JP2023119563A - アデノ随伴ウイルス結合性タンパク質の精製方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 試料中に含まれるアデノ随伴ウイルス(AAV)を高純度、高効率かつ大量精製可能な方法を提供すること。【解決の手段】 AAV結合性タンパク質を含む試料を陰イオン交換クロマトグラフィ用担体に供した後、前記担体から溶出した画分を陽イオン交換クロマトグラフィ用担体に供して精製することで、前記課題を解決する。【選択図】 図2

Description

本発明は、試料中に含まれるアデノ随伴ウイルス結合性タンパク質の精製方法に関する。特に本発明は、前記タンパク質の工業的な製造に適した精製方法に関する。
アデノ随伴ウイルス(AAV)はパルボウイルス科(Parvoviridae)、ディペンドウイルス属(Dependovirus)に分類される非エンベロープウイルスである。AAV外殻粒子は3種類のタンパク質(VP1、VP2およびVP3)で構成されており、約60のタンパク質分子がおよそVP1:VP2:VP3=1:1:10の比率で混在し集合することで、直径20nmから30nmの正二十面体の形状をしている。
AAVはヒトを含む広範な種の細胞に感染可能で、血球、筋、神経細胞などの分化を終えた非分裂細胞にも感染すること、ヒトに対する病原性がないため副作用の心配が低いこと、ウイルス粒子が物理化学的に安定であること、などから、先天性遺伝子疾患の治療を目的とした遺伝子導入用のベクターとしての利用価値が注目されている。
AAVを簡便かつ高純度に精製する方法として、不溶性担体と当該担体に固定化したAAV結合性タンパク質(AAVへの結合活性を有したタンパク質)とを含むAAV吸着剤を用いたアフィニティクロマトグラフィで精製する方法が知られている(特許文献1)。
前記方法でAAVを大量精製するには、AAV吸着剤のリガンドであるAAV結合性タンパク質を高純度かつ大量に製造する必要がある。AAV結合性タンパク質がAAV受容体である場合の前記タンパク質の製造方法は特許文献1に開示されている。具体的には、ポリヒスチジンタグを付加したAAV受容体を発現可能な組換え大腸菌を培養することで、前記受容体を発現後、発現した前記受容体を含む培養液を金属キレートアフィニティクロマトグラフィを用いて精製することで、AAV受容体を製造している。しかしながら精製工程で用いる、金属キレートアフィニティクロマトグラフィ用担体は高価なため大量精製には不向きであり、かつ前記担体に結合している金属イオンの溶出も否定できない。
WO2021/106882号
本発明の課題は、試料中に含まれるAAV結合性タンパク質を高純度、高効率かつ大量精製可能な方法を提供することにある。
本発明者らは鋭意検討した結果、試料中に含まれるアデノ随伴ウイルス(AAV)結合性タンパク質を陰イオン交換クロマトグラフィに供した後、陽イオン交換クロマトグラフィに供することで、前記タンパク質を高純度、高効率かつ大量に精製できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下の発明を包含する:
[1]試料中に含まれるAAV結合性タンパク質の精製方法であって、以下の(1)から(3)に示す工程を少なくとも含む、前記方法:
(1)AAV結合性タンパク質を含む試料を陰イオン交換クロマトグラフィ用担体に添加し、当該担体に前記タンパク質を吸着させる工程、
(2)陰イオン交換クロマトグラフィ用担体に吸着したAAV結合性タンパク質を第一の溶出液を用いて溶出させる工程、
(3)前記第一の溶出液で溶出したAAV結合性タンパク質を含む画分を陽イオン交換クロマトグラフィ用担体に添加し、前記タンパク質を含む画分を回収する工程。
[2]第一の溶出液が、120mmol/L以上300mmol/L以下の塩化ナトリウムを含む緩衝液である、前記[1]に記載の方法。
[3]前記(3)の工程が、前記第一の溶出液で溶出したAAV結合性タンパク質を含む画分を陽イオン交換クロマトグラフィ用担体に添加し、当該担体に前記タンパク質以外の不純物を吸着させるとともに当該担体に吸着しない前記タンパク質を含む画分を回収する工程を少なくとも含む、前記[1]または[2]に記載の方法。
[4]陽イオン交換クロマトグラフィ用担体に添加する、AAV結合性タンパク質を含む画分のpHが2.2以上3.2以下である、前記[3]に記載の方法。
[5]陽イオン交換クロマトグラフィ用担体に添加する、AAV結合性タンパク質を含む画分の導電率が1mS/cm以上25mS/cm以下である、前記[3]に記載の方法。
[6]前記(3)の工程が、前記第一の溶出液で溶出したAAV結合性タンパク質を含む画分を陽イオン交換クロマトグラフィ用担体に添加し当該担体に前記タンパク質を吸着させる工程と、前記担体に吸着したAAV結合性タンパク質を第二の溶出液を用いて溶出させる工程とを少なくとも含む、前記[1]または[2]に記載の方法。
[7]第二の溶出液が、100mmol/L以上500mmol/L以下のグアニジノ基を有する化合物を含む緩衝液である、前記[6]に記載の方法。
[8]陰イオン交換クロマトグラフィ用担体および陽イオン交換クロマトグラフィ用担体が、それぞれカラムに充填した態様である、前記[1]から[7]のいずれかに記載の方法。
[9]AAV結合性タンパク質が、以下の(i)から(iii)のいずれかから選択されるポリペプチドである、前記[1]から[8]のいずれかに記載の方法;
(i)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち312番目のセリンから500番目のアスパラギン酸までのアミノ酸残基を少なくとも含むポリペプチド、
(ii)配列番号1に記載のアミノ酸配列の312番目のセリンから500番目のアスパラギン酸までのアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該312番目から500番目までのアミノ酸残基において、1もしくは数個の位置での1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、または付加を含むアミノ酸配列を有し、かつAAV結合活性を有するポリペプチド、
(iii)配列番号1に記載のアミノ酸配列の312番目のセリンから500番目のアスパラギン酸までのアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該312番目から500番目までのアミノ酸残基からなるアミノ酸配列に対して70%以上の相同性を有し、かつAAV結合活性を有するポリペプチド。
[10]AAV結合性タンパク質を発現可能な遺伝子組換え宿主を培養することで前記タンパク質を発現させる工程と、得られた培養物から発現されたAAV結合性タンパク質を回収する工程と、回収したAAV結合性タンパク質を含む試料から前記タンパク質を精製する工程とを含む、AAV結合性タンパク質の製造方法であって、前記精製工程を前記[1]から[9]のいずれかに記載の方法で行なう、前記方法。
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明において、イオン交換クロマトグラフィ用担体に添加する、AAV結合性タンパク質を含む試料の一例として、AAV結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現プラスミドにより形質転換された宿主の培養液(後述する粗精製AAV結合性タンパク質溶液を含む)や、前記培養液(後述する粗精製AAV結合性タンパク質溶液を含む)をイオン交換クロマトグラフィ以外のクロマトグラフィを用いて精製して得られた溶液があげられる。
本明細書において、AAV結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現プラスミドにより形質転換する宿主として、COS細胞やCHO(Chinese Hamster Ovary)細胞に代表される動物細胞、大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)に代表されるバチルス(Bacillus)属細菌(ブレビバチルス(Brevibacillus)属細菌やパエニバチルス(Paenibacillus)属細菌のような広義のバチルス属細菌も含む)、コリネ菌(Corynebacterium glutamicum)に代表されるコリネバクテリウム(Corynebacterium)属細菌、サッカロマイセス(Saccharomyces)属、ピキア(Pichia)属、シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属に代表される酵母、麹菌(Aspergillus oryzae)に代表される糸状菌が例示できる。中でも、取扱いが簡便かつ高密度に培養可能な大腸菌を前記宿主とすると好ましい。なお宿主が大腸菌の場合は、WO2021/106882号に開示した方法等により、形質転換体を培養することで前記タンパク質を発現することができるが、大腸菌が増殖してAAV結合性タンパク質を発現することができれば、特に発現ベクターや大腸菌の種類、培養方法に限定はない。
