JP2023122350A - 筒型リニアモータ - Google Patents

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Abstract

【課題】界磁における積層磁石体に対するヨークのずれを防止できるとともに界磁の分解を可能とする筒型リニアモータの提供である。【解決手段】上記した目的を達成するため、本発明の筒型リニアモータ1は、内周或いは外周の一方に軸方向にN極とS極とが交互に配置されるように積層される複数の環状の永久磁石10a,10bで形成される積層磁石体10と、積層磁石体10の内周或いは外周の他方に配置される磁性体で形成される筒状のヨーク8とを有する筒状の界磁6と、界磁6に対して界磁6の軸方向に移動可能な電機子2とを備え、ヨーク8は、積層磁石体10の外径よりも小径な内径或いは積層磁石体10の内径よりも大径な外径を有するとともに、軸方向の全長に亘りスリット30aを有して。【選択図】図2

Description

本発明は、筒型リニアモータに関する。
筒型リニアモータは、たとえば、軸方向に並べて配置される複数のティースを外周に持つコアとティース間のスロットに装着されるU相、V相およびW相の巻線を有する電機子と、軸方向にS極とN極とが交互に並ぶように環状の複数の永久磁石を積層して形成した積層磁石体を有して電機子に対向する界磁とを備えるものがある。
このように構成された筒型リニアモータでは、電機子のU相、V相およびW相の巻線へ適宜通電することにより、界磁における永久磁石と電機子との間に生じる軸方向の吸引および反発する力を発揮して、電機子或いは界磁を可動子として駆動する。
このような筒型リニアモータでは、界磁における永久磁石の磁力線を効率的に電機子側へ向かわせるために、積層磁石体の外周に磁性体の筒でなるヨークを設ける場合がある(たとえば、特許文献1参照)。
このようなヨークは、特に両端が固定されておらず永久磁石の外周に永久磁石の磁力によって吸着されているだけであるので、筒型リニアモータの駆動時に界磁に対して軸方向に相対移動する電機子の磁力によって吸引されて永久磁石に対して軸方向にずれてしまう場合がある。
他方、ヨークではないが、円筒パイプ内に収容される積層磁石体を保持するための構造として、円筒パイプの両端を外周側から加締めて弾性変形させて、円筒パイプの両端の内周に突出する加締部を設け、当該加締部で積層磁石体の両端を挟持させる構造の提案がある(たとえば、特許文献2参照)。
特開2020-68624号公報 特開2017-73864号公報
よって、ヨークの永久磁石のずれを防止するために、特許文献2の構造を採用して、ヨークの両端を外周側から加締めて弾性変形させて積層磁石体の両端を挟持する加締部を形成することも考えられる。
このようにすれば、電機子側からの吸引力を受けてもヨークが積層磁石体に対して軸方向にずれるのを防止できるが、ヨークの両端を加締めて積層磁石体と一体としてしまうと、界磁の分解が不能となって、筒型リニアモータのメンテナンスが不能となってしまうという新たな問題が生じてしまう。
そこで、本発明は、界磁における積層磁石体に対するヨークのずれを防止できるとともに界磁の分解を可能とする筒型リニアモータの提供を目的としている。
上記の目的を達成するため、本発明の筒型リニアモータは、内周或いは外周の一方に軸方向にN極とS極とが交互に配置されるように積層される複数の環状の永久磁石で形成される積層磁石体と、積層磁石体の内周或いは外周の他方に配置される磁性体で形成される筒状のヨークとを有する筒状の界磁と、界磁に対して界磁の軸方向に移動可能な電機子とを備え、ヨークは、積層磁石体の外径よりも小径な内径、或いは積層磁石体の内径よりも大径な外径を有するとともに、軸方向の全長に亘りスリットを有する。
このように構成された筒型リニアモータでは、ヨークがスリットを有しているので、ヨークを拡径或いは縮径させて積層磁石体に容易に装着でき、ヨークの積層磁石体への装着の後、ヨークは、自己の復元力によって積層磁石体に緊迫力を付加しつつ嵌合するので、積層磁石体に強固に固定される。よって、前述のように構成された筒型リニアモータによれば、電機子が界磁に対して軸方向へ移動する際に電機子の磁力によって吸引されてヨークが積層磁石体に対して軸方向へずれてしまうことがない。また、ヨークがスリットを備えておりヨークを容易に拡径或いは縮径させて積層磁石体から取り外すこともできる。
