JP2023111466A - 機上現像型平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び、平版印刷方法 - Google Patents

機上現像型平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び、平版印刷方法 Download PDF

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Abstract

【課題】露光後の経時に伴う視認性低下の抑制性に優れる機上現像型平版印刷版原版の提供。【解決手段】支持体、画像記録層、及び、発色層をこの順に有し、上記発色層が、酸発色剤と、重合開始剤と、赤外線吸収剤と、ガラス転移温度が50℃以上であるか又はclogPが0.5以上である構成単位を有するポリマーAとを含む機上現像型平版印刷版原版、並びに、上記機上現像型平版印刷版原版を用いた平版印刷版の作製方法又は平版印刷方法。【選択図】図4

Description

本開示は、機上現像型平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び、平版印刷方法に関する。
一般に、平版印刷版は、印刷過程でインキを受容する親油性の画像部と、湿し水を受容する親水性の非画像部とからなる。平版印刷は、水と油性インキが互いに反発する性質を利用して、平版印刷版の親油性の画像部をインキ受容部、親水性の非画像部を湿し水受容部(インキ非受容部)として、平版印刷版の表面にインキの付着性の差異を生じさせ、画像部のみにインキを着肉させた後、紙などの被印刷体にインキを転写して印刷する方法である。
この平版印刷版を作製するため、従来、親水性の支持体上に親油性の感光性樹脂層(画像記録層)を設けてなる平版印刷版原版(PS版)が広く用いられている。通常は、平版印刷版原版を、リスフィルムなどの原画を通した露光を行った後、画像記録層の画像部となる部分を残存させ、それ以外の不要な画像記録層をアルカリ性現像液又は有機溶剤によって溶解除去し、親水性の支持体表面を露出させて非画像部を形成する方法により製版を行って、平版印刷版を得ている。
また、地球環境への関心の高まりから、現像処理などの湿式処理に伴う廃液に関する環境課題がクローズアップされている。
上記の環境課題に対して、現像あるいは製版の簡易化、無処理化が指向されている。簡易な作製方法の一つとしては、「機上現像」と呼ばれる方法が行われている。すなわち、平版印刷版原版を露光後、従来の現像は行わず、そのまま印刷機に装着して、画像記録層の不要部分の除去を通常の印刷工程の初期段階で行う方法である。
本開示において、このような機上現像に用いることができる平版印刷版原版を、「機上現像型平版印刷版原版」という。
従来の平版印刷版原版又はその積層体としては、例えば、特許文献1~4に記載されたものが挙げられる。
特許文献1には、支持体上に画像記録層を有し、上記画像記録層が、赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物、及び、熱可塑性樹脂粒子を含む、平版印刷版原版が記載されている。
特許文献2には、基材上に少なくとも画像形成層を有する印刷版材料において、上記画像形成層又はその他の構成層に下記の色素前駆体Aと光熱変換素材とを含有することを特徴とする印刷版材料が記載されている。
色素前駆体A:粒子形態の固体であり、上記色素前駆体Aの粒子径が0.05~2μmの範囲であり、かつ、溶融前の状態と加熱溶融した後に再凝固した状態との色が異なる。
特許文献3には、平版印刷版原版と合紙との積層体であって、上記平版印刷版原版が、少なくともいずれかの層に酸発色剤を含む機上現像型平版印刷版原版であり、上記合紙のpHが、5以上である積層体が記載されている。
特許文献4には、アルミニウム支持体、及び、上記アルミニウム支持体上に画像記録層を有し、上記画像記録層が、赤外線吸収剤、重合開始剤、分子量2,500未満の重合性化合物、及び、分子量2,500以上であり、かつ重合性基を有するポリマーを含み、上記重合性化合物が、7官能以上の重合性化合物を含む機上現像型平版印刷版原版が記載されている。
特開2020-93518号公報 特開2010-64294号公報 国際公開第2021-241693号 国際公開第2020-262695号
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、露光後の経時に伴う視認性低下の抑制性に優れる機上現像型平版印刷版原版を提供することである。
本開示の他の実施形態が解決しようとする課題は、上記機上現像型平版印刷版原版を用いた平版印刷版の作製方法、又は、平版印刷方法を提供することである。
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 支持体、画像記録層、及び、発色層をこの順に有し、上記発色層が、酸発色剤と、重合開始剤と、赤外線吸収剤と、ガラス転移温度が50℃以上であるか又はclogPが0.5以上である構成単位を有するポリマーAとを含む機上現像型平版印刷版原版。
<2> 上記発色層と上記画像記録層との間に、保護層を更に有する<1>に記載の機上現像型平版印刷版原版。
<3> 上記ポリマーAの含有量が、上記発色層の全質量に対し、10質量%以上である<1>又は<2>に記載の機上現像型平版印刷版原版。
<4> 上記ポリマーAの含有量が、上記発色層の全質量に対し、30質量%以上である<3>に記載の機上現像型平版印刷版原版。
<5> 上記ポリマーAが、ガラス転移温度が50℃以上である(メタ)アクリレート化合物のホモポリマー、又は、ポリビニルブチラールである<1>~<4>のいずれか1つに記載の機上現像型平版印刷版原版。
<6> 上記ポリマーAが、ガラス転移温度が50℃以上であり、かつメタクリレート化合物のホモポリマー、又は、ポリビニルブチラールである<1>~<5>のいずれか1つに記載の機上現像型平版印刷版原版。
<7> 上記ポリマーAが、ポリメチルメタクリレート、ポリベンジルメタクリレート、ポリイソブチルメタクリレート、又は、ポリビニルブチラールである<1>~<6>のいずれか1つに記載の機上現像型平版印刷版原版。
<8> 上記酸発色剤が、ロイコ色素である<1>~<7>のいずれか1つに記載の機上現像型平版印刷版原版。
<9> 上記画像記録層が、赤外線吸収剤、重合性化合物、及び、重合開始剤を含む<1>~<8>のいずれか1つに記載の機上現像型平版印刷版原版。
<10> 上記画像記録層における上記重合開始剤が、ボレート化合物を含む<9>に記載の機上現像型平版印刷版原版。
<11> 上記発色層における上記重合開始剤が、ボレート化合物を含む<1>~<10>に記載の機上現像型平版印刷版原版。
<12> <1>~<11>のいずれか1つに記載の機上現像型平版印刷版原版を、画像様に露光する工程と、印刷機上で印刷インキ及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して非画像部の画像記録層を除去する工程と、を含む平版印刷版の作製方法。
<13> <1>~<11>のいずれか1つに記載の機上現像型平版印刷版原版を、画像様に露光する工程と、印刷機上で印刷インキ及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して非画像部の画像記録層を除去し平版印刷版を作製する工程と、得られた平版印刷版により印刷する工程と、を含む平版印刷方法。
本開示の一実施形態によれば、露光後の経時に伴う視認性低下の抑制性に優れる機上現像型平版印刷版原版を提供することができる。
また、本開示の他の実施形態によれば、上記機上現像型平版印刷版原版を用いた平版印刷版の作製方法又は平版印刷版の印刷方法を提供することができる。
陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の製造方法における電気化学的粗面化処理に用いられる交番波形電流波形図の一例を示すグラフである。 陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の製造方法における交流を用いた電気化学的粗面化処理におけるラジアル型セルの一例を示す側面図である。 陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の製造方法における機械的粗面化処理に用いられるブラシグレイニングの工程の概念を示す側面図である。 陽極酸化皮膜を有するアルミニウム支持体の製造方法における陽極酸化処理に用いられる陽極酸化処理装置の概略図である。
以下において、本開示の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、数値範囲を示す「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
また、本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの両方を包含する概念で用いられる語であり、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイルの両方を包含する概念として用いられる語である。
また、本明細書中の「工程」の用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば本用語に含まれる。 また、本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
特に限定しない限りにおいて、本開示において組成物中の各成分、又は、ポリマー中の各構成単位は、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上を併用してもよいものとする。
更に、本開示において組成物中の各成分、又は、ポリマー中の各構成単位の量は、組成物中に各成分、又は、ポリマー中の各構成単位に該当する物質又は構成単位が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する該当する複数の物質、又は、ポリマー中に存在する該当する複数の各構成単位の合計量を意味する。
更に、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
また、本開示における重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、特に断りのない限り、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析装置により、溶媒THF(テトラヒドロフラン)、示差屈折計により検出し、標準物質としてポリスチレンを用いて換算した分子量である。
本開示において、「平版印刷版原版」の用語は、平版印刷版原版だけでなく、捨て版原版を包含する。また、「平版印刷版」の用語は、平版印刷版原版を、必要により、露光、現像などの操作を経て作製された平版印刷版だけでなく、捨て版を包含する。捨て版原版の場合には、必ずしも、露光、現像の操作は必要ない。なお、捨て版とは、例えばカラーの新聞印刷において一部の紙面を単色又は2色で印刷を行う場合に、使用しない版胴に取り付けるための平版印刷版原版である。
また、本開示において、化学構造式における「*」は、他の構造との結合位置を表す。
以下、本開示を詳細に説明する。
(機上現像型平版印刷版原版)
本開示に係る機上現像型平版印刷版原版(単に「平版印刷版原版」ともいう。)は、支持体、画像記録層、及び、発色層をこの順に有し、上記発色層が、酸発色剤と、重合開始剤と、赤外線吸収剤と、ガラス転移温度が50℃以上であるか又はclogPが0.5以上である構成単位を有するポリマーAとを含む。
また、本開示に係る機上現像型平版印刷版原版は、ネガ型平版印刷版原版であることが好ましい。
本開示に係る機上現像型平版印刷版原版は、画像記録層上に発色層を有し、上記発色層が、酸発色剤と、重合開始剤と、赤外線吸収剤と、及び、ガラス転移温度が50℃以上であるか又はclogPが0.5以上である構成単位を有するポリマーAとを含むことにより、露光により発色した酸発色剤において、露光により生じる酸の拡散を上記ポリマーAが抑制し、発色した上記酸発色剤と発色していない上記酸発色剤との平衡を、発色した上記酸発色剤側に傾いたまま維持させ、露光後の経時に伴う視認性低下の抑制性(以下、「経時退色抑制性」ともいう。)に優れる機上現像型平版印刷版原版を提供する。
以下、本開示に係る平版印刷版原版における各構成要件の詳細について説明する。
<発色層>
本開示に係る機上現像型平版印刷版原版は、画像記録層上に発色層を有し、上記発色層が、酸発色剤と、重合開始剤と、赤外線吸収剤と、ガラス転移温度が50℃以上であるか又はclogPが0.5以上である構成単位を有するポリマーAとを含む。
〔ポリマーA〕
上記発色層は、ガラス転移温度が50℃以上であるか又はclogPが0.5以上である構成単位を有するポリマーAを含む。
ポリマーAは、経時退色抑制性の観点から、clogPが0.5以上である構成単位を有することが好ましく、ガラス転移温度が50℃以上であり、かつclogPが0.5以上である構成単位を有するであることが好ましい。
ポリマーAのガラス転移温度は、経時退色抑制性の観点から、50℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましく、70℃以上であることが更に好ましい。また、上限値としては、特に制限はないが、120℃以下であることが好ましい。
本開示において、ポリマーのガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定することができる。
具体的な測定方法は、JIS K 7121(1987年)又はJIS K 6240(2011年)に記載の方法に順じて行う。本明細書におけるガラス転移温度は、補外ガラス転移開始温度(以下、Tigと称することがある)を用いている。
ガラス転移温度の測定方法をより具体的に説明する。
ガラス転移温度を求める場合、予想されるポリマーのTgより約50℃低い温度にて装置が安定するまで保持した後、加熱速度:20℃/分で、ガラス転移が終了した温度よりも約30℃高い温度まで加熱し、示差熱分析(DTA)曲線又はDSC曲線を作成する。
補外ガラス転移開始温度(Tig)、すなわち、本明細書におけるガラス転移温度Tgは、DTA曲線又はDSC曲線における低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になる点で引いた接線との交点の温度として求める。
ポリマーAは、経時退色抑制性の観点から、clogPが0.5以上である構成単位を有することが好ましく、clogPが1.0以上である構成単位を有することがより好ましく、clogPが2.0以上である構成単位を有することが更に好ましい。
また、ポリマーAは、経時退色抑制性の観点から、clogPが0.5以上である構成単位を50質量%以上有することが好ましく、clogPが0.5以上である構成単位を80質量%以上有することがより好ましく、clogPが0.5以上である構成単位を90質量%以上有することが更に好ましく、clogPが0.5以上である構成単位を95質量%以上有することが特に好ましい。
更に、ポリマーAは、経時退色抑制性の観点から、clogPが0.5以上である構成単位を形成するモノマーの単独重合体(ホモポリマー)であることも好ましい。
clogP値とは、1-オクタノールと水との分配係数Pの常用対数logPを計算によって求めた値である。clogP値の計算に用いる方法やソフトウェアについては公知の物を用いることができるが、特に断らない限り、本開示ではCambridge soft社のChemBioDraw Ultra 12.0に組み込まれたClogPプログラムを用いることとする。
上記ポリマーAとしては、経時退色抑制性の観点から、ガラス転移温度が50℃以上である(メタ)アクリレート化合物のホモポリマー、又は、ポリビニルブチラールであることが好ましく、ガラス転移温度が50℃以上であり、かつメタクリレート化合物のホモポリマー、又は、ポリビニルブチラールであることがより好ましく、ポリメチルメタクリレート、ポリベンジルメタクリレート、ポリイソブチルメタクリレート、又は、ポリビニルブチラールであることが特に好ましい。
また、clogPが0.5以上である構成単位を有するポリマーとしては、上述した以外に、例えば、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリメチルアクリレート、ポリ(n-ブチルアクリレート)等も挙げられる。
ポリマーAは、1種単独で用いてもよいし、2種類以上の成分を組み合わせて使用することもできる。
ポリマーAの含有量は、経時退色抑制性の観点から、発色層の全質量に対し、10質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、30質量%~70質量%であることが更に好ましく、45質量%~65質量%であることが特に好ましい。
〔酸発色剤〕
上記発色層は、視認性の観点から、酸発色剤を含む。
本開示で用いられる「発色層」とは、光や酸等の刺激により発色又は消色し層の色を変化させる性質を有する層を意味し、また、「酸発色剤」とは、電子受容性化合物(例えば酸等のプロトン)を受容した状態で加熱することにより、発色又は消色し発色層の色を変化させる性質を有する化合物を意味する。酸発色剤としては、特に、ラクトン、ラクタム、サルトン、スピロピラン、エステル、アミド等の部分骨格を有し、電子受容性化合物と接触した時に、速やかにこれらの部分骨格が開環若しくは開裂する無色の化合物が好ましい。
酸発色剤の具体例としては、国際公開第2020/158138号に記載のものが好適に挙げられる。
中でも、本開示に用いられる酸発色剤は、発色性の観点から、スピロピラン化合物、スピロオキサジン化合物、スピロラクトン化合物、及び、スピロラクタム化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
発色後の色素の色相としては、可視性の観点から、緑、青又は黒であることが好ましい。
また、上記酸発色剤は、視認性、及び、発色性の観点から、ロイコ色素であることが好ましい。
上記ロイコ色素としては、ロイコ構造を有する色素であれば、特に制限はないが、スピロ構造を有することが好ましく、スピロラクトン環構造を有することがより好ましい。
また、上記ロイコ色素としては、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素であることが好ましい。
上記酸発色剤は、視認性、UV耐刷性、及び、経時安定性の観点から、芳香環に直接結合した電子供与基を2つ以上有することが好ましい。
上記電子供与性基としては、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアルキルモノアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、又は、アルキル基であることが好ましく、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアルキルモノアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アルコキシ基、又は、アリーロキシ基であることがより好ましく、モノアルキルモノアリールアミノ基、又は、ジアリールアミノ基であることが更に好ましく、モノアルキルモノアリールアミノ基であることが特に好ましい。
