JP2023112761A - 水なし平版印刷版原版およびそれを用いた水なし平版印刷版の製造方法 - Google Patents

水なし平版印刷版原版およびそれを用いた水なし平版印刷版の製造方法 Download PDF

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Akihiro Iihara
武治郎 井上
Takejiro Inoue
裕太 天野
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Abstract

【課題】汎用露光機によるパターン露光が可能であり、露光時のアブレーション塵の発生が少なく、現像工程を要することなく、良好なインキ反発性、インキ着肉性と耐刷性を有する水なし平版印刷版を得ることのできる水なし平版印刷版原版を提供すること。【解決手段】支持体上に金属キレート含有シリコーン層を有し、X線光電分光法により測定した当該金属キレート含有シリコーン層中における金属キレート由来の金属濃度が0.2~1.8atom%である、水なし平版印刷版原版。【選択図】なし

Description

本発明は、水なし平版印刷版原版、それを用いた水なし平版印刷版の製造方法および金属キレート含有シリコーン層形成用組成物に関するものである。
印刷には、凸版印刷、凹版印刷、孔版(スクリーン)印刷、平版印刷など様々な方式があり、各方式の特徴を活かして印刷が行われている。これらの中でも、平版印刷は精細度の高い印刷物が得られる点などにおいて、他の印刷方式に比べ有利である。平版印刷に用いられる印刷版(以下、平版印刷版という)は、湿し水の作用によって非画線部をインキ反発性とするものと、湿し水を用いることなく、シリコーンやフッ素樹脂をインキ反発性の非画線部として使用するものとに大別される。
シリコーンをインキ反発性の非画線部として使用する水なし平版印刷版を、現像工程を経ることなく得る技術に関して、これまでに様々な提案がなされてきた。例えば、光触媒を用いた技術として、支持体上に、少なくとも露光により親水性化される光触媒性半導体粒子を分散したポリオルガノシロキサンを含有する層を設けてなる現像不要の湿し水不要感光性平版印刷版や(例えば、特許文献1参照)、基材上に、光触媒含有層を有し、前記光触媒含有層は、ケイ素原子に結合したオルガノ基としてエポキシ基を含有したシリコーンを結着剤であり、かつ光触媒の作用により濡れ性が変化する物質として含有し、前記光触媒含有層は、パターン露光に伴う前記光触媒の作用により前記シリコーンの濡れ性が変化することにより形成された濡れ性が異なるパターンがその表面に形成されていることを特徴とするパターン形成体(例えば、特許文献2参照)などが提案されている。また、支持体上に、インキ着肉性が互いに異なる、第1のシリコーン層および第2のシリコーン層を有する印刷版の製造方法として、第2のシリコーン層側からレーザー光を照射し、レーザー光が照射された部分の第2のシリコーン層、または第2のシリコーン層と第1のシリコーン層の上部とをアブレーションする方法や(例えば、特許文献3参照)、支持体、並びに、インキ反発部およびインキ着肉部からなる層を有する印刷部材の製造方法として、インキ反発部からなる層に電子線や真空紫外線を照射してインキ着肉部のパターンを描画する方法(例えば、特許文献4参照)などが提案されている。
特開平11-305423号公報 特開2009-271548号公報 国際公開第2019/203263号 特開2021-66175号公報
特許文献1~2に記載の平版印刷版は、紫外線の照射により得ることができる。しかしながら、特許文献1に記載の平版印刷版は、疎水性のシリコーン中に親水性の光触媒粒子を高密度に含有することから、平版印刷版に画線部/非画線部を形成する前の前駆体である平版印刷版原版の製造において、光触媒粒子の凝集や沈降などが生じやすく、生産性に課題があった。特許文献2に記載の平版印刷版は、光触媒粒子の分散は可能であるものの、インキ反発性や耐刷性に課題があった。
特許文献3に記載の水なし平版印刷版原版は、紫外線~赤外線の高出力レーザー露光により、アブレーション塵が生じやすい課題があった。アブレーション塵の回収装置は装置の大型化につながる。また、捕集しきれなかったアブレーション塵が水なし平版印刷版の表面に付着し易く、印刷品質に影響する。
特許文献4に記載の水なし平版印刷版原版は、電子線や真空紫外線を用いるため、窒素雰囲気下や真空下における照射が必要であり、装置の大型化が避けられないこと、また、印刷版の製造において電子線や真空紫外線は一般的ではなかったことから、汎用露光機により描画可能な技術が求められていた。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、汎用露光機によるパターン露光が可能であり、露光時のアブレーション塵の発生が少なく、現像工程を要することなく、良好なインキ反発性、インキ着肉性と耐刷性を有する水なし平版印刷版を得ることのできる水なし平版印刷版原版を提供することである。
上記課題を解決するため、本発明の水なし平版印刷版原版は、支持体上に金属キレート含有シリコーン層を有し、X線光電分光法により測定した当該金属キレート含有シリコーン層中における金属キレート由来の金属濃度が0.2~1.8atom%である、水なし平版印刷版原版である。
本発明の水なし平版印刷版原版は、窒素雰囲気下や真空下での露光が不要な汎用レーザーによるパターン露光が可能であり、露光時のアブレーション塵の発生が少ない。本発明の平版印刷版原版により、良好なインキ反発性とインキ着肉性と耐刷性を有する水なし平版印刷版を、現像工程を経ることなく得ることができる。
本発明に係る水なし平版印刷版原版(以下、「印刷版原版」と略記する場合がある)は、水なし平版印刷版(以下、「印刷版」と略記する場合がある)にインキ着肉部/インキ反発部を形成する前の前駆体であり、支持体上に金属キレート含有シリコーン層を有する。支持体は、印刷版原版や印刷版の形状を保持する機能を有する。金属キレート含有シリコーン層は、インキを反発する機能を有する。
支持体の材質としては、寸法的に安定な金属やプラスチックなどが好ましい。具体的には、アルミニウム、鉄、亜鉛、銅などの金属やこれら金属を主成分とする合金、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、エステル樹脂、ビニルエステル樹脂、アミド樹脂、イミド樹脂などのプラスチックやこれらプラスチックとガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ザイロン繊維、ボロン繊維などの繊維を含む繊維強化プラスチックなどが挙げられる。軽量で取り扱いやすい点で、アルミニウム合金や繊維強化プラスチックが好ましい。
支持体の形状としては、例えば、板状、ロール状、円筒状、円柱状などが挙げられる。円筒状や円柱状の支持体を用いた場合には、連続絵柄の印刷が可能なシームレス水なし平版印刷版原版が得られる。シームレス水なし平版印刷版原版の支持体の形状としては、より軽量で、取り扱いやすい点で、円筒状がより好ましい。印刷版原版から印刷版を作製した後、直ちに印刷を行える点で、円筒状支持体は印刷機の版胴であることが好ましい。とりわけ、円筒状支持体が印刷機の版胴軸に脱着可能な版胴スリーブであることが、シームレス水なし平版印刷版作製までの一連の工程や印刷後の支持体再生などの操作を印刷機外で行える点で、より好ましい。
支持体の寸法としては、支持体が板状の場合には、使用する印刷機に適切な寸法(長さ、幅、厚みなど)を選択すればよい。また、支持体が円筒状の場合には、使用する印刷機の版胴として適切な直径や幅を選択すればよい。
支持体表面には、コロナ放電処理やグロー放電処理などの表面処理を施してもよく、支持体と金属キレート含有シリコーン層との接着力を高めることができる。また、支持体と金属キレート含有シリコーン層との間にプライマー層(接着層)を設けてもよい。さらに、これらを併用してもよい。
次に、金属キレート含有シリコーン層について説明する。本発明における金属キレート含有シリコーン層とは、金属キレート化合物を3質量%以上含むシリコーン層を指し、金属キレート化合物を含むことにより、汎用レーザーによるパターン露光により、露光部をインキ着肉性に変化させることができる。
金属キレート化合物とは、金属とのキレート環を分子中に1個以上有する化合物を指す。すなわち、金属との配位全てがキレート環で形成された金属キレート化合物のほかに、1個以上のキレート環とアルコキシドを有する金属化合物も本発明における金属キレート化合物に含まれる。また、空気中の湿気などにより脱アルコール縮合した化合物(多量化体)にもキレート環は残存することから、このような化合物も本発明における金属キレート化合物の範疇である。
金属との間でキレート環を形成する化合物としては、β-ジケトン化合物、β-ケトエステル化合物、β-ジエステル化合物、グリコール類、トリエタノールアミンなどが挙げられる。これらの中でも、保存安定性や露光部のインキ着肉性をより向上させる点で、β-ジケトン化合物やβ-ケトエステル化合物が好ましい。β-ジケトン化合物としては、アセチルアセトン、1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオン、2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオンなどが挙げられる。これらの中でも、金属への配位により得られる金属キレート化合物中の金属濃度を高めることができる点で、アセチルアセトンが好ましい。β-ケトエステル化合物としては、アセト酢酸アルキルエステルが好ましく、アルキル部の炭素数は1~8が好ましい。アルキル部の炭素数が1以上であれば、シリコーン成分との親和性を向上させることができる。アルキル部の炭素数は2以上がより好ましい。一方、アルキル部の炭素数が8以下であれば、金属への配位により得られる金属キレート化合物中の金属濃度を高めることができる。アルキル部の炭素数は6以下がより好ましい。
金属としては、アルミニウム(III)、チタニウム(IV)、マンガン(II)、マンガン(III)、鉄(II)、鉄(III)、コバルト(II)、コバルト(III)、ニッケル(II)、ニッケル(IV)、銅(I)、銅(II)、亜鉛(II)、ゲルマニウム(IV)、インジウム(III)、錫(II)、錫(IV)、ジルコニウム(IV)、ハフニウム(IV)などが挙げられる。保存安定性や露光部のインキ着肉性をより向上させる点で、3価以上の金属が好ましく、中でも、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウムがより好ましい。
