JP2023097068A - 電池ケースのトップカバーの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】金属部材と樹脂部材とを備えるとともに両部材の接合強度が高い電池ケースのトップカバーを製造するにあたり、特に接合プロセス時間を短く、かつオープンタイムを長くすること。【解決手段】金属部材(2)と、熱可塑性エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂の少なくともいずれかである非晶性熱可塑性樹脂を主成分とする固形接合剤(3)と、金属部材と接合される樹脂部材(5)とが、この順に配置された状態の積層体を準備する接合前工程を含み、非晶性熱可塑性樹脂のエポキシ当量が1,600以上であるか、又は非晶性熱可塑性樹脂がエポキシ基を含まず、非晶性熱可塑性樹脂の融解熱が15J/g以下である。【選択図】図2

Description

本開示は、電池セルを収容する電池ケースのトップカバーの製造方法に関する。
電池セルは、電池ケースに収容される。電池ケースは、ロアケースと、ロアケースを閉塞するトップカバーとを有する。電池ケースは、アルミニウムや鉄などの金属で形成されるのが一般的である。電池セルを電池ケースに収容した電池パックは、例えば、自動車の車体に設置される。車体に電池セルを設置する場合、車体との絶縁性を得るため、電池ケースに樹脂製の絶縁部を設ける場合がある。
例えば、特開2018-142540号公報(特許文献1)は、下ケースと、下ケース内に収容され、複数のセルを含むセル群と、下ケースに密着され、上プラスチック材、下プラスチック材、および上プラスチック材と下プラスチック材の間に位置する金属蓋板を含むトップカバーと、を備える電池モジュールが開示されている。
特開2018-142540号公報
上記特許文献1のように、金属部材と樹脂部材を接合してトップカバーを製造する場合、両部材は強固に接合される必要がある。
さらに、近年では、特に、自動車において金属部材と樹脂部材との接合部位を含む電池ケースのトップカバーは、これら両部材が強固に接合されていることが好ましい。
金属部材と樹脂部材のような異種材を強固に接合する手段として、液状型又はBステージ状の熱硬化型エポキシ樹脂系接着剤、及び熱可塑性樹脂を含むホットメルト接着剤が知られている。
しかし、接着性に優れる熱硬化型エポキシ樹脂系接着剤は、液状型及びBステージ状のいずれの形態であっても、接合プロセス時間が長いか、あるいはオープンタイムが短い。接合プロセス時間が短く、かつオープンタイムが長いホットメルト接着剤は、高い接着力を安定して得ることができない。
本開示において、接合プロセス時間とは、接合体を構成する少なくともいずれかの基材と接合剤の接触時を始点、接合体の作製の完了時を終点として、始点から終点までの時間を意味する。例えば、接合プロセス時間は、液状接着剤の塗布工程及び乾燥工程又は固形接合剤の載置工程に要する時間、及び基材同士を接着する(例えば、接着層を硬化させる)のに要する時間を含む。接合プロセス時間が短いほど、接合体の生産性を高めることができる。
本開示において、オープンタイムとは、基材Aの上に接合剤を塗布又は載せた後、基材Bを載せ終えるまでの制限時間を意味する。オープンタイム内であれば、接合剤の接着力が低下せず、十分な接着力で基材Aと基材Bを貼り合わせることができる。オープンタイムが長いほど、接合体の製造工程の自由度を高めることができる。
本開示は、上述した技術背景に鑑みてなされたもので、その目的は、金属部材と樹脂部材とを備えるとともに両部材の接合強度が高い電池ケースのトップカバーの製造方法であって、特に接合プロセス時間が短く、かつオープンタイムが長い、電池ケースのトップカバーの製造方法を提供することにある。
本開示は以下の態様を包含する。
[1] 金属部材と、熱可塑性エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂の少なくともいずれかである非晶性熱可塑性樹脂を主成分とする固形接合剤と、前記金属部材と接合される樹脂部材とが、この順に配置された状態の積層体を準備する接合前工程と、
前記積層体を加熱及び加圧して前記固形接合剤を溶融させ、前記金属部材と前記樹脂部材とを接合する接合工程と
を含む、電池ケースのトップカバーの製造方法であって、
前記非晶性熱可塑性樹脂のエポキシ当量が1,600以上であるか、又は前記非晶性熱可塑性樹脂がエポキシ基を含まず、前記非晶性熱可塑性樹脂の融解熱が15J/g以下である、電池ケースのトップカバーの製造方法。
[2] 前記加熱及び加圧を、100~400℃及び0.01~20MPaの条件で行う、[1]に記載の電池ケースのトップカバーの製造方法。
[3] 溶融前の固形接合剤が、フィルム、棒、ペレット及び粉体からなる群から選択されるいずれかの形状を有する、[1]又は[2]に記載の電池ケースのトップカバーの製造方法。
[4] 前記金属部材は、A6000系合金のアルミニウム鍛造成形品からなり、且つ、引張強度が180MPa以上及びヤング率が60GPa以上の特性を有している[1]~[3]のいずれか一つに記載の電池ケースのトップカバーの製造方法。
本開示の製造方法により得られた電池ケースのトップカバーは、金属部材と樹脂部材を備えているので、電池ケースのトップカバー全体が金属製のものに比べて軽量である。さらに、本開示の製造方法によれば、さらに接合プロセス時間を短く、かつオープンタイムを長くすることができる。
図1は、本開示の一実施形態に係る電池ケースの斜視図である。 図2は、金属部材と樹脂部材とが固形接合剤を含む接着層を介して接合された状態の概略断面図である。
次に、本開示の実施形態について図面を参照して以下に説明する。
本開示において、文中に特に明示した場合を除き、「金属」の語は単一の金属元素からなる純金属と、純金属に1種類以上の他元素を混ぜた合金との双方を含む意味で用いられる。例えば、「アルミニウム」の語は、アルミニウムの純金属及びその合金を含む。
本開示において、接合とは、物と物を繋ぎ合わせることを意味し、接着とはその下位概念であり、テープ、接着剤などの有機材料(硬化性樹脂、熱可塑性樹脂など)を介して、2つの被着材(接着しようとするもの)を接合状態にすることを意味する。
