JP2023106150A - 剥離シート及びその製造方法 - Google Patents

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泰紀 柄澤
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Atsuto Kajima
博明 臼井
Hiroaki Usui
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Abstract

【課題】第一に環境対策に貢献可能な新規な剥離シート及びその製造方法を提供する、第二に剥離シートの製造時から長期間経過した場合でも剥離力の変化が少ない新規な剥離シート及びその製造方法を提供する。【解決手段】基材と、該基材の少なくとも一方の表面側に、剥離層とを有する剥離シートであって、前記剥離層が、ラジカル重合性官能基を有するシリコーン化合物を蒸着重合して形成された層である、剥離シート及びその製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、基材と、蒸着重合して形成された剥離層とを有する剥離シート、及び、その製造方法に関する。
一般に、剥離シートは、例えば、紙、プラスチックフィルム、又はポリエチレンラミネート紙などの基材と、基材上に設けられた剥離層とを有する。
剥離シートは、例えば、粘着シート等が有する粘着剤層の保護用シート、樹脂シート作製用工程フィルム、セラミックグリーンシート成膜用工程フィルム、及び合成皮革製造用工程フィルム等として幅広く用いられている。
一般に、剥離シートの剥離層は、反応性化合物を含む剥離剤組成物を基材上に塗布して硬化させることにより形成される。剥離層を形成するための剥離剤組成物としては、例えば、シリコーン樹脂、シロキサン、又はシリコーンオイル等のシリコーン化合物を含むシリコーン系剥離剤組成物が広く用いられている。
また、近年、ドライプロセスを利用して、基材上に特定の機能層を形成する方法も検討されている。
例えば、特許文献1には、ガスバリア積層体を提供することを主目的として、原料として特定のビニル重合性モノマーを用い、これを基材上に真空中で成膜する成膜工程と、成膜されたモノマーに対し、活性照射線を照射して重合させ、樹脂薄膜層を形成する重合工程とを有することを特徴とする積層体の製造方法、及び、原料として特定のビニル重合性モノマーを用い、これを基材上に真空中でイオンを援用した蒸着法を用いて成膜・重合し、樹脂薄膜層を形成する樹脂薄膜層形成工程を有することを特徴とする積層体の製造方法が開示されている。
また、特許文献2には、イオン照射を併用したフッ素系モノマー材料の蒸着重合による反射防止機能を高めた機能膜の成膜に関する発明が開示されている。
特開2003-276115号公報 特許第5458277号公報
前述のとおり、シリコーン系剥離剤から形成される剥離層は、一般に、シリコーン系剥離剤組成物を基材上に塗布して硬化させることにより形成される。しかし、シリコーン系剥離剤組成物をそのまま基材上に塗布して塗膜を形成することが難しいため、通常、シリコーン系剥離剤組成物を大量の有機溶剤で希釈してから基材上に塗布している。
そのため、有機溶剤を使用せずに、シリコーン系の剥離層を有する剥離シートが製造できれば、有機溶剤の使用量低減や、使用した有機溶剤の廃棄処理等によって排出される二酸化炭素排出量を大きく低減することが可能となり、環境負荷の低減に有効である。
また、一般に剥離シートの剥離力の好ましい値は、適用される用途や積層する対象物の種類によって様々であり、例えば、剥離時の剥離操作を容易にするためには、より低い剥離力が望まれるが、一方で、積層される対象物の保持性(脱落耐性)が優先される場合には剥離力が高い方が好ましいため、剥離力が極端に低すぎず、適度な剥離力を有する剥離シートも要求されている。このように、剥離シートを用いて製造される製品を、その利用形態に合った剥離力に適合可能な剥離層を設計することが要求されている。
しかしながら、剥離シートの剥離力は、長期保管中に、低下したり又は増加したりする虞がある。前述のように剥離シートの用途毎に想定されている剥離力は異なるものであるが、剥離力の変化が大きい場合、実際に使用する際に想定とは異なった剥離力範囲になってしまう虞がある。例えば、粘着シートに用いる剥離シートの剥離力が、剥離シートの製造時から長期間経過した後に、想定していた剥離力よりも低くなってしまうと、粘着剤層を貼り合わせた後、剥離シートを剥離するまでの工程中に粘着剤層が剥離シートから浮いてしまうといった不具合に繋がる。
本発明は前記事情に鑑みなされたもので、第一に環境対策に貢献可能な新規な剥離シート及びその製造方法を提供すること、第二に剥離シートの製造時から長期間経過した場合でも剥離力の変化が小さい新規な剥離シート及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、基材と、該基材の少なくとも一方の表面側に、剥離層を有する剥離シートにおいて、前記剥離層を、ラジカル重合性官能基を有するシリコーン化合物を蒸着重合して形成することによって、前記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記[1]~[9]を提供する。
[1] 基材と、該基材の少なくとも一方の表面側に、剥離層とを有する剥離シートであって、前記剥離層が、ラジカル重合性官能基を有するシリコーン化合物を蒸着重合して形成された層である、剥離シート。
[2] 前記ラジカル重合性官能基を有するシリコーン化合物が、分子構造中にポリジメチルシロキサン骨格を有し、かつ、当該分子構造の少なくとも末端に前記ラジカル重合性官能基を有する化合物である、前記[1]に記載の基材の剥離シート。
[3] 前記ラジカル重合性官能基が、炭素-炭素二重結合を含む官能基である、前記[1]又は[2]に記載の剥離シート。
