JP2023108973A - 電極用積層構造体および電極用積層構造体の製造方法 - Google Patents

電極用積層構造体および電極用積層構造体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】導電性を有する基板とホウ素を含むダイヤモンド結晶で構成される電極膜との間の直列抵抗が低い電極用積層構造体を提供する。【解決手段】導電性を有する基板と、基板が有する2つの主面のうちいずれか一方の主面上に設けられ、ホウ素を含むダイヤモンド結晶で構成される電極膜と、を備え、基板と電極膜との間には、炭素を主成分とし、ホウ素を含む界面層が設けられており、界面層は、電極膜におけるホウ素の濃度よりも高いホウ素の濃度を有する。【選択図】図1

Description

本開示は、電極用積層構造体および電極用積層構造体の製造方法に関する。
基板と、基板上に形成され、ダイヤモンド結晶で構成される電極膜と、を有する電極用積層構造体は、電位窓が広く、バックグラウンド電流も小さいことから、尿酸等の種々の物質の電気化学的検出を高感度で行ったり、水処理や汚水処理等の電気化学的な電解処理を高効率で行ったり、電気化学的なオゾン生成処理を高効率で行ったりすることができる。そこで、近年、上述の電極用積層構造体を、電気化学センサの作用電極、汚水処理等に用いられる電解電極、オゾン発生用電極等の電気化学用電極として用いることが提案されている(例えば特許文献1~3等参照)。
特開2020-144116号公報 特開2004-35908号公報 特開2019-23326号公報
上述の電極用積層構造体は、電極膜の表面で生じさせた電気化学反応に起因する電流を基板側から取り出すように構成されている。このため、基板と電極膜との間の直列抵抗が低いことが要求されている。本開示は、基板とホウ素を含むダイヤモンド結晶で構成される電極膜との間の直列抵抗が低い電極用積層構造体を提供することを目的とする。
本開示の一態様によれば、
導電性を有する基板と、
前記基板が有する2つの主面のうちいずれか一方の主面上に設けられ、ホウ素を含むダイヤモンド結晶で構成される電極膜と、を備え、
前記基板と前記電極膜との間には、炭素を主成分とし、ホウ素を含む界面層が設けられており、
前記界面層は、前記電極膜におけるホウ素の濃度よりも高いホウ素の濃度を有する、電極用積層構造体、及びその製造方法が提供される。
本開示によれば、基板とホウ素を含むダイヤモンド結晶で構成される電極膜との間の直列抵抗が低い電極用積層構造体を提供することができる。
本開示の一態様に係る電極用積層構造体の概略断面図である。 本開示の一態様に係る電気化学センサの概略斜視図である。 図2に示す電気化学センサのA-A線断面図である。 ダイヤモンド結晶を成長させる際に用いられる気相成長装置の概略図である。 (a)は、図1に示す積層構造体の裏面に凹状の溝を形成した様子を示す断面図であり、(b)は、凹状の溝に沿って積層構造体が有する基板を破断して電極チップを取得する様子を示す模式図である。 (a)はサンプル1の断面概略図を示し、(b)はサンプル2の断面概略図を示し、(c)はサンプル3の断面概略図を示し、(d)はサンプル4の断面概略図を示す。 サンプル1~4の直列抵抗及び密着強度の評価結果を示すグラフ図である。 界面層におけるホウ素濃度と直列抵抗との相関関係、及び界面層におけるホウ素濃度と密着強度との相関関係の評価結果を示す図である。 酸化物層におけるシリコン結晶粒の密度と直列抵抗との相関関係、及び酸化物層におけるシリコン結晶粒の密度と密着強度との相関関係の評価結果を示す図である。 SiB層の厚さと直列抵抗との相関関係、及びSiB層の厚さと密着強度との相関関係の評価結果を示す図である。
<本開示の一態様>
以下、本開示の一態様について、図1~図5を用いて説明する。
(1)電極用積層構造体の構成
図1に示すように、本態様に係る電極用積層構造体10(以下、「積層体10」とも称する)は、基板11と、基板11上に設けられた電極膜12と、を備えて構成されている。
積層体10は、所定形状に(例えばチップ状に)成形されている。積層体10は、電極膜12の表面で生じさせた電気化学反応に起因する電流を、基板11側から取り出す縦型電極(電極チップ)である。このような積層体10は、後述のセンサ30の作用電極として好適に用いることができる。なお、積層体10を製造する際に得られる中間品(チップ状に成形する前の後述の積層基板10a)を、積層体10と考えてもよい。
基板11としては、低抵抗材料で構成された基板、例えば、p型の導電性を有する基板が用いられる。基板11としては、シリコン(Si)を主元素として構成され、ホウ素(B)等のp型のドーパントを所定濃度で含む基板、例えばp型の単結晶Si基板を用いることができる。基板11として、p型の多結晶Si基板を用いることもできる。基板11におけるB濃度は、例えば5×1018cm-3以上1.5×1020cm-3以下、好ましくは5×1018cm-3以上1.2×1020cm-3以下とすることができる。基板11におけるB濃度が上記範囲内であることにより、基板11の比抵抗を低くしつつ、基板11の製造歩留の低下や性能劣化を回避することができる。
基板11の厚さは例えば350μm以上とすることができる。これにより、直径が6インチや8インチである市販の単結晶Si基板を、バックラップ(back rap)して厚さ調整することなく、基板11としてそのまま用いることが可能となる。その結果、積層体10の生産性を高め、製造コストを低減することが可能となる。基板11の厚さの上限は特に限定されないが、現在一般的に市場に流通しているSi基板の厚さは、直径が12インチの単結晶Si基板で775μm程度である。このため、現在の技術における基板11の厚さの上限は例えば775μm程度とすることができる。
電極膜12は、基板11が有する2つの主面のうちいずれか一方の主面上に設けられている。本明細書では、電極膜12が設けられる基板11の主面を、「基板11の上面」とも称する。電極膜12は、基板11の上面全域にわたって設けられている。電極膜12は、表面(露出面)で所定の電気化学反応(例えば尿中の尿酸の電気化学反応)を生じさせる。
電極膜12は、ドーパントとしてのB元素を含むダイヤモンド結晶、すなわち、p型の導電性を有するダイヤモンド結晶で構成される多結晶膜である。ダイヤモンド結晶とは、炭素(C)原子がダイヤモンド結晶構造と呼ばれるパターンで配列している結晶である。電極膜12におけるB濃度は、TEM-EELSによる分析で、例えば0.1原子%以上5原子%以下とすることができる。なお、TEM-EELSとは、透過電子顕微鏡法(Transmission Electron Microscopy(TEM))に、電子エネルギー損失分光(Electron Energy-Loss Spectroscopy(EELS))を組み合わせた分析である。
電極膜12は、化学気相成長(Chemical Vapor Deposition(CVD))法や、物理蒸着(Physical Vapor Deposition(PVD))法等により成長させる(堆積させる、合成する)ことができる。CVD法としては、タングステンフィラメントを用いた熱フィラメント(ホットフィラメント)CVD法、プラズマCVD法等が例示され、PVD法としては、イオンビーム法やイオン化蒸着法等が例示される。電極膜12の厚さは、例えば0.5μm以上10μm以下、好ましくは2μm以上4μm以下とすることができる。
電極膜12はσ結合を主とし、一部にπ結合を有しており、電極膜12におけるπ結合の密度は、基板11側から成長方向(積層方向)に向かうにつれて徐々に減少している。すなわち、電極膜12におけるσ結合の密度は、基板11側から成長方向に向かうにつれて徐々に増加している。
基板11と電極膜12との間には、Cを主成分とし、B及び基板11(Si基板)由来のSiを含む界面層13が設けられている。
ここで、基板11と電極膜12との間の界面(界面層13)の分析手法の一例を説明する。まず、基板11と電極膜12とを備える積層体10の縦断面であって基板11と電極膜12との間の界面を含むサンプルを用意する。そして、このサンプルをエポキシ樹脂で包埋し、ダイヤモンド低速カッターを用いて断面研磨に適した大きさに切り出す。切り出したサンプル(分析用サンプル)に対して、耐水研磨シートを用いた機械研磨を施し、研磨用油を用いて0.25μm径のダイヤモンドペーストによるバフ研磨を施し、その後、アルゴンイオンによる研磨(クロスセクションポリッシュ法、加速電圧:10kV)を60分間施す。これにより、分析用サンプルの観察面を平坦な面にする。この段階で、界面の状態確認やTEM観察領域の特定のため、走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy(SEM))による観察を行ってもよい。また、集束イオンビーム(Focused Ion Beam(FIB))加工観察装置を用い、所定の研磨等を施した後の分析用サンプルからTEM観察用サンプルを作製する。TEM観察用サンプルは薄膜切片状のサンプルである。TEM観察用サンプルに対して適宜FIB再加工を施し、TEM観察用サンプルを最適な観察状態とする。TEM観察用サンプルを、専用メッシュに搭載し、TEM観察、TEM-EELS分析に供し、基板11と電極膜12と間の界面(界面層13)を分析する。なお、TEM観察、TEM-EELS分析を行う際の加速電圧は例えば200kVとする。
界面層13は、電極膜12におけるB濃度よりも高いB濃度を有する。したがって、界面層13は、電極膜12よりも高い導電性を有している。このようにB濃度が高い界面層13が設けられていることで、基板11と電極膜12との間の直列抵抗を低減することができる。
