JP2023101325A - ポリアリーレンサルファイド樹脂組成物、並びに金属樹脂複合成形体及びその製造方法 - Google Patents

ポリアリーレンサルファイド樹脂組成物、並びに金属樹脂複合成形体及びその製造方法 Download PDF

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Masaki Ito
秀和 出井
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Abstract

【課題】バリの発生が抑制され、かつ、インサート金属部材との接合強度に優れるポリアリーレンサルファイド樹脂組成物を提供する。【解決手段】物理的処理及び/又は化学的処理が施されているインサート金属部材を用いてインサート成形するためのポリアリーレンサルファイド樹脂組成物であって、(A)ポリアリーレンサルファイド樹脂100質量部に対して、(B)(B1)所定の長さ、所定のアスペクト比を有するカーボンナノチューブ0.05~1.5質量部、(B2)無機ナノチューブ(炭素原子を含まないものに限る。)0.01質量部以上10質量部未満、又は(B3)カーボンナノストラクチャー0.01~0.50質量部と、(C)炭素原子数2以上のα-オレフィン由来の構成単位を含有するオレフィン系共重合体1.0~45.0質量部と、を含む、ポリアリーレンサルファイド樹脂組成物である。【選択図】なし

Description

本発明は、インサート金属部材にインサート成形するためのポリアリーレンサルファイド樹脂組成物、並びに金属樹脂複合成形体及びその製造方法に関する。
金属や合金等から構成されるインサート金属部材と、熱可塑性樹脂組成物から構成される樹脂部材とが一体化されてなる金属樹脂複合成形体は、従来から、インパネ周りのコンソールボックス等の自動車の内装部材やエンジン周り部品や、インテリア部品、デジタルカメラや携帯電話等の電子機器のインターフェース接続部、電源端子部等の外界と接触する部品に用いられている。
インサート金属部材と樹脂部材とを一体化する方法としては種々の方法が知られている。インサート金属部材側の接合面に物理的処理及び/又は化学的処理を施す方法は、金属樹脂複合成形体を設計する際の自由度の点で有効であり、特に、高価な接着剤を使用しない点において有利である。そのような方法としては種々の提案がされている(特許文献1、2参照)。特許文献1に記載の方法は、インサート金属部材の表面における所望の範囲にレーザーで粗面を形成する方法である。また、特許文献2に記載の方法は、予め表面が化学エッチングされた金属部を射出成形用の金型のキャビティー内に配置し、溶融状態の熱可塑性樹脂組成物をキャビティー内に射出して、金属部と樹脂部とが一体となった複合成形体を製造する複合化成形方法である。
金属樹脂複合成形体においては、インサート金属部材と樹脂部材との一体化が十分であることが実用上必要とされている。そのため、金属樹脂複合成形体には、インサート金属部材と樹脂部材との強い接合強度が要求される。
一方、ポリフェニレンサルファイド樹脂(以下、「PPS樹脂」とも呼ぶ。)に代表されるポリアリーレンサルファイド樹脂(以下、「PAS樹脂」とも呼ぶ。)は、高い耐熱性、機械的物性、耐化学薬品性、寸法安定性、難燃性を有している。そのため、電気・電子機器部品材料、自動車機器部品材料、化学機器部品材料等に広く使用されている。しかしながら、PAS樹脂は、結晶化速度が遅いため成形時のサイクル時間が長い、また成形時にバリの発生が多いという問題があった。
バリの発生を低減する方法としては、溶融粘度が非常に高い分岐型ポリフェニレンサルファイド系樹脂をバリ抑制剤として添加することが提案されている(特許文献3、4参照)。
特開2010-167475号公報 特開2001-225352号公報 国際公開第2006/068161号 国際公開第2006/068159号
インサート金属部材と樹脂部材との接合強度を向上させるには、インサート金属部材側の接合面に物理的処理を施した場合、及び化学的処理を施した場合とも、樹脂部材を構成する樹脂組成物の溶融粘度がせん断速度に依存する特性(以下、「せん断速度依存性」と呼ぶ。)を低下させることが好ましい。せん断速度依存性が小さい方が、物理的処理及び/又は化学エッチングによって粗面化したインサート金属部材の表面の凹凸に樹脂部材の一部が埋入しやすく、アンカー効果が発現しやすい。また、特に化学エッチングによって粗面化した場合は、更に、化学結合も接合強度向上に寄与する。
一方で、樹脂部材を構成する樹脂組成物の溶融粘度のせん断速度依存性を下げると、バリが発生しやすくなる。しかし、バリの発生が十分に抑制される程度にまで上記のようなバリ抑制剤を添加すると、アンカー効果を十分に発現させることができない。そのため、インサート金属部材と樹脂部材との接合強度が大きく低下するという問題がある。すなわち、バリの発生の抑制と、インサート金属部材と樹脂部材との接合強度とはトレードオフの関係にあり、双方ともに満足させるのは困難である。ひいては、上記のような金属樹脂複合成形体において、従来は、バリの抑制をしつつ、インサート金属部材と樹脂部材との接合強度を十分に向上させることは困難であった。
本発明は、バリの発生が抑制され、かつ、インサート金属部材との接合強度に優れるポリアリーレンサルファイド樹脂組成物、並びにインサート金属部材に当該樹脂組成物がインサート成形された金属樹脂複合成形体及びその製造方法を提供することにある。
前記課題を解決する本発明の一態様は以下の通りである。
(1)物理的処理及び/又は化学的処理が施されているインサート金属部材を用いてインサート成形するためのポリアリーレンサルファイド樹脂組成物であって、
(A)ポリアリーレンサルファイド樹脂100質量部に対して、
(B)(B1)長さが10000nm超3000000nm以下であり、アスペクト比が2000超500000以下のカーボンナノチューブ0.05~1.5質量部、(B2)無機ナノチューブ(但し、炭素原子を含まないものに限る。)0.01質量部以上10質量部未満、又は(B3)カーボンナノストラクチャー0.01~0.50質量部と、
(C)炭素原子数2以上のα-オレフィン由来の構成単位を含有するオレフィン系共重合体1.0~45.0質量部と、を含む、ポリアリーレンサルファイド樹脂組成物。
(2)エポキシ基含有量が0.01~0.20質量%である、前記(1)に記載のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物。
(3)前記(A)ポリアリーレンサルファイド樹脂100質量部に対して、更に(D)無機充填剤を5~250質量部含む、前記(1)又は(2)に記載のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物。
(4)前記(D)無機充填剤が、ガラス繊維、ガラスビーズ及び球状シリカからなる群から選択される1種又は2種以上である、前記(3)に記載のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物。
(5)前記(C)炭素原子数2以上のα-オレフィン由来の構成単位を含有するオレフィン系共重合体が、
(C1)アミノ基、カルボキシル基、水酸基、酸無水物基、エポキシ基、グリシジル基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、アセトキシ基、シラノール基、アルコキシシラン基、アルキニル基、オキサゾリン基、チオール基、スルホン酸基、スルホン酸塩残基、及びカルボン酸エステル基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を含有するオレフィン系共重合体、並びに
(C2)炭素原子数2以上のα-オレフィン由来の構成単位とα,β-不飽和カルボン酸アルキルエステル由来の構成単位とを含有するオレフィン系共重合体、
からなる群から選択される少なくとも1種のオレフィン系共重合体である、前記(1)~(4)のいずれかに記載のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物。
