JP2023108921A - 樹脂組成物及びフィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】ポリエーテルイミド樹脂の優れた機械特性を保持し、かつ、流動性に優れた樹脂組成物を提供する。【解決手段】下記式(1)で表されるの繰り返し単位を有するポリエーテルイミド樹脂(A)と、エーテル基を有する結晶性樹脂(B)を含む樹脂組成物であって、該樹脂組成物について、JIS K7244-4に準じて歪み0.1%、周波数10Hz、昇温速度3℃/分にて測定したガラス転移温度(Tg)が222℃以下であり、かつ、前記結晶性樹脂(B)の質量平均分子量が75000以下である樹脂組成物。TIFF2023108921000009.tif47148【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂組成物及びフィルムに関する。
近年、電気・電子機器や自動車、航空機等の用途におけるフィルムとして、耐熱性や機械特性、耐薬品性、耐久性に優れていることから、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルイミドスルホン(PEIS)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)等に代表されるスーパーエンジニアリングプラスチックが広く採用されるようになってきている。
中でも、ポリエーテルイミド樹脂は、ガラス転移温度が200℃を超える非晶性のスーパーエンジニアリングプラスチックであり、その優れた耐熱性、機械特性、耐薬品性、難燃性を活かして、電気・電子部品や自動車部品、航空機部品等に幅広く使用されている。また、ポリエーテルイミド樹脂は、複合材料とした際にも、優れた機械特性、耐薬品性を発揮しうる。このため、近年、ポリエーテルイミド樹脂繊維は、強化プラスチック用のマトリクス材料として注目されている。
しかしながら、ポリエーテルイミド樹脂はこのような優れた特性を有しているものの、成形加工時の流動性が十分ではなく、成形加工温度を高くする必要があるため、生産性や安全性の観点から、より低い温度で成形加工できるよう流動性の改善が求められていた。
特許文献1には、流動性を付与するために、ポリエーテルイミド樹脂に融点が200℃以上のフェノール系安定剤や潤滑剤を配合した樹脂組成物が提案されている。また、特許文献2には、ポリエーテルイミド樹脂に特定のPEEK-PEDEKコポリマーを配合した樹脂組成物が提案されている。
特開2007-113011号公報 特表2019-515083号公報
ポリエーテルイミド樹脂に潤滑剤などの助剤やコポリマーを配合することにより、樹脂組成物に流動性を付与することができるが、機械特性を低下させてしまうという問題があった。
したがって、ポリエーテルイミド樹脂の優れた機械特性などの物性を保持したまま、同時に流動性を付与することが望まれている。
本発明の目的は、ポリエーテルイミド樹脂の優れた機械特性を保持し、かつ、流動性に優れた樹脂組成物、これを用いたフィルムを提供することにある。
本発明者らは鋭意検討した結果、ポリエーテルイミド樹脂にポリエーテルエーテルケトン樹脂等の特定の樹脂を配合することによって、優れた機械特性を保持し、かつ、流動性に優れた樹脂組成物、これを用いたフィルムが得られることを見出した。
即ち、本発明は以下の特徴を有する。
[1] 下記式(1)で表される繰り返し単位を有するポリエーテルイミド樹脂(A)と、エーテル基を有する結晶性樹脂(B)を含む樹脂組成物であって、該樹脂組成物について、JIS K7244-4に準じて歪み0.1%、周波数10Hz、昇温速度3℃/分にて測定したガラス転移温度(Tg)が222℃以下であり、かつ、前記結晶性樹脂(B)の質量平均分子量が75000以下である樹脂組成物。
Figure 2023108921000001
[2]前記結晶性樹脂(B)が、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(C)である、[1]に記載の樹脂組成物。
[3] 前記ポリエーテルエーテルケトン樹脂(C)の質量平均分子量(Mw)が40000以上75000以下である、[2]に記載の樹脂組成物。
[4] 前記樹脂組成物のガラス転移温度Tg(b)と、前記ポリエーテルイミド樹脂(A)のガラス転移温度Tg(a)が下記関係式を満たす、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
Tg(a)-Tg(b)≧5.0℃
(上記式中の各ガラス転移温度はいずれもJIS K7244-4に準じて歪み0.1%、周波数10Hz、昇温速度3℃/分にて測定した値であり、Tg(a)はポリエーテルイミド樹脂(A)単体のガラス転移温度(℃)、Tg(b)は樹脂組成物のガラス転移温度(℃)を示す。)
[5] 340℃、せん断速度10s-1における溶融粘度が7000Pa・s以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6] JIS K7127に準拠して測定した引張弾性率が2800MPa以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7] JIS K7127に準拠して測定した引張破断伸度が70%以上である、[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8] [1]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物を含むフィルム。
本発明により、ポリエーテルイミド樹脂本来の優れた機械特性を保持し、かつ、流動性に優れた樹脂組成物、これを用いたフィルムを提供することが可能となる。
以下、本発明の実施形態について詳しく説明するが、本発明はこれらの説明に限定されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更して実施し得る。なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本実施形態に係る樹脂組成物は、少なくとも、以下に示すポリエーテルイミド樹脂(A)と、エーテル基を有する結晶性樹脂(B)とを有する。
[ポリエーテルイミド樹脂(A)]
