JP2023108494A - ポリエステルイミド及びポリエステルアミド酸 - Google Patents

ポリエステルイミド及びポリエステルアミド酸 Download PDF

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Abstract

【課題】熱安定性に優れ、更に伸び率が高いポリエステルイミド、その製造方法、及び該ポリエステルイミドの前駆体であるポリエステルアミド酸を提供する。【解決手段】下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリエステルイミド。JPEG2023108494000028.jpg44152(式(1)中、Xは上記式(X1)で表される2価の基及び上記式(X2)で表される2価の基を含み、式(X1)で表される2価の基と式(X2)で表される2価の基のモル比[(X1)/(X2)]は、30/70~95/5である。)【選択図】なし

Description

本発明はポリエステルイミド及び該ポリエステルイミドの前駆体であるポリエステルアミド酸に関する。
ポリイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂は、優れた絶縁性と耐久性を有するため、電気・電子製品の分野において様々な利用が検討されている。
特にモーター用コイルを構成する絶縁電線に用いられる樹脂には、高い性能が要求されている。なぜなら、モーターは、産業用途、家電民生用途など、様々な用途に用いられ、その用途に応じて、高出力、小型・軽量など、多様なモーターが必要とされているためである。最近では電気自動車等の普及に伴い、輸送用途の高性能モーターも開発されている。
前記樹脂のなかでも、ポリエステルイミド樹脂は、エステル結合とイミド結合の両方を有するという利点を生かし、絶縁性と耐久性に加え、その他の性能を付与するなど、更なる改良が行われている。
たとえば、特許文献1には、適度な接着性と剥離性を有する剥離層を形成することを目的として、エステル結合またはエーテル結合を含む芳香族ジアミンと、エステル結合またはエーテル結合を含む芳香族テトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られるポリアミック酸及び有機溶媒を含む剥離層形成用組成物が開示されており、当該組成物を用いて形成される剥離層としてポリエステルイミド樹脂が開示されている。
国際公開第2016/129546号
ポリエステルイミドは、絶縁性と耐久性を有することから、電気・電子製品の分野に使用されているが、特許文献1に示すような電子基板や、絶縁電線に用いる場合、特に柔軟性などの優れた機械的特性が要求される。
なかでも前記のように、近年のモーターの小型化、高出力化に対応するため、より熱に対する安定性も要求されている。
そのため、特に熱に対する安定性に優れ、伸びに優れるポリエステルイミド樹脂が求められていた。
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、熱安定性に優れ、更に伸び率が高いポリエステルイミド、その製造方法、及び該ポリエステルイミドの前駆体であるポリエステルアミド酸を提供することにある。
本発明者らは、特定のカルボン酸成分と2種のジアミン成分からなる構成単位を特定の比率で含むポリエステルイミドが上記課題を解決できることを見出し、更にその前駆体として特定構造のポリエステルアミド酸が有用であることを見出し、発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、下記の[1]~[15]に関する。
[1]下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリエステルイミド。

(式(1)中、Xは上記式(X1)で表される2価の基及び上記式(X2)で表される2価の基を含み、式(X1)で表される2価の基と式(X2)で表される2価の基のモル比[(X1)/(X2)]は、30/70~95/5である。)
[2]前記式(1)で表される繰り返し単位が下記式(1-1)で表される繰り返し単位である、上記[1]に記載のポリエステルイミド。

[3]前記式(X1)で表される2価の基が下記式(X1-1)で表される2価の基である、上記[1]又は[2]に記載のポリエステルイミド。

[4]前記式(X2)で表される2価の基が下記式(X2-1)で表される2価の基である、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載のポリエステルイミド。

[5]前記ポリエステルイミドが、実質的に脂肪族炭化水素基を含まない、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載のポリエステルイミド。
[6]前記ポリエステルイミドのガラス転移温度が、220~280℃である、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載のポリエステルイミド。
[7]前記ポリエステルイミドの空気中での10%熱重量減少温度が、470℃以上である、上記[1]~[6]のいずれか1つに記載のポリエステルイミド。
[8]前記ポリエステルイミドの30mm×10mm×0.05mmの試験片を用いて長手方向の引張試験で測定された破断伸び率が、15%以上である、上記[1]~[7]のいずれか1つに記載のポリエステルイミド。
[9]下記一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリエステルアミド酸。

(式(2)中、Xは上記式(X1)で表される2価の基及び上記式(X2)で表される2価の基を含み、式(X1)で表される2価の基と式(X2)で表される2価の基のモル比[(X1)/(X2)]は、30/70~95/5である。)
[10]前記ポリエステルアミド酸の重量平均分子量が5,000~1,000,000である、上記[9]に記載のポリエステルアミド酸。
[11]上記[9]又は[10]に記載のポリエステルアミド酸と有機溶媒を含む、ワニス。
[12]前記ワニス中の前記ポリエステルアミド酸の濃度が、8~50質量%である、上記[11]に記載のワニス。
[13]前記ワニス中の前記有機溶媒がN,N-ジメチルアセトアミドを含む、上記[11]又は[12]に記載のワニス。
[14]前記ワニス中の前記ポリエステルアミド酸の25℃における粘度が、1~50Pa・sである、上記[11]~[13]のいずれか1つに記載のワニス。
[15]上記[11]~[14]のいずれか1つに記載のワニスを加熱し、ポリエステルアミド酸をイミド化する工程を有する、ポリエステルイミドの製造方法。
本発明によれば、熱安定性に優れ、更に伸び率が高いポリエステルイミド、その製造方法、及び該ポリエステルイミドの前駆体であるポリエステルアミド酸を提供することができる。
[ポリエステルイミド]
本発明のポリエステルイミドは、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する。

