JP2023102466A - 制振構造体及び該制振構造体を備える自動車部品 - Google Patents
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Abstract
【課題】制振構造体の質量を増加させずに、より低周波の振動を容易に抑制できる制振構造体を提供する。【解決手段】本発明の制振構造体は、くさび形状部を有する制振部材と、弾性部材と、を備える。そして、上記くさび形状部が、振動が入射される側から伝搬する自由端までの厚さが下記式(1)を満たして変化し、上記弾性部材は、上記制振部材よりもヤング率が小さな板状の部材であり、その一部が上記くさび形状部の自由端よりも突出して固定されていることとしたため、上記弾性部材の突出長さによって弾性部材のバネ定数を変更でき、容易に低周波の振動を抑制できる。h(x)=ε・xn+h0・・・式(1)、但し、式(1)中、x:自由端からの距離(mm)、h(x):自由端からの距離xにおける厚さ(mm)、h0:自由端の厚さ(mm)、ε:正の定数、n:1以上の実数【選択図】図2
Description
本発明は、制振構造体及び該制振構造体を備える自動車部品に係り、更に詳細には、音響ブラックホール効果を利用した制振構造体及び該制振構造体を備える自動車部品に関する。
振動や騒音の対策として、音響ブラックホール効果を利用した制振構造体を用いることが知られている。
この制振構造体は、板厚が先端に向けて減少するくさび形の構造を有し、この制振構造体を伝搬する振動(波)は、くさび形の先端に向かうにつれて振幅が大きくなって伝搬速度が遅くなるので、板厚が0(零)になる楔形の先端では、伝搬速度が0になり、振動が反射されないことを利用している。
しかしながら、先端の厚さが0になるくさび形の制振構造体を実際に製造することはできず、振動の反射を完全になくすことはできないので、くさび形の先端にその振動を抑える部材が設けられる。
非特許文献1には、くさび形の先端に、弾性体を介して質量体を載せることで、ダイナミックダンパ効果により、上記質量体がくさび形先端部の代わりに振動するので、くさび形の先端部の振動を抑えられることが開示されている。
VIBRATION CONTROL OF VARIABLE THICKNESS PLATES WITH EMBEDDED ACOUSTIC BLACK HOLES AND DYNAMIC VIBRATION ABSORBERS X. Jia, ASME 2015 Noise Control and Acoustics Division Conference at Inter-Noise 2015
しかしながら、非特許文献1に記載の制振構造体は、弾性体が制振構造体の振幅方向に伸縮することで振動を抑えるものであり、低周波の振動抑制が困難である。
つまり、ダイナミックダンパは、くさび形の固有振動数周辺での共振現象を抑制するものであるので、低周波の振動を抑制するにはダイナミックダンパの共振周波数(f)を小さくする必要があり、ダイナミックダンパの共振周波数(f)は、下記式(A)で与えられる。
したがって、ダイナミックダンパの弾性体を変えない場合は、バネ定数(k)が変わらないので、弾性体の上に設けられた質量体の質量(m)を大きくする必要があり、制振構造体の質量が増加してしまう。
また、質量体の質量(m)を一定にする場合は、バネ定数(k)を小さくするために大幅な設計変更を余儀なくされる。
すなわち、伸縮する弾性体のバネ定数(k)は、弾性体の形状と該弾性体を構成する材料の弾性係数によって決まり、弾性係数は材料特有の物性値であるので、弾性体の形状と材料とを変えずに、弾性体のバネ定数を変えることはできない。
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、制振構造体の質量を増加させずに、より低周波の振動を容易に抑制できる制振構造体を提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、くさび形の先端部設けた弾性部材を、上記くさび形状部の自由端よりも突出させることにより、その突出長さによって弾性部材のバネ定数を変更でき、容易に低周波の振動を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の制振構造体は、くさび形状部を有する制振部材と、弾性部材と、を備える。
そして、上記くさび形状部が、振動が入射される側から伝搬する自由端までの厚さが下記式(1)を満たして変化し、
