JP2012047190A - 振動体用の弾性ダンパ - Google Patents

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【課題】500〜1600Hzを含む広帯域において、チューニングなしでレールや構造物などの振動体の振動を低減することができる振動体用の弾性ダンパを提供する。
【解決手段】一端11が自由端であり振動可能な弾性材料からなるダンパ部材12と、減衰材料からなる減衰部材14とからなる。ダンパ部材12は、振動する振動体1に連結された連結部分12aと断面変化部分12bとからなる。断面変化部分12bは、連結部分12aに一体的に連結され、振動体1の振動方向に直交する方向に延び、自由端11より外側の仮想点からの距離x(x>0)における直径又は厚さh(x)がh(x)=εx(εは正の定数、nは1以上の実数)である。また、減衰部材14は、自由端11を含む断面変化部分12bに取り付けられている。
【選択図】図1

Description

本発明は、レールや構造物など振動体の振動を低減する振動体用の弾性ダンパに関する。
振動する機械装置の振動を減衰させて低減する手段として、ダンパ装置が広く知られている。また、ダンパ装置は、粘弾性ダンパ、粘性ダンパ、摩擦ダンパ、マスダンパ、慣性力ダンパ、等に大別することができる。
このうちマスダンパは、質量体の振動を逆利用して、機械装置の振動を消去するものであり、他のダンパ装置と比較して構造が簡単である利点がある。
マスダンパの一種として、音響ブラックホール効果(Acoustic Black Hole Effect)を利用した弾性くさびダンパ(Elastic Wedge damper)が例えば特許文献1に開示されている。
弾性くさび(Elastic Wedge)とは、くさび形の弾性体を意味する。曲げ振動について、弾性くさびの厚さが次第に薄くなると振動波の速度を遅くなり、厚さがゼロ(0)になると振動波の速度がゼロになるので振動波は反射されない。すなわち、弾性くさびは、「音のブラックホール」として機能し、その結果、振動エネルギは厚さがゼロの端部に集まるのでそのエネルギを減衰しやすくなる特徴を有している。
また、本発明と関連する減衰手段が、例えば非特許文献1に開示されている。
飯田雅宣、「転動音・構造物音を予測する」、RRR 2010.7
特開2010−144868号公報、「弾性くさびダンパ」
鉄道車両がレール上を走行する際、レール、車輪、まくらぎ、軌道の下にある高架橋などから高いレベルの騒音が発生する。
非特許文献1に開示されたデータによれば、鉄道車両による騒音は、250Hz以下の周波数域ではまくらぎ、500〜1600Hzの周波数域ではレール、2500Hz以上の周波数域では車輪が、それぞれ主要な音源になっている。
従って、レールからの騒音を低減するためには、500〜1600Hzの振動を低減する必要があり、鉄道車両による騒音全体を低減するためには、250〜2500Hz以上の振動を低減する必要がある。
従来、レールの振動を低減する手段として、例えばレールマスダンパーが用いられていた。しかし、かかるレールマスダンパーは、効果がある振動周波数範囲が狭いため、そのチューニングが必要であり、かつ効果がある振動方向も限られている問題点があった。
本発明は、上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、500〜1600Hzを含む広帯域において、チューニングなしでレールや構造物などの振動体の振動を低減することができる振動体用の弾性ダンパを提供することにある。
本発明によれば、一端が自由端であり振動可能な弾性材料からなるダンパ部材と、減衰材料からなる減衰部材とからなり、
前記ダンパ部材は、振動する振動体に連結された連結部分と、
該連結部分に一体的に連結され前記振動体の振動方向に直交する方向に延び、前記自由端より外側の仮想点からの距離x(x>0)における直径又は厚さh(x)がh(x)=εx(εは正の定数、nは1以上の実数)である断面変化部分とからなり、
前記減衰部材は、前記自由端を含む断面変化部分に取り付けられている、ことを特徴とする振動体用の弾性ダンパが提供される。
本発明の好ましい実施形態によれば、前記断面変化部分は、振動体の振動方向に直交する軸線に対して対称な棒状部材、又は前記軸線を含む面に対して対称な板状部材である。