金属キレート化合物としては、例えば、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、ジ-メトキシアルミニウムモノアセチルアセトネート、ジ-エトキシアルミニウムモノアセチルアセトネート、ジ-n-プロポキシアルミニウムモノアセチルアセトネート、ジ-iso-プロポキシアルミニウムモノアセチルアセトネート、ジ-n-ブトキシアルミニウムモノアセチルアセトネート、ジ―sec-ブトキシアルミニウムモノアセチルアセトネート、ジ-tert-ブトキシアルミニウムモノアセチルアセトネート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジ-メトキシアルミニウムモノエチルアセトアセテート、ジ-エトキシアルミニウムモノエチルアセトアセテート、ジ-n-プロポキシアルミニウムモノエチルアセトアセテート、ジ-iso-プロポキシアルミニウムモノエチルアセトアセテート、ジ-n-ブトキシアルミニウムモノエチルアセトアセテート、ジ―sec-ブトキシアルミニウムモノエチルアセトアセテート、ジ-tert-ブトキシアルミニウムモノエチルアセトアセテートなどのアルミニウムキレート化合物、チタニウムテトラアセチルアセトネート、ジ-メトキシチタニウムビスアセチルアセトネート、ジ-エトキシチタニウムビスアセチルアセトネート、ジ-n-プロポキシチタニウムビスアセチルアセトネート、ジ-iso-プロポキシチタニウムビスアセチルアセトネート、ジ-n-ブトキシチタニウムビスアセチルアセトネート、ジ―sec-ブトキシチタニウムビスアセチルアセトネート、ジ-tert-ブトキシチタニウムビスアセチルアセトネート、チタニウムテトラエチルアセトアセテート、ジ-メトキシチタニウムビスエチルアセトアセテート、ジ-エトキシチタニウムビスエチルアセトアセテート、ジ-n-プロポキシチタニウムビスエチルアセトアセテート、ジ-iso-プロポキシチタニウムビスエチルアセトアセテート、ジ-n-ブトキシチタニウムビスエチルアセトアセテート、ジ―sec-ブトキシチタニウムビスエチルアセトアセテート、ジ-tert-ブトキシチタニウムビスエチルアセトアセテートなどのチタニウムキレート化合物、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジ-メトキシジルコニウムビスアセチルアセトネート、ジ-エトキシジルコニウムビスアセチルアセトネート、ジ-n-プロポキシジルコニウムビスアセチルアセトネート、ジ-iso-プロポキシジルコニウムビスアセチルアセトネート、ジ-n-ブトキシジルコニウムビスアセチルアセトネート、ジ―sec-ブトキシジルコニウムビスアセチルアセトネート、ジ-tert-ブトキシジルコニウムビスアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラエチルアセトアセテート、ジ-メトキシジルコニウムビスエチルアセトアセテート、ジ-エトキシジルコニウムビスエチルアセトアセテート、ジ-n-プロポキシジルコニウムビスエチルアセトアセテート、ジ-iso-プロポキシジルコニウムビスエチルアセトアセテート、ジ-n-ブトキシジルコニウムビスエチルアセトアセテート、ジ―sec-ブトキシジルコニウムビスエチルアセトアセテート、ジ-tert-ブトキシジルコニウムビスエチルアセトアセテートなどのジルコニウムキレート化合物などが挙げられる。これらを2種以上含んでもよい。
X線光電子分光法により測定した金属キレート含有シリコーン層中における金属キレート化合物由来の金属濃度は、0.2~1.8atom%である。金属キレート化合物由来の金属濃度が0.2atom%未満である、すなわち金属キレート化合物が不足であると、露光部をインキ着肉性に変化させる効果が得られにくくなるため、インキ着肉性が不十分となる。金属キレート化合物由来の金属濃度は、0.4atom%以上がより好ましく、0.6atom%以上がさらに好ましい。一方、金属キレート化合物由来の金属濃度が1.8atom%を超える、すなわち金属キレート化合物が過剰であると、金属キレート含有シリコーン層の表面エネルギー上昇や脆弱化により、インキ反発性や耐刷性が不十分となる。金属キレート化合物由来の金属濃度は、1.6atom%以下がより好ましく、1.4atom%以下がさらに好ましい。金属キレート化合物由来の金属濃度は、例えば、金属キレート含有シリコーン層の各構成成分の含有量を、後述する好ましい範囲に調整することにより、上記範囲にすることができる。
金属キレート含有シリコーン層としては、これまでに水なし平版印刷版用のインキ反発層として開示された付加反応型、縮合反応型、付加反応-縮合反応併用型のシリコーン層などに、金属キレート化合物を含有する層を用いることができる。
付加反応型、縮合反応型、付加反応-縮合反応併用型のシリコーン層としては、例えば、特開2021-66175号公報においてジオルガノシロキサン単位含有層として例示された層、国際公開第2019/203261号においてシリコーンゴム層として例示された層、国際公開第2019/203263号において第1のシリコーン層として例示された層などが挙げられる。
本発明において、金属キレート含有シリコーン層中における元素濃度は、珪素:15.5~24.5atom%、酸素:25.0~28.5atom%、炭素:50.0~57.0atom%、金属キレート化合物由来の金属:0.2~1.8atom%が好ましく、インキ着肉性、インキ反発性および耐刷性をより向上させることができる。元素濃度は、例えば、金属キレート含有シリコーン層の各構成成分の含有量を、後述する好ましい範囲に調整することにより、上記範囲にすることができる。
金属キレート含有シリコーン層中における元素濃度は、X線光電子分光分析により測定することができる。
金属キレート含有シリコーン層の平均厚みは、5μm以上が好ましい。金属キレート含有シリコーン層の平均厚みを5μm以上とすることにより、印刷版のインキ反発性や耐傷性、耐刷性をより向上させることができる。一方、金属キレート含有シリコーン層の平均厚みは、30μm以下が好ましい。金属キレート含有シリコーン層の平均厚みは、断面TEM観察により求めることができる。より詳しくは、水なし平版印刷版原版から超薄切片法によって試料を作製し、加速電圧100kV、倍率2,000倍の条件でTEM観察を行う。垂直断面のTEM写真において、金属キレート含有シリコーン層からランダムに選んだ10箇所について厚みを計測し、その数平均値を算出することにより、平均厚みを求めることができる。
本発明の水なし平版印刷版原版は、金属キレート含有シリコーン層上に、さらに、金属キレート非含有シリコーン層を有することが好ましい。金属キレート非含有シリコーン層を有することにより、インキ反発性をより向上させることができる。本発明における金属キレート非含有シリコーン層とは、金属キレート化合物の含有率が3質量%未満のシリコーン層を指す。
金属キレート非含有シリコーン層としては、これまでに水なし平版印刷版用のインキ反発層として開示された、前述の付加反応型、縮合反応型、付加反応-縮合反応併用型のインキ反発性シリコーン層などを用いることができる。
金属キレート非含有シリコーン層中における元素濃度比は、珪素:22~26atom%、酸素:24~28atom%、炭素:48~52atom%が好ましく、インキ反発性をより向上させることができる。また、金属キレート非含有シリコーン層における珪素濃度に対する酸素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)は、0.9~1.2が好ましく、インキ反発性をさらに向上させることができる。元素濃度は、例えば、金属キレート非含有シリコーン層の各構成成分の含有量を、後述する好ましい範囲に調整することにより、上記範囲にすることができる。
金属キレート非含有シリコーン層における元素濃度は、金属キレート含有シリコーン層における元素濃度と同様に測定することができる。また、得られた酸素濃度値を珪素濃度値で割ることにより、酸素濃度と珪素濃度の比(酸素濃度/珪素濃度)を算出することができる。
金属キレート非含有シリコーン層の平均厚みは、0.1μm以上が好ましい。金属キレート非含有シリコーン層の平均厚みを0.1μm以上とすることにより、インキ反発性をより向上させることができる。0.2μm以上がより好ましい。一方、金属キレート非含有シリコーン層の平均厚みは、30μm以下が好ましい。金属キレート非含有シリコーン層の平均厚みは、金属キレート含有シリコーン層の平均厚みと同様に求めることができる。
本発明の水なし平版印刷版原版は、支持体と金属キレート含有シリコーン層との間にプライマー層を有してもよく、接着性、検版性、耐傷性、耐刷性などを向上させることができる。
本発明の水なし平版印刷版原版に用いられるプライマー層としては、例えば、特開2004-199016号公報、特開2004-334025号公報、特開2006-276385号公報などに断熱層として記載されたプライマー層が挙げられる。
プライマー層の平均膜みは、0.2~30μmが好ましい。
本発明に係る水なし平版印刷版原版は、金属キレート含有シリコーン層または金属キレート非含有シリコーンゴム層上に、カバーフィルムおよび/または合紙を有してもよく、下層のシリコーン層表面を保護することができる。
カバーフィルムとしては、厚み100μm以下のフィルムが好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、セロファンなどのフィルムが挙げられる。
合紙は、秤量30~90g/mのものが好ましい。好ましく用いられる合紙の例として、例えば、情報記録原紙40g/m(名古屋パルプ(株)製)、金属合紙30g/m(名古屋パルプ(株)製)、未晒しクラフト紙50g/m(中越パルプ工業(株)製)、NIP用紙52g/m(中越パルプ工業(株)製)、純白ロール紙45g/m(王子製紙(株)製)、クルパック73g/m(王子製紙(株)製)などが挙げられる。
次に、本発明に係る印刷版原版の製造方法について説明する。
本発明に係る印刷版原版の製造方法は、少なくとも、
(1)支持体上に、金属キレート含有シリコーン層形成用組成物を連続的に塗布する工程、および、
(2)工程(1)により得られる塗布膜を硬化させて金属キレート含有シリコーン層を形成する工程
を有することが好ましい。また、金属キレート非含有シリコーン層を有する印刷版原版の製造方法は、前記工程(2)の前または後に、
(3)工程(1)により得られる塗布膜または工程(2)により得られる金属キレート含有シリコーン層上に、さらに金属キレート非含有シリコーン層形成用組成物を連続的に塗布する工程、および、
(4)工程(3)により得られる塗布膜を硬化させて金属キレート非含有シリコーン層を形成する工程
を有することが好ましい。
支持体と金属キレート含有シリコーン層形成用組成物の間にプライマー層を有する場合は、工程(1)に先立ち、支持体上にプライマー層形成用組成物を塗布し、加熱下または非加熱下で乾燥/硬化することにより、プライマー層を形成することが好ましい。
プライマー層形成用組成物の塗布方法としては、例えば、スリットダイコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ワイヤーバーコーターなどを用いた方法が挙げられる。これらの中でも、スリットダイコーター塗布が好ましい。
加熱する場合、加熱装置としては、例えば、熱風乾燥機、赤外線乾燥機などが挙げられる。加熱温度は50~200℃が好ましく、加熱時間は30秒間~10分間が好ましい。
工程(1)において、後述する金属キレート含有シリコーン層形成用組成物を、支持体全面に塗布することが好ましい。支持体と金属キレート含有シリコーン層形成用組成物の間にプライマー層を有する場合は、後述する金属キレート含有シリコーン層形成用組成物を、支持体上に形成されたプライマー層上に塗布することが好ましい。塗布に際しては、支持体表面やプライマー層表面に付着した水分を可能な限り除去することが、接着性を向上させる点で好ましい。
金属キレート含有シリコーン層形成用組成物の塗布方法としては、プライマー層形成用組成物の塗布方法として例示した方法が挙げられ、スリットダイコーター塗布が好ましい。
工程(2)において、加熱により硬化させることが好ましい。加熱条件の好ましい態様は、プライマー層の加熱条件と同様である。
工程(3)において、金属キレート非含有シリコーン層形成用組成物を、金属キレート含有シリコーン層全面に塗布することが好ましい。金属キレート非含有シリコーン層形成用組成物としては、後述する金属キレート含有シリコーン層形成用組成物から金属キレート化合物を除いた組成のものが好ましい。塗布方法としては、プライマー層形成用組成物の塗布方法として例示した方法が挙げられ、スリットダイコーター塗布が好ましい。