ここでいう「基板11と電極膜12との間の直列抵抗」には、積層体10を構成する基板11及び各層(膜)(以下、これらをまとめて「積層体10の各構成部材」と称する)そのものの抵抗(以下、バルク抵抗とも称する)と、積層体10の各構成部材間の界面に発生する抵抗(以下、部材間抵抗とも称する)と、が含まれる。例えば、積層体10が、基板11、界面層13、及び電極膜12の積層物として構成されている場合、「基板11と電極膜12との間の直列抵抗」の大きさは、基板11のバルク抵抗、基板11と界面層13との間の部材間抵抗、界面層13のバルク抵抗、界面層13と電極膜12との間の部材間抵抗、及び、電極膜12のバルク抵抗の合計値となる。但し、積層体10の各構成部材が有するバルク抵抗は、これらの間の部材間抵抗に比べて充分に小さいので、無視して考えることもできる。このため、本明細書における「基板11と電極膜12との間の直列抵抗」の大きさは、実質的に、積層体10の各構成部材間の部材間抵抗の合計値と等しいものとして考えることもできる。すなわち、積層体10が、基板11、界面層13、及び電極膜12の積層物として構成されている場合、「基板11と電極膜12との間の直列抵抗」の大きさは、基板11と界面層13との間の部材間抵抗、及び界面層13と電極膜12との間の部材間抵抗の合計値とほぼ等しい、と考えることができる。なお、本明細書では、「基板11と電極膜12との間の直列抵抗」を、単に「直列抵抗」とも称する。また、本明細書では、「基板11と電極膜12との間の直列抵抗を低減する」とは、部材間抵抗の合計値を、界面層13が設けられていない場合における基板11と電極膜12との間の抵抗値よりも低くすることを意味する。なお、積層体10が後述の酸化物層14を有する場合であっても、後述のように容量結合効果及びトンネル効果のうち少なくともいずれかの効果を生じさせることができるので、直列抵抗を、界面層13が設けられていない場合における基板11と電極膜12との間の抵抗値よりも低くすることができる。
界面層13におけるB濃度は、電極膜12におけるB濃度の2倍以上であることが好ましい。これにより、直列抵抗低減の効果を顕著に得ることができる(直列抵抗を充分に低減することができる)。また、界面層13におけるB濃度は、電極膜12におけるB濃度の5倍以上であることがより好ましい。これにより、直列抵抗低減の効果をより顕著に得ることができる。また、界面層13におけるB濃度は、電極膜12におけるB濃度の100倍以下であることが好ましい。というのも、界面層13におけるB濃度が、電極膜12におけるB濃度の100倍を超えると、直列抵抗低減の効果が飽和する一方、界面層13が脆化し、基板11と電極膜12との間の密着性が低下することがあるからである。
界面層13におけるB濃度は、TEM-EELSによる分析で、例えば0.2原子%以上10原子%以下、好ましくは0.5原子%以上10原子%以下とすることができる。
界面層13はπ結合を有していることが好ましい。これにより、基板11と電極膜12との間の応力緩和の効果や、電極膜12の反り低減の効果、ひいては、積層体10の反りの低減の効果が得られるようになる。また、界面層13におけるπ結合の密度は、電極膜12におけるπ結合の密度よりも高いことが好ましい。
界面層13の形成過程において、界面層13中にπ結合が生じる。界面層13におけるπ結合は、界面層13の形成過程を含むダイヤモンド結晶の成長過程において、σ結合よりも切断されやすい特性を有している。ダイヤモンド結晶の成長過程においてπ結合が切断されることで未結合手が生じ、この未結合手に後述のB含有ガスに含まれるBが結合し、C-B結合が形成されることとなる。この反応が多く生じることにより、界面層13はB濃度の高い層となる。このように、界面層13の形成過程において生じたπ結合の一部は、ダイヤモンド結晶の成長過程において切断されてBの取り込みに寄与し、他の一部は、Bの取り込みに寄与することなくπ結合のまま残ることとなる。
界面層13の形成過程において、積層体10の状態において界面層13がπ結合を有するほど(ダイヤモンド結晶の成長終了後の界面層13にπ結合が残るほど)多くのπ結合を界面層13中に生じさせることで、上述の反応を多く生じさせることができ、その結果、界面層13中へのBの取り込みを確実に行えるようになる。このように、界面層13がπ結合を有していることで、界面層13中へのBの取り込みを確実に行えるようになる。これにより、界面層13におけるB濃度を容易かつ確実に高めることができる。その結果、上述の直列抵抗を確実に低減することができる。
また、界面層13の形成過程において、界面層13におけるπ結合の密度(界面層13に残るπ結合の密度)が電極膜12におけるπ結合の密度よりも高くなるほど多くのπ結合を界面層13中に生じさせることで、界面層13中へのBの取り込みをより確実に行えるようになる。これにより、界面層13におけるB濃度を、電極膜12におけるB濃度よりも確実に高くできる。
界面層13は、基板11の上面全域にわたり、下地を露出させることなく設けられている。すなわち、界面層13は、平面視で(基板11の上面に対して垂直方向上方から界面層13を見た際に)基板11の上面全面を覆う連続層とすることができる。これにより、上述の直列抵抗低減の効果をより確実に得ることができる。
界面層13の厚さは、例えば1nm以上とすることができる。これにより、上述の直列抵抗低減の効果を充分かつ確実に得ることができる。界面層13の厚さが1nm未満である場合、上述の直列抵抗低減の効果が充分に得られないことがある。
界面層13の厚さの上限については、特に限定されない。しかしながら、界面層13の厚さが厚すぎると、直列抵抗低減の効果が飽和する一方、生産性が低下したり、製造コストの増加を招いたり、密着信頼性が低下したりすることがある。このため、界面層13の厚さは、例えば200nm以下とすることが好ましい。
基板11と界面層13との間には、基板11を構成する主元素(Si)及び酸素(O)を含む酸化物層14が設けられている(介在している)ことが好ましい。例えば基板11がSiからなる場合(基板11がSi基板である場合)、Si及びOを含むアモルファス状の酸化物層14が設けられていることが好ましい。Si及びOを含むアモルファス状の酸化物層14とは、シリコン系酸化物のアモルファスからなる層である。酸化物層14は、基板11の最上面(表層部)を改質することで形成することができる。この場合、酸化物層14は、基板11の一部と考えることもできる。酸化物層14が設けられていることで、基板11と界面層13との間の密着性、ひいては、基板11と電極膜12との間の密着性を向上させることができる。
酸化物層14は導電性が低い層(絶縁性を有する層)である。このため、酸化物層14を設けることで、直列抵抗が増加する懸念がある。
本態様のようにB濃度が高い(導電性の高い)界面層13を設け、導電性を有する基板11と界面層13とで酸化物層14を挟むことで、基板11と界面層13との間で、容量結合効果及びトンネル効果のうち少なくともいずれかの効果を生じさせ、電極膜12の表面で生じさせた電気化学反応に起因する電流を、基板11側に流すことができる。このように、界面層13が設けられていることで、上述の懸念を解消することが可能となり、酸化物層14が介在することによる直列抵抗の増加を回避できる。
酸化物層14は連続層であってもよく、不連続層であってもよい。但し、酸化物層14が不連続層である方が、基板11の上面と界面層13とを部分的に接触させることが可能となる点で、連続層である場合よりも好ましい。すなわち、酸化物層14が不連続層である方が、酸化物層14が連続層である場合よりも上述の直列抵抗低減の効果が得られやすくなり、酸化物層14が介在することによる直列抵抗の増加を確実に回避できる点で好ましい。また、酸化物層14が不連続層である場合、酸化物層14が連続層である場合よりも酸化物層14の形成時間を短縮でき、生産コストを低減することもできる。
酸化物層14の厚さは、例えば10nm以上100nm以下とすることができる。
酸化物層14の厚さが10nm未満である場合、基板11と電極膜12との間の密着性を向上させる効果が得られにくくなる。酸化物層14の厚さが10nm以上であることで、上述の密着性を向上させる効果を顕著に得ることができる。酸化物層14の厚さが100nmを超える場合、容量結合効果やトンネル効果が生じにくくなり、酸化物層14が介在することによる直列抵抗の増加を回避できないことがある。酸化物層14の厚さが100nm以下であることで、容量結合効果及びトンネル効果のうち少なくともいずれかの効果、好ましくは容量結合効果及びトンネル効果の両方を確実に生じさせ、上述の懸念を解消することが可能となる。
基板11がSiからなる場合、酸化物層14は、Siの結晶粒子(以下、「Si結晶粒」とも称する)を含むことが好ましい。このSi結晶粒は、基板11(Si基板)由来の導電性を有する結晶粒であり、酸化物層14の母相中に分散している。このように酸化物層14の母相中にSi結晶粒が分散していることで、酸化物層14が介在することによる直列抵抗の増加を確実に回避することができる。
酸化物層14におけるSi結晶粒の密度は、例えば10個/μm以上500個/μm以下とすることができる。
Si結晶粒の密度が10個/μm未満である場合、直列抵抗の増加を回避する効果が得られにくくなる。Si結晶粒の密度が10個/μm以上であることで、直列抵抗の増加を回避する効果を顕著に得ることができる。Si結晶粒の密度が500個/μmを超える場合、酸化物層14が脆化し、基板11と電極膜12との間の密着性が低下することがある。Si結晶粒の密度が500個/μm以下であることで、酸化物層14の脆化を回避することができる。
