JP2023100587A - 被ばくと防護負荷を低減する複合化した防護機器・器具 - Google Patents

被ばくと防護負荷を低減する複合化した防護機器・器具 Download PDF

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Abstract

【課題】従来、医療用のX線透視装置では特定の方位のみ作用する防護具を利用していた。本発明は、患者人体から全方位の散乱X線による医療従事者の被ばく線量と防護に係る身体的負荷を低減する。【解決手段】本発明は複数の防護機器(PD)を組み合わせることで、1次X線を良く透過させ、全方位への散乱X線の強度を低減できる。低減の対象とする散乱X線は、PDである追加シールドボックス1は上方と側方、高機能テーブル2は下方である。また、PDに加えて防護器具(PI:患者の掛布18と着衣63)を組み合わせることで、手術時の人体の動きによりボックスの貫通ポートから側方へ漏出する散乱X線の強度を低減できる。複合吸収材料を各所に利用すれば、散乱X線を減弱させた上で線エネルギー吸収できる。これにより、医療従事者と患者の被ばくを低減すると共に、医療従事者の防護負荷を低減できる。【選択図】図5

Description

本発明は、エックス線(以下、「X線」と記載する)透視装置を利用する医療分野において、医療従事者や患者の被ばく線量と放射線防護に係る負荷を低減できる医療用のアンダーチューブ型のX線透視装置に付加する複合化した防護機器・器具を提供する。
医療分野での放射線利用は普及が進んでいる。その代表的なものに、インターベンショナル・ラジオロジー(Interventional Radiology、以下、「IVR」と呼ぶ)の手法を用いた治療がある。IVRでは、X線透視像や血管造影像などを見ながら、体内にカテーテルと呼ばれる細い管や針などを入れる。これにより、外科的手術なしで出来るだけ体に傷を残さずに病気を治療できる。
今日では臨床的処置として数多くの手術を行う各診療科の専門医(以下、「術者」という)が、X線透視装置を使用している。放射線を使用した診療は着実に増加しており、患者と医療従事者の被ばくを伴う処置も頻繁に実施されている。最近では、パルス透視や選択的血管造影等の技術がさらに進歩している。しかし、利用機会の増加に伴いX線照射による被ばく時間が長くなる傾向にあり、患者の医療被ばくや医療従事者の職業被ばくの増加をもたらしている。また、場合によっては放射線防護上の対応が立ち遅れている部分もあり、そのため医療従事者と患者の放射線障害のリスクが高まっている。
血管造影法(アンギオグラフィ)ではX線透視装置(以下、「アンギオ装置」という)を適用する。アンギオグラフィとは、血管内に造影剤を注入し、その流れをX線で撮影することによって、血管そのものの形状などを観察する方法である。X線を通しにくい造影剤を目的の血管に流し込んでから、X線撮影をすることで、造影剤の入った部分の血管の形をはっきりと写しだすことができる。また、アンギオ装置では手術の時間中は常に透視または観察を行っている。そのため、アンギオ装置を使用する医療行為によって、医療従事者と患者は被ばく線量が多い。最近のアンギオ装置では医療被ばくや医療従事者の職業被ばくを低減するために、X線をパルス照射するものもある。
ここではアンギオ装置を代表例として、その構造・使用法およびX線の挙動を説明する。アンギオ装置の代表的な構造は、患者が横たわる寝台(以下、「テーブル」という)の上下のどちらかにX線管球を設置する。加えて、反対方向に対として設置したX線受像機にて患者を透過したX線を受光する。アンギオ装置では本来的にX線の直接線はX線源中のX線管球を出て患者を通過して受像機に至るという、一直線で一方向の照射経路である。上記X線管球から照射され患者を通過したX線の少ない一部分が受像機に入射する。入射したX線の一部は透視画像データとなって伝送されて液晶TV画面に表示される。しかし、X線の多くは患者人体で散乱し、装置の周囲に散乱線として放出される。
X線源をテーブルの下方に置くアンダーチューブ型のアンギオ装置の場合は、X線管球からの1次X線とその小角散乱X線は上方に向けて進む。しかし、テーブルと患者人体による散乱X線は、上方だけではなく、側方および下方に進む。なお、非特許文献1(ICRP、2017年)によれば、アンダーチューブ型での散乱X線は、テーブル下方での光子数が最も多いと述べている。
特許文献1は、例えば100KeV程度のアンダーチューブ型の1次X線であれば、散乱と吸収は次のような割合だと述べている。身体組織により約80%が散乱され、10数%が吸収される。テーブルにより多くが散乱され、約3%が吸収される。これにより、X線受像機に透過するのは約3%である。
医療従事者と患者の放射線防護のために、非特許文献1(ICRP、2017年)では、防護具の使用が提案されている。この防護具は、個人用には鉛エプロン、眼の保護具(防護メガネ)、甲状腺保護具である。また、複数名用には防護カーテン、天井懸架型遮へい板や搭載型遮へい板である。しかし、これらの放射線防護具等は、特定の方向に向けて平面的に飛来するX線のみ、すなわち意図した方位だけからのX線を防護することを想定している。そのため、これらの放射線防護具等による被ばく低減の効果は、特定の方向に限られた限定的なものになる。故に、これらの防護具は、手術で動き回る医療従事者の被ばくを幾分かでも低減することが目的となる。これらの防護具では、あちこちの方位からの散乱X線による被ばく低減の根本的な解決策にはならない。
特に、近年では術者の眼の被ばくを低減するために法規制による水晶体線量の制限が設けられている。これに伴いIVR医師は、防護メガネに加えて水晶体線量計を装着する例が増えている。しかし、アンダーチューブ型での照射野の周辺からの小角散乱X線はエネルギーが高く、1次X線と同程度の強度がある。これらの前方散乱X線が術者の眼に照射される。そのため、現状の鉛メガネやゴーグル等ではメガネ下面や側面の遮蔽が不十分である。しかし、防護メガネは身体的負荷を軽減のために重量が小さいものとせざるを得ない。従って、術者の水晶体線量を十分に低下するのは一定の限界がある。
上述の通り、散乱X線は、患者人体から見て前方、側方、後方の3方位がある。これらは散乱X線のエネルギーは発生源とその実効エネルギーにより3種類に大別される。エネルギーが最も高いのは照射野とその周辺から上方(アンダーチューブ型の前方)へ発生する小角散乱X線である。小角散乱X線は前方散乱X線に含まれる。次にエネルギーが高いのは照射野に近い場所から前方・側方・後方の3方位(以下、「全方位」という)に発生する散乱X線である。エネルギーが最も低いのは、照射野から40cm以内の患者人体の全身から発生する人体組織で何回か再散乱した散乱X線(以下、「全身からの散乱X線」という)である。
特許文献1は、同一発明者による散乱X線の複合吸収材料に関するものである。特許文献1は、異なった役割を持った3層以上を密着して重ねた多層により、散乱X線を減弱させて吸収する複合吸収材料を提案している。複合吸収材料は、鉛(Pb)の低反射減弱層(初層)、多層吸収層(拡散吸収体、電子吸収体)で構成される。多くの場合では、多層吸収層にはスズ(Sn)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、銅(Cu)、鉄(Fe)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)等の金属の平板または箔が利用される。1~3対の拡散吸収体と電子吸収体の対を隙間なく重ね合わせて配置することで、入射した散乱X線を効率的に線エネルギー吸収する。線エネルギー吸収により特性X線と制動X線による2次X線が発生する。発生した2次X線は入射方向を含めて全方位に散乱する。散乱した2次X線は、周囲や両側の層の材料に向けて進み、そこで同様の反応が起こる。これが拡散押戻しである。この全ての過程で、X線は持っているエネルギーを光電子等の運動エネルギー等に変換させることで消滅する。手術時の患者人体で発生した散乱X線は、この複合吸収材料によって、減弱させて吸収できる。
また、特許文献1の実施例17と図13では、複合吸収材料を使った患者人体上の掛布とテーブル上の敷布と着衣および頭部カバーが実施例として示されている。掛布、着衣および頭部カバー等の散乱X線の吸収体は、主に可撓性の複合吸収材料を使用する。テーブル上の敷布は、剛性の複合吸収材料を使用する場合もある。また、上述の掛布と敷布は、照射野の部位をくり抜いている。なお、特許文献1は材料特許である。
特許文献2は、同一発明者によるX線を良く透過させて散乱を低減する医療用テーブル(以下、「高機能テーブル」という)に関するものである。この高機能テーブルは、次の最大3段で構成される。これは、患者等の体重を支持して散乱X線を吸収する天板の段、照射野の可動絞りと吸収体を兼ねた中間の段、低反射かつ低散乱な材料による底板の段である。これら3段のいずれか1段もしくは2段のみでも一定の機能は発揮される。
このテーブルでは、1次X線は中空の空間を通過後にテーブル天板の網またはCFRP等の薄膜による透過板ユニットを通過して相互作用なく患者人体の患部の照射野に至る。テーブル天板は患者人体で発生する散乱X線を複合吸収材料によって減弱して吸収する。
底板の照射野の部位は切り欠きとし、1次X線を散乱なく透過させる。また、各所の調整機能によって、1次X線を透過させる照射野の位置と最低限の開口寸法に調節する。この各所とは、天板の段の透過板ユニット、中間の段のスライドテーブルと絞り板および底板の段の開閉板である。
これらにより高機能テーブルでは、1次X線は、散乱が少なく、高い位置精度で透過する。従って、X線受像機の画質が鮮明になる。X線受像機の画質を鮮明なれば、より低い1次X線のエネルギーによりX線透視装置を利用できる。
一方、照射野以外の部位では遮へい材料または複合吸収材料(以下、「機能材料」という)によって有効に線減衰と線エネルギー吸収を行う。同時に下方への散乱X線の強度を低減する。これらにより、1次X線を良く透過し、医療従事者と患者の被ばく線量を低減できる。
特許文献3は、同一発明者による被ばく低減と防護負荷の低減を目的とする追加シールドボックス(以下、「ボックス」という)に関するものである。この発明のボックスの構成は、次の通りである。構成は、ボックス本体、ボックス天板、覗き窓、患者ポート、同左用の遮へいシート、スリーブポート、同左用のスリーブ構造体である。なお、特許文献3では遮へいシートを掛布と一緒に扱っており、統合して掛布等と呼んでいた。本発明では、これらを別々に区分して扱う。
追加シールドボックスは、患者人体の体幹部等の照射野を取り囲んでテーブル上に組み立てて設置する。このボックスは、手術を行っていない静置時には、立体的にどの方位にも外部空間と通じた開口がない。患者人体は、身長の方向(以下、「体軸方向」という)の両端部に設けた患者ポートを介してボックスを貫通する。頭部と下肢部は、被ばくを避けるためにボックス外に置かれる。ここでは患者ポートの余空間は可撓性の遮へいシートで塞がれる。
また、医療従事者は、手術時には遮へい能力のある覗き窓によりボックス内部を視認する。同時に、ここではスリーブポートに取り付けたスリーブ構造体を介して手腕を挿入して医療行為を行う。スリーブ構造体にも遮へい能力がある。
特許文献3の追加シールドボックスは、1次X線による照射野の周辺から上方への小角散乱X線と患者人体で発生する上方または側方への散乱X線を、線減衰する。ボックスの材料は、線量率に応じて異なる複数の種類と厚みの組み合わせの機能材料を用いる。この機能材料による構造体が、照射野を立体的に取り囲む。
ボックス天板には小角散乱X線の実効エネルギーがK吸収端以下となる線減衰材料を遮へいとして使用する。これにより術者の水晶体を放射線から防護する。また、覗き窓には線減衰材料に相応する遮へい能力を付与する。また、各所のボックス内側の表面に複合吸収材料等を配置して、線減衰させたX線は線エネルギー吸収する。
特許文献3の追加シールドボックスは、X線受像機の構造により、次の2通りの型式がある。これらは、分割ボックス型のボックスとフラットパネルディスプレイ(FPD)内蔵型のボックスである。
1つ目の分割ボックス型のボックスは、分割したボックスの間にX線受像機の受像機アームをボックス天井部の受像機ポートに組み込む。そのため、ボックスを2以上に分割しなければならない。これにはCアーム対応のものもある。
2つ目のFPD内蔵型のボックスは、X線受像機であるFPD自体をボックス内に設置する。取り扱い上、ボックスは分割型が良いが、一体型でも構わない。
上述の2通りの型式の両方にオプションとして、高線量型のボックスが提案されている。これは小角散乱X線のエネルギーが高い場合のオプションである。
すなわち、追加シールドボックスは上方への小角散乱X線および上方と側方への散乱X線の強度を低減できる。これにより、診療室内等の空間線量率を低減できる。また、同時に医療従事者と患者の被ばくを低減できる。さらに、医療従事者の防護負荷を軽減できる。
上述では特許文献2の高機能テーブルと特許文献3の追加シールドボックスという防護機器を述べてきた。散乱X線の低減は、高機能テーブルは下方を分担する。同様に、追加シールドボックスは上方と側方を分担する。しかし、患者人体から発生する全方位の散乱X線を、これらの1つの防護機器で遮へいすることは、原理的に不可能である。すなわち、全方位の散乱X線の強度は、これらを組み合わせたもので低減しなければならない。なお、ここではX線の強度とは、X線の光子数を対象のエネルギー範囲でリーマン和したものを意味する。
特許文献1の背景技術では、先行技術の防護具の構造と材料の調査結果を述べた。これら防護具の材料は、この発明に相当する他のものはないと述べている。すなわち、低反射減弱層と多層吸収層を密着して重ね、最外層を電子吸収体とした3層以上の多層により、散乱X線を減弱させて吸収する材料はない。従って、特許文献1の複合吸収材料と同様の材料はない。なお、特許文献1は材料特許であり、防護具やその構造を請求したものではない。
特許文献2の背景技術では、先行技術のテーブルとその付属品の構造や材料の調査結果を述べた。これらテーブルは、照射野のX線を透過させる機構や絞り機構がない。また、これらテーブルは天板の材料で散乱X線を減弱させて吸収する機能はない。従って、特許文献2の高機能テーブルと同様のものは見当たらない。
特許文献3の背景技術では、先行技術の人体保護装置、放射線シールド装置、放射線防護キャビンの調査結果を述べた。これら装置には、共通して術者の手腕を防護する機構がない。また、これら装置には、照射野を立体的に取り囲む方体のボックスがない。さらに、これら装置には、ボックスの材料により散乱X線を減弱させて吸収する機能がない。その上、放射線シールド装置は、患者の体軸方向の側方の遮へいがない。放射線防護キャビンは、テーブル上方の遮へいがない。すなわち、特許文献3の追加シールドボックスと同様のものは見当たらない。
本発明は特許文献1と特許文献2と特許文献3を組み合わせ、さらに発展させたものである。特許文献1~3では各々の発明と同様の先行技術はなかった。従って、本発明の内容が、その先行技術に存在することはない。
特許文献4は、4本の脚で医療用テーブル上に設置する簡易テーブルの天板に鉛材を貼り付けたテーブル型の防護機器である。簡易テーブルは患者の頸部からつま先を覆うように設置する。また、簡易テーブルには遮へいシートを被せても良い。これにより、IVRを使用する際の散乱X線の低減を目的としている。
しかし、この簡易テーブルには照射野のX線を透過させる機構や絞り機構がない。すなわち、特許文献2の高機能テーブルと同様のものは見当たらない。
加えて、この装置には、照射野を立体的に取り囲む方体のボックスがない。また、術者の手腕を防護する機構がない。すなわち、特許文献3の追加シールドボックスと同様のものは見当たらない。
ICRP勧告翻訳検討委員会編、ICRP Pub.117「画像診断部門以外で行われるX線透視ガイド下手技における放射線防護」、公益社団法人日本アイソトープ協会、2017年3月31日 濱川 詩織ほか、「小児の頭部CT検査における主な臓器の被ばく線量と防護」、診療放射線技術科学科論集第13号(2015)
特願2022-161788号公報(国内優先出願、先の出願は特願2022-001336号公報) 特願2022-123002号公報(国内優先出願、先の出願は特願2022-018334号公報) 特願2022-075633号公報 特開2017-6358号公報
従来の防護具は、重(暑)苦しいうえに、特定の方位しか放射線防護できない。本発明は、患者人体から全方位への散乱X線による医療従事者の被ばく線量と防護に係る身体的負荷を低減する。さらに、本発明は、防護性能を維持しながら、操作性を高くする。なお、本発明は、医療用のアンダーチューブ型のX線透視装置を対象とする。
本発明は機器と器具と防護具の組み合わせにより、複合化した防護機器・器具を考案した。これらは患者人体から全方位(前方・側方・後方の3方位)に向けて発生する散乱X線を減弱させて吸収し、医療従事者と患者の被ばく線量を低減できる。同時に医療従事者の放射線防護に係る負荷を低減できる。なお、防護機器・器具(PDITS:Protective device, instruments and tools)とは、防護機器と防護器具と防護具の総称である。課題を解決するための手段は、大別すると以下の2通りある。
第1の手段は、第1の防護と第2の防護の2つの防護機器(PD:Protective device)を組み合わせて使用する。第1の防護は特許文献2の高機能テーブルである。第2の防護は特許文献3の追加シールドボックスである。これにより、1次X線を良く透過させ、全方位への散乱X線の強度を低減する。
第2の手段は、上述の防護機器(PD)に加えて、第3の防護として防護器具(PI:Protective instruments)を組み合わせて使用する。これにより、手術中の人体の動きに伴って、遮へいを施したボックスの貫通ポートから側方へ漏出する散乱X線の強度を低減する。第3の防護となる防護器具(PI)には、患者人体上の掛布、患者の着衣、頭部カバーがある。加えて後述の追加防護器具と簡便化防護器具がある。
医療従事者が装着する防護衣等の防護具(PT:Protective tools)は、多くは特定の1方向に限られた限定的なものため、主要な放射線防護を期待できない。PTらは医療従事者が装着する防護エプロン、防護メガネ、甲状腺保護具である。そのため、本発明では、PTはPDとPIの付加的な手段と位置付ける。
最初に、患者人体から全方位に向けて発生する散乱X線の種類を整理する。
患者人体から全方位に発生する散乱X線のエネルギーの平均値は、次の通りである。ここで、最も高いのは、テーブル上方への前方散乱X線である。次いで高いのは、テーブルの側方の水平面の360°方向への側方散乱X線である。最も低いのは、テーブルの下方への後方散乱X線である。
特許文献1の実施例2と図2のb.では、アンギオ装置の患者人体による散乱X線のエネルギーの中央値を述べている。これは、X線源の管電圧が110キロボルト(kV)の場合の散乱角90°の側方が65キロ電子ボルト(KeV)である。同様に100kVでの散乱角150°の後方が40KeVである。
一方、上方への前方散乱X線のエネルギーは、高い数値を報告した文献情報がある。これは1次X線の小角散乱X線を含むため当然である。しかし、面積線量計の測定結果であり、測定位置が正確に判る文献は見当たらなかった。
次に、防護機器・器具(PDITS)に用いる材料を説明する。ここでは、鉛(Pb)、バリウム(Ba)、または、タングステン(W)等の元素を含んで、遮へい能力がある既往の材料を「遮へい材料」と呼ぶ。
特許文献1で定義された3層以上を密着して重ねた多層により散乱X線を良く減弱して吸収する材料は、「複合吸収材料」と呼ぶ。複合吸収材料は、低反射減弱層(初層Pb)と多層吸収層より構成される。
Pb等の遮へい材料だけでも、散乱X線を大きく減弱する。しかし、複合吸収材料では、多層吸収層があるために、X線を減弱するに加えて、87KeV以下の散乱X線を大きく線エネルギー吸収する。また、本発明では、遮へい能力がある上述の遮へい材料と複合吸収材料の両者を総称して「機能材料」と呼ぶ。
第1の手段では、第1の防護と第2の防護の2つの防護機器(PD)を複合化して利用する。第1の防護は特許文献2によるX線を良く透過させ、散乱を低減する医療用テーブル(以下、「高機能テーブル」という)である。第2の防護は特許文献3による被ばくと防護負荷を低減する追加シールドボックス(以下、「ボックス」という)である。第1の防護と第2の防護の2つの防護機器を複合化して利用する手段を、ボックスとテーブルとの「組み合わせケース」と呼ぶ。
第1の防護のテーブルは、患者人体から下方への後方散乱X線を線減衰して、線エネルギー吸収する。
まず、機能材料を患者側の表面に配置したテーブル天板により、エネルギーが低い全身から下方への後方散乱X線の強度を低減できる。
さらに、機能材料を患者側の表面に配置した中間の段のスライドテーブル、絞り板によって、照射野の周辺から下方への後方散乱X線の強度を低減できる。この部位の後方散乱X線は、他の部位に比べて高いエネルギーである。
第2の防護であるボックスは、患者人体から上方への前方散乱X線と側方への側方散乱X線を線減衰して、線エネルギー吸収する。方体のボックスは、立体的にどの方位にも機能材料が存在する構造である。内側表面に配置した機能材料とボックスの構造材料により、中程度のエネルギーとされる側方散乱X線の強度を低減できる。この追加シールドボックスには分割ボックス型とFPD内蔵型の2種類がある。
照射野の周辺から飛来する小角散乱X線のエネルギーが88KeV以上となった場合は、Pbによる遮へいではK殻の特性X線を含む2次X線が発生し、反射と散乱が大きくなる。そのためボックスの構造材料や遮へい材料で大きく減弱させることは困難である。この場合は、特許文献1と特許文献3で述べる通り、この小角散乱X線は、ウラン(U)等の原子番号が83以上の線減衰材料によるボックス天板と遮へい能力を高めた覗き窓により減弱させる。
第1の手段では、2つの防護機器(PD)が次の患者人体からの方位を分担して、散乱X線を減弱させて吸収する。テーブルが下方を担当する。ボックスが上方と側方を担当する。この2つのPDを組み合わせることにより、次の2つの効果がある。1つは1次X線を良く透過させる。他の1つは、照射野の周辺を含めて患者人体から全方位に向けて発生する散乱X線を減弱させて吸収する。複数を組み合わせたPDを、「複合化した防護機器(PD)」と呼ぶ。
PDのテーブルが1次X線を良く透過させることで、X線源の管電圧を低下できる。管電圧を下げると、発生する散乱X線の強度を低減できる。散乱X線の強度が下がると、被ばく線量を低減できる。そのため、この2つは連関している。
