均冷却速度で冷却する第2冷却工程を行う>
本発明が実施する時効処理において、上記の加熱保持および徐冷が終了した後は、オーステナイト相をマルテンサイト化して強化する必要があるため、熱処理素材を空冷以上の平均冷却速度で冷却する必要がある。このとき、空冷以上の平均冷却速度を、それが遅くなり得る場合も想定して、「100℃/hを超える平均冷却速度」と言い換えることもできる。そして、これらの平均冷却速度を得ることについては、大気中で放冷したり、衝風(ファン)冷却したりするなど、従来の冷却要領に従うことができる。
<マルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼の組成は、質量%で、
C:0.10%以下、
Si:1.0%以下、
Mn:1.0%以下、
Cr:14.0~18.0%、
Ni:3.0~6.0%
を含有し、且つ、
Cu:1.0~5.0%、
Nb:0.5%以下、
Mo:2.0%以下、
N:0.1%以下
の何れか1種以上を更に含有し、
残部はFe及び不可避的不純物からなる>
本発明のマルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼の具体的な成分組成には、例えばJIS-G-4303に示されるSUS630や17-4PHの他に、15-5PH相当合金、そして、従来提案されてきたものも適用できる。以下に、各元素について好ましい成分範囲を規定した理由を述べる。
(1)C:0.10%以下
Cは、多すぎると、多数のCr炭化物を粒界に形成するようになり、粒界付近のCrが欠乏することで耐食性を低下させる。したがって、Cは0.10%以下を好ましい範囲とする。より好ましくは0.08%以下とし、さらに好ましくは0.06%以下とする。
なお、Cは、時効処理後の製品組織に残留するδフェライト相の量を低下させるのに有効な元素でもある。したがって、0.01%以上を含有させることもできる。より好ましくは0.02%以上とし、さらに好ましくは0.03%以上とすることができる。
(2)Si:1.0%以下
Siは、過剰に添加するとδフェライト相が残留する原因となり、特性に悪影響を及ぼす。したがって、Siは1.0%以下を好ましい範囲とする。より好ましくは0.7%以下とし、さらに好ましくは0.5%以下とする。
なお、Siは、脱酸元素として有効であり、0.1%以上を含有させることもできる。より好ましくは0.2%以上とし、さらに好ましくは0.3%以上とすることができる。
(3)Mn:1.0%以下
Mnは、過剰に添加するとMnSを形成するようになり、時効処理後の製品においてMnSが孔食の起点となることで耐食性を低下させる。したがって、Mnは1.0%以下を好ましい範囲とする。より好ましくは0.8%以下とし、さらに好ましくは0.6%以下とする。
なお、Mnは、脱酸元素として有効であり、0.1%以上を含有させることもできる。より好ましくは0.2%以上とし、さらに好ましくは0.3%以上とすることができる。
(4)Cr:14.0~18.0%
Crは、製品の耐食性に寄与する元素であり、適切な添加量が必要となる。良好な耐食性の実現のため14.0%以上の添加が望ましい。一方で、Crは、過剰に添加するとδフェライト相が残留する原因となり、特性に悪影響を及ぼすため、18.0%以下の添加が望ましい。したがって、Crは14.0%~18.0%を好ましい範囲とする。より好ましくは14.5%以上とし、さらに好ましくは15.0%以上とする。また、より好ましくは17.0%以下とし、さらに好ましくは16.0%以下とする。
(5)Ni:3.0~6.0%
Niは、残留するδフェライト相の量を低下させるのに有効な元素である。また、耐食性の向上にも有効な元素であることから、3.0%以上の添加が望ましい。一方で、Niは、過剰に添加すると多量の残留オーステナイトが存在するようになり、強度が大きく低下するため6.0%以下の添加が望ましい。したがって、Niは3.0~6.0%を好ましい範囲とする。より好ましくは3.5%以上とし、さらに好ましくは4.0%以上とする。また、より好ましくは5.5%以下とし、さらに好ましくは5.0%以下とする。
さらに、Cu、Nb、Mo、Nは、本発明に係るマルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼の組成において、任意元素とすることができる。
(6)Cu:1.0~5.0%
Cuは、析出硬化相を形成する元素であり、十分な強化のため1.0%以上の添加が望ましい。一方で、Cuは、過剰に添加すると多量の残留オーステナイトが存在するようになり、強度が大きく低下するため5.0%以下の添加が望ましい。したがって、添加する場合のCuは、1.0~5.0%を好ましい範囲とする。より好ましくは2.0%以上とし、さらに好ましくは2.5%以上とし、よりさらに好ましくは3.0%以上とする。また、より好ましくは4.5%以下とし、さらに好ましくは4.0%以下とする。
(7)Nb:0.5%以下
Nbは、炭窒化物を形成し、固溶化処理時の結晶粒粗大化を抑制する。一方で、Nbは、過剰に添加するとδフェライト相が残留する原因となり、特性に悪影響を及ぼす。したがって、添加する場合のNbは、0.5%以下を好ましい範囲とする。より好ましくは0.45%以下とし、さらに好ましくは0.4%以下とし、よりさらに好ましくは0.35%以下とする。また、より好ましくは0.1%以上とし、さらに好ましくは0.2%以上とする。
