JP2023114702A - 発熱塗料 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、植物性原料を炭素源として製造した炭素素材を使用し、CO2削減やよって製造可能な発熱塗料及び様々な温度帯にあっても強度を保つことができる発熱塗料を提供することにある。【解決手段】ケイ素成分を5%以上含有した植物性原料から製造した1wt%から50wt%のケイ素成分を含んだ炭素素材を顔料としたことを特徴とする。また、官能基を多く含む炭化物19をグラフェン113と混合して塗料の顔料とすることによって強度を安定させながら直流だけでなく交流等の高電圧の電力を供給することも可能である。【選択図】図3

Description

本発明は、植物性原料を炭素源として、その炭素源から生成したグラフェンや炭素素材を使用して製造した発熱用途や導電用途に使用する発熱塗料に関するものである。
従来から発熱体は、様々な分野において使用されている。例えば、熱プレス機、配管ヒーター、ヒートシール・ラミネート装置、乾燥装置、除曇装置、融雪装置、コピー機などの熱源として用いられている。
そして、発熱体を塗料化することでは、形状にとらわれることなく設置することができる点に利点がある。また、コストを考慮しても塗料化することによって欲しい面積又欲しい箇所ににだけ塗ることができるためコスト的にもメリットが大きくなる。
このように、メリットが大きな発熱塗料の発明は様々な発明が提案されている。
例えば、特許文献1には、前記支持体の上に形成された、厚さ10~150μmの発熱層と 相互に離間して前記発熱層に接続された複数の電極とを具備し、前記電極の外部回路への接続部以外が、絶縁性被覆で封止され、全体の最大厚さが500μm以下であることを特徴とする、発熱シート。このシートの発熱層は、コロナ放電処理された樹脂製支持体の上に導電性材料を含む水性組成物を塗布することで形成される発明が挙げられる。
例えば、特許文献2には、低電圧でも高い発熱性を有し、高い温度領域でも塗料膜を維持できる断線の少ない塗料膜を形成することができる発熱塗料を提供することを目的とし、微細炭素材料と無機系バインダーとを主成分とした発熱塗料の発明が挙げられる。
特開2021-163540号公報 特開2020-26458号公報
特許文献2のように無機系バインダーと微細炭素材料によって構成されている。これらは、多くが鉱石から製造され、CO2削減に寄与するものではないことが問題としてあげられる。
また、炭素材料と無機材料との異素材を均一に分散させて塗料化することにより断線等の強度を向上することが必要である。そのため、抵抗値を下げるため炭素材料の割合が多すぎても発熱塗料の強度を上げることが困難となる。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、植物性原料を炭素源として製造した炭素素材を使用することによってCO2削減に貢献可能であって、様々な温度帯にあっても強度を保つことができる発熱塗料を提供することにある。
ケイ素成分を5%以上含有した植物性原料から製造した1wt%から50wt%のケイ素成分を含んだ炭素素材を顔料としたことを特徴とする。
以上の特徴により、本発明は、植物性原料を炭素源として製造した炭素素材を使用することによってCO2削減に貢献可能であって、様々な温度帯にあっても強度を保つことができる発熱塗料を提供することが可能である。
実施形態のグラフェンのラマンスペクトルである。 実施形態の炭化物のラマンスペクトルである。 実施形態の発熱塗料を塗膜下した発熱体の構成を示す概要図である。 実施形態の発熱体の温度特性を示す概要図である。 実施形態の発熱体の温度特性を示す概要図である。 実施形態のプラズマ装置の構成を示す概要図である。 実施形態の炭素素材を製造する製造工程を示すプロセスフローを示す図である。
本発明にかかる発熱塗料について、図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下に説明する実施形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。
<バイオマス材料>
