JP2023108275A - 分散装置、スラリー製造システム及び分散方法 - Google Patents

分散装置、スラリー製造システム及び分散方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の課題は、粉体と液体とを混合するスラリー調製において、効率的な分散混合を行うとともに、塗工に適した高品質のスラリー調製を可能とする分散装置、スラリー製造システム及び分散方法を提供することである。【解決手段】上記課題を解決するために、粉体と液体の混合物が供給される容器と、容器内部に設けられた回転部材とを備える撹拌機と、撹拌機に供給する混合物に対し、炭酸ガスを添加する炭酸ガス添加手段とを備える分散装置及び分散方法、並びにこの分散装置を備えるスラリー製造システムを提供する。本発明によれば、混合物に大きなずり応力を加える撹拌機を用い、かつ撹拌機に供給する前段で粉体と液体との混合物に炭酸ガスを添加することで、混合物のpH上昇を抑止し、スラリーの変質が抑制できる。これにより、調製物として高品質かつ塗工に適したスラリーが得られる。【選択図】図1

Description

本発明は、粉体と液体とを混合してスラリーを調製する分散装置、スラリー製造システム及び分散方法に関するものである。
粉体と液体とを混合して調製されるスラリー(固体を溶媒あるいは分散媒体とする液体中に懸濁させた泥状の懸濁液またはペースト)は、様々な分野で活用される材料形態の一つとして知られている。
スラリーが活用される分野の一例としては、電気自動車、パソコン及びモバイル機器等の各種電子機器に用いられる二次電池が挙げられる。より具体的には、二次電池の電極作製において、溶質としての正極活性物質又は負極活性物質、導電物質、バインダー等の固形分を、水や有機溶媒等の液体に分散、混合することにより得られるスラリーを、電極の基材となるアルミニウム箔又は銅箔に塗工した後、加熱乾燥することにより、二次電池における正極及び負極を得ることが行われている。
ここで、スラリーの調製に係る技術としては、粉体と液体とを効率的に混合するための分散装置(撹拌装置、混合装置)が知られている。例えば、特許文献1には、固形分(無機固体電解質、活物質)と液体(分散媒(有機溶媒))とを混合した混合液を、円筒形の撹拌槽と、複数の孔が形成された円筒部を有する回転羽根とを備える分散装置(撹拌機)内に入れ、回転羽根の回転により、混合液を撹拌槽の内面において薄膜円筒状に拡げて撹拌することで、電極材料となるスラリーを調製することが記載されている。
特開2010-40190号公報
回転羽根を設けた槽を備えた分散装置を用い、回転羽根の回転により粉体と液体との撹拌・混合を行うスラリー調製において、特許文献1に記載されるように、二次電池の電極材料(電極スラリー)として、無機固体電解質や活物質などの機能性材料(粉体)と有機溶剤(液体)の混合物を取り扱う場合、機能性材料の種類によっては大気中あるいは溶剤中の水分と反応し、水酸化物が生成されることがある。この水酸化物によって、混合物の変質(ゲル化)が生じ、混合後の電極スラリーを電極基材へ塗工することが困難になるという課題がある。
また、近年、環境負荷の面などから有機溶媒の使用に関する規制(排出規制)が厳しくなってきており、排出規制をクリアするための処理にかかるコストも増大していく傾向にある。したがって、環境負荷の低減及び製造コストの削減の面から、有機溶媒の使用を少なくしていくことが求められている。
そのため、電極スラリーとして、水系スラリー(水を溶媒あるいは分散媒体とするペースト)を調製することについての関心も高まっている。しかし、機能性材料と水分が反応することで、機能性材料の変質や分解が生じ、混合後の電極スラリーの性能が劣化するだけでなく、有害ガスの発生が懸念される。特に、機能性材料と水分が反応することにより水酸化物が生成され、スラリーが強アルカリ化し、電極基材への塗工時に電極基材の腐食を発生させるという問題が生じる。
本発明の課題は、粉体と液体とを混合するスラリー調製において、効率的な分散混合を行うとともに、塗工に適した高品質のスラリー調製を可能とする分散装置、スラリー製造システム及び分散方法を提供することである。
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、スラリーの調製過程において、適所に二酸化炭素を含む気体(以下、単に「炭酸ガス」と呼ぶ)を供給することで、スラリーの物性変質(特にスラリーの強アルカリ化)を抑制し、塗工に適した高品質のスラリー調製が可能になることを見出して本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の分散装置、スラリー製造システム及び分散方法である。
上記課題を解決するための本発明の分散装置は、粉体と液体とを混合する分散装置であって、粉体と液体の混合物が供給される容器と、容器内部に設けられた回転部材とを備え、回転部材を回転させることで混合物が遠心力によってドーナツ状の薄膜を形成し、薄膜内では回転部材と容器の壁面との間でずり応力が発生して、液体中に粉体を分散させる撹拌機と、撹拌機に供給する混合物に対し、炭酸ガスを添加する炭酸ガス添加手段と、を備えることを特徴とするものである。
本発明の分散装置によれば、撹拌機において、粉体と液体とを混合物として容器内に供給し、容器内部に設けた回転部材を回転させることで混合物が遠心力によってドーナツ状の薄膜を形成し、薄膜内では回転部材と容器の壁面との間でずり応力が発生することにより、混合物中の成分の凝集を解砕し、短時間で効率的な分散を行うことが可能となる。また、この撹拌機に供給する前段で、粉体と液体との混合物に炭酸ガスを添加することで中和反応を進行させ、混合物のpHが上昇することを抑止し、スラリーの物性が変質することを抑制することができる。これにより、調製物として高品質のスラリーを得ることができるとともに、塗工に適したスラリーとして次の工程に供することが可能となる。また、本発明は、粉体や液体の成分が大気中や液体中の水分と反応し、反応生成物(特に水酸化物等)を生成するようなスラリー調製に係る分散装置として、特に顕著な効果を発揮するものである。
また、本発明の分散装置の一実施態様としては、炭酸ガス添加手段は、気体を微細気泡化する微細気泡化手段を備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、混合物と炭酸ガスの混合効率(接触効率)を高め、中和反応をより速やかに進行させることが可能となる。これにより、混合物のpH変動(pH上昇)をより確実に抑制し、高品質のスラリーを調製することが可能となる。