工程(4)において、加熱により硬化させることが好ましい。加熱条件の好ましい態様は、プライマー層の加熱条件と同様である。
次に、本発明に係る印刷版原版の製造方法において好適に用いられる、金属キレート含有シリコーン層形成用組成物について説明する。本発明に係る金属キレート含有シリコーン層形成用組成物は、シラノール基またはビニル基を分子中に2個以上有するポリシロキサンと、当該シラノール基または当該ビニル基と反応性を有する官能基を分子中に3個以上有する架橋剤と、キレート環を分子中に1個以上有する金属キレート化合物を含む。
金属キレート化合物としては、印刷版原版において例示したものが挙げられ、その好ましい態様は、印刷版原版における好ましい態様と同様である。
金属キレート含有シリコーン層形成用組成物中における金属キレート化合物の含有率は、全固形分中、3質量%以上が好ましく、金属キレート由来の金属濃度を前述の好ましい範囲に容易に調整し、露光部のインキ着肉性をより向上させることができる。7質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。一方、金属キレート化合物の含有率は、全固形分中、38質量%以下が好ましく、金属キレート由来の金属濃度を前述の好ましい範囲に容易に調整し、未露光部のインキ反発性や耐刷性をより向上させることができる。34質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。
ここで、金属キレート含有シリコーン層形成用組成物の全固形分とは、金属キレート含有シリコーン層形成用組成物の構成成分から、溶剤を除く全成分を表す。
金属キレート化合物と、ビニル基を分子中に2個以上有するポリシロキサンと、ビニル基と反応性を有する官能基を分子中に3個以上有する架橋剤を含む金属キレート含有シリコーン層形成用組成物は、付加反応型の金属キレート含有シリコーン層形成用組成物である。架橋剤として分子内に3個以上のSiH基を有するシロキサン化合物を含み、反応触媒を含むことが好ましい。さらに、反応抑制剤やシランカップリング剤を含んでもよい。
金属キレート化合物と、シラノール基を分子中に2個以上有するポリシロキサンと、シラノール基と反応性を有する官能基を分子中に3個以上有する架橋剤を含む金属キレート含有シリコーン層形成用組成物は、縮合反応型の金属キレート含有シリコーン層組成物であり、架橋剤として分子中に加水分解性基を3個以上有するシランカップリング剤を含み、反応触媒を含むことが好ましい。
金属キレート化合物と、シラノール基を分子中に2個以上有するポリシロキサンと、シラノール基と反応性を有する官能基を分子中に3個以上有し、かつ分子内に1個以上のビニル基を有するシランカップリング剤と、ビニル基と反応性を有する官能基を分子中に3個以上有する架橋剤を含む金属キレート含有シリコーン層形成用組成物は、付加反応-縮合反応併用型の金属キレート含有シリコーン層形成用組成物である。架橋剤として分子内に3個以上のSiH基を有するシロキサン化合物を含み、反応触媒を含むことが好ましい。さらに、反応抑制剤や上記以外のシランカップリング剤を含んでもよい。
まず、付加反応型の金属キレート含有シリコーン層形成用組成物について説明する。
ビニル基を分子中に2個以上有するポリシロキサンとしては、例えば、分子両末端にビニル基を有するジオルガノポリシロキサン、オルガノビニルポリシロキサン、オルガノビニルシロキサン・ジオルガノシロキサン共重合体、分子内にジオルガノビニルシロキシ基を2個以上有するポリシロキサンなどが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの中でも、分子両末端にビニル基を有するジオルガノポリシロキサン、オルガノビニルシロキサン・ジオルガノシロキサン共重合体が好ましい。
分子両末端にビニル基を有するジオルガノポリシロキサンやオルガノビニルシロキサン・ジオルガノシロキサン共重合体は、直鎖状、環状、分岐状、網状のいずれの分子構造を有してもよい。また、珪素原子と結合する有機基は、各繰り返し単位において同じであっても異なっていてもよく、それぞれ脂肪族不飽和結合を含まない一価の有機基である。脂肪族不飽和結合を含まない一価の有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基などのアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基;クロロメチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフロロプロピル基などのハロゲン化アルキル基などが挙げられる。
前記脂肪族不飽和結合を含まない一価の有機基の50モル%以上がメチル基であることが、インキ反発性をより向上させる点で好ましい。また、ビニル基を分子中に2個以上有するポリシロキサンの重量平均分子量は、耐刷性や耐傷性をより向上させる点で、30,000以上で好ましく、塗工性を向上させる点で、300,000以下が好ましい。なお、重量平均分子量は、GPCを用いて測定したポリスチレン換算値である。
金属キレート含有シリコーン層形成用組成物中におけるビニル基を分子中に2個以上有するポリシロキサンの含有率は、全固形分中、60質量%以上が好ましく、元素濃度を前述の好ましい範囲に容易に調整し、インキ反発性をより向上させることができる。65質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。一方、ビニル基を分子中に2個以上有するポリシロキサンの含有率は、元素濃度を前述の好ましい範囲に容易に調整し、金属キレート含有シリコーン層のインキ着肉性をより向上させる点で、全固形分中、95質量%以下が好ましい。90質量%以下がより好ましく、85質量%以下がさらに好ましい。
分子内に3個以上のSiH基を有するシロキサン化合物としては、例えば、オルガノハイドロポリシロキサン、オルガノハイドロシロキサン・ジオルガノシロキサン共重合体、分子内にジオルガノハイドロシロキシ基を3個以上有する化合物が挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの中でも、オルガノハイドロポリシロキサン、オルガノハイドロシロキサン・ジオルガノシロキサン共重合体が好ましい。分子内のSiH基数は、金属キレート含有シリコーン層の硬化性を向上させる上で、5個以上が好ましく、6個以上がより好ましい。
オルガノハイドロポリシロキサンやオルガノハイドロシロキサン・ジオルガノシロキサン共重合体は、直鎖状、環状、分岐状、網状のいずれの分子構造を有してもよい。また、珪素原子と結合する有機基は、各繰り返し単位において同じであっても異なっていてもよく、それぞれ脂肪族不飽和結合を含まない一価の有機基である。脂肪族不飽和結合を含まない一価の有機基としては、分子両末端にビニル基を有するジオルガノポリシロキサンやオルガノビニルシロキサン・ジオルガノシロキサン共重合体において例示した基が挙げられる。
金属キレート含有シリコーン層形成用組成物中における分子内に3個以上のSiH基を有するシロキサン化合物の含有率は、全固形分中、0.5質量%以上が好ましく、元素濃度を前述の好ましい範囲に容易に調整し、金属キレート含有シリコーン層の硬化性を向上させることができる。1質量%以上がより好ましい。一方、分子内に3個以上のSiH基を有するシロキサン化合物の含有率は、全固形分中、10質量%以下が好ましく、元素濃度を前述の好ましい範囲に容易に調整し、インキ反発性をより向上させることができる。5質量%以下がより好ましい。
反応触媒としては、白金、ロジウムを含有するものが好ましい。白金を含有する反応触媒としては、例えば、白金単体、担体(アルミナ、シリカ、カーボンブラック等)に固体白金を担持させたもの、塩化白金酸、白金-オレフィン錯体、白金-ビニルシラン錯体、白金-ビニルシロキサン錯体、白金-ホスフィン錯体、白金-ホスファイト錯体、白金-アセチルアセトン錯体、白金-アセト酢酸アルキルエステル錯体、白金-マロン酸ジアルキルエステル錯体、米国特許第3159601号公報および米国特許第3159662号公報に記載された白金-炭化水素複合体、米国特許第3220972号公報に記載された白金アルコラ-ト触媒などが挙げられる。また、白金化合物以外の反応触媒としては、例えば、RhCl(PPh、RhCl、RhAl、RuCl、IrCl、FeCl、AlCl、PdCl・2HO、NiCl、TiCl等が挙げられる。これらを2種以上含んでもよい。
金属キレート含有シリコーン層形成用組成物中における反応触媒の含有率は、全固形分中、0.001質量%以上0.1質量%以下が好ましい。
反応抑制剤としては、アミン化合物、アセチレン化合物が好ましく、例えば、ピリジン、ピコリン、2,2’-ジピリジル、2-ブタノンオキシムや、アセチレンアルコール、アセチレンシランなどが挙げられる。アセチレンアルコールとしては、例えば、2-メチル-3-ブチン-2-オール、2-フェニル-3-ブチン-2-オール、1-エチニル-1-ヘキサノール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オールなどが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの反応抑制剤を含有することにより、金属キレート含有シリコーン層形成用組成物のポットライフが向上する。
金属キレート含有シリコーン層形成用組成物中における反応抑制剤の含有量は、全固形分中、0.1質量部以上15質量部以下が好ましい。
シランカップリング剤としては、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シランが好ましい。
金属キレート含有シリコーン層形成用組成物中におけるシランカップリング剤の含有率は、全固形分中、1質量%以上5質量%以下が好ましい。
次に、縮合反応型の金属キレート含有シリコーン層形成用組成物について説明する。
シラノール基を分子中に2個以上有するポリシロキサンとしては、例えば、分子両末端にシラノール基を有するジオルガノポリシロキサンが挙げられる。
分子両末端にシラノール基を有するジオルガノポリシロキサンは、直鎖状、環状、分岐状、網状のいずれの分子構造を有してもよい。また、珪素原子と結合する有機基は、各繰り返し単位において同じであっても異なっていてもよく、それぞれ脂肪族不飽和結合を含まない一価の有機基である。脂肪族不飽和結合を含まない一価の有機基としては、分子両末端にビニル基を有するジオルガノポリシロキサンやオルガノビニルシロキサン・ジオルガノシロキサン共重合体において例示した基が挙げられる。
前記脂肪族不飽和結合を含まない一価の有機基の50モル%以上がメチル基であることが、インキ反発性をより向上させる点で好ましい。また、シラノール基を分子中に2個以上有するポリシロキサンの重量平均分子量は、耐刷性や耐傷性をより向上させる点で、30,000以上が好ましく、塗工性を向上させる点で、300,000以下が好ましい。なお、重量平均分子量は、GPCを用いて測定したポリスチレン換算値である。
