JP2023118002A - 組織修復材およびその製造方法 - Google Patents

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英生 伏見
Hideo Fushimi
沙耶美 伊藤
Sayami Ito
和人 福永
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秀一 酒井
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Abstract

【課題】微粉の少ない高分子多孔質顆粒を含む組織修復材およびその製造方法を提供すること。【解決手段】粉砕時に投入する高分子多孔質体のサイズを、スクリーン孔径に対し一定の比率とする。【選択図】なし

Description

本発明は、高分子多孔質顆粒を含む組織修復材とその製造方法に関する。
コラーゲンやゼラチン等の生体親和性高分子からなる多孔質体は、細胞足場、移植用部材、組織修復材等の材料として有用であり、特許文献1には、リコンビナントゼラチン多孔質顆粒の製造方法が記載されている。具体的には、凍結乾燥により得た多孔質体をスクリーンミルで粉砕後、分級することによりリコンビナントゼラチン多孔質顆粒を製造する方法が開示されている。
多孔質体等の原料物質を粉砕して顆粒を得る場合、顆粒には多様な大きさのものが含まれることになる。所望の大きさとおおきく異なる大きさの顆粒は、その物理化学的特性が所望の顆粒と異なるのみならず、顆粒を充填して用いる場合、顆粒の充填層に介在することにより予想外の影響を及ぼすことがあり好ましくない。例えば真球状の粒子の場合、主たる粒子に対し半径が0.29倍以下の粒子は、主たる粒子からなる充填層のいかなる空隙にも介在しうることが知られている。
高分子多孔質顆粒を含む組織修復材の安定した品質を担保する観点から、粉砕後の顆粒のできるだけ多くが所望の粒子径範囲に含まれること、所望の大きさより小さい顆粒(微粉)が少ないことが望ましい。例えば、非特許文献1には、インペラ速度やバッチ投入量の最適化による微粉量を低減する方法が開示されている。
国際公開第2014/141877号パンフレット
Kotamarthy 他、Processes、2020年、683ページ
本発明の目的は、微粉の少ない高分子多孔質顆粒を含む組織修復材およびその製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、粉砕時に投入する高分子多孔質体のサイズをスクリーン孔径に対し一定の比率とすることで、微粉比率が低減された高分子多孔質顆粒が得られることを見出し、本発明を完成した。また、微粉を低減することにより得られる高分子多孔質顆粒は組織修復材として高い性能を発揮することを見出した。
すなわち、本発明は下記を含む。
[1]高分子多孔質顆粒を含み、高分子多孔質顆粒中の微粉の割合が高分子多孔質顆粒全体の10質量%以下である、組織修復材
[2]高分子多孔質体をスクリーンミルで粉砕する粉砕工程を一工程以上含み、粉砕工程の少なくとも一つは、スクリーン孔径に対し4乃至6倍の大きさの高分子多孔質体をスクリーンミルに投入して粉砕する工程である、[1]に記載の組織修復材の製造方法
本発明によれば、高い骨再生率を示す骨補填材が提供される。また、スクリーンミルを用いそのような骨補填材を製造するための製造方法が提供される。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても本工程の所期の効果が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ下限値及び上限値として含む範囲を示す。
本発明において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本発明において、ポリペプチドのアミノ酸配列を、当業界で周知の一文字表記(例えば、グリシン残基の場合は「G」)又は三文字表記(例えば、グリシン残基の場合は「Gly」)を用いて表現する場合がある。
本発明において、ポリペプチドのアミノ酸配列に関する「%」は、特に断らない限り、アミノ酸(又はイミノ酸)残基の個数を基準とする。本発明において、対比される2種のポリペプチドのアミノ酸配列に関する「同一性」とは、以下の式で計算される値を指す。なお、複数のポリペプチドの対比(アライメント)は、同一となるアミノ酸残基の数が最も多くなるように常法に従って行うものとする。
同一性(%)={(同一となるアミノ酸残基の数)/(アラインメント長)}×100
以下、本発明について説明する。
[高分子]
本発明において高分子とは、分子量が大きい分子で、分子量が小さい分子から実質的又は概念的に得られる単位の多数回の繰り返しで構成した構造を有する分子を言う。例えば、ポリアミン、セルロース、アミロース、デンプン、キチン、ポリペプチド、タンパク質、DNA及びRNA等が挙げられる。高分子は水溶性であることが好ましく、ポリペプチド及びタンパク質がさらに好ましい。ポリペプチド及びタンパク質の中では、コラーゲン及びゼラチンが特に好ましい。
高分子中の親水性繰り返し単位比率は、50%以下であることが好ましく、30%以下であることがさらに好ましい。これよりも親水性単位比率が高いと、高分子周囲の自由水が減少し凍結が阻害される。ここで、親水性繰り返し単位比率とは、高分子中に占めるイオン性基、及び/又は水酸基を有する繰り返し単位の比率をいう。
上記ゼラチンは、Gly-X-Yで示される配列を連続して6以上含むポリペプチドを意味し、ポリペプチド中にGly-X-Yで示される配列以外に他のアミノ酸残基を1以上有していてもよい。Gly-X-Yで示される配列は、コラーゲンの部分アミノ酸配列に由来するアミノ酸配列に相当する配列であり、この配列の繰り返しはコラーゲンに特徴的な配列を意味する。