また、本発明の分散装置の一実施態様としては、撹拌機で得られた調製物であるスラリーのpHを測定するスラリーpH測定手段と、スラリーを撹拌機に再度供給する循環ラインと、スラリーpH測定手段による測定結果に基づき、循環ラインへの切り替えを行う循環ライン切替手段と、を備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、調製したスラリーのpHを測定し、そのpH測定結果に基づき、スラリーを撹拌機側に返送可能とする循環ラインを設けることで、スラリーのpH制御(pH上昇抑制)が十分ではない場合には、再度撹拌機で炭酸ガスと接触させ、pH低減を図ることが可能となる。これにより、pH上昇によるスラリーの変質をより一層抑制することができるとともに、より確実に塗工に適したスラリーとして次の工程に供することが可能となる。
また、本発明の分散装置の一実施態様としては、撹拌機に供給する混合物のpHを測定する混合物pH測定手段を更に備え、炭酸ガス添加手段は、スラリーpH測定手段及び混合物pH測定手段による測定結果に基づき、炭酸ガスの添加量を制御するガス添加量制御手段を備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、撹拌機に供給する前後の混合物(スラリー)のpHを測定し、そのpH測定結果に基づき、炭酸ガスの供給量を制御することで、高品質のスラリー調製において、適切な量の炭酸ガスを添加することが可能となる。これにより、炭酸ガス供給に係るコストを最適化することができる。また、炭酸ガスの過剰供給を抑制し、スラリーの調製工程及びスラリーの品質に影響を及ぼすことを抑制することが可能となる。
上記課題を解決するための本発明のスラリー製造システムは、粉体と液体とを混合し、スラリーを製造するスラリー製造システムであって、粉体と液体とが投入され、予備撹拌を行う予備撹拌タンクと、予備撹拌タンクで予備撹拌されて得られた混合物が供給され、かつ混合物を撹拌しつつ貯蔵する貯蔵タンクと、貯蔵タンクから混合物が供給される上述した分散装置と、分散装置で得られた調製物であるスラリーが供給され、かつスラリーを撹拌しつつ真空脱泡処理を行う処理タンクと、を備えることを特徴とするものである。
このスラリー製造システムによれば、上述した分散装置に対し、予備撹拌を経た混合物を供給することで、混合物の性状を均質化して撹拌機に供給することが可能となり、撹拌機における撹拌効率を高めることができる。また、上述した分散装置で得られたスラリーに対して真空脱泡処理を行うことで、気泡を除去した状態のスラリーを、次工程(塗工工程)に円滑に供給することができるとともに、塗工工程において気泡による不具合が生じることを抑制することが可能となり、更にスラリー内に内包した余剰の炭酸ガスを除去することが可能となる。
また、本発明のスラリー製造システムの一実施態様としては、分散装置における炭酸ガス添加手段は、予備撹拌タンク、貯蔵タンク、処理タンクのうち、いずれか1つ以上に対しても炭酸ガスを添加するという特徴を有する。
この特徴によれば、分散装置以外のスラリー調製に係る工程においても、混合物(スラリー)のpH上昇を抑制することが可能となる。これにより、調製物としてより高品質のスラリーを得ることができるとともに、より一層塗工に適したスラリーとして次の工程に供することが可能となる。
上記課題を解決するための本発明の分散方法は、粉体と液体とを混合する分散方法であって、粉体と液体の混合物が供給される容器において、容器に設けられた回転部材を回転させることで混合物が遠心力によってドーナツ状の薄膜を形成し、薄膜内では回転部材と容器の壁面との間でずり応力が発生して、液体中に粉体を分散させる撹拌ステップと、撹拌ステップに供給する混合物に対し、炭酸ガスを添加する炭酸ガス添加ステップと、を含むことを特徴とするものである。
この分散方法によれば、粉体と液体の撹拌として、粉体と液体とを混合物として容器内に供給し、容器内に設けた回転部材を回転させることで混合物が遠心力によってドーナツ状の薄膜を形成し、薄膜内では回転部材と容器の壁面との間でずり応力が発生することにより、混合物中の成分の凝集を解砕し、短時間で効率的な分散を行うことが可能となる。また、撹拌を行う前段で、粉体と液体との混合物に炭酸ガスを添加することで中和反応を進行させ、混合物のpHが上昇することを抑止し、スラリーの物性が変質することを抑制することができる。これにより、調製物として高品質のスラリーを得ることができるとともに、塗工に適したスラリーとして次の工程に供することが可能となる。また、本発明は、粉体や液体の成分が大気中や液体中の水分と反応し、反応生成物(特に水酸化物等)を生成するようなスラリー調製に係る分散方法として、特に顕著な効果を発揮するものである。
本発明によれば、粉体と液体とを混合するスラリー調製において、効率的な分散混合を行うとともに、塗工に適した高品質のスラリー調製を可能とする分散装置、スラリー製造システム及び分散方法を提供することができる。
本発明の第1の実施態様のスラリー製造システム及び分散装置の構造を示す概略説明図である。 本発明の第1の実施態様の分散装置の構造の一部を示す概略説明図である。 本発明の第2の実施態様のスラリー製造システム及び分散装置の構造を示す概略説明図である。 本発明の第3の実施態様のスラリー製造システム及び分散装置の構造を示す概略説明図である。 本発明の第4の実施態様のスラリー製造システム及び分散装置の構造を示す概略説明図である。 本発明の第5の実施態様のスラリー製造システムの構造を示す概略説明図である。
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る分散装置、スラリー製造システム及び分散方法を詳細に説明する。
なお、実施態様に記載する分散装置及びスラリー製造システムについては、本発明に係る分散装置及びスラリー製造システムを説明するために例示したに過ぎず、これに限定されるものではない。なお、本発明の分散方法については、以下の分散装置の構造及び作動の説明に置き換えるものとする。
本発明における分散装置は、粉体と液体の混合を行う装置であり、混合に係る処理内容としては、液体中への粉体の溶解、あるいは液体中への粉体の分散のいずれであってもよい。また、本発明におけるスラリー製造システムは、本発明における分散装置を用いてスラリーの調製を行うシステムである。
本発明の分散装置及びスラリー製造システムは、粉体と液体の混合を利用する分野において広く適用することが可能である。このような分野の一例としては、例えば、食品製造や化粧品製造のほか、工業製品の材料調製が挙げられる。特に、粉体と液体の混合に伴う化学反応や水分との反応により、混合物(スラリー)の物性(特にpH)に対する影響が生じやすい工業製品の材料調製に好適に用いることができる。
なお、以下、本発明の分散装置及びスラリー製造システムにより調製するスラリーとしては、主に二次電池の電極材料(電極スラリー)を例にとって説明するが、これに限定されるものではない。
