JP2023122340A - 混合体及びその成型体 - Google Patents

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Eiji Akiba
善彦 大村
Yoshihiko Omura
哲郎 戸田
Tetsuro Toda
敏和 米田
Toshikazu Yoneda
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Abstract

【課題】樹脂中にナノファイバーを練り込み分散することにより、繊維補強効果による成型体の強度の向上と寸法安定性の向上を図ることを目的とする。【解決手段】ナノファイバーが、相溶性のない2種類の熱可塑性樹脂Aおよび熱可塑性樹脂Bの混合物中に分散された混合体であり、熱可塑性樹脂Aおよび熱可塑性樹脂Bの少なくとも一方の結晶化度が40%以上である。【選択図】なし

Description

本発明は、ナノファイバーが樹脂中に分散された混合体及びその成型体に関する。
近年、ナノレベルの直径を有する繊維であるナノファイバー、例えばカーボンナノファイバー、セルロースナノファイバー、及びキチンナノファイバーなどは、種々の製造あるいは分散技術が開発されており、新規素材としての活用が期待されている。
ナノファイバーは、直径が1~1000nmであり、長さが直径の100倍以上ある繊維であり、従来の繊維と比べて優れた特性を有する。具体的には、比表面積が大きく、吸着性能や接着力、分子認識性に優れ(超比表面積特性)、繊維径が光の波長(400~700nm)より小さいため、乱反射が少なく、透明性に優れ(ナノサイズ特性)、分子配向性が高いため、強度、電気伝導性、および熱伝導性に優れている(分子配列特性)。
このため、新規かつ特殊な機能を発揮する素材として注目されており、その利用が進められている。ナノファイバーの原料としては、カーボン、珪素等の無機材料、ナイロン、ポリエステル等の高分子材料が主たるものである。
しかしながら、最近では、環境への配慮や、資源枯渇のおそれが少ないことからセルロース、キチン等の生物由来材料(バイオマス)からバイオナノファイバーを得て、これらを利用することについても盛んに研究がなされている。
セルロースは、原料である木材、藁が栽培できるため循環資源として枯渇のおそれがなく、セルロースナノファイバーは、補強材としての炭素繊維やガラス繊維と比べて透明化できる利点や、廃棄して燃やす場合に、ガラス繊維と違い、燃えカスが残らないというメリットがある。
セルロースナノファイバーの分散液の製造方法としては、セルロースをTEMPO(2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジン-N-オキシル)触媒の存在下で酸化させ、スクリュー型ミキサーやディスク型レファイナー等の機械的な解繊処理を施すことによりセルロースナノファイバーを製造する方法が開示されている(例えば、特許文献1)。
一方、キチンは、カニ、エビ等の甲殻類の外皮に豊富に含まれており、甲殻類の外皮を原料とするキチン含有生物由来の材料をナノファイバー化するための研究が行われている。例えば、特許文献2によれば、キチン含有生物由来の材料のナノファイバー化は、キチン含有生物由来の材料の周囲及び間隙に存在する蛋白質及び灰分(主として炭酸カルシウム)を含むマトリックスを除く脱蛋白工程及び脱灰工程と、得られたキチンナノファイバーを解繊(分散)する解繊処理工程を経て行われる。このキチンナノファイバーは、セルロースナノファイバーと異なりアセトアミド基を有するアミノ多糖のナノ繊維であり、生分解性に優れ、生体親和性が高く、また解繊処理が比較的容易であるため、原材料コストは高価であるが、解繊工程に係る費用はセルロースナノファイバーに比べて安価であるという特徴がある。
脱蛋白工程では、水酸化カリウム等のアルカリ水溶液を用いるアルカリ処理法、プロテアーゼ等の蛋白質分解酵素を用いる酵素法が採用されている。脱灰工程では、塩酸等の酸性水溶液を用いる酸処理法、エチレンジアミン四酢酸等のキレート剤を用いるキレート処理法が採用されている。解繊処理工程では、脱蛋白・脱灰処理されたキチンナノファイバーを弱酸(pH3~4)で処理後、石臼式摩砕器、高圧ホモジナイザー、凍結粉砕装置などの機械的解繊処理が採用されている。
また、特許文献2に開示されているナノファイバーの解繊処理法以外に、セルロース、キチン、キトサン等の多糖類の分散液を一対のノズルから70~250MPaの高圧で噴射させた噴射流を互いに衝突させて粉砕する湿式粉砕法(例えば、特許文献3)や、バイオマスの分散流体を100~240MPaで高圧噴射して衝突用硬質体に衝突させて粉砕する高圧噴射法(例えば、特許文献4)が開示されている。