上記弾性部材は、上記制振部材よりもヤング率が小さな板状の部材であり、その一部が上記くさび形状部の自由端よりも突出して固定されていることを特徴とする。
h(x) = ε・xn + h0 ・・・式(1)
但し、式(1)中、
x : 自由端からの距離(mm)
h(x): 自由端からの距離xにおける厚さ(mm)
h0 : 自由端の厚さ(mm)
ε : 正の定数
n : 1以上の実数
そして、上記くさび形状部が、振動が入射される側から伝搬する自由端までの厚さが下記式(1)を満たして変化し、
上記弾性部材は、上記制振部材よりもヤング率が小さな板状の部材であり、その一部が上記くさび形状部の自由端よりも突出して固定されていることを特徴とする。
h(x) = ε・xn + h0 ・・・式(1)
但し、式(1)中、
x : 自由端からの距離(mm)
h(x): 自由端からの距離xにおける厚さ(mm)
h0 : 自由端の厚さ(mm)
ε : 正の定数
n : 1以上の実数
本発明によれば、くさび形状部の自由端から突出した弾性部材を設けることとしたため、弾性部材の突出長さによって弾性部材のバネ定数を変更でき、低周波の振動を容易に抑制できる制振構造体を提供することができる。
本発明の制振構造体について詳細に説明する。
本発明の制振構造体は、制振部材と弾性部材とを備える。
上記制振部材は、音響ブラックホール効果を利用して振動を抑制するものであり、厚さが漸減するくさび形状部と、必要に応じて厚さが一定の厚肉部を有する。
上記弾性部材は、上記制振部材よりもヤング率が小さな板状の部材であり、その一部が上記くさび形状部の自由端よりも突出して固定されている。
本発明の制振構造体は、制振部材と弾性部材とを備える。
上記制振部材は、音響ブラックホール効果を利用して振動を抑制するものであり、厚さが漸減するくさび形状部と、必要に応じて厚さが一定の厚肉部を有する。
上記弾性部材は、上記制振部材よりもヤング率が小さな板状の部材であり、その一部が上記くさび形状部の自由端よりも突出して固定されている。
上記制振部材のくさび形状部は、振動が入射される側から伝搬する自由端までの厚さが下記式(1)を満たして変化する。
h(x) = ε・xn + h0 ・・・式(1)
但し、式(1)中、
x : 自由端からの距離(mm)
h(x): 自由端からの距離xにおける厚さ(mm)
h0 : 自由端の厚さ(mm)
ε : 正の定数
n : 1以上の実数
h(x) = ε・xn + h0 ・・・式(1)
但し、式(1)中、
x : 自由端からの距離(mm)
h(x): 自由端からの距離xにおける厚さ(mm)
h0 : 自由端の厚さ(mm)
ε : 正の定数
n : 1以上の実数
上記式(1)を満たして変化するくさび形状部に入射した振動(波)は、図1に示すように、くさび形状部の自由端に向かって伝搬し、自由端に向かうにつれて振幅が大きくなって伝搬速度が遅くなるので、音響ブラックホール効果によって振動を抑制することができる。
しかし、音響ブラックホールで減衰できる周波数の下限閾値はくさび形状の長さの二乗に反比例し、厚肉側の板厚に比例することから、低周波の振動を減衰させるにはくさび形状部の長さを延ばす、つまり音響ブラックホールの設置スペースを増大する必要が生じるので、制振部材で減衰可能な周波数は、2000~3000Hz以上の高周波数帯が主体であり、低周波の振動を減衰させることは容易にはできない。
本発明の制振構造体は、上記くさび形状部の自由端先端部に、板状の弾性部材が上記自由端よりも突出して設けられている。
この自由端よりも突出した板状の弾性部材は、図2に示すように、振動の入射によって撓んで振動し、自由端より突出した部分の弾性部材がダイナミックダンパの質量に相当することとなるので、弾性部材がダイナミックダンパとして作用してくさび形状部の自由端の変位を抑える。
ここで、弾性部材が撓んで変形する場合の曲げ応力由来のバネ定数(k2)は、下記式(2)によって与えられる。
曲げ応力由来のバネ定数(k2) = 3EI/L3 ・・・式(2)
但し、式(2)中、Eは縦弾性率(ヤング率)、Iは断面2次モーメント、Lは突出長さを表す。
曲げ応力由来のバネ定数(k2) = 3EI/L3 ・・・式(2)
但し、式(2)中、Eは縦弾性率(ヤング率)、Iは断面2次モーメント、Lは突出長さを表す。
また、ダイナミックダンパの共振周波数(f)は、上記のように、バネ定数(本発明の場合は、曲げ応力由来のバネ定数(k2))と質量(m)とによって決まる。
したがって、本発明の制振構造体は、弾性部材を入射振動の振幅方向に伸縮させるのではなく撓ませるため、ダイナミックダンパのバネ定数が曲げ応力由来のバネ定数(k2)となるので、自由端からの突出長さ(L)によって、弾性部材のバネ定数(k2)を変更できる。