また、上記酸発色剤としては、視認性、UV耐刷性、及び、経時安定性の観点から、キサンテン構造を有することが好ましい。
更に、上記酸発色剤としては、視認性、UV耐刷性、及び、経時安定性の観点から、下記式(Z-1)又は式(Z-2)で表される化合物を含むことが好ましく、下記式(Z-1)で表される化合物を含むことがより好ましい。
式(Z-1)及び式(Z-2)中、EDGはそれぞれ独立に、電子供与性基を表し、XはO又はNRを示し、Rは水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、Y及びYはそれぞれ独立に、CH又はNを表し、Raは、水素原子、アルキル基又はアルコキシ基を表す。
式(Z-1)及び式(Z-2)のEDGにおける電子供与性基としては、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアルキルモノアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、又は、アルキル基であることが好ましく、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアルキルモノアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アルコキシ基、又は、アリーロキシ基であることがより好ましく、モノアルキルモノアリールアミノ基、又は、ジアリールアミノ基であることが更に好ましく、モノアルキルモノアリールアミノ基であることが特に好ましい。
更にまた、上記酸発色剤としては、視認性、UV耐刷性、及び、経時安定性の観点から、下記式(Z-3)又は式(Z-4)で表される化合物を含むことがより好ましく、下記式(Z-3)で表される化合物を含むことが特に好ましい。
式(Z-3)及び式(Z-4)中、Raは、水素原子、アルキル基又はアルコキシ基を表し、Rb~Rbはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、RbとRb、RbとRbは環を形成してもよく、Y及びYはそれぞれ独立に、CH又はNを表す。
式(Z-3)及び式(Z-4)におけるRb及びRbはそれぞれ独立に、視認性、UV耐刷性、及び、経時安定性の観点から、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、アリール基であることがより好ましい。
式(Z-3)及び式(Z-4)におけるRb及びRbはそれぞれ独立に、視認性、UV耐刷性、及び、経時安定性の観点から、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましい。
式(Z-4)におけるRaはそれぞれ独立に、視認性、UV耐刷性、及び、経時安定性の観点から、水素原子又はアルコキシ基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
また、式(Z-3)及び式(Z-4)において、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、Y及びYがCであることが好ましい。
式(Z-1)~式(Z-4)におけるアルキル基は、直鎖であっても、分岐を有していても、環構造を有していてもよい。
また、式(Z-1)~式(Z-4)におけるアルキル基の炭素数は、1~20であることが好ましく、1~8であることがより好ましく、1~4であることが更に好ましく、1又は2であることが特に好ましい。
式(Z-1)~式(Z-4)におけるアリール基の炭素数は、6~20であることが好ましく、6~10であることがより好ましく、6~8であることが特に好ましい。
また、式(Z-1)~式(Z-4)におけるアルキル基、アリール基等の各基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアルキルモノアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、シアノ基等が挙げられる。また、これら置換基は、更にこれら置換基により置換されていてもよい。
また、酸発色剤としては、視認性、及び、発色性の観点から、下記式(Z-5)で表される化合物を含むことが好ましい。
式(Z-5)中、ERGはそれぞれ独立に、電子供与性基を表し、n11は、1~5の整数を表し、X~Xはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又はジアルキルアニリノ基を表し、Y及びYはそれぞれ独立に、C又はNを表し、YがNである場合は、Xは存在せず、YがNである場合は、Xは存在せず、Rb及びRbはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
式(Z-5)のERGにおける電子供与性基としては、視認性、及び、発色性の観点から、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロアリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアルキルモノアリールアミノ基、モノアルキルモノヘテロアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、ジヘテロアリールアミノ基、モノアリールモノヘテロアリールアミノ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ヘテロアリーロキシ基、又は、アルキル基であることが好ましく、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロアリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアルキルモノアリールアミノ基、モノアルキルモノヘテロアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、ジヘテロアリールアミノ基、モノアリールモノヘテロアリールアミノ基、アルコキシ基、又は、アリーロキシ基であることがより好ましく、モノアルキルモノアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、ジヘテロアリールアミノ基又はモノアリールモノヘテロアリールアミノ基であることが更に好ましく、モノアルキルモノアリールアミノ基であることが特に好ましい。
また、上記ERGにおける電子供与性基としては、視認性、及び、発色性の観点から、少なくとも1つのオルト位に置換基を有するアリール基又は少なくとも1つのオルト位に置換基を有するヘテロアリール基を有する二置換アミノ基であることが好ましく、少なくとも1つのオルト位に置換基を有し、かつパラ位に電子供与性基を有するフェニル基を有する二置換アミノ基であることがより好ましく、少なくとも1つのオルト位に置換基を有し、かつパラ位に電子供与性基を有するフェニル基とアリール基又はヘテロアリール基とを有するアミノ基であることが更に好ましく、少なくとも1つのオルト位に置換基を有し、かつパラ位に電子供与性基を有するフェニル基と電子供与性基を有するアリール基又は電子供与性基を有するヘテロアリール基とを有するアミノ基であることが特に好ましい。
なお、本開示において、フェニル基以外のアリール基又はヘテロアリール基におけるオルト位は、アリール基又はヘテロアリール基の他の構造との結合位置を1位とした場合の上記1位の隣の結合位置(例えば、2位等)を言うものとする。
更に、上記アリール基又はヘテロアリール基が有する電子供与性基としては、視認性、及び、発色性の観点から、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロアリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアルキルモノアリールアミノ基、モノアルキルモノヘテロアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、ジヘテロアリールアミノ基、モノアリールモノヘテロアリールアミノ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ヘテロアリーロキシ基、又は、アルキル基であることが好ましく、アルコキシ基、アリーロキシ基、ヘテロアリーロキシ基、又は、アルキル基であることがより好ましく、アルコキシ基であることが特に好ましい。
式(Z-5)におけるRbは、視認性、及び、発色性の観点から、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましい。
式(Z-5)におけるRbは、視認性、及び、発色性の観点から、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
式(Z-5)におけるY及びYは、視認性、及び、発色性の観点から、少なくとも1方がCであることが好ましく、Y及びYの両方がCであることがより好ましい。
式(Z-5)におけるX~Xはそれぞれ独立に、視認性、及び、発色性の観点から、水素原子、又は、塩素原子であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
式(Z-5)におけるn11は、1~3の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましい。
好適に用いられる上記ロイコ色素としては、以下の化合物が挙げられる。なお、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Octはオクチル基を表し、Phはフェニル基を表す。
酸発色剤としては上市されている製品を使用することも可能であり、例えば、クリスタルバイオレットラクトン(東京化成工業(株)製)等が挙げられる。
これらの酸発色剤は、1種単独で用いてもよいし、2種類以上の成分を組み合わせて使用することもできる。
酸発色剤の含有量は、発色性、視認性、及び、経時退色抑制性の観点から、発色層の全質量に対し、0.5質量%~30質量%であることが好ましく、1質量%~25質量%であることがより好ましく、5質量%~20質量%であることが特に好ましい。
〔重合開始剤〕
本開示における発色層は、重合開始剤を含む。
また、重合開始剤としては、発色性、視認性、及び、経時退色抑制性の観点から、電子供与型重合開始剤を含むことが好ましく、電子受容型重合開始剤、及び、電子供与型重合開始剤を含むことがより好ましい。
-電子受容型重合開始剤-
上記発色層は、発色性、視認性、及び、経時退色抑制性の観点から、重合開始剤として、電子受容型重合開始剤を含むことが好ましい。
電子受容型重合開始剤は、赤外線露光により赤外線吸収剤の電子が励起した際に、分子間電子移動で一電子を受容することにより、ラジカル等の重合開始種を発生する化合物である。
本開示に用いられる電子受容型重合開始剤は、光、熱あるいはその両方のエネルギーによりラジカルやカチオン等の重合開始種を発生する化合物であって、公知の熱重合開始剤、結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物、光重合開始剤などを適宜選択して用いることができる。
電子受容型重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が好ましく、オニウム塩化合物がより好ましい。
また、電子受容型重合開始剤としては、赤外線感光性重合開始剤であることが好ましい。
電子受容型ラジカル重合開始剤としては、例えば、(a)有機ハロゲン化物、(b)カルボニル化合物、(c)アゾ化合物、(d)有機過酸化物、(e)メタロセン化合物、(f)アジド化合物、(g)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(i)ジスルホン化合物、(j)オキシムエステル化合物、(k)オニウム塩化合物が挙げられる。
(a)有機ハロゲン化物としては、例えば、特開2008-195018号公報の段落0022~0023に記載の化合物が好ましい。
(b)カルボニル化合物としては、例えば、特開2008-195018号公報の段落0024に記載の化合物が好ましい。
(c)アゾ化合物としては、例えば、特開平8-108621号公報に記載のアゾ化合物等を使用することができる。
(d)有機過酸化物としては、例えば、特開2008-195018号公報の段落0025に記載の化合物が好ましい。
(e)メタロセン化合物としては、例えば、特開2008-195018号公報の段落0026に記載の化合物が好ましい。
(f)アジド化合物としては、例えば、2,6-ビス(4-アジドベンジリデン)-4-メチルシクロヘキサノン等の化合物を挙げることができる。
(g)ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、例えば、特開2008-195018号公報の段落0027に記載の化合物が好ましい。
(i)ジスルホン化合物としては、例えば、特開昭61-166544号、特開2002-328465号の各公報に記載の化合物が挙げられる。
(j)オキシムエステル化合物としては、例えば、特開2008-195018号公報の段落0028~0030に記載の化合物が好ましい。
上記電子受容型重合開始剤の中でも好ましいものとして、硬化性の観点から、オキシムエステル化合物及びオニウム塩化合物が挙げられる。中でも、耐刷性の観点から、オニウム塩化合物が好ましく、ヨードニウム塩化合物、スルホニウム塩化合物又はアジニウム塩化合物がより好ましく、ヨードニウム塩化合物又はスルホニウム塩化合物が更に好ましく、ヨードニウム塩化合物が特に好ましい。
これら化合物の具体例を以下に示すが、本開示はこれに限定されるものではない。
ヨードニウム塩化合物の例としては、ジアリールヨードニウム塩化合物が好ましく、特に電子供与性基、例えば、アルキル基又はアルコキシル基で置換されたジフェニルヨードニウム塩化合物がより好ましく、また、非対称のジフェニルヨードニウム塩化合物が好ましい。具体例としては、ジフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4-メトキシフェニル-4-(2-メチルプロピル)フェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4-(2-メチルプロピル)フェニル-p-トリルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4-ヘキシルオキシフェニル-2,4,6-トリメトキシフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4-ヘキシルオキシフェニル-2,4-ジエトキシフェニルヨードニウム=テトラフルオロボラート、4-オクチルオキシフェニル-2,4,6-トリメトキシフェニルヨードニウム=1-ペルフルオロブタンスルホナート、4-オクチルオキシフェニル-2,4,6-トリメトキシフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウム=ヘキサフルオロホスファートが挙げられる。
スルホニウム塩化合物の例としては、トリアリールスルホニウム塩化合物が好ましく、特に電子求引性基、例えば、芳香環上の基の少なくとも一部がハロゲン原子で置換されたトリアリールスルホニウム塩化合物が好ましく、芳香環上のハロゲン原子の総置換数が4以上であるトリアリールスルホニウム塩化合物が更に好ましい。具体例としては、トリフェニルスルホニウム=ヘキサフルオロホスファート、トリフェニルスルホニウム=ベンゾイルホルマート、ビス(4-クロロフェニル)フェニルスルホニウム=ベンゾイルホルマート、ビス(4-クロロフェニル)-4-メチルフェニルスルホニウム=テトラフルオロボラート、トリス(4-クロロフェニル)スルホニウム=3,5-ビス(メトキシカルボニル)ベンゼンスルホナート、トリス(4-クロロフェニル)スルホニウム=ヘキサフルオロホスファート、トリス(2,4-ジクロロフェニル)スルホニウム=ヘキサフルオロホスファートが挙げられる。
また、ヨードニウム塩化合物及びスルホニウム塩化合物の対アニオンとしては、スルホンアミドアニオン又はスルホンイミドアニオンが好ましく、スルホンイミドアニオンがより好ましい。
スルホンアミドアニオンとしては、アリールスルホンアミドアニオンが好ましい。
また、スルホンイミドアニオンとしては、ビスアリールスルホンイミドアニオンが好ましい。
スルホンアミドアニオン又はスルホンイミドアニオンの具体例としては、国際公開第2020/262692号に記載のものが好適に挙げられる。
また、上記電子受容型重合開始剤は、発色性、視認性、及び、経時退色抑制性の観点から、下記式(II)で表される化合物を含んでいてもよい。
式(II)中、Xはハロゲン原子を表し、Rはアリール基を表す。
式(II)におけるXとしては、具体的には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。これらのうち、塩素原子又は臭素原子は、感度に優れるため好ましく、臭素原子が特に好ましい。
また、式(II)において、Rとしては、感度と保存安定性とのバランスに優れる観点から、アミド基で置換されているアリール基が好ましい。
上記式(II)で表される電子受容型重合開始剤の具体例としては、国際公開第2020/262692号に記載のものを好適に用いることができる。
電子受容型重合開始剤の最低空軌道(LUMO)は、感度の向上及び版飛びを発生しにくくする観点から、-3.00eV以下であることが好ましく、-3.02eV以下であることがより好ましい。
また、下限としては、-3.80eV以上であることが好ましく、-3.60eV以上であることがより好ましい。
電子受容型重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
電子受容型重合開始剤の含有量は、発色層の全質量に対して、1質量%~50質量%であることが好ましく、5質量%~40質量%であることがより好ましく、10質量%~30質量%であることが特に好ましい。
-電子供与型重合開始剤-
重合開始剤は、発色性、視認性、及び、経時退色抑制性の観点から、電子供与型重合開始剤を含むことが好ましく、電子供与型重合開始剤及び上記電子供与型重合開始剤の両方を含むことがより好ましい。
電子供与型重合開始剤としては、例えば、以下の5種類が挙げられる。
(i)アルキル又はアリールアート錯体:酸化的に炭素-ヘテロ結合が解裂し、活性ラジカルを生成すると考えられる。具体的には、ボレート化合物等が挙げられる。
(ii)アミノ酢酸化合物:酸化により窒素に隣接した炭素上のC-X結合が解裂し、活性ラジカルを生成するものと考えられる。Xとしては、水素原子、カルボキシ基、トリメチルシリル基又はベンジル基が好ましい。具体的には、N-フェニルグリシン類(フェニル基に置換基を有していてもよい。)、N-フェニルイミノジ酢酸(フェニル基に置換基を有していてもよい。)等が挙げられる。
(iii)含硫黄化合物:上述のアミノ酢酸化合物の窒素原子を硫黄原子に置き換えたものが、同様の作用により活性ラジカルを生成し得る。具体的には、フェニルチオ酢酸(フェニル基に置換基を有していてもよい。)等が挙げられる。
(iv)含錫化合物:上述のアミノ酢酸化合物の窒素原子を錫原子に置き換えたものが、同様の作用により活性ラジカルを生成し得る。