図1を参照して、本開示の一実施形態に係るトップカバー10について説明する。図1に示すように、本開示の一実施形態に係る電池ケース12は、ロアケース14と、トップカバー10とを備える。ロアケース14は、金属製、例えば、アルミニウム製又は鉄製であり、底部16と、底部16の外縁に一体に形成された側部18とを有する。底部16は、平面視において長方形状を有する。側部18の基端は底部の四辺にそれぞれ接続され、側部18の側辺同士は互いに連続している。側部18の先端に、フランジ部20が設けられている。フランジ部20は、側部18で囲まれた空間に対し外側へ突出している。フランジ部20の四隅に雌ねじ(図示しない)が形成された雌ねじ部22がそれぞれ設けられている。ロアケース14は、底部16及び側部18で囲まれた空間に電池セル(図示しない)を収容する。
トップカバー10は、板状の部材であり、側部18で囲まれたロアケース14の開口(図示しない)を閉塞する。トップカバー10は、トップカバー本体24と、トップカバー本体24に設けられた複数の絶縁部26とを有する。トップカバー本体24は、金属製、例えばアルミニウム製、鉄製、又はステンレス鋼製であって、平面視においてフランジ部20の外郭と略同じ外郭を有する長方形の板状の部材である。トップカバー本体24は、四隅に図示しない貫通孔と、厚さ方向に突出した台部28とを備える。貫通孔は、フランジ部20に形成された雌ねじに対応する位置に形成されている。台部28は、トップカバー本体24の外郭よりひと回り小さい略長方形の外郭を有し、周囲が台部28より一段低い低部30によって囲まれている。台部28は、外側表面としての、天面32と、天面32と低部30の表面の間に配置される側面34を有する。
絶縁部26は、台部28の外郭の対向する長辺に2個ずつ、合計4個設けられている。絶縁部26は、樹脂製のL字形の部材である。絶縁部26は、天面32に接する天面部36と、側面34に接する側面部38とを有する。天面部36は、厚さ方向に窪んだ凹部40を有する。
トップカバー10は、貫通孔にボルト42を挿入し、当該ボルト42を雌ねじ部22の雌ねじにねじ込むことによって、ロアケース14に固定される。電池ケース12は、図示しないが、トップカバー10の絶縁部26に締結具を接触させて、自動車の車体に固定される。前記締結具の一部は、天面部36の凹部40に差し込まれてもよい。
本開示において、接合体としてのトップカバー10は、金属部材としてのトップカバー本体24と、樹脂部材としての絶縁部26とを備える。絶縁部26の天面部36と側面部38は、台部28の天面32及び側面34に接した状態で、天面32及び側面34に接合(接着)している。
[電池ケースのトップカバー10(接合体)の製造方法]
本発明の電池ケースのトップカバーの製造方法は、金属部材(以下、「基材A」ともいう。)と、熱可塑性エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂の少なくともいずれかである非晶性熱可塑性樹脂を主成分とする固形接合剤と、前記金属部材と接合される樹脂部材(以下、「基材B」ともいう。)とが、この順に配置された状態の積層体を準備する接合前工程と、前記積層体を加熱及び加圧して前記固形接合剤を溶融させ、前記金属部材と前記樹脂部材とを接合する接合工程を有する。前記接合前工程では、基材Aと固形接合剤及び基材Bと固形接合剤との接合は行わず、次の接合工程にて接合を行う。固形接合剤はタック性を有していてもよく、その場合は接合前工程で固形接合剤が基材に対して仮固定される。
<接合前工程>
接合前工程では、基材Aと、熱可塑性エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂の少なくともいずれかである非晶性熱可塑性樹脂を主成分とする固形接合剤と、基材Bとが、この順に配置された状態の積層体を形成する。前記積層体において、基材Aと固形接合剤、及び固形接合剤と基材Bのいずれも互いに接合しておらず、それぞれ独立した部材が重ね合わせられた状態である。
前記固形接合剤の「固形」とは、常温で固体、すなわち23℃の加圧のない状態下において流動性がないことを意味する。前記固形接合剤は、23℃の加圧のない状態下において30日以上変形せずに外形を保持することができ、更に変質しない特性を備えることが望ましい。
前記「主成分」とは、固形接合剤中の樹脂成分のうちで最も含有量の高い成分であって固形接合剤中の樹脂成分中における含有量が50質量%以上の成分を意味する。固形接合剤は、樹脂成分を50質量%以上含むことが好ましく、70質量%以上含むことがより好ましく、80質量%以上含むことが更に好ましく、90質量%以上含むことが特に好ましい。
(固形接合剤)
固形接合剤は、熱可塑性エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂の少なくともいずれかである非晶性熱可塑性樹脂であって、エポキシ当量が1,600以上であり、融解熱が15J/g以下である非晶性熱可塑性樹脂を主成分とする。
本開示における非晶性樹脂とは、示差走査熱量計(DSC)を用いた測定において、融点(Tm)を有するが、明確な融解に伴う吸熱ピーク(融点)を有しない又は吸熱ピークが非常に小さい樹脂である。融解熱はDSCの吸熱ピークの面積と、熱可塑性樹脂成分の質量から算出される。無機充填剤などが固形接合剤に含まれる場合は、融解熱は、無機充填剤を除く樹脂成分の質量から算出される。具体的には、本開示における非晶性熱可塑性樹脂とは、以下のものを指す。試料を2~10mg秤量し、アルミ製パンに入れ、DSC(株式会社リガク製DSC8231)で23℃から10℃/minで200℃以上まで昇温し、DSCカーブを得る。次いでそのDSCカーブから求めた融解時の吸熱ピークの面積と、前記秤量値から融解熱を算出したときに、融解熱が15J/g以下であるものを非晶性熱可塑性樹脂とみなす。
固形接合剤に非晶性熱可塑性樹脂の特性を十分に付与する点から、前記非晶性熱可塑性樹脂の含有量は、固形接合剤中の樹脂成分のうち、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。
融解熱は、15J/g以下であり、11J/g以下であることが好ましく、7J/g以下であることがより好ましく、4J/g以下であることが更に好ましく、融解ピークが検出限界以下であることが最も好ましい。
