JP2023102029A - 光ファイバの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】線引速度上昇過程において歩留まりの低下を抑制する光ファイバの製造方法を提供する。【解決手段】線引速度を所定の線引速度まで上昇させながら光ファイバ母材を線引きする線速上昇ステップと、線速上昇ステップ後、所定の線引速度で光ファイバ母材を線引きしながら製品として使用される光ファイバを製造する製品製造ステップと、を備えている。線速上昇ステップは、製品製造ステップにおける加熱炉の設定温度に基づいて加熱炉の温度を制御しながら線引速度を上昇させる第一線速上昇ステップと、第一線速上昇ステップ後、光ファイバの線引張力が製品製造ステップにおいて製造される光ファイバの目標線引張力になるように加熱炉の温度を制御しながら線引速度を上昇させる第二線速上昇ステップと、を備えている。製品製造ステップにおける加熱炉の設定温度は、過去の光ファイバの製造時の製品製造ステップにおける加熱炉の温度に基づいて設定される。【選択図】図2
Description
本開示は、光ファイバの製造方法に関する。
特許文献1は、光ファイバ母材を線引きしてガラスファイバを形成し、そのガラスファイバの外周に樹脂を被覆して光ファイバを製造する光ファイバの製造方法を開示している。この光ファイバの製造方法では、光ファイバ母材の線引き時においてガラスファイバに生じている線引張力を制御することにより、ガラスファイバのカットオフ波長を所定の値にしている。
特許文献2は、初期線引速度から目標線引速度まで線引速度を上昇させながら光ファイバ母材を線引する線速上昇ステップと、目標線引速度および目標線引張力の条件の下で光ファイバ母材を線引きする定常線引きステップとを有する光ファイバの製造方法を開示している。この光ファイバ製造方法では、線速上昇ステップにおいて、初期線引速度から目標線引速度まで線引速度を上昇させる途中で線引張力を目標線引張力に維持することにより、線引速度上昇途中で所望の特性を有する光ファイバを製造している。
本開示は、線引速度上昇過程において歩留まりの低下を抑制する光ファイバの製造方法を提供することを目的とする。
本開示の光ファイバの製造方法は、
加熱炉において加熱された光ファイバ母材を線引きすることにより光ファイバを製造する光ファイバの製造方法であって、
前記光ファイバ母材を線引きする線引速度を所定の線引速度まで上昇させながら前記光ファイバ母材を線引きする線速上昇ステップと、
前記線速上昇ステップ後、前記所定の線引速度で前記光ファイバ母材を線引きしながら製品として使用される前記光ファイバを製造する製品製造ステップと、を備えており、
前記線速上昇ステップは、
前記製品製造ステップにおける前記加熱炉の設定温度に基づいて前記加熱炉の温度を制御しながら前記線引速度を上昇させる第一線速上昇ステップと、
前記第一線速上昇ステップ後、前記光ファイバの線引張力が前記製品製造ステップにおいて製造される前記光ファイバの目標線引張力になるように前記加熱炉の温度を制御しながら前記線引速度を上昇させる第二線速上昇ステップと、を備えており、
前記製品製造ステップにおける前記加熱炉の設定温度は、過去の光ファイバの製造時の製品製造ステップにおける前記加熱炉の温度に基づいて設定される。
加熱炉において加熱された光ファイバ母材を線引きすることにより光ファイバを製造する光ファイバの製造方法であって、
前記光ファイバ母材を線引きする線引速度を所定の線引速度まで上昇させながら前記光ファイバ母材を線引きする線速上昇ステップと、
前記線速上昇ステップ後、前記所定の線引速度で前記光ファイバ母材を線引きしながら製品として使用される前記光ファイバを製造する製品製造ステップと、を備えており、
前記線速上昇ステップは、
前記製品製造ステップにおける前記加熱炉の設定温度に基づいて前記加熱炉の温度を制御しながら前記線引速度を上昇させる第一線速上昇ステップと、
