JP2023109485A - 液晶ポリマー組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、機械強度を維持しつつ、柔軟性および誘電率が改善された液晶ポリマー組成物を提供することを目的とする。【解決手段】本発明は、液晶ポリマー100質量部、環状オレフィン系樹脂0.1~30質量部および官能基含有共重合体0.1~10質量部を含有し、ASTM D790に準拠した曲げ試験において、65mm×12.7mm×2.0mmの短冊状試験片を用いて測定した最大歪みが4.5%以上であり、かつ、JIS C2565に準拠した空洞共振器摂動法で85mm×1.7mm×1.7mmの試験片を用いて10GHzにて測定した誘電率が3.60以下である、液晶ポリマー組成物に関する。【選択図】なし

Description

本発明は、機械強度を維持しつつ、柔軟性および誘電率が改善された液晶ポリマー組成物に関する。
サーモトロピック液晶ポリマー(以下、液晶ポリマーまたはLCPと略称する)は、機械特性、成形性、耐薬品性、ガス遮断性、耐湿性、電気特性などに優れるため、多種多様な分野の部品に用いられている。特に、耐熱性、薄肉成形性および絶縁性に優れることから、電子部品等への使用が拡大しつつある。
近年、高度情報化社会の発展とともに、パーソナル・コンピューターや携帯電話等の情報・通信分野において、情報通信機器の伝送情報量および伝達速度が爆発的に増大している。特に、マイクロ波およびミリ波の高周波領域において適応できる高性能な高周波用電子部品のニーズがより強くなってきている。
しかしながら、誘電率の高い液晶ポリマーを電気コネクタの基板やフレキシブルプリント配線(FPC)基材等として使用した場合、高周波信号が減衰してしまい、信号伝播速度が低下するといった問題が生じる。そのため、これらの電子部品に使用する液晶ポリマーは、低誘電率であることが求められている。
また、液晶ポリマーは分子構造が剛直であるが故に柔軟性に劣るといった欠点があり、FPC基材等に用いるには、低誘電率などの電気特性に加えて柔軟性も求められている。
一般に、液晶ポリマーにガラス繊維およびガラスバルーンが配合された液晶性ポリエステル樹脂組成物(特許文献1)は誘電率が低いことが知られている。また、液晶ポリマーの誘電率を低下させるために、アスペクト比4以上の繊維状充填材および特定粒子径の無機球状中空体が配合された液晶ポリエステル組成物が提案されている(特許文献2)。
特開2004-323705号公報 特開2004―143270号公報
しかしながら、上記液晶ポリエステル組成物は、液晶ポリマー中でガラスビーズや無機球状中空体が破損したり、均一に分散しないといったことにより、組成物の物性が低下したり、物性にムラが発生するなどの問題があり、柔軟性についても検討されていない。
本発明の目的は、機械強度を維持しつつ、柔軟性および誘電率が改善された液晶ポリマー組成物を提供することにある。
本発明者等は、上記課題に鑑み、鋭意検討した結果、液晶ポリマーに、所定量の環状オレフィン系樹脂および官能基含有共重合体を配合することにより、機械強度を維持しつつ、柔軟性および誘電率が改善された液晶ポリマー組成物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下の好適な態様を包含する。
〔1〕液晶ポリマー100質量部、環状オレフィン系樹脂0.1~30質量部および官能基含有共重合体0.1~10質量部を含有し、ASTM D790に準拠した曲げ試験において、65mm×12.7mm×2.0mmの短冊状試験片を用いて測定した最大歪みが4.5%以上であり、かつ、JIS C2565に準拠した空洞共振器摂動法で85mm×1.7mm×1.7mmの試験片を用いて10GHzにて測定した誘電率が3.60以下である、液晶ポリマー組成物。
〔2〕液晶ポリマーは、式(I)~(III)
Figure 2023109485000001
[式中、
ArおよびArは、それぞれ1種または2種以上の2価の芳香族基を表し、p、qおよびrは、それぞれ、液晶ポリエステル(A)中での各繰返し単位の組成比(モル%)であり、以下の条件を満たす:
35≦p≦90、
5≦q≦30、および
5≦r≦30]
で表される繰返し単位を含む液晶ポリエステル(A)と、
式(IV)および式(V)
Figure 2023109485000002
[式中、
sおよびtはそれぞれ、液晶ポリエステル(B)中での各繰返し単位の組成比(モル%)であり、以下の条件を満たす:
80/20≦s/t≦60/40]
で表される繰返し単位を含む液晶ポリエステル(B)
を含有し、
(A)と(B)の質量比[(A)/(B)]が90/10~45/55である、〔1〕に記載の液晶ポリマー組成物。
〔3〕官能基含有共重合体は、無水マレイン酸グラフトポリオレフィン系共重合体および/またはエポキシ基含有ポリオレフィン系共重合体である、〔1〕または〔2〕に記載の液晶ポリマー組成物。
〔4〕 〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の液晶ポリマー組成物から構成される成形品。
〔5〕成形品は、フィルム、シートおよびFPC基材からなる群から選択される、〔4〕に記載の成形品。
本発明によれば、機械強度を維持しつつ、柔軟性および誘電率が改善された液晶ポリマー組成物を提供することができる。
本発明の液晶ポリマー組成物において使用される液晶ポリマーは、当業者にサーモトロピック液晶ポリマーと呼ばれる、異方性溶融相を形成するポリエステルまたはポリエステルアミドであり、当該技術分野においてサーモトロピック液晶ポリエステルまたはサーモトロピック液晶ポリエステルアミドと呼ばれるものであれば特に限定されない。
異方性溶融相の性質は、直交偏光子を利用した慣用の偏光検査法により確認することができる。より具体的には、異方性溶融相の確認は、Leitz偏光顕微鏡を使用し、Leitzホットステージにのせた試料を窒素雰囲気下で40倍の倍率で観察することにより実施できる。本発明における液晶ポリマーは光学的に異方性を示すもの、即ち、直交偏光子の間で検査したときに光を透過させるものである。試料が光学的に異方性であると、たとえ静止状態であっても偏光は透過する。