[4] 前記蒸着重合は、少なくとも下記工程(1)及び(2)を、この順で又は同時に行うものである、前記[1]~[3]のいずれか1つに記載の剥離シート。
工程(1):減圧した容器内に、前記ラジカル重合性官能基を有するシリコーン化合物の気体を供給して、前記基材の少なくとも一方の表面側に蒸着させる工程。
工程(2):減圧した容器内で、イオン照射及びエネルギー線照射から選ばれる少なくとも1種により、前記ラジカル重合性官能基を有するシリコーン化合物の重合を開始させる工程。
[5] 前記工程(2)のイオンが、アルゴン、ヘリウム、ネオン、窒素、酸素、又は二酸化炭素をイオン化したものである、前記[4]に記載の剥離シート。
[6] 前記工程(2)のイオン照射量を、前記基材上に蒸着したラジカル重合性官能基を有するシリコーン化合物の蒸着面積1cmあたり、イオン照射量が2nA/cm以上となる条件で行う、前記[4]又は[5]に記載の剥離シート。
[7] 前記基材が、樹脂シートである、前記[1]~[6]のいずれか1つに記載の剥離シート。
[8] 前記ラジカル重合性官能基を有するシリコーン化合物の23℃における粘度が、100mPa・s以下である、前記[1]~[7]のいずれか1つに記載の剥離シート。
[9] 前記[1]~[8]のいずれか1つに記載の剥離シートの製造方法であって、少なくとも、前記ラジカル重合性官能基を有するシリコーン化合物を蒸着重合して、前記剥離層を形成する工程を有する、剥離シートの製造方法。
本発明によれば、第一に環境対策に貢献可能な新規な剥離シート及びその製造方法を提供でき、第二に剥離シートの製造時から長期間経過した場合でも剥離力の変化が小さい新規な剥離シート及びその製造方法を提供できる。
以下、本発明について実施形態を用いて詳細に説明する。
本明細書において、好ましい数値範囲(例えば、含有量等の範囲)について、段階的に記載された下限値及び上限値は、それぞれ独立して組み合わせることができる。例えば、「好ましくは10~90、より好ましくは30~60」という記載から、「好ましい下限値(10)」と「より好ましい上限値(60)」とを組み合わせて、「10~60」とすることもできる。同様に、同一事項に対する「好ましくは10以上、より好ましくは30以上」の記載と「好ましくは90以下、より好ましくは60以下」という記載から、「好ましい下限値(10)」と「より好ましい上限値(60)」とを組み合わせて、「10以上60以下」とすることもできる。
また、本明細書において、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」又は「メタクリル」の一方若しくは双方を意味する用語として使用する。同様に、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」又は「メタクリレート」の一方若しくは双方を意味する用語として使用する。
[剥離シート]
本発明の剥離シートは、基材と、該基材の少なくとも一方の表面側に、剥離層とを有する剥離シートであって、前記剥離層が、ラジカル重合性官能基を有するシリコーン化合物を蒸着重合して形成された層である。
前記剥離シートが、前記剥離層を有することで、環境対策に有効であり、また、剥離力の変化が小さい剥離シートを得ることができる。その理由は、次のとおりと考えられる。
まず、従来は、一般的に、シリコーン系剥離剤から形成される剥離層は、シリコーン系剥離剤組成物を基材上に塗布して硬化させることによって形成されている。溶液塗工を行う場合、通常、ポリマーを主成分として塗工適性を最適化するための粘度調整が行われる。主成分が低分子量のモノマーでは粘度調整をすることが困難であり、さらに、モノマーを無溶剤で塗布する場合、塗工適性の調整手段がほぼ皆無である。
また、従来は、剥離層を形成するため、主剤となるシリコーン成分に加えて、更に、溶剤や各種添加剤が用いられており、剥離層内には低分子量成分や未反応成分が残存し易い。これら剥離層中に残存する未反応成分や添加剤は、剥離シートの剥離力の経時変化や剥離層から被着体への未反応成分等の移行量の増加に繋がる要因となる。
それに対して、本発明で用いられる剥離層は、ラジカル重合性官能基を有するシリコーン化合物を蒸着重合して形成された層であることから、剥離層を形成する際に溶剤を使用する必要がなく、また、前述した各種添加剤を用いなくても、剥離層を形成することが可能である。そして、蒸着重合の場合、ラジカル重合性官能基を有するシリコーン化合物が基材に蒸着された後、速やかに重合が開始されることから、剥離層内に未反応成分等が残存し難い。
したがって、本発明の剥離シートは、製造時に大量の溶剤を使用する必要がないため環境対策に貢献可能であり、また、剥離力の経時変化や被着体への未反応成分等の移行が生じ難くなり、前述した本発明の優れた効果が奏されると考えられる。
<基材>
前記基材としては、例えば、紙基材、樹脂フィルム等を用いることができ、平滑性に優れ、剥離層の厚さが薄い場合でも剥離層が形成されない箇所が生じ難く、良好な剥離性能を発揮し易くなる観点から、樹脂フィルムが好ましい。
前記紙基材としては、例えば、上質紙、クレーコート紙、キャストコート紙、クラフト紙等の紙類、これらの紙類にポリエチレン樹脂等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙、合成紙等の紙材シート等が挙げられる。