(6)前記(C1)オレフィン系共重合体が、α,β-不飽和酸のグリシジルエステル由来の構成単位を含有する、前記(5)に記載のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物。
(7)前記(C1)オレフィン系共重合体が、無水マレイン酸変性エチレン系共重合体、グリシジルメタクリレート変性エチレン系共重合体、グリシジルエーテル変性エチレン系共重合体からなる群から選択される少なくとも1種のオレフィン系共重合体である、前記(5)又は(6)に記載のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物。
(8)前記(C1)オレフィン系共重合体が、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を更に含有する、前記(5)~(7)のいずれかに記載のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物。
(9)インサート金属部材を用いて、前記(1)~(8)のいずれかに記載のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物をインサート成形して形成された樹脂部材を備え、
前記インサート金属部材の、前記樹脂部材と接する表面の少なくとも一部が、物理的処理及び/又は化学的処理を施されている、金属樹脂複合成形体。
(10)表面の少なくとも一部が物理的処理及び/又は化学的処理を施されたインサート金属部材を射出成形用金型内に配置し、
前記(1)~(9)のいずれかに記載のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物を溶融状態で前記射出成形用金型内に射出して、前記インサート金属部材を、前記ポリアリーレンサルファイド樹脂組成物からなる樹脂部材と一体化する一体化工程を有する、金属樹脂複合成形体の製造方法。
本発明によれば、バリの発生が少なく、かつ、インサート金属部材との接合強度に優れるポリアリーレンサルファイド樹脂組成物、並びにインサート金属部材に当該樹脂組成物がインサート成形された金属樹脂複合成形体及びその製造方法を提供することができる。
実施例及び比較例で作製した金属樹脂複合成形体を模式的に示す、(a)上面図、(b)側面図である。 実施例及び比較例で作製した金属樹脂複合成形体の接合部分の接合強度を測定する方法について説明する図である。
<ポリアリーレンサルファイド樹脂組成物>
本実施形態のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物は、物理的処理及び/又は化学的処理が施されているインサート金属部材(以下、単に「金属部材」とも呼ぶ。)を用いてインサート成形するためのポリアリーレンサルファイド樹脂組成物である。そして、(A)ポリアリーレンサルファイド樹脂100質量部に対して、(B)(B1)長さが10000nm超3000000nm以下であり、アスペクト比が2000超500000以下のカーボンナノチューブ0.05~1.5質量部、(B2)無機ナノチューブ(但し、炭素原子を含まないものに限る。)0.01質量部以上10質量部未満、又は(B3)カーボンナノストラクチャー0.01~0.50質量部と、(C)炭素原子数2以上のα-オレフィン由来の構成単位を含有するオレフィン系共重合体(以下、単に「オレフィン系共重合体」とも呼ぶ。)1.0~45.0質量部と、を含む。
本実施形態のPAS樹脂組成物は、(B1)カーボンナノチューブ(以下、「CNT」とも呼ぶ。)、(B2)無機ナノチューブ、又は(B3)カーボンナノストラクチャー(以下、「CNS」とも呼ぶ。)を所定量含むことにより射出成形におけるバリの発生を抑制することができる。(B1)~(B3)の各成分を含むことでバリの発生が抑制されるのは以下のメカニズムによると推察される。
(B1)CNT
所定の長さで所定のアスペクト比を有するCNTによるバリが抑制されるメカニズムは、低せん断速度領域における溶融粘度の増加や、結晶化速度の向上(核剤効果による固化速度向上)が寄与していると推定される。また、低せん断速度領域における溶融粘度の増加により、離型抵抗の低減を図ることができ、結晶化速度の向上により、成形サイクルの短縮化を図ることができる。
(B2)無機ナノチューブ
無機ナノチューブの添加によりバリが抑制されるメカニズムは、結晶化速度の向上(核剤効果による固化速度向上)が寄与していると推定される。また、結晶化速度の向上により、成形サイクルの短縮化を図ることができる。
(B3)CNS
CNSの添加によりバリが抑制されるメカニズムは、低せん断速度領域における溶融粘度の増加や、結晶化速度の向上(核剤効果による固化速度向上)が寄与していると推定される。また、低せん断速度領域における溶融粘度の増加により、離型抵抗の低減を図ることができ、結晶化速度の向上により、成形サイクルの短縮化を図ることができる。
尚、本実施形態において、「核剤」は、「結晶核剤」、「造核剤」等と同義である。
一方、本実施形態のPAS樹脂組成物は、(C)オレフィン系共重合体を所定量含むことで、金属部材との接合強度を向上させることができる。そのメカニズムは、以下のように推察される。金属部材と樹脂部材との密着性には、これら部材間の線膨張差が影響している。そして、(C)オレフィン系共重合体が金属部材と樹脂部材との部材間の応力緩和を実現することで、ひずみが小さくなり、上記接合強度が改善すると考えられる。
以上のことから、(B)(B1)CNT、(B2)無機ナノチューブ、又は(B3)CNS、及び(C)オレフィン系共重合体をそれぞれ所定量含むことで、バリの発生を抑え、金属部材との接合強度を向上させることができる。
以下に、本実施形態のPAS樹脂組成物の各成分について説明する。
[(A)ポリアリーレンサルファイド樹脂]
PAS樹脂は、機械的性質、電気的性質、耐熱性その他物理的・化学的特性に優れ、且つ加工性が良好であるという特徴を有する。
PAS樹脂は、主として、繰返し単位として-(Ar-S)-(但しArはアリーレン基)で構成された高分子化合物であり、本実施形態では一般的に知られている分子構造のPAS樹脂を使用することができる。
上記アリーレン基としては、例えば、p-フェニレン基、m-フェニレン基、o-フェニレン基、置換フェニレン基、p,p’-ジフェニレンスルフォン基、p,p’-ビフェニレン基、p,p’-ジフェニレンエーテル基、p,p’-ジフェニレンカルボニル基、ナフタレン基等が挙げられる。PAS樹脂は、上記繰返し単位のみからなるホモポリマーでもよいし、下記の異種繰返し単位を含んだコポリマーが加工性等の点から好ましい場合もある。
ホモポリマーとしては、アリーレン基としてp-フェニレン基を用いた、p-フェニレンサルファイド基を繰返し単位とするポリフェニレンサルファイド樹脂が好ましく用いられる。また、コポリマーとしては、前記のアリーレン基からなるアリーレンサルファイド基の中で、相異なる2種以上の組み合わせが使用できるが、中でもp-フェニレンサルファイド基とm-フェニレンサルファイド基を含む組み合わせが特に好ましく用いられる。この中で、p-フェニレンサルファイド基を70モル%以上、好ましくは80モル%以上含むものが、耐熱性、成形性、機械的特性等の物性上の点から適当である。また、これらのPAS樹脂の中で、2官能性ハロゲン芳香族化合物を主体とするモノマーから縮重合によって得られる実質的に直鎖状構造の高分子量ポリマーが、特に好ましく使用できる。尚、本実施形態に用いるPAS樹脂は、異なる2種類以上の分子量のPAS樹脂を混合して用いてもよい。
尚、直鎖状構造のPAS樹脂以外にも、縮重合させるときに、3個以上のハロゲン置換基を有するポリハロ芳香族化合物等のモノマーを少量用いて、部分的に分岐構造又は架橋構造を形成させたポリマーが挙げられる。また、低分子量の直鎖状構造ポリマーを酸素等の存在下、高温で加熱して酸化架橋又は熱架橋により溶融粘度を上昇させ、成形加工性を改良したポリマーも挙げられる。
本実施形態に使用する基体樹脂としてのPAS樹脂の溶融粘度(310℃・せん断速度1200sec-1)は、上記混合系の場合も含め、機械的物性と流動性のバランスの観点から、5~500Pa・sのものを用いることが好ましい。PAS樹脂の溶融粘度は、7~300Pa・sがより好ましく、10~250Pa・sが更に好ましく、13~200Pa・sが特に好ましい。