前記宿主の形質転換体の培養液から、AAV結合性タンパク質を含む試料となる、粗精製AAV結合性タンパク質溶液を得るには、発現の形態によって適宜選択すればよい。例えば、発現したタンパク質が宿主細胞のペリプラズムに発現する場合は、培養液を遠心分離して得られる宿主細胞を適切な緩衝液で懸濁し細胞溶解(物理的溶解、薬剤による化学的溶解など)後、遠心分離により細胞溶解残渣を除去することで、発現したタンパク質を含む溶解液を得ればよく、発現したタンパク質が宿主細胞のペリプラズムから培養上清に漏出する場合は、培養液を遠心分離して得られる培養上清から発現したタンパク質を回収すればよい。なお薬剤により宿主細胞を溶解する際は、例えば、特開2013-252099号公報に開示した方法や、BugBuster Protein extraction kit(メルク社製)等の市販の試薬を用いて細胞を溶解するとよい。
本発明の精製方法で用いる、陰イオン交換クロマトグラフィ用担体は、不溶性担体と当該担体に固定化した陰イオン交換基とを含む担体であれば特に限定はない。陰イオン交換基の一例として、タンパク質精製の分野で通常用いられる、ジエチルアミノエチル(DEAE)基、四級アンモニウム(Q)基、一級アミノ基があげられる。またTOYOPEARL DEAE-650、TOYOPEARL QAE-650、TOYOPEARL SuperQ-650、TOYOPEARL NH-750(以上、東ソー社製)、Q Sepharose Fast Flow(サイティバ社製)といった市販の陰イオン交換クロマトグラフィ用担体をそのまま用いてもよい。
本発明の精製方法で用いる、陽イオン交換クロマトグラフィ用担体も、不溶性担体と当該担体に固定化した陽イオン交換基とを含む担体であれば特に限定はない。陽イオン交換基の一例として、タンパク質精製の分野で通常用いられる、カルボキシメチル(CM)基、スルホプロピル(SP)基、スルホ基があげられる。またTOYOPEARL CM-650、TOYOPEARL SP-650、TOYOPEARL GigaCap S-650(以上、東ソー社製)、CM Sepharose Fast Flow(サイティバ社製)といった市販の陽イオン交換クロマトグラフィ用担体をそのまま用いてもよい。
なお本明細書の精製方法で用いる、イオン交換クロマトグラフィ用担体の基材である不溶性担体は、AAV結合性タンパク質を含む試料や精製に用いる溶液(溶出液、平衡化液、洗浄液など)に対して不溶性であれば特に限定はなく、一例として、アガロース、アルギネート(アルギン酸塩)、カラゲナン、キチン、セルロース、デキストリン、デキストラン、デンプン等の多糖質を原料とした担体や、ポリビニルアルコール、ポリメタクレート、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリウレタン等の合成高分子を原料とした担体や、シリカ等のセラミックスを原料とした担体があげられる。
本発明の精製方法は、以下の(1)から(3)に示す工程を少なくとも含む方法で、実施する:
(1)AAV結合性タンパク質を含む試料を陰イオン交換クロマトグラフィ用担体に添加し、当該担体に前記タンパク質を吸着させる工程(以下、「陰イオン交換クロマト吸着工程」とも表記)、
(2)陰イオン交換クロマトグラフィ用担体に吸着したAAV結合性タンパク質を溶出液を用いて溶出させる工程(以下、「陰イオン交換クロマト溶出工程」とも表記)、
(3)前記第一の溶出液で溶出したAAV結合性タンパク質を含む画分を陽イオン交換クロマトグラフィ用担体に添加し、前記タンパク質を含む画分を回収する工程(以下、「陽イオン交換クロマト精製工程」とも表記)。
なお陰イオン交換クロマトグラフィ用担体および陽イオン交換クロマトグラフィ用担体を、それぞれ適切なオープンカラム等に充填した態様(以下、それぞれ「陰イオン交換カ
ラム」および「陽イオン交換カラム」とも表記)とすると、本発明の精製方法を簡便に行
なえる点で好ましい。以下、陰イオン交換カラムおよび陽イオン交換カラムを用いた態様
を例に、前記(1)から(3)の工程を詳細に説明する。
(1)陰イオン交換クロマト吸着工程
本工程では、AAV結合性タンパク質を含む試料を陰イオン交換カラムに添加(アプライ)し、当該カラムに充填した陰イオン交換クロマトグラフィ用担体にAAV結合性タンパク質を吸着させる工程である。前記カラムにおける前記担体の充填量は、AAV結合性タンパク質を含む試料(アプライ液)の添加量や前記担体のタンパク吸着性能等に基づき、決定すればよい。なお前記試料を陰イオン交換カラムにアプライする前に、前記カラムをあらかじめ、塩を含む適切な緩衝液(Tris-HCl(トリス塩酸)緩衝液、グリシン-NaOH緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液等)で平衡化するとよい。
(2)陰イオン交換クロマト溶出工程
本工程では、(1)で陰イオン交換クロマトグラフィ用担体に吸着したAAV結合性タンパク質を、溶出液を用いて溶出させる工程である。なお本工程前に、洗浄液を陰イオン交換カラムに添加し、陰イオン交換クロマトグラフィ用担体に吸着しない夾雑タンパク質(不純物)を除去するとよい。洗浄液の一例として、110mmol/L以下の塩化ナトリウムを含むpH6.5以上8.5以下の緩衝液があげられる。本工程で用いる溶出液は、担体に吸着したAAV結合性タンパク質を、当該タンパク質が有するAAVへの結合能を維持したまま溶出可能な、塩を含む緩衝液であればよい。なお溶出液に添加する塩を塩化ナトリウムとする場合、濃度を120mmol/L以上300mmol/L以下とすると好ましく、140mmol/L以上280mmol/L以下とするとより好ましく、190mmol/L以上260mmol/L以下とするとさらにより好ましい。溶出液のpHは6.5以上8.5以下にすると好ましい。
(3)陽イオン交換クロマト精製工程
本工程は、前記(1)および(2)の工程を含む陰イオン交換クロマトグラフィによる精製で得られたAAV結合性タンパク質の純度をさらに高めるために実施する工程であり、具体的には、前記(2)の工程で、陰イオン交換カラムから溶出したAAV結合性タンパク質を含む画分を陽イオン交換カラムに添加し、前記タンパク質を含む画分を回収する工程である。前記カラムにおける陽イオン交換クロマトグラフィ用担体の充填量は、AAV結合性タンパク質を含む画分(アプライ液)の添加量、pHおよび導電率(例えば、塩化ナトリウムなどの塩濃度)や前記担体のタンパク吸着性能等に基づき、決定すればよい。また前記試料をアプライする前に、陽イオン交換カラムをあらかじめ、前記アプライ液と同じpHおよび導電率の緩衝液(平衡化液)で平衡化するとよい。
陽イオン交換カラムからの、AAV結合性タンパク質を含む画分の回収方法の一態様として、
(3-1)陰イオン交換カラムから溶出したAAV結合性タンパク質を含む画分を陽イオン交換カラムに添加し、当該カラムに充填した陽イオン交換クロマトグラフィ用担体に前記タンパク質を吸着させる工程と、
(3-2)前記担体に吸着したAAV結合性タンパク質を溶出液を用いて溶出させる工程と、を含む方法があげられる。
なお前記(3-2)の工程前に、平衡化液を用いて陽イオン交換カラムを洗浄し、前記担体に吸着しない夾雑タンパク質を除去するとよい。溶出液の例として、
(A)150mmol/L以上300mmol/L以下の塩化ナトリウムを含むpH3.0以上5.0以下の緩衝液や、
(B)100mmol/L以上500mmol/L以下のグアニジノ基を有する化合物を含むpH3.0以上5.0以下の緩衝液、
があげられる。中でも、前記(B)の緩衝液を溶出液とすると、高純度なAAV結合性タンパク質を高い回収率で回収できるため好ましい。なお、前記(B)の緩衝液を溶出液とする場合、濃度を150mmol/L以上400mmol/L以下とすると好ましく、160mmol/L以上350mmol/L以下とするとより好ましく、190mmol/L以上310mmol/L以下とするとさらにより好ましい。グアニジノ基を有する化合物の例として、グアニジン、アルギニンおよびそれらの塩があげられる。平衡化液は、溶出液の成分に対応した緩衝液を用いればよく、具体的には、
前記(A)の緩衝液を溶出液とする場合は、50mmol/L以下の塩化ナトリウムを含むpH3.0以上5.0以下の緩衝液とすればよく、
前記(B)の緩衝液を溶出液とする場合は、50mmol/L以下のグアニジノ基を有する化合物を含むpH3.0以上5.0以下の緩衝液とすればよい。
また陽イオン交換カラムからの、AAV結合性タンパク質を含む画分の回収方法の別の態様として、
(3-3)陰イオン交換カラムから溶出したAAV結合性タンパク質を含む画分を陽イオン交換カラムに添加し、当該カラムに充填した陽イオン交換クロマトグラフィ用担体に前記タンパク質以外の不純物(夾雑タンパク質)を吸着させるとともに、当該担体に吸着しないAAV結合性タンパク質を前記カラムからの素通り画分として回収する工程、を含む方法があげられる。
当該別の態様は、陽イオン交換カラムから素通りした画分を回収するのみでAAV結合性タンパク質以外の夾雑タンパク質(不純物)を除去できる。そのため、特に大量のAAV結合性タンパク質を含む試料から当該タンパク質を精製する場合、好ましい方法といえる。
前記(3-3)の工程において、AAV結合性タンパク質を含む画分のpHを2.2以上3.2以下にすると好ましく、2.4以上3.0以下にするとさらに好ましく、2.6以上3.0以下にするとさらにより好ましい。またAAV結合性タンパク質を含む画分の導電率を1mS/cm以上25mS/cm以下にすると好ましく、1mS/cm以上11mS/cm以下にするとより好ましく、4mS/cm以上10mS/cm以下にするとさらにより好ましい。さらにAAV結合性タンパク質を含む画分が、前述した好ましいpH範囲と前述した好ましい導電率範囲とを両方満たすと好ましい。