金属キレート含有シリコーン層形成用組成物中におけるシラノール基を分子中に2個以上有するポリシロキサンの含有率は、全固形分中、60質量%以上が好ましく、元素濃度を前述の好ましい範囲に容易に調整し、インキ反発性をより向上させることができる。65質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。一方、シラノール基を分子中に2個以上有するポリシロキサンの含有率は、元素濃度を前述の好ましい範囲に容易に調整し、金属キレート含有シリコーン層のインキ着肉性をより向上させる点で、全固形分中、95質量%以下が好ましい。90質量%以下がより好ましく、85質量%以下がさらに好ましい。
シラノール基と反応性を有する官能基を分子中に3個以上有する架橋剤としては、シランカップリング剤が挙げられ、シランカップリング剤としては、付加反応型の金属キレート含有シリコーン層形成用組成物において例示したシランカップリング剤が挙げられる。
金属キレート含有シリコーン層形成用組成物中におけるシランカップリング剤の含有率は、全固形分中、0.5質量%以上が好ましく、硬化性や対下層接着性を向上させることができる。1質量%以上がより好ましい。一方、金属キレート含有シリコーン層形成用組成物中におけるシランカップリング剤の含有率は、全固形分中、10質量%以下が好ましく、インキ反発性をより向上させることができる。5質量%以下がより好ましい。
反応触媒としては、例えば、有機カルボン酸、酸類、アルカリ、アミン、金属アルコキシド、金属ジケテネート、錫、鉛、亜鉛、鉄、コバルト、カルシウム、マンガンなどの金属の有機酸塩などが挙げられる。より具体的には、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸亜鉛、オクチル酸鉄などを挙げることができる。これらを2種以上含有してもよい。
金属キレート含有シリコーン層形成用組成物中における反応触媒の含有率は、全固形分中、0.01質量%以上1質量%以下が好ましい。
次に、付加反応-縮合反応型の金属キレート含有シリコーン層形成用組成物について説明する。
シラノール基を分子中に2個以上有するポリシロキサンとしては、縮合反応型の金属キレート含有シリコーン層形成用組成物において例示したポリシロキサンが挙げられる。金属キレート含有シリコーン層形成用組成物中におけるシラノール基を分子中に2個以上有するポリシロキサンの含有率の好ましい範囲は、縮合反応型の金属キレート含有シリコーン層形成用組成物と同様である。
シラノール基と反応性を有する官能基を分子中に3個以上有する架橋剤としては、シランカップリング剤が挙げられ、シランカップリング剤としては、付加反応型の金属キレート含有シリコーン層形成用組成物において例示したシランカップリング剤が挙げられる。金属キレート含有シリコーン層形成用組成物中におけるシラノール基と反応性を有する官能基を分子中に3個以上有する架橋剤の含有率の好ましい範囲は、縮合反応型の金属キレート含有シリコーン層形成用組成物と同様である。
分子内に1個以上のビニル基を有するシランカップリング剤としては、例えば、付加反応型の金属キレート含有シリコーン層形成用組成物において例示したシランカップリング剤が挙げられる。
金属キレート含有シリコーン層形成用組成物中における分子内に1個以上のビニル基を有するシランカップリング剤の含有率は、全固形分中、1質量%以上5質量%以下が好ましい。
分子内に3個以上のSiH基を有するシロキサン化合物としては、付加反応型の金属キレート含有シリコーン層形成用組成物において例示した前記シロキサン化合物が挙げられる。金属キレート含有シリコーン層形成用組成物中における分子内に3個以上のSiH基を有するシロキサン化合物の含有率の好ましい範囲は、付加反応型の金属キレート含有シリコーン層形成用組成物と同様である。
反応触媒としては、付加反応型の金属キレート含有シリコーン層形成用組成物において例示した反応触媒が挙げられる。金属キレート含有シリコーン層形成用組成物中における反応触媒の含有率の好ましい範囲は、付加反応型の金属キレート含有シリコーン層形成用組成物と同様である。
反応抑制剤としては、付加反応型の金属キレート含有シリコーン層形成用組成物において例示した反応抑制剤が挙げられる。金属キレート含有シリコーン層形成用組成物中における反応抑制剤の含有率の好ましい範囲は、付加反応型の金属キレート含有シリコーン層形成用組成物と同様である。
また、金属キレート含有シリコーン層形成用組成物には、25℃における表面張力が30mN/m以下の液体を含んでもよく、インキ反発性をより向上させることができる。25℃における表面張力が30mN/m以下の液体としては、例えば、国際公開第2016/076286号などに記載の液体が挙げられる。
また、金属キレート含有シリコーン層形成用組成物には、シリカ粒子や、ビニル基、SiH基、シラノール基などの官能基を有するシリコーンレジンなどの公知の補強剤を含有してもよく、ゴム強度を向上させることができる。
金属キレート含有シリコーン層形成用組成物には、溶剤を含有することが好ましく、塗工性や金属キレート化合物の溶解性や相溶性を向上させることができる。
溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素系溶剤、脂環族炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤や、ハロゲン化炭化水素、鎖状または環状のエーテル化合物などが挙げられる。シリコーン成分の溶解性や相溶性、塗工性を向上させる点で、脂肪族炭化水素系溶剤および/または脂環族炭化水素系溶剤を含むことが好ましい。一方、金属キレート化合物の溶解性や相溶性を向上させる点で、芳香族炭化水素系溶剤を含むことが好ましい。すなわち、シリコーン成分と金属キレート化合物をともに溶解または相溶することができ、かつ塗工性に優れる点で、脂肪族炭化水素系溶剤および/または脂環族炭化水素系溶剤と芳香族炭化水素系溶剤の混合溶剤を用いることが好ましい。塗工性を向上させる点で、混合溶剤中における芳香族炭化水素系溶剤の割合は30体積%以下が好ましく、25体積%以下がより好ましい。また、安全性や取り扱い性を向上させる点で、上記溶剤の1気圧における沸点は、60℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましい。一方、塗液の乾燥性を向上させる点で、上記溶剤の1気圧における沸点は、160℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましい。このような溶剤としては、例えば、炭素数が6~9の直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素系溶剤や、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。これらを2種以上含んでもよい。以下に代表されるような市販の溶剤を用いてもよい。
脂肪族炭化水素系溶剤の混合物:例えば、マルカゾール8(丸善石油化学(株)製)、“アイソパー”(登録商標)C、“アイソパー”(登録商標)E(いずれもエクソンモービルケミカル社製)、IPソルベント1016(出光興産(株)製)、“アイソゾール”(登録商標)200(JX日鉱日石エネルギー(株)製)などが挙げられ、各社から入手可能である。
脂環族炭化水素系溶剤の混合物:例えば、“EXXSOL”(登録商標)DSP80/100、“EXXSOL”DSP100/140、“EXXSOL”DSP145/160(いずれもエクソンモービルケミカル社製)、CS揮発油(JX日鉱日石エネルギー(株)製)などが挙げられ、各社から入手可能である。
以下に、金属キレート含有シリコーン層形成用組成物の具体的な作製方法を記載するが、これに限定されない。
例えば、容器中に溶剤、分子内に2個以上のビニル基を有するシロキサン化合物、25℃での表面張力が30mN/m以下の液体を投入し、成分が均一になるまで撹拌した後、溶液中の水分を乾燥窒素ブローにより除去する。次いで、反応触媒、反応抑制剤を投入して成分が均一になるまで撹拌した後、分子内に3個以上のSiH基を有するシロキサン化合物、シランカップリング剤を投入し、成分が均一になるまで撹拌する。最後に、金属キレート化合物を投入し、成分が均一になるまで撹拌することにより、金属キレート含有シリコーン層形成用組成物を得ることができる。
プライマー層形成用組成物としては、例えば特開2004-199016号公報、特開2004-334025号公報、特開2006-276385号公報などに断熱層形成用組成物として記載された組成物が挙げられる。
次に、平版印刷版原版から平版印刷版を製造する方法について説明する。本発明に係る平版印刷版の製造方法は、前述の本発明に係る平版印刷版原版の金属キレート含有シリコーン層側または金属キレート非含有シリコーン層側から活性エネルギー線により露光して、インキ着肉部を形成する。
平版印刷版原版の金属キレート含有シリコーン層または金属キレート非含有シリコーン層上にカバーフィルムや合紙が設けられている場合には、予めこれらを取り除くことが好ましい。
前述の平版印刷版原版の金属キレート含有シリコーン層または金属キレート非含有シリコーン層側から活性エネルギー線によりパターン状に露光することにより、露光部の金属キレート含有シリコーン層または金属キレート非含有シリコーン層は、インキ着肉性に変化する。活性エネルギー線のピーク波長は、200~600nmが好ましい。ピーク波長が200nm以上であれば、窒素雰囲気下や真空下における露光が不要となり、大気中で露光することができる。一方、ピーク波長が600nm以下であれば露光部のインキ着肉性をより向上させることができる。ピーク波長は400nm以下がより好ましい。製版用のマスクが不要となる点から、波長200~600nmのレーザー描画装置などを用いて、インキ着肉部のパターンを直接描画することが好ましい。
波長200~600nmの活性エネルギー線露光装置としては、例えば、ピーク波長が200~600nmの範囲に含まれる、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、およびエキシマランプなどが挙げられる。波長200~600nmのエキシマランプとしては、KrBr(207nm)、KrCl(222nm)、KrF(248nm)、XeI(253nm)、HgXe(254nm)、Cl(259nm)、XeBr(283nm)、XeCl(308nm)、I(342nm)、XeF(352nm)、HgI(443nm)、HgBr(503nm)、HgCl(558nm)などの希ガスエキシマランプや希ガスハロゲンエキシマランプが挙げられる。これらの中でも、平版印刷版の生産性を向上させる点で、KrBr(207nm)、KrCl(222nm)、KrF(248nm)、XeI(253nm)、HgXe(254nm)、Cl(259nm)、XeBr(283nm)、XeCl(308nm)、I(342nm)、XeF(352nm)などの波長200~400nmの紫外線エキシマランプがより好ましい。