尚、本実施形態のPAS樹脂組成物は、その効果を損なわない範囲で、樹脂成分として、PAS樹脂に加えて、その他の樹脂成分を含有してもよい。その他の樹脂成分としては、特に限定はなく、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、液晶樹脂、弗素樹脂、環状オレフィン系樹脂(環状オレフィンポリマー、環状オレフィンコポリマー等)、熱可塑性エラストマー、シリコーン系ポリマー、各種の生分解性樹脂等が挙げられる。また、2種類以上の樹脂成分を併用してもよい。その中でも、機械的性質、電気的性質、物理的・化学的特性、加工性等の観点から、ポリアミド樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、液晶樹脂等が好ましく用いられる。
[(B)カーボンナノチューブ、無機ナノチューブ、カーボンナノストラクチャー]
次いで、(B1)カーボンナノチューブ、(B2)無機ナノチューブ、及び(B3)カーボンナノストラクチャーについて説明する。
[(B1)カーボンナノチューブ(CNT)]
本実施形態において用いるCNTは、長さが10000nm超3000000nm以下であり、アスペクト比が2000超500000以下である。当該CNTを用いることで、比較的少量の添加であってもバリの発生を抑えることができる。尚、本実施形態で使用するCNTは、単層カーボンナノチューブ及び多層カーボンナノチューブのいずれでもよい。
ここで、CNTのアスペクト比は、CNTの長さをCNTの直径で除した数値であり、メーカー値(メーカーがカタログ等において公表している数値)を採用することができる。
本実施形態に係るCNTにおいては、長さが10000nm超3000000nm以下であることと、アスペクト比が2000超500000以下であることとが相まってバリの発生を抑制することができる。CNTの長さは、11000~1500000nmが好ましく、12000~500000nmがより好ましい。また、CNTのアスペクト比は、2010~250000が好ましく、2030~100000がより好ましい。また、CNTの直径は、5~100nmが好ましく、7~50nmがより好ましい。
本実施形態においては、PAS樹脂100質量部に対して、CNTを0.05~1.5質量部含む。CNTが0.05質量部未満であると、バリの発生を抑制することができない。また、CNTが1.5質量部を超えると、導電性が付与されやすい。本実施形態のPAS樹脂組成物は、金属部材との優れた接合性を有することからインサート成形品に好適である。但し、インサート成形品に用いる場合には、本実施形態のPAS樹脂組成物は絶縁性を保っていることが好ましい。CNTの含有量は0.1~1.4質量部が好ましく、0.2~1.3質量部がより好ましい。
本実施形態に係るCNTは、上市品としては、LG化学社製、CP1002M、高圧ガス工業(株)製、NTFシリーズ等が挙げられる。
[(B2)無機ナノチューブ]
本実施形態において、無機ナノチューブによるバリ発生の抑制は、上述の通り、核剤効果による固化速度向上に起因すると考えられる。従って、比較的少量の添加であってもバリの発生を抑制することができる。尚、本実施形態において、無機ナノチューブは炭素原子を含まないものに限る。従って、本実施形態において、無機ナノチューブにはカーボンナノチューブは含まない。尚、無機ナノチューブは、直径がナノメートルオーダーサイズのチューブ状の無機物質である。更に、無機ナノチューブは、一般に絶縁性を有するものが多く、絶縁性を有する無機ナノチューブを用いればPAS樹脂組成物の絶縁性が低下することはない。その点においてカーボンナノチューブを用いるものとは異なる。
本実施形態において使用される無機ナノチューブは、アルミノシリケートナノチューブ、窒化ホウ素ナノチューブ、酸化チタンナノチューブ、金属硫化物ナノチューブ、金属ハロゲン化物ナノチューブ等が挙げられる。
アルミノシリケートナノチューブとしては、ハロイサイトナノチューブ又はメタハロイサイトナノチューブが好ましい。これらのうち、低コスト及び入手しやすさの観点からハロイサイトナノチューブが好ましい。
また、金属硫化物ナノチューブとしては、モリブデン硫化物、タングステン硫化物、又は銅硫化物ナノチューブ等が挙げられる。金属ハロゲン化物ナノチューブとしては、塩化ニッケル、塩化カドミウム、又はヨウ化カドミウムナノチューブ等が挙げられる。
本実施形態において、無機ナノチューブの平均長さは100nm~20μmであることが好ましく、500nm~15μmであることがより好ましく、1~10μmであることが更に好ましく、1~5μmであることが特に好ましい。また、無機ナノチューブの平均外径は、5~100nmであることが好ましく、10~80nmであることがより好ましく、30~70μmであることが更に好ましい。更に、無機ナノチューブのアスペクト比は、1~4000が好ましく、5~2000がより好ましい。
ここで、無機ナノチューブのアスペクト比は、無機ナノチューブの長さを無機ナノチューブの直径で除した数値であり、メーカー値(メーカーがカタログ等において公表している数値)を採用することができる。
本実施形態のPAS樹脂組成物において、PAS樹脂100質量部に対して、無機ナノチューブを0.01質量部以上10質量部未満含み、0.01質量部未満であると、バリ発生の抑制効果が不十分となり、10質量部以上であると、例えばシャルピー衝撃強度等の機械物性が悪化しやすい。無機ナノチューブの含有量は、好ましくは0.5~9.9質量部であり、より好ましくは1.0~9.5質量部である。
本実施形態に係る無機ナノチューブの中でもハロイサイトナノチューブは、上市品としては、アプライド・ミネラルズ社製、「ハロイサイト G(685445)」等が挙げられる。
[(B3)カーボンナノストラクチャー(CNS)]
本実施形態で使用するCNSは、複数のカーボンナノチューブが結合した状態で含む構造体であり、カーボンナノチューブは分岐結合や架橋構造で他のカーボンナノチューブと結合している。このようなCNSの詳細は、米国特許出願公開第2013-0071565号明細書、米国特許第9,113,031号明細書、同第9,447,259号明細書、同第9,111,658号明細書に記載されている。
本実施形態において使用するCNSは市販品としてもよい。例えば、CABOT社製のATHLOS 200、ATHLOS 100等を使用することができる。これらのうち、ATHLOS 200は、CNSを構成する最小単位としてのカーボンナノチューブの平均繊維径は10nm程度である。CNSを構成する最小単位としてのカーボンナノチューブの平均繊維径は、例えば0.1~50nmとすることができ、0.1~30nmが好ましい。
本実施形態において、CNSは熱可塑性樹脂100質量部に対して0.01~0.50質量部添加する。当該CNSの添加量が0.01質量部未満であるとバリ発生の抑制が不十分となる。また、CNSが0.50質量部を超えると、導電性が付与されやすい。上述の通り、本実施形態のPAS樹脂組成物は、インサート成形品に好適である。但し、インサート成形品に用いる場合には、本実施形態のPAS樹脂組成物は絶縁性を保っていることが好ましい。当該CNSの添加量は、0.03~0.45質量部が好ましく、0.05~0.40質量部がより好ましく、0.10~0.35質量部が特に好ましい。
本実施形態において、PAS樹脂に(B1)~(B3)成分を添加する方法としては特に限定はなく従来公知の方法によって行うことができる。(B1)~(B3)成分を添加するタイミングとしては、PAS樹脂を重合する際、PAS樹脂組成物の調製時において原料を溶融混練する際等が挙げられる。
PAS樹脂組成物の調製時において、原料の溶融混練時に(B1)~(B3)成分を添加するタイミングとしては、例えば、一旦、PAS樹脂と(B1)~(B3)成分とを加熱・溶融混練し、ペレット化させたマスターバッチとしてからでもよい。その場合、(B1)~(B3)成分によるバリ抑制効果が損なわれない限り、PAS樹脂以外の樹脂を用いてマスターバッチを作製してもよい。