エポキシ当量は、1,600以上であり、2,000以上であることが好ましく、5,000以上であることがより好ましく、9,000以上であることが更に好ましく、検出限界以上であってエポキシ基が実質的に検出されないことが最も好ましい。
エポキシ当量が1,600以上であり、融解熱が15J/g以下である非晶性熱可塑性樹脂を主成分とする固形接合剤として用いることにより、加熱時に、従来のホットメルト接着剤で見られるような急激な粘度低下は起こらず、200℃を超える高温度領域においても低粘度(0.001~100Pa・s)状態には至らない。このため当該固形接合剤は溶融した状態でも積層体から流れ出すことはなく、接着層の厚みを安定して確保することができ、高い接着力を安定して得ることができる。本開示におけるエポキシ当量(エポキシ基1モルが含まれる前記樹脂の質量)は、接合前の固形接合剤に含まれる熱可塑性エポキシ樹脂又はフェノキシ樹脂成分のエポキシ当量の値であり、JIS K 7236:2001に規定された方法で測定された値(単位「g/eq.」)である。具体的には、樹脂のエポキシ当量は、電位差滴定装置を用い、溶媒としてシクロヘキサノンを使用し、臭素化テトラエチルアンモニウム酢酸溶液を樹脂に加え、0.1mol/L過塩素酸-酢酸溶液を用いて測定される。溶媒希釈品(樹脂ワニス)については、不揮発分に基づいて固形分換算値としての数値として算出される。2種以上の樹脂の混合物のエポキシ当量は、それぞれの樹脂の含有量とエポキシ当量から算出することもできる。
固形接合剤の主成分である非晶性熱可塑性樹脂の融点は50~400℃であることが好ましく、60℃~350℃であることがより好ましく、70℃~300℃であることが更に好ましい。融点が50~400℃の範囲であることにより、前記固形接合剤が加熱により効率よく変形及び溶融して接着面に有効に濡れ広がるため、高い接着力を得ることができる。本開示において、非晶性熱可塑性樹脂の融点とは、実質的に固体から軟化して熱可塑性を帯び、溶融と接着が可能となる温度を意味する。
従来の熱硬化性の接着剤を含む接合体では、接合体を解体することが困難であり、接合体を構成する異種材を分別してリサイクルすることが難しい(すなわち、リサイクル性に劣る)。また、熱硬化性の接着剤を用いた場合、接合体の製造工程において接合箇所のズレ等があったとき、又は被着体に欠陥があり交換が必要なときに貼り直しが難しく(すなわち、リペア性に劣り)、利便性に欠ける。一方、前記固形接合剤は、熱で軟化及び溶融させることができ、容易に2つの被着体を分離することができるため、リサイクル性に優れる。また、前記固形接合剤は熱可塑性であるため、可逆的に軟化及び溶融と硬化(固化)を繰り返すことができ、リペア性にも優れる。
《熱可塑性エポキシ樹脂》
熱可塑性エポキシ樹脂は、(a)2官能エポキシ樹脂モノマー又はオリゴマーと(b)フェノール性水酸基、カルボキシル基、メルカプト基、イソシアネート基及びシアネートエステル基からなる群より選ばれる同一の又は異なる2つの官能基を有する2官能性化合物との重合体であることが好ましい。かかる化合物を使用することにより、直鎖状のポリマーを形成する重合反応が優先的に進行して、所望の特性を有する熱可塑性エポキシ樹脂を形成することが可能となる。
前記(a)2官能エポキシ樹脂モノマー又はオリゴマーとは、分子内にエポキシ基を2個有するエポキシ樹脂モノマー又はオリゴマーをいう。前記(a)2官能エポキシ樹脂モノマー又はオリゴマーとしては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、2官能のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、2官能のナフタレン型エポキシ樹脂、2官能の脂環式エポキシ樹脂、2官能のグリシジルエステル型エポキシ樹脂(例えばジグリシジルフタレート、ジグリシジルテトラヒドロフタレート、ダイマー酸ジグリシジルエステルなど)、2官能のグリシジルアミン型エポキシ樹脂(例えばジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジンなど)、2官能の複素環式エポキシ樹脂、2官能のジアリールスルホン型エポキシ樹脂、ヒドロキノン型エポキシ樹脂(例えばヒドロキノンジグリシジルエーテル、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノンジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテルなど)、2官能のアルキレングリシジルエーテル系化合物(例えばブタンジオールジグリシジルエーテル、ブテンジオールジグリシジルエーテル、ブチンジオールジグリシジルエーテルなど)、2官能のグリシジル基含有ヒダントイン化合物(例えば1,3-ジグリシジル-5,5-ジアルキルヒダントイン、1-グリシジル-3-(グリシドキシアルキル)-5,5-ジアルキルヒダントインなど)、2官能のグリシジル基含有シロキサン(例えば1,3-ビス(3-グリシドキシプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、α,β-ビス(3-グリシドキシプロピル)ポリジメチルシロキサンなど)及びそれらの変性物が挙げられる。これらの中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂が、反応性及び作業性の点から好ましい。
前記(b)のフェノール水酸基を有する2官能性化合物としては、例えばカテコール、レゾルシン、ヒドロキノンなどのベンゼン環を1個有する一核体芳香族ジヒドロキシ化合物、ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン(ビスフェノールAD)などのビスフェノール化合物、ジヒドロキシナフタレンなどの縮合環を有する化合物、ジアリルレゾルシン、ジアリルビスフェノールA、トリアリルジヒドロキシビフェニルなどのアリル基を導入した2官能フェノール化合物、及びジブチルビスフェノールAが挙げられる。
前記(b)のカルボキシル基を有する2官能性化合物としては、例えば、アジピン酸、コハク酸、マロン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、及びテレフタル酸が挙げられる。