前記第一線速上昇ステップ後、前記光ファイバの線引張力が前記製品製造ステップにおいて製造される前記光ファイバの目標線引張力になるように前記加熱炉の温度を制御しながら前記線引速度を上昇させる第二線速上昇ステップと、を備えており、
前記製品製造ステップにおける前記加熱炉の設定温度は、過去の光ファイバの製造時の製品製造ステップにおける前記加熱炉の温度に基づいて設定される。
本開示によれば、線引速度上昇過程において歩留まりの低下を抑制する光ファイバの製造方法を提供することが可能となる。
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
本開示の光ファイバの製造方法は、
(1)加熱炉において加熱された光ファイバ母材を線引きすることにより光ファイバを製造する光ファイバの製造方法であって、
前記光ファイバ母材を線引きする線引速度を所定の線引速度まで上昇させながら前記光ファイバ母材を線引きする線速上昇ステップと、
前記線速上昇ステップ後、前記所定の線引速度で前記光ファイバ母材を線引きしながら製品として使用される前記光ファイバを製造する製品製造ステップと、を備えており、
前記線速上昇ステップは、
前記製品製造ステップにおける前記加熱炉の設定温度に基づいて前記加熱炉の温度を制御しながら前記線引速度を上昇させる第一線速上昇ステップと、
前記第一線速上昇ステップ後、前記光ファイバの線引張力が前記製品製造ステップにおいて製造される前記光ファイバの目標線引張力になるように前記加熱炉の温度を制御しながら前記線引速度を上昇させる第二線速上昇ステップと、を備えており、
前記製品製造ステップにおける前記加熱炉の設定温度は、過去の光ファイバの製造時の製品製造ステップにおける前記加熱炉の温度に基づいて設定される。
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
本開示の光ファイバの製造方法は、
(1)加熱炉において加熱された光ファイバ母材を線引きすることにより光ファイバを製造する光ファイバの製造方法であって、
前記光ファイバ母材を線引きする線引速度を所定の線引速度まで上昇させながら前記光ファイバ母材を線引きする線速上昇ステップと、
前記線速上昇ステップ後、前記所定の線引速度で前記光ファイバ母材を線引きしながら製品として使用される前記光ファイバを製造する製品製造ステップと、を備えており、
前記線速上昇ステップは、
前記製品製造ステップにおける前記加熱炉の設定温度に基づいて前記加熱炉の温度を制御しながら前記線引速度を上昇させる第一線速上昇ステップと、
前記第一線速上昇ステップ後、前記光ファイバの線引張力が前記製品製造ステップにおいて製造される前記光ファイバの目標線引張力になるように前記加熱炉の温度を制御しながら前記線引速度を上昇させる第二線速上昇ステップと、を備えており、
前記製品製造ステップにおける前記加熱炉の設定温度は、過去の光ファイバの製造時の製品製造ステップにおける前記加熱炉の温度に基づいて設定される。
製品製造ステップにおける加熱炉の温度は、所望の特性(例えば、カットオフ波長)を有する光ファイバを製造可能な温度に設定される。しかしながら、光ファイバ母材を線引きする度に同じ設定温度を用いると、加熱炉の経年劣化により加熱炉内部の温度分布が変化することにより、製造された光ファイバの特性が変化する場合がある。この場合、例えば、製造される光ファイバが所望の特性を有するように、加熱炉の設定温度を変更して光ファイバの線引張力を制御することが考えられる。しかしながら、線引張力制御により加熱炉の極端な温度変動が生じると、ガラス溶融量の極端な変動に繋がり線引速度のオーバーシュートやダウンシュートが発生する。上記構成によれば、製品製造ステップにおける加熱炉の設定温度は、過去の光ファイバの製造時の製品製造ステップにおける加熱炉の温度を基準に決定される。これにより、あらかじめ加熱炉の劣化の影響を取り除いた温度分布になっており線引張力の制御が行われても加熱炉の極端な温度変動を抑制できる。また、線速上昇ステップでは、加熱炉の温度を上昇させた後で線引張力の制御が行われるので、線引張力制御による加熱炉の極端な温度変動を抑制できる。したがって、線引速度上昇過程において線引速度を安定的に上昇させることができ、歩留まりの低下を抑制できる。