また、一旦、単にPAS樹脂と(B1)~(B3)成分とを攪拌させて得られる混合物としてから添加してもよい。その場合はPAS樹脂及び(B1)~(B3)成分をドライブレンドする方法等が挙げられ、タンブラー又はヘンシェルミキサー等を用いたブレンド方法としてもよい。
PAS樹脂及び(B1)~(B3)成分を配合して溶融混練する方法としては、例えば、PAS樹脂及び(B1)~(B3)成分をそれぞれ押出機に供給してもよいし、PAS樹脂及び(B1)~(B3)成分、その他の配合剤等をドライブレンドしてから押出機に供給してもよいし、一部の原料をサイドフィード方式で供給してもよい。
[(C)オレフィン系共重合体]
本実施形態において用いる(C)オレフィン系共重合体は、炭素原子数2以上のα-オレフィン由来の構成単位を含有する。当該オレフィン系共重合体は、上述の通り、金属部材との接合性を向上させるために使用される。
(C)オレフィン系共重合体としては、以下の(C1)オレフィン系共重合体、及び(C2)オレフィン系共重合体からなる群から選択される少なくとも1種のオレフィン系共重合体が好ましい。
(C1)アミノ基、カルボキシル基、水酸基、酸無水物基、エポキシ基、グリシジル基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、アセトキシ基、シラノール基、アルコキシシラン基、アルキニル基、オキサゾリン基、チオール基、スルホン酸基、スルホン酸塩残基、及びカルボン酸エステル基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を含有するオレフィン系共重合体
(C2)炭素原子数2以上のα-オレフィン由来の構成単位とα,β-不飽和カルボン酸アルキルエステル由来の構成単位とを含有するオレフィン系共重合体
本実施形態において、(C1)~(C2)オレフィン系共重合体は、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。以下、(C1)~(C2)オレフィン系共重合体のそれぞれについて詳述する。
((C1)オレフィン系共重合体)
(C1)オレフィン系共重合体は、上記特定の官能基を含有するオレフィン系共重合体である。すなわち、(C1)オレフィン系共重合体は、炭素原子数2以上のα-オレフィン由来の構成単位とともに上記特定の官能基を含有するオレフィン系共重合体である。上記官能基の中でも、酸無水物基、エポキシ基、グリシジル基がより好ましく、エポキシ基、グリシジル基が更に好ましい。
以下に先ず、炭素原子数2以上のα-オレフィン由来の構成単位について説明する。
《炭素原子数2以上のα-オレフィン由来の構成単位》
炭素原子数2以上のα-オレフィン(以下、単に「α-オレフィン」とも呼ぶ。)としては、特に限定されず、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン等を挙げることができる。中でも、エチレンが好ましい。当該α-オレフィンは、1種単独で使用することもでき、2種以上を併用することもできる。当該α-オレフィン由来の構成単位の含有量は、特に限定されないが、例えば、全樹脂組成物中0.5~20質量%とすることができる。
(C1)オレフィン系共重合体の一つである、グリシジル基又はエポキシ基含有オレフィン系共重合体としては、側鎖にグリシジルエステル、グリシジルエーテルなどを有するオレフィン系共重合体や、二重結合を有するオレフィン系共重合体の二重結合部分を、エポキシ酸化したものなどが挙げられる。
かかるグリシジル基又はエポキシ基含有オレフィン系(共)重合体のより具体的な態様としては、グリシジル基又はエポキシ基を有するモノマーが共重合されたオレフィン系共重合体が挙げられ、特にα-オレフィン及びα,β-不飽和酸のグリシジルエステルを共重合してなるグリシジル基含有オレフィン系共重合体が好適に用いられる。
(C1)オレフィン系共重合体は、炭素原子数2以上のα-オレフィン由来の構成単位の他に、α,β-不飽和酸のグリシジルエステル由来の構成単位を含有することが好ましい。以下に、α,β-不飽和酸のグリシジルエステル由来の構成単位について説明する。尚、本明細書において、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを(メタ)アルキルアクリレートともいう。例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルエステルをグリシジル(メタ)アクリレートともいう。また、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸とメタクリル酸との両方を意味し、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートとの両方を意味する。
《α,β-不飽和酸のグリシジルエステル由来の構成単位》
α,β-不飽和酸のグリシジルエステル(以下、単に「グリシジルエステル」とも呼ぶ。)としては、特に限定されず、例えば、以下の一般式(1)に示される構造を有するものを挙げることができる。
Figure 2023101325000001
[一般式(1)中、Rは、水素又は炭素原子数1以上10以下のアルキル基を示す。]
上記一般式(1)で示される化合物としては、例えば、アクリル酸グリシジルエステル、メタクリル酸グリシジルエステル、エタクリル酸グリシジルエステル等を挙げることができる。中でも、メタクリル酸グリシジルエステルが好ましい。α,β-不飽和酸のグリシジルエステルは、1種単独で使用することもでき、2種以上を併用することもできる。α,β-不飽和酸のグリシジルエステルに由来する構成単位の含有量は、好ましくは全樹脂組成物中0.02~2.5質量%であり、更に好ましくは0.05~1.5質量%であり、特に好ましくは0.08~1.0である。α,β-不飽和酸のグリシジルエステルに由来する構成単位の含有量がこの範囲である場合、流動性の低下及び樹脂部材の強度低下を抑制しつつ、金属部材と樹脂部材との間の接合強度を向上させることができる。
また、(C1)オレフィン系共重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を含有することが好ましい。特に、α,β-不飽和酸のグリシジルエステル由来の構成単位と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位とを含有することが好ましい。以下に、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位について説明する。
《(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位》
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、特に限定されず、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸-n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸-n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸-n-ヘキシル、アクリル酸-n-アミル、アクリル酸-n-オクチル等のアクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸-n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸-n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸-n-ヘキシル、メタクリル酸-n-アミル、メタクリル酸-n-オクチル等のメタクリル酸アルキルエステルが挙げられる。中でも、特にアクリル酸メチルが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、1種単独で使用することもでき、2種以上を併用することもできる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する共重合成分の含有量は、特に限定されないが、例えば、全樹脂組成物中0.2~5.5質量%とすることができる。