(v)スルフィン酸塩類:酸化により活性ラジカルを生成し得る。具体的は、アリールスルフィン酸ナトリウム等が挙げられる。
これら電子供与型重合開始剤の中でも、発色層は、ボレート化合物を含有することが好ましい。ボレート化合物としては、テトラアリールボレート化合物又はモノアルキルトリアリールボレート化合物が好ましく、化合物の安定性の観点から、テトラアリールボレート化合物がより好ましく、テトラフェニルボレート化合物が特に好ましい。
ボレート化合物が有する対カチオンとしては、特に制限はないが、アルカリ金属イオン、又は、テトラアルキルアンモニウムイオンであることが好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオン、又は、テトラブチルアンモニウムイオンであることがより好ましい。
ボレート化合物として具体的には、ナトリウムテトラフェニルボレートが好ましく挙げられる。
また、本開示に用いられる電子供与型重合開始剤の最高被占軌道(HOMO)は、耐薬品性及び耐刷性の観点から、-6.00eV以上であることが好ましく、-5.95eV以上であることがより好ましく、-5.93eV以上であることが更に好ましく、-5.90eVより大きいことが特に好ましい。
また、上限としては、-5.00eV以下であることが好ましく、-5.40eV以下であることがより好ましい。
以下に電子供与型重合開始剤の好ましい具体例としては、国際公開第2020/262692号に記載のものが好適に挙げられる。
また、上記発色層は、発色性、視認性、及び、経時退色抑制性の観点から、上記電子受容型重合開始剤として、オニウム塩化合物、及び、上記電子供与型重合開始剤として、ボレート化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含むことが好ましく、上記電子受容型重合開始剤として、オニウム塩化合物と、上記電子供与型重合開始剤として、ボレート化合物とを含むことがより好ましい。
また、上記発色層は、発色性、視認性、及び、経時退色抑制性の観点から、上記電子供与型重合開始剤として、ボレート化合物を含むことが好ましく、上記電子供与型重合開始剤として、ボレート化合物を含み、かつ上記赤外線吸収剤のHOMO-上記ボレート化合物のHOMOの値が、0.70eV以下であることがより好ましい。
電子供与型重合開始剤は、1種のみを添加しても、2種以上を併用してもよい。
電子供与型重合開始剤の含有量は、発色性、視認性、及び、経時退色抑制性の観点から、発色層の全質量に対し、0.1質量%~30質量%が好ましく、1質量%~20質量%がより好ましく、2質量%~15質量%が更に好ましい。
また、本開示における好ましい態様の一つは、上記電子受容型重合開始剤と、上記電子供与型重合開始剤と、が塩を形成している態様である。
具体的には、例えば、上記オニウム塩化合物が、オニウムイオンと、上記電子供与型重合開始剤におけるアニオン(例えば、テトラフェニルボレートアニオン)との塩である態様が挙げられる。また、より好ましくは、上記ヨードニウム塩化合物におけるヨードニウムカチオン(例えば、ジ-p-トリルヨードニウムカチオン)と、上記電子供与型重合開始剤におけるボレートアニオンとが塩を形成した、ヨードニウムボレート化合物が挙げられる。
上記電子受容型重合開始剤と上記電子供与型重合開始剤とが塩を形成している態様の具体例としては、国際公開第2020/262692号に記載のものが好適に挙げられる。
本開示において、発色層が、オニウムイオンと、上述の電子供与型重合開始剤におけるアニオンと、を含む場合、発色層は電子受容型重合開始剤及び上記電子供与型重合開始剤を含むものとする。
〔電子供与型重合開始剤と、電子受容型重合開始剤と、赤外線吸収剤との関係〕
本開示における発色層は、発色性、視認性、及び、経時退色抑制性の観点から、上記電子供与型重合開始剤と、上記電子受容型重合開始剤と、上記赤外線吸収剤と、を含み、上記電子供与型重合開始剤のHOMOが-6.0eV以上であり、かつ、上記電子受容型重合開始剤のLUMOが-3.0eV以下であることが好ましい。
上記電子供与型重合開始剤のHOMO、及び、上記電子受容型重合開始剤のLUMOのより好ましい態様は、それぞれ上述の通りである。
本開示における発色層において、上記電子供与型重合開始剤と、上記赤外線吸収剤の少なくとも1種と、上記電子受容型重合開始剤とは、例えば、下記化学式に記載のようにエネルギーの受け渡しを行っていると推測される。
そのため、上記電子供与型重合開始剤のHOMOが-6.0eV以上であり、かつ、上記電子受容型重合開始剤のLUMOが-3.0eV以下であれば、ラジカルの発生効率が向上するため、発色性及び視認性により優れやすいと考えられる。
発色性、視認性、及び、経時退色抑制性の観点から、上記赤外線吸収剤のHOMO-上記電子供与型重合開始剤のHOMOの値は、1.0eV以下であることが好ましく、0.70eV以下であることがより好ましく、0.60eV以下であることが特に好ましい。また、同様の観点から、上記赤外線吸収剤のHOMO-上記電子供与型重合開始剤のHOMOの値は、-0.200eV以上であることが好ましく、-0.100eV以上であることがより好ましい。なお、マイナスの値は、上記電子供与型重合開始剤のHOMOが、上記赤外線吸収剤のHOMOよりも高くなることを意味する。
また、発色性、視認性、及び、経時退色抑制性の観点から、上記電子受容型重合開始剤のLUMO-上記赤外線吸収剤のLUMOの値は、1.00eV以下であることが好ましく、0.700eV以下であることがより好ましい。また、同様の観点から、上記電子受容型重合開始剤のLUMO-上記赤外線吸収剤のLUMOの値は、-0.200eV以上であることが好ましく、-0.100eV以上であることがより好ましい。
また、同様の観点から、上記電子受容型重合開始剤のLUMO-上記赤外線吸収剤のLUMOの値は、1.00eV~-0.200eVであることが好ましく、0.700eV~-0.100eVであることがより好ましい。なお、マイナスの値は、上記赤外線吸収剤のLUMOが、上記電子受容型重合開始剤のLUMOよりも高くなることを意味する。
〔赤外線吸収剤〕
本開示に係る平版印刷版原版は、発色層に、赤外線吸収剤を含む。
赤外線吸収剤としては、特に制限はなく、例えば、顔料及び染料が挙げられる。
赤外線吸収剤として用いられる染料としては、市販の染料及び例えば、「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体、インドレニンシアニン色素が挙げられる。更に、シアニン色素やインドレニンシアニン色素が挙げられる。中でも、シアニン色素が特に好ましい。
上記赤外線吸収剤としては、メソ位に酸素又は窒素原子を有するカチオン性のポリメチン色素であることが好ましい。カチオン性のポリメチン色素としては、シアニン色素、ピリリウム色素、チオピリリウム色素、アズレニウム色素等が好ましく挙げられ、入手の容易性、導入反応時の溶剤溶解性等の観点から、シアニン色素であることが好ましい。
シアニン色素の具体例としては、特開2001-133969号公報の段落0017~0019に記載の化合物、特開2002-023360号公報の段落0016~0021、特開2002-040638号公報の段落0012~0037に記載の化合物、好ましくは特開2002-278057号公報の段落0034~0041、特開2008-195018号公報の段落0080~0086に記載の化合物、特に好ましくは特開2007-90850号公報の段落0035~0043に記載の化合物、特開2012-206495号公報の段落0105~0113に記載の化合物が挙げられる。
また、特開平5-5005号公報の段落0008~0009、特開2001-222101号公報の段落0022~0025に記載の化合物も好ましく使用することができる。
顔料としては、特開2008-195018号公報の段落0072~0076に記載の化合物が好ましい。
また、赤外線吸収剤としては、国際公開第2020/262692号に記載のものを好適に用いることができる。
更に、赤外線露光により分解する赤外線吸収剤としては、特表2008-544322号公報、又は、国際公開第2016/027886号に記載のものを好適に用いることができる。
また、本開示に用いられる赤外線吸収剤の最高被占軌道(HOMO)の値は、耐刷性、及び、網点再現性の観点から、-5.00eV以下であることが好ましく、-5.30eV以下であることがより好ましい。
また、下限としては、耐刷性、及び、網点再現性の観点から、-5.90eV以上であることが好ましく、-5.75eV以上であることがより好ましく、-5.60eV以上であることが更に好ましい。
本開示において、最高被占軌道(HOMO)及び最低空軌道(LUMO)のMO(分子軌道)エネルギー計算は、以下の方法により行う。
まず、計算対象となる化合物における遊離の対イオンは計算対象から除外する。例えば、カチオン性の一電子受容型重合開始剤、カチオン性の赤外線吸収剤では対アニオンを、アニオン性の一電子供与型重合開始剤では対カチオンをそれぞれ計算対象から除外する。ここでいう遊離とは、対象とする化合物とその対イオンが共有結合で連結されていないことを意味する。
量子化学計算ソフトウェアGaussian16を用い、構造最適化はDFT(B3LYP/6-31G(d))で行う。
MOエネルギー計算は、上記構造最適化で得た最適構造で量子化学計算ソフトウェアGaussian16を用い、DFT(B3LYP/6-31+G(d,p)/PCM(solvent=methanol))で行う。なお、ヨウ素を含有する化合物は、DFT(B3LYP/DGDZVP/PCM(solvent=methanol))条件にて計算する。
ここでいう最適構造とは、DFT計算で得られる全エネルギーが最も安定な構造を意味する。必要に応じて構造最適化を繰り返すことで、最安定構造を見出す。
上記MOエネルギー計算で得られたMOエネルギーEbare(単位:hartree)を以下の公式により、本開示においてHOMO及びLUMOの値として用いるEscaled(単位:eV)へ変換する。
〔HOMOの算出式〕 Escaled=0.823168×27.2114×Ebare-1.07634
〔LUMOの算出式〕 Escaled=0.820139×27.2114×Ebare-1.086039
なお、27.2114は単にhartreeをeVに変換するための係数であり、HOMOを算出する際に用いる0.823168と-1.07634、及び、UMOを算出する際に用いる0.820139と-1.086039とは調節係数であり、計算対象となる化合物のHOMOとLUMOの計算が実測の値に合うように定める。
赤外線吸収剤は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、赤外線吸収剤として顔料と染料とを併用してもよい。
上記発色層中の赤外線吸収剤の総含有量は、発色性、視認性、及び、経時退色抑制性の観点から、発色層の全質量に対し、0.5質量%~20質量%が好ましく、1質量%~15質量%がより好ましい。
〔界面活性剤〕
上記発色層は、界面活性剤を含有してもよい。
界面活性剤としては、特開昭62-173463号、同62-183457号の各公報に記載された界面活性剤が挙げられる。例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、脂肪酸塩等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、アセチレングリコール、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、変性ポリジメチルシロキサン等のシロキサン類、等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤、カルボベタイン、スルホベタイン等のベタイン系界面活性剤が挙げられる。
なお、界面活性剤に代えて重合性基を有さない有機フルオロ化合物を用いてもよい。有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素含有界面活性剤、オイル状フッ素含有化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57-9053号(第8~17欄)、特開昭62-135826号の各公報に記載された化合物が挙げられる。
界面活性剤は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤の含有量は、発色層の全質量に対し、0.01質量%~5.0質量%が好ましく、0.1質量%~3.0質量%がより好ましく、0.3質量%~2.0質量%が特に好ましい。
上記発色層は、後述する保護層に含まれる成分、例えば、後述する無機層状化合物、水溶性ポリマー等を含んでいてもよい。
また、上記発色層は、重合性化合物を含んでいてもよいが、酸の拡散防止性、及び、経時退色抑制性の観点から、エチレン性不飽和化合物を含まないことが好ましく、重合性化合物を含まないことがより好ましい。
〔発色層の形成〕
本開示に係る平版印刷版原版における発色層は、例えば、特開2008-195018号公報の段落0142~段落0143に記載のように、必要な上記各成分を公知の溶剤に分散又は溶解して塗布液を調製し、塗布液を支持体上にバーコーター塗布など公知の方法で塗布し、乾燥することにより形成することができる。
溶剤としては、公知の溶剤を用いることができる。具体的には、例えば、水、アセトン、メチルエチルケトン(2-ブタノン)、シクロヘキサン、酢酸エチル、エチレンジクロライド、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメーチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、1-メトキシ-2-プロパノール、3-メトキシ-1-プロパノール、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-メトキシプロピルアセテート、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチル等が挙げられる。溶剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。塗布液中の固形分濃度は1質量%~50質量%であることが好ましい。
塗布、乾燥後における発色層の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、良好な感度と画像記録層の良好な皮膜特性を得る観点から、0.01g/m~2.0g/mが好ましく、0.02g/m~1.0g/mがより好ましい。
また、上記発色層の層厚は、0.01μm~2.0μmであることが好ましく、0.02μm~1.0μmであることがより好ましい。
<画像記録層>
本開示に係る平版印刷版原版は、支持体上に形成された画像記録層を有する。
上記画像記録層は、赤外線吸収剤、重合性化合物、及び、重合開始剤を含むことが好ましい。
また、上記画像記録層は、酸発色剤を含んでいてもよいが、酸発色剤を含まないことが好ましい。
本開示に用いられる画像記録層は、ネガ型画像記録層であることが好ましく、水溶性又は水分散性のネガ型画像記録層であることがより好ましい。
本開示に係る平版印刷版原版は、機上現像性の観点から、画像記録層の未露光部が湿し水及び印刷インキの少なくともいずれかにより除去可能であることが好ましい。
以下、画像記録層に含まれる各成分の詳細について説明する。
〔赤外線吸収剤〕
本開示に係る平版印刷版原版は、画像記録層に、赤外線吸収剤を含むことが好ましい。
赤外線吸収剤としては、特に制限はなく、例えば、顔料及び染料が挙げられる。
赤外線吸収剤として用いられる染料としては、市販の染料及び例えば、「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
上記画像記録層に用いられる赤外線吸収剤としては、発色層において、上述した赤外線吸収剤を好適に用いることができ、好ましい態様も同様である。
赤外線吸収剤は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、赤外線吸収剤として顔料と染料とを併用してもよい。
上記画像記録層中の赤外線吸収剤の総含有量は、画像記録層の全質量に対し、0.1質量%~10.0質量%が好ましく、0.5質量%~5.0質量%がより好ましい。
〔重合性化合物〕
本開示における画像記録層は、重合性化合物を含むことが好ましい。
本開示において、重合性化合物とは、重合性基を有する化合物をいう。
重合性基としては、特に限定されず公知の重合性基であればよいが、エチレン性不飽和基であることが好ましい。また、重合性基としては、ラジカル重合性基であってもカチオン重合性基であってもよいが、ラジカル重合性基であることが好ましい。
ラジカル重合性基としては、(メタ)アクリロイル基、アリル基、ビニルフェニル基、ビニル基等が挙げられ、反応性の観点から(メタ)アクリロイル基が好ましい。
重合性化合物の分子量(分子量分布を有する場合には、重量平均分子量)は、50以上2,500未満であることが好ましい。
本開示に用いられる重合性化合物は、例えば、ラジカル重合性化合物であっても、カチオン重合性化合物であってもよいが、少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する付加重合性化合物(エチレン性不飽和化合物)であることが好ましい。
エチレン性不飽和化合物としては、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個有する化合物であることが好ましく、末端エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物であることがより好ましい。重合性化合物は、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体若しくはオリゴマー、又は、それらの混合物などの化学的形態をもつ。
中でも、上記重合性化合物としては、耐刷性の観点から、3官能以上の重合性化合物を含むことが好ましく、7官能以上の重合性化合物を含むことがより好ましく、10官能以上の重合性化合物を含むことが更に好ましい。また、上記重合性化合物は、得られる平版印刷版における耐刷性の観点から、3官能以上(好ましくは7官能以上、より好ましくは10官能以上)のエチレン性不飽和化合物を含むことが好ましく、3官能以上(好ましくは7官能以上、より好ましくは10官能以上)の(メタ)アクリレート化合物を含むことが更に好ましい。
また、上記重合性化合物としては、機上現像性、及び、汚れ抑制性の観点から、2官能以下の重合性化合物を含むことが好ましく、2官能重合性化合物を含むことがより好ましく、2官能(メタ)アクリレート化合物を含むことが特に好ましい。
2官能以下の重合性化合物(好ましくは2官能重合性化合物)の含有量は、耐刷性、機上現像性、及び、汚れ抑制性の観点から、上記画像記録層における重合性化合物の全質量に対し、5質量%~100質量%であることが好ましく、10質量%~100質量%であることがより好ましく、15質量%~100質量%であることが特に好ましい。
-オリゴマー-
画像記録層に含まれる重合性化合物としては、オリゴマーである重合性化合物(以下、単に「オリゴマー」ともいう。)を含有することが好ましい。