Si結晶粒の大きさ(平均結晶粒径)は、例えば1nm以上50nm以下とすることができる。
Si結晶粒の大きさが1nm未満である場合、直列抵抗の増加を回避する効果が得られにくくなる。Si結晶粒の大きさが1nm以上であることで、直列抵抗の増加を回避する効果を顕著に得ることができる。Si結晶粒の大きさが50nmを超える場合、酸化物層14が脆化し、基板11と電極膜12との間の密着性が低下することがある。Si結晶粒の大きさが50nm以下であることで、酸化物層14の脆化を回避することができる。
また、酸化物層14のうち界面層13に接する表面(以下、「酸化物層14の上面」とも称する)には、基板11を構成する主元素(Si)及びBを含み、Oを含まない層15(以下、「SiB層15」とも称する)が設けられていることが好ましい。すなわち、界面層13と酸化物層14との間には、SiB層15が設けられていることが好ましい。SiB層15は、酸化物層14の上面(表層部)を改質することで設けることができる。この場合、SiB層15は、界面層13の一部とみなすこともできる。
SiB層15は、界面層13よりも高い導電性を有する。このため、SiB層15を設け、導電性を有する基板11と高い導電性を有するSiB層15とで酸化物層14を挟むことで、基板11とSiB層15との間で、上述の容量結合効果及びトンネル効果のうち少なくともいずれかの効果を確実に生じさせ、電極膜12の表面で生じさせた電気化学反応に起因する電流を、基板11側に確実に流すことができる。これにより、酸化物層14が介在することによる直列抵抗の増加を確実に回避することができる。
SiB層15の厚さは、例えば1nm以上100nm以下とすることができる。
SiB層15の厚さが1nm未満である場合、上述の容量結合効果又はトンネル効果が生じにくくなる。SiB層15の厚さが1nm以上であることで、上述の容量結合効果及びトンネル効果のうち少なくともいずれかの効果を確実に生じさせ、酸化物層14が介在することによる直列抵抗の増加を確実に回避することができる。SiB層15の厚さが100nmを超える場合、基板11と電極膜12との間の密着性が低下することがある。SiB層15の厚さが100nm以下であることで、基板11とSiB層15との間の密着性、ひいては、基板11と電極膜12との間の密着性の低下を回避することができる。
積層体10の外形は、基板11の上面に対して垂直方向上方から積層体10を見た際に矩形状、例えば正方形状に成形されている。積層体10の平面積は例えば1mm以上25mm以下とすることができる。なお、積層体10の平面積とは、基板11の上面に対して垂直方向上方から積層体10を見た際における積層体10の面積である。積層体10の平面積が1mm以上であれば、後述の破断を用いた手法により、積層体10を精度よく安定して容易に成形することが可能である。また、積層体10のハンドリング性の低下及び実装安定性の低下を抑制することも可能となる。積層体10の平面積が25mm以下であることで、積層体10を用いた後述のセンサ30の大型化を回避すること、すなわち、小型のセンサ30を得ることが可能となる。
(2)電気化学センサの構成
上述の積層体10(電極チップ)を有する電気化学センサについて説明する。本態様では、一例として、被験液(例えばヒトの尿)中の検知対象物(例えば尿酸)の濃度を、三電極法により測定する電気化学センサについて説明する。
図2及び図3に示すように、本態様に係る電気化学センサ30(「センサ30」とも称する)は、積層体10(電極チップ)を備えて構成されている。なお、図3では、分かりやすさのため、酸化物層14及びSiB層15の図示を省略している。
センサ30は、上述の積層体10等を支持する基材31を有している。基材31は、シート状(板状)部材として構成されている。基材31は、例えば絶縁性を有する複合樹脂、セラミック、ガラス、プラスチック、可燃性材料、生分解性材料、不織布、紙等の絶縁性材料で形成することができる。基材31は、例えば、ガラスエポキシ樹脂やポリエチレンテレフタレート(PET)で形成されていることが好ましい。また、基材31は、積層体10等が設けられることとなる面が絶縁性を有するように構成された半導体基板や金属基板であってもよい。基材31の平面形状は例えば長方形状とすることができる。基材31は、所定の物理的強度及び機械的強度、例えば尿が付着した後の一定の時間内は、折れ曲がったり、破損したりすることがない強度を有している。
基材31が有する2つの主面のうちいずれか一方の主面(以下、「基材31の上面」とも称する)上には、基材31の長手方向における一端部から他端部側に向かって、3本の配線(電気配線)32,33,34が互いに離間して配設されている。配線32~34の形成材料としては、銅(Cu)、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)等の各種貴金属、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、チタン(Ti)等の各種金属、これらの貴金属又は金属を主成分とする合金、上記貴金属や合金の酸化物、金属酸化物、カーボン等が例示される。配線32~34は、同一の材料を用いて形成されていてもよく、それぞれが異なる材料を用いて形成されていてもよい。配線32~34は、サブトラクティブ法やセミアディティブ法等により形成することができる。また、配線32~34は、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷等の印刷法や、蒸着法等により形成することもできる。
配線32の一端部には、作用電極としての積層体10が導電性接合部材35(図3参照)を介して電気的に接続されている。積層体10は、電極膜12が上側となる(すなわち、基板11が基材31と対向する)ように、導電性接合部材35を介して基材31上に固定されている。導電性接合部材35としては、導電性ペースト(導電性接着剤)や導電性テープ等を用いることができる。また、積層体10の周囲は、絶縁性樹脂38(図3参照)で覆われている。絶縁性樹脂38は、少なくとも電極膜12の上面の一部が露出するとともに基板11が露出しないように設けられている。
配線33の一端部には、参照電極36が接続されている。参照電極36は、積層体10(作用電極)の電位を決定する際の基準となる電極である。参照電極36は、例えば銀/塩化銀(Ag/AgCl)電極とすることができる。また、参照電極36は、標準水素電極、可逆水素電極、パラジウム・水素電極、飽和カロメル電極、カーボン電極等とすることもできる。参照電極36は、導電性ペースト等の導電性接合部材を介して配線33に電気的に接続することができる。また、参照電極36は、Pt、Au、Cu、Pd、Ni、Ag等の金属で形成された電極等とすることもでき、この場合、参照電極36は、例えば、ディスペンス、スクリーン印刷等の公知の手法により、配線33と一体に形成することができる。
配線34の一端部には、対電極37が接続されている。対電極37は、積層体10及び参照電極36を取り囲むように設けられている。対電極37は、Pt、Au、Cu、Pd、Ni、Ag等の金属で形成された電極やカーボン電極等とすることができる。対電極37は、サブトラクティブ法やセミアディティブ法等により配線34と一体に形成されている。対電極37は、配線34と別体に形成し、導電性ペースト等の導電性接合部材を介して配線34に接続されていてもよい。
配線32~34は、センサ30に尿が供給された際に、尿が配線32~34に接触することがないように、絶縁性の樹脂等の防水部材39により覆われている。
センサ30に尿が供給され、積層体10、参照電極36、及び対電極37を含む電極群に尿が接触した状態で電極群に所定の電圧が印加されると、電極膜12の表面で尿酸の酸化還元反応が生じる。
(3)電極用積層構造体および電気化学センサの製造方法
続いて、上述の積層体10及びセンサ30の製造方法について説明する。
本態様における積層体10の作製シーケンスでは、
基板11を用意するステップ(ステップA)と、
基板11上に、Cを主成分とし、Bを含む界面層13を形成するステップ(ステップB)と、
界面層13上に、B及びダイヤモンド結晶を含む電極膜12を形成するステップ(ステップC)と、
を行い、界面層13におけるB濃度を、電極膜12におけるB濃度よりも高くする。
なお、ステップAでは、第1熱分解温度を有するB含有ガスと、第1熱分解温度よりも高い第2熱分解温度を有するC含有ガスと、を供給可能に構成された成長室内へ、基板11を搬入する。
また、ステップBでは、第1熱分解温度よりも高く、第2熱分解温度よりも低い所定の温度条件下で、B含有ガス及びC含有ガスを成長室内へ供給し、基板11上に界面層13を形成する。
また、ステップCでは、第2熱分解温度以上の(好ましくは第2熱分解温度よりも高い)所定の温度条件下で、B含有ガス及びC含有ガスを成長室内へ供給し、界面層13上に電極膜12を形成する。
また、ステップAを行った後、ステップBを行う前に、基板11上に、Si及びOを含む酸化物層14を形成するステップ(ステップD)をさらに行う。
また、ステップDを行った後、ステップBを行う前に、酸化物層14の最表面に、Si及びBを含み、Oを含まないSiB層15を形成するステップ(ステップE)をさらに行う。
<ステップA>
まず、基板11として、導電性を有する基板、例えば平面視で円形の外形を有するSi基板を用意する。そして、基板11が有する2つの主面のうち、ダイヤモンド結晶を成長(堆積)させることとなる面(すなわち、基板11の上面となる面、以下「結晶成長面」とも称する)に対して、ダイヤモンドの核発生密度を高める傷付け(スクラッチ)処理を大気中で行う。スクラッチ処理とは、数μm程度のダイヤモンド砥粒(ダイヤモンドパウダー)等を用いて結晶成長面に引っかき傷(スクラッチ)を付ける処理(結晶成長面に加工ダメージを入れる処理)である。