より具体的には、(C1)オレフィン系共重合体としては、例えば、無水マレイン酸変性エチレン系共重合体、グリシジルメタクリレート変性エチレン系共重合体、グリシジルエーテル変性エチレン系共重合体、及びエチレンアルキルアクリレート共重合体等が挙げられる。中でも、無水マレイン酸変性エチレン系共重合体、グリシジルメタクリレート変性エチレン系共重合体、グリシジルエーテル変性エチレン系共重合体からなる群から選択される少なくとも1種のオレフィン系共重合体であることが好ましく、グリシジルメタクリレート変性エチレン系共重合体が最も好ましい。
グリシジルメタクリレート変性エチレン系共重合体としては、グリシジルメタクリレートグラフト変性エチレン共重合体、エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン-グリシジルメタクリレート-メチルアクリレート共重合体、エチレン-グリシジルメタクリレート-エチルアクリレート共重合体、エチレン-グリシジルメタクリレート-プロピルアクリレート共重合体、エチレン-グリシジルメタクリレート-ブチルアクリレート共重合体等を挙げることができる。中でも、特に優れた金属樹脂複合成形体が得られることから、エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体及びエチレン-グリシジルメタクリレート-メチルアクリレート共重合体が好ましく、エチレン-グリシジルメタクリレート-メチルアクリレート共重合体が特に好ましい。エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体及びエチレン-グリシジルメタクリレート-メチルアクリレート共重合体の具体例としては、「ボンドファースト」(住友化学(株)製)等が挙げられる。
グリシジルエーテル変性エチレン系共重合体としては、例えば、グリシジルエーテルグラフト変性エチレン共重合体、グリシジルエーテル-エチレン共重合体を挙げることができる。
((C2)炭素原子数2以上のα-オレフィン由来の構成単位とα,β-不飽和カルボン酸アルキルエステル由来の構成単位とを含有するオレフィン系共重合体)
(C2)オレフィン系共重合体は、共重合成分として炭素原子数2以上のα-オレフィン由来の構成単位とα,β-不飽和カルボン酸アルキルエステル由来の構成単位とを含有する。また、ランダム、ブロック又はグラフト共重合体や、その共重合体を不飽和カルボン酸及びその酸無水物及びそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種で変性したものであってもよい(但し、(C1)オレフィン系共重合体に該当するものを除く。)。
炭素原子数2以上のα-オレフィン由来の構成単位については上述したので、以下においてはα,β-不飽和カルボン酸アルキルエステル由来の構成単位について説明する。
《α,β-不飽和カルボン酸アルキルエステル由来の構成単位》
α,β-不飽和カルボン酸アルキルエステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸-n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸-n-ブチル、アクリル酸-t-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸-n-ブチル、メタクリル酸-t-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシエチル等を用いることができる。
変性剤として用いられる不飽和カルボン酸又はその酸無水物としては、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メチルマレイン酸、メチルフマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、フマル酸モノエチル、イタコン酸メチル、無水メチルマレイン酸、無水マレイン酸、無水メチルマレイン酸、無水シトラコン酸等が挙げられ、これらは一種又は二種以上で使用される。
(C2)オレフィン系共重合体の具体例としては、エチレンアクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレンメタクリル酸メチル共重合体等のエチレンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体等が挙げられる。
(C1)~(C2)オレフィン系共重合体は、従来公知の方法で共重合を行うことにより製造することができる。例えば、通常よく知られたラジカル重合反応により共重合を行うことによって、上記オレフィン系共重合体を得ることができる。オレフィン系共重合体の種類は、特に問われず、例えば、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。また、上記オレフィン系共重合体に、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、ポリ(メタ)アクリル酸-2エチルヘキシル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル-スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸ブチル-スチレン共重合体等が、分岐状に又は架橋構造的に化学結合したオレフィン系グラフト共重合体であってもよい。
本実施形態のPAS樹脂組成物において、(C)オレフィン系共重合体は、PAS樹脂100質量部に対して、1.0~45.0質量部含有する。当該オレフィン系共重合体が1.0質量部未満であると、金属部材との接合強度を向上させることが難しい傾向があり、45.0質量部を超えると、流動性が低下したり、成形時のガス発生が多くなったりすることにより、成形不良が発生しやすくなる。加えて、流動性が低下すると、金属部材の表面の凹凸に樹脂部材の一部が埋入しにくくなるため、金属部材と樹脂部材との接合強度が低下しやすくなる。当該オレフィン系共重合体は、3.0~41.0質量部含有することが好ましく、3.5~25.0質量部含有することがより好ましく、4.0~20.0質量部含有することが更に好ましく、4.5~17.0質量部含有することが特に好ましい。
本実施形態に用いる(C)オレフィン系共重合体は、その効果を害さない範囲で、他の共重合成分由来の構成単位を含有することができる。
[(D)無機充填剤]
本実施形態のPAS樹脂組成物は、(D)無機充填剤を含むことが好ましい。中でも、無機充填剤は、機械的強度、耐熱性等をより向上させることができるため、繊維状無機充填剤を含んでいることが好ましい。
また、無機充填剤は、繊維状無機充填剤と板状無機充填剤及び/又は粉粒状無機充填剤との組合せからなってもよい。
本実施形態において、「繊維状」とは、異径比が1以上4以下、かつ、平均繊維長(カット長)が0.01~3mmの形状をいう。「板状」とは、異径比が4より大きく、かつ、アスペクト比が1以上500以下の形状をいう。「粉粒状」とは、異径比が1以上4以下、かつ、アスペクト比が1以上2以下の形状(球状を含む。)をいう。いずれの形状も初期形状(溶融混練前の形状)である。異径比とは、「長手方向に直角の断面の長径(断面の最長の直線距離)/当該断面の短径(長径と直角方向の最長の直線距離)」である。アスペクト比とは、「長手方向の最長の直線距離/長手方向に直角の断面の短径(当該断面における最長距離の直線と直角方向の最長の直線距離)」である。異径比及びアスペクト比は、いずれも、走査型電子顕微鏡及び画像処理ソフトを用いて算出することができる。また、平均繊維長(カット長)はメーカー値(メーカーがカタログなどにおいて公表している数値)を採用することができる。