複数個のGly-X-Yは、それぞれ同一であってもよく、異なってもよい。また、Gly-X-Y配列中X及びYは繰返し単位ごとに独立であり、同一でも異なっていてもよい。Gly-X-YにおいてGlyはグリシン残基、X及びYは、グリシン残基以外の任意のアミノ酸残基を表す。X及びYとしては、イミノ酸残基、即ちプロリン残基又はオキシプロリン残基が多く含まれることが好ましい。このようなイミノ酸残基の含有率は、上記ゼラチン全体の10%~45%を占めることが好ましい。上記ゼラチン中のGly-X-Yの含有率としては、全体の80%以上であることが好ましく、95%以上であることが更に好ましく、99%以上であることが最も好ましい。
上記ゼラチンとしては、天然型であっても、天然型とは少なくとも1つのアミノ酸残基が異なる変異型であってもよい。天然型のゼラチンとは、天然で生じたコラーゲンを原料とするゼラチン、又は天然で生じたコラーゲンを原料とするゼラチンと同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを意味する。特に断らない限り、本明細書では変異型又は組換え体のゼラチンを総称して、組換えゼラチンと称する。天然型のゼラチン又はその組換えゼラチンは、例えば、魚類、哺乳類等の動物に由来するものが挙げられるが、 哺乳類の動物の天然型ゼラチン又はその組換えゼラチンであることが好ましい。哺乳類の動物としては、例えば、ヒト、ウマ、ブタ、マウス、ラット等が挙げられ、ヒト又はブタであることがより好ましい。天然型ゼラチンとしてはブタ又はヒトに由来するものであることが好ましく、組換えゼラチンとしてはヒト由来組換えゼラチンであることが好ましい。
また、上記ゼラチンとしては、上記Gly-X-Yで示される配列を連続して6以上有する上記コラーゲンをコードする遺伝子の塩基配列又はアミノ酸配列に対して、1つ以上の塩基又はアミノ酸残基の変更を加えた塩基配列又はアミノ酸配列を、常法により、適当な宿主に導入し発現させて得られた組換えゼラチンであることが好ましい。このような組換えゼラチンを用いることにより、(骨)組織修復能を高めると共に、天然のゼラチンを用いる場合と比較して種々の特性を発現させることができ、例えば、生体による拒絶反応などの不都合な影響を回避することができるなどの利点を有する。
上記組換えゼラチンとしては、例えば、EP1014176A2、US6992172、WO2004/85473、WO2008/103041、特表2010-519293、特表2010-519252、特表2010-518833、特表2010-519251、WO2010/128672及びWO2010/147109等に開示されているものを特に好ましく用いることができる。 また、上記組換えゼラチンは、2kDa以上100kDa以下の分子量であることが好ましく、5kDa以上90kDa以下であることがより好ましく、10kDa以上90kDa以下であることがより好ましい。
上記組換えゼラチンは、生体親和性の点で、細胞接着シグナルを更に含むものであることが好ましく、上記組換えゼラチン中に存在する細胞接着シグナルが一分子中に2つ以上有することものであることが、より好ましい。このような細胞接着シグナルとしては、RGD配列、LDV配列、REDV配列(配列番号2)、YIGSR配列(配列番号3)、PDSGR配列(配列番号4)、RYVVLPR配列(配列番号5)、LGTIPG配列(配列番号6)、RNIAEIIKDI配列(配列番号7)、IKVAV配列(配列番号8)、LRE配列、DGEA配列(配列番号9)、及びHAV配列の各配列を挙げることができ、好ましくは、RGD配列、YIGSR配列、PDSGR配列、LGTIPG配列、IKVAV配列及びHAV配列を挙げることができ、RGD配列であることが特に好ましい。RGD配列のうち、ERGD配列であることが更に好ましい。
上記組換えゼラチンにおけるRGD配列の配置としては、RGD間のアミノ酸残基数が0~100であることが好ましく、25~60であることが更に好ましい。また、RGD配列は、このようなアミノ酸残基数の範囲内で不均一に配置されていることが好ましい。
また、上記組換えゼラチンにおけるアミノ酸残基の総数に対するRGD配列の割合は、少なくとも0.4%であることが好ましく、組換えゼラチンが350以上のアミノ酸残基を含む場合、350アミノ酸残基の各ストレッチが少なくとも1つのRGD配列を含むことが好ましい。
上記組換えゼラチンは、250のアミノ酸残基あたり少なくとも2つのRGD配列を含むことが好ましく、少なくとも3つRGD配列を含むことがより好ましく、少なくとも4つのRGD配列を含むことが更に好ましい。ただし、上記組換えゼラチンの配列は、以下の態様であることが好ましい:(1)セリン残基及びスレオニン残基を含まない、(2)セリン残基、スレオニン残基、アスパラギン残基、チロシン残基、及びシステイン残基を含まない、(3)Asp-Arg-Gly-Aspで示されるアミノ酸配列を含まない。上記組換えゼラチンは、この好ましい配列の態様(1)~(3)を単独で備えたものであってよく、2つ以上の態様を組み合わせて備えたものであってもよい。また、上記組換えゼラチンは部分的に加水分解されていてもよい。
上記組換えゼラチンは、A-[(Gly-X-Y)-Bの繰り返し構造を有することが好ましい。mは、2~10を表し、3~5を表すことが好ましい。A及びBは、任意のアミノ酸又はアミノ酸配列を表す。nは3~100を表し、15~70を表すことが好ましく、50~60を表すことがより好ましい。
好ましくは、組換えゼラチンは、式:Gly-Ala-Pro-[(Gly-X-Y)63-Gly(式中、63個のXはそれぞれ独立にアミノ酸残基の何れかを示し、63個のYはそれぞれ独立にアミノ酸残基の何れかを示す。なお、3個の(Gly-X-Y)63はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)で示される。