なお前記(3-3)の工程後に、平衡化液を用いて陽イオン交換カラムを洗浄し、前記担体に夾雑タンパク質(不純物)を吸着させて除去するとともに、カラム内に残存したAAV結合性タンパク質を押し出して回収するとよい。前記洗浄に用いる平衡化液の例として、前述したAAV結合性タンパク質を含む画分の好ましいpHおよび/または好ましい導電率の緩衝液があげられる。
本発明での精製対象タンパク質である、AAV結合性タンパク質は、AAVと結合可能なポリペプチドであれば特に制限はなく、インテグリンなどのラミニン受容体、抗AAV抗体やAAV受容体(AAVR)が例示できる。
AAV結合性タンパク質がAAVRである場合の好ましい態様として、以下の(i)から(iii)のいずれかに示すポリペプチドがあげられる:
(i)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち312番目のセリンから500番目のアスパラギン酸までのアミノ酸残基を少なくとも含むポリペプチド、
(ii)配列番号1に記載のアミノ酸配列の312番目のセリンから500番目のアスパラギン酸までのアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該312番目から500番目までのアミノ酸残基において、1もしくは数個の位置での1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、または付加を含むアミノ酸配列を有し、かつAAV結合活性を有するポリペプチド、
(iii)配列番号1に記載のアミノ酸配列の312番目のセリンから500番目のアスパラギン酸までのアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該312番目から500番目までのアミノ酸残基からなるアミノ酸配列に対して70%以上の相同性を有し、かつAAV結合活性を有するポリペプチド。
なお配列番号1に記載のアミノ酸配列は、AAVRの一態様であるKIAA0319L(公式データベース:UniProt、アクセッションナンバー:Q8IZA0)のアミノ酸配列であり、配列番号1に記載のアミノ酸配列の312番目のセリン(Ser)から500番目のアスパラギン酸(Asp)までのアミノ酸残基は、KIAA0319Lの細胞外領域ドメイン1(PKD1)およびドメイン2(PKD2)に相当する領域である。
前記(i)から(iii)のいずれかに示すポリペプチドは、前述したKIAA0319LのPKD1およびPKD2に相当する領域を少なくとも含んでいればよく、例えば、PKD2のC末端側にある他の細胞外領域ドメイン(ドメイン3(PKD3)、ドメイン4(PKD4)およびドメイン5(PKD5))に相当する領域の全てまたは一部を含んでもよいし、PKD1のN末端側にあるMANSC(Motif At N terminus with Seven Cysteines)ドメインなどのシグナル配列に相当する領域やシステインリッチな領域の全てまたは一部を含んでもよいし、細胞外領域のN末端側および/またはC末端側にある膜貫通領域ならびに細胞内領域の全てまたは一部を含んでもよい。
前記(ii)の一例として、配列番号2、4または6に記載のアミノ酸配列のうち25番目のセリンから213番目のアスパラギン酸までのアミノ酸残基を少なくとも含むポリペプチドや、WO2021/106882号で開示のAAV結合性タンパク質、があげられる。また前記(ii)に記載の置換、欠失、挿入、または付加の例として、WO2021/106882号で開示しているアミノ酸残基の置換があげられる。
前記(ii)における、「1もしくは数個」とは、AAVRの立体構造におけるアミノ酸置換の位置やアミノ酸残基の種類によっても異なるが、一例として、1個以上50個以下、1個以上30個以下、1個以上20個以下、1個以上10個以下、1個以上9個以下、1個以上8個以下、1個以上7個以下、1個以上6個以下、1個以上5個以下、1個以上4個以下、1個以上3個以下、1個以上2個以下、1個のいずれかを意味する。「1もしくは数個」のアミノ酸残基の置換は、例えば、AAV結合活性を有する限り、WO2021/106882号で開示のアミノ酸残基の置換以外の位置に生じてよい。
なお前記(ii)における「1もしくは数個のアミノ酸残基の置換」には、前述した特定位置におけるアミノ酸置換の他に、物理的性質および/または化学的性質が類似したアミノ酸間で置換が生じる保守的置換が生じてもよい。保守的置換は、一般に、置換が生じているものと置換が生じていないものとの間でタンパク質の機能が維持されることが当業者において知られている。保守的置換の一例としては、グリシンとアラニン間、セリンとプロリン間、またはグルタミン酸とアラニン間での置換があげられる(タンパク質の構造と機能,メディカル・サイエンス・インターナショナル社、9、2005)。また前記(ii)における「1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、または付加」には、AAVRの由来の違いや、種の違いなどに基づく、天然にも存在する変異(mutantまたはvariant)も含まれる。
前記(iii)におけるアミノ酸配列の相同性は70%以上あればよく、それ以上の相同性(例えば、80%以上、85%以上、90%以上または95%以上)を有してもよい。なお本明細書において「相同性」とは、類似性(similarity)または同一性(identity)を意味してよく、特に同一性を意味してもよい。「アミノ酸配列の相同性」とは、アミノ酸配列全体に対する相同性を意味する。アミノ酸配列間の「同一性」とは、それらアミノ酸配列における種類が同一であるアミノ酸残基の比率を意味する(実験医学、31(3)、羊土社)。アミノ酸配列間の「類似性」とは、それらアミノ酸配列における種類が同一であるアミノ酸残基の比率と側鎖の性質が類似したアミノ酸残基の比率の合計を意味する(実験医学、31(3)、羊土社)。アミノ酸配列の相同性は、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool)やFASTA等のアラインメントプログラム(alignment program)を利用して決定できる。
本発明は、試料中に含まれるアデノ随伴ウイルス(AAV)結合性タンパク質を、陰イオン交換クロマトグラフィ用担体に供した後、前記担体から溶出した画分を陽イオン交換クロマトグラフィ用担体に供して精製することを特徴としており、前記タンパク質を高純度、高効率かつ大量に精製できる。また本発明の精製方法は、食品や医薬品分野で汎用されているイオン交換クロマトグラフィを利用しているため、精製した前記タンパク質の安全性の点でも好ましい方法である。
また本発明の精製方法を、AAV結合性タンパク質を発現可能な遺伝子組換え宿主を培養することで前記タンパク質を発現させる工程と、得られた培養物から発現されたAAV結合性タンパク質を回収する工程と、回収したAAV結合性タンパク質を含む試料から前記タンパク質を精製する工程とを含む、AAV結合性タンパク質の製造方法における精製工程に採用することで、高純度な前記タンパク質を工業的に大量製造できる。
試料中に含まれるアデノ随伴ウイルス(AAV)結合性タンパク質を、陰イオン交換カラムを用いて回収した結果を示した図である。溶出液として、(a)は200mmol/L塩化ナトリウムを、(b)は150mmol/L塩化ナトリウムを、(c)は180mmol/L塩化ナトリウムを、それぞれ含むトリス塩酸緩衝液(pH7.5)を用いた結果である。また黒三角で示す溶出ピークが、AAV結合性タンパク質に相当する溶出ピークである。 AAV結合性タンパク質を含む溶出画分のSDS-PAGE結果を示す図である。レーン1は分子量マーカーの、レーン2は陰イオン交換カラムから200mmol/L塩化ナトリウムを含む50mmol/Lトリス塩酸緩衝液(pH7.5)で溶出した画分(実施例2(3)(a))の、レーン3は陽イオン交換カラムから300mmol/L L-アルギニンを含む50mmol/L酢酸緩衝液(pH4.0)で溶出した画分(実施例3(4)(d))の、それぞれ結果である。 陰イオン交換カラムから溶出したAAV結合性タンパク質を含む画分を、陽イオン交換カラムを用いて回収した結果を示した図である。溶出液として、(a)は200mmol/L塩化ナトリウムを、(b)は250mmol/L塩化ナトリウムを、(c)は200mmol/Lグアニジンを、(d)は300mmol/L L-アルギニンを、それぞれ含む酢酸緩衝液(pH4.0)を用いた結果である。また黒三角で示す溶出ピークが、AAV結合性タンパク質に相当する溶出ピークである。 試料中に含まれるAAV結合性タンパク質を、陰イオン交換カラムを用いて回収した結果を示した図である。溶出液として、(a)は120mmol/L塩化ナトリウムを、(b)は150mmol/L塩化ナトリウムを、(c)は200mmol/L塩化ナトリウムを、(d)は250mmol/L塩化ナトリウムを、それぞれ含むトリス塩酸緩衝液(pH7.5)を用いた結果である。また黒三角で示す溶出ピークが、AAV結合性タンパク質に相当する溶出ピークである。 試料中に含まれるAAV結合性タンパク質を大量精製した結果(クロマトグラム)を示した図である。(A)は試料中に含まれるAAV結合性タンパク質を、容量100mLの陰イオン交換カラムを用いて回収した結果(実施例6)を示した図であり、(B)は前記(A)の陰イオン交換カラムから溶出したAAV結合性タンパク質を含む画分を、容量40mLの陽イオン交換カラムを用いて回収した結果(実施例9)を示した図である。また黒三角で示す溶出ピークが、AAV結合性タンパク質に相当する溶出ピークである。 試料中に含まれるAAV結合性タンパク質を大量精製した結果(SDS-PAGE)を示した図である。