(式(1)中、Xは上記式(X1)で表される2価の基及び上記式(X2)で表される2価の基を含み、式(X1)で表される2価の基と式(X2)で表される2価の基のモル比[(X1)/(X2)]は、30/70~95/5である。)
本発明のポリエステルイミドが、熱安定性に優れ、更に伸び率が高い理由は定かではないが、次のように考えられる。
本発明のポリエステルイミドは、エステル結合を有するテトラカルボン酸成分と2種類のジアミン成分との共重合により分子間の秩序構造に乱れが生じ、分子鎖が変位に対して追随しやすくなることから、伸び率が高いものと考えられる。また、剛直なビフェニレン基を含むことから、熱安定性に優れるものと考えられる。
式(X1)で表される基と式(X2)で表される基のモル比[(X1)/(X2)]は、30/70~95/5であり、好ましくは30/70~85/15であり、より好ましくは40/60~85/15である。
前記式(1)で表される繰り返し単位は、原料の入手性や熱安定性の観点から、好ましくは下記式(1-1)で表される繰り返し単位である。

(式(1-1)中、Xは上記式(X1)で表される2価の基及び上記式(X2)で表される2価の基を含み、式(X1)で表される2価の基と式(X2)で表される2価の基のモル比[(X1)/(X2)]は、30/70~95/5である。)
前記式(X1)で表される2価の基は、原料の入手性や熱安定性の観点から、好ましくは下記式(X1-1)で表される2価の基である。
前記式(X2)で表される2価の基は、原料の入手性や熱安定性の観点から、下記式(X2-1)で表される2価の基である。
前記ポリエステルイミドは、前記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するが、式(1)で表される繰り返し単位の含有量は、ポリエステルイミドを構成する全繰り返し単位に対して、好ましくは50モル%以上であり、より好ましくは70モル%以上であり、更に好ましくは90モル%以上であり、より更に好ましくは95モル%以上であり、100モル%以下である。前記ポリエステルイミドは、前記一般式(1)で表される繰り返し単位のみからなることがより更に好ましい。
ここで、ポリエステルイミドを構成する繰り返し単位とは、1つのテトラカルボン酸二無水物と1つのジアミンがイミド構造を介して結合した単位をいう。
前記ポリエステルイミドは、好ましくは実質的に脂肪族炭化水素基を含まない。
ここで、「実質的に脂肪族炭化水素基を含まない」とは、ポリエステルイミド中の脂肪族炭化水素基の含有量が、本発明の効果に影響を与えない含有量であるか、又はポリエステルイミド中に脂肪族炭化水素基を含まないことを意味し、具体的には、ポリエステルイミド中の脂肪族炭化水素基の含有量は、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下であり、更に好ましくは0.5質量%以下であり、より更に好ましくは0質量%である。ポリエステルイミドが脂肪族炭化水素基を含まないことがより更に好ましい。
前記脂肪族炭化水素基は、ポリエステルイミドの主鎖又は側鎖に存在する飽和脂肪族炭化水素基、不飽和脂肪族炭化水素基及び脂環式炭化水素基である。具体的にはアルキル基、アルキレン基、アルキリデン基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基等である。
前記ポリエステルイミドのガラス転移温度は、好ましくは200~300℃であり、より好ましくは220~285℃であり、更に好ましくは220更に好ましくは250~270℃である。前記ポリエステルイミドのガラス転移温度が前記範囲であると、耐熱性に優れ、ポリエステルイミドの熱安定性が良好となる。ポリエステルイミドのガラス転移温度は、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて、ポリエステルイミドをフィルム状とした試料に対して引張モードにおける損失正接(tanδ)の温度依存性測定を行い、tanδがピークトップとなる温度をガラス転移温度として求めることができる。具体的には、実施例に記載した方法によって測定することができる。
前記ポリエステルイミドの空気中での10%熱重量減少温度は、好ましくは470℃以上であり、より好ましくは490℃以上である。上限には制限はないが、一般的に800℃以下である。前記ポリエステルイミドの空気中での10%熱重量減少温度が前記範囲であると、耐熱性に優れ、絶縁被覆層の熱安定性が良好となる。ポリエステルイミドの空気中での10%熱重量減少温度は、TGA(熱重量分析)法によって測定することができ、具体的には、実施例に記載した方法によって測定することができる。
前記ポリエステルイミドの30mm×10mm×0.05mmの試験片を用いて長手方向の引張試験で測定された破断伸び率は、好ましくは15%以上であり、より好ましくは17%以上であり、更に好ましくは20%以上であり、より更に好ましくは30%以上であり、より更に好ましくは33%以上である。また、通常100%以下である。前記破断伸び率が前記範囲であると、伸びに優れ、ポリエステルイミドの柔軟性が良好となる。前記破断伸び率は、長辺30mm×短辺10mm×厚さ0.05mmのフィルム状の試験片(ただし、前記長辺の30mmには治具に固定する部分の長さを含まず、試験片の長辺の両端に幅10mm×厚さ0.05mmの治具に固定する被把持部を有する。)を用いて長手方向(30mmの辺に並行の方向)に、1mm/分の速度で引張試験を行ったときの破断時の試験片の長さの伸長率で表す。具体的には、実施例に記載した方法によって求めることができる。
前記ポリエステルイミドの1kHzでの比誘電率は、好ましくは3.1以下であり、より好ましくは3.0以下であり、更に好ましくは2.9以下である。下限には制限はないが、一般的に2.0以上である。前記ポリエステルイミドの1kHzでの比誘電率が前記範囲であると、絶縁被覆層の誘電率が低く、絶縁性に優れるものとなる。ポリエステルイミドの比誘電率は、JIS C 2138に準拠する自動平衡ブリッジ法によって測定することができ、具体的には、実施例に記載した方法によって測定することができる。
以上のように本発明のポリエステルイミドは、熱安定性に優れ、更に伸び率が高いことから、本発明のポリエステルイミドは、電気・電子製品の材料として有用であり、なかでも絶縁電線の被覆材として好適である。
[ポリエステルアミド酸]
前記ポリエステルイミドは、式(1)で表される繰り返し単位を有するポリエステルイミドが得られる方法であれば、特に限定されないが、ポリエステルアミド酸を前駆体として、イミド化することによって製造することが好ましい。
以下に前記ポリエステルイミドの前駆体であるポリエステルアミド酸について説明する。
前記ポリエステルイミドの前駆体である本発明のポリエステルアミド酸は、下記一般式(2)で表される繰り返し単位を有する。