本発明における液晶ポリマーを構成する重合性単量体としては、例えば芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族アミノカルボン酸、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、脂肪族ジオールおよび脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。液晶ポリマーを構成する重合性単量体は、これら化合物は1種のみであってもよく、2種以上の化合物を組み合わせてもよいが、少なくとも1種のヒドロキシ基およびカルボキシル基を有する重合性単量体を含むことが望ましい。
液晶ポリマーを構成する重合性単量体は、前記化合物の1種以上が結合してなるオリゴマー、つまり1種以上の前記化合物から構成されるオリゴマーであってもよい。
芳香族ヒドロキシカルボン酸の具体例としては、4-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、2-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、5-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、7-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、4’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸、3’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸、4’-ヒドロキシフェニル-3-安息香酸およびそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体ならびにこれらのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中でも、得られる液晶ポリマーの耐熱性および機械強度ならびに融点を調節し易いという観点から、4-ヒドロキシ安息香酸および6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸からなる群から選択される1種以上の化合物が好ましい。
芳香族ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジカルボキシビフェニル、3,4’-ジカルボキシビフェニルおよび4,4’’-ジカルボキシターフェニル、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体ならびにそれらのエステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中でも、得られる液晶ポリマーの耐熱性を効果的に高められる観点から、テレフタル酸、イソフタル酸および2,6-ナフタレンジカルボン酸からなる群から選択される1種以上の化合物が好ましく、テレフタル酸および2,6-ナフタレンジカルボン酸がより好ましい。
芳香族ジオールの具体例としては、ハイドロキノン、レゾルシン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、3,3’-ジヒドロキシビフェニル、3,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニルエーテルおよび2,2’-ジヒドロキシビナフチル、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体ならびにそれらのアシル化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中でも、重合時の反応性に優れる観点から、ハイドロキノン、レゾルシン、4,4’-ジヒドロキシビフェニルおよび2,6-ジヒドロキシナフタレンからなる群から選択される1種以上の化合物が好ましく、ハイドロキノン、4,4’-ジヒドロキシビフェニルおよび2,6-ジヒドロキシナフタレンからなる群から選択される1種以上の化合物がより好ましい。
芳香族アミノカルボン酸の具体例としては、4-アミノ安息香酸、3-アミノ安息香酸、6-アミノ-2-ナフトエ酸、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにそれらのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
芳香族ヒドロキシアミンの具体例としては、4-アミノフェノール、N-メチル-4-アミノフェノール、3-アミノフェノール、3-メチル-4-アミノフェノール、4-アミノ-1-ナフトール、4-アミノ-4’-ヒドロキシビフェニル、4-アミノ-4’-ヒドロキシビフェニルエーテル、4-アミノ-4’-ヒドロキシビフェニルメタン、4-アミノ-4’-ヒドロキシビフェニルスルフィドおよび2,2’-ジアミノビナフチル、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにそれらのアシル化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中でも、得られる液晶ポリマーの耐熱性および機械強度のバランスをとりやすい観点から、4-アミノフェノールが好ましい。
芳香族ジアミンの具体例としては、1,4-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミン、1,5-ジアミノナフタレン、1,8-ジアミノナフタレン、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにそれらのアシル化物などのアミド形成性誘導体が挙げられる。
脂肪族ジオールの具体例としては、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ならびにそれらのアシル化物が挙げられる。また、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどの脂肪族ジオールを含有するポリマーを、前記の芳香族オキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオールおよびそれらのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などと反応させてもよい。
脂肪族ジカルボン酸の具体例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、フマル酸、マレイン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸およびヘキサヒドロテレフタル酸が挙げられる。これらの中でも、重合時の反応性に優れる観点から、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸および1,4-シクロヘキサンジカルボン酸が好ましい。