さらに、物理的な解繊に起因する繊維の切断によるアスペクト比の減少を回避するために、回旋式マイクロバブル発生装置とメディアレスミルを用いたバイオナノファイバーの2段階解繊方法(例えば、特許文献5)も開示されている。
また、キチンナノファイバーの利用事例として、特殊な解繊分散技術により親水性のキチンナノファイバーを有機溶媒に分散し、塗料として利用することにより、キチンナノファイバー特有の特性を有する塗工被膜を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献6)。
また、ナノファイバーが樹脂中に均一に分散する場合は、ガラス繊維が分散する繊維強化プラスチック(FRP)と比べて、軽量な繊維強化プラスチックとなることが期待されてきた。しかし、キチンナノファイバーは、その特性として表面に水酸基が多く、親水性が高いため、疎水性の高い樹脂と混合すると、樹脂成分中でキチンナノファイバーが凝集してしまい、キチンナノファイバーによる補強効果が十分に発揮できなかった。そこで、熱硬化性樹脂中にキチンナノファイバーを分散して補強効果を発揮する層を、熱可塑性樹脂表面にコートする方法が開示されている(例えば、特許文献7)が、これは熱可塑性樹脂自体にキチンナノファイバーを含むものではなく、本質的に樹脂の補強に寄与するものではない。
また、キチンナノファイバーを一旦可塑剤に分散させ、これを熱可塑性樹脂に練り込んで樹脂中に分散させる方法が提案されている(例えば、特許文献8)。しかし、樹脂中に練り込んだキチンナノファイバーによる補強効果は弱く、成型体の強度アップや寸法安定性アップに寄与する樹脂補強効果は得られていない。このように、ナノファイバーを溶融樹脂中に練り込んだ成型体において、明確な繊維補強効果が得られている事例はこれまでなかった。
さらに、固形物を含有する水分散液を微細に練り込む手法(例えば、特許文献9)も提案されているが、ナノファイバー分散液を樹脂中に練り込む効果は不明であった。
特開2008-001728号公報 国際公開2010/073758号 特開2005-270891号公報 特開2011-056456号公報 特開2017-094218号公報 特開2012-117019号公報 特開2012-131201号公報 特開2016-89032号公報 特許第5486736号公報
そこで、本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、樹脂中にナノファイバーを練り込み分散することにより、繊維補強効果による成型体の強度の向上と寸法安定性の向上を図ることを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、以下の好適な態様を提供するものである。
[1]ナノファイバーが、相溶性のない2種類の熱可塑性樹脂Aおよび熱可塑性樹脂Bの混合物中に分散された混合体であり、熱可塑性樹脂Aおよび熱可塑性樹脂Bの少なくとも一方の結晶化度が40%以上である、混合体。
[2]ナノファイバーが、キチンナノファイバーである、前記[1]に記載の混合体。
[3]ナノファイバーが、セルロースナノファイバーである、前記[1]に記載の混合体。
[4]ナノファイバーの含有量が2.0質量%以下である、前記[1]~[3]のいずれかに記載の混合体。
[5]混合体中のナノファイバーの直径が1~200nmであり、長さが0.2~50μmである、前記[1]~[4]のいずれかに記載の混合体。
[6]結晶化度が40%以上である熱可塑性樹脂の含有量が、混合体全体に対して60質量%以上である、前記[1]~[5]のいずれかに記載の混合体。
[7]前記[1]~[6]のいずれかに記載の混合体を含む成型体。
本発明によれば、混合体中に分散したナノファイバーの繊維補強効果により、相溶性のない樹脂の混合物を用いて作製した成型体において、ナノファイバーを含まない成型体に比し、強度の向上と寸法安定性の向上を図ることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の混合体は、ナノファイバーが、相溶性のない2種類の熱可塑性樹脂Aおよび熱可塑性樹脂Bの混合物中に分散されたものである。
<熱可塑性樹脂>
本発明に用いる熱可塑性樹脂Aおよび熱可塑性樹脂Bは、互いに相溶性のない樹脂であり、少なくとも一方の結晶化度が40%以上であれば、樹脂の種類とその組み合わせは、特に限定されない。