前記(b)のメルカプト基を有する2官能性化合物としては、例えば、エチレングリコールビスチオグリコレート、及びエチレングリコールビスチオプロピオネートが挙げられる。
前記(b)のイソシアネート基を有する2官能性化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、へキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、及びトリレンジイソシアネート(TDI)が挙げられる。
前記(b)のシアネートエステル基を有する2官能性化合物としては、例えば、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-シアナトフェニル)エタン、及びビス(4-シアナトフェニル)メタンが挙げられる。
前記(b)の中でもフェノール水酸基を有する2官能性化合物が好適な特性を有する熱可塑性の重合物を形成できることから好ましく、フェノール性水酸基を2つ有し、ビスフェノール構造又はビフェニル構造を有する2官能性化合物が耐熱性及び接着性の観点から好ましく、ビスフェノールA、ビスフェノールF及びビスフェノールSが耐熱性及びコストの観点から好ましい。
前記(a)がビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、又はビフェニル型エポキシ樹脂であり、前記(b)がビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールSである場合、前記(a)と(b)の重合により得られるポリマーは、パラフェニレン構造及びエーテル結合を主骨格として有し、それらがアルキレン基で連結された主鎖と、重付加により生成した水酸基が側鎖に配置された構造を有する。パラフェニレン構造及びエーテル結合を有する主骨格に起因する直鎖状の構造により、重合後のポリマーの機械的強度を高めることができるとともに、側鎖に配置された水酸基により、基材への密着性を向上させることができる。その結果、作業性を維持しながら、熱硬化性樹脂と同水準の高い接着強度を実現することができる。更に、熱で軟化及び溶融させることによってリサイクル及びリペアが可能となり、熱硬化性樹脂における問題点であるリサイクル性及びリペア性を改善することができる。
《フェノキシ樹脂》
フェノキシ樹脂は、ビスフェノール化合物と、エピクロルヒドリンとから合成されるポリヒドロキシポリエーテルであり、熱可塑性を有する。フェノキシ樹脂の製造方法としては、二価フェノール化合物とエピクロルヒドリンの直接反応による方法、及び二価フェノール化合物のジグリシジルエーテルと二価フェノール化合物の付加重合反応による方法が知られているが、フェノキシ樹脂はいずれの製法により得られるものであってもよい。二価フェノール化合物とエピクロルヒドリンの直接反応の場合、二価フェノール化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビフェノール、ビフェニレンジオール、フルオレンジフェニル等のフェノール化合物が挙げられる。これらの中でも、コスト、接着性、粘度及び耐熱性の観点から、ビスフェノールA、ビスフェノールF、及びビスフェノールSが好ましい。二価フェノール化合物に加えて、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等の脂肪族グリコールが上記直接反応に含まれてもよい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。フェノキシ樹脂は、エポキシ樹脂に類似の化学構造をもち、パラフェニレン構造及びエーテル結合を主骨格とし、それらが連結された主鎖と、水酸基が側鎖に配置された構造を有する。
《熱可塑性エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂》
前記熱可塑性エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂の重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)測定によるポリスチレン換算の値で10,000~500,000であることが好ましく、18,000~300,000であることがより好ましく、20,000~200,000であることが更に好ましい。重量平均分子量はGPCによって検出される溶出ピーク位置から算出される標準ポリスチレン換算値である。重量平均分子量が上記範囲であると熱可塑性と耐熱性のバランスが良いため、効率よく溶融によって接合体を形成することができ、接合体の耐熱性を高めることもできる。重量平均分子量が10,000以上であると耐熱性に優れ、500,000以下であると溶融時の粘度が低く、接着性が高くなる。
《固形接合剤の製造方法》
固形接合剤の製造方法は特に限定されないが、例えば、2官能エポキシ化合物のモノマー又はオリゴマーを加熱して重合させることで得ることができる。重合の際に粘度を低減させて撹拌しやすくするために溶媒を加えてもよい。溶媒を加える場合はその除去が必要であり、乾燥若しくは重合又はその両方を離型フィルムなどの上にて行うことで固形接合剤を得てもよい。
必要に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲で、固形接合剤にその他の添加剤を配合することができる。非晶性熱可塑性樹脂の全量に対する添加剤の配合量は、50体積%以下であることが好ましく、30体積%以下であることがより好ましく、20体積%以下であることが更に好ましく、10体積%以下であることが最も好ましい。本開示において添加剤の体積%とは、非晶性熱可塑性樹脂の全量の体積を基準とした、2官能エポキシ化合物のモノマー又はオリゴマーの重合前に含有されていた添加剤の体積比を表しており、添加剤の体積は、含有されていた添加剤の質量を添加剤の真比重で除して求めることができる。