また、ヨークはスリットを挟んだ両側に工具の差し込みを可能とする対を成す切欠を備えていてもよい。このように構成された筒型リニアモータによれば、切欠に工具を引っかけてヨークを容易に拡径できるので、積層磁石体へのヨークの定着作業を容易に行える。
さらに、ヨークに設けられるスリットの形成方向がヨークを軸方向から見て径方向に対して傾斜していてもよい。このように、スリットが径方向に対し傾斜する方向に向けて形成された筒型リニアモータによれば、スリットを設けることによってヨーク内を通過せずにスリット内のみを通過して外部へ漏れる磁力線数を減らせるので、電機子へより強い磁界を作用させて推力を向上できる。
また、ヨークに設けられるスリットの形状は、ヨークを径方向から見て波形であってもよい。このように、スリットの形状を波形とした筒型リニアモータによれば、ヨークに切欠を設けなくとも、ヨークの周方向の端部の形状に凹凸ができ、凹部分に工具を引っかけてヨークを容易に拡径できるので、積層磁石体へのヨークの定着作業を容易に行える。
本発明の筒型リニアモータによれば、界磁における積層磁石体に対するヨークのずれを防止できるとともに界磁の分解を可能とする。
一実施の形態における筒型リニアモータの縦断面図である。 (a)は、一実施の形態の筒型リニアモータのヨークを軸方向から見た平面図である。(b)は、一実施の形態の筒型リニアモータのヨークを径方向から見た側面図である。 一実施の形態の筒型リニアモータの界磁の一部拡大縦断面図である。 第一変形例のヨークを積層磁石体の外周に装着した界磁の拡大横断面図である。 第二変形例のヨークを径方向から見た側面図である。
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。一実施の形態における筒型リニアモータ1は、図1に示すように、内周に軸方向にN極とS極とが交互に配置されるように積層される複数の環状の永久磁石10a,10bで形成される積層磁石体10と、積層磁石体10の外周に配置される磁性体で形成される筒状のヨーク8とを有する筒状の界磁6と、界磁6に対して界磁6の軸方向に移動可能な電機子2とを備えて構成されている。
以下、筒型リニアモータ1の各部について詳細に説明する。電機子2は、コア3と巻線5とを備えて構成されている。コア3は、円筒状のコア本体3aと、環状であってコア本体3aの外周に軸方向に間隔を空けて設けられる複数のティース3bとを備えて構成されている。
コア3は、前述の通り筒状であって、図1に示すように、コア本体3aの外周に軸方向に等間隔に並べて設けられた10個のティース3bを備えており、ティース3b,3b間には、巻線5が装着される空隙でなるスロット4が形成されている。また、本実施の形態では、図1中で隣り合うティース3b,3b同士の間には、空隙でなるスロット4が合計で9個設けられている。そして、このスロット4には、巻線5が巻き回されて装着されている。巻線5は、U相巻線、V相巻線およびW相巻線の三相の巻線で構成されている。
また、各ティース3bは、環状であって、コア3の両端に配置されたティース3bを除いて、軸方向において内周端の幅より外周端の幅が狭い等脚台形状とされており、軸方向で両側の側面が外周端に対して等角度で傾斜するテーパ面とされている。末端のティース3bは、図1に示すように、末端のティース3b以外の他のティース3bをコア3の軸線に直交する面で半分に切り落とした断面形状とされている。なお、ティース3bの断面形状は、等脚台形状以外の形状であってもよく、たとえば、矩形であってもよい。
そして、電機子2は、出力軸である非磁性体で形成されたロッド11の先端の外周に装着されている。ロッド11は、筒状の第1ロッド20と、筒状であって外周にコア3が装着されるとともに第1ロッド20の内周に螺合される第2ロッド21とを備えている。
第1ロッド20は、筒状であって図1中左端外周と図1中右端内周にそれぞれ螺子部22a,22bを有するロッド本体22と、筒型リニアモータ1を機器へ取り付けるブラケット23aを有してロッド本体22の図1中左端の螺子部22aに螺着されてロッド本体22の左端を閉塞するロッドキャップ23とを備えている。