本開示においてオリゴマーとは、分子量(分子量分布を有する場合には、重量平均分子量)が600以上10,000以下であり、かつ、重合性基を少なくとも1つ含む重合性化合物を表す。
耐薬品性、耐刷性に優れる観点から、オリゴマーの分子量としては、1,000以上5,000以下であることが好ましい。
また、耐刷性を向上させる観点から、1分子のオリゴマーにおける重合性基数は、2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、6以上であることが更に好ましく、10以上であることが特に好ましい。
また、オリゴマーにおける重合性基の上限値は、特に制限はないが、重合性基の数は20以下であることが好ましい。
耐刷性、及び、機上現像性の観点から、オリゴマーとしては、重合性基の数が7以上であり、かつ、分子量が1,000以上10,000以下であることが好ましく、重合性基の数が7以上20以下であり、かつ、分子量が1,000以上5,000以下であることがより好ましい。
なお、オリゴマーを製造する過程で生じる可能性のある、ポリマー成分を含有していてもよい。
耐刷性、視認性、及び、機上現像性の観点から、オリゴマーは、ウレタン結合を有する化合物、エステル結合を有する化合物及びエポキシ残基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を有することが好ましく、ウレタン結合を有する化合物を有することが好ましい。
本開示においてエポキシ残基とは、エポキシ基により形成される構造を指し、例えば酸基(カルボン酸基等)とエポキシ基との反応により得られる構造と同様の構造を意味する。
ウレタン結合を有する化合物としては、国際公開第2020/262692号に記載のものを好適に用いることができる。
また、ウレタン結合を有する化合物として、ポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、の反応により得られるポリウレタンに、高分子反応により重合性基を導入した化合物を用いてもよい。
例えば、酸基を有するポリオール化合物と、ポリイソシアネート化合物を反応させて得られたポリウレタンオリゴマーに、エポキシ基及び重合性基を有する化合物を反応させることにより、ウレタン結合を有する化合物を得てもよい。
オリゴマーの例であるエステル結合を有する化合物における重合性基の数は、3以上であることが好ましく、6以上であることが更に好ましい。
オリゴマーの例であるエポキシ残基を有する化合物としては、化合物内にヒドロキシ基を含む化合物が好ましい。
また、エポキシ残基を有する化合物における重合性基の数は、2~6であることが好ましく、2~3であることがより好ましい。
上記エポキシ残基を有する化合物としては、例えば、エポキシ基を有する化合物にアクリル酸を反応することにより得ることができる。
オリゴマーの具体例を下記表に示すが、本開示において用いられるオリゴマーはこれに限定されるものではない。
オリゴマーとしては、市販品を用いてもよく、UA510H、UA-306H、UA-306I、UA-306T(いずれも共栄社化学(株)製)、UV-1700B、UV-6300B、UV7620EA(いずれも日本合成化学工業(株)製)、U-15HA(新中村化学工業(株)製)、EBECRYL450、EBECRYL657、EBECRYL885、EBECRYL800、EBECRYL3416、EBECRYL860(いずれもダイセルオルネクス(株)製)等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
オリゴマーの含有量は、耐薬品性、耐刷性、及び機上現像カスの抑制性を向上させる観点から、画像記録層における重合性化合物の全質量に対し、30質量%~100質量%であることが好ましく、50質量%~100質量%であることがより好ましく、80質量%~100質量%であることが更に好ましい。
-低分子重合性化合物-
重合性化合物は、上記オリゴマー以外の重合性化合物を更に含んでいてもよい。
オリゴマー以外の重合性化合物としては、耐薬品性の観点から、低分子重合性化合物であることが好ましい。低分子重合性化合物としては、単量体、2量体、3量体又は、それらの混合物などの化学的形態であってもよい。
また、低分子重合性化合物としては、耐薬品性の観点から、エチレン性不飽和基を3つ以上有する重合性化合物、及びイソシアヌル環構造を有する重合性化合物からなる群より選ばれる少なくとも一方の重合性化合物であることが好ましい。
本開示において低分子重合性化合物とは、分子量(分子量分布を有する場合には、重量平均分子量)50以上600未満の重合性化合物を表す。
低分子重合性化合物の分子量としては、耐薬品性、耐刷性及び機上現像カスの抑制性に優れる観点から、100以上600未満であることが好ましく、300以上600未満であることがより好ましく、400以上600未満であることが更に好ましい。
重合性化合物が、オリゴマー以外の重合性化合物として低分子重合性化合物を含む場合(2種以上の低分子重合性化合物を含む場合はその合計量)、耐薬品性、耐刷性及び機上現像カスの抑制性の観点から、上記オリゴマーと低分子重合性化合物との比(オリゴマー/低分子重合性化合物)は、質量基準で、10/1~1/10であることが好ましく、10/1~3/7であることがより好ましく、10/1~7/3であることが更に好ましい。
また、低分子重合性化合物としては、国際公開第2019/013268号の段落0082~0086に記載の重合性化合物も好適に用いることができる。
重合性化合物の構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、任意に設定できる。
中でも、画像記録層は、耐刷性の観点から、2種以上の重合性化合物を含むことが好ましい。
重合性化合物の含有量(重合性化合物を2種以上含む場合は、重合性化合物の総含有量)は、画像記録層の全質量に対して、5質量%~75質量%であることが好ましく、10質量%~70質量%であることがより好ましく、15質量%~60質量%であることが更に好ましい。
〔重合開始剤〕
本開示における画像記録層は、重合開始剤を含むことが好ましい。
また、重合開始剤としては、感度、耐刷性、機上現像性、及び、着肉性の観点から、電子供与型重合開始剤を含むことが好ましく、電子受容型重合開始剤、及び、電子供与型重合開始剤を含むことがより好ましい。
また、重合開始剤は、耐薬品性、及び、耐刷性の観点から、電子供与型重合開始剤として、ボレート化合物を含むことが好ましい。
上記画像記録層に用いられる重合開始剤、電子受容型重合開始剤及び電子供与型重合開始剤としては、発色層において、上述した合開始剤、電子受容型重合開始剤及び電子供与型重合開始剤を好適に用いることができ、好ましい態様も同様である。
電子受容型重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
電子受容型重合開始剤の含有量は、画像記録層の全質量に対して、0.1質量%~50質量%であることが好ましく、0.5質量%~30質量%であることがより好ましく、0.8質量%~20質量%であることが特に好ましい。
電子供与型重合開始剤は、1種のみを添加しても、2種以上を併用してもよい。
電子供与型重合開始剤の含有量は、画像記録層の全質量に対し、0.01質量%~30質量%が好ましく、0.05質量%~25質量%がより好ましく、0.1質量%~20質量%が更に好ましい。
〔粒子〕
上記画像記録層は、耐刷性の観点から、粒子を含むことが好ましい。
粒子としては、有機粒子であっても、無機粒子であってもよいが、耐刷性の観点から、有機粒子を含むことが好ましく、ポリマー粒子を含むことがより好ましい。
無機粒子としては、公知の無機粒子を用いることができ、シリカ粒子、チタニア粒子等の金属酸化物粒子を好適に用いることができる。
ポリマー粒子は、熱可塑性樹脂粒子、熱反応性樹脂粒子、重合性基を有するポリマー粒子、疎水性化合物を内包しているマイクロカプセル、及び、ミクロゲル(架橋ポリマー粒子)よりなる群から選ばれることが好ましい。中でも、重合性基を有するポリマー粒子又はミクロゲルが好ましい。特に好ましい実施形態では、ポリマー粒子は少なくとも1つのエチレン性不飽和基を含む。このようなポリマー粒子の存在により、露光部の耐刷性及び未露光部の機上現像性を高める効果が得られる。
また、ポリマー粒子は、耐刷性、及び、機上現像性の観点から、熱可塑性樹脂粒子であることが好ましい。
熱可塑性樹脂粒子としては、1992年1月のResearch Disclosure No.33303、特開平9-123387号公報、同9-131850号公報、同9-171249号公報、同9-171250号公報及び欧州特許第931647号明細書などに記載の熱可塑性ポリマー粒子が好ましい。
熱可塑性樹脂粒子を構成するポリマーの具体例としては、エチレン、スチレン、塩化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルカルバゾール、ポリアルキレン構造を有するアクリレート又はメタクリレートなどのモノマーのホモポリマー若しくはコポリマー又はそれらの混合物を挙げることができる。好ましくは、ポリスチレン、スチレン及びアクリロニトリルを含む共重合体、又は、ポリメタクリル酸メチルを挙げることができる。熱可塑性樹脂粒子の平均粒径は0.01μm~3.0μmが好ましい。
熱反応性樹脂粒子としては、熱反応性基を有するポリマー粒子が挙げられる。熱反応性ポリマー粒子は熱反応による架橋及びその際の官能基変化により疎水化領域を形成する。
熱反応性基を有するポリマー粒子における熱反応性基としては、化学結合が形成されるならば、どのような反応を行う官能基でもよいが、重合性基であることが好ましく、その例として、ラジカル重合反応を行うエチレン性不飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基など)、カチオン重合性基(例えば、ビニル基、ビニルオキシ基、エポキシ基、オキセタニル基など)、付加反応を行うイソシアナト基又はそのブロック体、エポキシ基、ビニルオキシ基及びこれらの反応相手である活性水素原子を有する官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基など)、縮合反応を行うカルボキシ基及び反応相手であるヒドロキシ基又はアミノ基、開環付加反応を行う酸無水物及び反応相手であるアミノ基又はヒドロキシ基などが好ましく挙げられる。
マイクロカプセルとしては、例えば、特開2001-277740号公報、特開2001-277742号公報に記載のごとく、画像記録層の構成成分の少なくとも一部をマイクロカプセルに内包させたものである。画像記録層の構成成分は、マイクロカプセル外にも含有させることもできる。マイクロカプセルを含有する画像記録層は、疎水性の構成成分をマイクロカプセルに内包し、親水性の構成成分をマイクロカプセル外に含有する構成が好ましい態様である。
ミクロゲル(架橋ポリマー粒子)は、その表面又は内部の少なくとも一方に、画像記録層の構成成分の一部を含有することができる。特に、ラジカル重合性基をその表面に有する反応性ミクロゲルは、得られる平版印刷版原版の感度、及び、得られる平版印刷版の耐刷性の観点から好ましい。
画像記録層の構成成分をマイクロカプセル化又はミクロゲル化するには、公知の方法が適用できる。
また、ポリマー粒子としては、得られる平版印刷版の耐刷性、耐汚れ性及び保存安定性の観点から、分子中に2個以上のヒドロキシ基を有する多価フェノール化合物とイソホロンジイソシアネートとの付加物である多価イソシアネート化合物、及び、活性水素を有する化合物の反応により得られるものが好ましい。
上記多価フェノール化合物としては、フェノール性ヒドロキシ基を有するベンゼン環を複数有している化合物が好ましい。
上記活性水素を有する化合物としては、ポリオール化合物、又は、ポリアミン化合物が好ましく、ポリオール化合物がより好ましく、プロピレングリコール、グリセリン及びトリメチロールプロパンよりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物が更に好ましい。
分子中に2個以上のヒドロキシ基を有する多価フェノール化合物とイソホロンジイソシアネートとの付加物である多価イソシアネート化合物、及び、活性水素を有する化合物の反応により得られる樹脂の粒子としては、特開2012-206495号公報の段落0032~0095に記載のポリマー粒子が好ましく挙げられる。
更に、ポリマー粒子としては、得られる平版印刷版の耐刷性及び耐溶剤性の観点から、疎水性主鎖を有し、i)上記疎水性主鎖に直接的に結合されたペンダントシアノ基を有する構成ユニット、及び、ii)親水性ポリアルキレンオキシドセグメントを含むペンダント基を有する構成ユニットの両方を含むことが好ましい。
上記疎水性主鎖としては、アクリル樹脂鎖が好ましく挙げられる。
上記ペンダントシアノ基の例としては、-[CHCH(C≡N)]-又は-[CHC(CH)(C≡N)]-が好ましく挙げられる。
また、上記ペンダントシアノ基を有する構成ユニットは、エチレン系不飽和型モノマー、例えば、アクリロニトリル又はメタクリロニトリルから、又は、これらの組み合わせから容易に誘導することができる。
また、上記親水性ポリアルキレンオキシドセグメントにおけるアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドが好ましく、エチレンオキシドがより好ましい。
上記親水性ポリアルキレンオキシドセグメントにおけるアルキレンオキシド構造の繰り返し数は、10~100であることが好ましく、25~75であることがより好ましく、40~50であることが更に好ましい。
疎水性主鎖を有し、i)上記疎水性主鎖に直接的に結合されたペンダントシアノ基を有する構成ユニット、及び、ii)親水性ポリアルキレンオキシドセグメントを含むペンダント基を有する構成ユニットの両方を含む樹脂の粒子としては、特表2008-503365号公報の段落0039~0068に記載のものが好ましく挙げられる。
また、上記ポリマー粒子は、耐刷性、及び、機上現像性の観点から、親水性基を有することが好ましい。
上記親水性基としては、親水性を有する構造であれば、特に制限はないが、カルボキシ基等の酸基、ヒドロキシ基、アミノ基、シアノ基、ポリアルキレンオキシド構造等が挙げられる。
中でも、機上現像性、及び、耐刷性の観点から、ポリアルキレンオキシド構造が好ましく、ポリエチレンオキシド構造、ポリプロピレンオキシド構造、又は、ポリエチレン/プロピレンオキシド構造がより好ましい。
また、機上現像性、及び、機上現像時の現像カス抑制性の観点からは、上記ポリアルキレンオキシド構造として、ポリプロピレンオキシド構造を有することが好ましく、ポリエチレンオキシド構造及びポリプロピレンオキシド構造を有することがより好ましい。
また、上記親水性基としては、耐刷性、着肉性、及び、機上現像性の観点から、シアノ基を有する構成単位、又は、下記式Zで表される基を含むことが好ましく、下記式(AN)で表される構成単位、又は、下記式Zで表される基を含むことがより好ましく、下記式Zで表される基を含むことが特に好ましい。
*-Q-W-Y 式Z
式Z中、Qは二価の連結基を表し、Wは親水性構造を有する二価の基又は疎水性構造を有する二価の基を表し、Yは親水性構造を有する一価の基又は疎水性構造を有する一価の基を表し、W及びYのいずれかは親水性構造を有し、*は他の構造との結合部位を表す。
式(AN)中、RANは、水素原子又はメチル基を表す。
上記ポリマー粒子に含まれるポリマーは、耐刷性の観点から、シアノ基を有する化合物により形成される構成単位を含むことが好ましい。
シアノ基は、通常、シアノ基を有する化合物(モノマー)を用いて、シアノ基を含む構成単位として樹脂に導入されることが好ましい。シアノ基を有する化合物としては、アクリロニトリル化合物が挙げられ、(メタ)アクリロニトリルが好適に挙げられる。
シアノ基を有する構成単位としては、アクリロニトリル化合物により形成される構成単位であることが好ましく、(メタ)アクリロニトリルにより形成される構成単位、すなわち、上記式(AN)で表される構成単位がより好ましい。
上記ポリマーが、シアノ基を有する構成単位を有するポリマーを含む場合、シアノ基を有する構成単位を有するポリマーにおけるシアノ基を有する構成単位、好ましくは上記式(AN)で表される構成単位の含有量は、耐刷性の観点から、シアノ基を有する構成単位を有するポリマーの全質量に対し、5質量%~90質量%であることが好ましく、20質量%~80質量%であることがより好ましく、30質量%~60質量%であることが特に好ましい。
また、上記ポリマー粒子は、耐刷性、着肉性、及び、機上現像性の観点から、上記式Zで表される基を有するポリマー粒子を含むことが好ましい。
上記式ZにおけるQは、炭素数1~20の二価の連結基であることが好ましく、炭素数1~10の二価の連結基であることがより好ましい。
また、上記式ZにおけるQは、アルキレン基、アリーレン基、エステル結合、アミド結合、又は、これらを2以上組み合わせた基であることが好ましく、フェニレン基、エステル結合、又は、アミド結合であることがより好ましい。
上記式ZのWにおける親水性構造を有する二価の基は、ポリアルキレンオキシ基、又は、ポリアルキレンオキシ基の一方の末端に-CHCHNR-が結合した基であることが好ましい。なお、Rは、水素原子又はアルキル基を表す。
上記式ZのWにおける疎水性構造を有する二価の基は、-RWA-、-O-RWA-O-、-RN-RWA-NR-、-OC(=O)-RWA-O-、又は、-OC(=O)-RWA-O-であることが好ましい。なお、RWAはそれぞれ独立に、炭素数6~120の直鎖、分岐若しくは環状アルキレン基、炭素数6~120のハロアルキレン基、炭素数6~120のアリーレン基、炭素数6~120のアルカーリレン基(アルキルアリール基から水素原子を1つ除いた二価の基)、又は、炭素数6~120のアラルキレン基を表す。
上記式ZのYにおける親水性構造を有する一価の基は、-OH、-C(=O)OH、末端が水素原子又はアルキル基であるポリアルキレンオキシ基、又は、末端が水素原子又はアルキル基であるポリアルキレンオキシ基の他方の末端に-CHCHNR-が結合した基であることが好ましい。
上記式ZのYにおける疎水性構造を有する一価の基は、炭素数6~120の直鎖、分岐若しくは環状アルキル基、炭素数6~120のハロアルキル基、炭素数6~120のアリール基、炭素数7~120のアルカーリル基(アルキルアリール基)、炭素数7~120のアラルキル基、-ORWB、-C(=O)ORWB、又は、-OC(=O)RWBであることが好ましい。RWBは、炭素数6~20を有するアルキル基を表す。
上記式Zで表される基を有するポリマー粒子は、耐刷性、着肉性、及び、機上現像性の観点から、Wが親水性構造を有する二価の基であることがより好ましく、Qがフェニレン基、エステル結合、又は、アミド結合であり、Wは、ポリアルキレンオキシ基であり、Yが、末端が水素原子又はアルキル基であるポリアルキレンオキシ基であることがより好ましい。
また、上記ポリマー粒子は、耐刷性、及び、機上現像性の観点から、重合性基を有するポリマー粒子を含むことが好ましく、粒子表面に重合性基を有するポリマー粒子を含むことがより好ましい。
更に、上記ポリマー粒子は、耐刷性の観点から、親水性基及び重合性基を有するポリマー粒子を含むことが好まし
上記重合性基は、カチオン重合性基であっても、ラジカル重合性基であってもよいが、反応性の観点からは、ラジカル重合性基であることが好ましい。