本発明において液晶ポリマーは、本発明の目的を損なわない範囲で、ジヒドロキシテレフタル酸、4-ヒドロキシイソフタル酸、5-ヒドロキシイソフタル酸、トリメリット酸、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸、ピロメリット酸またはこれらのアルキル、アルコキシもしくはハロゲン置換体、ならびにそれらのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体を重合性単量体として含むものであってもよい。これらの重合性単量体の使用量は、他の重合性単量体の合計量に対して10モル%以下であるのが好ましい。
本発明において液晶ポリマーは、本発明の目的を損なわない範囲で、チオエステル結合を含むものであってもよい。このような結合を与える重合性単量体としては、メルカプト芳香族カルボン酸、および芳香族ジチオールおよびヒドロキシ芳香族チオールなどが挙げられる。これらの重合性単量体の含有量は、他の重合性単量体の合計量に対して10モル%以下であるのが好ましい。
これらの繰返し単位を組み合わせたポリマーは、単量体の構成や組成比、ポリマー中での各繰返し単位のシークエンス分布によって異方性溶融相を形成するものと異方性溶融相を形成しないものとが存在するが、本発明に用いる液晶ポリマーは異方性溶融相を形成するものに限られる。単量体の構成や組成比、ポリマー中での各繰返し単位のシークエンス分布は、異方性溶融相を形成する液晶ポリマーが得られるように当業者であれば適宜選択および調節することができる。
本発明の一つの実施形態において、液晶ポリマーとしては、式(I)~(III)
Figure 2023109485000003
[式中、
ArおよびArは、それぞれ1種または2種以上の2価の芳香族基を表し、p、qおよびrは、それぞれ、液晶ポリエステル(A)中での各繰返し単位の組成比(モル%)であり、以下の条件を満たす:
35≦p≦90、
5≦q≦30、および
5≦r≦30]
で表される繰返し単位を含む液晶ポリエステル(A)と、
式(IV)および式(V)
Figure 2023109485000004
[式中、
sおよびtはそれぞれ、液晶ポリエステル(B)中での各繰返し単位の組成比(モル%)であり、以下の条件を満たす:
80/20≦s/t≦60/40]
で表される繰返し単位を含む液晶ポリエステル(B)
を含有し、
液晶ポリエステル(A)と液晶ポリエステル(B)の質量比[(A)/(B)]が90/10~45/55である液晶ポリエステルが好適に使用される。この場合、液晶ポリエステル(A)と液晶ポリエステル(B)の質量比[(A)/(B)]は85/15~50/50がより好ましく、80/20~60/40がさらに好ましい。
以下、液晶ポリエステル(A)について説明する。
式(I)に係る組成比pは、35~90モル%であり、40~85モル%が好ましく、45~80モル%がより好ましく、50~65モル%がさらに好ましい。
式(II)に係る組成比qと、式(III)に係る組成比rは、それぞれ、5~30モル%であり、7.5~29モル%が好ましく、10~27.5モル%がより好ましく、17.5~25モル%がさらに好ましい。qとrは、等モル量であるのが好ましい。
上記の繰返し単位において、例えばAr(またはAr)が2種以上の2価の芳香族基を表すとは、式(II)(または式(III))で表される繰返し単位が液晶ポリエステル中に2価の芳香族基の種類に応じて2種以上含まれることを意味する。この場合、式(II)に係る組成比q(または式(III)に係る組成比r)は、2種以上の繰返し単位を合計した組成比を表す。
式(I)で表される繰返し単位を与える単量体の具体例としては、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ならびにこのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
式(II)で表される繰返し単位を与える単量体の具体例としては、芳香族ジオールであるハイドロキノン、レゾルシン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、3,3’-ジヒドロキシビフェニル、3,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニルエーテルなど、およびそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにこれらのアシル化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
式(III)で表される繰返し単位を与える単量体の具体例としては、芳香族ジカルボン酸であるテレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジカルボキシビフェニルなど、およびそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにこれらのエステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
なかでも、液晶ポリエステル(A)として、式(II)および式(III)で表される繰返し単位に係るArおよびArが、互いに独立して、式(1)~(4)で表される芳香族基からなる群から選択される1種または2種以上を含むものが好ましく使用される。
Figure 2023109485000005
このなかでも、式(II)で表される繰返し単位としては、式(1)および式(3)で表される芳香族基が、重合時の反応性および得られる液晶ポリエステル(A)の機械物性、耐熱性、結晶融解温度および成形加工性を適度なレベルに調整しやすいことからより好ましい。これら繰返し単位を与える単量体としては、4,4’-ジヒドロキシビフェニルおよびハイドロキノン、ならびにこれのエステル形成性誘導体が挙げられる。
また、式(III)で表される繰返し単位としては、式(1)で表される芳香族基が、得られる液晶ポリエステル(A)の機械物性、耐熱性、結晶融解温度および成形加工性を適度なレベルに調整しやすいことからより好ましい。これら繰返し単位を与える単量体としては、テレフタル酸ならびにこのエステル形成性誘導体が挙げられる。