(式(2)中、Xは上記式(X1)で表される2価の基及び上記式(X2)で表される2価の基を含み、式(X1)で表される2価の基と式(X2)で表される2価の基のモル比[(X1)/(X2)]は、30/70~95/5である。)
式(X1)で表される基と式(X2)で表される基のモル比[(X1)/(X2)]は、30/70~95/5であり、好ましくは30/70~85/15であり、より好ましくは40/60~85/15である。
前記式(2)で表される繰り返し単位は、原料の入手性やイミド化することにより得られるポリエステルイミドの熱安定性の観点から、好ましくは下記式(2-1)で表される繰り返し単位である。

(式(2-1)中、Xは上記式(X1)で表される2価の基及び上記式(X2)で表される2価の基を含み、式(X1)で表される2価の基と式(X2)で表される2価の基のモル比[(X1)/(X2)]は、30/70~95/5である。)
前記式(X1)で表される2価の基は、原料の入手性やイミド化することにより得られるポリエステルイミドの熱安定性の観点から、好ましくは下記式(X1-1)で表される2価の基である。
前記式(X2)で表される2価の基は、原料の入手性やイミド化することにより得られるポリエステルイミドの熱安定性の観点から、下記式(X2-1)で表される2価の基である。
前記ポリエステルアミド酸は、前記一般式(2)で表される繰り返し単位を有するが、式(2)で表される繰り返し単位の含有量は、ポリエステルアミド酸を構成する全繰り返し単位に対して、好ましくは50モル%以上であり、より好ましくは70モル%以上であり、更に好ましくは90モル%以上であり、より更に好ましくは95モル%以上であり、100モル%以下である。前記ポリエステルアミド酸は、前記一般式(2)で表される繰り返し単位のみからなることがより更に好ましい。
ここで、ポリエステルアミド酸を構成する繰り返し単位とは、1つのテトラカルボン酸二無水物と1つのジアミンがアミド構造を介して結合した単位をいう。
また、前記ポリエステルアミド酸は、好ましくは実質的に脂肪族炭化水素基を含まない。
ここで、「実質的に脂肪族炭化水素基を含まない」とは、ポリエステルアミド酸中の脂肪族炭化水素基の含有量が、本発明の効果に影響を与えない含有量であるか、又はポリエステルアミド酸中に脂肪族炭化水素基を含まないことを意味し、具体的には、ポリエステルアミド酸中の脂肪族炭化水素基の含有量は、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下であり、更に好ましくは0.5質量%以下であり、より更に好ましくは0質量%である。ポリエステルアミド酸が脂肪族炭化水素基を含まないことがより更に好ましい。
前記脂肪族炭化水素基は、ポリエステルアミド酸の主鎖又は側鎖に存在する飽和脂肪族炭化水素基、不飽和脂肪族炭化水素基及び脂環式炭化水素基である。具体的にはアルキル基、アルキレン基、アルキリデン基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基等である。
前記ポリエステルアミド酸の重量平均分子量は、好ましくは5,000~1,000,000であり、より好ましくは50,000~300,000である。重量平均分子量が上記の範囲であるとポリエステルアミド酸溶液を、様々な塗布プロセスに適した濃度、粘度に調整することができ、更にイミド化によって生成するポリエステルイミドが伸び率などの機械物性に優れるため好ましい。なお、ポリエステルアミド酸の重量平均分子量は、例えば、ゲルろ過クロマトグラフィー測定による標準ポリスチレン(PS)換算値によって求めることができる。具体的には、実施例に記載した方法によって測定することができる。
<ポリエステルアミド酸の製造>
前記ポリエステルアミド酸は、以下に説明するエステル結合を有するテトラカルボン酸成分及びジアミン成分を反応させることにより製造することができる。
ポリエステルアミド酸の製造に用いられるテトラカルボン酸成分としては、下記一般式(a1)で表される化合物が挙げられる。
下記一般式(a1)で表される化合物のなかでも、下記式(a11)で表される化合物が好ましい。

式(a11)で表される化合物は、p-ビフェニレンビス(トリメリテート)二無水物である。テトラカルボン酸成分としてp-ビフェニレンビス(トリメリテート)二無水物を用いることで、熱安定性に優れ、更には伸びにも優れる絶縁被覆層を形成することができる。
テトラカルボン酸成分中における式(a1)で表される化合物の比率は、好ましくは50モル%以上であり、より好ましくは70モル%以上であり、更に好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。テトラカルボン酸成分は式(a1)で表される化合物のみからなっていてもよい。
テトラカルボン酸成分は、式(a1)で表される化合物以外のテトラカルボン酸二無水物を含んでもよい。そのようなテトラカルボン酸二無水物としては、特に限定されないが、式(a1)で表される化合物を除く芳香族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、及び脂肪族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。ただし、本発明においては、脂環式テトラカルボン酸二無水物及び脂肪族テトラカルボン酸二無水物のいずれも実質的に用いないことが好ましく、芳香族テトラカルボン酸二無水物のみを用いることがより好ましい。
テトラカルボン酸成分に任意に含まれるテトラカルボン酸二無水物は、1種でもよいし、2種以上であってもよい。
テトラカルボン酸成分は、テトラカルボン酸二無水物に限られず、その誘導体であってもよい。当該誘導体としては、テトラカルボン酸二無水物に対応するテトラカルボン酸及び当該テトラカルボン酸のアルキルエステルが挙げられる。これらのなかでも、テトラカルボン酸二無水物が好ましい。
ポリエステルアミド酸の製造に用いられるジアミン成分は、式(b1)で表される化合物及び式(b2)で表される化合物を含む。
式(b1)で表される化合物及び式(b2)で表される化合物のモル比[(b1)/(b2)]は、30/70~95/5であり、好ましくは30/70~85/15であり、より好ましくは40/60~85/15である。
下記一般式(b1)で表される化合物のなかでも、下記式(b11)で表される化合物が好ましい。また、下記一般式(b2)で表される化合物のなかでも、下記式(b21)で表される化合物が好ましい。