結晶化度が40%以上である熱可塑性樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂、低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)樹脂、メタロセン触媒により得られたポリプロピレン(メタロセンPP)樹脂、メタロセン触媒により得られたポリエチレン(メタロセンPE)樹脂などが挙げられる。
また、本発明においては、熱可塑性樹脂Aおよび熱可塑性樹脂Bのうち、一方の結晶化度が40%以上であればよく、もう一方の熱可塑性樹脂においては、結晶化度が40%未満の樹脂を用いてもよい。
結晶化度が40%未満の樹脂としては、例えば、ポリプロピレン(PP)樹脂(ホモPP樹脂、ランダムPP樹脂、ブロックPP樹脂、変性PP樹脂)、エチレン-酢酸ビニル共重合(EVA)樹脂、熱可塑性エラストマー(TPE)等のオレフィン系エラストマー、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合(ABS)系樹脂、ポリスチレン(PS)系樹脂(汎用ポリスチレン(GPPS)樹脂、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)樹脂等)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリエステル系樹脂(ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂等)、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂等を挙げることができる。
また、熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bは、互いに相溶性のない樹脂であり、相溶性のない熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bの組み合わせとして、熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bとが、強いせん断をかけて溶融混合した場合であっても分子状態までは混合せず、熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bとが相分離して明確な界面を形成するものを選ぶことができる。例えば、結晶化度40%以上のポリエチレンと、結晶化度40%未満のポリプロピレンの組み合わせは、相溶性がなく溶融混錬時の温度条件が近いため、本発明に好適に用いることができる。
さらに、結晶化度40%以上の樹脂を構成する分子は、溶融状態において比較的動きやすく、それゆえに容易に結晶を形成することができるという性質を有する。この挙動により、溶融樹脂中のナノファイバーとナノファイバーの間に分子が入り込みやすくなるため、ナノファイバー同士の凝集を防ぎ、結果として、ナノファイバー単体での分散に寄与しているものと推定される。
<ナノファイバー>
本発明に用いるナノファイバーは、キチンナノファイバーやセルロースナノファイバーを分散した混合液を用いることができ、混合液中のナノファイバーの直径が1~200nmであり、長さが0.2~50μmであるものを用いることができる。
また、本発明では、混合体中のナノファイバーの含有量は2.0質量%以下が好ましい。ナノファイバーの含有量が2.0質量%を超えると、混錬中にナノファイバーの凝集が生じ、繊維補強効果がナノファイバー含有量に比例して向上しない場合があるためである。
<溶融混錬方法>
2種類の相溶性のない樹脂にナノファイバー水分散液を練り込む際に溶融混錬を行うための混錬機としては、ナノファイバーを精密に樹脂中に分散させるために、せん断効率の高い混錬機を使用することが好ましい。そのうち、作業効率の向上や均一な品質を確保するとの観点から、せん断効率の高いセグメントの設計をした2軸混錬装置を使用することが好ましい。
また、混錬の際には、例えば、特許第5486736号の手法を用いることができる。すなわち、2種類の樹脂に相溶性がなく、いずれか一方の結晶化度が40%以上である熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bとを高いせん断効率で溶融混錬し、不連続界面が生じている部分にナノファイバー水分散液を練り込む手法を用いることができる。
練り込まれた水分散液は、まず、2種類の溶融樹脂の不連続界面に入り込み、さらに熱を受けて水が蒸散し、ナノファイバーのみが不連続界面に残る。そして、残ったナノファイバーは、40%以上の結晶化度を有する熱可塑性樹脂側に混錬分散する。