また、ロッド本体22の図1中右端外周には、環状のスライダ25が嵌合されている。スライダ25は、後述する筒部9bの内周に摺接する摺接部25aと、摺接部25aの図1中左方側であるロッド11の基端側に設けられた外径が摺接部25aよりも小径な小径部25bと、小径部25bの外周に周方向に沿って設けられた環状溝25cと、図1中右端内周に設けられたフランジ25dとを備えている。そして、スライダ25の環状溝25cには、弾性体としてのゴム製のシールリング26が装着されている。また、フランジ25dの内径は、ロッド本体22の内径以上であってロッド本体22の外径以下となっており、スライダ25をロッド本体22に嵌合するとフランジ25dがロッド本体22の図1中右端面に当接する。
第2ロッド21は、外周にコア3が装着される筒状のコア保持筒21aと、コア保持筒21aの図1中右端となる先端の外周に設けられる環状のスライダ21bとを備えている。また、コア保持筒21aの図1中左端となる基端の外周には、螺子部21cが設けられており、コア保持筒21aの基端側内周には内径が他の部位よりも大きな内径大径部21dが設けられている。そして、コア保持筒21aの基端を第1ロッド20におけるロッド本体22の図1中右端の内周に挿入しつつ螺子部21cを螺子部22bに捩じ込むと、第1ロッド20と第2ロッド21とが連結される。このようにロッド11は、本実施の形態では、第1ロッド20と第2ロッド21とで構成されて筒状とされている。
また、第2ロッド21におけるコア保持筒21aの外周には、コア3が嵌合されて装着されている。コア保持筒21aの外径は、第1ロッド20におけるロッド本体22の外径よりも小径となっているので、スライダ25を装着した第1ロッド20に電機子2を装着した第2ロッド21を前記した要領で連結すると、電機子2およびスライダ25が第1ロッド20の図1中右端と第2ロッド21のスライダ21bとで挟み込まれて固定される。このようにロッド11に電機子2を装着すると、コア3がスライダ21bおよびスライダ25に挟まれる格好でロッド11に固定される。なお、本実施の形態では、電機子2は、単一のコア3のみを有して構成されているが、推力の向上等のために複数のコア3を持つ構成とされてもよい。
つづいて、ロッド11には、ロッド11の外周を覆って空隙Gを形成するカバー17が設けられている。具体的には、カバー17は、筒状であって一端がロッド11の外周に設けた環状のカバーエンド18の外周に嵌合されるとともに他端がスライダ25の小径部25bの外周に嵌合されてロッド11に装着されている。
カバー17とロッド11との間の空隙G内には、コア3に装着された各相の巻線5を外部の図示しない駆動回路へ接続するリード線Lが収容されており、カバー17を取外した状態で巻線5とリード線Lとの配線作業を行えるようになっており、筒型リニアモータ1の組立作業を容易ならしめている。
他方、固定子は、本実施の形態では、円筒状の積層磁石体10と積層磁石体10の外周に圧入嵌合されて装着される円筒状の磁性体でなるヨーク8とで構成された界磁6と、積層磁石体10の内周に挿入される円筒状の非磁性体のインナーチューブ9と、円筒状であって内方にインナーチューブ9および界磁6が挿入される非磁性体で形成されるバレル7とを備えて構成されている。
バレル7は、非磁性体で形成されており、図1中左側の開口端の内周に設けられた螺子部7aと、図1中右側の開口端の外周に設けられた螺子部7bとを備えている。また、バレル7の図1中右端側の開口端の外周には、ボトムキャップ12が螺着されており、バレル7の図1中右端の開口端が閉塞されている。ボトムキャップ12は、底部12aと筒部12bとを備えた有底筒状であって、バレル7の外周に筒部12bを螺合することでバレル7に装着されている。また、ボトムキャップ12の筒部12bには筒型リニアモータ1の機器への取り付けを可能とするブラケット12cが設けられている。ボトムキャップ12は、底部12aが界磁6の図1中右端に対向している。
インナーチューブ9は、非磁性体で形成されており、バレル7の図1中左端の開口端に螺子締結によって装着される環状のヘッド部9aと、ヘッド部9aよりも肉厚が薄くヘッド部9aの図1中右端の内周から延びて界磁6の内周に挿入される筒部9bとを備えて構成されている。よって、インナーチューブ9におけるヘッド部9aの図1中右端は、筒部9bの外周に配置される界磁6の図1中左端に対向している。
また、インナーチューブ9は、ヘッド部9aの図1中右端と筒部9bとの境に湾曲面9c備えており、ヘッド部9aにのみ軸力が作用してもヘッド部9aと筒部9bの境に応力が集中しないようになっている。なお、このように応力集中を回避するには、ヘッド部9aと筒部9bとの境にテーパ面を設けるようにしてもよい。