また前記連結部分と断面変化部分との境界面において、それぞれの断面形状が同一である、ことが好ましい。
上述した本発明の構成によれば、断面変化部分は、自由端より外側の仮想点からの距離x(x>0)における直径又は厚さh(x)がh(x)=εx(εは正の定数、nは1以上の実数)であるので、音響ブラックホール効果により、この部分における振動波の反射をゼロ(0)にできる。
さらに、振動エネルギは断面変化部分の極細部分又は薄肉部分に集中するが、減衰部材が、前記断面変化部分に取り付けられているので、減衰部材により極細部分又は薄肉部分を効果的に減衰することができる。
すなわち、振動体(例えばレール)における振動エネルギは、本発明の断面変化部分に転送され、その振動エネルギは断面変化部分の極細部分又は薄肉部分に集まり、減衰部材で吸収される。
特に、断面変化部分が、振動体の振動方向に直交する軸線に対して対称な棒状部材である場合、棒状部材は前記軸線に直交する任意の方向で同一形状であるので、上下方向及び水平方向の両方向で効果がある。
従って、本発明による弾性ダンパは、500〜1600Hzを含む広帯域において、チューニングなしでレールや構造物などの振動体の振動を低減することができることが、後述する解析結果により確認された。
本発明による振動体用の弾性ダンパの模式図である。 本発明の弾性ダンパの直径、速度、及び振幅を示す図である。 本発明が対象とする振動体の一例を示す図(A)と、これをモデル化した振動体の断面形状(B)と、振動体に本発明の棒状弾性ダンパを取り付けた解析モデル図(C)である。 図3(C)の解析モデルの解析結果を示す図である。 図4と同様な解析モデルの別の解析結果を示す図である。 振動体に本発明の板状弾性ダンパを取り付けた解析モデル図である。 振動体が、構造物である場合の振動説明図である。
以下、本発明の好ましい実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
図1は、本発明による振動体用の弾性ダンパの模式図である。
この図において、本発明の弾性ダンパ10は、ダンパ部材12と減衰部材14からなる。
ダンパ部材12は、互いに一体的に連結された連結部分12aと断面変化部分12bからなる。また、ダンパ部材12の一端11(外方端)が自由端であり、全体が振動可能な弾性材料(例えば、金属)からなる。弾性材料は、振動する振動体1と同一であることが好ましい。
振動体1は、後述の例では、鉄道用のレールである。しかし本発明はこれに限定されず、強制振動、自励振動、あるいはその他の振動で振動するまくらぎ、高架橋、その他の構造物であってもよい。
ダンパ部材12の連結部分12aは、振動体1に連結される。この連結手段は、振動がスムースに伝達されるように、溶接、ボルトとナット、ねじ止め、などにより強固に連結するのがよい。また、振動体1と連結部分12aとのインピーダンスができるだけ一致するように、連結部分12aの大きさと材質を選定することが好ましい。
ダンパ部材12の断面変化部分12bは、連結部分12aに一体的に連結され、振動体1の振動方向に直交する方向(図で左右方向)に延びる。
図1において、断面変化部分12bは、振動体1の振動方向に直交する軸線(この図でx軸)に対して対称な棒状部材である。しかし、断面変化部分12bは、棒状部材に限定されず、前記軸線(x軸)を含む面に対して対称な板状部材であってもよい。
以下、断面変化部分12bが棒状部材である場合の弾性ダンパを「棒状弾性ダンパ」と呼び、板状部材である場合、「板状弾性ダンパ」と呼ぶ。
図1に示すように、棒状弾性ダンパの場合、断面変化部分12bの自由端11より外側(図で左方)の仮想点13からの距離x(x>0)における直径h(x)は、以下の式(A1)(A2)で表される。
ここで、εは正の定数、nは1以上の実数である。また、板状弾性ダンパの場合、h(x)が厚さである点以外は同様である。
ε<<(3ρω/E)0.5・・・(A1)
h(x)=εx・・・(A2)
図1において、減衰部材14は、自由端11を含む断面変化部分12bに密着して取り付けられている。
減衰部材14は、ゴム、プラスチック、ポリマー等の弾性材料、弾塑性材料、又は塑性材料であるのがよい。
また、減衰部材14は、減衰効果が得られる限りで、断面変化部分12bの全面でもよく、自由端11の周辺のみでもよい。
