JP2023107368A - 水栓部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】水分による耐食性を適切に高めることが可能な水栓部材を提供すること。【解決手段】水栓部材1は、銅合金製の母材本体2と、母材本体2の所定表面の全域に積層状に成膜される金属製の中間層3と、中間層3の表面の全域に積層状に成膜されるta-Cに分類されるDLC被膜層4と、を有し、母材本体2の所定表面の全域に、加圧成形による加工硬化により母材本体2の他部よりも硬度が高められた層状の加工硬化部Hが形成された構成とされる。【選択図】図2

Description

本発明は、水栓部材に関する。詳しくは、水分による耐食性が必要な環境下で使用することを目的とした水栓部材に関する。
特許文献1には、屋内水まわり環境で用いられる水まわり用部材の防汚性を高める技術が開示されている。具体的には、水まわり用部材の基材の表面にDLC(ダイヤモンドライクカーボン)被膜が形成されている。DLC被膜は、その含有される水素原子の量が所定量よりも多く、かつ、密度が所定値よりも小さくされることにより、防汚性および防汚耐久性の双方が高められた構成とされる。
特許第6641596号公報
特許文献1に記載の技術では、DLC被膜の密度が小さいことから、被膜表面についた水分が内部に浸透し、基材との間に電位腐食を発生させて被膜剥離を引き起こす懸念がある。そこで、この対策として、DLC被膜を厚膜化することが考えられるが、DLC被膜はその蒸着時に高い残留応力が発生することから、厚膜化により却って被膜剥離が発生しやすくなるため好ましくない。そこで、本発明は、水分による耐食性を適切に高めることが可能な水栓部材を提供する。
上記課題を解決するために、本発明の水栓部材は次の手段をとる。すなわち、本発明の第1の発明は、水栓部材であって、銅合金製の母材本体と、前記母材本体の所定表面の全域に積層状に成膜される金属製の中間層と、前記中間層の表面の全域に積層状に成膜されるta-Cに分類されるDLC被膜層と、を有し、前記母材本体の前記所定表面の全域に、加圧成形による加工硬化により前記母材本体の他部よりも硬度が高められた層状の加工硬化部が形成される水栓部材である。
ここで、DLCは、一般に、SP-3構造を含むアモルファスカーボンとして知られるものである。DLCは、そのSP-2結合-SP-3結合比率や水素含有量に基づいて、ta-C(テトラへドラルアモルファスカーボン)、a-C(アモルファスカーボン)、ta-C:H(水素化テトラへドラルアモルファスカーボン)およびa-C:H(水素化アモルファスカーボン)の4種類に分類される。このうち、ta-Cは、DLCの中では最もSP-3構造の比率が高く、最も高密度でかつ硬質な特徴を備えることが知られている。また、ta-Cは、耐摩耗性、絶縁性、耐熱性、および化学的非反応性等の外観維持性能にも優れる特徴を持つ。
第1の発明によれば、母材本体の所定表面上に金属製の中間層を介してta-Cに分類される高密度なDLC被膜層が成膜されることにより、水栓部材の部材表面からの水分の浸透を適切に防止することができる。具体的には、母材本体のDLC被膜層が成膜される所定表面の全域に加圧成形により加工硬化された加工硬化部が形成されることにより、詳細なメカニズムは不明であるが、その所定表面上に密着性確保のための中間層及び耐食被膜となるDLC被膜層をそれぞれ適切に成膜することができる。それにより、水栓部材の水分による耐食性を適切に高めることができる。なお、母材本体の所定表面の全域に加工硬化部を形成する加圧成形の加工法としては、ブラスト加工やバレル加工が挙げられる。