前記樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム;ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルム;ポリイミドフィルム;ポリエーテルイミドフィルム;ポリアミドフィルム;ポリカーボネートフィルム;ポリアセテートフィルム;エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)フィルム;エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体フィルム;エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム;シクロオレフィンポリマーフィルム;塩化ビニルフィルム;ポリウレタンフィルム;ポリフェニレンスルフィドフィルム;セロハン;等を用いることができる。これらの中でも、平滑性が良好であり、剥離層の厚さが薄い場合でも剥離層が形成されない箇所が生じ難く、良好な剥離性能を発揮し易くなる観点、及び、熱安定性等の観点から、ポリエステルフィルムが好ましい。ポリエステルフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートを主たる構成成分とするポリエステルフィルムが好ましい。ここで、「主たる構成成分」とは、当該フィルムを構成する成分中、最も含有量が多い成分を指す。前記ポリエステルフィルムとしては、平滑性が良好であり、剥離層の厚さが薄い場合でも剥離層が形成されない箇所が生じ難く、良好な剥離性能を発揮し易くなる観点、及び、機械的強度等の観点から、ポリエチレンテレフタレートフィルムがより好ましい。
また、樹脂フィルムは、前述の樹脂を1種のみ有する樹脂フィルムであってもよいし、2種以上有するものであってもよい。例えば、1つの樹脂フィルムからなる単層フィルムでもよく、複数の樹脂フィルムが積層した複層フィルムであってもよい。
また、樹脂フィルムは、公知のフィラー、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、有機滑剤、触媒等を含有してもよい。また、樹脂フィルムは、透明なものであっても、所望により着色等されていてもよい。
また、本発明の一態様において、紙基材又は樹脂フィルムと、後述する剥離層との間に、更に、紙基材又は樹脂フィルム以外のその他の層を設けてもよい。この場合、当該その他の層も基材を構成する一部となる。
また、基材の少なくとも1つの表面に予めスパッタリング、コロナ放電、火炎、下塗処理、紫外線照射、電子線照射、酸化等のエッチング処理等の表面処理を必要に応じて施してもよい。
基材は、単層であってもよいし、同種又は異種の2層以上の多層であってもよい。
基材の厚さは、特に制限はないが、強度、剛性等の観点から、好ましくは10~500μm、より好ましくは15~300μm、更に好ましくは20~200μmである。
ここで、「基材の厚さ」とは、基材全体の厚さを意味し、例えば、前述した2層以上積層した基材を用いる場合、当該基材を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
<剥離層>
前記剥離層は、ラジカル重合性官能基を有するシリコーン化合物を蒸着重合して形成された層である。すなわち、ラジカル重合性官能基を有するシリコーン化合物(以下、単に「シリコーンモノマー」ともいう。)が蒸着重合によって重合された重合物から形成されている。
前記シリコーンモノマーは、分子中にシロキサン結合(-Si-O-Si-)を有し、かつ、少なくとも1つのラジカル重合性官能基を有する化合物である。
前記シリコーンモノマーは、前記ラジカル重合性官能基を、分子構造の側鎖に有してもよく、分子構造の末端に有していてもよく、少なくとも分子構造の末端に有することが好ましい。分子構造の末端に有する場合、分子の片末端のみに有してもよく、両末端に有してもよい。
また、前記シリコーンモノマーとしては、分子構造中にポリジメチルシロキサン骨格を有することが好ましい。
したがって、前記シリコーンモノマーとしては、分子構造中にポリジメチルシロキサン骨格を有し、かつ、当該分子構造の側鎖又は末端の少なくとも1箇所に前記ラジカル重合性官能基を有する化合物であることが好ましく、当該ポリジメチルシロキサン骨格を有する分子構造の少なくとも末端に前記ラジカル重合性官能基を有する化合物であることがより好ましく、当該ポリジメチルシロキサン骨格を有する分子構造の末端にのみ前記ラジカル重合性官能基を有する化合物であることが更に好ましい。前記ラジカル重合性官能基を、前記ポリジメチルシロキサン骨格を有する分子構造の末端に有する場合、当該分子構造の片末端のみに有してもよく、両末端に有してもよい。
また、前記シリコーンモノマーとしては、分子構造中にポリジメチルシロキサン骨格を有し、かつ、当該ポリジメチルシロキサン骨格の側鎖又は末端の少なくとも1箇所に前記ラジカル重合性官能基を有する化合物であることが好ましく、当該ポリジメチルシロキサン骨格の少なくとも末端に前記ラジカル重合性官能基を有する化合物であることがより好ましく、当該ポリジメチルシロキサン骨格の末端にのみ前記ラジカル重合性官能基を有する化合物であることが更に好ましい。前記ラジカル重合性官能基を、前記ポリジメチルシロキサン骨格の末端に有する場合、当該骨格の片末端のみに有してもよく、両末端に有してもよい。
前記シリコーンモノマーが有する前記ラジカル重合性官能基は、炭素-炭素二重結合を含む官能基であることが好ましい。炭素-炭素二重結合を含む官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等が挙げられる。
前記ラジカル重合性官能基が、前記シリコーンモノマー中に複数存在する場合、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。
また、前記シリコーンモノマーとしては、蒸着重合の条件下で、加熱により熱分解を起こさずに気体にすることが可能であることが好ましい。
前記シリコーンモノマーとしては、蒸発又は気化させ易い観点から、23℃における粘度が、好ましくは100mPa・s以下、より好ましくは80mPa・s以下、更に好ましくは50mPa・s以下である。
当該粘度の値は、実施例に記載の方法を用いて測定される値である。