〔第1の実施態様〕
(スラリー製造システム)
図1は、本発明の第1の実施態様におけるスラリー製造システム及び分散装置の構造を示す概略説明図である。
本実施態様のスラリー製造システム1Aは、図1に示すように、予備撹拌タンク100と、貯蔵タンク200と、分散装置300Aと、緩衝タンク400と、処理タンク群500(処理タンク501、502、503)とを備える。
本実施態様のスラリー製造システム1Aは、まず、予備撹拌タンク100に、粉体Pと液体Lが供給されて予備撹拌が行われる。予備撹拌後の混合物Mは、貯蔵タンク200に供給され、さらに分散装置300Aに対して連続的に供給される。そして、分散装置300AにおいてスラリーSが調製される。次いで、調製されたスラリーSは、緩衝タンク400に供給され、一時的に貯留される。そして、緩衝タンク400内のスラリーSは処理タンク群500(処理タンク501、502、503)に供給され、各処理タンクにおいて真空脱泡処理が行われる。その後、スラリーSは、次工程(主に塗工工程)を実施するタイミングに応じ、次工程の実施箇所へ移送される。
以下、本実施態様におけるスラリー製造システム1Aの各構成について説明する。
予備撹拌タンク100は、分散装置300Aにおいて混合物Mを撹拌し、スラリーSを調製するに先立ち、粉体Pと液体Lをある程度混合させておくためのものである。
予備撹拌タンク100は粉体Pと液体Lの予備撹拌を行うことができるものであればよく、例えば、図1に示すように、垂直回転軸101周りに設けられ、高速回転する小径の撹拌羽根102と、垂直回転軸103周りに設けられ、低速回転する大径の撹拌羽根104とを備え、この両撹拌羽根102、104を回転させることにより、ホッパ120、130を介して投入された粉体Pと液体Lに対し予備撹拌を行うものが挙げられる。この予備撹拌タンク100では、小径の撹拌羽根102が高速回転することにより、粉体Pと液体Lを混合させ、大径の撹拌羽根104が回転することにより、全体がかき混ぜられて混合状態が均質化される。
また、図1に示すように、予備撹拌タンク100は、温度調節用媒体の供給・循環が可能なジャケット110で囲むものとしてもよい。これにより、予備撹拌時における温度調節が可能となる。
この予備撹拌タンク100に投入される粉体P及び液体Lは、調製するスラリーSに応じて適宜選択されるものであり、特に限定されない。
例えば、調製するスラリーSが、二次電池の電極材料である場合、粉体Pとしては活物質(正極活物質及び負極活物質)や固体電解質、バインダーなどが挙げられる。より具体的には、例えば、正極用活物質としては、リチウム化合物(コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウム及びそれらの複合体並びに変性体、あるいはその他のリチウム遷移金属複合酸化物等)の粉末が挙げられる。また、負極用活物質としては、天然黒鉛、人造黒鉛、シリコン系化合物や各種合金材料の粉末が挙げられる。
一方、液体Lとしては、上述した粉体Pと混合し、混合物M(スラリーS)を形成するものであればよく、特に限定されない。例えば、液体Lとしては、水のほか、非水系溶媒(無機・有機)などが挙げられる。液体Lの種類は、スラリーSとして求められる機能や性質に応じ、粉体Pとの組み合わせを鑑みて適宜選択することが可能である。
予備撹拌タンク100での撹拌は、バッチ方式により行われ、各回の予備撹拌が終了すると、スラリー状の混合物Mは、この予備撹拌タンク100の底部の排出口140から、ポンプ150及び移送配管160を介して貯蔵タンク200に移送される。
貯蔵タンク200は、垂直回転軸201周りに設けられ、常時低速回転する大径の撹拌羽根202を有しており、予備撹拌タンク100から移送された混合物Mをゆっくりとかき混ぜるものである。
また、図1に示すように、貯蔵タンク200についても、温度調節用媒体の供給・循環が可能なジャケット210によって囲み、混合物Mの温度調節を可能とするものとしてもよい。
この貯蔵タンク200の底部から排出される混合物Mは、ポンプ220及び移送配管230を介して分散装置300Aに連続的に移送される。すなわち、この貯蔵タンク200を設けることで、予備撹拌タンク100における予備撹拌をバッチ式によって行うものとしても、分散装置300Aに対して混合物Mを連続的に移送することが可能となる。
また、予備撹拌された混合物Mは、粉末Pが高度に分散された状態には至っていないため、凝集が起こり得る状態にあるが、本実施態様の貯蔵タンク200は撹拌羽根202を備えているため、均質化した混合物Mを分散装置300Aに移送することが可能となる。
(分散装置)
分散装置300Aは、粉体Pと液体Lの混合物Mの連続撹拌を行い、スラリーSを調製するためのものである。
本実施態様における分散装置300Aは、混合物Mの撹拌を行う撹拌機360と、撹拌機360に供給される混合物Mに対し、炭酸ガスを添加する炭酸ガス添加手段370とを備えている。
図2は、本発明の第1の実施態様における分散装置の構造を示す概略説明図である。なお、図2は、図1に示した分散装置のうち、特に撹拌機に係る箇所を拡大した概略説明図である。
本実施態様の撹拌機360は、図2に示すように、容器310と、この容器310の中心の垂直方向に延びる回転軸350を中心として高速回転する回転部材(ホイル)330とを有する。
容器310は、混合物Mを貯留することができる構造を有するものであればよく、例えば、図2に示すように、略円筒状の内壁面311によって、円筒状空間312が形成されている構造物(槽)を用いることが挙げられる。また、円筒状空間312には、堰板313が設けられ、この堰板313によって上部空間312aと下部空間312bとに分離されている。
容器310の底部には、下部空間312bと連通した供給口314が設けられており、この供給口314を介して、貯蔵タンク200から混合物Mが連続的に供給される。一方、容器310の上部には、上部空間312aと連通した排出口315が設けられており、撹拌済みの混合物MがスラリーSとして容器310外部に排出される。
なお、図2に示すように、本実施態様における撹拌機360は、容器310の下部空間312bを取り囲むようにして、冷却水が循環するジャケット320を設けるとともに、上部空間312aを取り囲むようにして、冷却水循環路321を形成するものとし、撹拌機360の動作時における温度調整を行うものとしてもよい。
後述するように、撹拌機360の動作中、回転部材330と内壁面311との間で強大なずり応力による撹拌作用を受ける混合物Mは、摩擦による熱により昇温する。したがって、撹拌機360において、ジャケット320及び冷却水循環路321を設けることで、容器310が適度に冷却され、混合物Mが過熱状態となることを防ぐことができる。