上記添加剤としては、例えば、粘度調整剤、無機フィラー、有機フィラー(樹脂粉体)、消泡剤、シランカップリング剤等のカップリング剤、及び顔料が挙げられる。これらの添加剤は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。粘度調整剤としては、例えば、反応性希釈剤が挙げられる。無機フィラーとしては、例えば、球状溶融シリカ、鉄などの金属の金属粉、珪砂、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、酸性白土、珪藻土、カオリン、石英、酸化チタン、シリカ、フェノール樹脂マイクロバルーン、及びガラスバルーンが挙げられる。
このようにして得られた固形接合剤は、未反応のモノマー又は末端エポキシ基含有量が少ないか、未反応のモノマー又は末端エポキシ基を実質的に含まないため、貯蔵安定性に優れ、常温での長期保存も可能である。
固形接合剤の形態は特に限定されないが、フィルム、棒、ペレット及び粉体からなる群から選択されるいずれかの形状を有することが好ましい。特に、固形接合剤の外形の少なくとも1辺が5mm以下であることが好ましく、3mm以下であることがより好ましく、1mm以下であることが更に好ましく、0.5mm以下であることがより更に好ましく、0.3mm以下であることが最も好ましい。固形接合剤のサイズが上記範囲であると、固形接合剤は基材Aと基材Bの間に挟み、加熱加圧したときに効率よく接着面に広がることができ、高い接着力を得ることができる。
固形接合剤は、接着力及び耐熱性を阻害しない範囲で、タック性を有してもよい。その場合、積層体準備工程において、基材に対して前記固形接合剤を仮固定することができる。
<接合工程>
接合工程では、前記積層体を加熱及び加圧して前記固形接合剤を溶融させ、その後、温度を下げることにより前記固形接合剤を固化させ、前記基材Aと前記基材Bを接合する。
前記加熱及び加圧における温度は、100~400℃が好ましく、120~350℃がより好ましく、150℃~300℃が更に好ましい。100~400℃で加熱することにより、前記固形接合剤が効率よく変形及び溶融し接着面に有効に濡れ広がるため高い接着力を得ることができる。
前記加熱及び加圧における圧力は、0.01~20MPaが好ましく、0.1~10MPaがより好ましく、0.2~5MPaが更に好ましい。このような圧力範囲であると、前記固形接合剤が効率よく変形し接着面に有効に濡れ広がるため高い接着力を得ることができる。基材A又は基材Bの少なくともどちらか一方が熱可塑性樹脂を含む場合、0.01~20MPaで加圧することにより、固形接合剤と基材を相溶化させ、強い接着力を得ることができる。
固形接合剤の主成分である熱可塑性エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂は、樹脂内の凝集力が低く、かつ水酸基を有しているため、基材との相互作用が強く、従来の結晶性のホットメルト接着剤よりも高い接着力で異種材を接合することができる。
前記基材Aと前記基材Bの接合は、固形接合剤の相変化(固体-液体-固体)を利用したものであり、化学反応を伴わないため、従来の熱硬化型のエポキシ樹脂よりも短時間で接合を完了することができる。
[電池ケースのトップカバー10(接合体)]
図2は、金属部材2と樹脂部材5とが固形接合剤を介して接合された状態の概略断面図であり、例えば図1に示すトップカバー本体24(金属部材)と絶縁部26(樹脂部材)との接合領域を示す図である。
図2に示す接合体においては、熱可塑性エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂の少なくともいずれかである非晶性熱可塑性樹脂を主成分とする固形接合剤が溶融後固化した接着層3を介して、金属部材2と樹脂部材5とが接合一体化されている。金属部材2と樹脂部材5とは異種材であるにも拘らず、接合体は優れた接合強度を示す。接合強度は、接着層と基材との間に働く界面相互作用の強さの他に、接着層の厚さ、接着剤を構成するポリマーの分子量及び化学構造、力学的特性、粘弾性的特性など数多くの因子に影響される。そのため、本開示の接合体が優れた接合強度を示す機構の詳細は明らかではないが、接着層3を構成する非晶性熱可塑性樹脂の凝集力が低いことと、樹脂中に水酸基が存在し、接着層3と金属部材2の界面及び接着層3と樹脂部材5の界面で水素結合、ファンデルワールス力などの化学結合又は分子間力が形成されることが主な要因であると推測される。しかし、接合体において、接合体の界面の状態又は特性は、厚さナノメートルレベル以下のごく薄い化学構造に起因するため分析が困難であり、本開示の接合体の界面の状態又は特性を特定することにより、本開示の固形接合剤を含まない接合体と区別可能に表現することは、現時点の技術において不可能又は非実際的である。
接着層3が非晶性熱可塑性樹脂を含む本開示の電池ケースのトップカバーは、リサイクル性及びリペア性に優れており、接合体を加熱することにより容易に金属部材2と樹脂部材5に解体することができる。
金属部材2若しくは樹脂部材5又は両方に、それぞれ適した前処理をすることで高い接着力が得られることがある。前処理としては、基材の表面を洗浄する前処理又は表面に凹凸を付ける前処理が好ましい。前処理は、1種のみであってもよく、2種以上を施してもよい。これらの前処理の具体的な方法としては、公知の方法を用いることができる。
金属部材2に対しては、脱脂処理、UVオゾン処理、ブラスト処理、研磨処理、プラズマ処理、及びエッチング処理からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
金属部材2は、鉄およびその合金もしくはアルミもしくはその合金が好ましい。金属部材2は、アルミニウム材料を含み、アルミニウム材料の熱伝導率が150W/(m・K)以上であることが好ましい。また、金属部材2は、アルミニウム押出材を含み、アルミニウム押出材の熱伝導率が180W/(m・K)以上かつ引張強度が150MPa以上であることが好ましい。さらに、金属部材2がアルミニウム鍛造材を含み、アルミニウム鍛造材の熱伝導率が180W/(m・K)以上かつ引張強度が150MPa以上であることが好ましい。
金属部材2は、A6000系合金のアルミニウム鍛造成形品からなり、且つ、引張強度が180MPa以上及びヤング率が60GPa以上の特性を有していることが好ましい。