前記シリコーンモノマーとしては市販品を用いることもでき、当該市販品の具体例としては、例えば、「X-22-174ASX」、「X-22-174BX」、「X-22-2404」、「KF-2012」(いずれも、片末端型メタクリル変性シリコーンオイル、信越化学工業株式会社製);「X-22-164」、「X-22-164AS」、「X-22-164A」、「X-22-164B」、「X-22-164C」(いずれも、両末端型メタクリル変性シリコーンオイル、信越化学工業株式会社製);「DMS-R05」、「DMS-R11」、「DMS-R18」、「DMS-U21」、「UMS-182」、「UMS-992」、「RTT-1011」、「UTT-1012」(いずれも、アヅマックス株式会社製);「FM-0711」、「FM-0721」、「FM-0701T」、「FM-7711」、「FM-7721」、「FM-7725」(いずれも、JNC株式会社製「サイラプレーン(登録商標)」)等が挙げられる。
前記シリコーンモノマーは、1種単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
また、本発明の一態様において、前記剥離層は、実質的に前記シリコーンモノマーのみから形成された層であってもよい。前記剥離層は、実質的にシリコーンモノマーのみから形成された層であるとは、剥離層を形成する成分の総量100質量%中、シリコーンモノマー以外の他の成分の合計含有量が、10.0質量%以下であり、好ましくは5.0質量%以下であり、より好ましくは1.0質量以下であり、更に好ましくは0.5質量%以下であり、より更に好ましくは0.1質量%以下であることを意味する。
(蒸着重合)
前記剥離層は、前述のとおり、蒸着重合して形成された層である。
前記蒸着重合としては、少なくとも前記シリコーンモノマーの気体を供給する工程と、当該シリコーンモノマーの重合を開始させる工程とを有する重合方法であればよく、物理蒸着(PVD)による重合法と、化学気相蒸着(CVD)による重合法のいずれの方法を用いてもよい。
例えば、真空蒸着法、イオン化蒸着法、イオンプレーティング法、イオンアシスト蒸着法、プラズマ重合法、プラズマCVD法等の蒸着法を利用した重合方法等を用いることができる。
本発明の一態様における前記蒸着重合としては、イオンアシスト蒸着法を用いることが好ましい。
また、本発明の一態様における前記蒸着重合としては、例えば、減圧容器内に、前記シリコーンモノマーの気体を供給し、前記シリコーンモノマーを、前記基材の少なくとも一方の表面側に蒸着させた後、又は、蒸着させたと同時に、イオン照射及びエネルギー線照射から選ばれる少なくとも1種により、前記ラジカル重合性官能基を有するシリコーン化合物の重合を開始させる重合方法がより好ましい。具体的には、少なくとも下記工程(1)及び(2)を、この順で又は同時に行うものである蒸着重合であることがより好ましい。
工程(1):減圧した容器内に、前記ラジカル重合性官能基を有するシリコーン化合物の気体を供給して、前記基材の少なくとも一方の表面側に蒸着させる工程。
工程(2):減圧した容器内で、イオン照射及びエネルギー線照射から選ばれる少なくとも1種により、前記ラジカル重合性官能基を有するシリコーン化合物の重合を開始させる工程。
〔工程(1)〕
工程(1)では、減圧した容器内に、前記ラジカル重合性官能基を有するシリコーン化合物の気体を供給して、前記基材の少なくとも一方の表面側に蒸着させる。
工程(1)において、前記シリコーンモノマーの気体は、例えば、チャンバー等の減圧可能な容器(以下、単に「減圧容器」ともいう。)外に設けられたるつぼ等の容器(以下、単に「原料容器」ともいう。)内に導入された室温で液体若しくは固体であるシリコーンモノマーを蒸発又は気化させたものを、原料供給管等を用いて、減圧容器内に供給してもよい。または、減圧容器内に設けられた原料容器内に導入されている室温で液体若しくは固体であるシリコーンモノマーを蒸発又は気化させ、直接、若しくは、原料供給管等を介して、減圧容器内に導入してもよい。
前記減圧容器は、蒸着重合で用いられる公知の真空容器を用いることができる。
また、前記原料容器の開口部、若しくは、前記原料容器に連結している原料供給管の出口を、シリコーンモノマーを蒸着させる基材の表面側に向けることで、前記シリコーンモノマーの放出方向を制御することもできる。すなわち、当該方法を用いることで、基材表面上へのシリコーンモノマーの蒸着部分を制御することもできる。また、前記原料供給管には、シリコーンモノマーの排出量を制御するためのバルブ機構等を備えていてもよい。
また、前記シリコーンモノマーの蒸発又は気化は、例えば、加熱等によって行うことができる。また、前記シリコーンモノマーの加熱方法も、特に制限はなく、公知の加熱方法を用いることができる。前記加熱温度としては、用いるシリコーンモノマーによって、適宜、設定可能であるが、前記シリコーンモノマーが熱分解しない温度であることが好ましい。また、例えば、前記シリコーンモノマーの蒸発速度を速めて所定の膜厚とするまでの時間を短縮できる観点から、好ましくは180℃以上、より好ましくは185℃以上、更に好ましくは190℃以上である。一方、得られる剥離層の基材への密着性や、剥離層からのシリコーン移行量をより低減する観点から、好ましくは220℃以下、より好ましくは215℃以下、更に好ましくは210℃以下である。
また、工程(1)において、減圧した容器内の圧力(真空度)としては、前記剥離層を蒸着重合で形成できる限り、特に制限はないが、例えば、減圧容器内に存在する、剥離層を形成する原料以外の吸着ガス成分が剥離層に混入する確率が低くなり、より良質な剥離層が得られ易くなる観点から、好ましくは0.6×10-5Torr以下、より好ましくは0.5×10-5Torr以下、更に好ましくは0.4×10-5Torr以下である。
〔工程(2)〕
工程(2)では、減圧した容器内で、イオン照射及びエネルギー線照射から選ばれる少なくとも1種により、前記ラジカル重合性官能基を有するシリコーン化合物の重合を開始させる。