上記組換えゼラチンの繰り返し単位には、天然に存在するコラーゲンの配列単位を複数結合することが好ましい。ここで言う天然に存在するコラーゲンとしては、好ましくはI型、II型、III型、IV型及びV型が挙げられる。より好ましくは、I型、II型又はIII型とすることができる。コラーゲンの由来としては、好ましくは、ヒト、ウマ、ブタ、マウス、ラットを挙げることができ、ヒトであることがより好ましい。
上記組換えゼラチンの等電点は、好ましくは5~10であり、より好ましくは6~10であり、更に好ましくは7~9.5とすることができる。
上記組換えゼラチンの好ましい態様としては以下のものを挙げることができる:(1)カルバモイル基が加水分解されていない、(2)プロコラーゲンを有さない、(3)テロペプタイドを有さない、(4)天然コラーゲンをコードする核酸により調製された実質的に純粋なコラーゲン用材料である。上記組換えゼラチンは、この好ましい態様(1)~(4)を単独で備えたものであってよく、2つ以上の態様を組み合わせて備えたものものであってもよい。
上記組換えゼラチンは、(骨)組織修復能の高さから、好ましくは、以下(A)~(C)のいずれかとすることができる。
(A) 下記配列番号1で示されるポリペプチド、
GAP(GAPGLQGAPGLQGMPGERGAAGLPGPKGERGDAGPKGADGAPGAPGLQGMPGERGAAGLPGPKGERGDAGPKGADGAPGKDGVRGLAGPIGPPGERGAAGLPGPKGERGDAGPKGADGAPGKDGVRGLAGPIGPPGPAGAPGAPGLQGMPGERGAAGLPGPKGERGDAGPKGADGAPGKDGVRGLAGPP)3G(配列番号1)
(B) 上記(A)のアミノ酸配列中、第4番目~第192番目のアミノ酸残基からなる部分アミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有する部分配列を有すると共に、(骨)組織修復能を有するポリペプチド、
(C) 上記(A)のアミノ酸配列に対して1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、(骨)組織修復能を有するポリペプチド。
上記(B)における配列同一性としては、組換えゼラチンの(骨)組織修復能の観点から、より好ましくは90%以上とすることができ、更に好ましくは95%以上とすることができる。
上記(B)の配列における上記部分アミノ酸配列は、配列番号1で示される配列の繰り返し単位に相当する部分アミノ酸配列である。上記(B)のポリペプチドに上記繰り返し単位に相当する部分アミノ酸配列が複数存在する場合には、配列同一性が80%以上となる繰り返し単位を1つ、好ましくは2つ以上含むポリペプチドとすることができる。
また、上記(B)で規定されるポリペプチドは、上記繰り返し単位に相当する部分アミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有する部分配列を、合計のアミノ酸残基数として、全アミノ酸残基数の80%以上含むことが好ましい。
上記(B)で規定されるポリペプチドの長さとしては、151個~2260個のアミノ酸残基数とすることができ、架橋後の分解性の観点から、193個以上、安定性の観点から、944個以下のアミノ酸残基数であることが好ましく、380個~756個のアミノ酸残基数であることがより好ましい。
また、上記(C)で規定されるポリペプチドは、上記(A)のアミノ酸配列に対して1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、組織修復能を有するポリペプチドであってもよい。
上記(C)で規定されるポリペプチドにおいて欠失、置換若しくは付加されるアミノ酸残基数としては、1個又は数個であればよく、組換えゼラチンの総アミノ酸残基数によって異なるが、例えば、2個~15個、好ましくは2個~5個とすることができる。
上記組換えゼラチンは、当業者に公知の遺伝子組換え技術によって製造することができ、例えばEP1014176A2、US6992172、WO2004/85473、WO2008/103041等に記載の方法に準じて製造することができる。具体的には、所定の組換えゼラチンのアミノ酸配列をコードする遺伝子を取得し、これを発現ベクターに組み込んで、組み換え発現ベクターを作製し、これを適当な宿主に導入して形質転換体を作製する。得られた形質転換体を適当な培地で培養することにより、組換えゼラチンが産生されるので、培養物から産生された組換えゼラチンを回収することにより、本発明で用いる組換えゼラチンを調製することができる。
[高分子水溶液]
本発明において高分子水溶液とは、一種以上の高分子が含まれる水溶液である。高分子水溶液における高分子濃度は、0.1質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがさらに好ましく、5質量%以上であることが特に好ましい。0.1質量%よりも濃度が低いと、水分を除去したのちに高分子多孔質体の構造を維持することが困難である。高分子水溶液は、凍結温度以上でゲル化することが好ましい。高分子水溶液における高分子濃度の上限は、高分子が溶解できる限り特に限定されないが、一般的には40質量%以下であり、30質量%以下、又は20質量%以下でもよい。
高分子水溶液は、高分子を含む溶液を精製及び濃縮すること、又は乾燥状態の高分子を水性媒体に溶解することにより調製する。(1)用時調整してもよいし、(2)予め調整済みのものを準備して用いてもよい。(3)精製及び濃縮により得られた高分子水溶液を凍結乾燥し、得られた凍結乾燥体に水性媒体を加えて再溶解することで高分子水溶液を調整してもよい。または、(4)精製及び濃縮により得られた高分子水溶液を凍結し、得られた凍結体を解凍することで高分子水溶液を調整してもよい。凍結体の解凍は、気泡や不溶物(凍結体の溶け残り)の発生を低減する観点から、35~40℃で15~20時間かけて解凍することが好ましい。用事調整の手間削減、輸送や保管の便宜、高分子水溶液中の気泡や不溶物を低減する観点から、上記(4)の方法が好ましい。