波長200~600nmの活性エネルギー線レーザーとしては、Nd:YAGレーザーまたはNd:YVOレーザーの第5高調波(213nm)、Nd:YAGレーザーまたはNd:YVOレーザーの第4高調波(266nm)、Nd:YAGレーザーまたはNd:YVOレーザーの第3高調波(355nm)、Nd:YAGレーザーまたはNd:YVOレーザーの第2高調波(532nm)、ルビーレーザーの第3高調波(231nm)、ルビーレーザーの第2高調波(347nm)、アレキサンドライトレーザーの第3高調波(252nm)、アレキサンドライトレーザーの第2高調波(378nm)などの固体レーザーや、KrBrレーザー(207nm)、KrClレーザー(222nm)、KrFレーザー(248nm)、XeIレーザー(253nm)、HgXeレーザー(254nm)、Clレーザー(259nm)、XeBrレーザー(283nm)、XeClレーザー(308nm)、Iレーザー(342nm)、XeFレーザー(352nm)、HgIレーザー(443nm)、HgBrレーザー(503nm)、HgClレーザー(558nm)などの希ガスエキシマレーザーや希ガスハロゲンエキシマレーザーなどが挙げられる。これらの中でも、平版印刷版の生産性を向上させる点で、Nd:YAGレーザーまたはNd:YVOレーザーの第5高調波(213nm)、Nd:YAGレーザーまたはNd:YVOレーザーの第4高調波(266nm)、Nd:YAGレーザーまたはNd:YVOレーザーの第3高調波(355nm)、ルビーレーザーの第3高調波(231nm)、ルビーレーザーの第2高調波(347nm)、アレキサンドライトレーザーの第3高調波(252nm)、アレキサンドライトレーザーの第2高調波(378nm)、KrBrレーザー(207nm)、KrClレーザー(222nm)、KrFレーザー(248nm)、XeIレーザー(253nm)、HgXeレーザー(254nm)、Clレーザー(259nm)、XeBrレーザー(283nm)、XeClレーザー(308nm)、Iレーザー(342nm)、XeFレーザー(352nm)などの波長200~400nmの紫外線レーザーがより好ましい。
活性エネルギー線レーザーの発振方式としては、パルス発振方式が好ましい。また、パルスレーザーのパルス幅としては、ナノ秒、ピコ秒、フェムト秒のいずれのパルス幅のパルスレーザーでも用いることができる。これらの中でも、比較的熱負荷が小さく、多光子吸収によるアブレーションの影響を受けにくい、ナノ秒パルスレーザーが好ましい。
なお、本発明におけるレーザーとは、共振器において増幅した電磁波を指す。
波長200~600nmの活性エネルギー線の露光量は、露光部のインキ着肉性をより向上させる点で、2J/cm以上が好ましく、3J/cm以上がより好ましい。一方、露光量は、露光部のアブレーション塵をより抑制する点で、8J/cm以下が好ましく、7J/cm以下がより好ましく、6J/cm以下がさらに好ましい。
なお、本発明における露光量Eは下記式にて求められ、照射エネルギー[W]は市販のパワーメーターなどを用いて測定することができる。
<露光量Eの求め方>
E=W÷S×T[J/cm
W:照射エネルギー[W]
S:照射面積[cm
T:照射時間[sec]。
得られた平版印刷版を積み重ねて保管する場合には、平版印刷版の間に合紙を積層することが好ましく、平版印刷版の最上層表面を保護することができる。
次に、印刷物の製造方法について説明する。
印刷物の製造方法としては、前述の水なし平版印刷版、インキ、および被印刷媒体を用いることが好ましい。具体的には、水なし平版印刷版のインキ着肉部表面にインキを付着させる工程と、インキ着肉部表面に付着したインキを直接またはブランケットを介して被印刷媒体に転写する工程を含むことが好ましい。
印刷機としては公知の直刷り印刷機やオフセット印刷機を用いることができるが、印刷時の水なし平版印刷版へのダメージ抑制により多くの印刷物が得られる点から、オフセット印刷機が好ましい。
オフセット印刷機としては、揺動ローラーおよび/または版胴に冷却機構が備わったオフセット印刷機が耐地汚れ性を向上させる点で好ましい。
インキとしては、公知の酸化重合型インキや活性エネルギー線硬化型インキを用いることができるが、速乾により印刷後直ちに次工程へ移ることができる点で、活性エネルギー線硬化型インキの方が好ましい。また、インキは油溶性であっても水溶性であってもよいが、作業者や環境への負荷低減の点で、水溶性が好ましい。水溶性活性エネルギー線硬化型インキがより好ましい。
活性エネルギー線としては、平版印刷版の製造方法において例示したものが好ましい。
本発明に好ましく用いられる水溶性活性エネルギー線硬化型インキとしては、例えば、特開2017-52817号公報、国際公開第2017/047817号、国際公開第2017/090663号などで開示された水または水系洗浄液で洗浄可能な公知の水溶性活性エネルギー線硬化型インキが挙げられる。
被印刷媒体としては、上質紙、アート紙、コート紙、キャスト紙、合成紙、新聞用紙などの紙類、アルミニウムやアルミニウム合金、鉄、鋼、亜鉛、銅などの金属類、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタールなどのプラスチックフィルム類、またはこれら紙類、金属類、プラスチックフィルム類の複合体(金属が蒸着またはラミネートされた紙またはプラスチックフィルム、プラスチックフィルムがラミネートされた紙または金属、紙がラミネートされた金属またはプラスチックフィルム)などが挙げられる。
中でも、本発明に係る印刷物の製造方法では、被印刷面が金属またはプラスチックフィルムで構成される、合成紙、金属類、プラスチックフィルム類、金属が蒸着またはラミネートされた紙またはプラスチックフィルム、プラスチックフィルムがラミネートされた紙または金属などのインキ成分非吸収性の被印刷媒体への印刷に好適である。
上記のうち、被印刷面がプラスチックフィルムで構成される、合成紙、プラスチックフィルム類、プラスチックフィルムがラミネートされた紙または金属などの被印刷媒体の被印刷面は、接着性向上の点で、プライマー樹脂の塗布や、コロナ放電処理、プラズマ処理などの表面処理を施してもよい。
被印刷媒体の形状としては、ロール状の長尺被印刷媒体を用いることが好ましい。本発明の水なし平版印刷版とロール状の長尺被印刷媒体を用いてロールトゥロール法により印刷することにより、絵柄パターンに継ぎ目のない高精細な印刷物を大量生産することができる。
本発明の水なし平版印刷版は現像工程が不要であり、従来の現像工程で用いられる前処理薬品や後処理薬品などを使用する必要がない。このため、水なし平版印刷版への前処理薬品や後処理薬品の付着や浸透がなく、印刷工程においてこれら薬品の水なし平版印刷版から印刷物への移行がないことから、薬品の含有量に厳しい食品包装用途の印刷に特に好適に用いることができる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。
各実施例・比較例における評価は次の方法で行った。
(1)水なし平版印刷版の評価
(1-1)金属キレート含有シリコーン層および金属キレート非含有シリコーン層中における元素濃度
各実施例および比較例により得られた水なし平版印刷版原版の金属キレート含有シリコーン層および金属キレート非含有シリコーン層について、X線光電子分光分析により検出された各元素スペクトルの面積比率から、各元素濃度(atom%)を算出した。以下に分析条件と解析条件を示す。
[分析条件]
分析装置:ESCAsystemULVAC-PHI5700(ULVAC-PHI社製)
真空度5.0×10-7Torr以下
X線源:Mg線源
加速電圧:15kV
積算回数:6回
測定ステップ:0.125eV
スキャン:ナロースキャン
X線入射角度:45度
[解析条件]
データ解析ソフト:PHI MultiPak(ULVAC-PHI社製)
スムージング補正:Point9
バックグラウンド補正:OFF SET。
(1-2)露光部平均掘れ量
各実施例および比較例により得られた水なし平版印刷版から無作為に選択した露光部、未露光部各5点について、3D測定レーザー顕微鏡により測定した露光部と未露光部の高さ情報から、露光部と未露光部の高さ方向の差を算出し、露光部の掘れ量とした。得られた掘れ量の5点平均値を露光部平均掘れ量(μm)とし、露光部平均掘れ量によりアブレーション塵の生じやすさを評価した。露光部平均掘れ量が小さいほど、露光時のアブレーション塵の発生が少ないと言える。以下に分析条件と解析条件を示す。
[分析条件]
分析装置:LEXT OLS4100(オリンパス(株)製)
分析モード:高精度モード
レーザー波長:405nm
レーザースポット径:200nm
対物レンズ倍率:50倍
測定範囲:259×259[μm]。
[解析条件]
画像解析ソフト:OLS4100(オリンパス(株)製)
ノイズ補正:鋸状表面ノイズ除去。
(2)印刷評価
(2-1)インキ反発性/インキ着肉性
各実施例および比較例により得られた水なし平版印刷版を、EBオフセット印刷機:OFFSET CI/8(COMEXI社製)の版胴(実施例44および45は版胴軸)に装着し、市販の水なし平版印刷版原版:東レ水なしCTP平版 TAC-VG5を標準条件にて製版した平版印刷版をリファレンスとして以下に示す印刷条件で印刷を行った。
[印刷条件]
インキローラー:#8000(明和ゴム工業(株)製)
円筒ブランケット:EPDMブランケット((株)金陽社製)
水溶性EBインキ:オフセットEBインキFタイプFE1908紅(三星インキ(株)製)
インキ成分非吸収性の被印刷媒体:“エンブレット”(登録商標)PTM-12(ロール状2軸延伸PETフィルム、厚み:12μm、印刷面:易接着処理、ユニチカ(株)製)
版面温度:25~28℃
印刷速度:100m/分
インキ供給量:TAC-VG5で印刷した印刷物のベタ部反射濃度が、(1)1.20±0.02、(2)1.50±0.02、(3)1.80±0.02の範囲となる3水準
[インキ硬化条件]
EB照射線量:40kGy
EB照射雰囲気:窒素雰囲気。
上記インキ供給量の異なる3水準にてそれぞれ印刷した、印刷開始から500m時点の印刷物を、5枚重ねにしたコート紙:OK“トップコート”(登録商標)+(王子製紙(株)製)の上に置き、白ベタ部およびベタ部の反射濃度を分光濃度・測色計:イグザクト アドバンス(X-Rite社製)で測定した。
インキ反発性を白ベタ部の反射濃度により評価した。白ベタ部の反射濃度が低いほど、インキ反発性に優れる。インキ着肉性をベタ部の反射濃度により評価した。ベタ部の反射濃度がTAC-VG5のベタ部と同等以上であるほど、インキ着肉性に優れる。
(2-2)耐刷性
上記印刷条件(VG5ベタ部反射濃度:1.50±0.05)にて最長100,000mまで印刷を実施し、5,000m毎の印刷物をサンプリングし、非画線部に意図しない画線が形成される地汚れの有無を評価した。良好な印刷物が得られ続けた限界印刷長さを耐刷性として評価した。限界印刷長さが長いほど、耐刷性に優れる。
なお、比較例3、4、および9は印刷初期の段階から良好な印刷物が得られなかったため、印刷初期と同等品質の印刷物が得られ続けた限界印刷長さを耐刷性として評価した。
[実施例1]
厚み0.24mmのアルミニウム合金板上に、スリットダイコーター(東レエンジニアリング(株)製)を用いて、下記のプライマー層形成用組成物を塗布し、180℃で2分間加熱することにより、平均厚み10μmのプライマー層を設けた。
<プライマー層形成用組成物>
容器中に下記(a-1)、(b-1)および(c-1)成分を投入し、(c-1)成分が溶解するまで撹拌混合した。得られた溶液中に(d-1)および(e-1)成分を投入し、成分が均一になるまで撹拌混合することにより、でプライマー層形成用組成物を得た。
(a-1)N,N-ジメチルホルムアミド:270.00質量部
(b-1)メチルエチルケトン:210.00質量部
(c-1)エポキシ樹脂:“jER”(登録商標)1010(三菱化学(株)製):35.00質量部
(d-1)ポリウレタン:“サンプレン”(登録商標)LQ-T1331D(三洋化成工業(株)製、固形分濃度:20質量%):265.00質量部
(e-1)架橋剤:“デュラネート”(登録商標)MF-B60B(旭化成工業(株)製、HDI系ブロックイソシアネート、固形分濃度:60質量%(溶剤:酢酸-n-ブチル/n-ブタノール)):20.00質量部。
次いで、スリットダイコーターを用いて、下記の金属キレート含有シリコーン層形成用組成物-1をプライマー層上に塗布し、100℃で1分間加熱し、平均厚み20μmの金属キレート含有シリコーン層(第1の層)を設けることにより、水なし平版印刷版原版を得た。