後述の実施例1と図1は、第1の手段に基づく、ボックスとテーブルとの組み合わせケースの考え方の詳細な内容を示す。実施例2と図2は2つの防護機器を複合化した鳥瞰図を説明する。
第2の手段は、第1の手段の第1の防護(テーブル)と第2の防護(ボックス)に加えて、第3の防護として防護器具(PI)を追加する。第3の防護を追加する理由は、手術中の人体の動きに伴って遮へいを施したボックスの貫通ポートから側方へ漏出する散乱X線の強度を低減するためである。PIを追加する考え方が3つあり、それぞれに実現させる手段が異なる。PIは既往で医療従事者が装着しているPTとは違う。これらのPIは、いずれも機能材料で製作される。
第2の手段の1は、手術時に防護機器(PD)だけでは不足する側方の散乱X線の防護を、追加する患者人体に装着する防護器具(PI)により補うとの考え方である。ここでは、追加するPIとして通常の質量の範囲である掛布(以下、「通常の掛布」という)と患者の着衣を使用する。頸部や頭部が照射野になった場合は、着衣に加えて頭部カバーも使用する。
第2の手段の2は、考案した新たなPIを用いる。これは厚さと質量を大きくして高い遮へい能力がある厚肉の覆い(以下、「厚肉の掛布」という)により、側方の散乱X線の防護を強化するとの考え方である。また、患者に荷重による身体的負荷を与えないために、厚肉の掛布を支持してその荷重をテーブルに直接伝える支保構造体を使用する。厚肉の掛布と支保構造体は、側方の散乱X線の遮へい能力を高くするために追加するPIである。これらを総称が、「追加防護器具」(API:Additional Protective Instrument)である。APIも第3の防護の1つである。
第2の手段の3は、第2の手段の2の変形例である。APIで強化した側方の散乱X線の防護により、PD側のスリーブ構造体と遮へいシートを合わせた「ボックス付属器具」での防護を軽微にする余裕を生む。これによって、防護性能は同じレベルに維持しながら、PDに付属する防護器具(PI)の操作性を高めるとの考え方である。操作性を高くするためのPIが、短冊式カーテンとグローブレスポートである。これらの総称が、「簡便化防護器具」(SEPI:Simple and Easy Protective Instrument)である。
第2の手段の冒頭において、手術時に遮へいが不足する可能性があるボックス側部の状態について説明する。方体の追加シールドボックスには、側端部にスリーブポートと患者ポートがある。両者を総称して「貫通ポート」と呼ぶ。
スリーブポートは、手術時に医療従事者が手腕をボックス内に挿入するために存在する。スリーブポートには、遮へい機能があるスリーブ構造体が取り付けられる。スリーブ構造体により、医療従事者は手腕の被ばくを低減して、ボックス内で医療行為が行える。
患者ポートは、手術時に患者の体幹部を貫通させるために存在する。患者の頭部と体肢部は、遮へい機能があるボックスの外部に出る。これにより患者の医療被ばくを低減でき、閉所による心理的な負担を和らげることができる。患者の体幹部をボックスに貫通させる行為は、医療従事者が行う。
手術前などの観察時(以下、「静置時」という)には貫通ポートには遮へい能力がある構造体が施されている。特許文献2の遮へい構造体は、スリーブポートにはスリーブ構造体がある。同様に患者ポートには、遮へいシートがある。
スリーブ構造体の代表例の1つはスリーブである。スリーブは、可撓性の機能材料の成型加工によって製作された両端が開口した円錐である。スリーブの先端は手首の寸法で開口する。静置時や未使用時はゴムで萎めて閉じている。手術時に防護手袋を装着した医療従事者が手腕を挿入する。その上で医療行為のために手腕を激しく動かしている。この動きの都度にスリーブの先端は開口し、散乱X線がボックス外に漏出する。
一方、遮へいシートは可撓性の機能材料により製作された一体のシートである。手術の準備時に患者を貫通させてボックスを設置した後、遮へいシートは患者ポートの余空間をなるべく塞ぐように設置する。静置時はこれが患者ポートを遮へいしている。しかし、手術時には、患者の動きで塞いだシートがずれる場合がある。ずれた場合は散乱X線がボックス外に漏出する。
貫通ポートを貫通する身体組織は、X線を散乱しながら一部が透過する。この身体組織は、医療従事者の手腕や患者の体幹部である。すなわち、ボックス内の散乱X線の強度が大きい場合は、散乱X線の一部がボックス外に漏出する。
また、スリーブや遮へいシートは繊細な医療行為を行うため軟らかくて薄い素材を使用する。すなわち、医療上の要求によりこれらの可撓性の機能材料は厚みを大きくできない。そのためX線源の管電圧が高い場合には、これらボックス付属器具では遮へい能力が不足する場合がある。
前述の通り、貫通ポートは手術前の静置時は遮へいされている。身体組織を貫通させた時点でも可能な限り隙間を塞ぐ努力がなされる。しかし、手術時には、貫通する身体組織の動きにより、人体との隙間が生じて散乱X線がボックス外に漏出する。また、貫通ポートを貫通した人体組織がX線を透過する。さらに、X線源の管電圧が高い場合には遮へい構造体の遮へい能力が不足する場合がある。そのため、貫通ポートでは手術時にX線の漏出を完全に防ぐことはできない。
第2の手段の1では、防護機器(PD)では不足する遮へい能力を、追加する患者人体に装着する防護器具(PI)により補う。ボックス内に追加するPIは、患者人体上の掛布と患者の着衣である。これらにより、貫通ポートがあるボックス側方への散乱X線の遮へい能力を増強する。一般に市販の掛布の厚みは、鉛当量で0.25~0.5mmPbである。市販されている通常の質量の範囲である掛布を、「通常の掛布」と呼ぶ。現状ではこの目的で市販される着衣はない。
一般に放射線の遮へいは、その形状効果から、線源に近いほど同じ厚みでも小さい重量の物品で効率的に遮へいができる。患者人体上の掛布と患者の着衣は、最適な位置で患者から放出される散乱X線を遮へいできる。
掛布は、機能材料で製造した可撓性のシートである。掛布には一次X線を透過させるために、患部の照射野の部位をやや大きめに切除したくり抜き部を設ける。くり抜き部は、上方に向けて開口している。そのため、照射野の付近では、掛布が散乱X線を遮へいする能力は、側方に比べると上方は劣る。また、掛布には、もともと下方を遮へいする能力はない。
着衣は、医療従事者ではなく、患者に着用してもらう。着衣は、機能材料で製造した可撓性の裾の短い外套(ハーフコート)の形状である。裾の丈は、照射野の縁から40cm以内の距離が好ましい。着衣は患者から全方位に放出される散乱X線を遮へいできる。しかし、機能材料で製造した着衣は、鎧のように重い。そのため、患者の荷重への身体的負荷の限界を超えて、質量が大きいものを用いることは難しい。また、着衣は1次X線の透過のために表面と背面に照射野よりやや大きめのくり抜き部を設ける。そのため、着衣が散乱X線を遮へいする能力は、側方に比べると下方や上方は劣る。
患者の頭部カバーは、機能材料で製造したマスクである。患部の頸部や頭部が照射野とされた場合に、患者に着用してもらう。その理由は照射野との離間距離が40cm以内の範囲では、頭部から散乱X線が外部に漏出するためである。
上述の通り、手術時には複数のPDに複数のPIを組み合わせることで、手術時の主に側方への散乱X線のボックス外への漏出を低減できる。それ故に、医療従事者と患者の放射線被ばくを低減できる。
後述の実施例4と図4では、第2の手段の1に基づく、効率的に被ばく線量を低減する複合化した防護機器・器具(PDITS)の考え方の詳細な内容を示す。実施例5は、新たなPIを組み合わせたケースの鳥観図を図5により説明する。
第2の手段の2では、防護機器(PD)では手術時に不足する可能性のあるボックス側方の遮へい能力を、別のPIを加えて一層強化する。すなわち、第2の手段の1に加えて、追加防護器具(API)により、主に側方の散乱X線の防護を一層強化する。追加防護器具(API)は、厚肉の掛布と支保構造体である。
厚肉の掛布は、通常の掛布よりも遮へい能力が高い。厚肉の掛布は、テーブル上の患者人体の上部の空間で患者を門形状に取り囲んで配置することで、手術中の側方の散乱X線の遮へい性能を増強できる。しかし、厚みと質量が大きくなる。これを患者人体の上に直接に掛けると、荷重による身体的負荷が増えてしまう。
そのため、質量が大きな厚肉の掛布は、テーブル上に設置した支保構造体に上載して、患者人体の上部の空間で患者を半円筒形、台形または門形(以下、「門形状」という)に取り囲んで配置する。これで厚肉の掛布の質量は、支保構造体を介して直接テーブルで支持される。そのため、この手段では、患者に荷重による身体的負担をかけずに、厚肉の掛布によって高い遮へい能力を確保できる。
後述の通り厚肉の掛布の機能材料分の全厚み(全t)は1~3mmが好ましい。その質量は6~18kgである。支保構造体の質量は約10kgである。これらの質量は大きいので、医療従事者が一人作業で設置するには苦労が伴う。そのため、人手のみではなく、既製の取付け機構があるのが好ましい。
取付け機構は、支保構造体の形式によって天井クレーンと横持ち台車とヒンジ機構が考えられる。取付け機構を考慮した場合は、厚肉の掛布は、支保構造体に予め取り付けできる。この場合の厚肉の掛布は、剛性の機能材料を使用しても構わない。これには強度が大きい透明の含鉛アクリル樹脂板も含まれる。また、保管スペースや取り扱いでの荷重制限を考慮して、分割型の厚肉の掛布と支保構造体を使っても構わない。取付け機構により、荷重に対して容易な取り扱いで追加防護器具(API)をテーブル上に横たわる患者人体上に設置できる。
上述した通り、第2の手段の2では追加防護器具(API)を組み合わせることで、手術時の側方への散乱X線の漏れをさらに低減できる。これは、第2の手段の1よりも、医療従事者と患者の放射線防護を強化できることを意味する。また、取付け機構により追加防護器具(API)の取り扱いを容易にできる。
後述の実施例7と図6では、前述の新たな防護器具(PI)と追加防護器具(API)の詳細な内容を説明する。加えて、実施例8と図7では、一体型または分割型の支保構造体の構造と取付け機構の詳細な内容を説明する。
第2の手段の3は、防護器具(PI)である厚肉の掛布の側方の散乱X線の防護をさらに強化し、その分だけ防護機器(PD)側の防護を緩和する。PDの防護器具には、操作性が高い簡便化防護器具(SEPI)を採用する。これにより、防護性能は同じレベルに維持しながら、その操作性を高くするとの考え方である。第2の手段の3は、上述した第2の手段の2の変形例である。
第2の手段の3では、ボックス内の側方の散乱X線の遮へいは、主に厚肉の掛布が担保する。ここでの厚肉の掛布の機能材料分の全厚みは、例えば1~2mmである。そのため、手術時に遮へいが不足するとされたボックス付属器具の遮へい負荷は軽減される。遮へい負荷の軽減によって、PD内のこの部位の防護器具(PI)には、遮へい能力は劣るが、操作性の高いSEPIを採用できる。第2の手段の3でのSEPIは、短冊式カーテンとグローブレスポートである。
患者ポートには、遮へいシートの代わりに、遮へい能力のあって多くの仕切りがある可撓性のカーテン(以下、「短冊式カーテン」という)を設置する。このカーテンは、遮へい性のある可撓性のシートに厚み方向に貫通する切り込みを入れて、多数の仕切りを作ったものである。可撓性のシートは、樹脂製またはゴム製のシートである。素材が角形状のシートの場合、この仕切りは、水平方向の幅が小さく、かつ、鉛直方向の長さが大きい、多数の短冊状のシートとなる。これらは貫通ポートの上部から懸垂する。
短冊式カーテンは、多数の可撓性の仕切りがあるため、人が体の一部で押せば容易にその部位を開くことができる。そのため、短冊式カーテンは、操作性が高い。静置時にこれは垂れ下がって貫通ポートを塞ぎ、遮へい体として機能する。手術時には貫通する患者人体が遮へい体として機能する。多数の仕切りがある短冊式カーテンは、手術時に患者人体との間の余空間を塞ぐ。塞いだ余空間は短冊式カーテンにより遮へいする。また、患者ポートは、患者ポート蓋を設置して余空間を確実に低減することが好ましい。患者ポート蓋は、剛性の前記機能材料により製作し、患者人体の貫通部を門形状にくり抜いた門形板状の蓋である。患者ポート蓋は、ボックスと同様の材質で製作された、遮へい能力の高い角板状の蓋である。貫通部は患者人体の寸法で材料を切断加工する。この方法によって、短冊式カーテンは、ボックス外部への散乱X線の漏出を低減できる。
スリーブポートには、スリーブ構造体の代わりに、上述の短冊式カーテン、または、グローブレスポートを設置する。
短冊式カーテンは、角形のスリーブポートの上部から懸垂する。角形のスリーブポートは覗き窓のあるボックス側面の一部または全部の幅に設置する。短冊式カーテンの構造は前項と同じであり、操作性が高い。
未使用時は、角形のスリーブポートは閉止遮へい蓋によって完全に閉じることが好ましい。閉止遮へい蓋は、スリーブポートに設置し、剛性の機能材料により放射線の遮へい能力機能がある閉止板状の蓋である。閉止遮へい蓋は、ボックスと同様の材質で製作された、遮へい能力の高い角板状の蓋である。この方法によって、閉止遮へい蓋で閉じたスリーブポートは、ボックス外部への散乱X線の漏出を低減できる。
また、グローブレスポートも覗き窓のあるボックス側面の一部の幅にある円形のスリーブポートに設置する。これは、円形状のシートに、中心から放射状に貫通切り込みを入れた円板である。これは、多数の可撓性の仕切りがあるため、人が体の一部で押せば容易にその部位を開くことができる。医療従事者は容易にボックス内に手腕を挿入できるため、グローブレスポートは操作性が高い。
これは、静置時には可撓性のシート自体の反力で初期形状を維持してポートを塞ぎ、遮へいとして機能する。手術時には、医療従事者の手腕の身体組織が、主な遮へいとして機能する。多数の仕切りがあるグローブレスポートは、手術時に医療従事者の手腕との間の余空間を塞いで遮へいする。
また、未使用時は、スリーブポートは封止遮へい蓋によって完全に閉じることが好ましい。封止遮へい蓋は、剛性の機能材料による放射線の遮へい能力と自身の固定機能がある円形の封止遮へい蓋である。封止遮へい蓋は、ボックスと同様の材質で製作された、遮へい能力の高い円板状の蓋である。この方法によって、封止遮へい蓋で閉じたグローブレスポートは、ボックス外部への散乱X線の漏出を低減できる。
上述した第2の手段の3により、複数の防護機器・器具(PDITS)として簡便化防護器具(SEPI)を組み合わせた手段を「進化した組み合わせケース」と呼ぶ。ここで説明した手段により、全方位の遮へい能力を同等に保った状態で、医療従事者による操作性を高くできる。
実施例9と図8は、第2の手段の3に基づく、医療従事者の操作性を高くした「進化した組み合わせケース」の考え方の詳細な内容を示す。加えて、実施例10は、「進化した組み合わせケース」の鳥観図を図9により説明する。
第2の手段の3には、さらに進化した複数の変形例がある。この変形例は、厚肉の掛布の遮へい能力がかなり高いことが判ったために考案された。厚肉の掛布の遮へい能力(厚み)を最大とすることで、医療従事者による操作性をさらに高めたのが「さらに進化した組み合わせケース」である。ここでの厚肉の掛布の機能材料分の全厚みは、例えば3mmである。このケースでは、角形のスリーブポートをボックス側面の全体の幅に拡げ、そこに操作性の良い短冊式カーテンを取り付けている。ボックスの下部の構造物は、それを支持する脚のみとなる。これにより、医療従事者は、ポートから手腕を抜かずに、左右に移動できる。未使用時は閉止遮へい蓋で完全に閉じて、ボックスと同等に遮へいできる。その閉止遮へい蓋の板面上に、操作性の良いグローブレスポートを設置することもできる。未使用時はグローブレスポートも封止遮へい蓋で完全に閉じて、ボックスと同等に遮へいできる。これは、後述の実施例11と図10で詳細な内容を説明する。
また、実施例12と図11では、上述に則った上で、透明含鉛アクリル樹脂を使用した覗き窓を兼ねたボックスと厚肉の掛布より、操作性と共に視認性を高めた組み合わせケースの詳細な内容を説明する。
ここで説明した手段により、全方位の遮へい能力を同等に保った状態で、医療従事者による操作性を高くできる。さらに視認性も高くできる。
本発明は複数の防護機器(PD)を組み合わせることで、1次X線を良く透過させ、照射野の周辺を含めて全方位への散乱X線の強度を低減できる。低減の対象とする散乱X線は、PDの追加シールドボックスは上方と側方、高機能テーブルは下方である。また、PDに加えて防護器具(PI:患者の掛布と着衣)を組み合わせることで、手術時の人体の動きに伴ってボックスの貫通ポートから側方へ漏出する散乱X線の強度を低減できる。これらの防護機器・器具(PDITS)では、複合吸収材料を使用することで、散乱X線を減弱させた上で線エネルギー吸収できる。これにより、医療従事者と患者の被ばくを低減すると共に、医療従事者の防護負荷を低減できる。
さらに、追加防護器具(API)の厚肉の掛布と支保構造体と、簡素化防護器具(SEPI)の短冊式カーテンとグローブレスポートを加えて、PDITSの組み合わせを進化させる。この進化した組み合わせにより、遮へい能力を同等に保った状態で、医療従事者による操作性を高くできる。
図1は、ボックスとテーブルとの組み合わせケースの方法と効果を示す説明図である。ここでは、a.~b.は防護機器・器具が存在しないケース、c.~d.は防護機器(PD)の「組み合わせケース」を示す。 図2は、複数の防護機器(PD)により全方位の散乱X線の強度を低減できる「組み合わせケース」の鳥瞰図である。 図3は、手術時に追加する新たな防護器具(PI)の具体的な説明図である。 図4は、ボックスの貫通ポートの部位と、手術時の側方への散乱X線の強度を低減する方法と効果を示す説明図である。図4のa.~c.が対策前の状態、d.~f.が対策後の状態である。 図5は、第3の防護として「新たなPIを組み合わせたケース」の鳥瞰図である。 図6は、手術時の側方の散乱X線の強度を低減するために、手術時に追加する追加防護器具(API)の具体的な説明図である。 図7は、一体型または分割型の支保構造体の構造とその取付け機構の説明図である。 図8は、操作性を高めた「進化した組み合わせケース」の方法と効果を示す説明図である。図8のa.~d.が複合化前の状態、e~j.が複合化後の状態である。 図9は、簡素化防護器具(SEPI)により操作性を高めた「進化した組み合わせケース」の説明図である。 図10は、ボックスの全側面を短冊式カーテンとすることで、操作性を高めた「さらに進化した組み合わせケース」の説明図である。 図11は、透明含鉛アクリル樹脂により操作性と共に視認性を高めた「さらに進化した組み合わせケース」の鳥瞰図である。 図12は、特許文献1の複合吸収材料の基本ケースの構成図である。 図13は、特許文献1の複合吸収材料のJIS試験によるX線透過率の測定結果の一例である。 図14は、特許文献2のX線を良く透過させ散乱を低減する高機能テーブルの鳥瞰図である。 図15は、特許文献3の分割ボックス型の追加シールドボックスの鳥瞰図である。
本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
なお、ここに示す防護機器・器具(PDITS)とその構成部材は単なる例示であって、本発明を限定することを意図するものではない。
本明細書の以降の部分では、防護機器と防護器具と防護具に関して、以下の用語を用いる。
特に断りがない限り、X線管球の位置はテーブルの下部に配置するアンダーチューブ型のX線透視装置を例として記載する。
ボックスやテーブルは、防護機器(PD)という。患者人体上の掛布、患者人体下の敷布、患者の着衣および患者の頭部カバーは、防護器具(PI)という。医療従事者の防護エプロン、防護メガネ、防護手袋、防護腕カバーを防護具(PT)という。また、防護機器と防護器具と防護具を総称して防護機器・器具(PDITS)という。さらに、厚みと質量が大きい厚肉の掛布とその支保構造体を総称して追加防護器具(API)と呼ぶ。短冊式カーテンとグローブレスポートを総称して簡便化防護器具(SEPI)と呼ぶ。
高機能テーブル(テーブル)とは、特許文献2で定義する1次X線を良く透過して散乱を低減する医療用テーブルである。追加シールドボックス(ボックス)とは、特許文献3で定義する被ばく低減と防護負荷の低減を目的とする追加シールドボックスである。
診察用撮影室、検査室、治療室、エックス線診療室内等を総称して「診療室内等」と呼ぶ。
特に断りがない限り、元素と記載した部分は、その元素を含む材料を意味し、材料は特に断りがない限り金属元素単体の材料を意味する。
本明細書の以降の部分では、X線の種類に関して、以下の用語を用いる。
放射線の一次線源はX線管球であるが、この1次X線ビームを「1次X線」と呼ぶ。1次X線が患者・被検者、装置の一部等に当たり散乱した放射線を総称して「散乱X線」と呼ぶ。X線のエネルギーとは、特に断りがない限り、実効エネルギーを意味するものとする。
散乱X線のうち、1次X線のエネルギーを概ね維持したまま小角度で前方に散乱(以下、「小角散乱」という)してきたX線を「小角散乱X線」と呼ぶ。小角散乱線が発生するのは照射野とその周辺である。なお、照射野の周辺とは、散乱回数が1~数回の小角散乱で前方へ散乱X線が発生する可能性がある領域として、照射野の縁から5cm以内の範囲をいう。
また、1次X線が患者人体またはテーブル等により散乱し、入射角に対して0度~45度の前方に散乱(以下、「前方散乱」という)してきたX線を「前方散乱X線」、同・45度~135度の側方に散乱(以下、「側方散乱」という)してきたX線を「側方散乱X線」、同・135度~180度の後方に散乱(以下、「後方散乱」という)してきたX線を「後方散乱X線」と呼ぶ。なお、小角散乱X線は前方散乱X線の一種であり、その内数である。
本明細書の実施例は、以下の構成である。
実施例1は、防護機器(PD)である高機能テーブルと追加シールドボックスを複合化することにより、全方位の散乱X線の強度を低減できる「組み合わせケース」の方法と効果を図1により説明する。
実施例2は、「組み合わせケース」の鳥瞰図を図2により説明する。
実施例3は、手術時に追加する新たな防護器具(PI)の具体例を図3により説明する。
実施例4は、手術時の側方への散乱X線の強度を低減する方法と効果を図4により説明する。
実施例5は、第3の防護として新たなPIを組み合わせたケースの鳥瞰図を図5により説明する。
実施例6は、第3の防護と、第1の防護または第2の防護との「いずれかを組み合わせたケース」を説明する。
実施例7は、手術時の側方の散乱X線の強度を低減するために、手術時に追加する追加防護器具(API)の具体例を図6により説明する。
実施例8は、一体型または分割型の支保構造体の構造と取付け機構を図7により説明する。
実施例9は、簡素化防護器具(SEPI)を組み合わせることで、操作性を高めた「進化した組み合わせケース」の方法と効果を図8により説明する。