また、取り付け面は、直径又は厚さh(x)が変化する面、すなわち、棒状弾性ダンパの場合にはその周囲全体、板状弾性ダンパの場合には厚さ方向の両面であるのがよい。
図2は、本発明の弾性ダンパの直径、速度、及び振幅を示す図である。
図2(A)において、断面変化部分12bの形状は、自由端11より外側の仮想点13からの距離x(x>0)における直径h(x)がh(x)=εx(εは正の定数)になっている。
なお、本発明はこの関係に限定されず、h(x)=εx(εは正の定数、nは1以上の実数)の関係であればよい。
断面変化部分12bにおける振幅A(x),伝播速度Cp(x)は数1の式(1)〜式(4)で示される。ここで、nは1以上の実数、Aは入力振幅(振動伝播部から伝播される振動の振幅)、ωは周波数、kは波数(wave number)、ρは密度、Eはヤング率である。
式(1)〜式(4)から、弾性ダンパ10における伝播速度Cp(x)と振幅A(x)は、図2(B)(C)のようになる。
また図2(C)に示すように、振動エネルギは弾性ダンパ10の先端部近傍に集中する。
図3(A)は、本発明が対象とする振動体の一例を示す図である。この図において、振動体は、鉄道車両用のレールである。この例では、50kgPS型レールであり、各部の概略寸法をミリメートル(mm)で示している。
図3(B)は、図3(A)のレールをモデル化した振動体1の断面形状であり、図3(C)は、振動体1に本発明の棒状弾性ダンパ10を取り付けた解析モデル図である。
図3(B)では、振動体1の断面積及び断面係数を図3(A)のレールに一致するように設定した。また、図3(C)では、振動体1を両端a,bと中央cの3点で支持し、その支持点b,cの中点dに本発明の棒状弾性ダンパ10を取り付けた。
棒状弾性ダンパ10の取り付けは、その軸線xを振動体1(レール)の長さ方向に設定し、軸線xが振動体1の振動方向に直交する方向に延びるようにした。
さらに、図3(C)の解析モデルの支持点b,cの中点d、すなわち本発明の棒状弾性ダンパ10の取り付け位置に、上下方向に所定の振動Fを入力した。
図4は、図3(C)の解析モデルの解析結果を示す図である。
この図において、(A)はレールのみ、(B)(C)はレールに本発明の棒状弾性ダンパ10を取り付けた場合である。また、各図において、横軸は0〜1000Hzの振動周波数、縦軸は変位、すなわち振動振幅である。
なお、この解析上では、棒状弾性ダンパ10のうちダンパ部材12のみを取り付け、減衰部材14の機能として減衰比率を10%とした。
また、ダンパ部材12の長さL、連結部分12aの直径h、先端(一端11)の直径hを、(B)では、350mm(L)、28mm(h)、0.2mm(h)、(C)では、500mm(L)、50mm(h)、2.0mm(h)とした。
図4から、レールのみの場合(A)は、約1000Hzにおいて大きな変位(約2.2×10−4mm)があり、その他にも500〜10000Hzの範囲で中くらいの変位(約0.5×10−4mm)があることがわかる。
これに対し、本発明の棒状弾性ダンパ10を取り付けた場合(B)(C)は、500〜10000Hzの全範囲において、変位が最大でも約0.5×10−4mmであり、変位が大幅に低減していることがわかる。
また、本発明の棒状弾性ダンパを取り付けた(B)(C)の比較から、(B)より(C)の方が、変位が小さいことがわかる。
このことから、連結部分12aの直径、すなわち連結部分のインピーダンスZを、振動体1のインピーダンスZに近づけることが望ましいことがわかる。
なお、左右方向にも所定の振動を入力した検討を実施して、発明の効果を確認した。
この例のように、振動体1(この例ではレール)に本発明の弾性ダンパ10を取り付ける際は、振幅が最も大きくなる枕木(支持点)と枕木の中間に弾性ダンパ10を設置するのがよい。
また、すべての枕木と枕木の間に弾性ダンパ10を設置しなくても、制振の効果を得ることができる。図4の解析結果は、枕木が3つのケースであり、ひとつの弾性ダンパ10でレール全体を制振できている。
図5は、図4と同様な解析モデルの別の解析結果を示す図である。
この図において、横軸は振動周波数(Hz)、縦軸は速度/入力(mm/s/N)、すなわちインピーダンスである。
また図中の各曲線は、ビームのみ(太い実線)、ダンパ部材のみ(細い細線)、及びダンパ部材付きのビーム(太い破線)のインピーダンスを示している。