レーン1は陰イオン交換カラムから溶出した画分(実施例6、図5(A)の黒三角で示した溶出ピーク)の、レーン2は陽イオン交換カラムから素通りした画分(実施例9、図5(B)の黒三角で示した溶出ピーク)の、それぞれ結果である。 陰イオン交換カラムから溶出したAAV結合性タンパク質を含む画分を、陽イオン交換カラムを用いて回収した結果を示した図である。前記画分および平衡化液のpHを、(a)はpH2.4に、(b)はpH2.6に、(c)はpH2.7に、(d)はpH2.8に、(e)はpH3.0に、それぞれ調整したときの結果である。また黒三角で示す溶出ピークが、AAV結合性タンパク質に相当する溶出ピークである。 AAV結合性タンパク質を含む画分のSDS-PAGE結果を示す図である。レーン1は分子量マーカーの結果であり、レーン2は陰イオン交換カラムから溶出した画分(実施例6)の結果である。レーン3からレーン6は陽イオン交換カラムから素通りした画分の結果であり、陽イオン交換カラムに添加したAAV結合性タンパク質を含む画分および平衡化液のpHを、レーン3はpH2.4(実施例7(a)、図7(a)の黒三角で示した溶出ピーク)に、レーン4はpH2.6(実施例7(b)、図7(b)の黒三角で示した溶出ピーク)に、レーン5はpH2.8(実施例7(d)、図7(d)の黒三角で示した溶出ピーク)に、レーン6はpH3.0(実施例7(e)、図7(e)の黒三角で示した溶出ピーク)に、それぞれ調整したときの結果である。 陰イオン交換カラムから溶出したAAV結合性タンパク質を含む画分を、陽イオン交換カラムを用いて回収した結果を示した図である。前記画分および平衡化液に含ませる塩化ナトリウムの濃度を、(a)は10mmol/L(導電率5mS/cm)に、(b)は20mmol/L(導電率6mS/cm)に、(c)は30mmol/L(導電率7mS/cm)に、(d)は50mmol/L(導電率9mS/cm)に、(e)は100mmol/L(導電率14mS/cm)に、それぞれしたときの結果である。また黒三角で示す溶出ピークが、AAV結合性タンパク質に相当する溶出ピークである。 AAV結合性タンパク質を含む画分のSDS-PAGE結果を示す図である。レーン1は分子量マーカーの結果であり、レーン2は陰イオン交換カラムから溶出した画分(実施例6)の結果である。レーン3からレーン6は陽イオン交換カラムから素通りした画分の結果であり、陽イオン交換カラムに添加したAAV結合性タンパク質を含む画分および平衡化液に含ませる塩化ナトリウムの濃度を、レーン3は10mmol/L(導電率5mS/cm)(実施例8(a)、図9(a)の黒三角で示した溶出ピーク)に、レーン4は20mM塩化ナトリウム(導電率6mS/cm)(実施例8(b)、図9(b)の黒三角で示した溶出ピーク)に、レーン5は30mM塩化ナトリウム(導電率7mS/cm)(実施例8(c)、図9(c)の黒三角で示した溶出ピーク)に、レーン6は50mM塩化ナトリウム(導電率9mS/cm)(実施例8(d)、図9(d)の黒三角で示した溶出ピーク)に、レーン7は100mM塩化ナトリウム(導電率14mS/cm)(実施例8(e)、図9(e)の黒三角で示した溶出ピーク)に、それぞれしたときの結果である。 試料中に含まれるAAV結合性タンパク質を精製した結果(クロマトグラム)を示した図である。(A)は試料中に含まれるAAV結合性タンパク質を、陰イオン交換カラムを用いて回収した結果(実施例11(2))を示した図であり、(B)は陰イオン交換カラムから溶出したAAV結合性タンパク質を含む画分を、陽イオン交換カラムを用いて回収した結果(実施例11(5)および(6))を示した図である。また黒三角で示す溶出ピークが、AAV結合性タンパク質に相当する溶出ピークである。 試料中に含まれるAAV結合性タンパク質を精製した結果(SDS-PAGE)を示した図である。レーン1は分子量マーカーの、レーン2は陰イオン交換カラムから溶出した画分(実施例11(2))の、レーン3は陽イオン交換カラムから素通りした画分(実施例11(5)および(6))の、それぞれ結果である。 実施例に記載のアデノ随伴ウイルス(AAV)結合性タンパク質を含むポリペプチドのアミノ酸配列を示した図である。 実施例に記載のアデノ随伴ウイルス(AAV)結合性タンパク質を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの塩基配列を示した図である。
以下、実施例および比較例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら例に限定されるものではない。なお、本実施例で使用したアデノ随伴ウイルス(AAV)結合性タンパク質を含むポリペプチドのアミノ酸配列を図1に、アデノ随伴ウイルス(AAV)結合性タンパク質を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの塩基配列を図2にそれぞれ示す。
実施例1 アデノ随伴ウイルス(AAV)結合性タンパク質を含む試料の調製
本発明の精製方法で精製する、AAV結合性タンパク質を含む試料を、以下に示す方法で調製した。
(1)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるAAV結合性タンパク質AVR8gを含むポリペプチド、をコードするポリヌクレオチド(配列番号3)を含むプラスミドpTrcAVR8g-CRNDTCG-V1で大腸菌W3110株を形質転換し、得られたAVR8gを発現可能な形質転換体を、250mLバッフル付きフラスコに入れた50μg/mLカナマイシンを含む2×YT(1.0%(w/v)酵母エキス、1.6%(w/v)ペプトン、0.5%(w/v)塩化ナトリウム)液体培地50mLに接種後、37℃で一晩振とう培養することで前培養液を調製した。なお配列番号2において、1番目のメチオニン(Met)から22番目のアラニン(Ala)までがPelBシグナルペプチドであり、25番目のセリン(Ser)から213番目のアスパラギン酸(Asp)までがAAV結合性タンパク質AVR8gであり、220番目のシステイン(Cys)から226番目のグリシン(Gly)までが不溶性担体への固定化用タグであるシステインタグ配列である。またAVR8gは、AAV受容体KIAA0319Lの細胞外ドメイン1(PKD1)およびドメイン2(PKD2)(配列番号1の312番目のセリンから500番目のアスパラギン酸までのアミノ酸残基)に対して、以下の(I)から(VIII)に示すアミノ酸置換が生じたポリペプチドである。
(I)配列番号1の317番目(配列番号2では30番目)のバリンがアスパラギン酸に置換
(II)配列番号1の342番目(配列番号2では55番目)のチロシンがシステインに置換
(III)配列番号1の362番目(配列番号2では75番目)のリジンがグルタミン酸に置換
(IV)配列番号1の371番目(配列番号2では84番目)のリジンがアスパラギンに置換
(V)配列番号1の390番目(配列番号2では103番目)のグリシンがセリンに置換(VI)配列番号1の399番目(配列番号2では112番目)のリジンがグルタミン酸に置換
(VII)配列番号1の476番目(配列番号2では189番目)のセリンがアルギニンに置換
(VIII)配列番号1の487番目(配列番号2では200番目)のアスパラギンがアスパラギン酸に置換
(2)オートクレーブ滅菌済の本培養培地(4.0%(w/v)酵母エキス、0.3%(w/v)リン酸三ナトリウム・十二水和物、0.9%(w/v)リン酸水素二ナトリウム・十二水和物、0.2%(w/v)硫酸マグネシウム・七水和物、0.2%(w/v)塩化アンモニウム、1.0%(w/v)グルコース、10mg/L硫酸鉄(II)七水和物、5mg/L塩化マンガン・四水和物、50μg/mLカナマイシン)1.2Lが入った3L容量の培養槽に、(1)の前培養液36mLを添加し、温度30℃、撹拌数400rpm、pH6.9から7.1、通気量(空気)1.5L/分、溶存酸素濃度が飽和濃度の約30%になるよう、撹拌回転数(最大700rpm)を自動制御する条件で本培養を開始した。なお、培地中のグルコースが消費され枯渇した時点で流加培地(42.5%(w/v)グルコース、14.2%(w/v)酵母エキス、1.2%(w/v)硫酸マグネシウム・七水和物)をDOスタット法で添加した。
(3)本培養開始から17時間後に0.5mol/L IPTG(IsoPropyl β-D-1-ThioGalactopyranoside)を1.5mL添加し、温度25℃に、撹拌数を600rpmに変更して、さらに46時間培養を行なった。得られた培養液を遠心分離し、AAV結合性タンパク質を含む大腸菌の菌体を回収した。
(4)(3)で回収した菌体1g(湿重量)に対して、抽出液(1mmol/L EDTA(pH8.0)、2mmol/L硫酸マグネシウム、250units/L Benzonase(メルク社製)、0.005%(w/v)リゾチーム、0.5%(w/v)Triton X-100(商品名)を含む50mmol/Lリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0))を5mL加えることで、菌体内に発現した前記タンパク質を抽出した。
(5)菌体抽出液を遠心分離し、上清を回収後、0.2μmのフィルターでろ過することで、AAV結合性タンパク質抽出液を得、これをAAV結合性タンパク質を含む試料とした。
実施例2 陰イオン交換カラムを用いたAAV結合性タンパク質の精製(溶出液中の塩濃度の検討、その1)