実施例10は、「進化した組み合わせケース」の鳥瞰図を図9により説明する。
実施例11は、ボックス全側面を短冊式カーテンとし、操作性を高めた「さらに進化した組み合わせケース」を図10により説明する。
実施例12は、透明含鉛アクリル樹脂により操作性と共に視認性を高めた「さらに進化した組み合わせケース」の鳥観図を図11により説明する。
実施例13は、IVR手術で本発明を利用する方法を説明する。
実施例14は、IVR時に患者人体内の被ばく線量が高くなる範囲を説明する。
実施例15は、特許文献1の複合吸収材料を説明する。
実施例16は、特許文献1のJIS試験結果の一部を説明する。
実施例17は、特許文献1の知見に基づき、複合吸収材料によるX線透過率の低減効果の試算例を説明する。
実施例18は、特許文献2の高機能テーブルを説明する。
実施例19は、特許文献3の追加シールドボックスを説明する。
(テーブルとボックスとの「組み合わせケース」の方法と効果)
実施例1では、テーブルとボックスとの「組み合わせケース」の方法と効果を説明する。このケースでは第1の防護である高機能テーブルと第2の防護である追加シールドボックスという2つの防護機器(PD)を組み合わせる。これにより照射野の周辺を含めて全方位の散乱X線の強度を低減できる。図1は「組み合わせケース」の方法と効果を示す説明図である。図1の真ん中の二点鎖線と矢印で、従来の状態(左側)と本発明後の状態(右側)を区分している。図1のa.とb.は防護機器が全て存在しない場合、c.とd.がボックスとテーブルの組み合わせケースを示す。
図1では、散乱X線の方位を矢印で示している。概略として矢印の太さは散乱X線の光子数を示し、長さが散乱X線のエネルギーを示す。本明細書ではエネルギーと光子数を総称して強度という。
図1のa.では、特許文献1の数値を引用して記載している。ここでは、1次X線の光子数が「100」と仮定した場合は、身体組織(胸部)による吸収は「14」、CFRP製のテーブルによる吸収は「3」、X線受像機への透過割合は「3」と考えた。残りの80は散乱分であり、150cm高さ(上方)で「12」、100cm高さ(側方)で「24」、50cm高さ(下方)で「44」と考えた。すなわち、下方に向かう後方散乱X線は光子数が大きい。しかし、X線のエネルギーは小さいと予想される。なお、この数値は、目安である。
ボックスとテーブルの組み合わせの効果によって、図1のd.のボックス外の散乱X線の強度が低下する。図1のd.では、遮へいや防護機器がない場合のa.での数値に小なりの不等号「<」を付記することにより、その効果の度合いを示した。すなわち、上方(<<<12)と下方(<<<44)は、小なりの不等号を3つで表現した。側方(<<24)は、小なりの不等号を2つで表現した。後述する理由により、側方へ放出される散乱X線は、低下する程度がやや小さい。
防護機器が存在しない図1のa.とb.では、下方に向かう後方散乱X線はエネルギーが小さいが、光子数が大きい。これと比べて上方に向かう前方散乱X線は、エネルギーが大きいが、光子数が小さい。黒い実線は1次X線を示している。
防護機器が存在する図1のc.とd.は、ボックステーブルと組み合わせケースを示す。図1のc.では、患者人体60付近を見易くするために追加シールドボックス1と高機能テーブル2とを分解して上下に分けて記載している。実際には、上下の方向の黒い小さな矢印の通り、テーブルとボックスは、患者人体を挟んで密着している。
図1のb.とc.の散乱X線の矢印は、共にボックス内なので同じである。また、散乱X線の矢印は、d.のボックス内とc.とは同じである。図1のd.の散乱X線の矢印を見ると、ボックス内とボックス外の防護機器の有無による効果が判る。これらに比較して、d.のボックス外では、太さと長さは共に小さくなっている。
図1のd.の通り、ボックス外の上方と側方への矢印の幅と長さは、追加シールドボックス1によって低下する。すなわち、放出される散乱X線の強度が低下している。下方へ放出される散乱X線の強度は、高機能テーブル2によって低下する。特に、ボックス外の上方と下方への矢印の幅と長さは、著しく小さい。これは、上方のボックス天板と覗き窓および下方のテーブル天板の遮へい能力が高いためである。すなわち、患者人体の上方と下方へ放出される散乱X線の強度は、防護機器により著しく低下する。
まず、散乱X線が低減する効果を説明する。その低減の程度は、防護機器の機能材料の仕様(構成・材質とその厚み)によって決まる。これに係る知見は、特許文献1の実施例21~23の遮へい材料(比較用Pb板)と複合吸収材料を比較した実験結果により説明される。この実験は、JIS規格の試験基準に則って本発明で実施した透過X線実験(以下、「JIS試験」という)である。本明細書では、このJIS試験結果の一部を実施例16に示す。
機能材料分の全厚み(全t)=0.4mm~0.5mmの複合吸収材料が入射側の表面に設置された部位のX線の透過率は、上述のJIS試験結果から評価できる。本明細書の実施例16によれば、遮へいや防護機器・器具が全く存在しない場合に比べて、X線の透過率は、管電圧70kVの場合で約50分の1になる。同様に、管電圧50kVの場合で200分の1以下になる。一方、厚みが0.2mmPbの遮へい材料(比較用Pb板)だけの場合に比べて、X線の透過率は管電圧70kVの場合で約2.5分の1になる。同様に、管電圧50kVの場合で約9.5分の1になる。
まず、ボックス1の構造材料の散乱X線の入射側の表面には機能材料が配置される。ボックス1の形状は方体の場合が多い。ボックス1の構造材料には、質量が小さく強度が大きいものが選定される。この構造材料の例は、アルミニウム合金、チタン合金、または、高強度プラスチックである。覗き窓6に使用する透明含鉛アクリル樹脂により方体を構成しても構わない。さらにこのアクリル樹脂によるボックス1の形状は、方体ではなく、半球形であっても構わない。これらの表面にシート状の複合吸収材料72を配置すれば、JIS試験結果のようにボックス1の側方に透過する散乱X線の強度は、大幅に小さくなる。また、照射野の周辺を除く前方散乱X線は、上方に透過する強度が大幅に小さくなる。すなわち、追加シールドボックス1のボックス内側の表面に複合吸収材料72を配置すれば、上方と側方に透過する散乱X線の強度は、前述の遮へいや防護機器がない場合に比較して大幅に小さくなる。
照射野の周辺から飛来する小角散乱X線を含む前方散乱X線は、エネルギーが高い。特にエネルギーが88KeV以上となった際に、低反射減弱層がPbである場合は、K殻の特性X線を含む2次X線が発生し、反射と散乱が大きくなる。すなわち、線減衰はするが、有効に減弱できない。その対応として、幅を拡げたボックス天板7のエネルギーが高い前方散乱X線の入射側の表面に、ビスマス(Bi)、ウラン(U)等の原子番号が83以上の線減衰材料を配置する。これにより、低反射減弱層は低い反射と散乱の下で、X線を減弱できる。原子番号が83以上の低反射減弱層のX線照射を受ける面の反対側に、多層吸収体を配置する。この考えは発明者が同じ特許文献3で増設複合吸収材料73として示した。他方、覗き窓は前方散乱X線に対して入射角を大きくすることで、より大きな遮へい能力が得られる。エネルギーが高い場合には上述の対応により、ボックス1は、前方散乱X線を減弱して線エネルギー吸収できる。
次に、テーブル2のテーブル天板7の構造材料の上面には機能材料が配置される。この構造材料は、CFRP等の高強度プラスチック、または、アルミニウム合金である。高機能テーブル2の場合は、テーブル天板7のみではなく、吸収板31と絞り板36の上面に、複合吸収材料72が配置される。これらの表面にシート状の複合吸収材料72を配置すれば、JIS試験結果のようにテーブルの下方に透過する散乱X線の強度は、大幅に小さくなる。また、照射野の周辺から後方散乱X線も、スライドテーブル35と絞り板36の機能により、下方に透過する強度が大幅に小さくなる。すなわち、高機能テーブル2の各所の上面に複合吸収材料72を配置すれば、下方に透過する散乱X線の強度は、前述の遮へいや防護機器がない場合に比較して大幅に小さくなる。
それ故に、ボックスとテーブルとの組み合わせケースでは、全方位(上方、側方、下方の3方向)の外部に放出される散乱X線の強度を低減できる。従って、2つの防護機器(PD)、すなわち、静置時に高機能テーブル2と追加シールドボックス1を複合化することの効果は大きい。
次に、高機能テーブル2による1次X線を良く透過させる効果について説明する。高機能テーブル2では、1次X線の大部分は自由空間を透過する。すなわち物体で散乱されることがないため、1次X線からの散乱X線の発生が少ない。また、このテーブルは1次X線を高い位置精度で透過させることができる。本発明では高機能テーブル2によるこの現象を「1次X線を良く透過させる」と言う。1次X線が良く透過すると、X線受像機の画質が鮮明になる。X線受像機の画質が鮮明なれば、X線透視装置は低い1次X線のエネルギーで利用できる。1次X線のエネルギーが低くなれば、患者人体から発生する散乱X線の強度を一層低減できる。この相乗効果により、さらに散乱X線による被ばくを低減できる。
組み合わせケースでは、高機能テーブル2のこの良く透過する機能によって、X線受像機10への1次X線の透過割合は増加する。これは図1の1次X線の黒色の矢印を、b.とc.で比較すると判る。
本発明は、2つの防護機器(PD:ボックスとテーブル)を複合化することで、1次X線を良く透過させ、全方位への散乱X線の強度を低減できる。
(「組み合わせケース」の鳥瞰図の説明)
実施例2では、2つの防護機器(PD)を複合化することにより、全方位の散乱X線の強度を低減できる「組み合わせケース」の鳥瞰図を説明する。図2はボックスとテーブルとの組み合わせケースの鳥瞰図である。図2のa.はFPD内蔵型の追加シールドボックス17、b.は高機能テーブル2を示す。また、b-1は天板の段30、b-2は中間の段34、b-3は底板の段40を示す。
図2では、患者人体60付近が見ることができるように、高機能テーブル2と追加シールドボックス1を分解して上下に分けて記載している。実際には上下の方向の黒い小さな矢印の通り、テーブルとボックスは患者人体を挟んで密着している。また、b-2の中間の段34は取り出して、図2の最下位置に示している。なお、中間の段34は、実際に取り外し可能な構造体である。図2のb-2のスライドテーブル35と絞り板36は、両者共に体軸方向に場所が移動する。
本発明の第1の防護である追加シールドボックス1は、患者の患部に相当する照射野15を立体的に取り囲んで機能材料を配置している。ボックスを構成する各部材のX線の入射側の表面は、機能材料で被覆する。術者は遮へい能力のある樹脂またはガラス板である覗き窓6を介して外部空間から内部を視認できる。術者は内部を視認しながら、遮へい能力のあるスリーブ構造体9を介して手腕を挿入して手術ができる。また、患者ポート20とスリーブポート8を除き、外部空間と通じた開口がない。
スリーブ構造体9は、含鉛腕スリーブ等の可撓性の機能材料で製作する。これはスリーブポート8に取り付けて使用する。
患者は患者ポート20を介して体軸方向にボックスを貫通させる。これにより患者の頭部や体肢部は外部空間に置く。また、患者ポート20に取付けた遮へい能力のある可撓性の遮へいシート22でボックスと人体との間の開口を塞ぐ。余分な遮へいシート22はホルダ23により巻き取る。電源、電気信号、光学信号および液体は、遮へい能力のある接続コネクタ24により、開口なしにボックスを貫通して内外で連絡する。
前方散乱X線は、患者人体の照射野とその周辺から上方への小角散乱X線を含むため、X線のエネルギーが高い。必要に応じて、このボックスでは、ボックス天板3に更に遮へい能力の優れた線減衰材料82を付して、上方への前方散乱X線を遮へいする。照射野と他の部位からの側方への散乱X線は、遮へい能力のあるボックス本体4および覗き窓6で遮へいする。また、静置時には、貫通ポートはスリーブ構造体9および遮へいシート22で遮へいする。
本発明の第2の防護である高機能テーブル2は、天板の段30、中間の段34、底板の段40の最大3段で構成される。いずれか1段もしくは2段のみでも一定の性能は発揮できる。
図2では、具現的に見易くするために、支持レール45と補強梁46は、天板の段30には表示せず、底板の段40にテーブル支持台44と共に示している。中間の段40は、支持レール45中にスライドして収納される。
高機能テーブル2の天板の段30は、次の通りの構成である。これらは、テーブル天板7、吸収板31、透過板ユニット32、支持レール45および補強梁46である。テーブル天板7は患者が横たわり、上載する患者人体の体重を支持する。テーブル天板7の軸線中心部には体軸方向に長い寸法の開口部がある。吸収板31は開口部の下にある支持レール45上にはめ込んで設置する。照射野となる可能性がある位置の吸収板31を取外し、透過板ユニット32を設置する。透過板ユニット32の網面は、CFPRやAl系等の高強度でX線を吸収し難い線状の材料とする。網面の代わりにCFRP製の薄膜を用いる場合もある。
アンダーチューブ型の場合、テーブル天板7と吸収板31の上側の表面は機能材料で被覆する。体軸方向の照射野の開口寸法は、後述のスライドテーブル35と絞り板36で調整できる。体軸方向と垂直方向の開口寸法は、後述の開閉板42と、透過板ユニット32のスペーサ33で調整できる。テーブル天板7が支持した荷重は支持レール45と補強梁46で支持し、最終的にはテーブル支持台44で支持する。
高機能テーブル2の中間の段34は、スライドテーブル35、絞り板36、スライド吸収板38およびその駆動機構で構成される。スライドテーブル35は軸線方向に長い平板である。その軸線中心の一部の位置に開口があり、他の部位にはスライド吸収板38がその上に簡易に固定される。絞り板36のボールねじ37による駆動機構はスライドテーブル35の中に取り付ける。一対(2枚)の絞り板36はスライドテーブル35の開口の上をスライド移動して軸線方向の開口の寸法を自在に調整できる。サイドローラ上に設置したスライドテーブル35は軸線方向にスライドして移動し、開口の位置を自在に調整できる。このようにスライドテーブル35と絞り板36により照射野の軸線方向の開口の位置と寸法を調整できる。
高機能テーブル2の底板の段40は、底板41と開閉板42とその固定・駆動機構で構成される。開閉板42はヒンジ機構等で開角度を制御して開閉できる。手術時には照射野の位置の開閉板22は開かれる。スライドテーブル35、絞り板36や開閉板42には機械装置を付しても構わない。
アンダーチューブ型の場合、高機能テーブル2のX線を良く透過させる機能によって、X線受像機10への1次X線の透過割合は増加する。
また、アンダーチューブ型の場合、高機能テーブル2では、遮へい性能の優れた機能材料のテーブル天板7により患者人体の照射野15とその周辺から下方への後方散乱X線を減弱させて吸収できる。
絞り板36の上側は複合吸収材料72で、下側は遮へい材料81で被覆する。スライド吸収板38はスライドテーブル35の開口位置を除く局所に簡易に貼り付けて設置され、上側は複合吸収材料72で被覆する。これにより、下方への後方散乱X線を減弱させて吸収できる。
開閉板42の表面では、外側は遮へい材料81を、内側は複合吸収材料72を被覆する。これにより、下方への後方散乱X線を減弱させて吸収できる。
実施例1と実施例2では、追加シールドボックスと高機能テーブルとの「組み合わせケース」の方法と効果を説明した。2つの防護機器(PD)を複合化することにより、1次X線を良く透過できる。その上で、患者人体より照射野の周辺を含めて全方位(上方、側方、下方の3方向)に放出される散乱X線の強度を低減できる。そのため、診療室等の空間線量率を低減できる。従って、医療従事者と患者の被ばくを低減できる。また、医療従事者の防護負荷を軽減できる。
(手術時に追加する新たな防護器具(PI)の具体例の説明)
実施例3では、第3の防護として追加する新たな防護器具(PI)の具体例を説明する。ここで説明する新たなPIは、患者人体に掛ける掛布と患者の着衣である。一般に放射線は、その形状効果から線源に近いほど同じ厚みでも小さい質量の物質で遮へいができる。以下、これを「遮へい体の形状効果」と呼ぶ。患者人体が散乱X線の線源である。そのため、掛布と着衣の位置は、小さな質量の遮へい体でもボックス外へ漏出する散乱X線の強度を低減する効果は大きい。
患者には、可撓性の機能材料による着衣を装着してもらう。患者の着衣を遮へいに利用するのは従来にない考え方である。しかも、前述の通り、着衣は遮へい体の形状効果から、小さい質量で効率良く遮へいできる。
図3は、患者人体に装着する防護器具の説明図を示す。図3のa.は患者の着衣63の展開図を示す。b.は患者人体が着衣63を装着した状態を示す。c.は通常の掛布18を示す。d.は頭部カバー64、着衣63、通常の掛布18を使用した場合の設置図を示す。e.は頭部カバー64を示す。
図3のa.は、装着する前の着衣63の展開図の例である。着衣63は、可撓性の機能材料のシートにより製作する場合が多い。そのため、複雑な形状の縫製を避けている。加えて、正面側と背面側共に直線を主体とした形状である。正面側と背面側には、1次X線を透過させる照射野のくり抜き部39がある。背面側のくり抜き部39の横幅は大きい。着衣63は、正面部と背面部と手の取り出し部67が連続した一枚になっている。
着衣63は、患部の位置に伴って照射野15の位置が体幹部の上下左右に変わる。そのため、着衣63を折り曲げることや、着用位置をずらすことができる。加えて、寸法は人体の体幹部よりも大きく裁断する。くり抜き部39の縦幅は着衣63の上端まで至っている。照射野の縦幅は、必要となる寸法へカバー70によって調整する。着衣63には手技の際にカテーテルを患者の手首や腕に容易に穿刺できるように、手の取り出し部67がある。また、着衣63は2本の肩紐69で、患者の肩より懸垂できる。肩紐69は長さを調整できる。カバー70や手の取り出し部67の止め具68や肩紐69の止め具68の取り付け位置は、面ファスナーや布テープで取り付けるため、容易に変更できる。
図3のb.は患者人体が着衣63を装着した状態を示す。着衣63は照射野15の縁から40cm以内の範囲を被覆できることが好ましい。
図3のb-1は、着衣63において、体幹部が照射野15となった場合の着用方法を示す。体幹部の臓器などをX線透視する場合は、着衣63を折り曲げる必要はない。胃よりも下部の腹部をX線透視する場合は、2本の肩紐69を長くして着衣63を下方にずらして着用する。
図3のb-2は、着衣63において、頸部が照射野15となった場合の着用方法を示す。頸部をX線透視するために着衣63をたくし上げて着用している。そのために、着衣63の上端部は折り曲げている。また、正面側と背面側のカバー70を取り外す。2本の肩紐69は長さを短くする。
カテーテル手技で手首より穿刺する場合は、手の取り出し部67より患者の右手の手首と肘を取り出す。手の取り出した後の手の取り出し部67は、止め具68により、面ファスナーで着衣63に固縛できる。
着衣63は、患者に装着するため、持ち運びは患者が自ら行う。患者の荷重による身体的負担を考慮すると、着衣63の質量は、あまり大きくできない。一般人が持ち運びできる質重の制限から着衣63の質量は最大でも20kg以下とする必要がある。より好ましくは15kg以下、さらにより好ましくは10kg以下とするべきである。そのため、着衣63の遮へい機能がある材料の厚さは、質量の制限から大きくすることが困難である。着衣63の質量が大きいなら、照射野15の縁から20cm以上となる範囲で裾の丈を短くする。
図3のc.は、患者人体上に掛ける通常の掛布18である。これは、機能材料で製造した可撓性のシートである。これらの掛布には照射野15の部位にくり抜き部39がある。これらの掛布は、機能材料を内包または散乱X線の入射側の表面に配置している。構造は機能材料そのままでも構わない。樹脂等で表面処理または積層するというラミネート加工を施した構造のものもある。
患者人体上のこれらの掛布は、最適な位置で患者から上方と側方に放出される散乱X線を遮へいできる。これらの掛布では、下方の散乱X線は遮へいできない。また、くり抜き部39があるため、照射野15とその周辺から上方へ向かう前方散乱X線は遮へいできない。側方への散乱X線は、人体組織60とこれら掛布を通過するため、大部分は遮へいできる。
実施例14の通り、通常の掛布18は照射野15の縁から40cm以内の範囲を被覆できることが好ましい。市販品の掛布の場合は、長さはもっと大きくても構わない。一般の市販品にある掛布の製品例は保科製作所製のSGBがある。この寸法は幅60cm×長さ100cmである。その質量は鉛当量が0.25mmPbで3.2kgである。同様に0.5mmPbで5.5kgである。
人体の荷重による身体的負荷の制限の考え方からは、通常の掛布18と着衣63の合計の質量は最大でも20kg以下とする必要がある。さらに、好ましくは15kg以下、より好ましくは10kg以下とする必要がある。
図3のd.は、着衣63と通常の掛布18を使用した場合の設置図である。この図は、図3のb-2で示した着衣63を用いている。これは患部が頸部等の場合なので、図6のd.では、図6のe.に示した頭部カバー64を付している。通常の掛布18は体軸方向の長さが100cmである。図6のd.では、通常の掛布18は長さが最も大きい。着衣63は同・80cmである。
図6のe.は、頭部カバー64である。頭部カバー64は患部の頸部が照射野15となり、頭部が照射野から40cm以内となった場合に使用する。すなわち、着衣63の頸部が照射野となった場合の変形例との位置付けである。
照射野15との離間距離が短い場合は、頭部から患者体内で複数回の散乱をした散乱X線が外部の空間に漏出し、空間線量率が増加する。これにより医療従事者が被ばくする。医療従事者の被ばくを低減するために、患者には、可撓性の複合吸収材料等の材料による頭部カバー64を装着してもらう。
頭部カバー64は、マスク状の被り物であり、目と鼻および口等を小さく切り取って露出させ、他の部分は可撓性の複合吸収材料等の材料で覆う。これにより、頭部からの外部への散乱X線の放出を低減できる。
なお、頭部が照射野15になった場合は、必然的に頭部はX線受像機10が収納される追加シールドボックス内に収納しなければならない。
通常の掛布と着衣は、前述の遮へい体の形状効果から、小さい質量により患者人体で発生した散乱X線を遮へいできる。この2つのPIの組み合わせにより、散乱X線の強度を低減できる。しかし、1次X線を透過させるくり抜き部があるために、照射野の周辺から上方と下方への散乱X線の強度は低減できない。照射野の周辺から上方への散乱X線を遮へいするのは、前述した追加シールドボックスの役割である。同様に下方への散乱X線を遮へいするのは、前述した高機能テ-ブルの役割である。
患者人体は、着衣と通常の掛布の荷重を負担する。人体への荷重による身体的負荷の制限から、合計の質量は最大でも20kg以下とする必要がある。10kg以下がより好ましい。