繊維状無機充填剤の例としては、ガラス繊維、カーボン繊維、酸化亜鉛繊維、酸化チタン繊維、ウォラストナイト、シリカ繊維、シリカ-アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化ケイ素繊維、硼素繊維、チタン酸カリ繊維、等の鉱物繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維、チタン繊維、銅繊維、真鍮繊維等の金属繊維状物質、ポリアミド繊維、高分子量ポリエチレン繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、フッ素繊維等の合成繊維が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。中でも、ガラス繊維が好ましい。
ガラス繊維の上市品の例としては、日本電気硝子(株)製、チョップドガラス繊維(ECS03T-790DE、平均繊維径:6μm)、オーウェンス コーニング ジャパン(同)製、チョップドガラス繊維(CS03DE 416A、平均繊維径:6μm)、日本電気硝子(株)製、チョップドガラス繊維(ECS03T-747H、平均繊維径:10.5μm)、日本電気硝子(株)製、チョップドガラス繊維(ECS03T-747、平均繊維径:13μm)、日東紡績(株)製、異形断面チョップドストランド CSG 3PA-830(長径28μm、短径7μm)、日東紡績(株)製、異形断面チョップドストランド CSG 3PL-962(長径20μm、短径10μm)等が挙げられる。
繊維状無機充填剤は、一般的に知られているエポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物、脂肪酸等の各種表面処理剤により表面処理されていてもよい。表面処理により、PAS樹脂との密着性を向上させることができる。表面処理剤は、材料調製の前に予め繊維状無機充填剤に適用して表面処理又は収束処理を施しておくか、又は材料調製の際に同時に添加してもよい。
繊維状無機充填剤の繊維径は、特に限定されないが、初期形状(溶融混練前の形状)において、例えば5μm以上30μm以下とすることができる。ここで、繊維状無機フィラーの繊維径とは、繊維状無機充填剤の繊維断面の長径をいう。
繊維状無機充填剤の断面形状は、特に限定されないが丸型形状や扁平形状等を挙げることができる。また、断面形状の異なる繊維状無機充填剤を併用してもよい。
板状無機充填剤としては、例えば、ガラスフレーク、タルク(板状)、マイカ、カオリン、クレイ、アルミナ(板状)、各種の金属箔等が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。
板状無機充填剤は、繊維状無機充填剤と同様に表面処理されていてもよい。
粉粒状無機充填剤としては、カーボンブラック、シリカ、球状シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、タルク(粒状)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、珪藻土等のケイ酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ(粒状)等の金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の金属炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の金属硫酸塩、その他炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、各種金属粉末等が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。中でも、ガラスビーズ、球状シリカが好ましい。
ガラスビーズの上市品の例としては、ポッターズ・バロティーニ(株)製、EGB731A(平均粒子径(50%d):20μm)、ポッターズ・バロティーニ(株)製、EMB-10(平均粒子径(50%d):5μm)等が挙げられる。また、球状シリカの上市品の例としては、(株)アドマテックス製、アドマファインSO-C2(平均粒子径(50%d):0.5μm)、デンカ(株)製、FB-5SDC(平均粒子径(50%d):4.2μm)等が挙げられる。
粉粒状無機充填剤も、繊維状無機充填剤と同様に表面処理されていてもよい。
以上の無機充填剤としては、ガラス繊維、ガラスビーズ、及び球状シリカからなる群から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
本実施形態のPAS樹脂組成物において、無機充填剤は、PAS樹脂100質量部に対して、5~250質量部含有していることが好ましい。当該無機充填剤が5質量部未満であると、機械的物性が不十分となりやすく、250質量部を超えると、流動性が低下しやすい。当該無機充填剤は、15~200質量部含有することがより好ましく、25~150質量部含有することが更に好ましく、30~110質量部含有することが特に好ましい。
[他の成分]
本実施形態のPAS樹脂組成物は、その効果を妨げない範囲で、その目的に応じた所望の特性を付与するために、一般に熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂に添加される公知の添加剤、すなわち滑剤、核剤、難燃剤、難燃助剤、酸化防止剤、金属不活性剤、その他老化防止剤、UV吸収剤、安定剤、可塑剤、顔料、染料、着色剤、帯電防止剤、発泡剤、腐食防止剤等を要求性能に応じ配合することが可能である。添加剤の含有量は、例えば、全樹脂組成物中5質量%以下にすることができる。
本実施形態のPAS樹脂組成物は、バリの抑制と、金属部材との接合強度の向上とを両立する観点から、エポキシ基含有量が0.01~0.20質量%であることが好ましく、0.02~0.19質量%であることがより好ましく、0.02~0.13質量%であることが更に好ましく、0.02~0.11質量%であることがより更に好ましく、0.03~0.09であることが特に好ましい。尚、エポキシ基としては、グリシジル基の一部たるエポキシ基をも含む。
本実施形態のPAS樹脂組成物を用いて成形品を成形する方法としては特に限定はなく、当該技術分野で知られている各種方法を採用することができる。例えば、本実施形態のPAS樹脂組成物を押出機に投入して溶融混練してペレット化し、このペレットを所定の金型を装備した射出成形機に投入し、射出成形することで作製することができる。
PAS樹脂成形品の形状は特に限定されず用途に応じて適宜選択することができる。例えば、シート状、板状、筒状、被膜状等の他、所望の形状の三次元成形体に成形することができる。
<金属樹脂複合成形体>
本実施形態の金属樹脂複合成形体は、インサート金属部材を用いて、上述の本実施形態のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物をインサート成形して形成された樹脂部材を備え、インサート金属部材の、樹脂部材と接する表面の少なくとも一部が、物理的処理及び/又は化学的処理を施されている。
本実施形態の金属樹脂複合成形体は、(B)(B1)長さが10000nm超3000000nm以下であり、アスペクト比が2000超500000以下のカーボンナノチューブ、(B2)無機ナノチューブ(但し、炭素原子を含まないものに限る。)、又は(B3)カーボンナノストラクチャーと、(C)炭素原子数2以上のα-オレフィン由来の構成単位を含有するオレフィン系共重合体とを併用し、これら各成分中の含有量を所定の範囲に調整したPAS樹脂組成物を用いたものであるため、成形時においてバリの発生が少なく、成形後においてはインサート金属部材と樹脂部材との間で接合強度に優れる。
本実施形態の金属樹脂複合成形体は、上記のような特性を有するため、インサート金属部材と樹脂部材との接合強度に優れることを要求される用途に好適に使用することができる。例えば、本実施形態の金属樹脂複合成形体は、湿度や水分により悪影響を受けやすい電気・電子部品等を内部に備える金属樹脂複合成形体として好適である。特に、高レベルで防水が求められる分野、例えば、川、プール、スキー場、お風呂等での使用が想定される、水分や湿気の侵入が故障に繋がる電気又は電子機器用の部品として用いることが好適である。また、本実施形態の金属樹脂複合成形体は、例えば、内部に樹脂製のボスや保持部材等を備えた、電気・電子機器用筐体としても有用である。ここで、電気・電子機器用筐体としては、携帯電話の他に、カメラ、ビデオ一体型カメラ、デジタルカメラ等の携帯用映像電子機器の筐体、ノート型パソコン、電卓、携帯電話等の携帯用情報あるいは通信端末の筐体、ラジオ等の携帯用音響電子機器の筐体、液晶TV・モニター、電話、ファクシミリ、ハンドスキャナー等の家庭用電化機器の筐体等を挙げることができる。