樹脂部材5は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、及び繊維強化プラスチック(FRP)からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、接着力、コスト及び成形の容易性の観点から、熱可塑性樹脂であることがより好ましい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン及びその酸変性物、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、AS樹脂、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の熱可塑性芳香族ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンエーテル及びその変性物、ポリフェニレンスルフィド、ポリオキシメチレン、ポリアリレート、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、並びに熱可塑性エポキシ樹脂からなる群より選ばれる1種以上が好ましい。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、及びウレタン樹脂からなる群より選ばれる1種以上を使用することができる。熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
樹脂部材5に対しては、脱脂処理、UVオゾン処理、ブラスト処理、研磨処理、プラズマ処理、及びコロナ放電処理からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
本発明のいくつかの実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で様々に変更可能である。
本発明に関連した実施試験例及び比較試験例を以下に示すが、本発明は下記実施試験例に限定されるものではない。以下の例において、基材Aと基材Bをまとめて接合基材という。
〈接合基材〉
以下の接合基材を使用した。
《PC(ポリカーボネート)》
SABIC製121Rを射出成形して、幅10mm、長さ45mm、厚さ3mmの試験片を得た。表面処理はせずに使用した。
《アルミニウム》
A6061-T6の表面をブラスト処理し、幅10mm、長さ45mm、厚さ3mmの試験片を得た。
〈熱可塑性エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂の重量平均分子量、融解熱及びエポキシ当量〉
熱可塑性エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂の重量平均分子量、融解熱及びエポキシ当量を、それぞれ以下の手順で測定した。
(重量平均分子量)
熱可塑性エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂をテトラヒドロフランに溶解し、Prominence 501(昭和サイエンス株式会社製、Detector:Shodex(登録商標) RI-501(昭和電工株式会社製))を用い、以下の条件で測定した。
カラム:昭和電工株式会社製 LF-804×2本
カラム温度:40℃
試料:樹脂の0.4質量%テトラヒドロフラン溶液
流量:1mL/分
溶離液:テトラヒドロフラン
較正法:標準ポリスチレンによる換算
(融解熱)
熱可塑性エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂を2~10mg秤量し、アルミ製パンに入れ、DSC(株式会社リガク製DSC8231)を用いて23℃から10℃/minで200℃まで昇温し、DSCカーブを得た。得られたDSCカーブの融解時の吸熱ピークの面積と前記秤量値から融解熱を算出した。
(エポキシ当量)
JIS K 7236:2001に準拠して得られた測定値を、樹脂固形分としての値に換算した。反応を伴わない単純混合物の場合はそれぞれのエポキシ当量と含有量から算出した。
〈実施試験例1〉
(固形接合剤P-1)
撹拌機、還流冷却器、ガス導入管、及び温度計を備えた反応装置に、jER(登録商標)1007(三菱ケミカル株式会社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、重量平均分子量約10,000) 203g(1.0等量)、ビスフェノールS 12.5g(1.0等量)、トリフェニルホスフィン2.4g、及びメチルエチルケトン1,000gを仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら100℃まで昇温した。目視で溶解したことを確認し、40℃まで冷却して固形分約20質量%の樹脂組成物を得た。樹脂組成物から溶剤を除去して固形分100質量%の厚さ100μmのフィルム状の固形接合剤(P-1)を得た。重量平均分子量は約37,000であった。エポキシ当量は検出限界以上であった。DSCにおいて融解熱ピークは検出されなかった。
(接合体)
表1に示す基材A(金属部材)と基材B(樹脂部材)との接合体を作製した。オープンタイム評価用に、前記アルミニウム基材(基材A)の上に固形接合剤を配置した後に3日間静置し、その後に前記PC基材(基材B)を載せた以外は同様の手順で、オープンタイム評価用接合体も作製した。
基材Aの上に、10×15mmの大きさに裁断した前記固形接合剤P-1を配置し、その後速やかに、その上に基材Bを配置した。これらの基材同士の重なりは幅10mm、奥行き5mmとした。前記固形接合剤P-1は前記基材同士の重なり領域をすべて覆うように配置した。つまり、前記基材Aと基材B同士は、直接触れず、その間に前記固形接合剤が介在した状態として、未接合の積層体を準備した。
高周波誘導溶着機(精電舎電子工業株式会社製、発振器UH-2.5K、プレスJIIP30S)を用いて高周波誘導により金属を発熱させ、加熱・加圧により試験片同士を接合した。加圧力は110N(圧力2.2MPa)、発振周波数は900kHzとした。発振時間は6秒とした。
〈実施試験例2〉
(固形接合剤P-2)