界磁6は、軸方向に交互に積層されて挿入される複数の環状の主磁極となる永久磁石10aと複数の環状の副磁極となる永久磁石10bとで形成される積層磁石体10と、積層磁石体10の外周に嵌合して積層磁石体10の外周に定着される筒状のヨーク8とを備えて構成されている。
積層磁石体10は、軸方向に交互に積層される複数の環状の主磁極となる永久磁石10aと複数の環状の副磁極となる永久磁石10bとを備えて構成されている。永久磁石10aと永久磁石10bとは、飛散防止のため、接着剤を介在して積層されている。なお、図1中で主磁極の永久磁石10aと副磁極の永久磁石10bに記載されている三角の印は、着磁方向を示しており、主磁極の永久磁石10aの着磁方向は径方向となっており、副磁極の永久磁石10bの着磁方向は軸方向となっている。主磁極の永久磁石10aと副磁極の永久磁石10bは、ハルバッハ配列で配置されており、界磁6の内周側では、軸方向にS極とN極が交互に現れるように配置されている。
また、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、主磁極の永久磁石10aの軸方向長さは、副磁極の永久磁石10bの軸方向長さよりも長くなっている。このように、主磁極の永久磁石10aの軸方向長さを長くすればコア3との間の主磁極の永久磁石10aとの間の磁気抵抗を小さくできコア3へ作用させる磁界を大きくできるので筒型リニアモータ1の推力を向上できる。本実施の形態では、主磁極の永久磁石10aの軸方向長さを副磁極の永久磁石10bの軸方向長さよりも長くしているが、これに限らず両者の軸方向の長さの設定は任意に設計変更できる。
また、本発明の筒型リニアモータ1では、永久磁石10a,10bの外周にヨーク8を設けている。ヨーク8を設けない場合、副磁極の永久磁石10bの軸方向長さが短くなると主磁極の永久磁石10aの軸方向中央部分における磁石外部の磁気抵抗が増大し、界磁磁束が小さくなるため、主磁極の永久磁石10aの軸方向長さを長くする際の筒型リニアモータ1の推力向上度合が小さくなる。これに対して、永久磁石10a,10bの外周にヨーク8を設けると、磁気抵抗の低い磁路を確保できるので副磁極の永久磁石10bの軸方向長さの短縮に起因する磁気抵抗の増大が抑制される。よって、主磁極の永久磁石10aの軸方向長さを副磁極の永久磁石10bの軸方向長さよりも長くするとともに永久磁石10a,10bの外周に筒状のヨーク8を設けると筒型リニアモータ1の推力を大きく向上させ得る。ヨーク8の肉厚は、主磁極の永久磁石10aの外部磁気抵抗の増大を抑制に適する肉厚に設定されればよい。
ヨーク8は、図1に示すように、複数のヨーク分割体30を積層して形成されている。各ヨーク分割体30は、図2に示すように、それぞれ、円筒状であって軸方向の全長に亘って形成されたスリット30aを備えており、軸方向から見てC形状となっている。また、ヨーク分割体30は、スリット30aを挟んで周方向の端部の両側に対となる切欠30b,30bを備えている。ヨーク分割体30の内径は、積層磁石体10の外径よりも小径となっている。このように、ヨーク分割体30がスリット30aを備えているので、切欠30b,30bに図示しないプライヤーの先端を引っかけて当該プライヤーを開動作させると、スリット30a間の間隔を広げるように容易にヨーク分割体30を拡径させ得る。このようにプライヤー等の工具の利用によってヨーク分割体30の内径を積層磁石体10の外径よりも大きくするように拡径させつつ、ヨーク分割体30内に積層磁石体10を挿入した後、ヨーク分割体30の拡径を解除するとヨーク分割体30は元の径に戻ろうとする自己の復元力で積層磁石体10の外周に緊迫力を付加しつつ嵌合する。このように、ヨーク分割体30は、積層磁石体10の外周に緊迫力を付加しつつ嵌合するので、積層磁石体10の外周に強固に定着される。
各ヨーク分割体30は、前述のようにして積層磁石体10の外周に順次装着されて積層磁石体10の外周に積層され、積層磁石体10の外周を覆うヨーク8を形成している。各ヨーク分割体30は、それぞれスリット30aを備えているので、ヨーク8の全体としても軸方向の全長に亘ってスリット30aを備えていることになる。ヨーク8の軸方向長さは、積層磁石体10の軸方向長さ以上とされているが、永久磁石10a,10bがコア3のストローク範囲外に無駄に磁界を作用させて推力低下を招かないような長さに設定されている。なお、ヨーク8の軸方向長さは、積層磁石体10の全長と等しい長さとしてもよい。なお、ヨーク8の軸方向長さが積層磁石体10の全長よりも長い場合、積層磁石体10の末端の磁力線が大気へ漏れず筒型リニアモータ1の推力低下を防止できる。このように、ヨーク8の軸方向長さを積層磁石体10の軸方向長さよりも長くするには、積層磁石体10が永久磁石10a,10bの加工誤差によって採りうる軸方向の最大長さよりもヨーク8の軸方向長さを長くしておけばよい。