さらに、この分散体に、熱可塑性樹脂Aまたは熱可塑性樹脂Bのうち、結晶化度が40%以上である熱可塑性樹脂を配合して、その樹脂の比率を60質量%以上とすることにより、混合体の主成分を、結晶化度40%以上である熱可塑性樹脂とすることができ、その中にナノファイバーが凝集することなく分散しているため、繊維補強効果が発現し、相溶性のない樹脂の混合物を用いて作製した成型体において、強度の向上と寸法安定性の向上を図ることができる。
本発明は、特に、汎用の熱可塑性樹脂のうち、結晶化度が40%以上の樹脂に適用できるものであり、軽量性を確保しながら、各種の樹脂成型体や溶融紡糸による繊維成型体の性能の向上(強度と寸法安定性の向上)を図ることができる。
<成型体の製造方法>
本発明の混合体を含む成型体の成型工程は、射出成型、押出成型、ブロー成型及び溶融紡糸等、どのような成型方法であってもよい。溶融紡糸による繊維成型体としては、所定の形状を有する織物や編物、不織布(各種衣料、マスク、フィルター、包装材料等)を挙げることができる。
また、近年、ポリエチレンやポリエチレン変性ポリプロピレンによる不織布の繊維構造体が肌着などの衣類に利用されているが、本発明の混合体を使用することにより、柔らかい風合いと使用に十分に耐え得る強度とを併せ持つ繊維製品とすることができる。このように、本発明の混合体を使用することにより、柔らかいポリエチレン系の成型体において、強度の向上と寸法安定性の向上を図ることができる。
以下に、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、これらの実施例を本発明の趣旨に基づいて変形、変更することが可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。
<キチンナノファイバー水分散液>
以下の手順で、キチンナノファイバー水分散液を作製した。
(1)脱蛋白処理
乾燥カニ殻(カナダ産、川井肥料株式会社より購入、100g)を5%KOH水溶液に加え、6時間還流し、カニ殻中の蛋白質を除去した。処理したカニ殻を濾過した後、中性になるまで水でよく洗浄した。
(2)脱灰分処理
脱蛋白処理を行ったカニ殻を7%HCl水溶液で室温下、2日間撹拌し、カニ殻中の灰分を除いた。その後、再び、カニ殻を濾過して中性になるまで水でよく洗浄した。
(3)脱色素処理
1.7%のNaClOの0.3M酢酸ソーダ緩衝溶液に脱配分処理を行ったカニ殻を加え、80℃、6時間撹拌し、カニ殻に含まれる色素分を除去した。そして、再び、カニ殻を濾過して中性になるまで水でよく洗浄した。
(4)解繊処理
脱色素処理を行ったカニ殻を水に分散させ、分散液を家庭用ミキサーで砕いた後、酢酸を添加してpHを3~4に調製し、72時間撹拌した。次に、酢酸処理されたカニ殻の分散液(1.6質量%)を旋回式マイクロナノバブル発生装置(トリビオクスラボラトリー製、商品名:TFBS-1)を備えた解繊処理槽に供し、マイクロナノバブル条件を、送液流量を30L/分、エア流量を2L/分、マイクロバブルの粒径を40μmとして、室温で48時間撹拌して、キチンナノファイバーに解繊させ、キチンナノファイバー(1.6質量%)の水分散液C1を得た。なお、分散したキチンナノファイバーのサイズは、直径が3~200nm、長さが500nm~50μmであった。
<セルロースナノファイバー水分散液>
セルロースナノファイバーとして、BiNFi-s cellulose WMa-10002(2.0質量%セルロースナノファイバー分散液、スギノマシン社製)を用い、セルロースナノファイバー(2.0質量%)の水分散液C2とした。なお、分散したセルロースナノファイバーのサイズは、直径が1~100nm、長さが200nm~10μmであった。
<ナノファイバーのサイズの測定方法>
上述のキチンナノファイバー及びセルロースナノファイバーの直径と長さは、走査型プローブ顕微鏡(株式会社島津製作所製、商品名:SPM-9700HT)を用いて画像解析から算出した。特に、キチンナノファイバーについては、酢酸ウランによるネガティブ染色法(湿式)による前処理を行った後、TEM画像撮影(日本電子株式会社製、商品名:JEM-1400)を行い、画像解析から算出した。
<広角X線回折法による結晶化度の測定>
樹脂の結晶化度は、X線回折法により、非晶に由来する散乱領域と結晶に由来する散乱領域とを分け、全散乱強度に対する結晶散乱強度の比として計算した。なお、結晶部と非晶部の分離には多重ピーク分離プログラムを用いた。
[数1]
結晶化度(%)=[結晶由来散乱強度/(結晶由来散乱強度+非晶由来散乱強度)]×100 (1)
<強度評価>