さらに、液晶ポリエステル(A)として、式(II)で表される繰返し単位に式(1)および式(3)で表される少なくとも2種の繰返し単位が含まれ、式(3)に係る繰返し単位が、式(II)で表される繰返し単位100モル%中、好ましくは80~99.9モル%、より好ましくは85~99モル%、さらに好ましくは90~98モル%含まれるものが特に好ましく使用される。
本発明の液晶ポリエステル(A)において繰返し単位の組成比の合計[p+q+r]が100モル%であることが好ましいが、本発明の目的を損なわない範囲において、他の繰返し単位をさらに含んでもよい。
他の繰返し単位を与える単量体としては、他の芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、芳香族アミノカルボン酸、芳香族ヒドロキシジカルボン酸、脂肪族ジオール、脂肪族ジカルボン酸、芳香族メルカプトカルボン酸、芳香族ジチオール、芳香族メルカプトフェノールおよびこれらの組合せなどが挙げられる。
他の芳香族ヒドロキシカルボン酸の具体例としては、4-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、2-ヒドロキシ安息香酸、5-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、7-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、4’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸、3’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸、4’-ヒドロキシフェニル-3-安息香酸およびそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにこれらのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
これらの他の単量体成分から与えられる繰返し単位の組成比の合計は、繰返し単位全体において、10モル%以下であるのが好ましい。
本発明に使用される液晶ポリエステル(A)の結晶融解温度は、特に限定されないが、310~360℃が好ましい。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、「結晶融解温度」とは、示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimeter、以下DSCと略す)によって、昇温速度20℃/分で測定した際の結晶融解ピーク温度から求めたものである。より具体的には、液晶ポリエステルの試料を、室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)の観測後、Tm1より20~50℃高い温度で10分間保持し、次いで、20℃/分の降温条件で室温まで試料を冷却した後に、再度20℃/分の昇温条件で測定した際の吸熱ピークを観測し、そのピークトップを示す温度を液晶ポリエステルの結晶融解温度とする。測定用機器としては、例えば、セイコーインスツルメンツ(株)Exstar6000などを使用することができる。
本発明に使用される液晶ポリエステル(A)は、キャピラリーレオメーター(東洋精機(株)製キャピログラフ1D)により、0.7mmφ×10mmのキャピラリーを用いて、剪断速度1000s-1の条件下、結晶融解温度+30℃で測定した溶融粘度が、1~1000Pa・sであるものが好ましく、5~300Pa・sであるものがより好ましい。
次に、液晶ポリエステル(B)について説明する。
液晶ポリエステル(B)において、式(IV)で表される繰返し単位および式(V)で表される繰返し単位のモル比率[s/t]は、80/20~60/40であり、好ましくは75/25~70/30である。
液晶ポリエステル(B)において式(IV)で表される繰返し単位を与える単量体の具体例としては、4-ヒドロキシ安息香酸、ならびにこのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
液晶ポリエステル(B)において式(V)で表される繰返し単位を与える単量体の具体例としては、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ならびにこのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
液晶ポリエステル(B)において繰返し単位の組成比の合計[s+t]が100モル%であることが好ましいが、本発明の目的を損なわない範囲において、他の繰返し単位をさらに含有してもよい。
液晶ポリエステル(B)を構成する他の繰返し単位を与える単量体としては、他の芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ジカルボン酸あるいは芳香族ヒドロキシジカルボン酸、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、芳香族アミノカルボン酸、芳香族メルカプトカルボン酸、芳香族ジチオール、芳香族メルカプトフェノールおよびこれらの組合せなどが挙げられる。
他の芳香族ヒドロキシカルボン酸の具体例としては、3-ヒドロキシ安息香酸、2-ヒドロキシ安息香酸、5-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、7-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、4’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸、3’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸、4’-ヒドロキシフェニル-3-安息香酸およびそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにこれらのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
他の繰返し単位を与える単量体である芳香族ジオールの具体例は、式(II)の繰返し単位を与える単量体として述べたものと同様である。
他の繰返し単位を与える単量体である芳香族ジカルボン酸の具体例は、式(III)の繰返し単位を与える単量体として述べたものと同様である。