このように、本発明の制振構造体は、自由端からの突出長さ(L)を長くすることによって、共振周波数(f)を低周波側に移動させることができ、弾性部材の縦弾性率(E)や断面2次モーメント(I)、換言すれば、弾性部材の材質や形状を変更する必要がないので、質量を増加させずに低周波の振動を抑制することができる。
上記弾性部材の突出長さは、弾性部材のヤング率などにもよるが、板厚が一定な平板である場合は、その長さの1/3以上が上記自由端よりも突出していることで、より低周波の振動を抑制できる。
上記弾性部材は、制振部材よりもヤング率が小さければ特に制限はないが、そのヤング率は、1×10-3~3×10-3(GPa)であることが好ましく、このような材料としては、例えば、ゴム系の材料を挙げることができる。
また、上記制振部材としては、金属や樹脂などを使用することができ、制振部材のくさび形状部の長さ、すなわち、制振部材の板厚が減少し始める箇所から自由端までの長さは、入力された振動を先端部に集中させることができればよく、制振部材の厚肉部の厚さにもよるが、20~2000mmであることが好ましい。また、上記制振部材の厚肉部の厚さは、0.5~50mmであることが好ましい。
上記制振部材のくさび形状部は、上記式(1)を満たして自由端に向けて板厚が徐々に減少していればよく、一方の主面と他方の主面の両方が、平面で形成されていても曲面で形成されていてもよく、また、一方の主面が平面で形成され、他方の主面が曲面で形成されていてもよい。
上記制振部材の全体形状としては、くさび形状部を有していれば特に制限はなく、正方形や長方形などの多角形状の他、円形や楕円形などを挙げることができる。
上記弾性部材を、上記制振部材に固定する方法としては、弾性部材制振部材の自由端先端部に重ね合わせ、これらを接着剤などによって接着方法や、ボルトとナットなどで締結する方法などを挙げることができる。
本発明の制振構造体は、タイヤやエンジンなどからの振動を防止することができるので自動車部品に好適に使用することができ、自動車部品としては、例えば、自動車のサスペンションや自動車のパネルなどを挙げることができる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
[比較例1]
図3に示す形状をした、熱間圧延鋼板(SS400、ヤング率;206GPa)製の制振部材の自由端先端部に、厚さが一定である平板状の天然ゴム(ヤング率:2×10-3GPa)製の弾性部材を、制振部材の自由端から突出させずにその全体をかさねて貼り合わせることで制振構造体を作製した。
図3に示す形状をした、熱間圧延鋼板(SS400、ヤング率;206GPa)製の制振部材の自由端先端部に、厚さが一定である平板状の天然ゴム(ヤング率:2×10-3GPa)製の弾性部材を、制振部材の自由端から突出させずにその全体をかさねて貼り合わせることで制振構造体を作製した。
制振部材の寸法は、長さ(LV)300mm、幅(WV)50mmで、くさび形状部の長さ(LV’)が200mm、自由端の板厚(TV)が0.2mm、厚肉部の板厚(TV’)が5mmであり、くさび形状部の板厚の変化h(x)が、(4.8/190)x2+0.2である。また、弾性部材の寸法は、長さ(LE)30mm、幅(WE)50mm 厚さ(TE)が1.2mmである。
[比較例2]
比較例1の弾性部材上に、さらに、図3に示す形状の、長さ(LM)20mm、幅(WM)50mm、厚さ(TM)0.58mmの金属プレート(冷間圧延鋼板、SPCC、ヤング率;206GPa)を貼り合わせて制振構造体を作製した。
比較例1の弾性部材上に、さらに、図3に示す形状の、長さ(LM)20mm、幅(WM)50mm、厚さ(TM)0.58mmの金属プレート(冷間圧延鋼板、SPCC、ヤング率;206GPa)を貼り合わせて制振構造体を作製した。
[実施例1]
弾性部材を制振部材の自由端から5mm突出させて貼り合わせる他は、比較例1と同様にして制振構造体を作製した。
弾性部材を制振部材の自由端から5mm突出させて貼り合わせる他は、比較例1と同様にして制振構造体を作製した。
[実施例2]
弾性部材を制振部材の自由端から10mm突出させて貼り合わせる他は、比較例1と同様にして制振構造体を作製した。
弾性部材を制振部材の自由端から10mm突出させて貼り合わせる他は、比較例1と同様にして制振構造体を作製した。
[実施例3]
弾性部材を制振部材の自由端から20mm突出させて貼り合わせる他は、比較例1と同様にして制振構造体を作製した。