式(b11)で表される化合物は、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)であり、式(b21)で表される化合物は、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル(BAPB)である。ジアミン成分としてODA又はBAPBを用いることで、熱安定性に優れ、更には伸びにも優れるポリエステルイミドを得ることができる。
ジアミン成分中における式(b1)で表される化合物及び式(b2)で表される化合物の合計の比率は、好ましくは50モル%以上であり、より好ましくは70モル%以上であり、更に好ましくは90モル%以上であり、また、好ましくは100モル%以下である。
ジアミン成分は、式(b1)で表される化合物又は式(b2)で表される化合物以外のジアミンを含んでもよい。そのようなジアミンとしては、特に限定されないが、式(b1)で表される化合物又は式(b2)で表される化合物以外の芳香族ジアミン、脂環式ジアミン、及び脂肪族ジアミンが挙げられる。ただし、本発明においては、脂環式ジアミン及び脂肪族ジアミンのいずれも実質的に用いないことが好ましく、芳香族ジアミンのみを用いることがより好ましい。
ジアミン成分に任意に含まれるジアミンは、1種でもよいし、2種以上であってもよい。
ジアミン成分は、ジアミンに限られず、その誘導体であってもよい。当該誘導体としては、ジアミンに対応するジイソシアネートが挙げられる。これらのなかでもジアミンが好ましい。
以上の原料を用いて製造されたポリエステルアミド酸は、前記テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位及び前記ジアミンに由来する構成単位を有する。また、以上の原料を用いて製造されたポリエステルアミド酸を前駆体として製造されたポリエステルイミドは、前記テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位及び前記ジアミンに由来する構成単位を有する。すなわち、本発明のポリエステルアミド酸は、好ましくは前記テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位及び前記ジアミンに由来する構成単位を有する。また、本発明のポリエステルイミドは、好ましくは前記テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位及び前記ジアミンに由来する構成単位を有する。
前記ポリエステルアミド酸は、上述の式(a1)で表される化合物を含むテトラカルボン酸成分と、式(b1)で表される化合物又は式(b2)で表される化合物を含むジアミン成分を反応させることにより製造することができる。なお、テトラカルボン酸成分に対するジアミン成分の量は0.9~1.1モルとすることが好ましい。
本製造方法でテトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させる方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
具体的な反応方法としては、テトラカルボン酸成分、ジアミン成分、溶剤、及び必要に応じて末端封止剤を反応器に仕込み、0~120℃、好ましくは5~80℃の範囲で1~72時間撹拌する方法等が挙げられる。
80℃以下で反応させる場合には、ポリエステルアミド酸の分子量が重合時の温度履歴に依存して変動することなく、また熱イミド化の進行も抑制できるため、ポリエステルアミド酸を安定して製造できる。
末端封止剤としてはモノアミン類又はジカルボン酸類が好ましい。導入される末端封止剤の仕込み量としては、テトラカルボン酸成分1モルに対して0.0001~0.1モルが好ましく、0.001~0.06モルがより好ましい。モノアミン類末端封止剤としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、4-メチルベンジルアミン、4-エチルベンジルアミン、4-ドデシルベンジルアミン、3-メチルベンジルアミン、3-エチルベンジルアミン、アニリン、3-メチルアニリン、4-メチルアニリン、3-フェノキシアニリン、4-フェノキシアニリン、m-アニシジン、p-アニシジン等が挙げられる。これらのうち、アニリン、4-フェノキシアニリン、p-アニシジンが好ましい。ジカルボン酸類末端封止剤としては、ジカルボン酸類が好ましく、その一部を閉環していてもよい。例えば、フタル酸、無水フタル酸、4-クロロフタル酸、テトラフルオロフタル酸、2,3-ベンゾフェノンジカルボン酸、3,4-ベンゾフェノンジカルボン酸、シクロペンタン-1,2-ジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸等が挙げられる。これらのうち、フタル酸、無水フタル酸がより好ましい。
ポリエステルアミド酸の製造に用いられる溶剤は、生成するポリエステルアミド酸を溶解できるものであればよい。例えば、非プロトン性溶剤、フェノール系溶剤、エーテル系溶剤、カーボネート系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤等が挙げられ、好ましくは非プロトン性溶剤である。
非プロトン性溶剤の具体例としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチルカプロラクタム、1,3-ジメチルイミダゾリジノン、テトラメチル尿素等のアミド系溶剤、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等のラクトン系溶剤、ヘキサメチルホスホリックアミド、ヘキサメチルホスフィントリアミド等の含リン系アミド系溶剤、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸(2-メトキシ-1-メチルエチル)等のエステル系溶剤等が挙げられ、好ましくはアミド系又はラクトン系溶剤であり、より好ましくはアミド系溶剤であり、更に好ましくはN,N-ジメチルアセトアミドである。
フェノール系溶剤の具体例としては、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール等が挙げられる。
エーテル系溶剤の具体例としては、1,2-ジメトキシエタン、ビス(2-メトキシエチル)エーテル、1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタン、ビス〔2-(2-メトキシエトキシ)エチル〕エーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等が挙げられる。
カーボネート系溶剤の具体的な例としては、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等が挙げられる。
上記溶剤の中でも、アミド系溶剤又はラクトン系溶剤が好ましく、アミド系溶剤がより好ましく、N,N-ジメチルアセトアミドが更に好ましい。
芳香族炭化水素系溶剤の具体的な例としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等が挙げられる。
上記の溶剤は単独で又は2種以上混合して用いてもよい。
上記方法により、溶剤に溶解したポリエステルアミド酸溶液が得られる。
得られる溶液中のポリエステルアミド酸の濃度は、好ましくは1~80質量%であり、より好ましくは5~50質量%であり、更に好ましくは10~30質量%である。
[ワニス]
前記ポリエステルアミド酸を前駆体として、ポリエステルアミド酸をイミド化することによってポリエステルイミドを製造する場合、ポリエステルアミド酸は、ワニスとしてポリエステルイミドの製造に用いることが好ましい。ワニスを用いることで、あらゆる形状のポリエステルイミドを容易に製造することができる。
本発明のワニスは、前記ポリエステルアミド酸と有機溶媒を含み、該ポリエステルアミド酸は、有機溶媒に溶解している。
すなわち、本発明のワニスは、下記一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリエステルアミド酸と有機溶媒を含み、該ポリエステルアミド酸は、有機溶媒に溶解している。