なお、ヨーク8の軸方向両端におけるヨーク分割体30以外のヨーク分割体30の軸方向長さは、界磁6における磁極ピッチPの長さの2倍に設定されている。ヨーク8の軸方向両端におけるヨーク分割体30は、全部のヨーク分割体30を積層した際に、ヨーク8の全長が界磁6の全長以上となるように設定されればよい。
界磁6における磁極ピッチPは、図3に示すように、主磁極の永久磁石10aの中央から副磁極の永久磁石10bを挟んで隣の主磁極の永久磁石10aの中央までとなる。また、磁力線の経路は、主磁極の永久磁石10aの中央から副磁極の永久磁石10bを挟んで隣の主磁極の永久磁石10aの中央までの範囲で主磁極の永久磁石10aから電機子2を通過して隣の主磁極の永久磁石10aに到るループ状となる。
よって、ヨーク分割体30の軸方向長さを磁極ピッチPの整数倍として、少なくともヨーク分割体30の軸方向の端部30cが主磁極の永久磁石10aの外周に配置されるようにすれば、積層磁石体10の磁力線が複数のヨーク分割体30を跨いでしまうが、ヨーク8の磁気抵抗の増大を押さえつつ磁力線の外部への漏れを抑制できる。
このように、ヨーク8が複数のヨーク分割体30を積層して形成されるので、ヨーク8がヨーク分割体30で構成されずに一体物である場合と比較して、積層磁石体10の外周に順々にヨーク8の全体長さからするとはるかに短いヨーク分割体30を装着する作業は、非常に容易となる。よって、積層磁石体10の外周へのヨーク8の装着作業が容易となるので、筒型リニアモータ1の組立が非常に簡単になる。なお、筒型リニアモータ1における積層磁石体10は、永久磁石10a,10bを接着しつつ積層して形成されるが、ヨーク分割体30の軸方向の全長に応じて、積層磁石体10を軸方向で分割していくつかの永久磁石10a,10bを積層した積層磁石分割体を製造し、積層磁石分割体の外周にヨーク分割体を装着した複数の分割界磁アッセンブリを製造し、分割界磁アッセンブリを積層して界磁6を製造するようにしてもよい。
また、ヨーク分割体30の軸方向長さは、理想的には、磁極ピッチPの整数倍として、ヨーク分割体30の両端部がともに積層磁石体10における主磁極の永久磁石10aの中央に配置されるようにヨーク分割体30を積層磁石体10の外周に装着すれば、磁力線が複数のヨーク分割体30間のギャップを横切らずに済み、ヨーク8の磁気抵抗が極小さくなるとともに磁力線の外部への漏れを抑制できる。前述したように、ハルバッハ配列による永久磁石10a,10bの場合、磁力線の経路が前述したように主磁極の永久磁石10aの中央から副磁極の永久磁石10bを挟んで隣の主磁極の永久磁石10aの中央の範囲で電機子2を通過してループする。そこで、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、ヨーク分割体30と隣のヨーク分割体30は、主磁極の永久磁石10aの軸方向中央の外周で当接しており、界磁6の磁力線がヨーク分割体30,30間の空隙を跨がずに済むようにして、ヨーク8を複数のヨーク分割体30で形成しても筒型リニアモータ1の推力が減少しないように配慮している。このようにすれば、ヨーク8を複数の筒状のヨーク分割体30を積層して形成しても、界磁6の内周側への磁界強度は、一つの筒体でなるヨークと遜色がない。つまり、ヨーク分割体30と隣のヨーク分割体30の当接面が主磁極の永久磁石10aの軸方向中央と同じ位置にくるようにすると、筒型リニアモータ1の良好な組付性と推力低下の防止とを両立できる。
なお、ヨーク分割体30の軸方向長さは、磁極ピッチPの整数倍であることが好ましいが、磁極ピッチPの整数倍以外の長さに設定されてもヨーク8として磁気抵抗の小さな磁気回路を提供でき電機子2側へ作用させる界磁磁束を大きくできる効果を果たさせるので、ヨーク分割体30の軸方向長さを磁極ピッチPの整数倍以外の長さに設定するのも可能である。また、本実施の形態では、積層磁石体10は、ハルバッハ配列となるように積層された永久磁石10a,10bで構成されているが、ラジアル方向に着磁されて内周にN極を持つ環状の永久磁石とラジアル方向に着磁されて内周にS極を持つ環状の永久磁石とを順番に積層して構成されてもよい。