グラフェンを製造する植物性原料について説明する。本発明は、食物の残渣や廃棄される植物性原料を使用して最終生成物であるグラフェンを製造する。植物性原料は、植物や木材等を使用するが、特に植物を収穫した際の残渣等の廃棄される植物性原料をグラフェンを製造する原料として使用すれば安価に、原料を入手することが可能である。
Figure 2023114702000002
表1は、植物性原料の成分表である。表1は、最も左に示す原料を構成する成分の割合を以下右に百分率で示している。例えば、稲わらは、炭素(C)が37.4%、窒素(N)が0.53%、リン(P)が0.06%、リン酸(P)が0.14%、カリウム(K)が1.75%、カリ(KO)が2.11%、カルシウム(Ca)が0.05%、マグネシウム(Mg)が0.19%及びナトリウム(Na)が0.11%となっている。
ここで、植物由来のケイ素含有の多孔質の植物性原料は、低温(300℃以上且つ1000℃以下)にて炭化しても実質的な変化がなく、ケイ素を除去することで細孔の配列を維持できる。植物性原料は、細胞が軸に沿って規則正しく配列し、細胞壁にケイ酸が沈積して肥厚している構造のものが多くある。そして、ケイ化細胞列の間には圧縮された狭い細胞列があり、炭素化後ケイ素等を除去することにより高い比表面積を有する炭素材料を得ることが可能である。上述したようにケイ酸が13%以上且つ35%以下と多くケイ酸が含まれるものが適している。ケイ酸が多すぎても得られるグラフェンが少なくなるため、20%程度の範囲の植物性原料が良い。
炭素が多く含まれる植物性原料の例として表1に示しているが、稲わらの他に、小麦わら、大麦わら、米ぬか、もみ殻、そばわら、大豆わら、サツマイモのつる、カブの葉、ニンジンの葉、トウモロコシの稈、サトウキビ梢頭部、ヤシ粕、ピーナッツ殻、みかんの皮、レッド杉のおがくず、カラ松の樹皮及び銀杏の落ち葉がある。その他、残渣ではなく植物そのものを使用しても良く。
例えば、竹は、繊維素がセルロース、ヘミセルロース、リグニンで構成され、ミネラルが鉄、マグネシウム、カルシウム、マンガン、銅、ニッケル等から構成されているため。 また、竹の葉には焼成すると、シラノール基(Si-OH)が抽出され、焼成の過程でSiO4となって抽出される。
Figure 2023114702000003
Figure 2023114702000004
表2、3は、本発明にて、上述した表1の植物性原料である炭素源9のうち、炭素材料を製造する方法で最も適している植物性原料の成分組成表である。表2は、原料を構成する成分の割合を百分率で示している。例えば、水分が8%~10%、灰分が10%~18%、脂質が0.1%~0.5%、リグニンが18%~25%、ヘミセルロースが16%~20%、セルロースが30%~35%及びその他が5%~10%である。このように、シリカ灰19となる主な成分は、リグニン、ヘミセルロース、セルロースである。
表3は、表2に示す植物性原料である炭素源9の無機質の化学成分である。表2に示す植物性原料である炭素源9は、セルロース等の有機質が80wt%であり、無機質は20wt%である。表3の無機質の化学成分は、SiOが92.14wt%、Alが0.04wt%、CaOが0.48wt%、FeO3が0.03wt%、KOが3.2wt%、MgOが0.16wt%、MnOが0.18wt%、NaOが0.09wt%となっている。表2に示す植物性原料である炭素源9は、無機質に酸化ケイ素(SiO)が多く含まれている。
(実施例)
<プロセスフロー>
図6及び図7を参照し、グラフェン113や炭化物19を製造する方法について製造工程を説明する。図7は、実施形態の製造工程を示すプロセスフローを示す図である。
先ず、前処理工程S1は、上述のように植物性原料を乾燥した後、植物性原料を粉砕し、その粉砕した植物性原料とPVA等の造粒剤を10対1の割合に、水を混ぜ合わせて植物性原料を適度な大きさにして練り合わせ、ホットプレート等の乾燥装置の上で100℃近くに加熱し水分を蒸発させて炭素源9を生成する。ここで、粉砕方法は、ミル、ミキサー、グラインダー等が挙げられる。特に、造粒剤は、誘導加熱の際に、炭素源9の蒸気による突沸を防ぐことができる。