回転軸350は、容器310の上部に搭載された高トルクのモータ351によって高速回転が可能なものであり、回転軸350の下端には回転部材330が設けられる。
また、回転軸350に設けられる回転部材330は、容器310よりわずかに小径となる構造を有するものである。ここで、容器310よりわずかに小径となる構造とは、回転部材330が容器310の内壁面311近傍で高速回転することを可能とし、混合物Mに対して遠心力及びずり応力を与えることができる構造であればよい。より具体的には、回転部材330の外径が、容器310の内径の90~99%となる構造とすることや、回転部材330と容器310の内壁面311との間に1~5mmの隙間を有する構造とすることなどが挙げられる。
回転部材330の一例としては、図2に示すように、下部空間312bにおいて、内壁面311に対してわずかな空間Vを介して対向する外周面331を有する円筒部材332であって、回転軸350に対して支持部材352を介して支持されるものが挙げられる。また、図2に示すように、円筒部材332や支持部材352には、各部材を貫通する複数の孔333を形成するものとしてもよい。これにより、下部空間312b内における混合物Mの移動を円滑に行うことが可能となる。
回転部材330の材質については特に限定されないが、円筒部材332は、ファインセラミクス等の耐摩耗性に優れた材料で形成されているか、もしくは、円筒部材332の外周面331がファインセラミクス等の耐摩耗性に優れた材料でコーティングされたものであることが望ましい。同様に、容器310の内壁面311において、回転部材330と空間Vを介して対向する領域は、ファインセラミクス等の耐摩耗性に優れた材料でコーティングされることが望ましい。このようなファインセラミクスとしては、例えば、アルミナセラミクスが挙げられる。
後述するように、撹拌機360内では、混合物Mが強大なずり応力を受けることになる。したがって、回転部材330として耐摩耗性に優れた材料を用いることで、混合物MやスラリーSに対し、金属摩耗粉などの微小な異物混入を抑制することができる。
回転部材330は回転軸350を介して高速回転される。ここで、高速回転とは、容器310内の混合物Mが十分に撹拌される回転速度となるものであればよく、回転速度に係る具体的な数値については特に限定されないが、例えば、回転部材330の周速(内壁面311との間の相対速度)が10~100m/sとなるように回転させることが挙げられる。なお、回転部材330を十分な周速で回転させるためには、高トルク、高出力のモータが必要となるが、使用可能なモータに応じて、容器310及び回転部材330のサイズ(高さや径)を選択するものとしてもよい。すなわち、この撹拌機360の処理能力は、回転部材330の周速を一定とした場合、回転部材330の外周面331の面積にほぼ比例することになる。したがって、容器310及び回転部材330を大型化することで、撹拌機360の処理能力を高めるものとしてもよい。
この撹拌機360に混合物Mを供給し、回転部材330を容器310の内壁面311近傍で高速回転すると、高速回転する回転部材330による遠心力を受け、混合物Mは容器310の内壁面311に押し付けられる。そして、混合物Mが遠心力によって内壁面311に押し付けられることで、ドーナツ状の薄膜Fが形成される。このとき、円筒部材332の外周面331と容器310の内壁面311との間に形成された空間V内にて薄膜Fとなった混合物Mは、空間Vに係る水平方向の幅に相当する内壁面311近傍のわずかな厚み(数mm)において、急激な速度勾配をもつことになる。そして、薄膜F内では、回転部材330と内壁面311との間でずり応力が発生する。これにより、混合物M(薄膜F)は、強大なずり応力を受け続けることとなるため、混合物M内で凝集している成分が解砕(微粒化)され、短時間で効率的な分散を行うことが可能となる。また、本実施形態の回転部材330では、円筒部材332に複数の孔333が形成されているため、円筒部材332の内側に導入された混合物Mも空間Vに向かって速やかに移動するとともに、空間Vにおける混合物Mの流れを乱すことになる。これにより、混合物Mの撹拌効率をより一層高めることができる。
撹拌機360には、連続して混合物Mが供給されるとともに、回転部材330の高速回転による遠心力を常時受けることになるため、撹拌済みの混合物Mは容器310に設けられた堰板313を超えて上方に拡がり、やがて上部空間312aの排出口315からスラリーSとして連続的に排出される。
炭酸ガス添加手段370は、撹拌機360に供給される混合物Mに対し、炭酸ガスGを添加するものである。
スラリーSの調製において、粉体Pと液体Lの組み合わせによっては、粉体Pと、大気中あるいは液体L中の水分とが反応し、水酸化物が生成されることがある。例えば、調製するスラリーSが二次電池の電極材料(電極スラリー)であり、特に、リチウムイオン二次電池の正極活物質として用いられるリチウム化合物(リチウム遷移金属複合酸化物等)を含む電極スラリーである場合、リチウム化合物(粉体P)と水分との反応により、水酸化リチウムが生成される。水酸化リチウムは反応性に富む成分であるため、混合物Mに含まれる他の成分(バインダー等)との反応が生じる。このとき、粉体Pの変質や分解と併せて混合物Mの変質(ゲル化)が生じ、混合後の電極スラリーを電極基材へ塗工することが困難となる。また、混合後の電極スラリーの性能が劣化するだけでなく、有害ガスの発生が懸念される。特に、液体Lとして水を用いた水系スラリーの場合、水酸化リチウムによってスラリーSが強アルカリ化することで、電極基材への塗工時に電極基材の腐食を生じさせてしまうことになる。
本実施態様における分散装置300Aは、撹拌機360に加えて、炭酸ガス添加手段370を設けることにより、撹拌機360に供給する混合物Mにおける粉体Pと水分の反応を抑制し、水酸化物の生成に起因する混合物Mの変質等を抑制することが可能となる。これにより、調製物として高品質のスラリーSを得ることができるとともに、塗工に適したスラリーSとして次の工程に供することが可能となる。特に、液体Lが水である場合、炭酸ガスが水に溶解して酸成分(炭酸)を生成する。したがって、混合物Mに含まれる水酸化リチウムなどのアルカリ成分と酸成分(炭酸)の中和反応が起こる。これにより、混合物M(スラリーS)の強アルカリ化をより確実に抑制し、スラリーSの物性が変質することを抑制することができる。
炭酸ガス添加手段370としては、混合物Mに炭酸ガスGを添加することができるものであればよく、例えば、図1に示すように、貯蔵タンク200と分散装置300における撹拌機360とを接続し、混合物Mを供給する配管230に対し、ガス供給配管371を介して炭酸ガス源372を接続することが挙げられる。