また、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、図3に示すように、ヨーク分割体30の軸方向両端の内周の縁に面取部Cを設けている。このようにヨーク分割体30の軸方向両端の内周に面取部Cを設けると、永久磁石10a,10bの外周にヨーク分割体30を嵌合させる際に永久磁石10a,10bが面取部Cを滑ってヨーク分割体30内に導かれるので、より一層筒型リニアモータ1の組立が容易となる。
界磁6の内周側には、電機子2が軸方向移動自在に挿入されており、界磁6は、コア3に磁界を作用させている。なお、界磁6は、コア3の可動範囲に対して磁界を作用させればよいので、コア3の可動範囲に応じて永久磁石10a,10bの設置範囲を決定すればよい。したがって、バレル7と筒部9bとの環状隙間のうち、コア3に対向し得ない範囲には、永久磁石10a,10bを設置しなくともよい。
そして、筒部9bの外周とバレル7の内周との間には、環状のヘッド側スペーサ40、界磁6、環状のエンド側スペーサ41とが収容されている。ヘッド側スペーサ40は、筒状であって、図1中右側となる界磁側の外径より図1中左側となる反界磁側の外径が大きくなる形状となっており、大径部40aと小径部40bとを備えており、大径部40aの図1中左端がインナーチューブ9のヘッド部9aの図1中右端面に当接し、小径部40bの図1中右端が界磁6の左端に当接している。
エンド側スペーサ41は、筒状であって、図1中左側となる界磁側の外径より図1中右側となる反界磁側の外径が大きくなる形状となっており、大径部41aと小径部41bとを備えており、大径部41aの図1中右端がボトムキャップ12の底部12aの図1中左端面に当接し、小径部41bの図1中左端が界磁6の右端6bに当接している。
そして、筒部9bの外周には、図1中左から環状のヘッド側スペーサ40、界磁6、環状のエンド側スペーサ41が順に嵌合され、インナーチューブ9のヘッド部9aをバレル7に螺子締結した後、バレル7の図1中右端にボトムキャップ12を取り付けると、ヘッド側スペーサ40、積層磁石体10およびエンド側スペーサ41がインナーチューブ9におけるヘッド部9aとボトムキャップ12の底部12aとで挟持され、積層磁石体10がバレル7の内周に固定される。なお、積層磁石体10の外周に装着されるヨーク8は、ヘッド部9aとボトムキャップ12とによって軸方向で挟持されていないが、積層磁石体10の外周に緊迫力を付加しつつ嵌合されているので、積層磁石体10の外周に強固に定着されている。
なお、ヘッド部9aの内周には、第1ロッド20の外周を覆うカバー17の外周に摺接する環状のシール部材28が設けられており、筒型リニアモータ1内への塵や水などの侵入が防止されている。
そして、インナーチューブ9内には、電機子2が装着されたロッド11が軸方向移動自在に挿入され、筒部9bの内周にスライダ21b,25が摺接して、電機子2の軸方向の移動が案内される。
筒部9bは、コア3の外周と各永久磁石10a,10bの内周との間のギャップを形成するとともに、スライダ21b,25と協働してコア3の軸方向移動を案内する役割を果たしている。なお、本実施の形態では、電機子2は、単一のコア3のみを有して構成されているが、複数のコア3を持つ場合、電機子2の軸方向両端だけでなくコア3,3間にも筒部9bの内周に摺接するスライダを設けてもよい。
さらに、ボトムキャップ12の底部12aの内周には、ガイドロッド16が取り付けられている。ガイドロッド16は、底部12aの内周に固定される基端部16aと、基端部16aからロッド11側へ延びてロッド11内に摺動自在に挿入されるガイド部16bとを備えており、筒型リニアモータ1が伸縮しても常にロッド11の内周に摺接している。より詳細には、ガイドロッド16のガイド部16bは、第2ロッド21の内径大径部21dよりも先端側に摺動自在に挿入されている。
このように本実施の形態における筒型リニアモータ1では、ガイドロッド16がロッド11の内周に摺接し、スライダ21b,25が筒部9bに摺接しているので、電機子2はロッド11とともに界磁6に対して偏心せずに軸方向へスムーズに移動できるが、ガイドロッド16を廃止してもよい。