上記重合性基としては、重合可能な基であれば特に制限はないが、反応性の観点から、エチレン性不飽和基が好ましく、ビニルフェニル基(スチリル基)、(メタ)アクリロキシ基、又は、(メタ)アクリルアミド基がより好ましく、(メタ)アクリロキシ基が特に好ましい。
また、重合性基を有するポリマー粒子におけるポリマーは、重合性基を有する構成単位を有することが好ましい。
更に、高分子反応によりポリマー粒子表面に重合性基を導入してもよい。
また、上記画像記録層は、耐刷性、及び、機上現像性の観点から、上記ポリマー粒子として、分散性基を有する付加重合型樹脂粒子を含むことが好ましく、上記分散性基が、上記式Zで表される基を含むことがより好ましい。
また、上記ポリマー粒子は、耐刷性、着肉性、機上現像性、及び、機上現像時の現像カス抑制性の観点から、ウレア結合を有する樹脂を含むことが好ましい。
上記ウレア結合を有する樹脂としては、国際公開第2020/262692号に記載のものが好適に挙げられる。
また、上記画像記録層は、耐刷性、及び、機上現像性の観点から、熱可塑性樹脂粒子を含むことが好ましい。
熱可塑性樹脂粒子に含まれる熱可塑性樹脂は、特に制限はなく、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、それらの共重合体等が挙げられる。熱可塑性樹脂はラテックス状態であってもよい。
本開示に係る熱可塑性樹脂は、後述する露光工程において生成された熱により、熱可塑性樹脂が溶融又は軟化することで、記録層を形成する疎水性の膜の一部又は全部を形成する樹脂であることが好ましい。
上記熱可塑性樹脂としては、インキ着肉性及び耐刷性の観点から、芳香族ビニル化合物により形成される構成単位、及び、シアノ基を有する構成単位を有する樹脂を含むことが好ましい。
芳香族ビニル化合物により形成される構成単位、及び、シアノ基を有する構成単位を有する樹脂としては、国際公開第2020/262692号に記載のものが好適に挙げられる。
上記熱可塑性樹脂粒子に含まれる熱可塑性樹脂は、耐刷性及び機上現像性の観点から、親水性基を有することが好ましい。
親水性基としては、親水性を有する構造であれば、特に制限はないが、カルボキシ基等の酸基、ヒドロキシ基、アミノ基、シアノ基、ポリアルキレンオキシド構造等が挙げられる。
上記親水性基としては、耐刷性及び機上現像性の観点から、ポリアルキレンオキシド構造を有する基、ポリエステル構造を有する基、又は、スルホン酸基であることが好ましく、ポリアルキレンオキシド構造を有する基、又は、スルホン酸基であることがより好ましく、ポリアルキレンオキシド構造を有する基であることが更に好ましい。
上記ポリアルキレンオキシド構造としては、機上現像性の観点から、ポリエチレンオキシド構造、ポリプロピレンオキシド構造、又は、ポリ(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)構造であることが好ましい。
また、機上現像性の観点からは、上記親水性基の中でもポリアルキレンオキシド構造として、ポリプロピレンオキシド構造を有することが好ましく、ポリエチレンオキシド構造及びポリプロピレンオキシド構造を有することがより好ましい。
上記ポリアルキレンオキシド構造におけるアルキレンオキシド構造の数は、機上現像性の観点から、2以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、5~200であることが更に好ましく、8~150であることが特に好ましい。
また、機上現像性の観点から、上記親水性基として、上記式Zで表される基が好ましい。
熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、耐刷性及びインキ着肉性の観点から、60℃~150℃であることが好ましく、80℃~140℃であることがより好ましく、90℃~130℃であることが更に好ましい。
熱可塑性樹脂粒子が2種以上の熱可塑性樹脂を含む場合には、後述するFOX式により求められた値を、熱可塑性樹脂のガラス転移温度という。
本開示において、樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定することができる。
具体的な測定方法は、JIS K 7121(1987年)又はJIS K 6240(2011年)に記載の方法に順じて行なう。本明細書におけるガラス転移温度は、補外ガラス転移開始温度(以下、Tigと称することがある)を用いている。
ガラス転移温度の測定方法をより具体的に説明する。
ガラス転移温度を求める場合、予想される樹脂のTgより約50℃低い温度にて装置が安定するまで保持した後、加熱速度:20℃/分で、ガラス転移が終了した温度よりも約30℃高い温度まで加熱し,示差熱分析(DTA)曲線又はDSC曲線を作成する。
補外ガラス転移開始温度(Tig)、すなわち、本明細書におけるガラス転移温度Tgは、DTA曲線又はDSC曲線における低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になる点で引いた接線との交点の温度として求める。
熱可塑性樹脂粒子が2種以上の熱可塑性樹脂を含む場合、熱可塑性樹脂粒子に含まれる熱可塑性樹脂のTgは下記のように求められる。
1つ目の熱可塑性樹脂のTgをTg1(K)、熱可塑性樹脂粒子における熱可塑性樹脂成分の合計質量に対する1つ目の熱可塑性樹脂の質量分率をW1とし、2つ目のTgをTg2(K)とし、熱可塑性樹脂粒子における熱可塑性樹脂成分の合計質量に対する2つ目の樹脂の質量分率をW2としたときに、熱可塑性樹脂粒子のTg0(K)は、以下のFOX式にしたがって推定することが可能である。
FOX式:1/Tg0=(W1/Tg1)+(W2/Tg2)
また、熱可塑性樹脂粒子が3種の樹脂を含むか、含まれる熱可塑性樹脂種の異なる3種の熱可塑性樹脂粒子が前処理液に含有される場合、熱可塑性樹脂粒子のTgは、n個目の樹脂のTgをTgn(K)、熱可塑性樹脂粒子における樹脂成分の合計質量に対するn個目の樹脂の質量分率をWnとしたときに、上記と同様、以下の式にしたがって推定することが可能である。
FOX式:1/Tg0=(W1/Tg1)+(W2/Tg2)+(W3/Tg3)・・・+(Wn/Tgn)
示差走査熱量計(DSC)としては、例えば、エスアイアイ・ナノテクノロジー社のEXSTAR6220を用いることができる。
熱可塑性樹脂粒子の算術平均粒子径は、耐刷性の観点から、1nm以上200nm以下であることが好ましく、3nm以上80nm未満であることがより好ましく、10nm以上49nm以下であることが更に好ましい。
本開示における熱可塑性樹脂粒子における算術平均粒子径は、特に断りのない限り、動的光散乱法(DLS)によって測定された値を指す。DLSによる熱可塑性樹脂粒子の算術平均粒子径の測定は、Brookhaven BI-90(Brookhaven Instrument Company製)を用い、上記機器のマニュアルに沿って行われる。
熱可塑性樹脂粒子に含まれる熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、3,000~300,000であることが好ましく、5,000~100,000であることがより好ましい。
熱可塑性樹脂粒子に含まれる熱可塑性樹脂の製造方法は、特に限定されず、公知の方法により製造することができる。
例えば、スチレン化合物と、アクリロニトリル化合物と、必要に応じて上記N-ビニル複素環化合物、上記エチレン性不飽和基を有する構成単位の形成に用いられる化合物、上記酸性基を有する構成単位の形成に用いられる化合物、上記疎水性基を有する構成単位の形成に用いられる化合物、及び、上記その他の構成単位の形成に用いられる化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物、とを、公知の方法により重合することにより得られる。
熱可塑性樹脂粒子に含まれる熱可塑性樹脂の具体例としては、国際公開第2020/262692号に記載のものが好適に挙げられる。
上記粒子の平均粒径は、0.01μm~3.0μmが好ましく、0.03μm~2.0μmがより好ましく、0.10μm~1.0μmが更に好ましい。この範囲で良好な解像度と経時安定性が得られる。
本開示における上記粒子の平均一次粒径は、光散乱法により測定するか、又は、粒子の電子顕微鏡写真を撮影し、写真上で粒子の粒径を総計で5,000個測定し、平均値を算出するものとする。なお、非球形粒子については写真上の粒子面積と同一の粒子面積を有する球形粒子の粒径値を粒径とする。
また、本開示における平均粒径は、特に断りのない限り、体積平均粒径であるものとする。
上記画像記録層は、粒子、特にポリマー粒子を1種単独で含有していても、2種以上を含有していてもよい。
また、上記画像記録層における粒子、特にポリマー粒子の含有量は、機上現像性、及び、耐刷性の観点から、上記画像記録層の全質量に対し、5質量%~90質量%が好ましく、10質量%~90質量%であることがより好ましく、20質量%~90質量%であることが更に好ましく、50質量%~90質量%であることが特に好ましい。
また、上記画像記録層におけるポリマー粒子の含有量は、機上現像性、及び、耐刷性の観点から、上記画像記録層の分子量3,000以上の成分の全質量に対し、20質量%~100質量%が好ましく、35質量%~100質量%であることがより好ましく、50質量%~100質量%であることが更に好ましく、80質量%~100質量%であることが特に好ましい。
〔バインダーポリマー〕
画像記録層は、バインダーポリマーを含んでいてもよい。
上記ポリマー粒子は、上記バインダーポリマーに該当しない。すなわち、バインダーポリマーは、粒子形状ではない重合体である。
バインダーポリマーとしては、(メタ)アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、又は、ポリウレタン樹脂が好ましい。
中でも、バインダーポリマーは平版印刷版原版の画像記録層に用いられる公知のバインダーポリマーを好適に使用することができる。一例として、機上現像型の平版印刷版原版に用いられるバインダーポリマー(以下、機上現像用バインダーポリマーともいう。)について、詳細に記載する。
機上現像用バインダーポリマーとしては、アルキレンオキシド鎖を有するバインダーポリマーが好ましい。アルキレンオキシド鎖を有するバインダーポリマーは、ポリ(アルキレンオキシド)部位を主鎖に有していても側鎖に有していてもよい。また、ポリ(アルキレンオキシド)を側鎖に有するグラフトポリマーでも、ポリ(アルキレンオキシド)含有繰返し単位で構成されるブロックと(アルキレンオキシド)非含有繰返し単位で構成されるブロックとのブロックコポリマーでもよい。
ポリ(アルキレンオキシド)部位を主鎖に有する場合は、ポリウレタン樹脂が好ましい。ポリ(アルキレンオキシド)部位を側鎖に有する場合の主鎖のポリマーとしては、(メタ)アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、合成ゴム、天然ゴムが挙げられ、特に(メタ)アクリル樹脂が好ましい。
また、バインダーポリマーの他の好ましい例として、6官能以上10官能以下の多官能チオールを核として、この核に対しスルフィド結合により結合したポリマー鎖を有し、上記ポリマー鎖が重合性基を有する高分子化合物(以下、星型高分子化合物ともいう。)が挙げられる。
星型高分子化合物は、硬化性の観点から、エチレン性不飽和基等の重合性基を、主鎖又は側鎖、より好ましくは側鎖に有しているものが好ましく挙げられる。
星型高分子化合物としては、例えば、特開2012-148555号公報、又は、国際公開第2020/262692号に記載のものが挙げられる。
バインダーポリマーの分子量は、GPC法によるポリスチレン換算値として重量平均分子量(Mw)が、2,000以上であることが好ましく、5,000以上であることがより好ましく、10,000~300,000であることが更に好ましい。
必要に応じて、特開2008-195018号公報に記載のポリアクリル酸、ポリビニルアルコールなどの親水性ポリマーを併用することができる。また、親油的なポリマーと親水的なポリマーとを併用することもできる。
また、上記画像記録層は、耐刷性、及び、機上現像性の観点から、芳香族ビニル化合物により形成される構成単位を有するポリマーを含むことが好ましく、芳香族ビニル化合物により形成される構成単位を有するポリマーを含み、かつ赤外線露光により分解する赤外線吸収剤を含むことがより好ましい。
また、本開示に用いられるバインダーポリマーは、例えば、経時による機上現像性の低下を抑制する観点から、ガラス転移温度(Tg)が50℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることが更に好ましく、90℃以上であることが特に好ましい。
また、バインダーポリマーのガラス転移温度の上限としては、画像記録層への水の浸み込みやすさの観点から、200℃が好ましく、120℃以下がより好ましい。
上記のガラス転移温度を有するバインダーポリマーとしては、経時による機上現像性の低下をより抑制する観点から、ポリビニルアセタールが好ましい。
ポリビニルアセタールは、ポリビニルアルコールのヒドロキシ基をアルデヒドにてアセタール化させて得られた樹脂である。
特に、ポリビニルアルコールのヒドロキシ基を、ブチルアルデヒドでアセタール化(即ち、ブチラール化)したポリビニルブチラールが好ましい。
また、ポリビニルアセタールは、耐刷性向上の観点から、エチレン性不飽和基を有することが好ましい。
ポリビニルアセタールとしては、国際公開第2020/262692号に記載のものが好適に挙げられる。
本開示における画像記録層には、フッ素原子を有する樹脂を含有することが好ましく、フルオロ脂肪族基含有共重合体を含有することがより好ましい。
フッ素原子を有する樹脂、特にフルオロ脂肪族基含有共重合体を用いることで、画像記録層の形成時の発泡による面質異常を抑制し、塗布面状を高めることができ、更に、形成された画像記録層のインキの着肉性を高められる。
また、フルオロ脂肪族基含有共重合体を含む画像記録層は、階調が高くなり、例えば、レーザー光に対して高感度となり、散乱光、反射光等によるかぶり性が良好で耐刷性に優れる平版印刷版が得られる。
上記フルオロ脂肪族基含有共重合体としては、国際公開第2020/262692号に記載のものを好適に用いることができる。
本開示において用いられる画像記録層においては、バインダーポリマーを1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
バインダーポリマーは、画像記録層中に任意な量で含有させることができるが、バインダーポリマーの含有量は、画像記録層の全質量に対して、1質量%~90質量%であることが好ましく、5質量%~80質量%であることがより好ましい。
〔連鎖移動剤〕
本開示において用いられる画像記録層は、連鎖移動剤を含有してもよい。連鎖移動剤は、平版印刷版における耐刷性の向上に寄与する。
連鎖移動剤としては、チオール化合物が好ましく、沸点(揮発し難さ)の観点で炭素数7以上のチオール化合物がより好ましく、芳香環上にメルカプト基を有する化合物(芳香族チオール化合物)が更に好ましい。上記チオール化合物は単官能チオール化合物であることが好ましい。
連鎖移動剤の具体例としては、国際公開第2020/262692号に記載のものが好適に挙げられる。
連鎖移動剤は、1種のみを添加しても、2種以上を併用してもよい。
連鎖移動剤の含有量は、画像記録層の全質量に対し、0.01質量%~50質量%が好ましく、0.05質量%~40質量%がより好ましく、0.1質量%~30質量%が更に好ましい。
〔感脂化剤〕
画像記録層は、インキ着肉性を向上させるために、感脂化剤を更に含有することが好ましい。
感脂化剤は、SP値が18.0未満であることが好ましく、14~18未満であることがより好ましく、15~17であることが更に好ましく、16~16.9であることが特に好ましい。
また、感脂化剤は、分子量(分子量分布があるときは、重量平均分子量)が2,000以上の化合物であってもよく、分子量が2,000未満の化合物であってもよい。
本開示におけるSP値(溶解度パラメーター、単位:(MPa)1/2))は、ハンセン(Hansen)溶解度パラメーターを用いるものとする。
ハンセン(Hansen)溶解度パラメーターは、ヒルデブランド(Hildebrand)によって導入された溶解度パラメーターを、分散項δd、極性項δp、水素結合項δhの3成分に分割し、3次元空間に表したものであるが、本開示においてはSP値をδ(単位:(MPa)1/2)で表し、下記式を用いて算出される値を用いる。
δ(MPa)1/2=(δd+δp+δh1/2
なお、この分散項δd、極性項δp、及び、水素結合項δhは、ハンセンやその研究後継者らにより多く求められており、Polymer Handbook (fourth edition)、VII-698~711に詳しく掲載されている。
また本開示において、ポリマーのSP値は、ポリマーの分子構造からPolymer Handbook fourth editionに記載のHoy法により計算する。
上記感脂化剤としては、例えば、オニウム塩化合物、含窒素低分子化合物、アンモニウム基含有ポリマー等のアンモニウム化合物などが挙げられる。
特に、保護層に無機層状化合物を含有させる場合、これら化合物は、無機層状化合物の表面被覆剤として機能し、無機層状化合物による印刷途中の着肉性低下を抑制することができる。
また、感脂化剤は、着肉性の観点から、オニウム塩化合物であることが好ましい。
オニウム塩化合物としては、ホスホニウム化合物、アンモニウム化合物、スルホニウム化合物等が挙げられ、オニウム塩化合物としては、上記観点から、ホスホニウム化合物及びアンモニウム化合物からなる群より選択される少なくとも1つが好ましい。
また、後述する、現像促進剤又は電子受容型重合開始剤におけるオニウム塩化合物はSP値が18を超える化合物であり、感脂化剤には含まれない。
ホスホニウム化合物としては、特開2006-297907号公報及び特開2007-50660号公報に記載のホスホニウム化合物が挙げられる。具体例としては、1,4-ビス(トリフェニルホスホニオ)ブタン=ジ(ヘキサフルオロホスファート)、1,7-ビス(トリフェニルホスホニオ)ヘプタン=スルファート、1,9-ビス(トリフェニルホスホニオ)ノナン=ナフタレン-2,7-ジスルホナート等が挙げられる。
アンモニウム化合物としては、含窒素低分子化合物、アンモニウム基含有ポリマー等を好ましく挙げることができる。
含窒素低分子化合物としては、アミン塩類、第四級アンモニウム塩類が挙げられる。また、イミダゾリニウム塩類、ベンゾイミダゾリニウム塩類、ピリジニウム塩類、キノリニウム塩類も挙げられる。
中でも、第四級アンモニウム塩類及びピリジニウム塩類が好ましい。
具体例としては、テトラメチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、テトラブチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ドデシルトリメチルアンモニウム=p-トルエンスルホナート、ベンジルトリエチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ベンジルジメチルオクチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ベンジルジメチルドデシルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、特開2008-284858号公報の段落0021~0037に記載の化合物、特開2009-90645号公報の段落0030~0057に記載の化合物等が挙げられる。