本発明の第2の発明は、上記第1の発明において、前記加工硬化部が形成される前記母材本体の前記所定表面が、1μm以上の凹深さから成る無数の微細な凹凸を備える粗面から成る、及び/又は、前記母材本体の前記所定表面から5μm以内の深さ位置でのビッカース硬さが5Hv以上とされる、水栓部材である。なお、母材本体の所定表面の硬さは、ナノインデンテーション法により測定され、測定された値をビッカース硬さへと換算している。
第2の発明によれば、上記のように形成される加工硬化部により、母材本体の所定表面上に中間層及びDLC被膜層をそれぞれより適切に成膜することができる。
本発明の第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、前記母材本体が、50%以上の銅を含有し、残部が、鉛、亜鉛、錫、鉄、ニッケル、及びアンチモンから成る銅合金とされる、水栓部材である。
第3の発明によれば、上記成分の銅合金から成る母材本体の水分による耐食性を、DLC被膜層の被膜によって適切に高めることができる。
本発明の実施形態に係る水栓部材を模式的に示す平面図である。 水栓部材の断面構造を模式的に示す断面図である。 水栓部材の製造方法を示す工程図である。
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
(水栓部材1)
始めに、本発明の実施形態に係る水栓部材1の構成について説明する。本実施形態に係る水栓部材1は、図1に示すように、屋内の水まわり環境で使用される水栓金具の本体部材として構成される。なお、水栓部材1は、水栓金具の配管であっても良い。水栓部材1は、図2に示すように、銅合金製の母材本体2と、母材本体2の表面全体に被膜された金属製の中間層3と、中間層3の表面全体に被膜されたDLC被膜層4と、を備える。
母材本体2は、銅を主成分とする銅合金から成る。具体的には、母材本体2は、50%以上の銅を含有し、残部が、鉛、亜鉛、錫、鉄、ニッケル、及びアンチモンから成る銅合金から成る。なお、母材本体2は、純銅、真鍮、青銅、白銅、あるいは洋白から成るものであってもよい。母材本体2の具体的な形状は特に限定されず、円管や角管等の管形状の他、円柱や角柱等の柱形状や球形状、あるいは箱形状や板形状から成るものであってもよい。
母材本体2は、図3に示すように、鋳造後に切削加工されて所定形状に形作られた後、表面全体がバフ研磨されて所定の表面粗さに仕上げられる(前工程S1)。その後、母材本体2は、鉛除去処理工程S2を経て加圧成形工程S3にかけられる。加圧成形工程S3では、母材本体2の表面全体にブラスト加工又はバレル加工が施され、母材本体2の表面全体に無数の微細な凹凸を備える粗面2Aが形成される(図2参照)。また、この加圧成形工程S3において、母材本体2は、ブラスト加工又はバレル加工に伴うピーニング作用により、粗面2Aを含む表面領域全体に、裏面領域(他部)よりも硬度が高められた層状の加工硬化部Hが形成される。
その後、母材本体2は、鏡面仕上げ処理工程S4にかけられて、粗面2A全体が凹凸形状を残したまま鏡のように磨かれた状態に仕上げられる。その後、母材本体2は、洗浄処理工程S5にかけられて、その表面に付着した汚れが取り除かれて洗浄される。更にその後、母材本体2は、中間層成膜工程S6にかけられて、その表面に金属製の中間層3が成膜される。その後、母材本体2は、DLC被膜層成膜工程S7にかけられて、上記成膜された中間層3の表面にta-Cに分類されるDLC被膜層4が更に成膜される。以下、各工程について詳細を説明する。
(加圧成形工程S3)
加圧成形工程S3では、母材本体2の表面にブラスト加工又はバレル加工を行い、母材本体2の表面全体に、1μm以上の凹深さを備える、最大高さ5~100μm、凹凸の平均間隔10~500μm、及び凹凸数10~100個/mm2の凹凸形状から成る粗面2Aを形成する。なお、母材本体2の表面の一部領域にのみ粗面2Aを形成したい場合には、その他の領域に図示しない樹脂製又はゴム製のシートから成るマスキング材を貼り付けてブラスト加工又はバレル加工を行えばよい。それにより、母材本体2のマスキング材を貼り付けた箇所以外の表面領域にのみ、粗面2Aを形成することができる。