また、このように構成された筒型リニアモータ1では、電機子2の軸方向移動をガイドして界磁6に対する電機子2の偏心を防止する筒部9bがヘッド部9aと一体構造になっているので、筒部9bとヘッド部9aに歪が生じにくくスライダ21b,25が筒部9bの内周を滑らかに摺動でき、スムーズに伸縮できる。
そして、筒型リニアモータ1は、ロッド11の界磁6に対する位置を図示しないストロークセンサで検知し、コア3の界磁6に対する電気角を把握して通電位相切換を行うとともにPWM制御により、各巻線5の電流量を制御して、筒型リニアモータ1における推力と電機子2の移動方向とを制御するコントローラによって駆動される。なお、前述のコントローラにおける制御方法は、一例でありこれに限られない。また、電機子2と界磁6とを軸方向に相対変位させる外力が作用する場合、巻線5への通電、あるいは、巻線5に発生する誘導起電力によって、前記相対変位を抑制する推力を発生させて筒型リニアモータ1に前記外力による機器の振動や運動をダンピングさせ得るし、外力から電力を生むエネルギー回生も可能である。
以上のように、本発明の筒型リニアモータ1は、内周に軸方向にN極とS極とが交互に配置されるように積層される複数の環状の永久磁石10a,10bで形成される積層磁石体10と、積層磁石体10の外周に配置される磁性体で形成される筒状のヨーク8とを有する筒状の界磁6と、界磁6に対して界磁6の軸方向に移動可能な電機子2とを備え、ヨーク8は、積層磁石体10の外径よりも小径な内径を有するとともに、軸方向の全長に亘りスリット30aを有している。
このように構成された筒型リニアモータ1では、ヨーク8がスリット30aを有しているので、ヨーク8を拡径させて積層磁石体10に容易に装着でき、ヨーク8の積層磁石体10への装着の後、ヨーク8は、自己の復元力によって積層磁石体10に緊迫力を付加しつつ嵌合するので、積層磁石体10に強固に固定される。よって、このように構成された筒型リニアモータ1によれば、ヨーク8が積層磁石体10に強固に固定されるので、電機子2が界磁6に対して軸方向へ移動する際に電機子2の磁力によって吸引されてヨーク8が積層磁石体10に対して軸方向へずれてしまうことがない。また、ヨーク8がスリット30aを備えておりヨーク8を容易に拡径して積層磁石体10から取り外せるため、筒型リニアモータ1のメンテナンス時において界磁6の分解が可能であるとともに、ヨーク8の積層磁石体10への装着も容易である。
よって、本実施の形態の筒型リニアモータ1によれば、界磁6における積層磁石体10に対するヨーク8のずれを防止できるとともに界磁6の分解が可能となる。また、界磁6の分解が可能となるので、筒型リニアモータ1のメンテナンスが可能となる。
なお、ヨーク8が複数のヨーク分割体30を備えず、1つの部品である場合、ヨーク8は、軸方向の全長に亘って1つのスリットを備えていればよい。ただし、ヨーク8が複数の筒状のヨーク分割体30を積層して構成される場合、積層磁石体10へのヨーク8の定着作業が容易となる利点がある。また、ヨーク分割体30の軸方向の全長に亘ってスリット30aが形成されており、ヨーク分割体30を積層してヨーク8を形成しても、ヨーク8の全体でみれば、ヨーク8の軸方向の全長に亘ってスリット30aが設けられる。よって、ヨーク分割体30にそれぞれ設けられたスリット30aは、複数のヨーク分割体30を積層してヨーク8を形成した際に隣り合うヨーク分割体30のスリット30a同士が軸方向に見て一続きに互いに連通される必要なない。
また、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、ヨーク8はスリット30aを挟んだ両側に工具の差し込みを可能とする対を成す切欠30b,30bを備えている。このように構成された筒型リニアモータ1によれば、切欠30b,30bに工具を引っかけてヨーク8を容易に拡径できるので、積層磁石体10へのヨーク8の定着作業を容易に行える。なお、切欠30b,30bは、ヨーク分割体30の周方向端部に設けられてスリット30aに開口しているが、スリット30aとは離間したヨーク分割体30の肉部を貫く孔とされてもよい。さらに、切欠30b,30bの形状は、工具の差し込みが可能であってヨーク8の拡径に利することができればよいので、図示した形状に限定されない。