アンモニウム基含有ポリマーとしては、その構造中にアンモニウム基を有すればよく、側鎖にアンモニウム基を有する(メタ)アクリレートを共重合成分として5mol%~80mol%含有するポリマーが好ましい。具体例としては、特開2009-208458号公報の段落0089~0105に記載のポリマーが挙げられる。
アンモニウム塩含有ポリマーは、特開2009-208458号公報に記載の測定方法に従って求められる還元比粘度(単位:ml/g)の値が、5~120の範囲のものが好ましく、10~110の範囲のものがより好ましく、15~100の範囲のものが特に好ましい。上記還元比粘度を重量平均分子量(Mw)に換算した場合、10,000~150,000が好ましく、17,000~140,000がより好ましく、20,000~130,000が特に好ましい。
以下に、アンモニウム基含有ポリマーの具体例を示す。
(1)2-(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=p-トルエンスルホナート/3,6-ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比10/90、Mw4.5万)
(2)2-(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6-ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80、Mw6.0万)
(3)2-(エチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=p-トルエンスルホナート/ヘキシルメタクリレート共重合体(モル比30/70、Mw4.5万)
(4)2-(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/2-エチルヘキシルメタクリレート共重合体(モル比20/80、Mw6.0万)
(5)2-(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=メチルスルファート/ヘキシルメタクリレート共重合体(モル比40/60、Mw7.0万)
(6)2-(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6-ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比25/75、Mw6.5万)
(7)2-(ブチルジメチルアンモニオ)エチルアクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6-ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80、Mw6.5万)
(8)2-(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=13-エチル-5,8,11-トリオキサ-1-ヘプタデカンスルホナート/3,6-ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80、Mw7.5万)
感脂化剤の含有量は、画像記録層の全質量に対して、1質量%~40.0質量%が好ましく、2質量%~25.0質量%がより好ましく、3質量%~20.0質量%が更に好ましい。
画像記録層は、感脂化剤を1種単独で含有してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本開示において用いられる画像記録層の好ましい態様の一つは、感脂化剤として、2種以上の化合物を含有する態様である。
具体的には、本開示において用いられる画像記録層は、機上現像性及び着肉性を両立させる観点から、感脂化剤としては、ホスホニウム化合物と、含窒素低分子化合物と、アンモニウム基含有ポリマーと、を併用することが好ましく、ホスホニウム化合物と、第四級アンモニウム塩類と、アンモニウム基含有ポリマーと、を併用することがより好ましい。
〔現像促進剤〕
本開示において用いられる画像記録層は、現像促進剤を更に含むことが好ましい。
現像促進剤は、SP値の極性項の値が6.0~26.0であることが好ましく、6.2~24.0であることがより好ましく、6.3~23.5であることが更に好ましく、6.4~22.0であることが特に好ましい。
本開示におけるSP値(溶解度パラメーター、単位:(cal/cm1/2)の極性項の値は、ハンセン(Hansen)溶解度パラメーターにおける極性項δpの値を用いるものとする。ハンセン(Hansen)溶解度パラメーターは、ヒルデブランド(Hildebrand)によって導入された溶解度パラメーターを、分散項δd、極性項δp、水素結合項δhの3成分に分割し、3次元空間に表したものであるが、本開示においては上記極性項δpを用いる。
δp[cal/cm]はHansen 溶解度パラメーター双極子間力項、V[cal/cm]はモル体積、μ[D]は双極子モーメントである。δpとしては、一般的にはHansenとBeerbowerによって簡素化された下記式が用いられている
現像促進剤としては、親水性高分子化合物又は親水性低分子化合物であることが好ましい。
本開示において、親水性とは、SP値の極性項の値が6.0~26.0であることをいい、親水性高分子化合物とは分子量(分子量分布を有する場合は重量平均分子量)が3,000以上の化合物をいい、親水性低分子化合物とは分子量(分子量分布を有する場合は重量平均分子量)が3,000未満の化合物をいう。
親水性高分子化合物としては、セルロース化合物等が挙げられ、セルロース化合物が好ましい。
セルロース化合物としては、セルロース、又は、セルロースの少なくとも一部が変性された化合物(変性セルロース化合物)が挙げられ、変性セルロース化合物が好ましい。
変性セルロース化合物としては、セルロースのヒドロキシ基の少なくとも一部が、アルキル基及びヒドロキシアルキル基よりなる群から選ばれた少なくとも一種の基により置換された化合物が好ましく挙げられる。
上記セルロースのヒドロキシ基の少なくとも一部が、アルキル基及びヒドロキシアルキル基よりなる群から選ばれた少なくとも一種の基により置換された化合物の置換度は、0.1~6.0であることが好ましく、1~4であることがより好ましい。
変性セルロース化合物としては、アルキルセルロース化合物又はヒドロキシアルキルセルロース化合物が好ましく、ヒドロキシアルキルセルロース化合物がより好ましい。
アルキルセルロース化合物としては、メチルセルロースが好ましく挙げられる。
ヒドロキシアルキルセルロース化合物としては、ヒドロキシプロピルセルロースが好ましく挙げられる。
親水性高分子化合物の分子量(分子量分布を有する場合は重量平均分子量)は、3,000~5,000,000であることが好ましく、5,000~200,000であることがより好ましい。
親水性低分子化合物としては、グリコール化合物、ポリオール化合物、有機アミン化合物、有機スルホン酸化合物、有機スルファミン化合物、有機硫酸化合物、有機ホスホン酸化合物、有機カルボン酸化合物、ベタイン化合物等が挙げられ、ポリオール化合物、有機スルホン酸化合物又はベタイン化合物が好ましい。
グリコール化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類及びこれらの化合物のエーテル又はエステル誘導体類が挙げられる。
ポリオール化合物としては、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
有機アミン化合物としては、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン等及びその塩が挙げられる。
有機スルホン酸化合物としては、アルキルスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等及びその塩が挙げられ、アルキル基の炭素数が1~10のアルキルスルホン酸が好ましく挙げられる。
有機スルファミン化合物としては、アルキルスルファミン酸等及びその塩が挙げられる。
有機硫酸化合物としては、アルキル硫酸、アルキルエーテル硫酸等及びその塩が挙げられる。
有機ホスホン酸化合物としては、フェニルホスホン酸等及びその塩、が挙げられる。
有機カルボン酸化合物としては、酒石酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸等及びその塩が挙げられる。
ベタイン化合物としては、ホスホベタイン化合物、スルホベタイン化合物、カルボキシベタイン化合物等が挙げられ、トリメチルグリシンが好ましく挙げられる。
親水性低分子化合物の分子量(分子量分布を有する場合は重量平均分子量)は、100以上3,000未満であることが好ましく、300~2,500であることがより好ましい。
現像促進剤は、環状構造を有する化合物であることが好ましい。
環状構造としては、特に限定されないが、ヒドロキシ基の少なくとも一部が置換されていてもよいグルコース環、イソシアヌル環、ヘテロ原子を有していてもよい芳香環、ヘテロ原子を有していてもよい脂肪族環等が挙げられ、グルコース環又はイソシアヌル環が好ましく挙げられる。
グルコース環を有する化合物としては、上述のセルロース化合物が挙げられる。
イソシアヌル環を有する化合物としては、上述のトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
芳香環を有する化合物としては、上述のトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等が挙げられる。
脂肪族環を有する化合物としては、上述のアルキル硫酸であって、アルキル基が環構造を有する化合物等が挙げられる。
また、上記環状構造を有する化合物は、ヒドロキシ基を有することが好ましい。
ヒドロキシ基を有し、かつ、環状構造を有する化合物としては、上述のセルロース化合物、及び、上述のトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートが好ましく挙げられる。
また、現像促進剤としては、オニウム塩化合物であることが好ましい。
オニウム塩化合物としては、アンモニウム化合物、スルホニウム化合物等が挙げられ、アンモニウム化合物が好ましい。
オニウム塩化合物である現像促進剤としては、トリメチルグリシン等が挙げられる。
また、上記電子受容型重合開始剤におけるオニウム塩化合物はSP値の極性項の値が6.0~26.0ではない化合物であり、現像促進剤には含まれない。
画像記録層は、現像促進剤を1種単独で含有してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本開示において用いられる画像記録層の好ましい態様の一つは、現像促進剤として、2種以上の化合物を含有する態様である。
具体的には、本開示において用いられる画像記録層は、機上現像性及び着肉性の観点から、現像促進剤として、上記ポリオール化合物及び上記ベタイン化合物、上記ベタイン化合物及び上記有機スルホン酸化合物、又は、上記ポリオール化合物及び上記有機スルホン酸化合物を含むことが好ましい。
画像記録層の全質量に対する現像促進剤の含有量は、0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上15質量%以下がより好ましく、1質量%以上10質量%以下がより好ましい。
〔その他の成分〕
画像記録層には、その他の成分として、界面活性剤、重合禁止剤、高級脂肪酸誘導体、可塑剤、無機層状化合物等を含有することができる。具体的には、特開2008-284817号公報の段落0114~段落0159の記載を参照することができる。
〔画像記録層の形成〕
本開示に係る平版印刷版原版における画像記録層は、例えば、特開2008-195018号公報の段落0142~段落0143に記載のように、必要な上記各成分を公知の溶剤に分散又は溶解して塗布液を調製し、塗布液を支持体上にバーコーター塗布など公知の方法で塗布し、乾燥することにより形成することができる。
溶剤としては、公知の溶剤を用いることができる。具体的には、上記発色層において挙げられた溶剤が挙げられる。溶剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。塗布液中の固形分濃度は1質量%~50質量%であることが好ましい。
塗布、乾燥後における画像記録層の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、良好な感度と画像記録層の良好な皮膜特性を得る観点から、0.3g/m~3.0g/mが好ましい。
また、上記画像記録層の層厚は、0.1μm~3.0μmであることが好ましく、0.3μm~2.0μmであることがより好ましい。
<支持体>
本開示に係る平版印刷版原版は、支持体を有する。
支持体としては、公知の平版印刷版原版用支持体から適宜選択して用いることができる。
支持体としては、親水性表面を有する支持体(以下、「親水性支持体」ともいう。)が好ましい。
本開示における支持体としては、公知の方法で粗面化処理され、陽極酸化処理されたアルミニウム板が好ましい。即ち、本開示における支持体は、アルミニウム板とアルミニウム板上に配置されたアルミニウムの陽極酸化被膜とを有することが好ましい。
また、上記支持体は、アルミニウム板と、上記アルミニウム板上に配置されたアルミニウムの陽極酸化皮膜とを有し、上記陽極酸化皮膜が、上記アルミニウム板よりも上記画像記録層側に位置し、上記陽極酸化皮膜が、上記画像記録層側の表面から深さ方向にのびるマイクロポアを有し、上記マイクロポアの上記陽極酸化皮膜表面における平均径が、10nmを超え100nm以下であることが好ましい。
更に、上記マイクロポアが、上記陽極酸化皮膜表面から深さ10nm~1,000nmの位置までのびる大径孔部と、上記大径孔部の底部と連通し、連通位置から深さ20nm~2,000nmの位置までのびる小径孔部とから構成され、上記大径孔部の上記陽極酸化皮膜表面における平均径が、15nm~100nmであり、上記小径孔部の上記連通位置における平均径が、13nm以下であることが好ましい。
また、本開示における支持体としては、国際公開第2018/181406号に記載の支持体を好適に用いることができる。
支持体は、必要に応じて、画像記録層とは反対側の面に、特開平5-45885号公報に記載の有機高分子化合物又は特開平6-35174号公報に記載のケイ素のアルコキシ化合物等を含むバックコート層を有していてもよい。
<下塗り層>
本開示に係る平版印刷版原版は、画像記録層と支持体との間に下塗り層(中間層と呼ばれることもある。)を有することが好ましい。下塗り層は、露光部においては支持体と画像記録層との密着を強化し、未露光部においては画像記録層の支持体からのはく離を生じやすくさせるため、耐刷性の低下を抑制しながら現像性を向上させることに寄与する。また、赤外線レーザー露光の場合に、下塗り層が断熱層として機能することにより、露光により発生した熱が支持体に拡散して感度が低下するのを防ぐ効果も有する。
下塗り層に用いられる化合物としては、支持体表面に吸着可能な吸着性基及び親水性基を有するポリマーが挙げられる。画像記録層との密着性を向上させるために吸着性基及び親水性基を有し、更に架橋性基を有するポリマーが好ましい。下塗り層に用いられる化合物は、低分子化合物でもポリマーであってもよい。下塗り層に用いられる化合物は、必要に応じて、2種以上を混合して使用してもよい。
下塗り層に用いられる化合物がポリマーである場合、吸着性基を有するモノマー、親水性基を有するモノマー及び架橋性基を有するモノマーの共重合体が好ましい。
支持体表面に吸着可能な吸着性基としては、フェノール性ヒドロキシ基、カルボキシ基、-PO、-OPO、-CONHSO-、-SONHSO-、-COCHCOCHが好ましい。親水性基としては、スルホ基又はその塩、カルボキシ基の塩が好ましい。架橋性基としては、アクリル基、メタクリル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、アリル基などが好ましい。
ポリマーは、ポリマーの極性置換基と、上記極性置換基と対荷電を有する置換基及びエチレン性不飽和結合を有する化合物との塩形成で導入された架橋性基を有してもよいし、上記以外のモノマー、好ましくは親水性モノマーが更に共重合されていてもよい。
具体的には、特開平10-282679号公報に記載されている付加重合可能なエチレン性二重結合反応基を有しているシランカップリング剤、特開平2-304441号公報記載のエチレン性二重結合反応基を有しているリン化合物が好適に挙げられる。特開2005-238816号、特開2005-125749号、特開2006-239867号、特開2006-215263号の各公報に記載の架橋性基(好ましくは、エチレン性不飽和基)、支持体表面と相互作用する官能基及び親水性基を有する低分子又は高分子化合物も好ましく用いられる。
より好ましいものとして、特開2005-125749号及び特開2006-188038号公報に記載の支持体表面に吸着可能な吸着性基、親水性基及び架橋性基を有する高分子ポリマーが挙げられる。
下塗り層に用いられるポリマー中のエチレン性不飽和基の含有量は、ポリマー1g当たり、好ましくは0.1mmol~10.0mmol、より好ましくは0.2mmol~5.5mmolである。
下塗り層に用いられるポリマーの重量平均分子量(Mw)は、5,000以上が好ましく、1万~30万がより好ましい。
下塗り層は、上記下塗り層用化合物の他に、経時による汚れ防止のため、キレート剤、第二級又は第三級アミン、重合禁止剤、アミノ基又は重合禁止能を有する官能基と支持体表面と相互作用する基とを有する化合物(例えば、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、2,3,5,6-テトラヒドロキシ-p-キノン、クロラニル、スルホフタル酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸など)等を含有してもよい。
下塗り層は、公知の方法で塗布される。下塗り層の塗布量(固形分)は、0.1mg/m~100mg/mが好ましく、1mg/m~30mg/mがより好ましい。
<保護層>
本開示に係る平版印刷版原版は、発色性、及び、視認性の観点から、画像記録層と着色層との間に、保護層を更に有することが好ましい。
また、本開示に係る平版印刷版原版は、支持体と、画像記録層と、保護層と、発色層とをこの順で有することが好ましい。
保護層は酸素遮断により画像形成阻害反応を抑制する機能の他、画像記録層における傷の発生防止及び高照度レーザー露光時のアブレーション防止の機能を有していてもよい。
このような特性の保護層については、例えば、米国特許第3,458,311号明細書及び特公昭55-49729号公報に記載されている。保護層に用いられる酸素低透過性のポリマーとしては、水溶性ポリマー、水不溶性ポリマーのいずれをも適宜選択して使用することができ、必要に応じて2種類以上を混合して使用することもできるが、機上現像性の観点から、水溶性ポリマーを含むことが好ましい。
本開示において、水溶性ポリマーとは、70℃、100gの純水に対して1g以上溶解し、かつ、70℃、100gの純水に対して1gのポリマーが溶解した溶液を25℃に冷却しても析出しないポリマーをいう。