(式(2)中、Xは上記式(X1)で表される2価の基及び上記式(X2)で表される2価の基を含み、式(X1)で表される2価の基と式(X2)で表される2価の基のモル比[(X1)/(X2)]は、30/70~95/5である。)
ワニスに含まれる有機溶媒は、ポリエステルアミド酸が溶解するものであればよく、特に限定されないが、ポリエステルアミド酸の製造に用いられる溶剤として上述した化合物が好ましい。
具体的には、ワニスに含まれる有機溶媒は、前記アミド系溶剤又は前記ラクトン系溶剤を含むことが好ましく、アミド系溶剤を含むことがより好ましく、N,N-ジメチルアセトアミドを含むことが更に好ましい。また、ワニスに含まれる有機溶媒は、前記アミド系溶剤又は前記ラクトン系溶剤であることが好ましく、アミド系溶剤であることがより好ましく、N,N-ジメチルアセトアミドであることが更に好ましい。上記の溶剤は単独で又は2種以上混合して用いてもよい。
前記ワニスには、更に脱水触媒を含有してもよい。
脱水触媒としては、無水酢酸、プロピオン酸無水物、n-酪酸無水物、安息香酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物等の酸無水物;ジシクロヘキシルカルボジイミド等のカルボジイミド化合物等を挙げることができる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記ワニスに含まれるポリエステルアミド酸は、溶媒溶解性を有しているため、室温で安定な高濃度のワニスとすることができる。
ワニス中の前記ポリエステルアミド酸の濃度は、好ましくは5~70質量%であり、より好ましくは8~50質量%であり、更に好ましくは10~30質量%である。
ワニス中のポリエステルアミド酸の濃度は、前述のポリエステルアミド酸の製造直後のポリエステルアミド酸溶液を有機溶媒で希釈して調整してもよいし、前記ポリエステルアミド酸溶液中のポリエステルアミド酸の濃度が、上記範囲であり、ポリエステルイミドの製造に適する濃度であれば、ポリエステルアミド酸溶液をそのままワニスとして用いてもよい。
ワニスの25℃における粘度は、好ましくは1~50Pa・sであり、より好ましくは5~30Pa・sである。ワニスの粘度は、例えば、E型(コーンプレート型)粘度計を用いて測定することができる。具体的には、実施例に記載した方法によって測定することができる。
また、前記ワニスは、得られるポリエステルイミドの要求特性を損なわない範囲で、無機フィラー、接着促進剤、剥離剤、難燃剤、紫外線安定剤、界面活性剤、レベリング剤、消泡剤、蛍光増白剤、架橋剤、重合開始剤、感光剤等各種添加剤を含んでもよい。
前記ワニスの製造方法は特に限定されず、公知の方法を適用することができる。たとえば、上述の製造方法で得られたポリエステルアミド酸溶液に、必要に応じて更なる溶剤を混合して濃度を調整することによって得ることができる。
[ポリエステルイミドの製造方法]
本発明のポリエステルイミドの製造方法は、特に限定されないが、前述のポリエステルアミド酸を用いて製造することが好ましく、前述のワニスを用いて製造することがより好ましい。
具体的には、本発明のポリエステルイミドの製造方法は、前記ワニスを加熱し、ポリエステルアミド酸をイミド化する工程を有する。すなわち、本発明のポリエステルイミドの製造方法は、下記一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリエステルアミド酸と有機溶媒を含むワニスを加熱し、ポリエステルアミド酸をイミド化する工程を有する。

(式(2)中、Xは上記式(X1)で表される2価の基及び上記式(X2)で表される2価の基を含み、式(X1)で表される2価の基と式(X2)で表される2価の基のモル比[(X1)/(X2)]は、30/70~95/5である。)
前記ワニスを用いてポリエステルイミドを製造する方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
たとえば、フィルム形状のポリエステルイミド、つまりポリエステルイミドフィルムを製造する場合、ガラス板、金属板、プラスチックなどの平滑な支持体上に前記ワニスを塗布、又はフィルム状に成形した後、該ワニス中に含まれる反応溶剤や希釈溶剤等の有機溶媒を加熱により除去し、ポリエステルアミド酸フィルムを得て、該ポリエステルアミド酸フィルム中のポリエステルアミド酸を加熱によりイミド化(脱水閉環)し、ポリエステルイミドフィルムを製造することができる。
このように、フィルム形状のポリエステルイミド、つまりポリエステルイミドフィルムの製造方法は、前述のワニスを支持体上に塗布し、加熱する方法であることが好ましい。
まず、前記ワニスを乾燥させ、溶媒を除去することで、ポリエステルアミド酸のフィルムを得ることが好ましい。乾燥温度としては、好ましくは50~150℃である。
フィルム状態にしたポリエステルアミド酸を加熱によりイミド化する際の加熱温度としては、好ましくは200~400℃であり、より好ましくは220~350℃である。また、加熱時間は、通常1分間~6時間であり、好ましくは5分間~2時間であり、より好ましくは15分間~1時間である。このような温度・時間とすることで、得られるポリエステルイミドフィルムの物性が良好となる。
加熱雰囲気は、空気ガス、窒素ガス、酸素ガス、水素ガス、窒素/水素混合ガス等が挙げられる。
なお、イミド化の方法は熱イミド化に限定されず、化学イミド化を適用することもできる。
このようにして得られたポリエステルイミドは、前記のように式(1)で表される繰り返し単位を有し、熱安定性に優れ、更に伸び率が高い。
したがって、電気・電子製品の材料として有用であり、なかでも絶縁電線の被覆材として好適である。
[絶縁電線]
本発明のポリエステルイミドは、前記のように優れた特性を有するため、絶縁電線の絶縁被覆層として有用である。以下に、本発明のポリエステルイミドを用いた好適な絶縁電線について説明する。
すなわち、本発明のポリエステルイミドを用いた絶縁電線は、導体と、前記導体を被覆する絶縁被覆層を有する絶縁電線であって、
前記絶縁被覆層が下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリエステルイミドを含む絶縁電線であることが好ましい。