前記シリコーンモノマーに対して、イオン及びエネルギー線から選ばれる少なくとも1種が作用することにより、前記シリコーンモノマー分子内のラジカル重合性官能基が活性化され、前記シリコーンモノマーの重合が開始される。
前記イオンとしては、前記シリコーンモノマーの重合が開始できるものであれば、特に制限はないが、例えば、アルゴン、ヘリウム、ネオン、窒素、酸素、又は二酸化炭素をイオン化したものが挙げられる。また、本発明の効果をより奏し易くする観点からは、アルゴン、ヘリウム及びネオンからなる群より選ばれる1種以上のイオンを用いることが好ましい。
前記イオンとしては、公知のイオン発生装置を用い、前記各分子の気体をイオン化したものを用いることができる。
例えば、外側にタングステンフィラメントからなる陰極を、内側にグリッド状の陽極を配置し、イオンの原料となる気体を内部に充填できる電子発生装置等が挙げられる。陰極のタングステンフィラメントに通電加熱して熱電子を発生させ、当該熱電子が前記グリッド状の陽極へ向かうように電圧を印加することで、前記熱電子を前記気体に衝突させることによって、前記気体をイオン化することができる。
また、例えば、前記各気体のうちプラズマ化できる原料を、プラズマ発生装置等により電離させてプラズマを発生させ、対象となるイオン(例えば、アルゴンプラズマから、アルゴンイオン(Ar))を取り出したものを用いてもよい。
前述の装置で発生させたイオンは、後述するようにイオン加速電圧を印加することで、前記基材表面に照射してもよく、また、公知のイオン銃やプラズマ銃といった装置から照射したイオンを用いることもできる。
また、前記エネルギー線としては、前記シリコーンモノマーのラジカル重合が開始できるものであれば、特に制限はないが、例えば、公知のγ線、電子線、紫外線等が挙げられる。
また、前記イオン照射及びエネルギー線照射は、イオン発生装置又はエネルギー線発生装置のイオン照射部又はエネルギー線照射部を、シリコーンモノマーを蒸着させる基材の表面側、すなわち、前記基材の表面側に蒸着したラジカル重合性官能基を有するシリコーン化合物の蒸着面に向けて、前記イオン又はエネルギーを照射することが好ましい。
また、剥離層を形成するシリコーンモノマーの特性等によって、工程(2)におけるイオン照射条件は、適宜選択することができるが、本発明の一態様として、前記イオン照射は、イオンに対し電圧(イオン加速電圧)を印加して、イオンを加速させて行うことが好ましい。当該イオン加速電圧は、本発明の効果を奏する限り特に制限はないが、より剥離力の変化が小さく、シリコーン成分の移行量が少ない剥離シートが得られ易くなる観点から、好ましくは0.10kV以上、より好ましくは0.20kV以上、更に好ましくは0.30kV以上、より更に好ましくは0.35kV以上であり、そして、より剥離力の変化が小さい剥離シートが得られ易くなる観点から、好ましくは1.50kV以下、より好ましくは1.20kV以下、更に好ましくは0.80kV以下、より更に好ましくは0.65kV以下である。
また、前記イオン加速電圧を印加する方法は、特に制限はないが、例えば、前記シリコーンモノマーが蒸着する前記基材の表面側に向けて、加速されたイオンがより照射され易くなる観点から、前記基材を保持するための基板ホルダーに対して電圧を印加することによって行うことが好ましい。基材を保持するための基板ホルダーは、前記減圧容器内に設けられ、電圧が印加可能な基板ホルダーを用いることが好ましく、更に、温度調節が可能な基板ホルダーを用いることもできる。また、当該基板ホルダーは、固定式であってもよく、又は、連続製造可能なように、回転ドラムやコンベア等のように一定速度で移動するものであってもよい。連続製造時には、当該基板上に、例えば、長尺の樹脂シート(原反)等を保持しながら運転することで、長尺シートを製造してもよい。
また、本発明の一態様において、シリコーン成分の移行量が少ない剥離シートが得られ易くなる観点から、前記工程(2)のイオン照射は、前記基材上に蒸着したラジカル重合性官能基を有するシリコーン化合物の蒸着面積1cmあたり、イオン照射量が2nA/cm以上となる条件で行うことが好ましい。同様の観点から、前記イオン照射量は、より好ましくは10nA/cm以上、更に好ましくは30nA/cm以上、より更に好ましくは40nA/cm以上である。また、副反応の抑制の観点から、前記イオン照射量は、好ましくは300nA/cm以下、より好ましくは250nA/cm以下、更に好ましくは200nA/cm以下、より更に好ましくは150nA/cm以下である。イオン照射量は変動するため、イオン照射量の変動範囲の最大値を、前記「イオン照射量」とした。
また、工程(2)において、イオン照射を行うため、イオン源となる前記気体を減圧した容器内に導入する場合、減圧した容器内の圧力(真空度)としては、前記剥離層を蒸着重合で形成できる限り、特に制限はないが、例えば、減圧容器を減圧するための設備への負荷を低減する観点から、好ましくは1.6×10-5Torr以下、より好ましくは1.5×10-5Torr以下、更に好ましくは1.4×10-5Torr以下である。また、当該圧力の下限値の範囲は、特に制限はないが、剥離層をより形成し易くする観点から、好ましくは工程(1)における圧力以上であり、より好ましくは0.8×10-5Torr以上である。
また、剥離層を形成するシリコーンモノマーの特性等によって、工程(2)におけるエネルギー線の照度、光量等のエネルギー線照射条件などは、適宜、選択することができる。
また、より剥離力の変化が小さく、シリコーン成分の移行量が少ない剥離シートが得られ易くなる観点から、前記工程(1)及び(2)を同時に行うことがより好ましい。