炭酸ガス源372としては、炭酸ガスGを供給できるものであれば特に限定されない。例えば、炭酸ガスGとしては、主成分が二酸化炭素である高純度ガスのほか、空気などのように、成分の一つとして二酸化炭素を含む混合ガスが挙げられる。なお、スラリーSの物性や組成に影響を与えないという観点から、主成分が二酸化炭素である高純度ガスを用いることが好ましい。
また、炭酸ガス添加手段370としては、常圧ガスを供給するものとしてもよいが、撹拌機360内が常圧~加圧状態にあることを鑑み、高圧ガスを供給することがより好ましい。
したがって、本実施態様における炭酸ガス添加手段370においては、炭酸ガス源372として、二酸化炭素の高純度・高圧ガス容器を用いることが好ましい。二酸化炭素の高圧ガス容器は入手が容易であり、またガス供給に際してポンプなどの駆動装置を必要としないため、炭酸ガス添加手段370に係るコストを低減させることが可能となる。
なお、分散装置300に係る構成は、本発明に係る分散装置として独立したものとすることができる。すなわち、予備撹拌タンク100及び貯蔵タンク200を介すること以外の手段により、粉体Pと液体Lの混合物Mを分散装置300に連続的に供給するものとしてもよい。また、後述する緩衝タンク400及び処理タンク群500を介すること以外の手段により、分散装置300で調製したスラリーSを次工程に供給するものとしてもよい。
分散装置300によって撹拌処理された撹拌済みのスラリーSは、導管410を介して重力の作用により緩衝タンク400に導かれる。
なお、導管410の周囲に冷却水循環路を形成するものとしてもよい(不図示)、これにより、撹拌機360における冷却水循環用ジャケット320や冷却水循環路321による冷却と併せ、撹拌済みのスラリーSの温度調整(冷却)が可能となる。
緩衝タンク400を経たスラリーSは、ポンプ420及び移送配管450を介し、処理タンク群500に供給される。
なお、本実施態様における処理タンク群500として、図1には、並列設置された3つの真空脱泡用の処理タンク501、502、503を示しているが、処理タンク群500における処理タンクの個数や配列については、調製するスラリーSの性質や量に応じて適宜選択することができ、これに限定されるものではない。また、本実施態様における処理タンク501、502、503は同一構造を有するものであり、図1において、処理タンク501、502、503に係る構造については一部符号を省略している。
本実施態様のスラリー製造システム1Aにおいては、図1に示すように、スラリーSは各処理タンク501、502、503に順次振り分けて供給される。なお、移送配管450には、混入した異物を除去するためのフィルタ422を設けるものとしてもよい。
また、移送配管450における各処理タンク用の分岐管451、452、453には、制御装置(不図示)によって開閉制御される弁460が設けられている。
さらに、真空脱泡処理を行うため、各処理タンク501、502、503には、真空ポンプ470及び配管480が接続されている。
各処理タンク501、502、503には、垂直回転軸510を中心として低速回転する撹拌羽根511が各々設けられている。これにより、各処理タンク501、502、503内に供給されたスラリーSを撹拌し、スラリーSの分散性を維持することができる。また、各処理タンク501、502、503は、温度調整用媒体が供給・循環するジャケット520で囲むものとしてもよい。
なお、各処理タンク501、502、503は、真空脱泡処理を行う構成(真空ポンプ470など)以外については、上述した貯蔵タンク200と同様の構成としてもよい。
各処理タンク501、502、503は、一定量のスラリーSが供給された状態で真空ポンプ470を駆動しつつ、撹拌羽根511を回転させることによって、スラリーSの真空脱泡処理をバッチ方式で行う。真空脱泡処理を終えた処理タンク501、502、503から、ポンプ490及び導管491を介し、脱泡処理済みのスラリーSが次工程(主に塗工工程)に供給される。
そして、全ての処理済みスラリーSが次工程に送られ、各処理タンク501、502、503内が空になった後、緩衝タンク400からスラリーSが順次供給され、供給されたスラリーSに対し真空脱泡処理を行うという操作を繰り返す。このようにして、緩衝タンク400を介して処理タンク群500にスラリーSを供給することにより、各処理タンク501、502、503における真空脱泡処理をバッチ方式で行うにもかかわらず、脱泡処理済みのスラリーSを連続して次工程(塗工工程)に供給することが可能となる。
また、本実施態様における各処理タンク501、502、503は、ジャケット520で囲むものとしているため、脱泡処理済みのスラリーSの粘度調整を行うことが可能であるとともに、脱泡処理を促進させることも可能となる。
各処理タンク501、502、503へのスラリーSの順次供給、各処理タンク501、502、503からの脱泡処理済みのスラリーSの塗工工程への連続供給のための制御は、各処理タンク501、502、503にスラリーSを供給するための分岐管451、452、453上に設けた弁460の開閉や、各処理タンク501、502、503に付設されたポンプ490の駆動を制御すること等により行うことができる。なお、制御に係る具体的な手段は特に限定されない。例えば、作業者が手動で行うものであってもよく、プログラムを実行するCPUや回路などを備えた制御部により実行されるものであってもよい。
以上のように、本実施態様のスラリー製造システム及び分散装置により、粉体と液体とを混合するスラリー調製において、効率的な分散混合を行うとともに、塗工に適した高品質のスラリー調製が可能となる。
特に、本実施態様の分散装置によれば、粉体と液体の混合物に対し大きなずり応力を加えることのできる撹拌機を用いることで、混合物中の成分の凝集を解砕し、短時間で効率的に分散させることが可能となるとともに、撹拌機に供給する前段で、粉体と液体との混合物に炭酸ガスを添加することで中和反応を進行させ、混合物のpHが上昇することを抑止し、スラリーの物性が変質することを抑制することができる。これにより、調製物として高品質のスラリーを得ることができるとともに、塗工に適したスラリーとして次の工程に供することが可能となる。また、粉体の成分が大気中や液体中の水分と反応し、水酸化物を生成するようなスラリー調製に係る分散装置として、特に顕著な効果を発揮するものである。
また、本実施態様のスラリー製造システムによれば、上述した分散装置に対し、予備撹拌を経た混合物を供給することで、混合物の性状を均質化して撹拌機に供給することが可能となり、撹拌機における撹拌効率を高めることができる。また、上述した分散装置で得られたスラリーに対して真空脱泡処理を行うことで、気泡を除去した状態のスラリーを、次工程(塗工工程)に円滑に供給することができるとともに、塗工工程において気泡による不具合が生じることを抑制することが可能となり、更にスラリー内に内包した余剰の炭酸ガスを除去することが可能となる。