本発明において用いるポリエーテルイミド樹脂(A)は、下記式(1)で表される繰り返し単位を有するものであり、下記式(1)で表される繰り返し単位を有することで、耐熱性と機械特性のバランスに優れる。
Figure 2023108921000002
上記式(1)において、n(繰り返し数)は通常10~1000の範囲の整数であり、耐熱性と成形性のバランスに優れることから、10以上が好ましく、20以上がより好ましい。また、1000以下が好ましく、500以下がより好ましい。
上記式(1)で表される繰り返し単位は、イミド結合位置がパラ位にある。一方で、ポリエーテルイミド樹脂は下記式(2)で表される繰り返し単位のように、イミド結合位置がメタ位にあるのものも存在する。本発明において用いるポリエーテルイミド樹脂(A)としては、機械特性および耐薬品性に優れる点で、上記式(1)で表される繰り返し単位を有していることが好ましいが、その他の成分として、下記式(2)で表される繰り返し単位を有するポリエーテルイミド樹脂を含んでもよい。
Figure 2023108921000003
上記式(2)において、n(繰り返し数)は、式(1)と同様、通常10~1000の範囲の整数であり、耐熱性と成形性のバランスに優れることから、10以上が好ましく、20以上がより好ましい。また、1000以下が好ましく、500以下がより好ましい。
ポリエーテルイミド樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、160℃以上が好ましく、170℃以上がより好ましく、180℃以上が特に好ましい。ガラス転移温度が160℃以上であることにより、樹脂組成物の耐熱性が十分なものとなる。また、300℃以下が好ましく、290℃以下がより好ましく、280℃以下が特に好ましい。ガラス転移温度が300℃以下であることにより、比較的低温で成形または二次加工可能となる。
本発明において、ガラス転移温度(Tg)は、JIS K7244-4:1999に準じて、粘弾性スペクトロメーター「DVA-200(アイティー計測制御株式会社製)」を用いて、歪み0.1%、周波数10Hzで温度範囲0~400℃にて昇温速度3℃/分で昇温させ、検出された貯蔵弾性率(E’)曲線から求めることができる。
ポリエーテルイミド樹脂(A)の質量平均分子量(Mw)は、特段の制限はないが、耐薬品性の観点より20000以上が好ましく、30000以上がより好ましい。また、製膜性の観点より、1000000以下が好ましく、700000以下がより好ましい。
ポリエーテルイミド樹脂(A)の分子量分布は1.1以上が好ましく、1.3以上がより好ましく、1.5以上が特に好ましい。また、分子量分布は8.0以下が好ましく、7.0以下がより好ましく、6.5以下が特に好ましい。分子量分布が前記範囲内であれば、高分子量成分と低分子量成分の割合が多すぎないため、機械特性、耐薬品性のバランスに優れる傾向となる。
なお、本発明において、前記の質量平均分子量(Mw)及び分子量分布は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により以下の条件で測定して得られる値を示す。
<GPC測定条件>
使用機器:東ソー(株)製HLC-8320GPCシステム
カラム:TSKgel guardcolumn SuperH-H(4.6mml.D.×3.5cm)+TSKgel SuperHM-H(6.0mml.D.×15cm)2本(東ソー(株)製、商品名)
溶離液:PEP(ペンタフルオロフェノール)(富士フィルム和光純薬製)/クロロホルム(富士フィルム和光純薬製HPLC級)=1/2(重量比)
カラム温度:40℃
検出器:示差屈折率計(RI検出器)、polarity=(+)
検量線:標準ポリスチレン(東ソー製)を用いた3次近似曲線(得られる値はポリスチレン換算分子量)
また、ポリエーテルイミド樹脂(A)の結晶融解熱量(ΔHm)は、10J/g以下が好ましく、5J/g以下がより好ましく、0J/gがさらに好ましい。すなわち、ポリエーテルイミド樹脂(A)は実質的に非晶性である。ΔHmが10J/g以下であれば、二次加工時の熱融着性に優れやすくなる。
なお、ポリエーテルエーテルケトン樹脂の結晶融解熱量(ΔHm)は、JIS K7122:2012に準じて、示差走査熱量計(例えば、パーキンエルマー社製「Pyris1 DSC」)を用いて、温度範囲25~400℃、加熱速度10℃/分で昇温させ、検出されたDSC曲線の融解ピークの面積から求めることができる。
ポリエーテルイミド樹脂(A)は、公知の製法により製造することができる。例えば、米国特許第3,803,085号明細書及び同3,905,942号明細書に記載されている製法により製造することができる。
ポリエーテルイミド樹脂(A)は市販品を使用することもできる。市販品としては、例えば、サビックイノベーティブプラスチックス社の商品名「Ultem」シリーズが挙げられる。
ポリエーテルイミド樹脂(A)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。樹脂組成物100質量部に対するポリエーテルイミド樹脂(A)の含有量は、機械特性の観点から、60.0質量部以上が好ましく、70.0質量部以上がより好ましい。一方、流動性の観点から、95.0質量部以下が好ましく、90.0質量部以下がより好ましい。
[エーテル基を有する結晶性樹脂(B)]
本発明に用いるエーテル基を有する結晶性樹脂(B)は、エーテル基を有する結晶性樹脂であれば特段の制限はない。エーテル基を有する結晶性樹脂(B)は、本実施形態に係る樹脂組成物の流動性向上及び機械特性の維持のための成分として機能しうる。
エーテル基を有する結晶性樹脂(B)としては、具体的には、エーテル基を有する、ポリオキシメチレン樹脂、ポリアリールエーテルケトン樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、ポリエーテルイミド樹脂(A)との相溶性の観点より、ポリアリールエーテルケトン樹脂が好ましい。ポリアリールエーテルケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂(A)は相溶性が高く、分子レベルで混合するため、ポリアリールエーテルケトン樹脂によりポリエーテルイミド樹脂(A)のガラス転移温度を制御することが容易となる。