ブラスト加工又はバレル加工により、母材本体2が複雑な形状の表面を有していても、表面全体に無数の微細な凹凸が並ぶ粗面2Aを形成することが可能となる。ブラスト加工に用いるブラスト装置としては、例えば、エアーを用いてメディア(研削材)を投射するエアーブラスト装置(コンプレッサ式、ブロア式等)や、メディアをモータの回転駆動によって投げ付けるショットブラスト装置が挙げられる。
ブラスト加工により形成する粗面2Aの深さや表面粗さは、メディアの粒径や形状、材質、投射圧、投射密度、投射時間等の調整によって適宜制御することができる。メディアの材質としては、例えば、ジルコニウムやアルミナ(白色、褐色)、炭化ケイ素(緑色、黒色)、硅砂、鉄、銅、ステンレス、亜鉛、アルミニウム、ガーネット、樹脂、ガラス等が挙げられる。また、メディアは、弾性母材に微細な砥粒をコートした構成からなるものであっても良い。
メディアの形状としては、例えば、球状または鋭角状のものが挙げられる。メディアの粒径としては、例えば、5μm~2mmのものが挙げられる。メディアの投射圧は、0.1~0.5MPaが好ましい。なお、ブラスト加工は、粗面2Aを適度な表面粗さに仕上げる観点から、粒径が600μmのジルコニウムから成るメディアを用いて、粗面2Aへの投射を投射圧0.3MPaで15秒間行うことが特に好ましい。
バレル加工は、母材本体2とメディア(研削材)とコンパウンド(溶液)とを槽に入れて掻き混ぜることで、その摩擦により母材本体2の表面に上記と同様の凹凸形状から成る粗面2Aを形成する加工法である。
バレル加工に用いる装置としては、槽内を掻き混ぜる方法により、流動式や回転式、遠心式、振動式等の種類が挙げられる。バレル加工により形成する粗面2Aの深さや表面粗さは、メディアの粒径や形状、材質、投入量、処理時間等の調整によって適宜制御することができる。また、バレル加工の装置の種類によっても適宜調節することができる。
(鏡面仕上げ処理工程S4)
鏡面仕上げ処理工程S4では、母材本体2の表面(粗面2A)全体に、更に粒径の小さなメディアを用いたブラスト加工又はバレル加工を行い、母材本体2の表面全体を鏡のように磨いた状態に仕上げる。この鏡面仕上げ処理により、先のバフ研磨や加圧成形(ブラスト加工又はバレル加工)によって母材本体2の表面に付いた細かな傷を除去する。
鏡面仕上げ処理工程S4では、母材本体2の表面(粗面2A)全体を2μm以下の均一な深さの研削量で研削する。したがって、先の加圧成形工程S3により母材本体2に粗面2Aを形成した後に、粗面2A全体に鏡面仕上げ処理を行っても、粗面2Aの凹凸模様が消えることはない。
鏡面仕上げ処理により仕上げられる母材本体2の表面粗さは、加圧成形工程S3の時と同様、メディアの種類や形状等の処理条件を変えることによって適宜制御することができる。なお、鏡面仕上げ処理は、母材本体2の粗面2Aを適度な表面粗さに仕上げる観点から、ブラスト加工により、粒径が0.5mmの母材の周囲に粒径が1μmのSDC:金属被覆合成ダイヤモンドの砥粒を担持させたメディアを用いて、粗面2Aへの投射を投射圧0.2MPaで5~15分間行うことが特に好ましい。
詳しくは、母材本体2が青銅から成る場合には、メディアの投射を5~15分間行い、母材本体2が黄銅から成る場合には、メディアの投射を8~15分間行うと良い。上記の方法で鏡面仕上げ処理工程S4を行うことで、母材本体2の温度上昇を抑えて鏡面仕上げを行うことができ、中間層3やDLC被膜層4を形成する前に行う処理工程として好適である。
(洗浄処理工程S5)
洗浄処理工程S5では、炭化水素系の洗浄液を用いた洗浄方法により、母材本体2の表面(粗面2A)に付着する汚れを取り除いて洗浄する。なお、洗浄処理工程S5は、水系洗浄液、準水系洗浄液、もしくは塩素・臭素・フッ素系の溶剤系洗浄液を用いた洗浄方法により、母材本体2の表面を洗浄する工程であっても良い。