次に、炭化工程S2を説明する。前処理工程S1で炭素源9を0.8g程度、るつぼ5に入れて金属の網等で覆う。上述したプラズマ装置10の所定の加熱する位置にるつぼ5を配置する。チャンバー1内の圧を真空ポンプ30により80Paまで減圧を行い、不活性ガス6をチャンバー1内に8から10ml/分の流量により注入し、チャンバー1内は、1300から1500Paの圧力に保たれている。尚、炭化工程S2は、実施例1及び実施例3を使用しても同様のグラフェンが製造可能である。
500℃から800℃にて36%と最も大きな収率が測定され、300℃以上且つ1000℃以下で比較的大きな収率が得られた。本測定では、稲わら、ぬか、ヤシ殻、もみ殻及びピーナッツ殻等を行ったが、同様の結果が得られた。炭化工程S2において、炭素源9は、不活性ガス6を流入しながらアーク放電による熱プラズマにより300℃から1000℃の温度帯の加熱により、10~30分程度で炭化される。
次に、賦活工程S3を説明する。上記で得られた炭化物19を1に対し、水酸化カリウムを5の比率の重量で混合し、小型るつぼの壺中に入れて蓋をする。また小型るつぼは、大型るつぼの中に収容し、周りに活性炭を埋設する。小型るつぼ内への酸素の侵入を防ぐために活性炭が埋設されている。加熱炉は、炉を950℃近くまでの温度にし、2~3時間程度焼成を行った。
ここで水酸化カリウムは、ケイ素の除去を促進させるため、最終生成物であるグラフェン113の収率向上を挙げる観点から使用される。塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、酸化ナトリウム、酸化カリウム等のアルカリ金属酸化物、酸化マグネシウム、酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属酸化物、硫化ナトリウム、硫化カリウムなどのアルカリ金属硫化物、硫化マグネシウム、硫化カルシウム等のアルカリ土類金属硫化物などが挙げられる。その他に、炭化しきれなかったリグニンは酸により塩酸、硫酸、PTSA、及び塩化アルミニウムからなる群から選ばれる1種又は2種以上の酸により除去することも考えられる。
水酸化カリウムと反応させた炭化物19のうち、ケイ酸は水酸化カリウムと反応し、ケイ酸カリウムとなり、水溶性である残った水酸化カリウム(KOH)やケイ酸カリウムを水に溶かし、この混合液を濾紙セットし、真空や減圧した濾過器に通すことにより酸化ケイ素(ケイ素)を除去する。そして、乾燥させた賦活工程S3では、最初の植物性原料を造粒したときと比較して約1/8~1/10の重量の最終生成物となるグラフェン113の生成が可能であった。
本実施例のプラズマ装置10について図6を参照し説明する。図6、本実施例のプラズマ装置10の構成を示す概要図である。プラズマ装置10は、主に、不活性ガス6、コントロール装置20、チャンバー1、真空ポンプ30から構成されている。
ガスボンベに収められる不活性ガス6は、主にアルゴンを使用したが、その他にヘリウム、ネオン、窒素等が挙げられる。不活性ガス6は、導入管7からガス量コントロール装置21を経由し、チャンバー1に充填が可能である。ガス量コントロール装置21は、不活性ガス6の流量を調整することが可能である。
チャンバー1は、制御弁22と接続され、真空ポンプ30によりチャンバー1内を真空状態に減圧が可能である。チャンバー1に接続され、チャンバー1内に不活性ガス6を導入している。制御弁22とチャンバー1との間には、チャンバー1内の真空状態を大気圧に開放するリーク弁23が設けられている。また、チャンバー1内の空気を導入する導出管8と真空ポンプ30との間にも制御弁14と、チャンバー1内の真空状態を大気圧に開放するリーク弁15とが設けられている。
また、温度制御装置24は、高周波電源4を制御し、チャンバー1内の温度保持や保持時間等を管理している。本実施例のプラズマ装置10は、真空状態に近い低圧下に、作動ガスとして、不活性ガス6であるアルゴンガスを流し、電極間であるカソード2及びアノード3間に高電流を流し、アーク放電により熱プラズマを得る方法である。このカソード2及びアノード3間には、カーボン製のるつぼ5が設置され、そのるつぼ5には後述する炭素源9が入っている。炭素源9は、アーク放電による熱プラズマにより300℃から1000℃の温度帯の加熱により、10~30分程度で炭化される。尚、上述したプラズマ装置の他にバリヤ放電、コロナ放電、パルス放電、直流放電型により熱プラズマを得る方法がある。