保護層において用いられる水溶性ポリマーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、ポリ(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
変性ポリビニルアルコールとしてはカルボキシ基又はスルホ基を有する酸変性ポリビニルアルコールが好ましく用いられる。具体的には、特開2005-250216号公報及び特開2006-259137号公報に記載の変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
上記水溶性ポリマーの中でも、ポリビニルアルコールを含むことが好ましく、けん化度が50%以上であるポリビニルアルコールを含むことが更に好ましい。
上記けん化度は、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、85%以上が更に好ましい。けん化度の上限は特に限定されず、100%以下であればよい。
上記けん化度は、JIS K 6726:1994に記載の方法に従い測定される。
また、保護層の一態様として、ポリビニルアルコールと、ポリエチレングリコールとを含む態様も好ましく挙げられる。
本開示における保護層が水溶性ポリマーを含む場合、保護層の全質量に対する水溶性ポリマーの含有量は、1質量%~99質量%であることが好ましく、3質量%~97質量%であることがより好ましく、5質量%~95質量%であることが更に好ましい。
保護層は、疎水性ポリマーを含むことが好ましい。
疎水性ポリマーとは、125℃、100gの純水に対し5g未満で溶解するか、又は、溶解しないポリマーをいう。
疎水性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル等)、これらの樹脂の原料モノマーを組み合わせた共重合体等が挙げられる。
また、疎水性ポリマーとしては、ポリビニリデンクロライド樹脂を含むことが好ましい。
更に、疎水性ポリマーとしては、スチレン-アクリル共重合体(スチレンアクリル樹脂ともいう。)を含むことが好ましい。
更にまた、疎水性ポリマーは、機上現像性の観点から、疎水性ポリマー粒子であることが好ましい。
疎水性ポリマーは、1種単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
保護層が疎水性ポリマーを含む場合、疎水性ポリマーの含有量は、保護層の全質量に対して、1質量%~70質量%であることが好ましく、5質量%~50質量%であることがより好ましく、10質量%~40質量%であることが更に好ましい。
本開示において、疎水性ポリマーの保護層表面における占有面積率が30面積%以上であることが好ましく、40面積%以上であることがより好ましく、50面積%以上であることが更に好ましい。
疎水性ポリマーの保護層表面における占有面積率の上限としては、例えば、90面積%が挙げられる。
疎水性ポリマーの保護層表面における占有面積率は、以下のようにして測定することができる。
アルバック・ファイ社製PHI nano TOFII型飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF-SIMS)を用い、保護層表面に加速電圧30kVでBiイオンビーム(一次イオン)を照射し、表面から放出される疎水部(即ち、疎水性ポリマーによる領域)に相当するイオン(二次イオン)のピークを測定することで、疎水部のマッピングを行い、100μmあたりに占める疎水部の面積を測定し、疎水部の占有面積率を求め、これを「疎水性ポリマーの保護層表面における占有面積率」とする。
例えば、疎水性ポリマーがアクリル樹脂である場合は、C13のピークにより測定を行う。また、疎水性ポリマーがポリ塩化ビニリデンである場合は、CClのピークにより測定を行う。
上記占有面積率は、疎水性ポリマーの添加量等によって、調整しうる。
保護層は、酸素遮断性を高めるために無機層状化合物を含有してもよい。無機層状化合物は、薄い平板状の形状を有する粒子であり、例えば、天然雲母、合成雲母等の雲母群、式:3MgO・4SiO・HOで表されるタルク、テニオライト、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、リン酸ジルコニウム等が挙げられる。
好ましく用いられる無機層状化合物は雲母化合物である。雲母化合物としては、例えば、式:A(B,C)2-510(OH,F,O)〔ただし、Aは、K、Na、Caのいずれか、B及びCは、Fe(II)、Fe(III)、Mn、Al、Mg、Vのいずれかであり、Dは、Si又はAlである。〕で表される天然雲母、合成雲母等の雲母群が挙げられる。
雲母群においては、天然雲母としては白雲母、ソーダ雲母、金雲母、黒雲母及び鱗雲母が挙げられる。合成雲母としてはフッ素金雲母KMg(AlSi10)F、カリ四ケイ素雲母KMg2.5Si10)F等の非膨潤性雲母、及び、NaテトラシリリックマイカNaMg2.5(Si10)F、Na又はLiテニオライト(Na,Li)MgLi(Si10)F、モンモリロナイト系のNa又はLiヘクトライト(Na,Li)1/8Mg2/5Li1/8(Si10)F等の膨潤性雲母等が挙げられる。更に合成スメクタイトも有用である。
上記の雲母化合物の中でも、フッ素系の膨潤性雲母が特に有用である。すなわち、膨潤性合成雲母は、10Å~15Å(1Å=0.1nm)程度の厚さの単位結晶格子層からなる積層構造を有し、格子内金属原子置換が他の粘土鉱物より著しく大きい。その結果、格子層は正電荷不足を生じ、それを補償するために層間にLi、Na、Ca2+、Mg2+等の陽イオンを吸着している。これらの層間に介在している陽イオンは交換性陽イオンと呼ばれ、いろいろな陽イオンと交換し得る。特に、層間の陽イオンがLi、Naの場合、イオン半径が小さいため層状結晶格子間の結合が弱く、水により大きく膨潤する。その状態でシェアーをかけると容易に劈開し、水中で安定したゾルを形成する。膨潤性合成雲母はこの傾向が強く、特に好ましく用いられる。
雲母化合物の形状としては、拡散制御の観点からは、厚さは薄ければ薄いほどよく、平面サイズは塗布面の平滑性や活性光線の透過性を阻害しない限りにおいて大きい程よい。従って、アスペクト比は、好ましくは20以上であり、より好ましくは100以上、特に好ましくは200以上である。アスペクト比は粒子の厚さに対する長径の比であり、例えば、粒子の顕微鏡写真による投影図から測定することができる。アスペクト比が大きい程、得られる効果が大きい。
雲母化合物の粒子径は、その平均長径が、好ましくは0.3μm~20μm、より好ましくは0.5μm~10μm、特に好ましくは1μm~5μmである。粒子の平均の厚さは、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下、特に好ましくは0.01μm以下である。具体的には、例えば、代表的化合物である膨潤性合成雲母の場合、好ましい態様としては、厚さが1nm~50nm程度、面サイズ(長径)が1μm~20μm程度である。
無機層状化合物の含有量は、保護層の全質量に対して、1質量%~60質量%が好ましく、3質量%~50質量%がより好ましい。複数種の無機層状化合物を併用する場合でも、無機層状化合物の合計量が上記の含有量であることが好ましい。上記範囲で酸素遮断性が向上し、良好な感度が得られる。また、着肉性の低下を防止できる。
保護層は可撓性付与のための可塑剤、塗布性を向上させための界面活性剤、表面の滑り性を制御するための無機粒子など公知の添加物を含有してもよい。また、画像記録層において記載した感脂化剤を保護層に含有させてもよい。
保護層は公知の方法で塗布される。保護層の塗布量(固形分)は、0.01g/m~10g/mが好ましく、0.02g/m~3g/mがより好ましく、0.02g/m~1g/mが特に好ましい。
本開示に係る平版印刷版原版における保護層の膜厚は、0.1μm~5.0μmであることが好ましく、0.3μm~4.0μmであることがより好ましい。
本開示に係る平版印刷版原版は、上述した以外のその他の層を有していてもよい。
その他の層としては、特に制限はなく、公知の層を有することができる。例えば、支持体の画像記録層側とは反対側には、必要に応じてバックコート層が設けられていてもよい。
(平版印刷版の作製方法、及び、平版印刷方法)
本開示に係る平版印刷版原版を画像露光して現像処理を行うことで平版印刷版を作製することができる。
本開示に係る平版印刷版の作製方法は、本開示に係る機上現像型平版印刷版原版を、画像様に露光する工程(以下、「露光工程」ともいう。)と、印刷機上で印刷インキ及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して非画像部の画像記録層を除去する工程(以下、「機上現像工程」ともいう。)と、を含むことが好ましい。
本開示に係る平版印刷方法は、本開示に係る機上現像型平版印刷版原版を画像様に露光する工程(露光工程)と、印刷インキ及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して印刷機上で非画像部の画像記録層を除去し平版印刷版を作製する工程(機上現像工程)と、得られた平版印刷版により印刷する工程(印刷工程)と、を含むことが好ましい。
以下、本開示に係る平版印刷版の作製方法、及び、本開示に係る平版印刷方法について、各工程の好ましい態様を順に説明する。なお、本開示に係る平版印刷版原版は、現像液によっても現像可能である。
以下、平版印刷版の作製方法における露光工程、機上現像工程及び識別工程について説明するが、本開示に係る平版印刷版の作製方法における露光工程と、本開示に係る平版印刷方法における露光工程とは同様の工程であり、本開示に係る平版印刷版の作製方法における機上現像工程と、本開示に係る平版印刷方法における機上現像工程とは同様の工程であり、本開示に係る平版印刷版の作製方法における識別工程と、本開示に係る平版印刷方法における識別工程とは同様の工程である。
<露光工程>
本開示に係る平版印刷版の作製方法は、本開示に係る平版印刷版原版を画像様に露光し、露光部と未露光部とを形成する露光工程を含むことが好ましい。本開示に係る平版印刷版原版は、線画像、網点画像等を有する透明原画を通してレーザー露光するかデジタルデータによるレーザー光走査等で画像様に露光されることが好ましい。
光源の波長は750nm~1,400nmが好ましく用いられる。波長750nm~1,400nmの光源としては、赤外線を放射する固体レーザー及び半導体レーザーが好適である。赤外線レーザーに関しては、出力は100mW以上であることが好ましく、1画素当たりの露光時間は20マイクロ秒以内であるのが好ましく、また照射エネルギー量は10mJ/cm~300mJ/cmであるのが好ましい。また、露光時間を短縮するためマルチビームレーザーデバイスを用いることが好ましい。露光機構は、内面ドラム方式、外面ドラム方式、及びフラットベッド方式等のいずれでもよい。
画像露光は、プレートセッターなどを用いて常法により行うことができる。機上現像の場合には、平版印刷版原版を印刷機に装着した後、印刷機上で画像露光を行ってもよい。
<機上現像工程>
本開示に係る平版印刷版の作製方法は、印刷機上で印刷インキ及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して非画像部の画像記録層を除去する機上現像工程を含むことが好ましい。
以下に、機上現像方式について説明する。
〔機上現像方式〕
機上現像方式においては、画像露光された平版印刷版原版は、印刷機上で油性インキと水性成分とを供給し、非画像部の画像記録層が除去されて平版印刷版が作製されることが好ましい。
すなわち、平版印刷版原版を画像露光後、何らの現像処理を施すことなくそのまま印刷機に装着するか、あるいは、平版印刷版原版を印刷機に装着した後、印刷機上で画像露光し、ついで、油性インキと水性成分とを供給して印刷すると、印刷途上の初期の段階で、非画像部においては、供給された油性インキ及び水性成分のいずれか又は両方によって、未硬化の画像記録層が溶解又は分散して除去され、その部分に親水性の表面が露出する。一方、露光部においては、露光により硬化した画像記録層が、親油性表面を有する油性インキ受容部を形成する。最初に版面に供給されるのは、油性インキでもよく、水性成分でもよいが、水性成分が除去された画像記録層の成分によって汚染されることを防止する点で、最初に油性インキを供給することが好ましい。このようにして、平版印刷版原版は印刷機上で機上現像され、そのまま多数枚の印刷に用いられる。油性インキ及び水性成分としては、通常の平版印刷用の印刷インキ及び湿し水が好適に用いられる。
<印刷工程>
本開示に係る平版印刷方法は、平版印刷版に印刷インキを供給して記録媒体を印刷する印刷工程を含む。
印刷インキとしては、特に制限はなく、所望に応じ、種々の公知のインキを用いることができる。また、印刷インキとしては、油性インキ又は紫外線硬化型インキ(UVインキ)が好ましく挙げられる。
また、上記印刷工程においては、必要に応じ、湿し水を供給してもよい。
また、上記印刷工程は、印刷機を停止することなく、上記機上現像工程に連続して行われてもよい。
記録媒体としては、特に制限はなく、所望に応じ、公知の記録媒体を用いることができる。
本開示に係る平版印刷版原版からの平版印刷版の作製方法、及び、本開示に係る平版印刷方法においては、必要に応じて、露光前、露光中、露光から現像までの間に、平版印刷版原版の全面を加熱してもよい。このような加熱により、画像記録層中の画像形成反応が促進され、感度及び耐刷性の向上や感度の安定化等の利点が生じ得る。現像前の加熱は150℃以下の穏和な条件で行うことが好ましい。上記態様であると、非画像部が硬化してしまう等の問題を防ぐことができる。現像後の加熱には非常に強い条件を利用することが好ましく、100℃~500℃の範囲であることが好ましい。上記範囲であると、十分な画像強化作用が得られまた、支持体の劣化、画像部の熱分解といった問題を抑制することができる。
以下、実施例により本開示を詳細に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。なお、本実施例において、「%」、「部」とは、特に断りのない限り、それぞれ「質量%」、「質量部」を意味する。なお、高分子化合物において、特別に規定したもの以外は、分子量は重量平均分子量(Mw)であり、構成繰り返し単位の比率はモル百分率である。また、重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算値として測定した値である。
(実施例1~41、及び、比較例1~6)
<支持体の作製>
<<表面処理A>>
(A-a)機械的粗面化処理(ブラシグレイン法)
図3に示したような装置を使って、パミスの懸濁液(比重1.1g/cm)を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転する束植ブラシにより機械的粗面化処理を行った。図3において、1はアルミニウム板、2及び4はローラ状ブラシ(本実施例において、束植ブラシ)、3は研磨スラリー液、5、6、7及び8は支持ローラである。
機械的粗面化処理は、研磨材のメジアン径(μm)を30μm、ブラシ本数を4本、ブラシの回転数(rpm)を250rpmとした。束植ブラシの材質は6・10ナイロンで、ブラシ毛の直径0.3mm、毛長50mmであった。ブラシは、φ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。束植ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は300mmであった。束植ブラシはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、束植ブラシをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して10kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。
(A-b)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板に、カセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度70℃でスプレー管により吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。アルミニウム溶解量は、10g/mであった。
(A-c)酸性水溶液中でのデスマット処理
次に、硝酸水溶液中でデスマット処理を行った。デスマット処理に用いる硝酸水溶液は、次工程の電気化学的な粗面化に用いた硝酸の廃液を用いた。その液温は35℃であった。デスマット液はスプレーにて吹き付けて3秒間デスマット処理を行った。
(A-d)電気化学的粗面化処理
硝酸電解60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、温度35℃、硝酸10.4g/Lの水溶液に硝酸アルミニウムを添加してアルミニウムイオン濃度を4.5g/Lに調整した電解液を用いた。交流電源波形は図1に示した波形であり、電流値がゼロからピークに達するまでの時間tpが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽は図2に示すものを使用した。電流密度は電流のピーク値で30A/dm、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。電気量(C/dm)はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で185C/dmであった。その後、スプレーによる水洗を行った。
(A-e)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板に、カセイソーダ濃度5質量%、アルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度50℃でスプレー管により吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。アルミニウム溶解量は、0.5g/mであった。
(A-f)酸性水溶液中でのデスマット処理
次に、硫酸水溶液中でデスマット処理を行った。デスマット処理に用いる硫酸水溶液は、硫酸濃度170g/L、アルミニウムイオン濃度5g/Lの液を用いた。その液温は、30℃であった。デスマット液はスプレーにて吹き付けて3秒間デスマット処理を行った。
(A-g)電気化学的粗面化処理
塩酸電解60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。電解液は、液温35℃、塩酸6.2g/Lの水溶液に塩化アルミニウムを添加してアルミニウムイオン濃度を4.5g/Lに調整した電解液を用いた。交流電源波形は図1に示した波形であり、電流値がゼロからピークに達するまでの時間tpが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽は図2に示すものを使用した。
電流密度は電流のピーク値で25A/dmであり、塩酸電解における電気量(C/dm)はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で63C/dmであった。その後、スプレーによる水洗を行った。