スクラッチ処理では、基板11の結晶成長面に、微細なスクラッチを面内不均一に入れる(加工ダメージを意図的に面内粗密に入れる)ことが好ましい。このようにスクラッチを面内不均一に(粗密に)入れることによって、ステップDで形成する酸化物層14に不規則なひずみが生じ、このひずみ緩和のために、形成する酸化物層14にSi結晶粒を含ませる(残す)ことが可能となる。
また、スクラッチ処理を、基板11の結晶成長面を一部粉砕するように行い、これにより、所定粒径のSi結晶のパウダーを生成するようにしてもよい。また、スクラッチ処理を、所定の平均粒径を有するダイヤモンドパウダーを用いて基板11の結晶成長面を削るように行い、これにより、所定粒径のSi結晶のパウダーを生成するようにしてもよい。これらによっても、ステップDで形成する酸化物層14にSi結晶粒を含ませることが可能となる。
<ダイヤモンド結晶成長>
スクラッチ処理が終了したら、例えばタングステンフィラメントを用いた熱フィラメントCVD法により、後述のステップD、E、B、Cを行い、基板11の結晶成長面上に、ダイヤモンド結晶を成長させる。
ダイヤモンド結晶は、例えば図4に示すような熱フィラメントCVD装置300を用いて成長させることができる。熱フィラメントCVD装置300は、石英等の耐熱性材料からなり、成長室301が内部に構成された気密容器303を備えている。成長室301内には、基板11を保持するサセプタ308が設けられている。
気密容器303の側壁には、ガス供給管332a~332dが接続されている。ガス供給管332a~332dには、ガス流の上流側から順に、流量制御器341a~341d、バルブ343a~343dがそれぞれ設けられている。ガス供給管332a~332dの下流端には、ガス供給管332a~332dから供給された各ガスを成長室301内に供給するノズル349a~349dがそれぞれ接続されている。
ガス供給管332aから、窒素(N)ガスが、ノズル349aを介して成長室301内へ供給される。ガス供給管332bから、水素(H)ガスが、ノズル349bを介して成長室301内へ供給される。ガス供給管332cから、第1熱分解温度を有するB含有ガスが、ノズル349cを介して成長室301内へ供給される。B含有ガスとしては、トリメチルボロン(B(CH、略称:TMB)ガス、ジボラン(B)ガス等が例示される。ガス供給管332dから、第1熱分解温度よりも高い第2熱分解温度を有するC含有ガスが、ノズル349dを介して成長室301内へ供給される。C含有ガスとしては、メタン(CH)ガス、エタン(C)ガス等が例示される。
気密容器303の他の側壁には、成長室301内を排気する排気管330が設けられている。排気管330にはポンプ331が設けられている。気密容器303内には、成長室301内の温度を測定する温度センサ309が設けられている。また、気密容器303内にはタングステンフィラメント310と、タングステンフィラメント310を保持するとともに、図示しない電源に接続される一対の電極(例えばモリブデン(Mo)電極)311a,311bとが、それぞれ設けられている。熱フィラメントCVD装置300が備える各部材は、コンピュータとして構成されたコントローラ380に接続されており、コントローラ380上で実行されるプログラムによって後述する処理手順や処理条件が制御されるように構成されている。
(基板搬入)
まず、B含有ガスとC含有ガスとを供給可能に構成された成長室301(気密容器303)内へ、基板11を投入(搬入)し、サセプタ308上に保持する。
(ステップD)
続いて、基板11上に、Si及びOを含む酸化物層14を形成する。具体的には、電極311a,311b間に電流を流してタングステンフィラメント310の加熱を開始する。タングステンフィラメント310が加熱されることで、サセプタ308上に保持した基板11も加熱される。このとき、基板11の温度が、室温(27℃)から所定の温度(後述のステップCにおけるダイヤモンド結晶の成長温度)になるまで、所定のレートで徐々に上昇するように、タングステンフィラメント310の温度が制御されている。例えば、タングステンフィラメント310の温度が、10℃/分以上20℃/分以下、好ましくは、13℃/分以上17℃/分以下のレートで昇温するように制御されている。タングステンフィラメント310の昇温は、ステップCが開始される所定の温度まで行われ、タングステンフィラメント310の加熱、すなわち、基板11の加熱は、ステップCが終了するまでの間は継続する。
基板11の加熱開始時は、成長室301内はO含有雰囲気である。また、スクラッチ処理によって、基板11の結晶成長面に加工ダメージ(機械的なダメージ)が入っている。O含有雰囲気でこのような基板11を室温から徐々に加熱する過程で、基板11の結晶成長面(の表層部)がアモルファス化(非晶質化)し、アモルファス状の酸化物層14に改質される。すなわち、基板11の結晶成長面(上面)に、Si及びOを含むアモルファス状の酸化物層14が形成される。
また、上述のスクラッチ処理を行うことにより、Si結晶粒を母相中に分散して含む酸化物層14を得ることができる。
また、酸化物層14の形成(基板11の上面のアモルファス化)は、後述のステップEの開始後も(ステップE,B,Cの実施中においても)、継続的に進行することがある。
(ステップE)
続いて、酸化物層14の最表面にSiB層15を形成する。具体的には、基板11の加熱開始から所定時間経過後(ステップDを行った後)、基板11の温度が第1熱分解温度(B含有ガスの熱分解温度)に達する前から、成長室301内の排気、及び成長室301内へHガス、B含有ガス(例えばTMBガス)、C含有ガス(例えばCHガス)の供給を開始する。このときの各ガスの供給量(供給比率)は、後述のステップCにおける供給量と同様とすることができる。またこのとき、必要に応じて成長室301内へNガスを供給してもよい。なお、成長室301内の排気及び成長室301内へのガスの供給は、ステップCが終了するまでの間は継続する。
上述のように、基板11の温度は、所定レートで徐々に上昇する。基板11の温度が第1熱分解温度に近づくと、B含有ガスの分解(熱分解)が徐々に始まり、基板11の温度が第1熱分解温度以上の温度になると、B含有ガスの分解が本格的に始まる。B含有ガスが分解することで所定の活性種が生成され、この活性種が基板11上(酸化物層14上)に供給されることで、酸化物層14の最表面(表層部)がSiB層15に改質される。すなわち、酸化物層14の最表面に、SiB層15が形成される。
本ステップにおける温度条件は、B含有ガスのみが分解し、C含有ガスは分解(熱分解)しない条件である。
(ステップB)
続いて、SiB層15上に界面層13を形成する。具体的には、成長室301内の排気及び成長室301内へのガスの供給を継続した状態で、基板11の温度を所定のレートでさらに上昇させる。基板11の温度が、第2熱分解温度(C含有ガスの熱分解温度)に近づくと(第2熱分解温度よりも低い温度ではあるが、第2熱分解温度に近い温度になると)、B含有ガスの分解に加えて、C含有ガスの分解も徐々に始まる。C含有ガスが分解することで、所定の活性種が生成される。B含有ガス及びC含有ガスが分解することで生成される活性種が基板11上に供給されることで、SiB層15上に、Cを主成分とし、Bを含む界面層13が形成される。
本ステップにおける温度条件、すなわち、第1熱分解温度よりも高く、第2熱分解温度よりも低い所定の温度条件(第1温度条件)は、C含有ガスの分解よりもB含有ガスの分解の方が優勢となる条件である。また、第1温度条件は、酸化物層14を結晶化させずアモルファス状とする条件である。
(ステップC)
続いて、界面層13上に電極膜12を形成する。具体的には、成長室301内の排気及び成長室301内へのガスの供給を継続した状態で、基板11の温度を所定のレートでさらに上昇させる。基板11の温度が第2熱分解温度以上の温度になると、C含有ガスの分解が本格的に始まる。これにより、界面層13上に、Bを含むダイヤモンド結晶が成長し、電極膜12が形成される。
本ステップでは、基板11の温度が第2熱分解温度以上の所定の温度(ダイヤモンド結晶の成長温度)に達すると、基板11の温度がダイヤモンド結晶の成長温度に維持されるように、タングステンフィラメント310の温度を制御する。
本ステップにおける温度条件、すなわち、第2熱分解温度以上の所定の温度条件(第2温度条件)は、酸化物層14を結晶化させずアモルファス状とする条件である。
ステップCにおける処理条件としては、下記の条件が例示される。
成長室内の圧力:5Torr以上50Torr以下(665Pa以上6650Pa以下)、好ましくは、10Torr以上35Torr以下(1330Pa以上4655Pa以下)
C含有ガスの供給量に対するB含有ガスの供給量の比率(B含有ガス/C含有ガス):0.003%以上0.8%以下
成長温度:600℃以上1000℃以下、好ましくは、650℃以上800℃以下
フィラメント温度:1800℃以上2500℃以下、好ましくは、2000℃以上2200℃以下
成長時間:200分以上500分以下、好ましくは、300分以上500分以下
ガスの供給量に対するC含有ガスの供給量の比率(C含有ガス/Hガス):2%以上5%以下
上述のようにステップA,D,E,B,Cを順に実施することにより、基板11の結晶成長面上に、酸化物層14、SiB層15、界面層13、電極膜12が順次積層されてなる積層基板10aを得ることができる。
第1温度条件及び第2温度条件を、それぞれ、上述のように設定することにより、界面層13におけるB濃度を、電極膜12におけるB濃度よりも高くすることができる。