〔第2の実施態様〕
図3は、本発明の第2の実施態様のスラリー製造システム及び分散装置の構成を示す概略である。
第2の実施態様のスラリー製造システム1B及び分散装置300Bは、図3に示すように、第1の実施態様の分散装置300Aにおける炭酸ガス添加手段370に対し、気体を微細気泡化する微細気泡化手段373を更に設けるものである。なお、第1の実施態様の構成と同じものについては、説明を省略する。
本実施態様の分散装置300Bは、撹拌機360に供給する混合物Mに対し、微細気泡化手段373を介して微細気泡化した炭酸ガスGを添加するものである。これにより、混合物Mと炭酸ガスGの混合効率(接触効率)を高め、中和反応をより速やかに進行させ、混合物MのpH変動(pH上昇)をより確実に抑制することが可能となる。
微細気泡化手段373は、炭酸ガスGを微細気泡化できるものであればよく、特に限定されない。例えば、キャビテーションを発生させる機構、加圧と圧力開放とを組み合わせた圧力変動機構、微細孔構造に気体を透過させる機構などが挙げられる。また、微細気泡化手段373を設ける箇所についても特に限定されないが、例えば、移送配管230とガス供給配管371の合流箇所や、この合流箇所よりも下流側の移送配管230に設けることが挙げられる。
微細気泡化手段373の具体例としては、撹拌機360の供給口314付近における移送配管230に、管路径を絞る構造(オリフィス)を設けることが挙げられる。この場合、炭酸ガスGが添加された混合物Mがオリフィスを通過する際にキャビテーションが発生し、炭酸ガスGの微細気泡化が進行する。これにより、外部からのエネルギー供給(電力供給)を必要とせず、比較的簡易な構造により、混合物Mと炭酸ガスGの混合効率を高めることが可能となる。
微細気泡化手段373により微細気泡化された気体の大きさ(気泡の直径)は特に限定されないが、混合物Mと炭酸ガスGの混合効率を向上させるという観点から、微細気泡化手段373は、気泡の直径が1mm以下、より好ましくは500μm以下、更に好ましくは100μm以下となるように微細気泡化できるものであることが望ましい。
〔第3の実施態様〕
図4は、本発明の第3の実施態様のスラリー製造システム及び分散装置の構成を示す概略である。
第3の実施態様のスラリー製造システム1C及び分散装置300Cは、図4に示すように、第1の実施態様の分散装置300Aにおいて、調製物として得られたスラリーS(本実施態様では水系スラリーを指す)のpHを測定するスラリーpH測定手段380と、スラリーSを撹拌機360に再度供給する循環ライン381と、スラリーpH測定手段380による測定結果に基づき、循環ライン381への切り替えを行う循環ライン切替手段382を設けるものである。なお、図4において、処理タンク群500に係る構成は図示を省略している。また、第1の実施態様の構成と同じものについては、説明を省略する。
本実施態様の分散装置300Cは、調製したスラリーSのpHをスラリーpH測定手段380により測定し、そのpH測定結果に基づき、循環ライン切替手段382を介してスラリーSを撹拌機360側に返送可能とする循環ライン381を備えるものであり、スラリーSのpH制御(pH上昇抑制)が十分ではない場合には、再度撹拌機360で炭酸ガスGとスラリーSとを接触させ、pH低減を図ることが可能となる。これにより、pH上昇によるスラリーSの変質をより一層抑制することができるとともに、より確実に塗工に適したスラリーSとして次の工程に供することが可能となる。
スラリーpH測定手段380は、撹拌機360から排出されたスラリーSのpHを測定することができるものであればよく、特に限定されない。また、スラリーpH測定手段380を設ける箇所についても特に限定されない。例えば、図4に示すように、緩衝タンク400に対し、スラリーpH測定手段380としてpH計を設け、緩衝タンク400内のスラリーSのpHを測定することが挙げられる。
スラリーpH測定手段380の測定結果は、測定データとして循環ライン切替手段382に直接入力を可能とするものであってもよく、作業者が測定結果を記録するものであってあってもよい。なお、循環ライン切替手段382に係る切り替え操作を自動化するためには、スラリーpH測定手段380の測定結果は、データとして循環ライン切替手段382や後述する制御部に対して直接入力可能とすることが好ましい。
循環ライン381及び循環ライン切替手段382は、撹拌機360から排出されたスラリーSを再度撹拌機360内に返送することができるものであればよく、特に限定されない。
循環ライン381としては、例えば、図4に示すように、スラリーpH測定手段380を設けた緩衝タンク400からのスラリーSを処理タンク群500に移送する移送配管450から分岐し、混合物Mを分散装置300Cに移送する移送配管230と接続したものとすること等が挙げられる。このとき、循環ライン381と移送配管230の接続箇所は、図4に示すように、炭酸ガス添加手段370よりも上流側とすることが好ましい。これにより、循環ライン381により返送されたスラリーSに、再度炭酸ガスGが添加され、より確実にpH低減を図ることが可能となる。
また、循環ライン381と移送配管230の接続箇所あるいはその近傍に、移送配管230内の混合物Mと循環ライン381から供給されるスラリーSとの混合効率を高めるための混合手段を設けるものとしてもよい。このような混合手段としては、例えば、ミキシング機構やオリフィスなどが挙げられる。
循環ライン切替手段382としては、例えば、図4に示すように、循環ライン381と移送配管450の分岐箇所あるいはその近傍に対し、開閉弁や切替弁を設け、弁の開閉操作や切り替え操作により、移送されるスラリーSの流れを切り替えるもの等が挙げられる。
さらに、循環ライン切替手段382及びスラリーpH測定手段380に対して制御可能となるように接続し、スラリーpH測定手段380の測定結果を入力するとともに、測定結果が適切な範囲(基準pH値)内にあるかどうかの判断を行い、その判断結果に応じて循環ライン切替手段382を操作する制御部(不図示)を設けるものとしてもよい。これにより、循環ライン381の切り替えに係る操作を自動化することが可能となる。
循環ライン切替手段382による切り替え操作に係る判断基準となるpH値については、スラリーSの特性や調製したスラリーSが供給される次工程の内容等に応じ、適宜設定することができるものであり、特に限定されない。