ポリアリールエーテルケトン樹脂は、1つ以上のアリール基、1つ以上のエーテル基及び1つ以上のケトン基を含むモノマー単位を含有する単独重合体又は共重合体である。例えば、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトンケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトンケトン樹脂、ポリエーテルジフェニルエーテルケトン樹脂等や、これらの共重合体(例えば、ポリエーテルケトン-ポリエーテルジフェニルエーテルケトン共重合体)を挙げることができる。中でも、耐熱性、機械特性、耐薬品性等に優れる点で、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(以下、「ポリエーテルエーテルケトン樹脂(C)」と記載する。)が特に好ましい。
[ポリエーテルエーテルケトン樹脂(C)]
ポリエーテルエーテルケトン樹脂(C)は、少なくとも2つのエーテル基とケトン基とを構造単位として有する樹脂であればよいが、熱安定性、溶融成形性、剛性、耐薬品性、耐衝撃性、耐久性に優れることから、好ましくは下記式(3)で表される繰り返し単位を有するものである。
Figure 2023108921000004
(上記式(3)において、Ar~Arは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい、炭素原子数6~24のアリーレン基を表す。)
上記式(3)において、Ar~Arのアリーレン基は互いに異なるものであってもよいが、同一であることが好ましい。Ar~Arのアリーレン基としては、具体的にはフェニレン基、ビフェニレン基等が挙げられ、これらのうちフェニレン基が好ましく、p-フェニレン基であることがより好ましい。
Ar~Arのアリーレン基が有していてもよい置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等の炭素原子数1~20のアルキル基や、メトキシ基、エトキシ基等の炭素原子数1~20のアルコキシ基等が挙げられる。Ar~Arが置換基を有する場合、その置換基の数には特に制限はない。
中でも、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(C)は、下記式(4)で表される繰り返し単位を有するものが、熱安定性、溶融成形性、剛性、耐薬品性、耐衝撃性、耐久性の観点から好ましい。
Figure 2023108921000005
上記式(3)及び式(4)において、n(繰り返し数)は、好ましくは10~1000の範囲の整数であり、熱安定性、溶融成形性、剛性、耐薬品性に優れることから、10以上が好ましく、50以上がより好ましい。また、1000以下が好ましく、500以下がより好ましい。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂(C)の質量平均分子量(Mw)は30000以上が好ましく、40000以上がより好ましく、45000以上が特に好ましい。質量平均分子量(Mw)が30000以上であれば、耐久性、耐衝撃性等の機械的特性に優れる傾向となる。また、質量平均分子量(Mw)は80000以下が好ましく、75000以下がより好ましく、70000以下が特に好ましい。質量平均分子量(Mw)が80000以下であれば、結晶化度や結晶化速度、溶融成形時の流動性に優れる傾向となる。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂(C)の分子量分布は1.2以上が好ましく、1.4以上がより好ましく、1.5以上が特に好ましい。また、分子量分布は6.0以下が好ましく、5.0以下がより好ましく、4.5以下が特に好ましい。分子量分布が前記範囲内であれば、高分子量成分と低分子量成分の割合が多すぎないため、結晶化度と流動性、機械特性のバランスに優れる傾向となる。
前記の質量平均分子量(Mw)及び分子量分布は、用いる樹脂成分が溶解する溶離液を用い、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求めることができる。例えば、溶離液としてクロロフェノールと、クロロベンゼン、クロロトルエン、ブロモベンゼン、ブロモトルエン、ジクロロベンゼン、ジクロロトルエン、ジブロモベンゼン、ジブロモトルエン等のハロゲン化ベンゼン類との混合液や、ペンタフルオロフェノールとクロロホルムの混合液を用いて以下の方法で測定することができる。
(1)ポリエーテルエーテルケトン樹脂のフィルムを得る。
(2)前記フィルム9mgに、ペンタフルオロフェノール3gを加える。
(3)ヒートブロックを用い、100℃で60分間加熱溶解する。
(4)続いてヒートブロックから取り出し、放冷後、常温(約23℃)のクロロホルム6gを少しずつ静かに加え穏やかに振り混ぜる。
(5)その後0.45μmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)カートリッジフィルターでろ過して得られた試料について、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて、前述の測定条件で数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)を測定する。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂(C)の結晶融解温度(Tm)は330℃以上が好ましく、332℃以上がより好ましく、334℃以上が特に好ましい。結晶融解温度(Tm)が330℃以上であれば、得られる樹脂組成物は耐熱性に優れる傾向となる。一方、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(C)の結晶融解温度(Tm)は370℃以下が好ましく、365℃以下がより好ましく、360℃以下が特に好ましい。結晶融解温度(Tm)が370℃以下であれば、複合材料の製造において溶融成形時の流動性に優れる傾向となる。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂(C)の結晶融解温度(Tm)は、JIS K7121:2012に準じて、示差走査熱量計(例えば、パーキンエルマー社製「Pyris1 DSC」)を用いて、温度範囲25~400℃、加熱速度10℃/分で昇温させ、検出されたDSC曲線の融解ピークのピークトップ温度から求めることができる。