(1)100mmol/L塩化ナトリウムを含む50mmol/Lトリス塩酸緩衝液(pH7.5)(以下、「平衡化液A」とも表記)であらかじめ平衡化した、陰イオン交換クロマトグラフィ用担体(TOYOPEARL SuperQ-650S、東ソー社製)を充填した陰イオン交換カラム(容量2mL)に、実施例1で得られた、AAV結合性タンパク質を含む試料(5mL)を、流速0.5mL/minでアプライし、前記担体にAAV結合性タンパク質を吸着させた。
(2)平衡化液A12mLを用いて、陰イオン交換カラム内の不純物を洗い流す、洗浄工程を実施した。
(3)(a)200mmol/L塩化ナトリウム、(b)150mmol/L塩化ナトリウム、および(c)180mmol/L塩化ナトリウムのいずれかを含む、50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)12mLを用いて、陰イオン交換クロマトグラフィ用担体に吸着したAAV結合性タンパク質を溶出させ、AAV結合性タンパク質を含む画分を回収した。
(4)1mol/L塩化ナトリウムを含む50mmol/Lトリス塩酸緩衝液(pH7.5)(以下、「洗浄液A」とも表記)9mLを用いて、陰イオン交換カラム内に残存したタンパク質を洗い流す、洗浄工程を実施した。
(5)(3)で回収したAAV結合性タンパク質を含む画分のうち、(a)の緩衝液で溶出した画分を、サイズ排除クロマトグラフィ(使用カラム:TSKGel G2000SWXL、東ソー社製)およびSDS-PAGE(SDS-ポリアクリルアミド電気泳動)に供し、AAV結合性タンパク質の純度を確認した。
AAV結合性タンパク質の回収結果(280nmの吸光度変化に基づくクロマトパターン)を図1に示す。また当該クロマトパターン(図1)のうち、AAV結合性タンパク質に相当する溶出ピーク(図1の黒三角で示した溶出ピーク)の面積および高さを算出した結果を表1に示す。(3)の工程で、AAV結合性タンパク質の溶出に用いた緩衝液(溶出液)は、いずれもAAV結合性タンパク質に相当する溶出ピークを確認できた。以上の結果から、120mmol/L以上250mmol/L以下の塩化ナトリウムを含む緩衝液を溶出液として用いることで、AAV結合性タンパク質を陰イオン交換カラムで精製できることがわかる。中でも(a)の溶出液(200mmol/L塩化ナトリウムを含むトリス塩酸緩衝液(pH7.5))で溶出させたときが、最も多くのAAV結合性タンパク質を回収していたことから、190mmol/L以上210mmol/L以下の塩化ナトリウムを含む緩衝液を溶出液として用いることで、陰イオン交換カラムでのAAV結合性タンパク質の精製を高回収率に行なえることがわかる。
なお(a)の溶出液での溶出画分に含まれるAAV結合性タンパク質は46.6%であった(表1)。当該画分のSDS-PAGE結果を図2のレーン2に示す。
実施例3 陽イオン交換カラムを用いたAAV結合性タンパク質の精製(吸着/溶出で精製)
(1)実施例2(3)のうち(a)の緩衝液(溶出液)を用いて陰イオン交換カラムから溶出した、AAV結合性タンパク質を含む画分を、精製条件(精製条件(a)から(d))毎に、あらかじめ表2に示す化合物を含む50mmol/L酢酸緩衝液(pH4.0)(平衡化液B)で置換した脱塩カラム(PD-10カラム、サイティバ社製)を用いて、平衡化液Bに置換した。
(2)平衡化液Bであらかじめ平衡化した、陽イオン交換クロマトグラフィ用担体(TOYOPEARL CM-650M、東ソー社製)を充填した陽イオン交換カラム(容量1mL)に、(1)で脱塩処理したAAV結合性タンパク質を含む画分2mLを、流速0.25mL/minでアプライし、前記担体にAAV結合性タンパク質を吸着させた。
(3)平衡化液B6mLを用いて、陽イオン交換カラム内の不純物を洗い流す、洗浄工
程を実施した。
(4)精製条件(精製条件(a)から(d))毎に、表2に示す化合物を含む50mmol/L酢酸緩衝液(pH4.0)(溶出液)12mLを用いて、陽イオン交換クロマトグラフィ用担体に吸着したAAV結合性タンパク質を溶出させ、AAV結合性タンパク質を含む画分を回収した(約4mL)。
(5)500mmol/L塩化ナトリウムを含む50mmol/L酢酸緩衝液(pH4.0)3mLを用いて、陽イオン交換カラム内に残存したタンパク質を洗い流す、洗浄工程を実施した。
(6)(4)で回収したAAV結合性タンパク質を含む画分を、サイズ排除クロマトグラフィ(使用カラム:TSKGel G2000SWXL、東ソー社製)に供し、AAV結合性タンパク質の純度を測定した。また前記画分のうち、精製条件(d)の溶出液で溶出した画分は、SDS-PAGEによる純度確認も行なった。
AAV結合性タンパク質の回収結果(280nmの吸光度変化に基づくクロマトパターン)を図3に示す。また(4)で回収したAAV結合性タンパク質を含む画分の液量、当該画分中に含まれるタンパク質濃度、前記液量および前記タンパク質濃度から算出したタンパク質量、(6)のサイズ排除クロマトグラフィで測定した前記画分に含まれるAAV結合性タンパク質の純度、ならびに前記タンパク質量および前記純度から算出したAAV結合性タンパク質の回収量をまとめた結果を表3に示す。
陽イオン交換カラムから溶出した、AAV結合性タンパク質を含む画分における、前記タンパク質の純度は83%から88%と、陰イオン交換カラムから溶出した前記タンパク質を含む画分(46.6%、実施例2、表1)よりも純度が向上した。以上の結果から、AAV結合性タンパク質を含む試料を、陰イオン交換カラムに供した後、陽イオン交換カラムに供して精製することで、高純度なAAV結合性タンパク質が得られることがわかる。
なお本実施例で検討した精製条件のうち、(c)の条件が最もAAV結合性タンパク質の純度が高く、(d)の条件が最も多くのAAV結合性タンパク質を回収していた。以上の結果から、100mmol/L以上500mmol/L以下のグアニジノ基を有する化合物を含む緩衝液を溶出液として用いることで、AAV結合性タンパク質を高純度または高回収率で精製できることがわかる。
(d)の溶出液での溶出画分のSDS-PAGE結果を図2のレーン3に示す。図2のレーン2(陰イオン交換カラムによる精製のみ)とレーン3(陰イオン交換カラムによる精製後、陽イオン交換カラムで精製)との比較からも、陰イオン交換カラムによる精製後陽イオン交換カラムで精製することでAAV結合性タンパク質を高純度に精製できることがわかる。
実施例4 AAV結合性タンパク質を含む試料の調製(その2)
(1)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるAAV結合性タンパク質AVR11aを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(配列番号5)を含むプラスミドpTrcAVR11a-CRNDTCG-V1で大腸菌W3110株を形質転換し、得られたAVR11aを発現可能な形質転換体を、実施例1に記載の方法と同様の方法で培養することで前培養液を調製した。なお配列番号4において、1番目のメチオニン(Met)から22番目のアラニン(Ala)までがPelBシグナルペプチドであり、25番目のセリン(Ser)から213番目のアスパラギン酸(Asp)までがAAV結合性タンパク質AVR11aであり、214番目のシステイン(Cys)から220番目のグリシン(Gly)までが不溶性担体への固定化用タグであるシステインタグ配列である。またAVR11aは、AAV受容体KIAA0319Lの細胞外ドメイン1(PKD1)およびドメイン2(PKD2)(配列番号1の312番目のセリンから500番目のアスパラギン酸までのアミノ酸残基)に対して、以下の(I)および(III)から(XII)に示すアミノ酸置換が生じたポリペプチドである。
(I)配列番号1の317番目(配列番号4では30番目)のバリンがアスパラギン酸に置換
(III)配列番号1の362番目(配列番号4では75番目)のリジンがグルタミン酸に置換
(IV)配列番号1の371番目(配列番号4では84番目)のリジンがアスパラギンに置換
(V)配列番号1の390番目(配列番号4では103番目)のグリシンがセリンに置換
(VI)配列番号1の399番目(配列番号4では112番目)のリジンがグルタミン酸に置換
(VII)配列番号1の476番目(配列番号4では189番目)のセリンがアルギニンに置換
(VIII)配列番号1の487番目(配列番号4では200番目)のアスパラギンがアスパラギン酸に置換
(IX)配列番号1の330番目(配列番号4では43番目)のアラニンがバリンに置換
(X)配列番号1の342番目(配列番号4では55番目)のチロシンがセリンに置換
(XI)配列番号1の381番目(配列番号4では94番目)のバリンがアラニンに置換
(XII)配列番号1の382番目(配列番号4では95番目)のイソロイシンがバリンに置換
(2)実施例1(2)に記載の方法と同様の方法で、3L容量の培養槽を用いて本培養を開始し、流加培養を行なった。
(3)実施例1(3)に記載の方法と同様の方法で、IPTGによる発現誘導を行なった。得られた培養液は遠心分離後、AAV結合性タンパク質を含む大腸菌の菌体を回収した。
(4)実施例1(4)に記載の方法と同様の方法で、(3)で回収した菌体から、菌体内に発現した前記タンパク質を抽出した。
(5)菌体抽出液を遠心分離し、上清を回収後、0.2μmのフィルターでろ過することで、AAV結合性タンパク質抽出液を得、これをAAV結合性タンパク質を含む試料とした。
実施例5 陰イオン交換カラムを用いたAAV結合性タンパク質の精製(溶出液中の塩濃度の検討、その2)