弾性部材を制振部材の自由端から20mm突出させて貼り合わせる他は、比較例1と同様にして制振構造体を作製した。
<評価>
上記比較例及び実施例の制振構造体をくさび形状部部の先端を下方に向け、ゴム紐で支柱に吊り下げて自由支持とし、制振構造体の上端から30mm、側端から10mmの位置に加速度センサ(PCB社製 356A01)を取り付けた。
上記比較例及び実施例の制振構造体をくさび形状部部の先端を下方に向け、ゴム紐で支柱に吊り下げて自由支持とし、制振構造体の上端から30mm、側端から10mmの位置に加速度センサ(PCB社製 356A01)を取り付けた。
加速度センサ付近を、インパルスハンマ(PCB社製 086C03(ハードチップ))で打撃し、インパルスハンマ(入力)の力と加速度センサ(応答)の加速度をFFTアナライザ(シーメンス株式会社製 SCADAS III)に取り込んでフーリエ変換を行い、加速度/力の伝達関数(イナータンス)を取得した。打撃を5回繰り返し平均してイナータンスを測定した。
比較例1,2の結果を実施例3と合わせて図4に示す。また、実施例1~3の結果を図5に示す。
比較例1,2の結果を実施例3と合わせて図4に示す。また、実施例1~3の結果を図5に示す。
図4のグラフから、実施例3は、1~1000Hzの全域にわたり、比較例1,2と比べて振動を減衰できていることが分かる。特に、100Hz付近の低周波域において、比較例2よりも減衰効果が大きいことが確認された。
図5のグラフから、100Hz付近の低周波域においては、突出長さが20mmである実施例3の減衰効果が最も大きく、800Hz付近の周波数域においては、突出長さが5mmである実施例1の減衰効果が最も大きいことから、突出長さを調節することで、減衰させる周波数域を変更できることが分かる。
1 制振部材
11 くさび形状部
12 自由端
13 厚肉部
2 弾性部材
21 突出長さ
11 くさび形状部
12 自由端
13 厚肉部
2 弾性部材
21 突出長さ
Claims (3)
- くさび形状部を有する制振部材と、弾性部材と、を備える制振構造体であって、
上記くさび形状部が、振動が入射される側から伝搬する自由端までの厚さが下記式(1)を満たして変化し、
上記弾性部材は、上記制振部材よりもヤング率が小さな板状の部材であり、その一部が上記くさび形状部の自由端よりも突出して固定されていることを特徴とする制振構造体。
h(x) = ε・xn + h0 ・・・式(1)
但し、式(1)中、
x : 自由端からの距離(mm)
h(x): 自由端からの距離xにおける厚さ(mm)
h0 : 自由端の厚さ(mm)
ε : 正の定数
n : 1以上の実数 - 上記弾性部材は、その長さの1/3以上が上記自由端よりも突出していることを特徴とする請求項1に記載の制振構造体。
- 上記請求項1又は2に記載の制振構造体を備えることを特徴とする自動車部品。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2022002962A JP2023102466A (ja) | 2022-01-12 | 2022-01-12 | 制振構造体及び該制振構造体を備える自動車部品 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2022002962A JP2023102466A (ja) | 2022-01-12 | 2022-01-12 | 制振構造体及び該制振構造体を備える自動車部品 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2023102466A true JP2023102466A (ja) | 2023-07-25 |
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ID=87377226
Family Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2022002962A Pending JP2023102466A (ja) | 2022-01-12 | 2022-01-12 | 制振構造体及び該制振構造体を備える自動車部品 |
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- 2022-01-12 JP JP2022002962A patent/JP2023102466A/ja active Pending
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