撹拌機、還流冷却器、ガス導入管、及び温度計を備えた反応装置に、エノトート(登録商標)YP-50S(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、フェノキシ樹脂、重量平均分子量約50,000)20g、シクロヘキサノン80gを仕込み、撹拌しながら60℃まで昇温し、目視で溶解したことを確認し、40℃まで冷却して固形分20質量%の樹脂組成物を得た。樹脂組成物から溶剤を除去して固形分100質量%の厚さ100μmのフィルム状の固形接合剤(P-2)を得た。重量平均分子量は50,000、エポキシ当量は検出限界以上であった。DSCにおいて融解熱ピークは検出されなかった。
(接合体)
固形接合剤としてP-2を用いたこと以外は実施試験例1と同様にして、表1に示す接合体及びオープンタイム評価用接合体を作製した。
〈実施試験例3〉
(固形接合剤P-3)
前記樹脂組成物P-2と結晶性エポキシ樹脂YSLV-80XY(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)を98対2の質量比で混合し、固形接合剤(P-3)を得た。重量平均分子量は36,000、エポキシ当量は9600g/eq、融解熱は2J/gであった。
(接合体)
固形接合剤としてP-3を用いたこと以外は実施試験例1と同様にして、表1に示す接合体及びオープンタイム評価用接合体を作製した。
〈実施試験例4〉
(固形接合剤P-4)
前記樹脂組成物P-2と結晶性エポキシ樹脂YSLV-80XY(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)を94対6の質量比で混合し、固形接合剤(P-4)を得た。重量平均分子量は35,000、エポキシ当量は2100g/eq、融解熱は4J/gであった。
(接合体)
固形接合剤としてP-4を用いたこと以外は実施試験例1と同様にして、表1に示す接合体及びオープンタイム評価用接合体を作製した。
〈実施試験例5〉
(固形接合剤P-5)
前記樹脂組成物P-2と結晶性エポキシ樹脂YSLV-80XY(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)を89対11の質量比で混合し、固形接合剤(P-5)を得た。重量平均分子量は33,000、エポキシ当量は1745g/eq、融解熱は11J/gであった。
(接合体)
固形接合剤としてP-5を用いたこと以外は実施試験例1と同様にして、表1に示す接合体及びオープンタイム評価用接合体を作製した。
〈実施試験例6〉
(固形接合剤P-6)
撹拌機、還流冷却器、ガス導入管、及び温度計を備えた反応装置に、jER(登録商標)1007(三菱ケミカル株式会社株式会社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、分子量約4060) 203g(1.0等量)、ビスフェノールS(分子量250) 12.5g(0.6等量)、トリフェニルホスフィン2.4g、及びメチルエチルケトン1,000gを仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら100℃まで昇温した。目視で溶解したことを確認し、40℃まで冷却して固形分約20質量%の樹脂組成物を得た。樹脂組成物から溶剤を除去して固形分100質量%の厚さ100μmのフィルム状の固形接合剤(P-6)を得た。重量平均分子量は約30,000、エポキシ当量は検出限界以上であった。DSCにおいて融解熱ピークは検出されなかった。
(接合体)
固形接合剤としてP-6を用いたこと以外は実施試験例1と同様にして、表1に示す接合体及びオープンタイム評価用接合体を作製した。
〈比較試験例1〉
(固形接合剤Q-1)
熱硬化性液状エポキシ接着剤E-250(コニシ株式会社製、ビスフェノール型エポキシ樹脂とアミン硬化剤の2液タイプ)の2液を混合し、離型フィルムに塗布し、100℃で1時間硬化させたあと、冷却し、離型フィルムから剥がして厚さ100μmのフィルム状の固形接合剤(Q-1)を得た。DSCにおいて融解熱ピークは検出されなかった。エポキシ当量及び重量平均分子量は溶媒に不溶のため測定できなかった。
(接合体)
固形接合剤としてQ-1を用いたこと以外は実施試験例1と同様にして、表1に示す接合体及びオープンタイム評価用接合体を作製した。
〈比較試験例2〉
(固形接合剤Q-2)
非晶性のポリカーボネートフィルム(ユーピロン(登録商標)FE2000、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、厚さ100μm)を固形接合体Q-2として用いた。DSCにおいて融解熱ピークは検出されなかった。
(接合体)
固形接合剤としてQ-2を用いたこと以外は実施試験例1と同様にして、表1に示す接合体及びオープンタイム評価用接合体を作製した。
〈比較試験例3〉
(固形接合剤Q-3)
結晶性エポキシ樹脂YSLV-80XY(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)を固形接合剤(Q-3)として用いた。エポキシ当量は192g/eqであった。重量平均分子量は340であった。融解熱は70J/gであった。
(接合体)
固形接合剤としてQ-3を用いたこと以外は実施試験例1と同様にして、表1に示す接合体及びオープンタイム評価用接合体を作製した。
〈比較試験例4〉
(接合体)
熱硬化性液状エポキシ接着剤E-250(コニシ株式会社製、ビスフェノール型エポキシ樹脂とアミン硬化剤の2液タイプ)の2液を混合し、前記実施試験例1と同様の基材Aと基材Bにそれぞれ塗布し、1分以内に貼り合わせをし、その後、クリップにて固定した状態で100℃のオーブン内に1時間静置することで接着成分を硬化させ、その後、室温まで冷却することで表1に示す接合体を作製した。前記熱硬化性液状エポキシ接着剤E-250を基材Aと基材Bにそれぞれ塗布した後、3日間静置した後に貼り合わせをしたこと以外は上記と同様にして、オープンタイム評価用接合体も作製した。
〈比較試験例5〉
フラスコに、jER(登録商標)1007(三菱ケミカル株式会社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、重量平均分子量約10,000) 203g(1.0等量)、ビスフェノールS 12.5g(1.0等量)、トリフェニルホスフィン2.4g、及びメチルエチルケトン1,000gを仕込み、常温で撹拌することで固形分約20質量%の液状樹脂組成物を得た。前記実施試験例1と同様の基材Bの上に、前記液状樹脂組成物をバーコート塗布し、室温で30分乾燥させた後に、160℃のオーブンに2時間静置することで、厚さ100μmの固形の熱可塑性エポキシ樹脂重合物コーティング層を基材Bの表面上に形成した。コーティング層の重量平均分子量は約40,000であった。エポキシ当量は検出限界以上であった。DSCにおいて融解熱ピークは検出されなかった。