(2)前記過去の光ファイバの製造時の製品製造ステップにおける前記加熱炉の温度は、前記過去の光ファイバの製造時の製品製造ステップにおいて製品として使用される光ファイバの製造を開始したときの前記加熱炉の温度でもよい。
上記構成によれば、製品として用いられる光ファイバの製造を開始したときの加熱炉の温度を用いるので、線速上昇直後に安定する温度を加熱炉の設定温度として用いることができる。
(3)前記製品製造ステップにおける前記加熱炉の設定温度Tb、前記過去の光ファイバの製造時の製品製造ステップにおける前記加熱炉の温度T0、前記製品製造ステップにおいて製造される前記光ファイバの目標線引張力と前記過去の光ファイバの製造時の製品製造ステップにおいて製造された前記光ファイバの線引張力との差分ΔS、および補正係数aは、ΔT = aΔSとして、Tb = T0 + ΔTの関係を満たしてもよい。
光ファイバ母材の特性は光ファイバ母材ごとにばらつきがあるので、所望の特性を有する光ファイバを製造するための線引張力も異なる。また、製品製造ステップにおける加熱炉の温度には、製造される光ファイバの特性に応じた線引張力が反映されている。上記構成によれば、加熱炉の設定温度Tbの算出には光ファイバ母材の特性のばらつきにより変化する線引張力があらかじめ考慮されるので、第二線速上昇ステップで線引張力の制御が行われても加熱炉の極端な温度変動を抑制できる。
(4)前記第一線速上昇ステップは、前記線速上昇ステップ時の線引速度Vおよび前記製品製造ステップにおける所定の線引速度V1が、V<V1×0.6の関係を満たす区間において実行されてもよい。
上記構成によれば、線引張力制御を行う前に加熱炉の温度を上昇させておくことにより、線引張力制御による加熱炉の極端な温度変動を抑制できる。
(5)前記第二線速上昇ステップは、前記線速上昇ステップ時の線引速度V、前記製品製造ステップにおける所定の線引速度V1が、V1×0.6≦V≦V1の関係を満たす区間において実行されてもよい。
線引速度が低い場合(V<V1×0.6)に線引張力の制御を開始すると、線引張力が下がりすぎてしまい、光ファイバが光ファイバ製造装置のガイドローラから外れたり、光ファイバが振動し振幅が大きくなって装置に接触することにより、光ファイバが低強度になったり断線に至る恐れがある。上記構成によれば、V≧V1×0.6を満たす区間で線引張力制御が行われるので、光ファイバの断線の発生を抑制できる。他方、V≦V1を満たす区間で線引張力制御が行われるので、所定の線引速度に到達した直後に製品として使用される光ファイバの製造を開始することができる。
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る光ファイバの製造方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、以下の説明に用いられる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
本開示の実施形態に係る光ファイバの製造方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、以下の説明に用いられる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
(光ファイバ製造装置)
図1は、本実施形態に係る光ファイバ製造装置1の構成を示す概略図である。光ファイバ製造装置1は、光ファイバ母材Gを線引きしてガラスファイバG1を形成し、ガラスファイバG1の外周に樹脂を被覆して光ファイバG2を製造するように構成されている。光ファイバ母材Gは、例えば、石英ガラスを主成分とする光ファイバ母材である。