一般に、二次電池の電極スラリーにおいては、スラリーSのpH値が11を超えると、塗工時に電極基材(主にアルミニウム集電体)が腐食するという問題が生じることが知られている。したがって、スラリーSとして二次電池の電極スラリーを調製する場合、pH11を基準pH値とし、循環ライン切替手段382による循環ライン381への切り替えに係る判断を行うことが挙げられる。具体的には、スラリーpH測定手段380によるスラリーSのpH値が基準pH値以上となった際に、循環ライン切替手段382を操作し、スラリーSを循環ライン381側に導入することが挙げられる。
〔第4の実施態様〕
図5は、本発明の第4の実施態様のスラリー製造システム及び分散装置の構成を示す概略である。
第4の実施態様のスラリー製造システム1D及び分散装置300Dは、図5に示すように、第3の実施態様の分散装置300Cに対し、撹拌機360に供給する混合物MのpHを測定する混合物pH測定手段390を更に備えるとともに、炭酸ガス添加手段370として、スラリーpH測定手段380及び混合物pH測定手段390による測定結果に基づき、炭酸ガスGの添加量を制御するガス添加量制御手段374を更に設けるものである。なお、第3の実施態様の構成と同じものについては、説明を省略する。
本実施態様の分散装置300Dは、撹拌機360に供給する前後の混合物M(スラリーS)のpHを測定し、それらのpH測定結果に基づき、炭酸ガスGの供給量を制御することで、高品質のスラリーを調製するに当たり、適切な量の炭酸ガスGを添加することが可能となる。これにより、炭酸ガス供給に係るコストを最適化することができる。また、余剰な炭酸ガスGがスラリーSに入ることを抑制し、スラリーSの品質低下(例えば、電極スラリーにおける電池性能低下等)を防止することができる。
特に、調製するスラリーSがリチウム化合物を含む水系の電極スラリーである場合、pH低減のために炭酸ガスGを過剰供給すると、リチウム化合物が炭酸イオンと反応し、炭酸リチウムが生成する。ここで、炭酸リチウムは絶縁体であるため、炭酸リチウムが過剰に生成すると、電極スラリーの性能劣化要因の一つとなり得るという問題が生じる。
また、上述した第2の実施態様における分散装置300Bのように、炭酸ガス添加手段370として炭酸ガスGを微細気泡化する微細気泡化手段373を設ける場合、炭酸ガスGの過剰供給は、ガスの微細気泡化に影響を与えることになる。特に、微細気泡化手段373としてキャビテーションを生じる機構や圧力変動機構を用いる場合、炭酸ガスGの過剰供給により加圧状態が続くことになるため、圧力の変化が生じにくく、ガスの微細気泡化効率が低下し、混合物Mと炭酸ガスGの混合効率が低下することになってしまう。
一方、本実施態様のスラリー製造システム1D及び分散装置300Dにおいては、pH制御に必要な炭酸ガスGを適量で添加することができる。これにより、炭酸ガスGの過剰供給が起こることを抑制し、スラリーの調製工程及びスラリーの品質に影響を及ぼすことを抑制することが可能となる。
混合物pH測定手段390は、撹拌機360に供給する前の混合物MのpHを測定することができるものであればよく、特に限定されない。また、混合物pH測定手段390を設ける箇所についても特に限定されない。例えば、図5に示すように、貯蔵タンク200に混合物pH測定手段390としてpH計を設け、貯蔵タンク200内の混合物MのpHを測定することが挙げられる。
混合物pH測定手段390の測定結果は、測定データとしてガス添加量制御手段374に直接入力を可能とするものであってもよく、作業者が測定結果を記録するものであってもよい。なお、ガス添加量制御手段374によって炭酸ガスGの添加量制御を自動化するためには、混合物pH測定手段390の測定結果は、データとしてガス添加量制御手段374あるいは後述する制御部に対して直接入力可能とすることが好ましい。
ガス添加量制御手段374は、スラリーpH測定手段380及び混合物pH測定手段390の測定結果に基づき、炭酸ガスGの添加量を制御することができるものであればよく、特に限定されない。ガス添加量制御手段374としては、例えば、ガス供給配管371上にバルブなどの流量調節機構を設けること等が挙げられる。また、ガス添加量制御手段374と各pH測定手段(スラリーpH測定手段380及び混合物pH測定手段390)に対して制御可能に接続し、さらに、各pH測定手段の測定結果を入力するとともに、スラリーSのpH値を次工程に適した範囲とするために必要な炭酸ガスGの添加量を演算し、その演算結果に応じてガス添加量制御手段374を操作する制御部(不図示)を設けるものとしてもよい。これにより、炭酸ガスGの添加量制御を自動化することが可能となる。
〔第5の実施態様〕
図6は、本発明の第5の実施態様のスラリー製造システムの構成を示す概略である。
第5の実施態様のスラリー製造システム1Eは、図6に示すように、第1の実施態様のスラリー製造システム1Aにおける炭酸ガス添加手段370が、予備撹拌タンク100、貯蔵タンク200及び処理タンク群500のうち、いずれか1つ以上に対しても、炭酸ガスGを添加するものである。なお、第1の実施態様の構成と同じものについては、説明を省略する。
本実施態様のスラリー製造システム1Eは、分散装置(図6では分散装置300A)以外のスラリー調製に係る工程においても、混合物MやスラリーSに炭酸ガスGを添加することで、スラリーSのpH上昇を抑制することが可能となる。これにより、調製物としてより高品質のスラリーSを得ることができるとともに、より一層塗工に適したスラリーSとして次の工程に供することが可能となる。
本実施態様における炭酸ガス添加手段370は、予備撹拌タンク100、貯蔵タンク200及び処理タンク群500のうち、いずれか1つ以上に対しても炭酸ガスGを添加することができるものであればよく、特に限定されない。
例えば、図6に示すように、炭酸ガス源372に対し、移送配管230と接続するガス供給配管371以外にも配管375a~375eを設け、この配管375a~375eを介して、予備撹拌タンク100、貯蔵タンク200及び処理タンク群500の全てに炭酸ガスGを添加することが挙げられる。さらに、緩衝タンク400に対しても、配管375fを介して炭酸ガスGを添加するものとしてもよい。これにより、炭酸ガスGが添加された箇所全てにおいて、粉体Pと水分の反応が抑制されるとともに、混合物M(スラリーS)の中和反応が進行し、pH上昇が抑制されるため、調製されるスラリーSの変質をより一層抑制することが可能となる。
また、本実施態様における炭酸ガス添加手段370は、図6に示すものに限定されない。他の例としては、複数の炭酸ガス源372を設けることや、炭酸ガスGを添加する箇所ごとにガス添加量制御手段を設けることなどが挙げられる。
また、本実施態様のスラリー製造システム1Eにおいて、炭酸ガス添加手段370によって炭酸ガスGを添加する箇所にpH測定手段を設けるものとしてもよい。例えば、処理タンク群500の各タンク501、502、503に対し、pH測定手段(pH計)を設けるものとしてもよい。これにより、処理タンク群500内に保管されたスラリーSのpHを常時監視することができ、炭酸ガス添加手段370によるスラリーSのpH上昇をより確実に抑制することが容易になるとともに、スラリーSの次工程(塗工工程)に高品質のスラリーSを供給することが可能となる。