前記工程(1)及び(2)を同時に行うことにより、基材の表面側にシリコーンモノマーが蒸着すると同時にイオン等と衝突して重合が開始されるため、得られる剥離層中に未反応のラジカル重合性官能基及びシリコーンモノマーが残存し難くなると考えられる。また、イオン等のエネルギーは、イオン等が衝突する蒸着膜の表面で最も運動エネルギーが伝わるため、シリコーンモノマーが活性化され重合反応がより進み易くなる。一方で、蒸着膜の深部(基材側に近い部分)に進むほど、二次、三次衝突した分子の衝突エネルギーとなるために、シリコーンモノマーの反応に供されるエネルギー量が少なくなる。そのため、工程(1)及び(2)を同時に行うことで、よりイオン等の衝突エネルギーを有効に利用でき、シリコーンモノマーの反応が進み易くなることから、得られる剥離層内に未反応のシリコーンモノマーが、より一層残存し難くなると考えられる。
したがって、工程(1)及び(2)を同時に行うことで、より剥離力の変化が小さく、シリコーン成分移行量の少ない剥離シートが得られ易くなると考えられる。
ここで、前記剥離層については、前述のとおり、その重合条件等の相違により、得られる剥離層中のシリコーンモノマーの重合反応の進行状況にも差が生じると考えられ、その結果、得られる剥離シートの剥離力の変化率やシリコーン成分の移行量に差が生じると考えられる。そのため、非常に微視的な観点からは、得られる剥離層の構造にも相違が生じているものと考えられる。しかしながら、得られた剥離層について、その剥離層の構造中の欠陥(未反応部位)の存在等を評価し、その微視的な構造の相違等から区別することは非常に困難であると言える。また、得られる剥離層が数百nmレベルの薄膜である場合、当該層内の分子中の未反応箇所等を明確に分析・特定することは、現時点では、現実的に困難であるという事情が存在する。したがって、前記剥離層を、具体的な化学構造等によって直接特定することが、現時点の技術においては不可能又は非実際的であるため、前記剥離層について、その製造方法によって特定しているという事情がある。
前記剥離層の厚さは、本発明の効果が奏される限り特に制限はないが、例えば、より安定した剥離力が得易くなる観点から、好ましくは1nm以上、より好ましくは5nm以上、更に好ましくは10nm以上である。また、前記剥離層の厚さは、例えば、シリコーン成分の移行量をより低減し易くする観点から、好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm以下、更に好ましくは150nm以下である。
一般に剥離シートの剥離力の好ましい値は、適用される用途や積層する対象物の種類によってさまざまであり、剥離時の剥離操作がスムーズになるようより低い剥離力が好ましい場合があったり、脱落耐性を向上させるためにより高い剥離力が好ましい場合があったりする。そのため、本発明の剥離シートにおいても同様に、本発明の効果が奏される限り特に制限はない。
また、本発明の一態様として、後述する実施例に記載の方法により算出される剥離力の変化率は、好ましくは±30%以内、より好ましくは±25%以内、更に好ましくは±20%以内である。
前記剥離シートは、本発明の効果が奏される限り特に制限はないが、例えば、剥離シートからのシリコーン成分の移行量を低減でき、剥離シートを設ける被着体の汚染を防止する観点等から、実施例に記載の方法を用いて測定されるケイ素原子比率が、好ましくは5.0atom%以下、より好ましくは3.0atom%以下、更に好ましくは1.5atom%以下、より更に好ましくは1.0atom%以下である。
また、前記工程(1)及び(2)において減圧して使用される容器についても、本発明の効果が奏される限り特に制限はなく、公知の蒸着重合で使用される真空容器等を用いることができる。また、前記減圧容器には、前述した各種装置の他、必要に応じて、シリコーンモノマーの蒸着やイオン等の基材表面上への照射を遮断するためのシャッター、蒸着膜や剥離層の厚さを測定するための膜厚モニター、圧力モニター、ニュートラライザー(中和器)、シリコーンモノマートラップ、排気設備等のその他の設備を備えていてもよい。
[剥離シートの製造方法]
前記剥離シートの製造方法は、少なくとも、前記ラジカル重合性官能基を有するシリコーン化合物を蒸着重合して、前記剥離層を形成する工程を有する。
当該製造方法で用いることができる前記基材、前記ラジカル重合性官能基を有するシリコーン化合物、前記剥離層、前記蒸着重合については、それぞれ、本発明の一態様である前記剥離シートの欄の対応する項目で前述した内容と同様であり、その好適な態様も同様である。
したがって、本発明の一態様において、前記ラジカル重合性官能基を有するシリコーン化合物を蒸着重合して、前記剥離層を形成する工程は、前記ラジカル重合性官能基を有するシリコーン化合物をイオンアシスト蒸着法を用いて蒸着重合して、前記剥離層を形成する工程であることが好ましく、前記蒸着重合として少なくとも下記工程(1)及び(2)をこの順で又は同時に行って、前記剥離層を形成する工程であることがより好ましい。
工程(1):減圧した容器内で、前記ラジカル重合性官能基を有するシリコーン化合物の気体を供給して、前記基材の少なくとも一方の表面側に蒸着させる工程。
工程(2):減圧した容器内で、イオン照射及びエネルギー線照射から選ばれる少なくとも1種により、前記ラジカル重合性官能基を有するシリコーン化合物の重合を開始させる工程。
前記工程(1)及び工程(2)については、それぞれ、本発明の一態様である前記剥離シートの欄の対応する項目で前述した内容と同様であり、その好適な態様も同様である。
[剥離シートの用途]
前記剥離シートは、例えば、粘着シート等の各種粘着体の保護シートとして使用可能であり、例えば、基材と、基材の一面に設けられる粘着剤層とを備える粘着シートの粘着剤層側の面に貼付して使用することができる。また、各種樹脂シート、セラミックグリーンシート、合成皮革、各種複合材料等を作製するときの工程フィルムとしても使用可能である。工程フィルムとして使用する場合には、剥離シートの剥離層側の面に樹脂、セラミックスラリー等を流延、塗布等して形成した各種のシート材料を剥離シートから剥離する工程にて使用することが想定される。