図1は、本実施形態に係る光ファイバ製造装置1の構成を示す概略図である。光ファイバ製造装置1は、光ファイバ母材Gを線引きしてガラスファイバG1を形成し、ガラスファイバG1の外周に樹脂を被覆して光ファイバG2を製造するように構成されている。光ファイバ母材Gは、例えば、石英ガラスを主成分とする光ファイバ母材である。
光ファイバ製造装置1は、加熱炉2と、樹脂塗布装置3と、樹脂硬化装置4と、引取装置5と、巻取装置6と、張力測定装置7と、制御装置8と、を備えている。
加熱炉2は、光ファイバ母材Gの下端部を加熱して軟化させるように構成されている。光ファイバ母材Gは、フィーダ9により加熱炉2内に挿入され下方に送られていく。加熱により軟化した光ファイバ母材Gの下端部が下方に細く引き伸ばされることにより、ガラスファイバG1が形成される。
樹脂塗布装置3と樹脂硬化装置4は、ガラスファイバG1の走行方向(図1の下方)において加熱炉2の下流に配置されている。樹脂塗布装置3によりガラスファイバG1の周囲に樹脂が塗布され、樹脂硬化装置4により樹脂が硬化される。これにより、ガラスファイバG1の周囲に樹脂が形成された光ファイバG2が形成される。
引取装置5は、ガイドローラ10を経由して光ファイバG2を引き取って巻取装置6に送りだすように構成されている。例えば、引取装置5は、ベルト5aとローラ5bを有している。ベルト5aの回転とローラ5bの回転により光ファイバG2が引き取られる。巻取装置6は、引取装置5から送られてきた光ファイバG2を巻き取るように構成されている。例えば、巻取装置6は、回転しながら光ファイバG2を巻き取る。
張力測定装置7は、ガイドローラ10の近傍に配置されている。張力測定装置7は、光ファイバG2に生じている線引張力を測定するように構成されている。例えば、張力測定装置7は、光ファイバG2がガイドローラ10に与える荷重を測定することにより、光ファイバG2の線引張力を測定する。
制御装置8は、加熱炉2や引取装置5などに電気的に接続されており、加熱炉2の温度や引取装置5による光ファイバG2の引取速度(光ファイバ母材Gの線引速度)などを制御するように構成されている。
(光ファイバの製造方法)
次に、図2を参照して、光ファイバ製造装置1を用いて製造される光ファイバの製造方法について説明する。
次に、図2を参照して、光ファイバ製造装置1を用いて製造される光ファイバの製造方法について説明する。
図2に例示されるように、一つ前の光ファイバの製造が終了すると、新たな光ファイバ母材Gが光ファイバ製造装置1にセットされて、光ファイバ製造装置1へのガラスファイバG1の線掛け作業が行われる。具体的には、フィーダ9により加熱炉2内に光ファイバ母材Gが挿入され、加熱炉2により光ファイバ母材Gの下端部が加熱される。加熱により溶融されたガラスの塊は自重により加熱炉2から落下する(種落し)。加熱炉2から落下したガラスの塊は、所定のガラス径のガラスファイバG1になるように引っ張られて細径化される。細径化されたガラスファイバG1は、樹脂塗布装置3および樹脂硬化装置4内に通されて、引取装置5に掛けられて、巻取装置6に巻き付けられる。
次に、光ファイバ母材Gの線引き作業が行われる。図2の上段に例示されるように、光ファイバ母材Gの線引き作業は、線速上昇ステップ(時刻t1~時刻t3)と製品製造ステップ(時刻t3~)とを有している。線速上昇ステップでは、光ファイバ母材Gの線引速度を所定の線引速度V1まで上昇させながら光ファイバ母材Gが線引きされる。具体的には、時刻t1において引取装置5による光ファイバG2の引き取りが開始され、光ファイバ母材Gの線引速度をゼロから所定の線引速度V1まで上昇させながら光ファイバ母材Gの線引きが行われる。
線速上昇ステップは、第一線速上昇ステップ(時刻t1~時刻t2)と第二線速上昇ステップ(時刻t2~時刻t3)を含んでいる。第一線速上昇ステップでは、製品製造ステップにおける加熱炉2の設定温度Tbに基づいて加熱炉2の温度を制御しながら線引速度を上昇させる。
具体的には、図2の下段に例示されるように、加熱炉2の温度は、線速上昇ステップが開始した時点の温度Taから設定温度Tbまで上昇するように制御されている。