[インサート金属部材]
本実施形態の金属樹脂複合成形体に使用されるインサート金属部材は、樹脂部材と接する表面の少なくとも一部、好ましくは全部が、物理的処理及び/又は化学的処理を施されている。
インサート金属部材を構成する金属材料は特に限定されず、その例としては、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、及びマグネシウム合金からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
本実施形態では、用途等に応じて所望の形状に成形したインサート金属部材を使用する。例えば、所望の形状の型に溶融した金属等を流し込むことで、所望の形状のインサート金属部材を得ることができる。また、インサート金属部材を所望の形状に成形するために、工作機械等による切削加工等を用いてもよい。
上記のようにして得られたインサート金属部材の表面に、物理的処理及び/又は化学的処理を施す。物理的処理及び/又は化学的処理を施す位置や、処理範囲の大きさは、樹脂部材が形成される位置等を考慮して決定される。
物理的処理及び化学的処理は、特に限定されず、公知の物理的処理及び化学的処理を用いることができる。物理的処理により、インサート金属部材の表面は粗面化され、粗面化領域に形成された孔に、樹脂部材を構成する樹脂組成物が入り込むことでアンカー効果が発現し、インサート金属部材と樹脂部材との界面における接合強度が向上する。一方、化学的処理により、インサート金属部材とインサート成形される樹脂部材との間に、共有結合、水素結合、又は分子間力等の化学的接着効果が付与されるため、インサート金属部材と樹脂部材との界面における接合強度が向上する。化学的処理は、インサート金属部材の表面の粗面化を伴うものであってもよく、この場合には、物理的処理と同様のアンカー効果が生じて、インサート金属部材と樹脂部材との界面における接合強度が更に向上する。
物理的処理としては、例えば、レーザー処理、サンドブラスト(特開2001-225346号公報)等が挙げられる。複数の物理的処理を組み合わせて施してもよい。
化学的処理としては、例えば、コロナ放電等の乾式処理、トリアジン処理(特開2000-218935号公報)、ケミカルエッチング(特開2001-225352号公報)、陽極酸化処理(特開2010-64496号公報)、ヒドラジン処理等が挙げられる。また、インサート金属部材を構成する金属材料がアルミニウムである場合には、温水処理(特開平8-142110号公報)も挙げられる。温水処理としては、100℃の水への3~5分間の浸漬が挙げられる。複数の化学的処理を組み合わせて施してもよい。
以上の物理的処理及び化学的処理を組合せて施してもよい。
[樹脂部材]
本実施形態で用いられる樹脂部材は、上述の本実施形態のPAS樹脂組成物から構成され、インサート金属部材を用いてインサート成形される。
<金属樹脂複合成形体の製造方法>
本実施形態の金属樹脂複合成形体の製造方法は、表面の少なくとも一部が物理的処理及び/又は化学的処理を施されたインサート金属部材を射出成形用金型内に配置し、上述の本実施形態のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物を溶融状態で射出成形用金型内に射出して、インサート金属部材を、ポリアリーレンサルファイド樹脂組成物からなる樹脂部材と一体化する一体化工程を有する。
本実施形態の金属樹脂複合成形体の製造方法の具体的な工程は特に限定されず、上記インサート金属部材の、物理的処理及び/又は化学的処理を施された表面の少なくとも一部を介してインサート金属部材と樹脂部材と密着させることで、インサート金属部材と樹脂部材とを一体化させるものであればよい。
例えば、表面の少なくとも一部が物理的処理及び/ 又は化学的処理を施されたインサート金属部材を射出成形用金型内に配置し、本実施形態のPAS樹脂組成物を溶融状態で上記射出成形用金型内に射出して、インサート金属部材と樹脂部材とが一体化した金属樹脂複合成形体を製造する方法が挙げられる。射出成形の条件は特に限定されず、PAS樹脂の物性等に応じて、適宜、好ましい条件を設定することができる。また、トランスファ成形、圧縮成形等を用いる方法もインサート金属部材と樹脂部材とが一体化した金属樹脂複合成形体を形成する有効な方法である。これらの方法において、上記インサート金属部材の、上記樹脂部材と接する表面の少なくとも一部、好ましくは全部が、物理的処理及び/又は化学的処理を施されている。
他の例としては、予め射出成形法等の一般的な成形方法で樹脂部材を製造し、物理的処理及び/又は化学的処理を施されているインサート金属部材と上記樹脂部材とを、所望の接合位置で当接させ、当接面に熱を与えることで、樹脂部材の当接面付近を溶融させて、インサート金属部材と樹脂部材とが一体化した金属樹脂複合成形体を製造する方法が挙げられる。この方法においても、上記インサート金属部材の、上記樹脂部材と接する表面の少なくとも一部、好ましくは全部が、物理的処理及び/又は化学的処理を施されている。
以下に、実施例により本実施形態を更に具体的に説明するが、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1~2、比較例1~3]
各実施例・比較例において、表1に示す各原料成分をドライブレンドした後、シリンダー温度320℃の二軸押出機に投入して(ガラス繊維は押出機のサイドフィード部より別添加)、溶融混練し、ペレット化した。尚、表1において、各成分の数値は質量部を示す。
また、使用した各原料成分の詳細を以下に示す。
(1)PAS樹脂
・PPS樹脂:(株)クレハ製、フォートロンKPS(溶融粘度:20Pa・s(せん断速度:1200sec-1、310℃))
(PPS樹脂の溶融粘度の測定)
上記PPS樹脂の溶融粘度は以下のようにして測定した。
(株)東洋精機製作所製キャピログラフを用い、キャピラリーとして1mmφ×20mmLのフラットダイを使用し、バレル温度310℃、せん断速度1200sec-1での溶融粘度を測定した。
(2)カーボンナノストラクチャー(CNS)
・CNS:CABOT社製、ATHLOS 200
(3)バリ抑制剤
・分岐型PPS樹脂:国際公開第2006/068161号明細書に記載の合成例3と同様にして製造した分岐型PPS樹脂
(4)オレフィン系共重合体
・オレフィン系共重合体1(グリシジル基含有オレフィン系共重合体:住友化学(株)製、ボンドファースト(登録商標)BF-7L(エチレン-グリシジルジメタクリレート-メチルアクリレート共重合体)、グリシジルメタクリレート含有量:3質量%
(5)無機充填剤
・ガラス繊維:日本電気硝子(株)製、チョップドストランドECS 03 T-747、繊維径:10.5μm、長さ:3mm
[評価]
得られた各実施例・比較例のペレットを用いて以下の評価を行った。
(1)バリ長
一部に20μmの金型間隙を有するバリ測定部が外周に設けられている円盤状キャビティーの金型を用いて、シリンダー温度320℃、金型温度150℃で、キャビティーが完全に充填するのに必要な最小圧力で射出成形した。そして、その部分に発生するバリ長さを写像投影機((株)ミツトヨ製CNC画像測定機(型式:QVBHU404-PRO1F))にて拡大して測定した。測定結果を表1に示す。
(2)樹脂組成物の溶融粘度
(株)東洋精機製作所製キャピログラフを用い、キャピラリーとして1mmφ×20mmLのフラットダイを使用し、バレル温度310℃、せん断速度1000sec-1での溶融粘度(MV)を測定した。測定結果を表1に示す。
次いで、各実施例・比較例で得られたペレットと以下に示すインサート金属部材とを用いてインサート成形し、金属樹脂複合成形体を作製した。以下にインサート成形について説明する。
< インサート金属部材の化学的処理>