ボックス等の防護機器(PD)に新たな防護器具(PI)を組み合わせることで、ボックス内の散乱X線の強度を低減できる。特に、後述する手術時に側方へ漏出する散乱X線の強度を低減する意味もある。
(手術時の側方への散乱X線の強度を低減する方法と効果)
実施例4では、実施例1と実施例2の2つの防護機器(PD)に、複数の新たな防護器具(PI)を追加する方法と効果を説明する。実施例4の新たなPIは、患者の通常の掛布と着衣である。テーブルが第1の防護、ボックスが第2の防護、新たなPIが第3の防護である。新たなPIの追加により、手術時にボックス外の側方へ漏出する散乱X線の強度を低減できる。
図4は、ボックスの貫通ポートの部位と複数のPIを追加した場合の、側方への散乱X線の強度を低減する方法と効果を示す説明図である。図4の真ん中の二点鎖線と矢印で、対策前(左側)と対策後(右側)の状態を区分している。図4のa.からc.が対策前の状態を示し、図4のd.からf.が対策後の状態を示す。図4の真ん中の二点鎖線と矢印で、対策前と対策後の状態を区分している。図4のa.とd.が各々の状態の鳥瞰図である。
ボックス外の側方への散乱X線は、上方または下方と比較すると、手術時には小さくならない。これはボックス側部に人体組織を貫通させる貫通ポートがあり、ここから側方の散乱X線がボックス外に漏出することが原因である。この貫通ポートは、ボックスの端部のスリーブポート8のスリーブ構造体9、および、患者ポート20の遮へいシート22である。
スリーブ構造体9は、スリーブポート8に取り付けられた腕抜きやグローブである。スリーブ構造体9の代表例の1つは、遮へいを有する可撓性の機能材料を成型加工して製作されたスリーブである。スリーブの形状は両端が開口した円錐である。スリーブの根本の開口はスリーブポートの短管に取り付ける部位である。スリーブの先端は手首の寸法で開口する。静置時はゴムで萎めることで、スリーブの先端を閉じている。静置時はこれがスリーブポート8を遮へいしている。
一方、ボックスの体軸方向の両端部に設けられた患者ポート20には、遮へいシート22が取り付けられている。遮へいシート22は遮へいを有する可撓性の機能材料により製作された一体のシートである。遮へいシート22の片方の端部は、ボックスに接続されている。手術の準備時には患者を貫通させてボックスを設置した後、遮へいシート22は患者ポート20の余空間をなるべく塞ぐように設置する。静置時はこれが患者ポート20を遮へいしている。
これらの貫通ポートは静置時には可撓性の遮へい能力がある構造体が設置されており、貫通ポートを塞いでいる。そのため、静置時には患者人体で発生した側方への散乱X線がボックス外へ漏出することはない。しかし、手術時には次の3つの理由で貫通ポートを介してボックス外へ散乱X線が漏出する。
1つ目の理由は、貫通する人体が動くためである。スリーブポート8では手術時に防護手袋を装着した医療従事者の手腕がスリーブ構造体9を介して貫通している。その上で医療行為のために手腕を激しく動かしている。この動きの都度にスリーブの先端は開口する。スリーブの先端は開口した時点では、散乱X線がボックス外に漏出する。
患者ポート20では、手術時に患者人体が貫通しており、遮へいシート22をその上に掛けている。しかし、遮へいシート22は患者の動きでずれる場合がある。遮へいシート22の位置がずれた場合は、散乱X線がボックス外に漏出する。
2つ目の理由は、人体組織がX線を透過するためである。貫通ポート20を貫通する医療従事者の手腕や患者人体60の体幹部等の身体組織は、ある小さい割合のX線を遮へいする。残りの大部分は散乱し、一部は透過する。すなわち、ボックスを貫通した身体組織での透過と散乱により、入射した散乱X線の一部がボックス外に漏出する。
3つ目の理由は、X線源の管電圧が高いため遮へい能力が不足する場合である。スリーブ構造体9と遮へいシート22は、遮へい能力がある可撓性の機能材料で作られる。これらは手技等の繊細な医療行為を行うために、柔らかい素材である必要がある。医療行為に要求される操作性からの要求により、両者共に厚みは大きくできない。すなわち、これらの防護器具の遮へい能力には自明に限界がある。これらの一般の市販品では、厚みは鉛当量で0.25mmPb以下である。しかしながら、この厚みでは、例えばX線源の管電圧が例えば88kV以上となった場合は、一般に遮へい能力が不足する。
図4のb.とc.には散乱X線の漏れを生じる貫通ポート20の余空間を示す。黒いハッチング部分が余空間の候補となる場所である。図4のb.がスリーブポート8、c.が患者ポート20を示す。なお、患者ポート20のうち、c-1.が患者の頭部側、c-2.が患者の下肢側を示している。但し、図4のb.とc.は、候補となる余空間の全領域を示している。しかし、実際には医療現場ではこの状態から余空間を塞ぐ努力をする。
しかしながら、手術時には余空間が生じ、そこを貫通した人体組織がX線を透過するため、貫通ポート20ではX線の漏出を完全に防ぐことはできない。
医療従事者がボックス内で手技を行うには、追加シールドボックスの側部に手腕を差し込むスリーブポートは不可欠である。また、体軸方向の端部に患者ポートがあれば、患者の頭部や下肢部をボックス外に出せる。これは、患者の医療被ばくを低減できる。その上、患者ポートは閉所による患者の心理的な不安を取り除くことができる。そのため、スリーブポートと患者ポートは必要不可欠である。
これらの貫通ポートがあることを前提に、側方への散乱X線の漏出を低減する対策を考えなければならない。患者人体が散乱X線の線源である。考えられる対策は、患者人体と貫通ポートとの間の狭い空間に、別の遮へい機能のある材料による構造体を配置することである。しかし、ボックスの貫通ポートと患者人体との間の距離は短い。ここに寸法の大きな遮へい構造体を置くことは難しい。
遮へい構造体は、最も簡素な構造体である金属製または樹脂製の板材または膜材が好ましい。この部位に設置が可能な遮へい構造体は、患者の掛布と患者の着衣である。図4のe.が通常の掛布18、f.が着衣63である。
両者は、共にシート状の遮へい能力のある機能材料を成型加工したものである。また、両者には照射野15の部位を切り取ったくり抜き部39を設置する。そのため、掛布18と着衣63では、照射野15から上方と下方の散乱X線は、厳密な遮へいができない。
図4のa.は、ボックス外への側方への散乱X線の低減対策前の状態を示す。図4のd.は対策後の状態を示す。図4のa.とd.の照射野15の周囲の矢印は、散乱X線の方位を示す。これは実施例1と同様に矢印の太さは光子数を示し、長さが散乱X線のエネルギーを示す。図4のd-1の着衣63上の矢印は、図4のa.が着衣63によって遮へい後の状態を表す。図4のd-2の掛布18の矢印は、着衣63上の矢印が一般の掛布18によって遮へい後の状態を表す。
図4のa.とd-1の着衣63上を比較する。d-1の方が下方と側方への矢印の幅は小さくなる。同様に長さも小さくなる。この理由は、患者人体60で発生した散乱X線が着衣63で遮へいされたためである。
図4のd-1の着衣63上と、d-2の掛布18上を比較する。側方への矢印の幅は、d-2の掛布18上の方が、小さい。また、長さはd-2の方が小さい。図4のd-2の掛布18上では下方への矢印がない。この理由は掛布には下方への後方散乱X線の遮へい能力がないためである。
一方、図4のa.とd-2の掛布18上を比較する。上方への1次X線の黒い矢印は、幅と長さの両方共に大きく変化がない。この理由は、d-1の着衣63とd-2の掛布18の両方には、共に照射野15の部位を切り取ったくり抜き部39があるためである。
次に着衣または掛布のくり抜き部以外の部位での遮へい能力を説明する。もし着衣または掛布が、実施例1で述べたJIS試験の供試材料と同じシート状の複合吸収材料だとすれば、散乱X線の透過率は推定できる。すなわち、全t=0.4~0.5mmの複合吸収材料の板材だと仮定する。着衣または掛布の散乱X線の透過率は、これがない場合に比べて、管電圧70kVの場合で約50分の1になる。同様に、管電圧50kVの場合で200分の1以下になる。これらは実施例16で示すJIS試験結果より明らかである。
従って、上述の防護器具の範囲でも、追加シールドボックス1内のスリーブポート8位置に照射される散乱X線は一定の範囲で小さくなる。同様に患者ポート20位置に照射される散乱X線は小さくなり、ボックス内の再散乱分を含めて考えればさらに小さくなる。
それ故に、掛布18かつまたは着衣63を追加して用いることによるボックス外へ漏出する側方への散乱X線の強度を低減する効果は大きい。
手術時にはPDに新たなPI(患者の掛布と着衣)を組み合わせることで、手術時にボックスの貫通ポートから側方へ漏出する散乱X線の強度を低減できる。これらに複合吸収材料を使用することで、散乱X線を減弱させた上で吸収できる。これにより、医療従事者と患者の被ばくを低減すると共に、医療従事者の防護負荷を低減できる。
(第3の防護として新たなPIを組み合わせたケースの鳥瞰図)
図5は、第3の防護として新たなPI(通常の掛布18と着衣63)を組み合わせた、高機能テーブル2(第1の防護)と追加シールドボックス1(第2の防護)の鳥瞰図を示す。図5のボックス1の中央部は透視図として内部を見せている。患者人体60で発生する散乱X線は分担して強度を低減する。テーブル2は下方を分担する。ボックス1は、上方と静置時の側方を分担する。また、各所に複合吸収材料72を配置して、線減衰させたX線は線エネルギー吸収する。通常の掛布18と患者の着衣63は、主に手術時の側方を分担する。新たなPIは手術時には人体に動きに伴ってボックス付属器具(スリーブ構造体9と遮へいシート22)に生じた余空間からボックス外へ漏出する散乱X線の強度を低減する。
なお、図4では下肢部の患者ポート20には、遮へいシート22の代わりに後述の短冊式カーテン54が取り付けられている。下肢部の患者ポート20は照射野15から40cm以上の離間距離があり、この位置での散乱X線の線量率は小さいので、短冊式カーテン54を使用しても構わない。
第1の防護である高機能テーブル2は、X線を良く透過させて散乱を低減する医療用テーブルである。テーブル2では、1次X線は中空の空間を通過後にテーブル天板7の網またはCFRP等の薄膜による透過板ユニット32を通過して相互作用なく患者人体60の患部である照射野15に至る。天板の段30は、患者等の体重を支持すると共に、患者人体からの散乱X線を吸収するテーブル天板7がある。また、上述の透過板ユニット32と吸収板31がある。中間の段34は場所を移動できるスライドテーブル35と絞り板36によって、照射野の周辺から下方への後方散乱X線の強度を低減できる。底板の段40の開閉板42は、ヒ開角度を制御して開閉することで、照射野15の位置のみ開く。これらにより、テーブル2は、X線を良く透過させて散乱を低減する。
第2の防護である図5の追加シールドボックス1は、テーブル2の上に設置したFPD内蔵型のボックス17である。ボックス本体4は2分割される。ボックス1は立体的にどの方位にも外部空間と通じた開口がなく、線量率に応じて異なる複数の種類と厚みの組み合わせの機能材料により照射野15を取り囲む。ボックス天板3には遮へい能力を高めた線減衰材料82が配置される。遮へい能力のある覗き窓6によりボックス内部を視認しながら、スリーブ構造体9を介して医療従事者が手腕を挿入して医療行為を行う。
スリーブ構造体9は、覗き窓6があるボックス側面にあり、医療従事者が手腕を貫通するスリーブポート8に取り付けられる。遮へいシート22は、体軸方向のボックス側面にあり、患者人体を貫通させる患者ポート20に取り付けられる。これらのボックス付属器具からは、手術時の医療従事者の手腕や患者の動きに伴って余空間が生じるため、側方への散乱X線がボックス外へ漏出する。
ここでは第3の防護として新たな防護器具(PI)である通常の掛布18と着衣63を追加した。通常の掛布18は、ボックス内の患者人体に掛ける。すなわち、患者人体の上方と側方を取り囲んで設置される。着衣63は、散乱X線源である患者に着用してもらう。これらの合計の質量は、20kg以下である。より好ましくは10kg以下である。これらには1次X線を透過させるために、患部の照射野の部位をやや大きめに切除したくり抜き部39がある。そのため、照射野の周辺から上方と下方に発生する散乱X線は有効に遮へいできない。しかし、患者人体60の遮へいを加味すると、ボックス内で照射野の周辺から側方に向かう散乱X線は有効に遮へいできる。これにより、通常の掛布18と患者の着衣63は手術時にボックス外の側方へ漏出する散乱X線の強度を低減できる。
上述の高機能テーブル2(第1の防護)と追加シールドボックス1(第2の防護)およびPI(第3の防護)を合わせたものが、複合化した防護機器・器具(PDITS)である。複合化したPDITSにより、手術時を含めて患者人体から全方位に向けて発生する散乱X線の強度を低減できる。各所に複合吸収材料を配置することで、散乱X線は減弱させた上で、線エネルギー吸収できる。X線を良く透過させる効果も加えて、これにより診療室等内の空間線量率を低減できる。すなわち、医療従事者の職業被ばくと防護負荷を低減できる。また、患者の医療被ばくを低減できる。
(新たなPIとテーブルまたはボックスの「いずれかを組み合わせたケース」)
実施例6では、第3の防護(PI)と、防護機器(PD)である第1の防護(テーブル)または第2の防護(ボックス)の「いずれかを組み合わせたケース」を説明する。第3の防護である防護器具(PI)には後述の追加防護器具(API)を加えても構わない。
前述の通り、第1~第2の防護を組み合わせた場合は、静置時の全方位(上方、側方、下方の3方向)の外部に放出される散乱X線の強度を低減できる。第1~第3の防護を組み合わせた場合は、それに加えて、手術時の側方のボックス外へ漏出する散乱X線の強度を低減できる。これらで高機能テーブル2が加わると1次X線を良く透過する能力が加わる。
実施例6で述べる「いずれかを組み合わせたケース」では、上述した2つの場合と比較して、a)全方位への散乱X線の強度を低減する能力、または、b)1次X線を良く透過する能力のいずれかまたは両方が劣っている。
最初に、第1の防護と第3の防護の場合を説明する。次に、第2の防護と防護の場合を説明する。
まず、第2の防護であるボックス1が無く、第1の防護であるテーブル2と、第3の防護である通常の掛布18と着衣63がある場合について考察する。市販の鉛当量が最も大きな通常の掛布18は、0.5mmPbと相応の厚みがある。これを2枚重ねると1.0mmPbとなる。また、患者には着衣63を装着してもらう。患者への質量による身体的負担を後述の容認できる最大限の20kgとするならば、両者で約2.0mmPbの厚みである。これは実施例17で述べる通りの相応の遮へい能力がある。もし、患者の全身から上方と側方に発生する散乱X線のエネルギーが50KeVの場合は、遮へいがない場合と比較して約15分の1まで強度を低減できる。さらにこれに加えて、後述の厚肉の掛布19を使う考えもある。
しかし、掛布と着衣の照射野15の周辺には、一次X線を透過させるくり抜き部39がある。照射野15で発生して上方へ向かう前方散乱X線は、遮へいするものがない。また、前方散乱X線はエネルギーが高いため、照射野15の周辺で発生するものは、通常の掛布18では、遮へいできない。
すなわち、第1の防護であるテーブル2と第3の防護である掛布18と着衣63を組み合わせて設置することにより、照射野の周辺から上方に向かうものを除いた患者人体から発生する全方位の散乱X線の強度をある範囲で低減できる。ただし、この簡易な方法は、医療従事者の被ばく防護に十分な訳ではない。特に水晶体に至る前方散乱X線はあまり低減できないことに留意する必要がある。そのため、上方への散乱X線の十分な遮へいには、ボックス1が必要条件となる。
次に、第1の防護であるテーブル2が無く、第2の防護であるボックス1と第3の防護がある場合を考察する。この第3の防護の新たなPIは通常の掛布18と着衣63に、市販の敷布21を加えた場合を検討する。
敷布21は患者の下に敷くため、鉛当量に相当する厚みを大きくしても、患者への質量による身体的負担はない。そのため、後述の厚肉の掛布19に相当する1~3mmPbの鉛当量とすることができる。すなわち、3mmPbにおいては、患者の全身から下方に発生する散乱X線のエネルギーが50KeVの場合は、遮へいがない場合と比較して約60分の1まで強度を低減できる。
しかし、敷布21の照射野の周辺には、一次X線を透過させるくり抜き部39がある。くり抜き部39には遮へいするものがない。また、テーブル2がないため、照射野15の周辺の下方に体軸方向の位置を高精度で調整できる絞り板36がない。そのため、この部位で発生して下方へ向かう後方散乱X線は、遮へいできない。すなわち、第2の防護であるボックス1と、第3の防護である掛布18と着衣63に加えて、患者人体下の敷布を設置することにより、照射野の周辺から下方に向かうものを除いた患者人体より発生する全方位の散乱X線の強度をある程度の範囲で低減できる。これは手術時でも変わらない。ただし、この簡易な方法は、医療従事者の被ばく防護に十分な訳ではない。そのため、下方への散乱X線の十分な遮へいには、高機能テーブル2が必要条件となる。
前項の第2の防護と第3の防護を組み合わせた場合で、1次X線を良く透過する能力について考察する。PDである高機能テーブル2の代わりにPIの敷布21を用いた場合では、照射野の周辺を除いた下方への散乱X線を遮へいできる。
しかし、敷布21では、1次X線の透過割合を増加させる効果は期待できない。仮に敷布21に照射野15の部位にくり抜き部39で開口した場合であっても、良く透過させる効果は得られない。その理由は、敷布の下にある通常のテーブルが1次X線を散乱し、同時に散乱X線を再散乱するためである。また、絞り板36がないため、照射野15が必要よりも大きな範囲になるためである。そのため、1次X線を良く透過するには、高機能テーブル2があることが必要条件となる。
(手術時に追加する追加防護器具(API)の具体例の説明)
実施例7では、第3の防護として追加して設置する追加防護器具(API)の具体例を説明する。APIは厚肉の掛布と支保構造体である。前述の遮へい体の形状効果の通り、患者人体に近い位置ほど小さい質量で遮へいできる。そのため、厚肉の掛布の位置は、通常の掛布と着衣の次に、小さな質量の遮へい体でボックス外へ漏出する散乱X線の強度を低減できる。
図6は、患者人体に装着する防護器具の説明図を示す。図6のa.は患者人体が着衣63を装着した状態を示す。b.は通常の掛布18を示す。c.は厚肉の掛布19を示す。d.は厚肉の掛布19を支持する半円筒形で一体型の支保構造体65を示す。e.は着衣63、通常の掛布18および支保構造体65で支持した厚肉の掛布19を使用した場合の設置図を示す。このうち、図6のa.の患者の着衣63と図6のb.の通常の掛布18は、実施例3で説明した。
図6のc.は、厚肉の掛布19である。厚肉の掛布19は、機能材料を内包または散乱X線の入射側の表面に配置している。機能材料そのままの構造でも構わない。これらをクラッド圧延したものでも構わない。樹脂等で表面処理または積層するというラミネート加工を施した構造のものでも構わない。
患者人体上の厚肉の掛布19は、患者の全身から上方と側方に放出される散乱X線を遮へいできる。厚肉の掛布19は、くり抜き部39があるため、照射野15の周辺から上方への散乱X線は遮へいできない。くり抜き部39の面積を小さくするためにX-Yゴニオメータ式などの絞り機構を取り付けても構わない。側方への散乱X線は、人体組織60と厚肉の掛布19を通過するため、幅広い範囲を遮へいできる。
厚肉の掛布19には通常の掛布18よりも大きな遮へい能力を期待する。実施例14の通り、厚肉の掛布19は照射野15の縁から20cm以内の範囲を被覆するのが良い。厚肉の掛布19は機能材料分の全厚み(全t)が1~3mmと大きくなり、質量も大きくなる。しかし、質量が大きいので患者への荷重による身体的負荷が増えてしまう。
人体の荷重による身体的負荷の制限の考え方からは、通常の掛布18と着衣63の合計の質量は最大でも20kg以下とする必要がある。さらに、好ましくは15kg以下、より好ましくは10kg以下とする必要がある。
厚肉の掛布19を患者人体60に掛ける場合は、その質量を支持する別の支保となる構造体が必要である。また、厚肉の掛布19の質量は、この支保構造体65の耐荷重によって決まる。
図6のd.は、支保構造体の一例として半円筒形の支保構造体65を示す。支保構造体65は、テーブル上に置き、患者の上部を跨いで設置する。これは、その上に厚肉の掛布19を上載し、その質量を支持する。従って、厚肉の掛布19の質量は患者人体60を介さずに、テーブルに直接的に載荷される。
支保構造体65の骨組みは、次の材料が好ましい。それはX線を散乱や吸収が小さいものである。また、密度が小さく強度が高いものが好ましい。そのため、金属チタンとその合金、金属アルミニウム合金、金属マグネシウム合金またはCFRPなどの材料製の中空の形材が良い。中空の形材には中空円筒、角材などがある。支保構造体65は、上載する厚肉の掛布19の質量を支持できれば、どんな形状の骨組みでも良い。支保はトラス構造でもラーメン構造でも門形構造でも構わない。図6のd.は半円筒形の骨組みを持つ支保構造体65である。厚みと質量が大きい厚肉の掛布19とその支保構造体65を総称して「追加防護器具(API)」と呼ぶ。APIも第3の防護の1つである。
支保構造体65を利用することにより、厚肉の掛布19は重量増加が大きくても許容される。一般に人体程度の体重を支える骨組みは、多数の市販の製品例もある。その骨組みは耐荷重が100kgでも技術的には可能である。しかし、厚肉の掛布19は医療従事者が複数名で持ち運び可能なことが望ましい。ここでは持ち運び可能な質量は60kgと考えた。60kgが支保構造体65の耐荷重として設定した。この数値が厚肉の掛布19の最大質量となる。この仕様の支保構造体65の自重は、軽量の自転車相当の10kg程度である。
実施例17では全t=1~4mmの厚肉の掛布のX線の透過率を推定した。これは複合吸収材料のうち低反射減弱層である初層Pbを対象とした簡易な試算結果である。その結果から、厚肉の掛布の50KeV以下のX線の透過率は、厚み0.45mmの通常の掛布と比較すると、次の通りと予想される。全t=1mmの場合は、約15分の1と予想される。全t=2mmの場合は、1,400分の1以下である。全t=3mmの場合は、130,000分の1以下である。そのため、全t=1~3mmの厚肉の掛布により側方散乱X線の透過率を低減できる。80KeVになると、低減の割合は小さくなる。なお、この目的では全t=4mmの厚肉の掛布は、必要ないと思われる。
上述の通り、全t=1~3mmの厚肉の掛布は、ボックス外へ漏出する側方への散乱X線の強度を低減する効果は大きい。