加熱炉2の設定温度Tbは、一つ前の光ファイバの製造時の製品製造ステップにおける加熱炉の温度T0に基づいて設定される。例えば、制御装置8は、加熱炉2に設置された温度測定器(図示せず)から一つ前の光ファイバの製造時の製品製造ステップにおける加熱炉2の温度の測定値を取得しており、当該測定値に基づいて設定温度Tbを算出する。
第二線速上昇ステップでは、第一線速上昇ステップ後、光ファイバの線引張力が製品製造ステップにおいて製造される光ファイバの目標線引張力になるように加熱炉2の温度を制御しながら線引速度を上昇させる。例えば、制御装置8は、張力測定装置7からの光ファイバG2に生じている線引張力の測定結果に基づいて、その測定結果が目標線引張力になるように、加熱炉の温度を制御する。図2において、T1は、線引張力制御された際の加熱炉2の温度を示している。光ファイバの目標線引張力は、製造される光ファイバの特性に応じて適宜設定される。
製品製造ステップでは、線速上昇ステップ後、所定の線引速度V1で光ファイバ母材Gを線引きしながら製品として使用される所望の特性を有する光ファイバG2が製造される。具体的には、図2の上段に例示されるように、時刻t3において、線引速度Vが所定の線引速度V1に到達した後、所定の線引速度V1(定常線速)を保った状態で光ファイバ母材Gの線引きが行われる。そして、所望の特性を有する光ファイバG2が製品として使用される(製品取り)。
このように、製品製造ステップにおける加熱炉2の設定温度Tbは、過去の光ファイバの製造時の加熱炉の温度T0を基準に決定されるので、加熱炉2の劣化の影響による加熱炉2の極端な温度変動を抑制できる。すなわち、製品製造ステップにおける加熱炉2の設定温度は、所望の特性(例えば、カットオフ波長)を有する光ファイバを製造可能な温度に設定される。しかしながら、光ファイバ母材を線引きする度に同じ設定温度を用いると、加熱炉2の経年劣化により加熱炉2内部の温度分布が変化することにより、製造された光ファイバの特性が変化する場合がある。この場合、例えば、製造される光ファイバが所望の特性を有するように、光ファイバの線引張力を制御することが考えられる。しかしながら、線引張力制御により加熱炉2の極端な温度変動が生じると、線引速度のオーバーシュートやダウンシュートが発生する。これに対して、上述のように、本実施形態では、製品製造ステップにおける加熱炉2の設定温度Tbは、過去の光ファイバの製造時の加熱炉2の温度T0を基準に決定されるので、加熱炉の劣化の影響による加熱炉の極端な温度変動を抑制できる。また、線速上昇ステップでは、加熱炉2の温度を上昇させた後で線引張力の制御が行われるので、線引張力制御による加熱炉2の極端な温度変動を抑制できる。したがって、線引速度上昇過程において線引速度を安定的に上昇させることができ、歩留まりの低下を抑制できる。
本実施形態においては、過去の光ファイバの製造時における製品製造ステップの加熱炉の温度として、一つ前の光ファイバ母材を線引きする際に用いた製品製造ステップにおける加熱炉の温度T0を使用している。これにより、加熱炉2の設定温度Tbにおいて直近の加熱炉2の経年劣化の影響を反映させることができる。
図2に例示されるように、一つ前の光ファイバの製造時の製品製造ステップにおける加熱炉の温度T0として、一つ前の光ファイバの製造時の製品製造ステップにおいて製品として用いられる光ファイバの製造を開始したとき(時刻t0)の加熱炉2の温度が使用されてもよい。これにより、線速上昇直後に安定する温度を加熱炉2の設定温度Tbとして用いることができる。