(式(1)中、Xは上記式(X1)で表される2価の基及び上記式(X2)で表される2価の基を含み、式(X1)で表される2価の基と式(X2)で表される2価の基のモル比[(X1)/(X2)]は、30/70~95/5である。)
前記絶縁電線の絶縁被覆層は、導体を被覆するものであり、前記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリエステルイミドを含む。
当該絶縁被覆層に用いられるポリエステルイミドは、前述の[ポリエステルイミド]の項で説明したポリエステルイミドであることが好ましい。具体的には、以下に示すポリエステルイミドであることが好ましい。
式(X1)で表される基と式(X2)で表される基のモル比[(X1)/(X2)]は、30/70~95/5であり、好ましくは30/70~85/15であり、より好ましくは40/60~85/15である。
前記式(1)で表される繰り返し単位は、原料の入手性や熱安定性の観点から、好ましくは前記式(1-1)で表される繰り返し単位である。
前記式(X1)で表される2価の基は、原料の入手性や熱安定性の観点から、好ましくは前記式(X1-1)で表される2価の基である。
前記式(X2)で表される2価の基は、原料の入手性や熱安定性の観点から、前記式(X2-1)で表される2価の基である。
前記ポリエステルイミドは、前記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するが、式(1)で表される繰り返し単位の含有量は、ポリエステルイミドを構成する全繰り返し単位に対して、好ましくは50モル%以上であり、より好ましくは70モル%以上であり、更に好ましくは90モル%以上であり、より更に好ましくは95モル%以上であり、100モル%以下である。前記ポリエステルイミドは、前記一般式(1)で表される繰り返し単位のみからなることがより更に好ましい。
ここで、ポリエステルイミドを構成する繰り返し単位とは、1つのテトラカルボン酸二無水物と1つのジアミンがイミド構造を介して結合した単位をいう。
前記ポリエステルイミドは、好ましくは実質的に脂肪族炭化水素基を含まない。
ここで、「実質的に脂肪族炭化水素基を含まない」とは、ポリエステルイミド中の脂肪族炭化水素基の含有量が、本発明の効果に影響を与えない含有量であるか、又はポリエステルイミド中に脂肪族炭化水素基を含まないことを意味し、具体的には、ポリエステルイミド中の脂肪族炭化水素基の含有量は、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下であり、更に好ましくは0.5質量%以下であり、より更に好ましくは0質量%である。ポリエステルイミドが脂肪族炭化水素基を含まないことがより更に好ましい。
前記脂肪族炭化水素基は、ポリエステルイミドの主鎖又は側鎖に存在する飽和脂肪族炭化水素基、不飽和脂肪族炭化水素基及び脂環式炭化水素基である。具体的にはアルキル基、アルキレン基、アルキリデン基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基等である。
前記ポリエステルイミドのガラス転移温度は、好ましくは200~300℃であり、より好ましくは220~285℃であり、更に好ましくは220~280℃であり、より更に好ましくは250~270℃である。前記ポリエステルイミドのガラス転移温度が前記範囲であると、耐熱性に優れ、ポリエステルイミドの熱安定性が良好となる。ポリエステルイミドのガラス転移温度は、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて、ポリエステルイミドをフィルム状とした試料に対して引張モードにおける損失正接(tanδ)の温度依存性測定を行い、tanδがピークトップとなる温度をガラス転移温度として求めることができる。具体的には、実施例に記載した方法によって測定することができる。
前記ポリエステルイミドの空気中での10%熱重量減少温度は、好ましくは470℃以上であり、より好ましくは490℃以上である。上限には制限はないが、一般的に800℃以下である。前記ポリエステルイミドの空気中での10%熱重量減少温度が前記範囲であると、耐熱性に優れ、絶縁被覆層の熱安定性が良好となる。ポリエステルイミドの空気中での10%熱重量減少温度は、TGA(熱重量分析)法によって測定することができ、具体的には、実施例に記載した方法によって測定することができる。
前記ポリエステルイミドの30mm×10mm×0.05mmの試験片を用いて長手方向の引張試験で測定された破断伸び率は、好ましくは15%以上であり、より好ましくは17%以上であり、更に好ましくは20%以上であり、より更に好ましくは30%以上であり、より更に好ましくは33%以上である。また、通常100%以下である。前記破断伸び率が前記範囲であると、伸びに優れ、ポリエステルイミドの柔軟性が良好となる。前記破断伸び率は、長辺30mm×短辺10mm×厚さ0.05mmのフィルム状の試験片(ただし、前記長辺の30mmには治具に固定する部分の長さを含まず、試験片の長辺の両端に幅10mm×厚さ0.05mmの治具に固定する被把持部を有する。)を用いて長手方向(30mmの辺に並行の方向)に、1mm/分の速度で引張試験を行ったときの破断時の試験片の長さの伸長率で表す。具体的には、実施例に記載した方法によって求めることができる。
前記ポリエステルイミドの1kHzでの比誘電率は、好ましくは3.1以下であり、より好ましくは3.0以下であり、更に好ましくは2.9以下である。下限には制限はないが、一般的に2.0以上である。前記ポリエステルイミドの1kHzでの比誘電率が前記範囲であると、絶縁被覆層の誘電率が低く、絶縁性に優れるものとなる。ポリエステルイミドの比誘電率は、JIS C 2138に準拠する自動平衡ブリッジ法によって測定することができ、具体的には、実施例に記載した方法によって測定することができる。
前記絶縁電線の製造方法は、特に限定されないが、前述のワニスを用いて製造することが好ましい。
具体的には、好適な前記絶縁電線の製造方法は、前記絶縁電線の製造方法であって、前記一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリエステルアミド酸と有機溶媒を含む、ワニスを導体上に塗布し、焼き付けして絶縁被覆層を形成する、絶縁電線の製造方法である。