ここでは、上述を踏まえて、着衣と通常の掛布18と厚肉の掛布19の寸法と質量を整理する。計算上の想定照射野の一辺は15cmと仮定する。なお、くり抜き部の寸法は診療内容毎に決める。照射野の両縁から40cmの範囲であれば、全長は95cmとなる。同・20cmであれば、全長は55cmとなる。この情報に基づき、着衣と掛布の概略の寸法を設定する。着衣63の寸法は、表裏の幅1.2m×長さ0.8mとすると、面積は約1mである。通常の掛布18の寸法は幅0.8m×長さ1.0mとすると、面積は0.8mである。厚肉の掛布19の寸法は幅1.0m×長さ0.6mとすると、面積は0.6mである。
一方、実施例16で示すJIS試験の供試材料としたのは全t=0.45mmのシート状の複合吸収材料72である。この単位面積当たりの機能材料の質量は、1立方メートルあたり3.6~4.7kg(kg/m)である。この材料を利用した着衣63の機能材料分の質量は3.6~4.7kgである。また、通常の掛布18の機能材料分の質量は2.9~3.8kgである。
実施例17の遮へい能力の検討結果から、ここで取り扱う厚肉の掛布19の機能材料分の全厚み(全t)の範囲は、1mm以上で3mm以下は好ましい。その単位面積当たりの機能材料の質量は、全t=1mmの場合で約10kg/mである。2mmの場合で約20kg/mである。3mmの場合で約30kg/mである。厚肉の掛布19の面積は0.6mであるため、機能材料分の質量の範囲は6kg以上で18kg以下である。
図6のe.は、着衣63と通常の掛布18と半円筒形の一体型の支保構造物65で支持した厚肉の掛布19を使用した場合の設置図である。この図は、図6のb-1で示した着衣63を用いている。これは患部が頸部等の場合なので、図6のe.は頭部カバー64を付している。図6のe.では、通常の掛布18は体軸方向の長さが100cmであり、最も大きい。着衣63は同・80cmである。厚肉の掛布19は同・60cmであり、長さが最も小さい。
前述の通り、厚肉の掛布19の機能材料分の質量の範囲は、6kg以上で18kg以下である。これに支保構造体65の約10kgが加わる。これらの合計で約20~30kgの質量は半円筒形の支保構造体65を介してテーブル天板7が支持する。患者人体60ではこれらの荷重を負担しない。
一方、患者人体60は、着衣63と通常の掛布18の荷重を負担する。人体への荷重による身体的負荷の制限から、合計の質量は10kg以下が好ましい。
ボックス等の防護機器(PD)に追加防護器具(API)を組み合わせることで、手術時にボックスの貫通ポートから側方へ漏出する散乱X線の強度をさらに低減できる。
(一体型または分割型の支保構造体の構造と取付け機構の説明)
実施例8では、取付け機構によって、テーブル上に横たわる患者人体上に、APIのうち一体型または分割型の支保構造体を設置する方法を説明する。
実施例7で述べた通り、厚肉の掛布と支保構造体の合計の質量は約20~30kgである。この範囲の質量であれば、医療従事者が複数名の人力で設置することは可能である。人力の場合は、取り扱いし易い可撓性の機能材料で製作した厚肉の掛布を使うことが望ましい。
一方、1人作業で取り扱うには、既製の取付け機構を使用することが望ましい。これには機械装置を付属する場合もある。既製の取付け機構で取り扱う場合は、剛性の機能材料で製作した既製の形状の厚肉の掛布を適用できる。この場合、剛性の機能材料として、強度が大きな透明含鉛アクリル樹脂板を利用できる。ここでは、厚肉の掛布は予め支保構造体に取り付けて設置される場合を検討した。
剛性の機能材料である透明含鉛アクリル樹脂板62としてはクラレトレーディング社製のキョウワグラス-XAがある。鉛当量が1mmPbのH-22の板厚は24mmである。鉛当量が2mmPbのH-46の板厚は50mmである。曲げ強度は60PMa以上あるため自立強度は十分であり、追加の支保構造体は不要である。透明の含鉛アクリル樹脂はテーブル2上に自立して使用できる。この場合、厚肉の掛布19には手の取り出し部67などの手術中に開ける可能性がある部位には、開口用の切り込みとそのヒンジ機構を予め設置する。
図7は、一体型の支保構造体65および分割型の支保構造体66の構造と取付け機構を示す。図7のa. は、一体型65である。取付け機構はa-1が吊上げ式である。a-2がスライド式である。図7のb.は、分割型66である。図7のb.は、一例として分割数は4の分割型の支保構造体65を作図した。分割数は2以上であれば、多くても少なくても構わない。b-1の取付け機構は吊上げ式である。b-2はスライド式である。スライド式の場合は、テーブル天板7に分割型の支保構造体66と分割型のボックス16をスライドするガイドとして小さく凹んだガイド溝を設置する。
図7のc.は、体軸方向に2分割の支保構造体の両開き式である。これはテーブル2上の所定位置で2分割の支保構造体66を開く。この場合は半割りの支保構造体66をテ-ブル2に取り付けるヒンジ51機構が取り付け機構となる。
図7のa-1とb-1の取付け機構は天井クレーン58である。吊上げ式では天井クレーン58で支保構造体65を吊上げて、患者人体が横たわったテーブル2上に鉛直方向に降ろし、所定位置に設置する。b-1の場合は、1つの分割型の質量は小さくなるので、取付け機構は華奢なもので良い。
a-2とb-2の取付け機構は横持ち台車59である。スライド式の場合は横持ち台車59で患者人体が横たわったテーブル2上に移動する。次に横持ち台車59をテーブル天板7の上端の高さまで持ち上げる。最後に支保構造体65を水平方向にスライドさせて降ろし、所定位置に設置する。また、分割型のボックス16もこれと同様の手法により、テーブル上に設置できる。
取付け機構があれば、質量が大きくても容易に取り扱いできる。取付け機構を考慮した場合は、厚肉の掛布19は、支保構造体65に予め取り付けることが可能である。この場合、支保構造体65に取り付ける厚肉の掛布19は、人手でハンドリングしないので、剛性の機能材料を使用しても構わない。
一体型は設置する際に、質量が大きいが、設置の手間は少ない。また、診療室内等で保管やハンドリングには、大きな面積の場所が必要である。一方、分割型は設置する際に、質量が一体型より小さい。しかし、保管やハンドリングに必要な場所の面積が小さいことが特長である。また、手術中の予定にないサンプリング等が必要になった際に、分割した支保構造体の間から患者人体にアクセスできることも特長である。
ここでは天井クレーン、横持台車、ヒンジ機構により、支保構造体と分割型のボックスを容易に設置できる取付け機構を考案した。支保構造体は質量や保守スペースが小さな分割型としても構わない。厚肉の掛布を予め支保構造体に貼り付けることもできる。この取付け機構によって、医療従事者による手術前の追加防護器具(API)の準備を容易にできる。
(操作性を高めた「進化した組み合わせケース」の方法と効果の説明)
実施例9では、実施例2で示したボックス付属器具(スリーブ構造体9と遮へいシート22)の操作性を高めた「進化した組み合わせケース」の方法と効果を説明する。
実施例7では、厚肉の掛布と支保構造体による追加防護器具(API)の構成と効果を述べた。実施例8では、APIを設置する方法を述べた。APIで強化した側方の散乱X線の防護により、防護機器(PD)のボックス付属器具の防護を軽微にする余裕を生む。実施例9では、これによって、防護性能は同じレベルに維持しながら、PDに付属する防護器具の操作性を高める考え方での防護機器・器具(PDITS)を考案した。
患者ポート20では、遮へいシート22の代わりに、遮へい能力のあって多数の仕切りがある可撓性のカーテン(以下、「短冊式カーテン」という)54を設置する。スリーブポート8では、スリーブ構造体9の代わりに、短冊式カーテン54またはグローブレスポート53を設置する。これら2つのPIを総称して簡便化防護器具(SEPI)と呼ぶ。SEPIに変更することにより、防護性能は同じレベルに維持しながら、医療従事者の操作性を高める。
図8は、防護器具(PI)を複合化した「進化した組み合わせケース」の説明図である。図8の真ん中の二点鎖線と矢印で、防護器具(PI)を複合化する前(左側)と複合化した後の状態(右側)を区分している。図8のa.とe.が各々の鳥瞰図である。
ここで、図8のa.~d.が複合化前の状態である。a.従来のFPD内蔵型のボックス17の鳥瞰図、b.は通常の掛布18、c.はスリーブポート8のスリーブ構造体9、d.は患者ポート20の遮へいシート22である。一方、図8のe~j.が複合化後の状態である。e.はFPD内蔵型のボックス17の複合化後の鳥瞰図、f.は一体型の支保構造体65の設置状況、g.は厚肉の掛布19、h.はスリーブポート8のグローブレスポート53、i.はスリーブポート8の短冊式カーテン54、j.は患者ポート20の短冊式カーテン54である。
なお、図8のd.の患者ポート20の遮へいシート22は、d-1.が患者の頭部側、d-2.が患者の下肢側を示している。また、図8のj.の患者ポート20の短冊式カーテン54は、j-1.が患者の頭部側、j-2.が患者の下肢側を示している。
患者ポート20では、図8のd.の遮へいシート22の代わりに、図8のj.の短冊式カーテン54を設置する。このカーテンは、遮へい性のある可撓性のシートに厚み方向に貫通する切り込みを入れて多数の仕切りを作ったものである。多数の仕切りは、水平方向の幅が小さく、垂直方向の長さが大きい、多数の短冊状のシートである。これらは患者ポート20の上端より懸垂する。下端は自由とする。短冊式カーテン54の見た目は、一般家庭用のラインカーテンと似ている。外見上は日本の暖簾のようである。この暖簾とは、店先あるいは部屋の境界に日よけや目隠しなどのために入口扉などに吊り下げる布状のシートである。
原材料となる可撓性のシートの製品例は、十川ゴム社製の放射線遮蔽ゴムシートの品番RSL-070がある。管電圧100kVのX線の遮へい能力は次の通りである。ゴムシートの厚み3mmの場合では、鉛当量が約0.38mmPbである。同・5mmの場合では、同・約0.66mmPbである。
多数の仕切りがある短冊式カーテン54は、通常は垂れ下がって遮へい体として機能する。また、ポート使用時には人体との間の余空間を塞ぐように使用する。しかし、仕切りの切り込みが多数にあれば、手術中にそれらに隙間が生じることは避けられないため、短冊式カーテン54の遮へい能力は遮へいシート22よりやや劣る。短冊式カーテン54は貫通する切り込みを塞ぐように位置決めして、2重で使用することが好ましい。さらに3重にして使用することがより好ましい。図8のd.とj.の白抜きの部分が余空間である。この方法により、ボックス外の側方への散乱X線の漏出を低減できる。
短冊式カーテン54は、多数の仕切りがあるため、人が押せば容易にその部位を開くことができる。患者ポート20の貫通部の遮へいを短冊式カーテン54に代えることで、患者の頭部と下肢部をボックス外に出す行為が容易になる。ボックスに貫通させて患者を寝かせ、患者ポート20と患者人体60との間の余空間を塞ぐ医療行為に手間がかからないため、医療従事者にとって操作性が高い。
また、患者ポート20に短冊式カーテン54を使用した場合は、体軸方向のボックス端面のスリーブポート8は不要となる。何故ならば、医療従事者は患者ポート20の短冊式カーテン54を介して手腕を挿入できるためである。
短冊式カーテン54は切り込みが入った可撓性のシートの構造である。その遮へい能力は、遮へいシート22に比べると劣る。特に、患者ポート20は、頭部側では照射野15との離間距離が小さい場合は、その遮へい能力が不足する心配がある。体肢部側では、照射野15との離間距離が大きいため、その心配はない。しかし、本発明では、APIの遮へい能力により、上述の心配はなくなる。厚肉の掛布19は、側方の散乱X線の強度を低減させる能力が大きい。そのため、本発明では頭部側の患者ポート20でも、短冊式カーテン54を利用できる。
スリーブポート8では、図8のc.のスリーブ構造体9の代わりに、図8のiの短冊式カーテン54または図8のh.のグローブレスポート53を設置する。
短冊式カーテン54は、前項の患者ポート20と同じ構造である。しかし、これを設置するスリーブポートは、特許文献3に示した楕円型または丸形から、角形のスリーブポート13に変更する。短冊式カーテン54は角形のスリーブポート13の上端より懸垂する。
短冊式カーテン54は、多数の仕切りで容易に開く。これに代えることで、医療従事者の手腕をボックス内に入れる行為が容易になる。第1にボックスに手腕を挿入する行為に手間がかからない。第2に術者はボックスに手腕を入れたままで左右に移動できる。そのため、これは医療従事者にとって操作性が高い。
グローブレスポート53は、丸形の遮へいシートに貫通した切り込みによる中心に向けた多数の放射状の仕切りがある円板状の構造物である。これはスリーブポート8に取り付けて使用する。これは可撓性の機能材料で製作され、その機能と仕様は前記短冊式カーテンと同様である。これを取り付けるスリーブポート8は、丸形もしくは楕円形である。グローブレスポ―ト53の市販品は、サンプラテック社製の製品がある。
また、グローブレスポート53を使用しない時には、ボックス本体4と同じ材質の封止遮へい蓋52により、丸形のスリーブポートを閉じる。封止遮へい蓋52はボックス本体4と同じ材質・構成で作られた円板状の蓋である。被せ蓋でも構わない。封止遮へい蓋52は一体物を手動で操作してスリーブポート8を開閉できる。また、一体物はヒンジ機構を使って上、下、左または右に開閉できる。2つ以上に分割した封止遮へい蓋であれば前後または左右に開閉できる。さらに、センサー(またはスイッチ)と駆動機構を備えることにより、機械装置によって開閉しても構わない。足踏み式スタンドと同じ機構のフットペダル56で、術者が手術時に自身で封止遮へい蓋52を開閉することも可能である。
スリーブポート8を封止遮へい蓋52で閉じれば、ボックス外へ側方から漏出する散乱X線は低減する。そのため、照射野15に近い位置には、封止遮へい蓋52付きのグローブレスポート53を設置することが好ましい。グローブレスポート53は、短冊式カーテン54と同様にボックス外部への散乱X線の漏出を低減できる。グローブレスポート53は、多数の仕切りがあるため、人が押せば容易にその部位を開くことができる。これは、手腕を容易に通過できるため、医療従事者にとって操作性が高い。
グローブレスポート53の遮へい能力は、切り込みが入った丸形の可撓性のシートの構造からスリーブ構造体9に比べると劣る。特許文献3では、グローブレスポートの使用条件は、ボックス内の散乱X線のエネルギーは60KeV未満に制約されていた。本発明では、APIの遮へい能力により、この制約はなくなる。そのため、本発明では患者人体内で発生する散乱X線のエネルギーが60KeV以上の場合でも、グローブレスポート53を利用できる。
角形のスリーブポート13では、短冊式カーテン54も閉止遮へい蓋55で閉止する構造となる。すなわち、短冊式カーテン54を使用しない時には、閉止遮へい蓋55により、角形のスリーブポート13を閉じる。これにより遮へい能力を高める。この部位の閉止遮へい蓋55は、一体を手動で操作し、ヒンジ機構を使って上または下に開閉できる。さらに、センサー(またはスイッチ)と駆動機構を備えることにより、機械装置によって開閉しても構わない。スリーブポートは角形でも台形でも構わない。この閉止遮へい蓋55を閉じることにより、側方への散乱X線の漏出を低減できる。
図8では、散乱X線の方位を矢印で示している。概略として矢印の太さは散乱X線の光子数を示しており、長さが散乱X線のエネルギーを示している。
図8のb.は、図4のd.の着衣63上および掛布18上と同じである。これに対して、図8のg.は厚肉の掛布19を使用する場合を新たに示している。図8のb.の掛布18上とg.の厚肉の掛布19上を比較すると、側方への矢印の幅がさらに小さくなり、長さがさらに小さくなっている。これは厚肉の掛布19の効果である。上方への矢印は、側方に比較して、幅と長さの両方共に大きく変化していない。これは、両方共に照射野15の部位を切り取ったくり抜き部39があることが影響している。掛布には後方散乱X線の遮へい能力がないため、下方への矢印は記載しなかった。
簡便化防護器具(SEPI)の採用は、ボックス内で側方への散乱X線が低いレベルにあることが前提条件である。追加防護器具(API)によりボックス内で側方への散乱X線の強度を低減すれば、複合化した防護機器・器具(PDITS)の防護性能は同じレベルに維持して利用できる。簡便化防護器具(SEPI)を利用すれば、医療従事者は容易に手腕をボックス内に挿入して作業できる。
一方、体外被ばくにおける決定器官は水晶体、甲状腺、骨、生殖器等の体幹部の組織である。手腕には決定器官がない。そのため、手腕に被ばく線量計を装着する例は少ない。しかし、被ばく線量管理はALARA(As Low As Reasonably Achievable)の原則の下で運用されるべきである。そのため、手腕であっても、無用な被ばく線量は低ければ低い方が良い。SEPIを利用する場合、医療従事者は、防護具(PT)である防護手袋と防護腕カバーを使用することが望ましい。
(操作性を高めた「進化した組み合わせケース」の鳥瞰図)
実施例10では、複合化した防護機器・器具(PDITS)により操作性を高めた「進化した組み合わせケース」の鳥瞰図を説明する。図9がその鳥瞰図である。図9のa.は追加シールドボックス1、b.は高機能テーブル2、c.は患者の着衣63、d.は厚肉の掛布19と4分割した支保構造体66である。追加防護器具(API)は、厚肉の掛布と支保構造体で構成される。図9のd.の厚肉の掛布は、全t=2mmの例である。ここで厚肉の掛布19の機能材料分の質量は約12kgである。これらは実施例8の取扱い機構により操作され、患者人体60を跨いでテーブル2上に設置される。
図9では、患者人体60付近を見易いように高機能テーブル2と追加シールドボックス1を分解して上下に分けて記載している。実際には上下の方向の黒い小さな矢印の通り、テーブルとボックスは患者人体を挟んで密着している。また、d.は4分割した厚肉の掛布19と分割型の支保構造体66は、図の右側に分けて示し、二点鎖線の矢印で合体させている。なお、d-1は厚肉の掛布19に複合吸収材料72を使用するケース、d-2は含鉛アクリル樹脂板62を使用するケースである。図9のe.では患者人体上に厚肉の掛布19と支保構造体66を上載した状態を二点鎖線の想像線で示している。
図9は、図2のボックスとテーブルとの組み合わせケースに、追加防護器具(API)を加えて複合化した防護機器・器具(PDITS)である。ここでのAPIは体軸方向と垂直に4分割した半円筒形の支保構造体66で支持した患者の厚肉の掛布19である。また、患者は着衣63も装着している。
図9の構成を大まかに説明する。図9では高機能テーブル2上に横たわる患者人体60の上部にはAPIである厚肉の掛布19と分割型の支持構造体66がある。さらにその上部(外側)には患者人体60とAPIを取り囲んで、追加シールドボックス1が設置される。なお、患者は着衣63を装着している。患者の荷重への身体的影響がない範囲で、通常の掛布18を併用しても構わない。
高機能テーブル2のテーブル天板7の表面には、機能材料が配置される。また、追加シールドボックス1のX線入射側の表面も同様である。患者人体60で発生した散乱X線は、次の分担で減弱させて吸収する。ここでは、テーブルが下方を分担し、ボックスが上方と側方を分担する。これにより、全方位(上方、側方、下方の3方向)の外部に放出される散乱X線の強度を低減できる。また、高機能テーブル2により、1次X線を良く透過させることができる。
前項の説明の他に、簡便化防護器具(SEPI)として次の3つが追加されている。これらは、患者ポート20の短冊式カーテン54と、スリーブポート8の短冊式カーテン54と、スリーブポートのグローブレスポート53である。これらは、術者や患者の人体との間の余空間を塞ぐように使用し、スリーブポート8と患者ポート20の余空間を遮へいする。また、閉止遮へい蓋55を閉じれば、スリーブポート8の開口は、ボックスの遮へい能力と同程度に遮へいできる。閉止遮へい蓋55は、機械装置とスイッチ(センサー)により、術者が手術時に自身で開閉しても構わない。
これらの簡便化防護器具(SEPI)を採用することで、ボックス内への患者人体や医療従事者の手腕の挿入や移動が容易になるため、手術時の医療従事者による医療行為の操作性が高くなる。
図9のc.の患者の着衣63は、患部が心臓であると仮定し、心臓カテーテル手技を行う場合の例を示す。すなわち、着衣63の照射野の部位のくり抜き部39は患者人体の体幹の左側に位置している。着衣63の質量を10kg以下とするに、機能材料は全t=0.8mm以下としなければならない。ボックス外の側方に漏出する側方散乱X線の強度に余裕があれば、着衣63は全t=0.4~0.5mmにすることが望ましい。この場合の着衣63の機能材料分の質量は約5kgである。これらの荷重は患者人体60が負担する。
図9のd.の厚肉の掛布19は、全t=2mmとした場合の例である。この機能材料分の質量は、約12kgである。この厚肉の掛布19による荷重は、患者人体60は負担しない。その質量は半円筒形の4分割した支保構造体66を介してテーブル天板7が支持する。厚肉の掛布19は機能材料で製造した可撓性のシートである。厚肉の掛布19には照射野15の部位にくり抜き部39がある。
着衣63は患者人体の上方と側方と下方に存在する。厚肉の掛布19は患者人体の上方と側方に存在する。これは下方には存在しない。両者には照射野15の部位にくり抜き部39がある。
患者人体の上方と側方にある厚肉の掛布19と着衣63の合計の機能材料分の全厚み(全t)は約2mm以上となる。この厚みの複合吸収材料は、大きな遮へい能力を持っている。実施例17で述べる通り、実効エネルギー50KeV以下のX線の透過率は、通常の掛布(全t=0.45mm)と比較して、全t=2mmの場合で150の1以下になる。そのため、ボックス内で主に側方の散乱X線の強度が低下する。しかし、上方は照射野15の部位にくり抜き部39があるため、側方に比べて低下の度合いが小さい。
実施例10では、防護機器(PD)に、追加防護器具(API)と簡便化防護器具(SEPI)を組み合わせた「進化した組み合わせケース」を説明した。遮へい能力を高めるAPIは、厚肉の掛布19と支保構造体65である。操作性を高めるSEPIは、短冊式カーテン54かつまたはグローブレスポート53である。このケースの特徴は、APIとSEPIを追加して複合化することにより、遮へい能力を実施例2と同等に保った状態で、手術時の医療従事者による操作性を高くできる点である。
追加防護器具(API)である厚肉の掛布19は、支保構造体65を介してテーブル天板7で支持し、ボックス1内に設置する。この結果、ボックス内の側方への散乱X線を大幅に低減する。この状態となって、ボックス側端面の遮へいシート22とスリーブ構造体9は、簡便化防護器具(SEPI)を採用できる。