高分子水溶液中に分散した気泡や不溶物は、濾過、遠心、減圧、脱泡等の操作により、凍結工程前に除去することが好ましい。これにより、異方性が低い高分子水溶液凍結体の得率が向上する。気泡や不溶物が除かれていることは、濁度測定により評価できる。又は、光学顕微鏡による目視検査によっても評価できる。例えば、光学顕微鏡の視野に映る気泡及び不要物の個数を計算し、高分子水溶液1μL中の気泡及び不溶物の個数で評価できる。高分子水溶液中の気泡や不溶物は、0.5個/μL以下であることが好ましく、0.3個/μL以下であることがより好ましく、0.1個/μL以下であることがさらに好ましく、0個/μLであることが特に好ましい。
高分子水溶液には、所定の特性を付加する目的で、高分子以外の成分を添加してよい。
このような他の成分としては、例えば、骨誘導薬剤等の骨再生又は骨新生に関する成分を挙げることができる。骨誘導薬剤としては、例えばBMP(骨形成因子)やbFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)が挙げられるが、特に限定はされない。他に例えば、ポリペプチド又はタンパク質の架橋剤を挙げることができる。
高分子水溶液の水性媒体としては、高分子を溶解可能であり、生体組織に対して使用可能なものであれば特に制限はなく、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝液等、当分野で通常使用可能なものを挙げることができる。
高分子としてゼラチンを用いる場合、ゼラチン溶液におけるゼラチン濃度については、ゼラチンが溶解可能な濃度であればよく、特に制限はない。ゼラチン溶液中のゼラチン濃度は、例えば、0.5質量%~20質量%とすることが好ましく、2質量%~16質量%であることがより好ましく 、4質量%~12質量%であることが更に好ましい。また、ゼラチン溶液は、凍結工程の前に脱泡処理してもよい。これにより、氷晶形成を均一に生じやすくさせることができる。脱泡方法については特に制限はないが、例えば、2~10kPaの圧力で真空遠心脱泡することができる。
ゼラチン溶液は、溶解していない粒子を除くためにろ過をしてもよい。ろ過方法は特に制限されないが、例えば、孔径0.22~0.45μmのフィルターを用いて加圧ろ過する。フィルターの材質についても特に制限はなく、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルスルホン、セルロースアセテート、ポリビニリデンフルオライドなどを用いることができるが、ゼラチンの吸着性が低く溶出物が少ないという観点から、セルロースアセテートが好ましい。ゼラチン溶液を調製する際の温度については、特に制限はなく、通常用いられる温度、 例えば、0℃~60℃、好ましくは、3℃~40℃程度であればよい。
[液体容器]
本発明において液体容器とは、高分子水溶液を入れて、冷却・凍結するための容器を言う。容器の形状は例えば、皿状、円筒カップ状が挙げられる。円筒カップ状が好ましい。容器内部は高い曲率を持たないことが好ましい。具体的にはR1mm以上であることが好ましく、R2mm以上であることがさらに好ましい(Rは曲率半径を意味する)。容器の大きさは特に限定されないが、円筒カップ状容器の場合、内径200mm以下であることが好ましく、150mm以下であることがさらに好ましい。
液体容器は、液体容器を構成する部材と同一又は別の部材(コート部材)で、液体容器の内面をコートしてもよい。また、液体容器を構成する部材と同一又は別の部材からなるカバー部材を液体容器の内面に敷き詰めたり、円筒状のカバー部材を設置したりしてもよい。コート部材やカバー部材と区別して、液体容器を構成する部材を液体容器の主たる部材とも称する。液体容器の主たる部材、コート部材、カバー部材の組み合わせは問わない。即ち、液体容器は、(1)液体容器の主たる部材のみ、(2)液体容器の主たる部材及びコート部材、(3)液体容器の主たる部材及びカバー部材、(4)液体容器の主たる部材、コート部材及びカバー部材、のいずれの組み合わせでもよい。
液体容器の内面、即ち、高分子水溶液を液体容器に入れた時に高分子水溶液の接する面は、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(パーフルオロエチレンプロペンコポリマーとも言う)(FEP)である。例えば、上記(1)~(4)に即して言えば、(1)液体容器の主たる部材がFEP、(2)少なくとも、コート部材がFEP、(3)少なくとも、カバー部材がFEP、(4)少なくとも、カバー部材がFEP、である。
液体容器の主たる部材の材質に特に制限はなく、例えば、アルミニウムが挙げられる。液体容器の主たる部材が高分子水溶液と接する場合、液体容器の主たる部材はFEPである。液体容器の主たる部材の材質は、線膨張係数(熱膨張係数とも言う)が10×10-5/K以下であることが好ましく、50×10-6/K以下であることがさらに好ましく、25×10-6/K以下であることが特に好ましい。
カバー部材は、容器内面に一様に敷き詰められていればよく、カバー部材の形状、厚さに制限はない。カバー部材が高分子水溶液と接する場合、カバー部材はFEPである。コート部材は、容器内面に一様にコートしていればよく、塗膜の厚さに制限はない。塗膜は20μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがさらに好ましい。コート部材が高分子水溶液と接する場合、コート部材はFEPである。
[凍結工程]
本発明において凍結工程とは、液体容器に入れた高分子水溶液を凍結する工程を言う。凍結手段に特に制限はなく、例えば、冷凍機、凍結乾燥機等の装置で凍結すればよい。凍結乾燥機で凍結する場合、同一の装置で連続的に、高分子水溶液凍結体からの水分除去(凍結乾燥)が可能である。