また、前記剥離シートは、剥離層からのシリコーン成分の移行量が少ないため、シリコーン成分による汚染を低減することが望まれる用途、例えば、高い残留接着率の粘着力が必要となる粘着ラベル用の剥離シート、絶縁性のシリコーン成分の移行や低分子シロキサンガスの揮発を嫌う電子部品用ラベルの剥離シート等の用途にも好適に用いることができる。
本発明について、以下の実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例における物性値は、以下の方法により測定した値である。
[シリコーン化合物の粘度]
シリコーン化合物の23℃における粘度は、振動式粘度計(株式会社セコニック製、製品名「FVM80A-ST」)を用いて、測定温度23℃で測定した。
[基材の厚さ]
各実施例及び各比較例で用いた剥離シートにおける基材の厚さは、株式会社テクロック製の定圧厚さ測定器〔型番:「PG-02J」、標準規格:JIS K6783:1994、JIS Z1702:1994、JIS Z1709:1995に準拠〕を用いて測定した。
[剥離層の厚さ]
各実施例及び各比較例で用いた剥離シートにおける剥離層の厚さは、次の方法により測定した。
剥離シートの厚さは分光エリプソメーター(ジェー・エー・ウーラム・ジャパン株式会社製、製品名「分光エリプソメトリーM-2000」)を用いて測定した。
[剥離シートの製造]
以下に示す方法によって剥離シートを製造した。
[実施例1]
基材として、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ケミカル株式会社製、製品名「ダイアホイル(登録商標)T100」)を使用し、当該基材を減圧容器であるチャンバー内の基板ホルダー上に保持した。また、前記チャンバー内に設けられた原料容器である、るつぼ内にシリコーンモノマー化合物(信越化学工業株式会社製、製品名「X-22-164B」(ポリジメチルシロキサン骨格を有し、両末端にメタクリロイル基を有する、両末端型メタクリル変性シリコーンオイル、23℃粘度:61mPa・s))を供給した。その後、前記チャンバー内の真空度を0.3×10-5Torrまで減圧した。
次に、前記るつぼを200℃に加熱して、当該るつぼ内に供給した前記シリコーンモノマー化合物を蒸発させた。蒸発したシリコーンモノマー化合物は、前記るつぼから前記基材の一方の表面上に向けて放出されるようになっており、この操作により、前記基材表面上に蒸着した。
一方、前記チャンバー内に設けられ、外側にタングステンフィラメントからなる陰極を、内側にグリッド状の陽極を配置し、内部はアルゴンガスで充満されるような電子発生装置を用いて、まず、前記チャンバー内の真空度が1.3×10-5Torrになるようにアルゴンガスを導入した。その後、前記タングステンフィラメントを加熱し、加熱したタングステンフィラメントから発生した熱電子が前記グリッド状の陽極へ向かうように電圧を印加した。この操作でアルゴンガスをイオン化した。
さらに、所定電圧で前記基材を保持する基板ホルダーを印加することで、前記基材表面に蒸着される前記シリコーンモノマー化合物に対するイオン照射量を制御することができる。基板電圧(イオン加速電圧)と蒸着面積1cmあたりのイオン照射量は下記表1の通りに実施した。
前記基材表面上への前記シリコーンモノマー化合物の蒸着と、イオン照射とを同時に行うことで、PET基材表面上で前記シリコーンモノマー化合物を重合させて厚さが100nmとなるように剥離層を形成し、基材と剥離層とを有する剥離シートを得た。
[実施例2、3、5及び6]
それぞれ、イオン加速電圧とイオン照射量を、下記表1に記載した通りに変更した以外は、実施例1と同様の手順で各剥離シートを作製した。
[実施例4]
シリコーンモノマー化合物を、製品名「X-22-174ASX」(信越化学工業株式会社製、ポリジメチルシロキサン骨格を有し、片末端にメタクリロイル基を有する、片末端型メタクリル変性シリコーンオイル、23℃粘度:10mPa・s)へ変更した以外は、実施例1と同様の手順で剥離シートを作製した。
[実施例7]
イオン照射量を、下記表1に記載した通りに変更した以外は、実施例4と同様の手順で剥離シートを作製した。
[比較例1]
シリコーン樹脂(ダウ・東レ株式会社製、製品名「DOWSIL(登録商標)LTC-770」)100質量部と、重剥離添加剤(ダウ・東レ株式会社製、製品名「DOWSIL(登録商標)SD7292」)30質量部とを混ぜて、トルエンで希釈した後、白金系触媒(ダウ・東レ株式会社製、製品名「DOWSIL(登録商標)SRX-212P Catalyst」)2質量部を加えて、塗工液を得た。その後、ポリエチレンテレフタレートフィルム基材(三菱ケミカル株式会社製、製品名「ダイアホイル(登録商標)T100」)の一方の表面上に、マイヤーバーで乾燥後の膜厚が0.1g/mとなるように塗布し、加熱乾燥して剥離シートを作製した。
[比較例2]
シリコーン樹脂(ダウ・東レ株式会社製、製品名「DOWSIL(登録商標)LTC-770」)100質量部と、重剥離添加剤(ダウ・東レ株式会社製、製品名「DOWSIL(登録商標)SD7292」)40質量部を混合し、トルエンで希釈した後、白金系触媒(ダウ・東レ株式会社製、製品名「DOWSIL(登録商標)SRX-212P Catalyst」)2質量部を加えて、塗工液を得た。その後、ポリエチレンテレフタレートフィルム基材(三菱ケミカル株式会社製、製品名「ダイアホイル(登録商標)T100」)の一方の表面上に、マイヤーバーで乾燥後の膜厚が0.1g/mとなるように塗布し、加熱乾燥して剥離シートを作製した。
[比較例3]
剥離剤組成物として、シリコーンモノマー化合物(信越化学工業株式会社製、製品名「X-22-164B」)100質量部、及び光重合開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製、製品名「イルガキュア184」)3質量部を溶剤希釈せずに混合して塗布液を用意した。