(操作性を高めた「さらに進化した組み合わせケース」の説明)
実施例11では、複数の防護機器・器具(PDITS)を組み合わせて、操作性をさらに高めた「さらに進化した組み合わせケース」の変形例を説明する。ここでは、実施例9~10に比べてボックス内の側方の散乱X線の遮へいを最大限に高めて、医療従事者によるボックスの操作性を最大限に高くした。このケースの鳥瞰図を図10に示す。図10のa.は追加シールドボックス1、b.は高機能テーブル2である。c.はAPIの厚肉の掛布19と4分割した支保構造体66である。右側に分けて示したd.は、SEPIの閉止遮へい蓋55面上に付したグローブレスポート53とその封止遮へい蓋52である。図10のc.の厚肉の掛布19の全厚さは、図9とは異なり、全t=3mmの例である。この厚肉の掛布19の機能材料分の質量は約18kgである。これらは実施例8の取扱い機構により操作され、患者人体60を跨いでテーブル2上に設置される。
図10は、大まかには図9とほぼ同じ構成であり、全方位の散乱X線の強度を低減できる。主な構成は次の通りである。テーブル2上に横たわる患者人体60上に通常の掛布18をかける。患者は着衣63を装着している。その上部にはAPIである厚肉の掛布19と分割型の支持構造体66がある。その上部には患者人体60とAPIを取り囲んで、ボックス1が設置される。ボックス1の構造材料の例は、アルミニウム合金、チタン合金、または、高強度プラスチック、透明含鉛アクリル樹脂である。また、ボックス1の形状は、多くの場合は方体であるが、透明含鉛アクリル樹脂を使用する場合は、一体の半球形であっても構わない。
図9と異なる点は2つある。その1つ目は、厚肉の掛布19は全t=3mmである。2つ目は短冊式カーテン54を取り付ける角形のスリーブポート13がボックス側面の全体の幅に拡がっている。
このケースは、全t=3mmの厚肉の掛布の遮へい能力がかなり高いことが判ったために本発明で考案した。実施例17で述べる通り、実効エネルギー50KeV以下のX線の透過率は、通常の掛布(全t=0.45mm)と比較して、全t=3mmの厚肉の掛布は14000分の1以下になる。この厚肉の掛布だけでも、高い遮へい能力を持っている。
一方、患者には、全t=0.45mmで、機能材料分の質量が約5kgの着衣63を装着してもらう。また、患者の荷重による身体的負荷から許容される範囲で、通常の掛布18を使用する。なお、通常の掛布18の機能材料分の質量は約6kgである。これらの荷重は患者人体60が負担する。これにより、線源に近くて遮へい体の形状効果が高い位置で、全t=約1mmの遮へいを確保できる。
上述により、ボックス内で主に側方の散乱X線の強度は、実施例9~10と比較して大幅に低下する。
実施例11では、角形のスリーブポート13を覗き窓5のあるボックス側面の全体の幅に拡げ、そこに短冊式カーテン54を取り付けている。角形のスリーブポート13は、ボックス本体4の支柱である脚部を除いた側面全体に設置できる。これにより、医療従事者は角形のスリーブポート13から手腕を抜かずに、ボックス側面の全体を左右に移動できる。これを全体に設置した場合は、どの位置からでもボックス内に手腕を挿入できるため、さらに操作性が高くなる。
未使用時の角形のスリーブポート13は、閉止遮へい蓋55を閉じて遮へいできる。その閉止遮へい蓋55の板面の上に、グローブレスポート53を設置することもできる。例えば管電圧100kV以上でボックス内の散乱X線の強度が高い場合は、手術時に閉止遮へい蓋55を閉じる。これにより角形のスリーブポート13は閉止遮へい蓋55でボックスと同等に遮へいできる。その上で、グローブレスポート53の封止遮へい蓋52を開けてボックス内に手腕を挿入する。これにより、術者は閉止遮へい蓋55による遮へいを利用しながら、ボックス内に手腕を挿入して手技ができる。図10には、閉止遮へい蓋55面上に付したグローブレスポート53とその封止遮へい蓋52を右側に分けて示す。
ボックス内で体軸方向の側方への散乱X線の強度は正確な情報はない。頭部と下肢部では強度が異なることも考えられる。しかし、下肢部などの照射野15の縁から40cm以上の離間距離がある場所は、患者人体が体軸方向に遮へいしているので強度が低いと予想される。その場所では、患者ポート20もボックス側面の全体の幅に拡げて準備時の操作性を高くできる。しかし、ボックス内で患者人体60より上の空間にある散乱X線は、散乱を繰り返して側方の患者ポート20から漏出する可能性は否定できない。そこに取り付けられた短冊式カーテン54で遮へいが不足する場合は、患者ポート蓋61を取り付けることで対処する。
患者ポート蓋61は、患者ポート20に設置し、剛性の機能材料による患者人体の貫通部を半円筒形または門形状にくり抜いた門形板状の蓋である。これは患者人体60に追加シールドボックス1を被せた後に、患者ポート20に取り付ける。取り付け構造は上方からのスライド式でもネジ止めでも磁石接合でも構わない。ボックスから体軸方向の側方への散乱X線の漏れが大きい場合は、患者ポート蓋61によりボックス外へ漏出する散乱X線を低減できる。
実施例11では、防護機器(PD)に新たなPIに加えて、さらに追加防護器具(API)と簡便化防護器具(SEPI)を組み合わせた「さらに進化した組み合わせケース」を説明した。APIは、質量が大きな厚肉の掛布19と支保構造体65である。SEPIは、短冊式カーテン54かつまたはグローブレスポート53である。これらを複合化した実施例11では、遮へい能力を実施例10と同等に保った状態で、手術時の医療従事者による操作性をさらに高くできる。
実施例11で特徴的なSEPIは、グローブレスポート53に関連して2つある。1つ目はボックス側面の全体の幅に拡げた短冊式カーテン54である。2つ目は短冊式カーテン54の閉止遮へい蓋55上に設置したグローブレスポート53である。なお、グローブレスポート53には封止遮へい蓋52を付す。
(操作性と視認性を高めた「さらに進化した組み合わせケース」)
実施例12では、透明含鉛アクリル樹脂により操作性と共に視認性を高めた「さらに進化した組み合わせケース」の変形例を説明する。この変形例の元となる実施例11では、ボックス内の側方の散乱X線の遮へいを最大限に高めて、医療従事者によるボックスの操作性を最大限に高くした。実施例11は実施例3~5で説明した「第3の防護として新たなPIを組み合わせたケース」に、実施例7~9で説明した追加防護器具(API)を加えて、簡便化防護器具(SEPI)を組み合わせた。
実施例12では、上述の実施例11に、視認性が高い透明含鉛アクリル樹脂の防護機器・器具を反映した。反映した防護機器(PD)は実施例1で述べた方体または半球形で一体または2以上に分割したアクリル製の追加シールドボックス83である。反映した防護器具(PI)は実施例8で述べた剛性の厚肉の掛布と支保構造体を一体化したアクリル製の厚肉の掛布84である。視認性が高い透明含鉛アクリル樹脂を反映した防護機器・器具(PDITS)の鳥観図を図11に示す。図11では、患者人体60付近を見易くするためにアクリル製の追加シールドボックス83と高機能テーブル2とを分解して上下に分けて記載する。患者人体60はテーブル2に横たわっている。実際には、上下の方向の黒い小さな矢印の通り、テーブルとボックスは、患者人体を挟んで隙間なく密着している。
なお、高機能テーブル2と新たなPIの説明は実施例5と図5を引用するものとし、実施例12ではこれら自体の説明を省略する。
図11では、患者人体60の中央部付近は透視図として内部を見せる。ここに見えるPIはアクリル製の厚肉の掛布84と通常の掛布18と患者の着衣63である。これらを「3つのPI」と呼ぶ。アクリル製の厚肉の掛布84は4分割型であり、透明で視認性が高く、質量が大きく、遮へい能力が高い。これには、開口用の切り込みとして、一次X線のくり抜き部39と手の取り出し部67がある。これは患者人体60を跨いで設置され、テーブル2上をスライドする。この質量は患者人体の身体的な負担にはならず、テーブルに直接に載荷される。
厚肉の掛布の内側には着衣63の外側に通常の掛布18が見える。これらにも一次X線のくり抜き部39と手の取り出し部67がある。体軸方向の長さは、通常の掛布18が100cmであり、最も大きい。着衣63が同・80cmである。アクリル製の厚肉の掛布84が同・60cmであり、最も小さい。
これら3つのPIの合計の遮へい能力は、鉛当量が3~4mmPbとなる。そのため、くり抜き部39がない側方への散乱X線への遮へい能力は高い。くり抜き部39がある上方への散乱X線は、照射野とその周辺を除いて強度を低減できる。照射野とその周辺から上方と下方に向かう散乱X線は、ボックスとテーブルによって遮へいする。すなわち、全方位の散乱X線の強度を低減できる。
図11のアクリル製の追加シールドボックス83は、全面が透明含鉛アクリル樹脂で構成されている。構造材料は強度の高い透明な板であるため、ボックス本体4と覗き窓6が一体化する。テーブル2の全周の全面からボックス内を視認できるため、これは医療従事者にとって視認性が高い。この構成は強度や製造方法によって3種類ある。それは一体成型したもの、板材を接着したもの、板材を金属製の骨組みに取り付けたものである。天井部には、必要に応じて機能材料または線減衰材料82と、接続コネクタ24が配置される。一般にアクリル樹脂板は強度を大きくすると、厚みと質量が大きくなることが課題である。図11のアクリル製の追加シールドボックス83は、天井クレーン56で支持・搬送して上方から患者人体60に接近する構造である。これらの機械装置を利用することで、大きい質量による課題は解消できる。この構成の場合は、分割のある構造とする必要はなく、一体型が好ましい。さらに一体成型した一体型がより好ましい。
3つのPIによりボックス内の側方への散乱X線の強度を低減することにより、簡便化防護器具(SEPI)を利用できる。図11では、図10にあったSEPIを設置する患者ポート20と角形のスリーブポート13がない。SEPIの短冊式カーテン54は、アクリル製の追加シールドボックス83の下端から懸垂して取り付けられる。短冊式カーテン54はボックスの全周に存在する。その鉛直方向の長さは大きくする方が好ましい。短冊式カーテン54は、遮へい機能のある可撓性のシートである。多数の仕切りがあるため、人が押せば容易にその部位を開くことができる。また、医療従事者は手腕を抜かずにボックスの全周を移動できる。そのため、これは医療従事者にとって手術時の操作性が高い。
前述の通り、短冊式カーテン54の遮へい能力は、他と比べて高くない。そのため、ボックス内部の3つのPIにより、より高い遮へい能力を確保する必要がある。全周を短冊式カーテン54とする方式が適用できるのは、ボックス内の側方への散乱X線の強度が低下できた場合である。その側方への散乱X線の実効エネルギーは、60KeV以下であり、好ましくは50KeV以下である。
アクリル製の追加シールドボックス83と全周の短冊式カーテン54は、天井クレーン56などで支持して搬送する。これは上方から患者人体60が横たわるテーブル2に接近して空中でその位置を維持する。接近の際に短冊式カーテン54により患者人体60を挟み込む。短冊式カーテン54の下端は、テーブル2の上面に余長をもって接触させる。従って、患者人体60とテーブル2との間の余空間を無くすことで、手術中に側方に漏出する散乱の強度を低減できる。
一方、アクリル製の追加シールドボックス83を前述の天井クレーン56を利用する構造とすれば、手術前の準備作業の操作性が高くなる。これは、患者人体60を患者ポート20に貫通させる作業が、なくなるためである。
この防護機器・器具(PDITS)は、覗き窓を兼ねたボックス本体と厚肉の掛布の両方に、視認性の高い透明含鉛アクリル樹脂を使用する。医療従事者が全周の全面から医療従事者がボックス内を視認できるため、これは視認性が高い。
また、第3の防護として3つのPIを使用して、ボックス内の側方への散乱X線の強度を低減することで、全周に短冊式カーテン54を利用できる。医療従事者が容易に手腕を挿入でき、全周へ移動できるため、これは操作性が高い。
透明含鉛アクリル樹脂を使用した複数の防護機器・器具(PDITS)は、視認性と操作性の両方が高い。これにより、診療室等の空間線量率を低減でき、医療従事者の職業被ばくと防護負荷を低減できる。
(IVR手術で本発明を利用する方法)
実施例13では、現行のIVR手術で本発明を利用する方法を検討した。ここでは、現行のIVR手術中にカテーテルを体内に入れる行為は、支障なく本発明が利用できることを確認する。
まず、穿刺や切開による医療行為でカテーテルを血管や体内に挿入する準備段階がある。この段階で、X線源から1次X線を発生していない場合は、基本的に被ばく防護のための防護機器・器具の組み立ては必要ない。準備段階では組み立て前の分割された防護機器・器具が、支障なく対応できることを確認した。
次に、X線源から1次X線を発生させた後のIVR手術は、本発明の組み立てられた防護機器・器具が、支障なく対応できることを以下により確認した。
血管系IVRの心臓カテーテル手術の場合は、カテーテルを動脈に入れる場所は足の付け根の動脈(大腿動脈)、肘の部分の動脈(肘動脈)そして手首の動脈(橈骨動脈)の主に3箇所である。近年、経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)の手術例が報告されている。TAVIは、カテーテル手術で狭窄している大動脈弁を人工弁に取り替えるものである。TAVIでカテーテルを入れる場所は、足の付け根の動脈(大腿動脈)の場合が多い。ただ、これに加えて、左鎖骨下(左肩の下)、左胸骨上部開胸(左胸)、左肋間開胸(左胸)がある。
一方、非血管系IVRには、画像誘導下に経皮的に胆管など管腔や膿瘍を針で穿刺し、続いてドレナージチューブを留置する手技がある。また、実質臓器へ太い針を刺して、臓器の組織を採取する組織生検術などの手技がある。腹腔内への経皮的インターベンションでは、腹部の経腹直筋切開が行われる場合が多い。
上述したカテーテルを入れる場所を整理すると、穿刺のみで切開手術がないのは、足の付け根、肘の部分、手首、左鎖骨下である。また、切開手術があるのは、左胸、腹部である。なお、左鎖骨下と左胸の使用頻度は小さい。
まず、穿刺のみで切開手術がない場合を検討する。本発明の全ての防護器具では、足の付け根は、もとより露出している部位である。全ての防護器具とは、着衣63、通常の掛布18、厚肉の掛布19である。また、手首と肘の部分には、防護器具に手の取り出し部67があり、容易に取り出せる。この部位は準備段階で防護器具が邪魔はせず、ボックス1内で容易に医療行為を行える。
左鎖骨下の部分には、上にAPIがある。APIはテーブル2上をスライド移動して退避させ、左鎖骨下の部分を開く。その上で、着衣63、通常の掛布18は局所的に開く。切り込みで対応しても良い。APIには前述の通り、テーブル2上をスライドする機能を付している。他に干渉する物品はないので、左鎖骨下の部分であれば、ボックス1内で穿刺の手技は可能である。
次に、切開手術がある場合を検討する。左胸の部分は、前述の左鎖骨下の部分と同じ手続きである。切開手術で強度の大きい1次X線によるX線透視を利用する場合は、角形のスリーブポート13の閉止遮へい蓋55を閉じる。ボックス本体4と同等の遮へいを確保した上で、グローブレスポート53から手腕を挿入する。腹部の場合は、左鎖骨下の部分とは一部異なる。APIは下肢部方向にテーブル2上をスライド移動して退避させ、腹部を開く。切開手術は、左胸の部分と同様である。特に干渉する物品はないので、腹部の部分の切開手術は、ボックス1内で可能である。また、緊急処置時等で、ボックス2で寄り付ける人数を超えた数で医療行為を行うことが必要となった場合は、分割型のボックス16も下肢部方向にテーブル2上をスライド移動して退避させる。
血管系IVRおよび非血管系IVRの手術は、本発明の防護機器・器具の仕様にあたって支障は見当たらない。APIは頭部方向または下肢部方向にテーブル2上をスライドして退避する機能を持たせる。より操作性を高めるためには、APIは分割型の支保構造体66が良い。また、切開手術がある場合は、特例を除けば分割型のボックス16が良い。切開手術時の医療行為により広い場所を求めるのであれば、分割型の支保構造体66と分割型のボックス16の両方には、上述のスライド機能を持たせる。APIと分割型のボックス16は、図7のようにテーブル2に横付けした横持ち台車59上に退避するのがより好ましい。
(IVR時に患者人体内の被ばく線量が高くなる範囲)
実施例14は、非特許文献2を引用して、IVR時に患者人体内の被ばく線量が高くなる範囲を説明する。非特許文献2は、管電圧が120kVのX線CT装置で、成人と小児の頭部CT検査における主な臓器の被ばく線量を示す。IVRでの患者の被ばく線量の測定例もあるが、これらでは照射野からの距離と被ばく線量の相関が判るものが見当たらない。頭部を除いた生体組織における半価層は、部位による違いは大きくない。そのため、ここでは非特許文献2を引用した。
非特許文献2は頭部CT検査時の照射野からの距離毎の被ばく線量を測定している。測定には人体等価物質で作られた厚さ25mm毎にスライスされた成人女性と小児のファントムを使用した。撮影範囲外に含鉛シートを一周巻き付けた防護ありのケースと、防護なしのケースを測定した。各スライスの中心位置にガラス線量計素子を挿入し、積算線量を測定した。X線CT装置のX線源の1周当たりの移動距離に相当するスライス厚さは5mm、その総移動距離となる撮影範囲は160mmと述べている。非特許文献2の測定試験の結果(以下、「線量測定結果」という)を以下に示す。
なお、本明細書では成人女性のランドファントムの結果を引用した。また、防護なしのケースの結果を引用した。CT検査時のX線源は高速で回転しながら移動する。CTスキャン時間は1周が約1秒なので、総測定時間は約30秒と予想される。照射野は逐次移動するが、その全幅は16cmと考えられる。これは一般的なIVRの照射野の全幅である15cmにほぼ等しい。線量測定結果は頭頂からの距離で表示される。ここでは、IVRのアイソセンタに相当する照射野の中心位置(以下、「照射中心」という)は、頭頂から8cmの位置と考えた。
非特許文献2の図6には、照射中心からの距離毎の線量測定結果は、対数グラフで示されている。ここでは対数グラフの読み取りにより、ファントム中心位置での線量(mGy)の数値を得た。読み取りには誤差を含んでいる。これは30秒間の積算線量である。1分間の積算線量は、この2倍の数値となる。
読み取った数値は、本発明で定義する照射中心が約90mGyであった。また、同・照射中心から10cm位置が約10mGy、同・20cm位置が約2mGy、同・30cm位置が約0.5mGy、同・40cm位置が約0.12mGyであった。照射中心を入射位置とみて、距離毎の線量の割合を算出した。その結果、積算線量は照射中心から20cm位置で照射中心の45分の1、同・30cm位置で同・180分の1、同・40cm位置で同・450分の1となっている。
上述の線量測定結果を、特許文献1のJIS試験結果と比較する。実施例16と実施例17に記載の管電圧70kVの結果は、次の通りである。線量率は、ブランクが2.945mGy/分、0.2mmPb透過後が0.184mGy/分、複合吸収材料(No.3-4)透過後が0.050mGy/分である。
0.2mmPb透過後の線量率は、上述の照射中心から40cmの患者人体内の1分間の積算線量とオーダーが一致している。照射中心から40cm離れれば、患者人体内の線量率は人体組織による線減衰で小さくなっている。一般に、人体組織で照射野の縁から体軸方向に40cm離れた位置の線量率は、管理対象外になる程小さいと言われている。この内容は、上述の現象と一致している。すなわち、全身からの散乱X線は、照射中心から40cm以内の範囲は有意な線量率である。この範囲は、必要に応じた程度の遮へいを追加するのが好ましい。
一方、X線のエネルギーが60~100KeV領域の生体組織におけるX線の半価層は、一般に部位に係わらず3~4cm程度と言われている。すなわち、5半価層は15~20cmである。ビームハードニング(線質硬化)効果を無視すると、5半価層では線量率が32分の1になる。上述の線量測定結果では、20cm位置では照射中心の45分の1となっている。この両者のオーダーは一致している。従って、上述の線量測定結果は、生体組織の半価層に概ね則っている。
また、20cm位置の線量率は、JIS試験の管電圧70kVのブランクの線量率とオーダーは一致している。すなわち、照射中心から20cm以内の範囲は、管電圧70kVのブランク線量に相当した遮へいが必要である。
上述の検討結果により、本発明では患者人体付近に追加する防護器具は以下の通りと考えた。照射野の縁から40cm以内の範囲は、患者人体の全身から約0.2mGy/分という有意な散乱X線が発生している。そのため、この範囲には全厚みが0.4~0.5mmの遮へい体である患者の着衣と通常の掛布を設置する。
一方、照射野の縁から20cm以内の範囲は、患者人体から3~4mGy/分以上の高い散乱X線が発生している。そのため、この範囲には全厚みが1~3mmの遮へい体である厚肉の掛布を設置する。
なお、本節で上述した体軸方向の範囲は照射野の縁からの長さとしており、これは想定する照射野一辺の半分の寸法の7.5cmを余裕として加えている。
(特許文献1の複合吸収材料の説明)
発明者が同じ特許文献1では、散乱X線を減弱して線エネルギー吸収する複合吸収材料(CAM:Composite Absorbent Material)が考案されている。CAMは患者人体からの散乱X線が照射される表面に配置される。ここでCAMは、入射した散乱X線を効率的に減弱した上で線エネルギー吸収する。X線はそのエネルギーを光電子等の運動エネルギー等に変換させることによって消滅する。
複合吸収材料(CAM)72は、低反射減弱層と多層吸収層により構成される。低反射減弱層は、主に鉛(Pb)によるX線入射面の初層に配置される。その後ろの多層吸収層は、1~3対の拡散吸収体と電子吸収体の対である。複合吸収材料(CAM)72は、ボックスやテーブルの入射側表面に貼り付けて設置される。JIS試験で取り扱った3~4層のCAMの機能材料分の全厚み(全t)は、0.3~0.6mmである。このように薄い厚みであっても、異なった役割を持った3層以上を密着して多層に重ねたならば、CAMは動作する。ここでCAMは人体組織やテーブル等の散乱体からの散乱X線を減弱させて吸収する。
初層の低反射減弱層80のPbは、入射したX線の多くを減弱し、線エネルギー吸収する。多層吸収層77は各エネルギー領域での材料のK吸収端付近の特異吸収を利用して、拡散吸収体78と電子吸収体79の対で効率良くX線の消滅を狙ったものである。