凍結工程の温度は、高分子の種類、高分子水溶液の濃度によって異なるが、凝固熱発生直前の溶液内で最も液温の高い部分の温度と溶液内で最も液温の低い部分の温度との差が2.5℃以下であることが好ましい。ここで「凝固熱発生直前の温度差」とは、凝固熱発生時の1秒前~10秒前の間で最も温度差が大きくなるときの温度差を意味する。また、溶液内で最も液温の低い部分の温度は-8℃以下であることが好ましく、さらに好ましくは-10℃以下であり、なかでも-15℃以上であることが好ましい。
[高分子水溶液凍結体]
本発明において高分子水溶液凍結体とは、高分子水溶液を凍結することで得られる凍結体を意味する。
本発明における高分子水溶液凍結体の「異方性」とは、以下のようにして測定される物理的特性を意味する。高分子水溶液凍結体を凍結乾燥後、凍結乾燥体(高分子多孔質体)の中央付近を水平及び鉛直方向に切断する。次いで各断面を染色し、一定(2.0mm×2.0mmや2.5mm×2.5mm)の領域を光学顕微鏡で観察する。観察領域内における、染色された材料で囲まれた領域に外接する長方形のうち、長方形の対向する二辺の距離が最大となる外接長方形を選択する。この対向する二辺の距離が最大となる外接長方形の長辺の長さを、水平方向の断面及び鉛直方向の断面のそれぞれにおける観察領域内において、50個ずつ計測し、その平均を当該凍結体の網目の長径の平均値とする。
このときの個々の網目について、水平方向の断面の長径(平均値)と鉛直方向の断面の長径(平均値)のうち小さい方をd1、他方をd2として得られた比率d2/d1を「異方性」と定義する。この異方性が3以下のものを「異方性が低い」と定義する。
[水分除去工程]
本発明において水分除去工程とは、高分子水溶液凍結体から水分を除去する工程を言う。水分を除去する手段に特に制限はなく、高分子水溶液凍結体中の氷を融解させる方法、昇華させる方法(凍結乾燥)等があり、凍結乾燥が好ましい。凍結乾燥の期間としては、例えば、0.5時間~300時間とすることができる。使用可能な凍結乾燥器について特に制限はない。
[高分子多孔質体]
本発明において高分子多孔質体とは、高分子からなる多孔質ブロックを言う。高分子水溶液凍結体から水分を除去することで、高分子多孔質体が得られる。高分子多孔質体は、さらに粉砕、架橋等の処理をすることで、種々の大きさの顆粒に加工し、細胞足場、移植用部材、組織修復材等として用いることができる。
高分子多孔質体の孔径は、生体との親和性を高めるとの観点から、10μm以上、2500μm以下であることが好ましく、40μm以上、1000μm以下であることがより好ましい。高分子多孔質体の孔径は、高分子多孔質体の中央付近の切断面を顕微鏡で観察した際の、孔部分と同じ面積をもつ円の直径(円相当径)として計測でき、観察領域内のすべての孔部分の円相当径の中央値として評価できる。高分子多孔質体の密度は、0.01g/cm以上、0.3g/cm以下であることが好ましく、0.05g/cm以上、0.1g/cm以下であることがより好ましい。高分子多孔質体の密度は、高分子多孔質体の質量を、内部の空隙も含む高分子多孔質体の見かけの体積で除することで算出できる。
高分子多孔質体の空隙率は、生体との親和性を高めるとの観点から、80.00%以上、99.99%以下であることが好ましく、92.01%以上、99.99%以下であることがより好ましい。「空隙率」は、以下の式で計算される値を指す。
空隙率(%)
=100-100×質量(g)÷見かけの体積(cm)÷真比重(g/cm
[粉砕工程]
粉砕工程では、高分子多孔質体を粉砕して粉砕物を得る。粉砕は、ハンマーミルやスクリーンミル等の粉砕機を適用可能であり、一定の大きさに粉砕されたものから随時回収されるため試験ごとの粒径分布のばらつきが小さいという観点から、スクリーンミル(例えばクアドロ社製コーミル)が好ましい。粉砕の条件としては、粉砕物表面の構造を維持するため、破砕する方式より切断する方式のほうが好ましい。また、顆粒内部の構造を維持するため、粉砕中に強い圧縮がかからない方式とすることが好ましい。高分子多孔質体を粉砕して得られた粉砕物は、高分子多孔質顆粒として組織修復材に含有される。
スクリーンミルで粉砕する場合、高分子多孔質顆粒を組織修復材(詳細は後述)に適した大きさにする観点から、スクリーンの孔径は、0.006inch以上、0.25inch以下とすることが好ましく、0.04inch以上、0.08inch以下とすることがより好ましい。効率よく粉砕する観点から、回転インペラの回転数は、100rpm以上、6000rpm以下とすることが好ましく、1000rpm以上、3000rpm以下とすることがより好ましい。スクリーンの孔における風速は、5m/s以上、20m/s以下とすることが好ましく、7m/s以上、15m/s以下とすることがより好ましい。
スクリーンミルに投入して粉砕する前の高分子多孔質体の大きさは、スクリーン孔径の4倍以上であることが好ましい。粉砕前の高分子多孔質体の大きさを上記の範囲とすることで、微粉(詳細は後述)の発生を抑制することができる。さらに、高分子多孔質体の大きさは、スクリーン孔径の6倍以下であることが好ましい。粉砕前の高分子多孔質体の大きさを上記の範囲とすることで、粉砕中の温度上昇による焦げの発生を抑制できる。高分子多孔質体の大きさは、高分子多孔質体の投影面積の平方根、すなわち投影面積と同じ面積をもつ正方形の一辺の長さで定義できる。
[分級工程]
粉砕工程の後には、整粒を目的として分級工程を含むことができる。これにより、均一な粒子径を有する高分子粉砕物を得ることができる。例えば、ゼラチン粉砕物の分級には、目開き300μm~1400μmのふるいを用いることが好ましい。
[高分子多孔質顆粒]
高分子多孔質顆粒の大きさ(すなわち、粉砕された後の高分子多孔質体の大きさ)は、0.01mm以上、10mm以下であることが好ましい。高分子多孔質顆粒を上記の範囲内にすることで、組織修復材に適した大きさとすることができる。また、0.1mm以上、5mm以下であることがより好ましく、0.3mm以上、1.4mm以下であることが更に好ましい。なお、高分子多孔質顆粒の大きさとは、一つ一つの高分子多孔質顆粒の大きさを意味するものであり、複数の高分子多孔質顆粒の大きさの代表値(例えば平均値及び中央値等)を意味するものではない。