上記製造方法においては、気相反応が起こり、特に不活性ガス6等の若干量の反応性ガスを混ぜることにより、-OH(ヒドロキシル基)、-CHO、-C=O(カルボニル基)、-COOH(カルボキシル基)などの官能基が生成され、親水性が付与される。
尚、製造方法は上記にとらわれることない。また熱源は、プラズマ装置以外に、誘導加熱、ガス、電気炉であってもよい。
誘導加熱の場合にあっては炭素源9の中に二酸化ケイ素(SiO)等の絶縁物があっても磁束が透過し炭素源9が導電し、炭素源9自体も加熱され、また加熱が加速し短時間で炭化することができる。また、二酸化ケイ素(SiO)等の絶縁物自体は、交番磁束を貫通させるため二酸化ケイ素(SiO)自体は、収納箱205からの加熱のみであり、また溶融する温度ではないため、そのまま残り、二酸化ケイ素(SiO)等の多くの絶縁物が残る。
(グラフェン及び炭化物)
実施例により製造した炭化工程S2で得られた炭化物19及び賦活工程S3で得られた炭素素材であるグラフェン113を以下に説明する。
図1は、本発明の製造装置で得られたグラフェン113のラマンスペクトルである。図2は、本発明の製造装置で得られた炭化物19のラマンスペクトルである。
これら図は、ラマン分光装置により解析し、得られたデータは、横軸を波長(波数(Raman shift(cm-1)))、縦軸を強度とするラマンスペクトルである。
また、表4に示すように、ラマンスペクトル法による波長のピークとなるGバンド(2850cm-1)のピーク値IG及び2Dバンド(1650cm-1)のピーク値IDである。
そして、表4に示すようにIGをID割った値は、グラフェン113が、1.68となっており、植物性原料の中でも層が少ないことを示している。特に炭化物19は、ケイ素を多く含んでおり、また-OH、-CHO、-COOHなどの含酸素官能基が生成されていることが確認できた。
グラフェン113のIGをID割った値は、好ましいのは0.9以上であって0.9から2.0程度の値を示している。
炭化工程S2で得られた炭化物19は、炭素を除いた灰分が、熱重量測定によると37.1wt%と多くなっており、その灰分のうちケイ素(Si)は炭化物19全体の24wt%から50wt%となっている。その他に、Kが0.51wt%から7wt%、Alが0.1wt%から1.6wt%、Caが0.17wt%から0.5wt%、Feが0.4wt%となっており、Cr、Ni、Mn、Mg、P、S、Naが0.1wt%以下となっている。
所謂賦活処理である賦活工程S3を行っていない炭化工程S2で得られた炭化物19は、ケイ素を多く含み、不活性ガス中で炭化される場合には、強還元されず、SiO2-xとなり、芳香族の-OH基などと-O-Si-O-Rの形で結合し、リグニン多糖複合体になり、C/SiOxの形になりやすいと考えられる。
また、後述する賦活工程S3で得られたグラフェン113は、炭素を除いた灰分が、熱重量測定によると1%から24wt%と多くなっており、そのうちケイ素(Si)はグラフェン113全体の1wtから20wt%となっている。その他に、Kが4.3wt%、Alが1.5wt%、Caが1.3wt%、Feが0.4wt%となっており、P、Mn、Cl、S、Mgが0.1wt%以下となっている。
以上のように、炭素素材であるグラフェン113及び炭化物19のケイ素は、1wt%から50wt%とケイ素の量が多くなっている。
Figure 2023114702000005
表4に示すようにCO吸脱着測定の結果においてグラフェン113及び炭化物19は、細孔径が主に0.8nmから2nmの微細な細孔が形成されていることが確認できた。
そのため、金属イオン等を吸着しやすくと考えられる。また表4に示すようにガス吸着測定及び水蒸気吸着測定により測定されたメソ孔の容積は、グラフェン113が、0.487ml/gであり、炭化物19が、0.259ml/gであった。また、ミクロ孔容積は、グラフェン113が、0.46ml/gであり、炭化物19が、0.27ml/gであった。