また、第1温度条件を上述のように設定することにより、π結合を有する界面層13を得ることができる。
また、第1温度条件及び第2温度条件を、それぞれ、上述のように設定することにより、界面層13におけるπ結合の密度を、電極膜12におけるπ結合の密度よりも大きくすることができる。
(基板搬出)
ダイヤモンド結晶の成長(ステップC)が終了した後、少なくとも、成長室301内への各ガスの供給、及びタングステンフィラメント310の加熱を停止する。そして、成長室301内の温度が所定温度まで降温したら、積層基板10aを成長室301内から気密容器303の外部に搬出する。
<成形>
そして、積層基板10aを所定形状(例えばチップ状)に成形し、積層体10を得る。
具体的には、図5(a)に示すように、積層基板10aの裏面(基板11側)から凹状の溝21(例えばレーザ加工溝、スクライブ溝)を形成する。溝21は、例えば、レーザスクライブやレーザダイシング等のレーザ加工法、機械加工法、エッチングのような公知の手法を用いて形成することができる。溝21は、基板11を厚さ方向に貫くことがないように、すなわち、電極膜12まで達しないように形成する。例えば、溝21は、基板11の最薄部の厚さが10μm以上80μm以下となるように形成する。これにより、電極膜12の変質を抑制することができ、その結果、積層体10を有するセンサ30において、尿酸(検知対象物)の濃度の測定精度の低下、すなわちセンサ30の感度の低下を回避することができる。なお、ここでいう「電極膜12の変質」とは、電極膜12の最表面(最上面)では炭素同士の結合形態がsp結合構造(ダイヤモンド構造)となり、電極膜12の基板11側では炭素同士の結合形態がsp結合構造(グラファイト構造)となることを意味する。
続いて、図5(b)に示すように、溝21に沿って、電極膜12を外方に折り曲げる方向に積層基板10aを折り曲げ、基板11を破断する。これにより、少なくとも、基板11と、界面層13と、電極膜12と、を有する積層体10(図1参照)を得ることができる。
なお、積層基板10aの表面(電極膜12側)から溝21を形成することも考えられる。しかしながら、ダイヤモンド結晶で構成される電極膜12は高硬度であるため、電極膜12の側からレーザ加工法や機械加工法等により溝21を形成することは困難である。
また、上述の破断を用いた手法ではなく、積層基板10aをドライエッチング等により所定の形状に成形して積層体10を作製することも考えられる。しかしながら、ダイヤモンド結晶で構成された高硬度の電極膜12を有する積層基板10aを、ドライエッチング等により所定の形状に成形することは非常に困難である。また、ドライエッチングにより、電極膜12に変質領域が生じる場合もある。
<電気化学センサの作製>
積層体10を作製したら、センサ30を作製する。具体的には、まず、基材31を用意する。そして、基材31上に、所定パターンの配線32~34、配線33に電気的に接続される参照電極36、及び配線34に電気的に接続される対電極37を設ける。なお、配線32~34、参照電極36、及び対電極37等が予め設けられた基材31を用意してもよい。また、配線32と電気的に接続するように、導電性接合部材35を基材31上に設け、そして、導電性接合部材35上に積層体10を配置する。このとき、電極膜12が上側となるように(すなわち、基板11が基材31と対向するように)、積層体10を配置する。これにより、積層体10は、導電性接合部材35を介して、基材31上に固定されるとともに、配線32に電気的に接続されることとなる。そして、積層体10の周囲を絶縁性樹脂38で囲うとともに、配線32~34を防水部材39で覆う。これにより、図2及び図3に示すようなセンサ30が得られる。
(4)効果
本態様によれば、以下に示す1つ又は複数の効果が得られる。
(a)基板11と電極膜12との間に、電極膜12におけるB濃度よりも高いB濃度を有する界面層13が設けられていることで、基板11と電極膜12との間の直列抵抗を低減することができる。これにより、電極膜12の表面で生じさせた電気化学反応に起因する電流を、基板11側から取り出すことが容易となる。その結果、積層体10を有するセンサ30において、センサ感度を高めることが可能となる。
(b)界面層13がπ結合を有していることで、基板11と電極膜12との間の応力緩和の効果や、電極膜12の反り低減の効果、ひいては、積層体10の反りの低減の効果が得られるようになる。
(c)界面層13がπ結合を有していることで、界面層13中へのBの取り込みを確実に行えるようになる。これにより、界面層13におけるB濃度を容易かつ確実に高めることができる。その結果、上述の直列抵抗を確実に低減することができる。
(d)界面層13におけるπ結合の密度が、電極膜12におけるπ結合の密度よりも高いことで、界面層13におけるB濃度を、電極膜12におけるB濃度よりも確実に高くすることができる。
(e)基板11と界面層13との間に酸化物層14が設けられていることで、基板11と界面層13との間の密着性、ひいては、基板11と電極膜12との間の密着性を高めることができる。
(f)酸化物層14が設けられている場合であっても、導電性を有する基板11と界面層13とで酸化物層14を挟むことで、基板11と界面層13との間で容量結合効果及びトンネル効果のうち少なくともいずれかの効果を生じさせ、電極膜12の表面で生じさせた電気化学反応に起因する電流を、基板11側に流すことができる。このように、界面層13が設けられていることで、酸化物層14が介在することによる直列抵抗の増加を回避できる。
(g)酸化物層14がSi結晶粒を含むことで、酸化物層14が介在することによる直列抵抗の増加を確実に回避することができる。
(h)酸化物層14のうち界面層13に接する表面に、高い導電性を有するSiB層15が設けられていることで、すなわち、基板11と高い導電性を有するSiB層15とで酸化物層14を挟むことで、基板11とSiB層15との間で、容量結合効果及びトンネル効果のうち少なくともいずれかの効果を確実に生じさせ、電極膜12の表面で生じさせた電気化学反応に起因する電流を、基板11側に確実に流すことができる。これにより、酸化物層14が介在することによる直列抵抗の増加を確実に回避することができる。
(5)変形例
本態様は、以下の変形例のように変形することができる。なお、以下の変形例の説明において、上述の態様と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。また、上述の態様及び以下の変形例は任意に組み合わせることができる。
(変形例1)
上述の態様では、基板11がSi基板である例について説明したが、これに限定されない。
基板11は導電性を有していれば、Si基板以外の基板であってもよい。導電性を有する基板11として、例えば、炭化シリコン基板(SiC基板)等のSiの化合物を用いて構成された基板、ニオブ(Nb)基板、モリブデン(Mo)やチタン(Ti)等で構成される金属基板を用いることもできる。本変形例においても、基板11と電極膜12との間に、電極膜12におけるB濃度よりも高いB濃度を有する界面層13が設けられていることで、上述の態様と同様の効果を得ることができる。
なお、本変形例の場合(基板11がSi基板以外の基板である場合)であって、ダイヤモンド結晶の成長過程における加熱中に酸化物層14を形成する場合、酸化物層14は基板を構成する主元素(Nb、Mo、Ti等)及びOを含む層になるが、アモルファス状の層にはならない。このような酸化物層14であっても、上述の態様と同様の効果、すなわち、基板11と界面層13との間の密着性、ひいては、基板11と電極膜12との間の密着性を向上させる効果を得ることができる。
(変形例2)
上述の態様では、界面層13が、基板11の上面全面を覆う連続層である例について説明したが、これに限定されない。
界面層13は、基板11の上面を部分的に覆う層であってもよい。例えば、界面層13は、基板11の上面を部分的に覆う不連続層であってもよい。すなわち、界面層13は、基板11の上面に、例えば島状に設けられていてもよい。また例えば、界面層13は、基板11の上面を部分的に覆う連続層であってもよい。すなわち、界面層13は、基板11の上面に、例えば網目状に設けられていてもよい。本変形例の場合、界面層13は、基板11の平面積のうちの例えば20%以上、好ましくは50%以上を覆うことが好ましい。なお、基板11の平面積とは、基板11の上面に対して垂直方向上方から基板11を見た際における基板11の面積である。
導電性の高い界面層13が、基板11の上面を部分的にでも覆っていることで、基板11と電極膜12との間の直列抵抗を充分に低減することができる。加えて、本変形例のように、界面層13が基板11の上面を部分的に覆う層であることで、基板11の上面(又は酸化物層14)と電極膜12とを部分的に接触させることが可能となる。その結果、上述の態様のように界面層13が基板11の上面全面を覆う連続層である場合よりも、基板11と電極膜12との間の密着性を向上させる効果が得られやすくなる。また、本変形例では、界面層13の形成時間を短縮でき、生産コストを低減することもできる。
(変形例3)
上述の態様では、ダイヤモンド結晶の成長過程における加熱中に基板11の上面をアモルファス化し、アモルファス状の酸化物層14を形成する例について説明したが、これに限定されない。