高分子多孔質顆粒の大きさは、高分子多孔質顆粒をふるいにかけた際のふるいの目開きで定義することができ、例えば、1.4mmのふるいにかけ、通過した高分子多孔質顆粒を0.3mmのふるいにかけた際にふるいの上に残る高分子多孔質顆粒を、0.3mm以上、1.4mm以下の大きさの高分子多孔質顆粒とすることができる。
組織修復材として用いられる複数の高分子多孔質顆粒の集団は、ISO565に定められるR20/3系列の試験ふるいで分画した場合、重量比で最大となる区間(「主たる区間」)の下側ふるいが目開き355μm~1mmのいずれかであることが好ましく、710μmであることがさらに好ましい。主たる区間に含まれる画分が、主たる画分である。例えば、主たる区間の下側ふるいが目開き710μmである場合、「710μm上」が主たる画分である。
なお、高分子多孔質顆粒の形状は特に限定されない。例えば、粒子状(顆粒)、不定形、球状、粉状、多孔質状、繊維状、紡錘状、扁平状及びシート状であってもよい。好ましくは、粒子状(顆粒)、不定形、球状、粉状及び多孔質状である。「不定形」とは、表面形状が均一でないものを意味し、例えば、岩のような凹凸を有するものが挙げられる。
[微粉]
本発明においては目開きが√2倍間隔のふるい群で分級し、主たる画分より2段階以上小さい(主たる画分が通過しない篩に対し、目開きが1/√2の篩を通過する)高分子多孔質顆粒を「微粉」と定義する。高分子多孔質顆粒に含まれる微粉の割合は、高分子多孔質顆粒全体の10質量%以下であることが好ましく、7.5質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。微粉の割合を高分子多孔質顆粒全体の10質量%以下とすることで、高分子多孔質顆粒を含む組織修復材の骨再生率が向上する
[充填工程]
粉砕工程の後には、粉砕物をバイアルに充填する工程を含むことができる。例えば、ゼラチン粉砕物の充填方法は特に制限されないが、質量フィードバック方式のテーブルフィーダーを用いることができる。ゼラチン粉砕物を充填するバイアルについても特に制限されないが、例えば、内面をシリコーン加工されたガラスバイアルを用いることができる。
[架橋工程]
粉砕工程の後には、得られた粉砕物中の高分子を架橋する架橋工程を含むことが好ましい。架橋の方法としては、例えば、熱架橋、酵素による架橋、各種の化学架橋剤を用いた架橋、UV架橋など公知の方法を用いることができる。架橋の方法としては、化学架橋剤を用いた架橋又は熱架橋であることが好ましい。架橋(共有結合)のほかに、疎水性相互作用、水素結合、及びイオン性相互作用の少なくともいずれかにより、更に高次構造化
されているものも好ましい。
酵素による架橋を行う場合、酵素としては、生分解性材料間の架橋作用を有するものであれば特に限定されないが、好ましくはトランスグルタミナーゼ及びラッカーゼ、最も好ましくはトランスグルタミナーゼを用いて架橋を行うことができる。
本発明において、粉砕物がゼラチン粉砕物の場合、アルデヒド類又は縮合剤などの架橋剤で処理する際のゼラチンとの混合温度は、溶液を均一に攪拌できる限り特に限定されないが、好ましくは0℃~40℃であり、より好ましくは0℃~30℃であり、より好ましくは3℃~25℃であり、より好ましくは3℃~15℃であり、さらに好ましくは3℃~10℃であり、特に好ましくは3℃~7℃である。
架橋剤を混合して攪拌した後は、温度を上昇させることができる。例えば、粉砕物がゼラチン粉砕物の場合、反応温度としては架橋が進行する限りは特に限定はないが、ゼラチンの変性や分解を考慮すると実質的には0℃~60℃であり、より好ましくは0℃~40℃であり、より好ましくは3℃~25℃であり、より好ましくは3℃~15℃であり、さらに好ましくは3℃~10℃であり、特に好ましくは3℃~7℃である。
化学架橋剤を用いた架橋法の場合には、グルタルアルデヒドを化学架橋剤として用いた架橋であることがより好ましい。化学架橋剤を用いた架橋法を採用する場合には、化学架橋剤は、高分子水溶液に添加して、乾燥工程の前に架橋を行ってもよい。
熱架橋法に適用される架橋温度は、100℃~200℃であることが好ましく、120℃~170℃であることがより好ましく、130℃~160℃であることがさらに好ましい。熱架橋法を採用することにより、架橋剤の使用を回避することができる。熱架橋の処理時間としては、架橋温度、高分子の種類やどの程度の分解性を保持させるかによって異なる。
例えば、ヒト由来組換えゼラチンとして後述する実施例で使用のCBE3を用いた場合の熱架橋条件は、次のとおりである。実温約135℃のとき、2時間 ~20時間であることが好ましく、3時間~18時間であることがより好ましく、4時間 ~8時間であることが更に好ましい。熱架橋の処理は、酸化防止の点で減圧又は真空下又は不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。例えば、130℃~150℃で窒素雰囲気下3時間~7時間の熱架橋を行うことが好ましい。減圧度としては、4hPa以下とすることが好ましい。不活性ガスとして窒素又はアルゴンが好ましく、均一な加熱の観点より真空下より不活性ガス雰囲気下での架橋が好ましい。加熱手段としては特に制限はなく、例えばヤマト科学製DP-43のような真空オーブン等を挙げることができる。
熱架橋後の粉砕物は、容器に保存してもよい。例えば、ゼラチンからなる粉砕物の場合、容器については特に制限されないが、例えば、ガラスバイアルにゴム栓とアルミキャップで密封したものを用いることができる。ガラスバイアルのサイズは特に制限されない。(ガラスバイアルにはジメチルポリシロキサンなどを用いたシリコーン樹脂コーティングや、フッ素樹脂コーティング、シリカコーティング、脱アルカリ処理などを施しても良い。)また、上記の容器を更に包装してもよい。包装についても特に制限はないが、例えば、アルミパウチを用いることができる。
[組織修復材]