なおこの例において、ビームは図3のレールに相等するIビームである。
図5から、ビームのみ(太い実線)の変動幅は大きいが、弾性ダンパ付きのビーム(太い破線)の変動幅は、0〜4000Hzの全範囲において大幅に低減されていることがわかる。
また、ダンパ部材のみ(細い細線)の変動幅は大きいが、これは減衰部材14により吸収できることがわかる。
さらにこの図から、ビームのみ、及びダンパ部材のみのインピーダンスは、ほぼ同じオーダの値であり、インピーダンスのマッチングがとれていることがわかる。
図6(A)は、振動体1に本発明の板状弾性ダンパ10を取り付けた解析モデル図であり、図6(B)はそのB−B矢視図である。
このように、棒状弾性ダンパに代えて板状弾性ダンパを用いた場合でも、実施例1,2と同様の効果が予想される。
なおこの例で、板状弾性ダンパ10の断面変化部分12bは両面であるが片面であってもよい。
またこの例では、板状弾性ダンパ10の断面変化部分12bの断面変化方向が水平であり、水平方向の振動に対して効果がある。
従って、鉛直方向の振動に対しては、板状弾性ダンパ10の断面変化部分12bの断面変化方向が鉛直になるように設定するのがよい。
図7は、振動体1が、構造物である場合の振動説明図である。
この図において、振動体1はI型鋼で格子状に組まれた構造物であり、矢印で示す位置に、周波数の異なる振動Fが入力された場合を示している。この図において、(A)は100Hz以下、(C)は1000Hz以上、(B)はその中間の場合である。
上述した本発明の弾性ダンパ10は、図7に示したような構造物が振動体1である場合にも適用することができる。
またこの場合、振動体1の振動方向に応じて、それを吸収できる向きに、本発明の弾性ダンパ10を取り付けることが好ましい。
上述した本発明の構成によれば、断面変化部分12bは、自由端11より外側の仮想点13からの距離x(x>0)における直径又は厚さh(x)がh(x)=εx(εは正の定数、nは1以上の実数)であるので、音響ブラックホール効果により、この部分における振動波の反射をゼロ(0)にできる。
さらに、振動エネルギは断面変化部分12bの極細部分又は薄肉部分に集中するが、減衰部材14が、断面変化部分12bに取り付けられているので、減衰部材14により極細部分又は薄肉部分を効果的に減衰することができる。
すなわち、振動体1(例えばレール)における振動エネルギは、本発明の断面変化部分12bに転送され、その振動エネルギは断面変化部分12bの極細部分又は薄肉部分に集まり、減衰部材14で吸収される。
特に、断面変化部分12bが、振動体1の振動方向に直交する軸線xに対して対称な棒状部材である場合、棒状部材は軸線xに直交する任意の方向で同一形状であるので、上下方向及び水平方向の両方向で効果がある。
従って、本発明による弾性ダンパ10は、500〜1600Hzを含む広帯域において、チューニングなしでレールや構造物などの振動体1の振動を低減することができる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
1 振動体、10 弾性ダンパ(棒状弾性ダンパ、板状弾性ダンパ)、
11 一端(外方端)、12 ダンパ部材、
12a 連結部分、12b 断面変化部分、
14 減衰部材

Claims (3)

  1. 一端が自由端であり振動可能な弾性材料からなるダンパ部材と、減衰材料からなる減衰部材とからなり、
    前記ダンパ部材は、振動する振動体に連結された連結部分と、
    該連結部分に一体的に連結され前記振動体の振動方向に直交する方向に延び、前記自由端より外側の仮想点からの距離x(x>0)における直径又は厚さh(x)がh(x)=εx(εは正の定数、nは1以上の実数)である断面変化部分とからなり、
    前記減衰部材は、前記自由端を含む断面変化部分に取り付けられている、ことを特徴とする振動体用の弾性ダンパ。
  2. 前記断面変化部分は、振動体の振動方向に直交する軸線に対して対称な棒状部材、又は前記軸線を含む面に対して対称な板状部材である、ことを特徴とする請求項1に記載の弾性ダンパ。
  3. 前記連結部分と断面変化部分との境界面において、それぞれの断面形状が同一である、ことを特徴とする請求項1に記載の弾性ダンパ。
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