なお、上述した実施態様は、分散装置、スラリー製造システム及び分散方法の一例を示すものである。本発明に係る分散装置、スラリー製造システム及び分散方法は、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る分散装置、スラリー製造システム及び分散方法を変形してもよい。
例えば、本発明のスラリー製造システム及び分散装置としては、本実施態様として示したスラリー製造システム1A~1E及び分散装置300B~300Dに係る各構成を、複数組み合わせるものとしてもよい。
なお、本実施態様の一つとして示したスラリー製造システム1A及び分散装置300Aにおいて説明したように、本実施態様のスラリー製造システム1B~1Dにおける構成の一部として示した各分散装置300B~300Dについても、独立した分散装置とすることができる。
また、本実施態様のスラリー製造システム1Eにおける分散装置300Aに代えて、本実施態様として示した各分散装置300B~300Dのいずれか一つ、あるいは組み合わせた構成を用いるものとしてもよい。
また、本発明のスラリー製造システム及び分散装置における炭酸ガス添加手段は、調製するスラリーの性質や、粉体及び液体の性質に応じて、炭酸ガス以外の気体を添加するものとしてその一部を利用するものとしてもよい。例えば、液体が大気中の水分を取り込み、硫化水素を発生させるようなスラリー調製においては、炭酸ガス以外の気体としてアルゴンガスなどの不活性ガスを添加する手段として炭酸ガス添加手段の一部(ガス供給配管等)を利用することなどが挙げられる。
本発明の分散装置、スラリー製造システム及び分散方法は、粉体と液体とを混合し、スラリーを調製する技術として利用することができる。特に、粉体の成分が大気中や液体中の水分と反応し、水酸化物を生成するようなスラリー調製や、液体の成分が大気中の水分を取り込み、硫化水素を発生させるようなスラリー調製など、粉体と液体との混合時に水分の影響を大きく受けるスラリー調製に係る技術として好適に利用することができる。
1A~1E…スラリー製造システム、100…予備撹拌タンク、101,103…垂直回転軸、102…撹拌羽根(小径)、104…撹拌羽根(大径)、110…ジャケット、120,130…ホッパ、140…排出口、150…ポンプ、160…移送配管、200…貯蔵タンク、201…垂直回転軸、202…撹拌羽根、210…ジャケット、220…ポンプ、230…移送配管、300A~300D…分散装置、310…容器、311…内壁面、312…円筒状空間、312a…上部空間、312b…下部空間、313…堰板、314…供給口、315…排出口、320…ジャケット、321…冷却水循環路、330…回転部材、331…外周面、332…円筒部材、333…孔、350…回転軸、351…モータ、352…支持部材、360…撹拌機、370…炭酸ガス添加手段、371…ガス供給配管、372…炭酸ガス源、373…微細気泡化手段、374…ガス添加量制御手段、375a~375f…配管、380…スラリーpH測定手段、381…循環ライン、382…循環ライン切替手段、390…混合物pH測定手段、400…緩衝タンク、410…導管、420…ポンプ、422…フィルタ、450…移送配管、451,452,453…分岐管、460…弁、470…真空ポンプ、480…配管、490…ポンプ、491…導管、500…処理タンク群、501,502,503…処理タンク、510…垂直回転軸、511…撹拌羽根、520…ジャケット、F…薄膜、G…炭酸ガス、L…液体、M…混合物、P…粉体、S…スラリー、V…空間

Claims (7)

  1. 粉体と液体とを混合する分散装置であって、
    前記粉体と前記液体の混合物が供給される容器と、
    前記容器内部に設けられた回転部材とを備え、
    前記回転部材を回転させることで前記混合物が遠心力によってドーナツ状の薄膜を形成し、前記薄膜内では前記回転部材と前記容器の壁面との間でずり応力が発生して、前記液体中に前記粉体を分散させる撹拌機と、
    前記撹拌機に供給する前記混合物に対し、炭酸ガスを添加する炭酸ガス添加手段と、を備えることを特徴とする、分散装置。
  2. 前記炭酸ガス添加手段は、気体を微細気泡化する微細気泡化手段を備えることを特徴とする、請求項1に記載の分散装置。
  3. 前記撹拌機で得られた調製物であるスラリーのpHを測定するスラリーpH測定手段と、
    前記スラリーを前記撹拌機に再度供給する循環ラインと、
    前記スラリーpH測定手段による測定結果に基づき、前記循環ラインへの切り替えを行う循環ライン切替手段と、を備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の分散装置。
  4. 前記撹拌機に供給する前記混合物のpHを測定する混合物pH測定手段を更に備え、
    前記炭酸ガス添加手段は、前記スラリーpH測定手段及び前記混合物pH測定手段による測定結果に基づき、炭酸ガスの添加量を制御するガス添加量制御手段を備えることを特徴とする、請求項3に記載の分散装置。
  5. 粉体と液体とを混合し、スラリーを製造するスラリー製造システムであって、
    前記粉体と前記液体とが投入され、予備撹拌を行う予備撹拌タンクと、
    前記予備撹拌タンクで予備撹拌されて得られた混合物が供給され、かつ前記混合物を撹拌しつつ貯蔵する貯蔵タンクと、
    前記貯蔵タンクから前記混合物が供給される請求項1~4のいずれか一項に記載の分散装置と、
    前記分散装置で得られた調製物であるスラリーが供給され、かつ前記スラリーを撹拌しつつ真空脱泡処理を行う処理タンクと、を備えることを特徴とする、スラリー製造システム。
  6. 前記分散装置における炭酸ガス添加手段は、前記予備撹拌タンク、前記貯蔵タンク、前記処理タンクのうち、いずれか1つ以上に対しても炭酸ガスを添加することを特徴とする、請求項5に記載のスラリー製造システム。
  7. 粉体と液体とを混合する分散方法であって、
    前記粉体と前記液体の混合物が供給される容器において、前記容器に設けられた回転部材を回転させることで前記混合物が遠心力によってドーナツ状の薄膜を形成し、前記薄膜内では前記回転部材と前記容器の壁面との間でずり応力が発生して、前記液体中に前記粉体を分散させる撹拌ステップと、
    前記撹拌ステップに供給する前記混合物に対し、炭酸ガスを添加する炭酸ガス添加ステップと、を含むことを特徴とする、分散方法。


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