例えば、スクラッチ処理後の基板11に対して、所定のアニール処理を行ってもよい。これによっても、基板11の上面に酸化物層14を形成することができる。また例えば、スクラッチ処理後の基板11の結晶成長面上に、アモルファス酸化シリコン(アモルファスSiO)や酸化シリコン(SiO)を堆積させることで、酸化物層14を設けてもよい。そして、酸化物層14が形成された基板11を、熱フィラメントCVD装置300の成長室301内に搬入し、上述の処理手順、処理条件と同様の手順、条件でダイヤモンド結晶を成長させることで、基板11と電極膜12との間に、B濃度の高い界面層13を形成することができる。これにより、上述の態様と同様の効果を得ることができる。
また、本変形例においても、所定のスクラッチ処理を行った基板11に対して、所定のアニール処理を行ったり、アモルファスSiOを堆積させたりすることで、Si結晶粒を母相中に分散して含む酸化物層14を得ることができる。
(変形例4)
上述の態様では、ダイヤモンド結晶の成長過程において、SiB層15を形成する例について説明したが、これに限定されない。例えば、酸化物層14の上面にホウ化ケイ素(SiB)等のシリコンのホウ化物(SiB)を堆積させることで、SiB層15を形成してもよい。
(変形例5)
上述の態様では、基板11の結晶成長面に対して所定のスクラッチ処理を行う例について説明したが、これに限定されない。
例えば、スクラッチ処理に代えて、又は、スクラッチ処理に加えて、種付け(シーディング)処理を行ってもよい。シーディング処理とは、例えば数nm~数十μm程度のダイヤモンド粒子(好ましくはダイヤモンドナノ粒子)を分散させた溶液(分散液)を結晶成長面に塗布したり、分散液中に基板11を浸漬したりすることにより、ダイヤモンド粒子(種)を結晶成長面に付着させる処理である。シーディング処理を行った基板11、あるいは、スクラッチ処理及びシーディング処理を行った基板11を、熱フィラメントCVD装置300の成長室301内に搬入し、上述の処理手順、処理条件と同様の手順、条件でダイヤモンド結晶を成長させることで、基板11と電極膜12との間に、B濃度の高い界面層13を形成することができる。これにより、上述の態様と同様の効果を得ることができる。
なお、シーディング処理のみを行った場合(すなわち、スクラッチ処理を行っていない場合)、基板11上に酸化物層14を形成することはできるものの、酸化物層14にSi結晶粒を含ませることは困難である。酸化物層14にSi結晶粒を含ませる観点から、基板11に対して、所定のスクラッチ処理を行うことが好ましい。
(変形例6)
上述の態様では、基板11上に、酸化物層14、SiB層15、界面層13、及び電極膜12が、この順に設けられている例について説明したが、これに限定されない。
積層体10は、少なくとも、基板11と、界面層13と、電極膜12と、を有していればよい。すなわち、積層体10は、酸化物層14、SiB層15を有していなくてもよい。基板11と電極膜12との間に、少なくともB濃度の高い界面層13が設けられていれば、基板11と電極膜12との間の直列抵抗を低減することができる。
<他の態様>
以上、本開示の態様を具体的に説明した。但し、本開示は上述の態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
例えば、電極膜12上に所定の検知対象物(例えば尿酸)のみを透過させる機能膜や検知対象物のみと反応する機能膜を設けてもよい。このような機能膜として、例えば検出成分に応じた所定の酵素を含む膜やイオン交換膜等の所定の表面装飾膜が設けられていてもよい。
また、上述の態様や変形例では、被験液がヒトの尿であり、検知対象物が尿酸である例について説明したが、これに限定されない。被験液は、ヒトを含む動物の体液、血液、尿等のタンパク質を含む液であってもよい。すなわち、センサ30(積層体10)は、ヒトを含む動物の体液、血液、又は尿を含む被験液を電極膜12に接触させて用いることができる。また、検知対象物は、電極群(少なくとも積層体10と対電極37との間)に印加される電圧が所定の電圧範囲内であれば、サイクリックボルタンメトリーの電圧掃引条件を適宜変更することで、尿酸以外の種々の成分(物質)の濃度を測定することができる。
また、上述の態様や変形例では、被験液中の検知対象物の濃度を、三電極法により測定するセンサ30について説明したが、これに限定されない。センサ30は、被験液中の検知対象物の濃度を、二電極法により測定するように構成されていてもよい。すなわち、参照電極36及び配線33は設けられていなくてもよい。
また、上述の態様や変形例では、積層体10を、センサ30の作用電極として用いる例について説明したが、これに限定されない。本開示に係る積層体10は、センサ30の作用電極の他、水処理や汚水処理(廃液処理)等の電気化学的な電解処理を行う際の電極(電解電極)や、電気化学的なオゾン生成処理を行う際の電極(オゾン発生用電極)等にも好適に用いることができる。上述のように、積層体10では、基板11と電極膜12との間の直列抵抗が低いことから、電極膜12の表面で生じさせた電気化学反応に起因する電流を、基板11側からより多く取り出すことができる。その結果、積層体10が水処理や廃液処理等を行う際の電極として用いられた場合には、水処理や廃液処理等の処理速度を上昇させることが可能となり、積層体10がオゾン発生用電極として用いられた場合には、オゾン発生量を増加させることが可能となる。
以下、上述の態様の効果を裏付ける実験結果について説明する。
<界面層及び酸化物層に関する評価>
B濃度が高い界面層を介在させる効果、及び、酸化物層を介在させる効果を評価した。
(サンプル1)
サンプル1では、基板として平面視で円形状の6インチの単結晶Si基板を用意し、このSi基板の結晶成長面に対して所定のスクラッチ処理を行った。スクラッチ処理後のSi基板を、図4に示す熱フィラメントCVD装置の成長室内に搬入した。そして、Si基板の加熱(タングステンフィラメントの加熱)を開始した。このとき、タングステンフィラメントの昇温レートは、上述の態様に記載の範囲よりも高いレートとした。Si基板の温度が所定の温度(ダイヤモンド結晶の成長温度)に達した後、TMBガス及びCHガスの供給を開始した。その他の処理条件は、上述の態様に記載の処理条件範囲内の条件とした。これにより、Si基板と、Bを含むダイヤモンド結晶で構成される電極膜と、がこの順に設けられた積層基板を得た。
そして、ガルバノ光学系のレーザを用い、下記のレーザ光照射条件で、得られた積層体の裏面(電極膜が設けられた側の面とは反対側の面)に、レーザ光を照射して、2mmピッチの格子状にレーザ加工溝(凹状の溝)を形成した。そして、下記のブレーキング条件で、レーザ加工溝に沿ってブレーキング(破断)を行い、2mm四方の大きさの積層体(電極チップ)を得た。この積層体をサンプル1(図6(a)参照)とした。
<レーザ光照射条件>
レーザ光:532nm、5W、10kHz、スポット径2μm
走査速度:10cm/sec
スキャン回数:4回
<ブレーキング条件>
ブレーク押し込み量:0.1mm
ブレーク速度:100mm/s
(サンプル2)
サンプル2では、スクラッチ処理の条件をサンプル1と異ならせている。スクラッチ処理の条件以外の処理条件、処理手順は、サンプル1と同様の処理条件、処理手順で、Si基板上にダイヤモンド結晶を成長させた。これにより、Si基板と、酸化物層と、Bを含むダイヤモンド結晶で構成される電極膜と、がこの順に設けられた積層基板を得た。そして、サンプル1と同様のレーザ光照射条件、ブレーキング条件、及び手順で、得られた積層体に対してレーザ光の照射及びブレーキングを行い、2mm四方の大きさの積層体(電極チップ)を得た。この積層体をサンプル2(図6(b)参照)とした。
(サンプル3)
サンプル3では、基板として6インチの平面視で円形状の単結晶Si基板を用意し、このSi基板の結晶成長面に対して所定のスクラッチ処理を行った。スクラッチ処理後のSi基板を、図4に示す熱フィラメントCVD装置の成長室内に搬入した。そして、タングステンフィラメントの加熱を開始し、Si基板の加熱を開始した。このとき、Si基板の温度がダイヤモンド結晶の成長温度になるまで、タングステンフィラメントの温度が上述の態様に記載の範囲内の所定のレートで徐々に上昇するように、タングステンフィラメントの温度を制御した。Si基板の加熱開始から所定時間経過後、Si基板の温度が第1熱分解温度に達する前に、成長室内へのHガス、TMBガス、及びCHガスの供給を開始した。Si基板の温度が第1熱分解温度に近づくと、TMBガスの分解が徐々に始まり、Si基板の温度が第1熱分解温度以上の温度になると、TMBガスの分解が本格的に始まる。Si基板の温度が第2熱分解温度に近づくと、TMBガスの分解に加えて、CHガスの分解も徐々に始まる。Si基板の温度が第2熱分解温度以上の温度になると、CHガスの分解が本格的に始まる。その他の処理条件は、上述の態様に記載の処理条件範囲内の条件であって、サンプル1と同様の処理条件とした。これにより、Si基板と、界面層と、Bを含むダイヤモンド結晶で構成される電極膜と、がこの順に設けられた積層基板を得た。この積層基板では、界面層におけるB濃度が、電極膜におけるB濃度よりも高いことを確認した。そして、サンプル1と同様のレーザ光照射条件、ブレーキング条件、及び手順で、得られた積層基板に対してレーザ光の照射及びブレーキングを行い、2mm四方の大きさの積層体(電極チップ)を得た。この積層体をサンプル3(図6(c)参照)とした。
(サンプル4)
サンプル4では、スクラッチ処理の条件をサンプル3と異ならせている。スクラッチ処理の条件以外の処理条件、処理手順は、サンプル3と同様の処理条件、処理手順で、Si基板上にダイヤモンド結晶を成長させた。これにより、Si基板と、酸化物層と、界面層と、Bを含むダイヤモンド結晶で構成される電極膜と、がこの順に設けられた積層基板を得た。この積層基板では、界面層におけるB濃度が、電極膜におけるB濃度よりも高いことを確認した。そして、サンプル1と同様のレーザ光照射条件、ブレーキング条件、及び手順で、得られた積層基板に対してレーザ光の照射及びブレーキングを行い、2mm四方の大きさの積層体(電極チップ)を得た。この積層体をサンプル4(図6(d)参照)とした。