ここでは、本節の内容の説明の目的で、μとμenおよびμen/μを表1に示す。ここでμは線減衰係数である。μenは線エネルギー吸収係数である。μenで示されるこの線エネルギー吸収の現象を「電子吸収」と呼ぶ。この現象は、散乱X線を消滅させて電子の運動エネルギーに変換させる現象である。また、μen/μは、μ中のμenの割合であり、「電子吸収割合」と呼ぶ。これは、μenをμで割った無次元の値であり、百分率で表示する。なお、表1は特許文献1のNISTデータベースの情報を抜粋して引用した。
表1では、特定の3つの単色のエネルギーと7つの元素の数値を引用した。そのエネルギー(KeV)は、80、50、30である。また、その元素は、Pb、W、Ba、Sn、Nb、Mo、Cuである。
ここで、拡散吸収体78とは、任意のエネルギー範囲にある特定の単色のエネルギー(例えば80/50/30KeV)で電子吸収割合が70%未満の元素である。すなわち、特定の単色のエネルギーで、μen/μ<70%の元素である。これは表1では二点鎖線の枠で表示する。
電子吸収体79とは、拡散吸収体78を摘出した特定のエネルギーでの電子吸収割合が70%以上で良く電子吸収する元素である。すなわち、特定の単色のエネルギーで、μen/μ≧70%の元素である。これは表1では太い破線の枠で表示する。表1の通り、同じ元素でもエネルギー次第で役割が変わる。
拡散吸収体78は、特定のエネルギーでのK吸収端の特異吸収により、多く の2次X線(特性X線、制動X線)をあちこちの方位へ放出する。そして電子吸収と共に、両隣の層に光子の拡散押戻しを行う。電子吸収体79は、その2次X線を含めて、対象のエネルギー範囲のX線を電子吸収する。
低反射減弱層80の材料は、主にPbである。多層吸収層77の材料には、1~3対の拡散吸収体と電子吸収体の対である。例えば、80KeVでは、Snと、Pbの対である。50KeVでは、Snと、NbまたはMoの対である。30KeVでは、NbまたはMoと、CuまたはFeの対である。最外層は、ボックス材料のTiまたはAl等の金属の平板が利用される場合が多い。
図12は、複合吸収材料72の基本ケースの構成図である。a.は構成の概要、b.は2対で全5層74、c.は3対で全7層75、d.は1対で全3層76を示す。低反射減弱層80は複合吸収材料72の場合はPbである。増設複合吸収材料73の場合は、低反射減弱層80の代わりに線減衰材料70または低反射減弱材料71となる。なお、対とは多層吸収層77にある拡散吸収体78と電子吸収体79の対の数を示す。これらの図中には一点鎖線で対となる拡散吸収体78と電子吸収体79を結んで示し、a.~c.の各図における対の番号を(1)~(3)で示した。図中には例となる元素記号等をカッコ内に示した。
複合吸収材料(CAM)72の構成は、4層の場合の例は次の通りである。例えば可撓性の場合はPb-Sn-Nb-Cuである。例えば剛性の場合はPb-Sn-Mo-Feである。
(特許文献1のJIS試験結果の説明)
発明者が同じ特許文献1では、実験により複合吸収材料(CAM)の線量率の測定結果が報告されている。特許文献1では、合計で3層~5層の複合吸収材料の透過X線量率を測定した。
試験方法はJIS T61331-1(診断用X線に対する防護用具)の逆ブロードビーム条件(RBB)とナロービーム条件(NB)に準拠した。試験に供試したのは各元素の純金属(純度>99.9%)の薄い板材を重ねた多層試験品である。試験片の寸法は、長さ10cm×幅10cmである。ここでは元素の種類とその層の数と各々の厚みは、試験パラメータとした。多層試験品の初層Pb(低反射減弱層)の厚さは0.2または0.3mmのいずれかである。その全厚さは0.4~0.6mmである。材料のパラメータを表2に示す。その他に比較用Pb板とブランクの線量率を測定した。X線源の管電圧は50~110kVの範囲で測定した。
異なる管電圧の測定結果を比較するために、得られた線量率から透過率(%)を算出した。透過率は、各々の管電圧で、多層試験品・比較用Pb板の線量率をブランクの線量率で割った無次元の値を百分率で表示した。
詳細な試験方法と結果は、特許文献1の実施例21~23を参照とする。
ここでは、多数の試験結果のうち、7種類の多層試験品と2種類の比較用Pb板の結果を紹介する。多層試験品は、Pb、Sn、Nb、Cuの3~4層を積層した試験片である。初層Pbの厚さは、いずれも0.2mmである。全厚さは0.35~0.50mmである。
表2には抽出した7種類の多層試験品と2種類の比較用Pb板を示す。表2では、元素の種類と各々の厚み、全厚み、平均密度、全質量を示した。表2の多層試験品は左端のNo.2-3(47g)が最も質量が大きい。すなわち、表2は、右にいくに従って質量が小さくなるように記載している。右端のNo.3-7(36g)が最も質量が小さい。
図13は実験により得られた多層試験品と比較用Pb板の透過率(%)を示す。試験片番号と材料パラメータは表2の通りである。X線源の管電圧は、図13のa.が90kV、b.が70kV、c.が50kVである。測定体系は、全て逆ブロードビーム条件(RBB)の結果である。図中の透過率(%)は、多層試験品が棒グラフによって示される。比較用Pb板が線グラフによって示される。その1つは0.2mmPbは太い破線で示した。何故ならば、比較対象とする全ての多層試験品は、初層Pbの厚さが0.2mmであるためである。他の1つの0.3mmPbは細い二点鎖線で示した。これは、参考情報である。なお、図13のc.には、0.3mmPbの二点鎖線がない。これは、管電圧50kVでは線量率が定量下限以下で評価できなかったためである。
図13の結果を説明する。まず、比較用Pb板(0.2mmPb)と複合吸収材料による多層試験品のX線の透過率の比較を述べる。X線の透過率は、管電圧90kVでは0.2mmPbの11.9%に対して、多層試験品は4.1%~6.9%であった。管電圧70kVでは、同・5.9%に対して、同・1.4%~3.0%であった。管電圧50kVでは、同・1.43%に対して、同・0.15%~0.45%であった。複合吸収材料による多層試験品は、初層Pbと比較して透過率が約半分以下に低減している。また、初層Pbと比較して質量が2倍以上になる訳ではない。なお、供試した多層試験品の単位面積当たりの機能材料の質量は、3.6~4.7kg/mである。
次に、図13で各々の試験片間の相関について説明する。前述の通り、図13の棒グラフは右にいくに従って質量が小さくなるように記載した。遮へいの原理的には遮へい性能は密度に比例すると言われている。その場合、本来的に図13の棒グラフは、右にいくに比例して高くなるのが順当である。しかしながら、図13の棒グラフは、特定の試験片番号のところで凸凹がある。この凸凹は、いずれの管電圧でも同様の傾向が見られる。
直近の左側に比べて透過率が低くなっているのは、管電圧90kVと70kVでは、次の2つである。それは、No.3-4(全4層、Cuが0.05mm、他は0.1mm)と、No.2-4(全3層、Nbなし、他は0.1mm)である。これはSnの作用が含まれると予想される。
一方、管電圧50kVでは、次の2つである。それは、No.3-4と、No.3-6(全4層、Nbが0.1mm、他は0.05mm)である。No.2-4がNo.3-6に代わっている。これはNbの作用が含まれると予想される。
この凸凹の傾向は、複合吸収材料の多層吸収層の効果と考えられる。より詳しくは、ここでは特定のエネルギー領域での拡散吸収体と電子吸収体の対による電子吸収の効果が示されたと考えられる。
複合吸収材料は、初層Pbに多層吸収層を加えたことで、X線の透過率は約半分以下になった。これは、拡散吸収体と電子吸収体の対で構成される多層吸収層の効果であると考えられる。上述の内容は、患者人体で発生する散乱X線の実効エネルギーに相当する管電圧50kV~90kVの範囲で確認された。すなわち、複合吸収材料は、患者人体で発生する散乱X線の強度を有効に低減できる。
(複合吸収材料によるX線透過率の低減効果の試算例の説明)
散乱X線が低減する程度は、防護機器・器具の機能材料の仕様によって決まる。これに係る知見は、実施例16で示した比較用Pb板と複合吸収材料の透過率を比較した実験結果により説明される。
一方、複合吸収材料により減弱して線エネルギー吸収する性能は、初層Pbの厚みと、多層吸収層の3つのパラメータに依存する。多層吸収層の3つのパラメータとは、構成する材料の元素の種類、その層の数、各々の厚みである。これが複合吸収材料の仕様となる。仕様となるパラメータが多いため、全ての組み合わせでの性能を定量的に言い当たることは難しい。しかしながら、実施例16で示したJIS試験結果と同じ仕様の複合吸収材料を全肉で使用する前提ならば、性能の評価は可能である。但し、試算では防護器具のくり抜き部の影響は無視した。
実施例7で示した通り、着衣と通常の掛布は、合計の質量はより好ましくは10kg以下とするべきである。この質量の制限から、各々の機能材料分の全厚み(全t)は0.45mm(約4.3kg/m)と考えた。全t=0.45mmの場合の組成は、実施例16の表2と図13に示したNo.3-4(0.2mmPb-0.1mmSn-0.1mmNb-0.05mmCu)を代表例として説明する。一方で、質量の制限から厚肉の掛布の機能材料分の全厚みは、最大で4mmである。ここでは、全t=1~4mmの厚肉の掛布を対象に検討した。
厚肉の掛布は、実施例4~4で前述の通り、主に患者人体から側方への側方散乱X線を対象にする。特許文献1の通り、管電圧110kVの場合の側方散乱X線の中央値は、65KeVである。この分布は正規分布や釣鐘型分布ではなく、エネルギーが大きい側の光子数が少ない。すなわち、実効エネルギーは65KeVよりも低い。一般に実効エネルギーは、管電圧の70%に相当する。そのため、管電圧120kVの場合で実効エネルギーは約84KeVである。同様に110kVで約77KeVである。同様に90kVで約63KeVである。同様に70kVで約49KeVある。同様に50kVで約35KeVである。これらの背景から、厚肉の掛布は、表2と図13の管電圧50~90kVの結果と照合しながら、持つべき性能を推定した。
まず、全t=0.45mmの場合を図13の試験結果により説明する。参考までに計測された線量率は、特許文献1の表19のRBBの通り、管電圧90kVではブランクが4.980mGy/分、0.2mmPbが0.586mGy/分、No.3-4が0.228mGy/分である。管電圧70kVではブランクが2.945mGy/分、0.2mmPbが0.184mGy/分、No.3-4が0.050mGy/分である。管電圧50kVではブランクが1.327mGy/分、0.2mmPbが0.019mGy/分、No.3-4が0.002mGy/分である。
図13では0.2mmPbの比較用Pb板とNo.3-4の複合吸収材料の透過率は、次の通りである。管電圧90kVでは11.3%と4.6%である。管電圧70kVでは5.4%と1.7%である。管電圧50kVでは1.43%と0.15%である。0.2mmPbの比較用Pb板は、この厚みの遮へい材料に相当する。これは複合吸収材料の低反射減弱層(初層Pb)に相当する。複合吸収材料はこれに多層吸収層を加えたものである。
この試験結果によれば、遮へいや防護機器・器具が存在しない場合に比べて、No.3-4の透過率は、管電圧90kVの場合で20分の1以下になる。同様に、管電圧70kVの場合で50分の1以下になる。同様に、管電圧50kVの場合で600分の1以下になる。また、0.2mmPbの遮へい材料がある場合に比べて、X線の透過率は管電圧70kVの場合で、3分の1以下になる。同様に、管電圧50kVの場合で約10分の1になる。
次に、機能材料分の全厚み(全t)が1mm~4mmの厚肉の掛布の透過率の性能を、X線の透過の公式により推定する。試算を簡素にするために、厚みと線減衰係数μは低反射減弱層のPbのみで代表する。すなわち、低反射減弱層(初層Pb:Pb-t)のみで低減の程度を把握する。また、μは実効エネルギー相当の値を用いる。これ複合吸収材料の遮へい性能には、保守側の評価となる。一方、剛性の機能材料の1つである透明な含鉛アクリル樹脂板の遮へい性能には、順当の評価である。この前提で厚肉の掛布の性能を推定した。なお、NISTデータベースには、80KeVと50KeVとの間のμの報告データがない。
X線の透過線量の計算式はI/I=Exp(-μt)である。ここでIは入射側の透過率、Iは出射側の透過率、tは初層Pbの厚み(cm)、μは線減衰係数(1/cm)である。Iはブランクの数値となり、1.0(100%)である。Pbのμの値は、実施例16の表1より引用した。μ(1/cm)は80KeVで27.3、50KeVで90.9、30KeVで343である。初層Pbの厚みは、全t=4mmの場合でt=0.2cmである。このμとPb-tを用いて透過率I/Iを計算した。計算結果を表3に示す。
ここで表3の試算結果を説明する。なお、この結果は、初層Pbだけの厚みについて簡易計算した目安値である。表3のエネルギー(KeV)は、実効エネルギーである。ここでは表3の2列目のPb厚み(Pb-t)が0.02cm(0.2mmPb)の透過率との比較結果を説明する。通常の掛布相当の0.2mmPbと比較した厚肉の掛布の厚み毎の透過率は次の通りである。
初層Pb厚み0.5mm(全t=1mm)の場合、80KeVでは約2分の1以下になる。50KeVでは約15分の1以下になる。30KeVでは4桁を超えて小さくなる。
初層Pb厚み1.0mm(全t=2mm)の場合、80KeVでは約9分の1以下になる。50KeVでは約1,400分の1以下になる。30KeVでは11桁を超えて小さくなる。
初層Pb厚み1.5mm(全t=3mm)の場合、80KeVでは約35分の1以下になる。50KeVでは約130,000分の1以下になる。30KeVでは19桁を超えて小さくなる。
初層Pb厚み2mm(全t=4mm)の場合、80KeVでは約140分の1以下になる。約50KeVでは約1E+7分の1以下になる。30KeVでは26桁を超えて小さくなる。
実施例14の線量測定結果からは、管電圧120kV(実効エネルギーは約84KeV)のX線源による患者人体内の線量率は、照射野から10cm位置が約10mGyである。20cm位置での約4mGy/分である。一方、特許文献1と実施例15のJIS試験のX線源によるブランクの線量率は、管電圧110kV(同・約77KeV)の場合が約7mGy/分である。同・90kV(同・約63KeV)の場合が約5mGy/分である。同・70kV(同・約49KeV)の場合が約3mGy/分である。すなわち、20cm位置での線量率は、実効エネルギーが約63KeVの場合よりも約2割小さく、同・約49KeVの場合よりも約3割大きい。上述の背景より線量測定結果を解釈すると、照射野から20cm位置での患者人体内の散乱X線は、エネルギーが50~65KeVの光子数が多いことが予想される。この散乱X線の強度であれば、全厚さ(全t)が0.4~0.5mmの複合吸収材料により低減できる。すなわち、厚肉の掛布は、照射野から20cm以内の強度が大きな散乱X線を、着衣や通常の掛布で遮へいできる20cm位置のレベルまで低減する役割である。
ここで厚肉の掛布は、次の2つの役割と定義する。それは、80KeVの線量率を1オーダーよりも低くする。かつ、50KeVの線量率を2オーダーよりも低くすることである。表3では、この定義に該当する領域を表3上で破線により示す。表3上で一点鎖線により示す初層Pbが0.5mmはしきい値線上にある。複合吸収材料での線量率は、数分の1以下に低減する。特許文献1の図17のNo.1-3の結果では77KeVでは約2.5分の1となる。また、49KeVでは約3.5分の1となる。これにより、全t=1mmの結果は、ほぼ上述の定義に適合している。従って、厚肉の掛布に必要な厚みは、初層Pbが0.5mm(全t=1mm)以上と考えられる。しかし、この定義の範囲では、初層Pb厚み2.0mm(全t=4mm)までは必要ないと思われる。
厚肉の掛布は、患者人体で発生する主に側方への散乱X線の強度を可能な限り低減するために追加で設置する防護器具である。上述の検討結果では、全t=1mm(単位面積当たりの機能材料分の質量は約10kg/m)以上の厚肉の掛布により、散乱X線の透過率を低減できる。好ましい全厚み(全t)の範囲は、3mm(同・約30kg/m)以下である。なお、実施例14の通り、厚肉の掛布は照射野の縁から20cm以内の範囲に設置される。
(特許文献2の高機能テーブルの説明)
発明者が同じ特許文献2では、X線を良く透過させて散乱をなくす医療用テーブル(以下、「高機能テーブル2」という)が考案されている。
高機能テーブル2は患者等の体重を支持し、一次X線は天板の段30の網43を透過して相互作用なく照射野15に至る。照射されるX線の種類またはエネルギーに応じて表面の材質を変えることで、底板41での散乱X線の発生を低減し、テーブル天板7で人体組織からの散乱X線を減弱して吸収する。また、天板の段30の透過板ユニット32、中間の段34のスライドテーブル35、絞り板36および底板の段40の開閉板42により照射野の位置と医療の目的から必要最低限な開口寸法に調節する。
高機能テーブル2の鳥瞰図を図14に示す説明する。図14の鳥瞰図は天板・中間・底板の3つの段に分けて構造を示している。但し、具現的に見易くするために支持レール45と補強梁46は天板の段30ではなく、底板の段40にテーブル支持台44と共に示している。
特許文献2の高機能テーブルは物質との相互作用することなく1次X線を照射野へ透過させ、照射野を必要最低限の開口寸法(面積)に制限してさらなる散乱X線の発生を抑制する。また、上載する患者人体で下方に向けて発生する散乱X線を減弱・吸収して低減する。これにより、X線受像機の画質を鮮明にし、かつ、診療室内等の空間の放射線量率を低減する。故に、医療従事者の被ばく線量と放射線防護に係る負荷を低減できる。
(特許文献3の追加シールドボックスの説明)
発明者が同じ特許文献3では、被ばくと防護負荷を低減する追加シールドボックス1が考案されている。
特許文献3の追加シールドボックス(以下、「ボックス」という)1は、患者人体60で発生する上方と側方への多様な散乱X線の強度を低減する。ボックス1は立体的にどの方位にも外部空間と通じた開口がなく、線量率に応じて異なる複数の種類と厚みの組み合わせの機能材料により照射野を取り囲む。遮へい能力のある覗き窓によりボックス内部を視認しながら、スリーブ構造体を介して医療従事者が手腕を挿入して医療行為を行う。また、各所に複合吸収材料等を配置して、線減衰させたX線は線エネルギー吸収する。
追加シールドボックス1には分割ボックス型のボックス16と、FPD内蔵型のボックス17の型式がある。図15は、分割ボックス型のボックス16の全体構成図である。図15はX線カメラ型のX線透視装置を対象としたものであるが、特許文献3では別途にCアーム型のX線透視装置に対応したものも考案されている。上述のオプションとして特許文献3では小角散乱X線のエネルギーがさらに高い場合の高線量型の追加シールドボックスが考案されている。
特許文献3の分割ボックス型の追加シールドボックス61を図15の鳥瞰図を用いて説明する。アンダーチューブ型のX線受像機10は現場でボックス本体4と端面ボックス5により受像機アーム11を挟み込んで組み立てることで、開口なくボックス内に収納できる。端面ボックス5の天井部はX線が漏れることないように複数の機能材料で遮へいする。
特許文献3の貫通ポートとその防護器具を説明する。術者は内部を覗き窓から視認しながら、スリーブ構造体9を介して手腕をボックス内に挿入して手術する。患者は患者ポート20を介して体軸方向にボックスを貫通させる。これにより患者の頭部や体肢部は外部空間に置く。ボックス1の貫通ポートはスリーブポート8と患者ポート20である。
スリーブポート8には、スリーブ構造体9が取り付ける。スリーブ構造体9は、含鉛腕スリーブ等の可撓性の機能材料で製作する。
患者ポート20には遮へいシート22を取り付ける。これでボックスと人体との間の開口を塞ぐ。遮へいシート22は、遮へい能力のある可撓性の機能材料で製作する。なお、特許文献3では遮へいシート22のことを掛布と共にして「掛布等」と呼んでいる。また、遮へいシート22の巻き取り装置を掛布と共にして掛布ホルダと呼んでいる。本発明では、「掛布等」の内容を厳密に区分し、通常の掛布18と厚肉の掛布19と遮へいシート22は別々に取り扱っている。また、特許文献3の掛布ホルダは、本発明ではホルダ23と呼ぶ。
特許文献3の追加シールドボックスは、術者は開口がなく遮へい能力のあるボックス内で手技を行うことができる。患者人体で上方と側方に発生する散乱X線を減弱・吸収して低減することにより、診療室等内の空間線量率が低減する。これにより、正当性がない医療従事者の職業被ばくを低減し、必要がない患者の頭部や体幹部・体肢部等の医療被ばくを避けることができる。特に、術者の頭部(眼の水晶体)への職業被ばくは大幅に低減できる。また、防護衣や防護メガネを重量が小さいものにすることで、医療従事者の放射線防護に係る負荷を低減できる。
1.追加シールドボックス
2.高機能テーブル
3.ボックス天板
4.ボックス本体
6.覗き窓
7.テーブル天板
8.スリーブポート
9.スリーブ構造体
10.X線受像機
13.角形のスリーブポート
15.照射野
17.FPD内蔵型のボックス
18.通常の掛布
19.厚肉の掛布
20.患者ポート
21.敷布
22.遮へいシート
25.スライドテーブル
29.X線源
30.天板の段
31.吸収板
32.透過板ユニット
33.スペーサ
34.中間の段
35.スライドテーブル
36.絞り板
38.スライド吸収板
39.くり抜き部
40.底板の段
42.低反射散乱開閉板
43.網(メッシュ)
44.テーブル支持台
45.支持レール
46.補強梁
51.ヒンジ機構
52.封止遮へい蓋
53.グローブレスポート
54.短冊式カーテン
55.閉止遮へい蓋
59.横持ち台車
60.患者人体
61.患者ポート蓋
62.透明含鉛アクリル樹脂板
63.着衣
64.頭部カバー
65.支保構造体
66.分割型の支保構造体
67.手の取り出し部
71.低反射減弱材料
72.複合吸収材料
73.増設複合吸収材料
77.多層吸収層
78.拡散吸収体
79.電子吸収体
80.低反射減弱層
81.遮へい材料
82.線減衰材料
83.アクリル製の追加シールドボックス
84.アクリル製の厚肉の掛布
図3のd.は、着衣63と通常の掛布18を使用した場合の設置図である。この図は、図3のb-2で示した着衣63を用いている。これは患部が頸部等の場合なので、図のd.では、図のe.に示した頭部カバー64を付している。通常の掛布18は体軸方向の長さが100cmである。図のd.では、通常の掛布18は長さが最も大きい。着衣63は同・80cmである。
のe.は、頭部カバー64である。頭部カバー64は患部の頸部が照射野15となり、頭部が照射野から40cm以内となった場合に使用する。すなわち、・・・
本発明の第の防護である追加シールドボックス1は、患者の患部に相当する照射野15を立体的に取り囲んで機能材料を配置している。ボックスを・・・