洗浄処理工程S5では、先ず、粗洗浄として、水洗浄により母材本体2の表面に付着した研磨材を除去する処理を行う。次に、本洗浄として、エマルジョン洗浄により母材本体2の表面を洗浄する処理を行う。このエマルジョン洗浄では、超音波により水を振動させる超音波洗浄方法と、洗浄槽の内部を真空近くまで減圧したり腹圧したりするのを繰り返す真空洗浄方法と、が組み合わされて洗浄が行われる。
エマルジョン洗浄に超音波洗浄方法が組み合わされることで、母材本体2に付着している汚れを効果的に洗浄することが可能となる。また、エマルジョン洗浄に真空洗浄方法が組み合わされることで、大気圧下では洗浄できない止まり穴や袋穴の中まで洗浄液を行き渡らせて、母材本体2の細かい隙間まで効果的に洗浄することが可能となる。特に、真空洗浄方法と超音波洗浄方法とが組み合わされることで、大気圧下と比べて超音波の効果がより高くなるため、より効果的な洗浄を行うことが可能となる。なお、上記洗浄方法に加えて、あるいは上記洗浄方法に代えて、エマルジョン洗浄に脱気洗浄方法、回転洗浄方法、揺動洗浄方法、あるいはシャワー洗浄方法を組み合わせても良い。
脱気洗浄方法を組み合わせることで、超音波洗浄方法を用いた際の超音波の効きを更に高めることが可能となる。回転洗浄方法・揺動洗浄方法を組み合わせることで、洗浄液の流れを物理的に作り出して洗浄効果を更に高めることができる。また、超音波が母材本体2の表面に均等に当たりやすくなる。また、その他にも、洗浄液の流れを物理的に作り出す方法として、水を循環させたりバブリングさせたりする方法が挙げられる。また、シャワー洗浄方法を組み合わせることで、母材本体2に対して洗浄液を上からだけでなく、横や下からもかけて、適切な洗浄を行うことが可能となる。なお、その他の洗浄方法として、高圧ジェット洗浄方法、スプレー洗浄方法、あるいはブラシ洗浄方法等が挙げられる。
上記洗浄により、母材本体2の表面に付着していた油などの汚れは、洗浄液に溶解して、洗浄液全体へと拡散される。また、母材本体2に付着している汚れは、洗浄液に溶解して洗浄液へと置換される。次に、洗浄処理工程S5では、すすぎ洗浄として、母材本体2の表面をベーパー洗浄する処理を行う。ベーパー洗浄では、洗浄液を沸騰させた蒸気で洗浄することで、母材本体2の表面に残る汚れを更に高精度に洗浄する。
次に、洗浄処理工程S5では、乾燥処理として、母材本体2の表面に残る洗浄液を乾燥させる処理を行う。この乾燥処理は、いわゆる真空乾燥により行われる。真空乾燥は、洗浄槽の内部を真空近くまで減圧することで、洗浄液の沸点を急激に下げて、洗浄液を突沸乾燥させる公知の方法である。真空乾燥を用いることで、先のベーパー洗浄により加温された洗浄槽内の減圧によって洗浄液の突沸乾燥を効果的に促すことができ、母材本体2上にシミなどを残さないように適切に乾燥処理することができる。
なお、乾燥処理は、熱風乾燥あるいは吸引乾燥によって行われても良い。熱風乾燥は、熱風を洗浄槽の内部に送り込むことで、母材本体2の表面を乾燥させる公知の方法である。吸引乾燥は、圧縮された熱風を洗浄槽の内部に送り込むと同時に、吸引ブロアで反対側から引き抜くことで、母材本体2の表面を乾燥させる公知の方法である。熱風乾燥及び吸引乾燥は、真空乾燥が行えない水系洗浄液を用いた洗浄槽にも適用することが可能である。
(中間層成膜工程S6)
中間層成膜工程S6では、母材本体2の表面(粗面2A)全域に金属製の中間層3を直接成膜する。中間層3は、母材本体2とDLC被膜層4との間に介在して、これらの密着性を向上させるための層として機能する。中間層3には、ニッケル、チタン、クロム、タングステン、またはケイ素から成る群より選択される少なくとも1種の金属を用いることができる。