本発明において組織修復材とは、高分子多孔質顆粒を含む組成物である。例えば、ゼラチン多孔質顆粒を含む組織修復材とすることにより、良好な組織修復能を示す組織修復材となる。組織修復材を適用する組織は特に限定されないが、例えば骨組織が挙げられる。これを更に説明すれば、以下のように考えることができる。即ち、(骨)組織修復材は、一定の生体親和性、生分解性を有することで、所望の期間、強度が担保され欠損部の容積を保持しつつ、再生した(骨)組織との置換場所となりうる。この結果、欠損部に(骨)組織修復材を配置することにより骨等の組織の再生が良好に進行すると推定される。ただし、本発明はこの理論に拘束されない。
本発明は、組織再生能が良好な組織修復材を提供することができるので、組織の修復方法や、組織の損傷を伴う疾患等の治療方法も本発明に包含される。具体的には、本発明における組織の修復方法は、対象組織が欠損又は損傷した部位に、組織修復材を適用することを含み、必要に応じて他の工程を含む。
本発明の組織修復材により修復可能な組織としては、歯、骨等の硬組織であることが好ましい。特に、組織修復材は、骨再生用基材として好適である。本発明の組織修復材は単独で骨再生用の治療剤として用いることができる。本治療剤が適用される疾患としては、骨再生又は骨新生が必要な治療となる疾患である限り、特に限定されるものではない。
本発明における損傷組織の治療方法又は修復方法は、欠損又は損傷した対象組織の部位に、組織修復材を適用することを含み、必要に応じて他の工程、を含む。他の工程としては、例えば、移植細胞及び/又は骨誘導剤を組織修復材の適用の前後、又は同時に組織修復材を適用する部位へ適用することが挙げられる。組織修復材を適用する際は、スパチュラやシリンジ、ダッペンディッシュなどを使用することができる。治療方法又は修復方法は、顎顔面領域における歯周組織欠損(periodontal defect)、インプラント欠損(implant defect)等;インプラント埋入時の予備的処置としてのGBR法(Guided Bone Regeneration:骨誘導再生法)、歯肉増大術(Ridge Augmentation)法、サイナスリフト法、又はソケットリザベーション法;などに好ましく適用することができる。
[組織修復材の吸水率]
組織修復材は、一定以上の吸水率を備えることが好ましい。例えば、ゼラチン顆粒を含む組織修復材の場合、質量基準で300%以上の吸水率を示すことが好ましい。吸水率が300%未満では、 良好な(骨)組織再生能が得られない。(骨)組織修復材の吸水率は、(骨)組織修復時の血餅保持の観点で400%以上であることが好ましく、500%以上であることがより好ましい。(骨)組織修復材の吸水率の上限値は、特に制限はないが、好ましくは4000%以下、より好ましく3000%以下、更に好ましくは2000%以下である。(骨)組織修復材の吸水率は、(骨)組織修復材がゼラチン顆粒のみを含む場合、ゼラチン顆粒の吸水率とする。
本発明における(骨)組織修復材の「吸水率」とは、以下のようにして測定される物理的特性を意味する。風袋質量を予め測定した3本のフィルターカップ(底面に孔径0.22μmのフィルターを備えた容積500 μLのもの。以下、容器という)に、それぞれ被験物質10.0±0.2mgを採取する(n=3)。これに十分な量の水を加え、被験物質による吸水が飽和するまで混和する (ローテート、2時間、環境温度)。次に遠心(6000×g、1分、25℃)して余剰の水を除き、吸水後の被験物質を含む容器の質量を量る(吸水後の総質量)。別に、空試験を3回実施し、被験物質を含まない場合の吸水後の総質量から風袋質量を差し引いた値を残水量とする。3回の残水量の平均値を空試験の残水量とし、吸水率を補正する。吸水後の被験物質の質量を吸水前の被験物質の質量で除して吸水率(%)とする。
(骨)組織修復材の吸水率は、(骨)組織修復材に含まれる成分、特に高分子多孔質顆粒の種類や個々の高分子多孔質顆粒の形態によって異なるが、例えば、凍結工程、又は架橋工程の温度、処理時間等によって調整することができる。一般に、凍結工程の温度を高くする、又は架橋工程の温度を低くする、又は架橋時間を短くすると、吸水率が高まる傾向がある。
[組織修復材の酸残存率]
組織修復材は、一定以下の酸残存率を示すことが好ましい。例えば、ゼラチン顆粒を含む組織修復材の場合、1モル/L(リットル)の塩酸を用いた3時間の分解処理による質量基準で66%以下の残存率を示すことが好ましい。1モル/Lの塩酸を用いた3時間の分解処理による質量基準での残存率が66%より高い場合は、(骨)組織再生能が充分とは言えない。(骨)組織修復材の酸残存率は、欠損部位での製剤層の体積の維持、再生する組織との置換の観点から、5質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、34質量%以上であることが更に好ましい。(骨)組織修復材の酸残存率は、(骨)組織修復材がゼラチン顆粒のみを含む場合、ゼラチン顆粒の酸残存率とする。
本発明における(骨)組織修復材の「酸残存率」とは、以下のようにして測定される物理的特性値のことを称する。測定用のマイクロチューブ(商品名ミニスーパーチューブ、アイビス社製、容量2ml、以下チューブと称する)の質量を測定する(A)。顆粒状の修復材 については組織欠損部に配置させる形態のまま加工せず15.0(±0.2)mgを秤量(n=3)、 ブロック状の修復材については、直径6mm×厚み約1mmの円柱の検体を作製し、質量を測定し(B)、測定用チューブに充填する。組織修復材入りのチューブに、1モル/LのHClを1.7ml添加し、37±0.5℃にて、3時間恒温静置させる。規定時間後、チューブを氷上に立て反応を止め、あらかじめ4℃に設定した遠心器で10,000×g、1分間遠心する。組織修復材が沈殿していることを確認し、上清を吸い取り、あらかじめ氷上で冷やしておいた超純水を添加して、上記と同一の条件で再度、遠心する。上清を吸い取り、再度超純水を加え、上記と同一の条件で再度遠心することを、あと2回繰り返す。上清を吸い取ったのち、凍結乾燥する。凍結乾燥機から取り出した後、空気中の水分を組織修復材が吸い取るのを防ぐためすばやくチューブのキャップを閉める。チューブごと質量を測定し(C)、下記計算式(3)を用いて酸残存率を算出する。