本発明の第の防護である高機能テーブル2は、天板の段30、中間の段34、底板の段40の最大3段で構成される。いずれか1段もしくは2段のみでも一定の性能は発揮できる。
図2では、・・・
特許文献3は、同一発明者による被ばく低減と防護負荷の低減を目的とする追加シールドボックスに関するものである。この発明の・・・
本発明は機器と器具と防護具の組み合わせにより、複合化した防護機器・器具を考案した。これらは患者人体から全方位(前方・側方・後方の3方位)に向けて発生する散乱X線を減弱させて吸収し、医療従事者と患者の被ばく線量を低減できる。同時に医療従事者の放射線防護に係る負荷を低減できる。なお、防護機器・器具(PDITS:Protective device, instruments and tools)とは、防護機器と防護器具と防護具の総称である。課題を解決するための手段は、大別すると以下の2通りある。
第1の手段は、第1の防護と第2の防護の2つの防護機器(PD:Protective device)を組み合わせて使用する。第1の防護はテーブルである。第2の防護はボックスである。これにより、・・・
第1の手段では、第1の防護と第2の防護の2つの防護機器(PD)を複合化して利用する。第1の防護はテーブルである。第2の防護はボックスである。第1の防護と第2の防護の・・・
本明細書の実施例は、以下の構成である。
実施例1は、防護機器(PD)であるテーブルとボックスを複合化することにより、全方位の散乱X線の強度を低減できる「組み合わせケース」の方法と効果を図1により説明する。
実施例2は、・・・
特許文献3は、同一発明者による被ばく低減と防護負荷の低減を目的とする追加シールドボックスに関するものである。この発明のボックスの構成は、次の通りである。構成は、ボックス本体、ボックス天板、覗き窓、患者ポート、同左用の遮へいシート、スリーブポート、同左用のスリーブ構造体である。なお、特許文献3では遮へいシートを掛布と一緒に扱っており、統合して掛布等と呼んでいた。本発明では、これらを別々に区分して扱う。
追加シールドボックスは、患者人体の体幹部等の照射野を取り囲んでテーブル上に組み立てて設置する。このボックスは、手術を行っていない静置時には、立体的にどの方位にも外部空間と通じた開口がない。患者人体は、身長の方向(以下、「体軸方向」という)の両端部に設けた患者ポートを介してボックスを貫通する。頭部と下肢部は、被ばくを避けるためにボックス外に置かれる。ここでは患者ポートの余空間は可撓性の遮へいシートで塞がれる。
また、医療従事者は、手術時には遮へい能力のある覗き窓によりボックス内部を視認する。同時に、ここではスリーブポートに取り付けたスリーブ構造体を介して手腕を挿入して医療行為を行う。スリーブ構造体にも遮へい能力がある。
特許文献3の追加シールドボックスは、X線受像機の構造により、次の2通りの型式がある。これらは、分割ボックス型のボックスとフラットパネルディテクタ(FPD)内蔵型のボックスである。
1つ目の分割ボックス型のボックスは、分割したボックスの間にX線受像機の受像機アームをボックス天井部の受像機ポートに組み込む。そのため、ボックスを2以上に分割しなければならない。これにはCアーム対応のものもある。
2つ目のFPD内蔵型のボックスは、X線受像機であるFPD自体をボックス内に設置する。取り扱い上、ボックスは分割型が良いが、一体型でも構わない。
上述の2通りの型式の両方にオプションとして、高線量型のボックスが提案されている。これは小角散乱X線のエネルギーが高い場合のオプションである。
すなわち、追加シールドボックスは上方への小角散乱X線および上方と側方への散乱X線の強度を低減できる。これにより、診療室内等の空間線量率を低減できる。また、同時に医療従事者と患者の被ばくを低減できる。さらに、医療従事者の防護負荷を軽減できる。
本発明は機器と器具と防護具の組み合わせにより、複合化した防護機器・器具を考案した。これらは患者人体から全方位(前方・側方・後方の3方位)に向けて発生する散乱X線を減弱させて吸収し、医療従事者と患者の被ばく線量を低減できる。同時に医療従事者の放射線防護に係る負荷を低減できる。なお、防護機器・器具(PDITS:Protective device, instruments and tools)とは、防護機器と防護器具と防護具の総称である。課題を解決するための手段は、大別すると以下の2通りある。
第1の手段は、第1の防護と第2の防護の2つの防護機器(PD:Protective device)を組み合わせて使用する。第1の防護はテーブルである。第2の防護はボックスである。これにより、1次X線を良く透過させ、全方位への散乱X線の強度を低減する。
第2の手段は、上述の防護機器(PD)に加えて、第3の防護として防護器具(PI:Protective instruments)を組み合わせて使用する。これにより、手術中の人体の動きに伴って、遮へいを施したボックスの貫通ポートから側方へ漏出する散乱X線の強度を低減する。第3の防護となる防護器具(PI)には、患者人体上の掛布、患者の着衣、頭部カバーがある。加えて後述の追加防護器具と簡便化防護器具がある。
医療従事者が装着する防護衣等の防護具(PT:Protective tools)は、多くは特定の1方向に限られた限定的なものため、主要な放射線防護を期待できない。PTらは医療従事者が装着する防護エプロン、防護メガネ、甲状腺保護具である。そのため、本発明では、PTはPDとPIの付加的な手段と位置付ける。
次に、防護機器・器具(PDITS)に用いる材料を説明する。ここでは、鉛(Pb)、バリウム(Ba)、または、タングステン(W)等の元素を含んで、遮へい能力がある既往の材料を「遮へい材料」と呼ぶ。
特許文献1で定義された3層以上を密着して重ねた多層により散乱X線を良く減弱して吸収する材料は、「複合吸収材料」と呼ぶ。複合吸収材料は、低反射減弱層(初層Pb)と多層吸収層より構成される。
Pb等の遮へい材料だけでも、散乱X線を大きく減弱する。しかし、複合吸収材料では、多層吸収層があるために、X線を減弱するに加えて、87KeV以下の散乱X線を大きく線エネルギー吸収する。また、本発明では、遮へい能力がある上述の遮へい材料と複合吸収材料の両者を総称して「機能材料」と呼ぶ。
また、本発明の「テーブル」と「高機能テーブル」、「ボックス」と「追加シールドボックス」の差異を以下に示す。
本発明の「テーブル」は、上載した患者からの散乱X線に対して遮へい能力がある機能材料を上面に配置した平面状のテーブルである。高機能テーブルは、散乱X線の強度を低減する際に下方を分担する。テーブルは、防護機器(PD)の1つである。
本発明の「高機能テーブル」は、一次X線の透過率を増加させて散乱X線を低減する。これは上記テーブルに、天板による一次X線の吸収と散乱を抑制して一次X線の透過率を増加させる機能と、患者人体の照射野付近から下方への散乱X線の強度を低減する機能を付加したテーブルである。より厳密な定義としては、高機能テーブルは天板の段に原子番号が14以下の元素の単体または化合物により構成される網を設置し、X線はその網部を透過させることで天板によるX線の吸収と散乱を抑制するテーブルである。高機能テーブルは、第1の防護であるテーブルの中での狭い概念であり、防護機器(PD)の1つである。
本発明の「ボックス」は、テーブル上に設置し、散乱X線が入射する表面または内部に機能材料を配置した方体状のボックスである。ボックスは、散乱X線の強度を低減する際に上方と側方を分担する。X線受像機をボックス内に取り込むことは本発明のボックスでは必須である。患者人体を貫通させる患者ポートを設置は任意である。しかし、追加の機能として患者の医療被ばくを抑制するため、および、患者の心理的負担を軽減するために設置することを推奨している。ボックスは防護機器(PD)の1つである。
本発明の「追加シールドボックス」は、ボックス状の追加シールドであり、医療従事者の被ばくと防護負荷を低減する。これは上記ボックスに、覗き窓等の内部を視認する装置とスリーブポート等の内部を操作する装置の機能を付加したものである。ボックス天板の線減衰材料により患者人体の照射野付近から上方への強度が大きい小角散乱X線を減弱して吸収する。追加シールドボックスは、第2の防護であるボックスの中での狭い概念であり、防護機器(PD)の1つである。
さらに、本発明の「全方位」の定義、「開口」および「開口がない」の差異を以下に示す。
本発明の「全方位」とは、球の中心位置にある放射線源から広がる放射線の方位に等しい上下左右全方位の360度の全方位を意味する。本発明では球において鉛直上方を0度(基点)・鉛直下方を180度とした場合で、中心角0~45度で側方360度の上方の球分を上方、中心角135~180度で側方360度の下方の球分を下方、残る中心角45~135度で側方360度の球帯を側方と呼ぶ。
本発明の「開口」とは開いた状態の口を指す。遮へい能力のある機能材料を表面または内部に配置した構造体で塞がれた貫通ポートは、「X線の透過を低減できない開口」と呼んで開口から除外する。すなわち、本発明の「開口がない」とは、遮へい能力のある機能材料を表面または内部に配置した構造体で全方位を囲まれている状態を意味する。
第1の手段では、第1の防護と第2の防護の2つの防護機器(PD)を複合化して利用する。第1の防護はテーブルである。第2の防護はボックスである。第1の防護と第2の防護の2つの防護機器を複合化して利用する手段を、ボックスとテーブルとの「組み合わせケース」と呼ぶ。
本明細書の実施例は、以下の構成である。
実施例1は、実施例1は、防護機器(PD)であるテーブルとボックスを複合化することにより、全方位の散乱X線の強度を低減できる「組み合わせケース」の方法と効果を図1により説明する。
実施例2は、「組み合わせケース」の鳥瞰図を図2により説明する。
実施例3は、手術時に追加する新たな防護器具(PI)の具体例を図3により説明する。
実施例4は、手術時の側方への散乱X線の強度を低減する方法と効果を図4により説明する。
実施例5は、第3の防護として新たなPIを組み合わせたケースの鳥瞰図を図5により説明する。
実施例6は、第3の防護と、第1の防護または第2の防護との「いずれかを組み合わせたケース」を説明する。
実施例7は、手術時の側方の散乱X線の強度を低減するために、手術時に追加する追加防護器具(API)の具体例を図6により説明する。
実施例8は、一体型または分割型の支保構造体の構造と取付け機構を図7により説明する。
実施例9は、簡素化防護器具(SEPI)を組み合わせることで、操作性を高めた「進化した組み合わせケース」の方法と効果を図8により説明する。
実施例10は、「進化した組み合わせケース」の鳥瞰図を図9により説明する。
実施例11は、ボックス全側面を短冊式カーテンとし、操作性を高めた「さらに進化した組み合わせケース」を図10により説明する。
実施例12は、透明含鉛アクリル樹脂により操作性と共に視認性を高めた「さらに進化した組み合わせケース」の鳥観図を図11により説明する。
実施例13は、IVR手術で本発明を利用する方法を説明する。
実施例14は、IVR時に患者人体内の被ばく線量が高くなる範囲を説明する。
実施例15は、特許文献1の複合吸収材料を説明する。
実施例16は、特許文献1のJIS試験結果の一部を説明する。
実施例17は、特許文献1の知見に基づき、複合吸収材料によるX線透過率の低減効果の試算例を説明する。
実施例18は、特許文献2の高機能テーブルを説明する。
実施例19は、特許文献3の追加シールドボックスを説明する。
本発明の第の防護である追加シールドボックス1は、患者の患部に相当する照射野15を立体的に取り囲んで機能材料を配置している。ボックスを構成する各部材のX線の入射側の表面は、機能材料で被覆する。術者は遮へい能力のある樹脂またはガラス板である覗き窓6を介して外部空間から内部を視認できる。術者は内部を視認しながら、遮へい能力のあるスリーブ構造体9を介して手腕を挿入して手術ができる。また、患者ポート20とスリーブポート8を除き、外部空間と通じた開口がない。
スリーブ構造体9は、含鉛腕スリーブ等の可撓性の機能材料で製作する。これはスリーブポート8に取り付けて使用する。
患者は患者ポート20を介して体軸方向にボックスを貫通させる。これにより患者の頭部や体肢部は外部空間に置く。また、患者ポート20に取付けた遮へい能力のある可撓性の遮へいシート22でボックスと人体との間の開口を塞ぐ。余分な遮へいシート22はホルダ23により巻き取る。電源、電気信号、光学信号および液体は、遮へい能力のある接続コネクタ24により、開口なしにボックスを貫通して内外で連絡する。
前方散乱X線は、患者人体の照射野とその周辺から上方への小角散乱X線を含むため、X線のエネルギーが高い。必要に応じて、このボックスでは、ボックス天板3に更に遮へい能力の優れた線減衰材料82を付して、上方への前方散乱X線を遮へいする。照射野と他の部位からの側方への散乱X線は、遮へい能力のあるボックス本体4および覗き窓6で遮へいする。また、静置時には、貫通ポートはスリーブ構造体9および遮へいシート22で遮へいする。
本発明の第の防護である高機能テーブル2は、天板の段30、中間の段34、底板の段40の最大3段で構成される。いずれか1段もしくは2段のみでも一定の性能は発揮できる。
図2では、具現的に見易くするために、支持レール45と補強梁46は、天板の段30には表示せず、底板の段40にテーブル支持台44と共に示している。中間の段40は、支持レール45中にスライドして収納される。
高機能テーブル2の天板の段30は、次の通りの構成である。これらは、テーブル天板7、吸収板31、透過板ユニット32、支持レール45および補強梁46である。テーブル天板7は患者が横たわり、上載する患者人体の体重を支持する。テーブル天板7の軸線中心部には体軸方向に長い寸法の開口部がある。吸収板31は開口部の下にある支持レール45上にはめ込んで設置する。照射野となる可能性がある位置の吸収板31を取外し、透過板ユニット32を設置する。透過板ユニット32の網面は、CFPRやAl系等の高強度でX線を吸収し難い線状の材料とする。網面の代わりにCFRP製の薄膜を用いる場合もある。
アンダーチューブ型の場合、テーブル天板7と吸収板31の上側の表面は機能材料で被覆する。体軸方向の照射野の開口寸法は、後述のスライドテーブル35と絞り板36で調整できる。体軸方向と垂直方向の開口寸法は、後述の開閉板42と、透過板ユニット32のスペーサ33で調整できる。テーブル天板7が支持した荷重は支持レール45と補強梁46で支持し、最終的にはテーブル支持台44で支持する。
のe.は、頭部カバー64である。頭部カバー64は患部の頸部が照射野15となり、頭部が照射野から40cm以内となった場合に使用する。すなわち、着衣63の頸部が照射野となった場合の変形例との位置付けである。
照射野15との離間距離が短い場合は、頭部から患者体内で複数回の散乱をした散乱X線が外部の空間に漏出し、空間線量率が増加する。これにより医療従事者が被ばくする。医療従事者の被ばくを低減するために、患者には、可撓性の複合吸収材料等の材料による頭部カバー64を装着してもらう。
頭部カバー64は、マスク状の被り物であり、目と鼻および口等を小さく切り取って露出させ、他の部分は可撓性の複合吸収材料等の材料で覆う。これにより、頭部からの外部への散乱X線の放出を低減できる。
なお、頭部が照射野15になった場合は、必然的に頭部はX線受像機10が収納される追加シールドボックス内に収納しなければならない。

Claims (16)

  1. 医療用のアンダーチューブ型のX線透視装置での放射線防護装置において、
    第1の防護として上載した患者からの散乱X線に対して遮へい能力がある機能材料を上面に配置したテーブルを設置し、かつ、第2の防護として散乱X線が入射する表面または内部に前記機能材料を配置して患者人体の上方と側方を取り囲むボックスを前記テーブル上に設置することにより、
    照射野の周辺を含む患者人体から発生する全方位の散乱X線の強度を低減することを特徴とする複合化した防護機器・器具
  2. 医療用のアンダーチューブ型のX線透視装置での放射線防護装置において、
    前記第1の防護と前記第2の防護に加えて、
    第3の防護として、散乱X線の入射側の表面または内部に可撓性の前記機能材料を配置した患者人体上の掛布と、患者が装着する着衣と、患者が装着する頭部カバーの3つ防護器具の内のいずれか1ないし2ないし3を設置することにより、
    手術時に患者人体から発生する散乱X線の強度を低減することを特徴とする複合化した防護機器・器具
  3. 医療用のアンダーチューブ型のX線透視装置での放射線防護装置において、
    前記第1の防護と前記第3の防護を組み合わせて設置することにより、
    患者人体から照射野の周辺から上方に向かうものを除いて発生する全方位の散乱X線の強度を低減することを特徴とする複合化した防護機器・器具
  4. 医療用のアンダーチューブ型のX線透視装置での放射線防護装置において、
    前記第2の防護、前記第3の防護および患者人体下の敷布を設置することにより、
    患者人体より手術時に照射野の周辺から下方に向かうものを除いて発生する全方位の散乱X線の強度を低減することを特徴とする複合化した防護機器・器具
  5. 医療用のアンダーチューブ型のX線透視装置での放射線防護装置において、
    単位面積の質量が1平方メートル当たり10キログラム以上の前記機能材料を内部または散乱X線が入射する表面に配置した厚肉の覆いは、
    1次X線を透過させるくり抜き部があり、
    前記テーブル上の患者人体の上部の空間で患者を門形状に取り囲んで配置し、
    前記厚肉の覆いは患者人体を跨いだ支保構造体に上載または自立して質量を支持することで、その質量を直接テーブルに載荷することにより、
    患者に荷重による身体的な負担をかけることなく、
    手術時に患者人体から発生する散乱X線の強度を低減することを特徴とする追加防護器具
  6. 請求項5に記載の前記支保構造体は、
    一体または2以上に分割した構造とし、かつまたは、前記厚肉の覆いを取り付けてから前記支保構造体を設置することにより、医療従事者による取付け操作を簡易にすることを特徴とする追加防護器具
  7. 請求項2に記載の複合化した防護機器・器具は、
    前記ボックスの体軸方向の側面には患者人体を体軸方向に貫通させる貫通ポートである患者ポートがあり、かつまたは、前記ボックスの覗き窓のある側面には医療従事者の手腕を貫通させる貫通ポートであるスリーブポートがあり、
    前記追加防護器具を前記ボックス内に設置し、
    前記貫通ポートを遮へい能力のある可撓性のシートで塞ぐことにより、
    手術時に前記貫通ポートから前記ボックス外へ漏出する散乱X線を低減することを特徴とする複合化した防護機器・器具
  8. 請求項7に記載の前記複合化した防護機器・器具において、
    前記覗き窓をボックス本体と同一化した前記ボックス、かつまたは、剛性の前記機能材料による前記追加防護器具は、
    遮へい機能のある一体または2以上に分割した方形または半球形の透明プラスチックを構造材料とすることにより、
    照射野の周辺を含む患者人体から発生する全方位の散乱X線の強度を低減すると同時に、医療従事者に手術時にボックス内を死角なく視認できることを特徴とする複合化した防護機器・器具
  9. 請求項7に記載の前記患者ポートは、
    下端に向けて鉛直方向に貫通した切り込みによる2以上の仕切りがあって、可撓性の前記機能材料によるシート状の短冊式カーテンを上部から懸垂して設置し、かつまたは、患者人体の貫通部を門形状にくり抜いた前記機能材料による門形板状の蓋を設置することにより、
    手術時に前記ボックス外へ漏出する散乱X線を低減すると同時に、
    医療従事者による手術前の準備を簡易にすることを特徴とする複合化した防護機器・器具
  10. 請求項7に記載の前記スリーブポートのうち、前記ボックスの覗き窓のある側面の一部の幅にある円形または楕円形のスリーブポートは、
    貫通した切り込みによる中心に向けた2以上の放射状の仕切りがある可撓性の前記機能材料によるシート状の円形のグローブレスポートを設置し、かつまたは、前記機能材料による円形の封止板状の蓋を設置することにより、
    患者人体からの散乱X線のエネルギーが60キロ電子ボルト以上の場合においても、手術時に前記ボックス外へ漏出する散乱X線を低減すると同時に、
    医療従事者による手術時の操作を簡易にすることを特徴とする複合化した防護機器・器具
  11. 請求項7に記載の前記スリーブポートのうち、前記ボックスの覗き窓のある側面の一部または全部の幅にある角形のスリーブポートは、
    前記短冊式カーテンを上部から懸垂して設置し、かつまたは、前記機能材料による閉止板状の蓋を設置することにより、
    手術時に前記ボックス外へ漏出する散乱X線を低減すると同時に、
    医療従事者による手術時の操作を簡易にすることを特徴とする追加防護器具
  12. 請求項11に記載の前記角形のスリーブポートの前記閉止板状の蓋は、
    その板面上に前記円形のグローブレスポートを設置し、かつまたは、前記円形の封止板状の蓋を設置することにより、
    患者人体からの散乱X線のエネルギーが60キロ電子ボルト以上の場合においても、手術時に前記ボックス外へ漏出する散乱X線を低減すると同時に、
    医療従事者による手術時の操作を簡易にすることを特徴とする複合化した防護機器・器具
  13. 請求項7に記載の前記複合化した防護機器・器具において、
    前記透明プラスチックを構造材料とする前記ボックスは、
    その全周の下端から、前記短冊式カーテンを直接に懸垂して設置し、
    上方より接近する機能がある支持機構により空中に維持し、
    患者人体を載せた前記テーブルの上面に前記短冊式カーテンの下端が接触する配置として余空間を塞ぐことにより、
    手術時に前記ボックス外へ漏出する散乱X線を低減すると同時に、
    医療従事者による操作を簡易にすることを特徴とする複合化した防護機器・器具
  14. 請求項1、請求項2、請求項5、請求項9、請求項10または請求項11に記載の前記機能材料は、散乱X線を減弱して吸収する複合吸収材料または増設複合吸収材料であることを特徴とする複合化した防護機器・器具
  15. 請求項1、請求項2、請求項3、請求項5または請求項13に記載の前記テーブルは、X線を良く透過させて散乱を低減する医療用の高機能テーブルであることを特徴とする複合化した防護機器・器具
  16. 請求項1、請求項2、請求項4、請求項7、請求項9、請求項10、請求項11、請求項12または請求項13に記載の前記ボックスは、医療従事者と被ばくと防護負荷を低減する追加シールドボックスであることを特徴とする複合化した防護機器・器具
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