これらの他の単量体成分から与えられる繰返し単位の組成比の合計は、繰返し単位全体において、10モル%以下であるのが好ましい。
本発明に使用される液晶ポリエステル(B)の結晶融解温度は、特に限定はされないが、例えば、250~300℃が好ましい。
本発明に使用される液晶ポリエステル(B)は、キャピラリーレオメーターにより、0.7mmφ×10mmのキャピラリーを用いて、剪断速度1000s-1の条件下、結晶融解温度+40℃で測定した溶融粘度が、1~1000Pa・sであるものが好ましく、5~300Pa・sであるものがより好ましい。
以下、液晶ポリマーの製造方法について説明する。
本発明に用いる液晶ポリマーの製造方法に特に制限はなく、前記の単量体の組み合わせからなるエステル結合などを形成させる公知の重縮合方法、例えば溶融アシドリシス法、スラリー重合法などを使用することができる。
溶融アシドリシス法とは、本発明において用いる液晶ポリマーを製造するのに適した方法であり、この方法は、最初に単量体を加熱して反応物質の溶融液を形成し、反応を継続することにより溶融ポリエステルを得るものである。なお、縮合の最終段階で副生する揮発物(例えば酢酸、水など)の除去を容易にするために真空を適用してもよい。
スラリー重合法とは、熱交換流体の存在下で反応させる方法であって、固体生成物は熱交換媒質中に懸濁した状態で得られる。
溶融アシドリシス法およびスラリー重合法のいずれの場合においても、液晶ポリマーを製造する際に使用する重合性単量体成分は、常温において、ヒドロキシル基をアシル化した変性形態、すなわち低級アシル化物として反応に供することもできる。低級アシル基は炭素原子数2~5のものが好ましく、炭素原子数2または3のものがより好ましい。特に好ましくは前記単量体成分のアセチル化物を反応に用いる方法が挙げられる。
単量体の低級アシル化物は、別途アシル化して予め合成したものを用いてもよいし、液晶ポリエステルの製造時にモノマーに無水酢酸などのアシル化剤を加えて反応系内で生成せしめることもできる。
溶融アシドリシス法またはスラリー重合法のいずれの場合においても反応時、必要に応じて触媒を用いてもよい。
触媒の具体例としては、有機スズ化合物(ジブチルスズオキシドなどのジアルキルスズオキシド、ジアリールスズオキシドなど)、有機チタン化合物(二酸化チタン、三酸化アンチモン、アルコキシチタンシリケート、チタンアルコキシドなど)、カルボン酸のアルカリおよびアルカリ土類金属塩(酢酸カリウム、酢酸ナトリウムなど)、ルイス酸(BFなど)、ハロゲン化水素などの気体状酸触媒(HClなど)などが挙げられる。
触媒の使用量は、モノマー質量に対し10~1000ppmが好ましく、20~200ppmがより好ましい。
このような重縮合反応によって得られた液晶ポリマーは、溶融状態で重合反応槽より抜き出された後に、ペレット状、フレーク状、または粉末状に加工され、成形加工や溶融混練に供される。
ペレット状、フレーク状、または粉末状の液晶ポリマーは、分子量を高めて耐熱性を向上させる目的で、減圧下、真空下または不活性ガスである窒素やヘリウムなどの雰囲気下において、実質的に固相状態で熱処理を行ってもよい。
固相状態において行う熱処理の温度は、液晶ポリマーが溶融しない限り特に限定されないが、通常260~350℃、好ましくは280~320℃で行うのがよい。
本発明の液晶ポリマー組成物は上記液晶ポリマーの他に、環状オレフィン系樹脂を含有する。
本発明の液晶ポリマー組成物に用いられる環状オレフィン系樹脂は官能基含有共重合体とは異なる樹脂であって、これには、ノルボルネンまたは多環ノルボルネン系モノマー等の環状オレフィンの重合体、若しくはそれらの共重合体が含まれる。当該環状オレフィン系樹脂は、開環構造を含んでもよく、また、開環構造を含む環状オレフィン系樹脂を水素添加したものでもよい。また、当該環状オレフィン系樹脂は、透明性を著しく損なわず、著しく吸湿性を増大させない範囲で、鎖状オレフィンおよび/またはビニル芳香族化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。また、当該環状オレフィン系樹脂は、その分子内に極性基が導入されていてもよい。
鎖状オレフィンとしては、エチレンおよびプロピレン等が挙げられる。また、ビニル芳香族化合物としては、スチレン、α-メチルスチレンおよびアルキル置換スチレン等が挙げられる。
環状オレフィン系樹脂が、環状オレフィンと、鎖状オレフィンまたはビニル芳香族化合物との共重合体である場合、環状オレフィンに由来する構造単位の含有量は、共重合体の全構造単位に対して、通常50モル%以下であり、好ましくは15~50モル%であり、より好ましくは20~45モル%、さらに好ましくは25~40モル%である。
環状オレフィン系樹脂が、環状オレフィンと、鎖状オレフィンと、ビニル芳香族化合物との三元共重合体である場合、鎖状オレフィンに由来する構造単位の含有量は、共重合体の全構造単位に対して、通常5~80モル%であり、ビニル芳香族化合物に由来する構造単位の含有量は、共重合体の全構造単位に対して、通常5~80モル%である。このような三元共重合体には、高価な環状オレフィンの使用量を比較的少なくすることができるという利点がある。
環状オレフィン系樹脂は、市場から入手できる。市販の環状オレフィン系樹脂としては、Topas(登録商標)(Ticona社(独))、アートン(登録商標)(JSR(株))、ゼオノア(ZEONOR)(登録商標)(日本ゼオン(株))、ゼオネックス(ZEONEX)(登録商標)(日本ゼオン(株))および、アペル(登録商標)(三井化学(株))等が挙げられる。
本発明の液晶ポリマー組成物における環状オレフィン系樹脂の含有量は、液晶ポリマー100質量部に対して、0.1~30質量部であり、好ましくは0.5~28質量部であり、より好ましくは1~27質量部であり、さらに好ましくは2~26質量部である。
環状オレフィン系樹脂の含有量が0.1質量部を下回る場合、得られる液晶ポリマー組成物の誘電率および柔軟性の改善効果が十分に得られない。環状オレフィン系樹脂の含有量が30質量部を上回る場合、得られる液晶ポリマー組成物の曲げ強度などの機械強度が低下する。
本発明の液晶ポリマー組成物は上記液晶ポリマーおよび環状オレフィン系樹脂の他に、官能基含有共重合体を含有する。ここで、官能基含有共重合体が含有する官能基としては、カルボキシル基、酸無水物、エステル結合、アミド結合、ニトリル基、カルボニル基、ヒドロキシ基、アミノ基、イミノ基、エーテル結合、ニトロ基、ハロゲン基、アルキル基が挙げられる。