また、図2に例示されるように、設定温度Tbは、 ΔT = aΔSとして、Tb = T0 + ΔTの関係を満たすように設定されてもよい。ΔSは製品製造ステップにおいて製造される光ファイバの目標線引張力I1と一つ前の光ファイバの製造時の製品製造ステップにおいて製造された光ファイバの線引張力I0との差分(ΔS=I1-I0)である。a(<0)は補正係数であり、加熱炉2のヒータ、炉心管や断熱材の劣化などにより適宜設定されうる。図3は、現在および過去の光ファイバの製品製造ステップにおける光ファイバの線引張力の差分ΔS(g)と、当該線引張力の差分により変動する加熱炉2の温度の差分ΔT(℃)との関係を例示している。例えば、図3に示されるように、現在と一つ前の光ファイバの製品製造ステップにおける線引張力の差分がS1である場合(ΔS=S1)、線引張力の差分S1により変動する加熱炉2の温度の差分ΔTはΔT=a×S1となる。したがって、設定温度Tbは、Tb = T0 + ΔTを満たすように設定される。
光ファイバ母材の特性は光ファイバ母材ごとにばらつきがあるので、所望の特性を有する光ファイバを製造するための線引張力も異なる。また、製品製造ステップにおける加熱炉の温度には、製造される光ファイバの特性に応じた線引張力が反映されている。上記のように、加熱炉2の設定温度Tbの算出には光ファイバ母材の特性のばらつきにより変化する線引張力があらかじめ考慮されることにより、加熱炉の極端な温度変動を抑制できる。
また、図2に例示されるように、第一線速上昇ステップは、線速上昇ステップ時の線引速度Vおよび製品製造ステップにおける所定の線引速度V1が、V<V1×0.6の関係を満たす区間において実行されてもよい。このような構成によれば、線引張力制御を行う前に加熱炉の温度を上昇させておくことにより、線引張力制御による加熱炉の極端な温度変動を抑制できる。
また、図2に例示されるように、第二線速上昇ステップは、線速上昇ステップ時の線引速度V、製品製造ステップにおける所定の線引速度V1が、V1×0.6≦V≦V1の関係を満たす区間において実行されてもよい。
線引速度が低い場合(V<V1×0.6)に線引張力の制御を開始すると、線引張力が下がりすぎてしまい、光ファイバが光ファイバ製造装置1のガイドローラ10から外れたり、光ファイバが振動し振幅が大きくなって装置に接触することにより、光ファイバが低強度になったり断線に至る恐れがある。上記のように本実施形態においては、V≧V1×0.6を満たす区間で線引張力制御が行われるので、光ファイバの断線の発生を抑制できる。他方、V≦V1を満たす区間で線引張力制御が行われるので、所定の線引速度に到達した直後に製品として使用される光ファイバの製造を開始することができる。
以上、本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。また、上記説明した構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等に変更することができる。
上記の実施形態において、過去の光ファイバの製造時の製品製造ステップにおける加熱炉2の温度として、一つ前の光ファイバの製造時の製品製造ステップにおける加熱炉の温度T0を使用している。しかしながら、二つ前、三つ前、四つ前または五つ前といった過去の光ファイバの製造時の製品製造ステップにおける加熱炉の温度を使用したり、これらの温度の平均値を使用してもよい。あるいは、過去の光ファイバの製造時の製品製造ステップにおける加熱炉の温度の中で、同じ品種の光ファイバ母材を用いて光ファイバを製造したときの製品製造ステップにおける加熱炉の温度を使用してもよい。同じ品種の光ファイバ母材を用いることで、光ファイバ母材の特性のばらつきによる線引張力のばらつきが少なくなるので、加熱炉の極端な温度変動を抑制できる。
上記の実施形態において、設定温度Tbは、ΔT = aΔSとして、Tb = T0 + ΔTの関係を満たすように設定されている。しかしながら、例えば、設定温度Tbは、一つ前の光ファイバの製造時の製品製造ステップにおける加熱炉の温度T0に設定されてもよい。この場合でも、加熱炉の劣化の影響による加熱炉の極端な温度変動を抑制できる。
上記の実施形態において、張力測定装置7は、ガイドローラ10の近傍に配置されている。しかしながら、張力測定装置7は、加熱炉2と樹脂塗布装置3との間に配置されてもよい。例えば、張力測定装置7は、光学式の装置であり、線引きの際にガラスファイバG1に生じている線引張力を測定するように構成されうる。