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂(C)の結晶融解熱量(ΔHm)は30J/g以上が好ましく、32J/g以上がより好ましく、34/g以上が特に好ましい。結晶融解熱量が30J/g以上であれば、得られる樹脂組成物は充分な結晶化度を有し、ひいては耐熱性と剛性に優れる傾向となる。一方、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(C)の結晶融解熱量(ΔHm)は45J/g以下が好ましく、43J/g以下がより好ましく、40J/g以下が特に好ましい。結晶融解熱量(ΔHm)が45J/g以下であれば、結晶化度が高すぎないため、複合材料の製造において溶融成形時の流動性に優れる傾向となる。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂(C)の結晶融解熱量(ΔHm)は、JIS K7122:2012に準じて、示差走査熱量計(例えば、パーキンエルマー社製「Pyris1 DSC」)を用いて、温度範囲25~400℃、加熱速度10℃/分で昇温させ、検出されたDSC曲線の融解ピークの面積から求めることができる。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂(C)の降温過程における結晶化温度(Tc)は288℃以上が好ましく、289℃以上がより好ましく、290℃以上が特に好ましい。結晶化温度(Tc)が288℃以上であれば、結晶化速度が大きく、フィルムや複合材料の生産性に優れる傾向となる。具体的には、例えばフィルムを作製する場合であれば、キャストロールをガラス転移温度(Tm)以上結晶融解温度(Tc)以下の温度に設定することで、キャストロールに樹脂組成物が接触している間に結晶化が促進され結晶化フィルムが得られるが、降温過程の結晶化温度(Tc)が288℃以上であれば、結晶化速度が大きく、キャストロールで結晶化を終えることができるため弾性率が高くなり、結果としてロールへの貼り付きが抑えられ、フィルムの外観が良くなる傾向となる。
一方、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(C)の降温過程における結晶化温度(Tc)は320℃以下が好ましく、315℃以下がより好ましく、310℃以下であることが特に好ましい。結晶化温度が320℃以下であれば、結晶化が速すぎないため、フィルム等の複合材料成形時の冷却ムラが少なくなり、均一に結晶化した高品質な複合材料が得られる傾向となる。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂(C)の降温過程における結晶化温度は、JIS K7121:2012に準じて、示差走査熱量計(例えば、パーキンエルマー社製「Pyris1 DSC」)を用いて、温度範囲400~25℃、速度10℃/分で降温させ、検出されたDSC曲線の結晶化ピークのピークトップ温度から求めることができる。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂(C)の製造方法は特に限定されるものではなく、公知の製法により製造することができる。製造にあたっては、目的の分子量分布、質量平均分子量とするための条件を適宜選択して採用すればよい。具体的には例えば、重合時に仕込むモノマー、重合開始剤、触媒、必要に応じて添加される連鎖移動剤等の種類・量・濃度、それぞれの添加の仕方を調整したり、重合温度、重合時間、重合圧力等の重合条件を調整したりする方法を採用することが挙げられる。また、重合条件を段階的に変えて重合を行う所謂多段重合を採用してもよい。
なお、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(C)は市販品を使用することもできる。市販品としては、例えば、ダイセル・エボニック社製の「VESTAKEEP」シリーズや、ソルベイ社製の「KetaSpireKT」シリーズが挙げられる。
樹脂組成物100質量部に対するポリエーテルエーテルケトン樹脂(C)の含有量は、流動性の観点から、5質量部以上が好ましく、10.0質量部以上がより好ましい。一方、機械特性の観点から、40.0質量部以下が好ましく、30.0質量部以下がより好ましい。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂(C)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
[ポリエーテルイミド樹脂(A)とエーテル基を有する結晶性樹脂(B)の含有割合]
本発明の樹脂組成物は、前記ポリエーテルイミド樹脂(A)と、前記ポリエーテルエーテルケトン樹脂(C)等のエーテル基を有する結晶性樹脂(B)を、ポリエーテルイミド樹脂(A):エーテル基を有する結晶性樹脂(B)(「(A):(B)」と略記する。)(A):(B)=60:40~99:1の含有割合(質量%)で含むことが好ましい。
前記ポリエーテルイミド樹脂(A)とポリエーテルエーテルケトン樹脂(C)等のエーテル基を有する結晶性樹脂(B)の含有割合(質量%)は、機械特性や耐薬品性の観点より、(A):(B)=60:40以上がより好ましく、70:30以上が更に好ましく、80:20以上が特に好ましい。一方、流動性の観点より、(A):(B)=99:1以下であることがより好ましく、97:3以下が更に好ましく、95:5以下が特に好ましい。
[その他の成分]
本発明の樹脂組成物中には、必要に応じて、上記ポリエーテルイミド樹脂(A)、及びポリエーテルエーテルケトン樹脂(C)等のエーテル基を有する結晶性樹脂(B)以外のその他の成分として、各種添加剤を配合することもできる。各種添加剤としては、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、可塑剤、滑剤、展着剤、帯電防止剤、難燃剤、充填剤、艶消し剤、加工助剤、耐衝撃助剤、抗菌剤、防カビ剤、発泡剤、離型剤、着色剤、紫外線吸収剤、熱可塑性重合体等の各種添加剤が挙げられる。
これらは公知のものを使用することができる。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤が挙げられる。