官能基含有共重合体は環状オレフィン系樹脂とは異なる共重合体であって、その具体例としては、無水マレイン酸グラフトポリオレフィン系共重合体、無水マレイン酸グラフトポリスチレン系共重合体、ビニルモノマー/無水マレイン酸共重合体、エポキシ基含有ポリオレフィン系共重合体、エポキシ基含有ビニル系ランダムまたはグラフトもしくはブロック共重合体、カルボキシル基含有オレフィン系ランダムまたはグラフト共重合体などが挙げられる。これらの中でも、酸無水物基、カルボキシル基およびエポキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する共重合体が好ましく、無水マレイン酸グラフトポリオレフィン系共重合体および/またはエポキシ基含有ポリオレフィン系共重合体がより好ましい。
無水マレイン酸グラフトポリオレフィン系共重合体の具体例としては、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン(PP-g-MAH)、無水マレイン酸グラフトエチレン/プロピレンゴム(EPR-g-MAH)、無水マレイン酸グラフトエチレン/プロピレン/ジエンゴム(EPDM-g-MAH)などが挙げられる。
無水マレイン酸グラフトポリスチレン系共重合体の具体例としては、無水マレイン酸グラフトポリスチレン(PS-g-MAH)、無水マレイン酸グラフトスチレン/ブタジエン/スチレン共重合体(SBS-g-MAH)、無水マレイン酸グラフトスチレン/エチレン/ブテン/スチレン共重合体(SEBS-g-MAH)などが挙げられる。
ビニルモノマー/無水マレイン酸共重合体の具体例としては、スチレン/無水マレイン酸共重合体、スチレン/(メタ)アクリル酸/無水マレイン酸共重合体、(メタ)アクリル酸/無水マレイン酸共重合体、(メタ)アクリル酸エステル/無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。
エポキシ基含有ポリオレフィン系共重合体の具体例としては、エチレン/グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン/グリシジル(メタ)アクリレート/酢酸ビニル共重合体、エチレン/グリシジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン/グリシジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン/グリシジル(メタ)アクリレート共重合体へのポリスチレングラフト共重合体(EGMAorEGA-g-PS)、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体へのポリメチル(メタ)アクリレートグラフト共重合体(EGMAorEGA-g-PMMA)、エチレン/グリシジル(メタ)アクリレート共重合体へのスチレン/アクリロニトリルグラフト共重合体(EGMAorEGA-g-AS)などが挙げられる。
エポキシ基含有ビニル系ランダムまたはグラフトもしくはブロック共重合体の具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレートグラフトポリスチレン(PS-g-GMAorGA)、グリシジル(メタ)アクリレートグラフトポリメチル(メタ)アクリレート(PMMAorPMA-g-GMA)、グリシジルメタクリレートグラフトポリアクリロニトリル(PAN-g-GMAorGA)などが挙げられる。
カルボキシル基含有オレフィン系ランダムまたはグラフト共重合体の具体例としては、カルボキシル化ポリエチレン、カルボキシル化ポリプロピレン、エチレン/(メタ)アクリル酸共重合体(アイオノマー)、スチレン/(メタ)アクリル酸共重合体などが挙げられる。
本発明の液晶ポリマー組成物に含有される官能基含有共重合体としては、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン共重合体および/またはエチレン/グリシジル(メタ)アクリレート共重合体が好ましい。無水マレイン酸グラフトポリプロピレン共重合体としては、MG-250P(理研ビタミン製、「無水マレイン酸変性ポリプロピレン」)などが挙げられ、エチレン/グリシジル(メタ)アクリレート共重合体としては、ボンドファーストBF-2C(住友化学製、「エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体」)などが挙げられる。
上記の官能基含有共重合体は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の液晶ポリマー組成物における官能基含有共重合体の含有量は、液晶ポリマー100質量部に対して、0.1~10質量部であり、好ましくは0.2~9質量部であり、より好ましくは0.3~8質量部であり、さらに好ましくは0.4~7質量部である。
官能基含有共重合体の含有量が0.1質量部を下回る場合、得られる液晶ポリマー組成物の誘電率および柔軟性の改善効果が十分に得られない。官能基含有共重合体の含有量が10質量部を上回る場合、得られる液晶ポリマー組成物の曲げ強度などの機械強度が低下する。
本発明の液晶ポリマー組成物は、任意の成分として、さらに無機および/または有機充填材を含有してもよい。
無機および/または有機充填材の具体例としては、ガラス繊維、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、アラミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリベンズイミダゾール繊維、タルク、マイカ、グラファイト、ウォラストナイト、ドロマイト、クレー、ガラスフレーク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタンなどが挙げられ、単独でまたは2種以上を併用してもよい。
これらの中では、タルクが、物性とコストのバランスが優れている点で好ましい。
また、無機および/または有機充填材は、表面処理をされたものであってもよい。表面処理の方法としては、例えば、充填材表面に表面処理剤を吸着させる方法、混練する際に表面処理剤を添加する方法などが挙げられる。
表面処理剤としては、反応性カップリング剤であるシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、ボラン系カップリング剤など、潤滑剤である高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸金属塩、フルオロカーボン系界面活性剤などが挙げられる。