中間層3は、上記群より選択される1種の金属から成る単層構造から成るものであっても良く、2種以上の金属の積層構造から成るものであっても良い。なお、中間層3は、母材本体2及びDLC被膜層4との密着性に優れ、かつ耐食性に優れたチタンから成ることが特に好ましい。
中間層成膜工程S6では、PVD法(物理蒸着法)に分類されるスパッタリング法により、母材本体2の表面(粗面2A)上に中間層3を積層状に成膜する。中間層成膜工程S6では、先ず、アルゴンイオンを用いたイオンボンバードメント処理が行われ、母材本体2の表面に表出する酸化膜や水酸化膜などの不動態被膜が除去される。
次いで、スパッタリング法により、不活性ガス(アルゴンガス)の導入された真空中で、陰極ターゲット(成膜材料)にマイナスの電圧を印加してグロー放電を発生させ、ガスイオンを成膜材料に衝突させることで叩き出した成膜材料の粒子を母材本体2の表面(粗面2A)に付着・堆積させて緻密な薄膜を形成する。中間層3をスパッタリング法で成膜することで、母材本体2を液体や高温気体にさらすことなく母材本体2の表面上に緻密でかつ密着性の高い均一な厚さの薄膜を成膜することができる。
なお、中間層成膜工程S6は、スパッタリング法の他、アークイオンプレーティング法により、母材本体2の表面(粗面2A)上に中間層3を成膜する工程であっても良い。アークイオンプレーティング法は、真空中で成膜材料を蒸発させ、アーク放電によりイオン化(電離)させたプラス電荷の成膜材料を、マイナス電荷が印加された母材本体2の表面に引き寄せて成膜する公知の方法である。
(DLC被膜層成膜工程S7)
DLC被膜層成膜工程S7では、母材本体2の表面(粗面2A)上に成膜された中間層3の表面に、ta-Cに分類されるDLC被膜層4を直接成膜する。具体的には、DLC被膜層成膜工程S7では、PVD法(物理蒸着法)に分類される真空アーク蒸着法により、中間層3の表面に均一な厚さを持つDLC被膜層4を積層状に成膜する。DLC被膜層4は、上記真空アーク蒸着法により、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)の中では最もSP-3構造の比率が高く、最も高密度でかつ硬質な特徴を備えるとされるta-Cに分類される被膜として形成される。ta-Cは、SP-3構造の比率が50%~90%で、かつ、水素含有量が5質量%以下のアモルファスカーボンである。
詳しくは、DLC被膜層4は、真空アーク蒸着法の中でも特に表面の欠陥を少なく成膜できる手法として知られる公知のFCVA法(フィルタード陰極真空アーク法)により成膜される。FCVA法は、真空アーク蒸着法によりta-C被膜をワークに蒸着する際、陰極ターゲットの蒸発源である固体黒鉛から放出され得る電気的に中性な蒸発粒子であるドロップレット(SP-2構造あるいはそれに近い組成構造を持つマクロパーティカル)をプラズマの輸送中にプラズマからフィルタリングして、被膜に付着させにくくすることができる公知の手法である。
ドロップレットが被膜に付着されにくくなることで、被膜の表面を凹凸の少ない幾何学的均一性(平坦性)及び化学的均一性を担保した形に形成することができる。その結果、DLC被膜層4を、表面が平滑で、かつ、機械特性の低下しにくい形に形成することができる。DLC被膜層4は、上記FCVA法を用いて、表面の欠陥が20%以下となるように形成されることが好ましい。また、DLC被膜層4は、厚さが0.5~5.0μmで、かつ、被膜のビッカース硬さが1,500~5,000Hvに形成されることが好ましい。被膜の硬さは、被膜の厚みが数十nm~数十μmの場合には、ナノインデンテーション硬さで示されることがある。