熱安定剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系熱安定剤、硫黄系熱安定剤、ヒドラジン系熱安定剤が挙げられる。
可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル、リン酸エステル、脂肪酸エステル、脂肪族二塩基酸エステル、オキシ安息香酸エステル、エポキシ化合物、ポリエステルが挙げられる。
滑剤としては、例えば、脂肪酸エステル、脂肪酸、金属石鹸、脂肪酸アミド、高級アルコール、パラフィンが挙げられる。
帯電防止剤としては、例えば、カチオン系帯電防止剤、アニオン系帯電防止剤、ノニオン系帯電防止剤、両イオン系帯電防止剤が挙げられる。
これらの添加剤はそれぞれ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の樹脂組成物がこれらのその他の成分を含む場合、熱安定性などの耐久性の観点から、その他の成分の含有割合は、本発明の樹脂組成物100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましい。一方、10質量部以下が好ましく、5.0質量部以下がより好ましい。
[樹脂組成物の物性]
本発明の樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)は、上記式(1)で表される繰り返し単位を有している樹脂単体のTgより低いことが好ましく、222℃以下が好ましく、215℃以下がより好ましく、210℃以下がさらに好ましい。ガラス転移温度が222℃以下であることにより、比較的低温で物性に悪影響を及ぼすことなく成形または二次加工可能となる。一方、本発明の樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)は、160℃以上が好ましく、170℃以上がより好ましく、180℃以上が特に好ましい。ガラス転移温度が160℃以上であることにより、樹脂組成物の耐熱性が十分なものとなる。
本発明において、前記の樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)は、JIS K7244-4:1999に準じて、粘弾性スペクトロメーター「DVA-200(アイティー計測制御株式会社製)」を用いて、歪み0.1%、周波数10Hzで、温度範囲0~400℃を加熱速度3℃/分で昇温させ、検出された貯蔵弾性率(E’)曲線から求めることができる。
なお、上記条件で測定された損失正接(tanδ)曲線のピークが単一であればガラス転移温度が単一であり相分離していない、tanδ曲線のピークが複数あればガラス転移温度も複数あり相分離しているといえる。当該単一のピークはその裾にショルダーを有していてもよく、ポリエーテルイミド樹脂(A)とポリエーテルエーテルケトン樹脂(C)等のエーテル基を有する結晶性樹脂(B)由来のピークが明らかに2つ以上観察される場合を除いて、全て相溶系として取り扱う。
また、ポリエーテルイミド樹脂(A)のガラス転移温度Tg(a)と、本発明の樹脂組成物のガラス転移温度をTg(b)との差である[Tg(a)-Tg(b)]は、流動性の観点より、3.0℃以上が好ましく、5.0℃以上がより好ましく、7.0℃以上が特に好ましい。一方、[Tg(a)-Tg(b)]は耐熱性の観点より、50℃以下が好ましく、40℃以下がより好ましく、35℃以下が特に好ましい。
本発明の樹脂組成物は、380℃、せん断速度10s-1における溶融粘度が100Pa・s以上が好ましく、300Pa・s以上がより好ましく、500Pa・s以上が特に好ましい。一方、380℃、せん断速度10s-1における溶融粘度は3000Pa・s以下が好ましく、2000Pa・s以下がより好ましく、1500Pa・s以下が特に好ましい。380℃、せん断速度10s-1における溶融粘度が前記範囲内であれば、溶融粘度が適切な範囲にあるため、流動性や成形加工性に優れる傾向となる。
本発明の樹脂組成物は、340℃、せん断速度10s-1における溶融粘度が500Pa・s以上が好ましく、1000Pa・s以上がより好ましく、1500Pa・s以上が特に好ましい。一方、340℃、せん断速度10s-1における溶融粘度は8000Pa・s以下が好ましく、7000Pa・s以下がより好ましく、6500Pa・s以下が特に好ましい。340℃、せん断速度10s-1における溶融粘度が前記範囲内であれば、溶融粘度が適切な範囲にあるため、流動性や成形加工性に優れる傾向となる。
なお、本発明の樹脂組成物において、溶融粘度は、JIS K7199:1999に準じて、キャピラリーレオメーター(例えば、東洋精機製作所社製「キャピログラフ1D」)を用いて、340℃または380℃、せん断速度0.1~10000s-1の条件で測定することで算出することができる。
本発明の樹脂組成物の結晶融解温度(Tm)は、耐熱性の観点より、300℃以上が好ましく、310℃以上がより好ましく、320℃以上が特に好ましい。一方、結晶融解温度(Tm)は流動性の観点より、370℃以下が好ましく、360℃以下がより好ましく、350℃以下が特に好ましい。
本発明の樹脂組成物の結晶融解温度(Tm)は、JIS K7121:2012に準じて、示差走査熱量計(例えば、パーキンエルマー社製「Pyris1 DSC」)を用いて、温度範囲25~400℃、加熱速度10℃/分で昇温させ、検出されたDSC曲線の融解ピークのピークトップ温度から求めることができる。
なお、本発明の樹脂組成物の結晶融解温度(Tm)の測定において、ピークが検出されない場合があるが、その場合は、非晶性樹脂と同様に熱的特性はガラス転移温度(Tg)に影響するようになる。
また、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(C)等のエーテル基を有する結晶性樹脂(B)の結晶融解温度をTm(c)(又はTm(b))と、本発明の樹脂組成物の結晶融解温度Tm(d)との差である[Tm(c)(又はTm(b))-Tm(d)]は、流動性の観点より、1.0℃以上が好ましく、2.0℃以上がより好ましく、3.0℃以上が特に好ましい。一方、[Tm(c)(又はTm(b))-Tm(d)]は耐熱性の観点より、50℃以下が好ましく、40℃以下がより好ましく、30℃以下が特に好ましい。