実施例2では、陰イオン交換クロマトグラフィ用担体に吸着したAAV結合性タンパク質の溶出液として150mmol/Lから200mmol/Lの塩化ナトリウムを含む緩衝液を用いて検討したが、本実施例では塩化ナトリウムの濃度範囲を広げて検討した。
(1)平衡化液Aであらかじめ平衡化した、陰イオン交換クロマトグラフィ用担体(TOYOPEARL SuperQ-650M、東ソー社製)を充填した陰イオン交換カラム(容量5mL)に、実施例4に記載の方法で得られた、AAV結合性タンパク質を含む試料(5mL)を、流速1.25mL/minでアプライし、前記担体にAAV結合性タンパク質を吸着させた。
(2)平衡化液A30mLを用いて、陰イオン交換カラム内の不純物を洗い流す、洗浄工程を実施した。
(3)(a)120mmol/L塩化ナトリウム、(b)150mmol/L塩化ナトリウム、(c)200mmol/L塩化ナトリウム、および(d)250mmol/L塩化ナトリウムのいずれかを含む、50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)25mLを用いて、陰イオン交換クロマトグラフィ用担体に吸着したAAV結合性タンパク質を溶出させ、AAV結合性タンパク質を含む画分を回収した。
(4)洗浄液A25mLを用いて、陰イオン交換カラム内に残存したタンパク質を洗い流す、洗浄工程を実施した。
(5)(3)で回収したAAV結合性タンパク質を含む画分を、サイズ排除クロマトグラフィ(使用カラム:TSKGel G2000SWXL、東ソー社製)に供し、AAV結合性タンパク質の純度を確認した。
AAV結合性タンパク質の回収結果(280nmの吸光度変化に基づくクロマトパターン)を図4に示す。また(3)で回収したAAV結合性タンパク質を含む画分(図4の黒三角で示した溶出ピーク)の液量、当該画分中に含まれるタンパク質濃度、前記液量および前記タンパク質濃度から算出したタンパク質量、(5)のサイズ排除クロマトグラフィで測定した前記画分に含まれるAAV結合性タンパク質の純度、ならびに前記タンパク質量および前記純度から算出したAAV結合性タンパク質の回収量をまとめた結果を表4に示す。
(3)の工程で、AAV結合性タンパク質の溶出に用いた緩衝液(溶出液)は、いずれもAAV結合性タンパク質に相当する溶出ピークを確認できた。以上の結果から、120mmol/L以上300mmol/L以下の塩化ナトリウムを含む緩衝液を溶出液として用いることで、AAV結合性タンパク質を陰イオン交換カラムで精製できることがわかる。中でも(c)または(d)の溶出液(200mmol/Lまたは250mmol/L塩化ナトリウムを含むトリス塩酸緩衝液(pH7.5))で溶出させたときが、最も多くのAAV結合性タンパク質を回収していたことから、190mmol/L以上260mmol/L以下の塩化ナトリウムを含む緩衝液を溶出液として用いることで、陰イオン交換カラムでのAAV結合性タンパク質の精製を高回収率に行なえることがわかる。
実施例6 陰イオン交換カラムを用いたAAV結合性タンパク質の精製(カラムサイズのスケールアップ)
実施例2および実施例5で最適化した精製条件が、カラムサイズをスケールアップしても(すなわち大量精製においても)適用可能か、検討した。
(1)平衡化液Aであらかじめ平衡化した、陰イオン交換クロマトグラフィ用担体(TOYOPEARL SuperQ-650S、東ソー社製)を充填した陰イオン交換カラム(容量100mL)に、実施例4に記載の方法で得られた、AAV結合性タンパク質を含む試料(100mL)を、流速20mL/minでアプライし、前記担体にAAV結合性タンパク質を吸着させた。
(2)平衡化液A600mLを用いて、陰イオン交換カラム内の不純物を洗い流す、洗浄工程を実施した。
(3)200mmol/L塩化ナトリウムを含む、50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)500mLを用いて、陰イオン交換クロマトグラフィ用担体に吸着したAAV結合性タンパク質を溶出させ、AAV結合性タンパク質を含む画分を回収した。
(4)洗浄液A400mLを用いて、陰イオン交換カラム内に残存したタンパク質を洗い流す、洗浄工程を実施した。
(5)(3)で回収したAAV結合性タンパク質を含む画分を、実施例3(6)と同様な方法でサイズ排除クロマトグラフィおよびSDS-PAGEに供し、AAV結合性タンパク質の純度を確認した。
AAV結合性タンパク質の回収結果(280nmの吸光度変化に基づくクロマトパターン)を図5(A)に示す。また(3)で回収したAAV結合性タンパク質を含む画分の液量、当該画分中に含まれるタンパク質濃度、前記液量および前記タンパク質濃度から算出したタンパク質量、(5)のサイズ排除クロマトグラフィで測定した前記画分に含まれるAAV結合性タンパク質の純度、ならびに前記タンパク質量および前記純度から算出したAAV結合性タンパク質の回収量をまとめた結果を表5に示す。
図5(A)より、(3)の工程で、AAV結合性タンパク質に相当する溶出ピークが得られることを確認できた。以上の結果から、実施例5で明らかとなった精製条件(陰イオン交換クロマトグラフィ用担体に吸着したAAV結合性タンパク質を、120mmol/L以上300mmol/L以下の塩化ナトリウムを含む緩衝液を用いて溶出)が、容量100mLの陰イオン交換カラムに対しても適用可能なことがわかる。
なお(3)で回収した溶出画分に含まれるAAV結合性タンパク質(サイズ排除クロマトグラフィによるAAV結合性タンパク質の純度)は46.3%であった(表5)。当該画分のSDS-PAGE結果を図6のレーン1に示す。
実施例7 陽イオン交換カラムを用いたAAV結合性タンパク質の精製(素通し精製、最適pHの検討)
実施例3では陽イオン交換カラムを用いたAAV結合性タンパク質の精製を、陽イオン交換クロマトグラフィ用担体への吸着/溶出(Bound/Free)で行なったが、本実施例では陽イオン交換カラムの素通し(Flow through)で行なった。
(1)実施例6に記載の方法で陰イオン交換カラムから溶出した、AAV結合性タンパク質を含む画分(以下、単に「添加試料」とも表記)を透析膜(分画分子量約12000から14000)に入れ、当該添加試料溶液量の100倍量以上の20mmol/L塩化ナトリウムを含む50mmol/Lリン酸緩衝液(以下、「平衡化液C」とも表記)を用いて透析処理後、(a)pH2.4、(b)pH2.6、(c)pH2.7、(d)pH2.8、および(e)pH3.0のいずれかに調整した平衡化液Cに溶媒置換した。
(2)(1)の溶媒置換で用いた平衡化液Cであらかじめ平衡化した、陽イオン交換クロマトグラフィ用担体(TOYOPEARL CM-650M、東ソー社製)を充填した陽イオン交換カラム(容量5mL)に、(1)で透析処理および溶媒置換したAAV結合性タンパク質を含む画分(添加試料)8.5mLをそれぞれ、流速1.25mL/minでアプライし、前記担体にAAV結合性タンパク質以外の不純物(夾雑タンパク質)を吸着させると同時に、前記担体に吸着せずに素通りしたAAV結合性タンパク質を含む画分を回収した。
(3)(1)の溶媒置換で用いた平衡化液C25mLを陽イオン交換カラムにアプライし、陽イオン交換クロマトグラフィ用担体に吸着しないAAV結合性タンパク質を洗い流して回収する、押出工程を実施した。
(4)(1)の溶媒置換で用いた平衡化液Cと同じpHに調整した、500mmol/L塩化ナトリウムを含む50mmol/Lリン酸緩衝液25mLを陽イオン交換カラムにアプライし、陽イオン交換カラム内に残存したタンパク質を洗い流す、洗浄工程を実施した。
(5)(2)および(3)で回収したAAV結合性タンパク質を含む画分を、サイズ排除クロマトグラフィ(使用カラム:TSKGel G2000SWXL、東ソー社製)に供し、AAV結合性タンパク質の純度を測定した。また前記画分のうち、pHが(a)、(b)、(d)、および(e)の平衡化液Cを使用して回収した画分は、SDS-PAGEによる純度確認も行なった。
AAV結合性タンパク質の回収結果(280nmの吸光度変化に基づくクロマトパターン)を図7に示す。また(2)および(3)で回収したAAV結合性タンパク質を含む画分の液量、当該画分中に含まれるタンパク質濃度、前記液量および前記タンパク質濃度から算出したタンパク質量、(5)のサイズ排除クロマトグラフィで測定した前記画分に含まれるAAV結合性タンパク質の純度、ならびに前記タンパク質量および前記純度から算出したAAV結合性タンパク質の回収量をまとめた結果を表6に示す。
陽イオン交換クロマトグラフィ用担体に吸着せず素通りした、AAV結合性タンパク質を含む画分における、前記タンパク質の純度はいずれも94%以上あり、陰イオン交換カラムから溶出した前記タンパク質を含む画分(46.3%、実施例6、表5)よりも純度が向上した。以上の結果から、AAV結合性タンパク質を含む試料を、陰イオン交換カラムに供した後、添加試料および平衡化液CのpHを2.2以上3.2以下の条件にすることで、陽イオン交換カラムを用いた精製により、高純度なAAV結合性タンパク質が得られることがわかる。中でも本実施例で検討した精製条件のうち、添加試料および平衡化液CのpHを2.7から3.0とした条件((c)、(d)および(e)の条件)では純度99%以上と特に高純度なAAV結合性タンパク質が得られることがわかる。一方、AAV結合性タンパク質の回収量の点からは、添加試料および平衡化液CのpHを2.4から2.7とした条件((a)、(b)および(c)の条件)で、より多くのAAV結合性タンパク質を回収できることがわかる。以上の結果から、添加試料および平衡化液CのpHを2.5以上2.75以下とすることで、AAV結合性タンパク質を高純度かつ高回収率で精製できることがわかる。