<金属キレート含有シリコーン層形成用組成物-1>
容器中に下記(f-1)、(g-1)および(h-1)成分を投入し、(h-1)成分が溶解するまで撹拌混合した。得られた溶液中に(i-1)、(j-1)成分を投入し、10分間撹拌混合した後、(k-1)成分を投入して10分間撹拌混合した。最後に(l-1)成分を投入し、10分間撹拌混合することにより、金属キレート含有シリコーン層形成用組成物-1を得た。
(f-1)ナフテン系溶剤:“エクソール”(登録商標)DSP100/140(エクソンモービルケミカル社製):240.00質量部
(g-1)芳香族炭化水素系溶剤:トルエン:60.00質量部
(h-1)分子内に2個以上のビニル基を有するシロキサン化合物(両末端ジメチルビニルシロキシ-ポリジメチルシロキサン):DMS-V42(GELEST Inc.製、重量平均分子量:72,000、分子内のビニル基数:2.0個):87.47質量部
(i-1)反応触媒(白金混合物):XC94-C4326(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、固形分濃度:1質量%):3.00質量部
(j-1)反応抑制剤:2-メチル-3-ブチン-2-オール:0.20質量部
(k-1)分子内に3個以上のSiH基を有するシロキサン化合物(両末端トリメチルシロキシ-ポリメチルハイドロシロキサン):HMS-993(GELEST Inc.製、重量平均分子量:2,250、分子内のSiH基数:34.8個):2.50質量部
(l-1)金属キレート化合物:AL-A(W)(川研ファインケミカル(株)製、アルミニウムトリスアセチルアセトネート):12.37質量部。
波長355nmの固体パルスレーザー:3-Axis UVレーザマーカ MD―U1000C((株)キーエンス製)を用い、上記水なし平版印刷版原版の金属キレート含有シリコーン層に、大気中で露光量:5J/cmにてパターン描画を行うことにより、水なし平版印刷版を得た。
[実施例2]
前記金属キレート含有シリコーン層形成用組成物-1の(l-1)成分を(l-2)金属キレート化合物:ALCH-TR(川研ファインケミカル(株)製、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート):15.81質量部に変更したこと以外は実施例1と同様の方法により、水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
[実施例3]
前記金属キレート含有シリコーン層形成用組成物-1の(l-1)成分を(l-3)金属キレート化合物:ALCH(川研ファインケミカル(株)製、ジ-iso-プロポキシドアルミニウムモノエチルアセトアセテート):10.47質量部に変更したこと以外は実施例1と同様の方法により、水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
[実施例4]
前記金属キレート含有シリコーン層形成用組成物-1の(l-1)成分を(l-4)金属キレート化合物:“オルガチックス”(登録商標)TC-401(マツモトファインケミカル(株)製、チタニウムテトラアセチルアセトネート/2-プロパノール=65/35質量%の溶液)から乾燥窒素ブローにより溶剤を除去した化合物:16.95質量部に変更したこと以外は実施例1と同様の方法により、水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
[実施例5]
前記金属キレート含有シリコーン層形成用組成物-1の(l-1)成分を(l-5)金属キレート化合物:“オルガチックス”(登録商標)TC-150(マツモトファインケミカル(株)製、ジ-n-ブトキシドチタニウムビスアセチルアセトネート/n-ブタノール=73/27質量%の溶液)から乾燥窒素ブローにより溶剤を除去した化合物:14.97質量部に変更したこと以外は実施例1と同様の方法により、水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
[実施例6]
前記金属キレート含有シリコーン層形成用組成物-1の(l-1)成分を(l-6)金属キレート化合物:“オルガチックス”(登録商標)TC-750(マツモトファインケミカル(株)製、ジ-iso-プロポキシドチタニウムビスエチルアセトアセテート):16.19質量部に変更したこと以外は実施例1と同様の方法により、水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
[実施例7]
前記金属キレート含有シリコーン層形成用組成物-1の(l-1)成分を(l-7)金属キレート化合物:“オルガチックス”(登録商標)ZC-162(マツモトファインケミカル(株)製、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート):18.61質量部に変更したこと以外は実施例1と同様の方法により、水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
[実施例8]
前記金属キレート含有シリコーン層形成用組成物-1の(l-1)成分を(l-8)金属キレート化合物:“オルガチックス”(登録商標)ZC-580(マツモトファインケミカル(株)製、ジ-n-ブトキシドジルコニウムビスエチルアセトアセテート/n-ブタノール=70/30質量%の溶液)から乾燥窒素ブローにより溶剤を除去した化合物:18.91質量部に変更したこと以外は実施例1と同様の方法により、水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
[実施例9]
前記金属キレート含有シリコーン層形成用組成物の(h-1)成分であるDMS-V42の添加量を94.47質量部に変更し、(l-5)成分である“オルガチックス”(登録商標)TC-150から乾燥窒素ブローにより溶剤を除去した化合物の添加量を4.49質量部に変更したこと以外は実施例5と同様の方法により、水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
[実施例10]
前記金属キレート含有シリコーン層形成用組成物の(h-1)成分であるDMS-V42の添加量を93.47質量部に変更し、(l-5)成分である“オルガチックス”(登録商標)TC-150から乾燥窒素ブローにより溶剤を除去した化合物の添加量を5.99質量部に変更したこと以外は実施例5と同様の方法により、水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
[実施例11]
前記金属キレート含有シリコーン層形成用組成物の(h-1)成分であるDMS-V42の添加量を91.47質量部に変更し、(l-5)成分である“オルガチックス”(登録商標)TC-150から乾燥窒素ブローにより溶剤を除去した化合物の添加量を8.98質量部に変更したこと以外は実施例5と同様の方法により、水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
[実施例12]
前記金属キレート含有シリコーン層形成用組成物の(h-1)成分であるDMS-V42の添加量を82.47質量部に変更し、(l-5)成分である“オルガチックス”(登録商標)TC-150から乾燥窒素ブローにより溶剤を除去した化合物の添加量を22.45質量部に変更したこと以外は実施例5と同様の方法により、水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
[実施例13]
前記金属キレート含有シリコーン層形成用組成物の(h-1)成分であるDMS-V42の添加量を77.47質量部に変更し、(l-5)成分である“オルガチックス”(登録商標)TC-150から乾燥窒素ブローにより溶剤を除去した化合物の添加量を29.94質量部に変更したこと以外は実施例5と同様の方法により、水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
[実施例14]
前記金属キレート含有シリコーン層形成用組成物の(h-1)成分であるDMS-V42の添加量を74.47質量部に変更し、(l-5)成分である“オルガチックス”(登録商標)TC-150から乾燥窒素ブローにより溶剤を除去した化合物の添加量を34.43質量部に変更したこと以外は実施例5と同様の方法により、水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
[実施例15]
前記金属キレート含有シリコーン層形成用組成物の(h-1)成分であるDMS-V42の添加量を72.47質量部に変更し、(l-5)成分である“オルガチックス”(登録商標)TC-150から乾燥窒素ブローにより溶剤を除去した化合物の添加量を37.42質量部に変更したこと以外は実施例5と同様の方法により、水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
[実施例16]
前記金属キレート含有シリコーン層の平均厚みを10μmに変更したこと以外は実施例14と同様の方法により、水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
[実施例17]
前記金属キレート含有シリコーン層の平均厚みを5μmに変更したこと以外は実施例14と同様の方法により、水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
[実施例18]
前記金属キレート含有シリコーン層の平均厚みを2.5μmに変更したこと以外は実施例14と同様の方法により、水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
[実施例19]
実施例17に記載の水なし平版印刷版原版の金属キレート含有シリコーン層上に、スリットダイコーターを用いて、下記の金属キレート非含有シリコーン層形成用組成物-1を塗布し、100℃で1分間加熱し、平均厚み0.125μmの金属キレート非含有シリコーン層(第2の層)を設けたこと以外は実施例17と同様の方法により、水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
<金属キレート非含有シリコーン層形成用組成物-1>
容器中に下記(f-2)および(h-2)成分を投入し、(h-2)成分が溶解するまで撹拌混合した。得られた溶液を乾燥窒素で20分間バブリングして溶液中の水分を除去した。塗布直前に(k-2)成分を投入し、30分間撹拌混合することにより、金属キレート非含有シリコーン層形成用組成物-1を得た。
(f-2)イソパラフィン系溶剤:“アイソパー”(登録商標)C(エクソンモービルケミカル社製):900.00質量部
(h-2)分子内に2個以上のシラノール基を有するシロキサン化合物(両末端シラノール-ポリジメチルシロキサン):DMS-S45(GELEST Inc.製、重量平均分子量:110,000、分子内のシラノール基数:2.0個):96.00質量部
(k-2)架橋剤:ビニルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン:4.00質量部。
[実施例20]
前記金属キレート非含有シリコーン層の平均厚みを0.25μmに変更したこと以外は実施例19と同様の方法により、水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
[実施例21]