該塗布液を厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム基材(三菱ケミカル株式会社製、製品名「ダイアホイル(登録商標)T100」)にマイヤーバーで、厚み1μmとなるよう塗布した。
塗布膜に対しUV照射を行なおうとしたが、塗布直後から多数のピンホールが塗布膜に発生したため、サンプル作成を断念し、評価を中止した。
[剥離力評価]
実施例と比較例に記載の方法で得られた剥離シートを、剥離シートの作製後、23℃50%RH環境下に1~3日間保管したもの(標準環境保管サンプル)と、70℃に設定したオーブンに24時間保管したもの(高温保管サンプル)を評価に用いた。標準環境保管サンプルは、剥離シートの作製後1~3日以内に、また、高温保管サンプルは、オーブンから取り出し、23℃50%RH環境下に1日静置した後に、下記の方法を用いて剥離力を測定した。
剥離シートの剥離層面と、粘着テープ(日東電工株式会社製、「31Bテープ」)の粘着剤面が接するように2kgローラーを1往復させて貼り合わせた後、23℃50%RH環境下で30分静置した。剥離力をJIS-Z0237:2009に準拠して、引張試験機を用いて粘着テープのテープ側を180°方向に、300mm/minの剥離速度で剥離した際の剥離強度(mN/20mm)を剥離力として測定した。
下記の計算式から算出される、剥離力の変化率が、絶対値で30%以下である場合に良好であると判断した。下記の計算式中、「H」は高温保管サンプルの剥離強度(mN/20mm)、「S」は標準環境保管サンプルの剥離力の値(mN/20mm)を表す。

・剥離力変化率(%)=〔(H-S)/S〕×100

ここで、上記の高温条件下でのサンプルの保管は、所謂、加速試験に相当するものである。したがって、上記剥離力変化率が小さいほど(0%に近いほど)、剥離シートの製造時から、長期間経過した場合でも、当該剥離シートの剥離力の変化が少ないことを表す。
[シリコーン成分移行量の評価]
実施例と比較例に記載の方法で得られた剥離シートの剥離層面と、粘着テープ(日東電工株式会社製、「31Bテープ」)の粘着剤面が接するように2kgローラーを1往復させて貼り合わせた後、23℃50%RH環境下で30分静置した。その後、引張試験機を用いて粘着テープのテープ側を180°方向に、300mm/minの剥離速度で剥離した。その後、剥離層面と接していた粘着剤面に対して、X線光電子分光分析法(XPS)で測定されるケイ素原子(Si)、炭素原子(C)、酸素原子(O)のカウント量に基づき、下記の式によりケイ素原子比率を算出した。下記の計算式中、Siはケイ素原子量、Cは炭素原子量、Oは酸素原子量を表す。
算出されたケイ素原子比率(Si比率)から、シリコーン成分の移行の程度を評価した。結果を表1に示す。Si比率が高いほど、シリコーン成分の移行量が多いことを表す。

・ケイ素原子比率(atom%)=[Si/(C+O+Si)]×100
表1に示すとおり、実施例1~実施例7の蒸着重合により形成された剥離層を有する剥離シートは、標準保管サンプルと高温保管サンプルとから算出される剥離力の変化率が小さいことが確認された。更に、剥離層から粘着剤層へのシリコーン成分の移行量が少ないことが確認された。
一方、比較例1又は2の剥離シートを用いた場合、剥離力の変化率が大きく、また、剥離層から粘着剤層へのシリコーン成分の移行量も多いことが確認された。また、比較例3では、前述のとおり、剥離シートを作成することができないことが確認された。

Claims (9)

  1. 基材と、該基材の少なくとも一方の表面側に、剥離層とを有する剥離シートであって、前記剥離層が、ラジカル重合性官能基を有するシリコーン化合物を蒸着重合して形成された層である、剥離シート。
  2. 前記ラジカル重合性官能基を有するシリコーン化合物が、分子構造中にポリジメチルシロキサン骨格を有し、かつ、当該分子構造の少なくとも末端に前記ラジカル重合性官能基を有する化合物である、請求項1に記載の剥離シート。
  3. 前記ラジカル重合性官能基が、炭素-炭素二重結合を含む官能基である、請求項1又は2に記載の剥離シート。
  4. 前記蒸着重合は、少なくとも下記工程(1)及び(2)を、この順で又は同時に行うものである、請求項1~3のいずれか1項に記載の剥離シート。
    工程(1):減圧した容器内に、前記ラジカル重合性官能基を有するシリコーン化合物の気体を供給して、前記基材の少なくとも一方の表面側に蒸着させる工程。
    工程(2):減圧した容器内で、イオン照射及びエネルギー線照射から選ばれる少なくとも1種により、前記ラジカル重合性官能基を有するシリコーン化合物の重合を開始させる工程。
  5. 前記工程(2)のイオンが、アルゴン、ヘリウム、ネオン、窒素、酸素、又は二酸化炭素をイオン化したものである、請求項4に記載の剥離シート。
  6. 前記工程(2)のイオン照射量を、前記基材上に蒸着したラジカル重合性官能基を有するシリコーン化合物の蒸着面積1cmあたり、イオン照射量が2nA/cm以上となる条件で行う、請求項4又は5に記載の剥離シート。
  7. 前記基材が、樹脂シートである、請求項1~6のいずれか1項に記載の剥離シート。
  8. 前記ラジカル重合性官能基を有するシリコーン化合物の23℃における粘度が、100mPa・s以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載の剥離シート。
  9. 請求項1~8のいずれか1項に記載の剥離シートの製造方法であって、少なくとも、前記ラジカル重合性官能基を有するシリコーン化合物を蒸着重合して、前記剥離層を形成する工程を有する、剥離シートの製造方法。
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