このようにして得られる絶縁電線の絶縁被覆層は、前述のポリエステルアミド酸をイミド化して得られるものであるため、一般式(1)で表される繰り返し単位を含むポリエステルイミドを含む。
本製造方法によれば、前記ワニスを導体上に塗布し、焼き付けして絶縁被覆層を形成して、絶縁電線を得るが、前記塗布及び焼き付けを繰り返すことにより、適切な厚さの絶縁被覆層を形成することができる。
焼き付けの温度は、好ましくは180~600℃であり、より好ましくは200~600℃であり、更に好ましくは250~500℃である。焼き付けの時間は、好ましくは1分間~10時間であり、より好ましくは5分間~3時間であり、更に好ましくは5分間~1時間である。焼き付けは、温度が低い場合、時間が長い方が好ましく、温度が高い場合、時間が短い方が好ましい。
なお、焼き付けはワニスに含まれる有機溶媒を除去し、ポリエステルアミド酸をイミド化し、導体上に絶縁被覆層を固定化するために行われるが、イミド化反応に熱イミド化でなく、化学イミド化を用いる場合にはより低温で焼き付けを行ってもよい。
以上のようにして得られた絶縁電線は、絶縁被覆層にポリエステルイミドを含むため、熱安定性に優れ、伸び率が高く、更に低誘電率である絶縁被覆層を有する。このことから、前記絶縁電線は、特にモーター用コイルを構成する絶縁電線として好適である。
以下に、実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
[物性測定及び評価]
実施例及び比較例で得られたポリエステルアミド酸、ワニス及びポリエステルイミドの各物性測定並びに評価は以下に示す方法によって行った。
(1)ポリエステルアミド酸の重量平均分子量
実施例及び比較例で得られたポリエステルアミド酸の重量平均分子量を次のようにして測定した。
前記ポリエステルアミド酸を含むワニスを、ポリエステルアミド酸濃度が0.2質量%となるように、下記に示す移動相溶媒で希釈して、測定用溶液とした。前記測定用溶液を用い、下記の条件でゲルろ過クロマトグラフィー測定を行い、ポリエステルアミド酸の重量平均分子量をポリスチレン換算値として求めた。
装置:CBM-20A、SIL-10ADvp、LC-10ADvp、DGU-12A、SPD-10Avp、CTO-10Avp、RID-10A、FRC-10A(いずれも株式会社島津製作所製)
カラム:Shodex GPC K-804
カラム温度:50℃
移動相:N-メチルピロリドン(LiBr(30mM),HPO(30mM))
移動相流量:0.7mL/分
分子量標準物質:ポリスチレン(Shodex M-6.8,63,955)
(2)ワニスの粘度
実施例及び比較例で得られたワニスの粘度を、下記粘度計を用いて、下記の条件で測定した。
装置:E型(コーンプレート型)粘度計 HAAKE RheoStress 6000(Thermo Scientific製)
測定温度:25℃
せん断速度:3s-1
(3)ガラス転移温度(Tg)
試験例及び比較試験例で得られたフィルムを、真空下100℃で16時間乾燥し、10mm幅、30mm長の短冊状にカットし、測定用試料とした。
前記測定用試料を用い、動的粘弾性測定装置 DMA7100(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて、下記の条件でガラス転移温度(Tg)の測定を行った。Tgは損失正接(tanδ)のピークトップにおける温度である。
測定モード:引張モード
昇温条件:30℃から320℃まで10℃/分で昇温、5分hold
周波数:1Hz
振幅:10μm
(4)熱重量減少温度(Td、熱安定性の評価)
実施例及び比較例で得られたポリエステルイミドフィルムを、凍結粉砕機を用いて粉末状とし、真空下100℃で16時間乾燥し、測定用試料とした。
前記測定用試料を用い、示差熱熱重量同時測定装置 STA7200(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて、下記の条件でTGA(熱重量分析)法により、10質量%熱重量減少温度(Td10%)の測定を行った。Td10%は測定用試料の質量が測定開始の質量に比べ、10%減少したときの温度とした。
熱重量減少温度が高いほど、熱安定性に優れる。なお、500℃まで昇温してもTd10%に達しなかった試料の測定値は、測定上限温度である490℃を超えるものとし、表1において「>490」とした。
昇温条件:30℃から500℃まで10℃/分で昇温、5分hold
測定環境:空気雰囲気下
(5)破断伸び率(伸び率の評価)
実施例及び比較例で得られたポリエステルイミドフィルムを、10mm×60mmに切断し、試験片とした。
前記試験片を用い、精密万能試験機 オートグラフAGX-plus(株式会社島津製作所製)を用いて、下記の条件で引張試験を行い、破断時のロードセルの変位量より破断時の試験片の長さを測定し、下記式によって破断伸び率を算出した。
破断伸び率(%)=(破断時の試験片の長さ-初期の試験片の長さ)/(初期の試験片の長さ)×100
つかみ具間距離:30mm
ロードセル(引張力):50N
引張速度:1mm/分(引張方向:試験片の長手方向)
(6)誘電率(比誘電率)
製造例及び比較製造例で得られたフィルムを60mm×60mmに切断し、真空下100℃で18時間乾燥し、試験片とした。
前記試験片を用い、プレシジョンLCRメータ E4980A(アジレント・テクノロジー社製)を用いて、下記の条件で誘電率(比誘電率)の測定を行った。なお、測定周波数は1kHzとした。
測定環境:23℃±2℃、50%RH±5%RH
電極寸法:主電極φ36mm、環状電極内径φ38mm
電極材質:導電性銀ペースト
[原料]
実施例及び比較例にて使用した原料とその略号は下記の通りである。
<ポリエステルイミド、ポリエステルアミド酸の原料>
TA-BP:p-ビフェニレンビス(トリメリテート)二無水物(本州化学工業株式会社製BP-TME;式(a11)で表される化合物。純度98.6%。ポリエステルアミド酸の製造には真空下100℃で約2時間乾燥させたものを用いた。)
TA-BPZ:p-(シクロヘキシリデンビスフェニレン)ビス(トリメリテート)二無水物(本州化学工業株式会社製BPZ-TME;下記式で表される化合物。純度99.2%)