前記金属キレート非含有シリコーン層の平均厚みを0.5μmに変更したこと以外は実施例19と同様の方法により、水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
[実施例22]
前記金属キレート非含有シリコーン層の平均厚みを1μmに変更したこと以外は実施例19と同様の方法により、水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
[実施例23]
前記金属キレート非含有シリコーン層の平均厚みを2μmに変更したこと以外は実施例19と同様の方法により、水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
[実施例24]
前記金属キレート含有シリコーン層形成用組成物の(l-5)成分を(l-1)AL-A(W):28.46質量部に変更したこと以外は実施例21と同様の方法により、水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
[実施例25]
前記金属キレート含有シリコーン層形成用組成物の(l-5)成分を(l-2)ALCH-TR:36.37質量部に変更したこと以外は実施例21と同様の方法により、水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
[実施例26]
前記金属キレート含有シリコーン層形成用組成物の(l-5)成分を(l-3)ALCH:24.07質量部に変更したこと以外は実施例21と同様の方法により、水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
[実施例27]
前記金属キレート含有シリコーン層形成用組成物の(l-5)成分を(l-4)“オルガチックス”(登録商標)TC-401から乾燥窒素ブローにより溶剤を除去した化合物:38.99質量部に変更したこと以外は実施例21と同様の方法により、水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
[実施例28]
前記金属キレート含有シリコーン層形成用組成物の(l-5)成分を(l-6)“オルガチックス”(登録商標)TC-750:37.24質量部に変更したこと以外は実施例21と同様の方法により、水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
[実施例29]
前記金属キレート含有シリコーン層形成用組成物の(l-5)成分を(l-7)“オルガチックス”(登録商標)ZC-162:42.80質量部に変更したこと以外は実施例21と同様の方法により、水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
[実施例30]
前記金属キレート含有シリコーン層形成用組成物の(l-5)成分を(l-8)“オルガチックス”(登録商標)ZC-580から乾燥窒素ブローにより溶剤を除去した化合物:43.50質量部に変更したこと以外は実施例21と同様の方法により、水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
[実施例31]
前記レーザー露光量を3J/cmに変更したこと以外は実施例21と同様の方法により、水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
[実施例32]
前記レーザー露光量を4J/cmに変更したこと以外は実施例21と同様の方法により、水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
[実施例33]
前記レーザー露光量を6J/cmに変更したこと以外は実施例21と同様の方法により、水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
[実施例34]
前記レーザー露光量を7J/cmに変更したこと以外は実施例21と同様の方法により、水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
[実施例35]
前記レーザー露光量を8J/cmに変更したこと以外は実施例21と同様の方法により、水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
[実施例36]
前記金属キレート含有シリコーン層形成用組成物を下記の金属キレート含有シリコーン層形成用組成物-2に変更したこと以外は実施例21と同様の方法により、水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
<金属キレート含有シリコーン層形成用組成物-2>
容器中に下記(f-1)、(g-1)および(h-3)成分を投入し、(h-3)成分が溶解するまで撹拌混合した。得られた溶液を乾燥窒素で20分間バブリングして溶液中の水分を除去した。塗布直前に(k-2)成分を投入し、30分間撹拌混合した後、直ちに(l-5)成分を投入して10分間撹拌混合することにより、金属キレート含有シリコーン層形成用組成物-2を得た。
(f-1)“エクソール”(登録商標)DSP100/140:240.00質量部
(g-1)トルエン:60.00質量部
(h-3)分子内に2個以上のシラノール基を有するシロキサン化合物(両末端シラノール-ポリジメチルシロキサン):DMS-S42(GELEST Inc.製、重量平均分子量:77,000、分子内のシラノール基数:2.0個):75.99質量部
(k-2)架橋剤:ビニルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン:4.00質量部
(l-5)“オルガチックス”(登録商標)TC-150から乾燥窒素ブローにより溶剤を除去した化合物:34.43質量部。
[実施例37]
波長266nmの固体パルスレーザー:“AONano”(登録商標) 266-3-20―V(Advanced Optowave Corporation製)を用い、水なし平版印刷版原版の金属キレート非含有シリコーン層側から、大気中で露光量:2J/cmにてパターン描画を行ったこと以外は実施例21と同様の方法により、水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
[実施例38]
前記レーザー露光量を3J/cmに変更したこと以外は実施例37と同様の方法により、水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
[実施例39]
前記レーザー露光量を4J/cmに変更したこと以外は実施例37と同様の方法により、水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
[実施例40]
前記レーザー露光量を5J/cmに変更したこと以外は実施例37と同様の方法により、水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
[実施例41]
前記レーザー露光量を6J/cmに変更したこと以外は実施例37と同様の方法により、水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
[実施例42]
前記レーザー露光量を7J/cmに変更したこと以外は実施例37と同様の方法により、水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
[実施例43]
波長266nmの固体パルスレーザーを用い、水なし平版印刷版原版の金属キレート非含有シリコーン層側から、大気中で露光量:4J/cmにてパターン描画を行ったこと以外は実施例36と同様の方法により、水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
[実施例44]
アルミニウム合金製の版胴スリーブの外周面に、円筒スリットダイコーター(東レエンジニアリング(株)製)を用いて、前記プライマー層形成用組成物を塗布し、180℃で10分間加熱することにより、平均厚み10μmの継ぎ目のない連続的なプライマー層を設けた。
次いで、円筒スリットダイコーターを用いて、実施例14で用いた金属キレート含有シリコーン層形成用組成物をプライマー層の外周面に塗布し、100℃で5分間加熱し、平均厚み5μmの継ぎ目のない連続的な金属キレート含有シリコーン層を設けた。
次いで、円筒スリットダイコーターを用いて、前記金属キレート非含有シリコーン層形成用組成物-1を金属キレート含有シリコーン層の外周面に塗布し、100℃で5分間加熱し、平均厚み0.5μmの継ぎ目のない連続的な金属キレート非含有シリコーン層を設けることにより、シームレス水なし平版印刷版原版を得た。
波長355nmの固体パルスレーザーを用い、上記水なし平版印刷版原版の金属キレート非含有シリコーン層側から、大気中で露光量:5J/cmにてパターン描画を行うことにより、シームレス水なし平版印刷版を得た。
[実施例45]
波長266nmの固体パルスレーザーを用い、シームレス水なし平版印刷版原版の金属キレート非含有シリコーン層側から、大気中で露光量:4J/cmにてパターン描画を行ったこと以外は実施例44と同様の方法により、シームレス水なし平版印刷版原版およびシームレス水なし平版印刷版を得た。
[比較例1]
前記金属キレート含有シリコーン層形成用組成物-1の(h-1)成分であるDMS-V42の添加量を97.47質量部に変更し、金属キレート化合物である(l-1)成分を添加しなかったこと以外は実施例1と同様の方法で水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
[比較例2]
前記金属キレート含有シリコーン層形成用組成物-1を下記の金属キレート非含有シリコーン層形成用組成物-2に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
<金属キレート非含有シリコーン層形成用組成物-2>
容器中に下記(f-1)、(g-1)および(h-3)成分を投入し、(h-3)成分が溶解するまで撹拌混合した。得られた溶液を乾燥窒素で20分間バブリングして溶液中の水分を除去した。塗布直前に(k-2)成分を投入し、30分間撹拌混合した後、直ちに(l-5)成分を投入して10分間撹拌混合することにより、金属キレート含有シリコーン層形成用組成物-2を得た。
(f-1)“エクソール”(登録商標)DSP100/140:240.00質量部
(g-1)トルエン:60.00質量部
(h-3)DMS-S42:98.66質量部
(k-2)ビニルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン:4.00質量部
(l-5)“オルガチックス”(登録商標)TC-150から乾燥窒素ブローにより溶剤を除去した化合物:0.50質量部。
[比較例3]
前記金属キレート含有シリコーン層形成用組成物の(h-1)成分であるDMS-V42の添加量を96.13質量部に変更し、(l-5)成分である“オルガチックス”(登録商標)TC-150から乾燥窒素ブローにより溶剤を除去した化合物の添加量を2.00質量部に変更したこと以外は実施例5と同様の方法で水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
[比較例4]
前記金属キレート含有シリコーン層形成用組成物の(h-1)成分であるDMS-V42の添加量を67.47質量部に変更し、(l-5)成分である“オルガチックス”(登録商標)TC-150から乾燥窒素ブローにより溶剤を除去した化合物の添加量を44.91質量部に変更したこと以外は実施例5と同様の方法で水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