本発明の樹脂組成物の結晶融解熱量(ΔHm)は、流動性の観点より、30J/g以下が好ましく、20J/g以下がより好ましく、15J/g以下が特に好ましい。結晶融解熱量(ΔHm)が30J/g以下であれば、結晶化度が高すぎないため、二次加工性に優れる傾向となる。結晶融解熱量(ΔHm)の下限については特に制限はないが、通常1.0J/g以上である。
本発明の樹脂組成物の結晶融解熱量(ΔHm)は、JIS K7122:2012に準じて、示差走査熱計(例えば、パーキンエルマー社製「Pyris1 DSC」)を用いて、温度範囲25~400℃、加熱速度10℃/分で昇温させ、検出されたDSC曲線の融解時の融解ピークの面積から求めることができる。
本発明の樹脂組成物の引張弾性率は、2700MPa以上が好ましく、2800MPa以上がより好ましく、2900MPa以上であることが特に好ましい。引張弾性率が前記下限値以上であれば剛性に優れ、得られる複合材料も剛性や強度に優れるものとなりやすい。一方、引張弾性率は5000MPa以下が好ましく、4500MPa以下がより好ましく、4000MPa以下が特に好ましい。引張弾性率が前記上限値以下であれば、剛性が高すぎることがなく、また得られる複合材料の賦形等の二次加工性にも優れる傾向となる。
本発明の樹脂組成物の引張弾性率は、JIS K7127に準じて、温度23℃、相対湿度50%、引張速度5mm/分の条件で測定することで算出できる。
本発明の樹脂組成物の引張破断伸度は、70%以上が好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上が特に好ましい。引張破断伸度が70%以上であれば、本発明の樹脂組成物をフィルムとしたとき耐衝撃性に優れる。また、破断等のトラブルを生じることなく、種々の形状に安定して成形または二次加工することができる。引張破断伸度の上限については特に制限はなく、大きい程好ましいが、通常600%以下である。
本発明の樹脂組成物の引張破断伸度は、JIS K7127に準じて、温度23℃、相対湿度50%、引張速度200mm/分の条件で測定することで算出できる。
[樹脂組成物の形状]
樹脂組成物の形状としては、例えば、塊状物、粉体状物及びペレット状物が挙げられる。これらの中で、樹脂組成物の取扱い性の点で、ペレット状物が好ましい。また、その他の形状である場合は、一般の成形法、例えば、押出成形、射出成形、溶融流延法等の流延成形、プレス成形等によって成形して、各種形状、好ましくはフィルム、板等の部材に成形できる。それぞれの成形方法において、装置及び加工条件は特に限定されず、公知の方法を採用することができる。特に、加工性の観点から、押出成形法、特にTダイ法によってフィルムとされることが好ましい。
なお、本発明においてフィルムは、シートを包含するものとする。一般的にフィルムとは、長さ及び幅に比べて厚みが極めて小さく、最大厚みが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいい(日本工業規格JIS K6900:1994)、一般的にシートとは、JISにおける定義上、薄く、一般にその厚みが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいう。しかし、シートとフィルムの境界は定かでないため、本発明においては、フィルムはシートを包含するものとする。よって、「フィルム」は「シート」であってもよい。
[フィルム]
本実施形態に係る樹脂組成物を成形することによりフィルムを製造することができる。すなわち、フィルムは本実施形態に係る樹脂組成物を含有し、該フィルムは、機械特性、耐熱性、および、流動性に優れる。
フィルムの厚みには特に制限はないが、通常3μm以上であり、6μm以上が好ましく、9μm以上がより好ましく、12μm以上がさらに好ましく、35μm以上であることが特に好ましい。一方、フィルムの厚みは500μm以下が好ましく、450μm以下がより好ましく、400μm以下がさらに好ましく、350μm以下が特に好ましい。フィルムの厚みがかかる範囲であれば、厚みが薄過ぎも厚過ぎもしないため、機械特性、製膜性、絶縁性等のバランス、二次加工性に優れる傾向となる。
フィルムの製造法としては、特に限定されないが、、例えば、無延伸又は延伸フィルムとして得ることができる。複合材料を製造する際の二次加工性の観点から、無延伸フィルムとして得ることが好ましい。なお、無延伸フィルムとは、フィルムの配向を制御する目的で積極的に延伸しないフィルムであり、Tダイ法等の押出成形等においてキャストロールにより引き取る際に配向したフィルムや、延伸ロールでの延伸倍率が2倍未満であるフィルムも含むものとする。
無延伸フィルムの場合、フィルムの構成材料を溶融混練した後、押出成形し、冷却することにより製造することができる。溶融混練には、単軸又は二軸押出機等の公知の混練機を用いることができる。溶融温度は、樹脂の種類や混合比率、添加剤の有無や種類に応じて適宜調整されるが、生産性等の観点から、320℃以上が好ましく、330℃以上がより好ましく、340℃以上が特に好ましい。溶融温度を前記下限値以上とすることで、ペレット等の原料が充分に融解しフィルムに残りにくくなるため、機械特性が向上しやすくなる。一方、溶融温度は450℃以下が好ましく、430℃以下がより好ましく、410℃以下が特に好ましい。溶融温度を前記上限値以下とすることで、溶融成形時に樹脂が分解しにくく分子量が維持されやすいため、機械特性を維持する傾向となる。なお、溶融押出しをする場合は、外観不良の原因となる核や異物を取り除くために、200メッシュ以上のスクリーンメッシュで溶融状態にある樹脂組成物を濾過しながら押出しすることが好ましい。
冷却は、例えば、冷却されたキャストロール等の冷却機に溶融樹脂を接触させることにより行うことができる。冷却温度(例えば、キャストロールの温度)は、本発明の樹脂組成物に含まれる結晶性樹脂成分のガラス転移温度から30~150℃高い温度であることが好ましく、35~140℃高い温度であることがより好ましく、40~135℃高い温度であることが特に好ましい。冷却温度を前記範囲とすることで、安定的に製膜できる傾向がある。
本実施形態に係る樹脂組成物により得られるフィルムは、本発明の効果を損なわない範囲で、他のフィルムと組み合わせて積層フィルムとすることができる。積層化の方法は、例えば、共押出、押出ラミネート、熱ラミネート、ドライラミネート等の公知の方法を用いることができる。