さらに、ヨーク8に設けられるスリット30aの形成方向は、図4に示すように、ヨーク8を軸方向から見て径方向(図4中線dで示す方向)に対して角度θをもって傾斜していてもよい。積層磁石体10の外周側の磁力線は、積層磁石体10が筒状であるので径方向へ放射状に外周側へ向かうことになるが、スリット30aが径方向に対し傾斜する方向に向けて形成されているので、図4に示すように、ヨーク8の肉部を通過することなくスリット30a内だけを径方向に通過してヨーク8の外側へ向かい難くなる。スリット30aのヨーク8の径方向に対する傾斜角度θが大きくなると、ヨーク8の外周側から径方向に向かって見ると積層磁石体10が露出しなくなり、磁力線は必ずヨーク8の肉部を通過するようになる。このように、スリット30aが径方向に対し傾斜する方向に向けて形成された筒型リニアモータ1によれば、スリット30aを設けることによってヨーク8内を通過せずにスリット30a内のみを通過して外部へ漏れる磁力線数を減らせるので、電機子2へより強い磁界を作用させて推力を向上できる。
また、ヨーク8に設けられるスリット30dの形状は、図5に示すように、ヨーク8を径方向から見て波形であってもよい。このように、スリット30dの形状を波形とすると、ヨーク8に切欠30b,30bを設けなくとも、ヨーク8の周方向の端部の形状に凹凸ができ、凹部分に工具を引っかけてヨーク8を容易に拡径できるので、積層磁石体10へのヨーク8の定着作業を容易に行える。なお、スリット30dの形状には、工具の引っ掛けが可能である形状である限りにおいて、波が湾曲した正弦波形状、波が矩形の矩形波形状、波が三角形の三角波形状等といった種々の形状を採用できる。
なお、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、ヨーク8が積層磁石体10の外周に定着されているが、電機子2の内方に界磁6が挿入される構造の筒型リニアモータの場合、積層磁石体10の内周にヨーク8を定着すればよい。この場合、ヨーク8にスリット30aを設けてヨーク8の外径を積層磁石体10の内径よりも大径にし、ヨーク8を縮径して積層磁石体10の内周に挿入した後、ヨーク8の縮径を解いてヨーク8の復元力で積層磁石体10の内周に緊迫力を与えつつ嵌合させてヨーク8を積層磁石体10の内周に定着させればよい。
このように積層磁石体10の内周にヨーク8を装着するに際しては、ヨーク8にスリット30aを挟んだ両側に工具を差し込んでヨーク8を縮径させ得る態様で切欠を設けておけばよい。また、切欠に代えて、ヨーク8の周方向の両端に内周側に突出する爪を設けて、爪同士を工具で挟むことでヨーク8を縮径させて積層磁石体10内に挿入できるようにしてもよい。
ヨーク8が積層磁石体10内に定着される態様であっても、スリット30aの形成方向がヨーク8の径方向に対して傾斜する方向であれば、磁力線の漏れを抑制して電機子2側へ強度の高い磁界を作用させて筒型リニアモータ1の推力を向上できる。
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
1・・・筒型リニアモータ、2・・・電機子、6・・・界磁、8・・・ヨーク、10・・・積層磁石体、10a・・・主磁極の永久磁石、10b・・・副磁極の永久磁石、30a,30d・・・スリット、30b・・・切欠

Claims (4)

  1. 内周或いは外周の一方に軸方向にN極とS極とが交互に配置されるように積層される複数の環状の永久磁石で形成される積層磁石体と、前記積層磁石体の内周或いは外周の他方に配置される磁性体で形成される筒状のヨークとを有する筒状の界磁と、
    前記界磁に対して前記界磁の軸方向に移動可能な電機子とを備え、
    前記ヨークは、前記積層磁石体の外径よりも小径な内径、或いは前記積層磁石体の内径よりも大径な外径を有するとともに、軸方向の全長に亘りスリットを有する
    ことを特徴とする筒型リニアモータ。
  2. 前記ヨークを軸方向から見て、前記スリットの形成方向が前記ヨークの径方向に対して傾斜している
    ことを特徴とする請求項1に記載の筒型リニアモータ。
  3. 前記ヨークは、前記スリットを挟んだ両側に工具の差し込みを可能とする対を成す切欠を有する
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の筒型リニアモータ。
  4. 前記スリットは、前記ヨークの径方向から見て波形状である
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の筒型リニアモータ。
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