また、表4に示すようにグラフェン113又は炭化物19の粒子は、15μmから229μmの分布の径を示し、分布の積算値の中央値で示すメジアン径で約110μmである。
このように、0.2ml/gから0.6ml/gのメソ孔容積を形成している。特に後述する不純物を除去する賦活処理を行った後のグラフェン113の方が高い値を示しており、ケイ素の除去によりメソ孔やミクロ孔が成長していると考えられる。
また、表4に示すように水蒸気吸着測定法により測定され、BET式による比表面積は、グラフェン113が、1792m/gを示し、この幅は890m/g~2000m/gの幅がある。炭化物19が、726.4m/gを示し、この幅は890m/g~1500m/gの幅がある。何れも比表面積が大きくケイ素成分(Si)を取り除いた後のグラフェン113は、より比表面積が大きくなっている。そのため、グラフェン113は、吸着する作用が高くなっている。
また、炭化物19は、同様に元素成分のSi(ケイ素)が、Si(シリコン)又は二酸化ケイ素(SiO)の状態で炭化物19の表面や内部に微小となって含有している状態と、Si(シリコン)又は二酸化ケイ素(SiO)の状態で炭化物19の表面や内部に凝集して形成される状態とがある。そして、炭化物19は、賦活処理を施すことによって、炭素の純度が上がっていくと同時に、比表面積が向上していく。
表4に示すように、ガス置換密度測定装置により測定した真密度は、グラフェン113が2.56g/cm及び炭化物19が2.27g/cmであった。また、グラフェン113の嵩密度は、0.21から0.29g/cmであった。
また、二重リング法及び四端子法による測定した粉体抵抗値は、炭化物19が1.27×103~5Ω・cmとなり、ケイ素を除くことによりグラフェン113が、1.0×10-2Ω・cmとなり導電性が向上する。尚、抵抗値は低ければ低いほどよいが、グラフェン113は、1.0×10-3Ω・cmから3.8×10-2Ω・cmが最適である。
また、炭化物19は、ケイ素を多く残すことにより、ケイ素に吸着しやすい物質に溶け込みやすくなると、同時に絶縁性能が向上する。
(発熱塗料)
以下に、上述した炭素素材(炭化物19及びグラフェン113)を顔料として製造した発熱塗料について説明する。
出願人は、様々なタイプの塗料について試験を行い最適な条件を見いだしている。本実施例で上げる塗料のタイプとしては、溶剤2液型、溶剤1液型、水系1液型の試験を行った。
Figure 2023114702000006
表5に示すように、溶剤2液型は、バインダーをアクリルウレタンとし、溶剤にキシレンを使用し希釈している。顔料として上述した炭素素材(炭化物19及びグラフェン113)を使用した。この溶剤2液型は、硬化剤を使用して硬化させるタイプの塗料である。
溶剤1液型は、バインダーをシリコーンとし、溶剤にキシレンを使用し、顔料として上述した炭素素材(炭化物19及びグラフェン113)を使用した。この溶剤1液型は、熱により硬化するタイプであり、150℃もの耐熱性があり耐熱性に優れている。
水系1液型は、バインダーをアクリルエマルジョンとし、溶剤に水を使用し、顔料として上述した炭素素材(炭化物19及びグラフェン113)を使用した。
また、炭素材料にディスパー攪拌しながらバインダーを徐々に添加して、攪拌液が液状を保つ添加量を限界量として見極めた。また、その際の顔料重量濃度(PWC値)を算出した。
Figure 2023114702000007
表6に示すように、各炭素材料とPWC値の異なる各塗膜の評価を行った。先ず、ブリキの板に各限界液を10g取り、設定した<>内のPWC値となるようにバインダーと硬化剤等を混合し、スパテールで攪拌し塗膜した。そして、乾燥膜厚の測定を行った。また目視での塗膜の凹凸、割れ、色や艶斑の有無の判定を行い、○の場合はこれら欠点が無い状態で有り、△は何れかが存在しており、×は目立った欠点があることを示している。
また、成膜性は塗膜表面を爪等で引っ掻き塗膜が剥がれてこないかのテストの結果である。○の場合は剥がれが無い状態で有り、×は剥がれがあることを示している。
また、光沢は、60度光沢値を測定した結果である。<1は、1より小さいことを示している。