無機および/または有機充填材を配合する場合の含有量は、液晶ポリマー、環状オレフィン系樹脂および官能基含有共重合体の合計量100質量部に対して、1~150質量部であることが好ましく、10~100質量部であることがより好ましい。
無機および/または有機充填材の含有量が1質量部未満であると、液晶ポリマー組成物について無機および/または有機充填材による機械強度および耐熱性の向上効果が得られにくく、150質量部を超えると流動性が低下する傾向がある。
本発明の液晶ポリマー組成物には、液晶ポリマー、環状オレフィン系樹脂および官能基含有共重合体の他に、本発明の目的を損なわない範囲で、さらに他の添加剤や樹脂成分が添加されてもよい。
他の添加剤の具体例としては、滑剤である高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸金属塩(ここで高級脂肪酸とは、炭素原子数10~25のものをいう)など、離型改良剤であるポリシロキサン、フッ素樹脂など、着色剤である染料、顔料、カーボンブラックなど、難燃剤、帯電防止剤、界面活性剤、造核剤であるタルク、有機リン酸塩、ソルビトール類など、アンチブロッキング剤、酸化防止剤であるリン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤など、耐候剤、熱安定剤、中和剤などが挙げられる。これらの添加剤は、単独でまたは2種以上を併用することができる。
液晶ポリマー組成物における他の添加剤の合計量は、液晶ポリマー、環状オレフィン系樹脂および官能基含有共重合体の合計量100質量部に対して、好ましくは0.01~5質量部、より好ましくは0.1~3質量部である。
他の添加剤の合計量が0.01質量部未満であると、添加剤の機能を実現しにくく、5質量部を超えると、液晶ポリマー組成物の成形加工の熱安定性が悪くなる傾向がある。
また、上記他の添加剤のうち、滑剤、離型剤、アンチブロッキング剤などの添加剤を使用する場合は、液晶ポリマー組成物を作製する際に添加してもよいし、成形する際に液晶ポリマー組成物のペレット表面に付着させてもよい。
他の樹脂成分の具体例としては、例えば、熱可塑性樹脂であるポリエステル、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテルおよびその変性物、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミドなどや、熱硬化性樹脂であるフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。これらの樹脂成分は単独でまたは2種以上を併用してもよい。
他の樹脂成分を含有する場合、その含有量は、液晶ポリマー、環状オレフィン系樹脂および官能基含有共重合体の合計量100質量部に対して0.1~100質量部であることが好ましく、0.2~80質量部であることがより好ましい。
本発明の液晶ポリマー組成物は、液晶ポリマー、環状オレフィン系樹脂および官能基含有共重合体、ならびに、無機および/または有機充填材、他の添加剤、他の樹脂成分を混合し、バンバリーミキサー、ニーダー、一軸もしくは二軸押出機などを用いて、液晶ポリマーの結晶融解温度近傍から結晶融解温度+40℃の間の温度条件で溶融混練して得ることができる。
他の樹脂成分および他の添加剤は、予め液晶ポリマー、環状オレフィン系樹脂および官能基含有共重合体のいずれかに配合しておいてもよく、あるいは液晶ポリマー、環状オレフィン系樹脂および官能基含有共重合体を溶融混練して得られた液晶ポリマー組成物を成形する際に配合してもよい。
このようにして得られた本発明の液晶ポリマー組成物は、JIS C2565に準拠した空洞共振器摂動法で85mm×1.7mm×1.7mmの試験片を用いて10GHzにて測定した誘電率が3.60以下であるという特徴を有する。本発明の液晶ポリマー組成物の誘電率は、好ましくは3.58以下、より好ましくは3.56以下である。また、誘電率は、通常2.50以上である。誘電率が3.60を上回ると、誘電特性が低下し電気特性に優れた成形品が得られ難くなる。
本発明の液晶ポリマー組成物は、長さ85mm、幅1.75mm、厚さ1.75mmのスティック状試験片を用いて10GHzにおいて測定した誘電正接が、好ましくは0.0011以下であり、より好ましくは0.0010以下であり、さらに好ましくは0.0008以下であり、特に好ましくは0.0007以下である。また、誘電正接は通常0.0001以上である。
本発明の液晶ポリマー組成物は、ASTM D790に準拠した曲げ試験において、65mm×12.7mm×2.0mmの短冊状試験片を用いて測定した最大歪みが4.5%以上であるという特徴を有する。本発明の液晶ポリマー組成物の最大歪みは、好ましくは、4.6%以上、より好ましくは4.7%以上である。また、最大歪みは、通常20%以下である。最大歪みが4.5%を下回ると柔軟性が低下してしまい、柔軟性に優れた成形品が得られ難くなる。
本発明の液晶ポリマー組成物は、上記曲げ試験における曲げ強度が、好ましくは160MPa以上、より好ましくは165MPa以上、さらに好ましくは170MPa以上である。曲げ強度は、通常300MPa以下である。曲げ強度の値が大きいほど、機械強度が維持または向上した成形品を得ることができる。
本発明の液晶ポリマー組成物は、従来公知の射出成形、圧縮成形、押出成形、ブローなどの成形法によって、射出成形品、フィルム、シートおよび不織布などの成形品に加工することができる。
本発明の液晶ポリマー組成物は、低誘電率であるという優れた誘電特性を有するため、電気電子部品として好適に使用することができ、優れた柔軟性も兼ね備えるため、フィルム、シート、FPC基材等の材料としても好適に使用することができる。
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例中の溶融粘度、曲げ強度、最大歪みおよび誘電率は、以下に記載の方法で測定した。
〈溶融粘度〉
溶融粘度測定装置(東洋精機(株)製キャピログラフ1D)により、0.7mmφ×10mmのキャピラリーを用いて、剪断速度1000sec-1の条件下、350℃での溶融粘度を測定した。
〈曲げ強度、最大歪み〉