(8)Mo:2.0%以下
Moは、耐食性の向上に有効な元素であるが、過剰に添加するとδフェライト相が残留する原因となり、特性に悪影響を及ぼすため、2.0%以下の添加が望ましい。したがって、添加する場合のMoは、2.0%以下を好ましい範囲とする。より好ましくは1.5%以下とし、さらに好ましくは1.0%以下とし、よりさらに好ましくは0.5%以下とする。また、より好ましくは0.1%以上とする。
(9)N:0.1%以下
Nは、固溶強化による強度向上に有効な元素であるが、過剰に添加すると靭性を低下させるため、添加するとしても、0.1%以下の添加が望ましい。したがって、Nは0.1%以下を好ましい範囲とする。より好ましくは0.08%以下とし、さらに好ましくは0.06%以下とし、よりさらに好ましくは0.05%以下とする。また、より好ましくは0.01%以上とし、さらに好ましくは0.02%以上とする。
表1に示す成分組成の鋼塊を熱間加工により直径70mmの鋼材に仕上げた。この鋼材の周面から径の中心に向かってD/8の位置より評価用の熱処理素材を採取した(Dは直径を意味する)。そして、この熱処理素材に、1040℃で1時間加熱保持後に空冷する固溶化処理を行い、さらに表2に示す条件で時効処理を実施して熱処理材とし、マルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼製品を作製した。なお、表2のNo.1~4およびNo.11~13の時効処理において、その第1冷却工程での平均冷却速度は、加熱炉内で、加熱ヒータの出力を制御しながら冷却することで調整した。
Figure 2023122798000002
Figure 2023122798000003
表2の熱処理材を用いて、JIS-Z-2241の常温引張試験と、JIS―Z―2242のシャルピー衝撃試験とを実施した。これら試験により得られた0.2%耐力と衝撃値の結果を表3に示す。
Figure 2023122798000004
図1は、表3に示すNo.1~4(本発明例)、No.11~13(比較例)およびNo.21~23(従来例)の0.2%耐力と衝撃値との関係を示したグラフである。本発明例で製造したマルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼製品の0.2%耐力と衝撃値との関係(図中の白丸)は、図中に点線で示す従来例の関係よりも高い位置にある。これは、本発明例の製造方法によって達成されている高い衝撃値が、従来例でも達成されているとしても、そのときには、本発明例の0.2%耐力が従来例のそれを上回っていることを意味している。
また、比較例の場合、No.11、12には第1冷却工程で徐冷を適用したものの、時効処理温度が低いNo.11の衝撃値は、もとより低かった。No.12であっても、時効処理温度が高過ぎたことで、0.2%耐力が大きく低下し、上記の0.2%耐力と衝撃値との関係が本発明例のそれよりも低く位置した。そして、No.13では、本発明例であるNo.3、4の第1冷却工程における平均冷却速度のみを、空冷でも想定され得る程度の冷却速度に調整した(速くした)ところ、No.3、4の0.2%耐力が低下した傾向がみられて、上記の0.2%耐力と衝撃値との関係が従来例のところに位置した。

Claims (3)

  1. マルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼の組成を有する熱処理素材に、固溶化処理と時効処理とを行って熱処理材とするマルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼の製造方法において、
    前記固溶化処理は1020~1080℃で加熱保持後急冷し、
    前記時効処理は570~630℃で加熱保持後、300~500℃までを50℃/h以下の平均冷却速度で冷却する第1冷却工程と、前記第1冷却工程に続いて空冷以上の平均冷却速度で冷却する第2冷却工程とを行うことを特徴とする、
    マルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼の製造方法。
  2. 前記マルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼の組成が、質量%で、
    C:0.10%以下、
    Si:1.0%以下、
    Mn:1.0%以下、
    Cr:14.0~18.0%、
    Ni:3.0~6.0%
    を含有し、且つ、
    Cu:1.0~5.0%、
    Nb:0.5%以下、
    Mo:2.0%以下、
    N:0.1%以下
    の何れか1種以上を更に含有し、
    残部はFe及び不可避的不純物でなることを特徴とする、
    請求項1に記載のマルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼の製造方法。
  3. 請求項1または2に記載のマルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼の製造方法によって製造されたことを特徴とする、マルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼製品。


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