[用途]
本発明の樹脂組成物の用途は、特に限定されないが、前述したように、高い剛性(弾性率)等の機械特性と耐熱性を備えていることから、これらの特性が要求される種々の用途で好適に用いることができる。例えば、電気・電子機器や自動車、航空機等において用いられる絶縁フィルムやプリント基板、スペーサー、筐体、表面材等が挙げられる。
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下の記載において、「部」は「質量部」を示す。
[評価方法]
(1)溶融粘度
得られたフィルムについて、JIS K7199:1999に準じて、キャピラリーレオメーター「キャピログラフ1D(東洋精機製作所社製)」を用いて、340℃および380℃、せん断速度0.1~10000s-1における溶融粘度を測定した。
(2)ガラス転移温度(Tg)
得られたフィルムについて、粘弾性スペクトロメーター「DVA-200(アイティー計測制御株式会社製)」を用いて歪み0.1%、周波数10Hz、昇温速度3℃/分にて動的粘弾性の温度分散測定(JIS K7244-4:1999法の動的粘弾性測定)を行い、検出された貯蔵弾性率(E’)曲線からガラス転移温度を求めた。
(3)Tg(a)-Tg(b)
得られたフィルムと用いたポリエーテルイミド樹脂(A)について、それぞれ粘弾性スペクトロメーターDVA-200(アイティー計測制御株式会社製)を用いて歪み0.1%、周波数10Hz、昇温速度3℃/分にて動的粘弾性の温度分散測定(JIS K7244-4法の動的粘弾性測定)を行い、検出された貯蔵弾性率(E’)曲線からガラス転移温度を求め、ポリエーテルイミド樹脂(A)のガラス転移温度をTg(a)、樹脂組成物(フィルム)のガラス転移温度をTg(b)として、それらの差である[Tg(a)-Tg(b)]を算出した。
(4)結晶融解温度(Tm)
得られたフィルムについて、JIS K7121:2012に準じて、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製「Pyris1 DSC」)を用いて、温度範囲25~400℃、加熱速度10℃/分で昇温させ、検出されたDSC曲線の融解ピークのピークトップ温度から求めた。
(5)Tm(c)-Tm(d)
得られたフィルムと用いたポリエーテルエーテルケトン樹脂(C)について、それぞれ、JIS K7121:2012に準じて、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製「Pyris1 DSC」)を用いて、温度範囲25~400℃、加熱速度10℃/分で昇温させ、検出されたDSC曲線の融解ピークのピークトップ温度から結晶融解温度を求め、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(C)の結晶融解温度をTm(c)、樹脂組成物(フィルム)の結晶融解温度をTm(d)として、それらの差である[Tm(c)-Tm(d)]を算出した。
(6)引張弾性率
得られたフィルムについてJIS K7127に準拠して、温度23℃、相対湿度50%、引張速度5mm/分の条件で測定した。測定はフィルムのMD方向(フィルム引取方向)とTD方向(MD方向に垂直方向)のそれぞれについて行った。
(7)引張破断伸度
得られたフィルムについてJIS K7127に準拠して、温度23℃、相対湿度50%、引張速度200mm/分の条件で測定した。測定はフィルムのMD方向(フィルム引取方向)とTD方向(MD方向に垂直方向)のそれぞれについて行った。
[ポリエーテルイミド樹脂(A)]
PEI:ポリエーテルイミド(SABICイノベーティブプラスチックス社製、UltemCRS5001、ガラス転移温度Tg(a):228℃、質量平均分子量(Mw):48000、分子量分布(Mw/Mn):2.91、結晶融解熱量(ΔHm):0.0J/g、式(1)の繰り返し単位を有する。)
[ポリエーテルエーテルケトン樹脂(C)(いずれも式(4)の繰り返し単位を有する)]
PEEK-1:ポリエーテルエーテルケトン(ダイセル・エボニック社製、VESTAKEEP1000G、質量平均分子量:52000、分子量分布(Mw/Mn):3.71、結晶融解熱量(ΔHm):59.2、結晶化温度(Tc):307℃)
PEEK-2:ポリエーテルエーテルケトン(ダイセル・エボニック社製、VESTAKEEP2000G、質量平均分子量:60000、分子量分布(Mw/Mn):4.00、結晶融解熱量(ΔHm):48.0、結晶化温度(Tc):302℃)
PEEK-3:ポリエーテルエーテルケトン(ソルベイ社製、KetaSpireKT-880NT、質量平均分子量:58000、分子量分布(Mw/Mn):3.22、結晶融解熱量(ΔHm):42.1、結晶化温度(Tc):298℃)
PEEK-4:ポリエーテルエーテルケトン(ソルベイ社製、KetaSpireKT-890NT、質量平均分子量:52000、分子量分布(Mw/Mn):3.06、結晶融解熱量(ΔHm):47.8、結晶化温度(Tc):306℃)
[実施例1]
ポリエーテルイミド樹脂(PEI)及びポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK-1)を混合質量比80.0:20.0の割合でドライブレンドした後、φ40mm同方向二軸押出機を用いて360℃で混練した後、Tダイより押出し、次いで約200℃のキャスティングロールにて急冷し、厚み50μmのフィルムを作製した。得られたフィルムについて、溶融粘度、ガラス転移温度、結晶融解温度、引張弾性率、引張破断伸度の評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例2]
PEEK-1の代わりにPEEK-2を使用した以外は実施例1と同様の方法により厚み50μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
[実施例3]
PEEK-1の代わりにPEEK-3を使用し、PEIとPEEK-3の混合質量比を95.0:5.0とした以外は実施例1と同様の方法により厚み50μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
[実施例4]