射出成形機(住友重機械工業(株)製 MINIMAT M26/15)を用いて、短冊状試験片(長さ65mm×幅12.7mm×厚さ2.0mm)を成形し、これを用いてASTM D790に準拠して測定した。最大歪みは、上記測定において応力が最大値を示したときのたわみを測定し、算出した。最大歪みが高いほど、柔軟性に優れることを意味する。
〈誘電率〉
射出成形機(日精樹脂工業(株)NEX-15-1E)を用いて、シリンダー設定温度を320℃、金型温度80℃で、長さ85mm、幅1.7mm、厚さ1.7mmのスティック状試験片に成形した。
この試験片を用いて、JIS C2565に準拠した空洞共振器摂動法により、ネットワークアナライザー(アジレントテクノロジー社製PNAシリーズE8316A)を使用して、誘電率(10GHz)を測定した。
〈誘電正接(tanδ)〉
射出成形機(日精樹脂工業株式会社製 UH1000-110)を用いて、長さ85mm、幅1.75mm、厚さ1.75mmのスティック状試験片を作成し、その試験片を用いて、ベクトルネットワークアナライザー(アジレントテクノロジー社製)にて10GHzにおける誘電正接を空洞共振器摂動法により測定した。
実施例において、下記の略号は以下の化合物を表す。
POB:4-ヒドロキシ安息香酸
BON6:6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸
BP:4,4’-ジヒドロキシビフェニル
HQ:ハイドロキノン
TPA:テレフタル酸
[合成例1(LCP-1)]
トルクメーター付き攪拌装置および留出管を備えた反応容器に、BON6:660.5g(54.0モル%)、BP:254.2g(21.0モル%)、HQ:14.3g(2.0モル%)およびTPA:248.3g(23.0モル%)を仕込み、さらに全モノマーの水酸基量(モル)に対して1.03倍モルの無水酢酸を仕込み、次の条件で脱酢酸重合を行った。
窒素ガス雰囲気下に室温から150℃まで1時間かけて昇温し、150℃で60分保持した。次いで、副生する酢酸を留出させつつ350℃まで7時間かけて昇温した後、90分かけて10mmHgにまで減圧した。所定のトルクを示した時点で重合反応を終了し、反応容器から内容物を取り出し、粉砕機により液晶ポリエステルのペレットを得た。重合時の留出酢酸量は、ほぼ理論値どおりであった。得られたペレットのDSCにより測定した結晶融解温度(Tm)は338℃であり、溶融粘度は23Pa・sであった。
[合成例2(LCP-2)]
トルクメーター付き攪拌装置および留出管を備えた反応容器に、POB:655.4g(73モル%)およびBON6:330.2g(27モル%)を仕込み、さらに全モノマーの水酸基量(モル)に対して1.02倍モルの無水酢酸を仕込み、次の条件で脱酢酸重合を行った。
窒素ガス雰囲気下に室温から145℃まで1時間で昇温し、145℃にて30分間保持した。次いで、副生する酢酸を留去させつつ320℃まで7時間かけて昇温した後、80分かけて10mmHgにまで減圧した。所定のトルクを示した時点で重合反応を終了し、反応容器から内容物を取り出し、粉砕機により液晶ポリエステルのペレットを得た。重合時の留出酢酸量は、ほぼ理論値どおりであった。得られたペレットのDSCにより測定した結晶融解温度(Tm)は279℃であり、溶融粘度は21Pa・sであった。
環状オレフィン系樹脂(COP):日本ゼオン(株)製、シクロオレフィンポリマー「ZEONEX(登録商標)RS420」
官能基含有共重合体(BF):住友化学(株)製、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体「ボンドファースト(登録商標)BF-2C」
実施例1~4、比較例1~5
合成例1、2にて得たLCP-1、LCP-2、環状オレフィン系樹脂(COP)および官能基含有共重合体(BF)を表1に記載の含有量となるように配合し、2軸押出機(日本製鋼(株)製TEX-30)を用いて、350℃にて溶融混練を行い、液晶ポリマー組成物のペレットを得た。上記の方法により、溶融粘度、曲げ強度、最大歪みおよび誘電率について測定した。結果を表1に示す。
Figure 2023109485000006
表1に示すように、実施例1~4の各液晶ポリマー組成物は、機械強度(曲げ強度)を維持しつつ、柔軟性(最大歪み)および誘電率に優れるものであった。
これに対して、比較例1~3の液晶ポリマー組成物は、機械強度は優れるものの、柔軟性および誘電率のいずれかまたは両方に劣るものであった。また、比較例4~5の液晶ポリマー組成物は機械強度が大幅に損なわれるものであった。

Claims (5)

  1. 液晶ポリマー100質量部、環状オレフィン系樹脂0.1~30質量部および官能基含有共重合体0.1~10質量部を含有し、ASTM D790に準拠した曲げ試験において、65mm×12.7mm×2.0mmの短冊状試験片を用いて測定した最大歪みが4.5%以上であり、かつ、JIS C2565に準拠した空洞共振器摂動法で85mm×1.7mm×1.7mmの試験片を用いて10GHzにて測定した誘電率が3.60以下である、液晶ポリマー組成物。
  2. 液晶ポリマーは、式(I)~(III)
    Figure 2023109485000007
    [式中、
    ArおよびArは、それぞれ1種または2種以上の2価の芳香族基を表し、p、qおよびrは、それぞれ、液晶ポリエステル(A)中での各繰返し単位の組成比(モル%)であり、以下の条件を満たす:
    35≦p≦90、
    5≦q≦30、および
    5≦r≦30]
    で表される繰返し単位を含む液晶ポリエステル(A)と、
    式(IV)および式(V)
    Figure 2023109485000008
    [式中、
    sおよびtはそれぞれ、液晶ポリエステル(B)中での各繰返し単位の組成比(モル%)であり、以下の条件を満たす:
    80/20≦s/t≦60/40]
    で表される繰返し単位を含む液晶ポリエステル(B)
    を含有し、
    (A)と(B)の質量比[(A)/(B)]が90/10~45/55である、請求項1に記載の液晶ポリマー組成物。
  3. 官能基含有共重合体は、無水マレイン酸グラフトポリオレフィン系共重合体および/またはエポキシ基含有ポリオレフィン系共重合体である、請求項1または2に記載の液晶ポリマー組成物。
  4. 請求項1~3のいずれかに記載の液晶ポリマー組成物から構成される成形品。
  5. 成形品は、フィルム、シートおよびFPC基材からなる群から選択される、請求項4に記載の成形品。
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