1:光ファイバ製造装置
2:加熱炉
3:樹脂塗布装置
4:樹脂硬化装置
5:引取装置
5a:ベルト
5b:ローラ
6:巻取装置
7:張力測定装置
8:制御装置
9:フィーダ
10:ガイドローラ
a:補正係数
G:光ファイバ母材
G1:ガラスファイバ
G2:光ファイバΔS:差分
t0:時刻
t1:時刻
t2:時刻
t3:時刻
T0:温度
T1:温度
Ta:温度
Tb:設定温度
ΔT:温度の差分
V:線引速度
V1:線引速度
2:加熱炉
3:樹脂塗布装置
4:樹脂硬化装置
5:引取装置
5a:ベルト
5b:ローラ
6:巻取装置
7:張力測定装置
8:制御装置
9:フィーダ
10:ガイドローラ
a:補正係数
G:光ファイバ母材
G1:ガラスファイバ
G2:光ファイバΔS:差分
t0:時刻
t1:時刻
t2:時刻
t3:時刻
T0:温度
T1:温度
Ta:温度
Tb:設定温度
ΔT:温度の差分
V:線引速度
V1:線引速度
Claims (5)
- 加熱炉において加熱された光ファイバ母材を線引きすることにより光ファイバを製造する光ファイバの製造方法であって、
前記光ファイバ母材を線引きする線引速度を所定の線引速度まで上昇させながら前記光ファイバ母材を線引きする線速上昇ステップと、
前記線速上昇ステップ後、前記所定の線引速度で前記光ファイバ母材を線引きしながら製品として使用される前記光ファイバを製造する製品製造ステップと、を備えており、
前記線速上昇ステップは、
前記製品製造ステップにおける前記加熱炉の設定温度に基づいて前記加熱炉の温度を制御しながら前記線引速度を上昇させる第一線速上昇ステップと、
前記第一線速上昇ステップ後、前記光ファイバの線引張力が前記製品製造ステップにおいて製造される前記光ファイバの目標線引張力になるように前記加熱炉の温度を制御しながら前記線引速度を上昇させる第二線速上昇ステップと、を備えており、
前記製品製造ステップにおける前記加熱炉の設定温度は、過去の光ファイバの製造時の製品製造ステップにおける前記加熱炉の温度に基づいて設定される、光ファイバの製造方法。 - 前記過去の光ファイバの製造時の製品製造ステップにおける前記加熱炉の温度は、過去の光ファイバの製造時の製品製造ステップにおいて前記製品として使用される光ファイバの製造を開始したときの前記加熱炉の温度である、請求項1に記載の光ファイバの製造方法。
- 前記製品製造ステップにおける前記加熱炉の設定温度Tb、前記過去の光ファイバの製造時の製品製造ステップにおける前記加熱炉の温度T0、前記製品製造ステップにおいて製造される前記光ファイバの目標線引張力と前記過去の光ファイバの製造時の製品製造ステップにおいて製造された前記光ファイバの線引張力との差分ΔS、および補正係数aは、ΔT = aΔSとして、Tb = T0 + ΔTの関係を満たす、請求項1または請求項2に記載の光ファイバの製造方法。
- 前記第一線速上昇ステップは、前記線速上昇ステップ時の線引速度Vおよび前記製品製造ステップにおける所定の線引速度V1が、V<V1×0.6の関係を満たす区間において実行される、請求項1から請求項3の何れか一項に記載の光ファイバの製造方法。
- 前記第二線速上昇ステップは、前記線速上昇ステップ時の線引速度V、前記製品製造ステップにおける所定の線引速度V1が、V1×0.6≦V≦V1の関係を満たす区間において実行される、請求項1から請求項4の何れか一項に記載の光ファイバの製造方法。
Priority Applications (2)
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JP2022002353A JP2023102029A (ja) | 2022-01-11 | 2022-01-11 | 光ファイバの製造方法 |
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2022
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