(接合体)
前記コーティング層を持つ基材Bの上に基材Aを直接配置したこと以外は実施試験例1と同様にして、表1に示す接合体を作製した。オープンタイム評価用に、熱可塑性エポキシ樹脂重合物コーティング層を基材Bの表面上に形成した後、3日間静置し、その後に基材Aと積層した以外は上記と同様にして、オープンタイム評価用接合体も作製した。
〈比較試験例6〉
撹拌機、還流冷却器、ガス導入管、及び温度計を備えた反応装置に、フエノトート(登録商標)YP-50S(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、フェノキシ樹脂、重量平均分子量約50,000)20g、シクロヘキサノン80gを仕込み、撹拌しながら60℃まで昇温し、目視で溶解したことを確認し、40℃まで冷却して固形分20質量%の液状樹脂組成物を得た。前記実施試験例1と同様の基材Bの上に、前記液状樹脂組成物をバーコート塗布し、70℃のオーブンに30分静置することで、厚さ100μmのフェノキシ樹脂コーティング層を基材Bの表面上に形成した。前記コーティング層の重量平均分子量は約50,000であった。エポキシ当量は検出限界以上であった。DSCにおいて融解熱ピークは検出されなかった。
(接合体)
前記フェノキシ樹脂コーティング層を持つ基材Bの上に基材Aを直接配置したこと以外は実施試験例1と同様にして、表1に示す接合体を作製した。オープンタイム評価用に、フェノキシ樹脂コーティング層を基材Bの表面上に形成した後、3日間静置し、その後に基材Aと積層した以外は上記と同様にして、オープンタイム評価用接合体も作製した。
〈比較試験例7〉
(接合体)
固形接合剤として結晶性のポリアミド系ホットメルト接着剤フィルムNT-120(日本マタイ株式会社製、厚さ100μm)を用いたこと以外は実施試験例1と同様にして、表1に示す接合体及びオープンタイム評価用接合体を作製した。融解熱は60J/gであった。
[せん断接着力]
実施試験例1~6、比較試験例1~7で得られた接合体を測定温度(23℃又は80℃)で30分以上静置後、ISO19095に準拠して、引張試験機(万能試験機オートグラフ「AG-X plus」(株式会社島津製作所製);ロードセル10kN、引張速度10mm/min)にて、23℃及び80℃雰囲気での引張りせん断接着強度試験を行い、接合強度を測定した。測定結果を表1に示す。
[接合プロセス時間]
接合プロセス時間は下記のように測定した。接合体を構成する少なくともいずれかの基材と接合剤の接触時を始点、接合体の作製の完了時を終点として、始点から終点までの時間を測定した。加熱・加圧時間については、表1に示す接合体でのそれぞれ加熱・加圧時間を平均した。
[リサイクル性]
表1に示す接合体を200℃のホットプレートに置いて1分加熱した後、1N以下の力で容易に剥離できるかで判断した。全ての接合体について剥離できれば良好(OK)で、剥離できないものがあれば不適(NG)とした。
[リペア性]
前記引張りせん断強度試験の23℃での試験後の接着面が破断した試験片(基材A若しくはB又はその両方の表面に接合固体の層が残存している)のうち基材Bの上に基材Aを配置し、前記実施試験例1と同様に接合体を作成することでリペア接合体を得た。前記リペア接合体の23℃のせん断接着力を前記試験方法と同様に測定し、1回目のせん断接着力の80%以上であれば良好(OK)で、80%未満ならば不適(NG)とした。
[オープンタイム評価]
オープンタイム評価用接合体を用いて、前記引張りせん断接着強度試験を23℃で実施した。前記実施試験例及び比較試験例の方法で作成した試験片と比べてせん断接着力が80%以上であれば良好(OK)で、80%未満であれば不適(NG)とした。オープンタイム評価が良好(OK)とは、オープンタイムが長く、利便性に優れることを意味する。
Figure 2023097068000002
Figure 2023097068000003
本発明は、電池ケースのトップカバーの製造方法等に利用可能である。
2:金属部材
3:固形接合剤
5:樹脂部材
10:トップカバー(金属部材-樹脂部材接合体)
12:電池ケース
14:ロアケース
16:底部
18:側部
20:フランジ部
22:雌ねじ部
23:温度
24:トップカバー本体
26:絶縁部
28:台部
30:低部
32:天面(外側表面)
34:側面(外側表面)
36:天面部
38:側面部
40:凹部
42:ボルト

Claims (4)

  1. 金属部材と、熱可塑性エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂の少なくともいずれかである非晶性熱可塑性樹脂を主成分とする固形接合剤と、前記金属部材と接合される樹脂部材とが、この順に配置された状態の積層体を準備する接合前工程と、
    前記積層体を加熱及び加圧して前記固形接合剤を溶融させ、前記金属部材と前記樹脂部材とを接合する接合工程と
    を含む、電池ケースのトップカバーの製造方法であって、
    前記非晶性熱可塑性樹脂のエポキシ当量が1,600以上であるか、又は前記非晶性熱可塑性樹脂がエポキシ基を含まず、前記非晶性熱可塑性樹脂の融解熱が15J/g以下である、電池ケースのトップカバーの製造方法。
  2. 前記加熱及び加圧を、100~400℃及び0.01~20MPaの条件で行う、請求項1に記載の電池ケースのトップカバーの製造方法。
  3. 溶融前の固形接合剤が、フィルム、棒、ペレット及び粉体からなる群から選択されるいずれかの形状を有する、請求項1又は2に記載の電池ケースのトップカバーの製造方法。
  4. 前記金属部材は、A6000系合金のアルミニウム鍛造成形品からなり、且つ、引張強度が180MPa以上及びヤング率が60GPa以上の特性を有している請求項1~3のいずれか一項に記載の電池ケースのトップカバーの製造方法。
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