TA-HMBP:p-(2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサメチルビフェニレン)-ビス(トリメリテート)二無水物(本州化学工業株式会社製TMPBP-TME;下記式で表される化合物。純度99.5%)

ODA:4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(東京化成工業株式会社製;式(b11)で表される化合物。純度99.4%)
BAPB:4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル(東京化成工業株式会社製;式(b21)で表される化合物。純度100%)
BAPP:2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(東京化成工業株式会社製;下記式で表される化合物。純度99.4%)
<溶媒>
DMAc:N,N-ジメチルアセトアミド
[ポリエステルアミド酸(ワニス)の製造]
実施例1
窒素導入管、排気管、撹拌翼を備えたメカニカルスターラーを装着した300mLセパラブルフラスコに窒素を流通させ、窒素雰囲気下にした。
次に、前記セパラブルフラスコ内に、ODA 1.007g(5.0mmol)、BAPB 1.842g(5.0mmol)を入れた。その後、得られるポリエステルアミド酸の濃度が12.5質量%になるようにDMAcを加えた。
続いて、TA-BP 5.420g(10.0mmol)を加えた。撹拌しながら25℃で反応させ、粘度の上昇開始を確認したのち、得られるポリエステルアミド酸の濃度が10質量%となるようにDMAcを添加し、反応混合物とした。反応混合物を更に撹拌しながら25℃で20時間反応させ、ポリエステルアミド酸溶液(ワニス)を得た。
実施例2~3及び比較例1~3
製造例1において、ODA、BAPB及びTA-BPの量(比率)を表1に示す量(比率)に変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルアミド酸溶液(ワニス)を得た。
比較例4~6
製造例1において、ODA、BAPB及びTA-BPを表1に示す原料に変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルアミド酸溶液(ワニス)を得た。
[ポリエステルイミド(フィルム)の製造]
実施例4~6及び比較例7~12
ガラス板を用意し、前記ポリエステルアミド酸溶液(ワニス)をフィルムの厚さが0.04~0.05mmになるように塗工機でガラス板上に塗布した。ワニスを塗布したガラス板をホットプレート上に載せ、100℃で2時間加熱して溶媒を除去した。その後、熱風乾燥機を用い、200℃で1時間加熱し、更に250℃で30分間加熱することにより、ポリエステルアミド酸を熱イミド化させてポリエステルイミド(フィルム、厚さ0.04~0.05mm)を得た。
表1に、実施例及び比較例で得られたポリエステルアミド酸の物性、ワニスの物性、及びポリエステルイミドの物性、評価の結果を示す。
表1に示すように、本発明のポリエステルイミドは、熱安定性に優れ、更に伸び率が高いことがわかる。また、実施例に示すように、ポリエステルアミド酸をイミド化することで前記ポリエステルイミドを得ることができるため、本発明のポリエステルアミド酸は、前記ポリエステルイミドの前駆体として有用であることがわかる。更に当該ポリエステルアミド酸を含むワニスも前記ポリエステルイミドを製造する際の原料として有用であることがわかる。

Claims (15)

  1. 下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリエステルイミド。

    (式(1)中、Xは上記式(X1)で表される2価の基及び上記式(X2)で表される2価の基を含み、式(X1)で表される2価の基と式(X2)で表される2価の基のモル比[(X1)/(X2)]は、30/70~95/5である。)
  2. 前記式(1)で表される繰り返し単位が下記式(1-1)で表される繰り返し単位である、請求項1に記載のポリエステルイミド。
  3. 前記式(X1)で表される2価の基が下記式(X1-1)で表される2価の基である、請求項1又は2に記載のポリエステルイミド。
  4. 前記式(X2)で表される2価の基が下記式(X2-1)で表される2価の基である、請求項1~3のいずれか1つに記載のポリエステルイミド。
  5. 前記ポリエステルイミドが、実質的に脂肪族炭化水素基を含まない、請求項1~4のいずれか1つに記載のポリエステルイミド。
  6. 前記ポリエステルイミドのガラス転移温度が、220~280℃である、請求項1~5のいずれか1つに記載のポリエステルイミド。
  7. 前記ポリエステルイミドの空気中での10%熱重量減少温度が、470℃以上である、請求項1~6のいずれか1つに記載のポリエステルイミド。
  8. 前記ポリエステルイミドの30mm×10mm×0.05mmの試験片を用いて長手方向の引張試験で測定された破断伸び率が、15%以上である、請求項1~7のいずれか1つに記載のポリエステルイミド。
  9. 下記一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリエステルアミド酸。

    (式(2)中、Xは上記式(X1)で表される2価の基及び上記式(X2)で表される2価の基を含み、式(X1)で表される2価の基と式(X2)で表される2価の基のモル比[(X1)/(X2)]は、30/70~95/5である。)
  10. 前記ワニス中の前記ポリエステルアミド酸の重量平均分子量が5,000~1,000,000である、請求項9に記載のポリエステルアミド酸。
  11. 請求項9又は10に記載のポリエステルアミド酸と有機溶媒を含む、ワニス。
  12. 前記ワニス中の前記ポリエステルアミド酸の濃度が、8~50質量%である、請求項11に記載のワニス。
  13. 前記ワニス中の前記有機溶媒がN,N-ジメチルアセトアミドを含む、請求項11又は12に記載のワニス。
  14. 前記ワニス中の前記ポリエステルアミド酸の25℃における粘度が、1~50Pa・sである、請求項11~13のいずれか1つに記載のワニス。
  15. 請求項11~14のいずれか1つに記載のワニスを加熱し、ポリエステルアミド酸をイミド化する工程を有する、ポリエステルイミドの製造方法。
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