サンプル1~4の電極チップにおいて、Si基板と電極膜との間の直列抵抗(部材間抵抗)をそれぞれ測定した。そして、各サンプルの直列抵抗を、サンプル1の直列抵抗を1として規格化した。この規格化した値を「直列抵抗比」とした。図7に、サンプル1~4の直列抵抗の評価結果を示す。
また、サンプル1~4の電極チップにおいて、Si基板と電極膜との間の密着強度を以下の方法で測定した。まず、サンプル1~4の各電極チップの表裏面を、エポキシ系接着剤を用いて、所定の引張試験用治具に接着した。なお、電極チップの表面とは、電極膜が有する面のうちSi基板が設けられた側の面とは反対側の面を意味し、電極チップの裏面とは、Si基板が有する面のうちの電極膜が設けられた側の面とは反対側の面を意味する。そして、電極チップの表裏面が引張試験用治具に接着された状態で、引張試験を行った。引張試験において、電極膜がSi基板から剥れた時の最大荷重を、Si基板と電極膜との間の密着強度とした。そして、各サンプルの密着強度を、サンプル1の密着強度を1として規格化した。この規格化した値を「密着強度比」とした。図7に、サンプル1~4の密着強度の評価結果を示す。
図7から、サンプル3,4は、サンプル1よりも直列抵抗が低いことが確認できる。このことから、Si基板と電極膜との間に、電極膜におけるB濃度よりも高いB濃度を有する界面層が設けられていることで、直列抵抗を低減することができることが分かる。
また、図7から、サンプル4は、サンプル3よりも密着強度が高いことも確認できる。このことから、Si基板と界面層との間に酸化物層が設けられていることで、Si基板と界面層との間の密着性、ひいては、Si基板と電極膜との間の密着性を向上させることができることが分かる。すなわち、Si基板と界面層との間に酸化物層が設けられていることで、直列抵抗を低減しつつ、Si基板と電極膜との間の密着性を向上させることができることが分かる。
また、図7から、サンプル4は、サンプル2に比べて、直列抵抗の増加が抑制されていることが確認できる。このことから、B濃度の高い界面層が設けられていることで、導電性の低い酸化物層が介在することによる直列抵抗の増加を回避できることが分かる。
<界面層におけるB濃度に関する評価>
界面層におけるB濃度と直列抵抗との相関関係、及び、界面層におけるB濃度と密着強度との相関関係を評価した。
単結晶Si基板と、界面層と、Bを含むダイヤモンド結晶からなる電極膜と、がこの順に積層された複数のサンプル(電極チップ)を用意した。複数のサンプルでは、界面層におけるB濃度、具体的には、電極膜におけるB濃度に対する界面層におけるB濃度の比(=界面層におけるB濃度/電極膜におけるB濃度、以下、単に「B濃度比」とも称する)が異なっている。B濃度比は、ダイヤモンド結晶を成長させる際のB含有ガスの供給量(供給流量、分圧等)、基板の温度等を制御することで調整した。
各サンプルのSi基板と電極膜との間の直列抵抗(部材間抵抗)を測定した。そして、各サンプルの直列抵抗を、B濃度比が1のサンプルの直列抵抗を1として規格化した。この規格化した値を「直列抵抗比」とした。図8に、界面層におけるB濃度と直列抵抗との相関関係の評価結果を示す。
また、各サンプルのSi基板と電極膜との間の密着強度を測定した。密着強度の測定は、上述の「界面層及び酸化物層に関する評価」に記載の手法と同様の手法で行った。そして、各サンプルの密着強度を、B濃度比が1のサンプルの密着強度を1として規格化した。この規格化した値を「密着強度比」とした。図8に、界面層におけるB濃度と密着強度との相関関係の評価結果を示す。
なお、「B濃度比が1のサンプル」とは、界面層におけるB濃度と電極膜におけるB濃度とが同じである電極チップ、すなわち、Si基板の上に電極膜が直接設けられているサンプル(界面層が設けられていないサンプル)を意味する。
図8から、B濃度比が1超であることで、すなわち、界面層におけるB濃度が電極膜におけるB濃度よりも高いことで、B濃度比が1のサンプルよりも直列抵抗を低減できることが確認できる。
また、図8から、B濃度比が2以上であることで、直列抵抗比を0.7程度まで低減できることが確認できる。すなわち、界面層におけるB濃度が電極膜におけるB濃度の2倍以上であることで、Si基板と電極膜との間の密着強度を維持しつつ、直列抵抗低減の効果を顕著に得ることができることが確認できる。
また、図8から、B濃度比が5以上であることで、直列抵抗比を0.3程度まで低減できることが確認できる。すなわち、界面層におけるB濃度が電極膜におけるB濃度の5倍以上であることで、直列抵抗低減の効果をより顕著に得ることができることが確認できる。
また、図8から、上記B濃度比が100以下であることで、密着強度比を1程度に維持できることが確認できる。すなわち、界面層におけるB濃度が電極膜におけるB濃度の100倍以下であることで、直列抵抗低減の効果を得つつ、Si基板と電極膜との間の密着強度の低下を回避できることが確認できる。
また、本発明者等は、上記B濃度比が100以下のサンプルにおいて、密着強度測定の際の引張試験後(密着強度測定後)の剥離面の観察、及びSi基板と電極膜との間の厚さ方向における断面(縦断面)の詳細解析を行った。その結果、B濃度比が100以下のサンプルでは、密着強度測定後の剥離面に、界面層だけでなく基板や電極膜等のサンプルの各構成部材も観察された。これは、界面層が脆化しておらず、基板と界面層との間の密着強度が高いことを意味している。
また、図8から、上記B濃度比が100を超えると、密着強度が急激に低下することが確認できる。また、本発明者等は、B濃度比が100を超えるサンプルにおいて、密着強度測定後の剥離面の観察、及びSi基板と電極膜との間の縦断面の詳細解析を行った。その結果、B濃度比が100を超えるサンプルでは、密着強度測定後の剥離面に、界面層が主として現れていることを確認した。これは、界面層が脆化しており、基板と界面層との間の密着強度が低いことを意味している。これらのことから、界面層におけるB濃度が電極膜におけるB濃度の100倍を超えると、界面層が脆化し、Si基板と電極膜との間の密着性が低下することが分かった。
<酸化物層におけるSi結晶粒の密度に関する評価>
酸化物層におけるSi結晶粒の密度(以下、「Si結晶粒の密度」とも称する)と直列抵抗との相関関係、及び、Si結晶粒の密度と密着強度との相関関係を評価した。
単結晶Si基板と、酸化物層と、界面層と、Bを含むダイヤモンド結晶からなる電極膜と、がこの順に積層され、界面層におけるB濃度が電極膜におけるB濃度よりも高い複数のサンプル(電極チップ)を用意した。複数のサンプルでは、酸化物層におけるSi結晶粒の密度が異なっている。Si結晶粒の密度は、Si基板に対して行うスクラッチ処理の条件を変更することで調整した。
Si結晶粒の密度は、界面層の縦断面(厚さ方向における断面)をTEMで観察して得られるSi結晶粒の分布形態が、縦断面の奥行方向にも同様に続いているものと仮定して求めた。
各サンプルのSi基板と電極膜との間の直列抵抗(部材間抵抗)を測定した。そして、各サンプルの直列抵抗を、Si結晶粒の密度が5個/μmのサンプルの直列抵抗を1として規格化した。この規格化した値を「直列抵抗比」とした。図9に、酸化物層におけるSi結晶粒の密度と直列抵抗との相関関係の評価結果を示す。
また、各サンプルのSi基板と電極膜との間の密着強度を測定した。密着強度の測定は、上述の「界面層及び酸化物層に関する評価」に記載の手法と同様の手法で行った。そして、各サンプルの密着強度を、Si結晶粒の密度が5個/μmのサンプルの密着強度を1として規格化した。この規格化した値を「密着強度比」とした。図9に、酸化物層におけるSi結晶粒の密度と密着強度との相関関係の評価結果を示す。
図9から、Si結晶粒の密度が10個/μm以上であることで、直列抵抗比を0.5程度まで低減できることが確認できる。すなわち、Si結晶粒の密度が10個/μm以上であることで、酸化物層が介在することによる直列抵抗の増加を回避できていることが分かる。
また、図9から、Si結晶粒の密度が500個/μm以下であることで、密着強度比をほぼ1(1付近)に維持できることが確認できる。すなわち、Si結晶粒の密度が500個/μm以下であることで、密着強度を維持しつつ、酸化物層を介在させることによる直列抵抗の増加を回避できていることが分かる。
また、本発明者等は、Si結晶粒の密度が500個/μm以下のサンプルにおいて、密着強度測定後の剥離面の観察、及びSi基板と電極膜との間の縦断面の詳細解析を行った。その結果、Si結晶粒の密度が500個/μm以下のサンプルでは、密着強度測定後の剥離面に酸化物層だけでなく、Si基板、界面層、電極膜等の各サンプルの各構成部材が観察された。これは、酸化物層が脆化しておらず、Si基板と電極膜との間の密着性が高いことを意味している。
また、図9から、Si結晶粒の密度が500個/μmを超えると、密着強度が急激に低下することが確認できる。本発明者等は、Si結晶粒の密度が500個/μmを超えるサンプルにおいて、密着強度測定後の剥離面の観察、及びSi基板と電極膜との間の縦断面の詳細解析を行った。その結果、Si結晶粒の密度が500個/μmを超えるサンプルでは、密着強度測定後の剥離面に酸化物層が主として現れていること、すなわち、酸化物層が脆化していることを確認した。これらのことから、酸化物層におけるSi結晶粒の密度が500個/μmを超えると、酸化物層が脆化し、Si基板と電極膜との間の密着性が低下することが分かった。