酸残存率=(C-A)/B×100(%)・・・・(3)
組織修復材の酸残存率は、組織修復材に含まれる成分、特に高分子多孔質顆粒の種類や形態によって異なるが、例えば、架橋工程の温度、処理時間等によって調整することができる。
一般に、架橋工程の処理時間を短くすると、酸残存率が低くなる傾向がある。
以下の実施例にて本発明を詳細に説明するが、本発明はそれらに何ら限定されるものではない。
[実施例1]
組換えゼラチンとしてリコンビナントペプチドCBE3を用いて、実施例1にかかる骨再生用基材を製造した。CBE3としては、以下記載のものを用いた(WO2008/103041A1に記載)。
CBE3分子量:51.6kD構造:GAP[(GXY)63]3G
アミノ酸数:571個
RGD配列:12個
イミノ酸含量:33%
ほぼ100%のアミノ酸がGXYの繰り返し構造である。CBE3のアミノ酸配列には、セリン残基、スレオニン残基、アスパラギン残基、チロシン残基及びシステイン残基は含まれていない。CBE3はERGD配列を有している。
等電点:9.34高分子中の親水性繰り返し単位比率は26.1%である。
アミノ酸配列(配列番号1)
上記組換えゼラチンを含む溶液を精製後、30℃にて4.0質量%まで限外ろ過により濃縮した。得られたゼラチン水溶液を凍結乾燥した後、凍結乾燥体に注射用水を加えて30分かけて37℃まで昇温して再溶解し、7.5質量%のゼラチン水溶液を改めて得た。このゼラチン水溶液を、0.22μmのセルロースアセテート膜フィルターでろ過し、真空脱泡機(倉敷紡績、KK-V300SS-I)を用いて4.0kPaにおいて180秒間真空遠心脱泡した。ゼラチン水溶液を、液厚2.5mmとなるようポリスチレン製透明容器にサンプリングし、光学顕微鏡を用いて2.5mm×2.5mmの視野で、液下面から液上面まで100μm刻みで観察した。10視野観察し、平均の気泡および不溶物の個数を算出したところ、気泡は0.42個/μL、不溶物は0個/μLだった。このゼラチン水溶液を、内径104mm、底厚5mm、底面内周をR2mmで面取りし、内面がFEP(日本フッ素、NF-004A)でコートされたアルミ合金(A5056)製円筒カップ状容器に約20g流し込んだ後、約-35℃に予冷した350×634×20mmアルミ板上に1mm厚のガラス板を介して14個設置し、蓋をして1時間静置することによって凍結したゼラチン凍結体を得た。なお、用いた円筒カップ状容器の主たる部材の材質(アルミ合金(A5056))の線膨張係数は24.3×10-6/Kである。このゼラチン凍結体を、凍結乾燥機(アルバック、DFR-5N-B)を用いて凍結乾燥して水分を除去することにより、凍結乾燥体(高分子多孔質体)を作成し異方性を評価したところ13個が異方性の低い凍結乾燥体であった(得率=93%)。
[実施例2]
実施例1に記載の凍結乾燥体(高分子多孔質体)のうち異方性の低いものを11mm角に切断したのち、23℃63%RH下で終夜調湿した。スクリーン粉砕機(クワドロ、コーミルU10)により、0.079inch、ついで0.040inchのスクリーンを用いて粉砕し、試料1とした。
試料1における焦げ発生比率、および粒子径分布を以下のように評価した。
(1)焦げ発生率
試料をおよそ0.09gずつガラス製バイアル瓶に30本秤取した。これを詳細に目視観察し、着色粒子が含まれるバイアルを「焦げあり」とし、30本中の「焦げあり」本数を焦げ発生率とした。
(2)粒子径分布
目開きが1.4mm、1.0mm、710μm、500μm、355μmの分析ふるい、およびパンを積み重ねて試料を分級した。各ふるい上の重量を測定し各画分の重量比を求めた。「主たる画分」は710μm上だった。500μm上の画分より下の画分を「微粉」とし、微粉の顆粒全体に対する比率を微粉比率とした。
[実施例3]
高分子多孔質体を8mm角に切断したほかは実施例2と同様にして試料2を作成した。
試料2における焦げ発生率、および微粉比率を試料1と同様にして評価した。
[比較例1]
高分子多孔質体を17mm角に切断したほかは実施例2と同様にして試料3を作成した。
試料3における焦げ発生率、および微粉比率を試料1と同様にして評価した。
[比較例2]
高分子多孔質体を6mm角に切断したほかは実施例2と同様にして試料4を作成した。
試料4における焦げ発生率、および微粉比率を試料1と同様にして評価した。
実施例2、実施例3、比較例1、比較例2の結果をまとめたものを表1に示す。

試料1、および試料4をクリーンオーブン(日東理科工業、NCO-500A600L-WS)で窒素雰囲気下135℃で5時間処理し、組織修復材としておのおの試料5、試料6を得た。試料5、6について以下のようにして骨再生率を求めたところ、おのおの80%、37%であった。
骨再生評価
各群10匹のSDラット(雄、10~12週齢)の頭頂骨に、直径5mmの円形の骨欠損部を作成し、約3.6mgの試料を充填したのち縫合した。手術後4週目にラットの頭頂骨についてマイクロCTを用いて骨量を計測し、欠損部体積に対する欠損部内部の骨体積を測定した。10匹の欠損部に対する骨体積の比率の平均値を骨再生率とした。

Claims (2)

  1. 高分子多孔質顆粒を含み、高分子多孔質顆粒中の微粉の割合が高分子多孔質顆粒全体の10質量%以下である、組織修復材。
  2. 高分子多孔質体をスクリーンミルで粉砕する粉砕工程を一工程以上含み、前記粉砕工程の少なくとも一つは、スクリーン孔径に対し4乃至6倍の大きさの高分子多孔質体をスクリーンミルに投入して粉砕する工程である、請求項1に記載の組織修復材の製造方法。
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