インサート金属部材として、アルミニウム(A1100、厚さ1.5mm)から構成され、下記の通りにして化学的処理を施した板状物を用いた。これら板状のインサート金属部材は、図1(a)の斜線で示す部分に接合面を有する。
[化学的処理]
アルミニウム製のインサート金属部材の表面を、下記組成のアルカリ脱脂液(水溶液)に5分間浸漬して脱脂処理を行い、次に下記組成のエッチング液C(水溶液)に3分間浸漬してインサート金属部材表面をエッチングした。
・アルカリ脱脂液(温度40℃)
AS-165F(荏原ユージライト(株)製):50ml/L
・エッチング液C(温度40℃)
OF-901(荏原ユージライト(株)製):12g/L
水酸化マグネシウム:25g/L
<金属樹脂複合成形体の作製>
化学的処理を施したインサート金属部材を金型に配置し、このインサート金属部材を各実施例・比較例で調製した樹脂組成物からなる樹脂部材と一体化する一体化工程を行った。成形条件は以下の通りである。金属樹脂複合成形体はISO19095-2に準拠しており、その形状は図1に示す通りである。すなわち、図1に示すように、金属樹脂複合成形体10は、インサート金属部材12と樹脂部材14とが一部で接合した状態で一体化された形状である。図1において、各部材の寸法を示す数値の単位は「mm」である。すなわち、インサート金属部材12は、18mm×45mm×1.5mmtの板状であり、樹脂部材14は10mm×45mm×3.0mmtの板状である。また、インサート金属部材12と樹脂部材14との接合部分の面積は50mmである。
[成形条件]
成形機:ソディックTR100EH
シリンダー温度:320℃
金型温度:150℃
射出速度:15mm/s
保圧力:80MPa×5秒
<金属樹脂複合成形体の評価>
上記の方法で作製した金属樹脂複合成形体について、接合部分の接合強度を評価した。具体的な評価方法は以下の通りである。
[接合強度]
ISO19095に準拠して、以下のようにして接合強度を測定した。まず、上記のようにして得た金属樹脂複合成形体10を、図2に示すように治具20中に配置した。次いで、インサート金属部材12の上端部近傍をチャック22に固定した。更に、治具20の位置を固定した状態とし、樹脂部材14からインサート金属部材12を引き剥がすように、チャック22を10mm/分の速度で図2の矢印方向に引き上げた。そして、樹脂部材14からインサート金属部材12が剥がれた時点での強度を接合強度として測定した。尚、測定機器としてオートグラフAG-20kNXD((株)島津製作所製)を使用した。測定結果を表1に示す(値は3回の試験における平均値である)。
Figure 2023101325000002
表1より、実施例1~2においては、比較例1~3と比較して、バリ長が短く、かつ、接合強度が高いことが分かる。すなわち、カーボンナノストラクチャー及びオレフィン系共重合体を含む実施例1~2は、バリの発生が抑制され、かつ、インサート金属部材との接合強度に優れることが分かる。これに対して、カーボンナノストラクチャーもバリ抑制剤も用いなかった比較例1、及びバリ抑制剤として分岐型PPS樹脂を用いたもののその量が少ない比較例2はいずれもバリ長が長く、バリの発生の抑制が十分にできなかった。また、バリ抑制剤として十分な量の分岐型PPS樹脂を用いた比較例3は、バリの発生は若干抑制されたものの、接合強度に劣っていた。
10 金属樹脂複合成形体
12 インサート金属部材
14 樹脂部材
20 治具
22 チャック

Claims (10)

  1. 物理的処理及び/又は化学的処理が施されているインサート金属部材を用いてインサート成形するためのポリアリーレンサルファイド樹脂組成物であって、
    (A)ポリアリーレンサルファイド樹脂100質量部に対して、
    (B)(B1)長さが10000nm超3000000nm以下であり、アスペクト比が2000超500000以下のカーボンナノチューブ0.05~1.5質量部、(B2)無機ナノチューブ(但し、炭素原子を含まないものに限る。)0.01質量部以上10質量部未満、又は(B3)カーボンナノストラクチャー0.01~0.50質量部と、
    (C)炭素原子数2以上のα-オレフィン由来の構成単位を含有するオレフィン系共重合体1.0~45.0質量部と、を含む、ポリアリーレンサルファイド樹脂組成物。
  2. エポキシ基含有量が0.01~0.20質量%である、請求項1に記載のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物。
  3. 前記(A)ポリアリーレンサルファイド樹脂100質量部に対して、更に(D)無機充填剤を5~250質量部含む、請求項1又は2に記載のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物。
  4. 前記(D)無機充填剤が、ガラス繊維、ガラスビーズ、及び球状シリカからなる群から選択される1種又は2種以上である、請求項3に記載のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物。
  5. 前記(C)炭素原子数2以上のα-オレフィン由来の構成単位を含有するオレフィン系共重合体が、
    (C1)アミノ基、カルボキシル基、水酸基、酸無水物基、エポキシ基、グリシジル基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、アセトキシ基、シラノール基、アルコキシシラン基、アルキニル基、オキサゾリン基、チオール基、スルホン酸基、スルホン酸塩残基、及びカルボン酸エステル基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を含有するオレフィン系共重合体、並びに
    (C2)炭素原子数2以上のα-オレフィン由来の構成単位とα,β-不飽和カルボン酸アルキルエステル由来の構成単位とを含有するオレフィン系共重合体、
    からなる群から選択される少なくとも1種のオレフィン系共重合体である、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物。
  6. 前記(C1)オレフィン系共重合体が、α,β-不飽和酸のグリシジルエステル由来の構成単位を含有する、請求項5に記載のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物。
  7. 前記(C1)オレフィン系共重合体が、無水マレイン酸変性エチレン系共重合体、グリシジルメタクリレート変性エチレン系共重合体、グリシジルエーテル変性エチレン系共重合体からなる群から選択される少なくとも1種のオレフィン系共重合体である、請求項5又は6に記載のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物。
  8. 前記(C1)オレフィン系共重合体が、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を更に含有する、請求項5~7のいずれか1項に記載のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物。
  9. インサート金属部材を用いて、請求項1~8のいずれか1項に記載のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物をインサート成形して形成された樹脂部材を備え、
    前記インサート金属部材の、前記樹脂部材と接する表面の少なくとも一部が、物理的処理及び/又は化学的処理を施されている、金属樹脂複合成形体。
  10. 表面の少なくとも一部が物理的処理及び/又は化学的処理を施されたインサート金属部材を射出成形用金型内に配置し、
    請求項1~9のいずれか1項に記載のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物を溶融状態で前記射出成形用金型内に射出して、前記インサート金属部材を、前記ポリアリーレンサルファイド樹脂組成物からなる樹脂部材と一体化する一体化工程を有する、金属樹脂複合成形体の製造方法。
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