[比較例5]
前記金属キレート含有シリコーン層形成用組成物-1の金属キレート成分である(l-1)を(m-1)金属アルコキシド:“オルガチックス”(登録商標)AL-3001(マツモトファインケミカル(株)製、アルミニウムトリ-sec-ブトキシド):9.40質量部に変更したこと以外は実施例1と同様の方法により、水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
[比較例6]
前記金属キレート含有シリコーン層形成用組成物-1の金属キレート成分である(l-1)を(m-2)金属アルコキシド:“オルガチックス”(登録商標)TA-21(マツモトファインケミカル(株)製、チタニウムトリ-n-ブトキシド):12.99質量部に変更したこと以外は実施例1と同様の方法により、水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
[比較例7]
前記金属キレート含有シリコーン層形成用組成物-1の金属キレート成分である(l-1)を(m-3)金属アルコキシド:“オルガチックス”(登録商標)ZA-65(マツモトファインケミカル(株)製、ジルコニウムテトラ-n-ブトキシド/n-ブタノール=87/13質量%の溶液)から乾燥窒素ブローにより溶剤を除去した化合物:14.64質量部に変更したこと以外は実施例1と同様の方法により、水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
[比較例8]
以下の金属キレート非含有シリコーン層形成用組成物-3を作製した。
<金属キレート非含有シリコーン層形成用組成物-3>
容器中に下記(f-3)、(h-4)、(i-2)、(k-3)および(n-1)成分を投入し、成分が均一になるまで撹拌混合した。得られた混合液を高圧バルブ式ホモジナイザー:エコナイザーラボ02(三丸機械工業(株)製)に2回通すことにより、金属キレート非含有シリコーン層形成用組成物-3を得た。
(f-3)2-ブタノン:900.00質量部
(h-4)両末端シラノール-ポリジメチルシロキサン:YF3802(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、重量平均分子量:125,000、分子内のシラノール基数:2.0個):60.00質量部
(i-2)ジブチル錫ジアセテート:0.10質量部
(k-3)メチルトリアセトキシシラン:4.00質量部
(n-1)光触媒粒子:AMT-600(アナタース型光触媒酸化チタン粒子、X線粒径:30nm、テイカ(株)製):30.00質量部。
分散直後の金属キレート非含有シリコーン層形成用組成物であっても、光触媒粒子が速やかに凝集/沈降し、塗膜を形成することができなかった。
[比較例9]
前記金属キレート含有シリコーン層形成用組成物-1を下記の金属キレート非含有シリコーン層形成用組成物-4に変更し、塗布後の加熱条件を120℃で2分間に、また、加熱後の金属キレート非含有シリコーン層の平均厚みを1μmにそれぞれ変更したこと以外は実施例1と同様の方法により、水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
<金属キレート非含有インキ反発性シリコーン層形成用組成物-4>
容器中に下記(f-4)、(g-2)、(h-5)、(i-3)、(k-4)および(n-2)成分を投入し、成分が均一になるまで撹拌混合することにより、金属キレート非含有インキ反発性シリコーン層形成用組成物-4を得た。
(f-4)1,4-ジオキサン:5.00質量部
(g-2)2-プロパノール:5.00質量部
(h-5)両末端カルビノール変性ポリジメチルシロキサン:X-22-160AS(信越化学工業(株)製、重量平均分子量:1,000、分子内のカルビノール基数:2.0個):9.00質量部
(i-3)反応触媒:ジブチル錫ジラウレート:0.05質量部
(k-4)架橋剤:コロネートL(東ソー(株)製、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物、固形分濃度:75質量%(溶剤:酢酸エチル)):1.00質量部
(n-2)光触媒粒子:ST-01(石原産業(株)製、アナタース型光触媒酸化チタン粒子、X線粒径:7nm):1.00質量部。
[比較例10]
比較例1の金属キレート非含有シリコーン層上に、下記の金属キレート非含有シリコーン層形成用組成物-5を塗布し、100℃で80秒間加熱し、平均厚み0.4μmの金属キレート非含有シリコーン層(第2の層)を設けることにより、水なし平版印刷版原版を得た。
<金属キレート非含有シリコーン層形成用組成物-5>
容器中に下記(f-2)、(h-6)、(i-1)および(j-1)成分を投入し、成分が均一になるまで撹拌混合した。得られた溶液を乾燥窒素で20分間バブリングして溶液中の水分を除去した。塗布直前に(k-1)成分を投入し撹拌混合することにより、金属キレート非含有シリコーン層形成用組成物-5を得た。
(f-2)イソパラフィン系溶剤:“アイソパー”(登録商標)C(エクソンモービルケミカル社製):895.0質量部
(h-6)分子内に3個以上のビニル基を有するシロキサン化合物(両末端トリメチルシロキシ-ビニルメチルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー):VDT-954(GELEST Inc.製、重量平均分子量:225,000、ビニル基濃度:4.29質量%、分子内のビニル基数:357.2個):70.0質量部
(i-1)XC94-C4326:3.5質量部
(j-1)2-メチル-3-ブチン-2-オール:1.5質量部
(k-1)HMS-993:30.0質量部。
得られた水なし平版印刷版原版の第2の層側から、波長193nmのArFエキシマパルスレーザー:エキシマレーザーMLIシリーズ(Mlase社製)を用いて、大気中で露光量:75mJ/cm、パルス繰り返し周波数:10Hz、の条件でレーザー露光を行い、レーザー露光部の第2層と第1の層の上部とをアブレーションすることにより、水なし平版印刷版を得た。
[比較例11]
前記レーザー露光量を150mJ/cmに変更したこと以外は比較例10と同様の方法により、水なし平版印刷版原版および水なし平版印刷版を得た。
実施例1~45および比較例1~11について、各層における元素濃度を表1~3に示す。また、評価結果を表4~6に示す。
Figure 2023112761000001
Figure 2023112761000002
Figure 2023112761000003
Figure 2023112761000004
Figure 2023112761000005
Figure 2023112761000006

Claims (22)

  1. 支持体上に金属キレート含有シリコーン層を有し、X線光電分光法により測定した当該金属キレート含有シリコーン層中における金属キレート由来の金属濃度が0.2~1.8atom%である、水なし平版印刷版原版。
  2. 前記金属キレートとしてβ-ジケトン化合物および/またはβ-ケトエステル化合物と金属とから形成されたキレート環を含む、請求項1に記載の水なし平版印刷版原版。
  3. 前記β-ジケトン化合物としてアセチルアセトンを含む、請求項2に記載の水なし平版印刷版原版。
  4. 前記β-ケトエステル化合物としてアセト酢酸アルキルエステルを含み、当該アルキルの炭素数が2~8である、請求項2に記載の水なし平版印刷版原版。
  5. 前記金属としてアルミニウム、チタニウムおよび/またはジルコニウムを含む、請求項1~4のいずれかに記載の水なし平版印刷版原版。
  6. X線光電分光法により測定した前記金属キレート含有シリコーン層における珪素濃度が15.5~24.5atom%、酸素濃度が25.0~28.5atom%、炭素濃度が50.0~57.0atom%である、請求項1~5のいずれかに記載の水なし平版印刷版原版。
  7. 前記金属キレート含有シリコーン層の平均厚みが5μm以上である、請求項1~6のいずれかに記載の水なし平版印刷版原版。
  8. 前記金属キレート含有シリコーン層上に、さらに金属キレート非含有シリコーン層を有する、請求項1~7のいずれかに記載の水なし平版印刷版原版。
  9. X線光電分光法により測定した前記金属キレート非含有シリコーン層における珪素濃度が22~26atom%、酸素濃度が24~28atom%、炭素濃度が48~52atom%である、請求項8に記載の水なし平版印刷版原版。
  10. 前記金属キレート非含有シリコーン層の平均厚みが0.1μm以上である、請求項8または9に記載の水なし平版印刷版原版。
  11. 前記支持体が円筒状である、請求項1~10のいずれかに記載の水なし平版印刷版原版。
  12. 請求項1~11のいずれかに記載の水なし平版印刷版原版の金属キレート含有シリコーン層側または金属キレート非含有シリコーン層側から活性エネルギー線により露光して、インキ着肉部を形成する、水なし平版印刷版の製造方法。
  13. 前記活性エネルギー線のピーク波長が200~600nmである、請求項12に記載の水なし平版印刷版の製造方法。
  14. 前記活性エネルギー線がパルスレーザーである、請求項12または13に記載の水なし平版印刷版の製造方法。
  15. 前記パルスレーザーの露光量が2~8J/cmである、請求項14に記載の水なし平版印刷版の製造方法。
  16. シラノール基またはビニル基を分子中に2個以上有するポリシロキサンと、当該シラノール基または当該ビニル基と反応性を有する官能基を分子中に3個以上有する架橋剤と、キレート環を分子中に1個以上有する金属キレート化合物を含み、当該金属キレート化合物の含有率が全固形分中4~60質量%である、金属キレート含有シリコーン層形成用組成物。
  17. 前記キレート環としてβ-ジケトン化合物および/またはβ-ケトエステル化合物と金属とから形成されたキレート環を含む、請求項16に記載の金属キレート含有シリコーン層形成用組成物。
  18. 前記β-ジケトン化合物としてアセチルアセトンを含む、請求項17に記載の金属キレート含有シリコーン層形成用組成物。
  19. 前記β-ケトエステル化合物としてアセト酢酸アルキルエステルを含み、当該アルキルの炭素数が2~8である、請求項17に記載の金属キレート含有シリコーン層形成用組成物。
  20. 前記金属としてアルミニウム、チタニウムおよび/またはジルコニウムを含む、請求項16~19のいずれかに記載の金属キレート含有シリコーン層形成用組成物。
  21. 少なくとも
    (1)支持体上に、請求項16~20のいずれかに記載の金属キレート含有シリコーン層形成用組成物を連続的に塗布する工程、および、
    (2)工程(1)により得られる塗布膜を硬化させて金属キレート含有シリコーン層を形成する工程
    を有する、水なし平版印刷版原版の製造方法。
  22. 前記工程(2)の前または後に、
    (3)工程(1)により得られる塗布膜または工程(2)により得られる金属キレート含有シリコーン層上に、さらに金属キレート非含有シリコーン層形成用組成物を連続的に塗布する工程、および、
    (4)工程(3)により得られる塗布膜を硬化させて金属キレート非含有シリコーン層を形成する工程
    を有する、請求項21に記載の水なし平版印刷版原版の製造方法。
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