JIS Z 1702に準じて、ダンベル形試験片を、シートから長さ方向を縦方向、幅方向を横方向として5個ずつ切り出したものを試験片とし、材料強度試験機(インストロン社製、5581型)を用いて、試験速度が10mm/minの条件で、引張強さS(N)を測定し、5個の試験片の平均値を算出した。
そして、後述の基準用の混合体D0を用いた成型体(ナノファイバーを含まない成型体)の試験片における縦方向の強度をSm0、横方向における強度をSc0とし、後述の各実施例、及び各比較例の混合体D1を用いた成型体(ナノファイバーを含む成型体)の試験片における縦方向の強度をSm1、横方向における強度をSc1とし、下記の式(2)~(3)を用いて、ナノファイバーを含まない成型体に対する、各実施例、及び比較例の成型体における強度アップ率を算出した。
[数2]
縦強度アップ率(%)=[(Sm1-Sm0)/Sm0]×100 (2)
[数3]
横強度アップ率(%)=[(Sc1-Sc0)/Sc0]×100 (3)
<寸法安定性評価>
シートから長さ方向を縦方向、幅方向を横方向として、幅が20mm、長さが50mmの試験片を2個ずつ切り出した。そして、熱機械分析装置(SIIナノテクノロジー(株)製、商品名:TMA/SS6100)を用いて、荷重が49mN、昇温速度が5℃/minの条件で、30~70℃における平均線膨張率(%)を測定し、2個の試験片の平均値を算出した。
そして、後述の基準用の混合体D0を用いた成型体(ナノファイバーを含まない成型体)の試験片における縦方向の熱膨張率をEm0、横方向における熱膨張率をEc0とし、後述の各実施例、及び各比較例の混合体D1を用いた成型体(ナノファイバーを含む成型体)の試験片における縦方向の熱膨張率をEm1、横方向における熱膨張率をEc1とし、下記の式(4)~(5)を用いて、ナノファイバーを含まない成型体に対する、各実施例、及び比較例の成型体における熱膨張ダウン率を算出した。
[数4]
縦熱膨張ダウン率(%)=[(Em0-Em1)/Em0]×100 (4)
[数5]
横熱膨張ダウン率(%)=[(Ec0-Ec1)/Ec0]×100 (5)
(実施例1)
LLDPE(日本ポリエチレン社製、商品名:ノバテックLL UJ790、結晶化度:46%)とホモPP(プライムポリマー社製、商品名:プライムポリプロJ108M、結晶化度:33%)とを、50/50の質量比率で混合し、キチンナノファイバー分散液C1(キチンナノファイバー含有率:1.6質量%)を添加しながら、2軸混錬機にて、水蒸気を脱気しながら混錬し、キチンナノファイバーを0.16質量%含有する混合物を得た。さらに、この混合物とLLDPEとを50/50の質量比で混合し、2軸混錬による溶融混錬により、キチンナノファイバーを0.08質量%含有する混合体D1(結晶化度が46%であるLLDPEの含有量が75質量%)を得た。
また、キチンナノファイバー分散液を添加せずに、LLDPE(日本ポリエチレン社製、商品名:ノバテックLL UJ790、結晶化度:46%)とホモPP(プライムポリマー社製、商品名:プライムポリプロJ108M、結晶化度:33%)とを、75/25の質量比率で混合し、2軸混錬した基準用の混合体D0を得た。
そして、混合体D0,D1を用いて、通常のTダイによるフィルム押し出し成型機にて幅が20cm、厚みが300μmのシートを作製し、これらのシートから、所定の試験片を切り出し、上述の強度評価および寸法安定性評価を行った。以上の結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例1におけるキチンナノファイバー分散液の代わりに、セルロースナノファイバー水分散液C2(セルロースナノファイバー含有率:2.0質量%)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、セルロースナノファイバーを1.0質量%含有する混合物を得た。また、その後、実施例1と同様にして、混合体D1(結晶化度が46%であるLLDPEの含有量が75質量%)、基準用の混合体D0(セルロースナノファイバー分散液を添加せずに、LLDPEとホモPPとを、75/25の質量比率で混合し、2軸混錬したもの)、シート、および試験片を作製し、強度評価および寸法安定性評価を行った、以上の結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例1における樹脂を、LLDPE(日本ポリエチレン社製、商品名:ノバテックLL UJ790、結晶化度:46%)とメタロセンPP(日本ポリプロ(株)製、商品名:ウィンテックMWX02UX、結晶化度:72%)に変更し、質量比率をLLDPE/メタロセンPP=25/75としたこと以外は、実施例1と同様にして、キチンナノファイバーを0.8質量%含有する混合物を得た。