DLC被膜層4は、中間層3を間に介して母材本体2の表面(粗面2A)上に設けられることで、母材本体2の表面上に密着性良く成膜される。DLC被膜層4の成膜により、水栓部材1の表面には、図2に示すように、母材本体2の粗面2Aの凹凸形状に依存した無数の微細な凹凸を備える高密度、硬質、かつ、高い耐摩耗性を備える粗面が形成される。DLC被膜層4及びその下層に形成される中間層3は、それぞれ、上述した真空アーク蒸着法やスパッタリング法により、母材本体2の粗面2A上に均一な厚さを持つ形に積層状に成膜される。したがって、母材本体2に陥凹する粗面2Aの凹形状を深く設定しなくても、水栓部材1の表面に輪郭が鮮明な凹凸模様の粗面を形成することができる。
上記中間層3及びDLC被膜層4は、母材本体2の加圧成形(ブラスト加工又はバレル加工)によるピーニング作用により加工硬化された層状の加工硬化部H上に成膜される構成とされる。そのようなことから、中間層3及びDLC被膜層4は、詳細なメカニズムは不明であるが、加工硬化部H上にそれぞれ大きな成形不具合を伴うことなく適切に成膜される構成とされる。その一因としては、次のようなことが推測される。
すなわち、母材本体2の加圧成形(ブラスト加工又はバレル加工)によるピーニング作用により、母材本体2の表面(粗面2A)に残っていた巣穴等の凹状の鋳造欠陥が潰されて、中間層3が母材本体2の表面上に満遍なく均一に成膜されるようになることが推測される。中間層3が母材本体2の表面上に満遍なく成膜されることにより、その表面に成膜されるDLC被膜層4も適切に成膜され、母材本体2の表面に耐食性の高い被膜を成膜することができる。
それにより、水栓部材1の水分による耐食性を適切に高めることができる。水栓部材1の耐食性は、JIS Z2371で規定されるCASS試験方法(塩水噴霧試験方法)により評価を行うことができる。母材本体2は、上記加圧成形(ブラスト加工又はバレル加工)により表面に加工硬化部Hが形成された構成により、表面から5μm以内の深さ位置でのビッカース硬さが5Hv以上となるように形成される。なお、上記母材本体2の硬さは、ナノインデンテーション法により測定され、測定された値をビッカース硬さへと換算している。
《その他の実施形態について》
以上、本発明の実施形態を1つの実施形態を用いて説明したが、本発明は、上記実施形態に示した構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲内で種々の変更、追加、及び削除が可能なものである。例えば、本発明の水栓部材は、水分による耐食性が必要な環境下で使用することを目的としたものであれば良く、屋内外の水まわり環境で使用される水栓金具のハンドル等、水栓金具の本体部材や配管以外の部材にも適用することができるものである。
1 水栓部材
2 母材本体
2A 粗面
3 中間層
4 DLC被膜層
S1 前工程
S2 鉛除去処理工程
S3 加圧成形工程
S4 鏡面仕上げ処理工程
S5 洗浄処理工程
S6 中間層成膜工程
S7 DLC被膜層成膜工程
H 加工硬化部

Claims (3)

  1. 水栓部材であって、
    銅合金製の母材本体と、前記母材本体の所定表面の全域に積層状に成膜される金属製の中間層と、前記中間層の表面の全域に積層状に成膜されるta-Cに分類されるDLC被膜層と、を有し、
    前記母材本体の前記所定表面の全域に、加圧成形による加工硬化により前記母材本体の他部よりも硬度が高められた層状の加工硬化部が形成される水栓部材。
  2. 前記加工硬化部が形成される前記母材本体の前記所定表面が、1μm以上の凹深さから成る無数の微細な凹凸を備える粗面から成る、及び/又は、前記母材本体の前記所定表面から5μm以内の深さ位置でのビッカース硬さが5Hv以上とされる、請求項1に記載の水栓部材。
  3. 前記母材本体が、50%以上の銅を含有し、残部が、鉛、亜鉛、錫、鉄、ニッケル、及びアンチモンから成る銅合金とされる、請求項1又は請求項2に記載の水栓部材。
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