本実施例のうち、添加試料および平衡化液CのpHを(a)2.4、(b)2.6、(d)2.8、および(e)3.0のいずれかに調整し、陽イオン交換カラムで回収した、AAV結合性タンパク質を含む画分のSDS-PAGE結果を、それぞれ図8のレーン3((a)pH2.4)、レーン4((b)pH2.6)、レーン5((d)pH2.8)、およびレーン6((b)pH2.6)に示す。図8のレーン2(陰イオン交換カラムによる精製のみ)と、レーン3からレーン6(陰イオン交換カラムによる精製後、陽イオン交換カラムで精製)との比較からも、陰イオン交換カラムによる精製後、陽イオン交換カラムで精製することでAAV結合性タンパク質を高純度に精製できることがわかる。
実施例8 陽イオン交換カラムを用いたAAV結合性タンパク質の精製(素通し精製、最適導電率の検討)
(1)実施例6に記載の方法で陰イオン交換カラムから溶出した、AAV結合性タンパク質を含む画分を、透析膜(分画分子量約12000から14000)と、試料溶液量の100倍量以上の(a)10mmol/L塩化ナトリウム、(b)20mmol/L塩化ナトリウム、(c)30mmol/L塩化ナトリウム、(d)50mmol/L塩化ナトリウム、および(e)100mmol/L塩化ナトリウムのいずれかを含む50mmol/Lリン酸緩衝液(pH2.7)(以下、「平衡化液D」とも表記)を用いて透析処理し、溶媒置換した。なお、これら平衡化液Dの導電率はそれぞれ、(a)5mS/cm、(b)6mS/cm、(c)7mS/cm、(d)9mS/cm、および(e)14mS/cmである。
(2)導電率が(a)、(b)、(c)、(d)、および(e)のいずれかに調製した平衡化液Dであらかじめ平衡化した、陽イオン交換クロマトグラフィ用担体(TOYOPEARL CM-650M、東ソー社製)を充填した陽イオン交換カラム(容量5mL)に、(1)で透析処理したAAV結合性タンパク質を含む画分(添加試料)8.3mLを、流速1.25mL/minでアプライし、前記担体にAAV結合性タンパク質以外の不純物を吸着させると同時に、吸着せずに素通りしたAAV結合性タンパク質を含む画分を回収した。
(3)導電率が(a)、(b)、(c)、(d)、および(e)のいずれかに調製した平衡化液D25mLを陽イオン交換カラムにアプライし、陽イオン交換クロマトグラフィ用担体に吸着しないAAV結合性タンパク質を洗い流して回収する、押出工程を実施した。
(4)500mmol/L塩化ナトリウムを含む50mmol/Lリン酸緩衝液(pH2.7)25mLを用いて、陽イオン交換カラム内に残存したタンパク質を洗い流す、洗浄工程を実施した。
(5)(2)および(3)で回収したAAV結合性タンパク質を含む画分を、実施例3(6)と同様な方法でサイズ排除クロマトグラフィおよびSDS-PAGEに供し、AAV結合性タンパク質の純度を測定した。
AAV結合性タンパク質の回収結果(280nmの吸光度変化に基づくクロマトパターン)を図9に示す。また(2)および(3)で回収したAAV結合性タンパク質を含む画分の液量、当該画分中に含まれるタンパク質濃度、前記液量および前記タンパク質濃度から算出したタンパク質量、(5)のサイズ排除クロマトグラフィで測定した前記画分に含まれるAAV結合性タンパク質の純度、ならびに前記タンパク質量および前記純度から算出したAAV結合性タンパク質の回収量をまとめた結果を表7に示す。
陽イオン交換カラムを吸着せず素通りした、AAV結合性タンパク質を含む画分における、前記タンパク質の純度はいずれも95%以上と、陰イオン交換カラムから溶出した前記タンパク質を含む画分(46.3%、実施例6、表5)よりも純度が向上した。以上の結果から、AAV結合性タンパク質を含む試料を、導電率1mS/cm以上25mS/cm以下の平衡化液Dに供し、精製することで、高純度なAAV結合性タンパク質が得られることがわかる。一方、AAV結合性タンパク質の回収量の点からは、添加試料および平衡化液Dの導電率を5mS/cm以上9mS/cmとした条件((a)、(b)、(c)および(d)の条件)で、より多くのAAV結合性タンパク質を回収できることがわかる。以上の結果から、添加試料および平衡化液Dの導電率を4mS/cm以上10mS/cm以下とすることで、AAV結合性タンパク質を高純度かつ高回収率で精製できることがわかる。
本実施例で平衡化液Dを用いて、陽イオン交換カラムで回収した画分のSDS-PAGE結果を、それぞれ図10のレーン3((a)5mS/cm)、レーン4((b)6mS/cm)、レーン5((c)7mS/cm)、レーン6((d)9mS/cm)、およびレーン7((d)14mS/cm)に示す。図10のレーン2(陰イオン交換カラムによる精製のみ)と、レーン3からレーン7(陰イオン交換カラムによる精製後、陽イオン交換カラムで精製)との比較からも、陰イオン交換カラムによる精製後、陽イオン交換カラムで精製することでAAV結合性タンパク質を高純度に精製できることがわかる。
実施例9 陽イオン交換カラムを用いたAAV結合性タンパク質の精製(カラムサイズのスケールアップ)
実施例7および実施例8で最適化した精製条件が、カラムサイズをスケールアップしても(すなわち大量精製においても)適用可能か、検討した。
(1)実施例6に記載の方法で陰イオン交換カラムから溶出した、AAV結合性タンパク質を含む画分(添加試料)を、透析膜(分画分子量約12000から14000)と、試料溶液量の100倍量以上の20mmol/L塩化ナトリウムを含む50mMリン酸緩衝液(pH2.7)(導電率が(b)の条件の平衡化液D、以下、「平衡化液E」とも表記)を用いて透析処理し、平衡化液Eに置換した。
(2)平衡化液Eであらかじめ平衡化した、陽イオン交換クロマトグラフィ用担体(TOYOPEARL CM-650M、東ソー社製)を充填した陽イオン交換カラム(容量40mL)に、(1)で透析処理したAAV結合性タンパク質を含む画分78mLを、流速10mL/minでアプライし、前記担体にAAV結合性タンパク質以外の不純物を吸着させると同時に、前記担体に吸着せずに素通りしたAAV結合性タンパク質を含む画分を回収した。
(3)平衡化液E 200mLを用いて、陽イオン交換クロマトグラフィ用担体に吸着しないAAV結合性タンパク質を洗い流して回収する、押出工程を実施した。
(4)500mmol/L塩化ナトリウムを含む50mmol/Lリン酸緩衝液(pH2.7)200mLを用いて、陽イオン交換カラム内に残存したタンパク質を洗い流す、洗浄工程を実施した。
(5)(2)および(3)で回収したAAV結合性タンパク質を含む画分を、実施例3(6)と同様な方法でサイズ排除クロマトグラフィおよびSDS-PAGEに供し、AAV結合性タンパク質の純度を測定した。
AAV結合性タンパク質の回収結果(280nmの吸光度変化に基づくクロマトパターン)を図5(B)に示す。また(2)および(3)で回収したAAV結合性タンパク質を含む画分の液量、当該画分中に含まれるタンパク質濃度、前記液量および前記タンパク質濃度から算出したタンパク質量、(5)のサイズ排除クロマトグラフィで測定した前記画分に含まれるAAV結合性タンパク質の純度、ならびに前記タンパク質量および前記純度から算出したAAV結合性タンパク質の回収量をまとめた結果を表5に示す。
陽イオン交換クロマトグラフィ用担体に吸着せず素通りした、AAV結合性タンパク質を含む画分における、前記タンパク質の純度は99.6%と、陰イオン交換カラムから溶出した前記タンパク質を含む画分(46.3%、実施例6、表5)よりも純度が向上した。以上の結果から、実施例8での最適精製条件(添加試料を陽イオン交換カラムに供した後、pH2.2以上3.2以下かつ導電率1mS/cm以上25mS/cm以下の緩衝液を前記カラムに供し、前記カラムから素通りした画分を回収)が、容量40mLの陽イオン交換カラムに対しても適用可能なことがわかる。
なお本実施例で得られた、AAV結合性タンパク質を含む画分のSDS-PAGE結果を図6のレーン2に示す。図6のレーン1(陰イオン交換カラムによる精製のみ)と、レーン2(陰イオン交換カラムによる精製後、陽イオン交換カラムで精製)との比較からも、本発明のAAV結合性タンパク質の精製方法が、カラムスケールを大きくしても適用できることがわかる。
実施例10 AAV結合性タンパク質を含む試料の調製(その3)
(1)配列番号6に記載のアミノ酸配列からなるAAV結合性タンパク質AVR9vを含むポリペプチド、をコードするポリヌクレオチド(配列番号7)を含むプラスミドpTrcAVR9v-CRNDTCG-V1で大腸菌W3110株を形質転換し、得られたAVR9vを発現可能な形質転換体を、実施例1に記載の方法と同様の方法で培養することで前培養液を調製した。なお配列番号7において、1番目のメチオニン(Met)から22番目のアラニン(Ala)までがPelBシグナルペプチドであり、25番目のセリン(Ser)から213番目のアスパラギン酸(Asp)までがAAV結合性タンパク質AVR9vであり、214番目のシステイン(Cys)から220番目のグリシン(Gly)までが不溶性担体への固定化用タグであるシステインタグ配列である。またAVR9vは、AAV受容体KIAA0319Lの細胞外ドメイン1(PKD1)およびドメイン2(PKD2)(配列番号1の312番目のセリンから500番目のアスパラギン酸までのアミノ酸残基)に対して、以下の(I)、(III)から(VIII)、(X)および(XII)に示すアミノ酸置換が生じたポリペプチドである。
(I)配列番号1の317番目(配列番号6では30番目)のバリンがアスパラギン酸に置換