(A-h)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板に、カセイソーダ濃度5質量%、アルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度50℃でスプレー管により吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。アルミニウム溶解量は、0.1g/mであった。
(A-i)酸性水溶液中でのデスマット処理
次に、硫酸水溶液中でデスマット処理を行った。具体的には、陽極酸化処理工程で発生した廃液(硫酸170g/L水溶液中にアルミニウムイオン5g/Lを溶解)を用い、液温35℃で4秒間デスマット処理を行った。デスマット液はスプレーにて吹き付けて3秒間デスマット処理を行った。
(A-j)第1段階の陽極酸化処理
図4に示す構造の直流電解による陽極酸化装置を用いて第1段階の陽極酸化処理を行った。表1に示す条件にて陽極酸化処理を行い、所定の皮膜厚の陽極酸化皮膜を形成した。 なお、陽極酸化処理装置610において、アルミニウム板616は、図4中矢印で示すように搬送される。電解液618が貯溜された給電槽612にてアルミニウム板616は給電電極620によって(+)に荷電される。そして、アルミニウム板616は、給電槽612においてローラ622によって上方に搬送され、ニップローラ624によって下方に方向変換された後、電解液626が貯溜された電解処理槽614に向けて搬送され、ローラ628によって水平方向に方向転換される。ついで、アルミニウム板616は、電解電極630によって(-)に荷電されることにより、その表面に陽極酸化皮膜が形成され、電解処理槽614を出たアルミニウム板616は後工程に搬送される。陽極酸化処理装置610において、ローラ622、ニップローラ624及びローラ628によって方向転換手段が構成され、アルミニウム板616は、給電槽612と電解処理槽614との槽間部において、上記ローラ622、624及び628により、山型及び逆U字型に搬送される。給電電極620と電解電極630とは、直流電源634に接続されている。
(A-k)ポアワイド処理
上記陽極酸化処理したアルミニウム板を、温度35℃、カセイソーダ濃度5質量%、アルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液に表1に示す条件にて浸漬し、ポアワイド処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。
(A-l)第2段階の陽極酸化処理
図4に示す構造の直流電解による陽極酸化装置を用いて第2段階の陽極酸化処理を行った。表1に示す条件にて陽極酸化処理を行い、所定の皮膜厚の陽極酸化皮膜を形成した。
(A-m)第3段階の陽極酸化処理
図4に示す構造の直流電解による陽極酸化装置を用いて第3段階の陽極酸化処理を行った。表1に示す条件にて陽極酸化処理を行い、所定の皮膜厚の陽極酸化皮膜を形成した。
以上の表面処理Aから、表1及び表2に記載の支持体Aを得た。
上記で得られた第2陽極酸化処理工程後のマイクロポアを有する陽極酸化皮膜中の大径孔部の陽極酸化皮膜表面における平均径(nm)、小径孔部の連通位置における平均径(nm)、大径孔部及び小径孔部の深さ(nm)、ピット密度(マイクロポアの密度、単位;個/μm)、並びに、小径孔部の底部からアルミニウム板表面までの陽極酸化皮膜の厚み(nm)を、表2にまとめて示す。
なお、マイクロポアの平均径(大径孔部及び小径孔部の平均径)は、大径孔部表面及び小径孔部表面を倍率15万倍のFE-SEMでN=4枚観察し、得られた4枚の画像において、400nm×600nmの範囲に存在するマイクロポア(大径孔部及び小径孔部)の径を測定し、平均した値である。なお、大径孔部の深さが深く、小径孔部の径が測定しづらい場合、及び、小径孔部中の拡径孔部の測定を行う場合は、陽極酸化皮膜上部を切削し、その後各種径を求めた。
マイクロポアの深さ(大径孔部及び小径孔部の深さ)は、支持体(陽極酸化皮膜)の断面をFE-SEMで観察し(大径孔部深さ観察:15万倍、小径孔部深さ観察:5万倍)、得られた画像において、任意のマイクロポア25個の深さを測定し、平均した値である。
なお、表1中、第1陽極酸化処理欄の皮膜量(AD)量と第2陽極酸化処理欄の皮膜量(AD)とは、各処理で得られた皮膜量を表す。なお、使用される電解液は、表1中の成分を含む水溶液である。
支持体Aを用い、表3に記載の処方1~3のいずれかにより、下塗り層、画像記録層、及び、必要に応じて、保護層を形成した。
処方1~3をそれぞれ以下に示す。
<下塗り層の形成>
得られた支持体A上に、下記組成の下塗り層塗布液を乾燥塗布量が0.1g/mになるよう塗布して、下塗り層を形成した。
-下塗り層用塗布液-
・下塗り層用化合物(下記U-1、11%水溶液):0.10502部
・グルコン酸ナトリウム:0.0700部
・界面活性剤(エマレックス(登録商標) 710、日本エマルジョン(株)製):0.00159部
・防腐剤(バイオホープL、ケイ・アイ化成(株)):0.00149部
・水:2.8719部
<画像記録層の形成>
表3~表5に記載の画像記録層1又は画像記録層2のいずれかを下記のように形成した。
-画像記録層1の形成-
下塗り層上に、下記画像記録層塗布液1をバー塗布し、120℃で40秒間オーブン乾燥して、乾燥塗布量1.0g/mの画像記録層1を形成した。
<<画像記録層塗布液1>>
・赤外線吸収剤(IR-1):0.02000部
・表3に記載の酸発色剤:比較例2、3及び5では0.02500部、比較例4ではそれぞれ0.01250部、合計0.02500部使用した。
・電子受容型重合開始剤(Int-1):0.11000部
・電子供与型重合開始剤(TPB):0.02500部
・重合性化合物(M-1):0.27500部
・アニオン界面活性剤(A-1):0.00600部
・フッ素系界面活性剤(W-1):0.00416部
・2-ブタノン:4.3602部
・1-メトキシ-2-プロパノール:4.4852部
・メタノール:2.2838部
・ミクロゲル液1:2.3256部
赤外線吸収剤(IR-1)のHOMOのエネルギー準位は、-5.35eVである。赤外線吸収剤(IR-1)のLUMOのエネルギー準位は、-3.75eVである。
電子受容型重合開始剤(Int-1)のHOMOのエネルギー準位は、-6.70eVである。電子受容型重合開始剤(Int-1)のLUMOのエネルギー準位は、-3.08eVである。電子受容型重合開始剤(Int-1)の化学式における「Me」は、メチル基を表す。
電子供与型重合開始剤(TPB)のHOMOのエネルギー準位は、-5.90eVである。
〔重合性化合物(M-1)の合成方法〕
タケネートD-160N(ポリイソシアネート トリメチロールプロパンアダクト体、三井化学株式会社製、4.7部)、アロニックスM-403(東亞合成株式会社製、タケネートD-160NのNCO価とアロニックスM-403の水酸基価が1:1となる量)、t-ブチルベンゾキノン(0.02部)、及びメチルエチルケトン(11.5部)の混合溶液を65℃に加熱した。反応溶液に、ネオスタンU-600(ビスマス系重縮合触媒、日東化成株式会社製、0.11部)を加え、65℃で4時間加熱した。反応溶液を室温(25℃)まで冷却し、メチルエチルケトンを加えることで、固形分が50質量%のウレタンアクリレート溶液を合成した。リサイクル型GPC(機器:LC908-C60、カラム:JAIGEL-1H-40及び2H-40(日本分析工業株式会社製))を用いて、テトラヒドロフラン(THF)の溶離液にて、ウレタンアクリレート溶液の分子量分画を実施した。重量平均分子量は20,000であった。
〔ミクロゲル液1の合成方法〕
以下の手順によってミクロゲル1を合成した。
(多価イソシアネート化合物の調製)
イソホロンジイソシアネート(17.78部、80モル当量)と下記多価フェノール化合物(1)(7.35部、20モル当量)との酢酸エチル(25.31部)を含む懸濁溶液に、ビスマストリス(2-エチルヘキサノエート)(ネオスタン U-600、日東化成株式会社製、0.043部)を加えて撹拌した。発熱が収まった時点で反応温度を50℃に設定し、3時間撹拌して多価イソシアネート化合物(1)の酢酸エチル溶液(50質量%)を得た。
(ミクロゲルの調製)
下記油相成分及び水相成分を混合し、ホモジナイザーを用いて12,000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を45℃で4時間撹拌後、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン-オクチル酸塩(U-CAT SA102、サンアプロ株式会社製)の10質量%水溶液(5.20g)を加え、室温で30分撹拌し、45℃で24時間静置した。蒸留水を用いて固形分濃度を20質量%に調整し、ミクロゲル(1)の水分散液を得た。光散乱法により平均粒径を測定したところ、0.28μmであった。
-油相成分-
・(成分1)酢酸エチル:12.0部
・(成分2)トリメチロールプロパン(6モル当量)とキシレンジイソシアネート(18モル当量)とを付加させた後、片末端メチル化ポリオキシエチレン(1モル当量、オキシエチレン単位の繰返し数:90)を付加させた付加体(50質量%酢酸エチル溶液、三井化学株式会社製):3.76部
・(成分3)多価イソシアネート化合物(1)(50質量%酢酸エチル溶液として):15.0部
・(成分4)ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(SR-399、サートマー社製)の65質量%酢酸エチル溶液:11.54部
・(成分5)スルホン酸塩型界面活性剤(パイオニンA-41-C、竹本油脂株式会社製)の10質量%酢酸エチル溶液:4.42部
-水相成分-
・蒸留水:46.87部
-画像記録層2の形成-
下塗り層上に、下記画像記録層塗布液2をバー塗布し、50℃で60秒間オーブン乾燥して、乾燥塗布量0.9g/mの画像記録層2を形成し、平版印刷版原版を作製した。
<<画像記録層塗布液2>>
ポリマー分散液:0.675部
ヒドロキシプロピルメチルセルロース:0.400部
モノマー1:0.036部
モノマー2:0.115部
モノマー3:0.087部
赤外線吸収剤1:0.028部
界面活性剤1:0.045部
ヨードニウム塩1:0.073部
ヨードニウム塩2:0.053部
表3~表5に記載の酸発色剤:ありの場合は0.040部、なしの場合は0部
フェノチアジン:0.005部
1-プロパノール:2.6部
2-ブタノン:3.5部
1-メトキシ-2-プロパノール:0.92部
δ-ブチロラクトン:0.10部
水:1.16部
ポリマー分散液:ポリマー分散液は、欧州特許出願公開第1,765,593号明細書の実施例10に従って調製され、80:20の重量比のn-プロパノール/水23.5質量%分散液として使用した。
ヒドロキシプロピルメチルセルロース:5%水溶液である。30%がメトキシ化、10%がヒドロキシプロポキシル化されたものであり、20℃において2質量%水溶液の粘度が5mPa・sである。
モノマー1:下記化合物
モノマー2:下記化合物
モノマー3:下記化合物
赤外線吸収剤1:下記化合物
界面活性剤1:Byk Chemie社製BYK302を1-メトキシ-2-プロパノールの25質量%溶液として使用した。
ヨードニウム塩1:下記化合物
ヨードニウム塩2:下記化合物
フェノチアジン::下記化合物
<保護層の形成>
表3~表5の記載に応じ、下記保護層塗布液を画像記録層上にバー塗布し、120℃で60秒間オーブン乾燥して、乾燥塗布量0.05g/mの保護層を形成した。
-保護層塗布液-
・無機層状化合物分散液(1)(下記):0.5625部
・親水性ポリマー(1)(下記化合物の20%水溶液):0.0825部
・メトローズSM04(メチルセルロース、信越化学工業(株)製、メトキシ置換度=1.8):0.0125部
・ラピゾールA-80(アニオン界面活性剤、日油(株)製、80%水溶液):0.007部
・イオン交換水:4.3355部
上記保護層塗布液に用いた無機層状化合物分散液(1)の調製法を以下に示す。
-無機層状化合物分散液(1)の調製-
イオン交換水193.6部に合成雲母(ソマシフME-100、コープケミカル(株)製)6.4部を添加し、ホモジナイザーを用いて平均粒径(レーザー散乱法)が3μmになるまで分散した。得られた分散粒子のアスペクト比は100以上であった。
<発色層の形成>
表3~表5の記載に応じ、画像記録層又は保護層上に、下記発色層塗布液をバー塗布し、120℃で40秒間オーブン乾燥して、乾燥塗布量0.12g/mの発色層を形成し、平版印刷版原版を作製した。
-発色層塗布液-
表3~表5に記載の各成分を表3~表5に記載の質量比で、1-メトキシ-2-プロパノール(MFG):メチルエチルケトン(MEK)=2:3の混合溶媒で溶解し、固形分が3質量%になるように調整した。
<平版印刷版原版の評価>
〔経時退色抑制性〕
エネルギー密度110mJ/cmにて波長830nmの赤外線による露光を行った場合の、上記露光を行った部分における上記露光直後と露光後25℃50%RHの条件にて3日間保管後との明度変化ΔLの測定は、以下の方法により行った。
得られた平版印刷版原版を、波長830nmの赤外線半導体レーザー搭載の富士フイルム グラフィックシステムズ(株)製Luxel PLATESETTER T-9800により、出力99.5%、外面ドラム回転数220rpm、解像度2,400dpi(dots per inch、1inch=25.4mm)の条件(エネルギー密度110mJ/cm)で露光した。露光は25℃、50%RHの環境下で行った。
露光した平版印刷版原版を25℃50%RHの条件にて3日間保管し、保管前後の平版印刷版原版の明度変化を測定した。測定には、X-Rite社製分光測色計eXactを用いる。L表色系のL値(明度)を用い、ΔL=3日間保管後の露光部のL値/露光した直後の露光部のL値×100の値(%)を算出した。ΔLの値が大きいほど、経時退色抑制性に優れる。
表3~表5に記載の略号の詳細を、以下に示す。
<酸発色剤>
C-1~C-10:下記化合物
<赤外線吸収剤>
IR Dye-1~4及び6~8:下記化合物
<電子受容型重合開始剤>
Int-1~3:下記化合物
<ポリマーA>
PVB:ポリビニルブチラール、積水化学工業(株)製エスレックB BM-1、Mw=40,000
PMMA:ポリメチルメタクリレート、SIGMA-ALDRICH社製、Mw=120,000
P-1:ポリベンジルメタクリレート、SIGMA-ALDRICH社製、Mw=100,000
P-2:ポリイソブチルメタクリレート(製品コードM0086)、東京化成工業(株)製
P-3:ポリイソプレン、(株)クラレ製UC-203、Mw=35,000
P-4:ポリブタジエン、日本曹達(株)製B-3000、Mw=3,200
PMA:ポリメチルアクリレート、SIGMA-ALDRICH社製、Mw=40,000
P-5:ポリブチルアクリレート、SUPELCO社製、Mw=60,000
変性PVA:変性ポリビニルアルコール、三菱ケミカル(株)製ゴーセネックス LW-100
表3~表5に記載した結果から、実施例に係る平版印刷版原版は、比較例に係る平版印刷版原版と比べて、露光後の経時に伴う視認性低下の抑制性に優れることがわかる。
1:アルミニウム板、2及び4:ローラ状ブラシ、3:研磨スラリー液、5、6、7及び8:支持ローラ、50:主電解槽、52:ラジアルドラムローラ、51:交流電源、53a及び53b:主極、55:電解液、54:電解液供給口、56:スリット、57:電解液通路、58:補助陽極、60:補助陽極槽、Ex:電解液排出口、S:給液、W:アルミニウム板、610:陽極酸化処理装置、612:給電槽、614:電解処理槽、616:アルミニウム板、618,26:電解液、620:給電電極、622,628:ローラ、624:ニップローラ、630:電解電極,632:槽壁、634:直流電源、ta:アノード反応時間、tc:カソード反応時間、tp:電流が0からピークに達するまでの時間、Ia:アノードサイクル側のピーク時の電流、Ic:カソードサイクル側のピーク時の電流、AA:アルミニウム板のアノード反応の電流、CA:アルミニウム板のカソード反応の電流

Claims (13)

  1. 支持体、画像記録層、及び、発色層をこの順に有し、
    前記発色層が、酸発色剤と、重合開始剤と、赤外線吸収剤と、ガラス転移温度が50℃以上であるか又はclogPが0.5以上である構成単位を有するポリマーAとを含む
    機上現像型平版印刷版原版。
  2. 前記発色層と前記画像記録層との間に、保護層を更に有する請求項1に記載の機上現像型平版印刷版原版。
  3. 前記ポリマーAの含有量が、前記発色層の全質量に対し、10質量%以上である請求項1又は請求項2に記載の機上現像型平版印刷版原版。
  4. 前記ポリマーAの含有量が、前記発色層の全質量に対し、30質量%以上である請求項3に記載の機上現像型平版印刷版原版。
  5. 前記ポリマーAが、ガラス転移温度が50℃以上である(メタ)アクリレート化合物のホモポリマー、又は、ポリビニルブチラールである請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
  6. 前記ポリマーAが、ガラス転移温度が50℃以上であり、かつメタクリレート化合物のホモポリマー、又は、ポリビニルブチラールである請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
  7. 前記ポリマーAが、ポリメチルメタクリレート、ポリベンジルメタクリレート、ポリイソブチルメタクリレート、又は、ポリビニルブチラールである請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
  8. 前記酸発色剤が、ロイコ色素である請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
  9. 前記画像記録層が、赤外線吸収剤、重合性化合物、及び、重合開始剤を含む請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
  10. 前記画像記録層における前記重合開始剤が、ボレート化合物を含む請求項9に記載の機上現像型平版印刷版原版。
  11. 前記発色層における前記重合開始剤が、ボレート化合物を含む請求項1~請求項10に記載の機上現像型平版印刷版原版。
  12. 請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版を、画像様に露光する工程と、
    印刷機上で印刷インキ及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して非画像部の画像記録層を除去する工程と、を含む
    平版印刷版の作製方法。
  13. 請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版を、画像様に露光する工程と、
    印刷機上で印刷インキ及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して非画像部の画像記録層を除去し平版印刷版を作製する工程と、
    得られた平版印刷版により印刷する工程と、を含む
    平版印刷方法。
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