PEEK-1の代わりにPEEK-3を使用し、PEIとPEEK-3の混合質量比を90.0:10.0とした以外は実施例1と同様の方法により厚み50μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
[実施例5]
PEEK-1の代わりにPEEK-3を使用し、PEIとPEEK-3の混合質量比を80.0:20.0とした以外は実施例1と同様の方法により厚み50μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
[実施例6]
PEEK-1の代わりにPEEK-3を使用し、PEIとPEEK-3の混合質量比を70.0:30.0とした以外は実施例1と同様の方法により厚み50μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
[実施例7]
PEEK-1の代わりにPEEK-4を使用した以外は実施例1と同様の方法により厚み50μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
[実施例8]
PEEK-1の代わりにPEEK-4を使用し、PEIとPEEK-4の混合質量比を70.0:30.0とした以外は実施例1と同様の方法により厚み50μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
[実施例9]
PEEK-1の代わりにPEEK-4を使用し、PEIとPEEK-4の混合質量比を60.0:40.0とした以外は実施例1と同様の方法により厚み50μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
[比較例1]
PEIを単独で用いた以外は実施例1と同様の方法により厚み50μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表2に示した。
[比較例2]
PEEK-1を単独で用いた以外は実施例1と同様の方法により厚み50μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表2に示した。
[比較例3]
PEEK-2を単独で用いた以外は実施例1と同様の方法により厚み50μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表2に示した。
[比較例4]
PEEK-3を単独で用いた以外は実施例1と同様の方法により厚み50μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表2に示した。
[比較例5]
PEEK-4を単独で用いた以外は実施例1と同様の方法により厚み50μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表2に示した。
Figure 2023108921000006
Figure 2023108921000007
上記の実施例および比較例より、次のことが明らかである。
実施例1~9で得られたフィルムは、380℃、せん断速度10s-1における溶融粘度が1500Pa・s以下、340℃、せん断速度10s-1における溶融粘度が6500Pa・s以下であり、優れた流動性を有する。さらに、機械特性にも優れる傾向である。
一方、比較例1で得られたフィルムは、機械特性は良好であるものの、340℃および380℃、せん断速度10s-1における溶融粘度が高く、流動性に劣る。そのため、成形加工性が要求される用途への展開が困難であり、例えば、複合材料のボイドなどの不具合が頻繁に発生する恐れがある。
比較例2~5で得られたフィルムは、溶融粘度が低過ぎ、フィルム製膜時の吐出不良や厚みムラなど、成形加工性が大きく低下する。
以上の通り、本発明の樹脂組成物は、優れた機械特性を保持し、かつ、流動性、即ち、含浸性、成形加工性に優れている。

Claims (8)

  1. 下記式(1)で表されるの繰り返し単位を有するポリエーテルイミド樹脂(A)と、エーテル基を有する結晶性樹脂(B)を含む樹脂組成物であって、該樹脂組成物について、JIS K7244-4に準じて歪み0.1%、周波数10Hz、昇温速度3℃/分にて測定したガラス転移温度(Tg)が222℃以下であり、かつ、前記結晶性樹脂(B)の質量平均分子量が75000以下である樹脂組成物。
    Figure 2023108921000008
  2. 前記結晶性樹脂(B)が、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(C)である、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記ポリエーテルエーテルケトン樹脂(C)の質量平均分子量(Mw)が40000以上75000以下である、請求項2に記載の樹脂組成物。
  4. 前記樹脂組成物のガラス転移温度Tg(b)と、前記ポリエーテルイミド樹脂(A)のガラス転移温度Tg(a)が下記関係式を満たす、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
    Tg(a)-Tg(b)≧5.0℃
    (上記式中の各ガラス転移温度はいずれもJIS K7244-4に準じて歪み0.1%、周波数10Hz、昇温速度3℃/分にて測定した値であり、Tg(a)はポリエーテルイミド樹脂(A)単体のガラス転移温度(℃)、Tg(b)は樹脂組成物のガラス転移温度(℃)を示す。)
  5. 340℃、せん断速度10s-1における溶融粘度が7000Pa・s以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  6. JIS K7127に準拠して測定した引張弾性率が2800MPa以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  7. JIS K7127に準拠して測定した引張破断伸度が70%以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  8. 請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含むフィルム。
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