更に、膜性は塗膜表面を爪等で引っ掻き塗膜が剥がれてこないかのテストの結果である。○の場合は剥がれが無い状態で有り、×は剥がれがあることを示している。
柔軟性は、紙に塗膜を形成し、紙を山折りに曲げた際に山頂部分に塗膜の割れや亀裂が発生しないかの評価を行った。○の場合は割れや亀裂が発生しない状態で有り、×は割れや亀裂が発生したことを示している。
次に、発熱塗料としての性能について説明する。図3は、紙、布又はプラスチック樹脂等の絶縁体51に、上述した溶剤1液型の発熱塗料50を塗布した図である。発熱塗料50の中心の端部に+電極52、-電極53を備え、その電極に電力を供給することによって発熱塗料50を塗った箇所から発熱をする。電極間の距離Lは、4.5cmであって、塗料が塗られた面積は22.5cmである。
また、図4及び図5は、発熱塗料50の発熱特性を示す図である。
図4は、塗膜の厚みが160μmから175μmの発熱体の時間(秒)と温度(℃)のグラフである。V1は、DC20Vを供給した際に、図3のP点で測定したときの温度グラフである。電力値は、4から4.8Wであり、室温22.1℃から約300秒で最高62℃程度まで昇温する。
V2は、DC12Vを供給した際に、図3のP点で測定したときの温度グラフである。電力値は、2から2.4Wであり、室温26.3℃から約300秒で最高43.4℃程度まで昇温する。
図5は、塗膜の厚みが60μmから75μmの発熱体の時間(秒)と温度(℃)のグラフである。V1は、DC20Vを供給した際に、図3のP点で測定したときの温度グラフである。電力値は、1.6Wから2.0Wであり、室温25.4℃から約280秒で最高44.1℃程度まで昇温する。
V2は、DC12Vを供給した際に、図3のP点で測定したときの温度グラフである。電力値は、0.6Wであり、室温25.4℃から約240秒で最高32.6℃程度まで昇温する。
炭素素材は、ケイ素を多く含んでいるために、後から無機材料を添加する必要が無く、塗料の強度や耐電性能を向上させることが可能である。特に、ケイ素を炭素材料に含んだ発熱塗料は高温まで発熱させても塗料膜の連続性が維持でき、耐熱性の高い面状ヒーターを作製することができる。
また、官能基を多く含む炭化物19をグラフェン113と混合して塗料の顔料とすることによって強度を安定させながら直流だけでなく交流等の高電圧の電力を供給することも可能である。また、抵抗値の調整においても官能基を多く含む炭化物19によって分散・混入が容易となる。混合割合は、炭化物19とグラフェン113の比が0.5:9.5から3:7程度が良い。また、粉体抵抗が1.0×10-3Ω・cmから3.8×10-2Ω・cmの範囲の炭素素材を単体で使用するか、また炭素素材を混合して使用しても良い。
本発明の発熱塗料の産業上の利用に関して、発熱塗料の他に導電塗料として電池材料、半導体、放熱材料等の利用が可能である。
1 チャンバー
2 カソード
3 アノード
4 高周波電源
5 るつぼ
6 不活性ガス
7 導入管
8 導出管
9 炭素源
10 プラズマ装置
14 制御弁
15 リーク弁
19 炭化物
20 コントロール装置
21 ガス量コントロール装置
30 真空ポンプ
50 発熱塗料
51 絶縁体
52、53 電極
113 グラフェン
S1 前処理工程
S2 炭化工程
S3 賦活工程。

Claims (4)

  1. ケイ素成分を5%以上含有した植物性原料から製造した1wt%から50wt%のケイ素成分を含んだ炭素素材を顔料としたことを特徴とする発熱塗料。
  2. 顔料重量濃度が10から71wt%であることを特徴とする請求項1に記載の発熱塗料。
  3. 官能基を含む炭素素材を顔料とした請求項1及び請求項2の何れか一項に記載の発熱塗料。
  4. 粉体抵抗が1.0×10-3Ω・cmから3.8×10-2Ω・cmの炭素素材を顔料とした請求項1から請求項3の何れか一項に記載の発熱塗料。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2024004735A1 (ja) * 2022-07-01 2024-01-04 ジカンテクノ株式会社 炭素素材及びその製造方法

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