また、その後、実施例1と同様にして、混合体D1(結晶化度が40%以上であるLLDPEおよびメタロセンPPの合計の含有量が100質量%)、基準用の混合体D0(キチンナノファイバー分散液を添加せずに、LLDPEとメタロセンPPとを、25/75の質量比率で混合し、2軸混錬したもの)、シート、および試験片を作製し、強度評価および寸法安定性評価を行った、以上の結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1における樹脂を、LLDPE(日本ポリエチレン社製、商品名:ノバテックLL UJ790、結晶化度:46%)のみとしたこと以外は、実施例1と同様にして、キチンナノファイバーを0.8質量%含有する混合物を得た。また、その後、実施例1と同様にして、混合体D1(結晶化度が46%であるLLDPEの含有量が100質量%)、基準用の混合体D0(キチンナノファイバー分散液を添加せずに、LLDPEのみを2軸混錬したもの)、シート、および試験片を作製し、強度評価および寸法安定性評価を行った、以上の結果を表1に示す。
(比較例2)
実施例1における樹脂を、メタロセンPP(日本ポリプロ(株)製、商品名:ウィンテックMWX02UX、結晶化度:72%)のみとしたこと以外は、実施例1と同様にして、キチンナノファイバーを0.8質量%含有する混合物を得た。また、その後、実施例1と同様にして、混合体D1(結晶化度が72%であるメタロセンPPの含有量が100質量%)、基準用の混合体D0(キチンナノファイバー分散液を添加せずに、メタロセンPPのみを2軸混錬したもの)、シート、および試験片を作製し、強度評価および寸法安定性評価を行った、以上の結果を表1に示す。
表1に示すように、実施例1~3のシートにおいては、縦強度アップ率と横強度アップ率は、どちらも100%を超えるとともに、縦熱膨張ダウン率と横熱膨張ダウン率は、どちらも100%を下回り、キチンナノファイバーの配合による繊維補強効果(強度の向上と寸法安定性の向上)が確認できた。
一方、比較例1のシートにおいては、縦強度アップ率と横強度アップ率は、どちらも100%を下回るとともに、横熱膨張ダウン率は100%を超え、キチンナノファイバーの配合による繊維補強効果(強度の向上と寸法安定性の向上)が確認できなかった。これは、キチンナノファイバーが樹脂中に均一に分散しなかったためであると推測される。
また、比較例2のシートにおいては、縦強度アップ率は100%を下回るとともに、横熱膨張ダウン率は100%を超え、キチンナノファイバーの配合による繊維補強効果(強度の向上と寸法安定性の向上)が確認できなかった。これは、キチンナノファイバーが樹脂中に均一に分散しなかったためであると推測される。
上記内容より、本発明は、ナノファイバーが樹脂中に分散された混合体及びその成型体に適しており、特に、汎用の熱可塑性樹脂が使用される混合体及びその成型体に適用できる。

Claims (7)

  1. ナノファイバーが、相溶性のない2種類の熱可塑性樹脂Aおよび熱可塑性樹脂Bの混合物中に分散された混合体であり、前記熱可塑性樹脂Aおよび前記熱可塑性樹脂Bの少なくとも一方の結晶化度が40%以上である、混合体。
  2. 前記ナノファイバーが、キチンナノファイバーである、請求項1に記載の混合体。
  3. 前記ナノファイバーが、セルロースナノファイバーである、請求項1に記載の混合体。
  4. 混合体中の前記ナノファイバーの含有量が2.0質量%以下である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の混合体。
  5. 前記ナノファイバーの直径が1~200nmであり、長さが0.2~50μmである、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の混合体。
  6. 結晶化度が40%以上である前記熱可塑性樹脂の含有量が、混合体全体に対して60質量%以上である、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の混合体。
  7. 請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の混合体を含む成型体。
JP2022025991A 2022-02-22 2022-02-22 混合体及びその成型体 Pending JP2023122340A (ja)

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