(III)配列番号1の362番目(配列番号6では75番目)のリジンがグルタミン酸に置換
(IV)配列番号1の371番目(配列番号6では84番目)のリジンがアスパラギンに置換
(V)配列番号1の390番目(配列番号6では103番目)のグリシンがセリンに置換
(VI)配列番号1の399番目(配列番号6では112番目)のリジンがグルタミン酸に置換
(VII)配列番号1の476番目(配列番号6では189番目)のセリンがアルギニンに置換
(VIII)配列番号1の487番目(配列番号6では200番目)のアスパラギンがアスパラギン酸に置換
(X)配列番号1の342番目(配列番号6では55番目)のチロシンがセリンに置換
(XII)配列番号1の382番目(配列番号6では95番目)のイソロイシンがバリンに置換
(2)実施例1(2)に記載の方法と同様の方法で、3L容量の培養槽を用いて本培養を開始し、流加培養を行なった。
(3)実施例1(3)に記載の方法と同様の方法で、IPTGによる発現誘導を行なった。得られた培養液を遠心分離し、AAV結合性タンパク質を含む大腸菌の菌体を回収した。
(4)実施例1(4)に記載の方法と同様の方法で、(3)で回収した菌体から、菌体内に発現した前記タンパク質を抽出した。
(5)菌体抽出液を遠心分離し、上清を回収後、0.2μmのフィルターでろ過することで、AAV結合性タンパク質抽出液を得、これをAAV結合性タンパク質を含む試料とした。
実施例11 イオン交換カラムを用いたAAV結合性タンパク質の精製
(1)実施例10に記載の方法で得られた、AAV結合性タンパク質を含む試料(5mL)を、実施例5(1)に記載の方法と同様の方法で陰イオン交換カラムにアプライし、陰イオン交換クロマトグラフィ用担体にAAV結合性タンパク質を吸着させた。
(2)実施例5(2)に記載の方法と同様の方法で洗浄工程を実施後、200mmol/L塩化ナトリウムを含む、50mmol/Lトリス塩酸緩衝液(pH7.5)25mLを用いて、陰イオン交換クロマトグラフィ用担体に吸着したAAV結合性タンパク質を溶出させ、AAV結合性タンパク質を含む画分を回収した。
(3)実施例5(4)に記載の方法と同様の方法で洗浄工程を実施した。
(4)(2)で陰イオン交換カラムから溶出した、AAV結合性タンパク質を含む画分を、透析膜(分画分子量約12000から14000)を、試料溶液量の100倍量以上の平衡化液Eを用いて透析処理し、溶媒置換した。
(5)平衡化液Eであらかじめ平衡化した、陽イオン交換クロマトグラフィ用担体(TOYOPEARL CM-650M、東ソー社製)を充填した陽イオン交換カラム(容量5mL)に、(4)で溶媒置換したAAV結合性タンパク質を含む画分24mLを、流速1.25mL/minでアプライし、前記担体にAAV結合性タンパク質以外の不純物を吸着させると同時に、吸着せずに素通りしたAAV結合性タンパク質を含む画分を回収した。
(6)平衡化液E25mLを用いて、陽イオン交換カラムに吸着しないAAV結合性タンパク質を洗い流して回収する、押出工程を実施した。
(7)500mmol/L塩化ナトリウムを含む50mmol/Lリン酸緩衝液(pH2.7)25mLを用いて、陽イオン交換カラム内に残存したタンパク質を洗い流す、洗浄工程を実施した。
(8)(5)および(6)で回収したAAV結合性タンパク質を含む画分を、実施例3(6)と同様な方法でサイズ排除クロマトグラフィおよびSDS-PAGEに供し、AAV結合性タンパク質の純度を測定した。
AAV結合性タンパク質の回収結果(280nmの吸光度変化に基づくクロマトパターン)を図11に示す。また(2)、ならびに(5)および(6)で回収したAAV結合性タンパク質を含む画分の液量、当該画分中に含まれるタンパク質濃度、前記液量および前記タンパク質濃度から算出したタンパク質量、(8)のサイズ排除クロマトグラフィで測定した前記画分に含まれるAAV結合性タンパク質の純度、ならびに前記タンパク質量および前記純度から算出したAAV結合性タンパク質の回収量をまとめた結果を表8に示す。
(2)(図11(A))、ならびに(5)および(6)(図11(B))の工程で、AAV結合性タンパク質に相当するピークを確認できたことから、AAV結合性タンパク質を、陰イオン交換カラムおよび陽イオン交換カラムで精製できることがわかる。
なお(2)で回収した溶出画分、ならびに(5)および(6)で回収した素通り画分に含まれるAAV結合性タンパク質(サイズ排除クロマトグラフィによるAAV結合性タンパク質の純度)はそれぞれ31.2%、および86.6%であった(表8)。以上の結果から、AAV結合性タンパク質を含む試料を、陰イオン交換カラムに供した後、陽イオン交換カラムに供して精製することで、高純度なAAV結合性タンパク質が得られることがわかる。
当該画分のSDS-PAGE結果を図12に示す。図12のレーン2(陰イオン交換カラムによる精製のみ)と、レーン3(陰イオン交換カラムによる精製後、陽イオン交換カラムで精製)との比較からも、陰イオン交換カラムによる精製後、陽イオン交換カラムで精製することで、AAV結合性タンパク質を高純度に精製できることがわかる。

Claims (10)

  1. 試料中に含まれるアデノ随伴ウイルス(AAV)結合性タンパク質の精製方法であって、以下の(1)から(3)に示す工程を少なくとも含む、前記方法:
    (1)AAV結合性タンパク質を含む試料を陰イオン交換クロマトグラフィ用担体に添加し、当該担体に前記タンパク質を吸着させる工程、
    (2)陰イオン交換クロマトグラフィ用担体に吸着したAAV結合性タンパク質を第一の溶出液を用いて溶出させる工程、
    (3)前記第一の溶出液で溶出したAAV結合性タンパク質を含む画分を陽イオン交換クロマトグラフィ用担体に添加し、前記タンパク質を含む画分を回収する工程。
  2. 第一の溶出液が、120mmol/L以上300mmol/L以下の塩化ナトリウムを含む緩衝液である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記(3)の工程が、
    前記第一の溶出液で溶出したAAV結合性タンパク質を含む画分を陽イオン交換クロマトグラフィ用担体に添加し、当該担体に前記タンパク質以外の不純物を吸着させるとともに当該担体に吸着しない前記タンパク質を含む画分を回収する工程を少なくとも含む、
    請求項1に記載の方法。
  4. 陽イオン交換クロマトグラフィ用担体に添加する、AAV結合性タンパク質を含む画分のpHが2.2以上3.2以下である、請求項3に記載の方法。
  5. 陽イオン交換クロマトグラフィ用担体に添加する、AAV結合性タンパク質を含む画分の導電率が1mS/cm以上25mS/cm以下である、請求項3に記載の方法。
  6. 前記(3)の工程が、
    前記第一の溶出液で溶出したAAV結合性タンパク質を含む画分を陽イオン交換クロマトグラフィ用担体に添加し、当該担体に前記タンパク質を吸着させる工程と、
    前記担体に吸着したAAV結合性タンパク質を第二の溶出液を用いて溶出させる工程とを少なくとも含む、
    請求項1に記載の方法。
  7. 第二の溶出液が、100mmol/L以上500mmol/L以下のグアニジノ基を有する化合物を含む緩衝液である、請求項6に記載の方法。
  8. 陰イオン交換クロマトグラフィ用担体および陽イオン交換クロマトグラフィ用担体が、それぞれカラムに充填した態様である、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
  9. AAV結合性タンパク質が、以下の(i)から(iii)のいずれかから選択されるポリペプチドである、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法;
    (i)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち312番目のセリンから500番目のアスパラギン酸までのアミノ酸残基を少なくとも含むポリペプチド、
    (ii)配列番号1に記載のアミノ酸配列の312番目のセリンから500番目のアスパラギン酸までのアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該312番目から500番目までのアミノ酸残基において、1もしくは数個の位置での1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、または付加を含むアミノ酸配列を有し、かつAAV結合活性を有するポリペプチド、
    (iii)配列番号1に記載のアミノ酸配列の312番目のセリンから500番目のアスパラギン酸までのアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該312番目から500番目までのアミノ酸残基からなるアミノ酸配列に対して70%以上の相同性を有し、かつAAV結合活性を有するポリペプチド。
  10. AAV結合性タンパク質を発現可能な遺伝子組換え宿主を培養することで前記タンパク質を発現させる工程と、得られた培養物から発現されたAAV結合性タンパク質を回収する工程と、回収したAAV結合性タンパク質を含む試料から前記タンパク質を精製する工程とを含む、AAV結合性タンパク質の製造方法であって、
    前記精製工程を、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法で行なう、前記方法。
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