<SiB層の厚さに関する評価>
SiB層の厚さと直列抵抗との相関関係、及び、SiB層の厚さと密着強度との相関関係を評価した。
単結晶Si基板と、酸化物層と、SiB層と、界面層と、Bを含むダイヤモンド結晶からなる電極膜と、がこの順に積層され、界面層におけるB濃度が電極膜におけるB濃度の2倍である(上記B濃度比が2である)複数のサンプル(電極チップ)を用意した。複数のサンプルでは、SiB層の厚さが異なっている。SiB層の厚さは、ダイヤモンド結晶を成長させる際の基板(タングステンフィラメント)の昇温レート等を制御することで調整した。
各サンプルのSi基板と電極膜との間の直列抵抗(部材間抵抗)を測定した。そして、各サンプルの直列抵抗を、SiB層の厚さが0.6nmのサンプルの直列抵抗を1として規格化した。この規格化した値を「直列抵抗比」とした。図10に、SiB層の厚さと直列抵抗との相関関係の評価結果を示す。
また、各サンプルのSi基板と電極膜との間の密着強度を測定した。密着強度の測定は、上述の「界面層及び酸化物層に関する評価」に記載の手法と同様の手法で行った。そして、各サンプルの密着強度を、SiB層の厚さが0.6nmのサンプルの密着強度を1として規格化した。この規格化した値を「密着強度比」とした。図10に、SiB層の厚さと密着強度との相関関係の評価結果を示す。
図10から、SiB層の厚さが1nmであることで、直列抵抗比を0.6程度まで低減できることが確認できる。このことから、厚さが1nm以上のSiB層を設け、Si基板と高い導電性を有するSiB層とで酸化物層を挟むことで、Si基板とSiB層との間で、容量結合効果又はトンネル効果が生じることが確認できる。すなわち、SiB層の厚さが1nm以上であることで、酸化物層が介在することによる直列抵抗の増加を回避できることが分かる。
また、図10から、SiB層の厚さが5nm以上であることで、直列抵抗比を0.3程度(0.3以下)まで低減できることが確認できる。このことから、SiB層の厚さが5nm以上であることで、酸化物層が介在することによる直列抵抗の増加を確実に回避できることが分かる。
また、図10から、SiB層の厚さが100nm以下であることで、密着強度比をほぼ1(1付近)に維持できることが確認できる。すなわち、SiB層の厚さが100nm以下であることで、密着強度を維持しつつ、酸化物層を介在させることによる直列抵抗の増加を回避できていることが分かる。
また、図10から、SiB層の厚さが100nmを超えると、密着強度が急激に低下することが確認できる。
<本開示の好ましい態様>
以下、本開示の好ましい態様について付記する。
(付記1)
本開示の一態様によれば、
導電性を有する基板と、
前記基板が有する2つの主面のうちいずれか一方の主面上に設けられ、ホウ素を含むダイヤモンド結晶で構成される電極膜と、を備え、
前記基板と前記電極膜との間には、炭素を主成分とし、ホウ素を含む界面層が設けられており、
前記界面層は、前記電極膜におけるホウ素の濃度よりも高いホウ素の濃度を有する、電極用積層構造体が提供される。
(付記2)
付記1に記載の構造体であって、好ましくは、
前記界面層はπ結合を有する。
(付記3)
付記1又は2のいずれか1項に記載の構造体であって、好ましくは、
前記界面層におけるπ結合の密度は、前記電極膜におけるπ結合の密度よりも高い。
(付記4)
付記1~3のいずれか1項に記載の構造体であって、好ましくは、
前記基板と前記界面層との間には、前記基板を構成する主元素及び酸素を含む酸化物層が設けられている。
(付記5)
付記1~4のいずれか1項に記載の構造体であって、好ましくは、
前記基板は、該基板を構成する主元素としてのシリコンを含み、
前記基板と前記界面層との間には、シリコン及び酸素を含むアモルファス状の酸化物層が設けられている。
(付記6)
付記4又は5に記載の構造体であって、好ましくは、
前記酸化物層のうち、前記界面層に接する表面には、前記主元素(付記5の場合はシリコン)及びホウ素を含み、酸素を含まない層が設けられている。
(付記7)
付記4~6のいずれか1項に記載の構造体であって、好ましくは、
前記酸化物層は、前記主元素(付記5の場合はシリコン)の結晶粒子を母相中に分散して含む。
(付記8)
付記1~7のいずれか1項に記載の構造体であって、好ましくは、
前記界面層は、前記基板の前記一方の主面全面を覆う連続層である。
(付記9)
付記1~7のいずれか1項に記載の構造体であって、好ましくは、
前記界面層は、前記基板の前記一方の主面を部分的に覆う不連続層又は前記基板の前記一方の主面を部分的に覆う連続層である。
(付記10)
付記9に記載の構造体であって、好ましくは、
前記界面層は、前記基板の前記一方の主面を垂直方向上方から見た際における前記一方の主面の面積のうちの20%以上、好ましくは50%以上を覆っている。
(付記11)
本開示の他の態様によれば、
(a)導電性を有する基板を用意する工程と、
(b)前記基板上に、炭素を主成分とし、ホウ素を含む界面層を形成する工程と、
(c)前記界面層上に、ホウ素を含むダイヤモンド結晶で構成される電極膜を形成する工程と、
を有し、
前記界面層におけるホウ素の濃度を、前記電極膜におけるホウ素の濃度よりも高くする電極用積層構造体の製造方法が提供される。
(付記12)
付記11に記載の方法であって、好ましくは、
(a)では、第1熱分解温度を有するホウ素含有ガスと、前記第1熱分解温度よりも高い第2熱分解温度を有する炭素含有ガスと、を供給可能に構成された成長室内へ、前記基板を搬入し、
(b)では、前記第1熱分解温度よりも高く、前記第2熱分解温度よりも低い所定の温度条件下で、前記ホウ素含有ガス及び前記炭素含有ガスを前記成長室内へ供給し、前記基板上に前記界面層を形成し、
(c)では、前記第2熱分解温度以上の所定の温度条件下で、前記ホウ素含有ガス及び前記炭素含有ガスを前記成長室内へ供給し、前記界面層上に前記電極膜を形成する。
(付記13)
付記11又は12のいずれか1項に記載の方法であって、好ましくは、
(b)を行う前に、(d)前記基板上に、前記基板を構成する主元素及び酸素を含む酸化物層を形成する工程をさらに有する。
(付記14)
付記13に記載の方法であって、好ましくは、
(d)を行った後(b)を行う前に、(e)前記酸化物層の最表面に、前記主元素及びホウ素を含み、酸素を含まない層を形成する工程をさらに有する。
(付記15)
付記13又は14に記載の方法であって、好ましくは、
(b)及び(c)を、前記酸化物層を結晶化させずアモルファス状とする条件下で行う。
10 電極用積層構造体(積層体)
11 基板
12 電極膜
13 界面層
30 電気化学センサ

Claims (11)

  1. 導電性を有する基板と、
    前記基板が有する2つの主面のうちいずれか一方の主面上に設けられ、ホウ素を含むダイヤモンド結晶で構成される電極膜と、を備え、
    前記基板と前記電極膜との間には、炭素を主成分とし、ホウ素を含む界面層が設けられており、
    前記界面層は、前記電極膜におけるホウ素の濃度よりも高いホウ素の濃度を有する、電極用積層構造体。
  2. 前記界面層はπ結合を有する
    請求項1に記載の電極用積層構造体。
  3. 前記界面層におけるπ結合の密度は、前記電極膜におけるπ結合の密度よりも高い
    請求項1又は2のいずれか1項に記載の電極用積層構造体。
  4. 前記基板と前記界面層との間には、前記基板を構成する主元素及び酸素を含む酸化物層が設けられている
    請求項1~3のいずれか1項に記載の電極用積層構造体。
  5. 前記酸化物層のうち、前記界面層に接する表面には、前記主元素及びホウ素を含み、酸素を含まない層が設けられている
    請求項4に記載の電極用積層構造体。
  6. 前記酸化物層は、前記主元素の結晶粒子を母相中に分散して含む
    請求項4又は5に記載の電極用積層構造体。
  7. (a)導電性を有する基板を用意する工程と、
    (b)前記基板上に、炭素を主成分とし、ホウ素を含む界面層を形成する工程と、
    (c)前記界面層上に、ホウ素を含むダイヤモンド結晶で構成される電極膜を形成する工程と、
    を有し、
    前記界面層におけるホウ素の濃度を、前記電極膜におけるホウ素の濃度よりも高くする電極用積層構造体の製造方法。
  8. (a)では、第1熱分解温度を有するホウ素含有ガスと、前記第1熱分解温度よりも高い第2熱分解温度を有する炭素含有ガスと、を供給可能に構成された成長室内へ、前記基板を搬入し、
    (b)では、前記第1熱分解温度よりも高く、前記第2熱分解温度よりも低い所定の温度条件下で、前記ホウ素含有ガス及び前記炭素含有ガスを前記成長室内へ供給し、前記基板上に前記界面層を形成し、
    (c)では、前記第2熱分解温度以上の所定の温度条件下で、前記ホウ素含有ガス及び前記炭素含有ガスを前記成長室内へ供給し、前記界面層上に前記電極膜を形成する、
    請求項7に記載の電極用積層構造体の製造方法。
  9. (b)を行う前に、(d)前記基板上に、前記基板を構成する主元素及び酸素を含む酸化物層を形成する工程をさらに有する
    請求項7又は8に記載の電極用積層構造体の製造方法。
  10. (d)を行った後(b)を行う前に、(e)前記酸化物層の最表面に、前記主元素及びホウ素を含み、酸素を含まない層を形成する工程をさらに有する
    請求項9に記載の電極用積層構造体の製造方法。
  11. (b)及び(c)を、前記酸化物層を結晶化させずアモルファス状とする条件下で行う
    請求項9又は10に記載の電極用積層構造体の製造方法。
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